橋本先生「アイリス国際司法書士事務所」WEBサイト:https://www.irisjs2021.com/
当事務所の無料法律相談会でおなじみ アイリス国際司法書士事務所 橋本 大輔 先生 のブログです。
令和6年4月1日から義務化された「相続登記」に関する話題を中心に、様々な角度から色々なお話をしてくださっています。
第3回:「書く」前にやるべきこと──家族会議と財産リストのすすめ

遺言書は「最後の手紙」であると同時に、家族の未来を守るための設計図です。
けれど、いきなり書き始めてもうまくいかないこともあります。
今回は、遺言書作成の前に欠かせない"2つの準備"――「家族会議」と「財産リストづくり」について、司法書士の立場からわかりやすくお話しします。
◆目次
1.遺言書を書く前に考えたい「準備」の重要性
2.家族会議──"思い込み"をほぐす時間
3.財産リスト──自分の財産を「見える化」する
4.家族会議+財産リストで防げる3つのトラブル
5.司法書士がサポートできること
6.まとめ──「準備がすべて」を忘れずに
1. 遺言書を書く前に考えたい「準備」の重要性
「よし、遺言書を書こう」と思い立ったとき、多くの方がまず考えるのは「何を書くか」でしょう。
しかし実際に多くのご相談を受けて感じるのは、"書く前の準備"ができているかどうかで、その遺言が機能するかどうかが決まる、ということです。
たとえば──
・財産の全体像を把握していない
・家族の意向をまったく確認していない
・想いを伝える言葉を整理できていない
このような状態で書いた遺言書は、形式的には正しくても、実際の相続の場面では「なぜこの分け方にしたのか」が伝わらず、かえって家族間の不信を生むことがあります。
だからこそ、まずは"書く前の準備"が大切なのです。
2. 家族会議──"思い込み"をほぐす時間
「家族会議」と聞くと、少し構えてしまう方も多いですが、堅苦しく考える必要はありません。
目的は、家族それぞれの考え方や希望を共有することです。
たとえば、親御さんが「長男に家を継がせるのが当然」と思っていても、長男は「自分は転勤族だから、実家を継ぐのは難しい」と考えているかもしれません。
また、次男や長女が「自分の取り分はどうなるの?」と心配しているケースもあります。
遺言書を「書く人の意思」だけで完成させると、こうしたギャップが表面化したときに"争族"の火種になります。
家族会議は、そうした「思い込みのズレ」を解消する場なのです。
家族会議をスムーズに進める3つのコツ
・話す前に「目的」を共有する
「今日は遺言の中身を決める日ではなく、みんなの意見を聞く日」と最初に伝えましょう。
・一度では終わらせない
一回で結論を出そうとせず、段階的に話すと安心です。
・専門家の同席も有効
司法書士などの第三者が入ると、感情的にならず冷静に進めやすくなります。
3. 財産リスト──自分の財産を「見える化」する
もうひとつ大切な準備が、「財産リスト」を作ることです。
これは、遺言書を書くための"設計図"のようなものです。
財産リストに書くべき項目
・不動産(土地・建物)
・預貯金(銀行名・支店・口座種別)
・株式・投資信託などの有価証券
・保険(死亡保険金の受取人を含む)
・負債(借入金・連帯保証など)
・貴金属や骨董品などの動産
「思っていたよりも財産が多かった」「逆に、名義変更を忘れていた」など、書き出してみて初めて気づくことも多くあります。
また、財産を整理する過程で、
・認知症対策(信託や後見制度)
・生前贈与
・不動産の名義確認
といった、将来のリスクにも自然と目を向けることができます。
4. 家族会議+財産リストで防げる3つのトラブル
① 「知らなかった」が原因の不信感
財産や方針を知らされていなかった家族が、後で遺言書を見て驚くケース。
→ 家族会議で事前に方向性を共有しておけば回避できます。
② 相続人同士の"感情のズレ"
金額の問題よりも、「自分だけ軽んじられた」と感じることが原因になることが多いです。
→ 財産リストをもとに、全員が納得できる形を探す過程が重要です。
③ 財産の漏れ・重複
銀行口座や不動産が複数ある場合、把握漏れが争いの種に。
→ リスト化で「抜け」や「重なり」を防げます。
5. 司法書士がサポートできること
司法書士は、遺言書を"法的に有効にする"だけでなく、
・家族会議の進め方の助言
・財産リストの作成サポート
・不動産の調査・評価
・相続人関係の整理
など、「書く前段階」から伴走できる専門家です。
「どこまで話していいかわからない」「家族にうまく切り出せない」
そんな方こそ、早めの相談をおすすめします。
中立的な立場から、家族に合った進め方を一緒に考えます。
6. まとめ──「準備がすべて」を忘れずに
遺言書づくりは、"書くこと"より"準備すること"が大切です。
家族会議でお互いの考えを共有し、財産リストで現状を整理する。
そのうえで初めて、「自分らしい遺言」が形になります。
準備の段階で時間をかけることが、のちの安心につながります。
次回は、実際に「どんな遺言書を選ぶか」「自筆・公正証書の違い」など、形式面のポイントを詳しくお伝えします。
📞(無料相談会のご案内)
家族に迷惑をかけたくない。
でも、どう話し合えばいいかわからない──。
ご家族の関係や想いを大切にした「遺言書準備サポート」を行っています。
※ノウハウを教えてほしいという無料相談会でのご依頼はお受けしておりません。
家族会議の進め方から、財産リストづくりまで、
やさしく、具体的にご案内します。
▶ご相談は【初回無料】・オンライン対応も可能です。
お気軽にご連絡ください。
📞 電話予約:087-873-2653
🌐 お問い合わせフォームはこちら
第2回:「子どもたちがもめる理由」──遺言で防げる3つのズレ

「うちの子どもたちは仲がいいから大丈夫」と思っていても、相続をきっかけに関係がぎくしゃくしてしまうケースは少なくありません。
実は、"お金"ではなく、"思いのズレ"が争いを生みます。
今回は、司法書士の立場から、遺言で防ぐことができる「3つのズレ」について、やさしく解説します。
📖目次
1.相続トラブルは「お金」ではなく「気持ちのズレ」から始まる
2.ズレ① "公平"と"平等"を混同してしまう
3.ズレ② 家族の「情報格差」が不信感を生む
4.ズレ③ 「親の想い」が伝わっていない
5.遺言書が"ズレ"を埋める3つの効果
6.まとめ:家族の絆を守るための「伝える勇気」
1. 相続トラブルは「お金」ではなく「気持ちのズレ」から始まる
司法書士として相続の現場を見ていると、
「兄弟が財産を取り合った」というような単純な争いは、実はそう多くありません。
多くの場合、その背景には**"感情のズレ"や"認識のズレ"**があります。
たとえば、
・親の介護を一番していた長女が「少し多くもらってもいい」と思っている。
・一方で、他の兄弟は「親の遺産は平等に分けるのが当然」と考えている。
両者とも"悪気がない"のです。
でも、「なぜそう考えるのか」が共有されていないために、誤解が生まれ、関係がこじれてしまう。
遺言書は、そうした"考え方のズレ"を事前に埋める、いわば家族の調整書のような役割を果たします。
2. ズレ① "公平"と"平等"を混同してしまう
日本では「子どもはみんな平等に相続するべき」という考えが根強くあります。
しかし、実際の家庭にはそれぞれの事情があり、平等=公平とは限りません。
たとえば──
・長男は実家の土地の管理や法要の段取りを担っている。
・長女は遠方に住んでおり、普段の介護や家の維持には関わっていない。
こうした状況で遺産を「きっちり1/2ずつ」にしても、
「自分ばかり負担してきたのに…」という思いが残ってしまうことがあります。
遺言書は、単なる分け方の指示ではなく、
「日ごろの感謝を込めて、実家は長男に託します」
という**"気持ちのメッセージ"**を添えることで、家族が納得しやすくなります。
公平と平等を整理して伝える──それが"争族"を防ぐ第一歩です。
※平等を前面に出し、話し合いをこじらせるケースが多いです。平等を突き詰めれば、不平等になります。平等は一端置いておいて、話し合いに臨みましょう。
3. ズレ② 家族の「情報格差」が不信感を生む
相続では、「知らなかった」「聞いていない」がトラブルの種になります。
たとえば、
・不動産の名義が誰になっているかわからない
・生命保険の受取人を家族が知らない
・預金通帳がどこにあるかわからない
こうした"情報の非対称"が、「何か隠しているのでは?」という不信感を生みます。
相続は"信頼の上に成り立つ手続き"です。
遺言書には、財産の一覧や意図を記しておくことで、
「すべてオープンにしてくれていた」という安心感を残すことができます。
司法書士としては、財産の整理リストを作りながら
「これはどこにある」「この不動産は誰に引き継いでほしい」
と、可視化する作業をおすすめしています。
※ただし、現預金については、相続の時にいくらになるのかはわかりません。まずは、不動産や有価証券、保険などから手を付けていきましょう。
4. ズレ③ 「親の想い」が伝わっていない
もっとも大きなズレは、「なぜそうしたのか」という親の気持ちが伝わっていないことです。
子どもたちは「遺産の分け方」よりも、「親がどう考えていたか」を知りたいのです。
たとえば、
・「兄が家を継いでほしい」という思い
・「妹には介護で苦労をかけたから、少し多く渡したい」
こうした"意図"が言葉で残されていれば、たとえ金額に差があっても、
「そういう想いだったのなら納得できる」と受け入れやすくなります。
反対に、何の説明もないまま遺言がなかった場合、
「自分だけ冷遇された」と誤解されてしまうことも。
遺言書には、「なぜそうしたのか」という心情を添えることが何よりも大切です。
5. 遺言書が"ズレ"を埋める3つの効果
遺言書を残すことで、次のような「3つの効果」が期待できます。
① 不安を減らす
相続の方向性が明確になるため、家族が迷わず行動できます。
「どうしたらいいの?」という不安を減らし、心理的な負担を軽くします。
② 不信をなくす
財産や意図をきちんと明文化しておくことで、「不公平感」「隠し事」の疑念が解消されます。
③ 絆を残す
親がどんな気持ちで家族を思っていたかを伝えることで、
「家族を大切にしてほしい」という願いそのものが形として残ります。
遺言書は、家族のズレを埋める"心の設計図"。
それは法的な効力以上に、「想いを伝える手紙」として価値があります。
6. まとめ:家族の絆を守るための「伝える勇気」
「もめるような財産なんてないから」と思う方ほど、
実は"心のズレ"が原因で、関係が悪くなるケースがあります。
遺言は、財産の多い少ないに関係ありません。
家族への思いを「伝えるか」「伝えないか」。
その違いが、数年後の家族の関係を大きく左右します。
"伝える勇気"を持って、家族の未来を守る。
それが、司法書士として私たちが一番お伝えしたいことです。
📞(無料相談会)
香川県で「もめない遺言」をお考えの方へ
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、
ご家族の状況・想いを丁寧に伺いながら、
「心のズレ」を防ぐ遺言づくりをサポートしています。
初回相談無料・オンライン相談可。
→ お問い合わせはこちら
電話予約:087-873-2653(平日9時から19時30分の間 土日祭日も可)
第1回:「“うちは仲がいいから大丈夫”が一番危ない」──争族を防ぐ第一歩

「うちは仲がいいから、遺言なんて必要ない」と思っていませんか?
実は"仲のよさ"ほど危ういこともあります。
家族だからこそ、思い込みや遠慮がすれ違いを生み、取り返しのつかない争いになることも。
本記事では、司法書士の立場から「争族」を防ぐための最初の一歩を、わかりやすくお伝えします。
📖目次
1.「仲がいい家族ほど危ない」──よくある誤解
2."争族"が起こる本当の理由
3.遺言書は「財産の分け方」ではなく「思いを伝える手紙」
4.家族のために、今からできる3つの準備
5.司法書士が見た"もめなかった家族"の共通点
6.まとめ:仲のよさを「形」にして残すということ
1. 「仲がいい家族ほど危ない」──よくある誤解
相続の相談を受けていると、よく耳にする言葉があります。
「うちは仲がいいから、うちは大丈夫です。」
多くの方が、遺言や生前対策を「もめる家の話」と思っているのです。
ところが、実際に争いに発展するのは、むしろ仲の良かった家族に多いのが現実です。
なぜなら、仲が良いからこそ「話し合わなくてもわかっている」「うちには遠慮がある」と、大切なことを言葉にしないまま時間が過ぎてしまうからです。
たとえば──
・親が「長男が家を継ぐだろう」と思っていた
・子どもは「平等に分けてくれると思っていた」
このような"お互いの思い込み"が、後に「そんなつもりじゃなかった」という溝を生んでしまうのです。
2. "争族"が起こる本当の理由
「相続トラブル=お金の問題」と思われがちですが、実際には感情のもつれが根本原因であることが多いです。
たとえ数百万円の差であっても、「自分だけ軽んじられた」「親に愛されていなかったのでは」という思いが膨らみ、修復が難しくなります。
争族が起こる主な理由は次の3つです。
1.公平と平等の違いを混同している
財産を"均等に分ける"ことが"公平"だとは限りません。
長男が親の介護を担っていた場合、全員が同じ額でも納得できないことがあります。
2.情報が共有されていない
誰がどんな財産を相続したのか、誰が何に関与していたのか──情報不足が疑念を生みます。
3.感情の整理ができていない
親が亡くなった直後は、悲しみの中で冷静な話し合いが難しい時期。
小さな誤解が"取り返しのつかない確執"に変わることも。
この3つを防ぐ唯一の方法が、「親の意思を事前に伝えておくこと」、つまり遺言書を残すことなのです。
3. 遺言書は「財産の分け方」ではなく「思いを伝える手紙」
多くの人が"遺言書"という言葉にかたさを感じます。
ですが、本来の遺言書は「法的な文書」であると同時に、家族へのメッセージでもあります。
たとえば──
「長男には、これまで家を守ってくれた感謝を込めて自宅を託します。」
「次男には、いつも支えてくれた気持ちをありがとう。平等でないかもしれませんが、あなたの理解を信じています。」
こうした一言が添えられるだけで、**"数字では測れない納得"**が生まれます。
遺言書は、残された家族が「なぜそうなったのか」を理解できるようにする、いわば"心の道しるべ"なのです。
4. 家族のために、今からできる3つの準備
争族を防ぐには、難しい手続きよりも"今できる準備"が大切です。
司法書士としておすすめするステップは、次の3つです。
① 財産の「見える化」をする
預貯金・不動産・保険などを一覧にまとめておきましょう。
「そんなに財産はない」と思っていても、実際に書き出すと家族が知らなかった情報が出てくることもあります。
② 家族の価値観を話し合う
どの財産に思い入れがあるか、誰がどのように関わっているか。
たとえば「実家は残したい」「畑は誰かに続けてほしい」など、家族の"気持ち"を共有する場を設けておくことが大切です。
③ 遺言書の相談を専門家にしてみる
自分で書くことも可能ですが、法的に有効な形式・文言を誤ると無効になるリスクがあります。
司法書士に相談すれば、「自筆証書」「公正証書」のどちらが合うかを具体的に提案できます。
5. 司法書士が見た"もめなかった家族"の共通点
これまで多数の相続案件に関わる中で、争わなかった家族にはある共通点があります。
それは、「親の考えを、家族全員が知っていた」ことです。
遺言書の内容を事前に伝えていたり、「こういう理由でこのように分ける」と話し合っていたりすると、いざ相続が始まっても「お父さんがそう言っていたから」と、冷静に受け止められるのです。
つまり、"対話のある家族"が"争わない家族"になるのです。
※絶対冷静になるとは限りません。割合的な話をしています。
6. まとめ:仲のよさを「形」にして残すということ
「うちは仲がいいから大丈夫」と信じられるのは素敵なことです。
けれど、その"仲のよさ"を守るためにこそ、言葉と形にして残すことが必要です。
遺言書は、家族の絆を壊すものではなく、守るための道具。
そして、それを書き始めることが「家族の未来を思いやる行動」そのものです。
どうか、"まだ元気な今"だからこそ、
家族への想いをやさしい言葉で残す準備を始めてみてください。
📞(無料相談会のご案内)
香川県での遺言・相続のご相談は
アイリス国際司法書士・行政書士事務所へ。
ご家族の状況に合わせた「争族にならない遺言」の形を、司法書士が丁寧にご提案します。
**初回相談は無料。**オンライン相談・休日相談も承ります。
→ お問い合わせはこちら
電話予約:087-873-2653(平日9時から19時30分の間 土日祭日も可)
第5回:登記義務化で変わる負動産の行方 ─ 実務からのアドバイス

2024年4月に始まった「相続登記の義務化」。
この改正により、"放置されたままの土地"は、過料の対象となる可能性が出てきました。
登記をしないままにしておくと、負動産が次の世代にまで連鎖することに──。
本記事では、登記義務化で何が変わったのか、そしてこれからの相続対策で何をすべきかを、司法書士の立場から詳しく解説します。
【目次】
1.登記義務化とは?2024年改正の概要
2.相続登記を怠るとどうなる?過料のリスク
3.登記しないまま放置された"負動産"の現実
4.義務化で増える実務相談と現場の混乱
5.相続人申告登記という新制度
6.「誰の名義にするか」が相続対策の分かれ道
7.実務から見た登記手続きの流れと注意点
8.司法書士がすすめる"登記+整理"の新しい形
1. 登記義務化とは?2024年改正の概要
これまで、相続による土地・建物の名義変更(=相続登記)は「任意」でした。
しかし、2024年4月の法改正により、相続登記が義務化されました。
新制度では、
・不動産の所有者が亡くなった場合、
・相続人は「相続を知った日から3年以内」に登記申請をしなければならない、
というルールが設けられています。
この改正の背景には、全国的に増え続ける所有者不明土地問題があります。
相続を重ねるたびに登記がされず、誰が管理すべきか分からない土地が増加。
公共事業や民間開発の妨げとなっていたため、国が本格的に対策に乗り出した形です。
2. 相続登記を怠るとどうなる?過料のリスク
義務化に伴い、登記を怠った場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。
ただし「すぐに罰せられる」というものではなく、
正当な理由(相続人が不明、協議中など)がある場合は考慮されます。
しかし、長期間放置していると、次の問題が起こります。
・相続人の一部が死亡し、さらに相続が重なる
・誰が権利者か分からなくなり、登記できない
・売却・管理・処分の手続きが進まない
こうして、"名義不明の負動産"が発生します。
義務化は、この負の連鎖を断ち切るための一歩なのです。
3. 登記しないまま放置された"負動産"の現実
実務では、すでに「登記未了」が原因で相続手続きが進まない案件が多数あります。
たとえば──
・祖父の名義のまま数十年経過し、相続人が20人以上に増加
・一部の相続人が行方不明で、遺産分割協議が成立しない
・共有名義が複雑化し、売るにも管理するにも全員の同意が必要
このようなケースでは、土地の価値があっても動かせず、結果として「放棄」や「管理放置」に陥ります。
相続登記を怠ることが、次の世代に"負動産"を残す最大の原因なのです。
4. 義務化で増える実務相談と現場の混乱
登記義務化の施行後、司法書士事務所には次のような相談が増えています。
・「父が亡くなって10年経つが、今から登記できるか」
・「共有者が多くて話がまとまらない」
・「登記費用を誰が負担すべきか」
多くの方が、「過料」よりも「実際に登記するための段取り」が分からずに困っています。
義務化によって登記の重要性は高まりましたが、制度の周知と実務の整備が追いついていないのが現状です。
ここで大切なのは、「登記だけを急ぐ」のではなく、
相続全体の整理を同時に進めるという視点です。

5. 相続人申告登記という新制度
2024年から新たに始まった「相続人申告登記」は、
登記の義務化に対応するための"救済的制度"です。
内容を簡単に言うと、
「まだ遺産分割が終わっていなくても、相続人であることを法務局に申告できる」制度です。
この申告を行えば、3年以内の登記義務をいったん果たした扱いになります。
遺産分割が長引くケースや、相続人が多い場合には非常に有効です。
ただし、あくまで「暫定的」な措置であり、
最終的には正式な相続登記を行う必要があります。
6. 「誰の名義にするか」が相続対策の分かれ道
登記義務化によって、相続人の間で新たな課題が浮上しています。
それは、「誰の名義にするのか」という問題です。
不動産を誰も使わない場合、全員で共有にしてしまうと、
将来の売却や処分時に全員の同意が必要となり、極めて面倒です。
一方で、特定の相続人に名義を集中させると、
「負担が偏る」「不公平だ」という不満も生じます。
司法書士の立場から言えば、"共有"は避けるべきです。
名義を一本化し、将来の処理ができる形に整えることが、登記義務化時代の基本方針といえます。
7. 実務から見た登記手続きの流れと注意点
相続登記の実務では、次のステップで進めます。
・戸籍をすべて収集して相続人を確定
・遺産分割協議書を作成
・登記申請書の作成と法務局への提出
ここで注意すべきは、「古い登記簿」「未分筆の土地」「境界未確定地」など、
登記内容そのものが現況と一致していないケースです。
このような土地は、測量士や土地家屋調査士との連携が必要となり、
司法書士が中心となって手続きを統括するケースが増えています。
つまり、登記義務化の時代では、司法書士が"相続と土地の総合窓口"となる流れが進んでいるのです。
8. 司法書士がすすめる"登記+整理"の新しい形
登記義務化は、「単なる手続きの義務」ではなく、
家族が土地の未来をどう考えるかを見直すチャンスです。
登記だけを済ませて終わりにするのではなく、
・不要な不動産は売却・譲渡・放棄を検討
・名義を一本化し、共有を避ける
・将来の相続に備えて生前贈与や遺言を準備
といった「登記+整理」の発想が重要になります。
司法書士は、登記だけでなく、
遺産分割協議書の作成、相続放棄の申述、財産管理人選任の申立など、
相続を"止めない"ための法的支援をトータルで行えます。
登記義務化によって、これまで"見て見ぬふり"をしてきた土地問題が表面化しています。
今こそ、登記を起点に"家族の負動産"を整理するタイミングです。
【無料相談会のご案内】
生前対策・相続対策に関する無料相談は随時受付中です(完全予約制)。
📞 電話予約:087-873-2653
🌐 お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。
また、相続税対策・登記相談も含めた無料相談会も開催中です:
・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)
・詳細はこちら:相談会ページへ
香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。
お気軽にお問い合わせください。
第4回:「売れば金になる」は本当か?─ 地方不動産の現実

「相続した土地を売れば少しは現金になるだろう」と思っていませんか?
実は、地方の不動産には"買い手がつかない現実"が潜んでいます。
立地や形状によっては、売るどころか処分費が上回ることも。
本記事では、香川県をはじめ地方に多い"売れない不動産"の実態と、その対処法を司法書士がわかりやすく解説します。
【目次】
1.相続不動産の「売却神話」とは
2.地方不動産が売れない3つの理由
3.実際の売却価格は"固定資産税評価額"とは違う
4.「売れない土地」に共通する特徴
5.売却にかかる費用と税金の落とし穴
6.香川県での"負動産"事例:査定ゼロの現実
7.売れない不動産をどうする?3つの選択肢
8.「売れない」から「活かす」へ ─ 司法書士が提案する出口戦略
1. 相続不動産の「売却神話」とは
相続で土地や家屋を引き継いだ際、多くの方がまず考えるのが「売れば現金になる」という発想です。
しかし、相続の現場では、実際に売れない不動産の方が多いのが現実です。
特に地方では、人口減少と空き家率の上昇により、需要のない土地・建物が急増しています。
一見して価値がありそうに見えても、実際に査定してみると「買い手がつかない」「値がつかない」という結果になることも珍しくありません。
2. 地方不動産が売れない3つの理由
地方の不動産が"売れない"背景には、主に次の3つの要因があります。
① 需要がないエリアにある
人口減少に伴い、売り手より買い手が圧倒的に少ない。
特に駅から離れた土地や、農村部・山間部ではほぼ取引が止まっています。
② 土地の形や接道条件が悪い
建築基準法上、道路に2メートル以上接していない土地(いわゆる"再建築不可")は、住宅用として利用できず、実質的に売却困難です。
③ 古家付き・境界未確定
建物が老朽化している、隣地との境界が不明確など、法的・物理的な障害があると、買い手はリスクを避けてしまいます。
3. 実際の売却価格は"固定資産税評価額"とは違う
固定資産税の通知書に記載されている評価額を見て、「こんなに価値があるなら売れる」と思う方も多いでしょう。
しかし、固定資産税評価額は市場価格とは別物です。
実勢価格(実際の取引価格)は、評価額の70〜80%程度が目安ですが、地方ではそれよりも半値以下、場合によっては0円査定となるケースもあります。
特に建物付きの場合、解体費や処分費がかかるため、実質的には"マイナス資産"になってしまうこともあります。
4. 「売れない土地」に共通する特徴
次のような特徴がある土地は、ほぼ確実に"売れにくい"とされています。
・再建築不可(接道要件を満たしていない)
・道が狭く車の出入りが困難
・農地や山林など用途制限がある
・所有者が複数で共有状態
・長年登記名義が変更されていない
香川県内でも「田畑・山林を相続したが誰も使わない」「農地転用が難しく売れない」といった相談は非常に多く、相続=不動産資産という時代は終わりを迎えています。
5. 売却にかかる費用と税金の落とし穴
売却できたとしても、費用面の負担を見落としてはいけません。
主な費用には以下のようなものがあります。
・不動産仲介手数料
・登記費用(名義変更・住所変更など)
・建物解体費(老朽家屋がある場合)
・測量・境界確定費用
・譲渡所得税(利益が出た場合)
例えば、香川県内の古家付き土地を売却する際、解体費用だけで100万円を超えることも珍しくありません。
売却価格がそれを下回れば、「売るほど赤字」ということも起こります。
6. 香川県での"負動産"事例:査定ゼロの現実
高松市近郊の郊外エリアで実際にあったケースです。
相続した土地は広く見えたものの、最寄駅から車で20分、農地転用不可の地目。
不動産会社に査定を依頼したところ、返ってきた答えは「買い手が見つからない」でした。
固定資産税だけが毎年かかり、維持費も負担に。
最終的に司法書士を通じて相続財産管理人を選任し、処分・売却整理という手続きを取ることになりました。
相続放棄をしても処理費が残る──これが地方の"負動産"の現実です。
7. 売れない不動産をどうする?3つの選択肢
「売れない」とわかった時点で、できることは次の3つに分類されます。
① 活用する(貸す・管理する)
駐車場、太陽光パネル、資材置き場など、部分的活用を検討。
自治体が募集する「空き家バンク」への登録も選択肢の一つです。
② 処分する(寄付・譲渡)
自治体や法人への寄付、隣地への売却交渉。
令和5年からは「相続土地国庫帰属制度」もスタートし、一定の条件を満たせば国への引き渡しも可能です。
③ 維持管理を最小化する
草刈りや税金だけは最低限にし、将来の活用・売却のタイミングを待つ。
登記名義を整理しておくだけでも、次の相続でのトラブル防止になります。
8. 「売れない」から「活かす」へ ─ 司法書士が提案する出口戦略
不動産は"使い方次第"で価値が変わります。
「売れない土地だから放棄」ではなく、どう整理し、どう引き継ぐかを考えることが重要です。
司法書士は、単に登記手続きを行うだけでなく、
・相続人の整理
・境界確定・共有解消のサポート
・相続財産管理人の申立
など、「動かない土地を動かす」ための法的支援を行っています。
香川県内でも、自治体・土地家屋調査士・税理士と連携した"負動産対策支援"が進んでいます。
今こそ、"売る"よりも"どう残すか"の時代です。
【無料相談会のご案内】
生前対策・相続対策に関する無料相談は随時受付中です(完全予約制)。
📞 電話予約:087-873-2653
🌐 お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。
また、相続税対策・登記相談も含めた無料相談会も開催中です:
・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)
・詳細はこちら:相談会ページへ
香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。
お気軽にお問い合わせください。
第3回:「相続放棄」だけが解決策ではない ─ “マイナスの遺産”との向き合い方

「借金があるから相続放棄をすれば安心」と思っていませんか?
しかし、実際の相続では"放棄すればすべて終わる"わけではありません。特に不動産が絡むと、思わぬトラブルや管理責任が残るケースもあります。本記事では、相続放棄の誤解と正しい判断の仕方を司法書士が解説します。
【目次】
1.相続放棄とは? ─ 「財産を一切受け取らない」手続きの基本
2.「放棄したのに残る責任」とは?
3.負動産を放棄しても安心できない理由
4.相続放棄と「遺産分割協議」の違い
5.放棄すべきかどうか判断するための3つの視点
6.相続放棄以外の選択肢(限定承認・名義変更・寄付など)
7.実際の相談事例:高松市での"放棄トラブル"から学ぶ
8.専門家と一緒に"負動産の出口"を探す
1. 相続放棄とは? ─ 「財産を一切受け取らない」手続きの基本
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産を一切受け継がないという法的手続きです。
借金が多い、使えない山林がある、老朽化した家屋を維持できない──そんな場合に「放棄すれば全部なかったことに」と考える方も多いでしょう。
しかし、実際の相続放棄は「家庭裁判所に申述(しんじゅつ)」という正式な手続きを行う必要があり、亡くなったことを知ってから原則3か月以内という期限もあります。
そのため、「とりあえず様子を見よう」としているうちに期限を過ぎてしまうケースが少なくありません。
2. 「放棄したのに残る責任」とは?
多くの方が誤解されているのが、「相続放棄=もう何も関係ない」という考え方です。
確かに法的には相続人でなくなりますが、現実問題として"管理責任"が完全に消えるわけではありません。
たとえば、放棄した不動産が放置され、倒壊や雑草、害虫被害などが発生した場合、近隣トラブルとして行政から連絡が来ることがあります。
特に**誰も登記名義を引き取らない「空き家」や「山林」**は、次の相続人にも放棄が続き、最終的には行政が処理に困る"負動産連鎖"を引き起こすことも。
3. 負動産を放棄しても安心できない理由
「相続放棄したのに、不動産の管理をお願いされた」といった声は珍しくありません。
理由はシンプルで、相続放棄をしても、すぐに所有権が国や他人に移るわけではないからです。
民法上では、相続放棄者以外の相続人がいなくなると、「相続財産管理人」という専門職が選任されます。
しかし、この申立てにも費用と時間がかかるため、現実には手続きが進まず、放置されてしまうことが多いのです。
4. 相続放棄と「遺産分割協議」の違い
相続放棄は"相続人の地位を失う"制度。
一方で、遺産分割協議は「相続人として財産をどう分けるか」を話し合う制度です。
つまり、「自分は現金だけをもらい、不動産は放棄したい」といった調整は、相続放棄ではなく遺産分割協議で対応すべきです。
誤った判断で放棄してしまうと、他の財産(預金や保険金)までも受け取れなくなることがあるため注意が必要です。
5. 放棄すべきかどうか判断するための3つの視点
相続放棄を検討する際には、次の3つの視点で判断することをおすすめします。
1. 財産と負債の全体像を把握すること
→ 亡くなった方の通帳、登記簿、借入先の資料を確認。
2. 管理コストの見通しを立てること
→ 固定資産税、維持費、売却の難易度を試算。
3. 他の相続人との話し合いができるかどうか
→ 分割協議で解決できる余地があるか確認。
司法書士や税理士に相談すれば、財産調査や評価も含めて「放棄が最適かどうか」のアドバイスを受けられます。
6. 相続放棄以外の選択肢(限定承認・名義変更・寄付など)
相続放棄以外にも、次のような手段で"負動産"を整理できる場合があります。
限定承認:プラスの財産の範囲でマイナスを引き受ける制度。
共有解消・売却:相続人間で不動産を整理・換価して現金化。
自治体やNPOへの寄付:条件付きで引き取ってくれる制度もあり。
いずれの方法も一長一短がありますが、「放棄=唯一の答え」ではないという認識が大切です。
7. 実際の相談事例:高松市での"放棄トラブル"から学ぶ
香川県高松市内のご相談で、「築60年の空き家を相続放棄したが、近隣から苦情が来て困っている」というケースがありました。
放棄後に誰も管理せず、草木が伸び放題になった結果、行政から改善指導が入りました。
司法書士が介入し、相続財産管理人を選任して整理を進め、最終的に取り壊し・土地売却へ。
結果的に、放棄の前に専門家へ相談していれば、もっとスムーズに処理できたケースでした。
8. 専門家と一緒に"負動産の出口"を探す
「放棄したい」と思った時点で、すでに"手放したい財産"を抱えている証拠です。
しかし、放棄だけでは"出口"にならないケースが多くあります。
相続財産の性質を見極め、「譲渡」「共有整理」「登記変更」など複数の方法を比較検討することが大切です。
香川県では、司法書士が中心となって自治体や税理士と連携し、こうした"負動産対策"を支援しています。
一人で悩まず、専門家に相談することで、最適な解決策が見つかります。
■(無料相談会のご案内)
生前対策・相続対策に関する無料相談は随時受付中です(完全予約制)。
📞 電話予約:087-873-2653
🌐 お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。
また、相続登記・放棄相談も含めた無料相談会も開催中です:
・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)
・詳細はこちら:相談会ページへ
香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。
お気軽にお問い合わせください。
第2回:「遺産分割協議」で負動産を整理する方法 ─ 現場で増える“集中コース”の実態

「もらって困る相続財産」を前回解説しましたが、今回はその中でも特に厄介な"負動産"を、どのように整理していくかを詳しく見ていきます。
実務では、遺産分割協議によって特定の相続人に負動産を集中させる"整理型相続"が増加中。香川県の現場から、その実情と注意点を解説します。
■目次
1.遺産分割協議でできること・できないこと
2."負動産集中コース"とは?現場で増えている背景
3.協議書を作るときの実務上の注意点
4.引き受ける相続人のリスクと合意形成の工夫
5.相続登記義務化との関係──「名義を決めない」はもう通用しない
6.まとめ:遺産分割協議を"争わない整理"の場にするために
7.無料相談のご案内(CTA)
1. 遺産分割協議でできること・できないこと
相続財産が不動産を含む場合、相続人全員で話し合い、その分け方を決める手続きが「遺産分割協議」です。
この協議によって、不動産を誰が所有するのか、どのように処分するのかを定めることができます。
ただし、遺産分割協議で決められるのは**"相続人間での配分"**に限られます。
不動産の「売却先」や「管理の委託先」など、相続人以外との契約内容までは協議の範囲外です。
また、相続人全員の同意が必要で、一人でも反対すれば成立しません。
※親しい間柄の相続人間の協議は問題ないですが、前婚の時の配偶者との間の子で、別れてからあっていないなど、関係性が希薄ですと難航する場合があります。そのため、遺言書の作成を勧めております。
2. "負動産集中コース"とは?現場で増えている背景
実務では、「古い実家」「利用価値のない山林」など、誰も引き取りたがらない不動産の処理が問題化しています。
このようなケースでは、相続人のうち比較的管理可能な立場の人(近くに住む人など)に、負動産をまとめる方法が採られることが多くなっています。
これを便宜的に「負動産集中コース」と呼びます。
この方法が増えている理由:
・相続登記義務化(2024年4月施行)により、放置できなくなった
・共有名義では管理や売却が難しい
・「放棄」よりも柔軟に話し合いで調整できる
・相続税や管理費を分散させずに済む
たとえば、長男が実家の土地建物を相続し、他の兄弟には預貯金でバランスを取るような形です。
このようにして、「相続人全員が"何かを少しずつ背負う"」のではなく、整理を優先して集約させる方向が選ばれています。
※遺産の実家の土地を近所にもらってもらおうとしても、周りが空き家だらけでだれも住んでいないなんてざらにあります。早めの対応こそが突破口を開けるかもしれません。
3. 協議書を作るときの実務上の注意点
遺産分割協議書を作成する際には、単に「誰がもらうか」を書くだけでなく、次の点を明確にしておくことが重要です。
(1)負担の所在を明記する
「固定資産税・管理費・修繕費などは、引き受けた相続人が負担する」など、将来の紛争を防ぐ文言を入れます。
(2)処分予定がある場合は「合意書形式」にも対応
将来的に売却・解体を予定している場合は、「処分時の方針」を併記しておくと、後のトラブル回避につながります。
(3)書式・押印・添付資料の整備
相続人全員の署名・実印押印
・印鑑証明書 添付※相続登記に使用する印鑑証明書には期限はありません。しかし、金融機関の手続きの際には、期限がある場合があります。
・登記申請時に使用するため、正本と副本を作成
司法書士に依頼することで、登記に直結する形式での協議書作成が可能になります。
4. 引き受ける相続人のリスクと合意形成の工夫
負動産を引き受ける側は、単に名義をもらうだけでなく、将来の維持管理責任を負うことになります。
そのため、引き受け手の理解と合意形成が何より大切です。
例:兄弟3人の相続
長男:実家を相続(固定資産税を負担)
次男・三男:現金をそれぞれ100万円ずつ相続
このように「経済的バランスを取る」ことが、公平性と納得感を保つ鍵となります。
また、相続人の一部が遠方に住んでいる場合や意見が分かれる場合は、オンラインでの協議や専門家の立会いを活用することが有効です。
※アイリスでは、オンラインを使いご家族間で話し合いをしていただけるような部屋をご用意しております。(話し合いの際、司法書士は立ち合いをいたしません。)
5. 相続登記義務化との関係──「名義を決めない」はもう通用しない
これまで、「とりあえず登記は後で」というケースも多く見られましたが、
2024年4月以降は、相続発生から3年以内に相続登記を行う義務が課されました。
登記を怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
さらに、登記がなされていない土地は「所有者不明土地」として扱われ、売却・活用が極めて難しくなります。
したがって、遺産分割協議書を作成したら、そのまま登記手続きまで一貫して行うことが非常に重要です。
司法書士に依頼すれば、まとまった協議内容の協議書作成から登記申請までをスムーズにサポートできます。
6. まとめ:遺産分割協議を"争わない整理"の場にするために
遺産分割協議は、「誰がどれだけもらうか」を決める場ではなく、
「次世代に負担を残さないための整理をどうするか」を話し合う場でもあります。
負動産をめぐる相続は、感情的な対立を招きやすい問題です。
しかし、早期に冷静な協議を行い、必要に応じて専門家がサポートすることで、円満な解決が可能になります。
香川県でも、空き家や利用価値の低い土地をどう処理するか悩むご家族が増えています。
「話し合いのタイミングを逃さないこと」こそが、負動産問題の第一歩です。
■(無料相談会のご案内)
生前対策・相続対策に関する無料相談は随時受付中です(完全予約制)。
📞 電話予約:087-873-2653
🌐 お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。
また、相続登記・放棄相談も含めた無料相談会も開催中です:
・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)
・詳細はこちら:相談会ページへ
香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。
お気軽にお問い合わせください。
第1回:「もらって困る相続財産」─ 負動産という現実

