司法書士  橋本先生のブログ

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当事務所の無料法律相談会でおなじみ アイリス国際司法書士事務所 橋本 大輔 先生 のブログです。

令和6年4月1日から義務化された「相続登記」に関する話題を中心に、様々な角度から色々なお話をしてくださっています。

  

(論点)共有持分の決め方と贈与税の問題、持分放棄の実務的な提案

(論点)共有持分の決め方と贈与税の問題、持分放棄の実務的な提案

住宅を夫婦で購入する際に、その資金の出資割合に応じて持分割合を決めることが一般的です。しかし、持分の決定方法によっては税務上の問題が発生することがあり、特に贈与税の発生が懸念されます。本稿では、持分割合の決定方法、贈与税のリスク、そして実務上での持分放棄という選択肢について、項目に分けて解説します。


目次


1. 住宅購入時の持分割合の決め方

2. 贈与税が発生するリスク

3. 贈与税を回避する方法

4. 持分放棄の提案とその実務的な利点

5. 実務上の留意点

まとめ



(論点)共有持分の決め方と贈与税の問題、持分放棄の実務的な提案

1. 住宅購入時の持分割合の決め方


 夫婦で住宅を購入する際には、一般的にそれぞれが出資した金額に応じて持分を設定します。たとえば、夫が70%、妻が30%の購入資金を出した場合、持分割合も夫70%、妻30%とするのが原則です。このような持分割合の設定は、以下の理由から重要です。


(1) 税務上の透明性の確保

 夫婦間で出資割合に応じた持分を設定することにより、税務上の問題が発生しにくくなります。特に、贈与税の課税を回避するためには、実際の出資額に基づいた持分割合が重要です。


(2) 将来的な相続や贈与の影響

 将来的に相続が発生した場合や、持分の変更が行われた場合にも、最初に設定した持分割合が基準となります。そのため、最初に正確な割合を設定することは、後々の手続きや税務に影響を与えるため、慎重に行う必要があります。




2. 贈与税が発生するリスク


 夫婦で住宅を購入する際、持分が一方に偏りすぎている場合、税務上「贈与」とみなされ、贈与税が課されるリスクがあります。たとえば、夫婦が共同で住宅を購入したにもかかわらず、夫が100%の持分を取得した場合、妻が出資した金額が夫への贈与と見なされる可能性があります。この場合、妻が夫に贈与したものとして、贈与税が発生することになります。


(1) 贈与税の基本的な考え方

 贈与税は、個人から個人へ財産が無償で移転した場合に課税される税金です。夫婦間の持分の設定が実際の出資割合と一致しない場合、その差額が贈与とみなされ、課税対象となります。


(2) 贈与と見なされるケース

 たとえば、夫が全額出資して住宅を購入し、妻が無償でその一部の持分を取得した場合、この持分は夫から妻への贈与とされ、妻が受け取った持分に対して贈与税が発生します。逆に、夫婦の一方が実際に資金を出していないのに多くの持分を取得する場合も同様に贈与税が課される可能性があります。





(論点)共有持分の決め方と贈与税の問題、持分放棄の実務的な提案

3. 贈与税を回避する方法


 贈与税を回避するためには、出資割合に基づいた持分割合の設定が最も効果的です。実際に住宅購入に際して夫婦それぞれが出した資金の額をもとに、持分を設定することで贈与税の発生を防ぐことができます。


(1) 適切な持分割合の設定

 適切な持分割合を設定するためには、住宅購入時に夫婦がどれだけの資金を出したかを明確にしておく必要があります。また、住宅ローンを利用している場合も、ローンの返済割合に基づいて持分を設定することが重要です。


(2) 契約書や登記での明確化

 持分割合は、契約書や不動産登記に明記することが必要です。持分割合を明確にすることで、後々のトラブルや税務上の問題を避けることができます。


4. 持分放棄の提案とその実務的な利点


 今回の実務において、私は持分放棄という選択肢を提案しました。持分放棄は、一方の所有者が自らの持分を放棄し、他方の所有者に譲渡する方法です。持分放棄は贈与のように他方への財産移転とは異なり、放棄した者の意思表示だけで有効となるため、手続きが比較的簡便です。


(1) 持分放棄と贈与税の関係

 持分放棄を行う場合、放棄した持分が他方に移転するため、贈与税の問題は残ります。実質的には持分が他方に譲渡されるため、税務上は贈与とみなされる可能性が高いです。しかし、持分放棄はあくまで一方の意思表示で完了するため、手続き自体はスムーズに進めることが可能です。


(2) 意思表示の効力

 持分放棄は、その意思表示が一方の持分放棄者によってなされるため、その意思が明確である限り効力を持ちます。これは、贈与契約のように双方の合意を必要としないため、迅速な手続きが可能です。また、今回のケースでは、持分放棄者の意思表示が唯一の決定要因となったため、贈与ではなく持分放棄が適した選択肢とされました。



5. 実務上の留意点


 持分放棄を選択する際には、いくつかの留意点があります。特に、放棄した持分が他方に移転するため、税務上の取り扱いが重要となります。また、持分放棄を行う場合は、放棄者が自らの意思で行うことが求められ、その意思が明確に表明されることが不可欠です。


(1) 税務申告の必要性

 持分放棄が贈与とみなされる場合には、税務申告が必要です。贈与税の非課税枠を超える贈与が行われた場合、相応の税額が課されるため、適切な申告手続きが求められます。


(2) 意思表示の記録

 持分放棄を行う際には、意思表示の内容を記録に残すことが重要です。これにより、後々のトラブルを回避し、税務上の問題にも対応できるようにすることができます。


(論点)共有持分の決め方と贈与税の問題、持分放棄の実務的な提案

まとめ


 住宅購入における持分割合の設定は、税務上の問題を避けるために極めて重要です。出資割合に基づいた適切な持分設定を行うことで、贈与税のリスクを回避できます。

 また、持分放棄という選択肢は、迅速かつ簡便に所有権の変更を行う方法ですが、税務上の取り扱いに留意する必要があります。

 最終的には、持分割合の設定や放棄に関する意思表示を明確にし、適切な手続きを踏むことが大切です。

(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

近年、結婚せずに生涯独身で過ごす「おひとりさま」や、子供がいない「夫婦二人世帯」が増加しており、こうした人々にとって相続は重要な問題となっています。特に、法定相続人がいない場合には、相続に関して特別な対策を講じておくことが重要です。

ここでは、おひとりさまの相続対策や、最終的に遺産がどうなるかについて解説します。


目次


1. 法定相続人がいない場合の問題点

2. 遺言書の作成

3. 信託の活用

4. 親しい人への財産分配や寄付の考慮

5. 成年後見制度の活用

6. 法定相続人がいない場合、最終的に遺産はどうなるのか?

まとめ


(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

1. 法定相続人がいない場合の問題点


 法定相続人がいる場合は、法律に従って相続手続きが進みますが、法定相続人がいない場合には、相続手続きが大きな問題となります。法定相続人がいないと、財産の行き先が不明確になり、親族や知人とのトラブルが発生することがあります。

 また、遺産が適切に引き継がれず、最終的に国庫に帰属するリスクも高まります。おひとりさまの場合、以下の点に特に注意して相続対策を行うことが重要です。


2. 遺言書の作成


 法定相続人がいない場合、最も効果的な相続対策の一つは、遺言書を作成しておくことです。遺言書がない場合、財産は最終的に国庫に帰属してしまいますが、遺言書を作成することで、財産の行き先を指定することができます。


遺言書の種類と注意点

 遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は、自分で書くことができますが、形式的な不備があると無効になるリスクが高いため、公証役場で作成する公正証書遺言が推奨されます。公正証書遺言は、遺言者が自ら内容を伝え、公証人が作成するため、法的に有効な遺言書を確実に残すことができます。


遺言執行者の指定

 遺言書には、遺言の内容を実行するための「遺言執行者」を指定しておくことも重要です。遺言執行者がいないと、遺言書の内容がスムーズに実行されず、財産分割や名義変更の手続きが遅れる可能性があります。信頼できる第三者や、司法書士・弁護士などの専門家を遺言執行者として指定することで、トラブルを防ぐことができます。



3. 信託の活用


 おひとりさまの相続対策として、「民事信託(家族信託)」を活用することも有効です。信託とは、財産を信頼できる第三者に託し、指定した目的に従って財産を管理・処分してもらう制度です。信託契約を結ぶことで、生前に自分の意志に基づいて財産の管理や処分を行うことができ、相続に関するリスクを軽減することができます。


信託のメリット

 信託を利用することで、遺言書だけではカバーしきれない財産管理の細かい点まで指示を出すことが可能です。例えば、信頼できる第三者に生前から財産管理を委ね、死亡後もその第三者が財産を適切に管理・分配するように指示することができます。これにより、相続手続きが複雑化することを防ぎ、財産の確実な引き継ぎが可能となります。

※信託を利用する場合、財産管理として預金を信託口口座で管理することになりますが、取扱金融機関が少なく、仮に口座の開設をする場合もそれなりの利用料が必要となります。



(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

4. 親しい人への財産分配や寄付の考慮



 法定相続人がいない場合、遺産を親族や友人、知人に遺贈することができます。遺贈とは、遺言によって特定の人に財産を贈ることを指します。遺贈を活用することで、感謝の気持ちを形にし、親しい人に財産を引き継ぐことができます。



特定の人への遺贈

 例えば、長年世話になった友人や介護してくれた知人に対して、感謝の意を込めて財産を遺贈することができます。遺言書にその旨を明記し、遺産分配を確実に行うための手続きを整えておくことが重要です。


寄付の活用

 また、遺産を慈善団体や社会貢献活動に寄付することも考慮するべき選択肢です。遺産の一部または全部をNPOや公益法人などに寄付することで、自分の財産が社会に役立つ形で活用されることを願うことができます。特に、遺言書で明確に寄付の意思を示しておくことで、確実な実行が可能となります。



5. 成年後見制度の活用


 おひとりさまの相続対策では、認知症などによる判断能力の低下に備えて、成年後見制度を活用することも検討すべきです。成年後見制度は、判断能力が低下した場合に、後見人が財産管理や契約の手続きを代行する制度です。


任意後見制度の利用(身元保証サポートのサービスの一環として行う場合があります)

 任意後見制度を利用することで、あらかじめ信頼できる第三者を後見人として指定し、判断能力が低下した際に財産管理を託すことができます。これにより、本人が健全な状態のうちに意思を反映させ、適切な財産管理が行われるようにすることができます。



6. 法定相続人がいない場合、最終的に遺産はどうなるのか?


 法定相続人がいない場合、遺言書が存在しないと最終的に遺産は国庫に帰属します。これは、民法に基づき、相続人がいない場合には財産が国に引き渡されるという規定があるためです。しかし、遺言書や信託契約を作成することで、このような事態を回避し、財産を希望する相手に適切に引き継ぐことができます。


特別縁故者への分配

 法定相続人がいない場合でも、特別縁故者(被相続人と生前に親しく付き合っていた人)が家庭裁判所に請求を行えば、財産の一部を受け取ることができる場合があります。ただし、この手続きは裁判所の判断によるため、確実に財産が引き継がれるわけではありません。

※特別縁故者もいないもしくは裁判所が認めなかった場合、その遺産は清算人により清算手続きが行われて、残った遺産については国庫に帰属します。


(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

まとめ


 法定相続人がいないおひとりさまの場合、相続対策を怠ると、財産が望まない形で処理される可能性があります。

 遺言書の作成や信託の活用、寄付や遺贈の検討、成年後見制度の活用など、事前に対策を講じることで、自分の意思に基づいた相続手続きを確実に進めることができます。

 また、相続人がいない場合でも、財産を寄付などをする手続きを行うため、遺言書の作成をしておくことが重要です。




相続が大変になるケース5選

相続が大変になるケース5選

相続手続きは、思っている以上に複雑でトラブルが発生しやすいものです。

遺産をめぐる相続人間の争いや、手続きの複雑さから生じる混乱は、予想外に長引くことも多いです。

特に以下の5つのケースでは、相続が大変になることが多く、注意が必要です。


目次


1. 遺産分割協議がまとまらない場合

2. 遺言書がない、または無効である場合

3. 相続財産の把握が難しい場合

4. 相続人が多い場合

5. 相続税の負担が大きい場合

まとめ

相続が大変になるケース5選

1. 遺産分割協議がまとまらない場合


 相続人が複数いる場合、遺産分割協議が必要です。しかし、全員の意見が一致しないと協議が進まず、結果として長期化することがあります。特に、以下のような場合には分割協議が難航する傾向にあります。


①相続人間の関係が悪い

 親族間の不仲や過去のトラブルが原因で協議が進まない場合があります。感情的な対立が先行すると、客観的な判断ができなくなり、冷静に話し合うことが困難になります。


➁財産の価値や分割方法に対する認識の違い

 遺産が現金だけでなく、不動産や株式などの場合、その評価額や分割方法に対する意見が食い違うことがあります。特に不動産の場合、現物分割が難しいため、相続人の誰が不動産を引き継ぎ、他の相続人に代償金を支払うのかなど、複雑な話し合いが必要になります。


③感情的な遺産の分配

 例えば、家宝や思い出の品、実家など感情的価値が高い財産をめぐって争いが起きることも少なくありません。こうした財産は金銭的な価値以上に相続人の感情に影響を与え、合意形成が難しくなることがあります。


相続が大変になるケース5選

2. 遺言書がない、または無効である場合


 遺言書がない場合、法定相続分に従って遺産を分割することになりますが、これは必ずしも相続人全員が納得する結果にはならないことが多いです。また、遺言書が存在しても、その内容が法的に無効とされる場合や、遺言書自体が発見されない場合もあります。


①自筆証書遺言の不備

 遺言書が手書きで作成された自筆証書遺言の場合、形式的な不備や署名・押印の欠如などで無効とされるケースがあります。法的に有効な遺言書を残すためには、公正証書遺言が推奨されますが、これを利用しない場合、遺言書の効力を巡って争いが生じることがあります。


➁遺言書が複数存在する場合

 遺言書が複数あり、それらの内容が矛盾している場合、どの遺言書を有効とするかをめぐってトラブルが発生します。特に、最後に作成された遺言書が不明確であったり、日付が記されていない場合は、相続人間で争いが避けられません。


3. 相続財産の把握が難しい場合


 被相続人が持っていた財産が明確でない場合、相続財産の調査が難航することがあります。預貯金、不動産、株式、保険など多岐にわたる財産を正確に把握するためには、時間と労力が必要です。また、被相続人が複数の金融機関に口座を持っていたり、不動産が遠隔地に存在していたりすると、さらに手間がかかります。


①隠し財産や未申告の財産の存在

 被相続人が家族に知らせていなかった財産や、適切に申告されていない財産が後から見つかることがあります。これにより、相続手続きが再開される可能性があり、相続税の再計算が必要になる場合もあります。


➁不動産の登記情報の不一致

 被相続人が所有していた不動産の登記情報が最新でない場合、相続手続きが煩雑化します。古い登記情報が残っていたり、名義変更が行われていない不動産がある場合、手続きが長引く原因になります。


4. 相続人が多い場合


 相続人が多い場合、それぞれの意見をまとめることが難しくなります。法定相続分に従って遺産を分割することも、全員の同意が必要になるため、相続人が多ければ多いほど話し合いが複雑化します。また、相続人の中に行方不明者や意思疎通が難しい者がいる場合、手続きがさらに難航することがあります。


①海外在住の相続人がいる場合

 相続人が海外に住んでいる場合、書類のやり取りや意思確認に時間がかかることがあります。さらに、現地の法令に従った手続きが必要になるため、国際的な手続きが加わり、相続全体が長引く可能性があります。


➁疎遠な親族が相続人である場合

 被相続人が再婚している場合や、子供が別居している場合、疎遠になっている親族が相続人となるケースでは、感情的な対立が生じやすくなります。特に、被相続人の配偶者と前妻・前夫の子供たちとの間でトラブルが発生しやすいです。


5. 相続税の負担が大きい場合


 相続財産の価値が高額な場合、相続税の負担が問題となります。特に、相続財産の多くが不動産で現金が少ない場合、相続税を支払うための現金が不足し、相続人間でトラブルになることがあります。


①不動産の売却が必要になる場合

 相続税を支払うために、不動産を売却しなければならないケースもあります。しかし、不動産の売却には時間がかかり、相続手続き全体が長期化することがあります。また、売却価格が相続人間で合意できない場合、さらなる対立が生じます。


➁相続税の申告期限のプレッシャー

 相続税の基礎控除を超えている場合、相続税の申告は、被相続人の死亡から10か月以内に行わなければならないため、期限内に財産を把握し、分割方法を決定する必要があります。この短い期間内で手続きを進めることが難しく、急いで分割協議を行うことで、後から問題が発生することもあります。


相続が大変になるケース5選

まとめ


 相続が大変になるケースは、遺産分割協議の難航や遺言書の有無、相続財産の把握、相続人の多さ、相続税の負担など、さまざまな要因が絡み合っています。

 事前に適切な対策を講じ、円滑な相続手続きが進むよう準備を整えておくことが、トラブルを避けるための最善策です。

(論点)遺言の有効性について

(論点)遺言の有効性について

相続対策として遺言書を作成することは、財産分配の明確化や相続争いの防止を目的としています。しかし、遺言者の死亡後に遺言書の効力が発生し、特に遺言者の認知能力に疑義が生じた場合、その遺言書の有効性が争われることがあります。このような事態は、遺言書の有効性をめぐる訴訟に発展することが多く、遺族間の関係に大きな影響を及ぼす可能性があります。以下では、遺言書の有効性に関する基本的な法的要件や、認知能力に関する疑義が生じた場合の対応について詳しく説明します。


目次


1. 遺言書の基本的な有効性の要件

2. 遺言者の認知能力に関する問題

3. 認知能力に関する証拠

4. 遺言書の無効となる場合

5. 遺言の有効性を確保するための対策

結論


(論点)遺言の有効性について

1. 遺言書の基本的な有効性の要件


 遺言書の有効性を確認するためには、いくつかの形式的要件を満たす必要があります。遺言書の形式には主に次の2つがあります。


①自筆証書遺言: 遺言者が自分で全文を書き、日付と署名を行うことが必要です。2020年の法改正により、自筆証書遺言の財産目録については、パソコンで作成したり、第三者が作成したものを添付することが可能になりましたが、本文は遺言者自身が手書きである必要があります。以下が民法の規定となります。


「民法(自筆証書遺言)

第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」


➁公正証書遺言: 公証役場で公証人が作成する遺言です。遺言者が口述し、内容を公証人が文書にして作成するため、最も信頼性が高く、遺言者の認知能力に問題があった場合でも、作成時に公証人が、さらに確認時には証人2名を立ち会わせて確認を行うため争いが起こりにくいとされています。

 遺言書がこれらの形式的要件を満たしていない場合、無効となるリスクが高くなります。


※特に、自筆証書遺言においては、法律の要件が重要となりますので、効力を出すためには専門家のサポートを受けた方がいいと思います。また、相続発生し、遺言書の効力が要件を充たして発生した場合においても、遺言書作成時の遺言者の認知能力について争いがある場合、他の相続人から裁判で無効の訴えを提訴される場合があります。

(論点)遺言の有効性について

2. 遺言者の認知能力に関する問題


 遺言書の有効性に対する最大の争点の一つが、遺言者の認知能力です。遺言を作成するためには、遺言者が遺言を行う時点で「意思能力」を有している必要があります。意思能力とは、自分の行為の意味や結果を理解し、適切に判断できる能力を指します。認知症や精神疾患などでこの能力が低下している場合、遺言書の有効性に疑義が生じることがあります。


認知能力が疑われるケース

 遺言者が遺言書を作成した時期に認知症を患っていたり、精神的な不安定さがあった場合、その遺言書が法的に有効であったかどうかが問われることがあります。例えば、以下のような状況が認知能力に関する争いの原因となります。


認知症の診断: 遺言作成時に遺言者が認知症の診断を受けていた場合、その時点での意思能力が十分であったかどうかが問題視されます。診断が軽度であり、意思能力に問題がなければ有効ですが、重度の認知症で判断能力が大きく低下していた場合、遺言が無効とされる可能性があります。


精神的な圧力や強制: 遺言作成時に、遺言者が他者から精神的な圧力を受けていた場合や、遺言の内容が不自然である場合、遺言者が意思能力を失っていたと主張されることがあります。


(論点)遺言の有効性について

3. 認知能力に関する証拠


 遺言者の認知能力を巡る争いにおいて、意思能力の有無を判断するための証拠が重要となります。具体的には以下の証拠が利用されることが多いです。


 医療記録: 遺言者の医師による診断書やカルテなどの医療記録は、遺言作成時の精神状態を示す重要な証拠となります。特に、遺言作成前後の医療記録が重要視され、意思能力があったかどうかを判断するための基礎資料となります。


 公証人や証人の証言: 公正証書遺言の場合、遺言作成時に立ち会った公証人や証人の証言が意思能力を証明する手がかりになります。公証人は、遺言者が意思能力を有しているかどうかを確認する義務があるため、公正証書遺言の場合、認知能力に対する疑義は比較的少なくなる傾向があります。


 家族や近親者の証言: 遺言者の行動や精神状態について、家族や近親者が証言することもあります。しかし、相続人間での利害関係が複雑な場合、この証言は偏りが生じる可能性があるため、客観的な証拠と組み合わせて検討されることが多いです。


 実際、証拠を提出すると言っても、かなり難しいと思います。認知症が発症するリスクが高くなる年齢は、75歳を過ぎてからとなります。その前に、遺言書を作成しておけば、このような争いは避けられると思われます。遺言書の内容は、後で変更可能です。ぜひ、遺言書の作成の検討をしてみてください。



4. 遺言書の無効となる場合


 認知能力に問題があり、意思能力が欠けていたと判断された場合、遺言書は無効となります。遺言書が無効とされた場合、遺言の内容に従った財産分配は行われず、法定相続分に従って財産が分割されます。このため、遺言者の意向が反映されなくなる可能性が高くなります。


 無効の主張が認められる場合としては、以下のようなケースが考えられます。


 遺言作成時に認知症が進行していた: 診断書や医療記録から、遺言作成時に認知能力が失われていたことが明らかな場合。

 遺言書の内容が極端に不自然: 遺言者が過度に特定の相続人に有利な遺言を残した場合、精神的な圧力がかかった可能性があるとされることがあります。


5. 遺言の有効性を確保するための対策


 遺言書の有効性を確保するためには、認知能力に疑義が生じないような対策が重要です。特に、遺言作成時に遺言者が高齢であったり、健康状態に問題がある場合、次のような対策が推奨されます。

 公正証書遺言を利用する: 公証人が立ち会い、意思能力の確認を行うため、公正証書遺言を作成することで後の争いを防ぎやすくなります。

 医師の診断を受ける: 遺言作成時に意思能力が十分であることを示すため、医師の診断書を取得しておくことが有効です。特に、認知症などの診断を受けている場合には、専門医の証明が重要です。

 証人を立てる: 遺言書作成に信頼できる証人を立ち会わせることで、後に認知能力をめぐる争いが発生した場合の証拠とすることができます。

(論点)遺言の有効性について

結論


 遺言書の有効性は、遺言者の認知能力や意思能力が十分であったかどうかに大きく依存します。

 遺言作成時に認知能力に疑義が生じる場合、争いが起こる可能性があり、そのための証拠収集や適切な遺言の形式選択が重要です。

 公正証書遺言や医師の診断書などを活用することで、遺言書の有効性を確保し、相続人間の争いを防ぐための対策が求められます。

(論点)遺言認知をすることで起こりうること

(論点)遺言認知をすることで起こりうること

遺言認知とは、主に相続に関する場面で、非嫡出子(結婚していない関係で生まれた子)を、遺言を通じて父親が法律的に認知する行為です。遺言の形式で行われるため、父親が生存中には認知の効力は発生せず、父親が死亡した時点で遺言認知が成立します。この行為には相続においてさまざまな法的、感情的な問題が生じる可能性があります。以下では、遺言認知を行った場合に考えられる影響や問題点について説明します。


目次

1. 相続権の確立

2. 相続分の決定

3. 家族間のトラブル

4. 形式的な要件

5. 認知の争い

6. 認知の無効

7. 非嫡出子の感情的な影響

8. 税務上の影響

結論

(論点)遺言認知をすることで起こりうること

1. 相続権の確立


 遺言認知によって認知された非嫡出子は、父親の法定相続人となります。法的に認知されることで、非嫡出子も嫡出子と同様に相続権を持つことができ、父親の遺産を受け取る権利が生じます。遺言によって明確に認知が行われた場合、相続手続きにおいてこの認知は重要な役割を果たします。


2. 相続分の決定


 認知された非嫡出子の相続分は、基本的に他の子(嫡出子)と同じになります。ただし、遺言によって認知されるだけでなく、具体的な遺産分割の指示が遺言に含まれている場合もあります。たとえば、遺産の一部またはすべてを特定の相続人に譲る指示があれば、非嫡出子の取り分が変わる可能性があります。しかし、遺留分(最低限の相続権)は、他の相続人と同様に非嫡出子にも保障されます。


3. 家族間のトラブル


 遺言認知によって新たに認知された非嫡出子の存在が明らかになると、既存の家族関係に緊張が生じることがあります。特に、嫡出子や他の相続人が非嫡出子の存在を知らなかった場合、遺産分割に関して争いが生じることが考えられます。例えば、嫡出子たちは非嫡出子の相続分が自分たちの取り分を減らすと感じる可能性があり、その結果、法廷での争いに発展することがあります。


4. 形式的な要件


 遺言による認知は、遺言の形式要件に厳格に従う必要があります。日本では、遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの形式があり、それぞれ法的に有効であるためには一定の要件を満たさなければなりません。たとえば、自筆証書遺言の場合、全文を遺言者自身が手書きし、日付と署名が必要です。これらの形式要件を守らなかった場合、遺言認知が無効とされるリスクがあります。そのため、遺言による認知を検討する場合は、専門家の助言を受けることが重要です。


5. 認知の争い


 遺言によって認知された場合でも、他の相続人や親族がその認知の正当性を疑問視することがあります。例えば、遺言書の内容に不自然な点があったり、遺言が作成された当時の父親の精神状態に問題があったと主張される場合です。その結果、認知の有効性を巡って法廷で争われるケースも少なくありません。特に、高額な遺産が関与する場合、このような争いは長期化する傾向があります。


6. 認知の無効


 遺言による認知が有効であるためには、遺言が父親の自由意思に基づいて作成されたことが重要です。父親が認知する意思を明確に持っていたことが証明されない場合や、遺言が作成された際に父親が認知能力を欠いていたと判断される場合、その認知は無効となる可能性があります。また、遺言自体が無効とされた場合、遺言認知も無効となります。たとえば、遺言書の作成が法的要件を満たしていなかったり、偽造や強制が疑われる場合です。


7. 非嫡出子の感情的な影響


 遺言によって認知された非嫡出子にとって、父親が生前に認知を行わず、死後に遺言で認知されるという事実は感情的に複雑な問題を引き起こすことがあります。非嫡出子にとっては、父親が生前に自分を公に認めなかったという思いが残ることがあり、遺産分割を通じて解決する以上に、感情的な問題が残ることがあります。これにより、遺言認知を受けた子供と他の家族との間に感情的な距離が生まれる可能性もあります。


8. 税務上の影響


 遺言による認知が行われた場合、認知された子供は相続税の対象となる可能性があります。相続税の計算においては、法定相続分に基づいて課税されますが、非嫡出子として認知された子供も他の相続人と同様に課税される対象となります。相続税の免税額や税率は、その時点の法制度によって変動するため、認知後の相続手続きにおいては税務の専門家の助言を仰ぐことが推奨されます。


結論


 遺言認知を行った場合、相続に関する権利が法的に確立される一方で、家族間の争いや感情的な問題が発生する可能性が高くなります。また、遺言の形式的な要件や認知の有効性に対する法的な争いも発生するリスクがあります。そのため、遺言による認知を検討する際には、法的な助言を受けつつ、怒られることは承知の上で(ここ大事)、家族間のコミュニケーションも十分に行うことが重要です。



 何度か私もこのような状況に立ち会ったケースがあるのですが、大体修羅場になります。


(論点)法務局が行う地図の作成について

(論点)法務局が行う地図の作成について

法務局が行う「地図作成」について、不動産登記法第14条第1項に定められた地図を基に作成される地図は、不動産の特定や取引の安全性を確保するうえで重要な役割を果たしています。ここでは、地図作成の概要や法的根拠、そしてそれに伴う効果について詳しく説明します。



目次


1. 地図作成の概要と不動産登記法第14条

2. 地図作成の法的根拠と歴史的背景

3. 不動産登記法第14条第1項に基づく地図の内容

4. 地図作成の手続き

5. 地図作成の効果

6. 地図作成の今後の展望

まとめ

(論点)法務局が行う地図の作成について

1. 地図作成の概要と不動産登記法第14条


 不動産登記法第14条第1項では、法務局が不動産の土地について「地図」を備え付ける義務が定められています。この地図は、各土地の境界や位置を明確にするために作成され、土地の特定や境界争いの防止、さらには不動産取引の円滑化を目的としています。これにより、不動産の登記簿に記録される土地の情報は、地図と連動して正確性が確保されることになります。


 地図作成は、測量技術を駆使して正確な位置情報を示すための作業が行われ、法務局がその結果を公示します。作成された地図は、法務局で備え付けられ、誰でも閲覧できる状態にされるため、関係者が土地の情報を容易に把握できるようになっています。

(論点)法務局が行う地図の作成について

2. 地図作成の法的根拠と歴史的背景


 不動産登記法に基づく地図作成は、日本における不動産の取引や権利関係を明確にするために設けられた制度です。もともと、日本の不動産に関する制度は地籍調査や土地台帳に基づくものでしたが、地籍の不明確さや境界争いの増加に伴い、法務局が中心となって地図を作成し、土地の正確な位置を示す必要性が高まりました。

 特に、土地の境界が曖昧であったり、所有者同士での争いが発生した場合、この地図が重要な証拠となります。従来は、各土地の所有者が独自に境界を示していましたが、現在では法務局が管理する地図が公式なものとされ、これに基づいて境界の確定や土地の取引が行われるようになりました。



3. 不動産登記法第14条第1項に基づく地図の内容


 不動産登記法第14条第1項による地図は、土地の境界や面積、位置情報を明確にするための公的な地図です。この地図は、以下の内容を含んでいます。


①土地の境界線の明示: 地図には、各土地の境界が明確に描かれており、隣接する土地との境界がはっきりとわかります。これにより、境界に関する争いを未然に防ぐ効果があります。


➁土地の面積: 登記簿に記載される土地の面積と連動しており、正確な面積情報を確認することができます。


③位置情報の正確性: 地図は、測量技術を用いて作成されており、土地の位置を正確に特定することが可能です。これにより、土地の場所が誤って認識されることがなくなります。



4. 地図作成の手続き


 地図作成は、法務局の管轄下で行われます。土地所有者や利害関係者が自らの土地の位置や境界を確認するために、法務局に地図の作成や修正を依頼することが可能です。また、地籍調査の結果に基づき、自治体や公共機関からの依頼を受けて法務局が地図作成を行う場合もあります。

 地図作成の手続きには、通常、測量士や土地家屋調査士などの専門家が関与し、正確な測量が行われたうえで地図が作成されます。この測量結果に基づいて、土地の所有者や隣接地の所有者との合意が得られた場合、最終的に法務局に地図が備え付けられることになります。

(論点)法務局が行う地図の作成について

5. 地図作成の効果


 地図作成には、いくつかの重要な効果が伴います。


①土地の特定が容易になる

 地図作成により、土地の境界や位置が明確になるため、土地を特定することが非常に容易になります。不動産取引の際には、土地の正確な情報が求められるため、この地図を参照することで、誤解やトラブルを防ぐことができます。


➁境界争いの予防・解決

 地図に明示された境界線が公的なものとして認められるため、隣接地との境界争いが発生した場合でも、迅速に解決することが可能です。特に、境界不明の土地を取引する際には、この地図が重要な証拠として機能します。


③不動産の価値向上

 地図作成によって土地の情報が正確に示されることで、その土地の価値がより正確に評価されるようになります。不動産の取引において、境界が不明瞭な土地は取引価格が下がるリスクがありますが、地図があることでこうしたリスクを軽減できます。


④法的効力の強化

 法務局が作成した地図は、公的な効力を持つため、裁判所での証拠としても使用することが可能です。これにより、土地の境界や位置に関する法的な争いが生じた場合でも、地図に基づいて裁判を有利に進めることができます。



6. 地図作成の今後の展望


 地図作成の技術は、近年の測量技術やデジタル技術の進展により、より正確かつ迅速に行われるようになっています。

 法務局も、地図の電子化を進めており、オンラインでの閲覧や手続きが可能になることで、土地の取引や管理がさらにスムーズになることが期待されています。

 また、今後は地籍調査の拡充や地図データの精度向上に向けた取り組みが進められることで、より信頼性の高い不動産取引環境が整備されるでしょう。


(論点)法務局が行う地図の作成について

まとめ


 法務局が行う地図作成は、不動産登記法第14条第1項に基づき、土地の境界や位置を明確にするための重要な役割を担っています。

 この地図により、土地の特定が容易になり、境界争いの防止や不動産取引の安全性が高まる効果があります。地図作成の手続きやその効果を十分に理解し、不動産取引や管理に役立てることが、重要な役割を果たします。

 所有者の方の立会や、隣接する土地の所有者の確認のご協力をお願いいたします。

(論点)弁護士法第72条違反行為(非弁行為)について

(論点)弁護士法第72条違反行為(非弁行為)について

日本における交通事故や離婚などの示談交渉に関しては、弁護士がその役割を担うことが原則です。特に、訴額が140万円を超える場合は弁護士が必要ですが、訴額が140万円以下の場合、認定司法書士も交渉に関わることが可能です。しかし、行政書士は示談交渉を行うことが法的に許可されていません。行政書士の職務範囲は書類作成や契約書の作成支援などに限られており、法的アドバイスや交渉代行はできないことが明確に規定されています。



目次


1. 示談交渉における弁護士と司法書士の役割

2. 行政書士の職務範囲と制限

3. 高知県宿毛市での行政書士による違法な示談交渉

4. 適切な専門家を選ぶことの重要性

5. 結論

(論点)弁護士法第72条違反行為(非弁行為)について

1. 示談交渉における弁護士と司法書士の役割


示談交渉において、弁護士は全ての訴額の事件を担当することができ、特に訴額が140万円を超える場合は必須となります。弁護士は訴訟、交渉、和解の手続きを全面的に取り仕切る法的権限を有しており、複雑な法的トラブルに対応できます。

 また、認定司法書士は、訴額が140万円以下の場合に限り、示談交渉に関与できる法律専門家です。司法書士は、日常的に不動産登記や会社設立の手続きに関与していますが、特別研修を経て認定考査に合格した場合、140万円以下の民事事件においては、示談交渉の代理も許されています。

※司法書士全員が認定司法書士であるわけではありません。

ですので、訴額がはっきりしない場合は、弁護士に相談するのがいいと思います。


2. 行政書士の職務範囲と制限


 一方、行政書士の役割は、書類作成や行政手続きのサポートに限られています。行政書士は法的助言を行ったり、示談交渉の代理を務めることは法的に認められていません。

 主な業務は、各種許認可申請、契約書の作成、遺言書の作成補助などであり、交渉や法的代理人としての活動はできないため、訴訟や示談交渉が必要な場合は弁護士または司法書士に依頼する必要があります。


3. 高知県宿毛市での行政書士による違法な示談交渉


 令和6年9月9日のニュースで、高知県宿毛市で発生した事件は、行政書士が示談交渉に関与した事例として注目を集めました。この事件では、行政書士が職務範囲を超えて示談交渉を行ったことが問題視され、法的な責任を問われることになりました。行政書士がこうした行為に関与することは、法律に違反しており、顧客にとってもリスクが伴います。

 この事件は、行政書士が示談交渉に関与することの危険性を浮き彫りにしました。行政書士に依頼する際には、彼らの職務が法的書類の作成に限られていることを理解する必要があります。行政書士が示談交渉に関与することは法律に反するため、依頼者としても注意が必要です。

(論点)弁護士法第72条違反行為(非弁行為)について

4. 適切な専門家を選ぶことの重要性


 今回の事件は、法的トラブルに直面した際に、適切な専門家を選ぶことの重要性を強調しています。示談交渉や訴訟を必要とする問題に対しては、弁護士または認定司法書士を選択するべきであり、行政書士に依頼する場合は、書類作成などの範囲内での業務に限るべきです。


 法的な代理や交渉は、一般市民にとって複雑な手続きとなるため、法的な専門知識と権限を持つ弁護士や認定司法書士に依頼することで、問題の適切な解決を図ることができます。行政書士に依頼する場合も、彼らの業務範囲を明確に理解し、誤った依頼をしないように注意する必要があります。

(論点)弁護士法第72条違反行為(非弁行為)について

5. 結論


 示談交渉を行う場合、訴額に応じて弁護士または認定司法書士に依頼することが最善です。行政書士は、示談交渉や訴訟代理を行うことができないため、誤った依頼をすると法的なリスクを抱える可能性があります。

 特に今回の高知県宿毛市での事件を通じて、行政書士が職務範囲を超えて示談交渉を行うことがいかに危険であるかが再認識されました。

 依頼者としては、専門家の職務範囲を理解し、適切な法律専門家に依頼することが重要です。

(論点)相続放棄できる熟慮期間中でも相続放棄ができなくなるケース

(論点)相続放棄できる熟慮期間中でも相続放棄ができなくなるケース

相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった人)の財産や負債を一切相続しないことを選択する手続きです。通常、相続放棄は自分が相続人であることを知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。この3か月の期間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続を受けるかどうか慎重に判断するために設けられた期間です。しかし、熟慮期間内であっても、相続放棄ができないケースがいくつか存在します。

以下に4つの具体的な事例を挙げ、その理由を解説します。


目次


1. 相続財産の一部を処分してしまった場合

2. 相続財産を消費してしまった場合

3. 相続税の申告をしてしまった場合

4. 相続財産を管理した場合

まとめ

(論点)相続放棄できる熟慮期間中でも相続放棄ができなくなるケース

1. 相続財産の一部を処分してしまった場合


相続放棄ができない代表的なケースの一つは、相続人が被相続人の財産を処分してしまった場合です。たとえば、亡くなった親が所有していた自動車を相続人が売却してしまったとします。この場合、売却行為自体が「相続を承認した」とみなされ、相続放棄の手続きを行うことができなくなります。民法において、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、それは「法定単純承認」とされ、相続を放棄する権利を失うことになります。



【具体例】

被相続人が残した不動産を売却してしまい、その後に多額の負債があることが判明した場合、負債を避けるために相続放棄をしようとしても、不動産売却という処分行為が既に行われているため、相続放棄が認められないことになります。



2. 相続財産を消費してしまった場合


 相続財産を使ってしまった場合も、相続放棄ができません。たとえば、亡くなった人の預金口座からお金を引き出して生活費に使ってしまうなどの行為が該当します。このような行為は相続財産を「取得」したとみなされ、やはり相続を承認したものと見なされるため、相続放棄ができなくなります。



【具体例】

 親の預金口座から引き出したお金を家の修繕や生活費に使った後、親に多額の借金があることがわかった場合、相続放棄をしようとしても、既に預金を消費しているため、相続放棄は不可能です。

(論点)相続放棄できる熟慮期間中でも相続放棄ができなくなるケース

3. 相続税の申告をしてしまった場合


相続税の申告をすることも、相続放棄を妨げる要因となります。相続税は、相続財産を取得した者が納税するものであり、申告を行うこと自体が相続を承認した証拠とされます。相続税の申告を済ませた後に、相続放棄をしようとしても、その申告行為が相続の意思を示したものとみなされ、放棄は認められなくなります。



【具体例】

 被相続人が多額の財産を持っていたときに、その財産について相続税の申告を行った後に、被相続人が抱えていた負債の存在が発覚した場合、相続放棄を試みても相続税の申告という事実が相続の意思を示したものとされ、放棄は認められません。そもそも、相続税の申告をするということは、自身の相続があったことを知っているわけですし、相続発生から10ケ月以内に申告をすることから、熟慮期間は超過してしまっているケースが多いと考えます。



4. 相続財産を管理した場合


 相続財産を管理した場合も、相続放棄ができなくなるケースがあります。特に、亡くなった人の財産を整理し、負債の清算や財産の分配などの行為を行うことは、相続を承認したとみなされる可能性があります。たとえば、遺産分割協議に参加して他の相続人と話し合いを行うなどの行為も、相続を認めたものとされる場合があります。


【具体例】

 兄弟で遺産分割協議を行い、不動産の分配について話し合った後で、被相続人が多額の負債を抱えていたことが判明し、相続放棄を希望しても、協議に参加していた時点で相続を承認したとみなされ、放棄は認められません。遺産分割協議に参加して協議内容に合意するということは、たとえ遺産を全くもらわなかったとしても、自身の持つ相続権を処分したとみなされますので、相続放棄はできなくなります。

(論点)相続放棄できる熟慮期間中でも相続放棄ができなくなるケース

まとめ


 相続放棄は、相続財産に関する権利と義務をすべて放棄する手続きですが、熟慮期間内であっても、相続財産を処分したり、消費したり、管理したりすると、相続を承認したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。

 相続人は、被相続人が亡くなった後に何らかの財産処分や管理を行う前に、慎重に相続放棄の手続きを検討することが重要です。

 また、相続に関して不明な点がある場合や、負債の有無が不確かな場合は、早めに専門家に相談することが推奨されます。

 相続の手続きは複雑であり、誤った判断や行動が後々大きな問題を引き起こす可能性があるため、十分な注意が必要です。

(論点)相続できないものとは

(論点)相続できないものとは

相続とは、被相続人(亡くなった人)の財産や権利義務を、相続人が引き継ぐことです。一般的には、土地や建物、現金、株式などの財産を想像することが多いですが、実際には相続できるものとできないものが存在します。相続できないものについて理解しておくことは、相続手続きを円滑に進めるために重要です。

本稿では、被相続人の財産の中で相続できないものについて説明します。


目次


1. 一身専属権

2. 生命保険金

3. 年金

4. 一部の損害賠償請求権

まとめ

(論点)相続できないものとは

1. 一身専属権


まず、相続できないものとして代表的なのが「一身専属権」です。これは被相続人の個人的な権利や義務であり、その人自身に密接に関連しているため、他人が引き継ぐことができないものです。一身専属権には次のようなものがあります。

※プロミュージシャンの子供が、コンサートやってもチケット買った人たちの債務履行とはなりませんよね。 



(1) 身分関係に基づく権利義務


 被相続人の身分に直接関連する権利や義務は、相続することができません。たとえば、親権、後見人としての権利義務、婚姻関係に基づく権利などは、一身に帰属するものであり、被相続人が亡くなった時点で消滅します。具体的には、次のようなものが該当します。


親権: 親が子供に対して有する親権は、親の死亡に伴い消滅します。親権は新たな親権者や後見人が家庭裁判所によって選任されるため、相続の対象にはなりません。

後見人としての義務: 法定後見や任意後見の後見人は、被後見人に対して責任を負いますが、後見人が死亡した場合、その義務は相続されず、新たな後見人が選任されます。

婚姻関係に基づく権利義務: 婚姻に基づく扶養義務や配偶者としての権利義務も相続の対象にはならず、被相続人の死亡により婚姻関係は終了します。


(2) 委任契約


 被相続人が生前に行っていた業務委任契約や、弁護士や税理士などとの委任契約も相続されません。これらは被相続人自身の信頼に基づく契約であり、被相続人が死亡すると契約は終了します。もっとも、委任契約のうち未払いの報酬などについては相続の対象となる場合があります。


(3) 労務に基づく権利


 被相続人が労働者として勤務していた場合、その労働契約も死亡によって終了します。労務の提供は個人に依存するものであり、相続の対象にはなりません。たとえば、給与や労働時間に関する権利は被相続人が持つものであり、死亡時点で契約は終了します。ただし、未払いの給与や退職金は相続財産として扱われることがあります。


(論点)相続できないものとは

2. 生命保険金


 生命保険金は被相続人の死亡に伴い支払われるものですが、通常、保険金受取人が指定されている場合、生命保険金は受取人固有の権利として扱われます。そのため、生命保険金は相続財産には含まれません。具体的には次のような場合があります。


保険契約: 保険契約者(被相続人)が死亡した際、保険金受取人として指定された人が生命保険金を受け取ります。この場合、生命保険金は受取人の財産となり、相続財産には含まれません。


税務上の取扱い: 税務上は、生命保険金は相続税の課税対象となることがありますが、それでも相続財産とは区別され、受取人に直接支払われます。


ただし、生命保険金が過剰な額である場合や特定の相続人に対して偏った支給が行われた場合、他の相続人が異議を唱え、裁判所で「特別受益」として考慮されることもあります。この場合、相続財産の一部として評価される可能性があります。


3. 年金


 年金も相続の対象外となります。年金は被相続人の生存に基づいて支給されるものであり、死亡した時点でその権利は消滅します。公的年金や企業年金など、被相続人が生前に受給していた年金は、基本的に死亡とともに支給が停止されます。


 未支給年金: 被相続人が死亡する前に年金が支払われていなかった場合、その分は未支給年金として遺族が請求できる場合があります。この場合、相続財産とは別に遺族が直接受け取る形となり、相続の対象には含まれません。


4. 一部の損害賠償請求権


 被相続人が損害賠償請求をしている場合、その請求権は相続の対象になることがありますが、例外的に相続できないものもあります。たとえば、慰謝料請求権がこれに該当します。被相続人が生前に被った精神的苦痛に対する慰謝料は、基本的にその人個人に帰属する権利であり、相続の対象とはなりません。ただし、すでに裁判が進行中で、慰謝料が確定している場合は相続されることがあります。


 一方で、財産的損害に対する賠償請求権は相続されることが一般的です。たとえば、交通事故による財産的損害や、契約違反による損害賠償請求は相続財産として扱われます。



5. 公的な資格や地位


 被相続人が有していた公的な資格や地位も相続の対象外です。たとえば、弁護士、医師、公認会計士などの資格は個人の能力や信頼に基づくものであり、これを相続することはできません。また、被相続人が公職に就いていた場合、その地位も死亡に伴い消滅します。

(論点)相続できないものとは

まとめ


 相続できないものには、被相続人個人に強く結びついた一身専属権や、生命保険金、年金、そして公的な資格や地位などがあります。これらは個人的な権利や義務であり、他人に引き継ぐことができないため、相続財産として扱われません。また、一部の損害賠償請求権や慰謝料なども相続の対象外となる場合があります。


 相続手続きを行う際には、どの財産が相続可能でどの権利が相続できないのかを理解することが重要です。

(論点)生命保険を活用した相続対策の注意点

(論点)生命保険を活用した相続対策の注意点

生命保険を活用した相続対策は、相続財産の分割を避ける手段として一般的に行われています。生命保険金は、契約者が指定した受取人に直接支払われるため、原則として相続財産には含まれず、遺産分割協議の対象にはならないとされています。

しかし、特定の受取人に対して過度に多額の保険金が支払われた場合、その保険金が他の相続人に不公平な利益をもたらすと考えられることがあります。このような場合、生命保険金が「特別受益」とみなされることが裁判で認められることがあるため、注意が必要です。


目次


1. 生命保険金の扱い

2. 特別受益とは?

3. 生命保険金が特別受益とみなされたケース

4. 判例の影響と今後の留意点

5. 結論

(論点)生命保険を活用した相続対策の注意点

1. 生命保険金の扱い


 まず、生命保険金は通常、相続税の計算において「みなし相続財産」として扱われますが、民法上の遺産分割の対象には含まれません。すなわち、生命保険金は被相続人の死亡によって受取人が受け取るものであり、直接の相続財産ではないため、遺産分割協議で争われることは通常ありません。


 これにより、受取人は指定された金額を自由に使うことができ、他の相続人の意向に左右されずに保険金を受け取ることが可能です。また、生命保険金は相続税の課税対象になるものの、一定の非課税枠(法定相続人1人につき500万円)が設けられており、節税対策としても利用されることが多いです。



2. 特別受益とは?