相続という言葉に「財産がもらえる」という明るいイメージを持つ方は多いでしょう。
しかし現実には、維持や管理に多大な負担を強いられる"負動産"という遺産も存在します。
本記事では、香川県内でも増加している「もらって困る相続財産」の現実と、その背景を司法書士の視点から解説します。
■目次
1.「負動産」とは何か?──もらって困る遺産の正体
2.管理・税金・処分困難…相続後に待ち受ける"負担"
3.香川県で増える空き家・放置地の現状
4.相続人を悩ませる「共有名義」という落とし穴
5.相続放棄と遺産分割協議の違いを正しく理解する
6.まとめ──"負の遺産"を残さないためにできること
7.無料相談のご案内(CTA)
1. 「負動産」とは何か?──もらって困る遺産の正体
相続と聞くと「遺産をもらえる」というポジティブなイメージを持つ方が大半です。
しかし、司法書士の現場では、「財産を相続したものの、手放したくても手放せない」というご相談が年々増えています。
このような"もらって困る財産"を、近年では「負動産(ふどうさん)」と呼びます。
代表的な例は以下の通りです。
・誰も住んでいない古い実家(空き家)
・管理が行き届かない山林や農地
・不便な場所にある土地(買い手がつかない)
・修繕費が高額な老朽建物
・共有名義で手続きが複雑な不動産
こうした不動産は「資産」ではなく、税金・維持管理・処分コストといった継続的な負担を生む存在になります。
2. 管理・税金・処分困難…相続後に待ち受ける"負担"
(1)固定資産税・草刈り・修繕費が延々とかかる
相続後に最も多い相談は、「誰も住まないのに毎年固定資産税がかかる」「草刈りや雨漏り修繕に費用がかさむ」というものです。
不動産を所有している限り、たとえ利用していなくても所有者としての義務が発生します。
(2)放置すれば「特定空家」指定のリスク
管理が行き届かず危険な状態になった空き家は、自治体から「特定空家等」に指定され、固定資産税の軽減措置が外れる可能性があります。
場合によっては強制撤去命令が出され、撤去費用を求償されることもあります。
(3)相続したものの、誰も引き取り手がいない
地方部、特に香川県の郡部では「隣も空き家」「周辺に買い手がいない」というケースが多く見られます。
いくら「売ればお金になる」と思っても、実際には市場価値がゼロ、あるいはマイナスということも珍しくありません。
3. 香川県で増える空き家・放置地の現状
国交省のデータによると、全国の空き家率は約14%。香川県ではそれを上回るエリアもあります。
とくに高松市郊外や中讃・西讃地域では、相続による放置地・空き家が顕著で、次のような相談が多く寄せられています。
「名義を変えていないまま何十年も経った」
「兄弟で共有のまま話し合いが進まない」
「売りたくても登記ができず買主が見つからない」
これらの背景には、2024年4月からスタートした相続登記義務化の影響もあります。
今後は、相続が発生したら3年以内に登記を行う義務があり、怠ると過料の対象となります。
つまり、これまで「放っておいても問題なかった」不動産も、放置できない時代に入ったのです。
4. 相続人を悩ませる「共有名義」という落とし穴
相続人が複数いる場合、「公平に分けよう」として不動産を共有名義にするケースがあります。
しかし、これは後々のトラブルの原因になりやすい方法です。
共有名義の不動産では、
・一人でも反対すれば売却や処分ができない
・管理費や税負担の分担を巡って争いになる
・共有者の一人が亡くなれば、さらに相続が枝分かれする
といった問題が起こります。
実際、司法書士の現場では「共有名義を整理したいが話がまとまらない」という相談が後を絶ちません。
このようなケースでは、遺産分割協議の段階で"名義集中"を検討することが重要です。
5. 相続放棄と遺産分割協議の違いを正しく理解する
相続放棄をすれば「負動産から逃れられる」と考える方もいますが、必ずしもそうではありません。
相続放棄には期限(原則3ヶ月以内)があり、放棄後も管理義務が残ることがあります。
一方で、「遺産分割協議」によって、特定の相続人に負動産を集約させる方法もあります。
たとえば、「管理できる人にまとめる」「将来処分予定の人に名義を集中させる」といった形です。
どちらの方法を取るかは、不動産の性質や相続人同士の関係性によって判断が異なります。
こうした判断には、司法書士や専門家の助言が不可欠です。
6. まとめ──"負の遺産"を残さないためにできること
「もらって困る遺産」は、相続が発生してから慌てるのではなく、生前の段階で準備しておくことが何より重要です。
具体的には、
・不動産の現状を確認し、処分可能かを把握しておく
・生前贈与や売却・信託など、早期の整理を検討する
・遺言書に「誰がどの不動産を承継するか」を明確にしておく
これらの対応を行うことで、次世代への負担を大きく減らすことができます。
負動産問題は、相続対策と登記対策の両面から取り組むことが求められています。
※相続放棄をするタイミングなど、専門家にシュミレーションをしてもらわないと、何がどうなるかではわかりません。近所の人がやったので、同じようにやったという人もいますが、相続は皆内容が異なります。専門家に聞きましょう。
■(無料相談会のご案内)
生前対策・相続対策に関する無料相談は随時受付中です(完全予約制)。
📞 電話予約:087-873-2653
🌐 お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。
また、相続登記・放棄相談も含めた無料相談会も開催中です:
・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)
・詳細はこちら:相談会ページへ
香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。
お気軽にお問い合わせください。
“相続対策=家族を守る準備”という視点──安心を残すためにできること

相続対策というと「節税」や「財産分け」の印象が強いかもしれません。しかし本当の目的は、残された家族が争わず、安心して暮らしていけるようにすることです。本記事では、"家族を守る準備"としての相続対策を考え、その実践方法をご紹介します。
目次
1.相続対策の本質は「家族を守ること」
2.相続が家族関係に与える影響
3.家族を守るために避けたい3つのリスク
4.実践できる相続対策のステップ
5.専門家と一緒に「安心の仕組み」を整える
1. 相続対策の本質は「家族を守ること」
多くの方が相続対策と聞くと「税金を減らす」「不動産をどう分ける」といったイメージを持ちます。もちろんそれも大切ですが、相続の本質は"家族を守ること"にあります。
つまり、相続後に家族が揉めず、安心して生活を続けられるようにすることこそが最大の目的なのです。
たとえば、相続税を抑えることができても、家族の間に争いが起きてしまえば元も子もありません。逆に、多少の税負担があっても、円満に話がまとまれば、家族にとっては大きな安心となります。
2. 相続が家族関係に与える影響
相続は財産を動かすだけでなく、家族関係に強く影響します。
きょうだい間の不公平感
「長男ばかりが得をしている」「私の取り分が少ない」といった感情的な不満が表面化します。
配偶者と子どもとの価値観の違い
「配偶者を守りたい」と考える一方、「子どもへの平等な分配」を優先する意見が出ることもあります。
実家の扱いをめぐる対立
「残したい」と思う人と、「処分して資金化したい」と考える人とで対立することがあります。
相続は単なるお金の問題ではなく、"家族関係そのものを揺るがす出来事"なのです。
3. 家族を守るために避けたい3つのリスク
争族リスク
相続が原因で家族が仲違いしてしまうケースです。特に遺言がない場合や財産の分け方が不透明な場合に起こりやすいです。
手続き停滞リスク
相続登記や遺産分割協議が進まず、財産が"塩漬け"になってしまうことがあります。これが原因で不動産の売却ができず、空き家問題につながることも。
生活困窮リスク
残された配偶者や子どもが生活資金を得られず、生活に困ってしまうケースです。特に不動産に資産が偏っている家庭では注意が必要です。
4. 実践できる相続対策のステップ
① 遺言書を作成する
「誰に何を残すか」を明確にしておくことが、家族を守る第一歩です。自筆証書遺言、公正証書遺言など、状況に応じて最適な方法を選びます。
② 生前贈与を活用する
少しずつ資産を移すことで、税負担を和らげつつ、分配の方針を見える化できます。
③ 家族信託の導入
認知症などで判断能力が衰えた場合でも、信頼できる家族に財産管理を任せられる仕組みです。
④ 保険や預金の指定を整理
生命保険金や預金の受取人を見直し、生活資金がスムーズに確保できるようにします。
⑤ 家族で話し合う
形式だけの対策ではなく、日常的に家族と会話しておくことが、安心の基盤となります。
5. 専門家と一緒に「安心の仕組み」を整える
相続対策は「遺言さえあれば大丈夫」という単純なものではありません。財産の種類や家族構成、将来の生活設計によって最適解は異なります。
司法書士や行政書士と一緒に検討することで、法律面のリスクを回避しつつ、家族の実情に合ったプランを形にできます。
相続対策は"家族を守る準備"です。残された人が安心して暮らせる仕組みを、元気なうちに整えておきましょう。
(無料相談会のご案内)
相続対策は、家族を守るための思いやりです。
「遺言の作り方が分からない」「不動産が多くてどう分ければよいか不安」などのお悩みは、専門家と一緒に解決できます。
👉 アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、一人ひとりの事情に合わせた相続対策をサポートしています。どうぞお気軽にご相談ください。
“元気なうちにこそ”できること──介護・医療の希望を伝える大切さ

介護や医療の話題は、誰しも「まだ先のこと」と後回しにしがちです。
しかし、元気なうちにこそ自分の希望を伝えておくことが、家族の負担を軽くし、後悔のない選択につながります。
本記事では、介護・医療の意思をどう整理し、家族に伝えるかを考えてみましょう。
目次
1.なぜ「元気なうちに」介護・医療の希望を伝えるべきか
2.家族が直面する"突然の選択"の重さ
3.介護や医療の希望を整理する3つの視点
4.伝える方法──口頭だけでは足りない理由
5.専門家と一緒に「思いを形にする」ための工夫
1. なぜ「元気なうちに」介護・医療の希望を伝えるべきか
介護や医療の話題は、誰もが「縁起でもない」と感じてしまいます。しかし、高齢化社会が進む中で、避けては通れない現実です。
特に問題になるのは「本人が意思を伝えられなくなってから」対応する場合です。認知症の発症、急な病気や事故での入院…。家族は本人の希望を知らないまま、重要な判断を迫られます。
その時になって「本人ならどうしてほしいだろう?」と考えるのは、家族にとって非常に重い負担です。元気なうちに自分の希望を伝えることは、家族を守るための思いやりでもあります。
2. 家族が直面する"突然の選択"の重さ
介護や医療の現場では、家族が即断を迫られる場面が多くあります。
・延命治療を受けるかどうか
人工呼吸器や胃ろうの選択は、本人の価値観に直結する重大な問題です。
・介護施設への入所か在宅介護か
家族の生活や負担度に大きく影響します。
・入院費や介護費用の負担分担
きょうだい間で揉めやすいテーマの一つです。
本人が元気なうちに意見を表明していなければ、家族は「本当にこれでよかったのか」と葛藤し、時には対立してしまいます。
3. 介護や医療の希望を整理する3つの視点
では、どのように希望を整理しておくとよいのでしょうか。主に3つの視点があります。
・医療の希望
延命治療や終末期医療について、自分の考えをはっきりさせておく。
・介護の希望
できれば自宅で過ごしたいのか、施設入所も選択肢にするのか。生活の質をどう重視するのか。
・お金に関する希望
医療費・介護費をどこまで自分の資産から使うのか、家族にどう分担してほしいのか。
これらを「自分ごと」として考えることが、家族の負担を軽減します。
4. 伝える方法──口頭だけでは足りない理由
「そんなの、家族に話せばいい」と思う方も多いかもしれません。しかし、口頭だけでは不十分です。
なぜなら、人の記憶はあいまいで、家族間でも受け取り方が異なるからです。
おすすめは、文書として残すことです。
・エンディングノート
自分の思いや希望を自由に書き残せるノート。形式は自由。
・任意後見契約
判断能力が低下した場合に備え、信頼できる人に事務を委ねる契約。
・尊厳死宣言書や医療指示書
延命治療を受けるかどうか、医療行為に関する希望を文書に残す。
これらを準備しておくことで、家族は安心して行動できます。
5. 専門家と一緒に「思いを形にする」ための工夫
希望を文書に残すといっても、法律的な効力が弱いものもあります。たとえばエンディングノートは法的効力がないため、家族の合意が必要です。
一方で、任意後見契約や公正証書による医療指示は、第三者機関に認められる確実な方法です。
司法書士や行政書士と一緒に検討することで、希望を"形"にし、家族に安心を届けることができます。
「まだ早い」と思う今こそ、行動のタイミングです。
(無料相談会のご案内)
介護や医療の希望を伝えることは、家族を守る最大の生前対策です。
「どんな準備が必要?」「何を文書にすればいい?」と迷ったら、ぜひ私たちにご相談ください。
👉 アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、エンディングノートの活用から任意後見契約まで、一人ひとりに合った方法を一緒に考えます。
お気軽にご連絡ください。
“誰も住まない家”の行き先──空き家問題から考える生前対策

相続で受け継ぐ財産の中でも、特にトラブルになりやすいのが「不動産」です。住む人がいなくなった実家を放置すると、空き家となり管理や税金の負担がのしかかります。本記事では、空き家問題の現実と、それを防ぐためにできる生前対策について司法書士が詳しく解説します。
目次
1.相続財産の中で不動産が特に厄介な理由
2.空き家が放置されると何が起きるか
3.固定資産税・管理責任という見えない負担
4.売りたい人と残したい人──相続人の意見対立
5.実際にあった「空き家相続トラブル」の事例
6.空き家問題を防ぐための生前対策
7.遺言書で意思を明確にするメリット
8.家族信託や生前贈与という選択肢
9.司法書士がサポートできるポイント
10.まとめ──"誰も住まない家"を残さないために
1. 相続財産の中で不動産が特に厄介な理由
現金や預貯金は相続人で分けやすい財産です。しかし、不動産は分けることが困難です。例えば実家や土地は、一つの建物を複数人で分割することはできません。そのため、「誰が相続するか」「売却するのか」「共有にするのか」といった点で意見が割れやすいのです。
2. 空き家が放置されると何が起きるか
誰も住まなくなった家は、次第に劣化していきます。屋根や壁の損傷、庭木の繁茂、不審者の侵入リスクなど、周囲に悪影響を及ぼす可能性もあります。
また、2015年からは「空家等対策特別措置法」により、管理不十分な空き家は「特定空家」に指定され、固定資産税の優遇が外れることもあります。放置は大きな経済的損失につながります。
3. 固定資産税・管理責任という見えない負担
空き家であっても固定資産税はかかり続けます。加えて、定期的な清掃や修繕が必要となり、費用と労力が増えていきます。相続人が遠方に住んでいる場合、管理は現実的に不可能となり、業者へ委託するなど追加負担が避けられません。
4. 売りたい人と残したい人──相続人の意見対立
相続人の中には「家を残したい」と考える人と、「負担になるから売却したい」と考える人が混在することがよくあります。この意見の対立が深まると、相続人間の関係が悪化し、結局は不動産が放置される原因となります。
5. 実際にあった「空き家相続トラブル」の事例
あるご家庭では、両親の住んでいた実家を相続した兄弟が「長男は売却」「次男は思い出があるから残したい」と対立しました。話し合いは平行線のまま数年が経過し、家は劣化。最終的に固定資産税の負担と修繕費が重なり、相続人全員が困窮する結果になりました。
6. 空き家問題を防ぐための生前対策
こうした事態を避けるには、被相続人が生前に「不動産をどう扱うか」を明確にしておくことが不可欠です。意思を残さないままでは、家族に判断を委ねることになり、トラブルの火種となります。
7. 遺言書で意思を明確にするメリット
遺言書を通じて「自宅は長男に相続させる」「売却して代金を均等に分ける」といった意思を明文化すれば、家族が迷う余地は大幅に減ります。遺言は、家族が不必要な争いを避け、スムーズに手続きを進めるための最も有効な手段の一つです。
8. 家族信託や生前贈与という選択肢
家族信託:自宅を信託財産とし、将来の管理や処分をあらかじめ取り決めることが可能。本人の判断能力が低下してもスムーズに対応できる。
生前贈与:あらかじめ子どもに不動産を贈与しておけば、相続発生後の争いを回避できる。税務面の確認が必要だが有効な選択肢。
9. 司法書士がサポートできるポイント
司法書士は、不動産に関する登記や信託契約の作成、遺言書の有効性確保など、空き家問題に直結する手続きをサポートできます。法律的に有効であり、家族の希望を反映できる仕組みを整えるには、専門家の関与が欠かせません。
10. まとめ──"誰も住まない家"を残さないために
不動産は財産の中でも特に扱いが難しく、空き家は経済的にも精神的にも大きな負担となります。生前に明確な方針を立てることで、相続人のトラブルや放置リスクを未然に防げます。
「誰も住まない家」を残さないことこそ、家族にとっての最大の生前対策です。
(無料相談会のご案内)
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、不動産の相続や空き家対策に強みを持っています。遺言・家族信託・生前贈与など、状況に合わせた最適な方法をご提案します。相続後に家族が困らないよう、今から一緒に準備を始めましょう。
“争う家族”をつくらないために──お金より怖い“感情の相続”

相続トラブルは「財産の多い家庭」だけの問題ではありません。実際には、財産が少ない家庭ほど激しい争いに発展することもあります。その背景には、お金そのものではなく「感情のもつれ」があります。本記事では、相続を巡る"見えないリスク"を司法書士の視点から解説します。
目次
1.相続トラブルは「金額の大きさ」とは無関係
2.家族を分断する"感情の相続"とは何か
3.感情のもつれが生まれる典型的な場面
4.「公平」と「平等」の違いが火種になる
5.実際に起きた"感情の相続"の事例
6.感情トラブルを防ぐためにできる生前対策
7.遺言書と家族信託の活用ポイント
8.司法書士に相談するメリット
9.まとめ──家族を守る最大の相続対策とは
1. 相続トラブルは「金額の大きさ」とは無関係
相続争いは「資産家に限った話」と思われがちです。しかし実際には、遺産総額が数百万円から数千万円程度の家庭でこそ、裁判所に持ち込まれるケースが多く見られます。
なぜなら、金額の多少ではなく「納得感」が得られるかどうかが、争いの有無を決めるからです。
2. 家族を分断する"感情の相続"とは何か
感情の相続とは、財産の分け方そのものよりも「気持ちの不公平感」や「わだかまり」が引き継がれることを指します。
「自分は親の介護をしたのに報われない」
「兄弟の一人だけが優遇されている」
こうした思いが募り、相続の場面で爆発してしまうのです。結果として、遺産以上に家族の絆が失われてしまうことが最大のリスクです。
3. 感情のもつれが生まれる典型的な場面
感情トラブルが起きやすいのは、例えば次のような場面です。
・介護の負担:長男夫婦が親の介護を担っていたのに、遺産分割は兄弟で平等
・生前贈与の偏り:一部の子どもだけが住宅資金援助を受けていた
・配偶者の存在:再婚相手や内縁関係の配偶者と子どもが相続人となる
・不動産の共有:実家を誰が相続するかで揉める
どのケースも「財産額」ではなく「気持ちの整理」ができていないことに起因します。
4. 「公平」と「平等」の違いが火種になる
相続では「平等に分ける」ことが必ずしも「公平」とは限りません。
例えば、介護を担った子どもからすれば「その分を考慮してほしい」と思いますが、法律上の法定相続分は一律です。この「法律上の平等」と「本人の感じる公平感」のギャップが、トラブルの火種となります。
5. 実際に起きた"感情の相続"の事例
あるご家庭では、母親の介護を長女が10年以上担っていました。しかし遺言もなく母親が亡くなり、法定相続分に従って長男・次女と均等に遺産を分けることに。
長女は「私はこんなに介護したのに」と強く不満を抱き、兄弟間で絶縁状態となってしまいました。
財産は数百万円程度と決して多くはありませんでしたが、失われたのは兄弟の絆でした。
6. 感情トラブルを防ぐためにできる生前対策
こうした事態を防ぐには、生前に「本人の意思」を明確にしておくことが不可欠です。遺言書を活用して、「誰に何をどのように残すか」を具体的に示すことで、家族間の誤解や不満を未然に防げます。
7. 遺言書と家族信託の活用ポイント
・遺言書:介護を担った子どもに多めに財産を残す、住み続ける子に不動産を相続させるなど、本人の意思を明文化できる。
・家族信託:将来の管理や処分方針を事前に決められる。不動産や事業用資産がある場合に有効。
どちらも「法律上の効力」を伴うため、家族間の話し合いだけに比べてはるかに確実です。
8. 司法書士に相談するメリット
感情面の調整は家族間だけでは難しいこともあります。司法書士が第三者として関わることで、法律に基づきつつも家族関係に配慮した解決策を提案できます。
「介護を考慮した遺産分割は可能か」
「不動産を誰に残せばトラブルを避けられるか」
といった疑問に、具体的な手続きと制度を踏まえて対応できるのが専門家に相談する最大の利点です。
9. まとめ──家族を守る最大の相続対策とは
相続トラブルの本質は「お金」ではなく「感情」です。だからこそ、生前の準備によって家族の気持ちを整理し、本人の意思を明確にすることが最も重要です。
「争う家族」をつくらないために、いまからできる一歩を踏み出しましょう。
(無料相談会のご案内)
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、ご家族の状況に合わせた相続対策をご提案しています。
財産額の大小にかかわらず、「家族が争わないための仕組み」を整えることが大切です。
遺言や家族信託について詳しく知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
生前対策「まだ早い」は本当か?──生前対策を先送りする心理とその落とし穴

「生前対策はまだ早い」と思っていませんか。
健康で元気なうちは必要ないと考える方は少なくありません。
しかし、突然の病気や判断能力の低下は誰にでも起こり得ます。先送りによるリスクを直視し、いまからできる備えについて司法書士の視点で解説します。
目次
1.生前対策を「まだ早い」と感じる心理的背景
2.判断能力の喪失と取り返しのつかない事態
3.相続トラブルは「事前の準備不足」から始まる
4.実際に起きた先送りによる失敗例
5.「早すぎる」ことはなく「遅すぎる」だけが問題
6.生前対策を始める最適なタイミング
7.司法書士が関わることで得られる安心
8.まとめ──今すぐ一歩を踏み出すために
1. 生前対策を「まだ早い」と感じる心理的背景
生前対策を検討する際、多くの方が最初に抱く思いは「自分にはまだ必要ない」「健康だから大丈夫」という感覚です。これは自然な心理です。誰しも、自分が病気や事故に遭うことを前提に生活していませんし、老いや死を正面から見据えることには抵抗感があります。
しかし、問題はその心理が「準備の先送り」につながることです。対策が間に合うかどうかは、心身の健康状態や判断能力に大きく依存します。
2. 判断能力の喪失と取り返しのつかない事態
生前対策の多くは「本人が意思を表明できること」が前提となっています。遺言書の作成も、任意後見契約も、家族信託も、本人が内容を理解し、自ら判断して署名押印できなければ成立しません。
ところが、脳梗塞による意識障害や認知症の発症は突然訪れます。一度判断能力を失えば、いくら家族が望んでも契約や手続きを進めることはできません。その結果、家庭裁判所に後見人を選任してもらうしかなくなり、本人や家族の希望とは異なる結果になるケースも珍しくありません。
3. 相続トラブルは「事前の準備不足」から始まる
「うちは財産が少ないから大丈夫」という声もよく聞きます。しかし、相続トラブルの多くは財産の多寡よりも「分け方の不明確さ」に原因があります。
例えば、預貯金が数百万円、不動産が自宅1軒だけというケースでも、相続人間で「誰が住むのか」「売却して分けるのか」といった点で争いが起こります。事前に遺言書などで明確に意思を残していなければ、家族関係に大きな亀裂が生じることもあります。
4. 実際に起きた先送りによる失敗例
あるご家庭では、父親が「遺言なんてまだ先のことだ」と言っているうちに脳梗塞で倒れ、意思表示が困難となりました。結果的に、相続は法定相続分に従って進められましたが、長男が実家に住み続けたいと主張し、次男は売却して現金化を希望。数年にわたり兄弟間で紛争となり、家庭裁判所にまで発展しました。
もし元気なうちに「実家は長男に相続させる」「次男にはその分を預貯金から補填する」といった意思を明確にしていれば、このような対立は避けられたはずです。
5. 「早すぎる」ことはなく「遅すぎる」だけが問題
生前対策には「早すぎるリスク」は存在しません。むしろ早めに準備を整えておけば、生活の変化に合わせて修正する余地もあります。例えば、遺言書を一度作成しても、その後の状況に応じて書き換えることは可能です。
逆に「遅すぎる」と、そもそも作成できない、あるいは家族が望む解決手段が取れない事態に直面します。準備を始める最大の壁は「まだ早い」という思い込みなのです。
6. 生前対策を始める最適なタイミング
一般的には「60歳を過ぎたら」といった目安を耳にしますが、実際には年齢にかかわらず、財産を持ち、家族がいる方は誰でも対象です。特に以下のタイミングは始めどきと言えるでしょう。
・退職や年金受給を迎えたとき
・不動産を購入したとき
・子どもが独立したとき
・体調や健康に不安を感じ始めたとき
人生の節目で「将来に備える」という意識を持つことが大切です。
7. 司法書士が関わることで得られる安心
生前対策は一見シンプルに思えても、法律的な要件や手続きの違いによって結果が大きく変わります。例えば、自筆証書遺言は書き方を誤ると無効になる可能性がありますし、家族信託は設計を誤ると逆にトラブルを招きかねません。
司法書士が関与することで、法的に有効で、かつ家族の状況に即したオーダーメイドの対策を実現できます。「自分たちに合った方法がわからない」という不安を抱える方こそ、専門家のサポートが不可欠です。
8. まとめ──今すぐ一歩を踏み出すために
生前対策を「まだ早い」と先送りにしてしまう心理は、多くの人に共通しています。しかし、判断能力を失った後では打てる手段が大きく限られます。早めの準備こそが、家族を守り、本人の意思を実現する唯一の方法です。
将来を見据えて「いま動く」ことが、結果的に最も安心で合理的な選択となります。
(無料相談会のご案内)
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、一人ひとりの状況に合わせた生前対策をご提案しています。
遺言書の作成、任意後見、家族信託など、多様な方法から最適なプランを一緒に考えましょう。
「まだ早い」と思われた今が、実は最も適したタイミングかもしれません。まずはお気軽にご相談ください。
相続人不存在を「チャンス」に変える?遺贈寄付・地域貢献への新しい活用法

財産を国に帰属させるのではなく、自らの意思で社会に役立てる方法もあります。遺贈寄付や地域団体への寄付は近年注目されている選択肢です。今回は「財産を未来につなぐ」ための考え方を紹介します。
目次
1.遺贈寄付とは何か
2.法律的な手続きの流れ
3.実際の事例(大学・自治体・NPOなど)
4.相続人不存在のリスクを回避しつつ社会に貢献
5.今後広がるであろう「新しい相続の形」
6.まとめ
1. 遺贈寄付とは何か
遺贈寄付とは、自分の死後に残る財産の一部または全部を、遺言によって団体や公益活動に寄付する仕組みです。
相続人がいない場合に限らず、子ども世代に資産を残す必要がない方や、社会への恩返しをしたいと考える方にとって、有効な選択肢となります。
従来であれば「国庫に帰属する」だけだった財産が、自分の意思で未来につながる形に変わるのが、遺贈寄付の大きな魅力です。
2. 法律的な手続きの流れ
遺贈寄付を実現するには、遺言書の作成が必須です。
特に公正証書遺言を用いることで、形式不備による無効リスクを防ぐことができます。
流れは以下のとおりです:
・寄付先(大学、病院、自治体、NPO法人など)を選定
・遺言書で寄付先と寄付する財産を明記
・公証役場で公正証書遺言を作成
・死後、遺言執行者が寄付を実行
司法書士や弁護士が手続きのサポートを行うことで、円滑に実現可能です。
3. 実際の事例(大学・自治体・NPOなど)
遺贈寄付はすでに多くの事例があります。
・大学への寄付:奨学金や研究資金に充てられる
・自治体への寄付:「ふるさと基金」として地域振興に活用
・医療機関への寄付:病院の設備投資や患者支援に役立つ
・NPO法人への寄付:子ども食堂や環境保全など具体的な社会活動に使われる
寄付先によって、財産が未来にどう役立てられるかが明確になる点も大きな特徴です。
4. 相続人不存在のリスクを回避しつつ社会に貢献
相続人がいない場合、財産は自動的に国に帰属します。
しかし事前に遺贈寄付を決めておけば、
・財産の行方を自分の意思で決められる
・相続人不存在の複雑な手続きを回避できる
・生前の思いや理念を「社会に託す」ことができる
というメリットがあります。
「防ぐ」だけではなく、社会にとってもプラスとなる解決策となるのです。
5. 今後広がるであろう「新しい相続の形」
高齢化と未婚率の上昇により、相続人不存在は今後さらに増えると見込まれます。
それに伴い「遺贈寄付」は、新しい相続の形として定着していくでしょう。
最近では、自治体やNPOが遺贈寄付の相談窓口を設けるケースも増えており、「財産を未来の社会に活かす」という考え方は確実に広がっています。
6. まとめ
相続人不存在はマイナスの問題として語られがちですが、「遺贈寄付」を活用すれば財産を未来に生かすチャンスにもなります。
遺贈寄付の仕組みを理解する
公正証書遺言を活用する
自分の思いを社会に託す
こうした前向きな選択が、今後の相続の新しいスタンダードになっていくかもしれません。
(無料相談会のご案内)
生前対策・相続対策に関する無料相談は随時受付中です(完全予約制)。
📞 電話予約:087-873-2653
🌐 お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。
また、相続税対策・登記相談も含めた無料相談会も開催中です:
・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)
・詳細はこちら:相談会ページへ
香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。お気軽にお問い合わせください。
お家(不動産)を“そのまま”にしていませんか? 香川県で始まる相続登記の義務化と安心のためのポイント

放置してしまうと「名義が分からない土地」に。香川県内でも増えている"登記忘れ"を防ぐための、やさしい解説です。
令和6年4月から、「相続登記の義務化」が全国で始まりました。香川県でも、「名義が亡くなった方のまま」という土地・建物が増えています。この記事では、登記を放置した場合のリスクと、家族に迷惑をかけないために今できる"安心のステップ"を、やさしく説明します。
📑目次
1.相続登記の「義務化」ってどういうこと?
2.登記をしないとどうなるの?
3.香川県で増えている「所有者不明土地」問題
4.登記を進めるための3つのステップ
5.よくある質問(FAQ)
6.まとめ:家族が安心できる"名義の整理"を
1. 相続登記の「義務化」ってどういうこと?
これまで、土地や建物を相続しても「登記(名義変更)」は義務ではありませんでした。
しかし、令和6年(2024年)4月1日からは義務化され、
「相続で不動産を取得したら3年以内に登記をしなければならない」ことになりました。
この"3年ルール"を守らないと、**10万円以下の過料(罰金)**が科されることがあります。
国がこうしたルールを設けたのは、登記がされない土地が増えすぎているからです。
2. 登記をしないとどうなるの?
名義が亡くなった方のままになっていると、次のような問題が起こります。
・売ったり貸したりできない
・固定資産税の通知が届かない、支払いが混乱する
・相続人がさらに亡くなり、名義人が増えてしまう("ねずみ算式相続")
・最終的に「誰の土地かわからない状態」になる
とくに香川県のように、実家が空き家のまま残っているケースでは、気づかないうちに登記が放置されていることが少なくありません。
3. 香川県で増えている「所有者不明土地」問題
法務省の調査によると、全国で「所有者不明土地」は九州と四国で特に多く、
香川県でも、特に中讃・西讃地域で増加しています。
農地や山林、古い家屋などがそのままになっていると、
自治体も「誰のものかわからない」として、管理や売却ができません。
たとえば…
・小豆島町や三豊市では、相続人が県外に住んでいて手続きが進まないケース
・高松市や坂出市では、空き家対策が急務になっている地区
こうした地域では、「早めの登記」が家族だけでなく地域全体の安心にもつながるのです。
4. 登記を進めるための3つのステップ
相続登記は「難しそう」と思われがちですが、流れを知っておくと安心です。
ステップ① 相続人を確認する
まず、亡くなった方の戸籍を取り寄せ、誰が相続人かを確認します。
司法書士がサポートすれば、戸籍の収集からまとめて手配可能です。
ステップ② 相続関係を整理して、分け方を決める
兄弟や親族で「誰が相続するのか」を話し合い、遺産分割協議書を作ります。
揉めそうなときは、専門家が間に入り「公平な話し合い」を支援します。
ステップ③ 法務局で登記申請する
話し合いがまとまったら、書類をそろえて登記を申請します。
香川県内の法務局(高松・丸亀・観音寺など)で受け付けています。
遠方に住む方も、郵送やオンライン申請が可能です。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. 登記しないとすぐ罰金になりますか?
A. いいえ。期限を過ぎて「正当な理由なく放置」した場合に対象となります。早めに動けば問題ありません。
Q2. 相続人が多くて話がまとまりません。どうすれば?
A. 司法書士が間に入って、戸籍調査や協議書作成を支援できます。専門家を頼るのが一番スムーズです。
Q3. 亡くなった親の家が空き家のまま。売る前に登記が必要?
A. はい。名義を相続人に移してからでないと、売却や解体の手続きができません。
6. まとめ:家族が安心できる"名義の整理"を
相続登記の義務化は、ただの「手続き強化」ではなく、
家族の将来を守るためのルールです。
香川県内でも「そのままにしていた土地」をきっかけに、
兄弟間でもめたり、税金が未納になってしまったケースが増えています。
今のうちに、司法書士など専門家に相談して、
「登記の準備」から「将来の相続対策」まで整理しておくと安心です。
💬(無料相談会のご案内)
生前対策・相続登記に関するご相談は随時受付中です(完全予約制)。
📞 電話予約:087-873-2653
🌐 お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。
また、相続税対策・登記相談も含めた無料相談会も開催中です:
・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)
・詳細はこちら:相談会ページへ
香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。お気軽にお問い合わせください。
増加の理由を探る|少子化・未婚化・地域社会のつながりの希薄化がもたらす影響

なぜ今、「相続人不存在」が社会問題になるほど増えているのでしょうか?背景には人口構造の変化や地域の人間関係の希薄化があります。今回はその社会的要因に焦点を当てます。
目次
1.少子高齢化が相続に与える影響
2.未婚率・子なし世帯の増加
3.地域社会からの孤立と「発見の遅れ」
4.相続人不存在がもたらす不動産の管理問題
5.空き家・荒廃農地など社会的損失との関連
6.まとめ:家族の問題から社会の課題へ
1. 少子高齢化が相続に与える影響
日本は急速な少子高齢化社会に突入しています。総務省の統計によれば、65歳以上の人口は約3割を超え、今後も増加が見込まれています。
高齢者が増える一方で子ども世代が減少しているため、「相続人となる子や孫がいない」ケースが増えるのは自然な流れです。
従来であれば、子や孫が相続していた財産も、少子化により引き継ぎ手が存在せず「相続人不存在」となる事例が目立ってきています。
2. 未婚率・子なし世帯の増加
加えて、未婚化・晩婚化の進展も大きな要因です。
国勢調査によれば、生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合)は、男性で約25%、女性でも15%を超える水準に達しています。
・未婚 → 配偶者がいない
・子どもがいない → 直系の相続人がいない
・親兄弟もすでに他界 → 相続人不存在
こうした世帯が増えていることは、今後さらに「相続人不存在」が社会問題として顕在化していくことを示しています。
3. 地域社会からの孤立と「発見の遅れ」
昔は地域社会のつながりが強く、近隣住民が互いの生活状況を把握していました。ところが近年は都市部・農村部を問わず人間関係が希薄化し、単身高齢者が孤立しやすくなっています。
孤立によって起こる問題は2つです。
・相続人の存在確認が難しくなる
・死亡の発見が遅れる
「孤独死」の事例が増えているのも、この社会構造の変化を反映しています。相続の手続きが遅れ、結果的に財産管理が困難になるケースが増えているのです。
4. 相続人不存在がもたらす不動産の管理問題
相続人がいない場合、最も深刻化するのが「不動産の管理問題」です。
・誰も管理しない空き家が放置される
・登記名義が故人のままになり利用できない
・農地や山林が荒廃し、地域環境へ悪影響を及ぼす
このような不動産は法的に整理が難しく、自治体や近隣住民にとって大きな負担となります。
5. 空き家・荒廃農地など社会的損失との関連
相続人不存在は、単に「家族の問題」では終わりません。
放置された財産は、空き家問題や荒廃農地といった社会的損失につながります。
特に地方では、人口減少と相まって地域全体の景観や安全性に影響を与える深刻な課題となっています。
自治体は管理責任を問われる場面も増えており、地域社会全体の問題として対応が求められています。
6. まとめ:家族の問題から社会の課題へ
相続人不存在の増加は、
・少子高齢化
・未婚化・子なし世帯の増加
・地域社会の希薄化
といった社会構造の変化が背景にあります。
これは単なる個人や家族の問題ではなく、空き家・荒廃農地の増加、地域の安全や景観の悪化といった「社会全体の課題」として考える必要があります。
早めの生前対策や専門家への相談が、将来のトラブルや社会的損失を防ぐ第一歩となるでしょう。
(無料相談会のご案内)
生前対策・相続対策に関する無料相談は随時受付中です(完全予約制)。
📞 電話予約:087-873-2653
🌐 お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。
また、相続税対策・登記相談も含めた無料相談会も開催中です:
・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)
・詳細はこちら:相談会ページへ
香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。お気軽にお問い合わせください。
相続人不存在になった財産の行方|国庫帰属までの手続きの流れ

近年「相続人が誰もいない」ケースが増えており、放置された不動産や預貯金が社会問題となっています。相続人不存在が確定すると、その財産は最終的に国のもの(国庫帰属)となりますが、その過程には家庭裁判所による「相続財産管理人」の選任や公告など、複雑な手続きが必要です。本記事では、相続人不存在になった財産がどのように扱われ、国庫に帰属するまでの流れを司法書士の視点から解説します。
目次
1.相続人不存在とは何か
2.相続人不存在が判明したときの最初の対応
3.相続財産管理人の選任手続き
4.債権者や受遺者への弁済手続き
5.特別縁故者への財産分与制度
6.最終的に国庫へ帰属する流れ
7.相続人不存在の実務で注意すべき点
8.まとめ
1. 相続人不存在とは何か
相続人不存在とは、被相続人(亡くなった方)に法定相続人が存在しない状態を指します。
典型例は以下のような場合です。
・独身で子どももいないまま亡くなった
・配偶者・子どもがいたが全員が既に他界している
・戸籍上、親族が誰もいない
こうした場合、亡くなった方の財産を引き継ぐ人がいないため、民法の定めに従い「相続財産管理人」を通じて最終処理が行われます。
2. 相続人不存在が判明したときの最初の対応
実務上、相続人不存在かどうかを判断するには戸籍調査が不可欠です。
司法書士や弁護士が戸籍をたどり、法定相続人がいるかを確認します。
相続人がいないことが分かった場合、利害関係人(債権者や遺言執行者、市町村など)が家庭裁判所に「相続財産管理人選任の申立て」を行うことになります。
3. 相続財産管理人の選任手続き
相続財産管理人は、相続人不存在の財産を一時的に管理する役割を担います。
・家庭裁判所に選任申立てを行う
・裁判所が弁護士などを選任する
・選任後、官報に公告して債権者などに周知する
公告期間は少なくとも2か月以上とされ、利害関係人が名乗り出るチャンスが与えられます。
4. 債権者や受遺者への弁済手続き
公告期間中に債権者や受遺者(遺言によって財産をもらうことが定められていた人)が名乗り出た場合、相続財産管理人は財産を換価し、債務の弁済や遺贈の履行を行います。
これにより、被相続人の債務整理や遺言の実現が可能になります。
5. 特別縁故者への財産分与制度
相続人がいなくても、被相続人の生前に特別に関わりがあった人(例:長年同居していた内縁の妻、介護を担っていた親族以外の人など)は「特別縁故者」として財産の一部を受け取れる可能性があります。
特別縁故者は家庭裁判所に申立てを行い、裁判所が認めれば財産分与がなされます。
6. 最終的に国庫へ帰属する流れ
債権者・受遺者・特別縁故者への分与が終わっても、なお残余財産がある場合、その財産は国庫に帰属します。
・不動産 → 国有財産として国が管理
・預貯金 → 国の歳入として取り込み
これが「相続人不存在財産の国庫帰属」の仕組みです。
7. 相続人不存在の実務で注意すべき点
管理人選任の申立てには予納金が必要であり、数十から百万円規模になることもある
不動産は老朽化や管理不全が進んでいることが多く、管理人の負担が大きい
特別縁故者の申立てには期限(公告から3か月以内など)があるため迅速な対応が必要
8. まとめ
相続人不存在となった場合、財産はすぐに国庫へ帰属するのではなく、
・相続財産管理人の選任
・債権者・受遺者への弁済
・特別縁故者への財産分与
を経て、最終的に国に帰属する仕組みです。
こうした流れは一般の方には分かりにくいため、相続人がいない可能性がある財産については、早めに専門家に相談することがトラブル防止につながります。
(無料相談会のご案内)
生前対策・相続対策に関する無料相談は随時受付中です(完全予約制)。
📞 電話予約:087-873-2653
お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。
また、相続税対策・登記相談も含めた無料相談会も開催中です:
・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)
・詳細はこちら:相談会ページへ
香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。お気軽にお問い合わせください。
増え続ける「相続人不存在」ケースとは?背景と現状を司法書士が解説

近年、「相続人がいない」ために遺産が国庫に帰属するケースが急増しています。背景には少子高齢化や未婚化など社会構造の変化があります。本記事では、相続人不存在とは何か、どのように財産が扱われるのか、そして現状の問題点について司法書士がわかりやすく解説します。
目次
1.相続人不存在とは何か?
2.相続人不存在が判明した場合の財産の流れ
3.相続財産管理人の役割とは
4.国庫帰属に至るまでの仕組み
5.相続人不存在が増えている社会的背景
6.現状がもたらす課題とリスク
7.まとめ:相続人不存在を防ぐためにできること
1. 相続人不存在とは何か?
相続人不存在とは、被相続人(亡くなった方)に法定相続人が存在しない、または相続人が全員相続を放棄したために、相続を受ける人がいない状態を指します。
通常、相続は民法で定められた「法定相続人」に承継されます。例えば、配偶者、子ども、直系尊属(父母など)、兄弟姉妹がその順番に該当します。しかし、子どもがいない、親もすでに亡くなっている、兄弟姉妹もいない、というケースは決して珍しくありません。
さらに、法定相続人が存在しても「借金が多いため相続放棄する」という事情もあり、その結果、相続人不存在が生じることがあります。
2. 相続人不存在が判明した場合の財産の流れ
相続人不存在が判明すると、まずは家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てます。管理人は、残された財産を適切に管理・清算する役割を担います。
財産管理人が行う業務は以下の通りです。
・財産の調査・管理(不動産の維持管理、預貯金の把握など)
・債権者や受遺者への弁済
・特別縁故者への財産分与の手続き
これらを経ても財産が残る場合、最終的に国庫に帰属することになります。
3. 相続財産管理人の役割とは
相続財産管理人は、相続人不存在の場合に必ず登場する重要な存在です。
例えば、不動産を放置すれば荒廃して近隣住民に迷惑をかける可能性があります。また、預貯金や株式なども管理しなければ、利害関係人の権利が侵害されかねません。
そのため、相続財産管理人は家庭裁判所の監督のもとで、公告や債権者への弁済を進めます。公告期間を経ても相続人が現れなかった場合、次のステップに移行します。
4. 国庫帰属に至るまでの仕組み
相続人不存在の手続きは、次のステップで進みます。
・相続財産管理人の選任
・債権者や受遺者への弁済
・特別縁故者(被相続人の世話をしていた人など)への財産分与
それでも残った財産が国庫へ帰属
つまり、国庫帰属は「最後の受け皿」です。すぐに国庫へ移るのではなく、一定の手続を踏んでからの帰属となります。
5. 相続人不存在が増えている社会的背景
ここ数年、相続人不存在は急増しています。その理由は主に次の3点です。
少子高齢化
子どもを持たない世帯の増加、高齢者の単身世帯の増加により、相続人がいないケースが増加しています。
未婚化の進展
生涯未婚率が上昇し、配偶者や子どもを持たないまま亡くなる人が増えている点も大きな要因です。
地域社会のつながりの希薄化
かつては親族や地域で自然と支え合いが行われていましたが、現代では近隣や親族との関わりが薄れ、相続手続きが放置されやすくなっています。
実際、法務省や裁判所の統計によると、相続人不存在による国庫帰属財産の総額は年間1,000億円を超える水準で推移しており、「社会問題」ともいえる状況です。
6. 現状がもたらす課題とリスク
相続人不存在は単に「財産が国に渡る」だけの問題ではありません。いくつかの社会的リスクをもたらします。
空き家・放置不動産の増加
相続人がいない不動産は管理がされず、老朽化や不法投棄の温床となる可能性があります。
手続きの長期化
相続財産管理人の手続きは公告・弁済・分与を経るため、数年単位で時間がかかることもあります。
地域社会への影響
農地や山林が放置され、地域の環境や安全に悪影響を及ぼすケースも増えています。
このように、相続人不存在は個人の財産の問題を超えて、社会全体に波及する課題となっているのです。
7. まとめ:相続人不存在を防ぐためにできること
相続人不存在を完全に防ぐことは難しいですが、事前に備えることでリスクを減らすことは可能です。
例えば、遺言書を作成することで、自分の財産の行き先を明確にしておくことができます。あるいは、遺贈寄付という形で社会に役立てることもできます。
「相続人がいないから自分には関係ない」と思われがちですが、実際には相続放棄や親族関係の希薄化など、誰にでも関わる可能性のある問題です。早めの準備が、トラブル回避につながります。
(無料相談会)
生前対策・相続対策に関する無料相談は随時受付中です(完全予約制)。
📞 電話予約:087-873-2653
🌐 お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。
また、相続税対策・登記相談も含めた無料相談会も開催中です:
・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)
・詳細はこちら:相談会ページへ
香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。お気軽にお問い合わせください。
【第4回】信頼できる遺贈寄付とは何か?これからの制度設計と選ばれる仕組みの条件

「遺贈寄付をしたいが、どこに相談すればよいのか不安」「団体や士業によって言うことが違って迷ってしまう」──近年、こうした声が多く聞かれるようになりました。
遺贈寄付は社会貢献として極めて有意義な行為ですが、一方で相談体制や制度設計に未成熟な部分があり、中立性・信頼性の高い仕組みづくりが求められています。
この記事では、信頼できる遺贈寄付の条件を整理し、制度としてどのような方向を目指すべきかを考察します。相談者が安心して意思を実現できるよう、専門家や支援団体に求められる役割もあらためて見直していきましょう。
■ 目次
1.遺贈寄付における「信頼」とは何か
2.相談体制の中立性と透明性の重要性
3.今後の制度設計に求められるポイント
4.支援団体・専門家が果たすべき責任
5.相談者が自分でできるチェックポイント
6.まとめ:本当に安心できる遺贈寄付を目指して
1. 遺贈寄付における「信頼」とは何か
「信頼できる遺贈寄付」とは、相談者の意思が誤解なく正確に反映され、寄付先に適切に届くことを前提に、その過程が公正・透明である状態を指します。
重要なのは、相談者の立場に立った丁寧な情報提供と、多様な選択肢の提示です。特定の団体や専門家に利益が集中する構造では、真に中立な判断がなされにくくなります。
また、法的な観点からは、遺言書の有効性、遺留分の考慮、相続人との関係性なども複雑に絡みます。したがって、単なる「感情的な共感」や「社会貢献の理念」だけではなく、制度的・法的信頼性の裏付けが不可欠です。
2. 相談体制の中立性と透明性の重要性
信頼性のある仕組みには、中立な立場から助言を行う専門家の存在が欠かせません。たとえば、司法書士や弁護士、税理士などの国家資格者は、職業倫理と法的責任を伴って業務を行います。
しかし現在、一部の民間団体が自ら資格制度を設け、その資格者だけに案件を振り分けている実態もあります。これは情報の偏りや、選択肢の狭まりを招く可能性があります。
理想的には、団体や専門家が手を組む場合でも、以下のような透明性が担保されるべきです。
・相談過程の記録と開示
・費用体系の明示
・利益相反の事前説明
・セカンドオピニオンの推奨
これにより、相談者が自分の意思で判断できる環境が整います。
3. 今後の制度設計に求められるポイント
制度としての遺贈寄付を成熟させるためには、以下のような観点が重要です。
・公的ガイドラインの明確化:内閣府や法務省による実務向けの詳細マニュアルが必要
・士業間の連携強化:税務・法務・信託にまたがる課題を、連携して対応する体制づくり
・データベース化と認証制度の整備:信頼できる受け皿団体・士業・相談窓口のリスト化
・事後確認の仕組み:遺言執行後の寄付先・金額・使途報告を行う「事後モニタリング」の制度化
特に、公的第三者機関の存在が制度の信頼性を底上げするでしょう。現在は民間のモラルに任されている部分が多いため、一定の監督機能を持つ仕組みの整備が望まれます。
4. 支援団体・専門家が果たすべき責任
信頼される制度の構築には、支援団体や専門家の姿勢も大きく影響します。単なる集客や受任だけを目的とせず、相談者の意向を誠実に汲み取る姿勢が問われています。
また、「遺贈寄付をしたい」という希望には、人生の総括としての想いや、社会とのつながりを求める気持ちが込められています。それを一括りにビジネス化してしまえば、制度自体の信頼が損なわれます。
したがって、士業者や団体にとっても以下の点が求められます。
・中立性の確保
・透明な契約と費用提示
・継続的な説明責任の履行
・信頼できる第三者への協力依頼
5. 相談者が自分でできるチェックポイント
では、相談者が遺贈寄付を検討する際、どのような視点を持てば良いのでしょうか?以下のチェックリストが参考になります。
・その専門家は国家資格者か?
・「遺贈寄付」以外の選択肢についても説明を受けたか?
・契約書・遺言書の内容に曖昧な点はないか?
・説明された費用は明確か?
・家族や第三者の意見も聞ける体制か?
これらを意識することで、「本当に自分の意志に基づく遺贈寄付」かどうかを確認できます。
6. まとめ:本当に安心できる遺贈寄付を目指して
4回にわたり、遺贈寄付の現状、広がるニーズ、制度上の課題、ビジネス化の懸念、そして将来への展望をお伝えしてきました。
本来、遺贈寄付は人生の集大成とも言える行為です。それを適切に実現するには、「制度」「支援者」「情報」のすべてにおいて信頼性と中立性が担保されていることが不可欠です。
制度の側からはガイドラインやモニタリング体制の強化が、支援者の側からは透明性と倫理的な姿勢が、そして相談者自身には情報を見極める力と慎重な判断が、それぞれ求められています。
誰もが安心して遺贈寄付という選択ができる社会を実現するために、制度と実務の両面からの成熟がこれからの課題です。
※遺贈寄付という選択肢が、今後、相続で苦しむ方たちを救うことができる制度になれればいいと思い今回記事にまとめました。執筆時点は令和7年5月28日です。そこから半年ほどが経過していると思います。この記事が掲載された時点でどのようになっているのか、再度調査してみたいですね。
【第3回】遺贈寄付をめぐる制度とビジネスの境界線~資格ビジネス化する現場の実情とは

遺贈寄付という言葉が広く知られるようになり、社会貢献の手段としての選択肢が広がる一方、制度の未整備や情報の非対称性を背景に、「囲い込みビジネス」として機能するケースも出てきています。
たとえば、一部の団体が独自に作成した「内部資格」や「研修制度」によって専門性を演出し、会員を囲い込むモデルが広がっており、その結果、相談者に不利な選択肢が提示されるおそれも否定できません。
この記事では、制度化が進む中で浮き彫りになってきた遺贈寄付をめぐる新たな問題点に焦点を当てます。公正で透明な制度運用のために、今、何が求められているのかを一緒に考えてみましょう。
■ 目次
1.遺贈寄付の制度整備とその限界
2.民間団体が設ける「資格制度」とは何か
3.会員囲い込み型モデルの実態と構造
4.想定されるリスクと相談者の不利益
5.制度の公正性を確保するために必要な視点
6.まとめ:社会貢献とビジネスの境界線をどう引くか
1. 遺贈寄付の制度整備とその限界
遺贈寄付の注目度が高まる中で、国も一定の制度整備を進めています。たとえば、内閣府による「遺贈寄付に関するガイドライン」の策定、公益法人の透明化要請などです。
しかし、実際には制度が追いついておらず、特に相談者が正確な情報にアクセスしにくいことが問題となっています。
この隙間を埋める形で、民間の士業団体やNPOなどが独自のサービスを展開していますが、そのなかには、ビジネス色が強く出すぎてしまっているものもあるのが現状です。
2. 民間団体が設ける「資格制度」とは何か
近年よく見られるのが、ある団体が独自に作成した「遺贈寄付アドバイザー」や「遺言寄付カウンセラー」などといった内部資格制度です。
これらの資格は法的な根拠を持つものではなく、その団体の中でしか通用しないにもかかわらず、「専門家の証」としてアピールされることがあります。
資格取得のための講座は有料で、受講料・年会費・更新料などが設定されており、営利的な構造が強い点は見逃せません。
こうした内部資格の認定者を通じて遺言書作成や信託の相談を受け付け、囲い込みを図る仕組みが構築されている場合もあります。
3. 会員囲い込み型モデルの実態と構造
さらに深刻なのは、相談者の情報が団体内で回されてしまうことです。
たとえば、遺贈寄付希望者が団体に連絡をすると、内部資格を持つ会員に案件が紹介され、そこから遺言書作成や信託契約などのサービスに誘導されるケースがあります。
一見すると一貫したサポートに見えますが、その裏では「第三者のチェックが働かない」「相談者の比較検討の余地がない」といった不透明さがあります。相談者の立場からすれば、選択肢が提示されず、最初から囲い込まれている状態にあるともいえるのです。
4. 想定されるリスクと相談者の不利益
こうしたビジネスモデルに依存した仕組みには、以下のようなリスクがあります。
・中立性の欠如:特定の団体と関係する士業が関与することで、相談者にとって最善の選択肢が排除される可能性。
・費用の不透明性:相談の過程で複数の料金が発生するにもかかわらず、事前説明が不十分な場合がある。
・制度の私物化:社会的意義のある遺贈寄付が、実質的に特定団体のビジネス手段として扱われてしまう。
・信頼性の低下:業界全体に対する信用が揺らぎ、正当な活動をしている団体まで疑いの目を向けられる。
こうした不利益を防ぐためには、相談者自身が制度を理解し、必要に応じて中立な立場の専門家にセカンドオピニオンを求めることが重要です。
5. 制度の公正性を確保するために必要な視点
遺贈寄付の制度をより信頼されるものにするためには、以下のような視点が求められます。
・資格の透明性:内部資格と国家資格の違いを明確にし、誤認を避ける。
・利益相反の排除:団体と士業の間に一定の距離を保ち、過度な利害関係を回避する。
・相談者の選択肢の保証:団体に相談があった場合でも、複数の専門家の情報を提示する仕組みづくり。
・行政の関与:ガイドラインだけでなく、実務現場へのモニタリングや基準策定も視野に入れる。
6. まとめ:社会貢献とビジネスの境界線をどう引くか
遺贈寄付は、「人生の最後に社会へ恩返しをしたい」という善意に基づいた行為です。その思いを尊重するには、透明で中立的な制度設計と、相談者に寄り添う倫理観が欠かせません。
しかし、現実には制度の隙間にビジネス的な仕組みが入り込み、「遺贈寄付=囲い込み型サービス」というイメージが定着しかねない危うさも抱えています。
私たち一人ひとりが制度の仕組みを知り、良識ある判断を下すことが、遺贈寄付の信頼性を守る第一歩です。
次回(第4回)は、こうした課題の先にある「本当に信頼できる遺贈寄付の仕組み」や、今後求められる制度設計のあり方について考察していきます。
【第2回】遺贈寄付のやり方と注意点~遺言書の書き方から受け入れ団体の選び方まで

「遺贈寄付をしたいけれど、実際にはどうやって進めたらいいの?」
こうした声が増えてきています。遺贈寄付は、自分の財産を社会貢献に役立てる手段として注目されていますが、実現するには正確な遺言書の作成と適切な受け入れ団体の選定が必要です。
また、手続きの途中で専門家の関与が求められることもあり、自己判断だけではリスクを伴うケースもあります。今回は、遺贈寄付の具体的な進め方、必要な書類、注意すべき法律上のポイントなど、実務に即した内容を詳しく解説します。
■ 目次
1.遺贈寄付を実行するための2つの方法
2.遺言書の作成時に必要なこと
3.受け入れ団体の選び方と確認ポイント
4.実務上の流れと専門家の関与
5.注意すべきトラブルとリスク
6.まとめ:遺贈寄付を実現するには「準備」と「確認」がカギ
1. 遺贈寄付を実行するための2つの方法
遺贈寄付を行うには、基本的に「遺言書に寄付の内容を書く」ことが必要です。方法としては、大きく以下の2つに分かれます。
(1)遺贈(いぞう)としての寄付
遺言書に「○○団体に金○百万円を遺贈する」と記載する形式です。遺贈は相手方の承諾が必要で、団体側が受け入れを拒否することもできます。
(2)死因贈与契約
これは生前に寄付先と契約書を交わしておく方式です。契約であるため互いの合意が前提となり、遺言とは異なる性質を持ちます。
実務では、一般の方にとって扱いやすいのは「遺言による遺贈」です。ただし、内容に不備があると無効になる可能性もあるため、後述する注意点を理解しておく必要があります。
2. 遺言書の作成時に必要なこと
遺贈寄付を実現するための遺言書には、次の点を明確に記載する必要があります。
・寄付する相手の正式名称・法人格(例:公益財団法人〇〇)
・寄付の対象(現金、不動産、有価証券など)
・寄付の割合や金額(例:全財産の30%)
・受遺者が寄付を受けられない場合の予備的な処理方法(例:別団体に移す)
また、形式的にも「自筆証書遺言」よりも、「公正証書遺言」が安全です。
自筆証書遺言は形式ミスで無効になるケースが多いため、専門家に相談しながら作成することを強く推奨します。
3. 受け入れ団体の選び方と確認ポイント
遺贈寄付では、「どこに寄付するか」も非常に重要です。団体の理念や活動内容が自分の思いと一致しているか、以下の点をチェックしておきましょう。
・法人格を持っているか(任意団体には渡せない)
・受遺の意思を示しているか(公式サイトなどで確認)
・過去の寄付の使い道が明確か(報告書の公開状況)
・税制優遇の対象団体かどうか(公益認定法人など)
最近は、「遺贈寄付に特化した窓口」を用意している団体も増えています。電話やオンラインで相談ができるところも多いため、事前に意思疎通を図っておくと安心です。
4. 実務上の流れと専門家の関与
遺贈寄付を円滑に進めるためには、司法書士・弁護士・税理士などの専門家の支援が不可欠です。
とくに以下のような場面で関与が必要になります。
・遺言書の作成時(公証人との連携)
・不動産・有価証券の名義変更(司法書士)
・相続税申告・控除判断(税理士)
・相続人との調整・説明(弁護士や信託業者)
また、遺贈執行者の選任も大切です。これは、実際に遺贈寄付を実行してくれる代理人のような立場で、遺言の執行を担います。
自分の死後、遺志をしっかり形にしてくれる信頼できる人物や専門家に依頼することが望まれます。
5. 注意すべきトラブルとリスク
遺贈寄付は善意に基づく行為ですが、下記のようなトラブルが起こることもあります。
(1)相続人とのトラブル
遺贈によって相続財産が減ると、「遺留分侵害」として相続人から異議申し立てされる可能性があります。とくに、すべてを寄付する場合は慎重な判断が必要です。
(2)受遺者の受け入れ拒否
団体が破綻した、または受け入れ態勢が整っていないなどで、寄付を拒否されるケースもあります。その場合、財産が宙に浮くリスクもあるため、予備的な寄付先を設定しておくのが安全です。
(3)団体の信頼性に問題がある
中には、会員組織や民間団体の中で内部資格を設け、「相談料ビジネス」に誘導する例も見られます。寄付金が適切に使われないリスクもあるため、慎重な団体選びが不可欠です。
6. まとめ:遺贈寄付を実現するには「準備」と「確認」がカギ
遺贈寄付は、故人の思いを社会に残す素晴らしい手段ですが、適切な準備と専門的な確認が不可欠です。
遺言書の作成、受け入れ団体との事前調整、遺贈執行者の選任など、どの工程も「生前にこそ」進めておくべき重要なステップです。
次回(第3回)は、こうした制度の拡大とともに問題視され始めた「遺贈寄付をめぐる制度的な課題」や、「業界内での資格ビジネス化」について掘り下げていきます。
【第1回】遺贈寄付とは?注目される背景と高まるニーズをわかりやすく解説

「遺贈寄付って最近よく聞くけど、どういうもの?」
そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。遺贈寄付とは、亡くなった方の財産の一部または全部を、NPO法人や公益法人、学校法人などの団体に寄付する方法のことです。高齢化社会が進む中、老老相続やおひとりさまの増加といった背景から、社会に貢献したいという思いを遺贈という形で実現する人が増えています。
本記事では、遺贈寄付の基本的な仕組みと、なぜ今これほど注目されているのか、その背景をわかりやすく解説します。今後の相続や終活を考える上で、ぜひ知っておきたい選択肢のひとつです。
■ 目次
1.遺贈寄付とは何か?
2.なぜ今、遺贈寄付が注目されているのか
3.実際に増えている遺贈寄付の事例
4.遺贈寄付を検討する人が増えている理由
5.今後の社会と遺贈寄付の関係性
6.まとめ:遺贈寄付は「思い」をつなぐ相続の新しい形
1. 遺贈寄付とは何か?
遺贈寄付(いぞうきふ)とは、遺言書を通じて、自分の死後に財産を特定の団体に寄付する仕組みのことです。遺言書によって行われるため、生前には財産の移動は起こらず、被相続人の死後に実行されます。
遺贈寄付の受け手となるのは、一般的に以下のような団体です。
・公益財団法人・公益社団法人
・NPO法人(特定非営利活動法人)
・学校法人・社会福祉法人
・地方自治体
・特定の病院や研究機関
このような団体に対して、金銭・不動産・株式・預貯金・美術品などが寄付されます。
2. なぜ今、遺贈寄付が注目されているのか
かつては、遺言といえば「相続人同士のトラブルを防ぐために書くもの」と考えられてきました。
しかし近年、「社会の役に立つために遺言を書く」という価値観が少しずつ浸透してきています。
その背景には、以下のような社会的要因があります。
・老老相続の増加:親から子へではなく、80代から60代へという相続が増えており、「渡してもあまり意味がない」と考えるケースも。
・おひとりさま世帯の増加:相続人がいない、または疎遠という人が増加している。
・相続トラブルの回避:財産の分け方でもめるより、全額寄付してしまった方が円満というケースも。
・社会貢献意識の高まり:東日本大震災やコロナ禍などを契機に、「残りの財産を社会のために」という思いが強まった。
このように、「家族のための相続」から「社会のための遺贈」へと意識が変わりつつあるのです。
3. 実際に増えている遺贈寄付の事例
日本財団の発表によると、遺贈寄付の相談件数は年々増加しており、2023年には過去最多となりました。また、大手病院や大学でも、故人の遺志による研究資金や奨学金の原資として遺贈を受け入れる体制が整ってきています。
たとえば──
・地方で医師不足に悩む病院に医療機器を寄付
・自分が卒業した学校へ奨学金を設立
・犬猫保護団体に遺贈し、終生飼養費を寄付
など、遺贈の形は実にさまざまです。「自分が育ててもらった社会に恩返しをしたい」という声も多く聞かれます。
4. 遺贈寄付を検討する人が増えている理由
「相続人がいない」「渡すべき人がいない」という状況はもちろん、「財産を通じて自分の生きた証を残したい」という想いが遺贈寄付を後押ししています。
また最近では、遺贈寄付に関する無料相談窓口やパンフレットの配布が広がり、情報入手のハードルが下がっています。さらに、相続税の節税につながる可能性もあり(※一定条件あり)、税理士や司法書士などの専門家もこの選択肢を紹介する機会が増えています。
5. 今後の社会と遺贈寄付の関係性
2024年時点で、日本の高齢者人口は約3,600万人を超え、団塊世代が後期高齢者に突入しています。この「多死社会」の中で、今後10~20年にわたって莫大な資産が次世代へ移転される「大相続時代」が始まります。
この資産移転が、すべて家族に渡るのではなく、一部でも社会に流れることで──
・子どもの貧困支援
・地域医療の充実
・動物保護・環境対策
・災害復興基金の充実
など、多様な社会課題の解決に寄与する可能性があります。
遺贈寄付は、相続制度が持つ「個人から個人」への資産移転だけでなく、「個人から社会」への新たな資産循環の形を提供し始めているのです。
6. まとめ:遺贈寄付は「思い」をつなぐ相続の新しい形
遺贈寄付は、単なる財産の移転ではなく、「自分が大切にしていた価値観」や「生き方そのもの」を後世に引き継ぐ行為です。社会貢献や公共性を持った相続のあり方として、今後ますます注目されることは間違いありません。
第2回では、実際に遺贈寄付を行う方法や注意点について、法律・相続の観点から解説していきます。
【第5回・最終回】司法書士が語る「生前対策」総まとめ 遺言・後見・不動産…後悔しないために今すべきこととは?

「相続のことで揉めたくない」「もし認知症になったらどうなるのか不安」「自分が亡くなった後、家族に迷惑をかけたくない」――そんな思いを抱く方は少なくありません。
しかし、遺言や成年後見制度、不動産の名義整理など、実際に何をすればいいのか分からないという声も多く聞かれます。
そこで本記事では、司法書士の視点から、相続や認知症に備えるための「生前対策」を総合的に解説。
これまでの連載で取り上げたテーマを整理しながら、「何から始めればいいか」が分かる内容となっています。
目次
1.生前対策とは?──目的を明確にする
2.「遺言」は最強のトラブル予防ツール
3.「成年後見制度」と「任意後見契約」の違い
4.不動産の名義と管理にまつわる注意点
5.デジタル遺産への備えも必要
6.専門家を味方につけた進め方
7.まとめ:今日からできる第一歩とは
1. 生前対策とは?──目的を明確にする
「生前対策」とは、自分の死後や判断能力が衰えたときに備え、法的・財産的な問題を未然に防ぐための準備です。
大きく分けると以下の3つに分類されます。
・相続対策(遺言書の作成、財産の分け方の指定など)
・認知症対策(成年後見制度、家族信託など)
・財産管理対策(不動産や預貯金、デジタル資産の整理など)
まずは「何を目的に対策をするのか」を明確にすることで、手段の選択を誤らずに済みます。
2. 「遺言」は最強のトラブル予防ツール
遺言がないと、遺産は法定相続人全員で分け合う「遺産分割協議」が必要となります。これが相続トラブルの原因になりやすいポイントです。
遺言書があれば、基本的にその内容が優先され、争いが起きにくくなります。
● 遺言でできること:
・財産の分け方の指定(例:長男に自宅、次男に預金など)
・法定相続人以外への財産の遺贈(例:内縁の妻や孫など)
・遺言執行者の指定
・祭祀承継者の指定(お墓の管理など)
形式や内容を誤ると無効になるため、公正証書遺言を司法書士とともに作成するのが確実です。
※ただし、推定相続人と意思疎通のない遺言書について、効力発生時にトラブルになる可能性があります。意思疎通できるなら必ず遺言書作成時に意思疎通しましょう。
3. 「成年後見制度」と「任意後見契約」の違い
認知症になってからでは、契約や財産管理が困難になります。
そこで活用されるのが「成年後見制度」ですが、以下のように2つの制度があります。

任意後見は、本人の意思で信頼できる人に財産管理を任せることが可能です。
一方、法定後見は家庭裁判所主導で進むため、自由度はやや下がります。
4. 不動産の名義と管理にまつわる注意点
不動産は「動かせない財産」であり、遺産分割が難航する要因になりやすいです。
・名義が故人のままだと売却・賃貸・担保設定ができない
・共有名義は管理・処分に制約が多い
・認知症になった場合、法定後見が必要で売却困難に
生前に名義変更や売却、または家族信託で管理権限を分けておくなどの工夫が必要です。
5. デジタル遺産への備えも必要
第4回で詳述した通り、仮想通貨、ネット銀行、クラウドサービス、SNSなどのデジタル資産は、相続時に問題が起こりやすい分野です。
対策としては、
・利用中のサービスを一覧化する
・パスワードの保管場所を決める
・アカウントの処理方針を遺言で記載する
といった情報整理が不可欠です。
6. 専門家を味方につけた進め方
生前対策は、制度の知識だけでなく、法的・実務的な理解が必要な領域です。
・遺言 → 司法書士・弁護士
・不動産 → 司法書士・土地家屋調査士
・認知症対策 → 司法書士・社会福祉士
・相続税対策 → 税理士
特に司法書士は、「遺言・後見・登記」など生前対策の中核を担う存在です。
個人の状況に合わせて最適な制度を選び、必要な書類や登記手続きをトータルで支援できます。
7. まとめ:今日からできる第一歩とは
生前対策は「元気なうちにこそ始めるべき」ものです。
今できる第一歩として、以下の3点を実行してみましょう。
1. 財産の棚卸し(預金・不動産・デジタル資産)
2 .家族構成と人間関係の整理(相続人、関係の有無)
3. 司法書士など専門家への相談予約
準備は、「誰かのため」ではなく**"自分自身の安心"のために行うもの**です。
今日からできる小さな一歩が、将来の大きな安心につながります。
【第4回】知らなかったでは済まされない? デジタル遺産と相続トラブルのリアル

相続の現場で近年深刻化しているのが「デジタル遺産をめぐるトラブル」です。ネット銀行、仮想通貨、電子マネー、SNSアカウント——生前に整理されないまま残されたこれらの資産や情報が、遺族間の争いの火種になることも少なくありません。
「そもそもどこに何があるのか分からない」「IDやパスワードが分からずログインできない」「仮想通貨が消失した」など、デジタル資産ならではの相続問題が急増しており、法律上の課題も多く存在します。
本記事では、相続の際に起こり得るデジタル遺産に関する法的トラブルとその予防策について、具体的に解説します。
目次
1.デジタル遺産にまつわる典型的な相続トラブルとは
2.ID・パスワードが分からない場合の法的対応
3.仮想通貨の消失と所有権の証明問題
4.SNSやクラウド上の情報と「人格権」問題
5.民法上の「相続財産」として扱えるか?
6.事前対策としての遺言・委任契約の活用
7.専門家に相談すべき場面とは
8.まとめ:法律とデジタルの"すき間"を埋めるには
1. デジタル遺産にまつわる典型的な相続トラブルとは
相続人が複数いる場合、「どこにどれだけ資産があるか分からない」ことが、争いの元になります。特にデジタル資産は目に見えず、通知も紙で来ないため、相続人の一部だけが把握していると、「隠し財産だ」「故意に伝えていない」などといった疑念を招くことがあります。
例:
・仮想通貨ウォレットの存在に一部の相続人だけが気づき、他の相続人と対立
・LINE Payの残高が口座に入金されないまま失効
・サブスク料金の未払いが続き、クレジットカードに請求される
2. ID・パスワードが分からない場合の法的対応
デジタル資産にアクセスするには、IDとパスワードが必須ですが、それが分からない場合、第三者である遺族が勝手にログインすることは原則として法律に触れる可能性があります。
民法では相続財産は包括的に相続されますが、利用規約や不正アクセス禁止法との関係が複雑です。他の相続人と共同して対応してください。
● 実務上の対応:
・サービス提供会社に「相続人としての開示請求」を行う(戸籍・遺言書などが必要)
・弁護士を通じて正式に照会を行うケースも
・IDやログイン履歴から、残高照会だけでもできる場合もある
3. 仮想通貨の消失と所有権の証明問題
仮想通貨(暗号資産)は、「ウォレットの秘密鍵」や「アカウントの2段階認証コード」がないとアクセス不能になります。これが分からないまま放置されると、数十万~数百万円分の資産が実質的に"消失"することも。
さらに、所有していたことを証明するには、ログイン履歴や送金記録などが必要ですが、取引所が閉鎖されていたり、過去の記録が手元にないと証明が難しくなります。
4. SNSやクラウド上の情報と「人格権」問題
Facebook、Instagram、Twitter(X)などのSNSアカウントや、クラウド上に保管された写真・日記・記録類などの扱いも課題です。
これらは金銭的価値よりも、「亡くなった本人の人格にかかわる情報」として削除か保存かで家族が対立することも。
・本人が遺したい意向が不明な場合、親族内で意見が分かれる
・他人の個人情報が含まれていると、保存・公開でプライバシー侵害のリスクも
・クラウド有料契約の解約忘れによる課金トラブルも発生しやすい
5. 民法上の「相続財産」として扱えるか?
民法上、相続財産は「財産的価値のあるもの」が対象ですが、暗号資産や電子マネー、ポイントなどは一律に相続できるわけではありません。
・仮想通貨:法的には相続財産に該当(ただし実質的にアクセスできないと意味がない)
・電子マネー:利用規約で「相続不可」とするサービスも(例:楽天ポイント等)
・サブスク:名義人限定の契約が多く、原則として契約終了
つまり、「相続できる」かどうかは、法律と利用規約の両方を確認する必要があります。
6. 事前対策としての遺言・委任契約の活用
これらの法的リスクを軽減するには、生前の対策が不可欠です。
・遺言書:暗号資産やネット口座の存在、分配方法を明記しておく
・任意後見契約:認知症などで判断力が落ちたときのアクセス権限を委任
・秘密鍵・パスワードの保管先を明示:紙で残す/信託型サービスを利用するなど
また、遺言に「特定のクラウドサービスを解約してよい」と記しておけば、家族が判断に迷うことも少なくなります。
7. 専門家に相談すべき場面とは
以下のようなケースでは、司法書士や弁護士、ITリテラシーのある税理士など、専門家の力を借りるのが確実です。
・仮想通貨の存在は分かっているがアクセスできない
・SNSアカウントを削除したいが、手続きが分からない
・他の相続人と資産の取り扱いで意見が対立している
・サービス提供会社との交渉が必要
デジタル資産の相続は、法的知識と実務知識の両方が求められます。経験豊富な士業の関与が、解決の近道になることも多いのです。
まとめ:法律とデジタルの"すき間"を埋めるには
デジタル遺産に関する相続トラブルは、「知らなかった」「想定外だった」で済まされない事態を招く可能性があります。
とくに、相続人の間で知識の差や情報格差がある場合、疑念や不信が大きな争いに発展することも。
だからこそ、生前のうちに:
・情報を見える化し
・アクセス手段を残し
・法的根拠となる書類(遺言や契約)を用意する
ことが、ご自身にもご家族にも安心をもたらします。
次回(第5回/最終回)は、**司法書士による「生前対策としての不動産・遺言・後見の総まとめ」**をお届けします。
【第3回】「こんなはずじゃ…」を防ぐ!相続で困らないためのデジタル遺産・生前整理術 ~ネット銀行、仮想通貨、サブスク…今からできる7つの備え~

近年、ネット完結型の金融サービスやサブスクリプションの普及により、「デジタル遺産」の相続問題が急増しています。特に、ネット銀行や仮想通貨、クラウドサービスの契約情報は紙の通帳も郵便も残らず、家族に気づかれないまま放置・消滅するリスクがあります。
「自分が亡くなった後、家族が困るのではないか」と心配している方は、生前の備えがとても重要です。
この記事では、相続トラブルを防ぐために、生前から取り組める「デジタル遺産整理」の実践方法を7つご紹介します。
目次
1.デジタル遺産とは?生前整理の必要性
2.財産リストを作成する(紙またはデジタル)
3.ログイン情報の管理・共有方法
4.サブスクリプション契約の整理
5.クラウド・ストレージの使い方と整理方法
6.家族への伝え方の工夫
7.任意後見・遺言書との連携
8.まとめ:整理は「自分のため」「家族のため」
1. デジタル遺産とは?生前整理の必要性
「デジタル遺産」とは、ネット上に存在する資産や権利、契約情報のことを指します。例としては以下のようなものがあります:
・ネット銀行・ネット証券の口座
・仮想通貨(暗号資産)
・PayPay・LINE Payなどの残高
・有料サブスクリプション契約(Netflix、Apple Musicなど)
・クラウドストレージ(Google Drive、iCloud、Dropboxなど)
・SNSアカウントや電子書籍などの非金銭的資産
これらは**通帳も請求書も届かないため、遺族に気づかれず消失することも珍しくありません。**だからこそ、生前から「見える化」しておく必要があります。
2. 財産リストを作成する(紙またはデジタル)
まず第一にやるべきは、財産の一覧を作ることです。
ネット銀行や暗号資産などは、銀行名や取引所名だけでも記録しておくと、相続人がスムーズに調査できます。
【財産リストの例】

形式は手書きでもExcelでも構いませんが、定期的に更新し、存在を家族に伝えることが重要です。
3. ログイン情報の管理・共有方法
ネットサービスにはログインIDとパスワードが不可欠ですが、「家族にすべて教える」のは心理的ハードルが高いものです。そこで活用したいのが以下の方法です:
● パスワード管理アプリ
1Password、KeePass、LastPassなどのアプリにすべて登録し、マスターパスワードだけを家族に伝えることで、一定のプライバシーを保ちながら共有が可能です。
● 紙のリスト+封筒保管
IDとパスワードを書いたリストを封筒に入れて信頼できる人に預ける、または自宅金庫に保管する方法も。
「死後開封可」「○○の机の引き出しにある」などのメモを残しておくと確実です。
※エンディングノートなどにまとめておくと便利です。
4. サブスクリプション契約の整理
サブスクは放置すると、死亡後も自動的に課金が続きます。
特にApple IDやGoogleアカウントに紐づいているものは、家族がすぐに解約できないことも多いため、契約一覧を作っておくことが有効です。
また、「使っていないサブスクは今のうちに解約する」こと自体が整理にもなり、節約にもなります。
5. クラウド・ストレージの使い方と整理方法
Google DriveやiCloudなどに「大切な書類」「契約書のスキャンデータ」などを保存している方は、フォルダを分かりやすく整理し、「ここを見るとわかる」状態にしておくと安心です。
例:
「財産_一覧.xlsx」
「遺言書(下書き).pdf」
「暗号資産_口座情報」
Googleには「アカウント無効化管理ツール」という機能があり、一定期間ログインがなかった場合に、指定の家族へ通知・共有ができる仕組みがあります。
6. 家族への伝え方の工夫
「死ぬ準備をしていると思われたくない」「あまり重くならずに伝えたい」——そんな方は、「もしもの時ファイル」「デジタル遺産ノート」などを作り、"家族へのメッセージ"として伝える形が有効です。
例えば、
・スマホに「デジタル資産ノート」という名前で保管
・エンディングノートの1ページにネット口座のメモを記載
・「メールが来たら開けて」などの伝言をしておく
など、小さな一歩でも大きな助けになります。
7. 任意後見・遺言書との連携
認知症や突然の事故に備えて、任意後見契約や遺言書に「デジタル資産に関する条項」を盛り込んでおくと、相続人がスムーズに手続きできるようになります。
・遺言書に「ネット証券は○○証券で、IDは〇〇、パスワードは別紙参照」と明記
・任意後見人に「ネット口座の管理権限」も委任
・成年後見制度と連動して、クラウドにアクセスする権限を確保
など、司法書士に相談しておくことで、"見落とされない財産"として明文化できます。
まとめ:整理は「自分のため」「家族のため」
デジタル遺産の生前整理は、単に家族のためだけでなく、自分自身の人生や資産を見直す良い機会でもあります。
・財産の全体像が把握できる
・不要な契約を見直せる
・いざという時に家族が困らない
今やっておけば、「いざ」という時に"ありがたかった"と言われる備えになります。
次回(第4回)は、**「デジタル遺産と法的トラブル」**をテーマに、家族間での争いや、アクセスに関する法律問題、放置された資産の消滅リスクなどを詳しく解説します。
【第2回】相続発生後に“見えないデジタル遺産”を調査する方法7選 ~ネット銀行、仮想通貨、サブスク…「手がかりゼロ」でも諦めない~

相続が発生した後、相続人が直面するのが「財産の全体像が把握できない」という問題です。
特に近年では、ネット銀行や仮想通貨、オンライン証券、各種サブスクリプションなど、通帳や書類が一切ないデジタル遺産(デジタル資産)の存在が、相続手続きを困難にしています。
では、故人が遺したネット完結型のサービスや資産の存在を、どのように調査・把握すれば良いのでしょうか?
本記事では、相続発生後にデジタル遺産を調べるための現実的な手段を7つ紹介し、相続人として取るべき行動を具体的に解説します。
目次
1.遺品(スマホ・PC)をまず確保
2.メール・アプリ履歴の確認
3.クレジットカード利用明細から手がかりを探す
4.通知メールやクラウドの検索
5.家族へのヒアリング
6.信用情報の開示請求
7.プロによるデジタル調査支援の活用
8.まとめ:情報は"点"から"線"へつなぐ
1. 遺品(スマホ・PC)をまず確保
最も重要なのは、故人のスマートフォンやパソコンをできる限り早く確保することです。ネット銀行や証券会社、暗号資産などの資産は、ログイン情報が残されたデバイスにしかヒントがないことが多いため、初期段階で他の親族に処分されたり、ロック解除できずに諦めてしまうと、調査が著しく困難になります。
※注意:デバイスのロック解除については、相続人としての正当な理由があれば、メーカーへの申請や、裁判所を通じた手続きが可能なケースもあります。
2. メール・アプリ履歴の確認
スマホやパソコンの中にあるメールアカウント(Gmail、Yahoo!メールなど)を開き、「〇〇銀行」「楽天証券」などのキーワードで検索すると、利用履歴が出てくる可能性があります。
また、スマホ内のアプリ一覧を確認すると、
・ネットバンク(例:楽天銀行アプリ)
・決済アプリ(例:PayPay、LINE Pay)
・サブスク管理アプリ
などがインストールされていれば、利用していた可能性が高まります。
3. クレジットカード利用明細から手がかりを探す
相続人であれば、クレジットカード会社に対して故人の利用明細を請求することができます。
明細書を精査することで、
・サブスク(月額引き落とし)
・ネット銀行へのチャージ
・暗号資産の購入履歴
などが見つかる場合があります。
また、「Apple.com」「Google」「Amazon」「Coincheck」などの名称が明細にある場合、関連するアカウントの存在を疑ってみる必要があります。
4. 通知メールやクラウドの検索
スマホやPCでログイン済のGoogleアカウントやApple IDがあれば、
・Gmail、iCloudメールの内容
・GoogleドライブやDropboxのファイル一覧
・Appleの「サブスクリプション」設定画面
などから、契約中のサービスや保有資産の情報を探ることができます。
特にDropboxやGoogle Driveには、契約書やログイン情報を保管している方も多く、財産の手がかりとなる情報が眠っている可能性があります。
5. 家族へのヒアリング
近年は「子どもにネット資産の話をしていない」「パスワード管理アプリを使っていたが、その存在すら家族が知らない」などのケースが増えています。
故人と頻繁に連絡を取っていた家族や知人に、
「何かネットサービスの話をしていたか?」
「スマホの使い方で何か特徴があったか?」
をヒアリングすることは、予想外のヒントになることがあります。
また、郵送物がないとはいえ、年に一度だけ届く「株主総会の通知」「税金関係の書類」などが手がかりになることも。
6. 信用情報の開示請求
相続人は、信用情報機関に対して「故人の信用情報の開示請求」を行うことができます。これにより、
・保有していたカードローンやクレジットカードの情報
・引き落とし先の銀行名
などが分かる場合があり、そこから間接的に他の口座や資産へたどり着く手がかりになります。
【主な信用情報機関】
CIC(https://www.cic.co.jp/)
JICC(https://www.jicc.co.jp/)
7. プロによるデジタル調査支援の活用
どうしても情報が見つからない場合は、デジタル遺品調査を専門とする業者や、相続に詳しい司法書士・弁護士に相談するという手段もあります。
中には「スマホのデータ解析サービス」や「パスワード解析サポート」を提供する専門企業もあります。
※ただし、法的な許可・相続人としての立場が明確であることが前提です。
また、司法書士や弁護士は、法的手続きを通じて銀行や証券会社への照会を行えるため、「どこに問い合わせていいか分からない」状態でも調査が可能になります。
8. まとめ:情報は"点"から"線"へつなぐ
デジタル遺産の調査は、従来の通帳や証券のように一目で分かるものではなく、「点在する小さな手がかり」を拾い上げ、それを"線"としてつなぐ推理的な作業です。
・スマホやパソコン
・メール履歴やクラウド
・クレカ明細や信用情報
これらの情報を組み合わせていくことで、見落とされがちな財産にたどり着くことができます。
次回(第3回)は、「事前にやっておけばよかった」後悔を防ぐための生前対策について取り上げます。
相続人に迷惑をかけないため、今からできる準備の実践的なヒントをお届けします。
【第1回】デジタル時代の相続に潜む“見えない遺産”とは ~サブスク、ネット銀行、暗号資産…相続財産の全貌がつかめない時代~