 特別受益とは、特定の相続人が生前に被相続人から特別な利益を受けていた場合、その利益を相続分に反映させて他の相続人との公平を図る制度です。民法第903条では、結婚資金や住宅資金の贈与、あるいは学資金などが特別受益に該当することが明示されています。


 この制度は、特定の相続人が被相続人から生前に過剰な援助を受けていた場合、その分を相続財産の中で調整し、他の相続人との不公平を避けるためのものです。相続人の中には、生前贈与を受けた者とそうでない者が存在するため、特定の相続人が不当に優遇されることを防ぐ仕組みとなっています。

(論点)生命保険を活用した相続対策の注意点

3. 生命保険金が特別受益とみなされたケース


 生命保険金が特別受益とみなされることは、基本的には少ないですが、近年の判例では、特定の条件下で特別受益と認定されるケースが増えてきました。ここで重要なのは、保険金の金額や受取人の立場、そして他の相続人との相対的な関係です。

例えば、【東京高裁平成27年3月18日判決】では、生命保険金が特別受益に該当すると判断されました。この事例では、長男が生命保険の受取人として非常に高額の保険金を受け取りましたが、他の相続人(兄弟姉妹)にはほとんど遺産が残されていなかったため、他の相続人が不公平だと主張しました。裁判所は、長男が受け取った生命保険金が遺産の大部分を占めていたことや、長男が受けた利益が他の相続人に対して不相応に大きいことを考慮し、この生命保険金を特別受益と認定しました。


 この判決のポイントは、生命保険金が通常は相続財産とはみなされないにもかかわらず、他の相続人との公平性を欠く状況下では、特別受益として考慮される可能性があるということです。



4. 判例の影響と今後の留意点


 このような判例が示すように、生命保険金が特別受益とみなされるかどうかはケースバイケースであり、相続人間の関係や保険金の金額が大きな影響を与えます。受取人が被相続人から生前に多額の贈与を受けている場合や、生命保険金の金額が他の相続財産に比べて不釣り合いに大きい場合には、特別受益と判断される可能性が高くなります。


 そのため、生命保険を活用した相続対策を行う際には、以下の点に注意する必要があります。


 受取人の公平性の確保: 受取人が特定の相続人に偏っている場合、他の相続人が不公平を主張するリスクが高まります。受取人を複数の相続人に分ける、あるいは事前に遺言や遺産分割協議で受取額の公平性を確認しておくことが重要です。


 生命保険金の額の調整: 保険金が他の遺産に比べてあまりにも大きな額になると、特別受益として認定されるリスクが高まります。保険金の額を相続財産全体のバランスに合わせて調整することが推奨されます。


 相続人間のコミュニケーション: 相続に関するトラブルを防ぐためには、相続人間で事前に十分なコミュニケーションを図り、生命保険の受取に関しても合意を形成しておくことが重要です。


(論点)生命保険を活用した相続対策の注意点

5. 結論


 生命保険金は原則として相続財産に含まれず、遺産分割の対象にはならないものの、特定の相続人が過度に利益を得たと判断される場合には、裁判所によって特別受益とみなされることがあります。特に、保険金の額が遺産の大部分を占めるようなケースや、他の相続人とのバランスが著しく欠けている場合には、生命保険金も特別受益の対象となり得ます。


 相続対策として生命保険を活用する際には、このような判例を踏まえて、相続人間の公平性を十分に考慮し、トラブルを未然に防ぐための準備を行うことが不可欠です。専門家への相談をされることをお勧めいたします。

(論点)おひとりさまの身元保証サービスについて

(論点)おひとりさまの身元保証サービスについて

おひとり様の身元保証サービスは、家族や親族がいない、または頼れる人がいない高齢者にとって重要なサポートを提供するものです。このサービスには、主に生活支援、医療・介護時のサポート、そして死後の手続きなどが含まれますが、その中でも契約に関連する部分は特に重要です。解説したいと思います。

目次

1. 身元保証契約の重要性

2. 生活支援契約とその内容

3. 医療・介護サポートにおける契約

4. 死後事務委任契約の役割

5. 契約内容のカスタマイズと調整

6. 契約書の内容と費用のポイント

7. 専門家の関与と法的サポート

8. 契約前の確認事項と適切な選択

まとめ

(論点)おひとりさまの身元保証サービスについて

1. 身元保証契約の重要性


おひとり様の身元保証サービスの中心となる「身元保証契約」は、医療機関や介護施設における保証人としての役割をサービス提供者が担うことを約束するものです。契約の範囲や条件が明確に定められ、緊急時にも迅速に対応できることが求められます。



2. 生活支援契約とその内容


 「生活支援契約」では、日常生活におけるサポートを受けるための条件や範囲が規定されています。買い物の代行や通院の付き添いなど、利用者の自立した生活を支えるための契約内容が含まれます。



3. 医療・介護サポートにおける契約


 「医療・介護契約」は、利用者が必要な医療や介護を受ける際に、サービス提供者が保証人や代理人として対応することを定めた契約です。緊急時の入院や治療において、家族の代わりに同意書にサインするなど、利用者の意思を尊重しつつ適切なサポートを提供します。



4. 死後事務委任契約の役割


 「死後事務委任契約」は、利用者が亡くなった後の手続きを代行するための契約です。葬儀の手配や遺品整理、行政手続きなどを含み、無縁仏にならないように最期を尊厳を持って迎えるためのサポートが行われます。

(論点)おひとりさまの身元保証サービスについて

5. 契約内容のカスタマイズと調整


これらの契約は、利用者の希望や状況に応じたカスタマイズが可能です。利用者とサービス提供者の間で綿密な打ち合わせが行われ、必要に応じて契約内容が調整されます。特定の医療機関や葬儀の形式など、利用者の希望に沿った対応が可能です。



6. 契約書の内容と費用のポイント


 契約書には、利用者の権利と義務、サービス提供者の責任が明記されています。契約期間や解約条件、費用の支払い方法なども重要なポイントとなり、特に費用に関しては一括払いと分割払いの選択肢が提供されることが一般的です。しかし、実費である程度必要な費用に関しましては、「預託金」として、前もって支払いが必要となります。



7. 専門家の関与と法的サポート


 これらの契約には、司法書士や弁護士などの専門家が関与する場合があります。特に遺言書の作成や死後事務委任契約においては、専門家のアドバイスを受けることが推奨され、利用者の法的保護を強化します。しかし、契約関連については、争い等のケースが想定される場合ですと、弁護士にお願いしたほうがよろしいかと思います。



8. 契約前の確認事項と適切な選択


 契約を結ぶ前に、サービスの詳細や料金体系、解約条件を十分に確認することが重要です。また、必要に応じて専門家の意見を求め、自分の希望や状況に最適な選択をすることが求められます。


 どこまで、関与させるのかによっても大きく変わってきますので、各契約と目的がきっちりと合致しているか判断することが一番重要だと考えます。

(論点)おひとりさまの身元保証サービスについて

まとめ


 内閣府からのガイドライン(案)が出ました。完全にはまだまだといった感じなのですが、今までに問題になっていた点(遺産についてのサポート団体への遺言書による遺贈)については、明示することになりそうです。

 生きている時のサービスは安くても、遺産を遺贈することを条件とされると、まずい点もあります。

 なぜなら、医療・介護サポートで「もっと〇〇してほしい」という要望があっても、それを受け入れると将来の実入りが減少するということになってしまう場合、正常な判断ができるのか怪しいですからね。こういったトラブルを防止するという観点からも、身元保証サポート選びは、慎重にしたいものですね。


 自分らしく最後まで生きていくサポートを提供してくれる団体にお願いするようにしましょう。

 アイリスでもサービス提供団体の活動内容を拝見させていただいて、お勧めできる団体もございますので、是非ご連絡ください。勿論、ご紹介は致しますが、紹介の費用は掛かりませんし、サポートを受けるかどうかは、ご自身の判断でお願いしております。

(論点)再婚経験があり、前婚の際に子供がいて離婚後会ってない場合

(論点)再婚経験があり、前婚の際に子供がいて離婚後会ってない場合

再婚を経験した方が、前婚の元妻との間に子供がいる場合、特にその子供と長期間会っていない場合、遺産分割協議において残された家族に大きな負担がかかることがあります。

こうした状況を避けるためには、遺言を活用した事前の対策が非常に重要です。


目次


1.遺産分割協議における負担

2.遺言を使った対策方法

3.結論

(論点)再婚経験があり、前婚の際に子供がいて離婚後会ってない場合

1.遺産分割協議における負担


再婚後の家族にとって、遺産分割協議は非常にデリケートな問題です。前婚の子供が相続人として権利を持つ場合、以下のような負担が生じることがあります。


①感情的なストレス


 長期間会っていない前婚の子供が突然現れ、相続権を主張することは、残された家族にとって大きな感情的ストレスとなります。特に、再婚相手やその子供たちにとっては、予想外の事態であり、家庭内の人間関係にも影響を及ぼす可能性があります。


➁協議の複雑化


 前婚の子供が相続に関与することで、遺産分割協議が複雑化します。特に、相続人同士の関係が希薄である場合、協議が円滑に進まないことが多く、結果として時間や費用がかさむことがあります。また、遺産分割がスムーズに進まないと、法定相続分に基づく配分を余儀なくされ、全員が納得する結果が得られない場合もあります。


③財産管理の混乱


 前婚の子供が遺産分割に関与することで、財産の管理が複雑になることがあります。たとえば、不動産が遺産に含まれる場合、共有名義となることで管理や処分が困難になる可能性があります。また、遺産分割が長引くと、相続税の申告期限に間に合わないリスクも生じます。


(論点)再婚経験があり、前婚の際に子供がいて離婚後会ってない場合

2.遺言を使った対策方法


こうした問題を避けるためには、遺言を活用した事前の対策が有効です。以下は、その具体的な方法です。


①遺言書の作成


 遺言書を作成することで、相続人間での争いを未然に防ぐことができます。特に、再婚相手やその子供たちに対する配慮を明確に示すことで、遺産分割協議がスムーズに進む可能性が高まります。遺言書には、前婚の子供に対する配分を明記することで、後々のトラブルを防ぐことができます。


➁遺留分に配慮した遺言


 前婚の子供が遺留分を主張する可能性がある場合、遺留分を考慮した遺言を作成することが重要です。遺留分を無視した遺言は、後で遺留分減殺請求が行われ、再婚後の家族がさらに困難な状況に陥る可能性があります。そのため、遺言を作成する際には、法定相続分や遺留分を考慮し、全員が納得できる内容とすることが望ましいです。


③専門家のアドバイスを受ける


 遺言書を作成する際には、司法書士や弁護士などの専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。専門家の助言を受けることで、法的に有効な遺言書を作成できるだけでなく、相続人全員にとって公平で納得のいく内容にすることができます。また、遺言執行者を指定することで、遺産分割がスムーズに進行するようにすることも重要です。

(論点)再婚経験があり、前婚の際に子供がいて離婚後会ってない場合

3.結論


 再婚後の家族にとって、前婚の子供との関係は遺産分割協議において大きな負担となることがあります。しかし、遺言を適切に活用することで、この負担を軽減し、残された家族が円滑に遺産を相続できるようにすることが可能です。

 遺言の作成は、単なる形式的な手続きではなく、残された家族の未来を守るための重要な手段であることを認識し、早めに対策を講じることが求められます。

(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反の問題が生じる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。

この論点について、以下に詳しく説明します。


目次


1. 後見人と身元引受人の役割

2. 同一人物が両方の役割を担う場合の問題点

3. 利益相反の具体例

4. 法的見解と対策

5. 結論

(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

1. 後見人と身元引受人の役割


まず、後見人と身元引受人の役割を理解することが重要です。

後見人は、被後見人の財産管理や生活上の意思決定を支援する法的な役割を担います。被後見人が判断能力を欠く場合に、後見人がその権限を行使して、被後見人の利益を守ることが求められます。

一方、身元引受人は、施設入所時や医療機関での手続きにおいて、被後見人の身元を保証する役割を担い、緊急時の連絡先や、場合によっては医療・介護の意思決定に関与することがあります。


(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

2. 同一人物が両方の役割を担う場合の問題点


後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反が生じるリスクがあります。後見人は被後見人の利益を最優先に考えるべきですが、身元引受人としての役割が重なると、被後見人の利益を損なう可能性が出てくることがあります。


 例えば、後見人が被後見人の財産を管理する立場にある一方で、身元引受人として施設入所時の費用負担や契約の締結に関与する場合、後見人が身元引受人として自分自身の責任を軽減するために、被後見人に不利な決定をする可能性があります。このような状況では、後見人の義務である被後見人の最善の利益を守るという責務が果たされない危険性があります。


3. 利益相反の具体例


 利益相反の具体例として、以下のようなケースが考えられます。


 施設入所の契約締結: 身元引受人として施設入所の契約を締結する際、後見人が被後見人の財産から費用を支払うことを決定するが、実際には施設の費用が高額で、被後見人の財産が減少する結果になる場合があります。後見人としては、被後見人の利益を最優先に考え、費用対効果を十分に検討すべきですが、身元引受人としての立場があると、契約を急ぐあまり、被後見人の利益を損なう決定を下す可能性があります。


 医療・介護の意思決定: 医療や介護に関する重要な意思決定が必要な場合、身元引受人としての責任と後見人としての財産管理の責任が衝突することがあります。例えば、身元引受人として長期入院を選択することが被後見人の財産に大きな影響を与える場合、後見人としては費用負担を軽減するために別の選択肢を探すべきかもしれません。しかし、身元引受人としての立場が強調されると、後見人としての判断が歪められるリスクがあります。

(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

4. 法的見解と対策


日本の法制度では、後見人と身元引受人が同一人物であること自体は禁止されていません。しかし、利益相反のリスクが高い場合には、第三者機関や家庭裁判所の関与が求められることがあります。また、後見監督人(監督者)を設置することで、利益相反が発生しないように監視する仕組みを導入することが有効です。


 さらに、後見人と身元引受人が同一人物である場合には、定期的に状況を見直し、必要に応じて役割を分離するか、監督機関に報告することで利益相反を回避する努力が必要です。家庭裁判所は、被後見人の利益を保護するために後見人の行動を監視し、必要に応じて指導や変更を行う権限を持っています。

(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

5. 結論


 後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反のリスクが存在するため、被後見人の利益を最優先に考えるべきです。

 法的には同一人物が両方の役割を担うことは可能ですが、利益相反が発生しないようにするための対策が必要です。

 後見監督人の設置や家庭裁判所の関与、定期的な見直しなどを通じて、被後見人の利益が適切に保護されるような仕組みを整えることが重要です。

(論点)相続発生前の遺留分放棄について

(論点)相続発生前の遺留分放棄について

遺産相続において、前妻との間に生まれた子供がいる場合、特にその子供に対して養育費や大学の費用、さらには結婚費用までを負担した後、遺留分放棄の念書を書いてもらった場合、遺産をその子供に相続させなくても良いのかという疑問が生じることがあります。この問題に対する正確な理解を深めるためには、遺留分放棄に関する法的な手続きについて理解しておく必要があります。


目次


1. 遺留分とは

2. 遺留分放棄の念書の効力

3. 養育費や結婚費用の負担と遺留分放棄

4. 遺留分放棄が認められなかった場合の影響

5. 結論

(論点)相続発生前の遺留分放棄について

1. 遺留分とは


まず、遺留分とは、法律上、相続人が最低限保障されている相続財産の割合を指します。日本の民法では、相続人の権利を保護するために、被相続人(遺産を残す人)が遺言によって全財産を特定の人に譲る場合でも、他の相続人が最低限受け取るべき財産の割合が保証されています。遺留分は、法定相続人が不当に少ない遺産しか受け取れない場合に、その権利を主張することで、受け取ることができる財産の額を保護するための制度です。


法定相続人の第1順位、第2順位である子、直系尊属については、主張することができますが、第3順位の兄弟姉妹には、遺留分を主張する権利は民法上認められていません。

(論点)相続発生前の遺留分放棄について

2. 遺留分放棄の念書の効力


 次に、遺留分放棄の念書について考えてみましょう。遺留分を放棄すること自体は可能です。しかし、その放棄が有効であるためには、法律に定められた特定の手続きを踏む必要があります。つまり、各個人間で作成した私文書で、遺留分放棄の効力は認められません


相続発生前に遺留分を放棄する場合、家庭裁判所の許可が必要です(民法第1043条)。この手続きを経ないで行われた遺留分放棄の合意や念書は、法的に無効とされる可能性が高いです。家庭裁判所が許可を与えるためには、放棄が相続人の自由意思に基づいて行われており、不当に不利益を被るものではないことが確認される必要があります。


3. 養育費や結婚費用の負担と遺留分放棄


 質問の中で言及されている「養育費、大学の費用、結婚費用を負担したから、遺留分を放棄させた」という状況についても、重要な点があります。養育費や教育費、結婚費用の負担は、親としての義務や愛情表現として行われるものであり、それを理由に相続権の放棄を求めることは慎重に考える必要があります。


 さらに、家庭裁判所が遺留分放棄の許可を与える際には、その放棄が公平であるか、被相続人から相続人への経済的な配慮が適切に行われたかが審査されます。養育費や結婚費用の負担だけでは、家庭裁判所が遺留分放棄を認めるかどうかは別問題であり、その許可が得られなければ、遺留分放棄の念書が法的に有効とならない可能性があります。


4. 遺留分放棄が認められなかった場合の影響


 家庭裁判所の許可がない遺留分放棄は無効となるため、その場合、相続が発生した際に前妻の子供が遺留分を請求する権利を行使することができます。もしその子供が遺留分請求権を行使した場合、遺産の一部を請求される可能性があります。このような状況を避けるためには、適切な法的手続きを経ることが不可欠です。

(論点)相続発生前の遺留分放棄について

5. 結論


 結論として、遺産相続の前に遺留分放棄の念書を書いてもらったとしても、それだけでは前妻の子供に遺産を相続させなくても良いという保証にはなりません。遺留分放棄を法的に有効にするためには、家庭裁判所の許可を得る必要があり、この手続きを経ていない遺留分放棄は無効とされる可能性があります。したがって、前妻の子供に遺産を相続させたくない場合には、必ず専門家の助言を受け、適切な手続きを踏むことが重要です。


 ちなみに、こういった場合のアドバイスとして、「遺言書」の作成をお勧めしております。なぜなら、遺言書に遺産の帰属先を記載することで、相続発生時に遺言書の効力が生じて、遺産はしてした方に帰属するからです。勿論、遺留分についての問題は残るものの、遺留分権利者がその権利を主張しなければ、遺留分の問題は発生しません。当然ですが、遺留分侵害額請求権を主張した場合には、その算出額を支払うことになるかもしれませんが、遺産の帰属は、指定者に移っています。

(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

共有不動産の持分を解消する際、持分を贈与するのか、持分放棄をするのかという選択肢があります。この2つの方法には、それぞれ異なる法律上および税務上の影響があります。ここでは、それらの違いと注意すべき点を解説します。


目次


1. 持分贈与の法的側面

2. 持分贈与の税務面

3. 持分放棄の法的側面

4. 持分放棄の税務面

5. どちらの選択肢が有利か

6. 結論

(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

1. 持分贈与の法的側面


持分贈与とは、共有不動産の持分を他の共有者に無償で譲渡することです。贈与は、贈与者の意思表示と受贈者(もらう側)の意思表示が必要です。贈与自体は意思表示時点で成立はしますが、証拠として贈与契約書を作成し、登記手続きを行うことで、持分の移転が正式に完了します。

この場合、受贈者は贈与を受けた持分を完全に自分のものとする権利を持ちます。法的には、贈与が完了した時点で、贈与者の持分は受贈者に移転し、贈与者はその不動産に関して一切の権利を失います。


(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

2. 持分贈与の税務面


贈与を行った場合、受贈者には贈与税が課されます。贈与税の額は、贈与された持分の評価額に基づき算出され、税率は累進課税方式で適用されます。また、不動産の場合、固定資産税評価額を基準に評価額が決まりますが、実際の市場価値との差異があるため、税務署と相談しながら進めることが重要です。さらに、贈与税の基礎控除額(年間110万円)を超える場合、課税される点にも注意が必要です。


 また、贈与後に不動産を売却するときの「譲渡所得税」の「取得費」について、受贈者は、贈与物件に係る贈与者の取得日・取得費を引き継ぐことになります。


3. 持分放棄の法的側面


 一方、持分放棄は、共有者が自らの持分を無償で放棄する単独行為です。持分を放棄することで、その持分は他の共有者全員のものとなり、持分比率に応じて再配分されます。法的には、持分放棄を行うことで、放棄した共有者はその不動産に関する権利を失い、他の共有者は持分が増える形となります。持分放棄は贈与とは異なり、特定の共有者に対して持分を移転するのではなく、共有者全体に対して持分が分配されることが特徴です。ただし、共有者が2名であり、そのうちの1名が持分放棄をした場合、上記の持分を贈与したのと同じ効果が得られます。複数名居た場合は、残された共有者の持ち分比率に応じて持分が移転します。


4. 持分放棄の税務面


 持分放棄の場合、放棄された持分が他の共有者に移転する際、移転を受ける側に贈与税が課される可能性があります。特に、持分放棄が特定の共有者に利益をもたらす場合、その共有者に対して贈与とみなされるケースがあり、贈与税が発生することがあります。さらに、持分放棄による共有者間の持分調整が、市場価値に対して無償で行われたと判断される場合、税務署が贈与と認定するリスクがあるため注意が必要です。まずは課税される可能性が高いので、確定申告時に申告しておくことをお勧めします。よくわからない場合には、税理士にご相談ください。


 それと、持分放棄後に当該不動産を売却する場合の譲渡所得税についての「取得費」について、贈与課税時は、概算取得費(売却金額の5%等)が取得費となり取得費の引き継ぎがないので、当局側の課税の実務では、贈与課税時の時価を取得費とすることから、二重課税はないということになります。


5. どちらの選択肢が有利か


 持分贈与と持分放棄のどちらが有利かは、具体的な状況によります。贈与の場合、受贈者に贈与税が課されますが、特定の相手に持分を渡すことができるため、相続や家族間の財産分与を考慮した場合に有効です。一方、持分放棄は共有者全体に平等に持分が分配されるため、特定の相手に財産を集中させたくない場合や、税務リスクを最小限に抑えたい場合に適しています。


 ただし、持分放棄は共有者が2名でないと、共有関係の解消には至らないということや、税務上のメリットデメリットが存在します。詳しくは専門家にご相談ください。

(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

6. 結論


 共有不動産の持分を解消する際には、持分贈与と持分放棄のそれぞれに法的および税務的な影響があります。どちらを選択するかは、個々の事情や目的に応じて慎重に検討する必要があります。贈与税の負担や持分の再配分の影響を考慮し、最適な方法を選ぶためには、専門家のアドバイスを求めることが重要です。


 ただし、不動産登記手続きについては、登記原因証明情報の内容と当為原因が異なる程度で、それ以外で異なる部分はありません。


(論点)受取人のいない相続財産はどこにいくのか

(論点)受取人のいない相続財産はどこにいくのか

 相続が発生した際、相続人が存在しない場合、その財産はどこへ行くのかという疑問が生じます。

 このようなケースは「相続人不存在」と呼ばれ、法律に基づく手続きが定められています。以下、その手続きと財産の行方について説明します。


目次


1. 相続人不存在の確認

2. 遺産管理人の選任

3. 相続財産の公告と受遺者の探索

4. 相続財産の国庫帰属

5. 国庫帰属後の手続き

6. 結論

(論点)受取人のいない相続財産はどこにいくのか

1. 相続人不存在の確認


 相続人が不存在であると判断されるのは、被相続人が死亡した際に法定相続人(配偶者、子、親、兄弟姉妹など)がいない場合です。また、相続人がいても全員が相続放棄をした場合も同様に相続人不存在の状態となります。


 相続人がいるかどうかは、被相続人の戸籍謄本などを調査して確認します。この手続きは通常、遺産管理人や家庭裁判所が担当します。


(論点)受取人のいない相続財産はどこにいくのか

2. 遺産管理人の選任


 相続人不存在が確認されると、家庭裁判所は「遺産管理人」を選任します。

 遺産管理人は、相続財産の保全、処分、債務の支払いなどを行うために選ばれる第三者です。遺産管理人は、弁護士や司法書士など、法律に精通した専門家が任命されることが一般的です。


 遺産管理人が選任されると、財産の管理とともに、相続債務の清算や未払いの税金の支払い、債権者への対応などを行います。また、遺産の一部を売却するなどして、債務の支払いに充てることもあります。


 当然ですが、この遺産管理人への報酬も、前もって家庭裁判所に予納することになりますが、その額は数十万円から数百万円が想定されます。(いったい誰が支払うのでしょうか?)勿論、予納金が支払われない場合、手続きは進みません。


3. 相続財産の公告と受遺者の探索


 遺産管理人は、相続財産の内容を公告し、受遺者や相続人の可能性がある者を探します。この公告は、遺産管理人が選任されてから通常2か月以内に行われ、一般的には官報などで公示されます。公告期間中に相続人や受遺者が現れれば、その者に対して相続手続きが行われます。


 しかし、公告期間中に相続人や受遺者が現れない場合、最終的にはその財産の処理が行われます。


4. 相続財産の国庫帰属


 公告期間が過ぎても相続人が現れなかった場合、相続財産は「特別縁故者」に分与される可能性があります。特別縁故者とは、被相続人の生前に特に親しい関係にあった者で、例えば、長年同居していた友人や内縁の配偶者などが該当します。特別縁故者が財産の分与を希望する場合、家庭裁判所にその旨を申し立てることができます。


 特別縁故者への分与が行われない場合、相続財産は最終的に「国庫」に帰属します。これは、相続人不存在の場合に限られる特殊な措置で、国が相続財産を受け取ることになります。国庫帰属の対象となる財産には、不動産、預貯金、株式などが含まれます。


5. 国庫帰属後の手続き


 財産が国庫に帰属した後、これらの財産は国有財産として処分されます。不動産であれば、売却されたり、公共の利用に供されたりします。現金や預貯金は、国の財政に組み入れられます。また、株式などの有価証券は、国が売却して現金化することが一般的です。


 一度国庫に帰属した財産は、相続人や特別縁故者が後に現れたとしても、その返還が認められることは基本的にありません。したがって、相続人不存在が確定する前に、全ての可能性を考慮して手続きを行うことが重要です。

(論点)受取人のいない相続財産はどこにいくのか

6. 結論


 相続人が不存在の場合、その財産はまず遺産管理人によって管理され、特別縁故者への分与が行われる可能性がありますが、最終的には国庫に帰属します。このようなケースは、法律に基づいた厳格な手続きが必要となり、遺産管理人や家庭裁判所の役割が非常に重要です。相続人不存在の問題は、誰が財産を受け取るのかという個別の問題だけでなく、社会全体における財産の管理や再分配にも関連する重要なテーマです。


 ちなみに、日本全体で、受取人のいない遺産額「647億円(2021年朝日新聞記事引用)」だったみたいです。

(論点)任意後見契約時に財産を開示する理由とその重要性

(論点)任意後見契約時に財産を開示する理由とその重要性

任意後見契約は、将来の判断能力の低下に備えて信頼できる後見人を事前に選び、契約を結ぶ制度です。

この契約時に、財産の開示が求められる理由と、開示しないことのデメリットについて説明します。


目次


1. 財産開示の重要性

2. 財産目録作成条項を含めない契約の例外

3. 財産目録がない場合のデメリット

4. 結論

(論点)任意後見契約時に財産を開示する理由とその重要性

1. 財産開示の重要性


 任意後見契約を締結する際、原則として本人は後見人に対して財産の開示を行います。これは、後見人が本人の財産状況を正確に把握することで、後見が開始された際に適切な財産管理が行えるようにするためです。財産の開示は、本人が保有する資産や負債、収入源などの全体像を後見人が理解し、将来的な支出計画や財産の保全を確実に行うための基礎となります。


 財産開示を行うことで、後見人は本人の生活維持に必要な資金をどのように確保するか、どの資産をどう管理するかを計画的に決定できます。また、家族間のトラブルや財産の不正利用を未然に防ぐ効果も期待されます。後見人が最初から財産状況を把握していれば、本人が判断能力を失った後でもスムーズに財産管理が行えるため、本人や家族にとって安心感が得られます。


2. 財産目録作成条項を含めない契約の例外


 例外として、任意後見契約書に財産目録作成の条項を含めない場合、財産の開示を行わずに契約を締結することも可能です。これは、本人がプライバシーを重視し、財産を開示することに抵抗がある場合や、信頼関係が十分に構築されているため、後見人に財産を開示する必要がないと判断した場合に選ばれることがあります。


 しかし、財産目録を作成しない契約にはリスクが伴います。特に、将来的に認知能力が低下し、家族や後見人が財産管理に疑問を持った際に、問題が顕在化します。

(論点)任意後見契約時に財産を開示する理由とその重要性

3. 財産目録がない場合のデメリット


 財産目録がない状態で任意後見が開始された場合、本人の財産がどの程度存在していたのか、どの資産がどれだけ減少したのかを証明する手段が限られます。例えば、家族が「何かおかしい」と感じても、財産の移動や減少が不審であるかどうかを確認するのが難しくなります。


 財産目録が存在すれば、後見が開始された時点の財産状況と現在の状況を比較することで、不正な取引や不審な財産移動がないかを検証できます。しかし、財産目録がない場合は、このような証拠を確保する手段がなく、不正が行われていたとしても、それを証明することが非常に困難になります。


 例えば、本人が判断能力を失う前に不正な取引が行われていた場合、財産目録がなければその不正を証明するための証拠が不足し、後見人や家族が取り返しのつかない状況に陥る可能性があります。結果として、本人の財産が不正に減少していたとしても、それを追跡し、適切な対処を行うことができなくなります。


 さらに、財産目録がないことで、後見人が適切な財産管理を行っていたかどうかの判断も困難になります。家族や関係者が後見人の行動を監視・評価する際に、財産目録がないと透明性が欠如し、後見人に対する信頼が揺らぐ可能性があります。

(論点)任意後見契約時に財産を開示する理由とその重要性

4. 結論


 任意後見契約において財産を開示することは、後見人が適切に本人の財産を管理し、本人の生活を守るために不可欠な手続きです。

 財産目録を作成しない契約も可能ですが、その場合、将来的に財産管理に問題が生じた際に、それを証明する手段がないため、リスクが高まります。

 したがって、任意後見契約を締結する際には、可能な限り財産目録を作成し、後見人が適切に業務を遂行できるような体制を整えることが重要です。

(論点)成年後見制度の解説と利用状況、市民後見人って?

(論点)成年後見制度の解説と利用状況、市民後見人って?

 成年後見制度は、高齢者や認知症患者、精神障害者など判断能力が低下した人々を法的に保護するための制度です。

 この制度には「任意後見」と「法定後見」の2種類があります。

 また、成年後見制度の利用状況と市民後見人についてもお話をしたいと思います。


目次


1.任意後見

2.法定後見

3.利用率と裁判統計から見る現状

4.市民後見人の役割と課題

5.結論

(論点)成年後見制度の解説と利用状況、市民後見人って?

1.任意後見


 任意後見は、本人がまだ判断能力がある段階で、将来に備えて信頼できる人物を後見人として選び、任意後見契約を結ぶ制度です。

 契約内容には、後見人が将来、本人の生活、財産管理、医療に関する意思決定を代行することが含まれます。この契約は、公証役場で公正証書として作成され、本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に申請して正式に後見が開始されます。


 任意後見のメリットは、本人の意向を最大限に反映できる点にあります。

 本人が信頼する人物を選ぶことで、後見人に対する安心感が得られ、財産の管理や医療に関する決定がスムーズに行われる可能性が高まります。

(論点)成年後見制度の解説と利用状況、市民後見人って?

2.法定後見


 法定後見は、すでに判断能力が低下している場合に、市町村長や親族などからの申し立てにより家庭裁判所が後見人を選任する制度です。法定後見には、後見、保佐、補助の3種類があり、それぞれの対象者の判断能力に応じて後見人の権限が異なります。後見人は、本人の生活や財産管理、契約の締結などに関する意思決定を代行します。


 法定後見の選任プロセスでは、家庭裁判所が後見人を選定しますが、本人や親族が希望する人物が選ばれるとは限りません。そのため、後見人の選任に関しては、しばしば家族内での意見の相違や法定後見人に対する不満が生じることがあります。

 勿論、専門家が選任された場合、その報酬が発生し、それは現行制度ですと、本人が亡くなるまで発生することになります。


3.利用率と裁判統計から見る現状


 成年後見制度の利用は年々増加しており、特に法定後見の利用が目立ちます。家庭裁判所の統計によれば、後見に関する申立件数は過去10年間で着実に増加しており、2023年には年間で約4万件に達しました。このうち、任意後見の利用は全体の約10%に留まっており、圧倒的に法定後見の利用が多い状況です。


 法定後見が主流となっている背景には、本人や家族が判断能力の低下に早期に気づかず、任意後見契約を締結するタイミングを逃してしまうケースが多いことが挙げられます。

 また、任意後見契約の締結には公証役場での手続きが必要であり、その手続きの煩雑さや費用が利用のハードルとなっている可能性も考えられます。


 また、市町村長による申し立てが圧倒的に多くなってきています。これは、いままで介護度の確認などで契約当事者として、親族相手でも慣習として行っていたところ、だんだん厳しくなり、本人相手で介護度の確認をするにあたり認知症発症している可能性が高い場合、法定後見制度を利用して、後見人(法定代理人)として本人に代わって契約するように厳格化されてきているからだと考えられます。


4.市民後見人の役割と課題


 市民後見人は、専門家ではなく、市民が後見人として家庭裁判所に選任される制度です。市民後見人の導入は、高齢化社会に対応するための重要な施策とされています。特に、家族や親族がいない、または親族間で後見人を務めることが難しい場合に、市民後見人が重要な役割を果たします。


 しかし、市民後見人の利用には課題もあります。まず、後見業務に関する専門知識や経験が不足しているため、十分な支援を提供できない可能性があります。

 また、市民後見人の育成や支援体制の整備が十分でないため、安定した後見業務を行うための環境が整っていない場合があります。そのため、市民後見人の質を高めるための研修制度やサポート体制の強化が急務とされています。


(論点)成年後見制度の解説と利用状況、市民後見人って?

5.結論


 成年後見制度は、判断能力が低下した人々の権利を保護するための重要な制度です。

 任意後見と法定後見の選択肢があることで、個々の状況に応じた保護が可能となりますが、現状では法定後見が主流となっています。

 また、市民後見人の導入は、社会的な需要に応える重要な施策である一方で、その運用には改善の余地が残されています。


(論点)子がいない夫婦の相続について

(論点)子がいない夫婦の相続について

 子供がいない夫婦の相続においては、一般的な相続よりも複雑な点が多く、事前にしっかりと準備をしておくことが重要です。

 相続人第1順位の子がいないので、いきなり相続人第2順位の直系尊属(両親等)が関与してきますが、すでに両親等が無くなっている場合には、第3順にの兄弟姉妹になります。

 ここでは、子供がいない夫婦が相続に関して注意すべき点を5つ挙げ、それぞれを解説します。


目次


1. 法定相続人の範囲と相続割合の確認

2. 遺言書の作成の必要性

3. 配偶者居住権の確保

4. 親族との関係維持と遺産分割協議の重要性

5. 相続税の負担と節税対策

まとめ

(論点)子がいない夫婦の相続について

1. 法定相続人の範囲と相続割合の確認


 子供がいない夫婦の場合、相続人の範囲が通常のケースとは異なります。具体的には、配偶者が相続人であることは変わりませんが、相続人が配偶者一人のみとは限りません。

 子供がいない場合、配偶者以外の相続人としては、被相続人の親や兄弟姉妹が含まれることになります。もし被相続人の親が存命であれば、配偶者と親が相続人となり、配偶者が3分の2、親が3分の1を相続します。

 親がすでに他界している場合、兄弟姉妹が相続人となり、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続することになります。

 兄弟姉妹がすでに他界している場合は、その子供(甥や姪)が代襲相続することもあります。

 配偶者が全ての財産を相続するわけではないため、法定相続人の範囲と相続割合を確認しておくことが重要です。


2. 遺言書の作成の必要性


 子供がいない夫婦の場合、遺言書の作成が特に重要です。遺言書がない場合、遺産は法定相続分に従って分割されるため、配偶者以外の相続人にも遺産が分配されることになります。

 しかし、遺言書があれば、被相続人は財産の分配方法を自由に決定することができます。たとえば、全ての財産を配偶者に相続させたい場合や、特定の財産を特定の親族に遺贈したい場合には、遺言書が不可欠です。

 遺言書を作成することで、相続がスムーズに進み、遺族間の紛争を防ぐことができます。

 特に、第3順位の広大終いに関しては、「遺留分」の主張はできません。

 遺言書を作成しておくことで遺産を自身の意思通りに承継することが可能となりますので、ぜひ遺言書作成の検討を考慮ください。

 もちろん、後々の問題を考慮して「公正証書遺言」で行うことをお勧めいたします。


3. 配偶者居住権の確保


 子供がいない夫婦の場合、相続によって配偶者が住んでいる家を失うリスクがあります。

 例えば、配偶者以外の相続人が相続分を主張し、家の売却や分割を要求することが考えられます。このような状況を避けるためには、配偶者居住権を確保することが重要です。

 配偶者居住権とは、配偶者が相続により、被相続人が住んでいた住居に引き続き住む権利を保護する制度です。これにより、配偶者が安定して生活できる環境を確保することができます。

 ただし、配偶者居住権を有効に活用するためには、遺言書にその旨を明記しておく必要があるため、事前の準備が必要です。


4. 親族との関係維持と遺産分割協議の重要性


 子供がいない夫婦の場合、相続時に配偶者と親族(被相続人の親や兄弟姉妹)との間で遺産分割協議が必要になります。

 この協議がスムーズに進まないと、相続手続きが長引く可能性が高く、感情的な対立が生じることもあります。特に、親や兄弟姉妹が相続人として関与する場合には、配偶者と親族との間での協力と理解が重要です。

 被相続人の生前から親族との関係を良好に保つことで、相続時のトラブルを防ぐことができます。また、遺産分割協議では、全相続人の同意が必要なため、相続人間の調整が求められます。

 このため、遺言書を残しておくことが非常に有効ですし、必要に応じて司法書士や弁護士などの専門家の助言を受けることも検討すべきです。


(論点)子がいない夫婦の相続について

5. 相続税の負担と節税対策


 子供がいない夫婦の場合、相続税の負担が大きくなる可能性があります。

 法定相続人が少ないと、基礎控除額が減少するため、相続税の課税対象となる遺産額が増えることがあります。たとえば、子供がいる場合には法定相続人の数が増えるため、基礎控除額も増加しますが、子供がいない夫婦では配偶者と親または兄弟姉妹が相続人となるため、控除額が少なくなります。その結果、相続税の負担が大きくなる可能性があります。

 相続税を軽減するためには、生前に適切な対策を講じることが重要です。具体的には、生前贈与や保険の活用、信託の設計などが考えられます。

 また、遺産分割の際には、配偶者の税額軽減措置を活用することも有効です。これにより、配偶者が相続した財産に対する相続税を大幅に軽減することができます。

(論点)子がいない夫婦の相続について

6.まとめ


 以上の5つの点を踏まえ、子供がいない夫婦の相続においては、法定相続人の確認や遺言書の作成、親族との関係維持など、事前にしっかりと準備をしておくことが求められます。適切な対策を講じることで、配偶者の生活を守り 、遺産の円滑な相続を実現することが可能です。

 相続は家族間の重要な問題であり、専門家の助言を受けながら慎重に対応することが望ましいでしょう。


(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

家族信託が出始めたころには、夢のような制度として脚光を浴びましたが、利用が進むにつれて、その問題点も浮き彫りになってきて、「後見制度に代わる」制度ではないことが明らかになってきました。そもそも、財産管理の方法を契約で当事者同士でするものが家族信託で、家庭裁判所の管理下で行うものが後見制度です。その目的も財産管理という名目は同じでも内容は全く違うものです。現状、家族信託はそこまで浸透していない様に見えます。その原因を紐解いてみました。


目次


1. 家族信託の概要

2. 受託財産の管理が大変(信託口口座による管理)

3. 委託者への報告を怠っているケースが多い

4. 税務署に対する報告ができていないケースが多い

5. どこからクレームが来るのか

6. 家族信託に対する誤解や過信

(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

1. 家族信託の概要


 家族信託とは、委託者(通常は親)が受託者(通常は子供)に財産を信託し、将来、委託者が認知症などで判断能力を失った場合でも、信託契約に基づいて財産を管理・運用する仕組みです。

 この制度は、特に高齢者の認知症対策として広く利用されていました。

 信託契約によって、受託者が委託者の代わりに財産を管理できるため、親族間の紛争を防ぐことが期待されていました。

(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

2. 受託財産の管理が大変(信託口口座による管理)


 家族信託の利用が減少している理由の一つとして、受託財産の管理の煩雑さが挙げられます。信託財産を管理するためには、信託専用の口座(信託口口座)を開設する必要がありますが、金融機関によってはこの信託口口座を開設してくれない場合があります。

 このような場合、受託者は信託財産の管理が難しくなり、管理業務が大きな負担となります。特に高齢の受託者にとっては、この管理作業が複雑で負担が大きいため、家族信託の利用を敬遠する要因となっています。

(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

3. 委託者への報告を怠っているケースが多い


 信託契約では、受託者が委託者に対して定期的に財産の管理状況を報告する義務がありますが、現実にはこれが十分に行われていないケースが多いです。家族間での信頼関係があるために、受託者が報告を怠りがちで、信託の透明性が損なわれるリスクがあります。

 このような状況では、信託が適切に機能していないと見なされる可能性があり、家族信託の効果が十分に発揮されないことがあります。


4. 税務署に対する報告ができていないケースが多い


 家族信託を利用する場合、信託財産に関する税務申告が必要ですが、多くの受託者がこの義務を十分に理解していません。そのため、確定申告時に信託財産を正しく申告できていないケースが多く見られます。

 税務署への報告が不十分な場合、後に税務署から指摘を受けたり、追徴課税が発生したりするリスクがあります。信託財産が大規模であるほど、税務管理が重要となり、適切な申告がなされていないことで、信託制度全体の信頼性が損なわれる結果となっています。


5. どこからクレームが来るのか


 家族信託は、委託者と受託者の間で締結される契約ですが、管理される財産は最終的に相続人の遺産となります。そのため、他の相続人が受託者の管理方法に疑義を抱いた場合、クレームが発生することが多くあります。

 特に信託財産が大きい場合や、相続人間で利害関係が複雑な場合には、これが紛争に発展することもあります。受託者が信託の内容を適切に管理し、透明性を確保していないと、家族間の関係が悪化するリスクが増加します。

(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

6. 家族信託に対する誤解や過信


 家族信託が普及し始めた当初、一部の専門家や業者が「家族信託を利用すれば、後見制度は不要になる」といった誤った情報を提供していたケースがありました。

 しかし、家族信託と後見制度は異なる制度であり、家族信託を利用しても後見制度が不要になるわけではありません。このような誤解が広まった結果、家族信託に対する過信が生まれ、制度の限界に直面する利用者が増えました。

 これにより、家族信託の利用が見直され、結果として利用者が減少する要因となっています。


 これらの理由により、最近では家族信託の利用が減少しています。

 家族信託は有用な制度ですが、その管理の煩雑さや税務管理の重要性、そして相続人間の関係に注意しながら慎重に利用することが求められます。

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

 連れ子に相続権はあるのか?また、連れ子を養子にする意味について解説しています。

 また、この場合、あなたが亡くなるまでに残された家族にすべき手続きについてもお話をしています。


目次


1. 連れ子の相続権について

2. 養子縁組した場合の相続権

3. 例外的な取り扱い

4. 養子縁組して相続権はあるが、あなたがしておくべき手続

5. まとめ

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

1. 連れ子の相続権について


 日本の民法において、連れ子とは一方の親が再婚相手との間にできた子供ではなく、前配偶者との間に生まれた子供を指します。

 連れ子は再婚相手と血縁関係がないため、法定相続人には含まれません。

 すなわち、再婚相手が亡くなった場合、連れ子には相続権がありません

 これは民法第887条に基づいており、法定相続人は配偶者と血縁関係にある子供に限られるからです。

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

2. 養子縁組した場合の相続権


 しかし、連れ子を再婚相手が養子縁組した場合、その法的地位は大きく変わります。養子縁組が成立すると、連れ子は法律上の「子」となり、再婚相手との間に法的な親子関係が生じます。

 この結果、養子は再婚相手の法定相続人として認められ、実子と同等の相続権を有します。つまり、養子縁組によって、連れ子は再婚相手の相続財産を相続する権利を持つことになります。

 具体的には、再婚相手が亡くなった場合、その相続人は配偶者と子供(養子を含む)となります。もし配偶者と養子が相続する場合、相続分は民法の規定により、配偶者が1/2、養子が1/2となります(他に相続人がいない場合)。


3. 例外的な取り扱い


 ただし、養子縁組後の相続においても、養子縁組が形式的に行われた場合、つまり相続対策としてのみ行われ、実質的な親子関係がない場合には、裁判所が養子縁組を無効と判断することがあります。このような場合、相続権が否定される可能性もあります。

 また、養子縁組した連れ子が他の兄弟姉妹と共同で相続する場合、遺産分割協議において、遺留分や相続分の取り決めが必要となります。遺留分は、法定相続人が最低限相続できる割合であり、養子縁組が行われたとしても、他の相続人との間で相続分が調整されることがあります。

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

4. 養子縁組して相続権はあるが、あなたがしておくべき手続


 あなたが仮に亡くなり、相続が発生した場合について考えてみましょう。

 確かに養子縁組した連れ子の方には、相続権は発生しています。遺産の分割協議をすることになりますが、この協議は相続人全員の参加が必要です。

 もし、再婚前のあなたの前妻との間にお子様がいる場合、このお子様も相続人となり、協議に参加して署名、実印による押印、印鑑証明書の提供がなければ、遺産分割協議は成立しません。

 果たして、前妻との間の子供が、気持ちよく協議に参加してもらえるような関係が構築できているならいいのですが、そうでない場合、協議は難航します。


 相続発生時の遺産分割協議という負担を残された家族に残さないためにも、「遺言書」(できれば公正証書遺言)の作成をアドバイスしております。このような状況にある方は、年齢に関係なく公正証書遺言を作成しておくことがいいと思います。人間いつ亡くなるか誰にもわかりませんからね。

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

5. まとめ


 連れ子は再婚相手と養子縁組をしない限り、再婚相手の相続権を持ちません。しかし、養子縁組を行うことで、連れ子は法定相続人として認められ、実子と同等の相続権を持つことになります。このため、再婚家庭においては、将来的な相続問題を見据えた上で、養子縁組を検討することが重要です。

 また、養子縁組後の相続においては、他の相続人との間で適切な調整を行う必要があります。これらの法律的な側面を十分に理解し、適切な手続きを行うことが、家庭内の円満な相続を実現するために不可欠です。


 また、相続発生時のことも考慮して、早めに遺言書の作成をしておくことをお勧めしております。遺留分の問題もあるじゃないかと言われるかもしれませんが、遺留分は遺産の帰属先が決まったのちの話で、相手方が請求してくるものです。遺産の帰属先が遺産分割協議をするまで共有という状態ではありません。

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応


 近年、空き家物件に対する火災保険料が大幅に値上がりしています。この動向は、保険会社が空き家をリスクが高いと評価し、損害発生の可能性を考慮して保険料を見直しているためです。特に、火災や自然災害による損害のリスクが高まっている地域では、保険料の上昇が顕著です。これにより、多くの空き家所有者が保険の継続を迷う状況に立たされています。

 では、火災保険を続けるべきか、それとも辞めるべきかを検討してみましょう。


目次


1.火災保険の必要性

2.保険料の負担

3.保険を辞めるリスク

4.保険の継続を検討する場合

5.保険を辞める場合の対応策

6.結論

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応

1.火災保険の必要性


 空き家でも火災保険が必要な理由は明確です。

 まず、火災のリスクは空き家であっても存在します。空き家は、長期間の無人状態が続くため、火災が発生しても発見が遅れることが多く、その結果、被害が拡大しやすいです。

 また、空き家が放火や不審火の標的になりやすいことも考慮すべきです。

 さらに、隣接する物件に被害が及んだ場合、その賠償責任を負う可能性があるため、火災保険はリスク管理の重要な手段です。

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応

2.保険料の負担


 一方で、保険料の負担は無視できません。空き家物件に対する保険料が値上がりすると、所有者にとって経済的な負担が増すことになります。特に、物件が収益を生まない場合、その維持費や税金に加えて保険料の負担が重くのしかかります。そのため、経済的な観点から火災保険の継続を見直すことも一案です。


3.保険を辞めるリスク


 しかし、火災保険を辞めることにはリスクが伴います。前述の通り、火災や自然災害が発生した場合、保険がなければ全ての損害を自己負担することになります。また、隣接物件への被害が発生した場合、その賠償も自己負担となり、大きな経済的打撃を受ける可能性があります。さらに、空き家を売却する際、火災保険がかけられていない物件は購入希望者にとってリスクが高いと判断され、売却が難しくなることも考えられます。


4.保険の継続を検討する場合


 火災保険を継続する場合、保険料の節約方法を検討することが重要です。

 例えば、保険会社によっては、一定の条件を満たすことで保険料の割引が適用されることがあります。防犯対策を強化し、定期的な点検を行うことで、リスクを軽減し、保険料の引き下げが可能な場合もあります。

 また、保険の見直しを行い、補償内容を必要最低限に調整することも一つの方法です。


5.保険を辞める場合の対応策


 もし火災保険を辞めることを検討する場合は、代替策を考えることが不可欠です。例えば、空き家を管理するための管理会社を利用し、定期的な点検や清掃を行うことで、火災リスクを軽減できます。

 また、空き家を賃貸物件として活用し、収益を得ながら維持費を賄うことも一つの選択肢です。さらに、空き家の売却を検討する場合には、保険を辞める前に市場の動向をよく調査し、売却時期や価格を見極めることが重要です。


 できれば、保険額を下げてでも、火災保険を継続したほうがいいかもしれません。

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応

2.保険料の負担


 一方で、保険料の負担は無視できません。空き家物件に対する保険料が値上がりすると、所有者にとって経済的な負担が増すことになります。特に、物件が収益を生まない場合、その維持費や税金に加えて保険料の負担が重くのしかかります。そのため、経済的な観点から火災保険の継続を見直すことも一案です。


3.保険を辞めるリスク


 しかし、火災保険を辞めることにはリスクが伴います。前述の通り、火災や自然災害が発生した場合、保険がなければ全ての損害を自己負担することになります。また、隣接物件への被害が発生した場合、その賠償も自己負担となり、大きな経済的打撃を受ける可能性があります。さらに、空き家を売却する際、火災保険がかけられていない物件は購入希望者にとってリスクが高いと判断され、売却が難しくなることも考えられます。


4.保険の継続を検討する場合


 火災保険を継続する場合、保険料の節約方法を検討することが重要です。

 例えば、保険会社によっては、一定の条件を満たすことで保険料の割引が適用されることがあります。防犯対策を強化し、定期的な点検を行うことで、リスクを軽減し、保険料の引き下げが可能な場合もあります。

 また、保険の見直しを行い、補償内容を必要最低限に調整することも一つの方法です。


5.保険を辞める場合の対応策


 もし火災保険を辞めることを検討する場合は、代替策を考えることが不可欠です。例えば、空き家を管理するための管理会社を利用し、定期的な点検や清掃を行うことで、火災リスクを軽減できます。

 また、空き家を賃貸物件として活用し、収益を得ながら維持費を賄うことも一つの選択肢です。さらに、空き家の売却を検討する場合には、保険を辞める前に市場の動向をよく調査し、売却時期や価格を見極めることが重要です。


 できれば、保険額を下げてでも、火災保険を継続したほうがいいかもしれません。

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応

6.結論


 空き家物件の火災保険料の値上がりに直面した場合、その継続か解約かを慎重に検討する必要があります。経済的な負担とリスクを天秤にかけ、自身の状況に最も適した選択をすることが求められます。

 保険の継続が最善と判断した場合は、保険料の節約策を講じ、逆に辞める場合は代替策をしっかりと計画することが重要です。

(論点)所有不動産記録証明制度について

(論点)所有不動産記録証明制度について

「所有不動産記録証明制度」は、不動産登記名義人の住所と氏名から、その名義人が所有している不動産を全国的に一括して調査し、所有不動産記録証明書というリストで証明する制度です。 

 被相続人(以下、亡くなった人)名義の不動産だけでなく、存命の名義人や法人名義の不動産も調査できます。つまり、不動産の全国規模の「名寄せ」が可能になるということです。


目次


1. 所有不動産記録証明制度の開始時期

2. 遺産である不動産の調査におけるメリット

3. おわりに

(論点)所有不動産記録証明制度について

1. 所有不動産記録証明制度の開始時期


 所有不動産記録証明制度は、2026年2月に正式に導入される予定です。この制度は、不動産登記名義人の住所と氏名から、その名義人が所有している不動産を全国的に一括して調査し、所有不動産記録証明書というリストで証明する制度です。 

 被相続人(以下、亡くなった人)名義の不動産だけでなく、存命の名義人や法人名義の不動産も調査できます。つまり、不動産の全国規模の「名寄せ」が可能になる問うことです。

(論点)所有不動産記録証明制度について

2. 遺産である不動産の調査におけるメリット


所有不動産記録証明制度は、特に相続の際における不動産調査において、多くのメリットをもたらします。以下にその主要な利点をまとめます。


(a) 情報の一元管理とアクセスの容易化


 現行制度では、不動産の所有権情報は各地の法務局で管理されていますが、所有不動産記録証明制度では、全国の不動産情報が一元的にデジタル管理されます。これにより、相続人や司法書士が必要な情報に迅速にアクセスできるようになります。例えば、相続発生後、相続人が所有している不動産を調査する際に、複数の法務局を訪れる必要がなくなり、一度の手続きで全国の不動産情報を確認することができます


(b) 所有権の確認とトラブル防止


 相続における不動産の所有権確認は、時に複雑で時間がかかる作業です。特に、相続人が多数存在する場合や、長期間にわたり相続手続きが行われていなかった場合、不動産の所有者が特定できないことが問題となります。しかし、所有不動産記録証明制度の導入により、所有者情報が一元管理されるため、相続不動産の所有者確認が迅速かつ正確に行えます。これにより、相続人間のトラブルや誤解を未然に防ぐことができます。そもそも、遺産の不動産が漏れてしまった場合、相続登記義務化に抵触する可能性が出てしまいます。


(c) 遺産分割協議の円滑化


 相続人が遺産分割協議を行う際、不動産の評価額や所有状況を正確に把握することが重要です。所有不動産記録証明制度により、各不動産の最新の評価額や所有権の変遷が明確になるため、遺産分割協議がスムーズに進められるようになります。また、この制度は、第三者による不正な所有権移転を防止する効果もあり、相続人が安心して協議を進められる環境が整います。


(d) コストと時間の節約


 所有不動産記録証明制度の導入により、相続に関連する調査や手続きに要するコストや時間が大幅に削減されることが期待されます。従来の手続きでは、不動産の所有者確認や評価額の算定に多大な労力と費用がかかっていましたが、この制度により、一元的に必要な情報が取得できるため、これらの負担が軽減されます。特に、相続税申告に際しては、正確な不動産評価額の算定が求められるため、この制度は相続人にとって大きな助けとなるでしょう。


※現状、固定資産税の請求通知書が来ている場合には、遺産の不動産を確認することができますが、固定資産税の課税対象とならない価値の低い不動産の場合、通知書には載ってこないために、役場が発行する「名寄帳」または「固定資産税評価証明書」を確認する必要がありました。しかし、これらの証明書も役場単位ですので、全国規模で確認する方法ができますので、相続登記の際に、漏れが無くなることが期待できます。

(論点)所有不動産記録証明制度について

3. おわりに


 所有不動産記録証明制度は、相続における不動産調査の効率化と正確性向上を図るための重要な制度です。

 この制度の導入により、相続手続きの円滑化、トラブルの防止、コストの削減が期待されており、相続人や司法書士にとって非常に有益なツールとなるでしょう。

 2026年の導入を前に、関係者は制度の詳細や運用方法について十分に理解し、備えておくことが重要です。


(論点)経営者の皆様、相続対策できていますか

(論点)経営者の皆様、相続対策できていますか

会社の経営者にとって、相続対策は重要な課題です。

特に、自社株式が相続の対象となる場合、その株式の評価額が相続税に大きな影響を与えることは避けられません。そのため、適切な相続対策を講じるためには、会社の資産価値を正確に把握することが必要です。

その一環として、決算時における一株当たりの価値を調べておくことが重要なステップとなります。


目次


1. 一株当たりの価値の重要性

2. 決算時における価値の把握

3. 生前対策のための準備

4. 税務リスクの軽減

5. 専門家の活用

(論点)経営者の皆様、相続対策できていますか

1. 一株当たりの価値の重要性


 会社の一株当たりの価値は、会社の純資産を株式総数で割ることで算出されます。この数値は、会社の財務状況や経営状態を反映したものであり、相続時において非常に重要な役割を果たします。

 特に、中小企業の経営者にとって、自社株の評価は、相続税の計算基準となるため、適切なタイミングでこの価値を把握しておくことが求められます。が、その概要すらわかっていない状態で、いざ相続が発生した場合、相続税がいくらになるのかさっぱりわかりません。

 そうならないように、決算時に顧問の税理士先生にお願いをして、会社の一株当たりの資産額を概算でもらっておくとよいでしょう。

(論点)経営者の皆様、相続対策できていますか

2. 決算時における価値の把握


 会社の一株当たりの価値は、決算時に最も正確に把握できます。決算時は、会社の収支や資産、負債が明確に整理され、会社の純資産が確定する時期です。

 このタイミングで一株当たりの価値を計算することで、相続対策や事業承継の際に活用できる正確なデータが得られます。

 また、決算書を基に評価を行うことで、税務当局に対しても透明性のある説明が可能になります。


3. 生前対策のための準備


 会社の一株当たりの価値を把握しておくことで、生前に相続対策を講じる際の準備が整います。

 例えば、株式の分散や生前贈与を検討する際には、株式の現在の価値を基に具体的な計画を立てることができます。

 また、事業承継においては、後継者に対する株式の移転をスムーズに行うための基礎資料として役立ちます。

 さらに、会社の将来価値を見据えた対策を講じることで、相続発生時における相続人の負担を軽減することが可能です。


4. 税務リスクの軽減


 決算時に一株当たりの価値を把握し、それに基づいて相続対策を行うことで、税務リスクを軽減することができます。

 相続税の評価額が不確定な状態で放置されると、相続時に予想外の高額な税負担が発生する可能性があります。

 しかし、決算時の正確なデータを基に対策を講じておけば、相続税の負担を抑え、予測可能な範囲で税務対応を行うことができます。

 また、これにより、税務調査などのリスクも軽減されます。

(論点)経営者の皆様、相続対策できていますか

5. 専門家の活用


 会社の一株当たりの価値を正確に把握し、適切な相続対策を講じるためには、専門家の協力が不可欠です。税理士や会計士、司法書士などの専門家に相談することで、会社の財務状況や法的リスクを総合的に評価し、最適な相続対策を策定することができます。

 特に、自社株の評価は複雑なプロセスを伴うため、専門家のアドバイスを受けながら進めることが望ましいです。

 会社の資産価値を正確に把握し、適切な相続対策を講じることは、経営者にとって重要な責務です。

 決算時における一株当たりの価値の把握は、そのための基礎となるステップであり、将来の事業承継や相続税対策を成功させるために欠かせない要素です。

 経営者の皆様には、この重要性を理解し、早めに準備を進めることを強くお勧めします。

(論点)遺言書作成する前に必要なこと

(論点)遺言書作成する前に必要なこと

遺言書作成は、財産や相続人に対する思いを形にする大切な手続きですが、その前に考慮すべき重要なステップがあります。これらのステップをしっかりと踏むことで、遺言書がより確実に、自分の意志を反映し、後々のトラブルを避けるためのものとなります。財産の把握と整理が必要です。自分が所有する財産を正確に把握し、それが現金、預金、不動産、有価証券、貴金属、家財、その他の財産にどのように分かれるかを整理することが重要です。また、負債がある場合にはその内容も把握し、遺言書に反映させるべきです。これにより、相続人が財産の内容を正確に理解でき、相続手続きがスムーズに進む基盤を築けます。


目次


1. 財産の把握と整理

2. 相続人の確認と整理

3. 遺言執行者の選定

4. 税務面での影響の確認

5. 専門家への相談

(論点)遺言書作成する前に必要なこと

1. 財産の把握と整理


 遺言書を作成する前に、まず自身の財産を把握し整理することが重要です。現金や預金、不動産、有価証券、貴金属、家財など、所有する財産がどのように分かれているのかを明確にしましょう。また、負債がある場合にはその内容も正確に把握し、相続時にどのように処理されるべきかを考慮する必要があります。これにより、相続人が財産の全体像を理解し、後々のトラブルを防ぐための基盤が整います。


 ただし、自身の預金口座が日本国内で点在していたり、所有不動産も行政単位を超えて点在する場合など、把握することが困難なケースもありましたが、次第に手続きがしやすいような方向に進んでいるといえます。今までにできている財産調査等の仕組みと、今後できる財産調査等の仕組みについてまとめてみました。


①生命保険契約照会制度(既に稼働)

➁戸籍取得の広域制度(令和6年3月より稼働)

③預貯金口座検索(令和7年4月より開始予定)

④不動産の全国規模の名寄せ(令和8年2月より開始予定)

(論点)遺言書作成する前に必要なこと

2. 相続人の確認と整理


 次に、相続人を確認し整理することが必要です。法定相続人だけでなく、特定の人物に財産を譲りたい場合もあるかもしれません。家族構成や各相続人の事情を考慮し、誰にどのように財産を分配するかを明確にすることが重要です。この段階でしっかりと整理しておくことで、遺言書の内容が具体的かつ公平なものとなり、相続トラブルを避けることができます。


3. 遺言執行者の選定


 遺言書に記載された内容を実行するためには、遺言執行者の選定が必要です。遺言執行者は、遺言の内容に従って手続きを進める責任を負う人物です。信頼できる家族や友人、もしくは専門家を選ぶことで、遺言書の内容が確実に実行されることを保証できます。


 私の場合、財産を受け取る方を遺言執行者として指定するようにしております。遺言執行者は、亡くなった被相続人の本人の地位で法律行為を行うことになります。そして、自信でできない内容については、専門家に委任すべきと考えるためです。専門家を遺言執行者にしてしまいますと、本人の立場での手続きということになってしまいます。


4. 税務面での影響の確認


 遺言書を作成する前に、税務面での影響を十分に考慮することも大切です。相続税や贈与税が課税される財産の種類や評価額を確認し、相続税対策を検討する必要があります。生前贈与や生命保険の活用、納税資金の確保など、税金に関連する計画を立てることで、相続人の負担を軽減することができます。この段階で適切な対策を講じておくことが、後のトラブル回避に繋がります。生前対策を十分に講じることも重要ですが、いざ相続が発生した場合、不動産を引き受けた相続人には、相続税を支払う際のキャッシュが不足する可能性もあります。こういったことも考慮しつつ、固定資産⇒流動資産について、税理士の先生を交えて対応するようにしております。

(論点)遺言書作成する前に必要なこと

5. 専門家への相談


 遺言書作成にあたり、司法書士や弁護士、税理士などの専門家への相談を検討することが重要です。法律的な観点や税務上のリスクを正確に理解し、適切なアドバイスを受けることで、遺言書が法的に有効であることを確認できます。特に、財産が多岐にわたる場合や家族関係が複雑な場合には、専門家の意見を取り入れることが推奨されます。税理士と司法書士が同じ相談会に参加する相続法律・税務無料相談会を月一で実施しております。


 これらのステップを踏むことで、遺言書が自身の意志を確実に反映し、円満な相続を実現するためのものとなります。最後に重要なことは、残される相続人とのコミュニケーションです。「みんな仲がいい」と思っていても、それはあなたという存在があるからかもしれません。あなたという存在が亡くなった場合に、「みんな仲がいい」状態になるとは限りませんからね。

(論点)相続放棄者がいる場合の相続登記

(論点)相続放棄者がいる場合の相続登記

相談業務を行っている際、未だに「相続放棄」と「財産放棄」という言葉を混同して使われている方がいらっしゃいます。相続放棄の手続きは、家庭裁判所に申述をして受理の可否を行います。当然、相続登記にこの時に家庭裁判所から発行される「証明書」の添付を要求されます。それでは、相続放棄者がいる場合の相続登記について、解説していきたいと思います。


目次


1.相続放棄者がいる場合の添付書類


2.限定承認を特定の相続人が行い、他の相続人が相続放棄をしている場合


3.相続放棄と持分放棄について

(論点)相続放棄者がいる場合の相続登記

1.相続放棄者がいる場合の添付書類


 家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書を相続証明情報の一部として添付します。


 「相続放棄申述受理証明書」以外の書類を添付することの可否について以下に指名します。


 ①相続放棄者、その他の相続人が作成した相続放棄証明書は、相続証明情報とはなりえない。

  ※相続放棄は家庭裁判所に対する要式行為だからである。

 ➁相続放棄順術受理通知書を相続証明情報とすることはできない。(登研720号)※後に変更

 ③相続を原因とする所有権の移転登記の申請において、相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載された「相続放棄等の申述有無についての紹介に対する家庭裁判所からの回答書」や「相続放棄申述受理通知書」を登記原因を証する情報の私費部とすることができる。(登研808号)


  ※これにより、登研720号の取り扱いは変更になっています

(論点)相続放棄者がいる場合の相続登記

2.限定承認を特定の相続人が行い、他の相続人が相続放棄をしている場合


「相続が開始した場合,相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。


①相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認

➁相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄

③被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認」


このうち、限定承認の申述は、相続人全員で行う必要があります。


共同相続人のうち特定の相続人が限定承認を行い、他の共同相続人は相続の放棄を行った場合において、その相続登記の申請の添付情報として、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本及び限定承認をした旨を証する家庭裁判所の限定承認受理証明書のほかに、相続人を確定するために筆応となる戸籍謄本又は除籍謄本及び相続放棄をした者に係る相続放棄を証する家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書の提供が必要となる。(登研699号)


家庭裁判所は限定承認の申述がされたときは、相続人を確定するために必要な戸籍謄本又は除籍謄本及び相続放棄申述受理証明書の提出を受け、これにより相続人となるべき者を確定し、相続人全員による限定承認の申述であることを確認したうえで、受理の審判を行うことになるが、後日相続放棄の取り消し等により、限定承認の効力が覆されていることもあり得ることから、登記官が登記の申請時において、改めて限定承認が相続人全員によりなされたものであることを確認する必要があるために、再提出させ判断をしている。

(論点)相続放棄者がいる場合の相続登記

3.相続放棄と持分放棄について


 共同相続人甲乙丙のうち、乙丙の「自分たちは遺産分割協議によって金銭の分配を受けたので、相続財産である不動産に関する持ち分は放棄する。」旨の持分放棄証明書を添付してされた、こう単独名義の相続登記申請は受理されない。(昭28.4.25民甲697号)


※持分放棄もしくは財産放棄という呼称で、相談の中でも話される方がいらっしゃいますが、相続そのものを放棄する場合は「家庭裁判所の手続きによる相続放棄」をすべきですし、特定財産をもらった代わりに不動産の持分を放棄するのであれば「相続人全員による遺産分割協議書」によるべきです。

(論点)除籍等の滅失等についての相続登記の添付情報について

(論点)除籍等の滅失等についての相続登記の添付情報について

相続手続きにおける「相続人の確定」は、相続財産の分配や手続きを進める上で最も重要なプロセスの一つです。このプロセスでは、通常、相続人の身分を証明するために戸籍謄本や除籍謄本が提出されます。しかし、戦災や自然災害などの理由でこれらの書類が提出できない場合、どのように相続人を確定させるかが問題となります。この点に関する取り扱いについて、昭和44年3月3日付けの民甲373号通達と平成28年3月11日付けの民二219号通達での変更点を踏まえ、以下に整理します。


目次


1. (昭44.3.3民甲373号)の取り扱い


2. 平成28年3月11日付け(平28.3.11民二219号)での変更点


3. まとめ

(論点)除籍等の滅失等についての相続登記の添付情報について

1. (昭44.3.3民甲373号)の取り扱い


 昭和44年の民甲373号通達では、戸籍や除籍が提出できない場合の相続手続きに関する取り扱いが定められていました。この通達は、主に以下のような状況に対応するために発出されました。


 まず、戦災や災害によって戸籍が焼失した場合や、長期間にわたり戸籍が適切に保管されていなかった結果、必要な戸籍や除籍を提出できない場合がありました。このような状況下では、相続人の確定が難しくなるため、民甲373号通達では、相続人全員による「他に相続人はいないことの証明書」の提出が要求されていました。


2. 平成28年3月11日付け(平28.3.11民二219号)での変更点


 平成28年の民二219号通達では、昭和44年の取り扱いを見直し、相続人の確定に関する取り扱いが緩和されました。主な変更点は以下の通りです。


 まず、戸籍や除籍が提出できない場合、相続人の確定に関する調査を行い、すでに滅失している戸籍等については、行政が発行する「滅失証明書」に添付を従来通り求めることは引き続き必要です。


 また、特に戦災や災害により戸籍が消失している場合でも、可能な限りの資料を収集し、それらを基に相続人を確定することが求められるようになりました。このように、平成28年の通達では、相続人全員による証明書の提供が不要となりました。これは、昭和44年の回答からすでに50年が経過しており、相続人全員の同意を得ることが困難な事案が増加していることを鑑み、相続人全員の同意書及び印鑑証明書の添付がなくても、除籍等の滅失証明書等の行政機関の証明書があれば、相続登記は受理されるとされました。

(論点)除籍等の滅失等についての相続登記の添付情報について

3. まとめ


①昭和44年3月3日付け(昭44.3.3民甲373号)の取り扱い


昭和44年の民甲373号通達では、戦災や災害によって戸籍や除籍が焼失し、これらを提出できない場合に対応するための取り扱いが定められていました。この通達では、相続人の確定が難しい場合、相続人全員による「他に相続人はいないことの証明書」の提出が求められ、相続手続きを進めるための証拠とされていました。


➁平成28年3月11日付け(平28.3.11民二219号)での変更点


平成28年の民二219号通達では、昭和44年の取り扱いが見直され、相続人の確定に関する手続きが緩和されました。具体的には、相続人全員による証明書の提供が不要となり、行政機関が発行する「滅失証明書」などの証明書があれば、相続登記が受理されるようになりました。この変更は、相続人全員の同意を得ることが困難な事案が増加したことを考慮したもので、滅失した戸籍に代わる証明手段が整備されたことにより、相続手続きがより円滑に進められるようになりました。

(論点)生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をすることで得られる効果

(論点)生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をすることで得られる効果

生存配偶者が姻族関係終了の意思表示を行うと、亡くなった配偶者の親族(姻族)との法律上の関係を解消できます。これにより、扶養義務などに関する権利が消滅し、心理的・社会的負担も軽減されます。手続きは市町村役場に「姻族関係終了届」を提出することで行い、慎重な判断が求められます。


目次


1. 姻族関係とは


2. 姻族関係終了の意思表示の意義


3. 効果の概要


4. 手続きの流れと注意点


5. 結論

(論点)生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をすることで得られる効果

1. 姻族関係とは


 姻族関係とは、結婚によって配偶者を通じて形成される親族関係を指します。具体的には、夫や妻の親や兄弟姉妹、そしてその配偶者などが姻族に該当します。姻族は、日本の民法上、配偶者とともに家族として扱われる存在であり、法律上の権利や義務が発生することがあります。例えば、扶養義務や相続に関する権利などが姻族に関する法律的な関係です。


 しかし、姻族関係は血縁による親族関係とは異なり、結婚や死亡などの状況に応じて変化するものです。特に配偶者が死亡した場合、生存配偶者は姻族関係を維持するか、終了させるかを選択することができます。これを可能にするのが、民法第728条第2項に定められた「姻族関係終了の意思表示」です。


2. 姻族関係終了の意思表示の意義


 姻族関係終了の意思表示は、配偶者が死亡した後に残された生存配偶者が、配偶者の親族(姻族)との法律上の関係を終了させるための手続きです。この意思表示により、生存配偶者は法律的に姻族との関係を解消し、その後は法的な親族関係として扱われなくなります。

(論点)生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をすることで得られる効果

3. 効果の概要


 姻族関係終了の意思表示を行うことにより、生存配偶者は以下の効果を得ることができます。


①法律上の親族関係の終了

姻族関係が終了すると、姻族とは法律上の親族関係が消滅します。これにより、姻族に対する扶養義務や相続に関する権利が消滅し、法律的な負担や義務が軽減されます。特に、配偶者の親や兄弟姉妹に対する扶養義務が解消されることは、生存配偶者にとって重要な効果です。


➁相続関係の明確化

姻族関係が終了することで、相続における権利関係が明確になります。姻族との関係が続く場合、複雑な相続問題が生じる可能性がありますが、関係を終了させることで、生存配偶者が自らの財産を守りやすくなります。これにより、将来的な相続争いを防ぐ効果も期待できます。

※ただし、子供がすでにいる場合ですと、その子供が相続人となるケースが存在します。


③感情的・心理的な安定

配偶者の死後、姻族との関係が負担となることがあります。特に、義父母や義兄弟姉妹との関係が緊張している場合、関係の継続は生存配偶者にとって大きな精神的ストレスとなり得ます。姻族関係を終了させることで、これらの感情的負担を軽減し、新たな生活を始めやすくなります。


④社会的な義務の軽減

姻族関係が続く場合、法事や冠婚葬祭などの社会的義務が生存配偶者に課されることがあります。これらの義務が生存配偶者にとって負担となる場合、姻族関係の終了により、これらの義務から解放されることが可能です。これにより、社会的なストレスや負担を軽減することができます。


4. 手続きの流れと注意点


 姻族関係終了の意思表示は、市町村役場に「姻族関係終了届」を提出することで行います。この手続きにより、戸籍に記載され、法的な効力が発生します。意思表示は配偶者の死亡後、随時行うことができ、特に相続や扶養義務の整理を考慮したうえで、速やかに手続きを進めることが望ましいです。


 ただし、姻族関係終了の意思表示を行った場合、その後、再び姻族と法律上の関係を結ぶことはできません。また、この意思表示が義父母や他の姻族に与える感情的な影響も無視できません。慎重な判断とともに、家族間の感情や関係性を考慮することが重要です。

(論点)生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をすることで得られる効果

5. 結論


 生存配偶者が姻族関係終了の意思表示を行うことで、法律的な義務や権利から解放され、相続関係の整理や感情的な負担を軽減することができます。この手続きは、生存配偶者が配偶者の死後、新たな人生を歩むための一助となりますが、その影響と慎重な判断が求められます。法律的な効果に加え、家族や姻族との感情的な側面も含めて総合的に判断することが大切です。

(論点)相続人の確定について(相続放棄のタイミング)

(論点)相続人の確定について(相続放棄のタイミング)

相続の際、相続放棄の話の中で、「もう相続放棄の手続きをしたのだから、今回の相続放棄も大丈夫ですよね。」とおっしゃられる方がいますが、実は、相続放棄は各被相続人毎にしなければなりません。また、未成年者を相続放棄をする場合には、親権者が法定代理人として相続放棄手続きをすることになりますが、「利益相反行為」を考慮に入れる必要性がります。その他注意点について述べたいと思います。


目次


1.代襲相続した相続人の一人が死亡した場合


2.未認知の非嫡出子が父親の養子になっていた場合


3.親権者が親権に復する子を代理して相続放棄手続きをする場合

(論点)相続人の確定について(相続放棄のタイミング)

1.代襲相続した相続人の一人が死亡した場合


 祖父甲が亡くなる前に、父親である乙がすでに亡くなっていたため、乙の子供A、B、Cについて、甲の相続につき代襲相続が発生しています。甲には多額の借金があったためにB、Cは相続放棄手続きを行ったが、Aは相続発生時入院しており手続きができなかった。その後、B、Cの相続放棄手続受理されたのち、Aが死亡した。Aは生涯独身であった。


 このケースの場合、B、Cの甲に対する相続放棄の効力が、Aの相続についても及ぶのかどうかという点です。


 結論は、BCは甲の死亡で開始した相続権を放棄しても、Aの相続で開始した相続権を放棄したことにはならない。(登研384号)


 甲の相続権は、BCは相続放棄しているのでAが承継することになります。そして、Aが死亡したことで、相続の第3順位の兄弟姉妹に相続権が移ることになりますが、甲の相続権+Aの相続権の状態になっていますが、甲の相続権はAが引き受けている状態ですので、当然、Aの債権債務すべてを承継することになると考えられます。そのため、BCはAの相続について放棄する手続きを期間内に実施する必要があります。


※今回の事例では、BCが相続放棄をすることで新たに相続人が発生することはありませんが、新たに相続人になる方が出てくる場合には、一連の流れを一報入れて頂くようにお願いをしております。不意打ちでは、その次の手続きの際に協力していただけなる可能性が出てきますからね。


2.未認知の非嫡出子が父親の養子になっていた場合


 未認知の非嫡出子が父親の養子になっていたが、養子として相続放棄手続きをしました。その後、死後認知の裁判が確定した場合、非嫡出子としての相続権も取得しない。(昭48.8.5第2688号)養子という法律上子供としての地位を有していたのに相続を放棄しているため、その後、裁判で死後認知が確定しても、相続権は復活しないというものです。


(論点)相続人の確定について(相続放棄のタイミング)

3.親権者が親権に復する子を代理して相続放棄手続きをする場合


 この場合、親権者である親が同一の相続において相続権を持っているかどうかで見ていきます。相続権を持つ場合には、「利益相反行為」となりますので、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。


 同一の相続で相続権を持たない場合には、利益相反行為とはなりません。また、同一の相続で相続権を有する場合でも、利益相反とはならないケースが存在します。


 それが「親権者がその親権に復する子を代理して相続放棄をする場合でも、親権者がすでに相続放棄をしているか、又は子と同時に相続放棄をするときは、子を代理してした相続放棄は利益相反行為には該当しません。(最判昭53.2.24)

(論点)相続人の確定について(相続放棄のタイミング)

4.その他、関連事項


 ①生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をして、市町村長に届出をしても、その者の相続権は奪われない。(登研406号)


 ➁胎児は相続放棄できない。(昭36.2.20法曹会議決議)


 ③相続放棄を証する情報から、受理新お案の日の前日に申述人の一人が死亡していることが認められる場合でも、当該相続登記は受理される。(昭47.5.2第1776号)


  ※相続放棄申述の時点で生存していれば、その申述は有効だから。

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

ここでは、一般的な法定相続人の確定ではなく、レアケースとはなりますが、血族相続人の地位を有している養子、配偶者相続人の地位を有している養子のケースや、二重の相続資格者の相続放棄についての先例について解説をいたします。ポイントは、二重の地位について、法定相続分を双方もらえるのか、片方だけなのかという点と、二重の地位の片方だけ相続放棄ができるのかどうかという点になってくると思います。


目次


1.血族相続人の資格を有している場合の相続分

2.配偶者相続人の資格と結相続人の資格を有する場合の相続分

3.二重の相続資格者の相続放棄(事例1)

4.二重の相続資格者の相続放棄(事例2)

5.まとめ

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

1.血族相続人の資格を有している場合の相続分


 前提として父親 甲、母親 乙の子供 長男B、次男丙と丙の子A(甲からすると孫)がいます。甲の生前にAを甲の養子としていました。


 自己の孫であるAを養子としている行が死亡した場合、Aは、甲の養子として、また丙を代襲して2つの身分で相続分を取得することになる。(昭26.9.18民甲1881号)

 ここでのポイントは、代襲の孫としての地位と、養子としての地位、双方で相続分を取得できる点です。

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

2.配偶者相続人の資格と結相続人の資格を有する場合の相続分


 下図において、Aは配偶者としての相続分のみを取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得できない。(昭23.8.9民甲2371号)


前回の孫と養子の関係と異なり、配偶者と養子(兄弟姉妹)では、配偶者の地位しか主張できないということです。

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

3.二重の相続資格者の相続放棄(事例1)


 下図において、Bが養子として相続放棄をした時、Bが兄弟姉妹の立場で相続することができるかが問題となります。この場合には、兄弟姉妹としての相続権についても放棄の効果が及びます。(昭32.1.10民甲61号)


※相続放棄は単純明快である必要があり、血族相続人としての相続権の一部に対する放棄は認められないとして画一的処理を図る必要があるためであるとされています。

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

4.二重の相続資格者の相続放棄(事例2)


 配偶者と妹としての祖王族人の資格を併有する者(配偶者とともに養子となる養子縁組をしているケース)から相続による所有権移転の登記が申請され、相続を証する情報として、戸(徐)関の謄本及び相続放棄申述受理証明書のほか、「配偶者として相続の放棄異をしたことを確認することができる相続放棄申述書の謄本及び妹としては総ぞ億の放棄をしていない旨記載された印鑑証明書付きの上申書が提供された場合」、配偶者としての相続の放棄の効果は、妹としての相続人の資格には及ばないものとして取り扱い、本件の申請を受理して差し支えない。(平27.9.2民二363号)


事例1では、「相続放棄は単純明快であるべき」としている一方で、相続放棄について相続人の地位を分けて考えているようにも見えます。一見、全く反しているように考えることもできますが、もう一方の相続人としての地位について、要件付きで受理しても差し支えないという取り扱いとなっています。

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

5.まとめ


 このように、相続人としての複数の地位を有する方たちの権利について、認められる範囲や、相続放棄などの意思表示をした際に、どこの範囲までの放棄をしたのかという点が非常に重要となってくることが解ると思います。


 ご自身のケースはどうなのかについては、今回のケースが当てはまらない場合には、専門家の相談を受けることをお勧めいたします。

(論点)相続手続きを始める前に確定すべきこと2選

(論点)相続手続きを始める前に確定すべきこと2選

相続において最も重要なステップの一つが、「相続人の確定」と「相続財産の確定」です。これらの手続きを適切に行うことで、後のトラブルを避け、スムーズな相続手続きを進めることが可能となります。専門家に相談する際に、専門家の立場からお話をすると、この2点が確定していない状態では、相続手続きを進めることはできません。無料相談で、時間を有効活用することができるようになります。


目次


1. 相続人の確定


2. 相続財産の確定


結論

(論点)相続手続きを始める前に確定すべきこと2選

1. 相続人の確定


a. 相続人とは?


 相続人とは、被相続人が亡くなった際に、その遺産を受け継ぐ権利を有する者を指します。相続人の範囲は民法で定められており、基本的には配偶者と血縁関係にある親族が該当します。具体的には、配偶者は常に相続人となり、これに加えて以下の順位で血縁者が相続人となります。


第一順位: 子(嫡出子、非嫡出子、養子を含む)

第二順位: 直系尊属(主に父母)

第三順位: 兄弟姉妹


相続人の確定は、これらの順位を確認することで行います。なお、第一順位に該当する相続人がいない場合にのみ、第二順位が相続人となり、さらに第二順位の相続人もいない場合に第三順位が相続人となります。


b. 相続人の特定


 相続人の特定作業には、戸籍謄本の取得が必要です。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、全ての相続人を確認することが求められます。これにより、相続人の数やその相続割合を確定させます。


 また、注意すべき点として、相続人が養子である場合や、認知された子がいる場合は、追加の戸籍調査が必要になることがあります。さらに、被相続人が複数回結婚している場合は、前妻・前夫との間に生まれた子も相続人となるため、これらの状況も慎重に確認する必要があります。


c. 相続放棄と限定承認


 相続人の中には、相続を放棄する場合や限定承認を行う場合があります。相続放棄とは、全ての遺産を受け取らない意思を表明することで、家庭裁判所に申立てを行います。限定承認は、相続財産が負債を上回る場合に、その超過部分のみを承認する手続きです。これらの手続きを行うことで、相続人が負うリスクを軽減することができます。

(論点)相続手続きを始める前に確定すべきこと2選

2. 相続財産の確定


a. 相続財産とは?


 相続財産とは、被相続人が死亡時点で所有していた全ての財産を指します。これには、現金や預貯金、不動産、有価証券、車両などのプラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金、ローンなどのマイナスの財産も含まれます。


b. 財産の調査方法


 相続財産を確定するためには、まず被相続人の財産の全体像を把握することが必要です。これには、銀行口座の取引履歴、不動産登記簿、保険証券、借入契約書などの書類を収集し、財産をリストアップします。また、被相続人が複数の銀行に口座を持っていた場合や、未公開の株式を所有していた場合など、財産の全容を確認するためには専門的な知識が必要となることもあります。


 さらに、被相続人が賃貸不動産を所有していた場合、賃貸借契約書を確認し、将来的な収益やリスクを考慮に入れる必要があります。この段階で、財産がどのように分配されるべきか、遺言が存在するかどうかも確認することが重要です。


c. 財産の評価と分割


 相続財産の評価は、現実的な市場価値に基づいて行う必要があります。不動産の評価には不動産鑑定士、株式や有価証券の評価には証券会社の専門家が関与することが一般的です。財産の評価が終わったら、相続人間で公平に分配する方法を検討します。遺産分割協議が必要な場合は、相続人全員が同意することが求められます。


d. 注意点と専門家の役割


 相続財産の確定は、法律や税務の知識が必要とされる複雑な作業です。特に相続税の申告期限は、被相続人が死亡してから10ヶ月以内であるため、早期の対応が求められます。相続財産の確定が難航する場合や、相続人間での争いが生じた場合は、司法書士や税理士、弁護士などの専門家に相談することが望ましいです。


※不動産だけに限って言えば、その年度の「固定資産税評価証明書」を取得することで、役場単位での不動産を特定することができます。令和6年4月1日より「相続登記義務化」が始まっています。毎年、固定資産材納税通知書の内容のみを相談時に持参される方がいらっしゃいますが、不動産に漏れがあった場合、再度相続登記をしなければならなくなってしまいます。相談時には、その年度の「固定資産税評価証明書」を取得するようにしてください。

(論点)相続手続きを始める前に確定すべきこと2選

結論


 「相続人の確定」と「相続財産の確定」は、相続手続きを円滑に進めるための基盤となる重要なプロセスです。これらのステップを確実に行うことで、相続に関するリスクやトラブルを最小限に抑え、相続人全員が納得できる形で遺産を受け継ぐことが可能になります。専門家の助けを借りながら、慎重に進めていくことが肝要です。

(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

遺言書に全財産の半分を相続人Aに相続させ、残りの半分をXに贈与(遺贈)するとの記載がある場合、特に不動産の登記をする場合、各ケースごとに、どのような手続きになるのかについて解説をしたいと思います。また、これらを踏まえて、専門家に相談することに優位性についてもお話をしたいと思います。


目次


1.遺贈の登記と相続登記、どちらが先に手続きをするのか?


2.相続登記後に被相続人が土地の一部を売却する契約をしていた場合


3.もうお気づきになっているとは思いますが・・・・

(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

1.遺贈の登記と相続登記、どちらが先に手続きをするのか?


 「全財産の2分の1は相続人Aに相続させ、残りの2分の1はXに贈与する」旨の遺言書があった場合、「遺贈」で一部移転登記を申請した後、持分全部移転の相続登記を申請する(登研523号)。


 つまり、遺贈による登記を相続登記に先んじてしなければならないという点です。相続登記と遺贈の登記は、根本的に異なる点が、「共同申請」か「単独申請」かという点です。相続登記は、単独申請であるため亡くなった名義人の住所に変更があったとしても、それを証明する資料を添付すれば、同一人認定していただけますが、遺贈の場合、「住所変更の手続」を要します。詳しいことは、専門家にご相談ください。


※遺贈の単独申請について(要件を確認してください)


 法律改正により、令和5年4月1日からは、遺贈により不動産を取得した相続人(受遺者=登記権利者)は、その所有権の移転の登記を単独で申請することができるようになります。 なお、令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた相続人(受遺者)についても同様に、令和5年4月1日からは、単独で所有権の移転の登記を申請することができるようになります。

(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

2.相続登記後に被相続人が土地の一部を売却する契約をしていた場合


 仮に、A名義の甲土地をA死亡により、その子B及びCに2分の1づつ相続登記をした後に、実はAが生前にDに持分2分の1を売却していたという事実が判明したというもの。


 本来の事実関係からすると、A死亡時にその持分の2分の1はDのものだったということになります。これを実現しようとすると、すでに申請している相続登記は、事実とは異なる内容ということになり、抹消登記をすべきということになります。


 しかし、この場合、「B持分4分の1、C持分4分の1移転」という、すでになされている相続登記を活かし、相続人から等しい割合による持分2分の1の移転登記で、実態に合わせることが可能です。

(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

3.もうお気づきになっているとは思いますが・・・・


 実は、不動産登記法という法律について、長年、司法書士と法務局の登記官との間で意見交換を実施して、法律に則り、実務に即した形での運用を念頭に様々な「先例」等が存在いたします。


 登記簿の全部事項証明書に記載されている内容については、実態を表現するように申請書類を準備し、実態に合った形での登記実行がなされています。


 受験生時代に、民法で法令上に則った形で実現する登記と、不動産登記法を学習した際に出てくる、「いわゆる便宜上の登記」というものを区別し、関連付けながら進めていったことを思い出します。多くの方は、この部分でつまずいているのではないでしょうか。


 また、相続登記で、ご近所の方と自分のものが微妙に異なるなんてのも、これらが関連している可能性もあります。


 そうなんです。相続登記とひとくくりにお話をしておりますが、実はお一人お一人、その対処すべき内容というのが変わってくることが多いです。ですので、専門家への相談ということが、非常に大事になってくると考えております。

(論点)相続登記の可否について(遺産の農地について)

(論点)相続登記の可否について(遺産の農地について)

相続について、今一度確認しておきます。民法896条「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」とあります。遺産に含まれる不動産について、各ケースについて考え、相続登記の要否・可否について解説したいと思います。


目次


1.農地の売主に相続発生

2.農地法の許可を停止条件とする仮登記がある場合

3.仮登記が存在する場合で、すでに相続登記がある場合

4.それでは、農地法許可申請前に売主が死亡した場合

5.農地法の許可到達前に買主が亡くなった場合

(論点)相続登記の可否について(遺産の農地について)

1.農地の売主に相続発生


 「農地の売主が死亡した後、農地法3条の許可があった場合には、その農地の相続登記を経た後でなければ、買主への所有権移転の登記をすることはできない。」(昭40.3.30民三309号)


 ①売買契約(売主甲、買主乙)

 ➁甲死亡(甲の子丙へ相続登記)

 ③乙に対する農地法3条許可発行(売買を原因とする丙から乙への所有権移転登記)


このケースでは、①から③の順序で登記をしなければなりません。なぜなら、農地法の許可が所有権移転の対抗要件である以上、その許可前に相続が発生すると、丙が当該農地をいったん取得することになるためです。しかし、丙は甲の所有権移転義務・登記移転義務を承継していますので、その後、丙から乙への所有権移転登記を行うことになります。


2.農地法の許可を停止条件とする仮登記がある場合


 前の事例では、許可待ちの状態でしたが、今回の事例では、農地法の許可を条件に仮登記を実施している点が異なります。「仮登記」というキーワードが出てきましたので、説明いたします。


(仮登記)「不動産登記における所有権移転の仮登記とは、所有権の移転が未確定の段階で、将来的に所有権が移転する可能性があることを第三者に対して公示するための登記手続きです。通常、仮登記は本登記が行われるまでの一時的な措置として利用されます。たとえば、不動産売買契約が締結されたが、売買代金の全額がまだ支払われていない場合や、登記原因証明情報が未完備である場合などに、所有権移転の仮登記が行われます。仮登記をしておくことで、後日正式な登記がなされた際に、仮登記の順位に基づいて効力が発生するため、登記権利者の権利保全に役立ちます。ただし、仮登記には本登記に比べて制約があり、第三者への対抗力が限定されるため、最終的には本登記を行うことが重要です。」

 それでは、今回のように農地法の知事の許可を停止条件とする仮登記がすでに登記されている場合、許可が発行され仮登記に基づく本登記をする場合、許可前に所有権登記名義人が死亡している時でも、「本登記を前提として、相続登記をすることを要しない。(昭35.5.10民三328号)

 この先例は、本来は、相続登記をしてから本登記をすべきですが、その場合せっかく実施した相続登記はすぐに抹消されることになるため、便宜、相続登記の省略を認めたものです。

(論点)相続登記の可否について(遺産の農地について)

3.仮登記が存在する場合で、すでに相続登記がある場合


 順位1番で甲が名義人となっており、順位2番で甲から乙への所有権移転仮登記の後、順位3番で甲の子丙への相続登記がある場合を考えます。


 農地法の許可が到達した時点で、丙と乙が順位2番の仮登記に基づく本登記をすることになります。この本登記がなされた場合、順位3番の相続登記は、職権(登記官の権限により)で抹消されることになります。(登研576号)


4.それでは、農地法許可申請前に売主が死亡した場合


 農地法の許可申請前に売主が亡くなった場合ですので、許可を申請する当事者の一方がすでにいないわけです。ですので、相続登記を行い、この相続人と買主とで、農地法の許可を申請し、手続きを進めていくことになります。


5.農地法の許可到達前に買主が亡くなった場合


 この場合、すでに亡くなっている買主への許可は無効であり、買主の相続人が当該許可を証する情報を提供して所有権移転登記を申請しても受理されません。(昭51.8.3民三第4443号)。なぜなら、亡くなった買主について農業適格者としての許可証が、農地法の許可に当たり、亡くなった買主の相続人が農業適格者の判断は、当該許可証では行われていないために、無効という扱いとなります。この場合は、改めて売主と買主の相続人とで許可申請をやり直す必要があります。

(論点)相続登記に権利証は必要か?

(論点)相続登記に権利証は必要か?

結論から言いますと、書類がすべてそろっているようであれば、権利証の提供は不要となります。しかし、提出すべき書類の中には、相続が発生するタイミングによっては、入手できないものも存在します。今回は、通常の取引(売買)では、権利証が必要となるのに、相続では不要になるのか、またどのようなときに必要となるのかについてお話をしたいと思います。


目次


1.不動産の登記の概略


2.不動産の相続登記に必要な書類について


3.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限


4.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限経過している場合の対応


5.まとめ

(論点)相続登記に権利証は必要か?

1.不動産の登記の概略


 売買の場合、売主(現所有者)と買主がいます。この2当事者間で、売る意思表示と、買う意思表示が合致すれば、売買は成立します。それでは、相続登記を見てみましょう。被相続人(亡くなった方で現所有者)と、相続人(遺産分割協議により特定の相続人とする)と、こちらも2当事者がいるように思えるかもしれませんが、1方当事者である被相続人は亡くなっており、意思表示をすることはできません。つまり、相続とは、被相続人の身の上に発生した時、相続人全員に対して平等にその権利と義務が承継されることを指します。意思表示は関係ありません。そのため、被相続人が多額の借金を残して亡くなり、めぼしい財産もない場合には、「相続放棄」という手続きにより、すべてを承継する相続人ではなかったことにしてもらうことができます。


2.不動産の相続登記に必要な書類について


 相続登記に必要な添付書類について、「亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍」「相続人全員の戸籍」「不動産を取得する者の住民票の写し」「遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書(相続登記の場合、期間制限はなし)」などに加え、登記簿上の被相続人の本人特定のために、「住民票の除票」又は「戸籍の附票(名義人の住所の履歴が記載されたもの)」が必要となります。不動産を異なるタイミングで取得しているような場合ですと、A不動産では、A市住所、B不動産の名義人の住所が、B市住所ということもあり得ます。そして、登記官及び登記のシステムは、同一人の判定を「氏名」と「住所」で行っているため、住所がつながらなければ、同一人とは見ていただけないということになります。

(論点)相続登記に権利証は必要か?

3.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限


 今までは住民票の除票も戸籍の附票も保管期間が5年間だったため、抹消されて取得することができませんでした。そのため、5年以上前に死亡した被相続人の相続登記を申請するためには、住民票の除票と異なる書類を用意しなければならず、相続登記の現場では難儀したものです。しかし、法改正によって150年間は保管してくれることになりましたので、その問題は解決することができます。


 しかし、保管期間が150年に改正されたのは、令和元年6月20日以降の住民票の除票や戸籍の附票ですから、令和になる前の平成以前の住民票の除票や戸籍の附票が取得できないことに違いありません。


4.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限経過している場合の対応


 保存期限が超過している住民票の除票や戸籍の附票は取得することはできませんので、「調査はやりましたが見つからなかった証拠」として、「廃棄証明書」を発行してもらうようにします。


 ここで初めて、登記名義人の特定をするために次の手が打てるわけです。公の資料での同一人の証明は困難となりました。そこで使うのが「権利証」です。


 しかし、権利証も紛失しているケースは十分考えられます。


 そこで、権利証までない場合には、戸籍の本籍地として記載されている住所表記が、登記簿の住所と同じであれば、同一人の判断をしていただけます。


 これもだめだった場合、相続人全員の同意に基づく「上申書」を提出することになります。

(論点)相続登記に権利証は必要か?

5.まとめ


 不動産登記における売買は、売主と買主の意思表示により成立し、その後登記されます。一方、相続登記では、被相続人の意思表示は関係なく、死亡と同時に相続人へ権利と義務が承継されます。相続登記には「戸籍」「住民票の写し」などが必要で、住所がつながらないと同一人物と認められません。以前は住民票の除票や戸籍の附票の保管期限が5年でしたが、法改正により150年に延長されました。ただし、平成以前の書類は対象外で、取得できない場合は「廃棄証明書」を発行し、他の証明手段(権利証の添付)を検討します。

(論点)一申請情報申請によって申請をすることの可否(共同根抵当権変更登記申請について)

(論点)一申請情報申請によって申請をすることの可否(共同根抵当権変更登記申請について)

既に設定された共同根抵当権について、変更登記のご依頼がありました。概略は、債権の範囲の変更と、債務者に法人を追加する変更という内容でした。変更の内容は、2つでありますが、一つの変更申請書で登記をすることができるのでしょうか。少し解説したいと思います。


目次


1.共同根抵当権で、2つの項目を変更する場合


2.司法書士作成の報告形式の登記原因証明情報をする場合


3.今回のケースについて(契約書が2通)


4.一申請情報申請の要件


5.まとめ

(論点)一申請情報申請によって申請をすることの可否(共同根抵当権変更登記申請について)

1.共同根抵当権で、2つの項目を変更する場合


 通常ですと、金融機関から司法書士に共同根抵当権の変更登記申請の依頼と併せて、「根抵当権変更契約書(債権の範囲の変更及び債務者の追加変更)」を作成してもらえないかということで話があります。ですので、登記原因証明書として提出する契約書の内容は、登記の申請内容に則したものとなります。登記原因証明情報は1通ですので、形式上も問題なく1つの申請で申請することが可能です。また、契約書に不動産の表示も含まれますので、物件印字も契約書作成の段階で記載することができます。


2.司法書士作成の報告形式の登記原因証明情報をする場合


 今回のように変更登記申請の内容を取りまとめ、権利者・義務者の記名押印及び不動産の表示等の法令上の要件を充たした内容となっていることが必要です。この「報告形式の登記原因証明情報」は、登記申請としては有効です。しかし、「原本還付されない」という難点があります。報告形式の登記原因証明情報は、法務局に差し入れてしまうことになりますので、当然、金融機関と設定者間の契約書は必要となります。それだったら初めから、一つの契約書に取りまとめておいた方がいいということで、私の経験上では、ほとんど取り扱ったことはありません。


3.今回のケースについて(契約書が2通)


 今回のケースについては、「根抵当権変更の契約書様式があるので、契約書記載後お渡しをして、その後物件印字等をすることになりました。変更登記申請後に、融資の実行が控えており、この点も考慮しなければなりません。


 実行日の前日に書類を預かりに行きました。「登記原因証明情報」としての「共同根抵当権変更契約書」が、債務者のものと、債権の範囲の変更のものと2通ありました。変更の契約日は双方合わせていました。


 ここで改めて「一申請情報申請」の要件について確認しました。

(論点)一申請情報申請によって申請をすることの可否(共同根抵当権変更登記申請について)

4.一申請情報申請の要件


 「同一登記管轄区域の数個の不動産につき同一の申請情報で登記申請することが認められるもの」とあります。わかりやすく見ていきますと


 ①管轄登記所が同一であること ※あります


 ➁登記の目的が同一であること ※共同根抵当権の変更です


 ③登記原因及びその日付が同一であること ※年月日変更です(先例では共同根抵当権の場合、日付が異なっていてもできるとの先例があります)


 ④申請人が同一であること


  ※所有者が土地と建物で異なっている(抵当権の抹消登記の場合では、先例がある)


いくつか不安要素はあるものの、先例などを短時間で調べ上げて、申請書を提出しました。勿論、登記原因証明情報は、2通の契約書で「原本還付手続」をしました。

(論点)一申請情報申請によって申請をすることの可否(共同根抵当権変更登記申請について)

5.まとめ


 登記手続きが完了する前に、登記官の方から連絡がありました。「先生もご存知の通り・・・・・」という内容でしたが、通常は「契約書」は司法書士で作成していたが、今回は金融機関所定の要式での対応となったことと、共同根抵当権の場合、原因日付が同じではなくても申請ができるが、今回の申請は登記原因証明情報が2通となってしまっているため、日付は統一させていただいた旨をしっかりお話をさせて頂きました。


 「まあ、今回のところは、」というところで、何とかなりました。


 次回からは、金融機関とお役様との間の契約書は作成していただきとして、司法書士側から、変更内容の登記原因証明情報として、報告形式の登記原因証明情報の作成の提案をさせて頂こうと思いました。

(論点)相続トラブル5選

(論点)相続トラブル5選

相続に関するトラブルは、多くの家族にとって避けたい問題ですが、現実にはしばしば発生します。以下では、相続における代表的なトラブルを5つ取り上げ、それぞれの具体例や解決策を交えながら説明します。


目次


1. 遺言書の有無と内容の不備


2. 生前贈与の問題


3. 相続人間のコミュニケーション不足


4. 財産の評価額に対する争い


5. 遺留分侵害の問題


結論

(論点)相続トラブル5選

1. 遺言書の有無と内容の不備


トラブルの内容

遺言書がない場合や、遺言書に不備がある場合、相続人同士で意見が分かれ、トラブルに発展することがあります。特に遺産分割の割合や特定の財産の分配方法について争いが生じやすいです。


具体例

例えば、父親が亡くなり遺言書が見つからなかった場合、相続人である兄弟姉妹の間で家屋や預貯金の分配について意見が対立することがあります。また、遺言書があっても、内容が曖昧で解釈が分かれる場合や、法律的に無効とされる記述が含まれている場合もトラブルの原因となります。


解決策

遺言書を作成する際には、公証人による公正証書遺言が推奨されます。これにより、遺言の内容が法的に有効であり、紛争のリスクを最小限に抑えることができます。また、遺言書の内容は定期的に見直し、家族状況の変化や法改正に対応することが重要です。


2. 生前贈与の問題


トラブルの内容

生前贈与は、相続税対策として有効ですが、適切な手続きが行われないとトラブルの元となります。特に、贈与の公平性や贈与税の問題が発生することがあります。


具体例

例えば、親が長男にのみ大きな額の生前贈与を行った場合、他の兄弟姉妹が不公平だと感じ、相続時に争いが生じることがあります。また、贈与税の申告が適切に行われていない場合、税務署から追徴課税が発生するリスクもあります。


解決策

生前贈与を行う際には、全ての相続人に対して公平であることが重要です。また、贈与税の申告を確実に行い、税務リスクを回避するために、専門家の助言を受けることが推奨されます。

(論点)相続トラブル5選

3. 相続人間のコミュニケーション不足


トラブルの内容

相続人間のコミュニケーションが不足していると、誤解や不信感が生まれ、トラブルに発展しやすくなります。特に、相続財産の分配方法や手続きについて意見が異なる場合に問題が顕在化します。


具体例

例えば、相続手続きの進行状況を一部の相続人のみが知っている場合、他の相続人が情報を共有されず、不信感を抱くことがあります。その結果、話し合いが難航し、法的手段に訴えるケースも少なくありません。


解決策

相続手続きにおいては、全ての相続人が情報を共有し、透明性を保つことが重要です。定期的な家族会議を開き、専門家を交えて話し合うことで、誤解や不信感を解消することができます。


※このコミュニケーション不足による問題を多く見てきましたが、子供たちの仲の良さは、被相続人(亡くなった方)を中心に形成されていたものであり、亡くなった後、それぞれの意見がぶつかるといったこともよくあります。きっと大丈夫だろうと安易に考えるのではなく、遺言書のように「形」に残す形で、ご自身の意思表示をしっかりしておき、その内容についての話も定期的にするようにしておくことをお勧めいたします。


4. 財産の評価額に対する争い


トラブルの内容

相続財産の評価額について相続人間で意見が分かれることがあります。特に、不動産や株式などの評価が難しい財産において、評価額の妥当性が争点となることが多いです。


具体例

例えば、親の遺産として残された不動産の評価額について、相続人の間で意見が分かれ、一方が過大評価だと主張し、他方が過小評価だと感じる場合があります。このような場合、相続財産の分配が進まず、長期的な争いに発展することがあります。


解決策

財産の評価は、公平な第三者である不動産鑑定士や公認会計士に依頼することが重要です。専門家の評価を基に話し合いを進めることで、トラブルを未然に防ぐことができます。


5. 遺留分侵害の問題


トラブルの内容

遺留分とは、法律で定められた最低限の相続分のことを指し、これを侵害する遺言書や生前贈与が行われると、相続人が異議を唱えることができます。遺留分が侵害された場合、遺留分減殺請求が行われることがあり、トラブルの原因となります。


具体例

例えば、親が遺言書で全ての財産を特定の子供に遺贈した場合、他の子供が遺留分を侵害されたとして遺留分減殺請求を行うことがあります。この請求が認められると、遺言の内容が変更されることになります。


解決策

遺言書を作成する際には、遺留分に配慮することが重要です。遺留分を侵害しないような分配方法を検討し、必要に応じて相続人と事前に話し合うことが推奨されます。また、遺留分に関する法的なアドバイスを受けるために、専門家の助言を仰ぐことが重要です。


結論


相続に関するトラブルは、多岐にわたりますが、事前の準備と適切な手続きを行うことで多くの問題を回避することができます。遺言書の作成や生前贈与の計画、相続人間のコミュニケーションの強化、専門家の助言を受けることが、円滑な相続手続きを実現する鍵となります。これらのポイントを押さえ、家族間の絆を守りながら相続問題を解決していきましょう。

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

不動産の相続登記をしないことで起こるデメリットは、法的、経済的、社会的な側面から多岐にわたります。以下にその主なデメリットを詳細に説明します。


目次


1. 法的デメリット


2. 経済的デメリット


3. 社会的デメリット


まとめ

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

1. 法的デメリット


(1) 権利の不確定性


相続登記を行わないと、相続人が法的に不動産の所有権を主張することが困難になります。登記は、所有権の公示機能を果たすため、登記がなければ第三者に対して所有権を主張することができません。その結果、相続人間での権利関係が不明確になり、紛争の原因となります。

また、その資産価値にもよると思いますが、相続人間で誰が実家を引き継ぐのかでもめるケースもあります。離島の一軒家で利用価値が居住以外に乏しく、周りの方も高齢化している場合などでは、引き受ける相続人の方にとっても負担になります。しかし、とりあえず誰が所有者なのかを確定しなければ、その処分もできない状態になってしまいます。

相続登記を放置することで、さらに相続が発生していくことになり、権利関係が時間の経過とともに複雑化するといったことも起こりえます。


(2) 売却・担保提供の制約


登記がされていない不動産は、売却や担保提供が困難です。買主や金融機関は、所有権が確定していない不動産を購入したり、担保として受け入れたりすることに慎重になります。これにより、相続人は不動産の流動性を失い、資金調達が困難になる可能性があります。

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

2. 経済的デメリット


(1) 税金の問題


相続登記をしないまま放置していると、固定資産税や都市計画税などの税金の支払いが滞る可能性があります。未登記の不動産に対する税金の支払い義務は相続人にありますが、誰が負担するのかが不明確になり、最終的には延滞金や罰則が科されることもあります。