インターネットが生活に浸透した現代、相続財産の中身も大きく様変わりしています。
かつては預貯金や不動産、株式といった"目に見える"資産が中心でしたが、近年では通帳も契約書類もない「ネット完結型」の資産――すなわちデジタル遺産(デジタル資産)が急増しており、相続時の財産調査や手続きが非常に困難になりつつあります。
本記事では、デジタル資産が相続手続きにおいてどのような課題を生むのかを事例とともに紹介し、見落とされがちな"見えない遺産"の現実に迫ります。
これからの相続対策を考えるうえで、避けては通れないテーマです。
目次
1.デジタル遺産とは何か?
2.急増する「ネット完結型サービス」
3.通帳も郵送物もない=気づけない
4.よくある見落とし事例
5.相続トラブルの温床に
6.まとめ:デジタル遺産こそ可視化が必要
1. デジタル遺産とは何か?
デジタル遺産(またはデジタル資産)とは、パソコンやスマートフォンを通じて利用されている、インターネット上の財産や契約情報のことを指します。主なものとしては、以下のようなものが挙げられます。
・ネット銀行の預金口座(例:楽天銀行、住信SBIネット銀行)
・証券会社のネット口座(SBI証券、楽天証券など)
・仮想通貨(ビットコイン、イーサリアムなど)
・サブスクリプション型の契約(Netflix、Apple Music、Amazon Primeなど)
・オンライン決済サービス(PayPay、楽天Payなど)
・クラウドストレージ(Google Drive、Dropboxなど)
これらの資産や契約情報は、紙の通帳や契約書では管理されず、すべてオンライン上に完結していることが特徴です。
そのため、本人以外が存在を把握することが極めて難しくなっています。
2. 急増する「ネット完結型サービス」
近年、金融機関・エンタメ・ライフスタイル全般において、「紙をなくす」「店舗に行かなくていい」ことが利便性とされ、ネット完結型のサービスが主流となっています。
特に以下のようなジャンルでは、もはや紙の証拠が一切残らないケースも珍しくありません。
・給与の振込先をネット銀行に設定していた
・クレジットカードの明細はすべてWeb明細
・資産運用はネット証券+ロボアドバイザー(ウェルスナビなど)
・写真や書類の保存はGoogleフォトやiCloud
このような資産や契約は、「本人のIDとパスワード」にアクセスできなければ、そもそも存在に気づけないという特徴があります。
3. 通帳も郵送物もない=気づけない
従来の相続手続きでは、通帳や証券、郵便物などから財産の存在を特定することが一般的でした。しかしネット完結型サービスは、郵送物すら届かないことが多く、部屋をいくら整理しても何も出てこない=相続人が存在を把握できないという事態になりがちです。
例:
・楽天銀行の口座はスマホアプリだけで完結。紙の通帳もキャッシュカードもない。
・PayPayや楽天Payの残高もアプリ上のみで確認可能。
また、AppleやGoogleのサブスクサービスは、自動更新され続けてカード引き落としが続くケースもあり、死亡後に知らずに数か月〜数年経過してから家族が気づくこともあります。
4. よくある見落とし事例
以下は、実際の相談や事例としてよくあるものです:
【仮想通貨の消失】
ビットコインを保有していたが、取引所も端末も不明でアクセス不能に。時価数百万円が事実上の喪失。
【放置された証券口座】
楽天証券にある株式が発見されず、配当金も未請求のまま数年経過。相続税の申告漏れにも。
【有料サブスクの放置】
亡くなった父のAmazonプライム、DAZN、iCloudが自動更新され続け、クレジットカードが止まるまで気づかず。
【クラウド内の遺言書】
遺言書がDropboxに保管されていたが、家族がログインできず無効扱いに。
5. 相続トラブルの温床に
デジタル遺産の存在に気づけなかったことで、次のようなトラブルに発展することがあります。
・相続人間で「財産を隠しているのでは?」と疑念が生まれる
・相続税申告が不完全になり、後日追徴課税が発生
・相続放棄をしたのに後日ネット資産が発見される(=放棄の再考が必要)
・資産が発見されてもアクセス不能で換金できない
司法書士や税理士など専門家に相談しても、「物理的に存在を証明するものがない」と、法的な手続きにも限界があります。
6. まとめ:デジタル遺産こそ可視化が必要
これからの時代、デジタル遺産の把握と管理は、相続をスムーズに進めるための重要なカギとなります。
・親世代のデジタル利用の実態を家族で共有すること
・生前の段階から「見える化」する工夫が求められること
・司法書士や専門家の力を借りながら、「紙に残らない資産」に目を向けること
次回は、相続発生後に「見えない遺産」をどうやって調査するか――現実的な手法を7つ紹介します。相続人になったとき、または将来の相続対策を考える方にとって、必見の内容です。
【第5回】“じまい”の手続きガイド 〜墓・空き家・山林の進め方と注意点〜

「墓じまい 手続き 流れ」「空き家 解体 手続き」「山林 売却 手続き」など、"じまい"に関する手続きについて検索される方が増えています。
実際、墓じまいや空き家の解体、山林の売却にはどのような手続きが必要なのでしょうか?
この記事では、それぞれの"じまい"に必要な手続きの流れと注意点について詳しく解説します。
■ 目次
1.墓じまいの手続きと注意点
2.空き家解体の手続きと注意点
3.山林売却の手続きと注意点
4.共通する注意点とアドバイス
5.まとめ:計画的な進行と専門家の活用が鍵
1. 墓じまいの手続きと注意点
墓じまいは、以下の手順で進めるのが一般的です。
・親族間での同意を得る
墓じまいを進める前に、親族との話し合いを行い、同意を得ることが重要です。
・墓地管理者への相談
現在の墓地の管理者に墓じまいの意向を伝え、必要な手続きや書類について確認します。
・新しい納骨先の決定
改葬先となる納骨堂や霊園を選び、受け入れ証明書を取得します。
・改葬許可申請書の提出
市区町村役場に改葬許可申請書を提出し、改葬許可証を取得します。
・閉眼供養の実施
僧侶により閉眼供養を行い、遺骨を取り出します。
・墓石の撤去と墓地の返還
石材店に墓石の撤去を依頼し、墓地を原状回復して返還します。
・新しい納骨先への納骨
改葬先に遺骨を納骨し、供養を行います。
注意点:
・改葬許可申請には、埋葬証明書や受け入れ証明書が必要です。 (参照 やしろ 公式サイト はじめてのお墓ガイド | 霊園・墓地のことなら「いいお墓」)
・離檀料や閉眼供養のお布施など、費用が発生する場合があります。(参照 はじめてのお墓ガイド | 霊園・墓地のことなら「いいお墓」)
2. 空き家解体の手続きと注意点
空き家の解体は、以下の手順で進めます。
・現地調査と見積もりの取得
解体業者に現地調査を依頼し、見積もりを取得します。
・解体業者との契約
見積もり内容を確認し、解体業者と契約を締結します。
・必要な届け出の提出
建設リサイクル法に基づく届け出や、道路使用許可申請などを行います。
・ライフラインの停止手続き
電気・ガス・水道などのライフラインの停止手続きを行います。
・近隣住民への挨拶
解体工事前に、近隣住民への挨拶を行い、工事内容や期間を説明します。
・解体工事の実施
解体業者による解体工事を実施します。
・建物滅失登記の申請
解体後、法務局に建物滅失登記を申請します。
注意点:
解体工事の届け出は、工事着手の7日前までに行う必要があります。 (参照 SKD不動産 岡山で解体なら株式会社ACTIVE(アクティブ) 空き家活用)
アスベストが使用されている場合、別途処理費用が発生する可能性があります。
3. 山林売却の手続きと注意点
山林の売却は、以下の手順で進めます。(参照 最良鑑定+1相続税の相談なら佐藤和基税理士事務所+1)
・所有権や境界の確認
登記簿や公図を確認し、所有権や境界を明確にします。
・不動産会社への査定依頼
山林の売買に精通した不動産会社に査定を依頼します。
・媒介契約の締結
査定結果に納得したら、不動産会社と媒介契約を締結します。
・買主との売買契約
買主が見つかれば、売買契約を締結します。
・所有権移転登記の申請
法務局に所有権移転登記を申請します。
注意点:
山林の境界が不明確な場合、境界確定測量が必要になることがあります。
山林の売却には、森林法や農地法などの規制が関係する場合があります。(参照 一般社団法人日本不動産管財 リビンマッチ)
4. 共通する注意点とアドバイス
・早めの準備と情報収集
"じまい"の手続きは時間がかかる場合があるため、早めに準備を始め、必要な情報を収集しましょう。
・専門家への相談
手続きが複雑な場合は、行政書士や司法書士、不動産会社などの専門家に相談することをおすすめします。
・家族との話し合い
"じまい"の手続きは家族にとって重要な問題です。家族と十分に話し合い、合意を得ることが大切です。
5. まとめ:計画的な進行と専門家の活用が鍵
墓じまい、空き家解体、山林売却などの"じまい"の手続きは、それぞれに特有の手順と注意点があります。
計画的に進めることで、スムーズに手続きを完了させることができます。また、専門家のサポートを受けることで、手続きの負担を軽減することが可能です。
"じまい"を検討されている方は、早めに準備を始め、必要な情報を収集し、家族と話し合いながら進めていくことをおすすめします。
【第4回】“じまい”の費用はいくら? 相場と費用分担のポイント 〜墓・空き家・山林の処分費用と、家族で揉めないためのコツ〜

「墓じまい 費用 相場」「空き家 解体 費用」「山林 処分 費用」など、"じまい"に関する費用について検索される方が増えています。
実際、墓じまいや空き家の解体、山林の処分にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
この記事では、それぞれの"じまい"にかかる費用の相場や内訳、費用分担のポイントについて詳しく解説します。
■ 目次
1.墓じまいの費用相場と内訳
2.空き家解体の費用相場と注意点
3.山林処分の費用と維持費
4.費用分担で揉めないためのポイント
5.まとめ:早めの準備と家族の話し合いが鍵
1. 墓じまいの費用相場と内訳
墓じまいにかかる費用は、一般的に30万円〜300万円程度が目安といわれています。
金額に大きな差がある理由は、どう改葬するかによって必要な費用が変わってくるからです。
主な内訳は以下の通りです:
・墓石の撤去費用:10万円〜30万円程度
・閉眼供養(お布施):3万円〜5万円程度
・離檀料:5万円〜20万円程度
・改葬先の費用:30万円〜100万円程度(納骨堂や永代供養墓など)
・行政手続き費用:数百円〜1,000円程度
※上記価格に関しては、執筆当時の相場です。記事をご覧の時期によっては、大きく変更になっている可能性があります。事前に各業者に見積もりを取るなど価格の確認をお願いいたします。
費用は地域やお寺、改葬先によって大きく異なるため、事前に見積もりを取ることが重要です。
2. 空き家解体の費用相場と注意点
空き家の解体費用は、建物の構造や大きさ、立地条件によって異なります。
一般的な費用相場は以下の通りです:
・木造住宅:1坪あたり3万円〜5万円程度
・鉄骨造住宅:1坪あたり5万円〜7万円程度
・RC造(鉄筋コンクリート造)住宅:1坪あたり6万円〜8万円程度
例えば、30坪の木造住宅の場合、解体費用は90万円〜150万円程度が目安となります。(執筆時の相場です。業者に確認をお願いします。)
注意点:
・アスベストの有無:含まれている場合、別途処理費用が発生します。
・残置物の処分:家具や家電などが残っている場合、追加費用がかかることがあります。
・立地条件:重機の搬入が困難な場所では、費用が高くなる傾向があります。
自治体によっては、空き家解体に対する補助金制度がある場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
3. 山林処分の費用と維持費
山林の処分には、売却や譲渡、相続放棄などの方法がありますが、手続きや費用が複雑な場合があります。
主な費用項目は以下の通りです:
・境界確定測量費用:数十万円程度(必要な場合)
・登記費用:数万円程度
・伐採費用:樹木1本あたり1万円〜2万円程度 (参照 マイナビ農業-就農、農業ニュースなどが集まる農業情報総合サイト)
・維持管理費用:1ヘクタールあたり月額数千円〜数万円程度(委託する場合) (参照 ベンチャーサポートグループ|税理士・弁護士・社労士・司法書士・行政書士)
山林の売却価格は、都市近郊林地で1平方メートルあたり1,000〜5,000円程度、農村林地で100〜1,000円程度が相場とされています。 (参照 マイナビ農業-就農、農業ニュースなどが集まる農業情報総合サイト)
売却や譲渡を検討する際は、専門業者に相談することをおすすめします。
4. 費用分担で揉めないためのポイント
"じまい"にかかる費用は高額になることが多く、家族間での費用分担が問題になることがあります。
費用分担で揉めないためのポイントは以下の通りです:
・早めの話し合い:家族全員で早めに話し合い、費用分担の方針を決めておくことが重要です。
・費用の見積もりを共有:具体的な費用の見積もりを共有し、透明性を持たせることで納得感が得られます。
・分割払いの検討:一括での支払いが難しい場合は、分割払いを検討することも一つの方法です。
・専門家への相談:弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、公平な費用分担が可能になります。
特に墓じまいの場合、墓主が費用を全額負担する必要はなく、親族で分担するケースが一般的です。
5. まとめ:早めの準備と家族の話し合いが鍵
"じまい"にかかる費用は、墓じまいで30万円〜300万円、空き家解体で90万円〜240万円、山林処分で数十万円以上と、決して小さな金額ではありません。
※上記価格に関しては、執筆当時の相場です。記事をご覧の時期によっては、大きく変更になっている可能性があります。事前に各業者に見積もりを取るなど価格の確認をお願いいたします。
これらの費用を家族で分担するためには、早めの準備と話し合いが不可欠です。
また、自治体の補助金制度や専門家のサポートを活用することで、費用を抑えることも可能です。
"じまい"をスムーズに進めるためにも、情報収集と計画的な対応を心がけましょう。
【第3回】“じまい”はやってよかった? 実例から見る前向きな決断 〜空き家・墓・土地の片付けで得られた安心と家族の絆〜

「墓じまいをして本当によかった」「空き家を解体して気持ちが軽くなった」──。
最近では、こうした"じまい"の前向きな声が徐々に増えてきています。
かつては「親や先祖に申し訳ない」「兄弟と揉めたくない」と後ろ向きになりがちだった"じまい"ですが、実際に行った人たちは「結果的にはやってよかった」と感じているケースが多いようです。
この記事では、墓じまい・家じまい・土地じまいを実行した人々の体験談をもとに、どんな準備をし、どんなトラブルを回避し、何を得られたのかを具体的に紹介します。
■ 目次
1.なぜ"じまい"を決断したのか?
2.【体験談1】墓じまい:離れて暮らす家族への配慮
3.【体験談2】空き家じまい:ご近所トラブル回避の選択
4.【体験談3】山林じまい:手放して心も軽く
5."じまい"を成功させる3つのポイント
6.まとめ:先延ばしよりも"行動"のメリット
1. なぜ"じまい"を決断したのか?
「誰かがやらなければいけないけど、誰も手を出せない」。
そんな状態が長く続いた末に、"じまい"に踏み切った人たちは共通して「放置はよくない」と痛感していました。
・長男が遠方に転勤し、墓の管理が困難に
・実家が空き家になって10年、草木が生い茂り近隣から苦情
・相続登記の手続きをきっかけに、山林の管理負担が判明
きっかけはそれぞれ異なりますが、「今やらなければ、将来もっと大変になる」と考えて動き出す人が増えています。
2. 【体験談1】墓じまい:離れて暮らす家族への配慮
70代女性(東京都)
両親が眠る地方の共同墓地。長年1人で管理してきたが、足腰が弱くなり墓参りが困難に。息子・娘も都内在住で「なかなか行けない」との声が。
思い切って、都内の納骨堂へ改葬することを決断。
兄弟間で相談を重ね、最終的には「この方が将来安心だよね」と納得してもらえた。
メリット:
・お参りがしやすくなり、孫たちも訪れるようになった
・管理費も安くなった
・遺された家族への"負担軽減"として感謝された
3. 【体験談2】空き家じまい:ご近所トラブル回避の選択
60代男性(大阪府)
親が亡くなったあと、実家は誰も住まず10年以上空き家に。近隣から「虫が出る」「庭木が越境している」と苦情が届き始めた。
当初は思い出もあり、解体に抵抗があったが、
自治体から「特定空き家に指定される恐れがある」との指摘を受けて決断。
結果:
・解体後に更地として売却でき、相続税の納付資金にもなった
・近隣から「対応してくれて助かった」と言われた
・自分の代で"後始末"をしたという安心感が残った
4. 【体験談3】山林じまい:手放して心も軽く
50代女性(神奈川県)
親族から相続した山林が、実は固定資産税だけかかって管理不能な土地だった。しかも相続登記が未了で、他の親族と共有状態。
相談の末、登記を済ませたうえで隣地所有者に譲渡。
「名義を整理することで手放せた」と実感。
得られたもの:
・不安材料が一つ減った
・相続人間で協力しあえたことで、関係も円滑になった
・毎年の税金負担からも解放された
5. "じまい"を成功させる3つのポイント
①「相談は早めに、広く」
親族間だけでなく、行政や専門家にも早めに相談することで選択肢が広がります。
②「見積と手続きはセットで考える」
費用感と手続きの流れを把握することで、先延ばしの不安を軽減。
③「感情面のケアを忘れずに」
「ありがとう」と言われる"じまい"には、丁寧な話し合いと共感が欠かせません。
6. まとめ:先延ばしよりも"行動"のメリット
"じまい"を実行した人たちに共通しているのは、「やってよかった」「もっと早く動けばよかった」という言葉です。
一歩踏み出すには勇気がいりますが、その先には、安心・スッキリ感・家族の感謝という"報われる結果"が待っています。
自分のためにも、家族のためにも、今こそ"じまい"を「現実の行動」として前向きに考えてみませんか?
次回は、"じまい"にかかる費用相場と、費用負担の分担で揉めないためのコツについて解説します。
【第2回】“じまい”が進まない理由と、放置が招くトラブルとは 〜感情・相続・近隣迷惑…現場で起きているリアルな問題〜

「墓じまい」「家じまい」「土地じまい」など、人生の後始末としての"じまい"が注目される一方で、実際には「やろうと思っているけど進まない」という人が少なくありません。
なぜ"じまい"はスムーズに進まないのか?
そこには、家族の感情、相続の問題、費用負担、そして放置によるトラブルなど、さまざまな事情が複雑に絡んでいます。
この記事では、じまいをためらう心理的な要因や、手続きの難しさ、そして対応を怠ったことで生じる実際のトラブルについて、具体的なケースをもとにわかりやすく解説します。
■ 目次
1."じまい"が進まない本当の理由とは
2.よくある感情的対立と家族のすれ違い
3.相続・手続き・費用の現実
4.放置が招くリスクとトラブル事例
5.まとめ:「今」やらないリスクを直視する
1. "じまい"が進まない本当の理由とは
"じまい"が進まない背景には、単なる「忙しいから」「後回しにしている」というだけではなく、次のような心理的・実務的な壁があります。
・亡き親への罪悪感:「親が大切にしていた家や墓を壊すなんて…」という心の抵抗
・兄弟姉妹間の温度差:「私は早く片づけたいが、兄は"まだ考えたくない"と言う」
・どこから手をつければいいのかわからない:調査・見積・行政手続きなどが煩雑
感情と現実が交錯し、結果として何年も放置されるケースが増えています。
2. よくある感情的対立と家族のすれ違い
"じまい"には、財産価値だけでなく「思い出」や「家族の歴史」がついて回ります。
そのため、次のような感情の衝突がよく起きます。
・「勝手に決めるな」問題:地方の実家を管理している長男が「家を売る」と言い出したとき、遠方に住む妹が「相談もなく決めるなんて」と反発。
・「まだ心の整理ができていない」問題:親の死後まもなく墓じまいを提案すると、他の家族が「もうそんな話をするのか」と拒否反応。
特に相続人が複数いる場合、それぞれの価値観・感情が異なるため、「誰も手を出せないまま時間だけが過ぎる」という状況に陥りがちです。
3. 相続・手続き・費用の現実
"じまい"には、感情の問題だけでなく、法的・経済的な課題もついてきます。
・相続登記が未了の不動産:名義変更がされていないため、売却や解体ができない
・費用負担の押し付け合い:「家は不要だが、解体費用は出したくない」
・墓じまいに必要な書類の煩雑さ:改葬許可申請書、受け入れ先との契約など
こうした事務的ハードルの高さが、"じまい"を一段と遠ざけてしまうのです。
4. 放置が招くリスクとトラブル事例
何年も"じまい"を放置することで、以下のような問題が現実に起きています。
■ 空き家が老朽化して倒壊寸前に
地方の実家を10年以上放置。近隣住民から「瓦が落ちてきそう」「草が伸びて害虫が出る」と苦情が出て、行政が"特定空き家"として指導。固定資産税が6倍になったケースも。
■ 墓石が倒れ、他人にケガをさせた
山間部の古い墓を放置していたところ、大雨によって墓石が倒壊。たまたま訪れた別家の親族がケガを負い、損害賠償トラブルに発展。
■ 名義が曖昧な山林で所有者不明扱いに
曽祖父名義のまま放置された山林が、相続登記未了で所有者不明土地として扱われ、将来的に収用や共有解消の対象になった。
こうしたケースは決して特別なものではなく、「どの家庭にも起こりうること」と言って過言ではありません。
5. まとめ:「今」やらないリスクを直視する
"じまい"は感情的にも、手続き的にも決して簡単なものではありません。
だからこそ、「あとで」と思っているうちに状況が悪化し、家族の負担や社会的トラブルへとつながってしまうのです。
必要なのは、「迷惑をかけたくない」という気持ちを形にしていくこと。
小さな一歩で構いません。まずは、現状を把握する、親族と話す、専門家に相談する、そうした行動が"じまい"を前に進める鍵となります。
次回は、実際に"じまい"を決断した人々の声や事例を紹介しながら、「やってよかった」という視点で考えていきます。
【第1回】なぜ今「〇〇じまい」が注目されているのか? 〜時代背景と価値観の変化から見える現代人の決断〜

近年、「墓じまい」「家じまい」「店じまい」「土地じまい」といった"〇〇じまい"という言葉を耳にする機会が増えました。
高齢化や少子化、単身世帯の増加といった社会構造の変化により、これまで「家族が引き継ぐのが当たり前」とされていたものを、「自分の代で終わらせる」という選択をする人が増えているのです。
この記事では、「〇〇じまい」という現象がなぜ今注目されているのか、その背景にある時代の流れや人々の意識の変化を解説します。
相続や終活、不動産管理、事業承継などに関心のある方にとって、"じまい"の理解は避けて通れないテーマです。
■ 目次
1.「〇〇じまい」とは何か?
2.増える"じまい"の背景にある社会構造の変化
3.「引き継ぐ」から「たたむ」へと変わる価値観
4.誰もが"じまい"を選ぶ可能性がある時代
5.まとめ:人生の「閉じ方」は早めに考える時代へ
1. 「〇〇じまい」とは何か?
「〇〇じまい」とは、これまで当たり前のように"子や孫に引き継がれる"とされてきた資産や場所、営みを、自分の代で終わらせることを意味する言葉です。
代表的な例として、以下のようなものがあります。
・墓じまい:お墓を撤去し、遺骨を永代供養や納骨堂に移す
・家じまい:相続される予定だった実家を売却・解体・処分する
・店じまい:後継者がいない個人商店や企業が事業を終了する
・土地じまい:管理できない山林や農地を手放す、寄付する
これらはすべて、「次世代がいない」「引き継ぐ意志がない」「維持するのが困難」といった事情から選ばれるようになってきました。
2. 増える"じまい"の背景にある社会構造の変化
"じまい"の流れを加速させているのは、日本社会の急速な変化です。
・高齢化:2025年には団塊世代が75歳以上となり、いわゆる「2025年問題」が現実味を帯びています。高齢者だけの世帯が増え、管理・維持が難しい状況が頻発しています。
・少子化・未婚化:子どもがいない、あるいはいても遠方に住んでいて引き継ぎが困難というケースが増えています。
・核家族化:親と同居しないライフスタイルが一般化し、物理的にも精神的にも"つながり"が希薄になってきています。
・都市と地方の格差拡大:地方では空き家や放置墓地の増加が深刻な問題となっており、自治体が"じまい"を促すケースも見られます。
こうした背景が、「引き継ぐ」ことを前提とした従来の考え方を揺るがしているのです。
3. 「引き継ぐ」から「たたむ」へと変わる価値観
"じまい"を選択する人の多くが語るのは、「子どもに負担をかけたくない」という思いです。
たとえば墓じまいでは、「先祖代々の墓を守ることが子孫にとって精神的・経済的負担になるのでは」という配慮から、あえて自分の代で区切りをつける決断をします。
また、家じまいや土地じまいでは、「自分の死後、誰も管理できない不動産が残ってしまうこと」への不安が動機となることが多いです。
このように、"じまい"は「責任放棄」ではなく、むしろ未来を見据えた責任ある決断といえるのです。
4. 誰もが"じまい"を選ぶ可能性がある時代
かつては一部の人だけが直面していた"じまい"の問題も、今や誰にでも関係するテーマとなりました。
たとえ子どもがいても、価値観やライフスタイルの違いから「継がない」という選択がされることも少なくありません。また、兄弟姉妹の間で処分の方針が分かれ、トラブルに発展するケースも見られます。
つまり、"じまい"は「特別な人だけの問題」ではなく、全ての家族・個人に降りかかる"終活"の一部になりつつあるのです。
5. まとめ:人生の「閉じ方」は早めに考える時代へ
"じまい"は、人生や家族の物語の終わり方を、自分自身で選ぶという行為でもあります。
単なる処分や放棄ではなく、「引き継がれないこと」を前提に、どうやって整理し、次の世代や社会に迷惑をかけずに終えるか。
それは今後の日本社会において、ますます重要なテーマとなるでしょう。
次回は、こうした"じまい"に潜む悩みやトラブル、放置リスクについて、具体的な事例を交えてご紹介します。
【第6回】遺留分トラブルを避ける!事業承継と家族の権利をどう両立するか?

中小企業の事業承継で最も見落とされがちなのが、「遺留分」への配慮です。
自社株式を後継者だけに集中させる遺言や生前贈与を行った結果、他の相続人から遺留分侵害額請求が起こるケースは後を絶ちません。
事業の継続と家族の感情のバランスをどうとるかは、承継対策において極めて重要なテーマです。
本記事では、遺留分の基礎知識からトラブル事例、回避のための遺言・契約・特例制度の活用法まで、実践的な解決策を詳しく解説します。
【目次】
1.遺留分とは?法定相続人の最低限の取り分
2.なぜ事業承継で遺留分トラブルが起きるのか
3.よくある遺留分請求のパターンとその影響
4.遺留分トラブルを未然に防ぐ3つの対策
4-1. 遺留分に配慮した遺言の工夫
4-2. 遺留分の放棄を家裁で認めてもらう
4-3. 民法特例(遺留分算定からの除外)活用
5.まとめ:事業承継の前に家族の理解と合意形成を
【無料相談受付中】遺留分と株式承継の最適バランス診断
1. 遺留分とは?法定相続人の最低限の取り分
遺留分とは、一定の法定相続人に法律で保障された最低限の相続分です。
主に配偶者・子・直系尊属が対象となり、以下の割合が定められています。
・配偶者・子が相続人の場合:遺産の1/2
・両親など直系尊属のみの場合:遺産の1/3
これに基づき、たとえ遺言で「全てを長男に相続させる」としても、他の相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使することができます。
2. なぜ事業承継で遺留分トラブルが起きるのか
中小企業の株式は分散せずに後継者(例えば長男)に集中させるのが基本です。
しかし、その結果、他の相続人(次男や配偶者など)が「不公平だ」「相続を軽んじられた」と感じ、感情的な対立に発展しやすくなります。
このような状況で、相続発生後に遺留分侵害額請求(お金で支払う)を受けると、承継したばかりの会社の経営資金が圧迫され、経営継続自体が危うくなるケースも少なくありません。
3. よくある遺留分請求のパターンとその影響
【例】
ある経営者が遺言で「すべての株式は長男に承継させる」と記載。
相続人は配偶者と長男・次男の3人。
→ 次男が「自分には何もない」と遺留分侵害額請求を起こし、長男は株式評価額の1/6相当の現金を支払う義務に追われる。
【影響】
・承継直後に高額な支出を迫られる
・兄弟間の関係悪化
・自社株を担保に借入をせざるを得ない
・事業継続の意欲減退
遺言や贈与だけで安心してはいけないのです。
4. 遺留分トラブルを未然に防ぐ3つの対策
4-1. 遺留分に配慮した遺言の工夫
遺言で全ての財産を後継者に集中させる場合でも、他の相続人の心情を汲み、適切な補償や説明を記載することでトラブルを減らせます。
・「次男には現金〇〇万円を残す」
・「長男が株式を承継するが、次男には会社債権を譲渡する」
・「理由:〇〇年に住宅取得支援を行ったため」など
透明性を持った遺言は、遺留分請求の抑止力にもなります。
4-2. 遺留分の放棄を家裁で認めてもらう
民法では、生前に相続人が家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄する制度があります。
【メリット】
・遺留分請求のリスクをゼロにできる
・後継者に安心して株式を集中させられる
・相続人全員の合意を前提に、信頼関係を構築できる
【注意点】
・書面による合意だけでは無効
・家庭裁判所の許可が必要(形式的な審査あり)
4-3. 民法特例(遺留分算定からの除外)活用
「中小企業の事業承継に関する民法の特例制度(会社法・相続法の特例)」を利用すると、一定の条件を満たせば自社株の評価を遺留分算定の対象から除外できます。
【主な条件】
・経済産業大臣の認定
・相続人全員の合意
・特定の非上場会社に限る
この制度を活用することで、遺留分に関する争いを根本から回避できる可能性があります。
5. まとめ:事業承継の前に家族の理解と合意形成を
遺留分トラブルは、事業承継そのものを揺るがすリスクをはらんでいます。
「法的には正しいことをした」のに、「感情面での不満」が爆発するのが典型です。
事前に「なぜこのような承継をするのか」を家族に説明し、納得してもらうプロセスこそ、円満な承継には不可欠です。
遺言・契約・法的特例の活用とともに、家族全体での承継戦略づくりを行いましょう。
【無料相談受付中】
\自社株承継と遺留分対策、両立できます!/
「会社を継がせたいけど、他の相続人が納得してくれるか不安…」
そんなお悩みを持つ経営者の方、今こそ"遺留分リスク"への対策が必要です。
アイリスでは、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
【第5回】事業承継で株式を贈与するときに知っておくべき3つの税務ポイント

中小企業の事業承継において最も重要な資産が「株式」です。会社の経営権をスムーズに移すためには、自社株の贈与や譲渡をどう扱うかが鍵になります。しかし、株式の贈与には相続税とは異なる"贈与税"の高い壁が立ちはだかります。
この記事では、自社株式を子や後継者に贈与する際に注意すべき**税務上の3つのポイント(評価・時期・特例)**を解説しながら、節税しつつ確実に承継を進めるための実践的な対策を紹介します。
【目次】
1.なぜ株式の贈与が事業承継のカギになるのか
2.株式を贈与する際の3つの税務ポイント
2-1. 株式の評価方法(類似業種比準・純資産価額)
2-2. 贈与のタイミングとその影響
2-3. 事業承継税制(特例贈与)の活用
3.よくある失敗事例とその回避策
4.贈与と信託、どちらを選ぶ?比較と検討
5.まとめ:税務戦略を組み立ててスムーズな承継を
6.【無料相談受付中】自社株の評価と贈与のタイミングを診断します
1. なぜ株式の贈与が事業承継のカギになるのか
中小企業の経営権は、ほとんどの場合「株式(=持株)」によって決まります。たとえ社長の座を引き継いでも、議決権の過半数を持っていなければ実質的な経営権は継承されないため、株式の移転は事業承継において最重要ポイントとなります。
このときに問題になるのが、株式贈与にかかる税金。時価評価された株式を子に贈与すると、多額の贈与税が課され、せっかくの承継が頓挫するケースもあります。
2. 株式を贈与する際の3つの税務ポイント
2-1. 株式の評価方法(類似業種比準・純資産価額)
株式の評価は、非上場会社では相続税評価額を使って算出されます。評価方法は主に以下の2つ:
・類似業種比準価額方式:上場企業の株価や配当・利益等を基に評価する方法。利益が出ている会社は高評価になる傾向。
・純資産価額方式:会社の帳簿上の資産・負債をもとに評価する方法。内部留保が多いと評価が高くなる。
どちらで評価するかで金額が大きく異なります。状況に応じた評価選定が節税の第一歩です。
2-2. 贈与のタイミングとその影響
同じ株式を贈与するにしても、「いつ贈与するか」で評価額が大きく変わります。
・決算期直後(利益が確定した直後)は評価が高くなる
・業績が悪化しているタイミングでは評価が下がる可能性あり
・将来的にM&Aや上場の可能性があると、今のうちに贈与する方が得
つまり、タイミングの選定=評価額の調整にもつながり、贈与税の節税が可能となります。
2-3. 事業承継税制(特例贈与)の活用
平成30年度税制改正により、**事業承継税制の特例措置(2027年12月末までの期限付き)**が創設され、一定条件を満たせば贈与税の納税が猶予されます。主な条件は以下の通り:
・中小企業であること(資本金・従業員数などに制限あり)
・贈与者が先代経営者、受贈者が後継者であること
・事前に「認定承継計画」を提出していること
・贈与後も一定期間、会社を継続し雇用を維持すること
贈与税の100%納税猶予+将来的な免除もあり得るため、使わない手はありません。
3. よくある失敗事例とその回避策
【失敗例】
「株式を子に贈与しようと思い、税理士に評価を依頼したが、すでに業績が好調な年の決算が確定しており、評価額が跳ね上がってしまった。」
【回避策】
→ 評価のタイミングは"決算前"に検討すべき。定期的に評価額の試算を行い、最適な贈与時期を見極める必要があります。
4. 贈与と信託、どちらを選ぶ?比較と検討
最近では「株式信託(家族信託)」を使った承継も注目されています。

状況によってどちらが有利かは異なりますので、贈与と信託のハイブリッド設計も視野に入れると良いでしょう。
5. まとめ:税務戦略を組み立ててスムーズな承継を
株式の贈与は、単なる形式的な手続きではなく、評価・時期・税制の活用という三位一体の戦略が必要です。
しかも税務上のリスクや失敗事例も多いため、専門家による事前のシミュレーションと実行支援が不可欠です。
「経営を継がせたいけど、贈与税が心配…」という方は、今すぐに対策を検討し始めましょう。
【無料相談受付中】
\自社株を贈与する前に、必ず知っておきたい税務戦略/
事業承継において、最も誤解が多く、最も税金がかかるのが「株式の贈与」です。
評価方法・贈与のタイミング・特例制度の可否など、事前の確認で何百万円も違ってくるケースもあります。
アイリスでは、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
【第4回】工場は会社、土地は親の名義?事業承継と不動産の落とし穴

事業承継を考える際、よく見落とされるのが「不動産の名義」です。
特に地方の中小企業では、工場や店舗の建物は法人名義でも、その敷地(土地)は創業者個人の名義のままというケースが多く見られます。
このような状態で経営者が亡くなると、土地は相続財産として相続人全員の共有名義となり、事業と相続が絡み合う深刻なトラブルに発展することがあります。
本記事では、実際にあった事例をもとに、名義の整理がされていないことで起こるリスクと、事前にできる対策について解説します。
【目次】
1.見落とされがちな「底地の名義」問題
2.工場の土地が相続財産になると起きること
3.共有登記のリスクと、その後の展開
4.不動産共有状態を解消する方法
5.事業承継の観点から見た不動産名義の整理
6.生前対策としての名義変更・贈与・信託
7.まとめ:事業の持続性と家族の関係を守るために
【無料相談実施中】名義と承継、今すぐ見直しを
1. 見落とされがちな「底地の名義」問題
中小企業の工場や事務所は、法人が建物を所有しつつ、土地は創業者個人が所有しているという形態が多く存在します。
このような状況で創業者が亡くなると、建物と土地の所有者が別になるため、会社が存続していても、事業用資産が安定して使えない状況が生まれます。
2. 工場の土地が相続財産になると起きること
実際に筆者が関わった事例では、父親が経営する製造業の会社が工場を法人名義で所有していました。
しかし、工場の敷地は父親個人の名義のままで、父の死後、その土地は兄弟4人の共有財産となりました。
このとき、長男が事業を継ぎたかったのに対し、他の兄弟は「土地の持分を売却したい」と主張。意見が対立し、事業が続けられなくなる寸前まで揉めたのです。
3. 共有登記のリスクと、その後の展開
当初は全員で土地の共有登記をしましたが、やがて「この状態では会社は工場を自由に扱えない」という判断に至り、事業継続を断念。結果的に、共有物分割請求訴訟を起こして工場を解体し、土地を売却することになりました。
このように、「不動産の名義整理ができていない」というたった1点が、事業継続を不可能にし、相続人同士の関係を破壊する結果を招くのです。
4. 不動産共有状態を解消する方法
■不動産を複数人で共有していると、以下のような問題が発生します:
・一人でも売却に反対すれば、処分できない
・賃貸や担保設定に全員の同意が必要
・相続が繰り返されると、持分が細分化され収拾がつかなくなる
■これを解消するには、以下のような手段があります:
・共有者間の合意により、単独名義に変更する
・共有持分の買い取り
・遺産分割協議や調停
・共有物分割請求訴訟(最終手段)
5. 事業承継の観点から見た不動産名義の整理
事業承継においては、経営権(株式)だけでなく、事業用資産の名義もセットで検討しなければなりません。
土地や建物の名義がバラバラだと、事業の継続性が危ぶまれるばかりか、銀行融資やリース契約などにも支障が出ます。
法人が継続して安定して稼働できるようにするには、少なくとも建物と土地の所有関係が一致していることが望ましく、それを実現するための準備が欠かせません。
6. 生前対策としての名義変更・贈与・信託
名義整理の手段としては、以下のような方法があります:
・土地を法人に売却(時価・税務上の留意が必要)
・生前贈与(暦年贈与・相続時精算課税制度の活用)
・家族信託の利用:特定の目的(たとえば「長男による事業利用」)のもとに財産管理を託す方法。柔軟性が高く、争いを避けるのに有効です。
これらは一つひとつが法務・税務の専門知識を要するため、早期に司法書士・税理士などの専門家と連携して取り組むべき分野です。
7. まとめ:事業の持続性と家族の関係を守るために
相続と事業承継が交差する場面では、感情的な問題と経済的な利害が複雑に絡み合います。
不動産の名義ひとつで事業の行方が変わることもあるため、名義の整理と承継の設計は避けて通れません。
事業用不動産をめぐるトラブルは、発生してからでは遅く、「争族」になる前の準備が最も重要です。
将来に不安がある方は、今こそ行動を起こしましょう。
【無料相談受付中】
\工場や店舗の土地、名義は大丈夫ですか?/
名義が整理されていないまま経営者が亡くなると、事業は止まり、相続人同士の関係も壊れることがあります。
当事務所では、事業承継に関わる不動産名義・相続・贈与などをワンストップでご相談いただけます。
アイリスでは、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
【第3回】協力を拒む相続人がいるとき、どうする?〜感情的対立とその解決方法〜