(2) 相続税の課税


相続登記を行わない場合でも、相続税の課税対象となります。相続税の申告期限は、被相続人の死亡から10ヶ月以内ですが、登記をしないと適正な評価額を算出することが難しくなり、過少申告や延滞に繋がるリスクがあります。

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

3. 社会的デメリット


(1) 遺産分割協議の困難


相続人が複数いる場合、相続登記を行わないと、遺産分割協議が滞ることがあります。特に、不動産が共有名義となるケースでは、全ての相続人の合意が必要となるため、意見の対立が起きやすくなります。これにより、相続人間の関係が悪化し、協議が長期化する恐れがあります。


(2) 地域社会への影響


相続登記未登記の不動産が放置されると、空き家や荒れ地となり、地域の景観や治安に悪影響を及ぼすことがあります。また、管理が行き届かない不動産は、火災や倒壊などのリスクを伴い、近隣住民にとっても迷惑となります。

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

まとめ


不動産の相続登記をしないことは、多くのデメリットを伴います。法的な権利の不確定性から経済的な損失、さらには社会的な問題まで、幅広い影響が生じます。相続登記は、相続手続きの一環として速やかに行うことが重要であり、これにより相続人間の紛争を防ぎ、円滑な相続手続きと財産の有効活用が可能となります。相続登記を怠らず、早期に手続きを進めることが、相続人にとっての最善の策と言えるでしょう。

(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

相続時精算課税制度は、高齢者が生前に財産を贈与しやすくするために設けられた制度です。しかし、この制度を利用するにはいくつかの注意点があります。以下に、相続時精算課税を利用する際の注意点を5つのポイントにまとめて説明します。


目次


1. 適用条件の確認

2. 2500万円の特別控除の理解

3. 相続時の税負担

3. 相続時の税負担

4. 不動産の贈与に関する注意点

5. 制度利用の長期的な計画

結論

(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

1. 適用条件の確認


 相続時精算課税制度を利用するには、適用条件を満たしていることが必要です。具体的には、贈与者が60歳以上であり、受贈者が20歳以上の直系卑属(子や孫)である必要があります。また、適用を受けるためには、受贈者が「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出する必要があります。この条件を満たしていない場合、この制度を利用することはできません。


2. 2500万円の特別控除の理解


 相続時精算課税制度では、贈与者から受贈者に対して、2500万円までの贈与については贈与税が課されません。ただし、これを超える金額については、一律20%の贈与税が課されます。この2500万円の特別控除は一生に一度限りのものであり、超過分の贈与税は申告しなければなりません。この特別控除の適用範囲や計算方法をしっかり理解しておくことが重要です。


 そして、令和6年1月1日から、年間の贈与額から110万円の控除も追加されていますので、計画的に生前贈与を行えば、110万円の控除を複数年適用を受けることができます。

(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

3. 相続時の税負担


 相続時精算課税制度を利用すると、贈与された財産の価値は、贈与時の価値で相続財産に加算されます。相続時には、贈与時に課された贈与税額を差し引いた額で相続税が計算されます。このため、相続時に予想以上の税負担が生じる可能性があります。贈与時の財産評価額が相続時に増加する場合、相続税が高額になることを見越して、将来の税負担を考慮した計画を立てることが重要です。


 2500万円分の相続時精算課税を利用して贈与した場合の110万円は暦年贈与制度のように7年に遡っての相続財産への組み戻しはありません。


4. 不動産の贈与に関する注意点


 不動産を相続時精算課税制度で贈与する場合、その評価額を慎重に考慮する必要があります。不動産の評価額は市場価格に基づくため、贈与時と相続時で評価額が変動することがあります。特に地価が上昇している地域では、相続時に高額な評価額がつく可能性があり、結果として相続税が増加するリスクがあります。また、不動産を贈与する際には、登記費用や贈与税申告の手続きなどの追加費用も発生するため、事前にこれらの費用も考慮しておくことが重要です。


※110万円の控除(相続時精算課税制度も暦年贈与制度も含め)を有効利用するために、一度に所有権を移転するのではなく、「持分」を少しづつ計画的に生前贈与するケースもあります。詳しくは、税理士又は司法書士にご相談ください。


5. 制度利用の長期的な計画


 相続時精算課税制度を利用する際には、短期的な節税効果だけでなく、長期的な資産運用計画も考慮する必要があります。例えば、将来的に家族がどのように財産を活用するか、財産の分割方法や管理方法などを含めた総合的な資産計画を立てることが重要です。また、制度の利用を決定する前に、専門の税理士やファイナンシャルプランナーと相談し、個別の状況に応じたアドバイスを受けることも有効です。

(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

結論


 相続時精算課税制度は、贈与者が生前に財産を子や孫に移転しやすくするための有効な手段ですが、その利用には慎重な計画と適切な判断が求められます。適用条件の確認、2500万円の特別控除の理解、相続時の税負担の予測、不動産贈与の際の注意点、そして長期的な資産計画の策定といったポイントをしっかりと押さえて、制度の利用を検討することが重要です。適切な準備と計画を立てることで、将来の税負担を軽減し、家族の財産を効果的に管理することができます。


(論点)相続登記における注意点

(論点)相続登記における注意点

相続登記は、不動産を相続した際に、相続人がその不動産の所有権を正式に登記する手続きです。この手続きを適切に行わないと、後々の売買や譲渡が難しくなり、相続人間でのトラブルの原因となることがあります。相続登記における重要なポイントと注意点について、以下に詳しく説明します。


目次


1. 相続登記の必要性

2. 相続登記の法的期限

3. 必要書類の準備

4. 遺産分割協議書の作成

5. 法定相続分の確認

6. 相続税の申告

7. 不動産の評価額の確認

8. 登録免許税の支払い

9. 専門家の助言を受ける

10. 相続登記後の管理

まとめ

(論点)相続登記における注意点

1. 相続登記の必要性


 相続登記を行うことで、不動産の所有権を相続人に正式に移転します。この手続きを怠ると、相続人が不動産を売却する際に問題が生じたり、相続人間でのトラブルが発生する可能性があります。相続登記を早期に行うことで、相続手続きをスムーズに進めることができます。


2. 相続登記の法的期限


 2024年4月1日から、相続登記が義務化されることになりました。これにより、相続開始から3年以内に相続登記を行わなければなりません。この期限を過ぎると、過料が課される可能性がありますので、相続が発生したら速やかに相続登記の手続きを進めることが重要です。


3. 必要書類の準備


相続登記を行うためには、以下の書類が必要です:


被相続人の死亡を証明する書類:戸籍謄本や死亡診断書など

相続人を証明する書類:戸籍謄本や戸籍抄本など

不動産の登記簿謄本:法務局で取得

遺産分割協議書:相続人全員の合意に基づく遺産分割協議書

遺言書:遺言がある場合

固定資産評価証明書:市町村役場で取得

相続登記申請書:法務局で記入・提出


これらの書類を正確に準備し、不備なく提出することが重要です。

(論点)相続登記における注意点

4. 遺産分割協議書の作成


 遺産分割協議書は、相続人全員の同意のもとに作成される書類であり、不動産の分割方法や所有者を明記します。この協議書は全員の署名と押印が必要であり、不備があると相続登記が受理されないことがあります。遺産分割協議書の作成には、専門家の助言を受けるとスムーズに進められます。


5. 法定相続分の確認


 相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合、法律で定められた相続分(法定相続分)に従って相続することになります。法定相続分に基づいて相続登記を行う場合も、相続人全員の同意が必要です。法定相続分に従った相続は、トラブルを避けるために重要です。


6. 相続税の申告


 相続登記を行う前に、相続税の申告が必要な場合があります。相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内であり、期限内に申告を行わないと延滞税が課されることがあります。不動産の評価額を正確に算出し、必要な場合は相続税を適切に申告することが重要です。


7. 不動産の評価額の確認


 相続税の計算や相続登記の手続きには、不動産の評価額を確認する必要があります。評価額は、市町村役場で発行される固定資産評価証明書や、国税庁の路線価図などを参考にします。不動産の評価額を正確に把握し、相続税の申告や遺産分割協議書の作成に役立てます。


8. 登録免許税の支払い


 相続登記には、登録免許税がかかります。登録免許税は、不動産の評価額に応じて計算され、登記手続きの際に支払います。登録免許税の計算方法や支払い方法については、法務局や専門家に相談すると良いでしょう。


9. 専門家の助言を受ける


 相続登記は複雑な手続きであり、専門家の助言を受けることでスムーズに進めることができます。司法書士や弁護士に依頼することで、書類の準備や手続きの進行をサポートしてもらえます。また、相続税の申告についても税理士の助言を受けることで適切に対応できます。


10. 相続登記後の管理


 相続登記が完了した後も、不動産の管理や保全が重要です。相続した不動産を売却する場合や、賃貸する場合には、適切な手続きを行う必要があります。また、不動産の固定資産税の支払いも忘れずに行うことが大切です。

(論点)相続登記における注意点

まとめ


 相続登記は、不動産を相続する際に欠かせない重要な手続きです。相続登記を適切に行うことで、相続人間のトラブルを防ぎ、円滑な相続手続きを実現できます。以下のポイントを押さえて、相続登記を進めましょう:


相続登記の必要性と法的期限を理解する

必要書類を正確に準備する

遺産分割協議書を作成する

法定相続分を確認する

相続税の申告を行う

不動産の評価額を確認する

登録免許税を支払う

専門家の助言を受ける

相続登記後の不動産管理を行う

 

これらのステップを踏むことで、相続登記を円滑に進め、相続人全員が安心して不動産を受け継ぐことができます。

(論点)会社の代表者が亡くなった場合の相続の注意点

(論点)会社の代表者が亡くなった場合の相続の注意点

会社の代表者が亡くなった場合、法人の株式の相続は複雑で重要な手続きとなります。以下に、株式の相続について考慮すべき主要なポイントを5つに分けて説明します。


目次


1. 株式の評価と相続税

2. 会社の経営権の継承

3. 相続による会社の安定性の確保

4. 株式の譲渡制限と承認手続き

5. 専門家のサポート

6. まとめ

(論点)会社の代表者が亡くなった場合の相続の注意点

1. 株式の評価と相続税


株式の評価は相続税を計算するために重要です。株式の評価方法には以下のようなものがあります。


評価方法

上場株式:市場価格に基づいて評価されます。亡くなった日の終値、またはその前後1ヶ月の平均値などが基準となります。

非上場株式:評価が難しく、国税庁の「財産評価基本通達」に基づいて評価されます。主な評価方法には「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」があります。


相続税の計算

株式の評価額が確定したら、それを基に相続税が計算されます。相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。


2. 会社の経営権の継承


 株式を相続することで、会社の経営権も相続されることがあります。これにより、会社の経営に大きな影響を与える可能性があります。


経営権の移行

遺言の確認:被相続人が遺言を残している場合、その内容に従って株式が分配されます​)​。

遺産分割協議:遺言がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、株式の分配方法を決定します。

株主総会:株式の相続が確定した後、新しい株主は株主総会で承認を受ける必要があります。

(論点)会社の代表者が亡くなった場合の相続の注意点

3. 相続による会社の安定性の確保


 株式の相続によって会社の安定性が損なわれるリスクがあります。このため、事前に対策を講じることが重要です。


事前対策

株主間契約:株式の譲渡や相続に関する規定を事前に定めておくことができます。これにより、相続後の混乱を防ぎます​。

遺言信託:遺言書を信託会社に預け、専門家の管理下で株式の分配を行う方法です​。

株式分散の防止:株式の相続が複数の相続人に分散することを防ぐため、特定の相続人に集中させる方法も検討されます​。

※株式の分散は避けるべきです。例えば、定款を変更するためには、株主総会の特別決議が必要となります。要件は「原則として、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とする決議」です。つまり、2人で仲良く半分ずつでは、仲たがいが生じた場合、定款の変更すらできない状態に陥ります。注意が必要です。


4. 株式の譲渡制限と承認手続き


 会社の定款には、株式の譲渡に制限がある場合があります。相続によって株式が移転する際にも、この制限が適用されることがあります。


譲渡制限の確認

定款の確認:会社の定款に譲渡制限が記載されているかを確認します。相続による株式の移転も、株主総会や取締役会の承認が必要な場合があります。

承認手続き:必要に応じて株主総会や取締役会で承認手続きを行います。承認が得られない場合、会社側が株式を買い取る権利を行使することもあります​。

(論点)会社の代表者が亡くなった場合の相続の注意点

5. 専門家のサポート


株式の相続手続きは複雑で専門知識が必要です。弁護士や税理士、公認会計士などの専門家のサポートを受けることが重要です。


専門家の役割

弁護士:法的手続きや遺産分割協議のサポートを行います​。

司法書士:争いのない法的手続きや商業登記等、遺産分割協議についてのサポートをします。

税理士:株式の評価や相続税の申告、納付手続きをサポートします​​。

公認会計士:株式の評価や財務分析を行い、相続後の会社の経営をサポートします​。


6. まとめ


 会社の代表者が亡くなった場合の法人の株式の相続は、評価方法や相続税、経営権の移行、会社の安定性の確保、譲渡制限と承認手続き、専門家のサポートなど、さまざまな要素を考慮する必要があります。これらのポイントを踏まえ、事前に適切な対策を講じることで、相続後のトラブルを未然に防ぐことができます。相続手続きが円滑に進むよう、専門家のサポートを受けながら計画的に進めることが重要です​。

(論点)遺産分割協議を困難にする問題点

(論点)遺産分割協議を困難にする問題点

遺産分割協議を困難にする主な事例とその解決方法について説明します。遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要であり、さまざまな問題が発生することがあります。以下に、代表的な事例とその解決方法を挙げていきます。


目次


1. 相続人間の意見対立


2. 相続人の所在不明


3. 遺産の評価に関する争い


4. 遺言書の有効性に関する争い


5. 特定の相続人に対する偏った遺産分配


まとめ

(論点)遺産分割協議を困難にする問題点

1. 相続人間の意見対立


事例

相続人間で意見が一致しないことは一般的です。特に、不動産などの分割が難しい財産の場合、各相続人の希望が対立することがあります。


解決方法

①調停:家庭裁判所に調停を申し立て、第三者の仲裁を受けることで合意を目指す​。

➁専門家の仲介:弁護士や司法書士などの専門家を仲介役として依頼し、公平な視点から解決策を提案してもらう​ ​。

③不動産の売却:不動産を売却して現金化し、その分配を行うことで、物理的な分割の難しさを解消する​ ​。


2. 相続人の所在不明


事例

相続人の一人が所在不明で連絡が取れない場合、協議が進まないことがあります。


解決方法

①家庭裁判所への不在者財産管理人選任の申し立て:所在不明の相続人の財産を管理するための管理人を選任し、代わりに協議に参加してもらう​。

➁失踪宣告を受ける:家庭裁判所に、通常7年超、

(論点)遺産分割協議を困難にする問題点

3. 遺産の評価に関する争い


事例

遺産の評価額に関して相続人間で意見が分かれる場合、協議が難航することがあります。特に、不動産や株式などの市場価値が変動する資産は評価が難しいです。


解決方法

①専門家の評価:不動産鑑定士や公認会計士などの専門家に評価を依頼し、公正な評価額を算定する​ ​。

➁複数の評価:複数の専門家による評価を比較し、平均値を取るなどの方法で公平性を保つ​ 。


4. 遺言書の有効性に関する争い


事例

遺言書の内容やその有効性に関して相続人間で争いが生じることがあります。特に、自筆証書遺言の場合、形式不備や偽造の疑いが問題となることがあります。


解決方法

①遺言無効訴訟:遺言書の有効性に疑義がある場合、家庭裁判所に遺言無効訴訟を提起し、法的に解決を図る​。

➁遺言書の検認:家庭裁判所で遺言書の検認を受け、形式的な有効性を確認する​。

③専門家の意見:弁護士に相談し、遺言書の法的有効性について意見を求める​。

(論点)遺産分割協議を困難にする問題点

5. 特定の相続人に対する偏った遺産分配


事例

特定の相続人に対して偏った遺産分配が遺言書に記載されている場合、他の相続人が不満を持つことがあります。このような場合、遺留分の問題が生じることがあります。


解決方法

①遺留分侵害額請求:遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行うことができます。これにより、最低限の相続分を確保することができます​。

➁和解:相続人間で話し合いを行い、公平な分配を目指すために和解を試みる。弁護士などの第三者を介することで、冷静な話し合いが可能になります​。

③調停や仲裁:家庭裁判所に調停や仲裁を申し立て、法的に公平な解決を図る​。


まとめ


 遺産分割協議を困難にする事例は多岐にわたりますが、各事例に対して適切な解決方法を講じることで、円満な相続を実現することが可能です。相続人間の意見対立や所在不明、遺産の評価問題、遺言書の有効性、偏った遺産分配などの問題に対しては、専門家の助言を得ることが重要です。弁護士や司法書士、鑑定士などの専門家のサポートを受けながら、法的に適切な手続きを進めることで、相続問題を円滑に解決することができます​​。


(論点)「全財産を愛人に遺贈する」と書かれた遺言書が発見!

(論点)「全財産を愛人に遺贈する」と書かれた遺言書が発見!

遺言書が見つかり、その内容が「全財産を愛人に遺贈する」と記載されていた場合、相続人としてはショックを受けることでしょう。しかし、このような場合でも適切に対処する方法があります。以下に、その手順とポイントを詳しく説明します。


目次


1. 遺言書の確認と検認


2. 遺留分の確認と請求


3. 遺留分侵害額請求の手続き


4. その他の対応策


まとめ

(論点)「全財産を愛人に遺贈する」と書かれた遺言書が発見!

1. 遺言書の確認と検認 


 まず、遺言書が正式なものであるかを確認します。遺言書の種類に応じて、検認が必要な場合があります。


公正証書遺言:公証人によって作成された遺言書であれば、検認は不要です。


自筆証書遺言・秘密証書遺言:これらの場合、家庭裁判所での検認が必要です​。検認は遺言書の形式的な有効性を確認する手続きであり、内容の有効性を判断するものではありません。


2. 遺留分の確認と請求


  民法には「遺留分」という制度があります。遺留分は、一定の相続人(配偶者、子供、直系尊属など)が最低限相続できる財産の割合を保障するものです。遺留分の割合は以下の通りです:


配偶者と子供がいる場合:配偶者と子供それぞれが相続財産の1/4を遺留分として持つ。


配偶者と直系尊属がいる場合:配偶者が1/3、直系尊属が1/6。


子供のみの場合:子供が相続財産の1/2を遺留分として持つ。


「全財産を愛人に遺贈する」という遺言書が見つかった場合、遺留分を侵害している可能性が高いです。この場合、相続人は遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)を行うことができます​ ​。


3. 遺留分侵害額請求の手続き


 遺留分侵害額請求を行うためには、以下の手順を踏みます。


3.1 請求の意思表示


 遺留分を侵害された相続人は、相手方(愛人)に対して遺留分侵害額請求の意思表示を行います。この意思表示は、口頭でも書面でも可能ですが、証拠を残すために書面で行うのが一般的です。内容証明郵便を利用することで、意思表示の事実と日時を明確に証明できます​。


※裁判をしないと主張できないという方がいらっしゃいますが、遺留分侵害額請求権の行使は、裁判上でも裁判外でも可能です。


3.2 調停・仲裁


 意思表示後、当事者間で話し合いが行われますが、合意に至らない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停では中立的な第三者が介入し、合意に向けた調整が行われます​ ​。


3.3 裁判


 調停が不成立の場合、最終的には裁判に進むことになります。裁判では、遺留分の具体的な金額や支払い方法について判決が下されます​ ​。

(論点)「全財産を愛人に遺贈する」と書かれた遺言書が発見!

4. その他の対応策


4.1 遺言無効訴訟


遺言書の内容や作成過程に不正があった場合(例えば、遺言者が精神的に不安定な状態であった、あるいは脅迫や詐欺によって作成された場合)、遺言無効訴訟を提起することができます。この訴訟では、遺言の無効を証明するための証拠を提出する必要があります​​。


4.2 和解


愛人との間で話し合いが可能であれば、相続人の遺留分を尊重しつつ、遺産の一部を愛人に分与する形で和解を図ることも考えられます。これにより、法的手続きにかかる時間と費用を節約することができます​​。


5. 専門家への相談


 相続問題は複雑で感情的なものが多いため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが重要です。専門家は法的なアドバイスを提供し、適切な手続きをサポートしてくれます​。

(論点)「全財産を愛人に遺贈する」と書かれた遺言書が発見!

まとめ


 「全財産を愛人に遺贈する」という遺言書が見つかった場合、遺留分を侵害している可能性が高いです。相続人は遺留分侵害額請求を行うことで、自身の権利を守ることができます。適切な手続きを踏み、必要に応じて専門家に相談することで、相続問題を円滑に解決することが可能です​。


 まずは、争いも想定されますので、はじめから弁護士と相談の上、手を打って行った方がいいと思います。

(論点)公正証書遺言の作成にかかる手数料等について

(論点)公正証書遺言の作成にかかる手数料等について

公正証書遺言を作成する際の費用について説明します。公証役場での公正証書遺言作成費用は、基本手数料、書類の取り寄せ費用、証人の日当、専門家への報酬など、複数の要素で構成されています。


目次


1. 公証役場手数料


2. 書類の取り寄せ費用


3. 証人の日当


4. 公証人の出張費用


5. 専門家への報酬


まとめ

(論点)公正証書遺言の作成にかかる手数料等について

1. 公証役場手数料


公証役場の基本手数料は、遺言に記載する財産の価額によって異なります。具体的な費用は以下の通りです:


財産が100万円まで:5,000円

100万円超200万円まで:7,000円

200万円超500万円まで:11,000円

500万円超1,000万円まで:17,000円

1,000万円超3,000万円まで:23,000円

3,000万円超5,000万円まで:29,000円

5,000万円超1億円まで:43,000円

1億円超3億円まで:5,000万円ごとに13,000円加算

3億円超10億円まで:5,000万円ごとに11,000円加算

10億円超:5,000万円ごとに8,000円加算

さらに、全体の財産が1億円以下の場合には、基本手数料に11,000円が加算されます。また、遺言書の枚数によっては、謄本手数料(コピー代)が3,000円から5,000円程度加算されることがあります。


※ポイントは、遺産を渡す各相続人を基準に算定し、合計額が手数料となります。遺産の総額で手数料を計算するわけではありませんので注意が必要です。

(論点)公正証書遺言の作成にかかる手数料等について

2. 書類の取り寄せ費用


公正証書遺言を作成するためには、各種書類が必要です。これらの書類の取得には費用がかかります:


戸籍謄本:1通450円

印鑑証明書:1通300円

住民票:1通300円

評価証明書(不動産1物件):300円

登記事項証明書(不動産1物件):600円


※各自治体により、書類意取得の手数料の金額が異なります。取り寄せる書類を管理している自治体に確認してください。


3. 証人の日当


公正証書遺言の作成時には、証人2名の立ち会いが必要です。証人を専門家や公証人役場に依頼する場合、1名につき7,000円から15,000円程度の日当がかかります​。(高松市の場合1名5,000円)知人に頼む場合は、この費用はかかりません。


ただし、証人は誰でもいいというわけではなく、一定の要件があります。


公正証書遺言の証人となるためには、以下の要件を満たしている必要があります:


①成人であること:証人は20歳以上の成人である必要があります。

➁遺言者の直系尊属・直系卑属ではないこと:遺言者の両親や子供などの直系尊属・直系卑属は証人になることができません。

③遺言者の配偶者ではないこと:遺言者の配偶者も証人になることができません。

④遺言の受益者やその配偶者、直系尊属・直系卑属ではないこと:遺言により利益を受ける者、その配偶者や直系尊属・直系卑属も証人になることができません。

➄未成年者や成年被後見人、被保佐人ではないこと:法律上、未成年者や成年被後見人、被保佐人は証人としての資格を持ちません。


これらの要件を満たすことが、公正証書遺言の証人として適格であることを確認するために重要です。つまり、近しい家族にお願いする場合、要件を充たさない場合があります。


4. 公証人の出張費用


遺言者が公証役場に行けない場合、公証人が自宅や病院などに出張することも可能です。この場合、手数料が1.5倍に加算され、公証人の日当として1日あたり2万円(4時間以内の場合は1万円)が必要です。また、交通費も実費で請求されます。

(論点)公正証書遺言の作成にかかる手数料等について

5. 専門家への報酬


公正証書遺言の作成を弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合、その報酬が発生します。報酬の額は依頼する事務所や業務の範囲によって異なりますが、一般的には数万円から数十万円程度が相場です。


まとめ


公正証書遺言の作成には、遺言に記載する財産の価額によって手数料が変動する基本手数料、必要書類の取り寄せ費用、証人の日当、そして公証人の出張費用などが含まれます。また、専門家に依頼する場合はその報酬も考慮に入れる必要があります。これらを総合して計画を立てることが重要です


まずは、専門家への相談をして検討してみてください。


(論点)公正証書遺言作成の手続き

(論点)公正証書遺言作成の手続き

公正証書遺言は、公証人が作成する信頼性の高い遺言書です。以下に、公正証書遺言を作成する際の具体的な手順を説明します。


目次


1. 遺言内容の検討

2. 公証役場の選定と予約

3. 必要書類の準備

4. 証人の確保

5. 公証役場での手続き

6. 公正証書遺言の保管

7. 遺言書の見直し

まとめ

(論点)公正証書遺言作成の手続き

1. 遺言内容の検討


 まず、遺言内容をじっくり検討します。以下の点を考慮して内容を決めます。


遺産の分配方法:財産をどのように分配するか、誰に何を相続させるかを決めます。


特定の相続人への配慮:特定の相続人に対して、特別な配慮が必要な場合はその旨を記載します。


遺言執行者の指定:遺言内容を実行する遺言執行者を指定します。信頼できる人物を選びます。

(論点)公正証書遺言作成の手続き

2. 公証役場の選定と予約


 遺言内容が決まったら、公証役場を選び、予約を取ります。予約時に以下の情報を伝えます。


遺言者の氏名、住所、生年月日


証人2名の氏名、住所、生年月日※公証役場に証人の依頼をしている場合は不要


遺言内容の概要


公証役場の連絡先はインターネットで検索するか、最寄りの役場に問い合わせると良いでしょう。


3. 必要書類の準備


 公正証書遺言を作成するためには、以下の書類が必要です。


本人確認書類:遺言者および証人2名の運転免許証やパスポートなどの身分証明書


※本人の場合は、印鑑証明書での本人確認をする場合が多いです。


財産に関する書類:不動産登記簿謄本、預貯金の通帳の写し、株式の証券など


その他の書類:家族構成を確認するための戸籍謄本、遺言執行者を指定する場合はその同意書など

(論点)公正証書遺言作成の手続き

4. 証人の確保


 公正証書遺言の作成には、2名の証人が必要です。証人には以下の条件があります。


(証人の要件)


遺言者の配偶者や直系血族でないこと


遺言の利益を受ける者でないこと


成年であること


弁護士や司法書士など、専門家を証人として依頼することも可能です。


5. 公証役場での手続き


 予約した日時に公証役場に出向きます。手続きの流れは以下の通りです。


公証人による説明:公証人が遺言の内容について説明し、遺言者が理解しているか確認します。


遺言内容の確認:遺言者が遺言内容を読み上げ、誤りがないか確認します。


署名・押印:遺言者と証人が遺言書に署名・押印します。


公証人の署名・押印:公証人が遺言書に署名・押印し、公正証書遺言が完成します。

(論点)公正証書遺言作成の手続き

6. 公正証書遺言の保管


 公正証書遺言は公証役場に保管されます。遺言者には遺言書の正本と謄本が交付されます。遺言書の保管方法について家族に知らせておくと、相続時にスムーズに手続きを進めることができます。


7. 遺言書の見直し


 遺言内容は一度作成しても、状況に応じて見直すことが可能です。例えば、家族構成や財産状況に変化があった場合は、遺言書を更新することを検討します。新しい遺言書を作成する場合も、同じ手続きを踏むことになります。


まとめ


 公正証書遺言を作成する手順は以下の通りです。


遺言内容の検討


公証役場の選定と予約


必要書類の準備


証人の確保


公証役場での手続き


公正証書遺言の保管


遺言書の見直し


 これらの手順を踏むことで、公正証書遺言を確実に作成し、相続トラブルを未然に防ぐことができます。公正証書遺言は公証人が関与するため、法的な効力が強く、信頼性が高いです。遺言の内容が明確であり、相続人同士の争いを防ぐために、有効な手段と言えるでしょう。

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

今回は、不動産を共有で所有することの不利益について解説したいと思います。共有不動産は、様々な問題を抱えています。元のオーナー間で、関係性が良好でも、その次の世代ではどうなるかわかりません。また、身分上の変化(例えば離婚)などにより、関係性が悪化する場合も考えられます。


目次


1. 意思決定の難航


2. 維持費用の負担と分担


3. 利用方法の衝突


4. 相続時の問題


5. 不動産の売却の困難


結論

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

1. 意思決定の難航


 不動産を共有する場合、複数の共有者が関与するため、重要な決定を下す際に全員の合意が必要となります。例えば、不動産の売却や賃貸に関する決定、修繕やリノベーションの実施、あるいは不動産の利用方法についての決定など、共有者全員の同意を得ることが求められます。


 例: ある不動産を3人の共有者が所有している場合、一人が不動産を売却したいと思っても、他の2人が反対することがあります。このような場合、売却を進めることはできません。合意を得るための交渉が長引き、結果として迅速な意思決定が困難になります。


2. 維持費用の負担と分担


 不動産の共有者は、維持費用や修繕費用を分担する必要があります。しかし、各共有者がその負担をどのように分け合うかについて意見が一致しないことがあります。一部の共有者が費用負担を拒否したり、経済的に負担できない場合、他の共有者がその分を補填しなければならないことがあります。


 例: 建物の屋根が老朽化し、修繕が必要な場合、共有者の一人が修繕費用を負担できないとしたら、他の共有者がその分を負担することになり、不公平感が生じます。また、修繕が先延ばしにされることで、不動産の価値が下がるリスクもあります。

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

3. 利用方法の衝突


 共有不動産の利用方法についても意見の対立が生じることがあります。ある共有者がその不動産を賃貸に出したいと考える一方で、別の共有者は自己利用を望むことがあります。このような場合、利用方法についての合意を得ることが難しく、不動産の効果的な利用が妨げられます。


例: 共有不動産が都市部のマンションで、一部の共有者が投資目的で賃貸に出したいと考え、他の共有者が自己利用や家族のために利用したいと考える場合、双方の意見が対立し、最適な利用方法を見つけることが困難です。


4. 相続時の問題


 共有不動産は相続時に特に複雑な問題を引き起こすことがあります。共有者の一人が亡くなった場合、その持分は相続人に引き継がれますが、相続人が複数いる場合、新たな共有者が増えることになります。これにより、意思決定がさらに複雑化し、摩擦が生じやすくなります。


 例: 共有者の一人が亡くなり、その持分が3人の子供に相続された場合、新たに3人の共有者が加わります。これにより、共有者の数が増え、全員の意見を一致させることがますます難しくなります。特に、相続人同士が意見を異にする場合、長期的な対立が生じる可能性があります。

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

5. 不動産の売却の困難


 共有不動産を売却する場合、全ての共有者の同意が必要です。これが得られない場合、売却は困難となり、結果として不動産の流動性が低下します。また、一部の共有者が売却に積極的でない場合、市場価格よりも低い価格での売却を余儀なくされることもあります。


 例: 共有者の一人が緊急に現金を必要とし、不動産を売却したいと考えても、他の共有者がこれに同意しない場合、売却は進められません。結果として、緊急に資金が必要な共有者は他の方法で資金を調達する必要が生じ、場合によっては不利な条件での取引を余儀なくされることがあります。


結論


 不動産の「共有」は、一見するとリスク分散や共同利用の利点があるように見えますが、実際には多くの不利益をもたらします。意思決定の難航、維持費用の分担の不公平、利用方法の衝突、相続時の問題、売却の困難など、共有者間の摩擦や対立が生じやすく、これらが長期的に不動産の価値や利用効率に悪影響を与えることがあります。共有不動産を所有する場合、これらの問題を予見し、共有者間で明確なルールを設定し、信頼関係を築くことが重要です。それでもなお、共有による不利益を完全に避けることは難しいため、個別所有や法人による所有など、他の所有形態を検討することも一つの選択肢となります。

言語化することの大切さ(家族と相続について話をする前に)

言語化することの大切さ(家族と相続について話をする前に)

言語化とは、思考や感情を言葉として明確に表現することを指します。これは日常生活において、自己理解を深めるだけでなく、他者とのコミュニケーションを円滑にするためにも重要です。特に人生の終末期において、自己の希望や意思を明確に伝えることが求められる場面が増えます。そこでエンディングノートと遺言書という二つのツールが大きな役割を果たします。本稿では、この二つのツールの効力の違いについて説明します。


目次


1.エンディングノート


2.遺言書


3.効力の違い


4.結論

言語化することの大切さ(家族と相続について話をする前に)

1.エンディングノート


 エンディングノートは、本人が生前に自身の希望や意志を記録しておくためのノートです。例えば、葬儀の形式、遺産の分配、介護の希望、財産の管理などについて記載します。このノートは、法的効力を持たないものの、家族や関係者に対して本人の意思を伝えるための重要な手段です。


①エンディングノートの利点


(1)自由度の高さ: エンディングノートには、何を書いても構いません。形式に拘らず、自分の言葉で自由に意思を表現できます。

(2)感情の共有: 法的文書には表現しにくい感情や思いも、エンディングノートを通じて伝えられます。例えば、「家族への感謝の言葉」や「過去の思い出」など。

(3)生活の質の向上: 自分の望む介護や医療について具体的に記載することで、生活の質を向上させることができます。


➁エンディングノートの限界


(1)法的効力の欠如: エンディングノートは、法的拘束力を持ちません。つまり、記載された内容が法的に実行される保証はありません。

(2)解釈の自由: 書き手の意図が十分に伝わらない場合、解釈の違いから意図した通りに実行されない可能性があります。

言語化することの大切さ(家族と相続について話をする前に)

2.遺言書


 遺言書は、法律に基づいて作成される文書で、遺産の分配やその他の希望を法的に拘束力を持って定めるものです。日本では、民法に基づいて遺言書の作成方法が規定されており、法的に有効な遺言書を作成するためには、一定の要件を満たす必要があります。


①遺言書の種類


(1)自筆証書遺言: 遺言者が自らの手で全文、日付、氏名を記載し、押印する形式です。法的に有効であるためには、形式的な要件を満たす必要があります。

(2)公正証書遺言: 公証人が作成し、遺言者および証人2名の立会いのもとで署名・押印される遺言書です。信頼性が高く、紛失や改ざんのリスクが低いです。

(3)秘密証書遺言: 遺言者が署名・押印し、封をした遺言書を公証人に提出して確認を受ける形式です。


➁遺言書の利点


(1)法的効力: 遺言書は法律に基づいて作成されるため、記載された内容が法的に実行されます。これにより、遺産の分配やその他の希望が確実に実現されます。

(2)明確な指示: 遺産の分配方法や特定の希望を明確に指示することで、遺族間の争いを未然に防ぐことができます。

(3)遺言執行者の指定: 遺言書に遺言執行者を指定することで、遺産の分配をスムーズに行うことができます。


③遺言書の限界


(1)作成の複雑さ: 法的要件を満たすためには、形式や内容に厳格な規定があるため、作成が複雑です。特に公正証書遺言の場合、公証人との面談や証人の確保が必要です。

(2)費用: 公正証書遺言を作成する場合、公証人への報酬や証人への謝礼が必要となり、費用がかかります。

言語化することの大切さ(家族と相続について話をする前に)

3.効力の違い


 エンディングノートと遺言書の最大の違いは、その法的効力にあります。エンディングノートは本人の意思を伝えるためのツールであり、法的拘束力はありません。一方、遺言書は法律に基づいて作成されるため、記載内容が法的に実行されます。このため、具体的な遺産分配や法的手続きを必要とする希望がある場合は、遺言書を作成することが重要です。

 ただし、エンディングノートは、遺言書の補完的な役割を果たすことができます。例えば、遺言書には記載しにくい感情的な内容や、日常の希望、細かな指示などをエンディングノートに記載することで、遺族や関係者に対して総合的な意思を伝えることができます。


4.結論


 言語化することの大切さは、人生の終末期において特に顕著です。エンディングノートと遺言書を併用することで、法的な手続きと感情的な意志の双方をバランスよく伝えることができます。エンディングノートは感情や希望を自由に表現できる一方で、法的効力を持たないため、重要な法的事項については遺言書を作成することが求められます。この二つのツールを適切に活用することで、自身の意思を確実に伝え、遺族や関係者が安心して後の手続きを進めることができます。

 今まで携わった相続関連業務で、公正証書遺言を作成した後にお迎えが車が来るまで少し話をした時のことです。一仕事終えたというのと、これでひとまず安心という気持ちから、いろいろなことを話しました。会社を心配されていたのですが、相続人の方が引き受けてくれるという意思表示があったことを大変喜んでいました。その時心から「良かったですね。本当に。これで心配事がずいぶん減ったんじゃないですか?」というと、何かほっとしたような顔をされていました。そしてその数か月後に亡くなったのですが、今までの経緯をすべて日記にしたためていたようで、相続人の方全員からすごく感謝されました。この経験から改めて、人の大事な意思表示のお手伝いができるということについて、これからも継続して行っていこうと思いました。勿論、新しい取り組みも含め、「不安」を「安心」に代えていけるよう続けていこうと思います。

(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

お客様には「さあ、遺言書を作りましょう」と言ってはいるものの、作成には、家族関係やそのご本人の背景的なことを外しては、作成できません。財産を分けるにも、それなりの理由が必要ですし納得していないと、安心するはずの遺言書作成が無意味になってしまいます。そこで先日、一般社団法人四国ライフエンディング協会・株式会社人生百年サポート主催の「エンディングノートの勉強会」に参加しました。その内容を踏まえ、エンディングノートの効果をお話したいと思います。


目次


1.エンディングノートと遺言書:今後のことと人生の棚卸


2.なぜエンディングノートをはじめに設定すべきと考えるようになったのか


3.エンディングノート:人生の棚卸と今後のこと


4.遺言書:法的効力を持つ意思表示


5.まとめ

(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

1.エンディングノートと遺言書:今後のことと人生の棚卸


 エンディングノートと遺言書は、人生の終わりを見据えた計画と、その実現のための法的手段を提供する重要なツールです。エンディングノートは、自分の人生を振り返り、今後のことを家族や友人に伝えるためのものであり、遺言書はその意思を法的に実行するためのものです。以下では、エンディングノートと遺言書の役割や作成方法、注意点について詳しく説明します。


2.なぜエンディングノートをはじめに設定すべきと考えるようになったのか


 エンディングノート作成のセミナーに参加させていただき、意外にもエンディングノートの効力を目の当たりにして、遺言書でいきなり自分の意思をまとめるのではなく、エンディングノートで一度人生の棚卸をしてから、その後の相続についての遺言書を考えると、私自身、スムーズに遺言書の内容を決めることができました。まるで、エンディングノートが遺言書を作るための「潤滑油」のような働きを体験したわけです。そこで、エンディングノートについて少しお話をしたいと思いました。

(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

3.エンディングノート:人生の棚卸と今後のこと


エンディングノートの目的

エンディングノートは、人生の振り返りと今後の意思を明確にするためのものです。具体的には、自分の生い立ちや家族構成、経歴、趣味、友人関係などを記録し、自分がどのように生きてきたかを振り返ります。また、自分が大切にしている価値観や信念、最後に伝えたいメッセージ、葬儀の希望、財産の分配などを記載します。


エンディングノートの内容

エンディングノートの内容は、個人の自由に任されていますが、以下の項目が一般的に含まれます:


個人情報:名前、生年月日、住所、連絡先、家族構成

人生の振り返り:生い立ち、学歴、職歴、趣味、特技、友人関係

健康情報:病歴、現在の健康状態、かかりつけ医の情報

資産情報:銀行口座、保険、年金、証券、不動産、負債

終末期の希望:延命治療の希望、臓器提供の意思、介護の希望

葬儀の希望:葬儀の形式、場所、喪主、宗教、戒名

遺言書の有無:遺言書の場所、内容の概要

メッセージ:家族や友人への最後のメッセージ、感謝の言葉

エンディングノートの作成と保管


エンディングノートは、書店やインターネットで購入できる専用のノートを使用するか、自分で作成することも可能です。内容を定期的に見直し、最新の情報を反映させることが重要です。また、エンディングノートは法的効力を持たないため、家族や信頼できる人に存在を知らせ、適切に保管しておくことが大切です。


(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

4.遺言書:法的効力を持つ意思表示


遺言書の役割

遺言書は、エンディングノートで示した意思を法的に実行するための文書です。遺産の分割方法や財産の管理者、未成年の子どもの後見人、葬儀の方法など、具体的な指示を法的に拘束力のある形で残すことができます。遺言書を作成することで、相続人間のトラブルを防ぎ、自分の意思を確実に実現することができます。


遺言書の種類

遺言書には、主に以下の3種類があります:


自筆証書遺言:本人が遺言の全文、日付、署名を自筆で書き、押印します。費用がかからず、手軽に作成できますが、形式の不備や紛失のリスクがあります。

公正証書遺言:公証人が遺言者の意思を聞き取り、公正証書として作成します。公証人役場で保管されるため、紛失の心配がなく、法的に確実です。費用がかかりますが、最も信頼性の高い方法です。

秘密証書遺言:本人が遺言書を作成し、署名押印した後、公証人と証人の前で封印して保管します。遺言の内容を秘密にできる一方で、形式不備のリスクがあります。


遺言書の作成と保管

遺言書を作成する際には、以下の点に注意する必要があります:

形式要件の遵守:遺言書の形式要件を厳守することが重要です。不備があると無効となる可能性があります。

専門家の助言:弁護士や司法書士に相談し、適切な内容と形式で遺言書を作成することをお勧めします。

保管方法:自筆証書遺言の場合、遺言書保管制度を利用して法務局で保管するか、信頼できる人に預けると良いでしょう。公正証書遺言は公証人役場で保管されるため、安心です。


エンディングノートと遺言書の連携

エンディングノートと遺言書は、互いに補完し合う関係にあります。エンディングノートで自分の思いや希望を整理し、遺言書でその意思を法的に実行することで、総合的な人生設計を実現できます。具体的には、以下のように連携させると効果的です:

エンディングノートの活用:エンディングノートで示した希望や思いをもとに、遺言書の内容を具体化します。特に、財産分与や葬儀の希望など、法的に重要な事項を明確にします。

遺言書の見直し:エンディングノートの内容を定期的に見直し、遺言書の内容も必要に応じて更新します。家族状況や財産状況の変化に応じて、遺言書を最新の状態に保つことが重要です。


家族とのコミュニケーション:エンディングノートを通じて家族に自分の意思を伝え、遺言書の存在と内容についても理解を得るよう努めます。事前に家族との話し合いを行うことで、相続トラブルを未然に防ぐことができます。

(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

5.まとめ


 エンディングノートと遺言書は、人生の最終段階における意思を明確にし、その実現を法的に保障するための重要なツールです。エンディングノートで自分の思いや希望を整理し、遺言書でその意思を法的に実行することで、家族に安心と信頼を与えることができます。以下のポイントに注意して、エンディングノートと遺言書を効果的に活用しましょう:


エンディングノートで人生を振り返り、今後のことを整理する。

遺言書を作成し、法的効力を持たせる。

専門家の助言を受け、適切な形式で遺言書を作成する。

エンディングノートと遺言書を連携させ、総合的な人生設計を行う。

家族とのコミュニケーションを大切にし、意思を共有する。


 これらの手順を踏むことで、安心して人生の最終段階を迎えることができ、家族に対しても負担を軽減することができます。

 そうなんです。皆、なぜ遺言書を作成するのかというと「安心」が欲しいわけです。遺言書にも「付言事項」といって、法的効力は及ばないものの、家族への想いなどを残せるようにはなっていますが、長文で書かれている者は見たことがありません。家族への想いや自分の考えなどは、まずはエンディングノートにしたため、その後、遺言書を作成することで円滑に進められると感じました。

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

自筆証書遺言は、遺言者が自分で書き残す形式の遺言書で、作成や変更が比較的容易であるため、多くの人に利用されています。しかし、その一方で法的効力を持たせるためには一定の要件を満たす必要があります。以下に、自筆証書遺言を作成する際に気を付けるべきポイントを詳しく説明します。


目次


1. 全文を自筆で書く

2. 日付の記載

3. 署名と押印

4. 遺言内容の明確化

5. 法定相続分の確認

6. 保管場所の選定

7. 訂正方法の注意

8. 家族や相続人への配慮

9. 法的アドバイスの活用

10. 定期的な見直し

11. 遺言執行者の指定

12. 公正証書遺言との比較

まとめ

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

1. 全文を自筆で書く


 自筆証書遺言の最大の特徴は、遺言者が全文を自筆で書かなければならない点です。パソコンやワープロを使って作成したり、他人に書いてもらったりすることは無効です。また、本文だけでなく、日付や署名も全て自筆で書く必要があります。


2. 日付の記載


 遺言書には、作成した日付を必ず記載しなければなりません。日付がなければ遺言書としての効力を持ちません。また、「平成〇〇年〇月〇日」といった具体的な日付を書く必要があり、「吉日」などの曖昧な表現は避けましょう。日付が特定できない場合、遺言書全体が無効になる可能性があります。


3. 署名と押印


 遺言書には、遺言者の署名と押印が必要です。署名は自筆でフルネームを記載し、押印は実印でなくても構いませんが、認め印よりも印鑑登録されている印鑑が望ましいです。署名と押印を忘れると、遺言書が無効になる恐れがあります。

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

4. 遺言内容の明確化


 遺言内容はできるだけ具体的かつ明確に書きましょう。例えば、財産の分割方法や相続人の指定について、曖昧な表現を避け、具体的な金額や割合、物件の詳細などを記載します。また、相続人が複数いる場合は、それぞれの相続分を明確に示すことが重要です。遺言内容が不明確であると、遺言書が無効になったり、相続人間で争いが生じる可能性があります。


5. 法定相続分の確認


 遺言書作成時には、法定相続分についても確認しておきましょう。法定相続分を無視した内容にすると、相続人間で争いが生じる可能性があります。特に、遺留分を侵害しないよう注意が必要です。遺留分は、一定の相続人に最低限保障されている相続分であり、これを侵害すると遺留分減殺請求が行われる可能性があります。


6. 保管場所の選定


 自筆証書遺言は遺言者自身で保管することが多いですが、遺言書の存在や場所が相続人に知られなければ意味がありません。信頼できる人に保管場所を伝えるか、公証役場や法務局での預かりサービスを利用することを検討しましょう。2019年7月からは、自筆証書遺言を法務局で保管する制度も始まりました。この制度を利用すると、紛失や偽造のリスクを軽減できます。

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

7. 訂正方法の注意


 自筆証書遺言の訂正には厳格なルールがあります。内容を訂正する場合は、訂正箇所に二重線を引き、訂正した旨を記載し、訂正箇所の近くに署名と押印を行います。訂正方法が適切でない場合、訂正部分が無効になる可能性があるため、慎重に行う必要があります。


8. 家族や相続人への配慮


 遺言書の内容について、家族や相続人に配慮することも大切です。突然の遺言内容に驚かせたり、相続人間のトラブルを招かないように、できるだけ事前に意向を伝えておくと良いでしょう。これにより、遺言の内容を理解してもらいやすくなり、円滑な相続手続きを進めることができます。


9. 法的アドバイスの活用


 自筆証書遺言を作成する際には、法律の専門家に相談することをお勧めします。弁護士や司法書士、税理士などの専門家のアドバイスを受けることで、遺言書が法律的に有効であることを確認できます。また、専門家の助言により、相続税の対策や財産分割の方法についても最適なアドバイスを受けることができます。

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

10. 定期的な見直し


 自筆証書遺言は、一度作成したらそれで終わりではありません。家庭状況や財産状況が変わるたびに、定期的に見直しを行うことが重要です。見直しを怠ると、遺言書の内容が現状に合わなくなり、相続トラブルを招く可能性があります。


11. 遺言執行者の指定


 遺言執行者を指定することで、遺言書の内容を確実に実行することができます。遺言執行者には、信頼できる家族や友人、または専門家を選ぶと良いでしょう。遺言執行者が指定されていない場合、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる必要が出てきます。


12. 公正証書遺言との比較


 自筆証書遺言には多くのメリットがありますが、リスクも伴います。特に、形式不備による無効リスクや、紛失や改ざんのリスクを考慮すると、公正証書遺言も検討する価値があります。公正証書遺言は公証人が関与するため、法的効力が高く、形式不備のリスクが少ないです。


まとめ


 自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、法的効力を持たせるためには多くの注意点があります。全文自筆、日付の記載、署名と押印、明確な内容、法定相続分の確認、保管場所の選定、訂正方法の注意、家族や相続人への配慮、専門家のアドバイス、定期的な見直し、遺言執行者の指定、公正証書遺言との比較といったポイントを押さえて、適切な自筆証書遺言を作成することが重要です。こうした注意点を踏まえて遺言書を作成することで、相続人間のトラブルを未然に防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

不動産は、生前対策として非常に有効な手段です。相続税の負担を軽減し、遺産分割をスムーズに行うために不動産を活用することは、多くのメリットがあります。以下に、不動産を利用した生前対策のメリットを詳しく説明します。


目次


1. 不動産の評価減効果

2. 賃貸不動産による収益の確保

3. 生前贈与による相続税対策

4. 不動産の活用による財産の保全

5. 不動産の活用による相続人間の公平性の確保

6. 事業承継の円滑化

7. 相続税の納税猶予制度の活用

8. 遺言書との併用

9. 不動産のリノベーションによる価値向上

まとめ

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

1. 不動産の評価減効果


 不動産の評価額は、相続税評価額として固定資産税評価額や路線価などが基準となります。これらの評価額は、実際の市場価格よりも低く設定されることが一般的です。そのため、不動産を相続財産に組み込むことで、評価額を低く抑え、相続税の負担を軽減することができます。また、賃貸物件の場合、借地権や借家権が考慮され、さらに評価額が減少する可能性があります。


2. 賃貸不動産による収益の確保


 賃貸不動産を所有している場合、相続人にとって安定した収益源となります。賃貸収入は現金収入であり、相続税の支払いや生活費の確保に役立ちます。また、賃貸物件は相続時における評価額が減少するため、相続税の負担をさらに軽減する効果があります。特に、長期間にわたり安定した収益を得られる賃貸物件は、相続後の家族の経済的な安定にも寄与します。


3. 生前贈与による相続税対策


 不動産を生前に贈与することで、相続税の課税対象となる財産を減少させることができます。生前贈与には年間110万円までの非課税枠があり、この枠を利用して少額ずつ贈与することが一般的です。また、不動産の一部を贈与することで、相続時の評価額を分割し、相続税の負担を軽減することができます。特に、子供や孫に不動産を贈与することで、将来の相続税負担を分散させることが可能です。


※不動産の場合、評価額は高額になると思われます。そこで、生前贈与対策として行うのは、「持分の割合をきめて贈与する」手法で対策をすることができます。

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

4. 不動産の活用による財産の保全


 不動産は、現金や株式と異なり、物理的な財産であるため、価値が安定しやすい特性があります。これにより、インフレーションや市場の変動によるリスクを回避しやすく、財産の保全に役立ちます。特に、立地条件の良い不動産は、将来的に価値が上昇する可能性が高く、長期的な資産価値の維持に寄与します。


5. 不動産の活用による相続人間の公平性の確保


 不動産を活用することで、相続人間の公平性を確保することができます。例えば、遺言書で不動産の分割方法を明示することで、相続人間のトラブルを防ぐことができます。また、複数の不動産を所有している場合、それぞれの相続人に異なる物件を分配することで、公平な相続を実現することができます。さらに、特定の相続人に対して生前に不動産を贈与することで、相続時の不公平感を軽減することも可能です。