相続手続きでは、法定相続人全員による合意が必要です。ところが、血縁関係であっても、過去の確執や複雑な家庭環境から、「話し合いに応じない」「印鑑を押さない」相続人がいるケースは少なくありません。
とりわけ、前妻との間の子どもや、特定の相続人との関係が悪化していた兄弟姉妹が相続人となっている場合、感情的対立が協議を頓挫させる原因になります。
本記事では、感情的な理由で相続に協力しない相続人への対応方法と、手続きを前に進めるための具体的な解決手段を解説します。また、こうした状況を回避するための遺言書の活用方法もご紹介します。
【目次】
1.協力を拒む相続人とは?
2.感情的対立が相続を止めてしまう理由
3.実際によくある対立パターン
4.話し合いが決裂した場合の選択肢
5.遺産分割調停とは何か
6.感情的な対立を回避するためにできること
7.「遺言書」でトラブルは最小限に
8.【無料相談受付中】相続の悩みを一緒に整理しませんか
1. 協力を拒む相続人とは?
相続人のなかには、話し合いの場に出席しない、あるいは一方的に反対するなど、協議に応じない人物が含まれることがあります。その理由は「損をしたくない」「他の相続人を嫌っている」など様々ですが、一人でも協議に加わらない相続人がいれば、遺産分割は成立しません。
2. 感情的対立が相続を止めてしまう理由
民法では、相続人全員が合意しない限り、遺産分割協議は成立しないとされています。したがって、法律的な正当性よりも、感情的な理由で協力を拒む人が1人でもいれば、手続きが止まってしまうのです。
例えば、ある兄弟が「自分は親から冷遇されていた」と感じていた場合、その不満をぶつける形で、協議を妨害することがあります。
法的には不当であっても、「印鑑を押さない」というだけで全体を止められてしまうのが、相続の現実です。
3. 実際によくある対立パターン
・前妻との子どもと現配偶者の子どもが対立
・長男と二男で、親の面倒をどちらが見ていたかでもめる
・介護に関与しなかった相続人に対する不満
・被相続人が特定の人に財産を偏らせた場合の不公平感
・兄弟姉妹間の過去のトラブルや疎遠状態
・これらの背景には、「納得できない」「認めたくない」という心理的要因が強く働いています。
4. 話し合いが決裂した場合の選択肢
協議が成立しない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。調停は裁判ではなく、裁判官と調停委員を交えて中立の立場で話し合いを進める手続きです。
当事者同士では話がこじれても、第三者の介入によって冷静に協議が進むことが多く、解決の糸口になることがあります。
ただし、解決まで数ヶ月〜1年以上かかることもあり、調停が不調に終わった場合には「審判」へと進みます。
5. 遺産分割調停とは何か
遺産分割調停は、家庭裁判所に申し立てて開始します。調停委員(法律と民間感覚の両方を備えた中立の立場の専門家)を通じて、当事者同士が直接顔を合わせずに話し合えるようにする制度です。
感情的に対立している相手と直接話す必要がないため、当事者の心理的負担を軽減しながら、現実的な妥協点を模索することが可能です。
6. 感情的な対立を回避するためにできること
・早期の専門家相談(司法書士・弁護士など)
・相続人全員に公平な情報提供を行う
・財産の分け方に合理的な理由をつける(例えば「自宅は長男が住んでいたため相続させる」など)
・一部の相続人に対しては、代償金(代わりのお金)を用意する
また、被相続人が生前から「誰に何をどう分けるか」を相続人に対して丁寧に説明しておくことで、死後の誤解や疑念を和らげる効果もあります。
7. 「遺言書」でトラブルは最小限に
やはり最大のトラブル防止策は、遺言書の作成です。特に「この子とは疎遠になっている」「遺産の大半を事業承継に使いたい」などの明確な意向がある場合は、それを明記しておくことが重要です。
公正証書遺言であれば、家庭裁判所の検認も不要で、確実に実行できます。
「相続争いの火種」を生前に消しておくことこそが、残された家族への思いやりです。
【無料相談受付中】
\相続トラブル、放置しないで/
「自分の相続では争いは起きない」と思っていませんか?
血のつながった家族でも、相続を機に関係が壊れることは現実に起きています。
アイリスでは、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
※すでに争いが生じているケースは、弁護士にご相談ください。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
【第2回】相続人の所在が不明なとき、何が起きる?〜手続きの停滞と解決手段〜

相続が発生した際、法定相続人の中に所在がわからない人物がいると、遺産分割協議ができず、相続手続きが完全に停止してしまいます。音信不通の兄弟、海外に住むまま消息不明になった親戚、連絡先のわからない前配偶者の子どもなど、こうした事例は決して珍しくありません。
本記事では、所在不明の相続人がいる場合に起こり得るトラブルと、実務での対応方法(不在者財産管理人の選任、失踪宣告)についてわかりやすく解説します。相続で困らないための生前の備えの重要性もあわせてご紹介します。
【目次】
1.所在不明の相続人がいると何が起きるのか
2.なぜ「全員の同意」が求められるのか
3.よくある所在不明のケース
4.実務上の対応策(不在者財産管理人)
5.最終手段としての「失踪宣告」
6.それでも避けられない時間と費用の負担
7.こうなる前に「遺言書」で備える
8.【無料相談実施中】相続の不安、今のうちにご相談を
1. 所在不明の相続人がいると何が起きるのか
相続が発生すると、遺産分割協議を行うために法定相続人全員の関与が必要になります。しかし、そのうちの1人が「行方不明」「音信不通」などで所在がわからない場合、協議は成立せず、財産の分け方も確定しません。
これは、預貯金の払い戻しや不動産の名義変更もできないことを意味します。つまり、相続財産が"凍結"されたままになってしまうのです。
2. なぜ「全員の同意」が求められるのか
遺産分割協議は、共同相続人のあいだで「どう財産を分けるか」を話し合うもので、民法上、必ず全員の合意が必要とされています。
仮に10人中9人が合意しても、残る1人が関与していなければ、その協議は無効。どれほど財産が少額でも、手続きは一歩も前に進まなくなるのです。
3. よくある所在不明のケース
以下のようなケースで、相続人の所在が不明になることが多いです。
・長年音信不通の兄弟姉妹
・海外移住後に連絡が取れなくなった相続人
・離婚後、別れた配偶者とともに行方が分からなくなった子ども
・過去に認知した子どもと関係を断っていた場合
このような相手を探し出すのは非常に難しく、しかも時間的制約があるケースも多いため、現実には大きな壁となります。
4. 実務上の対応策(不在者財産管理人)
行方不明者がいる場合の最初の対処法として、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。これは、所在不明者の代わりにその権利を保護し、遺産分割協議に参加してもらうための制度です。
不在者財産管理人は、裁判所が選任し、所在不明の相続人の利益を守りながら、遺産分割協議に同意するか否かを判断します。ただし、選任には1〜2ヶ月以上かかり、費用や報酬も発生します。
5. 最終手段としての「失踪宣告」
不在者が7年以上行方不明である場合には、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることができます。これが認められれば、法律上は死亡したものとして扱われ、相続人から外れるため、残った相続人で遺産分割が可能になります。
ただし、失踪宣告は非常にハードルが高く、裁判所での厳格な審査を経る必要があります。また、万が一その後に本人が戻ってきた場合、財産返還などの問題も生じ得ます。
6. それでも避けられない時間と費用の負担
不在者財産管理人の選任や失踪宣告は、いずれも時間・費用・精神的負担がかかります。さらに、裁判所が関与するため、自由度も低く、思い通りに相続を進めることは困難です。
場合によっては、不動産が売れない、資金が使えないなどの経済的損失を被る可能性もあります。
7. こうなる前に「遺言書」で備える
これらの問題を未然に防ぐ最も効果的な方法が、「遺言書」です。遺言書に「Aにこの不動産を相続させる」「Bにこの預金を与える」と具体的に記載しておけば、遺産分割協議を省略できます。
すなわち、所在不明の相続人がいたとしても、他の相続人だけで手続きを完了できるのです。
特に公正証書遺言であれば、法的効力が高く、家庭裁判所の検認も不要。
相続に不安を抱える方にとって、もっとも現実的で強力な手段となるでしょう。
【無料相談受付中】
\相続トラブルを未然に防ぐ/
当事務所では、相続人の所在不明や協議拒否など、複雑な相続のトラブルを数多く解決してきました。
「まだ元気だけど、少し不安がある」「遺言を残すべきか迷っている」
そうした方こそ、今が相談のタイミングです。
アイリスでは、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
【第1回】なぜ遺言書が必要なのか?〜行方不明者や協力拒否の相続人がいる場合〜

相続手続きでは「遺産分割協議」が必要ですが、すべての相続人の協力が得られないと、手続きが前に進まなくなるリスクがあります。
特に、行方不明者がいる場合や、感情的に対立している相続人が協議に応じてくれないケースでは、相続財産を動かすことが極めて困難になります。
本記事では、こうした実務上の問題点を解説し、遺言書の持つ力とその重要性について具体例を交えながらご紹介します。
トラブルを未然に防ぎたい方、相続に不安を抱えている方はぜひご一読ください。
【目次】
1.相続は「全員の同意」が必要
2.実務でよくある2つの困難なケース
3.行方不明の相続人がいる場合の法的対応
4.感情的に協力が得られない相続人の存在
5.遺言書があることで何が変わるのか
6.書くなら「公正証書遺言」を
7.まとめ:リスクに備える遺言のすすめ
【無料相談実施中】あなたの相続、今のうちに備えませんか?
1. 相続は「全員の同意」が必要
相続が発生した後、遺言がなければ相続財産は法定相続人の共有状態となります。
この状態を解消するには、「遺産分割協議」が必要ですが、これは相続人全員の合意が必要という点が極めて重要です。
1人でも署名・押印しなければ、協議は成立しません。すなわち、たった1人の行動が、すべての手続きに影響を及ぼすのです。
2. 実務でよくある2つの困難なケース
遺産分割協議ができない典型的な2つのケースをご紹介します。
ケース1:行方不明の相続人がいる
長年音信不通だった兄弟、海外に移住して連絡が取れない親戚などが該当します。
ケース2:感情的に対立している相続人が協議に応じない
離婚後に親と疎遠になった子どもなど、法的には相続人でも、協力を得るのが難しいケースです。
このような状況では、相続登記ができず、預貯金の解約もできず、財産の凍結状態が続きます。
3. 行方不明の相続人がいる場合の法的対応
行方不明者がいる場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てることができます。
さらに、7年以上消息がつかめない場合は、「失踪宣告」の制度を使うこともできます。
しかし、これらは時間と費用がかかり、また裁判所の判断も絡むため、速やかな相続手続きとは言えません。
対策をしないまま相続が発生すると、想定外の手間とストレスを強いられるのが現実です。
4. 感情的に協力が得られない相続人の存在
例えば、再婚した親とその前配偶者との子ども。
親と長く交流がなく、感情的なしこりがある場合、たとえ連絡が取れても、遺産分割協議に協力してくれないことがあります。
「遺留分の請求」などの権利行使をするケースもありますし、最悪の場合、弁護士を通じた交渉や調停にまで発展することもあります。
円満な相続のためには、事前に協議の必要性を排除できる手段が重要なのです。
5. 遺言書があることで何が変わるのか
これらの問題に対して有効なのが、「遺言書」です。
遺言書で「誰にどの財産を相続させるか」を明記しておけば、遺産分割協議そのものが不要になります。すなわち、他の相続人の同意を得る必要がないのです。
行方不明者がいても、感情的対立があっても、遺言書があれば単独で手続きが進められるのは、非常に大きなメリットです。
6. 書くなら「公正証書遺言」を
遺言書にはいくつかの形式がありますが、最もおすすめなのは「公正証書遺言」です。
これは公証役場で作成され、原本が保管されるため、偽造・紛失のリスクがなく、家庭裁判所の検認も不要です。
手続きもスムーズで、信頼性が高いため、実務上も多くの専門家が推奨しています。
7. まとめ:リスクに備える遺言のすすめ
相続は、思わぬところで手続きが止まることがあります。
行方不明の兄弟、疎遠な子ども、協力的でない親族…。
どれも珍しくない現実だからこそ、遺言書という「備え」が力を発揮します。
自分が亡くなった後に、残された家族が困ることがないように。
そして、大切な財産が円滑に承継されるように。
元気なうちに、「未来への手紙」としての遺言書を準備しておきましょう。
【無料相談受付中】
\無料相談受付中!/
当事務所では、遺言書作成や相続対策に関する無料相談を実施しています。
行方不明者への対応、感情的対立を見越した相続対策、遺言書の種類の選び方まで、実務経験豊富な司法書士が丁寧にサポートいたします。
アイリスでは、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
【第3回】相続財産の“見えない資産”に注意! 名義預金・共有名義・未登記不動産の落とし穴

相続手続きでは、預金や不動産といった目に見える財産だけでなく、**一見すると他人名義になっているが実質的には被相続人のものといえる財産=「見えない資産」**の取り扱いが問題になるケースがあります。
代表的なものに「名義預金」や「共有名義不動産」、「未登記の家屋」などがありますが、これらを正確に把握せずに相続を進めると、相続税の申告漏れや遺産分割トラブル、登記の不備など、さまざまな問題に発展しかねません。
本記事では、相続実務においてしばしば問題となる「見えない相続財産」の実例とその確認・対応方法について、司法書士の視点から詳しく解説します。
■目次
1.「見えない相続財産」とは何か?
2.名義預金の問題点と税務上の取扱い
3.共有名義不動産のリスクと解決方法
4.未登記建物の相続と登記手続きの注意点
5.生前贈与か?相続財産か?線引きの難しさ
6.争わない相続のために必要な準備とは
7.【CTA】見えにくい財産こそ専門家の力を
1. 「見えない相続財産」とは何か?
「見えない相続財産」とは、帳簿や登記上は被相続人名義でないために、表面上は相続財産に見えないが、実質的には被相続人に帰属する財産のことです。
例えば以下のようなケースが該当します:
・子ども名義の預金口座に、長年親が入金していた(名義預金)
・被相続人と子が共同で登記していたが、実際には被相続人が全額出資(共有名義の不動産)
・建物の所有権登記がされていない(未登記建物)
・これらは発見しづらく、相続人間での認識のズレや課税リスクの温床にもなり得ます。
2. 名義預金の問題点と税務上の取扱い
名義預金とは、形式上は子や配偶者などの名義になっている預金でも、実質的には被相続人が資金を出して管理していた預金のことです。
たとえば:
・「お年玉や入学祝い名目で親が積み立てていた口座」
・「成人後も親が通帳・印鑑を保管し、出入金していた預金」
このようなケースは、名義人の預金ではなく被相続人の財産とみなされ、相続税の対象になります。税務調査でも問題にされやすいポイントのひとつです。
【対処法】
・名義口座に対する入金元・通帳管理者を確認
・贈与契約の有無(贈与税の申告履歴)を確認
・生前贈与であることを主張するには、明確な証拠が必要
3. 共有名義不動産のリスクと解決方法
親と子の共有名義で登記されている不動産も、実態を見直す必要があります。よくあるのが、親が全額出資して家を建てたが、「税金対策」や「将来の相続を見据えて」子と共有名義にしたケースです。
しかし:
・実質的な出資割合と登記割合が一致していない
・相続時、子の持分が「贈与」と判断される可能性
・相続人間で「この土地は誰のものか」で争いになる
【対応策】
・出資割合や実際の使用状況の記録を残す
・必要に応じて持分移転や贈与契約の見直し
・相続後の共有状態を避けるため、事前に遺言で整理
4. 未登記建物の相続と登記手続きの注意点
田舎の実家などでよくあるのが、**建物が登記されていない(未登記建物)**ケースです。
これは、固定資産税の課税はされているのに、登記簿上は存在しない状態です。
未登記建物は相続の際に問題になります:
・相続登記ができない(まずは表題登記が必要)
・他の不動産と一緒に処分しにくい
・所有権の所在が不明確で第三者に説明できない
【解決方法】
・固定資産税の課税台帳で存在を確認
・相続人のうち代表者名義で所有権保存登記を実施
・他の相続財産と合わせて遺産分割協議書に明記
5. 生前贈与か?相続財産か?線引きの難しさ
特に名義預金や共有名義不動産では、「生前贈与だった」と主張されることもありますが、税務署はそれを安易に認めません。
贈与と認められるためには:
・贈与者・受贈者双方の意思表示がある
・通帳・印鑑の管理が名義人側にあった
・贈与税の申告がされていた、または110万円以下の記録がある
これらの要件が揃っていないと、「名義だけ借りていたにすぎない」と判断され、相続税の課税対象とされるリスクがあるのです。
6. 争わない相続のために必要な準備とは
こうした"見えない財産"は、家族間のコミュニケーション不足や誤解が原因で争いに発展しやすいポイントです。
だからこそ、被相続人が生前のうちに:
・財産目録を作成して共有
・遺言書で名義の整理を明記
・司法書士・税理士と連携しながら財産の見える化を進める
といった取り組みが必要です。
また、相続人としては「形式ではなく実態を重視する」視点をもって、客観的に判断し、専門家の助言を得ながら整理していくことが求められます。
7. 【CTA】見えにくい財産こそ専門家の力を
名義預金や共有名義の不動産、未登記建物など、相続における"グレーゾーン"の財産は、放置しておくと後々の相続トラブルや税務調査の火種になりかねません。
✅ 親の通帳を管理していたが、名義は子どもだった
✅ 実家の建物が登記されているか分からない
✅ 相続人同士で財産の所在にズレがある
こうした不安がある方は、司法書士・税理士など専門家のサポートを早めに受けることで、リスクを未然に防ぎ、公平で円満な相続を実現できます。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
【第2回】相続財産に“負債”も含まれる?マイナスの遺産調査とリスク回避の基本

相続財産というと、預貯金や不動産など「プラスの財産」ばかりに目が行きがちですが、実は「マイナスの財産」――すなわち借金や滞納税金、保証債務などの負債もすべて相続対象となります。
負債の存在を見落としたまま相続を進めてしまうと、あとから多額の債務が発覚し、相続人が返済義務を負う可能性があります。これが、相続トラブルのなかでも最も深刻な事態のひとつです。
本記事では、相続における「負債の見つけ方」と「リスク回避の方法」について、司法書士の立場から分かりやすく解説します。相続放棄や限定承認といった対処法も含めて、損をしない相続を実現するための基本知識を押さえておきましょう。
■目次
1.プラスの財産だけじゃない!相続の原則とは
2.相続される"マイナスの財産"の具体例
3.借金の存在はどうやって調べる?
4.相続放棄・限定承認の選択肢と注意点
5.期限を過ぎるとどうなる?3か月ルールの落とし穴
6.家族を守るためにすべき事前準備とは
7.【CTA】負債の有無に不安がある方は早めに専門家へご相談を
1. プラスの財産だけじゃない!相続の原則とは
民法では、「相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定められています。
つまり、現金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金や保証債務といったマイナスの財産も自動的に相続の対象になるのです。
これを知らずに「財産をもらえる」と思って相続手続きを進めてしまい、あとから債権者から請求が届く…というケースも珍しくありません。
2. 相続される"マイナスの財産"の具体例
では、実際に相続対象となるマイナスの財産にはどのようなものがあるのでしょうか。
消費者金融や銀行などからの借入金
クレジットカードの未払金(リボ払い含む)
携帯電話料金や家賃の滞納分
固定資産税や住民税などの未納税金
保証人としての債務(被相続人が誰かの連帯保証人になっていた場合)
医療費の未払い分
損害賠償請求権(例:交通事故による被害者への支払義務)
特に注意が必要なのが保証債務です。本人が借金していなくても、他人の借金の保証人になっていた場合には、その保証義務も相続されます。
3. 借金の存在はどうやって調べる?
借金や債務の有無は、通帳の引き落とし履歴や郵便物などを手がかりに調査していきます。以下のようなチェックポイントがあります。
クレジットカード会社・ローン会社からの請求書・督促状
消費者金融や銀行からの取引明細書
信販会社の明細やローン控え
住民税・固定資産税の納付書・未納通知
被相続人宛の郵便物(特に「親展」マークのついたもの)
また、借金の有無を信用情報機関(CIC・JICC・全銀協など)に開示請求することで、ある程度客観的に確認することも可能です。
ただし、これらの情報取得には死亡診断書や戸籍、相続人の関係書類が必要になります。
4. 相続放棄・限定承認の選択肢と注意点
マイナスの財産のほうが多いと判断される場合、相続人は**「相続放棄」または「限定承認」**を家庭裁判所に申述することで、債務から逃れることが可能です。
相続放棄:最初から相続人ではなかったことにする(すべての財産を放棄)
限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き受ける(ただし手続きが複雑)
ただし、相続放棄をすると、**その人が放棄した分は他の相続人に"回ってくる"**ため、兄弟姉妹や甥姪に負担が及ぶ可能性もあります。誰が放棄し、誰が相続するのか、家族間で事前によく話し合っておくことが大切です。
5. 期限を過ぎるとどうなる?3か月ルールの落とし穴
相続放棄や限定承認の申述には、**「自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内」**という期限があります。
この「3か月ルール」を過ぎると、**自動的にすべての相続を承認したとみなされる(単純承認)**ため、借金も引き継ぐことになります。
「調査していたら3か月を過ぎてしまった」というケースでは、例外的に熟慮期間の延長申立てが認められることもありますが、原則は3か月以内の決断が必要です。
6. 家族を守るためにすべき事前準備とは
こうしたリスクを防ぐためには、生前の段階で財産と債務の情報を整理しておくことが理想です。
借入がある場合は、借入先・残高・返済状況を記録
保証人になっている契約書類を一か所にまとめる
相続人に対して、財産目録やエンディングノートを残す
専門家に相談しながら財産の整理を進める
特に高齢者が保証人になっていた場合、本人も忘れているケースがあります。相続人があとから責任を負わないためにも、事前の確認と記録がカギとなります。
7. 【CTA】負債の有無に不安がある方は早めに専門家へご相談を
借金や保証債務の相続は、知らなかったでは済まされません。
後悔しない相続のためには、「調査」「判断」「申述」までを正しく、期限内に行うことが重要です。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
【第1回】え?こんなところにも遺産が? 相続における“財産の見える化”の難しさ

「相続が発生したら、まずは財産の確認から」と聞いたことはありませんか?
実はこの「遺産の確定」という作業こそが、相続手続きの中でもっとも時間がかかり、かつ、つまずきやすいステップです。
被相続人(亡くなった方)の財産は、預金や不動産のようにすぐに分かるものだけでなく、生命保険、株式、仮想通貨、さらには貸金庫や海外資産まで多岐にわたります。しかも、その存在を相続人が知らなければ「ないもの」として扱ってしまうことも。
本記事では、相続における「財産の調査と把握」がなぜ難しいのか、どのような落とし穴があるのかを解説します。
相続手続きで後悔しないためにも、知っておきたいポイントを整理してお伝えします。
■目次
1.遺産確定の第一歩は「全体像の把握」
2.財産の種類はこんなにある
3."名義"と"実質"のズレがトラブルの火種に
4.情報が埋もれているケースとは?
5.財産調査をスムーズに進めるコツ
6.まとめ:相続は"可視化"から始まる
7.【CTA】相続に関するご相談はお早めに
1. 遺産確定の第一歩は「全体像の把握」
遺産分割や相続税申告など、相続手続きの前提となるのが「相続財産の全体像を把握すること」です。
どのような財産があるのか、どこにあるのか、どのくらいの価値があるのか。これが分からないと手続きを進めることができません。
しかも、相続人が複数いる場合には、情報共有の有無や温度差によってトラブルになることもしばしばです。
2. 財産の種類はこんなにある
財産というと、預金や土地建物を思い浮かべがちですが、実際にはもっと多様です。以下に代表的な財産の例を挙げます。
銀行預金(複数の銀行にまたがるケースあり)
不動産(土地、建物、未登記のものも含む)
株式・投資信託・債券
生命保険・損害保険の解約返戻金
自動車・貴金属・骨董品などの動産
仮想通貨(暗号資産)
海外にある資産(口座・不動産)
貸金庫の中身
貸付金(被相続人が他人にお金を貸していた場合)
ここに書かれていない「権利」や「未請求の年金・給付金」などもあり、調査には時間がかかります。
3. "名義"と"実質"のズレがトラブルの火種に
相続トラブルでよくあるのが、「名義預金」や「名義株式」の問題です。
たとえば、被相続人が自分の子の名義で預金していた場合、銀行口座の名義人は子ですが、実質的には被相続人の財産であるため、相続財産に含まれる可能性があります。
また、昔のまま放置された株式や、他人名義になっている不動産など、表面上の名義と実質の持ち主が異なる場合には注意が必要です。
これらのズレを調べ、必要に応じて相続財産として組み込むには専門的な判断が求められます。
4. 情報が埋もれているケースとは?
被相続人が高齢だったり、整理整頓が苦手だった場合、財産に関する情報が家の中に埋もれていることも少なくありません。
通帳が見つからない
インターネットバンキングのID・パスワードが分からない
株式の取引報告書が何年も前のまま
保険証券がバラバラに保存されている
こういった状況では、「財産があるのに気づかれない」ままになってしまい、最終的に誰も受け取らずに失効することもあります。
5. 財産調査をスムーズに進めるコツ
遺産調査をスムーズに進めるためには、次のような手順を取るとよいでしょう。
郵便物を1〜2か月分保管して確認
自宅の書類を徹底的に整理・確認する
金融機関へ取引照会をする(相続人であれば可能)
法務局で不動産の登記事項証明書を取得
信託銀行や証券会社への照会も忘れずに
貸金庫の有無を確認する(遺言書が保管されていることも)
可能であれば、生前から財産目録を作っておくことが理想ですが、突然の相続ではこのような現地調査的な対応が求められます。
6. まとめ:相続は"可視化"から始まる
「見える財産」だけが相続財産ではありません。
むしろ、"見えない財産"をどうあぶり出し、証拠をもとに確定していくかが、遺産分割の成否を分ける鍵になります。
財産を正確に把握できれば、相続人同士の納得感も高まり、争いを避けることができます。
そのためにも、「財産を見える化する」という意識をもって相続に臨むことがとても重要なのです。
7. 【CTA】相続に関するご相談はお早めに
遺産調査は時間との勝負です。
「何から手を付ければいいか分からない」「親の財産が不明なまま亡くなった」など、お困りのことがあれば、相続の専門家である司法書士がご相談を承ります。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
【第3回】こんな時に活用できる! ~所有不動産記録証明制度の具体的な利用場面と留意点~

2026年2月に導入される「所有不動産記録証明制度」は、相続や成年後見、不動産調査の現場で活用が期待される新制度です。
全国の登記簿から対象者が名義人として登記されている不動産の情報を一括で確認できる制度であり、登記所ごとの照会を不要にする点が画期的です。
本シリーズの第1回では制度の概要を、第2回では具体的な申請方法や必要書類について解説してきました。
最終回となる今回は、「この制度をいつ・どんなときに活用すればよいのか?」という視点から、典型的な利用場面を整理するとともに、制度利用上の注意点や他制度との違いも解説します。
◆目次
1.利用場面①:相続発生後の遺産調査
2.利用場面②:成年後見人による財産把握
3.利用場面③:相続放棄の判断材料として
4.利用場面④:遺言執行の際の不動産確認
5.他制度(名寄帳・固定資産課税台帳)との違い
6.制度利用にあたっての注意点
7.まとめ
1. 利用場面①:相続発生後の遺産調査
被相続人の財産のうち、不動産は重要な資産ですが、相続人が全ての所在を把握していないことも少なくありません。
この制度を使えば、被相続人の名義で登記されている不動産を全国から一括で洗い出すことが可能となります。
特に、遠方に不動産がある可能性があるケース(出身地に空き家がある、転勤が多かった等)では非常に有効です。
2. 利用場面②:成年後見人による財産把握
成年後見人が就任した際には、被後見人の財産目録を作成し、定期的な報告義務があります。
所有不動産記録証明を取得することで、登記簿上の所有不動産を短期間で網羅的に確認することができ、財産の漏れや調査ミスを防げます。
この制度は「財産管理を適切に行うためのスタート地点」としても有効で、今後の後見業務の基盤整備に資するものです。
3. 利用場面③:相続放棄の判断材料として
相続放棄は、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。その間に財産内容を精査する必要があるものの、預貯金や不動産の情報収集は容易ではありません。
所有不動産記録証明制度を活用すれば、不動産に関しては網羅的に状況を把握できるため、他の財産とあわせて「相続すべきか否か」の判断材料になります。
4. 利用場面④:遺言執行の際の不動産確認
遺言書に「全ての不動産をAに相続させる」といった記載がある場合、執行者はその不動産を特定して相続登記等を行う必要があります。
この制度を使えば、故人の不動産を全国一括で洗い出せるため、遺言の内容を正確に執行するための基礎資料となります。
5. 他制度(名寄帳・固定資産課税台帳)との違い
不動産の所在を調べる手段として、以下のような制度もありますが、それぞれに限界があります。

所有不動産記録証明制度は、登記簿に記録された情報を法務局本局が一括で確認するため、精度と効率性が極めて高いのが特徴です。
6. 制度利用にあたっての注意点
・未登記不動産は対象外:登記されていない山林や私道などは反映されません。
・過去に所有していた不動産は対象外:既に売却済の不動産情報は出てきません。
・共有名義の場合も表示される:共有者の1人であっても記録に記載されます。
・住民票の記載住所と登記住所が異なる場合:過去の住所を基に登記されている場合、照会が通らない可能性があります。
これらの点を踏まえ、証明書取得後には、個別の登記事項証明書での詳細確認が不可欠です。
7. まとめ
所有不動産記録証明制度は、特に相続や成年後見の現場で非常に有用な制度です。全国一括照会が可能という利点は、これまでの不動産調査の労力や時間を大幅に削減します。
ただし、制度には対象となる不動産の範囲や申請時の注意点もあるため、正しく使いこなすためには一定の知識が必要です。
「自分たちで調べるのは不安」「専門家に任せたい」という方は、司法書士などのプロに相談することをおすすめします。
アイリスでは、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
【第2回】制度を実際に使うには? ~所有不動産記録証明制度の申請方法・必要書類・手数料を解説~

相続や財産管理の場面で、全国にある不動産を一括で調査できる「所有不動産記録証明制度」。
2026年2月から開始予定のこの制度は、相続人や後見人にとって強力な支援ツールとなると注目されています。
第1回では制度の概要をご紹介しましたが、今回は実際の【利用方法】に焦点をあて、誰が、どのように申請できるのか、必要な書類や費用はいくらか、といった実務的な情報を詳しく解説します。
「制度の利用を検討しているけど、申請手続きがよくわからない」という方や、司法書士・行政書士・税理士の方も必見の内容です。
◆目次
1.利用できる人は誰か?
2.申請方法は?オンライン申請も可能?
3.必要な書類と記載内容
4.手数料はいくら?
5.取得できる証明書のイメージと注意点
6.まとめ
【CTA】ご相談・手続きのご依頼はこちら
1. 利用できる人は誰か?
所有不動産記録証明制度を利用できるのは、次のような立場の人です。
・本人(不動産の所有者)
・相続人または法定相続情報一覧図の記載者
・成年後見人・任意後見受任者・親族後見人
・遺言執行者
・代理人(司法書士・弁護士など)※委任状が必要
特に、相続人が遺産分割協議の前提として、被相続人の所有不動産を把握したい場合に最も活用される想定です。
2. 申請方法は?オンライン申請も可能?
制度開始当初は、紙での申請書提出と郵送または窓口での受取が中心となる見込みです。ただし、将来的には「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」を通じた電子申請にも対応する計画があるとされています。
申請先は「法務局(登記所)本局」に限られ、支局や出張所では取り扱わない可能性が高いため、申請先の選定にも注意が必要です。
3. 必要な書類と記載内容
申請に必要な書類の主な構成は以下のとおりです。
・申請書(所定様式)
・申請者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・相続関係がわかる戸籍謄本等(相続人が申請する場合)
・成年後見登記事項証明書(後見人等の場合)
・委任状(代理人による申請の場合)
申請書には、調査対象者の以下の情報を正確に記載する必要があります:
・氏名
・住所(住民票上の最後の住所)
・生年月日
・性別
・本人確認資料の種類と番号
情報が不正確だと、照会できない可能性がありますので注意が必要です。
4. 手数料はいくら?
証明書1通あたりの手数料は 400円前後 とされる予定ですが、法務省からの正式な発表を待つ必要があります。また、郵送申請の場合は返信用封筒・切手などの実費もかかります。
司法書士等の代理人に依頼する場合は、別途報酬が必要です。相続人やご家族だけで手続きするのが難しい場合は、専門家のサポートを検討してもよいでしょう。
5. 取得できる証明書のイメージと注意点
証明書には、全国にある登記簿上の「所有不動産の一覧」が記載されます。地番や家屋番号、登記所の所在地といった項目が記載され、各不動産ごとに詳細情報は含まれません(登記事項証明書は別途取得が必要)。
重要な注意点として、
・【共有持分のみ】の所有でも記載される
・【すでに売却済の不動産】は対象外
・【未登記の不動産】は対象外
という点を押さえておきましょう。
6. まとめ
所有不動産記録証明制度は、相続・後見・不動産調査の現場において大きな変革をもたらす可能性を秘めています。制度を正しく理解し、適切に活用することで、財産調査や手続きの効率化につながります。
今回は申請方法や必要書類についてご紹介しましたが、「実際どんなときに使うのか」「他の制度とどう使い分けるべきか」といった点については、第3回で詳しく解説します。
アイリスでは、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
【第1回】2026年2月スタート予定!「所有不動産記録証明制度」とは? ~相続・資産調査が大きく変わる新制度の概要を解説~

相続の手続きを進める上で、被相続人がどの不動産を所有していたのかを把握することは非常に重要です。しかし現在、その調査は各地の法務局で不動産ごとに登記簿を取得する必要があり、時間も費用もかかってしまうのが現状です。
2026年2月から始まる「所有不動産記録証明制度」は、こうした相続や資産調査における不動産調査の大きな手間を軽減する制度として注目されています。本記事では、これからスタートするこの制度の概要について、司法書士の視点からわかりやすく解説します。
不動産の一括調査、相続対策、所有者の資産把握、財産調査の新制度にご関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
◆目次
1.所有不動産記録証明制度とは何か
2.どんな情報がわかるのか
3.現行制度との違いは?
4.どんな人に役立つ制度か
5.第2回以降の予告
6.まとめ
7.相続・不動産調査のご相談は当事務所へ
1. 所有不動産記録証明制度とは何か
所有不動産記録証明制度は、「個人が全国に所有する不動産を、氏名・住所・生年月日・性別などの情報から一括で検索し、その結果を証明書として取得できる制度」です。
2026年2月の開始を予定しており、法務局が中心となって運用を行います。利用対象者は原則として本人または相続人など一定の関係者に限定される予定です。
2. どんな情報がわかるのか
この制度を利用すると、次のような情報が一覧で表示されます。
所有している不動産の所在地(地番・家屋番号)
登記名義人として登録されている日付
所有権の種類(共有持分かどうか等)
管轄の登記所(法務局)
従来は各地の登記所で個別に調査する必要がありましたが、これが一括でわかるため、調査効率が格段に向上します。
3. 現行制度との違いは?
現在、不動産を調査するには「不動産登記簿謄本(登記事項証明書)」を取得する必要があり、どこの不動産を所有しているかの"あたり"がなければ調査が困難です。
一方、所有不動産記録証明制度では「人」単位で検索できるのが最大の特長です。相続が発生した際に、被相続人がどこに不動産を持っているのか全く不明なケースでも、制度を利用すれば所有地を漏れなく把握することができます。
4. どんな人に役立つ制度か
この制度は以下のような方々にとって非常に有用です。
被相続人の財産を調査したい相続人※
成年後見制度を利用しているご家族
不動産売却を検討しているが、資産全体の把握ができていない方
成年後見人・任意後見人・相続人代表として手続きを進める専門職
また、司法書士や税理士などの士業にとっても、遺産分割協議や相続登記の際に不可欠な情報収集手段となるでしょう。
5. 第2回以降の予告
次回の記事では、この制度を実際にどのように利用するのか、申請方法や必要書類、費用などを詳しく解説します。
さらに、第3回では注意点や制度の限界、他制度との使い分け、そして実務的な活用例について紹介する予定です。ぜひシリーズでご覧ください。
6. まとめ
所有不動産記録証明制度は、これまで困難だった不動産の一括調査を実現し、相続実務において画期的な変化をもたらす制度です。相続人が財産の全容を把握するための手間を大幅に軽減し、遺産分割や相続登記をスムーズに進めるための一助となるでしょう。
制度開始前に情報をキャッチアップし、準備しておくことが重要です。
アイリスでは、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
【第3回】該当ありの照会結果~生命保険の契約が見つかった後の手続きと注意点~

「生命保険契約照会制度」で保険契約の存在が判明した――。これは相続人にとって大きな第一歩ですが、ここからが本番です。どのように保険会社に連絡し、必要書類を揃え、保険金の請求に至るのか。手続きを誤ると、余計な時間と手間がかかるばかりか、場合によっては請求権を失ってしまうことも。この最終回では、照会後に「該当あり」の結果が出たときの対応を、実務の視点からわかりやすく解説します。
【目次】
1.「該当あり」の照会結果が届いたら
2.保険会社への連絡と確認事項
3.保険金請求に必要な書類と手続き
4.相続手続きとの関係と注意点
5.よくあるトラブルと対処法
6.まとめ:確実な請求で大切な保険を受け取るために
7.【CTA】相続手続きの専門家に相談して、確実な受け取りを
1. 「該当あり」の照会結果が届いたら
照会結果に「該当あり」と記載されている場合、被相続人が1社以上の生命保険に加入していたことになります。通知には、以下のような情報が記載されています:
保険会社名
契約の有無(該当の有無)
担当窓口の連絡先
なお、具体的な契約内容(契約金額や受取人など)は記載されていません。詳細を知るには、記載された保険会社に個別に連絡する必要があります。
2. 保険会社への連絡と確認事項
照会結果を受け取ったら、まずは保険会社に電話や書面で連絡を取りましょう。その際には、以下の点を確認します:
契約者・被保険者・受取人の氏名と一致の有無
契約内容(保険金額、保険の種類、満期や解約の状況)
必要書類の一覧
請求期限(時効)
時効に注意!
生命保険金の請求権は、原則として3年で時効を迎えます(商法第95条)。死亡から3年が経過すると、保険金の請求ができなくなる可能性があるため、速やかな対応が重要です。
3. 保険金請求に必要な書類と手続き
保険会社によって若干の違いはありますが、一般的に必要とされる書類は以下の通りです:
死亡診断書または死体検案書のコピー
被保険者の住民票除票
請求者(受取人)の本人確認書類
戸籍謄本(関係性を証明するため)
保険証券(ある場合)
これらの書類を提出後、内容に不備がなければおおよそ1~2週間程度で保険金が支払われることが多いです。
4. 相続手続きとの関係と注意点
【保険金は原則として「相続財産」ではない】
生命保険金は、契約時に指定された「受取人」に直接支払われるため、原則として遺産分割協議の対象にはなりません。つまり、受取人が指定されている場合は、その人の「固有の財産」となります。
ただし、次のような例外には注意が必要です:
受取人が「相続人」などとしか記されていない場合:法定相続人全員が対象となり、相続財産として扱われる可能性があります。
受取人がすでに亡くなっていた場合:保険会社との調整が必要になり、再度請求者の確定が求められます。
5. よくあるトラブルと対処法
生命保険の請求をめぐっては、以下のようなトラブルも散見されます:
保険契約が失効していた
保険証券が見つからず、契約の詳細確認に時間がかかる
受取人が不明確で、家族間で争いが生じる
必要書類がそろわず、請求手続きが止まる
このような事態を防ぐには、生命保険契約照会の段階から、専門家と連携して進めることが有効です。司法書士や行政書士、相続に強い専門家に早期相談することで、手続きの不備やトラブルを未然に防げます。
6. まとめ:確実な請求で大切な保険を受け取るために
生命保険契約照会制度は、相続人にとって重要な「気づき」のきっかけを与えてくれる制度です。しかし、照会で「該当あり」となっても、そこから保険金を受け取るには多くの確認と手続きが必要です。
速やかな保険会社への連絡
書類の正確な準備
相続手続きとの整合性確認
これらを一つずつ丁寧に進めることが、トラブルを防ぎ、確実に保険金を受け取る鍵となります。
【CTA】専門家と一緒に、確実な保険金の受け取りを
生命保険の請求は、相続の一部にすぎません。その後の不動産名義変更、遺産分割協議、相続税の申告など、多くのステップが控えています。
当事務所では、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
【第2回】申込手順を徹底解説~生命保険契約照会制度の使い方と必要書類まとめ~

亡くなった家族が生命保険に加入していたかどうかを調べたいときに頼りになる「生命保険契約照会制度」。
第1回では制度の概要を紹介しましたが、今回は実際に制度を利用するための申し込み手順や、必要な書類の詳細について解説します。
オンラインと郵送のどちらで申請するのが便利か、注意すべきポイントは何か、実際の経験に基づいたアドバイスを交えて分かりやすくお届けします。
【目次】
1.申し込みの流れ(オンライン/郵送)
2.照会に必要な書類の一覧
3.書類の取り寄せ方と注意点
4.よくある不備とその対処法
5.オンライン申請のメリット・デメリット
6.まとめ:正確な申請で無駄なく照会を
7.【CTA】相続のプロに相談して安心の手続きを
1. 申し込みの流れ(オンライン/郵送)
生命保険契約照会制度の申し込みは、「オンライン申請」か「郵送申請」の2通りがあります。
【オンライン申請の流れ】
1.生命保険協会の専用サイトにアクセス(https://www.seiho.or.jp/)
2.必要事項を入力し、本人確認書類等をアップロード
3.クレジットカードで手数料(3,000円)を支払う
4.約2週間以内に照会結果がメールまたは郵送で届く
【郵送申請の流れ】
1.協会ホームページから申込用紙をダウンロード
2.記入し、必要書類を添えて郵送(手数料は定額小為替)
3.結果が郵送で届く(約2~3週間)
4.オンラインはスピーディーですが、PCやスマホに不慣れな方には郵送も選択肢となります。
2. 照会に必要な書類の一覧
申請時に必要となる主な書類は、次の通りです。
【共通で必要な書類】
・照会対象者の死亡を証明する書類
(例:住民票の除票、死亡診断書の写し)
・申請者の本人確認書類
(運転免許証、マイナンバーカードなどの写し)
【相続人として申請する場合】
・被相続人との関係を示す戸籍謄本(出生から死亡まで)
【葬儀主催者として申請する場合】
・葬儀費用の支払いが分かる領収書の写し
これらは原本またはコピーで可とされていますが、提出方法により異なるため、申請前に公式サイトのガイドラインを要確認です。
3. 書類の取り寄せ方と注意点
戸籍や住民票などの公的書類は、次の方法で取り寄せが可能です:
・本籍地の市区町村役場に直接出向く
・郵送請求する(申請用紙と定額小為替を同封)
・マイナポータルや一部自治体のオンラインサービスで申請
注意点:
・戸籍は「被相続人の出生から死亡まで」すべて必要
・離婚歴・再婚歴がある場合は戸籍が複数冊にまたがることも
・自身が法定相続人であることが分かるように揃えることが重要
時間がかかる可能性があるため、早めの準備が鍵です。
4. よくある不備とその対処法
実際の照会申請で多いミスには、以下のようなものがあります:
・申請者と被相続人の関係が不明確
・書類に不備(戸籍の一部不足、住所の不一致など)
・書類の写りが不鮮明
・手数料の未払い(郵送申請で定額小為替が不足)
これらの不備があると再提出となり、照会までの時間が延びるため、事前に必要書類をチェックリストで確認しましょう。
5. オンライン申請のメリット・デメリット
メリット:
・手続きがスピーディー(郵送より1週間ほど早い)
・書類のアップロードで完結
・クレジットカードで即決済可能
デメリット:
・書類のスキャンや写真の撮影が必要
・セキュリティ上、ブラウザや環境によっては不具合の可能性も
・パソコンやスマートフォン操作に自信がある方にはオンライン申請が便利ですが、書類に不安がある方は郵送申請を選ぶのも安心です。
6. まとめ:正確な申請で無駄なく照会を
生命保険契約照会制度を活用すれば、保険の見落としを防ぐことができますが、申請の正確さが重要です。
書類の不備や申請方法の選択ミスによって、時間や手間が余計にかかってしまうこともあります。
確実な申請のためには、必要書類を漏れなく揃え、自身の状況に合った申請方法を選ぶことが成功のカギです。
【CTA】制度の活用とその後の手続きも専門家におまかせを
保険の有無を確認したあとの手続き、相続財産の整理、遺産分割協議、不動産の名義変更…。生命保険契約照会制度は相続のスタート地点にすぎません。
当事務所では、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
【第1回】生命保険契約照会制度とは~亡くなった家族に保険があるか調べる方法と注意点~