6. 事業承継の円滑化


 不動産を所有している場合、事業承継がスムーズに行えるというメリットがあります。特に、事業用不動産は、事業の継続性を保つために重要な資産です。生前に事業用不動産を後継者に贈与することで、事業承継の準備を整え、相続時の混乱を防ぐことができます。また、事業用不動産を利用した経営資源の活用や、新たな事業展開の基盤としても活用することが可能です。

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

7. 相続税の納税猶予制度の活用


 農地や事業用資産を相続する場合、一定の条件を満たすことで相続税の納税猶予を受けることができます。これは、農業や事業の継続を支援するための制度であり、生前に適切な準備を行うことで、この制度を活用することができます。例えば、農地の相続においては、農業を継続する意思を明確にし、適切な手続きを行うことで、相続税の負担を軽減することができます。


8. 遺言書との併用


 不動産を活用した生前対策は、遺言書と併用することでさらに効果を高めることができます。遺言書に不動産の分割方法や受取人を明確に記載することで、相続時のトラブルを防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。また、遺言書を作成することで、生前に贈与した不動産についても明確に意思を示すことができ、相続人間の混乱を防ぐことができます。


9. 不動産のリノベーションによる価値向上


 生前に不動産をリノベーションすることで、資産価値を向上させることができます。リノベーションにより、不動産の魅力を高め、賃貸収益を増加させることが可能です。また、相続人にとっても、リノベーション済みの不動産は魅力的な資産となり、相続後の活用がしやすくなります。これにより、相続時のトラブルを防ぎ、円滑な資産承継を実現することができます。

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

まとめ


 不動産を利用した生前対策には、不動産の評価減効果、賃貸不動産による収益の確保、生前贈与による相続税対策、不動産の活用による財産の保全、不動産の活用による相続人間の公平性の確保、事業承継の円滑化、相続税の納税猶予制度の活用、遺言書との併用、不動産のリノベーションによる価値向上など、多くのメリットがあります。これらのメリットを最大限に活用するためには、専門家の助言を受けながら適切な不動産戦略を立てることが重要です。不動産を効果的に活用することで、相続税の負担を軽減し、家族の生活基盤を守りつつ、円滑な相続手続きを実現することができます。

(論点)生命保険を利用した生前対策のメリット

(論点)生命保険を利用した生前対策のメリット

生命保険は、相続対策として非常に有効な手段の一つです。相続税の負担を軽減し、遺産分割をスムーズに行うために生命保険を活用することは、多くのメリットがあります。以下に、生命保険を利用した生前対策のメリットを詳しく説明します。


目的


1. 非課税枠の活用

2. 相続税の支払い資金の確保

3. 遺産分割の円滑化

4. 迅速な支給

5. 受取人の自由な指定

6. 遺留分対策

7. 保険金の種類に応じた柔軟な対応

8. 保険料の払い込みと相続税の軽減

9. 保険商品の多様性

まとめ


(論点)生命保険を利用した生前対策のメリット

1. 非課税枠の活用


 生命保険金には、相続税の非課税枠があります。具体的には、法定相続人一人当たり500万円の非課税枠が適用されます。このため、生命保険に加入することで、一定額までの保険金が相続税の課税対象外となります。例えば、法定相続人が3人いる場合、最大1500万円までの生命保険金が非課税となり、相続税の負担を大幅に軽減することができます。


※生命保険の保険金は、法律上は「受取人の財産」となります。しかし、これでは遺産の大半を生命保険にすることで、相続税申告を潜脱することにもなりかねませんので、生命保険金は「みなし相続財産」として、控除枠を設け、控除枠を超過した金額が遺産と指摘見込まれます。


2. 相続税の支払い資金の確保


 相続財産に不動産や株式などの現金以外の資産が多い場合、相続税の支払いに困ることがあります。生命保険金は、受取人に直接現金で支給されるため、相続税の支払い資金として活用することができます。これにより、不動産や事業資産を売却せずに相続税を支払うことが可能となり、家族の生活基盤を守ることができます。


3. 遺産分割の円滑化


 生命保険金は、指定した受取人に直接支給されるため、遺産分割協議を経ずに相続人に分配することができます。これにより、相続人間での遺産分割の争いを防ぐことができます。また、遺言書に生命保険金の受取人を明確に指定しておくことで、特定の相続人に対して確実に財産を遺すことができ、遺産分割の手続きを円滑に進めることができます。

(論点)生命保険を利用した生前対策のメリット

4. 迅速な支給


 生命保険金は、遺言執行や遺産分割協議を待たずに迅速に支給されます。通常、被保険者の死亡後、短期間で保険金が支払われるため、相続人が速やかに資金を受け取ることができます。これにより、葬儀費用や相続税の支払いなど、急な出費にも対応しやすくなります。


※収益物件の不動産(ローン残あり)などの現金化しにくい遺産を多く引き取った相続人に、相続税支払いのために保険の受取人にするなどの活用方法があります。


5. 受取人の自由な指定


 生命保険では、受取人を自由に指定することができます。これにより、相続人以外の第三者や特定の相続人に対して確実に財産を遺すことができます。また、遺言書と併用することで、受取人の指定を明確にし、相続トラブルを未然に防ぐことができます。特に、家族構成が複雑な場合や特定の相続人に多く遺したい場合に有効です。しかし、生命保険の受取人を相続人以外の第三者にしてしまうと、税法上は「みなし相続財産の控除枠」が使えませんので注意が必要です。


6. 遺留分対策


 生命保険金は遺留分の計算に含まれないため、遺留分対策としても有効です。遺留分とは、法定相続人に最低限保障される相続分のことですが、生命保険金は遺留分の対象外となります。このため、遺言書に生命保険金の受取人を指定することで、遺留分を侵害せずに特定の相続人に多くの財産を遺すことができます。


※なぜなら、遺留分という法律上の相続人の権利となり、法律上、生命保険金は受取人の固有の財産とされているためです。

(論点)生命保険を利用した生前対策のメリット

7. 保険金の種類に応じた柔軟な対応


 生命保険には、定期保険、終身保険、養老保険など、さまざまな種類があります。これにより、個々の状況やニーズに応じて、最適な保険商品を選択することができます。例えば、相続税の負担が大きい場合には、終身保険に加入して長期的に保険金を受け取ることができるようにすることが有効です。一方、短期間で多額の資金が必要な場合には、定期保険を活用することが考えられます。


8. 保険料の払い込みと相続税の軽減


 生命保険料の払い込みは、被保険者が自分で行うことが一般的ですが、相続人が保険料を支払う場合には、相続税の軽減効果があります。相続人が保険料を負担することで、被保険者の財産が減少し、その結果、相続税の課税対象額が減少します。これにより、相続税の負担を軽減することができます。


9. 保険商品の多様性


 生命保険には、多様な商品があり、個々のニーズに応じたプランを選択することができます。例えば、特約を付けることで、介護費用や医療費に備えることができる商品もあります。これにより、相続対策だけでなく、生前のリスクにも備えることができます。


まとめ


 生命保険を利用した生前対策には、相続税の非課税枠の活用、相続税の支払い資金の確保、遺産分割の円滑化、迅速な支給、受取人の自由な指定、遺留分対策、保険金の種類に応じた柔軟な対応、保険料の払い込みと相続税の軽減、保険商品の多様性など、数多くのメリットがあります。これらのメリットを最大限に活用するためには、専門家の助言を受けながら適切な保険商品を選択し、早めに対策を講じることが重要です。生命保険を効果的に活用することで、相続税の負担を軽減し、家族の生活基盤を守りつつ、円滑な相続手続きを実現することができます。

(論点)公正証書遺言のメリットと自筆証書遺言との比較

(論点)公正証書遺言のメリットと自筆証書遺言との比較

遺言書の形式には、主に公正証書遺言と自筆証書遺言の2種類があります。これらの遺言書のうち、公正証書遺言は、法的に確実でトラブルを防ぎやすい形式として広く利用されています。以下に、公正証書遺言のメリットを自筆証書遺言と比較しながら詳しく説明します。


目次


1. 公正証書遺言のメリット


2. 自筆証書遺言との比較


まとめ

(論点)公正証書遺言のメリットと自筆証書遺言との比較

1. 公正証書遺言のメリット


法的確実性の高さ


 公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、法的に確実な遺言書となります。公証人は法律の専門家であり、遺言内容が法律に適合しているかを確認しながら作成します。そのため、公正証書遺言は形式不備や内容不明確による無効リスクが極めて低くなります。一方、自筆証書遺言は遺言者が自分で書くため、法的要件を満たさない場合や、内容が曖昧な場合に無効になる可能性があります。


紛失や改ざんのリスクが低い


 公正証書遺言は、公証役場に保管されるため、遺言書が紛失したり、第三者によって改ざんされるリスクが低いです。公証役場に保管されているため、遺言書の存在を確認しやすく、相続人間でのトラブルを防ぐことができます。一方、自筆証書遺言は遺言者自身で保管することが多く、保管場所が不明だったり、紛失したりするリスクが高くなります。


内容の明確化


 公正証書遺言は、公証人が内容を確認しながら作成するため、遺言内容が明確であることが保証されます。公証人は遺言者の意思を正確に反映し、法律に基づいて適切な表現を用いて遺言書を作成します。そのため、相続人間での解釈の違いや争いが生じにくくなります。一方、自筆証書遺言は遺言者が自由に書くため、内容が曖昧であったり、誤解を招く表現が含まれている場合があります。


遺言執行の容易さ


 公正証書遺言は、公証人が認証しているため、遺言執行がスムーズに行われます。遺言書が法的に確実であることから、相続手続きが迅速に進むことが期待できます。また、公証人が遺言書の内容を証明するため、相続人間での争いが少なくなります。一方、自筆証書遺言は、遺言書の内容や形式に不備がある場合、遺言執行が困難になることがあります。特に、認知の争い(「うちの親父は、この遺言書を書いたとき認知症だったんだ」といったもの)について、公証人と証人2人の立会で作成しますので、ある程度は防ぐことができます。


訂正や変更の簡便さ


 公正証書遺言は、公証人に依頼することで簡単に訂正や変更が可能です。遺言者の意思を正確に反映するために、公証人が内容を確認しながら訂正を行います。一方、自筆証書遺言は、遺言者自身で訂正を行う必要がありますが、訂正方法に厳格なルールがあり、適切に訂正しないと無効になる可能性があります。

(論点)公正証書遺言のメリットと自筆証書遺言との比較

2. 自筆証書遺言との比較


手軽さと費用の違い


 自筆証書遺言は、遺言者が自分で書くため、作成や変更が手軽で費用もかかりません。一方、公正証書遺言は、公証人に依頼するため、手続きがやや煩雑であり、作成費用も発生します。しかし、公正証書遺言は法的確実性が高く、相続トラブルを防ぐための投資と考えることができます。


法的要件の厳格さ


 自筆証書遺言は、全文を遺言者が自筆で書く必要があり、日付や署名、押印も自筆で行う必要があります。これに対し、公正証書遺言は、公証人が作成するため、遺言者が自筆で書く必要はありません。そのため、身体的な制約がある場合でも、公正証書遺言は作成しやすいです。


保管と開示の違い


 自筆証書遺言は、遺言者自身が保管するため、保管場所が不明確な場合や、紛失・改ざんのリスクがあります。一方、公正証書遺言は公証役場に保管されるため、遺言書の存在や内容を確実に確認でき、相続人間のトラブルを防ぐことができます。


遺言執行のスムーズさ


 自筆証書遺言は、遺言執行の際に検認手続きが必要です。検認手続きとは、家庭裁判所が遺言書の形式を確認し、遺言書の存在を相続人に知らせる手続きです。この手続きがあるため、遺言執行が遅れる可能性があります。一方、公正証書遺言は検認手続きが不要であり、遺言執行が迅速に行われます。


専門家の関与とアドバイス


 公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、法律の専門家のアドバイスを受けながら作成することができます。これにより、遺言内容が法律に適合し、相続トラブルを未然に防ぐことができます。一方、自筆証書遺言は、遺言者自身が作成するため、専門家のアドバイスを受ける機会が少なく、法的に不備が生じる可能性があります。


まとめ


 公正証書遺言は、法的確実性の高さ、紛失や改ざんのリスクの低さ、内容の明確化、遺言執行の容易さ、訂正や変更の簡便さなど、多くのメリットがあります。一方、自筆証書遺言は、手軽さと費用の安さがメリットですが、法的要件の厳格さや保管のリスク、遺言執行の煩雑さがデメリットとなります。遺言書を作成する際には、自身の状況やニーズに応じて、公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらが適しているかを検討し、専門家のアドバイスを受けながら適切な遺言書を作成することが重要です。これにより、相続トラブルを未然に防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。


 ただし、公正証書遺言であっても、争いにより裁判で覆る可能性があります。遺言者の状態をしっかりみて、推定相続人である家族の方たちとしっかりコミュニケーションをとって、対策を講じることが重要です。

(論点)相続の生前対策、5つのポイント

(論点)相続の生前対策、5つのポイント

生前対策を考えるとき、相続発生した場合を想定して行います。しかし、何から手を付けていいやらわからない方も多いのではと思います。今回、専門家への相談も含め、具体的な内容について少しお話をしたいと思います。


目次


1.遺言書の作成


2.生前贈与


3.不動産の活用


4.生命保険の活用


5.専門家に相談

(論点)相続の生前対策、5つのポイント

1.遺言書の作成


 遺言書の作成は相続対策の基本です。遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、公正証書遺言が最も一般的で信頼性が高いです。公証人の立会いのもと作成され、改ざんの心配がないため、法的効力が強いです。遺言書を作成することで、遺産分割の方法を明確にし、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。特に、家族構成が複雑な場合や特定の相続人に多く遺したい場合などは、遺言書を作成することが有効です。また、遺言執行者を指定することで、遺産分割の手続きがスムーズに進むようになります。


2.生前贈与


 生前贈与は、相続財産を減少させることで相続税の負担を軽減する方法です。年間110万円までの贈与は非課税であるため、この非課税枠を活用して少額ずつ財産を贈与することが一般的です。また、特定の目的のための贈与も有効です。例えば、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与には、それぞれ非課税枠が設けられており、これを活用することで、子供や孫のための資金を提供しつつ、相続税の課税対象額を減少させることができます。さらに、住宅取得資金の贈与も非課税枠があるため、家族の住宅購入を支援しつつ、相続税対策を行うことが可能です。


※暦年贈与は、令和6年1月1日から相続発生時からさかのぼって7年間分の贈与を相続財産に組み戻すことになっております。

(論点)相続の生前対策、5つのポイント

3.不動産の活用


 不動産は相続財産の中でも大きな割合を占めることが多く、これを有効に活用することで相続税対策が可能です。例えば、不動産を賃貸物件として運用することで収益を得ることができます。また、不動産の評価額は市場価格よりも低くなることが多いため、相続税の負担を軽減する効果があります。持ち家を子供名義に変更することで、生前贈与の非課税枠を利用して相続税の負担を軽減することも考えられます。ただし、不動産の運用や名義変更には法的な手続きや費用がかかるため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。


※実際、これを活用されている方もいます。しかし、融資の額が大きく、不動産の評価の額が小さくなるといった、額が大きい内容での節税対策になりますので、利用できる方は限られます。


4.生命保険の活用


 生命保険は、相続税対策として非常に有効な手段です。生命保険金には、法定相続人1人当たり500万円の非課税枠が設けられており、この枠を活用することで相続税の負担を軽減することができます。また、生命保険金は受取人が指定されているため、遺産分割協議を経ずに迅速に支給されるメリットもあります。これにより、相続税の支払い資金を確保することができるため、相続人が現金不足に陥るリスクを軽減できます。さらに、生命保険は契約者が自由に受取人を指定できるため、特定の相続人に対して確実に財産を遺すことができます。

(論点)相続の生前対策、5つのポイント

5.専門家に相談


 相続対策は非常に複雑であり、個々の状況に応じた最適な対策を講じるためには、専門家の助言が欠かせません。税理士や弁護士、司法書士などの専門家に相談することで、最新の法改正や税制に基づいた適切な対策を講じることができます。例えば、税理士は相続税の申告や生前贈与の計画において有益なアドバイスを提供し、弁護士は遺言書の作成や遺産分割協議の進行をサポートします。専門家のアドバイスを受けることで、相続税の負担を最小限に抑えつつ、円滑な相続手続きを実現できます。


まとめ


 これらの生前対策を組み合わせることで、相続税の負担を軽減し、相続人間のトラブルを防ぎ、円滑な財産の承継を実現することが可能です。早めに対策を始めることで、より効果的な相続対策が行えます。


 しかし、上記内容を検討する前に、まずは、専門家への相談を考えてください。分からない状態での対策は、実際何も効力がないケースもございます。せっかくの対策を効果的に実現するためにも、専門家への相談は欠かせませんからね。

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

今回は、不動産を共有で所有することの不利益について解説したいと思います。共有不動産は、様々な問題を抱えています。元のオーナー間で、関係性が良好でも、その次の世代ではどうなるかわかりません。また、身分上の変化(例えば離婚)などにより、関係性が悪化する場合も考えられます。


目次


1. 意思決定の難航

2. 維持費用の負担と分担

3. 利用方法の衝突

4. 相続時の問題

5. 不動産の売却の困難

6.結論

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

1. 意思決定の難航

不動産を共有する場合、複数の共有者が関与するため、重要な決定を下す際に全員の合意が必要となります。例えば、不動産の売却や賃貸に関する決定、修繕やリノベーションの実施、あるいは不動産の利用方法についての決定など、共有者全員の同意を得ることが求められます。


 例: ある不動産を3人の共有者が所有している場合、一人が不動産を売却したいと思っても、他の2人が反対することがあります。このような場合、売却を進めることはできません。合意を得るための交渉が長引き、結果として迅速な意思決定が困難になります。


2. 維持費用の負担と分担


 不動産の共有者は、維持費用や修繕費用を分担する必要があります。しかし、各共有者がその負担をどのように分け合うかについて意見が一致しないことがあります。一部の共有者が費用負担を拒否したり、経済的に負担できない場合、他の共有者がその分を補填しなければならないことがあります。


 例: 建物の屋根が老朽化し、修繕が必要な場合、共有者の一人が修繕費用を負担できないとしたら、他の共有者がその分を負担することになり、不公平感が生じます。また、修繕が先延ばしにされることで、不動産の価値が下がるリスクもあります。


3. 利用方法の衝突


 共有不動産の利用方法についても意見の対立が生じることがあります。ある共有者がその不動産を賃貸に出したいと考える一方で、別の共有者は自己利用を望むことがあります。このような場合、利用方法についての合意を得ることが難しく、不動産の効果的な利用が妨げられます。


 例: 共有不動産が都市部のマンションで、一部の共有者が投資目的で賃貸に出したいと考え、他の共有者が自己利用や家族のために利用したいと考える場合、双方の意見が対立し、最適な利用方法を見つけることが困難です。


(論点)不動産を共有で所有することの不利益

4. 相続時の問題


 共有不動産は相続時に特に複雑な問題を引き起こすことがあります。共有者の一人が亡くなった場合、その持分は相続人に引き継がれますが、相続人が複数いる場合、新たな共有者が増えることになります。これにより、意思決定がさらに複雑化し、摩擦が生じやすくなります。


 例: 共有者の一人が亡くなり、その持分が3人の子供に相続された場合、新たに3人の共有者が加わります。これにより、共有者の数が増え、全員の意見を一致させることがますます難しくなります。特に、相続人同士が意見を異にする場合、長期的な対立が生じる可能性があります。


※通常は遺産分割協議により、相続人のどなたか一人に移転しますが、争っている場合、法定相続分での登記がなされてしまい、共有状態になります。


5. 不動産の売却の困難


共有不動産を売却する場合、全ての共有者の同意が必要です。これが得られない場合、売却は困難となり、結果として不動産の流動性が低下します。また、一部の共有者が売却に積極的でない場合、市場価格よりも低い価格での売却を余儀なくされることもあります。


 例: 共有者の一人が緊急に現金を必要とし、不動産を売却したいと考えても、他の共有者がこれに同意しない場合、売却は進められません。結果として、緊急に資金が必要な共有者は他の方法で資金を調達する必要が生じ、場合によっては不利な条件での取引を余儀なくされることがあります。


(論点)不動産を共有で所有することの不利益

6.結論


 不動産の「共有」は、一見するとリスク分散や共同利用の利点があるように見えますが、実際には多くの不利益をもたらします。意思決定の難航、維持費用の分担の不公平、利用方法の衝突、相続時の問題、売却の困難など、共有者間の摩擦や対立が生じやすく、これらが長期的に不動産の価値や利用効率に悪影響を与えることがあります。

 共有不動産を所有する場合、これらの問題を予見し、共有者間で明確なルールを設定し、信頼関係を築くことが重要です。

 それでもなお、共有による不利益を完全に避けることは難しいため、個別所有や法人による所有など、他の所有形態を検討することも一つの選択肢となります。

(論点)「相続人は、私一人なので、手続きは簡単ですか?」

(論点)「相続人は、私一人なので、手続きは簡単ですか?」

相続人が一人であっても、相続の手続きは必ずしも簡単ではありません。その理由について、以下で詳しく説明します。


目次


1.相続の基本的な流れ


2.手続きが簡単でない理由


3.結論

(論点)「相続人は、私一人なので、手続きは簡単ですか?」

1.相続の基本的な流れ


相続の手続きは、相続人の人数に関係なく、以下のような基本的な流れをたどります。


(1)相続人の確認:相続人が一人であることを確認するために、被相続人(亡くなった方)の戸籍を遡って確認する必要があります。この過程で、知られていなかった相続人がいる可能性もあり、複雑になることがあります。


(2)遺産の調査:被相続人の財産を調査し、相続対象の資産と負債を把握します。これには、不動産、預貯金、株式、生命保険などが含まれます。また、負債があればそれも含めて調査しなければなりません。


(3)相続放棄の検討:相続財産に負債が多い場合、相続人は相続放棄を検討することがあります。相続放棄をする場合、家庭裁判所に手続きを行う必要があり、手続き自体が複雑です。


※遺産分割協議書の作成:相続人の調査の結果、他にも相続人がいることが判明した場合、遺産分割協議書を作成して相続内容を明文化することが求められます。


(4)名義変更手続き:相続した財産の名義変更手続きが必要です。例えば、不動産の名義変更や銀行口座の解約・名義変更などが挙げられます。これには、それぞれに異なる書類や手続きが必要です。(法務局にて、法定相続情報一覧図の作成することで、共通する戸籍等の書類を持参しなくてもよくなります。)

(論点)「相続人は、私一人なので、手続きは簡単ですか?」

2.手続きが簡単でない理由


相続人が一人であっても、相続の手続きが簡単でない理由はいくつかあります。


複雑な書類手続き

相続手続きには、多くの書類が必要です。例えば、被相続人の死亡届、戸籍謄本、遺産分割協議書、相続関係説明図、財産評価証明書などがあります。これらの書類を揃えるだけでも時間と手間がかかります。特に、相続人が一人でも、すべての財産に対して適切な書類を用意し、各機関に提出する必要があります。


財産の評価と分割

被相続人が複数の財産を持っていた場合、それらの評価を行う必要があります。不動産の場合、評価額を算定するために専門家の査定が必要となることがあります。また、金融資産も種類ごとに評価額を確認しなければなりません。相続人が一人であっても、これらの手続きは省略できません。


税務申告

相続財産が一定の額を超える場合、相続税の申告が必要です。相続税の計算には、複雑な税法の知識が必要であり、税理士の助けを借りることが多いです。また、税務署に対して提出する書類も多く、申告期限も厳格です。相続人が一人でも、相続税の申告手続きを行わなければならない場合があります。


負債の調査

被相続人が負債を抱えていた場合、その全貌を把握する必要があります。負債がある場合、相続人はそれを引き継ぐか、相続放棄を選択することができます。負債の有無を確認するためには、被相続人の過去の金融取引や借入記録を詳しく調査しなければならず、これも一筋縄ではいきません。


遺言書の存在

被相続人が遺言書を残していた場合、その内容に従って相続手続きを進める必要があります。遺言書が法的に有効かどうかを確認し、内容が法定相続分と異なる場合には、相続人として異議を申し立てることも考えられます。このようなケースでは、弁護士の助けを借りることが多くなります。

(論点)「相続人は、私一人なので、手続きは簡単ですか?」

3.結論


相続人が一人であっても、相続手続きは多岐にわたり、複雑な手続きを要します。書類の準備、財産の評価、税務申告、負債の調査など、すべてのプロセスを適切に遂行するには専門的な知識と時間が必要です。特に、遺産に負債が含まれている場合や、複数の財産がある場合、手続きの複雑さは一層増します。このため、相続手続きが簡単でないことを理解し、必要に応じて専門家の助けを借りることが重要です。

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

借金の帳消しや過払い金が戻るといった宣伝が行われていますが、そのすべてが詐欺であるわけではありません。しかし、こうした宣伝には詐欺的な手法が含まれているケースもあるため、注意が必要です。以下に、具体的なポイントを挙げて説明します。


目次


1. 過払い金返還請求の現実


2. 借金帳消しの宣伝とそのリスク


3. 詐欺のリスクと注意点


4. 信頼できる情報源の活用


5. まとめ

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

1. 過払い金返還請求の現実


過払い金の実態:

2000年代後半から2010年代前半にかけて、過払い金返還請求は非常に多くの人々に利用されました。この時期には、消費者金融などが法定上限を超える高金利で貸付を行っていたため、多くの借り手が過払い金を請求できる状況にありました。しかし、現在では、こうした高金利の貸付がほぼ解消されており、過払い金を請求できるケースは非常に少なくなっています。


(裁判所の司法統計を確認すると)


ピーク時:

件数: 約220,000件(2010年)

理由: 高金利の借入が多く、過払い金請求が急増。


現在:

件数: 約10,000件(2023年)

理由: 高金利の借入が解消され、対象となる借入がほぼなくなった。


※つまり、ピーク時の5%ほどしか、過払い事件として存在していないということになります。


過払い金の対象者:

過払い金返還請求の対象となるのは、過去に高金利で借り入れを行った人々です。現在、法定上限金利を守っている貸金業者がほとんどであり、新たな借り入れに関しては過払い金が発生しないため、過払い金の返還請求を行える人は限られています。

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

2. 借金帳消しの宣伝とそのリスク


借金帳消しの手段:

「借金帳消し」という言葉は、自己破産や個人再生などの法的手続きを指すことが多いです。これらの手続きは、借金を法的に整理する方法であり、実際に債務を免除または減額することが可能です。しかし、これには一定の条件が必要であり、全ての人が簡単に利用できるものではありません。



手続きの影響:

自己破産や個人再生を行うと、信用情報にその情報が記録され、一定期間は新たな借り入れが難しくなります。また、自己破産の場合は、持ち家や財産を処分する必要があるなど、生活に大きな影響を与える可能性があります。

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

3. 詐欺のリスクと注意点


詐欺的な業者の手口:

一部の業者は、過払い金返還や借金帳消しを簡単に行えると謳って、顧客を集めています。こうした業者は、高額な手数料を請求したり、必要のない法的手続きを勧めたりすることがあります。特に、過払い金請求の権利がないにも関わらず、請求ができると偽って手数料を取るなどの詐欺行為が問題となっています。 


怪しい宣伝に注意:

「簡単に借金がゼロになる」「過払い金が必ず戻ってくる」といったキャッチフレーズを使っている業者は特に注意が必要です。こうした宣伝は、現実を誇張していることが多く、詳細を確認せずに契約すると、後で大きなトラブルに発展する可能性があります。


※特に最近ひどいと思った事件は、令和6年6月22日熊本放送が報じた「全国B型肝炎訴訟の熊本弁護団の(元)団長が1億4千万円を着したとされる問題」です。B型肝炎の広告も最近よく見ますよね。


4. 信頼できる情報源の活用


専門家のアドバイス:

借金問題や過払い金請求について検討する場合は、信頼できる弁護士や司法書士に相談することが重要です。彼らは、適切な手続きを踏んで問題を解決するためのアドバイスを提供してくれます。また、弁護士会や司法書士会などの公的な機関も利用できます。


消費者センターの利用:

不安な場合は、地元の消費生活センターに相談することも有効です。消費生活センターは、詐欺的な手口や問題のある業者についての情報を提供しており、具体的なアドバイスを受けることができます。

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

5. まとめ


 過払い金請求や借金帳消しを謳った宣伝には注意が必要です。すべてが詐欺というわけではありませんが、中には高額な手数料を要求する悪質な業者も存在します。次の点に注意して対応することが重要です。


過払い金返還請求の現実を理解する:

現在では過払い金を請求できるケースが少なくなっているため、対象となるかどうかを慎重に確認する必要があります。


借金帳消しの手続きとその影響を把握する:

自己破産や個人再生などの手続きには一定の条件があり、生活に大きな影響を与えることがあるため、適切な情報を得ることが重要です。


詐欺のリスクを避ける:

怪しい宣伝や不必要に高額な手数料を要求する業者には注意し、信頼できる専門家や公的機関を活用して問題を解決するよう心がけましょう。


 信頼できる専門家や機関を利用して、適切な情報とサポートを得ることが、トラブルを避けるための最善の方法です。

(論点)仮登記と処分禁止の仮処分の違い

(論点)仮登記と処分禁止の仮処分の違い

仮登記と処分禁止の仮処分は、どちらも不動産や権利に関する法律手続きにおいて重要な役割を果たしますが、それぞれの目的や効果、手続き内容は異なります。

以下に、仮登記と処分禁止の仮処分の違いについて、具体的な説明を交えながらまとめます。


目次


1.仮登記について

2.処分禁止の仮処分について

3.仮登記と処分禁止の仮処分の主な違い

4.結論

(論点)仮登記と処分禁止の仮処分の違い

1.仮登記について


①定義と目的

仮登記は、登記の内容が最終的に確定していない段階で、将来の登記手続きに備えて権利関係を一時的に登記簿に記録する手続きです。これにより、権利の優先順位を仮に保全し、後に本登記を行う際の権利主張を確保します。


➁具体的な例

例えば、不動産の売買契約が成立したが、正式な登記が完了するまでに時間がかかる場合に仮登記を行うことが一般的です。この仮登記により、契約成立後に第三者が不動産を取得しようとしても、仮登記を行った買主の権利が優先されることになります。


③手続き

仮登記の手続きは、登記所に対して申請書を提出し、必要な書類や費用を納付することで行われます。仮登記は一時的なものであり、将来的に本登記を行うことが前提とされています。


④効果

仮登記は、権利の優先順位を確保するために重要な役割を果たしますが、仮登記自体には完全な対抗力はありません。つまり、仮登記のみでは第三者に対して完全に権利を主張することはできません。本登記が完了することで、初めて正式な権利が確定します。

※このため、本登記を急がないと、仮登記に送れる権利者(本登記することでその登記を失う者)が発生してしまうと、その権利者の「承諾証明書」がなければ、本登記をすることができません。


➄主な利用場面

不動産売買契約の成立後に正式な登記が完了するまでの間の保全

抵当権設定契約の仮段階での権利確保

農地の権利移転における農地法許可待ちの状態での保全

(論点)仮登記と処分禁止の仮処分の違い

2.処分禁止の仮処分について


①定義と目的

処分禁止の仮処分は、裁判所が、特定の財産や権利に関して、その処分(売却や譲渡など)を一時的に禁止する命令を出す手続きです。この仮処分により、当事者間の紛争が解決するまでの間、財産や権利の現状を維持し、紛争の対象となっている財産が不当に処分されるのを防ぎます。


➁具体的な例

例えば、不動産の所有権を巡って争いがある場合に、裁判所がその不動産を処分することを禁止する仮処分を命じることで、裁判が終了するまでの間、不動産の売却や譲渡ができなくなります。これにより、裁判が長引いても、財産の現状が維持され、権利の争いが公正に解決されることが保障されます。

※仮に仮処分の登記後に登記をしたとしても、裁判で権利が認められると、当該権利者の承諾証明書がなくても、簡易な手続きで、その登記の抹消をすることができます。


③手続き

処分禁止の仮処分は、裁判所に対して申立書を提出し、必要な証拠を提出することで行われます。裁判所は、仮処分を命じるために必要な要件を満たしているかどうかを審査し、要件が満たされていると判断した場合、仮処分命令を発出します。


④効果

処分禁止の仮処分は、裁判所の命令によって強制力を持ち、当事者がその命令に従わない場合には、法的な制裁が科されることがあります。これにより、当事者が不動産や権利を不当に処分することができなくなり、財産の現状が維持されます。


➄主な利用場面

不動産や動産の所有権を巡る紛争の間に、財産が不当に処分されるのを防ぐ

企業間の契約違反などで、特定の財産が処分されるのを防ぐ

家庭内の離婚や相続などで、財産分与に関連する財産が勝手に処分されるのを防ぐ


3.仮登記と処分禁止の仮処分の主な違い


①目的の違い


  仮登記:将来の権利関係を確定するための準備として、権利の優先順位を仮に保全することを目的としています。

  処分禁止の仮処分:財産や権利の現状を維持し、紛争の対象となっている財産が不当に処分されるのを防ぐことを目的としています。


➁手続きの違い


  仮登記:登記所に対して申請を行い、必要な書類や費用を納付することで手続きが進められます。

  処分禁止の仮処分:裁判所に対して申立てを行い、裁判所の審査を経て命令が発出されます。


③効果の違い


  仮登記:権利の優先順位を確保するが、完全な対抗力は持たない。将来的に本登記を行うことで権利が確定します。

  処分禁止の仮処分:裁判所の命令により強制力があり、命令に従わない場合には法的な制裁が科されることがあります。


④利用場面の違い


  仮登記:主に不動産取引や権利移転の準備段階で利用されます。

  処分禁止の仮処分:財産や権利を巡る紛争がある場合に、その財産や権利の現状を維持するために利用されます。


(論点)仮登記と処分禁止の仮処分の違い

4.結論


 仮登記と処分禁止の仮処分は、それぞれ異なる目的と手続きを持ち、異なる状況で利用されます。仮登記は将来の権利関係を確定するための準備として、権利の優先順位を仮に保全する手続きです。一方、処分禁止の仮処分は、財産や権利の現状を維持し、紛争の対象となっている財産が不当に処分されるのを防ぐ手続きです。

両者の違いを理解し、適切な場面でそれぞれの手続きを活用することが、法的なリスク管理において重要です。


 ちなみに、処分禁止の仮処分の登記での裁判が確定した場合、仮処分に遅れる登記を抹消するには、判決による登記と移転登記を同時に申請する方法があります。

遅れる登記がない場合は、処分禁止の仮処分登記抹消の嘱託を書記官に依頼する必要があります。遅れる登記の抹消には、仮登記のように相手の承諾証明書は必要なく、「単独申請」で登記申請することが可能です。

その際に、添付する書類として「通知証明情報」というものがありますが、これは、抹消される遅れる登記の権利者に対し通知をしたことを証する書面となります。

名義人の登記簿上の住所地に内容証明郵便により通知をし、これを発した日から1週間経過で到達したものとみなされます。

仮登記の承諾証明書よりも手続き上、楽ですし確実です。

裁判するのが面倒だから仮登記を安易に選択すると、後に事故の権利の主張ができないなんてことが起こりえますので、専門家に相談することをお勧めいたします。

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

相続に関する準備を進める中で、「生前の覚書」が遺言書として有効なのかどうかという疑問を持つ人は少なくありません。

遺言書は、遺産の分割や相続の際に重要な役割を果たしますが、その形式や内容には法律上の厳格な要件が存在します。

本稿では、生前の覚書が遺言書として認められるかどうかについて、具体的な条件や考慮すべき点を詳細に解説します。


目次


1. 遺言書の法的要件

2. 生前の覚書と遺言書

3. 覚書が無効となるケース

4. 遺言書を確実に作成するためのアドバイス

5. まとめ

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

1. 遺言書の法的要件


まず、遺言書として有効であるためには、法律で定められた要件を満たす必要があります。日本の民法では、以下の3つの形式が主要な遺言の方法として認められています。


1.1. 自筆証書遺言

全文自筆: 遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自筆で書き、押印します。

自筆でなければ無効: 全文を自筆で書くことが求められ、パソコンで作成したものや他人に書かせたものは無効です。

家庭裁判所での検認: 遺言者の死後、家庭裁判所での検認手続きが必要です。


1.2. 公正証書遺言

公証人の作成: 遺言者が公証人の前で遺言の内容を口述し、公証人が筆記して作成します。

証人の立会い: 遺言者が口述した内容を2人以上の証人が立ち会い、その正確性を確認します。

検認不要: 公証人が作成するため、家庭裁判所での検認手続きは不要です。


1.3. 秘密証書遺言

遺言者が作成し封印: 遺言者が遺言書を作成し、封印します。署名押印は遺言者自身が行います。

公証人と証人の確認: 公証人および2人以上の証人の前で遺言者が封印された遺言書を提出し、内容は確認されません。

検認が必要: 遺言者の死後、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

2. 生前の覚書と遺言書


生前の覚書が遺言書として有効かどうかを判断するためには、上記の要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。


2.1. 形式の要件

自筆証書遺言の要件: 覚書が遺言者の自筆で書かれているか、日付と氏名が記載されているかを確認します。また、覚書が押印されていることも重要です。これらの要件が満たされていなければ、覚書は自筆証書遺言として無効とされる可能性が高いです。

公正証書や秘密証書の要件: 公証人や証人の関与がない場合、覚書はこれらの形式を満たすことができないため、公正証書遺言や秘密証書遺言としては無効です。


2.2. 内容の要件

遺言者の意思の明確性: 覚書の内容が遺言者の意思を明確に示しているかが重要です。遺言者の意向が明確でなく、曖昧な記述がある場合、法的に有効な遺言書として認められない可能性があります。

法定相続人の権利: 覚書の内容が法定相続人の権利を侵害している場合や、法定相続分に違反している場合は、その効力が制限されることがあります。


3. 覚書が無効となるケース


 以下のような場合、覚書は遺言書として無効となる可能性があります。


3.1. 法定形式を満たさない場合

自筆でない覚書: パソコンで作成された覚書や、他人が代筆した覚書は無効です。自筆証書遺言としての要件を満たしていないため、法的効力は認められません。

日付や署名の欠如: 覚書に日付がない場合や、遺言者の署名がない場合、遺言書としての法的要件を満たさないため無効となります。


3.2. 遺言の内容が曖昧な場合

明確な意思表示がない: 覚書の内容が不明確で、遺言者の意思が具体的に示されていない場合、遺言書としての効力が認められないことがあります。

誤解を招く表現: 覚書の内容に曖昧な表現や、法的な解釈に誤解を招く可能性のある表現が含まれている場合、無効とされることがあります。

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

4. 遺言書を確実に作成するためのアドバイス


4.1. 専門家への相談

弁護士や司法書士の利用: 遺言書を確実に作成するためには、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが重要です。法的に有効な遺言書を作成するための助言を得ることができます。


4.2. 公正証書遺言の作成

確実な手続き: 公正証書遺言は公証人が作成するため、法的要件を確実に満たすことができます。また、家庭裁判所での検認手続きが不要なため、手続きがスムーズに進むメリットがあります。


4.3. 定期的な見直し

内容の更新: 遺言書は定期的に見直し、変更が必要な場合は新しい遺言書を作成します。遺言者の意思が変わった場合や、家族構成に変更があった場合は、遺言書を最新の状態に保つことが重要です。

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

5. まとめ


 生前の覚書が遺言書として有効かどうかは、法律で定められた形式的および内容的要件を満たしているかによって決まります。一般的に、覚書が遺言書として認められるためには、自筆証書遺言としての要件を満たす必要がありますが、法的要件を満たしていない場合は無効となります。遺言書を確実に有効なものとするためには、専門家の助言を受け、公正証書遺言など、法的に確実な方法で作成することが推奨されます。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

(論点)実家の相続手続についての注意点

(論点)実家の相続手続についての注意点

相続人の方が、すでに別所帯を持っており、実家をどのようにすればいいのか、悩まれている方も多いと思います。

今回は、実家の相続手続きをする際の注意点についてお話をしたいと思います。


目次


1. 相続手続きの基本的な流れ

2. 相続手続きにおける注意点

3. 実家の相続における特有の注意点

4. 専門家の活用

5. まとめ

(論点)実家の相続手続についての注意点

1. 相続手続きの基本的な流れ


実家の相続手続きは、以下のような一般的なステップを経て進められます。


①相続の開始:被相続人(親など)が死亡した時点で相続が開始されます。

相続人の確定:戸籍謄本などを用いて法定相続人を確定します。被相続人に子供がいない場合、両親や兄弟姉妹など、関係者全員の確認が重要です。

遺産の調査・評価:遺産のリストアップと評価を行います。具体的には不動産、預貯金、株式、負債などを含みます。

遺産分割協議:相続人全員で遺産の分割方法を協議し、合意を得ます。合意内容は遺産分割協議書に記載します。

➄相続税の申告・納付:基礎控除を超える遺産がある場合、相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行います。配偶者控除(1億6千万円)を適用する場合も、申告が必要です。

⑥登記・名義変更:不動産の登記名義変更や金融機関での名義変更を行います。

(論点)実家の相続手続についての注意点

2. 相続手続きにおける注意点


(1)相続人の調査

相続人の漏れがないか確認: 戸籍謄本を遡って確認し、すべての相続人を確定することが重要です。特に、兄弟姉妹が多い場合や複雑な家族構成の場合、相続人の漏れが起きやすいため、注意が必要です。


(2)遺産の調査

遺産の把握: 実家の不動産以外にも、預貯金や株式、負債など、すべての遺産を漏れなく調査することが大切です。遺産が複数の地域に分散している場合や、海外に資産がある場合は特に注意が必要です。


(3)遺産の評価

不動産評価の方法: 実家の不動産評価には、公示価格や固定資産税評価額、相続税評価額などの評価基準があり、それぞれ異なるため、正確に把握することが求められます。評価額が不適切だと、相続税額や分割協議に影響を及ぼす可能性があります。相続税のための評価については、税理士に確認が必要です。また、不動産登記の基準は、その年度の固定資産税評価証明書又は納税通知書に記載のある、評価額が基準になります。納税通知書の場合は、固定資産税が課税される不動産のみの記載しかありませんので、相続の場合には、固定資産税の評価証明書を取得することが必要となります。


(4)遺産分割協議

全員の合意が必要: 遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。特に実家のような大きな財産は分割が難しく、意見の対立が生じやすいです。話し合いが難航する場合は、第三者の専門家(弁護士、税理士など)の助けを借りることが有効です。


(5)相続税の申告と納付

申告期限を守る: 相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行う必要があります。期限を過ぎると、延滞税や加算税が課されるため、注意が必要です。

節税対策: 生命保険金の非課税枠や配偶者控除など、節税対策を検討することも重要です。専門家のアドバイスを受けて、適切な節税対策を講じることが求められます。


(6)不動産の登記と名義変更

速やかな名義変更: 不動産の名義変更は相続手続きの中でも特に重要です。名義変更を怠ると、後々の売却や担保設定に支障が生じる可能性があります。相続人の同意が得られない場合や、遺産分割が未決定の場合は、遺産分割調停・審判を行うことも検討します。


(7)遺言書の確認

遺言書の存在確認: 被相続人が遺言書を残している場合、遺産分割の際にその内容が優先されます。公正証書遺言、自筆証書遺言などの遺言書が残されている可能性があるため、遺言書の存在を確認します。

遺言書の検認: 自筆証書遺言の場合、家庭裁判所での検認手続きが必要です。検認を経ずに開封すると過料が発生するため、注意が必要です。


(論点)実家の相続手続についての注意点

3. 実家の相続における特有の注意点


①不動産の評価と分割

共有名義のリスク: 実家の不動産を共有名義で相続すると、売却や利用に関する意思決定が難しくなることがあります。将来的なトラブルを避けるため、共有名義はできるだけ避け、一人の相続人が取得するか、売却して現金で分配する方法を検討します。


代償分割の検討: 実家を一人の相続人が取得する場合、他の相続人に対して代償として現金などを支払う「代償分割」を検討することが有効です。これにより、公平な相続が可能になります。


➁空き家の管理と処分

空き家問題の対策: 実家が空き家になる場合、適切な管理が求められます。空き家の管理が不十分だと、固定資産税が増加する可能性や、近隣に迷惑がかかる場合があります。売却や賃貸、解体など、空き家の活用方法を検討します。実家に思い入れがあり、地元の管理会社に管理をお願いした場合、高額な管理費用を請求される場合があります。処分で検討された方がいいと思います。


固定資産税の確認: 空き家の状態によっては、固定資産税の特例措置が適用されない場合があるため、現地の税務署や市区町村に確認します。


③住宅ローンの確認


ローンの残高確認: 実家に住宅ローンが残っている場合、残高を確認し、返済方法を検討します。返済が難しい場合は、売却してローンを完済するか、相続放棄を検討します。


4. 専門家の活用


(1)弁護士や司法書士の相談


法律問題の解決: 相続人間でのトラブルや遺産分割の協議が難航した場合、弁護士の助言を受けることが有効です。法的な観点から適切なアドバイスを得ることで、円滑な手続きを進めることができます。


(2)税理士の活用


相続税の申告と節税: 相続税の申告が必要な場合、税理士に依頼することで、正確な申告が可能になります。また、節税対策についても専門的なアドバイスを受けることができます。


(3)不動産鑑定士の利用


不動産の正確な評価: 実家の不動産評価が複雑な場合、不動産鑑定士に依頼して正確な評価を行うことが推奨されます。正しい評価に基づく相続手続きが可能になります。


(論点)実家の相続手続についての注意点

5. まとめ


 実家の相続手続きは、法的な手続きや税金、不動産の管理など、多岐にわたる問題が絡み合うため、慎重な対応が求められます。相続人全員が協力し、適切な専門家の助けを借りながら進めることが、円滑な相続手続きの鍵となります。事前に十分な情報を収集し、計画的に対応することで、トラブルを未然に防ぐことができます。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

(論点)遺産分割協議で注意すべき6つのポイント

(論点)遺産分割協議で注意すべき6つのポイント

遺産分割協議は、相続人同士で遺産をどのように分割するかを決定する重要なプロセスです。この協議は慎重に行わなければならず、失敗すれば長期的なトラブルに繋がる可能性があります。以下に、遺産分割協議において注意すべき6つのポイントをまとめました。


目次


1. 相続人の確認と全員参加

2. 遺産の範囲と評価の確定

3. 遺言書の有無の確認

4. 公平性の確保

5. 争族を避けるための配慮

6. 書面での合意と法的手続きの確認

まとめ

(論点)遺産分割協議で注意すべき6つのポイント

1. 相続人の確認と全員参加


 遺産分割協議を行う前に、まず全ての相続人を正確に確認することが重要です。相続人は、民法で定められた法定相続人だけでなく、被相続人(亡くなった方)が遺言で指定した受遺者や、養子なども含まれます。また、協議には全相続人が参加しなければなりません。一人でも欠けると、その協議は無効になります。相続人の確認が不十分だと、後から新たな相続人が現れるなどしてトラブルになる可能性があるため、戸籍謄本を取得して慎重に確認しましょう。


2. 遺産の範囲と評価の確定


 遺産分割協議を行う前に、遺産の全体像を把握することが重要です。遺産には、現金や不動産、株式、車などのプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。また、被相続人の名義の口座や土地なども確認し、全ての財産をリストアップします。その上で、各財産の評価を行い、公平な分割ができるようにしましょう。不動産の評価には、不動産鑑定士などの専門家の意見を参考にすると良いでしょう。


3. 遺言書の有無の確認


 遺産分割協議の前に、被相続人が遺言書を残しているかどうかを確認する必要があります。遺言書がある場合、その内容に従って遺産を分割します。遺言書が公正証書遺言であればそのまま効力を持ちますが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認が必要です。遺言書の内容に問題がある場合や、相続人全員が合意している場合には、遺言書に基づかずに協議を進めることも可能ですが、その際には慎重な対応が求められます。

(論点)遺産分割協議で注意すべき6つのポイント

4. 公平性の確保


 遺産分割においては、相続人全員が公平に遺産を受け取ることが原則です。しかし、実際には相続人それぞれの状況や希望が異なるため、完全に平等に分けることは難しいことが多いです。そのため、各相続人の意見を尊重しつつ、全員が納得できる形で遺産を分割することが求められます。例えば、不動産は現金と違って分割が難しいため、売却してその代金を分配するか、特定の相続人が取得して他の相続人に代償金を支払うなどの方法を検討します。


5. 争族を避けるための配慮


 遺産分割協議は、相続人間での争い(いわゆる「争族」)が起きやすい場面です。争いを避けるためには、協議の進行を公正に保ち、全相続人の納得を得ることが重要です。話し合いが難航する場合は、弁護士などの専門家に仲介を依頼するのも一つの方法です。また、日程調整や協議の場所選びなどにも気を配り、全員が参加しやすい環境を整えることも大切です。

(論点)遺産分割協議で注意すべき6つのポイント

6. 書面での合意と法的手続きの確認


 遺産分割協議で合意が得られた場合、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残します。この協議書には、全相続人が署名押印する必要があり、それによって法的な効力を持つことになります。協議書が作成されていない場合、後日合意内容に争いが生じるリスクがありますので、必ず書面で残すようにしましょう。また、協議書の内容を確実に実行するために、不動産の名義変更や銀行口座の解約手続きなど、必要な法的手続きも確認し、速やかに行うことが重要です。


まとめ


 遺産分割協議は、相続人全員が納得できる結果を得るための重要なプロセスです。上記のポイントをしっかりと押さえ、慎重に進めることで、トラブルを避け、円満な相続を実現することができるでしょう。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

 また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1回実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。

(論点)相続登記義務化に伴う手続きの6つのポイント

(論点)相続登記義務化に伴う手続きの6つのポイント

相続登記義務化に伴う手続きについて、以下の6つのポイントに絞って解説します。この法改正は、2024年4月1日から施行され、日本における不動産の相続手続きに大きな影響を与えます。その手続きの概要を示し、6つのポイントについてお話をしたいと思います。


目次


1. 相続登記の義務化の背景と目的

2. 相続登記の義務化の内容と期限

3. 手続きの流れと必要書類

4. 相続放棄と登記義務

5. 法定相続情報証明制度の活用

6. 過去の未登記不動産の対応

7. まとめ

(論点)相続登記義務化に伴う手続きの6つのポイント

1. 相続登記の義務化の背景と目的


背景と目的: 日本では、長年にわたり相続登記が行われないまま放置されている不動産が多く存在していました。この「所有者不明土地」問題は、土地の有効活用や管理を妨げ、社会的、経済的に多くの問題を引き起こしています。このような問題を解決し、土地の管理を適正化するために、相続登記の義務化が導入されました。これにより、相続発生後に迅速に登記が行われることが期待され、土地の管理や流通の円滑化が促進されます。


2. 相続登記の義務化の内容と期限


内容と期限: 新法では、相続人が不動産を相続した場合、その相続登記を義務付けることが定められました。具体的には、相続人は相続開始から3年以内に登記を行わなければなりません。これに違反した場合、正当な理由がない限り、罰則が科される可能性があります。相続登記を怠ると、10万円以下の過料が課されることになります。これにより、相続登記を迅速に行うことが求められます。

(論点)相続登記義務化に伴う手続きの6つのポイント

3. 手続きの流れと必要書類


手続きの流れ: 相続登記の手続きは、主に以下のステップで行います。


①遺言書の確認: まず、遺言書が存在するかどうかを確認します。遺言書があれば、その内容に従って相続手続きを進めます。

➁相続人の確定: 次に、相続人を確定するために、被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本などを取得します。

③遺産分割協議: 相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分配方法を決定します。合意が得られたら、遺産分割協議書を作成します。

④相続登記の申請: 必要書類を準備し、法務局で相続登記の申請を行います。

➄必要書類: 相続登記に必要な主な書類は以下の通りです。


 ㋐被相続人の死亡を証明する戸籍謄本

 ㋑相続人全員の戸籍謄本

 ㋒不動産の固定資産評価証明書

 ㋓遺産分割協議書(遺言書がない場合)

 ㋔登記簿上の住所の記載のある被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票

  ※役場で取得できないケースがあります。その場合は、司法書士に相談しましょう。

 ㋕登記申請書


これらの書類を揃えることで、相続登記を進めることができます。

(論点)相続登記義務化に伴う手続きの6つのポイント

4. 相続放棄と登記義務


相続放棄の場合: 相続人が相続を放棄する場合は、家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行う必要があります。相続放棄が認められると、その相続人は初めから相続人でなかったことになります。相続放棄をした場合、登記義務は発生しませんが、次順位の相続人に登記義務が移ります。したがって、相続放棄を考えている場合は、家庭裁判所での手続きと登記の影響について十分に理解しておく必要があります。しかし、相続登記を長年放置していた場合は、相続放棄ができない場合もあります。


5. 法定相続情報証明制度の活用


法定相続情報証明制度: 相続登記を含む各種相続手続きを簡素化するために、法定相続情報証明制度を活用することが推奨されます。この制度では、法務局で一度、相続関係を証明するための書類を提出すれば、登記や金融機関での手続きを行う際に、その証明書を複数回使用できるようになります。この制度を利用することで、相続手続きの負担が軽減され、効率的に手続きを進めることが可能です。


6. 過去の未登記不動産の対応


過去の未登記不動産: 新法施行前に相続が発生したものの、相続登記が行われていない不動産についても、登記が義務化されました。この場合、相続発生から3年以内に登記する必要はなく、速やかに登記を行うことで義務を果たすことが求められます。過去の未登記不動産がある場合は、早めに相続登記を行い、法的な義務を履行することが重要です。


7. まとめ


 これらのポイントを押さえることで、相続登記義務化に伴う手続きについて理解を深め、適切に対応することが可能です。相続登記は法律に基づいた義務であり、迅速かつ正確に行うことが、財産管理や相続トラブルの回避に繋がります。


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(論点)事例で見る相続問題について

(論点)事例で見る相続問題について

相続問題は、多くの家庭や個人にとって避けて通れない問題であり、感情的なトラブルや法的な紛争を引き起こすことが少なくありません。以下では、相続問題の具体的な事例を挙げつつ、主要な問題点や解決策についてまとめます。


目次


1.相続問題の具体的事例

 事例1: 家族間の不公平感

 事例2: 遺言の無効主張

 事例3: 遺産分割協議の難航

 事例4: 未成年の相続人

2.相続問題の解決に向けた一般的な対策

3.まとめ

(論点)事例で見る相続問題について

1.相続問題の具体的事例


事例1: 家族間の不公平感


【背景】

父親が亡くなり、母親と3人の兄弟(長男、次男、長女)が相続人となった。父親は遺言を残しておらず、相続は法定相続分に従うことになった。しかし、長男は父親の生前に家業を手伝っていたため、他の兄弟よりも多くの財産を受け取るべきだと主張。一方で、次男と長女は公平な分配を求めた。

【問題点】

長男は、家業への貢献を理由に法定相続分以上の相続を主張。

次男と長女は、貢献度にかかわらず、法定相続分に基づく公平な分配を希望。

家族間の信頼が損なわれ、感情的な対立が激化。

【解決策】

調停を通じて、長男の貢献を考慮した上で、公平な分配を模索。

弁護士や信頼できる第三者の仲介により、冷静な話し合いを実施。

家族全員が納得できるような解決策として、長男には家業関連の資産を多く配分し、他の財産については法定相続分に基づき分配。

※ここまでくると、司法書士では対応できませんので弁護士をご紹介するようにしています。


 事例2: 遺言の無効主張


【背景】

父親が亡くなり、遺言書が発見された。しかし、その遺言書は特定の相続人(次男)に有利な内容であり、長女は遺言書が無効であると主張した。理由は、遺言書が作成された当時、父親は認知症の診断を受けており、意思能力がなかったとされているためである。

【問題点】

長女は遺言書の無効を主張し、法的手続きに入った。

次男は遺言書が父親の意思に基づくものであり、有効であると主張。

遺言書の有効性に関する法的紛争が発生し、裁判にまで発展。

【解決策】

遺言書の有効性を判断するために、医師の証言や当時の診断書を確認。

法律の専門家を交えて、遺言書の作成過程や意思能力の有無を検証。

裁判所の判断に基づき、遺言書が無効とされた場合には法定相続分での分配、または新たな遺言書の作成を促進。


 事例3: 遺産分割協議の難航


【背景】

母親が亡くなり、遺産分割を行うことになったが、遺産には不動産が含まれていた。この不動産は価値が高く、相続人(兄、妹)間で分割方法を巡って意見が対立。兄は不動産を売却して現金で分割することを提案したが、妹は思い出の詰まった不動産を保持したいと主張した。

【問題点】

不動産を売却するか保持するかで相続人間の意見が対立。

不動産の評価額についても相続人間で異なる意見があり、協議が難航。

感情的な要素が絡み、解決が遅れる。

【解決策】

不動産の専門家に依頼して、公正な評価額を算定。

妹が不動産を保持したい場合、その価値分を他の財産で調整するか、兄に対して代償金を支払う案を提案。

不動産を一部売却して一部保持するなどの柔軟な分割案を検討。


 事例4: 未成年の相続人


【背景】

両親が交通事故で突然亡くなり、未成年の子供(15歳)が相続人となった。遺産には多額の現金や不動産が含まれており、未成年の子供が相続手続きを行うために、後見人が必要となった。しかし、両親が後見人を指定していなかったため、親族間で後見人を巡る争いが発生。

【問題点】

未成年の相続人のために、信頼できる後見人を選定する必要がある。

親族間で後見人の選定を巡る意見の対立が発生。

未成年の子供の利益を最優先に考えた相続手続きが必要。

【解決策】

裁判所に後見人選任の申立てを行い、公正な手続きで後見人を選定。

未成年者の権利と利益を守るため、法律の専門家(弁護士や司法書士)を介して相続手続きを進める。

未成年者が成人するまでの間、後見人が適切に遺産を管理し、必要に応じて生活費や教育費を確保することが重要。

(論点)事例で見る相続問題について

2.相続問題の解決に向けた一般的な対策


①遺言書の作成


【目的】

遺言書は相続人間のトラブルを未然に防ぐための重要な手段です。明確な指示を残すことで、相続人間の争いを減らし、公正な分配を行うことができます。

【方法】

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの形式があり、それぞれ法的な要件を満たす必要があります。


➁相続税対策


【目的】

相続税の負担を軽減するための対策を講じることが重要です。相続税が高額になる場合、遺産分割が難航する可能性があります。

【方法】

生命保険の活用、生前贈与、遺産分割方法の工夫などを検討します。


③生前贈与


【目的】

生前に財産を贈与することで、相続発生時の遺産分割を円滑にすることができます。

【方法】

 一定額まで非課税となる制度を活用し、生前に子供や孫に財産を贈与することが考えられます。


④家族信託の活用


【目的】

家族信託を利用することで、財産管理や相続の円滑な引き継ぎを行うことができます。特に高齢者や障害者の財産管理に有効です。

【方法】

信託契約を締結し、信頼できる家族を受託者に任命して財産を管理します。


➄法律専門家の相談


【目的】

相続問題は法律が絡むため、専門家の助言を得ることが重要です。弁護士や税理士、司法書士に相談することで、法的な問題を適切に解決できます。

【方法】

 事前に信頼できる専門家を選定し、必要に応じて相談を行います。

(論点)事例で見る相続問題について

2.相続問題の解決に向けた一般的な対策


①遺言書の作成


【目的】

遺言書は相続人間のトラブルを未然に防ぐための重要な手段です。明確な指示を残すことで、相続人間の争いを減らし、公正な分配を行うことができます。

【方法】

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの形式があり、それぞれ法的な要件を満たす必要があります。


➁相続税対策


【目的】

相続税の負担を軽減するための対策を講じることが重要です。相続税が高額になる場合、遺産分割が難航する可能性があります。

【方法】

生命保険の活用、生前贈与、遺産分割方法の工夫などを検討します。


③生前贈与


【目的】

生前に財産を贈与することで、相続発生時の遺産分割を円滑にすることができます。

【方法】

 一定額まで非課税となる制度を活用し、生前に子供や孫に財産を贈与することが考えられます。


④家族信託の活用


【目的】

家族信託を利用することで、財産管理や相続の円滑な引き継ぎを行うことができます。特に高齢者や障害者の財産管理に有効です。

【方法】

信託契約を締結し、信頼できる家族を受託者に任命して財産を管理します。


➄法律専門家の相談


【目的】

相続問題は法律が絡むため、専門家の助言を得ることが重要です。弁護士や税理士、司法書士に相談することで、法的な問題を適切に解決できます。

【方法】

 事前に信頼できる専門家を選定し、必要に応じて相談を行います。

(論点)事例で見る相続問題について

3.まとめ


 相続問題は、法的な知識だけでなく、家族間のコミュニケーションや感情的な要素も関わるため、複雑でデリケートな問題です。事前の準備や対策を講じることで、円満な相続を実現することが可能です。


 ここでご紹介した事例は、私が受任した相続ではなく、一般事例として挙げられた内容を取り上げました。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

(論点)身元保証サポート事業(内閣府発表のガイドライン(案)について)

(論点)身元保証サポート事業(内閣府発表のガイドライン(案)について)

令和6年4月19日に内閣府が発表した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」は、高齢者やその家族が信頼できる終身サポート事業者を選択するための基準を提供し、悪質な事業者からの被害を防止することを目的としています。このガイドラインは、特に契約書の作成、預託金の保全、身元保証契約に関する注意点を示しています。以下にその要点をまとめます。


目次


1. 契約書の作成


2. 預託金の保全


3. 遺贈や死因贈与を条件とする身元保証契約の回避

(論点)身元保証サポート事業(内閣府発表のガイドライン(案)について)

1. 契約書の作成


 ガイドラインでは、終身サポート事業者が提供する契約書について詳細な指針が示されています。具体的には、死後事務委任契約、財産管理契約、事務委任契約など、各種の契約書の作成が求められています。


 死後事務委任契約は、契約者が亡くなった後に、葬儀や財産の処分などの事務手続きについて委任する契約です。この契約書には、具体的な事務内容、委任者と受任者の権利義務、報酬の額と支払い方法などを明記することが推奨されています。契約者が安心して老後を過ごせるように、透明性を確保し、後に紛争が生じないように詳細な記載が必要です。


 財産管理契約については、契約者が生前に自身の財産管理を第三者に委任する契約です。この契約書には、管理対象の財産の種類と範囲、管理方法、報酬の支払い条件などを明示し、契約者の利益を保護することが重要です。


 事務委任契約は、日常の事務作業や生活支援を委任する契約です。具体的な支援内容や支援の範囲、契約期間、報酬などを契約書に明記することで、契約者が安心して生活を委ねることができるようになります。


2. 預託金の保全


 ガイドラインは、事業者が受け取る預託金についても厳格な管理を求めています。特に、預託金の保全措置として信託銀行または信託会社を利用することが推奨されています。


 預託金は、将来のサービス提供や事務手続きの費用として事前に受け取る金銭です。この金額は、事業者の倒産や経営悪化時にも保全される必要があります。ガイドラインは、預託金を信託銀行または信託会社に預けることで、その安全性を確保するよう求めています。信託機関は、厳格な監督下にあり、資金の安全性が高いため、預託金の信託保全は、利用者にとって非常に安心できる仕組みです。


※仮に、事業者名義の預金で管理していた場合、破産した場合に差押え等のリスクにさらされることになります。信託にすることにより、手数料はかかりますが、差押え対象から除外されるメリットがあります。

(論点)身元保証サポート事業(内閣府発表のガイドライン(案)について)

3. 遺贈や死因贈与を条件とする身元保証契約の回避


 ガイドラインでは、遺贈や死因贈与を条件とする身元保証契約を避けることを強く推奨しています。遺贈とは、遺言により財産を譲ることを指し、死因贈与は死亡を原因とする贈与契約です。


 これらの契約は、契約者が死亡後にその財産を保証人に譲渡することを条件とするため、悪用されるリスクが高いです。特に、契約者が認知症などの判断能力の低下により、不適切な契約を結ばされる可能性があります。ガイドラインは、こうしたリスクを避けるため、事業者が遺贈や死因贈与を契約条件とすることを禁止し、身元保証契約において契約者の財産を保全する措置を講じることを求めています。


 身元保証契約は、高齢者が安心して生活を送るために必要なサポートを提供する契約であり、契約者の生活と権利を保護することが求められます。そのため、ガイドラインは、保証人が契約者の財産を不当に取得しないよう、契約内容の透明性と適切な契約書の作成を強調しています。

(論点)身元保証サポート事業(内閣府発表のガイドライン(案)について)

4. まとめ


 内閣府が発表した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」は、高齢者やその家族が安心してサービスを利用できるよう、契約書の作成、預託金の保全、遺贈や死因贈与を条件とする契約の回避について詳細な指針を提供しています。このガイドラインに従うことで、利用者は信頼できる事業者を選び、安心して老後を過ごすためのサポートを受けることができるでしょう。


 そして、これらの身元保証サポート事業者の監督官庁はどこかというと、内閣府のHPでも、「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の取組(i)消費者庁において、身元保証や死後事務等を行う身元保証等高齢者サポート事業による消費者被害を防止するため、厚生労働省その他関係行政機関と必要な調整を行うこと。」とされており、事業所の監督官庁による定期的な監査で是正するのではなく、消費者庁に届け出ることにより、ガイドラインに合っていない契約からの消費者保護という仕組みとなっています。

(論点)相続の民間資格の危うさについて

(論点)相続の民間資格の危うさについて

日本では、相続問題がますます複雑化しており、専門家のアドバイスを求めることが一般的です。しかし、近年では司法書士や弁護士といった専門家に依頼せず、民間資格を持つ人々が相続手続きをサポートする事例が増えています。これには費用面の負担軽減や手軽さが利点とされていますが、その一方で重大なリスクも存在します。今回は、相続における民間資格の危うさについて、専門家に依頼しないことのリスクと合わせて考察します。


目次


1.民間資格の概要


2.民間資格の危うさ


3.専門家に依頼するメリット


4.まとめ

(論点)相続の民間資格の危うさについて

1.民間資格の概要


 民間資格とは、国や自治体の公的資格とは異なり、企業や団体が独自に認定する資格を指します。相続に関連する民間資格としては、「相続診断士」や「家族信託コーディネーター」などが存在します。これらの資格は、数日から数週間の短期間で取得可能であり、相続に関する基礎知識を学ぶことができます。しかし、実際の法律知識や実務経験が乏しいことが多く、専門的な判断を要する場面で問題が発生することが懸念されています。


※そんなことはない、インターネット上に転がっている情報を集めればそれなりに相談できるという方がいらっしゃいましたが、それこそ危険で、法律上の判断をしながら、情報の精査ができるのが国家資格者です。仮に、専門的な相談をしたいなら、あなたを信じて相談に来るお客様のためにも、数日から数週間で取れる民間資格ではなく、国家資格を取るべきです。国家資格がベースにある民間資格者なら問題ないと思います。


2.民間資格の危うさ


①法的な権限の欠如


 民間資格を持つ者には、司法書士や弁護士のような法的な権限がありません。たとえば、相続登記や遺産分割協議書の作成といった法的手続きは、法に基づいて専門知識を持った司法書士や弁護士によって行われる必要があります。法律相談も然りです。民間資格者がこれらの手続きを行うことは、法律上許されていないため、無資格のままこれを行うと、違法行為に該当する可能性があります。


➁誤った情報提供のリスク


 民間資格を持つ者が提供する情報が必ずしも正確であるとは限りません。相続手続きには、税務や法務の複雑な知識が必要であり、誤ったアドバイスが財産分配に重大な影響を及ぼすことがあります。例えば、相続税の申告漏れや、遺産分割協議書の不備により、相続人が後にトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。


③責任問題


 民間資格者によるアドバイスが原因で問題が発生した場合、その責任を追及することが難しい場合があります。公的資格を持つ専門家には、職業上の倫理規定や監督機関が存在し、トラブル発生時にはこれに対処するための仕組みが整っています。しかし、民間資格者の場合、こうした制度が不十分であり、被害を受けた依頼者が救済を求めることが難しいのです。


④費用面の不透明さ


 一部の民間資格者が提供する相続サービスには、料金体系が不透明なものが多く、依頼者が知らない間に高額な費用を請求されるリスクがあります。また、事前に契約書を交わさずにサービスを提供するケースも見られ、後になって費用トラブルが発生することもあります。

(論点)相続の民間資格の危うさについて

3.専門家に依頼するメリット


①法的な保障


 司法書士や弁護士といった専門家に依頼することで、法的に認められた資格者が手続きを行うため、法律に基づいた正確な手続きが保証されます。また、これらの専門家は法律に基づいた責任を負うため、トラブル発生時にも安心です。


➁高度な専門知識


 相続には税務や法務、金融など多岐にわたる知識が必要です。専門家は長年の経験と知識に基づき、依頼者にとって最適な解決策を提供することができます。例えば、相続税の適切な申告や、相続人間での公正な財産分配など、専門的なアドバイスが求められる場面での対応が可能です。


③透明な費用体系


 専門家に依頼する場合、事前に契約書を交わし、費用についても明確に説明を受けることが一般的です。これにより、後で不当な請求を受ける心配がなく、依頼者は安心してサービスを利用することができます。


④万が一のトラブルに備えての保険制度


 国家資格の士業には、万が一のトラブルに備えて、団体の補償制度に加え任意の保険に加入しているケースが多いです。何かトラブルがあったとしても、このような制度で保証してもらえるという安心感があります。


4.まとめ


 相続手続きを行う際に、民間資格を持つ者に依頼することは、手軽で費用面でも魅力的に思えるかもしれません。しかし、法的な権限や専門的な知識に欠けることが多いため、誤った情報提供やトラブルのリスクが高まります。相続手続きは人生の中でも重要なイベントであり、専門家に依頼することで正確で安心な対応を得ることができます。専門家のサポートを受けることで、法的に正確な手続きが保証され、依頼者が安心して財産を管理・分配できる環境を整えることが重要です。


参考文献


「相続診断士とは?」 日本相続診断協会

「家族信託コーディネーターの役割」 信託協会

「司法書士法の概要」 日本司法書士会連合会

「相続登記の手続きと注意点」 法務省

「相続税の申告漏れが多い理由」 税理士法人

「弁護士の役割と責任」 日本弁護士連合会

「相続手続きの費用とその内訳」 不動産ジャーナル

「相続における司法書士の役割」 法務省

「相続税の正しい申告方法」 税理士会

「弁護士の費用体系とトラブル防止」 弁護士ドットコム

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

令和6年4月1日に相続登記が義務化されました。義務化の罰則は、最大10万円以下の過料です。この過料を免れるためには、相続登記を申請するか、正当な理由がある場合には、相続人申告登記をすることとなります。この「相続人申告登記」について、解説していきたいと思います。


目次


1.相続人申告登記とは


2.相続人申告登記に必要な書類


3.相続人申告登記の意外な使い方


4.まとめ

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

1.相続人申告登記とは


 相続人申告登記とは、相続によって不動産の所有権が移転した場合に、法定相続人がその事実を法務局に申告し、不動産登記を行う手続きです。この制度は、2024年4月1日に施行された「不動産登記法の一部を改正する法律」により新設され、相続登記が義務化された背景のもと、登記手続きを簡便化し、相続による不動産所有権の変動を適切に記録することを目的としています。


 相続人申告登記は、相続登記義務化の罰則である過料を免れることができます。過料が科せられない正当な理由とは、以下の通りです。


「(1) 相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合


 (2) 相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合


 (3) 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合


 (4) 相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合


 (5) 相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合」(法務省HP引用)


 今後、遺産分割協議をする予定だが、現状もめていて話が進まないような場合、義務化の期限である3年以内に相続登記ができないような場合、申出人から「相続人申告登記」を入れておけば、当該申出人については、罰則の過料は免れます。

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

2.相続人申告登記に必要な書類


「一般的に、


ア.(被相続人と申出人の戸籍等)


①被相続人(死亡した方)の死亡した日が分かる戸籍の証明書(戸除籍謄本等)


②申出人が被相続人の子であることが分かる戸籍の証明書


③被相続人の死亡した日以後に発行された申出人についての戸籍の証明書


が必要になります。


1通の証明書で①~③を満たす場合には、その証明書の添付で足ります。」(法務省HP引用)


例えば、申出人である配偶者・子が除籍謄本に含まれている場合などです。


「イ.(登記簿上の名義人と被相続人の住所を証明する書類)


被相続人(死亡した方)の最後の氏名及び住所が登記記録上の氏名及び住所と異なる場合や被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には、被相続人が登記名義人(登記記録上の所有者)であることが分かる被相続人の本籍の記載のある住民票の除票又は戸籍の表示の記載のある戸籍の附票の写し等が必要となります。」(法務省HP引用)


※他のHPで、この書類が含まれていないケースがありました。登記システム上では、本人の特定を「氏名」と「住所」の一致で行います。そのため、最後の住所地と登記簿上の住所地が異なっている場合、住民票の除票で証明することになりますが、子の住民票の除票には「前住所」までしか記載されていません。そのため、「登記簿上の住所」と、「亡くなった住所地」とのつながりを除票では証明できない場合、「戸籍の附票」が必要となってきます。


「ウ.(申出人の住民票の写し(原本))


申出人の住民票の写し(原本)です。住民票上の申出人の氏名のふりがな及び生年月日を記載した場合は、提出する必要はありません。なお、住民票の写しを提出する場合は、マイナンバー(個人番号)が記載されていないものを取得し提出してください。 また、申出人の現在の住所が記載されている法定相続情報一覧図の写しを提出するか、その法定相続情報番号(法定相続情報一覧図の写しの右上に記載された番号)を申出書に記載することで、住所証明情報の添付に代えることができます。」(法務省HP引用)


※申出人も相続人申告登記の情報となりますので、申出人の住民票の写しを添付します。

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

3.相続人申告登記の意外な使い方


 とある方から聞いた話ですが、とある相続人の方が他の相続人と遺産分割協議をすることを打診したのですが、全く連絡をよこさないといったことがあったようです。今後、態度が軟化することも期待できないため、相談に来られた相続人を申出人とする、相続人申告登記を申請し、3年後に過料徴収の通知がなされたときに、遺産分割協議を相手方が打診してくるのを待つ、という使い方をされている方がいるようでした。


 ただし、相手方次第となりますので、本当に遺産分割協議ができるかどうかはわかりません。現状が膠着しているような場合なら、確率は低いと思うのですが、効果があるかもしれませんね。

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

4.まとめ


 相続人申告登記をすることで、相続登記義務化の罰則である過料を免れることができます。相続人申告登記に必要な書類は、「被相続人の除籍謄本」「被相続人と申出人の関係を証する戸籍謄本」「被相続人の最後の住所地と登記簿謄本上の住所の一致を証する住民票の除票の写し又は戸籍の附票」「申出人の現在戸籍」「申出人の住民票の写し」となります。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

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(論点)就労継続支援事業所について(A型事業所で現在起こっていること)

(論点)就労継続支援事業所について(A型事業所で現在起こっていること)

就労継続支援事業所は、障がい者が社会的自立を目指すための重要な施設です。

日本の福祉制度において、これらの事業所は障がい者の就労支援と社会参加を促進するための重要な役割を果たしています。

本稿では、就労継続支援事業所の目的、種類、対象者、提供されるサービス、及びその意義について説明します。

また、今「A型」支援事業で起こっている問題についてもお話をしたいと思います。


目次


1.就労継続支援事業所の目的

2.就労継続支援事業所の種類とその内容

3.就労継続支援事業所の意義

4.現在「A型」事業所で起こっている問題

5.まとめ

(論点)就労継続支援事業所について(A型事業所で現在起こっていること)

1.就労継続支援事業所の目的


就労継続支援事業所の主な目的は、障がい者に対して安定した職場環境を提供し、職業訓練や生産活動を通じて就労能力を向上させることです。これにより、障がい者が社会に貢献し、自己実現を達成する機会を得ることが期待されます。さらに、これらの施設は、障がい者が社会の一員として尊重され、自立した生活を送るための支援を行います。


2.就労継続支援事業所の種類とその内容


就労継続支援事業所は、「A型」と「B型」の2種類に分けられます。それぞれ異なる特性と目的を持っています。


(A型)

A型は、労働契約に基づいて賃金が支払われる形式です。雇用関係が明確に存在し、障がい者は労働者としての権利と義務を持ちます。このタイプの事業所は、障がい者が通常の企業での就労が難しい場合に、より柔軟な働き方を提供しつつ、一般就労に近い形での労働経験を積むことができます。主な対象は、一定の就労能力を持ち、一般企業での就労が難しい障がい者です。


(B型)

B型は、雇用契約がないため、労働時間や作業内容が比較的自由で柔軟な形式です。賃金は作業量に応じて支払われますが、A型よりも少額になることが一般的です。この形式は、一般企業での就労が困難であり、支援が必要な障がい者に対して、日中活動の場を提供し、社会参加の機会を促進します。主な対象は、重度の障がいや精神的な障がいを持つ人々で、長時間の就労が難しい場合に適しています。


(対象者)

就労継続支援事業所の対象者は、身体障がい、知的障がい、精神障がい、または発達障がいなどを持ち、一般就労が難しいと認められた人々です。これらの施設は、障がいの種類や程度に応じた適切な支援を提供し、個々のニーズに応じた就労支援を行います。


(提供されるサービス)

就労継続支援事業所では、以下のような多岐にわたるサービスが提供されます。


(職業訓練と技術指導)

障がい者に対して、職業訓練や技術指導を行います。これにより、障がい者は新たなスキルを身につけ、就労能力を高めることができます。具体的には、軽作業や製造業務、農作業など、多様な業務が含まれます。


(就労準備支援)

就労継続支援事業所では、就労に必要な基礎的な知識やスキルを習得するための支援が行われます。これには、面接対策や履歴書の書き方、職場でのコミュニケーション能力の向上などが含まれます。


(社会適応訓練)

社会生活に必要な基本的なスキルやマナーを学ぶための訓練も提供されます。これにより、障がい者が職場や地域社会で円滑にコミュニケーションを図り、適応する力を養います。


(生活支援)

就労以外の面でも、生活全般にわたる支援が行われます。例えば、健康管理や金銭管理、日常生活のサポートなどが含まれます。


3.就労継続支援事業所の意義 


 就労継続支援事業所の存在は、障がい者の社会参加を促進し、生活の質を向上させるために極めて重要です。これらの施設は、障がい者が自分の能力を最大限に発揮し、社会に貢献する場を提供します。また、障がい者が働く姿を通じて、社会全体に対する理解と受容の促進にも寄与しています。

 さらに、就労継続支援事業所は、障がい者の家族にとっても大きな支えとなります。家族は、障がい者が安心して働くことのできる環境を提供されることで、精神的な安定を得ることができます。

(論点)就労継続支援事業所について(A型事業所で現在起こっていること)

4.現在「A型」事業所で起こっている問題


令和6年6月16日の山陽新聞の記事で「岡山県内A型事業所廃止や規模縮小相次ぐ 300人余り解雇の見通し、報酬改定影響か」という記事がありました。なぜ「A型」でこのようなことが起こっているのか、B型との違いから見ていきたいと思います。


(A型とB型の違い)


①雇用契約

A型: 雇用契約あり、利用者は従業員として扱われる。

B型: 雇用契約なし、利用者は支援を受ける立場。


➁賃金

A型: 最低賃金以上の賃金が支払われ、安定した収入が得られる。(賃金)

B型: 出来高払いで、一般的にはA型よりも低い賃金。(工賃)


③対象者

A型: 比較的軽度の障がいを持ち、一定の就労能力がある人。

B型: 重度の障がいや精神的な障がいがあり、長時間の就労が難しい人。


④支援の内容

A型: 実際の業務を通じて就労訓練を行い、スキルを向上させる。

B型: 軽作業や手作業を通じて日中活動と社会参加を支援。


➄経営の方向性

A型: 収益を上げることが求められ、一般企業に近い経営。

B型: 福祉的な支援が中心で、収益はあまり重視されない。


 B型が、より福祉関連事業に近いが、A型は通常の企業に近いものです。しかし、通常の企業と異なり生産性の向上などの方針をとることは困難で、補助金でその賃金を支払っているところ、福祉関連の報酬基準が定期的に見直されるところ、この報酬改定の影響が出てしまったため、A型の事業廃止やB型への移行をする事業所が出てきたということでした。

(論点)就労継続支援事業所について(A型事業所で現在起こっていること)

5.まとめ


 就労継続支援事業所は、障がい者が自立した生活を送るための重要な支援を提供する施設です。A型とB型の2種類があり、それぞれ異なる特性を持ちながら、障がい者のニーズに応じた柔軟な支援を行っています。これらの施設を通じて、障がい者は社会に貢献し、自己実現を達成する機会を得ることができます。就労継続支援事業所の存在は、障がい者の社会参加と生活の質向上に大きく貢献しており、今後もその重要性は増していくことでしょう。

 一方で、厚生労働省の定期的な報酬規程の見直しの影響もあるため、A型事業所にとっては運用が厳しくなっている状況だと考えられます。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

あなたの大切な人生の時間、その価値がいかほどのものか、実際わからない方もいらっしゃいます。当然ですが、お金で時間そのものを買うことはできませんが、お金を払うことで、煩わしい手続きを専門家にお願いすることで、日常を維持することができます。明確に理解している必要はありませんが、あまりにもお金に固執している方を見ると、「ご自身で」ということになります。今回は、専門家にお願いするという論点で、人生の中でのお金と時間について、お話をしたいと思います。


目次


はじめに

1.相続手続きの複雑さと時間の負担

2.精神的負担の軽減

3.お金の節約と最適化

4.時間とお金のバランス

5.まとめ

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

はじめに


相続手続きは、故人の財産を法定相続人や遺言書に従って分配するための重要なプロセスです。しかし、この手続きは非常に複雑で、特に精神的に辛い時期に行わなければならないため、遺族にとって大きな負担となることが多いです。人生において時間はお金では買えない貴重な資源であることを考慮すると、相続手続きを専門家に依頼することには大きなメリットがあります。以下に、その詳細を説明します。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

1.相続手続きの複雑さと時間の負担


 相続手続きには、多くの手続きと書類が必要です。例えば、不動産の名義変更、遺産分割協議、相続税の申告など、各手続きに関連する書類の準備や申請が求められます。また、役所や金融機関などへの訪問も必要です。これらを個人で行う場合、かなりの時間と労力が必要となります。特に、平日に役所や銀行に行く必要があるため、仕事を休んだり、他の重要な活動を犠牲にしたりすることになるでしょう。


 相続手続きを専門家に依頼することで、これらの煩雑な手続きを代行してもらうことができます。専門家は、相続手続きの流れや必要な書類について熟知しており、スムーズに進めることができます。これにより、遺族は自分たちの時間を他の重要なことに使うことができるのです。時間は有限であり、失った時間は二度と戻ってきません。この貴重な時間を、手続きのために浪費するのではなく、自分たちの生活をより充実させるために使うことができるのは、非常に大きなメリットです。


2.精神的負担の軽減


 相続手続きは、家族が亡くなった直後に行わなければならないため、精神的な負担が大きいです。このような状況で煩雑な手続きを行うことは、遺族にとってさらに辛いものとなるでしょう。専門家に依頼することで、精神的な負担を大幅に軽減できます。専門家が手続きを代行してくれることで、遺族は心の整理をつける時間を持つことができ、家族の思い出を大切にしながら、新たな生活に向けて気持ちを整えることができます。


 また、相続手続きには感情的な側面も絡んでくることが多いです。例えば、遺産分割に関する家族間の意見の相違や、遺言書の内容に対する不満など、感情的な対立が生じることがあります。このような場合でも、専門家が中立的な立場からアドバイスを提供することで、冷静で公正な解決を導き出すことができます。これにより、家族間の関係を悪化させずに円満に手続きを進めることができます。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

3.お金の節約と最適化


 専門家への依頼には費用がかかりますが、長期的に見れば経済的に有利であることが多いです。相続税の計算や財産評価は非常に複雑で、素人が行うとミスが発生しやすく、結果として過剰な税金を支払うことになりかねません。専門家は、相続税の最適な対策を提案し、合法的に税負担を軽減する方法を提供してくれます。これにより、結果的に大きな節約につながります。


 例えば、相続税の控除を最大限に活用するためのアドバイスや、遺産分割の方法によって税金を減らすことができる場合があります。これらの知識は、専門家ならではのものです。また、手続きのミスによる再提出や罰金といった予期せぬ費用を避けることができるため、経済的にも非常に効率的です。


※アイリスにご相談いただいた場合で、相続税関連のご相談につきましては、提携税理士の面談をセッティングいたします。ワンストップで時短できます。


4.時間とお金のバランス


 相続手続きを自分で行うことで、専門家に支払う費用を節約しようと考える人もいるかもしれません。しかし、手続きにかかる時間と労力、さらには精神的な負担を考慮すると、専門家に依頼することのコストパフォーマンスは非常に高いと言えます。時間はお金では買えない貴重な資源です。その時間を手続きに費やすよりも、専門家に任せて、自分の時間をもっと有意義な活動に使うことが、結果的には最良の選択です。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

5.まとめ


 相続手続きは、人生の中で避けられない重要なプロセスです。しかし、その複雑さや時間のかかる性質を考えると、専門家に依頼することが賢明です。特に、人生において時間はお金では買えない貴重な資源であり、その時間を有効に活用することが、生活の質を高める上で非常に重要です。専門家に手続きを任せることで、時間とお金を効率的に使い、安心して相続手続きを進めることができます。これにより、遺族は自分たちの時間を大切にし、心豊かに生活を送ることができるのです。

 先日、教訓めいた動画を見ました。内容は、余命いくばくもない方からのメッセージという体で話が進みます。「あなたに、10億円あげると言ったら、きっとあなたは、「はい」と答えるだろう。しかし、10億年あげるが、あなたには明日が来なくなるというと「いいえ」と答える。つまり、明日が来るということは、価値が測れないほど尊いものだということだ。」と言っていました。これは極論めいていますが、実際のところ「時間そのもの」を売っている場所はありません。その代わり、お金で時間を買える場合というのが存在します。その数少ない場合が正に専門家に依頼することだと思います。もちろん、ご自身でできるなら、わざわざ無料相談などに来て時間を浪費せずに、ご自身でやればいいと思います。無料相談を渡り歩いても、細かな手続きを指導してくれる専門家は、おそらくいません。なぜなら、それが専門家の生業なわけですから。


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(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

相続手続きは、亡くなった方の財産や債務を正当に分配するための重要なプロセスです。しかし、この手続きは非常に複雑で時間がかかるため、専門家に依頼することが多くのメリットをもたらします。以下に、専門家に相続手続きをお願いするメリットについて詳しく説明します。


目次


1.手続きの煩雑さからの解放

2.法的リスクの軽減

3.適切な財産評価と分配

4.相続税対策の提案

5.スムーズな遺産分割協議

6.遺言書の作成・検認のサポート

7.複雑な相続ケースへの対応

8. 心理的な負担の軽減

9.まとめ

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

1.手続きの煩雑さからの解放


 相続手続きには、多くの書類作成や提出が必要であり、それぞれが異なる役所や機関に対するものです。専門家に依頼することで、これらの煩雑な手続きをプロフェッショナルが代行してくれるため、自分で行う手間と時間を大幅に削減できます。また、提出書類に不備があると再提出が必要になることも多いため、初めから専門家に任せることで、スムーズに手続きを進めることができます。


2.法的リスクの軽減


 相続手続きには法律が深く関わっており、誤った手続きを行うと法的なトラブルに発展する可能性があります。専門家は相続に関する最新の法規や規制に精通しており、法的に正確な手続きを行うことで、相続人間の争いや税務上の問題を未然に防ぐことができます。これにより、安心して手続きを進めることができます。


3.適切な財産評価と分配


 相続財産には、現金や不動産、株式など多岐にわたる資産が含まれます。これらの資産の評価は、専門知識が必要であり、適切に行わなければ相続税が過大に課される可能性があります。専門家に依頼することで、正確な財産評価を行い、公正かつ最適な分配が可能になります。また、複数の相続人がいる場合、専門家が間に入ることで、公平な財産分配が実現しやすくなります。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

4.相続税対策の提案


 相続税は、相続財産の一定額を超えると発生しますが、その計算方法や控除項目は非常に複雑です。税理士などの専門家は、相続税に関する豊富な知識と経験を持っており、合法的に相続税を軽減するための最適な対策を提案してくれます。これにより、相続税負担を最小限に抑えることが可能です。


※アイリスにご相談いただければ、提携税理士及び他士業との連携で、ワンストップで問題解決に向けて進めることが可能です。


5.スムーズな遺産分割協議


 遺産分割協議は、相続人全員が合意する必要がありますが、意見の対立が生じることが少なくありません。専門家である弁護士が仲介することで、公平かつ効率的な協議が可能となり、円滑な解決が図れます。また、事前に司法書士や弁護士にご相談いただければ、法律に基づいたアドバイスを提供するため、協議内容が法的に問題ないかを確認しながら進めることができます。


※すでに争いがある場合は弁護士が関与することになります。これを予防するための事前の相談につきましては、弁護士、司法書士でも対応可能です。争いが顕在化した時点で、提携の弁護士にお繋ぎをしております。


6.遺言書の作成・検認のサポート


 遺言書がある場合、その内容を法的に有効にするために検認手続きが必要です。専門家は、この手続きを迅速かつ正確に行い、遺言書に記載された内容に基づく円滑な相続をサポートします。また、遺言書がない場合でも、法的に適切な遺産分配を提案してくれるため、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

7.複雑な相続ケースへの対応


 相続には、複雑なケースが多々あります。たとえば、複数の国に資産がある場合や、相続人が海外にいる場合などです。これらの場合、各国の法律に精通した専門家のサポートが不可欠です。また、相続人が未成年である場合や、認知症の親がいる場合など、特殊な事情がある場合も、専門家が最適な解決策を提供してくれます。


8. 心理的な負担の軽減


 相続手続きは、家族が亡くなった直後の精神的に辛い時期に行わなければならないため、心理的な負担が大きいです。専門家に手続きを任せることで、遺族が心の整理をつける時間を確保でき、精神的な負担を軽減することができます。また、専門家が細かな調整や対応を行ってくれるため、遺族は心身の負担を減らして相続手続きに臨むことができます。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

9.まとめ


 専門家は、今まで様々な相続手続きを経験しており、相談者に適した内容の手続きをご提案することができます。「何をしていいかわからない」という方にとって、相続の今後手続なんて、ゴールが見えていない状態で対応することになります。関係各所に出向き、話を聞きながら対応していくことになりますが、重複する証明もあるにもかかわらず、個々に対応するようになるために、膨大な手続きにさらされている錯覚をしてしまっている方が多いです。年金暮らしで、時間は有り余っていると感じている方は、ご自身で対応される方もいると思うのですが、仕事をしながら相続手続きをするということは、あまり現実的ではないと考えます。重要な人生の時間をどのように使うのかは、本人次第ということになりますが。


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(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

生前贈与をしたいが、実はその対象建物が未登記だった場合、どのようにすればいいのでしょうか。また、暦年贈与制度を利用するのか、相続時精算課税制度を利用するのかによっても、税理士にお願いする手続きの内容が異なってきます。今回は、暦年贈与制度の基礎控除額110万円を超える場合について、お話をしたいと思います。


目次


1.未登記建物について相続登記義務化の対象範囲に入るのか?

2.未登記建物の生前贈与の手続き

3.暦年贈与制度で行う場合

4.相続時精算課税制度を利用する場合

5.まとめ

(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

1.未登記建物について相続登記義務化の対象範囲に入るのか?


 令和6年4月1日に施行された、相続当為義務化ですが、登記簿上の相続による名義変更ができていない場合が対象となります。未登記建物は、法務局に「登記簿は存在しません」。そのため、相続登記義務化の対象からは外れています。


 しかし、このままだと固定資産税を課税できないので、市町村役場の資産税課などは、調査を行い未登記の建物がある場合でも、固定資産税台帳に掲載しています。


 登記されている不動産については、登記が変更された場合、その情報が役場や税務署などに通知される仕組みになっております。ですので、その所有者の名義が誰であるかわかるわけですが、未登記建物の場合、物件は調査できても名義人が変更されたことまでは把握できません。そのため、未登記物件の場合、登記ではなく届出を市町村役場に行うことになります。勿論、提出する届出書以外に、添付書類が必要です。これは、相続だけではなく、売買・贈与の場合にも所定の添付書類は必要になります。


(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

2.未登記建物の生前贈与の手続き


 今回は生前贈与の手続きとなるので贈与になります。贈与も未登記建物の名義を変更するために「贈与契約書」と「名義変更の届出書」が必要です。高松市の場合、資産税課で取得することができます。印鑑については、高松市では認印でもよいらしいですが、各自治体で異なる場合があると思いますので、必ず事前に確認をしてください。


3.暦年贈与制度で行う場合


 暦年贈与制度では、1年間(暦年)に110万円までの贈与は非課税となります。このため、長期間にわたり計画的に資産を分散させるのに適しています。しかし、年間110万円を超える贈与には、贈与税が課されます。税率は贈与額に応じて異なり、最高で55%です。注意点として、連続した贈与は一括贈与とみなされる可能性があるため、慎重に計画する必要があります。


 個人の場合は、確定申告の時期に贈与税の申告をしなければなりません。忘れないように、ご自身で行うか、解らない場合には、税理士に頼みましょう。

(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

4.相続時精算課税制度を利用する場合


 特定の親(65歳以上)から子(20歳以上)への贈与に適用され、最大2,500万円まで非課税で贈与できます。相続時にその贈与分が相続財産に加算され、相続税が再計算されます。この制度は、大きな資産を一度に移転する際に有利ですが、相続時に再び税が計算されるため、相続税の負担が増える可能性があります。


 相続時精算課税制度を利用する場合にも、確定申告の時期に届出と申告をしなければなりません。相続時精算課税制度を使うと、その相手との間の今後の贈与で暦年贈与制度を使うことはできなくなりますので、注意が必要です。税理士の無料相談を利用して、暦年贈与制度と相続時精算課税制度のどちらを使った方がいいのか確認する必要があると思います。

(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

5.まとめ


 このように、未登記建物の生前贈与の手続きについては、市町村役場で、「贈与契約書」「届出書」の提出で、問題なく名義の変更をすることができます。そもそも、未登記建物は登記簿が存在しないため、相続登記義務化の対象ではありません。


 しかし、生前贈与の場合、贈与税の検討をする必要があります。相続税を見据えた対策として、「暦年贈与制度」と「相続時精算課税制度」の利用が候補に上がりますが、相続時精算課税制度を利用すると、その相手との今後の贈与では暦年贈与制度は使えなくなる点には注意が必要です。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

 また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。


(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)
(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

(論点)家が建っているのに地目は田?

(論点)家が建っているのに地目は田?

先日、生前贈与の相談で登記簿を確認すると、登記簿の地目は「田」のままになっているのに、すでに建物が存在していました。通常は、建物を建てる際に地目変更を行う必要がありますし、行政の農地転用の申請をして許可を得なければ、農地を宅地に地目変更はできないというのが原則だと思いますが、何があったのでしょうか?


目次


1.家が建っているのに地目が田である場合


2.家を建築する前にすべき手続き


3.なぜこんなことが起こったのか?


4.まとめ

(論点)家が建っているのに地目は田?

1.家が建っているのに地目が田である場合


 登記簿だけから判断すると、当然、農地転用の手続きを経ずに建物を建ててしまっているので、完全にアウトです。しかし、事実確認をしていくと、固定資産税の通知書に記載されている地目は、「田」ではなく「宅地」になっていました。つまり、市町村の役場は、その土地が農地ではなく宅地であることを把握して、ずいぶん前から宅地として課税しているようでした。


 そもそも、違法状態で建築会社が建物を建設するというのは、行政処分の対象となりますので、そもそも引き受けないと考えられます。相談に来られた方に話を聞いても、なんか的を得ませんので、実際に市役所に確認することにしました。

(論点)家が建っているのに地目は田?

2.家を建築する前にすべき手続き


 市役所で聞いたお話をする前に、家を建築する前に、家を建てる土地が農地の場合、どのような手続きが必要なのかお話をしたいと思います。


 まずは、農地に家などを建てるには、農地転用という手続を行います。自分の土地であっても、勝手に農地を造成して家などを建ててはいけません。


 そして、地目変更の手続きについては、以下の手続きを踏まなければなりません。


「農地転用手続・開発関係手続・建築関係手続」→「工事開始」→「工事完了」


工事が完了した後に、役場の農業委員会へ「現況証明願」を依頼して、農地から宅地に変わったことの確認をしてもらいます。確認が終わった段階で、農業委員会から証明書をもらいこれをもって法務局へ登記簿表題部の地目変更を申請することになります。

(論点)家が建っているのに地目は田?

3.なぜこんなことが起こったのか?


 実際に家が建っているということは、農地転用の許可と開発・建築手続きについては終わっているものと考えます。仮に、何の許可も得ずに建築している場合、当然、役場の調査が入り、しかるべき指導が入ります。


 しかし、今回のケースで見ると、固定資産税の納税通知明細には、すでに宅地になっているので、役場側では宅地に変更したことは承知しているということです。


 つまり、「農地転用手続・開発関係手続・建築関係手続」→「工事開始」→「工事完了」、および現況証明まで終わっているのに、法務局に地目変更の申請をしていなかったということになります。


 このために、役場は宅地として認識しているのに法務局の登記簿では農地のままといった現象が現れるわけです。

(論点)家が建っているのに地目は田?