「亡くなった親や配偶者に生命保険があったか分からない」「保険証券が見当たらないけれど、保険金の請求漏れが心配」。そんなお悩みを抱える相続人の方にとって、2021年7月から始まった「生命保険契約照会制度」は心強い制度です。本記事では、生命保険契約照会制度の仕組みや対象者、照会できる情報の内容をわかりやすく解説します。制度を利用するメリットや注意点も取り上げているので、生命保険の相続に不安がある方はぜひ参考にしてください。
【目次】
1.生命保険契約照会制度とは?
2.照会できる対象者と条件
3.照会の申込み先とできること
4.保険会社に直接問い合わせる方法との違い
5.制度を利用するメリット・デメリット
6.まとめ:大切な人の保険を見逃さないために
7.【CTA】専門家に相談して確実な手続きを
1. 生命保険契約照会制度とは?
生命保険契約照会制度は、一般社団法人生命保険協会が運営する公的な照会制度で、亡くなった家族(被相続人)が加入していた生命保険契約の有無を一括で調べることができます。
かつては、どの保険会社に加入していたか分からない場合、すべての会社に一つひとつ問い合わせる必要があり、大きな労力がかかっていました。この制度により、相続人や一定の利害関係者は、複数の保険会社を横断的に調べることが可能になりました。
2. 照会できる対象者と条件
この制度を利用できるのは、以下のような人々です:
被相続人の相続人(配偶者・子など)
遺言で指定された受遺者
成年後見人など法的代理人
葬儀を行った方(死亡の事実を証明できる人)
いずれも、死亡の事実を証明する書類(死亡診断書や住民票の除票)や、相続関係を示す戸籍謄本などが必要になります。
なお、生前に本人の同意なしで第三者が照会することはできません。制度は「死亡後の契約有無確認」を目的としており、プライバシー保護にも配慮されています。

3. 照会の申込み先とできること
申し込みは、生命保険協会の公式サイト(https://www.seiho.or.jp/)からオンラインまたは郵送で行うことができます。申し込み後、おおむね2週間以内に結果が通知されます。
【照会に必要な情報・書類(一例)】
照会依頼者の本人確認書類
死亡を証明する書類(住民票の除票など)
相続関係が分かる戸籍関係書類
葬儀の領収書(葬儀を行った者として申し込む場合)
照会結果には「保険契約の有無」が記載されており、契約がある場合には、該当の保険会社名が通知されます。その後は、個別に保険会社に連絡を取り、契約内容や保険金請求の手続きに移ります。
4. 保険会社に直接問い合わせる方法との違い
生命保険契約照会制度は、保険会社ごとに個別に照会する方法と比べ、以下のような違いがあります。

制度を利用すれば、保険会社を特定する手間を省き、確実な情報収集が可能になります。
5. 制度を利用するメリット・デメリット
メリット:
全国の主要保険会社を一括して調査できる
保険証券が見つからない場合でも対応可能
相続漏れや請求忘れを防げる
デメリット:
費用が3,000円かかる
契約の詳細までは分からず、別途保険会社と連絡が必要
契約者のマイナーな共済などは対象外の場合もある
とはいえ、大手の生命保険会社はほぼ網羅されており、相続手続きの第一歩として非常に有効です。
6. まとめ:大切な人の保険を見逃さないために
相続は突然やってくるものです。葬儀や手続きに追われる中で、生命保険の存在に気づかず、受け取れるはずの保険金を失うケースも少なくありません。
生命保険契約照会制度は、そうしたリスクを軽減するための実用的なツールです。戸籍や住民票などの必要書類をそろえ、しっかりと活用すれば、相続人の権利を守る強力な味方になります。
【CTA】生命保険の調査や相続手続きでお困りなら、専門家に相談を
生命保険契約の照会だけでなく、その後の請求手続きや相続税の対応、不動産の名義変更など、相続にはさまざまな専門知識が求められます。
当事務所では、相続全般にわたるご相談を受け付けております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※ノウハウを教えてほしいという相談にはお答えできません。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
【第5回】売れない・貸せない農地はどうする?“放棄できない”農地の出口戦略とは

【はじめに:誰も使わない農地、どうすればいい?】
農地を相続したものの、売れない、貸せない、耕作する予定もない――そんな"行き場のない農地"を抱えて困っている方が少なくありません。
「いっそ放棄してしまいたい」と思うかもしれませんが、**農地は"放棄できない資産"**です。草が生え、近隣に迷惑をかける状態になれば、管理責任を問われる可能性もあります。
では、こうした使い道のない農地には、どのような"出口"があるのでしょうか?
第5回では、売れない・貸せない農地の出口戦略について、現実的な対策をお伝えします。
相続後に"悩まされる資産"にしないために、ぜひ参考にしてください。
目次
1.放棄できない?農地の相続と管理責任の実情
2.地元自治体に相談!公的制度の活用例
3.無償譲渡という方法はある?
4.農地を宅地などへ転用することは可能か
5.「相続放棄」という選択肢の現実と注意点
6.遺言や生前対策で"使えない農地"を残さない工夫
7.まとめ:農地を「持ち続けない」ことも大切
8.【CTA】農地の整理・処分に困ったら専門家へ
1. 放棄できない?農地の相続と管理責任の実情
農地は、相続したからといって勝手に放棄することはできません。
固定資産税がかかるうえ、管理を怠れば近隣トラブルや行政指導の対象にもなりかねません。
「放棄したい」「持っていたくない」と思っても、相続登記がなされていなくても、実質的に"所有者とみなされる"ケースもあります。
また、「農地だから価値がある」と思われがちですが、農業振興地域にある農地などは売却や転用が制限されており、実質的には負の資産になってしまうこともあります。

2. 地元自治体に相談!公的制度の活用例
一部の自治体では、耕作放棄地や遊休農地を解消する取り組みを進めており、農地の利活用を促進する制度を設けています。
たとえば:
空き農地バンク(農地バンクとは別)
農業振興地域の見直し申請支援
地域の新規就農者への農地紹介制度
地元農業委員会や市区町村の農政課などに相談することで、地域内での活用ニーズが見つかる可能性もあります。
3. 無償譲渡という方法はある?
売却できない農地でも、第三者に"無償で譲渡"することは理論上可能です。
ただし、以下の条件があります:
相手が農業従事者であり、農地法第3条の許可を得られること
農地として利用する意思があること
境界や面積、地目が明確であること
農業法人や近隣の農家が受け取ってくれるケースもありますが、引き受け側にとっても固定資産税や管理負担が生じるため、現実にはなかなか成立しづらいのが実情です。
4. 農地を宅地などへ転用することは可能か
農地を転用(宅地や駐車場などへの変更)するには、農地法第4条・第5条による許可または届出が必要です。
また、次のような点にも留意が必要です:
農業振興地域内農地は、原則として転用不可
市街化調整区域では、建物建築に厳しい制限あり
転用許可が下りても、造成や整備費用がかさむ場合あり
つまり、理屈上は転用できる農地も、現実には採算が合わないケースが大半です。
転用を視野に入れる場合は、土地家屋調査士や行政書士など専門家との連携が必須となります。
5. 「相続放棄」という選択肢の現実と注意点
どうしても農地を引き受けたくない場合、家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをすることは可能です。
ただし、注意点として:
相続放棄はすべての財産を放棄する手続きであり、プラスの財産も放棄することになる
一定期間(原則3か月)以内に手続きをしないと、放棄できない
他の相続人に順次、農地の管理責任が移る
つまり、「農地だけを放棄する」ということは原則できず、全体の相続内容を精査して判断する必要があります。
6. 遺言や生前対策で"使えない農地"を残さない工夫
農地の処分に苦しむのは、多くの場合「前の代が農地の整理をしないまま亡くなった」ケースです。
そこで有効なのが、生前に以下のような対策をしておくことです:
農地を処分する意思を遺言で明示する
生前贈与や名義変更によって、早めに処分の責任を移しておく
利用価値の低い農地を自治体や農地バンクに打診しておく
「農地は放棄できない資産である」と子世代に伝えておく
使い道のない農地を「残さない」ということ自体が、次世代にとって最大の相続対策になるのです。
7. まとめ:農地を「持ち続けない」ことも大切
農地は"資産"ではあるものの、使い道が限られているため、時として"お荷物"になり得る存在です。
売れない、貸せない、使わない農地を"放置"することは、次の世代に大きな負担を残すことにもなります。
大切なのは、「活かす」だけでなく、「処分する」「持ち続けない」という選択肢も戦略的に検討することです。
早めに情報収集し、信頼できる専門家に相談しながら、納得のいく出口戦略を立てていきましょう。
【CTA:農地の整理・処分でお悩みの方へ】
「誰も使わない農地、手放したいけど方法がわからない」
「相続後に困らないよう、生前に整理しておきたい」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
【第4回】相続した農地は「貸す」という選択肢も!農地バンクなどを活用する方法とは?

【はじめに:農地は売れないなら"貸す"という方法もある】
「農地を相続したけれど、農業をする予定はない。売ることも難しい」――そんな方に注目していただきたいのが、農地を"貸す"という選択肢です。
農地法により売却や転用に制限がある農地でも、貸し出すことは比較的柔軟に対応が可能であり、一定の収益を得ながら保有し続けることができます。
特に、国が推進している農地中間管理機構(いわゆる「農地バンク」)の活用は、有効な手段の一つです。
農地を相続した方にとって、「耕作放棄地」として管理放棄してしまうよりも、社会的にも経済的にもメリットがある方法として注目されています。
この記事では、農地を相続した場合に「貸す」という選択肢がどのように機能するのか、メリット・デメリット、手続きの流れについて詳しくご紹介します。
目次
1.農地を貸すときの基本ルール
2.「農地バンク(農地中間管理機構)」とは?
3.農地バンクを使うメリットと条件
4.個人間での農地の賃貸借も可能?
5.貸すときに注意すべきポイント
6.「貸す」か「売る」か判断の基準とは?
7.まとめ:農地を活かす選択を
8.【CTA】農地の活用に迷ったら、まずはご相談を
1. 農地を貸すときの基本ルール
農地を貸し出す際にも、やはり農地法の規制が関係してきます。
農地を他人に貸す場合は、原則として農地法第3条の許可が必要です。
ただし、以下のような例外があります:
農地中間管理機構を介して貸す場合は、許可ではなく届出で可
相続人が複数いる場合は、事前に共有者の同意が必要
また、契約期間や耕作目的によっても取り扱いが異なるため、事前の確認と専門家の助言が不可欠です。
2. 「農地バンク(農地中間管理機構)」とは?
農地バンクとは、正式には農地中間管理機構と呼ばれる公的な組織で、各都道府県単位で設置されています。
その主な役割は以下のとおりです:
農地の「貸したい人」と「借りたい人」をマッチングする
農地の管理を中間的に引き受け、適切な利用者へ再貸し付けする
農業の担い手に農地を集積・集約する
貸主(地主)は、農地バンクに農地を提供することで、煩雑な賃貸契約や管理の手間を軽減できます。
3. 農地バンクを使うメリットと条件
【メリット】
農地法第3条の**「許可」が不要(届出のみ)で簡単**
利用者の選定や契約管理を農地バンクが代行
一定の賃料収入が見込める
農地の有効活用が社会的にも評価される
【利用の条件】
農地の状態が一定基準を満たしている(耕作可能)
地域によっては「優先区域」の指定がある
一定の契約期間が必要(原則10年が目安)
自治体や農業委員会の協力も得られやすいため、相続農地の放置対策としては最も現実的な選択肢の一つです。
4. 個人間での農地の賃貸借も可能?
農地を農地バンクを通さずに、個人間で貸すことも可能です。
ただしその場合、農地法第3条による「賃貸借の許可」が必要になります。
この許可を得るには、借り手側に以下のような条件が求められます:
農業に従事する能力・実績がある
農業経営として適切な規模を維持している
地域の農業との調和がとれている
また、契約書の整備、契約期間、更新手続きなどの管理も自分で行う必要があるため、煩雑さは否めません。
5. 貸すときに注意すべきポイント
農地を貸し出す際には、次の点に注意が必要です:
【契約内容の明確化】
口約束ではなく、書面で契約内容を明示すること
【賃料の取り決め】
地域の相場を参考に設定し、金額・支払時期を明記
【契約期間】
短期よりも長期契約の方が農業者側のメリットが大きい
【管理責任の所在】
境界トラブルや災害時の責任分担も事前に明文化しておく
また、賃料を「無償」とする場合にも、農地法の許可・届出は必要になることを覚えておきましょう。
6. 「貸す」か「売る」か判断の基準とは?
相続した農地の将来について「貸すか売るか」迷ったときは、以下の観点で考えるとよいでしょう。
将来的に農地を自分や家族が使う予定があるか?
売却が可能な地域かどうか(都市計画区域など)
買い手が見つかる見込みはあるか?
貸すことでの収益や社会的貢献をどう評価するか?
特に「すぐには売れない」「誰に売ればよいか分からない」といった場合には、貸すことで時間的猶予を得ることも有効です。
7. まとめ:農地を活かす選択を
相続した農地に手をつけずにいると、草が生い茂ったり、近隣からの苦情が出たりと、管理リスクが高まります。
けれど「貸す」という手段を取れば、農地は社会に貢献しながら、持ち主にとっても利益をもたらす存在になります。
特に農地バンクを活用すれば、煩雑な手続きの多くを任せられ、実質的に放置せずに済むのです。
次回(第5回)は、どうしても売れない・貸せない農地に対して取れる"出口戦略"についてご紹介します。
【CTA:農地の貸し出しや活用方法にお悩みの方へ】
「農地バンクって、実際どう使うの?」
「貸したら返ってこないのでは?トラブルが心配…」
そんな不安や疑問、ありませんか?
当事務所では、農地の相続・活用・貸出に関する無料相談を承っています。
農業委員会との調整や、契約書の作成支援もおまかせください!
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
「放置する前に、一度だけでも相談してみる」――それが、未来への最良の一歩かもしれません。
【第3回】相続後に農地を売りたい!処分のための手続きと注意点を徹底解説

【はじめに:農地は相続しても"すぐに売れない"】
「親から農地を相続したけど、農業はやらないから売却したい」――そう思っても、農地は宅地のように簡単には売れません。
農地法という特別な法律の制限があるため、誰にでも売れるわけではなく、処分には行政の許可や手続きが必要です。
特に、相続した直後は気持ちも手続きも落ち着かない時期。
けれど、放置しておけば固定資産税が発生したり、耕作放棄地として問題視されたりするリスクもあります。
この記事では、農地を相続したあとに「売却したい」と考えたときに取るべき行動と、その際の注意点について、わかりやすく解説していきます。
目次
1.相続した農地を売るには何が必要か?
2.農地売却に必要な手続きと許可(農地法第3条)
3.農地を宅地等に"転用"してから売る方法(農地法第5条)
4.売却先が親族の場合も許可は必要?
5.農地売却における相場と買い手の探し方
6.売れない場合の代替手段(貸付・寄付など)
7.まとめ:相続後は早めの判断がカギ
8.【CTA】農地の処分・売却でお困りなら今すぐご相談を
1. 相続した農地を売るには何が必要か?
一般の不動産のように、農地は「売りたいと思えば売れる」ものではありません。
なぜなら、農地は食料生産という公益性の高い資産と位置付けられているため、勝手な売買や転用が制限されているのです。
農地を売却するには、基本的に以下のような条件をクリアする必要があります:
・相手が「農業従事者」であること
・市町村や農業委員会の「農地法の許可」を受けること
・地目が「農地」である限り、自由な転用・売却はできない
したがって、相続した農地を処分したい場合には、農地法の手続きが第一関門となります。
2. 農地売却に必要な手続きと許可(農地法第3条)
農地を農業従事者に売却するには、農地法第3条の「権利移動の許可」を得る必要があります。
この許可を得るには、主に以下の条件を満たす買主でなければなりません:
・主に農業を生業としていること(常時従事)
・取得後の農地の一体的な管理が可能であること
・最低限の経営規模を維持していること(地域ごとに規定あり)
この許可を取得するには、申請書を作成し、農業委員会に審査を依頼する流れになります。
なお、農地の売買契約は、この許可を得てからでなければ法的に効力を持ちません。
3. 農地を宅地等に"転用"してから売る方法(農地法第5条)
「農業従事者に売れないのであれば、農地以外に転用して売る」――そんな方法もあります。
この場合に必要となるのが、農地法第5条の「転用を伴う権利移動の許可」です。
ただし、転用には以下のような厳しい制限があります:
・市街化調整区域では、原則として転用不可
・農業振興地域の農用地区域にある農地も、転用困難
・許可までに時間と手間がかかる場合もある
よって、転用して売却するには、まずその土地が法的に転用可能かどうかの確認が最優先です。
4. 売却先が親族の場合も許可は必要?
「親族に売るから簡単でしょ?」と思われがちですが、農地の場合はそう単純ではありません。
たとえ親子や兄弟間の売却であっても、農業委員会の農地法の許可が必要です。
たとえば、親が農業をしていて、子に売却したい場合でも、子が農業を継ぐ意思と実態があるかが厳しく問われます。
つまり、「名義を変えるだけ」といった対応は、農地では通用しないのです。
5. 農地売却における相場と買い手の探し方
農地は通常の不動産と違い、需給が限られているため、相場価格も一般的には低めです。
売却を考える場合、まず自治体や農業委員会を通じた紹介や、農地中間管理機構(農地バンク)の利用を検討しましょう。
また、以下のような買い手を探すのが一般的です:
・近隣の農業従事者(既存農家)
・新規就農者
・親族で農業を継ぐ意思のある人
不動産会社でも取り扱い可能なケースもありますが、農地に詳しい業者を選ばないと、許可手続きでつまずくことがありますので注意が必要です。
※農業委員会の農地法の許可書がないと、移転登記は却下されます。
6. 売れない場合の代替手段(貸付・寄付など)
「売れない、でも放っておくのも困る」という場合は、以下のような選択肢もあります:
・農地バンクへの貸し出し(管理を委託できる)
・寄付(自治体やNPOなどへ提供)
・自主管理しながら保留(ただし税金と維持が必要)
特に農地バンクは、一定の賃料収入も見込め、周辺農家との連携も図れることから、有効な選択肢のひとつです。
7. まとめ:相続後は早めの判断がカギ
農地は「相続した後に悩みやすい不動産」の代表格です。
特に処分には法的制限と手続きのハードルがあるため、思いつきで売却を進めることはできません。
とはいえ、早めに行動を起こせば、貸す・売る・保留するといった複数の選択肢を検討する時間が確保できます。
農業を続ける意思がないなら、一日でも早く処分方針を立てることが重要です。
次回は、「農地を相続したが使い道がないときに検討すべき"貸す"という選択肢」について、詳しく掘り下げてまいります。
【CTA:農地を相続したら、まずはご相談を】
「農地をどう扱えばいいのか分からない」
「売却や転用を考えているけど、何から始めれば?」
そんなお悩みをお持ちの方へ。
当事務所では、農地の売却・転用・貸付・相続手続きに関する無料相談を行っております。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
悩んでいる間にも、時間とコストは静かに流れていきます。
【第2回】生前にできる!農地の相続トラブルを防ぐ5つの対策とは?

【はじめに:相続トラブルを回避するには"生前対策"がカギ】
「相続した農地が使えない」「名義変更をしていなかったために遺産分割が揉めた」――そんな話を耳にすることはありませんか?
農地は通常の不動産と異なり、農地法による制限が厳しく、誰にでも売れるものではありません。そのため、相続人が農業を継がない場合、事前の対策が不可欠です。
本記事では、「農地を相続した後に困らないために、親世代が元気なうちにしておくべきこと」をテーマに、農地の生前対策を5つの視点から整理してご紹介します。
生前にどう農地を処分・管理・承継するかを考えておくことで、相続後のトラブルを大幅に回避できます。
目次
1.なぜ農地の生前対策が必要なのか?
2.対策① 農地バンク(農地中間管理機構)への貸し付け
3.対策② 農業従事者への売却手続き(農地法第3条)
4.対策③ 転用してからの処分(農地法第4・5条)
5.対策④ 生前贈与で名義を移す
6.対策⑤ 遺言書による明確な意思表示
7.まとめ:元気なうちに動くのが一番の相続対策
8.【CTA】無料相談受付中
1. なぜ農地の生前対策が必要なのか?
農地は一般的な宅地やマンションとは違い、農地法という特別な法律に基づいて運用されます。
そのため、農業に携わらない相続人にとっては、引き継いでも活用できない不動産になってしまいがちです。
また、相続発生後に農地の所有者が未確定のままだと、耕作放棄地として周囲に迷惑をかけたり、登記未了による相続人間の対立を招くこともあります。
つまり、「農地の生前対策」は、将来の円滑な相続と地域との良好な関係を守るうえでも重要な役割を果たします。
2. 対策① 農地バンク(農地中間管理機構)への貸し付け
農地を手放すわけではないけれど、活用のあてがない場合は、「農地中間管理機構(農地バンク)」を利用する方法があります。
農地バンクが間に入って、地域の担い手農家に農地を貸し出す制度で、契約や管理も代行してくれるため、農地の維持管理の負担を軽減できます。
貸付によって耕作が続けば、農地としての価値や税制優遇も維持でき、将来的な選択肢を残すことにもつながります。
3. 対策② 農業従事者への売却(農地法第3条)
農地を売却したい場合、原則として農業従事者に対してのみ売ることが可能です。このとき必要になるのが、農地法第3条による許可手続きです。
農地法第3条の許可を得るには、買い手が以下のような要件を満たす必要があります:
・農業に常時従事していること
・周辺農地との一体的管理が可能であること
・適正な耕作面積を保つこと など
このような制約があるため、親の代で信頼できる農業者への売却を進める方がスムーズです。
4. 対策③ 転用してからの処分(農地法第4・5条)
「農地のままでは売れないが、宅地にすれば売れるのでは?」という考えも一理あります。
実際、農地を宅地や駐車場などに転用して売却するケースもありますが、その際には農地法第4条または第5条の許可が必要です。
ただし、農業振興地域内の農地や市街化調整区域にある農地は、原則として転用が認められないため、場所や地目によってはこの方法が使えないこともあります。
5. 対策④ 生前贈与で名義を移す
親から子へ、生前に農地を贈与することで、相続時の争いや煩雑な手続きの一部を回避することができます。
ただし、農地の名義変更も「農地法第3条の許可」が必要ですし、贈与税の課税対象にもなるため、事前の専門家相談は必須です。
なお、相続時精算課税制度を活用すれば、2,500万円までの贈与が非課税で処理できる可能性があります。
6. 対策⑤ 遺言書による明確な意思表示
「誰にどの農地を相続させるのか」を遺言書で明確にしておけば、相続人間の争いを回避しやすくなります。
とくに兄弟姉妹が複数いる場合、農地を共同で相続させてしまうと、後々の管理・処分に支障が出ることが少なくありません。
そのため、農地の遺言は「誰が引き継ぎ、どのように使うか」まで明示するのが理想的です。
7. まとめ:元気なうちに動くのが一番の相続対策
農地は「売りにくく」「使いにくく」「揉めやすい」不動産の代表格です。
相続が発生してから慌てるのではなく、農地の処分・継承方針は、生前にじっくりと検討し、必要に応じて実行することが肝要です。
農地バンクの利用、贈与、転用、売却、遺言――いずれもケースバイケースで適切な方法を選ぶことが求められます。
次回は、相続が発生した後に、農地を処分する具体的な方法について解説していきます。
8.【CTA:農地の生前対策、今すぐ始めませんか?】
「まだ元気だけど、そろそろ農地のことも考えておきたい」
「子どもに迷惑をかけたくない」
そんな思いをお持ちの方へ。
当事務所では、農地の処分・贈与・遺言に関する生前対策の個別相談を承っております。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
まずは無料相談から、一歩踏み出してみませんか?
次回の記事もどうぞお楽しみに!
【第1回】相続した農地、どうすればいい?――最初にすべきことと基礎知識を解説!

親が亡くなった後に農地を相続したものの、「どうすればいいのか分からない」「売ることはできるの?」「放っておくと問題になるの?」――そんなお悩みを抱える方が増えています。
特に現代では、相続人が農業に従事していないケースが多く、「使わない土地だけが残ってしまった」という状況も珍しくありません。一方で、農地には農地法という特別な法律があり、簡単に売却や転用ができない点も大きなハードルになります。
このシリーズでは、相続した農地をどのように処分・整理すべきか、生前対策と相続後の対処法の両面から5回にわたって解説していきます。第1回では、まず相続直後に「やるべきこと」と、知っておきたい農地法の基礎知識をお届けします。
目次
1.相続農地のトラブルが増えている背景
2.まずやるべき3つの確認ポイント
3.農地法とは?売れない・貸せないのはなぜ?
4.放置リスクと固定資産税の実情
5.生前対策としての「農地の整理」とは?
6.まとめ:まずは現状把握がすべての出発点
1. 相続農地のトラブルが増えている背景
かつては農業を生業とする家庭が多く、農地も生活の基盤でした。しかし、今や多くの子世代が都市部で生活しており、相続された農地が使われないまま残されるケースが増えています。
農地はそのままでは売却も転用もできず、**「管理もできない」「売れない」「放置できない」**という"三重苦"に悩まされがちです。放置しておくと雑草や不法投棄などで近隣トラブルに発展することもあり、早期の対応が求められます。
2. まずやるべき3つの確認ポイント
農地を相続したら、まずは以下の3つを確認しましょう。
(1)登記簿の確認(相続登記の有無)
誰の名義になっているのか、登記簿謄本(全部事項証明書)を取得して確認します。2024年4月以降、相続登記は義務化されており、3年以内の登記が求められます。
※2代、3代前の名義になっている場合、大掛かりな相続人の調査が必要になる場合があります。
(2)地目と地番の確認
その土地が「農地(田・畑)」かどうか、地目の確認が必要です。また、市街化区域内か農業振興地域内かによって、処分方法も大きく変わります。
(3)現況の確認(耕作の有無)
実際に耕作しているのか、他人が使っていないか、耕作放棄地になっていないかも重要です。現地調査や近隣住民への聞き取りも有効です。
3. 農地法とは?売れない・貸せないのはなぜ?
農地の処分が難しいのは、「農地法」によって制限されているからです。農地法では、以下のような行為に農業委員会の許可が必要です。
農地を売る(農地法第3条)
農地を他の目的に転用する(第4条)
転用したうえで売却・賃貸する(第5条)
農地は原則として農業従事者にしか売れないため、一般人には売ることができません。農地を宅地などに転用する場合も、厳しい条件をクリアする必要があります。
4. 放置リスクと固定資産税の実情
使わない農地でも、所有している限り固定資産税はかかります。しかも「雑種地」などに地目変更された場合、税額が跳ね上がることも。さらに、以下のようなリスクもあります。
管理責任(草刈り、境界トラブル等)
不法投棄の被害
近隣からのクレームや行政指導
農地は使わなくても「コスト」と「責任」が発生する資産です。放置するのではなく、活用か処分の方針を定めておくことが重要です。
5. 生前対策としての「農地の整理」とは?
相続が発生する前に、農地をどのように整理できるかがポイントです。たとえば:
農地バンクへの貸し付け(農地中間管理機構)
農業従事者への売却(3条許可)
転用して売却(4条・5条許可)
親世代が元気なうちに「誰に引き継がせるか」「どこまで残すか」を検討することで、子世代の負担は大きく軽減されます。早めの対策こそが、将来の円満な相続への第一歩です。
6. まとめ:まずは現状把握がすべての出発点
相続した農地をどうするかは、「農地の状態」「場所」「法的規制」によって大きく異なります。まずは登記や地目、利用状況をしっかり把握し、放置せず、方向性を決めることが何よりも大切です。
次回は、生前にできる農地の整理対策について、具体的な方法をご紹介していきます。
【CTA:無料相談受付中】
相続した農地の整理でお困りの方、生前に農地をどうすべきか悩まれている方へ。
当事務所では、農地の相続登記や処分に関するご相談を初回無料で承っております。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
お気軽にご相談ください。次回の更新もどうぞお楽しみに!
【第5回】空き家の相続登記と名義変更──法的準備を怠ると“売れない家”になる

空き家を売る・貸す・解体する。
どの選択肢に進むとしても、その第一歩として「所有者の確定」=名義の整理が必要不可欠です。
しかし現実には、「親の家を相続したけれど登記していない」「兄弟間で話し合いがまとまらず放置している」といったケースが後を絶ちません。
こうした状態では、売却も解体も補助金の申請も進められず、"何もできない空き家"となってしまいます。
この記事では、空き家の利活用に向けた相続登記や名義変更の重要性、さらに2024年4月から施行された相続登記の義務化に関する最新情報も踏まえて、対策のポイントを解説します。
目次
1.相続登記をしていない空き家のリスク
2.2024年4月から「相続登記の義務化」がスタート
3.登記をしないとどうなる?罰則や不利益
4.名義整理をするための流れと必要書類
5.相続人が複数いる場合の注意点
6.空き家の活用・売却を可能にする法的整備
7.専門家(司法書士・行政書士)に頼るメリット
8.まとめ:空き家は「法的整理」からすべてが始まる
1. 相続登記をしていない空き家のリスク
「相続人の誰かの名義に登記されている」と思い込んでいても、実際の登記簿を確認すると亡くなった人の名義のままということがよくあります。
このような状態では、以下のような問題が生じます。
・売却ができない
・解体の契約ができない
・補助金の申請ができない
・固定資産税の通知だけが届く
つまり、一歩も前に進めない状態なのです。
2. 2024年4月から「相続登記の義務化」がスタート
これまで相続登記は任意でしたが、2024年4月1日からは相続登記の義務化制度が始まりました。
・相続を知った日から【3年以内】に登記申請が必要
・正当な理由なく怠ると【10万円以下の過料】の対象に
・相続人申告登記という簡易手続きでも可
この制度により、「いつまでも放置しておく」という選択肢がなくなりつつあります。
3. 登記をしないとどうなる?罰則や不利益
義務化に伴う罰則(過料)も導入されましたが、それ以上に深刻なのは"実務上の不利益"です。
例えば:
・複数の相続人が高齢化して亡くなり、相続関係が複雑化
・共有者の1人でも反対すると売却できない
・補助金の申請に必要な「名義人の同意」が得られない
つまり、時間が経てば経つほど問題が深くなるのです。
4. 名義整理をするための流れと必要書類
相続登記を行うには、以下のような書類と手続きが必要です。

※単独相続や遺言がある場合は内容が異なります。
5. 相続人が複数いる場合の注意点
空き家の相続人が複数いる場合、名義を共有にするのは避けた方が無難です。
なぜなら:
・売却や解体に全員の同意が必要
・意見が分かれやすく、調整に時間がかかる
・将来的にさらに相続が発生し、権利が細分化される
できるだけ誰か一人に集約して登記するか、売却して現金で分けるなどの方向が現実的です。
6. 空き家の活用・売却を可能にする法的整備
空き家の利活用にあたり、以下のようなケースでは登記の整備が前提になります。
・空き家バンクに登録する
・売却して資金を得る
・利活用にあたって補助金を申請する
・解体や改修の契約をする
名義が亡くなった人のままだと、何一つ契約が結べないのです。
7. 専門家(司法書士・行政書士)に頼るメリット
相続登記の手続きは煩雑で、書類不備で申請が受理されないこともあります。
専門家に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
・書類収集と作成を代行してもらえる
・戸籍の読み取りや法的な判断が正確
・争いになりそうな場合の調整役にもなれる
・必要に応じて不動産業者や税理士と連携できる
空き家を動かすには、"法的準備の完了"がスタートラインです。
8. まとめ:空き家は「法的整理」からすべてが始まる
空き家対策は、目に見える部分(リフォーム・売却)だけでは完結しません。
その前にある「名義の整理」ができていなければ、すべてが止まってしまいます。
・相続登記は義務化された
・登記をしないと補助金も使えない
・相続人が増える前に整理することが重要
・専門家に早めに相談を
5回にわたってお届けした空き家対策シリーズ。
「問題を抱えたままの空き家」から「次のステージに進む空き家」へ。
小さな一歩が、大きな再生のきっかけになります。
【第4回】空き家対策に使える公的制度と補助金──費用負担を軽くする支援策まとめ

空き家の活用や処分を考えるとき、多くの方が最初に直面するのが「お金の問題」です。
「リフォームしたいけど費用が高そう」
「解体して更地にしたいけど、予算が足りない」
「売るにも修繕が必要で、どうしていいかわからない」
このような空き家に関する金銭的な不安は、全国の所有者に共通する悩みです。
しかし実は、国や自治体には空き家の解体・リフォーム・活用に使える補助金や支援制度が多数用意されています。
うまく活用すれば、自己負担を大幅に減らしながら、空き家問題を前向きに解決することが可能です。
今回は、空き家対策に使える主な補助金制度、公的サポート、さらに活用の際に頼れる専門家についてわかりやすく紹介します。
目次
1.補助金を使うことで空き家活用は加速する
2.空き家に使える主な補助金制度(国・自治体)
3.解体・除却支援制度とは?
4.リフォーム・利活用支援制度の例
5.相談できる窓口と専門家の役割
6.成功事例:自治体支援を活用して再生された家
7.まとめ:制度を知ることで"やらない理由"がなくなる
1. 補助金を使うことで空き家活用は加速する
空き家の解体費用は、構造や立地によっては数100万円以上かかることもあります。
また、利活用のために必要なリフォームも数十万円から数百万円単位の出費になることが多く、放置される一因となっています。
しかし、国土交通省をはじめ、各市区町村ではこうした空き家の活用促進のために、解体・改修・利活用にかかる費用を一部補助する制度を導入しています。
「お金が理由で手が出せなかった」という人こそ、これらの制度を知ることで、解決への一歩を踏み出せます。
2. 空き家に使える主な補助金制度(国・自治体)
補助金制度には大きく分けて以下の3つのタイプがあります。

これらは自治体ごとに条件や補助額が異なりますが、最大で100万円〜200万円程度の補助を受けられる場合もあります。
3. 解体・除却支援制度とは?
近年、増えているのが「特定空き家」に指定された物件の除却支援です。
◆ 特定空き家とは?
・倒壊や衛生上の危険がある
・景観を著しく損ねる
・周辺住民に悪影響を及ぼす可能性がある
こうした空き家に対して、所有者の自主的な解体を促すための補助金が用意されています。
例)東京都大田区の除却支援制度(令和6年度)
・補助対象経費の2/3(上限150万円)
・施工前に申請が必要
・建物の築年数や構造に条件あり
4. リフォーム・利活用支援制度の例
売却や賃貸の前提となるリフォーム費用を補助する制度も注目です。
例)長野県松本市「空き家再生支援補助金」
・耐震補強や水回り改修などに対して最大100万円補助
・入居者または移住者とのマッチングも支援
・NPOと連携したワンストップ相談体制
例)高知県「移住者向け空き家改修支援」
・県外からの移住者が対象
・改修費最大200万円(地域によって加算あり)
・改修後の住宅として最低5年の居住が条件
こうした制度は、「地元に戻って住んでほしい」「地域に人を呼び込みたい」と考える自治体ほど充実している傾向にあります。
5. 相談できる窓口と専門家の役割
補助金の申請には、複雑な書類作成や条件確認が必要になることもあります。
その際に力になってくれるのが、以下のような相談窓口や専門家です。
・各市町村の空き家対策窓口
・空き家バンクの担当部署
・司法書士(相続登記)
・建築士・工務店(リフォーム見積)
・宅建士・不動産業者(賃貸・売却仲介)
複数の支援制度を組み合わせることも可能なので、「とりあえず市役所に相談してみる」ことがスタートになります。
6. 成功事例:自治体支援を活用して再生された家
◆ 事例:京都府与謝野町
築60年の木造住宅を所有していたが、相続後5年以上放置されていた。
倒壊の危険があり「特定空き家」指定直前だったが、町の除却補助制度(上限100万円)を活用して解体。
更地になった土地は月極駐車場として再活用され、年間20万円の収入を得ている。
「空き家のままでは誰も見向きもしなかったが、補助制度があったから動けた」と所有者は話しています。
7. まとめ:制度を知ることで"やらない理由"がなくなる
空き家対策において、補助金や公的制度は非常に心強い味方です。
・解体もリフォームも、実は補助がある
・地域によってはさらに手厚い支援も
・専門家や役所をうまく活用すれば負担も軽減できる
「お金がないから放置している」という状況こそ、制度を調べてみる価値があります。
次回は、「相続と登記を済ませてはじめて動ける!空き家の"法的準備"とは?」をテーマに、空き家対策の最重要ステップを解説します。
【第3回】空き家を負動産にしないために──賃貸・売却・利活用という3つの選択肢

「相続した実家が空き家のまま…そろそろ何かしなければ」
「放置していたら特定空家に指定されてしまうかも」
こうした悩みを抱える方は少なくありません。
空き家問題は、ただ管理すればよいという話ではなく、「その空き家をどう活かすか?」という選択が、将来の資産価値や生活の安心に直結します。
特に近年では、空き家を賃貸住宅として貸し出す、売却して資産を現金化する、あるいは地域に開かれた活用をするといった多様な選択肢が生まれています。
本記事では、空き家を「負動産」にしないための3つの具体策──賃貸、売却、利活用──について、メリット・デメリットを交えつつ、実際の地域事例も紹介しながら解説します。
「とりあえず様子見」ではなく、「今、動く」ための第一歩としてご活用ください。
目次
1.空き家をどう扱うか、3つの基本方針
2.【賃貸活用】空き家を貸し出す選択肢と注意点
3.【売却】早めの判断が有利に働く理由
4.【利活用】地域に役立てる空き家の可能性
5.【地域事例紹介】長野県・香川県の取り組み
6.まとめ:空き家の出口戦略を「持つ」ことの重要性
1. 空き家をどう扱うか、3つの基本方針
空き家への対応は大きく以下の3つに分類されます。
賃貸に出す(収益化)
売却する(資産処分)
地域活動や家族利用に転用する(利活用)
これらの選択肢にはそれぞれ特徴と適性があり、**「どの選択が最も現実的か」**を冷静に見極めることが大切です。
また、空き家が遠方にある場合や老朽化が進んでいる場合には、特に第三者のサポートが不可欠になります。
2. 【賃貸活用】空き家を貸し出す選択肢と注意点
空き家を賃貸物件として活用すれば、固定資産税の負担軽減や収益化が見込めます。
最近では「古民家リノベーション」や「地域移住者向け賃貸」としての需要も増えています。
メリット:
定期的な収入が見込める
建物の劣化を抑えられる(人が住むことで通気・手入れが進む)
地域の空き家率対策にも貢献できる
注意点:
修繕・リフォームの初期費用が発生する
入居者とのトラブルや管理負担がある
空室期間が長引くと収益性が落ちる
→ 管理会社の活用や「定期借家契約」の導入など、リスクヘッジが必要です。
3. 【売却】早めの判断が有利に働く理由
空き家が遠方にあり管理が難しい場合、売却は現実的な選択肢です。
近年では、空き家専門の不動産会社や自治体主導の「空き家バンク」も増えており、流通市場の整備も進んでいます。
メリット:
維持管理や税金の負担から解放される
資産を現金化でき、他の相続人と分配しやすくなる
老朽化する前に売れば売却価格も下がりにくい
注意点:
地域によっては売却に時間がかかる
登記が未了だと売却できない(相続登記が必須)
地元業者との相性が重要
→ 売却活動の前に司法書士や不動産会社との事前相談が有効です。
4. 【利活用】地域に役立てる空き家の可能性
近年注目されているのが、空き家を「地域の資源」として活かす方法です。
コワーキングスペースやゲストハウスに再生
子育て支援施設や地域食堂への転用
趣味の工房・ギャラリーとして利用
これらは収益性を直接求めない活用法も多く、NPOや地域団体との連携がカギとなります。
メリット:
地域貢献に繋がる
建物の保存・活用に意義がある
自治体からの補助金を受けられる可能性がある
注意点:
初期投資や管理人材の確保が必要
利用目的が限定されることも
5. 【地域事例紹介】長野県・香川県の取り組み
長野県伊那市:空き家バンク+移住促進モデル
市が仲介し、空き家を探す移住者とマッチング。修繕費補助や改修後の賃貸支援制度を整備。結果として、年間50件以上の成約事例がある。
香川県三豊市:空き家リノベと観光融合モデル
使われなくなった古民家をカフェ・宿泊施設へリノベーション。地域住民と企業が共同出資し、観光スポットとして成功。
→ 地域資源としての空き家をどう活かすか。行政と住民の協力で、空き家が"まちの顔"に変わった好例です。
6. まとめ:空き家の出口戦略を「持つ」ことの重要性
空き家問題の本質は、「所有したまま動かないこと」にあります。
放置ではなく、「どう出口を設計するか」を考えることが、資産の保全と家族の安心に繋がります。
次回は、**「空き家対策に使える制度・補助金・専門家の支援」**について詳しく解説します。
司法書士として関わる「相続登記」「家族信託」などの法的サポートも併せてご紹介します。
【第2回】空き家を放置するとどうなる?〜法的・経済的リスクを徹底解説〜