4.まとめ


 結局、相談者の方には、土地家屋調査士の方にお願いして、地目変更の申請をしていただくようにしました。その後、贈与を原因とする所有権移転登記ができるようになります。地目が農地のままだと、農業委員会の許可証の添付を要求されます。


 違法建築かどうかの判断は、「固定資産税の納税通知明細」の地目が、農地のままか、宅地に変更されているかでできると思います。勿論、役場の農業委員会等に確認をすることは必要になってきますが。その後、現況証明(農業委員会に過去の履歴があれば、すぐに取得できます)があれば、土地家屋調査士の方にお願いをして、法務局の表題部の地目の変更登記をしていただければ、問題なく所有権移転登記はできます。


 ただし、違法建築の場合については、役場の関係部署の担当者に、農地転用等の手続きからお願いできるか相談するしかありません。正常な状態にするような手続きが必要となってきます。固定資産税の通知明細の地目が農地のままで、すでに家が建っている状態でしたら、専門家に相談することをお勧めいたします。

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

相続登記を放置することにより、不動産の権利関係が混乱することは、相続人やその債権者にとって深刻な問題を引き起こします。この権利関係の混乱が具体的にどのような問題をもたらすのか、また相続人の債権者による差押えがどのような影響を及ぼすのかについて、詳しく説明します。


目次


1. 相続登記の放置と権利関係の不明確さ

2. 複数世代にわたる相続での権利関係の複雑化

3. 相続人間の紛争と法的手続きの必要性

4. 相続人の債権者による差押えのリスク

5. 不動産の処分の難しさと市場価値の低下

6. 行政手続きや税務上の問題

7. 法改正による相続登記の義務化

8. まとめ

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

1. 相続登記の放置と権利関係の不明確さ


 相続登記を行わないと、不動産の名義は故人(被相続人)のままとなり、新たな所有者が法的に確定しません。この状態では、不動産の所有権が誰にあるのかが不明確になり、相続人間での権利関係が混乱することになります。このような状況では、不動産を売却したり、担保に提供したりすることが困難になり、資産の流動性が著しく低下します。


2. 複数世代にわたる相続での権利関係の複雑化


 相続登記が何世代にもわたって放置されると、相続人の数が増加し、誰がどの部分の不動産に権利を持つのかを確定するのが極めて困難になります。例えば、祖父母の代で相続登記が行われずにそのまま放置されると、子供や孫の世代までに権利関係が引き継がれ、相続人の間での利害調整が非常に複雑化します。このような状況では、相続人全員の同意を得るのが難しく、遺産分割協議が長期間にわたることになります。

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

3. 相続人間の紛争と法的手続きの必要性


 相続登記が行われないと、相続人間での所有権をめぐる紛争が発生するリスクが高まります。例えば、ある相続人が「この不動産は自分のものだ」と主張し、他の相続人が異議を唱えた場合、裁判所での法的手続きが必要になります。こうした紛争は、時間と費用がかかり、相続人同士の関係を悪化させることがあります。


4. 相続人の債権者による差押えのリスク


 相続登記を放置した場合、相続人の個別の財政問題が不動産に影響を与えることがあります。具体的には、相続人の債権者がその相続人の債務を回収するために、相続財産である不動産を差し押さえる可能性が生じます。相続人が複数いる場合でも、特定の相続人の債務が全体の不動産に影響を与えることがあります。


差押えのメカニズムと影響

債権者は、相続人の財産に対して強制執行を行い、不動産を差し押さえることができます。相続登記が完了していない状態では、不動産の権利関係が明確でないため、差押え手続きが複雑化し、他の相続人にも不利益をもたらす可能性があります。例えば、相続人Aが借金を抱えている場合、その債権者はAが所有する部分の不動産を差し押さえようとしますが、登記が未了であるために他の相続人BやCの権利も影響を受けることがあります。

これは、たとえ遺産分割協議が完了していても、差押えの登記と相続登記の前後で優劣が決まります。遺産分割協議が確定しているなら、早めに相続登記を実施しましょう。

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

5. 不動産の処分の難しさと市場価値の低下


 相続登記が行われていない不動産は、市場での売却が非常に困難です。所有権が不明確であるため、購入者は法的なリスクを負うことになり、価格が大幅に低下するか、そもそも買い手がつかない可能性があります。また、登記が未了の不動産は、担保としての価値が低く、金融機関からの融資を受けることも難しくなります。


6. 行政手続きや税務上の問題


 相続登記を放置することにより、行政手続きや税務上の問題も発生します。不動産の固定資産税の納税義務者が曖昧になることで、税金の未払いが発生し、自治体からの督促や差し押さえが行われる可能性があります。また、相続税の申告においても、相続人が誰であるかが明確でないと、正確な申告ができず、ペナルティが課されることがあります。

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

7. 法改正による相続登記の義務化


 2024年4月1日から、相続登記が義務化されることになり、相続発生から3年以内に登記を行わない場合、過料が課されることになりました【出典】法務省、2024年施行の改正法】。この法改正により、相続登記を早期に行うことが求められるようになり、権利関係の混乱を未然に防ぐための措置が強化されます。


8. まとめ


 相続登記を放置することによる権利関係の混乱は、相続人やその債権者にとって大きなリスクを伴います。不動産の権利関係が不明確であることは、相続人間の紛争を招き、不動産の売却や利用を困難にします。また、相続人の債権者による差押えが行われると、他の相続人にも影響が及び、さらなる権利関係の混乱が生じます。相続登記を適切に行うことで、これらの問題を未然に防ぎ、安心して不動産を管理・活用することが可能となります。法改正により義務化が進む中で、早期の対応がますます重要になっています。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

 また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱
(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

(論点)生前贈与のポイント(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

(論点)生前贈与のポイント(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

相続税対策として一般的だった「暦年贈与」と「相続時精算課税」について、令和6年1月1日より、大きく変わっています。暦年贈与と同じ「110万円控除」というキーワードでも、相続時精算課税制度とは、中身が全く異なってきます。セミナーで伺った内容についてまとめてみました。詳しい内容につきましては、税理士にご確認ください。アイリスでは、香川県内の方を対象に、相続税無料相談会へのご案内をしております。ぜひご利用ください。(遺留分対策としても、使える場合があります。)


目次


1.暦年贈与と相続時精算課税

2.令和6年1月1日以降何が変わったのか

3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる

4.まとめ

(論点)生前贈与のポイント(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

1.暦年贈与と相続時精算課税(令和5年12月31日までの取り扱い)


 暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、年間贈与額から基礎控除額「110万円」を使い、相続発生時まで贈与を毎年重ねて総ぞ億財産を目減りさせていく相続税対策です。基本、贈与者、受贈者の要件はなく、誰でも使えます。現状では相続人への贈与について、相続発生前3年分の贈与は、相続財産に組み戻されます。


 相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に財産を贈与した場合、贈与者の生涯において2500万円を特別控除として、相続発生時にこの2500万円を相続財産に全額組み込む仕組みの制度です。特徴として、この暦年贈与精算課税制度を選択した場合、税務署への届出が生じ、暦年贈与との併用は禁止されていますので、途中で暦年贈与に変更できなくなります。


 上記を見てわかるように、今までは圧倒的に暦年贈与の利用が一般的でした。なぜなら、暦年贈与制度は、毎年の控除額110万円は、組み戻される財産以外は控除されたままの状態となるためです。相続時精算課税は、2500万円の枠で使った額がそのまま組み戻されますので、暦年贈与制度の利用が多かったのもうなづけます。


2.令和6年1月1日以降何が変わったのか


 ところが、令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わっています。


 改正される内容は、以下の通りです。


①暦年贈与制度


 暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税っ対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。


➁相続時精算課税


 (令和5年12月31日までに計算式)

  {(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 (令和6年1月1日以降の計算式)

  {(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)

            ―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。


 ※ただし、現状ではその取扱いは明確ではありません。今後、通達等で取り扱いが明確になってくると思われますので、本制度をご利用の際は、税理士に事前に確認をするようにしてください。

(論点)生前贈与のポイント(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる


キーワードとして「110万円の基礎控除」とありますが、暦年贈与でも、相続時精算課税制度でも出てきます。単純に、110万円の基礎控除を使って相続税対策と言っても、どちらの制度のものか理解していないと、効果が出ないということも考えられます。


 セミナーの中で講師の方が言っていたのが、「同じ110万円の控除でも、7年以上生きないと使えない暦年贈与制度の110万円控除と、節税効果抜群の相続時精算課税制度の110万円控除」という表現をされていました。


 また、講師からの注意事項として、税務署は暦年贈与制度を廃止したいと考えており、相続時精算課税制度への移行を促している傾向が見受けられますが、今後、今の暦年贈与制度のように大きく変更される可能性もあり得るとのこと。ご存知の通り相続時精算課税制度は一端選択してしまうと、暦年贈与制度は利用できなくなりますので、慎重に判断をする必要があるとのことです。

(論点)生前贈与のポイント(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

4.まとめ

(まとめ画像→)


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

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(論点)遺留分の生前対策について

(論点)遺留分の生前対策について

生前の遺留分対策は、相続において遺留分権利者(配偶者や子供など)が最低限保障されるべき相続分を確保しつつ、被相続人の意思を尊重した財産分配を実現するために重要です。以下に主要な対策を詳しく説明します。


目次


1. 生前贈与

2. 生命保険の活用

3. 信託の利用

4. 遺言書の活用

5. 養子縁組の活用

6. 家族間の合意形成

7.まとめ

(論点)遺留分の生前対策について

1. 生前贈与


(1)生前贈与の意義

 生前贈与は、被相続人が生存中に財産を特定の相続人や第三者に贈与することを指します。これにより、相続開始時の遺産の総額を減少させ、相続税の負担を軽減する効果があります。ただし、贈与税及び、不動産の場合の登録免許税、その際の専門家への報酬等も興梠しなければなりません。


(2)遺留分への影響

 生前贈与は、原則として相続財産に含まれ、遺留分の計算対象となります。ただし、贈与から10年以上経過している場合、その財産は遺留分の計算に含まれません【※】。このため、長期的に計画的な贈与を行うことが重要です。


※ 2020年の民法改正により、遺留分の計算において、遺留分権利者に対する贈与については相続開始前の10年間まで遡って計算されるようになりました(民法1044条)。


(3)具体的な方法

 暦年贈与: 毎年110万円以内の非課税枠を利用して贈与を行う。ただし、相続発生後、7年間遡って、その間に贈与した財産は、相続財産となってしまいます。

 相続時精算課税:こちらは2500万円までの財産を贈与税なしで生前贈与し、相続発生時に2500万円分を相続財産とする手続きです。ここで令和6年1月1日より、年間基礎控除110万円が追加されています。相続時精算課税を使う場合、税務署への届出が必要となります。そして、一度、相続時精算課税を選択すると、暦年贈与を使うことはできなくなりますので注意が必要です。


 教育資金・結婚・子育て資金の贈与: 特定の目的で非課税枠を活用して贈与する。詳しくは税理士にご相談ください。

(論点)遺留分の生前対策について

2. 生命保険の活用


(1)生命保険の特性


 生命保険金は、受取人の固有財産とみなされ、相続財産とは別に扱われます。生命保険金の非課税枠は「500万円 × 法定相続人の数」で設定されており、これを利用することで相続税の負担を軽減できます。


(2)具体的な方法


 受取人を遺留分権利者以外に指定: 特定の相続人が受け取れるように受取人を設定する。


保険金の受取方法の工夫: 被相続人の意向を反映するため、保険金の分配方法を工夫する。

(論点)遺留分の生前対策について

3. 信託の利用


(1)家族信託とは


 家族信託は、被相続人が自分の財産を信頼できる受託者に託し、指定した受益者に利益を分配する仕組みです。信託財産は相続財産とみなされないことから、遺留分対策として有効です。


(2)具体的な方法


 特定信託: 特定の相続人や第三者を受益者とする信託契約を設計する。


 分割信託: 複数の受益者に財産を分割して分配する信託契約を作成する。

(論点)遺留分の生前対策について

4. 遺言書の活用


(1)遺言書の効力


 遺言書を作成することで、被相続人の意向を明確にし、相続人間のトラブルを防ぐことができます。特別受益の持ち戻しを免除することを記載することで、特定の相続人に対して多くの財産を残すことが可能です。ただし、遺留分侵害額請求をなされた場合は、相続人への特別受益の場合、10年以内の遺産は、遺留分侵害額請求の際の遺産の対象となります。


(2)具体的な方法


 持ち戻し免除の記載: 遺言書に、特別受益の持ち戻しを免除する旨を明記する。


 配分の調整: 遺留分を侵害しない範囲で、財産の配分方法を明確に指定する。

(論点)遺留分の生前対策について

5. 養子縁組の活用


(1)養子縁組の意義


 養子縁組は、被相続人と養子との間で法的な親子関係を結ぶことを指します。養子は法定相続人となり、法定相続分が発生します。これにより、相続人の数が増え、結果的に各相続人の遺留分が減少することになります。法律上は、養子の数に制限はありませんが、税務上では制限があります。相続税の基礎控除に加算できる養子の人数には注意が必要です。


(2)遺留分への影響


 養子縁組をすることで、遺留分権利者の人数が増え、それに伴い遺留分の総額が減少します。例えば、相続人が増えることで、1人あたりの遺留分割合が減少し、相続財産を柔軟に配分しやすくなります。一人当たりの法定相続分を下げることができ、結果、遺留分の額も減少します。


(3)具体的な方法


 養子縁組による相続人の追加: 養子を迎えることで法定相続人を増やし、遺留分の減少を図る。


 特別養子縁組の活用: 20歳未満の子供を養子とすることで、相続人の数を増やし、相続財産の分配を調整する。

(論点)遺留分の生前対策について

6. 家族間の合意形成


家族間の協議


相続において家族間の合意形成は不可欠です。被相続人の意向を尊重しつつ、遺留分権利者を含む全ての相続人が納得する形で財産分配を進めます。


具体的な方法


家族会議の開催: 定期的に家族会議を開き、相続に関する理解と合意を深める。


遺留分放棄の協議: 遺留分権利者に対して事前に遺留分の放棄を求める(家庭裁判所の許可が必要)。当然、当事者に納得していただくために相応の財産の提供が必要となります。


※ すべての相続問題に言えることですが、この家族間の合意の形成(コミュニケーション)をしっかりやらず、きっと大丈夫と思いつつ放置し、相続が始まったときに家族間に亀裂が入るといった事案が散見されます。



7.まとめ


 生前の遺留分対策は、遺留分権利者の権利を尊重しながら、被相続人の意思を最大限に実現するための重要なプロセスです。生前贈与、生命保険の活用、信託の利用、遺言書の作成、養子縁組、相続税対策の併用、そして家族間の合意形成など、様々な方法を組み合わせることで、相続が円滑に進行し、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。これにより、相続財産の分配がスムーズに行われ、家族の将来に対する安心感を得ることができるます。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

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(論点)遺留分の生前対策について
(論点)遺留分の生前対策について

(論点)相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

相続において特別受益と持ち戻し、遺言書による持ち戻しの免除と遺留分に関する事項は、法的に重要なテーマであり、家族内の公平性を保つために多くの配慮がなされる分野です。以下に、それぞれの概念と関連事項を説明します。


目次


1.特別受益と持ち戻し

2.持ち戻しの具体的な計算方法

3.遺言書による持ち戻しの免除

4.遺留分と持ち戻し免除の関係

5.遺留分侵害額請求の手続き

6.まとめ

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

1.特別受益と持ち戻し


(1)特別受益とは

 特別受益(とくべつじゅえき)とは、被相続人(亡くなった人)が相続人に生前贈与した財産や、相続開始前に特別に利益を受けた場合のことを指します。典型的な例には、結婚資金や住宅購入資金の援助、事業の立ち上げ資金などがあります。これらの贈与は、他の相続人と比較して特定の相続人が過度の利益を得ているとみなされるため、相続分の計算において考慮される必要があります。


(2)持ち戻しとは

 持ち戻し(もちもどし)とは、特別受益を受けた相続人が相続財産を公平に分配するために、その受益額を相続財産に加算する手続きです。これにより、全相続財産の総額を算定し、その上で各相続人の相続分を決定します。


 たとえば、被相続人が死亡時に残していた財産が1000万円で、生前に特定の相続人に300万円の贈与をしていた場合、相続財産は1300万円とみなされます。これを各相続人の法定相続分に基づいて分配します。


 持ち戻しを行う理由は、相続財産の公平な分配を図るためです。特別受益を考慮せずに遺産分割を行うと、生前贈与を受けた相続人が不当に多くの財産を手にすることになり、他の相続人にとって不公平になる可能性があります。


2.持ち戻しの具体的な計算方法


 持ち戻しは、特別受益を受けた時点での価額を基準に行われます。特別受益が持ち戻しされる際の価額は、相続開始時点での評価額を基準とし、特別受益を受けた相続人の相続分から控除します。

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

3.遺言書による持ち戻しの免除


(1)持ち戻し免除とは

 被相続人は遺言書を通じて、特定の相続人に対する特別受益の持ち戻しを免除することができます。これは、被相続人が特定の相続人に対して特別な事情や感情的な理由がある場合に、他の相続人の了承を得ることなく行うことが可能です。例えば、特定の相続人が被相続人の介護を行ったり、経済的な援助をしていた場合などに、持ち戻しを免除することでその相続人の貢献を認める形になります。


(2)持ち戻し免除の効果

 持ち戻し免除の効果は、免除を受けた相続人が、特別受益を受けた分を相続財産に加算せずに相続できることを意味します。これにより、他の相続人と比較してより多くの財産を得ることが可能になります。


 例えば、前述の例で、特定の相続人が300万円の特別受益を受けていた場合でも、遺言書で持ち戻しが免除されていると、その300万円は相続財産に加算されず、生前贈与を受けた300万円の財産については、遺産に持ち戻す必要が無くなります。

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

4.遺留分と持ち戻し免除の関係


(1)遺留分とは

 遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人が最低限保障される相続財産の割合を指します。遺留分は、相続人が被相続人の意思に反して財産を全く受け取れない事態を防ぐための制度です。通常、直系尊属(親)や子、配偶者などが遺留分権利者となります。


 遺留分の割合は法定相続分の半分または3分の1(直系尊属のみが相続人の場合)であり、これにより相続人が最低限保障されるべき財産を確保します。ほとんどの場合が、その割合は、法定相続分の2分の1となります。


(2)遺留分に対する持ち戻し免除の影響


 持ち戻し免除が遺留分に及ぼす影響は、複雑です。遺留分は相続財産の公平な分配を保障するため、持ち戻し免除が遺留分権利者の権利を侵害する場合があります。例えば、特定の相続人に対して多額の特別受益があり、その持ち戻しが免除されると、他の相続人の遺留分が侵害される可能性があるのです。


 この場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求権の行使を行うことができます。遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害する範囲内で遺産をもらった相続人に対して請求を行います。この請求は、裁判上でも裁判外でも構いません。つまり、口頭での請求でも効力はありますが、後にもめたときの訴訟の対策として、書面で作成し内容証明郵便で意思表示することをお勧めいたします。請求の結果、遺留分を認めたり、裁判で認められた場合、民法改正前は、財産の返還でしたが、改正後は、金銭的な補償を求める手続きとなりました。

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

5.遺留分侵害額請求の手続き


 遺留分侵害額請求は、相続開始後に遺留分権利者が家庭裁判所に対して行います。この手続きにより、遺留分を侵害された相続人は、正当な相続分を取り戻すことができます。

 請求には時効があり、改正民法第1048条は,遺留分侵害額請求権の時効について,「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。 相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」となっています。

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

6.まとめ


 相続における特別受益と持ち戻し、遺言書による持ち戻しの免除、そして遺留分の関係は、相続人間の公平性を保つために重要な要素です。

 特別受益の持ち戻しは相続財産の分配を公平にするために必要な手続きですが、被相続人の意思により持ち戻しが免除される場合もあります。この場合、遺留分権利者の権利を保護するための制度が整備されており、遺留分侵害額請求によって最低限の相続分が保障されています。

 これらの制度は、相続において被相続人の意思と相続人の権利のバランスを保つために重要な役割を果たしています。


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(論点)外国居住の相続人のサイン証明

(論点)外国居住の相続人のサイン証明

海外に長期居住している場合、日本での住民票及び印鑑証明書は抹消されます。遺産分割協議については、相続人全員の参加と遺産分割協議書には、署名及び実印による押印が要求されます。しかし、相続人の一人が海外居住者だった場合、「印鑑証明書」は取得できません。この場合に使用する「署名証明書(サイン証明書)」が必要となりますが、手続き・種類について解説したいと思います。


目次


1.署名証明書(サイン証明書)とは


2.署名証明書(サイン証明書)の方式


3.まとめ

(論点)外国居住の相続人のサイン証明

1.署名証明書(サイン証明書)とは


 海外に住所を移してしまった日本人(日本国籍有)の方は印鑑証明書を取得することができません。この場合、現地の領事館で取得できるのが署名証明書(サイン証明書)です。署名証明書(サイン証明書)は日本の印鑑証明書に代わるものとして発行されるもので,申請者の署名(又は拇印)が確かに領事の目の前でなされたことを証明するものです。


 署名証明書(サイン証明書)、原則は領事館に出向く必要があります。いきなり当日訪問しても受付してもらえない予約制となっているところもあるため、事前に事前に管轄をする領事館を確認の上で申請方法について問合せしてください。


 しかし、領事館まで遠く離れている場合など,領事館のサイン証明書(署名)を取得することが困難なときは,外国の公証人が作成した署名証明を添付して登記の申請をすることも認められています。

(論点)外国居住の相続人のサイン証明

2.署名証明書(サイン証明書)の方式


 署名証明書(サイン証明書)には2つ形式があります。


①形式1:貼付型又は合綴型といわれる領事館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した書類(遺産分割協議書など)を綴り合わせて割印を行うもの


➁形式2は単独型といって印鑑証明書のようにその紙単体で申請者の署名をで証明するもの


 この2種類があります。法務局で不動産登記などに使用する場合の署名証明書(サイン証明書)は、形式1を求められます。貼付型又は合綴型といわれる署名証明書(サイン証明書)を取得するためには、綴る書面とパスポートなどの必要書類を持参の上、現地の領事館に出向き申請します。


 ですので相続人間の遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書が作成された後ではなければ申請をすることができません。遺産分割協議書と合綴型した証明書は、海外から日本へ送ってもらう必要があります。万が一の郵便事故等に備え、1枚に相続人全員が押印する方式ではなく1人1枚押印する遺産分割協議証明書方式で用意することが望ましいです。


(論点)外国居住の相続人のサイン証明

3.まとめ


 署名証明書(サイン証明書)は、海外在住の日本国籍者が印鑑証明書の代わりに使用できる証明書です。これは申請者の署名(または拇印)が確かに領事の目の前でなされたことを証明するもので、現地の領事館で取得できます。原則として領事館に出向く必要があり、予約制のところもあるため、事前に確認と問い合わせが必要です。しかし、領事館が遠い場合やその他の理由で訪問が難しい場合、外国の公証人が作成した署名証明を使うことも認められています。


 名証明書(サイン証明書)の方式には2つの形式があります。


形式1:貼付型(合綴型)


概要:領事館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した書類(例えば遺産分割協議書など)を綴り合わせて割印を行うものです。


使用例:法務局での不動産登記など。


手続き:綴る書面(遺産分割協議書など)を準備。パスポートなどの必要書類を持参し、領事館で申請。


形式2:単独型


概要:印鑑証明書のように、その紙単体で申請者の署名を証明するものです。


 不動産登記などに使用する場合は形式1が求められます。相続人間で遺産分割協議がまとまった後に申請し、署名証明書を日本に郵送します。郵便事故を避けるため、相続人全員が1枚に押印するのではなく、1人1枚ずつ証明書を作成することが望ましいです。


 また、スケジューリングも領事館が開いている日時に予約して来訪しないといけませんので、事前に遺産分割協議書を送付した後に対応していただく必要があります。


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(論点)外国居住の相続人のサイン証明
(論点)外国居住の相続人のサイン証明

(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

相続人の中に精神疾患がある方がいる場合の遺産分割協議は、特別な配慮が必要となります。どのような配慮が筆応なのかについて、お話をしたいと思います。


目次


1.成年後見制度の利用


2.本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合の対処


3.まとめ

(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

1.成年後見制度の利用


 遺産分割協議は、「相続人全員の参加」が要件です。つまり、相続人の中に精神疾患を患っている方がいる場合でも、その方を除外して遺産分割協議を成立させることはできません。これが大前提になります。性疾患と言っても、どの程度のレベルにあるのかについては、医師の診断にもよると思いますが、意思表示が困難な場合、成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。


精神障害がある相続人が意思決定能力を欠いている場合、その相続人の利益を守るために成年後見制度を利用するのが一般的です。この制度では、家庭裁判所が成年後見人を選任し、後見人がその相続人の代理として遺産分割協議に参加します。


成年後見制度には以下の種類があります:


 ①後見:意思能力が欠如している場合に適用され、後見人が全面的に財産管理や法律行為を代行します。


 ➁保佐:意思能力が不十分な場合に適用され、保佐人が特定の行為について同意を必要とします。


 ③補助:意思能力が一部不十分な場合に適用され、補助人が本人の希望に応じて一部の行為について同意を行います。


 家庭裁判所への申立には、申し立てができる方が制限されています。具体的には、本人,配偶者,4親等内の親族,成年後見人・保佐人・補助人(以下「成年後見人等」という。),任意後見人,任意後見受任者,成年後見監督人等,市区町村長,検察官です。(裁判所HP引用)


 必要書類は、「申立書」「医師の診断書」「本人の財産に関する書類」などが必要となります。専門家(弁護士・司法書士)に相談するか、裁判所のHPを参照してみてください。


 成年後見人が選任された場合、成年後見人は遺産分割協議に本人の代理人として参加することになりますが、本人の利益を最大限に守るために行動する責任があります。具体的には、遺産分割の内容が相続人にとって不利にならないように注意を払い、適切な分割案を検討します。


 こうしてまとまった遺産分割協議の内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。この協議書には、すべての相続人(後見人を含む)が署名・捺印する必要があります。精神障害がある相続人の場合、後見人が代理で署名・捺印を行います。協議書の内容が明確で、公平であることを確認することが重要です。


 精神障害がある相続人に対しては、配慮をもって対応することが重要です。必要に応じて、福祉サービスや専門家(弁護士や司法書士など)の助言を得ることも検討してください。精神障害を持つ相続人が適切な支援を受けられるように、家庭裁判所や関連機関と連携することも重要です。

(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

2.本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合の対処


 特定の事情により利益相反が生じる場合や、成年後見人が適当でない場合などに「特別代理人の選任」が必要となります。

 「後見人が他の相続人である場合」には、注意が必要です。この場合、本人と成年後見人との間に、利益相反関係が生じているため特別代理人の選任をする必要があります。


 家庭裁判所への申立ては、利益相反が生じる可能性がある相続人や利害関係者が行います。特別代理人は相続人の代理として適切な判断を下し、その利益を守ります。特別代理人の役割と責任は重大であり、適切な行動が求められます。相続問題において特別代理人が必要な場合は、早めに専門家に相談し、適切な手続きを進めることが重要です。


 利益相反関係になっているかどうかがよくわからない場合には、専門家に相談することをお勧めいたします。

(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

3.まとめ


 精神障害がある相続人を含む遺産分割協議は、法的手続きや専門的な知識が求められるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを強くお勧めします。専門家のアドバイスを受けることで、法的な手続きがスムーズに進み、全ての相続人の利益が適切に守られることが期待できます。


以上が、精神障害がある相続人を含む遺産分割協議の基本的な流れとポイントです。適切な手続きを踏むことで、トラブルを避け、円満な遺産分割が実現することが期待されます。


 私の経験ですが、相続関連の話し合いの時に心無い言葉を使う親族の方がいました。その親族の方は、被相続人が生前、土地や山林の所有権を自分たちに移転してほしいと言いましたが、断られたため「あなたの躾が悪いから、引きこもりになるんや。」といったそうです。そもそも、親族には相続権はありませんが、精神疾患になる可能性なんて、今の日本ではだれでもある訳です。私が確認した事案は、言った方が相続人ではないので、遺産分割協議では支障はありませんでしたが、その方たちが遺産分割協議に参加した場合、相当揉めると思います。権利を主張するのも大事なのですが、遺産分割協議に集まった方たちすべてに同じだけの権利があることを念頭に、節度ある対応をしていただきたいです。


(論点)相続登記義務化の問題点

 (論点)相続登記義務化の問題点

2021年に改正された民法および不動産登記法により、日本では相続登記が義務化されました。この制度は2024年4月1日から施行されており、相続による不動産の登記が義務付けられています。相続登記の義務化は、不動産の所有者不明問題を解消し、透明性を高めることを目的としていますが、その一方でいくつかの問題点も指摘されています。以下に、その主要な問題点について詳述します。


目次


1. 手続きの煩雑さとコスト負担

2. 罰則のリスク(10万円以下の過料)

3. 相続人間のトラブル

4.まとめ

 (論点)相続登記義務化の問題点

1. 手続きの煩雑さとコスト負担


 相続登記には様々な書類の準備が必要であり、手続きが煩雑であることが大きな障害となっています。


 ①書類の準備:


  戸籍謄本や住民票、不動産の評価証明書など、多くの書類を揃える必要があります。特に相続人が多数いる場合や相続人が遠方に住んでいる場合、これらの書類の収集は時間と労力を要します。


 ➁専門家への依頼:


  登記手続きを確実に行うために、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することが一般的です。しかし、これには相応の費用がかかり、経済的負担となることがあります。特に遺産が少ない場合や相続人が高齢である場合、この費用負担は大きな問題となります。


 ※自治体によっては、相続登記費用の補助金制度がある場合があります。最寄りの市役所等に確認してみてください。

 (論点)相続登記義務化の問題点

2. 罰則のリスク(10万円以下の過料)


 相続登記の義務化に伴い、登記を怠った場合の罰則が導入されました。


  ①罰則の存在: 罰則の存在が相続人に対してプレッシャーを与える一方で、相続手続きを迅速に進める動機にはなるかもしれません。しかし、相続人が手続きに不慣れであったり、高齢や健康問題などで迅速に対応できない場合、罰則の適用は不公平に感じられることがあります。


  ➁罰則の実効性: 実際に罰則がどの程度の頻度で適用されるかについては不透明であり、その実効性に疑問が持たれることもあります。また、罰則が適用された場合の相続人の対応方法や救済措置が十分に整備されていないことも問題です。


 ※法務省から、要件については既に発表されています。過料を免れる方法もありますので、詳しくは専門家である司法書士に確認してください。

 (論点)相続登記義務化の問題点

3. 相続人間のトラブル


 相続登記義務化により、相続人間のコミュニケーションや協力が求められますが、これがトラブルの原因となることがあります。すでに発生している相続において、相続人間でもめているため塩漬けにしていたケースが見受けられますが、義務化により、何らかの解決策を講じて、相続登記を勧めなければならなくなっています。


 ①相続人間の意見の相違: 相続人間で遺産分割に関する意見が一致しない場合、登記手続きが進まないことがあります。特に、相続財産が不動産のみの場合や共有持分が複雑な場合、協議が難航することがあります。


 ➁遠隔地に住む相続人: 相続人が遠隔地に住んでいる場合、連絡や手続きの調整が困難となり、手続きの遅延や誤解が生じやすくなります。これにより、相続人間の関係が悪化するリスクもあります。


 すでにトラブルが発生している場合は、弁護士に相談したほうがいいかもしれません。もめてから時間がたっている場合、家庭裁判所で「遺産分割調停」又は「遺産分割審判」で何らかの決着をつけることができます。

4.まとめ


 相続登記義務化は、日本における不動産管理の透明性を高め、所有者不明の不動産問題を解消するための重要な改革です。しかし、その一方で、手続きの煩雑さやコスト負担、罰則のリスク、相続人間のトラブルといった様々な問題点が存在します。これらの問題に対処するためには、専門家による支援体制の整備、罰則の適用基準の明確化などが必要です。相続登記義務化の制度が円滑に運用され、実効性を持つためには、これらの課題に対する継続的な改善と支援が不可欠です。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。

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ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。

手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)


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(論点)相続登記義務化の問題点
(論点)相続登記義務化の問題点

相続登記義務化に関する説明

相続登記義務化に関する説明

2021年の民法および不動産登記法の改正により、日本では相続登記が義務化されることとなりました。この改正は2024年4月1日から施行され、相続による不動産の登記が義務付けられることで、所有者不明の不動産の問題を解消し、透明性を高めることが目的とされています。以下では、相続登記義務化の背景、具体的な内容、そしてその影響について詳しく説明いたします。


目次


1.相続登記が義務化に至った背景


2.改正の内容


3.今後想定される影響


4.まとめ

相続登記義務化に関する説明

1.相続登記が義務化に至った背景


 日本では、相続登記が未完了のまま放置されている不動産が多く存在します。相続人が相続登記を行わない理由として、手続きの煩雑さや費用の問題が挙げられます。しかし、これによりいくつかの深刻な問題が生じています。


 ①所有者不明不動産の増加:


  不動産の所有者が明確でない場合、公共事業の用地取得や再開発が困難になることがあります。特に、インフラ整備や災害対策において、迅速な対応が求められる場面で支障が出ることがあります。実際に、東日本大震災の際には、所有者不明の土地のために、復旧が遅れていました。


 ➁空き家問題:


  相続登記が行われずに放置された不動産が空き家となり、防災や防犯の観点から地域社会に悪影響を及ぼしています。空き家は放火や不法侵入のリスクを高めるだけでなく、景観の悪化や資産価値の低下を招きます。

相続登記義務化に関する説明

2.改正の内容


 相続登記義務化に関する改正では、以下のような具体的な内容が盛り込まれています。


 ①相続登記の義務化:


  相続が発生したことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務付けられます。(すでに発生している相続については、令和6年4月1日より3年以内)相続登記を行わない場合、罰則が科される可能性があります。これは相続人が自身の権利を明確にし、適切に不動産を管理するための重要なステップです。


 ➁相続登記の簡素化:


  手続きの簡素化を図るため、必要書類の取得が容易になります。具体的には、戸籍謄本や住民票の取得手続きが簡略化されるほか、オンライン申請の導入も進められています。これにより、相続人の負担が軽減され、スムーズに登記手続きを行うことが可能になります。


 ③所有者不明土地の管理制度の整備:


  自治体が所有者不明の土地を管理できる制度が整備されました。これにより、放置された土地の適切な管理が期待され、公共事業や地域開発の障害が取り除かれることが期待されます。

相続登記義務化に関する説明

3.今後想定される影響


 相続登記義務化により、いくつかの重要な影響が見込まれます。


 ①相続人の義務の明確化:


  相続人は、不動産の相続が発生した場合に速やかに登記手続きを行う義務があります。これにより、相続人間でのトラブルが減少し、不動産の管理がより効率的に行えるようになります。特に、相続人間での共有持分の明確化が進むことで、不動産の有効利用が促進されます。


 ➁不動産市場の透明性向上:


  相続登記が義務化されることで、不動産の所有者が明確になります。これにより、不動産取引の透明性が向上し、市場の信頼性が高まります。特に、投資家にとっては安心して取引を行える環境が整うことが期待されます。


 ③公共事業の円滑化:


  所有者が明確な不動産が増えることで、公共事業の用地取得がスムーズに進むようになります。これにより、インフラ整備や地域開発が効率的に行われ、地域社会全体の発展に寄与します。


 ④空き家問題の解消への第一歩:


  相続登記が義務化されることで、空き家の発生が抑制されます。これにより、防災や防犯の観点からも地域の安全性が向上し、住環境の改善が期待されます。また、適切に管理された不動産は、地域の資産価値向上にも寄与します。

4.まとめ


 相続登記の義務化は、日本における不動産管理の改善と透明性の向上を目的とした重要な改革です。相続人はこの新しい制度に対応するために、相続が発生した際には速やかに登記手続きを行うことが求められます。これにより、社会全体としての不動産管理がより適切に行われることが期待されています。


 不動産の相続登記が義務化されることで、所有者不明の不動産が減少し、地域社会の発展や不動産市場の健全化が進むことが期待されます。この制度は、相続人にとっても権利を守り、不動産の有効利用を促進する重要な役割を果たします。相続登記の手続きを確実に行い、新しい制度に対応することが、将来的なトラブルを防ぐためにも重要です。


 また、ご自身の権利を主張するため(不動産を処分する場合に、契約の当事者を主張するため)に、相続登記をしておかなければできません。将来、所有している不動産を処分しようと考えている方は、相続登記は早めにしておくことをお勧めいたします。


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いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。

ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。

手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)


また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。

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相続登記義務化に関する説明
相続登記義務化に関する説明

(論点)エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノートと遺言書は、どちらも人生の終わりを迎える際に必要な事項を整理しておくための書類ですが、それぞれの目的や法的効力には大きな違いがあります。今回は、エンディングノートと遺言書の違いについて解説したいと思います。


目次


1.エンディングノートとは

2.遺言書とは

3.エンディングノートと遺言書の比較

4.遺言書に法的効力が及ばない付言事項とは

エンディングノートと遺言書の違い

1.エンディングノートとは


エンディングノートとは、自分の希望や思いを家族や友人に伝えるためのものです。


記載する内容として以下のものが主なものです。


 ①医療や介護についての希望

 ➁葬儀の方法や希望

 ③デジタル資産の管理方法

 ④親しい人へのメッセージ

 ➄遺産の分配についての希望(法的効力はありません)


 エンディングノートには法的効力はありません。そのため、遺産分割の際には遺言書の内容が優先されます。エンディングノートはあくまで家族や関係者が故人の希望を理解するための参考資料となります。

エンディングノートと遺言書の違い

2.遺言書とは


遺言書とは、法律に基づいて、遺産の分配や相続人の指定を明確にするためのものです。


 遺言書の内容として、民法上で以下の内容を定めることができます。


 ①遺産の分配方法の指定

 ➁相続人の指定

 ③遺言執行者の指名

 ④その他法律に基づく指示


 エンディングノートとは異なり、遺言書は法的に効力があり、適切に作成されている場合、遺産分割や相続において法的に拘束力があります。自筆証書遺言で法務局以外で保管されている遺言書は、相続発生後、家庭裁判所の検認を経ることで、法的効力が確定します。


 自筆証書遺言書でも、法務局に保管されている場合や、公正証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けなくても、相続発生時に法的効力を生じます。


 遺言書には、遺言書には大きく分けて、自筆証書遺言・公正証書遺言の2種類があります。これらは法律に従って正しく作成される必要があり、特に公正証書遺言は公証人の関与及び、遺言者の意思確認時に証人2名の立会が求められます。遺言書の内容は、遺言者又はその代理人とのヒアリング等により、公証人が遺言書を作成します。


一方で、自筆証書遺言の場合、遺言者本人が自筆で作成するため、法的効力を生じるように専門家のサポートなどが必要になるばあがあります。せっかく遺言書を書いても、法的効力が生じなければ意味がありませんから。

エンディングノートと遺言書の違い

3.エンディングノートと遺言書の比較


(目的)エンディングノートは個人の希望を伝えるためのものであり、遺言書は法的に遺産分割を指示するためのものです。


(内容)エンディングノートは医療、葬儀、デジタル資産など幅広い希望を含むことができるのに対し、遺言書は主に遺産分割に関する事項に限定されます。


 法的効力 エンディングノートには法的効力がないのに対し、遺言書には法的効力があります。


 エンディングノートと遺言書を併用することで、故人の意向をより明確に伝え、法的に確実な形で遺産を分配することができます。また、最近はやりのデジタル資産についても、パスワードやアクセス方法なども、エンディングノートに記載しておくことで、遺産を見つけやすくすることも可能になります。

エンディングノートと遺言書の違い

4.遺言書に法的効力が及ばない付言事項とは


遺言書の付言事項とは、遺言書に法的拘束力のある事項とは別に、遺言者が相続人や遺族に対して伝えたいメッセージや希望を書き加える部分のことです。これには法的拘束力はありませんが、遺言者の意向や思いを伝えるための重要な役割を果たします。


 つまり、家族への想いなどについては、遺言書の中の「付言事項」に書きしたためることができます。付言事項には、法的効力が及ばないため、甲的効力を及ばしたい内容は、別項目で記載しなければなりません。


「付言事項」には以下のような内容を記載します。


 ①感謝の言葉

 ➁遺産分割の理由

 ③遺族へのメッセージや希望


などです。


 付言事項の重要性は、法的拘束力はないものの、遺言者の思いを直接遺族に伝える手段として非常に重要です。これにより、遺族は遺言者の真意を理解しやすくなり、遺産分割に関する争いを防ぐことにもつながります。遺言書に付言事項を加えることで、遺言者の意向がより明確に伝わり、遺族間の調和が保たれることが期待されます。

エンディングノートと遺言書の違い

5.まとめ


 このように、エンディングノートと遺言書は、別の働きがあります。エンディングノートを書いても、法的効力が生じないため、その中で「長男に全財産を相続させる」と記載しても、遺産分割協議をして遺産を分割しなければ、個々の財産の帰属先が明確にはなりません。使い分けをして、「安心」を手に入れましょう。


 もし、よくわからない場合には、専門家に相談することをお勧めいたします。

(論点)被相続人が海外で亡くなった場合の相続放棄

(論点)被相続人が海外で亡くなった場合の相続放棄

海外が関連すると、相続手続きは一気にハードルが上がります。被相続人が海外で亡くなった場合、相続放棄の手続きは、どのようにすればいいのでしょうか?管轄の家庭裁判所ってどこになるのか?少しお話をしたいと思います。


目次


1.管轄の家庭裁判所はどこ?


2.どの士業にお願いすればいいのか


3.まとめ

(論点)被相続人が海外で亡くなった場合の相続放棄

1.管轄の家庭裁判所はどこ?


 相続放棄の管轄の家庭裁判所は、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。その住所地が、海外であった場合、外国の裁判所への相続放棄というのが原則になるわけです。家事手続法では、日本の裁判所に相続放棄の管轄を認めていません。


 しかし、その国に相続放棄のような手続きがそもそもなかったり、仮に相続放棄に類似の手続きがあっても、制約があり相続放棄類似の手続きができないといったことが起こりえます。さらに、首尾よく外国の裁判所で相続放棄ができたとしても、その効力が日本国内でも有効とは限りません。日本国内の債権者に対抗できない相続放棄の手続きをしたとしても、意味がありません。


 このような場合、民事訴訟法で以下のように規定されています。


「(管轄裁判所の特例)


第十条の二 前節の規定により日本の裁判所が管轄権を有する訴えについて、この法律の他の規定又は他の法令の規定により管轄裁判所が定まらないときは、その訴えは、最高裁判所規則で定める地を管轄する裁判所の管轄に属する。


 相続放棄制度がないことや、日本での相続放棄の手続きが必要な理由を主張立証して、日本の家庭裁判所に相続放棄の緊急国際裁判管轄を認めてもらう必要があります


 そして、日本の裁判所に原則的に国際裁判管轄がない場合に、特別に日本の裁判所の緊急国際裁判管轄を認めてもらう場合の裁判所は必ず東京家庭裁判所になります

 海外に居住する被相続人が亡くなり、多額の借金がある場合、若しくは、すでに離婚した配偶者が海外で死亡し、債務がいくらあるのかわからないため、子に借金を負わせたくないなどの理由で、相続放棄の手続きを行う場合には、東京の家庭裁判所に問い合わせた方がいいです。ただし、事例的に取り扱った件数が多いようですとすんなり手続きに入れますが、緊急国際裁判管轄を認めてもらうためには、認めてもらう必要があることを立証しなければなりません。

(論点)被相続人が海外で亡くなった場合の相続放棄

2.どの士業にお願いすればいいのか


 以上のように、緊急国際裁判管轄を認めてもらうためには、必ず東京家庭裁判所で行うことになります。ここで、どの士業に頼めば、手続きがスムーズに進むのかについてお話をしたいと思います。


 司法書士は、読んで字のごとく「司法の書類作成をする者」となります。行政書士では無理です。しかし、今回のように書類作成のみならず、その前段階で「緊急国際裁判管轄」を認めてもらう必要がありますので、弁護士一択だと思います。


 認定司法書士には、簡易裁判所における訴額140万円以下の民事訴訟については、訴訟代理人となることができますが、家庭裁判所は地方裁判所扱いです。書類作成だけで、ご本人に知識がなく代理人を必要としている場合は、認定司法書士でも出る幕はありません。

(論点)被相続人が海外で亡くなった場合の相続放棄

3.まとめ


 他の相続手続きもそうなのですが、グローバル社会になっているのに、海外が関係すると、一気にそのハードルは高くなります。今回は、相続放棄ですので、相続発生後の対応になります。


 しかし、遺産分割協議も外国に相続人が済んでいるというだけで、やはりハードルは上がります。この場合は、生前に遺言書を作成し、遺産分割協議をしなくてもいい様にしておくことで、煩雑な手続きを避けることができます。この場合でも、債務は相続人に来ますので、相続放棄をするとなると、海外から相続放棄手続きを被相続人の死亡井の住所地を管轄する家庭裁判所に行わなければなりません。当然ですが、期限もあります。


 生前に、海外に居住割ている方は、事前に専門家に相談しておいた方がいいかもしれませんね。

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

戸籍や住民票について、士業には、「職務上請求」というものがあります。職務上請求については、なんでもかんでも士業なら取得できるといった誤った認識の依頼してくる方がいらっしゃいます。が、当然、なんでもかんでも取得できるというわけではありません。職務に関連していなければ、取得は士業と言えどもできません。詳しく解説いたします。


目次


1.本人請求ができる範囲


2.職務上請求で取得できる範囲


3.職務で密接に関係すると言っても・・・


4.まとめ

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

1.本人請求ができる範囲


 戸籍を本人が本人のものを取得するのは当然できますが、それ以外にどの範囲まで、取得できるのでしょうか?


 配偶者、祖父母、父母などの直系尊属、子、孫などの直系卑属の戸籍が範囲となります。自分で戸籍を取得する場合、本籍のある市区町村の役場で関係が確認できない場合には、関係が分かる戸籍で証明しなければなりません。証明できないと、請求している本人との配偶者・直系尊属・直系卑属といった関係を役場の窓口の担当者がわからないためです。


 まずは、請求者本人の戸籍や改正原戸籍などを取得して、そのあとに請求することになると思います。

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

2.職務上請求で取得できる範囲


 先にも書きましたが、「職務上請求」は、士業の職務に関連している場合をもって、取得が可能となります。例えば、相続登記をするために遺産分割協議書を作成しなければならないとき、法定相続人全員の参加が義務付けられていますので、この場合は、法定相続人に関連する戸籍を取得することができますが、遺言書作成となりますと、話は大きく変わってきます。遺言書(特に公正証書遺言)を作成する場合、士業に依頼したとしても、その範囲は、依頼者(遺言者)本人が、取得できる範囲と受遺者のものまでとなります。

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

3.職務で密接に関係すると言っても・・・


 相続登記をした配偶者の方が遺言書を作成するときに、戸籍の取得の依頼がありました。その時に、本人で取得できる範囲までであることを告げると、「先生、相続登記の時に、相続人全員の戸籍取得してくれたじゃないですか?」とおっしゃられましたが、職務内容が異なってしまいますので、上記範囲までの取得しか、職務上請求でも許されていません。職務で取得できる範囲があることを伝え、納得していただきました。


 行政書士として遺言書作成のご依頼を受任しても、行政書士の職務上請求書では、本人取得範囲までしか認められていません。依頼があれば制限なしに戸籍謄本や住民票を取得できるというわけではなく、依頼者が本人又は第三者として請求できるものを代わりに請求できるに過ぎません。依頼者の方が請求できないものは、いくら職務上請求でも取得することができません。職務上請求は、法令上万能ではありません。


 しかし、職務上請求を使うと、取得できてしまうケースがあります。ですので、権限外の取得や、興信所などに職務上請求を販売する事件が後を絶たないわけです。


※行政書士会では、職務上請求書購入の際、申請書類には「誓約書」「使用済みの職務上請求書」「研修(職務上請求に関する研修)の終了証」の添付を要求されます。

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

4.まとめ


 稀にですが、戸籍の取得のみの依頼があることがありますが、お断りするようにしています。戸籍の取得のみでは、根本となる職務ではないためです。それに、トラブルに巻き込まれることが、極めて高い確率で予想できるためでもあります。


 専門家である士業が、適切に職務上請求を使ってこそ意味があります。管理も当然必要なのですが、管理しやすくするために、職務上請求は、複数冊購入することもできますが、必ず1冊ずつ購入するようにしており、厳重に保管しております。


 以上のことからわかるように、独身の方で、ご兄弟の方に遺言書を作成される方の場合には、依頼者の方から、受遺者の方に戸籍等の取得のお願いをしていただいております。

(論点)成年後見人の遺産分割協議への参加

成年後見人の遺産分割協議への参加

相続人の中に成年後見人がついている場合、遺産分割協議について、当該相続人の法定代理人として、成年後見人が参加して行うことになります。成年後見人が遺産分割協議に参加するにあたり注意すべき点がいくつかありますので解説していきたいと思います。

目次

1.家庭裁判所の許可が必要か?

2.被後見人の利益を最優先

3.利益相反の回避

4.適切な専門家の助言

5.遺産分割協議書の作成と確認

6.透明性の確保

7.まとめ

成年後見人の遺産分割協議への参加

1.家庭裁判所の許可が必要か?


 成年後見人が判断能力を欠いている相続人(本人)に代わり、遺産分割協議に参加する場合は、家庭裁判所の許可は不要です。

 しかし、家庭裁判所と相談しながら本人の利益を守る観点から、協議内容に問題がないか判断した方が良いでしょう。判所の許可はいりませんが、事前に相談等をしておいた方が、後のトラブル回避にもつながります。

 なにより、後見人には善管注意義務があり、被後見人の権利を守ることが職務だからです。


 ただし、遺産分割を行った場合は、その結果を裁判所への定期報告の際に報告する必要があります。

成年後見人の遺産分割協議への参加

2.被後見人の利益を最優先


 先にも書いた通り、成年後見人には善管注意義務があります。

 そして、成年後見人の最も重要な役割は、被後見人の利益を保護することです。

 遺産分割協議においても、被後見人の権利や利益が最大限に保護されるようにする必要があります。適切な分割が行われるよう、注意深く協議内容を検討し、不利な条件を避けることが求められます。


 以上のために、「後見人は被後見人の法定相続分の財産を確保しなければいけない」ことになります。法定相続分は、成年被後見人の保証された権利ですので、その確保が求められるわけです。


 ですので、合理的な理由がない場合や、合理的な理由があっても裁判所が認めてくれない場合には、代理人として本人(被後見人)が法的に有する権利(法定相続分)を相続放棄したり、不当に少ない相続分で合意したりすることはできません。


3.利益相反の回避


 遺産分割協議には複数の相続人が関与するため、利益相反の問題が生じる可能性があります。成年後見人が他の相続人の利益と被後見人の利益との間で板挟みになることがないよう、利益相反を避けるための措置が必要です。必要に応じて、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てることも考慮すべきです。


 このような状況が生じるケースは、司法書士や弁護士が成年後見人ではなく、親族(相続人の一人)が、成年後見人になっている場合です。親族成年後見人の場合には、利益相反の注意が必要です。

成年後見人の遺産分割協議への参加

4.適切な専門家の助言


 専門家が成年後見になっている場合には、問題となることは少ないと思いますが、親族成年後見人の場合ですと、法律の知識が乏しいため、専門家のサポートを要することがあります。

 遺産分割の手続きは法的に複雑であるため、弁護士や司法書士などの専門家の助言を受けることが重要です。成年後見人が正確かつ適切に手続きを進めるためには、専門家のサポートが不可欠です。


5.遺産分割協議書の作成と確認


 遺産分割協議がまとまった場合、その内容を遺産分割協議書として文書化する必要があります。

 この文書には全相続人の署名と捺印が必要です。成年後見人は被後見人に代わって署名を行いますが、内容をしっかり確認し、被後見人に不利益がないようにすることが重要です。


6.透明性の確保


 遺産分割協議の過程および結果は、透明性を保つことが重要です。成年後見人は、被後見人や関係者に対して適切な説明を行い、協議内容が明確かつ公正であることを示す必要があります。


成年後見人の遺産分割協議への参加

7.まとめ


 成年後見人が遺産分割協議に参加する際には、被後見人の利益を最優先ることが不可欠です。また、利益相反の回避、専門家の助言の活用、協議書の適切な作成、透明性の確保が求められます。これらの注意点を踏まえ、慎重に手続きを進めることが重要です。


(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

相続登記において、住所が異なるが、戸籍の附票で同一性を証明することが必要となります。生前贈与で持分を数回に分けて移転している方の相続登記にて、同一物件内で、住所表記が異なっている場合にはどのような影響が出るのか、解説したいと思います。


目次


1.不動産登記簿のシステム


2.相続登記の際の被相続人の登記簿との同一性


3.同一であることを確認できたとしても


4.まとめ

(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

1.不動産登記簿のシステム


 法務省の不動産登記のシステムについて、「同一性(本人であることを判別)」を「氏名」と「住所」で見極めています。つまり、住所が異なるが、氏名は同じという場合、変更の登記をしておかなければ、同一人とはみなされないわけです。


 所有権を売買により第三者に移転する場合、その前提として住所・氏名を現状に合わせるために「変更登記」をしてから、売買による所有権移転登記がなされます。仮に、この変更登記を抜かした場合は、却下となってしまいます。決済の際には、特にこの点を調査し、変更登記が必要かどうかの判断をしなければなりません。

(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

2.相続登記の際の被相続人の登記簿との同一性


 それでは、相続登記の場合にはどのように実務で行っているのかと言いますと、被相続人(登記簿の名義人で亡くなった方)の住所が現状と異なる場合には、前住所が登記簿上の住所ですと「住民票の除票」の添付で構いません。


しかし、登記簿上の住所が、前住所よりも前の住所である場合には、「戸籍の附票」を用いて、同一性の証明をすることになります。直近の相続については問題はないのですが、ずいぶん前に亡くなった方の相続登記をする場合、この「住民票の除票」も「戸籍の附票」も廃棄されてしまっている場合があります。


 この場合の対応として、「廃棄証明書」を取得し、同一性を証明する「住民票の除票」も「戸籍の附票」すでにないことを相続登記申請書に記載し、他の方法での同一性の証明をすることになります。


 ①住所と戸籍謄本に記載されている本籍の住所が同一である場合には、これだけで証明可能。


 ➁権利証の添付で、被相続人本人であることを証明可能。


 ③上申書を作成し、これに相続人全員が署名、実印による押印をして、全員の印鑑証明書を添付することで証明責任を免れます。


 上記の3つの手続きが必要となります。


 現住所が異なる場合で、住所のつながりを証明できない場合、被相続人の同一性を証明が、一つのポイントとなります。そして、この証明は、登記官の検査によりなされますので、書類がそろっていれば、相続登記は可能となるわけですが、住所を変更していない場合の問題点は、これ以外にもあります。

(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

3.同一であることを確認できたとしても


 さて、相続登記の審査のために、被相続人の同一性を証する書面として「住民票の除票」または「戸籍の附票」が必要なことは、すでにお話しました。


 それでは、不動産登記システム上でも何も問題がないのかと言いますと、場合によっては弊害が出てきます。


 所有権全部の移転や同一の住所で登記されている持分を相続人に相続させる場合には問題とはなりませんが、例えば、1筆の土地を戦前の相続対策で、一部移転を複数回実施しており、その間に住所が変わったにもかかわらず、過去の住所の変更をしなかった場合に、問題が起こります。


 それは、「登記の目的」が、単純な「所有権移転」や「○〇持分全部移転」とはならず、「○〇持分全部移転(順位番号3番の持分)及び○〇持分全部移転(順位番号4番の持分)」という表記になってしまいます。


 これは、登記官の審査で同一性が証明できたとしても、システム上では、住所が変更されていなければ、別人と扱われてしまうためです。



4.まとめ


 以上、所有権などの登記名義人が、住所・氏名が変更になった場合には、変更登記をすることで、上記のような問題を防ぐことができます。登記簿を見た方が、「先生、何かミスったの?」と言われる場合がありますので、書類の返却の際には、必ず、ご説明をさせて頂いております。


 また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。

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(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)
(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

(論点)相続対策としての「一時払い終身保険」活用

相続対策としての「一時払い終身保険」活用

一時払い終身保険(生命保険)(契約者は亡くなった被相続人とする)は法律上では、相続財産を生命保険に切り替え、相続人の一人に受取人指定すれば、相続財産から外すことができます。一方、税務の面では、生命保険は「みなし相続財産」として取り扱われるため、控除枠(法定相続人×500万円)を除いた残りが相続財産となります。

生命保険の活用は、比較的メジャーですので、注意点についてお話ししたいと思います。


目次


1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか

2.受取人は誰が一番いいのか

3.まとめ(体験談含む)

相続対策としての「一時払い終身保険」活用

1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか


 被相続人が保険金を支払っている契約者であり、保障の対象となる被保険者である場合、保険金の受取人が「妻」や「子」である(相続人)ときには、亡くなった場合にみなし相続財産の非課税枠を利用することができます。


 注意しないといけない点は、その生命保険の契約の内容です。若いころから入っている生命保険があると思われている方もいるかもしれませんが、多くの場合「定期付終身保険」の可能性があります。「定期付終身保険」とは、3000万円の保険金となっていても、100万円の終身保険(主契約)に2900万円の定期保険(特約)が組み合わされた保険で、一定の年齢を超えてから亡くなると主契約の100万円分しか受け取れない契約になっていて、非課税枠を十分に活用できない可能性があります。


 保険会社に現状の保険の契約内容を必ず確認しておくようにしましょう。


 これから契約をしようとしている方も、終身保険の金額と自身の推定相続人の数を把握して、税理士などの専門家と相談しながら進めるといいかもしれません。

相続対策としての「一時払い終身保険」活用

2.受取人は誰が一番いいのか


 前提として「契約者」と「被保険者」が被相続人(夫)である場合のケースで考えていきます。※被保険者が妻(配偶者)の場合などにつきましては、複雑化しますので、税理士に確認をするようにしてください。


 ①配偶者(妻)を受取人とした場合

  配偶者は、必ず相続人にカウントされるため生命保険の非課税枠は当然使うことができます。しかし、相続税申告をする際に配偶者控除枠1億6千万円を使うことができるため有効活用できるかというと微妙かもしれません。なぜなら、2次相続でこの保険金が、配偶者の遺産となるからです。


 ➁子供を受取人とした場合

  一番効果が出るケースです。


 ③孫を受取人とした場合

  子供が存命の場合、生命保険の非課税枠は利用できません。代襲相続や養子となっている場合では、非課税枠を利用できるケースもあります。


 厄介なのが、子供が存命で孫を受取人とした場合、相続税額2割が加えられて計算されるという仕組みが適用される場合があります。この辺につきましては、税理士にご相談ください。

相続対策としての「一時払い終身保険」活用

3.まとめ


 生命保険を活用した相続対策を考える場合には、まずは、生命保険の契約内容について確認をすること。契約内容が主契約の終身保険の額ではなく、特約の額が多い場合には、相続税対策には効果が薄い場合があります。


 次に、受取人を誰にするのかという点。保険に加入する際に、妻が受取人でないことで文句を言うケースもあるようですので、なぜ妻(配偶者)にしないのかについては、専門家の税理士などを交えて、しっかりと事前に話し合いをしておく必要があると思います。


 実際にあった話として、とある証券会社に相続手続きで解約した後、管理口座にまとまった金額の預金ができました。まだ、相続税の支払いも終わっていないのに、営業を配偶者にかけて生命保険契約を締結させようとしました。事前にご相談がありましたので、相続税の支払いで現金が足りない場合、生命保険を解約しないといけない状況となることが考えられ、この場合の解約返戻金は、元本割れを起こします。相続税を支払ったのちに考えても遅くはないことを説明し、専門家の立場ではなく、人として、その証券会社は、あなたのことなどどうでもいいと思っていることを伝えました。ひどい話ですよね。


 相続対策が必要な場合、税理士を含めた無料相談でじっくり説明し、一時払い終身保険の活用などの対策が必要な場合、知り合いに保険会社の方がいない場合には、こちらからご紹介しております。勿論、紹介料などの費用は掛かりません。単に保険会社の方を紹介するだけです。


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令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

令和6年4月1日に施行されたのは、相続登記義務化だけではありません。不動産登記において、所有権の登記名義人について、任意・必須項目が追加されています。その内容について、解説したいと思います。


目次


1.旧姓の併記


2.会社法人等番号


3.外国人名のアルファベット表記


4.まとめ

令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

1.旧姓の併記


 不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第7号)により、現在の所有権の登記名義人の氏名に旧氏を併記することができるようになりました。結婚等により、姓が変わった方が所有者の場合、旧姓の氏名もカッコで表記できるようになりました。


(表記)


 権利部(甲区)


 順位番号  登記の目的  受付年月日・受付番号 権利者その他の事項


  1    所有権移転  年月日第〇号     香川県高松市番町一丁目1番1号


                          香川 髙子


                         (讃岐 髙子)


 ただし、旧姓表記ができる所有者である登記名義人の要件があります。それは、


「旧氏は現在の所有権の登記名義人の氏名にのみ併記することができ、これ以外の者は、旧氏併記の対象とはなりません。


また、日本の国籍を有しない者については、旧氏を併記することはできません。」


 申出をすることができる場合として


「次の(1)及び(2)の登記を申請する場合に、それぞれに定める者が当該登記の申請人である場合には、登記官に対し、その一の旧氏を申請情報の内容として、当該旧氏を登記記録に記録するよう申し出ることができます(※)。(規則第158条の34第1項)


※併記したい旧氏が登記される氏と同一である申出をすることはできません。


 また、次の(1)及び(2)に定められた方以外の方が申し出ることはできません。


(1) 所有権の保存若しくは移転の登記、合体による登記等(不動産登記法(平成16年法律第123号)第49条第1項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る。)又は所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る。) 所有権の登記名義人となる者


(2) 所有権の登記名義人の氏についての変更の登記又は更正の登記 所有権の登記名義人


  ※名前や住所のみの変更の登記の申請と併せて申出をすることはできません。」


(法務省HP引用)


 つまり、所有権を取得した者が、所有権保存・所有権移転登記等を行うときや、氏名の変更が生じたときのみにしかできません。例えば、すでに今の姓で登記がなされている場合に、住所変更のみ生じ、住所変更の登記を申請する場合は、同時に旧姓の登記をすることはダメということを言っています。


(登記申請例)


登記の目的 所有権移転


原 因 令和○年○月○日売買


権 利 者 ○○市○○町一丁目5番6号


法 務 太 郎( 登 記 太 郎


義 務 者 ○○郡○○町○○34番地


    甲 野 花 子


添付情報 登記識別情報(登記済証) 登記原因証明情報


代理権限証明情報 印鑑証明書 住所証明情報


旧氏を証する情報


登記識別情報(又は登記済証)を提供することができない理由 □不通知 □失効 □失念 □管理支障 □取引円滑障害 □その他( ) □登記識別情報の通知を希望しません。 令和○年○月○日申請 ○○ 法務局(又は地方法務局)○○支局(又は出張所)


(以下省略)

令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

2.会社法人等番号


 令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が法人であるときの所有権の登記の登記事項として法人識別事項が追加されました。この理由としては、法務省から以下の通り説明があります。


①所有権の登記名義人である法人の識別性が向上。


➁令和8年4月1日からは、所有権の登記名義人が会社法人等番号を有する法人であって、その会社法人等番号が所有権の登記に記録されているときは、会社法人等番号を検索キーとして、商業・法人登記システムの情報に基づき、登記官が職権で法人の名称又は住所の変更の登記をすることが想定されていため。


とされています。







(法人識別事項申出書の例)


申出の目的 ○番所有権変更


法人識別事項証明情報 会社法人等番号 1234-56-789012


申 出 人 ○○市○○町一丁目34番地 法務商事株式会社


    代表取締役 法 務 太 郎


添付情報 法人識別事項証明情報(会社法人等番号がある法人に関しては、なしとなります) 代理権限証明情報


令和○年○月○日申出 ○○ 法務局(又は地方法務局)○○支局(又は出張所)


(以下省略)


 ここで、「法人事項証明情報」とは何かといいますと、「民法等の一部を改正する法律により、令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が法人であるときの所有権の登記の登記事項として、会社法人等番号その他の特定の法人を識別するために必要な事項(以下「法人識別事項」といいます。)が追加されました。」とあります。すでに閉鎖されている法人の場合には、会社法人等番号を確認することができる閉鎖事項証明書又は閉鎖登記簿謄本を提供する必要があります。

令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

3.外国人名のアルファベット表記


 外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請の際(※1)には、ローマ字氏名(氏名の表音をアルファベット表記したもの)を申請情報として提供する必要があります。また、添付情報として、ローマ字氏名を証する情報(※2)を提供する必要があります。ただし、代位により登記を申請する場合その他の登記名義人となる者等以外の者が登記を申請する場合において、登記名義人となる者等が住民基本台帳に記録されていない外国人であるためローマ字氏名を証する情報の提出が困難であるときは、例外的にローマ字氏名を申請情報として提供しないこととして差し支えありません。


(法務省HP引用)


例外の代位登記によりアルファベットが住民基本台帳に乗っていないなどの理由がある場合のみ、アルファベット表記のみでもよいというもので、原則、カタカナ表記(アルファベット表記)という形で申請するようになります。


(登記申請書の例)


登記の目的 所有権移転


原 因 令和○年○月○日売買


権 利 者 ○○市○○町一丁目5番6号


ジョン・スミス(JOHN SMITH) 義 務 者 ○○郡○○町○○34番地


義 務 者  甲 野 花 子


添付情報 登記識別情報(登記済証) 登記原因証明情報 代理権限証明情報 印鑑証明書 住所証明情報 ローマ字氏名証明情報


※ローマ字氏名証明情報について、具体的には、「住民票の写し(ローマ字氏名が記載されているものに限ります。)」


4.まとめ


 今回ご紹介した不動産登記についての変更点について、1.旧姓の併記は「任意」ですが、2.会社法人等番号と3.外国人のアルファベット表記については、「必須」事項となります。


 今後、不動産登記で所有権が法人もしくは外国人に移転する場合には、注意が必要となります。

(論点)外国在住者の相続放棄

(論点)外国在住者の相続放棄

最近、外国在住者の方からの相談も増えてきました。その中で、「相続放棄」の手続きを外国からでもできるのかといった質問がありました。手続き自体はできるのですが、相続放棄には期間制限があります。被相続人の所在地の家庭裁判所に申述することになるのですが、提出する書類を集めるのも一苦労します。今回は、外国在住の日本人の相続放棄について、解説したいと思います。


目次


1.相続放棄とは


2.相続放棄に必要な書類


3.どの士業にお願いするのが良いのか?


4.まとめ

(論点)外国在住者の相続放棄

1.相続放棄とは


 相続放棄は、相続人が被相続人(亡くなった人)の財産を受け取らない決定をする法的手続きです。これにより、相続人は財産だけでなく、負債やその他の義務も放棄します。相続放棄を選択する理由として、被相続人の負債が多いために相続することが不利と考えられる場合や、特定の家庭内事情がある場合などが挙げられます。


①相続放棄の手続き


 ㋐家庭裁判所への申述:


  相続放棄をするためには、被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。


 ㋑必要書類:次項で記載します。


 ㋒相続放棄の申述に関する照会書の送付:


  照会書とは、今回の申述について、申述者の相続放棄の意思の確認と背景状況などを確認するために送付されます。内容が不明瞭や裁判所が確認したい事項がある場合、出頭を求められる場合がありますので、返答に関しましては専門家と相談したほうがいいです。


※原則、相続放棄は書面のやり取りで完結する手続きですが、家庭裁判所へ出頭を求められる場合もあります。


 ㋓申述の結果通知:


  申述書が受理されると、家庭裁判所から相続放棄が認められた旨の通知が送られてきます。


➁相続放棄の効果


 ㋐全面的な放棄:


  相続放棄をすると、その相続人は被相続人の財産や負債を一切引き継がなくなります。


 ㋑後順位相続人への影響:


  相続放棄が認められると、次順位の相続人に相続権が移行します。例えば、配偶者が相続放棄をすると、子供に相続権が移ります。


③注意点


 ㋐相続放棄の取消:


  原則として、一度認められた相続放棄は撤回できません。ただし、詐欺や脅迫による相続放棄は例外として認められる場合があります。


 ㋑限定承認との違い:


  相続放棄は財産も負債も一切引き継がないのに対し、限定承認は相続した財産の範囲内で負債を返済することを条件に相続を承認する手続きです。

(論点)外国在住者の相続放棄

2.相続放棄に必要な書類


(配偶者・第1順位の相続人の場合)

 ①申述人の戸籍謄本


 ➁被相続人の戸籍謄本 (申述人と同一の戸籍の場合 不要)


 ③被相続人の住民票除票又は戸籍附票


 ④第1順位の相続人が孫の場合は,孫の親(被相続人の子)の死亡がわかる戸籍謄本も必要


 ➄収入印紙 800円分 切手 84円×2枚(本人の持参による提出の場合は, 84円×1枚)


 ※切手の必要額と枚数については、事前に管轄の家庭裁判所に確認を取ってください。


 ⑥海外在住者の場合、在留証明書及びサイン証明(署名証明)も必要

※上記ケース以外の必要書類につきましては、裁判所HPを参照してください。

(論点)外国在住者の相続放棄

3.どの士業にお願いするのが良いのか?


 相続放棄は、特に負債が多い場合や家庭内での複雑な事情がある場合に有効な手段です。しかし、手続きには法律的な知識が必要となるため、弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。


 戸籍等の取得に関しましては、司法書士も弁護士も「職務上請求」により取得が可能です。


 今回の前提である、海外在住の日本人の相続放棄の手続きについて考えますと、時間的な余裕があり、ある程度ご自身で行える知識があれば、費用面で見れば司法書士でも構わないと思いますが、司法書士には、裁判所とのやり取りの「代理権」がありませんので、申述書提出後の照会書の受け取り等につきましては、行うことができません。申述書を提出した後、照会書の受領や結果の受領の代理までお願いしたい場合には、費用は掛かりますが、弁護士にやってもらった方がいいと思います。


4.まとめ


 外国在住の日本人の方が相続放棄をする場合、戸籍等の取得については、司法書士・弁護士でも問題ありませんが、家庭裁判所とのやり取りを代理してもらう場合には、弁護士の方がいいです。ただし、費用は司法書士にお願いする場合よりもかかります。司法書士にお願いする場合、家庭裁判所とのやり取りは、ご本人で外国からのやり取りとなります。相続放棄は、相続を知ってから3ケ月です。時間的なゆとりがない場合には、弁護士に代理していただくのがいいと思います。

(論点)遺産分割協議書の実印押印と印鑑証明書

(論点)遺産分割協議書の実印押印と印鑑証明書

先日、遺産分割協議書を作成し署名と実印による押印を実施したのですが、印鑑証明書と照合すると、明らかに印影がかけた状態のものがありました。

他の書類も確認したのですが、すべて印影の丸枠のほとんどが出ていない状態でしたので、実印の現物を確認すると、完全に欠けている状態でした。

このような場合、どのような対応をすればいいのか、実体験をもとにお話をいたします。


目次


1.登録する印鑑の印影の制限(香川県高松市役所)

2.印鑑がかけている場合の対応

3.まとめ

(論点)遺産分割協議書の実印押印と印鑑証明書

1.登録する印鑑の印影の制限(香川県高松市役所)


これは、私が香川県の高松市役所HPの内容と、今回の事案の問い合わせについての話をしたいと思います。


香川県高松市役所での取り扱い


  まずは印鑑を登録できるのは、高松市に住民登録がある15歳以上の方

   ※意思能力のない方は、印鑑登録をすることができません。

  ※成年被後見人の方は、本人が窓口にお越しになり、法定代理人(成年後見人)が同行している場合に限り、申請することができます。

  そして、登録できる印鑑は一人1つです。

  住民票に旧姓(旧氏)併記を申請し、記載された方は、旧姓(旧氏)でも印鑑登録ができます。


  一方で、登録できない印鑑については、

①住民登録している氏名と異なるもの

➁職業、資格など、氏名以外の事項を表しているもの

③自己流のくずし文字、極端な図案化などで、本人の氏名を表してないもの

④印影の大きさが、一辺の長さ8ミリメートルの正方形に収まる小さなもの

➄印影の大きさが、一辺の長さ25ミリメートルの正方形に収まらない大きなもの

⑥ゴム印など変形しやすいもの

輪郭がないもの又は30%以上欠損しているもの

⑧竜紋や唐草模様等を外郭としたもの

⑨押印すると文字が白くなるもの(逆さ彫り印)

⑩同一世帯内の方が既に登録しているもの

 ※⑦輪郭が仮に20%あれば登録できるのかと言いますと、高松市役所では、登録を控えていただくように話をしているようです。(問い合わせで確認)

(論点)遺産分割協議書の実印押印と印鑑証明書

2.印鑑がかけている場合の対応


高松市への問い合わせで、輪郭部分がかなりかけた印鑑でしたので、かけた状態での登録はできないと言われました。

そこで、印鑑屋に同行し、新たに印鑑を購入いただき、その足で市役所窓口に行き、買った印鑑を登録し印鑑証明書を取得しました。


 本人が行った場合、数十分で印鑑証明書まで発行されますが、本人以外の代理人の場合、

「登録者ご本人宛に郵送による照会をしますので、登録までに1週間程度かかります。窓口には、申請時と回答書持参時の2回、お越しいただくことになります。」

とのことで、すぐに印鑑証明書を取得することはできません。注意が必要です。

(論点)遺産分割協議書の実印押印と印鑑証明書

3.まとめ


 相続で必要となる添付書類である遺産分割協議書には、実印で押印の上、印鑑証明書を添付します。もちろん、印影と実印が異なる場合には、相続登記はできません。


 ご高齢になられ、「もう必要ないだろう」と、実印がかけたままにされている方もいらっしゃるようですが、相続は、いつ発生するかわかりません。

 かけた実印を所有されている方は、お元気なうちに印鑑登録のやり直しをすることをお勧めいたします。高松市では、ご本人以外の方が印鑑の登録をやり直す場合、1回の来訪ではできなくなっております。

(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

令和6年4月1日に施行された「相続登記義務化」ですが、猶予期間3年以内に相続登記を正当な理由なく放置した場合、最大10万円以下の過料を科されます。それでは、その「正当な理由」とは何なのか、また、正当な理由に該当しない場合の回避方法を解説いたします。もちろん、相続登記を早期に済ませておけば、過料の対象とはなりませんが。


目次


1.相続登記義務化とは


2.相続登記義務化の過料が科される場合


3.相続登記義務化の過料を免れる場合


4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法


5.まとめ

(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

1.相続登記義務化とは


 相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行) 相続により(遺言による場合を含みます。) 不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。


 また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。(法務省HP引用)


2.相続登記義務化の過料が科される場合


 正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。

(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

3.相続登記義務化の過料を免れる正当事由とは


 ※正当な理由の例


 (1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース


 (2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース


 (3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース


 (4)経済的に困窮している場合


 などが挙げられています。

4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法


「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。


 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。


 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。


(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

 この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


 この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。

(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

5.まとめ


 最近の法律相談で相続登記義務化についてのご質問が増加してきておりますので、今回、過去の記事からの抜粋で「過料の回避方法」にスポットを当てて解説いたしました。


 また、相続登記を受任して調査すると、複数世代にわたって相続登記をしていない建物のケースが10件に3件ほどありました。未登記の建物は、役所に届出をすればいいのですが、そもそも建物を新築する場合には、1か月以内に表題登記をしなければならないと規定されているため、厳密にいえば違法状態だといえます。表題登記のみの建物も散見されるのですが、相続人の調査が膨大になり、そのままになっているケースもありました。


 今後、おそらくこのような建物も対象になってくる可能性があるかもしれませんね。


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(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)
(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

被相続人に配偶者・子が無く、すでに両親も他界しているため、兄弟姉妹に相続が発生してしまっている場合、遺産はどのように分ければいいのでしょうか。

相談者の方が、積極的に亡くなった方の身の回りの世話をしていて、他の相続人が何もしていなかった場合、世話をしていた相続人は多く遺産をもらえるのか?遺留分は考慮しないといけないのか?

解説していきたいと思います。


目次


1.兄弟姉妹への相続

2.寄与分制度

3.遺産分割協議をするにあたり

4.まとめ

(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

1.兄弟姉妹への相続


まずは、相続人の順位を見ていきたいと思います。

配偶者がいる場合、この方は常に相続人となります。

そして、血族相続人とその順位は、第1順位(子又はその代襲相続人)、第2順位(直系尊属)、第3順位(兄弟姉妹又はその代襲相続人)。

ここで注意したいのは、血族第1順位の子の代襲相続人と、第3順位の兄弟姉妹の代襲相続人の範囲が異なる点です。


 ①子の代襲相続人 被代襲者の子であること。被相続人の直系卑属であること。

 ➁兄弟姉妹の代襲相続人 被相続人の子であること。

つまり、子の代襲は再代襲があり、兄弟姉妹の代襲相続人には再代襲はありません


 また、法定相続分も変化します。

 ①配偶者・子 各2分の1

 ➁配偶者・直系尊属 配偶者3分の2 直系尊属3分の1

 ③配偶者・兄弟姉妹 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1


上記は配偶者がいた場合ですが、いない場合、各順位ごとの相続人間で人数分の按分となります。

ただし、代襲相続人が複数人いる場合は、被代襲相続人の法定相続分を代襲相続人の人数で除した数でさらに按分します。


今回の相談では、亡くなった方の兄弟が4名おり、今回の相談者以外の方たちはすでに亡くなっていて、甥姪が複数人いるとのことでした。

この時点で、相談者が受け取れる法定相続分が4分の1であることを説明しました。


その時に、「私は、〇〇さんを亡くなるまで世話してきたが、他の兄弟は全く寄り付かなかった。亡くなった本人も全部私にくれると言っていた。だから、私が多く遺産をもらうということはできないか?」との質問を受けました。

(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

2.寄与分制度


寄与分制度は、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、その貢献に応じて相続分を増やすことができる制度です。以下に寄与分制度の主要なポイントを説明します。


①寄与分の要件


(1)特別の寄与:

寄与分を主張するためには、相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別な寄与をしたことが必要です。一般的な扶養や介護の範囲を超えた貢献が求められます。


(2)寄与の種類:

寄与の具体的な例としては、以下のようなものがあります。


㋐被相続人の事業に対する労務提供

㋑被相続人の事業に対する財産提供

㋒被相続人の療養看護

㋓その他、被相続人の財産の維持・増加に特別な寄与をした行為


➁寄与分の算定方法

寄与分は、被相続人の財産全体の中で寄与の程度に応じて算定されます。具体的な額や割合は、相続人間で協議して決定しますが、協議が成立しない場合は家庭裁判所が決定します。


③寄与分の効果

寄与分が認められると、その分だけ他の相続人の相続分が減少します。寄与分は被相続人の遺産全体に対して加算されるため、寄与者の取り分が増加します。


④寄与分を主張する手続き

協議:まず、相続人間で寄与分について協議を行います。協議が成立すれば、その合意に基づいて遺産分割を行います。

家庭裁判所への申し立て:協議が成立しない場合、家庭裁判所に寄与分の申し立てを行うことができます。家庭裁判所は、寄与の程度や具体的な事実を基に寄与分を判断します。


⑤注意点

寄与分の請求期間:相続開始後に一定の期間内に寄与分を主張しないと、その権利が消滅する場合があります。具体的な期間は法律で定められていますので、早めの対応が必要です。

証拠の収集:寄与分を認めてもらうためには、特別の寄与を立証する証拠が必要です。例えば、被相続人の事業への貢献を示す書類や証言などを準備することが重要です。

※証拠があっても、具体的な金額として寄与していなければ認められるのは困難です。


寄与分制度は、相続人が被相続人に対して特別な貢献をした場合、その貢献を公正に評価するための制度です。

通常の寄与では足りません。なぜなら、法定相続分で報われていると判断されるためです。


3.遺産分割協議をするにあたり


寄与分の話をした時に、相談者の方は、かなり落胆されていました。

しかし、相続の権利者は、法定相続人すべてにありますので、この点については納得していただきました。そして、現在凍結されている被相続人の預金の解除をするためには、「遺産分割協議書」が必要であることを説明しました。

先ほどの寄与分の話から、遺産分割協議は相続全員でするものであり、協議が成立しなければ預金も凍結されたままになってしまうことを説明し、他の相続人たちの様子を見て、今までの事情をはなしをして、自身の相続分について意見をもらうようにしてみてくださいとアドバイスをいたしました。


(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

4.まとめ


今回のケースでは、「遺言書」があれば、全額今回の相談者の方が遺産を取得できたケースです

「遺留分」があるから、全部は無理なのでは?とお思いになる方もいるかもしれませんが、「遺留分」を主張できるのは、配偶者・子・直系尊属のみで、兄弟姉妹には主張することができません。

遺産を全部上げるという言葉だけではなく、「遺言書」という形で残しておかなければ、法的な効力は生まれません。


生前の相続相談を専門家にしておく意味は、十分に感じられるケースでした。



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いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。

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手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)


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身元保証サポートサービスを家族がいる方が利用した場合

身元保証サポートサービスを家族がいる方が利用した場合

相談の中に、「身元保証サポート」を家族の一人が利用したばかりに、おかしなことになっているというものがありました。以前、身元保証サポートの問題点として、「亡くなった後の遺産がサービス提供者へ渡っている」点を指摘していましたが、今回は、ご家族がいるのに、何らかの原因で身元保証サポートを利用するとどのようなことが起こるのか、お話したいと思います。


目次


1.法定代理人とは


2.身元保証サポートのサービス内容


3.今回の相談で問題となったこと

身元保証サポートサービスを家族がいる方が利用した場合

1.法定代理人とは


 法定代理人(ほうていだいりにん)とは、法律によって特定の人(被代理人)のために代理権を付与され、その人の法律行為を代行する権限を持つ者のことを指します。これは、未成年者や成年被後見人など、自己の意思で法律行為を行うことが難しい人々を保護するための制度です。


(法定代理人の役割と権限)


法定代理人は、被代理人に代わって契約を結ぶなどの法律行為を行います。これにより、被代理人の権利や利益を保護し、適切な意思決定が行われるようにします。具体的な役割や権限は、代理人の種類や被代理人の状況によって異なります。


(法定代理人の種類)


①親権者


未成年者の法定代理人として、親権者(通常は両親)がその役割を担います。親権者は、子供の財産管理や法律行為を行う権限を持ちます。


➁未成年後見人


親が亡くなった場合や親権を失った場合、裁判所によって選任される未成年後見人が法定代理人となります。未成年後見人は、未成年者の生活や財産の管理を行います。


③成年後見人


成年後見制度に基づき、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な成人のために選任される法定代理人です。成年後見人は、被後見人の財産管理や日常生活の支援を行います。


(法定代理人の選任方法)


法定代理人は、法律や裁判所の決定に基づいて選任されます。親権者は通常は自動的に法定代理人となりますが、未成年後見人や成年後見人は、家庭裁判所によって選任されます。


(法定代理人の責任)


法定代理人は、被代理人の利益を最優先に考えて行動する義務があります。これには、被代理人の財産を適切に管理し、不利益を避けるよう努める責任が含まれます。法定代理人がこの義務を怠った場合、被代理人やその関係者から責任を追及されることがあります。


まとめると、法定代理人は、法律によって代理権を付与され、自己の意思で法律行為を行うことが難しい人々を保護するために、重要な役割を果たします。親権者、未成年後見人、成年後見人などの法定代理人は、それぞれの状況に応じて被代理人の利益を守り、適切な意思決定を行う責任を負っています。

身元保証サポートサービスを家族がいる方が利用した場合

2.身元保証サポートのサービス内容


身元保証サポートサービスは、主に高齢者や身寄りのない人、障害者などが安心して生活できるように、様々なサポートを提供するサービスです。このサービスは特に、日本において高齢化社会が進む中で重要性が高まっています。以下は、一般的な身元保証サポートサービスの内容です。


① 住居の保証


賃貸契約の保証: 賃貸住宅を借りる際に、保証人がいない場合に身元保証サービスが代わりに保証人となります。


施設入居の保証: 老人ホームや介護施設に入居する際の保証も提供されます。


➁医療機関での保証


入院時の保証: 病院に入院する際に必要な保証人となります。これにより、家族が遠方にいる場合や身寄りがない場合でも安心して医療を受けることができます。


医療費の支払い保証: 入院中の医療費や治療費の支払いを保証します。


③生活サポート


日常生活の支援: 買い物の代行や通院の付き添い、日常的な手続きのサポートなど、生活の質を向上させるための支援を提供します。


緊急時対応: 緊急事態が発生した際の連絡先となり、迅速に対応します。


④財産管理


財産の管理: 高齢者や障害者の財産を適切に管理し、不正利用を防止します。


遺言執行: 被サービス者が亡くなった後の遺言の執行や財産の整理を行います。


➄介護サポート


介護サービスの手配: 必要に応じて、介護サービスの手配や調整を行います。


介護計画の作成: 個々のニーズに応じた介護計画を作成し、適切な介護を受けられるよう支援します。


⑥法的手続きのサポート


契約書の作成と確認: 賃貸契約やサービス契約の作成と確認を行います。


法的代理: 必要に応じて、法的代理人として各種手続きを代行します。


⑦見守りサービス


定期的な連絡: 定期的に電話や訪問を行い、被サービス者の安否を確認します。


緊急通報システム: 緊急時に迅速に対応できるよう、通報システムを設置します。


 以上のように、身元保証サポートサービスは、特に高齢者や身寄りがない人々にとって、安心して生活するための強力なサポートを提供します。住居の保証や医療機関での保証、日常生活の支援、財産管理、介護サポート、法的手続きのサポート、見守りサービスなど、多岐にわたる支援を通じて、被サービス者が安全で快適な生活を送れるようにします。

身元保証サポートサービスを家族がいる方が利用した場合

3.今回の相談で問題となったこと


 身元保証サポートのサービス内容として、生前の財産管理・身上監護、死後の事務委任・遺言執行などが挙げられます。生前のサポートを実現するために「任意後見契約」を締結します。つまり、サービス提供する業者が「法定代理人」となって、財産管理・身上監護を行うことになります。


 そのために、ご家族がいる被後見人の場合、被後見人の病状などの意思の説明義務は、状況にもよると思うのですが、ご家族ではなく法定代理人となり、財産管理のため通帳等は業者が管理することになります。当然、これらの管理の監督は、最終的に家庭裁判所が関係することになりますので、定期的な報告を法定代理人は求められることになります。


 詳しい内容は言えませんが、ご家族に起こった不測の事態で家族が混乱している時に、(この部分は、私の推測)本人が不安になって、あることは話を盛って、ない話も付け加え悪い推測の上で、介護施設関係者等 に話をしたために、介護施設関係者等 が事実確認をご家族にしたが、連絡も取れず、結果、話だけが進み、家族の問題が解決したときは、医師からの話も聞けず、ご本人の通帳等も返却してもらえない状況になっているという話でした。


※契約段階で、本人とご家族での話し合いがあれば、このような事態は起こらないのですが、「虐待」等の危険性を施設側が判断した場合には、このような事態になることもあります。


 ここで言えることは、関係者皆に非がありますが、誰も責めることはできない点です。


 司法書士では、これらのトラブルについて介入することはできません。弁護士を通じて、業者と話し合い、契約の解除をするしか方法はない旨お話をさせて頂きました。


 高齢者の方は、普段と状況が異なると不安になり、一人の場合特に、悪方向に物事を考えてしまう傾向があります。以前施設介護の施設長をしている時も、この類の話はよくありました。定期的に行っている訪問や、連絡については、できる限り、続けるようにすることが、誤解を招かない方法だと考えます。コミュニケーションが不安定になったとき、同じようなことが起こるかもしれませんからね。

相続登記をしないと起こること

相続登記をしないと起こること

令和6年4月1日から相続登記義務化が施行されました。

それまでは任意だった相続登記なのですが、相続登記をしないとどうなるのでしょうか。

事例を交えながら、わかりやすく解説していきます。


目次


1.相続登記義務化とは

2.相続登記をしないとどうなる

3.相続登記義務化の過料だけじゃない

4.まとめ

相続登記をしないと起こること

1.相続登記義務化とは


2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まりました。

いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。


「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。


(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。


(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用

相続登記をしないと起こること

2.相続登記をしないとどうなる


今回の相続登記義務化における法律の改正では、相続登記義務化に対する罰則は、10万円以下の過料となっています。


「なんだ、10万円払えばいいんじゃないの。」と思われるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。


また、「相続人申告制度」という制度があり、こちらをすることで過料を免れることはできますが、「相続登記をしないこと」の問題点は、過料だけではありません。

相続登記をしないと起こること


3.相続登記の問題は義務化の過料だけじゃない


相続登記をしないということは、当該不動産の名義人が亡くなった方のまま放置されるということを意味します。放置している間に相続が数次的に発生した場合、現行の民法では、相続人と数次相続が発生した方たちの相続人も権利関係者となります。東京近郊の空き家の相続関係者が100人にも上るという記事を見かけたことがあります。この100人の権利者間で、法定相続分で相続登記を行うか、遺産分割協議をして相続人の一人に不動産を帰属させて、相続登記はできません。


それでは、相続登記をしないとどうなるのかと言いますと、その朽ち果てた建物を処分できません。共有の問題で、処分行為をする場合には、共有者全員の同意を要するからです。


これらのことが面倒だからと言って、放置していた場合、さらに深刻な問題が発生いたします。それが「所有者責任」です。

不動産に限らず、ものを所有するということは、その管理責任は所有者にあります。しかも「無過失責任(過失があろうとなかろうと責任を負うことになる)」です。不動産を相続登記せずに放置した場合、老朽化や管理不全のために放置された状態であったために、第三者が不利益を被った場合、と書くと難しくなりますので、例えば、管理ができていなかった家の外壁が崩れて、誰かが死傷した場合、その責任を所有者が負うということです。名義人が既に死亡していた場合も、その相続人が責任を負うことになります。相続というのは、亡くなったからの権利義務をすべて引き継ぐからです。


こういった問題が常に付きまとう状況となりますので、やはり相続登記は早めに行い、使わない不動産は、早期の処分を行うことをお勧めいたします。


4.まとめ


相続登記義務化に関して「しないとどうなる」という観点からお話をさせて頂きました。相談者の方も、罰則である「過料」についてよくご存じなのですが、「所有者責任」を知っている方は、ほとんどいません。相続登記を放置して、自身がまだ済んでいる状態なら管理もできると思いますが、すでに相続人と別居していて、戻ってくる予定もないような場合ですと、相続登記が未了の場合、処分ができませんので、早急に相続登記をして、家族で話し合いの場を持ち、その処分について話し合ってみてはいかがでしょうか。


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「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

相続登記が義務化されたことで罰則である「過料」が設定されました。一定の要件を充たすことで、過料を免れることとはなるのですが、その後、相続登記の義務まで免れるわけではありません。他にどのような手段があるのでしょうか。相続登記義務化の罰則である過料を免れる方法として、簡素化した手続きの「相続人申告登記」があります。過料は免れますが、他に問題はないのでしょうか?


目次


1.「チャチャっとできる相続登記でお願い」?


2.過料を免れるための「相続人申告登記」


3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・


4.まとめ

「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

1.「チャチャっとできる相続登記でお願い」? 


 「チャチャっとできる相続登記でお願い」。この言葉は、最近の相談で、相談者の方から聞いた言葉です。相続登記後に、土地と家を売却して、介護施設入所の費用の足しにしたいから、長男の名義にして、ゆくゆくは売却の方向で考えたいと相談を受けました。そこで、相続登記について必要書類や、ご家族に行っていただく手続きについてお話をしたところ、この言葉を言われました。


 はじめ、何のことを言っているのかわかりませんでしたので、相続登記については、説明した 通りの手順が必要で、登記を申請しないと、後の不動産の処分はできない旨説明しました。そうすると「そんなことはない。近所の方が、相続登記をチャチャっとやったって聞いた。先生、それでやってください。チャチャっとできる相続登記でお願いします。」と言われました。相続登記で、そのような簡単な手続きはなく、遺言書があっても戸籍と住民票などは必要になることを説明したのですが、「近所の方」のやった方法をやってほしいと譲ろうとはしませんでした。そこで、その手続きがおそらく「相続人申告登記」で、将来、不動産を処分する場合には、これだけでは不十分で、結局は相続登記をしなければならなくなる旨説明しました。将来処分することが分かっているのに、相続人申告登記だけ済ませることはできないことも話しましたが、とても不服そうな感じで、「先生、チャチャっとやる相続登記を知らないんですか?」と言いました。


 「ご近所の方は、司法書士とか法律関係の仕事をしているんですか?」と尋ねると、年金暮らしのお年寄りであり専門家でないことがわかりました。そのあと少し話したのですが、平行線をたどっていましたので、うちではできない旨を伝えてお引き取り頂きました。

2.過料を免れるための「相続人申告登記」


「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。


 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。


 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。


(画像)相続人申告登記の登記簿のイメージ


「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

 この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・


  この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。

「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

4.まとめ


 「相続人申告登記」は、相続登記義務化の過料を免れるためには、有効な手段となりますが、相続登記自体を免れるわけではないので、注意が必要です。


 相続登記自体を免れないとは、例えば、相続した不動産が、すでに誰も住まなくなってしまっているような場合、「売却」を考えている方もいらっしゃると思いますが、こういった不動産の処分をするためには、相続登記を経て行わなければならなくなるためです。


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(論点)相続登記を急ぐ意味

(論点)相続登記を急ぐ意味

相続登記義務化を控えて、相談件数、ご依頼の件数が増加しております。

そんな中で、相続登記を急ぐ意味がよく分からないという方がいらっしゃいました。被相続人の方や相続人の状況によっては一刻を争う事態であることも少なからずありますので、解説していきたいと思います。


目次


1.民法177条の意味

2.遺言・遺産分割協議と債権者の関係

3.まとめ

(論点)相続登記を急ぐ意味

1.民法177条の意味


 民法177条では


「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定されています。


 つまり、正当な所有者であることを明示したいのであれば、不動産登記をしなければ第三者に対抗することはできないということです。商業登記(会社法人の登記)は、登記をすることは義務ですが、不動産登記については、現状では義務ではありません。その代わり、所有権を争う第三者が先に登記を具備してしまった場合、もう対抗する手段はないというわけですので、自己の権利主張のために登記を入れなさいというのが建前です。


 その結果、第三者をあまり意識する必要のない相続登記について放置しているケースが横行し、結果、東日本大震災の復興において、大きな妨げになったため、今回の相続登記義務化の流れができたと言われています。義務化になっても相続を知ってから3年以内に登記をすれば、罰則である過料はかかりません。それでは、3年間放置しておいても問題ないのかと言われると、実はそうではないケースも多く存在します。

(論点)相続登記を急ぐ意味

2.遺言と債権者の関係


 相続人の債権者(相続人の一人が借金をしている先)がおり、借金も相当額ある場合、債権者には債務を取り立てる正当な権利があります。その場合、代位登記で法定相続分にて相続登記を代位で行い、さらに債務者である相続人の持分を差し押さえることができてしまいます。


 特定財産承継遺言(民法1014条2項)、民法改正前に「相続させる旨の遺言」と呼ばれていた遺言です。従前はこの遺言をした場合、第三者が登記を入れた場合でも、遺言で指定されている相続人が所有権の全部を主張できていましたが、現在では変わっております。上記のような状況になった場合、仮に当該不動産全部の遺言指定がなされていたとしても、債権者の登記が先の場合、指定された相続人は債権者に対して、法定相続分の権利しか主張できません。つまり、取り戻すために債権者と交渉し、債務者である相続人の持分を取り戻すしか方法が亡くなります。先に指定相続人が相続登記をしておけば、債権者は代位で相続登記ができません。


 相続登記を急ぐ意味は、十分あります。

(論点)相続登記を急ぐ意味

3.まとめ


 このように、状況次第とはなりますが、相続登記を遅らせたために、正当な権利を持つ第三者により登記されてしまいますと、自身の法定相続分の持分の権利しか主張できなくなってしまいます。特定財産承継遺言がある場合には、司法書士に早めの相談をした方がいいと思います。


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相続に対する生前対策のまとめ

相続に対する生前対策のまとめ

相続対策をしているのとしていないのでは、大きな差が出てくる場合があります。特に、相続対策をしていなかったばかりに、相続発生後に遺産分割協議がまとまらないであるとか、相続税が思った以上にかかって大変といったことがあるかもしれません。今回は、一般的な相続対策についてご紹介いたします。相続税対策にも通じる部分もありますが、法律と税法は、似て非なる部分がありますので、法律面について解説いたします。


目次


1.相続対策の必要性といつまでにすればいいのか


2.相続対策①生前贈与


3.相続対策➁生命保険


4.相続対策③公正証書遺言


5.相続対策④養子縁組


6.まとめ

相続に対する生前対策のまとめ

1.相続対策の必要性といつまでにすればいいのか


 相続対策をする必要性は、周りで起こっている相続の問題をみればよくわかると思います。やったらいいのはわかっているけど、まだ早いよと思いの方も多いのではないでしょうか。この後、解説する相続対策について、自身が動けるうちにしておいた方が良いものもあります。今元気でも、相続対策を思いったった時も元気であるとは限りませんからね。


 客観的な指標で言いますと、「平均寿命」と「健康寿命」があります。

「平均寿命とは「0歳における平均余命」のことで、2019(令和元)年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です。 一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、2019(令和元)年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。」(厚生労働省e-ヘルスネット記事引用)


 どうでしょうか?意外と健康寿命の年齢が若いことに気づかれるかもしれません。


 そうなんです。相続対策については、元気なうちに仕込んでおかないと、それ以上になりますと、気力的に持たないことが多いです。


 無料相談会に参加された方たちの中にも、高齢になってから対策を考えて相談に来られる方も少なくないのですが、対策の手続きの話をすると「そんなに大変なら、やっぱりいいです。」となる方もいらっしゃいます。元気で、自身が動ける間に対策を始めることが大事です。

相続に対する生前対策のまとめ

2.相続対策①生前贈与


 生前贈与の効果は、亡くなった時点での個人財産を目減りさせておくことが目的です。資産として現金が多い方は、現金での贈与でも構わないのですが、現金が少ない場合には、土地や建物、動産なども有効な手段です。名義が記録としてきっちり残るものとして、土地、建物の不動産で、実際に生前贈与されている方もいらっしゃいます。暦年贈与の110万円の控除額を念頭に入れ、税理士と相談をしながら「持分」形式で少しずつ所有権を子供又は孫に移転していく方法です。


 今回は、対象ではありませんが、相続税対策として一般的だった「暦年贈与制度」は、組み戻し期間が、3年から7年へ、大幅に延長され、対策が遅れてしまいますと、せっかくした生前贈与が無駄になってしまうかもしれません。早めの対策が必要になってきます。


 相続時精算課税制度の110万円の控除を使った手法もありますが、こちらは税務署への届出が必要となります。専門家と相談しながら、進めてください。






3.相続対策➁生命保険


 こちらも、現預金が多い方向けの相続対策となります。生命保険に加入することで、その額を相続財産から減少させることができます。ただし、保険に加入すればいいだけではなく、ここで重要となるのは「受取人を本人以外にしておくこと」です。受取人を「子供」にしておいた場合、法律上、その支払われる保険金は、「子供の財産」となります。


 税法上では、保険金は「みなし相続財産」となり、500万円×法定相続人の数を超える者についてのみ、相続財産とみなされます。


 それでは、資産が全て現預金だけで、全額生命保険にしておけば、相続財産0じゃないの?と考える方もいるかもしれませんが、裁判所の判例では、半分を超える金額については、認められないものもありますし、30%しか認めていないものもあります。その額と、状況によると思うのですが、あまりにもたくさんの財産を保険に切り替えるのはお勧めできません。

相続に対する生前対策のまとめ

4.相続対策③公正証書遺言


 遺言でもめた場合、争点は遺言者の意思能力に及びます。自筆証書遺言(仏壇から出てきた手書きの遺言書など)は、作成された年月日によっては、認知症が疑われた時期などに重なっている場合には、問題となるケースが多いです。


 そこで、アイリスでも、できる限りおすすめ割いているのが「公正証書遺言」の活用です。


 自筆証書遺言と異なり、遺言者は(予約を取って)公証役場に出向くか、公証人に来訪していただくかの形になり、どの場合でも、公証人が読み聞かせ、「2人の証人」がいることは要件となっています。この場合、本人の意思能力について、全くないとは言えませんが、争点になることは少ないです。


 アイリスで行う公正証書遺言サポートでは、専門家の司法書士が承認の一人となりますので、仮に裁判になった場合でも、証人として証言することも可能です。


 また、元気な間に第1回目の遺言書を作成しておくことで、後にやっぱり変えたいと思ったときにも、変更することは可能です。


5.相続対策④養子縁組


 これは、法律上では「遺留分対策」、そして、税務上では「相続税対策」として有名です。


 法定相続人を増やすことで、各法定相続人に割り当てる相続分を少なくする方法です。


ここでも、法律上と税法上の違いがあります。


 法律上では、養子にした場合でも、法定相続人の数え方は、全員「子供」としてカウントされますが、税法上では、①被相続人に実の子供がいる場合「1人まで認められます」、➁被相続人に実の子供がいない場合「2人まで認められます」となります。


 法定相続人の人数の影響は、以下の場合に影響します。


 ①相続税の基礎控除額


 ➁生命保険金の非課税限度額


 ③死亡退職金の非課税限度額


 ④相続税の総額の計算


税法上は、5人養子にして基礎控除額を増やそうとしても、実子がいる場合は1人のみ、いない場合は2人までしか認められませんので注意が必要です。

相続に対する生前対策のまとめ

6.まとめ


 まとめると、相続対策は健康寿命を考え、元気なうちから対策を始めること、そして、大部分の対策が、相続財産の目減り効果を利用したものですので、専門家に相談の上、きっちり対策を講じていくことが重要となります。


  アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。

いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。

ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。

手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)


また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。

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(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

相続登記を放置することによるリスクについて、相続人の状況は次第に変化するために、その調査が膨大になったり、新たな手続きをしなければ先に進めないといった事案を引き起こす可能性が出てきます。それでは、お話をしていきたいと思います。


目次


1.放置している間のリスク


2.長期放置していなくても


3.解決策はないのか?


4.まとめ

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

1.放置している間のリスク


 相続を長期放置していることで発生する可能性のあるリスクは、「相続人の状況が変わること」で引き起こされる、手続きなどの増加です。具体的な事案に対する手続きをお話しますと、


 ①放置している間に相続人が亡くなり、相続の範囲が広がってしまう


  相続人の調査対象範囲が広がります。当然、相続登記に必要な戸籍の取得数は増加します。


 ➁放置している間に相続人が認知症になってしまう


  成年後見人の申し立てを家庭裁判所に行い選任してもらい、その成年後見人と遺産分割協議をすることになります。


 ③放置している間に相続人が海外で居住し始める


  海外に居住すると「印鑑証明書」が日本国内で取得できなくなります。印鑑の制度のない外国の場合、領事館で「サイン証明」の手続きが必要になります。


 ④放置している間に相続人が行方不明になる


  7年経過していた場合、「失踪宣告」の手続きにより、家庭裁判所に当該相続人の「死亡みなし」をしてもらうことになります。7年を経過していない場合には、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申立で、その不在者財産管理人も含めて遺産分割協議をすることになるのですが、当該相続人の法定相続分の確保が必要となります。

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

2.長期放置していなくても


 長期間放置していなくても、相続発生時に相続人の中に「認知症の方がいる」「海外居住者がいる」「行方不明者がいる」「前妻との間に子供がいる」などの状況があるケースがあります。被相続人が生前からこういった状況が発生している場合、相続が発生すると「遺産分割協議」は、難航すると思います。


 それでは、すでにこのような状況が発生している、もしくは近い将来、このような状況が発生する可能性が非常に高い場合、何らかの対策をとることはできないのでしょうか?

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

3.解決策はないのか?


 生前の相続対策として、「遺言書」で解決を図ることは可能です。遺言書を書いたからと言ってすべて万事解決、というわけではないのですが、少なくとも相続発生時に、残されたご家族に「遺産分割協議の呪縛」からは、少なからず解放されます。遺言書で遺産の帰属先を予め指定しておくことで、相続発生時に遺産が指定先に帰属します。自筆証書遺言の場合で法務局に保管していない場合には、検認の手続きが必要となります。また、その内容が法的に有効かどうかは、解りません。作成時に専門家の指導を受けて作成した場合には、有効となる可能性は高いのですが、そうでない場合は微妙です。ですので、公正証書遺言をお勧めいたします。公正証書遺言の場合、文面や内容は、遺言者とヒアリングをして公証人が作成してくれますので、検認も不要で、登記の際、公正証書遺言と相続の時とは比較できないほど少ない戸籍ですることができます。遺言書があれば、遺産分割協議で相続人全員でその内容を変更できる場合もあるのですが、そもそも遺産分割協議ができないまたは困難な状況なので利用する価値は十分にあると考えます。そして、遺言書の内容は、遺産分割協議の内容に優先します。

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

4.まとめ


 相続相談の内容で、問題となるのが遺産分割協議ができないなどのお話が多数を占めます。当該相続では、しんどい思いをされた方には、年齢に関係なく、今後ご自身の相続の対策として「公正証書遺言の作成」を強く薦めております。現状仲がいいこと度間の関係も、あなたという存在があって保たれている可能性があり、あなたが亡くなった場合、どうなるかは、誰にも予想が付きません。また、遺言は一度作成されても、その後、異なる内容の遺言書を作成することも可能です。残されたご家族のためにも、遺言書の作成をぜひご検討ください。


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(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか2

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか2

相続登記を放置することによるリスクについて、具体的に見ていきたいと思います。

相続登記をするためには、「遺産の確認」と「相続人の確認」が必要ですが、長期放置している間に遺産は変化ありませんが、相続人の状況は次第に変化してきます。それでは、お話をしていきたいと思います。


目次


1.放置している間に相続人が亡くなると

2.放置している間に相続人が音信不通

3.放置している間に相続人が認知症に

4.まとめ

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか2

1.放置している間に相続人が亡くなると

 

 相続人の中に亡くなった方がいますと、被相続人の方同様に、その方の生まれてから亡くなるまでの戸籍と除籍謄本が必要であることは先にも述べました。


 そしてさらに、その方の子供の中に亡くなった方がいる場合、同じような状況となります。つまり、相続人の範囲が際限なく広がっていきます。

 その中には、あまり面識のない方もいるかもしれませんし、亡くなった相続人との関係は良くても、その子供との間で親族間のトラブルにより、険悪な状況となっているかもしれません。


 放置するということは、不確定要素が一気に拡大します。

 相続の取りまとめをしている相続人から、戸籍の附票の最後の住所地宛に手紙を送った場合、返事が来れば、話し合いもできますが、受け取っていても返事がない場合が発生するかもしれませんね。この場合は、遺産分割調停を家庭裁判所に申し出て、解決を図る必要があります。

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか2

2.放置している間に相続人が行方不明


 それでは、手紙を出したが、そのままあて先不明でその手紙が戻ってきた場合は、どうすればいいのでしょうか。

 この場合、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立て、この不在者財産管理人と遺産分割協議をすることになります。この時、不在者の法定相続分の確保が必須要件となりますので、仮に長男名義にしたいが次男が失踪している状態での、不在者財産管理人との遺産分割協議では、長男2分の1、次男2分の1となってしまいます。

 勿論、代償分割(不動産をもらう相続人が、不在者となっている相続人の持分相当額を支払うことで、自身の名義とする分割方法)はすることができますが、支払う現金を用意できなければ、持分による登記をすることとなります。

 そして、不在者財産管理人をも推立てる場合、家庭裁判所にその報酬として、数十万円から100万円の予納金を納めることになります。


 失踪期間が7年を超えている場合には、「失踪宣告」の申し立てを家庭裁判所に行い、死亡みなしとすることができます。

 


(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか2

3.放置している間に相続人が認知症に


 相続登記を放置している間に、相続人の一人が認知症になってしまった場合、もはや認知症になった相続人は、遺産分割協議を行うことはできません。

 そこで、4親等以内の親族の方が、成年後見人を家庭裁判所に申し立てて、成年後見人を就任させることになり、その成年後見人と遺産分割協議をすることになります。

 遺産分割協議が終わったのち、この成年後見人を解任することはできず、亡くなるまで財産管理をすることになります。

 当然、報酬は亡くなるまでの期間必要となります。


4.まとめ


 現状、相続人全員と意思疎通できる状況にある方は、迷わず相続手続きを進めてください。放置は何の解決策にもならず、後世へ大きな負担を残す結果となってしまいます。

もしご自身で、何から始めればいいのかわからないようでしたら、専門家に相談してください。

無料相談ですと、法務局や市役所、司法書士会などで定期的に開催されています。


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(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか1

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか1

相続登記を放置することによるリスクは、令和6年4月1日に施行された相続登記義務化の罰則である、最大10万円以下の過料だけではありません。最近の相談内容でも、長期間放置したことによる手続きの停滞など、余儀なくされている事例をよく見ます。それでは、お話をしていきたいと思います。


目次


1.相続登記をするために必要な手続き


2.放置している間に相続人が亡くなると


3.相続人が海外居住している場合


4.まとめ

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか1

1.相続登記をするために必要な手続き


 相続が発生した場合、「遺産の確定」と「相続人の確定」が必要となります。


(遺産の確定)


 遺産は、現預金、有価証券、生命保険などについては、通帳や定期的に郵送される郵便物などから、判明します。一方で、不動産の場合には、同一市区町村内であれば、市役所や役場で「固定資産評価証明書」を取得することにより、不動産を探し出すことができます。


(相続人の確定)


 こちらは、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍・除籍謄本を取得し、その方の配偶者、子供を確認することができます。そして、相続人の現在戸籍と当該不動産を引き継ぐ相続人の住民票が必要となります。


 法定相続分で引き継ぐ場合には、法定相続分の持分で不動産の名義の変更を実施することになりますが、相続人の一人に引き継がせる場合には、生前に遺言書がある場合か遺産分割協議を経なければ、することができません。将来、当該不動産の売却を考えている場合には、地元に残っている相続人の方名義にしておき、その方と買主との間で売買契約を締結することになります。亡くなった方(不動産の名義)の遺言書がなければ、「相続人全員」で遺産分割協議をし、その内容を遺産分割協議書に取りまとめて、各相続人が署名、実印での押印と相続人全員の印鑑証明書を添付することにより、相続登記に必要な遺産分割協議書が完成します。

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか1

2.放置している間に相続人が亡くなると


 相続人の確認に必要な書類の概要について、上記で述べていますが、実際、相続人の中にすでに亡くなっている方がいた場合、どのようになるのでしょうか?


 その場合、相続人だった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍、除籍謄本が必要となります。例えば、父親で発生した父親の遺産を受け取る権利は、子である相続人が取得することになります。そして、その子である相続人が亡くなってしまった場合、その子の相続人全員に承継されることになります。(数次相続の場合)


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