「空き家を放置しているとどうなるの?」「相続した実家が空き家のままになっているけど、何か問題ある?」
そんな声が最近増えています。
実は、空き家を放置していると、法律上の責任や税金の増加、売却の困難化など、さまざまなリスクに直面する可能性があります。
本記事では、空き家を放置することによって生じる法的・経済的な問題について、司法書士の視点から分かりやすく解説します。
特に、特定空家に指定された場合のペナルティや、管理責任を怠った場合の賠償リスクなど、知らないと大きな損をするポイントも多々あります。
空き家問題の本質を知るためにも、ぜひ最後までお読みください。
目次
1.空き家を「放置する」とはどういう状態か
2.放置によって起こる主なリスク
3.「特定空家」に指定されるとどうなる?
4.空き家放置がもたらす経済的デメリット
5.放置が近隣住民に与える影響と責任
6.まとめ:放置しない、動き出すことが最大のリスク回避策
1. 空き家を「放置する」とはどういう状態か
「放置」とは、建物の維持管理が一切されていない状態を指します。
戸締まりや草刈り、雨漏りや腐食の確認、郵便物の整理など、最低限の管理すらされていない空き家は、「放置」と見なされ、行政や近隣住民から問題視されることになります。
所有者が管理義務を果たしていない場合、後述するような重大な結果を招くことがあります。
2. 放置によって起こる主なリスク
空き家を放置することによる主なリスクには、以下のようなものがあります。
・建物の倒壊リスクや火災の発生(電気系統・不審火など)
・不法侵入・不法占拠(いわゆる「空き家に勝手に住まれる」問題)
・草木の繁茂による衛生・景観悪化
・雨漏りや腐食が進み、資産価値がゼロになる
・賠償責任が発生するケースも(例:瓦が飛んで人に当たった等)
これらの問題は時間とともに確実に進行し、放っておくほど対処のハードルが高くなります。
3. 「特定空家」に指定されるとどうなる?
平成27年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、著しく管理が不十分な空き家は「特定空家」に指定されるようになりました。
特定空家に指定されると、以下のような対応がなされます。
・行政からの改善命令・勧告
・従わなかった場合の行政代執行(解体)と費用請求
・固定資産税の住宅用地特例の解除(最大6倍に増税)
つまり、長年放置していると税負担が急増し、最終的には行政が強制的に解体し、その費用を請求される可能性があるのです。
4. 空き家放置がもたらす経済的デメリット
空き家を持っているだけで、年間数万円〜十数万円の固定資産税が発生します。
さらに以下のような経済的損失が起こる可能性があります。
・建物が劣化し、売却価格が大幅に下落
・更地にしても「更地評価」で税金が上がる
・管理費や修繕費の支出が増える
・放置後に「特定空家」となると助成金対象から外れる
また、相続後に登記をしていないと、売却・賃貸ができず、さらに手続きが煩雑になります(※これについては後日別回で解説します)。
5. 放置が近隣住民に与える影響と責任
空き家は所有者だけの問題ではありません。
例えば隣家の敷地に雑草や落ち葉が侵入したり、不審者が出入りするような事態が起これば、近隣トラブルの火種となります。
さらに、台風や地震で瓦や外壁が飛散して隣家の窓を壊した場合、所有者が損害賠償責任を負うこともあります。
放置していたがために、「想定外の出費」に繋がるケースも少なくありません。
6. まとめ:放置しない、動き出すことが最大のリスク回避策
空き家は「所有しているだけ」でもコストがかかります。
そして放置すればするほど、リスクも手続きも複雑化し、資産価値はどんどん目減りしていきます。
もし現在、空き家を持っている、あるいは相続予定であるならば、まずは現状を確認し、早めに対応の道筋を立てることが大切です。
司法書士や不動産会社、行政の空き家相談窓口など、活用できる専門家や制度はたくさんあります。
次回は、「空き家を活用する方法」について、賃貸・売却・利活用などの選択肢を詳しくご紹介していきます。
【第1回】なぜ空き家が増えるのか? 〜現状と背景を読み解く〜

「空き家問題」「空き家の増加」「空き家のリスク」といったキーワードが、ニュースや自治体の広報紙などで頻繁に登場するようになりました。
日本全国で年々増加している空き家は、地域の景観悪化や防災・防犯の面でも深刻な問題を引き起こしています。では、なぜこれほどまでに空き家が増え続けているのでしょうか?
本記事では、「空き家が増える理由」や「空き家の現状と統計」、「空き家がもたらす社会的影響」などについて、司法書士の視点も交えながら分かりやすく解説します。
これから5回にわたり、空き家問題の原因と対策、成功事例までをシリーズ形式で取り上げていきます。第1回目の今回は、「空き家がなぜ増えているのか」という根本的なテーマを掘り下げてみましょう。
目次
1.空き家とは?〜定義と種類を理解する〜
2.空き家が増加する背景
3.空き家増加の具体的な原因
4.空き家が地域社会に与える影響
5.まとめ:空き家問題の第一歩は「理解」から
1. 空き家とは?〜定義と種類を理解する〜
まず、「空き家」とは何を指すのでしょうか?
総務省の住宅・土地統計調査では、空き家を以下の4つに分類しています。
① 賃貸用の住宅(空室のアパート・マンション等)
② 売却用の住宅(売りに出されている未入居住宅)
③ 二次的住宅(別荘など、たまに利用する家)
④ その他の住宅(誰も住んでおらず、用途もない住宅)
このうち、特に問題視されているのが「④その他の住宅」、つまり完全に使われていない空き家です。
これらは管理されずに放置されることで、地域にさまざまな悪影響を及ぼします。
2. 空き家が増加する背景
空き家の数は年々増加しています。
総務省のデータによると、平成30年時点で全国の空き家数は約849万戸、空き家率は13.6%に達しています。これはおよそ7〜8軒に1軒が空き家であることを意味します。
特に地方都市や農村部では人口減少と高齢化が進み、住まなくなった家がそのまま残されるケースが増加しています。加えて、都市部でも相続や転居の後に処分されない空き家が目立ってきました。
3. 空き家増加の具体的な原因
(1)高齢化と単身世帯の増加
高齢者が介護施設へ入所したり、亡くなった後に空き家となる例が多く見られます。特に独居高齢者が住んでいた住宅は、家族が引き継がず、そのまま放置されがちです。
(2)相続放棄や権利関係の複雑化
不動産の相続は必ずしも歓迎されるものではありません。地方の築古物件や修繕が必要な住宅は、相続税の負担や維持管理の手間から「相続放棄」されることもあります。
また、相続人が複数いて、登記手続きがされないまま放置される「所有者不明土地問題」も、空き家放置の一因です。
(3)住宅の過剰供給
新築信仰が根強い日本では、新たな住宅が建てられ続けています。その一方で、既存の住宅ストックが活用されずに残され、空き家が積み上がっている状況です。
(4)売却・賃貸の困難さ
築年数の経った住宅は、現行の建築基準を満たしていないこともあり、リフォーム費用がかさむため買い手がつきにくく、賃貸にも向かないケースがあります。
また、立地が悪い、生活インフラが整っていない地域ではなおさらです。
4. 空き家が地域社会に与える影響
使われなくなった空き家は、単に景観を損なうだけでなく、以下のようなリスクをもたらします。
・倒壊や老朽化による危険性
・不法侵入・放火・ごみの不法投棄など、治安の悪化
・害虫・悪臭・雑草繁茂による衛生問題
・地域の地価下落につながることも
特に空き家の密集する地域では、「地域の負の資産」となってしまう恐れがあります。
5. まとめ:空き家問題の第一歩は「理解」から
空き家問題は、単なる住宅の老朽化や放置だけの問題ではありません。
少子高齢化、都市と地方の格差、住宅市場の構造など、日本社会全体の課題が複雑に絡み合っています。
だからこそ、まずは「なぜ空き家が増えるのか?」を正しく理解することが、今後の対策の第一歩です。
次回は、「空き家を放置するとどうなるか?」について、法的なリスクや税制上の不利益を中心に解説します。
ぜひ引き続きご覧ください。
【第3回】信頼される専門家になるために ~正論だけでは築けない“相談者との関係性”~

「専門的な知識もあるし、誠実に答えている。それなのに、なぜか信頼されていないように感じる…」。
そんな違和感を抱いたことはありませんか?
司法書士をはじめとした士業や専門家は、正しい情報を伝えることが仕事の根幹です。
しかし、それだけでは相談者との信頼関係を築くことはできません。
このシリーズでは、
第1回「正論が届かない理由」、
第2回「伝える順番を変えるテクニック」、
とお届けしてきましたが、最終回となる第3回では、「信頼される専門家」になるために必要な姿勢・言葉・距離感について掘り下げていきます。
「知識と信頼は別物」。その現実をふまえたうえで、日々の相談対応に活かせるヒントをご紹介します。
■目次
1.専門知識は"信頼の前提"でしかない
2.信頼される人が自然と使っている言葉の特徴
3.「距離感の設計」が関係性を左右する
4.正論の"後"に求められるものとは
5.知識と信頼のバランスを取る実践的な方法
6.まとめ:相談者の「心の窓」が開いたときが、本当のスタート
1. 専門知識は"信頼の前提"でしかない
専門家として一定の知識や経験があることは、「信頼されるための条件」にはなります。
しかし、それはあくまでスタート地点に過ぎないのです。
知識があるから信頼されるのではなく、「この人なら、自分の話をちゃんと受け止めてくれる」と感じてもらえるかどうか。
その印象が、最初の5分の応対で決まってしまうこともあります。
つまり、信頼は「知識の多寡」ではなく、「自分ごととして受け止めてくれる人かどうか」で判断されるのです。
2. 信頼される人が自然と使っている言葉の特徴
信頼される専門家が共通して使っている言葉があります。それは、
・「〇〇してもいいかもしれませんね」
・「こういう見方もあると思います」
・「私の考えですが、参考にしてみてください」
一見、曖昧な言い回しに思えるかもしれません。
しかし、これらはすべて、相談者に「選ぶ余地」を残した言葉です。
正論や結論を押しつけるのではなく、「あなたにとってどうか」という視点を尊重する姿勢。
この"余白"が、相談者の安心感につながります。
3. 「距離感の設計」が関係性を左右する
専門家と相談者の関係において、距離感の設計は非常に重要です。
近すぎると「馴れ合い」に、遠すぎると「冷たい人」に映ることもあります。
私が意識しているのは、「感情の部分は親身に、判断の部分は中立に」という二重構造です。
たとえば、
・感情を受け止めるときは、「それはつらかったですね」としっかり寄り添う。
・しかし、結論を導くときには、「ご自身にとってどうするのが納得できるか、一緒に考えていきましょう」と、一歩引いて伝える。
この"寄り添いと客観の両立"が、ちょうどよい距離感をつくります。
4. 正論の"後"に求められるものとは
前回まででお話ししたように、正論は"後出し"することで効果的になります。
しかし、正論を伝えた「その後」がもっとも重要なフェーズです。
そこで必要なのは、"選択肢の整理"と"相談者の気持ちの確認"です。
「〇〇という方法が法的にはあります。ですが、ご自身としてどう感じますか?」
「ご事情をふまえると、こちらの選択肢もあり得ます」
そうしたやりとりを通して、「自分で決めた」と感じられるプロセスをつくること。
それが信頼を生む土台になります。
5. 知識と信頼のバランスを取る実践的な方法
信頼を得るために、以下の3つのポイントを実践しています。
①正解を焦って言わない
あえて沈黙の時間をとることで、「しっかり考えてくれている」という印象を与えます。
②"わからない"と言う勇気を持つ
即答できない場合、「確認してお伝えします」と言うことが、誠実さを伝えます。
③相談者の「解釈の余地」を残す
「こうでなければならない」ではなく、「こういう見方もあります」という表現が、信頼の伸びしろを生みます。
6. まとめ:相談者の「心の窓」が開いたときが、本当のスタート
正論は武器になりますが、それは相手の"心の窓"が開いているときだけ。
その窓を開くのは、知識ではなく「関心」と「姿勢」です。
相談者にとって、司法書士や専門家は人生の一場面でしかありません。
しかしその短い時間の中でも、「この人と話してよかった」と思ってもらえるかどうかが、プロとしての分かれ道になります。
「正論+共感+距離感」。
この3つの視点を意識することで、正しいだけでは終わらない、信頼される専門家としての対応力が磨かれていくと感じています。
【第2回】「正論は後出し」が信頼を生む ~伝え方の順番を変えるだけで関係性は変わる~

「正しいことを言っているはずなのに、なぜか相談者の反応がよくない」「誠実に説明しても、納得してもらえない」。
そんな悩みを持つ士業や専門家の方は少なくありません。
前回の記事(【第1回】正しいことを言っているのに、なぜ届かない?)では、正論が時として相談者との間に"壁"をつくってしまう理由を解説しました。
今回は続編として、「伝え方の順番を少し変えるだけで、関係性がスムーズになる」方法をご紹介します。
正しいことは、タイミングと順序を工夫して伝えることで、初めて相談者の心に届きます。
そのための"ちょっとした技術"を、実際の相談対応での実感を交えながらお話ししていきます。
■目次
1.いきなり「正論」で入ると損をする理由
2.まずは「その人の世界」に入る
3.「聞く→共感→整理→提案」の流れが鉄則
4.正論は"後出し"が一番効果的
5.相談者の心に届く"正しさ"の伝え方とは
6.次回予告:第3回では「専門家としての信頼の築き方」へ
1. いきなり「正論」で入ると損をする理由
相談者が話し始めて数分で、「それは〇〇ですから、こうすればいいですよ」と答えたことはありませんか?
法律上は明確で、解決策も単純に見える。だから、つい最短ルートを教えたくなる…。
しかし、それは「相談者の納得プロセス」を飛ばしてしまっていることが多いのです。
いきなり「正論」を提示すると、
・「上から目線だ」と受け取られてしまう
・「自分の話をちゃんと聞いてくれなかった」と不満が残る
・「この人には相談しにくい」と距離を取られてしまう
こうしたリスクがあります。専門家としては「間違っていない」のに、結果的に損をしてしまうのです。
2. まずは「その人の世界」に入る
相談者が語る内容には、事実と感情が混ざり合っています。
ここで大切なのは、"まずは相談者の世界に入る"こと。つまり、「その人が見ている景色」に寄り添うことです。
たとえば、「兄が勝手に不動産を使っていて納得できない」という相談があったとしましょう。
専門家としては、「登記名義や法的権利関係はどうか」をすぐに考えたくなります。
しかし、まずは「どうして納得できないのか」「その背景にはどんな経緯があったのか」をじっくり聞くことが大切です。
「それは腹が立ちますよね」「突然そんなことをされたら、不安にもなりますよね」
そうした言葉を返すことで、相談者は「この人はわかってくれている」と感じ始めます。
3. 「聞く→共感→整理→提案」の流れが鉄則
私が相談対応で意識しているのは、次の4ステップです。
①聞く(傾聴)
相手が話し終えるまで遮らず、まずは聴く姿勢を見せる。
②共感する(感情に寄り添う)
「それは大変でしたね」「わかります」など、共感の言葉を添える。
③整理する(事実の把握)
感情が落ち着いた後で、状況を客観的に整理し、相談者にも再確認してもらう。
④提案する(正論の提示)
ここで初めて、法律や制度に基づく"正しい対応"を説明する。
この順番を守るだけで、伝わり方が格段に違います。
正論が「押しつけ」ではなく、「頼れる提案」として受け止められるようになります。
4. 正論は"後出し"が一番効果的
正論は「武器」にもなりますが、「タイミングを間違えると凶器」にもなります。
だからこそ、「後出し」こそが最大の効果を発揮するポイントなのです。
たとえば、相談者が長年もめてきた家族との相続問題について、感情を吐き出したあとに、
「今のお話をふまえて、法律上の整理はこうなります。実はこうした方法も考えられるんですよ」
と伝えると、相談者の受け止め方はまるで違ってきます。
「正論」ではなく、「選択肢のひとつ」として提示することで、
"決めるのはあなたです"というスタンスを取れるのも、信頼を得る大きな要素です。
5. 相談者の心に届く"正しさ"の伝え方とは
「正しいこと」は、実は一番最後に伝えるほうが効果的。
しかも、それは"答え"としてではなく、"整理された選択肢の一つ"として提示されると、相談者は主体的に動くようになります。
正論を信じることは大切です。ですが、それを「伝える順番」「伝え方の形」に工夫を加えることで、相談者にとっての「意味ある正しさ」に変わります。
つまり、正論を活かすには、あえて後回しにする勇気が必要なのです。
6. 次回予告:第3回では「専門家としての信頼の築き方」へ
次回の第3回では、「では、正論も伝えたうえで、どのように"専門家としての信頼"を積み上げていくのか?」についてお届けします。
正論を活かすには"人間関係"が欠かせません。信頼される司法書士になるために、
日々の相談対応でできること、信頼を育てる言葉づかいや距離感について、私の実践をベースにまとめていきます。
【第1回】正しいことを言っているのに、なぜ届かない? ~「正論」がすれ違う本当の理由とは~

「正しいことを伝えているのに、なぜか納得してもらえない」「制度的には問題ないはずなのに、相談者が腑に落ちないようだ」。
こうしたジレンマを感じたことのある士業や専門家の方も多いのではないでしょうか?
司法書士として日々多くのご相談を受ける中で、私自身も「正しい=役に立つ」ではないことを痛感する場面が少なくありません。特に相続や成年後見、借金問題といったセンシティブな相談では、正論がかえって相談者の気持ちを追い詰めてしまうことさえあります。
本シリーズでは、「正論はいつ・どのように伝えるべきか?」をテーマに、実際の相談対応の現場で感じたこと、心がけている伝え方、そして信頼関係の築き方について、3回に分けてお届けします。
今回は第1回として、「そもそも、なぜ正しいことが届かないのか?」について掘り下げてみたいと思います。
■目次
1.正論を言っても響かない?その違和感の正体
2.「正しいこと」は相談者が求めていることとは限らない
3.なぜ正論が「壁」になってしまうのか
4.「正しさ」よりも「安心感」が先に求められる現場
5.次回予告:「伝える順番」を変えるだけで関係性が変わる
1. 正論を言っても響かない?その違和感の正体
「法律上はこうです」「制度的にはこう処理します」。
これはまさに司法書士として当然の説明であり、誤ってはいません。むしろ、専門家としては正確に伝える義務があります。
しかし、その説明を受けた相談者の反応が、「ああ、そうですか…」「それはわかってますけど…」といった、どこか腑に落ちない様子だったことはないでしょうか?
「なんでこの人は納得しないんだろう?」という違和感。
そこには、「正論」と「相談者の本音」との間にある"見えないズレ"が存在しています。
2. 「正しいこと」は相談者が求めていることとは限らない
法律の専門家である私たちは、「正確な情報を提供する」ことが第一の使命です。
ただし、相談者が本当に求めているのは、"正しいこと"ではなく、"自分にとって意味のあること"である場合が多いのです。
たとえば、相続の相談で揉め事を避けたいと思っている方に対し、「法律的にはこのように分けるのが正しいです」と冷静に伝えても、それが「安心」や「納得」に直結するわけではありません。
ときには、過去の親族との確執や、亡くなった方への思い、経済的不安など、**表面には見えない「感情の事情」**が複雑に絡み合っています。
正論は、それらの事情を無視して一足飛びに「答え」を提示してしまうため、結果として「聞いてもらえなかった」と感じさせてしまうのです。
3. なぜ正論が「壁」になってしまうのか
正論は、論理的・制度的には正しくても、それを一方的に押し出してしまうと、相談者にとっては"対話のシャッター"になります。
以下のような心理的な反応が起こりがちです。
・「専門家に否定された」と感じる
・「やっぱり自分の考えは間違っていたんだ」と引き下がってしまう
・「法律は冷たいものだ」と距離を置いてしまう」
このように、正論が"壁"として機能してしまう原因は、「タイミング」と「伝え方」にあります。
特に、相談者が不安を抱えていたり、感情が揺れていたりする段階では、正論は"刃"のように鋭く刺さってしまうのです。
4. 「正しさ」よりも「安心感」が先に求められる現場
相談者が司法書士に何を求めているか。それは「正しい答え」だけではなく、「安心できる存在」です。
そのためには、まず"話を聞いてくれる人"であることが重要です。
私自身も、若いころは正しいことを一生懸命説明しようとして、うまくいかなかった経験が多くあります。
しかし、あるとき「正しさではなく、まずこの人の話をじっくり聞いてみよう」と意識を切り替えてみたところ、相談者の反応が変わりました。
「この人はちゃんと聞いてくれる」
「自分の立場を理解してくれている」
そう感じたとき、ようやく相談者は心を開き、「正論」にも耳を傾ける準備が整います。
つまり、正論を通すためには、その前に"安心"という土台が必要なのです。
5. 次回予告:「伝える順番」を変えるだけで関係性が変わる
今回は、「なぜ正論が届かないのか?」というテーマで、相談現場で生じる違和感の正体を掘り下げました。
次回の第2回では、実際に私が相談対応で実践している「伝え方の順番」や、「正論を後出しにするテクニック」について、具体例を交えてご紹介していきます。
正しさを届けるには、"伝える順番"を変えるだけで、相談者との関係性が大きく変わることをぜひ体感していただきたいと思います。
(論点)司法書士が語る「無料相続相談会で困った相談者たち」~相談を有意義にするために必要なマナーと心構え~

相続登記や遺産分割協議など、相続に関する法律手続きは複雑で、一般の方にはわかりづらい部分が多々あります。
そこで活用されるのが「相続の法律無料相談会」。
しかし実際の現場では、残念ながら相談者の姿勢によっては、有効なアドバイスができずに終わってしまうケースも少なくありません。
本記事では、司法書士として実際に受けた"答えようのない相談"を例に挙げながら、無料相談を有意義に活用するためのマナーと心構えについて解説します。
目次
1.「とっちめてほしい」という依頼は誰にすべきか
2.アドバイスを受け入れたくない相談者
3.情報を出し渋る相談者
4.気づけば"人生相談"になっているケース
5.無料相談を有意義にするためのポイント
6.おわりに:相談する前に心がけてほしいこと
1. 「とっちめてほしい」という依頼は誰にすべきか
無料相談会ではときどき、「相手が許せないので、あなたから言ってやってください」といったご相談を受けることがあります。
しかし、これは司法書士の業務範囲外です。司法書士は「争いのない手続き」に関する専門家であり、相手方との交渉や代理行為を行うことはできません。
※「とっちめる」というのは暴力は含みません。あくまで話し合いということになります。
特に相続登記については「すでに協議が整っている状態」で初めて司法書士が代理できるもので、そこで双方代理が認められているのも"争いがないから"にほかなりません。
相手と対立する行為は、弁護士に依頼すべき内容です。このあたりを混同される方が多いのが現状です。
2. アドバイスを受け入れたくない相談者
「今、困っていることがある」と話されながら、こちらが「ではこうしてみてはどうですか?」と提案すると、「それはできません」「そういうのは嫌です」とすぐに否定される方もいます。
現状を変えたいからこそ相談に来ていただいたはずなのに、現状を変える行動を拒む姿勢では、どんなに専門家が力を尽くしても前に進めません。
もちろん、すべての提案を受け入れる必要はありません。しかし「変えたくない」なら、現状維持によって生じるデメリットも受け入れる覚悟が必要なのです。
3. 情報を出し渋る相談者
相続の相談では、家族関係や財産の状況など、かなりプライベートな情報が必要になります。
司法書士には守秘義務があるため、知り得た情報を外部に漏らすことは絶対にありません。
それでも、「これ以上は話したくない」「そこは伏せておきたい」と言われてしまうと、適切なアドバイスができなくなります。
相談会の冒頭では必ず守秘義務の説明をしていますが、警戒心からか、どうしても情報を出せない方も一定数いらっしゃいます。
気持ちはわかりますが、「情報なくして解決なし」です。信頼関係の第一歩は、必要な情報を開示することから始まります。
4. 気づけば"人生相談"になっているケース
「何か法律的なことかもしれない」と思って相談に来られたものの、話を聞いていくと実は法律では解決できない"人生相談"だった、というケースもあります。
たとえば、「相続で兄弟と仲が悪くなったが、どうしたら仲直りできるか」「亡くなった親が不公平な遺言を残したが、どう気持ちに整理をつければいいか」など、法律で割り切れない問題も多々あります。
司法書士としては、共感はできますが、それに対する「解決策」は提示できません。こうした内容は、カウンセラーや信頼できる第三者に相談するほうが有益です。
5. 無料相談を有意義にするためのポイント
無料相談会を有効活用するには、相談者にも守ってほしいマナーと心構えがあります。
・目的を明確にする:何に困っているのか、どこまでを相談したいのかを整理しておく。
・事実を正確に伝える:不利な情報も含め、正直に話すことが正しいアドバイスにつながる。
・相手を尊重する:怒りや不満をぶつける場ではなく、専門家との協働の場であることを忘れずに。
・助けてもらう姿勢を持つ:アドバイスを受け取る「受け身」だけでなく、行動する意思を持つ。
6. おわりに:相談する前に心がけてほしいこと
無料相談会は、限られた時間の中で最大限の助言を行う場です。もちろん、相談者の悩みは千差万別であり、複雑な背景があることも十分承知しています。
だからこそ、相談者の側にも「自分の悩みを解決するために、何ができるか」を考え、準備をしてきていただけると、我々専門家もより的確な対応ができるのです。
いくら無料だからといって横柄な態度で臨めば、信頼関係は築けません。
相談に乗る側も一人の人間です。「この人のために力になりたい」と思えるような関係を築けるかどうかが、相談の質を左右します。
【なぜ少ない?】限定承認の利用実態とその背景を徹底解説

相続が発生したとき、相続人が直面する重要な選択肢の一つが「限定承認」です。
限定承認は、被相続人の財産と債務を相殺し、プラスの財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ制度であり、特に債務超過の可能性がある相続においては非常に有効です。
しかし実際には、家庭裁判所の統計を見ると、限定承認の申述件数は相続放棄と比べて圧倒的に少なく、2022年には1,000件未満とごくわずかでした。
本記事では、なぜ限定承認がここまで利用されていないのか、その背景や制度的な課題について深掘りし、相続における選択肢として本当に有効活用できるのかを考察します。
目次
1.限定承認とは?制度の概要とメリット
2.家庭裁判所の統計から見る利用実態
3.なぜ限定承認は利用されないのか?
4.手続き上の課題と実務的なハードル
5.限定承認が適しているケースとは?
6.今後の改善と利用促進の可能性
1. 限定承認とは?制度の概要とメリット
限定承認とは、民法第922条に定められた相続方法のひとつで、相続人が相続によって得た財産の限度において被相続人の債務や遺贈を弁済するという制度です。
相続には以下の3つの方法があります:
・単純承認(すべての権利義務を無条件に承継)
・相続放棄(一切の相続を拒否)
・限定承認(プラス財産の範囲内で債務も引き継ぐ)
限定承認の最大のメリットは、万が一、被相続人が多額の借金を抱えていたとしても、相続人自身の財産が害されない点にあります。
プラス財産があれば手元に残すことも可能で、債務が多ければ放棄と同様にリスク回避が可能です。
2. 家庭裁判所の統計から見る利用実態

家庭裁判所が公表している2022年(令和4年)の統計によれば、以下のようなデータが報告されています。
・相続放棄の申述件数:約260,000件
・限定承認の申述件数:約1,000件未満
つまり、限定承認は相続放棄の約0.4%以下しか利用されていないのが現実です。
また、遺産分割調停の件数(約6,800件)と比べても、限定承認の活用度は極めて低い状況にあります。
3. なぜ限定承認は利用されないのか?
限定承認の利用が少ない理由には、主に以下のような要因が挙げられます。
・手続きが複雑:相続人全員の同意が必要であり、期限内に申述する必要があります。
・財産の評価が困難:プラスかマイナスか判断がつかないと、リスクを避けて放棄を選ぶ傾向に。
・専門家への依頼が不可欠:税務申告や公告など、実務上の負担が重い。
・認知度が低い:一般的な知識としてあまり浸透していない。
その結果、多くの相続人は「債務のリスクがあるなら放棄」という安全策を選ぶことが多く、限定承認はあえて選ばれにくい制度となっています。
4. 手続き上の課題と実務的なハードル
限定承認の手続きは以下のような特徴があり、専門家によるサポートが事実上不可欠です。
・申述は相続開始を知った日から3ヶ月以内
・相続人全員での共同申述が必要
・相続財産の目録提出が必要
・債権者に対する公告・弁済手続き
このように、限定承認は単なる「届け出」ではなく、ひとつの清算手続きに近い性質を持っています。
つまり、実務的には準破産手続きに近い煩雑さがあり、時間的・金銭的な負担も大きく、一般の相続人が自力で進めるのは困難です。
5. 限定承認が適しているケースとは?
以下のようなケースでは、限定承認の利用が有効に機能する可能性があります。
・プラス財産とマイナス財産の差が不明確な場合
・不動産など、処分価値のある財産があるが債務も存在する場合
・単純承認や放棄では不利益を被る相続人がいる場合
たとえば、被相続人が古いアパートを持っていたが、ローン残債があるような場合、アパートを売却して債務を清算し、残余が得られる可能性があれば、限定承認は検討に値します。
6. 今後の改善と利用促進の可能性
限定承認が適切に活用されるには、以下のような制度改善が求められます。
・個別申述の認可(全員一致要件の緩和)
・簡素な手続きモデルの設計
・専門家支援制度の導入
・制度周知の強化
また、相続人が財産状況をより正確に把握できるよう、デジタル化された財産目録の整備や債務情報の開示制度などの整備も、制度利用促進の鍵となるでしょう。
おわりに
限定承認は、相続における「第三の選択肢」として本来重要な制度です。
しかし、実態としてはその複雑さや煩雑さがネックとなり、ほとんど利用されていないのが現状です。
とはいえ、正しく使えば非常に合理的な制度でもあります。被相続人の財産状況が不明瞭なときや、負債が心配なときには、まずは司法書士や弁護士に相談してみることをおすすめします。
【第5回・最終回】相続放棄の影響とは?次順位相続人・遺産分割への影響を解説

相続放棄は、相続人自身の財産管理を守る有効な手段ですが、その選択が他の相続人にどのような影響を与えるかご存知ですか?
「自分は放棄すれば関係ない」と思っていると、思わぬトラブルに発展する可能性もあります。
とくに注意したいのは、放棄によって"次順位"の相続人に相続権が移ること。
相続を放棄した結果、兄弟や親戚などに債務相続のリスクが回ってしまう場合もあるのです。
今回は、相続放棄をしたことによって起きる「影響」や「順位の変動」について、わかりやすく整理します。
家族に迷惑をかけないためにも、相続放棄の"その先"を理解しておきましょう。
目次
1.相続放棄の基本ルールをおさらい
2.相続放棄によって変わる「相続順位」
3.具体的なケースで見る順位変動の例
4.放棄が他の相続人に与える影響とは
5.放棄が複数人いた場合の注意点
6.放棄後に起きがちなトラブルと対策
7.まとめ:放棄する前に周囲との連携を
✅無料相談のご案内:放棄の影響も一緒に整理しましょう
1. 相続放棄の基本ルールをおさらい
相続放棄とは、相続人が「一切の相続財産(プラスもマイナスも)を受け取らない」と宣言し、家庭裁判所で正式に申述する手続きです。
放棄が認められると、その人は初めから相続人ではなかったものとみなされ、一切の権利義務が消滅します。
重要なのは、放棄したからといって、相続そのものが消えるわけではなく、他の人に権利が移るという点です。
2. 相続放棄によって変わる「相続順位」
相続には順位があります。
第1順位:子や孫(直系卑属)
第2順位:父母や祖父母(直系尊属)
第3順位:兄弟姉妹(場合により甥姪)
たとえば、配偶者と子どもが相続人の場合、子どもが放棄すると、その子の子(孫)が代襲相続人として繰り上がります。
もし孫もいない、または放棄した場合、第2順位である被相続人の両親へと順番が移ります。
3. 具体的なケースで見る順位変動の例
ケース①:被相続人に子どもがいる場合
→ 子ども全員が相続放棄すると、その子(孫)に相続権が移る。
ケース②:子も孫もいない場合
→ 第2順位である両親(または祖父母)へ。両親が亡くなっていれば、第3順位の兄弟姉妹へ。
ケース③:兄弟姉妹も全員放棄
→ 相続人がいない状態となり、「相続財産管理人の選任」手続きが必要になる。
4. 放棄が他の相続人に与える影響とは
相続放棄は個人の自由ですが、それにより債務が次順位の相続人に及ぶことになります。
とくに問題になるのは、相続放棄の意向を他の相続人と共有していない場合です。
たとえば、長男が「借金があるから」と放棄しても、次男や兄弟に何も伝えていなければ、次順位の人が知らないうちに借金相続をしてしまう恐れもあります。
5. 放棄が複数人いた場合の注意点
複数の相続人が相続放棄した場合、最終的に相続人がいなくなってしまうこともあります。
このようなケースでは、家庭裁判所に「相続財産管理人」を選任してもらい、遺産の清算・債務弁済などを行います。
ただし、放棄者が遺産の処分や管理をすると「単純承認」とみなされてしまうリスクもあるため、慎重に対応すべきです。
6. 放棄後に起きがちなトラブルと対策
よくあるトラブル例:
・相続放棄したことを兄弟に伝えておらず、後日「なぜ言ってくれなかった」と揉める
・放棄したつもりが手続きミスで無効扱いに
・次順位の人が未成年で、特別代理人の選任が必要になった
対策として有効なのは、以下のような行動です:
・放棄前に関係者と意思確認をしておく
・放棄後、他の相続人や親族に速やかに伝える
・子や甥姪など、次に相続する可能性のある人の状況も把握しておく
7. まとめ:放棄する前に周囲との連携を
相続放棄は個人の選択ですが、その影響は"次の人"に確実に波及します。
とくに借金などの負債がある相続では、放棄をした人が知らぬ間に、親族に大きな迷惑をかけてしまうケースもあります。
大切なのは、放棄する前に関係者への説明と情報共有をしておくこと、そして手続きが適切に完了しているかを専門家と確認することです。
✅無料相談のご案内:放棄する前に"その後"まで見通そう
相続放棄は「手続きすれば終わり」ではありません。
放棄によって誰が相続人になるのか、負債が誰に引き継がれるのか──この点まで視野に入れて考える必要があります。
当事務所では、以下のようなご相談を無料で受け付けています。
・放棄したら誰が相続人になるか教えてほしい
・自分の放棄が他の家族にどんな影響を与えるか心配
・兄弟・親戚ともめないように手続きしたい
📅 土日・祭日も対応(事前予約制)
📩 オンライン相談・電話相談もOK
「放棄して終わり」ではなく、"その後"まで安心できる相続放棄を一緒に進めていきましょう。お気軽にご相談ください。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
【第4回】相続放棄が認められないケースとは?3か月過ぎたら本当にもう遅い?

相続放棄を考えている方にとって最も気になるのが「いつまでに手続きをすればいいのか」「自分のケースでも放棄が可能なのか」という点ではないでしょうか。
特に、「相続開始から3か月」という期間制限に関しては多くの誤解があり、「過ぎてしまったら絶対に相続放棄できない」と思い込んでしまう方も少なくありません。
しかし、実は一定の条件下では3か月を過ぎても相続放棄が認められることがありますし、逆に、手続きをしても却下されるケースも存在します。
この記事では、「相続放棄が認められない主なパターン」と「3か月の熟慮期間が過ぎた後でも可能になる例外的なケース」について詳しく解説します。
目次
1.相続放棄には期限がある
2.3か月を過ぎると相続放棄できない?
3.例外的に3か月を過ぎても認められるケースとは
4.相続放棄が認められない主な理由3選
5.相続放棄の"落とし穴"と注意点
6.相続放棄を成功させるための3つのコツ
7.まとめ:放棄が認められないリスクを避けるために
✅次回予告と無料相談のご案内
1. 相続放棄には期限がある
民法915条では、「相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選択しなければならない」とされています。
この3か月は「熟慮期間」と呼ばれ、放棄を希望する場合はこの間に家庭裁判所に申立てを行わなければなりません。
2. 3か月を過ぎると相続放棄できない?
原則として、3か月を経過すると相続を承認したとみなされる(単純承認)ため、相続放棄はできなくなります。
ただし、以下のような特別な事情がある場合には、例外として相続放棄が認められることがあります。
3. 例外的に3か月を過ぎても認められるケースとは
以下のようなケースでは、3か月を過ぎても相続放棄が受理される可能性があります。
〇被相続人の死亡や相続の開始を知らなかった場合
たとえば、遠方に住む親族の死亡を数年後に知った場合など。
〇相続財産が一切ないと思っていたところ、後から多額の借金が発覚した場合
このような「重大な事情を知らなかった」ことを主張し、熟慮期間の起算点を"知った時点"に求めることが可能です。
家庭裁判所に「申述期間経過後の相続放棄の申立て」として認めてもらうには、証拠と事情説明が重要になります。
4. 相続放棄が認められない主な理由3選
以下のような場合、申立てをしても却下される可能性があります。
① 単純承認とみなされる行為をしてしまった場合
→ たとえば、相続財産の一部を使った、借金を一部返済した、通帳から引き出したなど。
② 書類不備や申立て内容に不整合がある場合
→ 記載内容と添付書類の整合性が取れていないと、補正や却下の対象になります。
③ 相続放棄の意思が不明確・形式的なものと判断された場合
→ 実態を伴わない放棄申立ては、家庭裁判所に認められません。
5. 相続放棄の"落とし穴"と注意点
・「3か月を過ぎたけど大丈夫だった」という事例をうのみにしない
・自分で勝手に「まだ相続開始を知らないから大丈夫」と判断しない
・知った時点を「いつにするか」の判断は裁判所の解釈次第
熟慮期間のカウント開始時点や、相続財産の存在の把握が争点になるケースもあるため、自己判断は危険です。
6. 相続放棄を成功させるための3つのコツ
① できるだけ早く専門家に相談する
→ 特に債務がある可能性がある場合、時間との戦いになります。
② 相続人全員の状況を整理しておく
→ 自分が放棄すると次順位の相続人に影響が出ることもあるため、関係性を把握しておくことが重要です。
③ 書類の整備とタイムラインの整理を怠らない
→ 死亡日・通知日・財産判明日など、正確な記録があるとスムーズです。
7. まとめ:放棄が認められないリスクを避けるために
相続放棄には明確なルールと、見落としやすい例外があります。
「気づいたら3か月が過ぎていた」「借金の存在を後から知った」など、誰にでも起こり得る状況でも、適切な対応をすれば放棄が認められることもあるのです。
逆に、自己判断で放棄の申立てをしてしまい、却下されてしまったり、無意識に単純承認とみなされてしまうリスクも存在します。
大切なのは、「いつ」「何を」知ったかを明確にし、できる限り早く専門家のサポートを受けることです。
✅次回予告:放棄したら他の相続人に迷惑が?順位と影響関係を解説!
📣相続放棄、3か月過ぎても諦めないで!無料相談受付中
「相続開始からもう3か月以上経ってしまった…」
「放棄したいけど、どこから手を付ければいいかわからない…」
当事務所では、相続放棄に関する無料相談を実施中です。
家庭裁判所への申述サポートはもちろん、複雑な事情がある方の書類作成・説明文の作成も丁寧に対応いたします。
✅ 3か月経過後でも対応できる可能性あり
✅ 単純承認とみなされないためのアドバイスもご提供
✅ 土日・祭日のご相談もOK(要予約)
「もしかして、もう手遅れ?」と思ったら、まずは一度ご相談ください。
適切な手順を踏めば、望む結果が得られることもあります。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/

「相続放棄」と「遺産放棄」、この2つの言葉、似ているようで実は全く異なる法律行為です。
相続に関する相談を受けていると、「相続放棄します」とおっしゃる方の中に、実は"遺産放棄"のつもりだったというケースが少なくありません。
どちらも「遺産をもらわない」という意志表示に見えますが、その法的な効果や手続き、取り扱いの重さは大きく異なります。
この記事では、混同されやすいこの2つの違いを明確にし、よくある誤解や注意点を事例を交えて解説します。
間違った認識のままだと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるので、正しい知識を身につけましょう。
目次
1.「相続放棄」と「遺産放棄」——言葉の定義の違い
2.相続放棄は"家庭裁判所への申立て"が必要
3.遺産放棄は"相続人間の話し合い"で決まる
4.相続放棄は最初から相続人でなかったことになる
5.遺産放棄しても責任(借金など)が残ることがある?
6.よくある誤解と注意点
7.まとめ:本当に放棄したいのはどっち?判断の分かれ目とは
✅次回予告と無料相談のご案内
1. 「相続放棄」と「遺産放棄」——言葉の定義の違い
相続放棄は、法律上の相続人が、すべての相続財産(プラスもマイナスも含めて)を受け取らないとする行為で、
家庭裁判所に申し立てを行う"法的手続き"です。
一方、遺産放棄(正確には「遺産を取得しない意思表示」)は、相続人としての立場を維持したまま、個別の遺産を受け取らない選択をすることです。
これは家庭裁判所を通さず、相続人同士の遺産分割協議で「自分は何ももらいません」と表明する行為になります。
2. 相続放棄は"家庭裁判所への申立て"が必要
相続放棄は、民法第938条に基づく正式な申立て行為で、家庭裁判所に申述書を提出し、審査を経て受理されることで効力が生まれます。
申立てには原則3か月以内という期限があり、これを過ぎると「単純承認」されたと見なされ、放棄できなくなることも。
このように、相続放棄は司法手続きである点が大きな特徴です。
3. 遺産放棄は"相続人間の話し合い"で決まる
一方で遺産放棄は、遺産分割協議書の作成段階で「自分には何もいらない」と表明するケースが一般的です。
この方法には期限がなく、相続開始後ある程度時間が経っていても話し合いで決められます。
たとえば、長男が家業を継ぎ、次男が生前に学費や結婚資金の支援を受けていた場合、
「私は十分に支援してもらったから遺産はいらない」と遺産分割協議で次男が発言する——これが"遺産放棄"です。
4. 相続放棄は最初から相続人でなかったことになる
相続放棄の最大の特徴は、「はじめから相続人でなかったことになる」こと。
これにより、相続債務(借金など)も一切相続しないという効力が発生します。
たとえば借金を多く抱えた被相続人の場合、相続放棄をすれば借金の返済義務も一切負わずに済みます。
これは遺産放棄では不可能な効果です。
5. 遺産放棄しても責任(借金など)が残ることがある?
はい。遺産放棄(分割協議で「何も要らない」と言うだけ)では、相続人である立場は維持されるため、相続債務の返済義務は残る可能性があります。
つまり、遺産を受け取らないのに、後から借金の督促が来るという最悪の事態も起こり得るのです。
債務を含めたリスクを完全に排除したい場合は、相続放棄の申立てが必要です。
6. よくある誤解と注意点
誤解①:「遺産放棄したから、借金も放棄した」
→ 遺産分割協議書に署名しても、借金からは逃れられません。
誤解②:「兄弟で話し合って"放棄"したらもう終わり」
→ それは相続放棄ではありません。後からトラブルになることも。
誤解③:「分割協議で放棄したから相続人じゃない」
→ 相続人である限り、債権者が訴えてくる可能性はあります。
遺産をもらわない選択=相続放棄、ではないことをしっかり理解しておく必要があります。
7. まとめ:本当に放棄したいのはどっち?判断の分かれ目とは
ポイントは次の通りです:
■借金などのマイナス財産を引き継ぎたくない → 相続放棄(裁判所手続き)
■財産はプラスだけど、自分は他の兄弟に譲りたい → 遺産放棄(分割協議)
「放棄したつもりが、全然放棄になっていなかった」というトラブルは非常に多い分野です。
状況に応じてどちらが適切か、慎重に判断し、必要に応じて専門家に確認しましょう。
✅次回予告:「相続放棄が認められないケースとは?3か月過ぎたらもう遅い?」
📣相続放棄の無料相談実施中!まずはお気軽にお問い合わせを
「放棄するつもりだったのに、話し合いで済ませてしまった」
「遺産放棄と相続放棄、どちらを選ぶべきか迷っている」
そんな方のために、当事務所では相続放棄・相続手続きに関する無料相談を受付中です。
✔ どちらが適切かの判断サポート
✔ 必要書類や手続きの代行対応
✔ 家庭裁判所への申立書類の作成もお任せ
小さな疑問からで構いません。お気軽にご相談ください。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/

「相続放棄をしたいけど、どう進めたらいい?」
「家庭裁判所に出すって聞いたけど、難しそう…」
相続放棄は、期限内に所定の手続きを行えば有効ですが、そのやり方を間違えると"放棄したつもり"が通用せず、逆に相続したとみなされてしまうこともあります。
この記事では、実際に相続放棄を行うためのステップを一つひとつ解説しながら、よくある落とし穴や注意点についても紹介します。
「やるつもりだったのに間に合わなかった」とならないよう、正しい手順を確認しておきましょう。
目次
1.相続放棄の流れ|3か月以内にやるべきこと
2.相続放棄の申述書と必要書類
3.放棄後に届く「照会書」とは?
4.家庭裁判所の審査と決定通知
5.放棄が認められたら…他の相続人への影響
6.よくある失敗例と対策
7.まとめ:迷ったら早めに専門家へ相談を
1. 相続放棄の流れ|3か月以内にやるべきこと
相続放棄の手続きは、以下のような流れで進めていきます。
1.被相続人が亡くなったことを確認(死亡日を基準に)
2.財産・負債の調査(通帳・借金・不動産など)
3.家庭裁判所へ「相続放棄の申述書」を提出
4.裁判所からの「照会書」への回答
5.裁判所から「受理通知」が届く
この一連の流れを、原則として"相続が発生したことを知ってから3か月以内"に済ませなければなりません。
時間的猶予が少ないため、早めの準備が肝心です。
2. 相続放棄の申述書と必要書類
申述書とは、相続放棄を正式に申し立てるための書面です。これは裁判所の様式に従って作成します。
主な提出書類は以下の通りです:
・相続放棄の申述書
・被相続人の戸籍(出生から死亡まで)
・自分(申述人)の戸籍
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・収入印紙(800円)
・郵便切手(裁判所により異なる)
これらを管轄の家庭裁判所へ提出します。通常は被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所です。
3. 放棄後に届く「照会書」とは?
申述書を提出してしばらくすると、家庭裁判所から「照会書」が届きます。これは相続放棄の意思が真意であるかを確認するための書類です。
照会書では以下のようなことが尋ねられます:
・相続放棄をする理由
・被相続人との関係性
・相続財産を一部でも処分していないか
・他の相続人の有無とその関係
この照会書は、正確かつ誠実に回答しなければなりません。
「形式的なものだから」と軽く考えて嘘の記載をすると、放棄が認められない可能性もあるため要注意です。通常、書類の郵送で済む手続きが、出頭を求められる場合もあります。
4. 家庭裁判所の審査と決定通知
照会書の回答が裁判所に届くと、内容を基に審査が行われます。
問題がなければ、相続放棄が「受理」され、正式な「相続放棄申述受理通知書」が発行されます。
この通知書は、万が一債権者から請求が来た際の"盾"になる大切な書類です。
必ず保管しておきましょう。
5. 放棄が認められたら…他の相続人への影響
相続放棄をすると、自分は初めから相続人でなかったことになります。
そのため、法定相続人の順位が繰り上がり、次の順位の相続人に権利と義務が移ります。
たとえば:
・子どもが放棄 → 親が相続人に
・親も放棄 → 兄弟姉妹が相続人に
このように、相続放棄は連鎖的に次の人へ影響を及ぼします。
放棄する本人だけでなく、家族全体でよく話し合っておくことが大切です。
6. よくある失敗例と対策
失敗例①:相続財産の一部を使ってしまった
→「単純承認」とみなされ、放棄できなくなります。現金の引き出し、不動産の管理なども慎重に。
失敗例②:期限を過ぎていた
→3か月を過ぎると原則として放棄できません。例外もありますが、裁判所の判断次第です。
失敗例③:必要書類が不足していて、審査が遅れる
→戸籍の収集は時間がかかることもあります。早めに取り寄せておきましょう。
こうした失敗を防ぐためには、手続きの流れとルールを事前に把握しておくことが大切です。
7. まとめ:迷ったら早めに専門家へ相談を
相続放棄は、"自分を守るための大切な選択肢"です。
しかし、手続きは意外と煩雑で、期限や書類の不備で放棄が無効となるケースも少なくありません。
「借金があるかもしれない」「何をすればいいか分からない」という方は、一人で悩まず、まずは専門家にご相談ください。
正確なアドバイスを受けながら進めることで、後悔のない相続放棄が可能になります。
✅次回予告:第3回「"遺産放棄"との違いとは?よくある誤解を解消しよう」
📣無料相談受付中|相続放棄を安全・確実に進めるために
「書類の書き方が分からない」「本当に放棄して大丈夫か不安」そんな方のために、当事務所では相続放棄に特化した無料相談を実施中です。
✔ 相続財産の調査サポート
✔ 家庭裁判所への申立て書類の作成代行
まずはお気軽にお電話・メールでご相談ください。相続に強い司法書士が、丁寧にサポートいたします。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/

「親が亡くなったけど、借金もあるらしい…」「相続放棄って聞いたことはあるけど、何をすればいいのか分からない」
そんな不安を抱える方も多いのではないでしょうか。相続というと「財産をもらえる」イメージが先行しがちですが、実は相続には"負の財産=借金"も含まれます。
相続人には"相続するかどうか"を選ぶ権利があり、その一つが「相続放棄」という制度です。
この記事では、相続放棄の基本的な仕組みや必要性、誤解しがちな点をわかりやすく解説します。
遺産のトラブルに巻き込まれないためにも、正しい知識を押さえておきましょう。
目次
1.相続放棄とは何か?
2.なぜ相続放棄が必要なのか
3.相続放棄をすることで得られる効果
4.相続放棄の「熟慮期間」とは?
5.単純承認とみなされるケースに注意
6.まとめ:相続放棄は"知らないと損する"制度
1. 相続放棄とは何か?
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産を一切引き継がないとする法的な意思表示です。
民法第915条に基づき、家庭裁判所に申し立てを行うことで、最初から相続人でなかったことになります。
ここで重要なのは、「プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金やローン)も対象」である点です。
相続放棄をすることで、借金を引き継がずに済むという大きなメリットがあります。
2. なぜ相続放棄が必要なのか
人が亡くなると、その財産は相続人に引き継がれますが、すべて自動的に「良いものばかり」とは限りません。
以下のようなケースでは、相続放棄を検討する必要があります。
・被相続人に多額の借金やローンがあった
・財産よりも負債が多く、プラスの遺産では補えない
・保証人となっていたため、連帯債務のリスクがある
・遺産の管理・処理をしたくない、または関与したくない
相続放棄をすることで、こうした負の連鎖を断ち切ることができます。
3. 相続放棄をすることで得られる効果
家庭裁判所で相続放棄が受理されると、法律上は「初めから相続人でなかったこと」となります。
そのため、相続財産に関する権利も義務も一切生じなくなります。
例えば:
・借金の返済義務を負わない
・遺産分割協議に参加する必要がない
・他の相続人とトラブルになりにくい
ただし、これと同時に「プラスの財産(現金や不動産など)」も一切受け取ることができなくなる点には注意が必要です。
4. 相続放棄の「熟慮期間」とは?
相続放棄を行うには、「被相続人が亡くなったことを知った日から3か月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります。
これを「熟慮期間」と呼びます。
この期間内に何もしなければ、自動的に"単純承認"とみなされ、すべての遺産(借金も含む)を相続したとされてしまいます。
被相続人と疎遠だった場合など、「亡くなったことを知らなかった」という事情がある場合は、その事実を知った日が起算点となります。
5. 単純承認とみなされるケースに注意
以下のような行為をすると、たとえ明示的に意思表示をしていなくても、相続を"承認した"とみなされることがあります。
・遺産の一部を使ってしまった
・相続財産を売却・譲渡した
・借金の返済を自ら行った
こうした行動を取る前に、まずは「財産の中身を確認する」「家庭裁判所に相談する」といった冷静な対応が求められます。
6. まとめ:相続放棄は"知らないと損する"制度
相続放棄は、「知らなかった」では済まされない制度です。
財産の内容にかかわらず、自分にとってどの選択が最善かを判断するためには、制度の基礎知識が欠かせません。
3か月以内の判断が必要であり、間違った対応をすると取り返しがつかないこともあります。
今後の相続に不安がある方は、なるべく早めに専門家に相談することをおすすめします。
✅次回予告:第2回「相続放棄の手続きと注意点」へ続く!
📣無料相談受付中|相続放棄でお悩みの方へ
相続放棄は一度行うと撤回できません。だからこそ「本当に放棄すべきか」「手続きに間違いがないか」を事前にしっかりと見極めることが大切です。
当事務所では、相続放棄に関する無料相談を承っております。
経験豊富な司法書士が、あなたの状況に合わせて丁寧にアドバイスいたします。
📞電話または📩メールでお気軽にご相談ください。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/

近年、相続や認知症対策として「家族信託」が注目を集めています。
「信頼できる家族に財産管理を任せられる」「成年後見制度より柔軟に対応できる」などのメリットが強調され、書籍やセミナーでも盛んに紹介されています。
しかし、実際の現場では「信頼して任せたのに裏切られた」「仕組みを正しく理解せずに契約してしまった」といったトラブルや誤解による被害も少なくありません。
本記事では、家族信託の基本とともに、過信によるリスクや、契約時に陥りがちな誤解、そして適切な活用のポイントを、具体例を交えて解説します。
【目次】
1.家族信託とは?──基本的な仕組みと特徴
2.よくある誤解①「信託すればすべて安心」
3.よくある誤解②「信託契約は簡単にできる」
4.実際にあったトラブル事例
5.信託契約を成功させるためのチェックポイント
6.家族信託を使わないほうがいいケース
7.まとめ:信託は"信頼"だけでなく"仕組み"が重要
1. 家族信託とは?──基本的な仕組みと特徴
家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族に託して管理・運用・処分してもらう契約です。
登場人物は以下の3者:
・委託者:財産を託す人(多くは親など)
・受託者:託された財産を管理する人(多くは子など)
・受益者:財産から利益を受け取る人(委託者と同じことが多い)
成年後見制度ではできない柔軟な財産管理や、認知症になった後でも資産運用や不動産売却が可能になるなどの利点があります。
2. よくある誤解①「信託すればすべて安心」
家族信託は「信頼できる人に任せれば何もかも安心」と思われがちですが、実際は受託者の裁量が非常に大きく、リスク管理が不可欠です。
・受託者が勝手に財産を売却してしまう
・受益者への利益還元がなされない
・委託者が口を出せない状況になる
「信託だから安心」ではなく、「信託の内容と運用方法が明確だから安心」なのです。
3. よくある誤解②「信託契約は簡単にできる」
信託契約は、確かに公正証書にしなくても契約自体は可能です。しかし、契約内容があいまいな場合、相続開始時にトラブルが起きやすくなります。
・相続税の評価が複雑になる
・不動産の名義変更や登記手続きが煩雑
・他の相続人との争いが生じる
さらに、信託契約書に信託財産の使途制限、権限、終了時の手続きなどを明確に定めないと、受託者の暴走を止められません。
4. 実際にあったトラブル事例
【事例】
高齢の父が認知症に備え、長男と家族信託契約を締結。財産の大半は長男が管理することに。しかし、契約内容には使途制限がなく、長男は自らの事業資金に流用。
次男や他の相続人が気づいたときには、財産はほとんど残っておらず、「信託を使って財産を奪われた」と大きな争いに発展しました。
このように、「信頼していたから」「家族だから」という甘さが信託制度の濫用を招くケースもあるのです。
5. 信託契約を成功させるためのチェックポイント
家族信託を適切に機能させるためには、以下の点を必ず確認しましょう。
・契約書は専門家(司法書士・弁護士)に依頼する
・財産の使途、制限、帳簿の保管方法を明確化
・信託終了後の財産の帰属先を明記
・受託者が不正を働かない仕組み(監督人や定期報告制度など)を導入
特に、信託財産に不動産が含まれる場合、登記と税務の処理も重要です。専門的な視点を取り入れることで、トラブルを未然に防げます。
6. 家族信託を使わないほうがいいケース
すべての家庭に家族信託が適しているわけではありません。以下のような場合は、慎重な検討が必要です。
・相続人同士の仲が悪く、対立が明らか
・信託する財産が少額すぎてメリットがない
・受託者に信託の管理能力がない
・すでに他の相続対策(遺言・成年後見・遺留分対策等)が十分である
むしろ、信託にこだわりすぎることで、他の手段を見落としてしまうリスクすらあります。
7. まとめ:信託は"信頼"だけでなく"仕組み"が重要
「家族信託」は素晴らしい制度である一方で、制度を誤解して運用すると深刻なトラブルを生む可能性もあります。
・信託契約の中身をしっかりと理解する
・専門家の関与を惜しまない
・「信頼」ではなく「仕組み」で財産を守る
・家族に安心を届けるための手段が、かえって家族の不和を生むようでは本末転倒です。
家族信託は「魔法の道具」ではなく、「きちんと設計された仕組み」であることを忘れてはいけません。
これで本シリーズ「"善意"が招く、間違いだらけの相続対策」は完結です。
最も大切なのは、「財産を残す側」の独りよがりにならず、受け取る側の負担や状況に思いを巡らせた設計をすること。
そのために必要なのは、知識と準備、そして対話です。
ご不明な点があれば、専門家による個別相談をご検討ください。信頼と安心の相続を、あなたの手で。

相続の現場で近年、急増しているのが「負動産(ふどうさん)」の問題です。空き家や山林、使い道のない遠方の土地など、相続人が「いらない」と思う不動産が財産に含まれていた場合、相続放棄をするか、不要な土地の処分に頭を悩ませるケースが後を絶ちません。
被相続人にとっては「価値がある」と信じて残した土地が、実は税金や管理コストばかりかかる"お荷物"だった――そんな「善意の相続」が子どもたちの負担になる事例も珍しくありません。
本記事では、負動産とは何か、どんなリスクがあるのか、そして生前にできる対策について、わかりやすく解説します。
【目次】
1.負動産とは?──価値ではなく負債となる不動産
2.なぜ今、負動産が急増しているのか
3.負動産が相続人にもたらす現実的な負担
4.よくあるトラブル事例
5.生前対策①:土地を相続させない選択肢
6.生前対策②:処分・利活用・寄附の検討
7.まとめ:本当に"残したい"財産とは何か
1. 負動産とは?──価値ではなく負債となる不動産
「負動産」とは、資産価値がほとんどない、またはマイナスである不動産を指します。
たとえば以下のような物件が売却困難、管理費が発生)
・空き家(老朽化、近隣への迷惑)
・固定資産税はかかるが収益を生まない土地
・再建築不可・接道義務を満たさない土地
こうした不動産は、相続しても売れず、使えず、管理コストや税金がかかるため、実質的に「負債」となってしまうのです。
2. なぜ今、負動産が急増しているのか
日本では少子高齢化と人口減少が進み、地方や郊外の不動産の需要が著しく低下しています。
一方、相続は避けられないため、使い道のない土地を受け継ぐ人が増加しています。
・都市圏以外では地価が下がり続けている
・空き家対策特別措置法により、放置すると固定資産税が6倍になるケースも
・相続人が遠方に住んでいて現地管理ができない
これらの要因が重なり、「相続したくない不動産」が各地に広がっています。
3. 負動産が相続人にもたらす現実的な負担
相続した不動産には、たとえ収益が出ていなくても以下のような負担が発生します。
・固定資産税や都市計画税の支払い義務
・定期的な草刈りや老朽化による補修義務
・隣地との境界問題や不法投棄への対応
・空き家倒壊による近隣トラブル、損害賠償責任
また、売却しようとしても買い手が見つからず、結局「相続放棄を選ぶしかない」といったケースも少なくありません。
4. よくあるトラブル事例
【事例】
地方に実家があるAさんは、両親の死後にその家と土地を相続。誰も住まなくなった家は急速に劣化し、近隣住民から「瓦が落ちそう」「蚊が大量発生している」と苦情が。
自治体からは是正勧告が届き、解体費用と更地にした後の高額な固定資産税が発生。
結果、相続によって数百万円の出費が必要となり、「相続しなければよかった」と後悔することに。
5. 生前対策①:土地を相続させない選択肢
親が元気なうちにできることとして、まず考えたいのはその土地を本当に相続させる必要があるのかという点です。
・子どもと話し合い、土地の維持・利用の意思があるか確認
・相続人が引き取りを望まない場合、他の財産で代替できるかを検討
・遺言書を作成して、土地を相続させない指定も可能
使い道のない土地を残すより、現金や売却済み資産として相続させた方が円満なケースも多いです。
6. 生前対策②:処分・利活用・寄附の検討
もし土地を子どもに残さないと決めた場合、生前に処分や利活用を考えることが重要です。
・早めに売却(多少値下がりしていても)を検討
・解体・更地化して月極駐車場などに活用
・地方自治体や公益法人への寄附(ただし受け入れ条件あり)
・2023年に始まった「相続土地国庫帰属制度」を検討(一定の条件で国が引き取る)
土地は"持っているだけでお金がかかる"時代だからこそ、持ち続けるべきか手放すべきかの判断が必要です。
7. まとめ:本当に"残したい"財産とは何か
相続人のためを思って残したはずの土地が、逆に負担と混乱を生む――それが負動産の怖さです。
形式的には"資産"であっても、管理・維持・処分の手間やコストまで見越すことが大切です。
相続とは、財産を引き継ぐことだけでなく、家族の未来の負担まで含めて考える行為です。
不要な土地を残すのではなく、「本当に残したい価値ある財産とは何か」を見極めることが、次の世代への最良のギフトになるでしょう。
次回は最終回「家族信託の誤解──"信頼できる人に任せれば安心"ではない」で、信頼を前提にした家族信託のリスクと注意点について掘り下げていきます。

「母の通帳にお金を移しておいたから大丈夫」
「子ども名義の預金は、生前贈与のつもりだった」
──このような名義だけを変えた預金(名義預金)が、相続時に相続税の対象となることや、相続トラブルの原因になることをご存じでしょうか?
名義預金は見た目には"家族の預金"ですが、実質的には亡くなった人(被相続人)の財産とみなされる場合が多く、課税や分割対象になる可能性があります。
本記事では、名義預金の定義と危険性、税務上の扱い、そして家族を守るための対策を、実例とともに詳しく解説します。
【目次】
1.名義預金とは?──名前は家族、でも中身は本人
2.なぜ名義預金が相続トラブルになるのか
3.税務署が「名義預金」と判定するポイント
4.名義預金に関する実際のトラブル例
5.対策①:本当の贈与にするために必要なこと
6.対策②:生前からの"使い方"と"記録"の工夫
7.まとめ:通帳の名義ではなく、実質で判断される
1. 名義預金とは?──名前は家族、でも中身は本人
名義預金とは、「形式上は配偶者や子どもなどの名義になっているが、実質的には被相続人(亡くなった方)が管理・支配していた預金」を指します。
たとえば以下のようなケースが該当します。
・子ども名義の預金通帳を親が管理し、出し入れも親がしていた
・通帳の印鑑が親のものと同一
・子ども本人は口座の存在を知らない
このような場合、たとえ通帳の名義が子どもであっても、実質的には被相続人の財産とみなされるのです。
2. なぜ名義預金が相続トラブルになるのか
名義預金は、相続税の申告の際に財産に含めるかどうかが曖昧になるため、家族間でトラブルの原因となりがちです。
・長男が母名義の通帳を「自分が生前に贈与を受けていた」と主張
・他の兄弟が「贈与の証拠がないから、遺産に含めるべき」と反論
こうした対立が調停や訴訟にまで発展することもあります。
3. 税務署が「名義預金」と判定するポイント
税務署は、通帳の名義ではなく、資金の出どころと通帳の管理実態を重視します。以下のような場合、名義預金と認定されやすくなります。
・預金の原資が被相続人(親など)の収入である
・贈与契約書などがない
・名義人本人が預金の存在や使用目的を把握していない
・通帳や印鑑を被相続人が管理していた
税務調査では、金融機関の記録や通帳・印鑑の保管状況、生活実態まで細かく確認されることがあります。
4. 名義預金に関する実際のトラブル例
【事例】
母の死後、相続財産として申告されたのは、自宅と定期預金のみ。しかし、税務調査で長女名義の口座に2,000万円の預金があることが発覚。
実は母が長年にわたって管理していたもので、長女も「自分のお金ではない」と証言。
結果として、その2,000万円も母の相続財産とみなされ、相続税が追徴課税されることに。
このように、「名義だけの預金」は相続税の申告漏れとされる危険があり、延滞税や加算税まで課される可能性があります。
5. 対策①:本当の贈与にするために必要なこと
名義預金を「本当の贈与」として成立させるためには、以下の点に留意する必要があります。
■贈与契約書を作成(可能であれば日付入りで自筆または公正証書)
■贈与税の申告(年間110万円以上の場合)を行う
■贈与を受けた本人が預金の存在と内容を把握している
形式的な処理だけでなく、「贈与の意思」と「受贈者の認識」が重要です。
6. 対策②:生前からの"使い方"と"記録"の工夫
名義預金問題を避けるには、生前からの管理の透明化が効果的です。
■通帳や印鑑を名義人本人に渡す
■預金の使途を記録しておく
■家族間でお金の流れを共有する
また、可能であれば贈与ではなく「生前に財産を分ける」方針で、遺言や民事信託の活用も検討するとよいでしょう。
7. まとめ:通帳の名義ではなく、実質で判断される
相続における名義預金の問題は、「名義」と「実質」の乖離が生むトラブルです。
家族名義にして安心していても、管理や意思が伴っていなければ、相続税の対象となり、争いの火種にもなり得ます。
家族を守るためには、形式だけでなく中身を伴わせることが大切です。
贈与の記録を残す、本人に通帳を渡す、適切に申告する——そうした一手間が、後々の相続をスムーズにし、家族関係を守る鍵となります。
次回は「負動産の悲劇──不要な土地を子に押しつけないために」と題して、処分も管理も難しい"負動産"が相続人を苦しめるケースとその対策についてお届けします。

「この土地は長男にあげると父が言っていた」「母から生前に譲ってもらう約束をしていた」──こうした**"口約束"による相続のトラブル**は、今も後を絶ちません。
相続において、親子間の信頼関係や慣習に頼るのは非常に危険です。登記がされていない不動産や、契約書のない贈与の約束は、法的には「無かったこと」になり、他の相続人との間に深刻な対立を生むことも。
本記事では、贈与と登記の重要性、そしてそれが相続にどのような影響を及ぼすのかを、事例を交えて解説します。
【目次】
1. 「あげる」と言われただけではダメ?
2. 贈与は"契約"であり、証拠が必要
3. 不動産の名義変更(登記)をしていないとどうなる?
4. 口約束による相続トラブルの典型例
5. なぜ登記を後回しにしてしまうのか
6. 贈与契約書や登記を整えておくべき理由
7. まとめ:言葉ではなく「証拠」で家族を守る
1. 「あげる」と言われただけではダメ?
生前に親から「この家はお前にやる」と言われていた。
長年その家に住み続けていた——こうしたケースは非常に多く見られます。
しかし、相続が発生した途端、他の相続人から「そんな話は聞いていない」と異議が出されることがあります。
残念ながら、"言った・言わない"の話は証拠にならず、法的効力を持ちません。親の遺志を実現するためには、書面や登記といった"形"が必要なのです。
2. 贈与は"契約"であり、証拠が必要
民法では、贈与は「当事者双方の合意によって成立する契約」とされています(民法549条)。
つまり、「あげる」「もらう」という意思表示の合致があれば成立はしますが、書面がなければ撤回可能とされています(民法550条)。
特に不動産の贈与は、契約書と登記がセットで行われていない限り、第三者に対抗できないため、他の相続人からの異議に対応できなくなる可能性が高くなります。
3. 不動産の名義変更(登記)をしていないとどうなる?
たとえ親から「この土地はお前にやる」と言われていたとしても、**名義が親のままであれば、その土地は"遺産"**として扱われます。
そして、法定相続人全員の共有状態となり、他の相続人の同意がないと処分できなくなるのです。
さらに、口約束の主張が他の相続人の利益を侵害するとして、「特別受益」として遺留分侵害請求の対象になることも。
これは、想定外の相続トラブルの火種になりかねません。
4. 口約束による相続トラブルの典型例
【事例】
父が生前に「長男に自宅をやる」と言っていたが、登記は父名義のまま。
父の死後、長男は当然のように住み続けたが、弟と妹が「遺産分割協議をしてくれ」と主張。
長男は「もらったものだ」と主張するが、登記も契約書もないため証明できず、結局は不動産を含めた分割協議に。
調停にまで発展し、相続手続きは数年越しに。
このように、信頼関係が崩れた瞬間、口約束は"なかったこと"にされてしまうのです。
5. なぜ登記を後回しにしてしまうのか
生前贈与を受けた側としては、登記のための費用(登録免許税、司法書士報酬など)を避けたい、という心理が働くこともあります。
また、「税務署に知られたら贈与税がかかるのでは」との誤解や、親側が「死ぬまでは自分の名義で持っていたい」と考えるケースもあります。
しかし、これらの理由で登記を後回しにした結果、本来の意思が法的に実現されなくなるリスクを高めてしまいます。
6. 贈与契約書や登記を整えておくべき理由
トラブルを未然に防ぐためには、
贈与契約書を作成(可能であれば公正証書)
不動産は速やかに名義変更(登記)
相続人間での合意がある場合は書面化しておく
こうした"形式"をきちんと整えることが不可欠です。
また、生前贈与を行う場合は、**贈与税の非課税制度(例:相続時精算課税制度や住宅取得資金の贈与特例)**を活用すれば、税負担を軽減しながら登記を済ませることも可能です。
7. まとめ:言葉ではなく「証拠」で家族を守る
「親子の間だから大丈夫」「家族がわかってくれるはず」——
そう思っていた"口約束"が、家族関係を壊す結果になってしまうのが、相続の怖さです。
相続は、**「気持ち」より「証拠」**の世界です。
親の意思を実現し、家族の争いを防ぐためには、贈与契約と登記という"形に残る証拠"を残しておくことが最も効果的な対策です。
次回は、**「名義預金」の落とし穴──家族名義の預金は誰のもの?」**をテーマに、実際の通帳や預金の管理が、思わぬ課税や争いの原因になるケースを解説していきます。

「遺言書を書いておけば相続は安心」と思っていませんか?実は、自筆証書遺言や公正証書遺言など、遺言の"形式"によって、相続手続きの手間やリスクが大きく変わるのです。特に、家庭裁判所の検認手続きが必要となる自筆証書遺言は、手続きに時間がかかるうえに、無効になるケースもあるため注意が必要です。本記事では、遺言の種類ごとの特徴と、相続を円滑に進めるために知っておくべきポイントを、司法書士の視点からわかりやすく解説します。
【目次】
1. 遺言は"書いたら安心"ではない
2. 自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
3. 検認手続きが相続を遅らせる理由
4. 無効になってしまう自筆遺言の事例
5. 公正証書遺言を選ぶメリットとは
6. 遺言保管制度はどこまで使えるのか
7. まとめ:形式を軽視した遺言は、家族を困らせる
1. 遺言は"書いたら安心"ではない
「父が遺言を残していたので安心しました」
——相続の現場では、よくこうした声を聞きます。
しかし、その遺言が**"自筆"によるもので、法的な要件を満たしていなかった場合**、その安心は一瞬で不安に変わります。
相続対策として遺言を残すことは非常に重要ですが、その形式と内容を正しく理解していないと、かえって相続手続きを混乱させる原因になります。
2. 自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
遺言にはいくつかの種類がありますが、特に一般的なのは次の2つです。
自筆証書遺言:本人がすべて手書きで作成する遺言
公正証書遺言:公証人が作成し、公証役場で保管される遺言
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、法的な不備があると無効になるリスクがあります。一方、公正証書遺言は費用がかかりますが、法的にしっかりした形で残せるのが大きなメリットです。
3. 検認手続きが相続を遅らせる理由
自筆証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。
これは、遺言の内容を確認し、改ざんがされていないかをチェックする手続きですが、この検認が終わらない限り、不動産の名義変更や預貯金の解約といった相続手続きが進められないのです。
検認には、申立書類の準備や相続人全員への通知、家庭裁判所からの呼び出しなど、数週間から数ヶ月の時間がかかることもあります。
「遺言があるのに相続が進まない」という、思わぬ落とし穴です。
4. 無効になってしまう自筆遺言の事例
たとえば、以下のようなケースでは、自筆証書遺言が無効となる可能性があります。
日付が「令和〇年〇月吉日」となっている(不特定な日付)
一部をワープロで印刷している
遺言内容があいまいで解釈が分かれる
相続人の名前がフルネームでなく、特定できない
このように、本人はきちんと遺言を書いたつもりでも、法的に有効と認められないケースが非常に多く存在します。
5. 公正証書遺言を選ぶメリットとは
公正証書遺言は、公証人が法律に則って作成し、本人と証人2名の前で確認されます。そのため、形式的な不備が起こることはまずありません。また、遺言の原本は公証役場に保管され、相続発生後は検認不要で、すぐに相続手続きを進めることが可能です。
費用の目安としては、内容によりますが1万〜数万円程度が相場です。安心と確実性を買うと考えれば、十分妥当な投資といえるでしょう。
6. 遺言保管制度はどこまで使えるのか
2020年から始まった法務局の遺言書保管制度を利用すれば、自筆証書遺言でも「検認不要」で手続きできます。
ただし、法務局で保管されていても、内容が法律上有効であるかどうかまでは保証されません。つまり、保管制度は形式のチェックだけで、内容そのものの適法性までは担保されないという点に注意が必要です。
また、相続人が存在を知らないままだと、遺言書が"発見されないまま"になってしまう恐れもあります。
7. まとめ:形式を軽視した遺言は、家族を困らせる
遺言は、残せばよいのではなく、正しく残すことが重要です。
形式に不備がある遺言は、家族を混乱させ、かえって遺産分割を遅らせる原因になります。
相続トラブルを防ぎ、遺された人たちの手続きがスムーズに進むようにするためには、できるだけ公正証書遺言、あるいは信頼できる専門家のサポートのもとでの遺言作成が不可欠です。
「安心したいなら、"書き方"にもこだわる」——これが、後悔しない相続対策の第一歩です。

「うちはまだ元気だし、相続なんて考えるのは早いよ」
そう思っていませんか?
しかし、相続問題は「元気なうち」にこそ備えておくべきもの。
実際、相続トラブルの多くは、「何も決めていなかったこと」が原因で起こります。
そして、認知症や突然の病気、事故などにより、手遅れになるリスクも…。
この記事では、「相続対策はなぜ早めに始めるべきなのか」「実際に起こっているトラブル事例」「どんな対策があるのか」について解説します。
家族の未来を守るため、今すぐ一歩踏み出しましょう。
【目次】
1. 相続対策を"先延ばし"にする人が多い理由
2. 先延ばしが招く3つの重大リスク
3. 実際にあった"手遅れ"の相続トラブル
4. 生前からできる相続対策とは?
5. まとめ:今こそ「相続対策元年」にしよう
6. 無料相談のご案内(CTA)
1. 相続対策を"先延ばし"にする人が多い理由
「まだ健康だし」
「子ども同士は仲がいいから揉めないよ」
「財産もそんなにないし」
多くの人がこのように考えて、相続のことを真剣に考えるのを後回しにしています。
実際に、2023年の民間調査によると、「相続対策をしていない理由」として最も多かったのは、
**「まだ元気だから」**が約60%という結果に。
しかし、人生は思い通りには進まないことも多く、「想定外」によって家族が困ることも少なくありません。
2. 先延ばしが招く3つの重大リスク
リスク①:認知症で判断能力を失うと、対策できなくなる
認知症などで判断能力が低下すると、遺言の作成や贈与契約などの法律行為ができなくなります。
その結果、相続対策が一切不可能になってしまいます。
リスク②:突然の病気や事故で、遺言を残せないまま他界
病気や事故は予告なく訪れます。
もし遺言がなければ、相続人全員での遺産分割協議が必要になり、争族トラブルに発展することも。
リスク③:時間が経つほど対策の選択肢が減る
たとえば、生前贈与の活用には数年単位の計画が必要なこともあります。
ぎりぎりになってからでは、節税にも限界があり、最終的に家族に多大な税負担を残す可能性も。
3. 実際にあった"手遅れ"の相続トラブル
ケース1:認知症で遺言が作れず、兄弟間で大揉めに
母親が元気なうちに遺言を作るよう勧めていたが、「まだ大丈夫」と先延ばしにしていたところ、突然の認知症発症。
判断能力が認められず、遺言が作成できなくなった結果、相続人同士の話し合いがこじれて、家庭裁判所での調停にまで発展。
ケース2:不動産の名義変更が間に合わず、売却不能に
父の急逝後に不動産を売却しようとしたが、相続登記も遺言書もなく、10人以上の相続人で話がまとまらず、不動産が塩漬けに。
4. 生前からできる相続対策とは?
● 遺言書の作成
自筆証書遺言や公正証書遺言で、財産の分け方を明確に。
※法的な要件を満たさなければ無効になるため、専門家の関与が推奨されます。
● 任意後見契約の締結
判断能力があるうちに、将来の後見人をあらかじめ指定しておく契約。認知症対策に有効。
● 家族信託の活用
財産を信頼できる家族に託すことで、柔軟な財産管理・承継が可能になります。
特に不動産や中小企業の事業承継に効果的。
● 生前贈与・相続税対策
暦年贈与や相続時精算課税制度など、税制を活用して財産の一部を先に渡すことで、節税効果が期待できます。
5. まとめ:今こそ「相続対策元年」にしよう
相続対策は、「まだ早い」と思っているうちがチャンスです。
万が一が起こってからでは、できることは限られてしまいます。
家族のために、将来のトラブルを未然に防ぐために。
そして、自分の想いをきちんと形に残すために。
相続対策は、あなたの"今"の決断から始まります。
6. 無料相談のご案内【CTA】
✅「相続の話なんて、まだ早い」と思っていませんか?
✅「何から始めればいいのかわからない」と感じていませんか?
当事務所では、相続対策に関する無料相談を実施中です。
一緒に"あなたの想い"をカタチにしましょう。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「実家の名義、亡くなった親のままでも問題ないでしょ?」
そんなふうに思っていませんか?
これまで、不動産の相続登記(名義変更)は義務ではなかったため、名義を変更せずに放置しているケースが多くありました。
しかし、**2024年4月1日からは「相続登記が義務化」され、正当な理由なく登記をしなければ10万円以下の過料(罰金)**が科される可能性があります。
この記事では、「なぜ相続登記が義務化されたのか」「いつまでに何をすればよいのか」「放置することでどんなリスクがあるのか」について、わかりやすく解説します。
【目次】
1. なぜ相続登記が義務化されたのか?
2 .義務化の内容と期限は?
3. 放置するとどうなる?具体的リスク3つ
4. 相続登記の手続きの流れ
5. 早めの対策で"負の連鎖"を断ち切ろう
6. まとめ:迷うより、まず相談を
7. 無料相談のご案内(CTA)
1. なぜ相続登記が義務化されたのか?
国土交通省によると、全国に存在する「所有者不明土地」は九州の面積を超える規模にのぼるとされ、社会問題になっています。
名義人が亡くなっても登記がされず、相続人が多数にわたって把握不能となった土地は、売却や活用が難しくなり、公共工事や地域開発の妨げにも。
こうした問題を解決すべく、不動産登記法が改正され、相続登記の義務化が決定されました。
2. 義務化の内容と期限は?
義務化のポイントは以下の通りです。
● 義務の内容
不動産を相続した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。
● 対象となるケース
2024年4月1日以降の新たな相続
それ以前の相続で、登記が未了のままのもの(遡及適用)
● 正当な理由なく放置した場合
→ 10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
3. 放置するとどうなる?具体的リスク3つ
リスク①:売却・担保設定ができない
名義が故人のままでは、不動産を売却したり担保に入れることができません。
手続きをしようと思っても、相続人が増えて協議が困難に…。
リスク②:相続人が増えて収拾がつかない
放置すればするほど、相続人の代が進み、関係者が数十人になるケースも。
誰か一人でも協議に応じないと、手続きが止まります。
リスク③:固定資産税の通知が届かない
登記されていないと納税義務が不明確に。未納が続けば差押えや不利益な処分につながる可能性もあります。
4. 相続登記の手続きの流れ
相続登記は、以下のような手順で進められます。
相続人の確定(戸籍調査)
遺言書の確認、または遺産分割協議
必要書類の収集(戸籍、登記簿謄本、評価証明書等)
登記申請書の作成・提出(法務局)
専門家に依頼することで、手間やミスを減らし、スムーズな手続きを行うことができます。
5. 早めの対策で"負の連鎖"を断ち切ろう
相続登記を放置すれば、将来の手続きがより複雑・困難・高コストになります。
実際に、放置期間が長いほど登記費用・調査費用が増加する傾向にあります。
また、子や孫の代で手続きしようとしたとき、関係者が増え過ぎて**「もう手続き不可能」**という事態に陥ることも。
早めに登記しておくことで、「家族に迷惑をかけない」「不動産を有効活用できる」という大きなメリットがあります。
6. まとめ:迷うより、まず相談を
相続登記の義務化は、すでに始まっています。
「まだ何もしていないけど大丈夫?」
「昔、親の名義のままの土地があるけど…」
「登記って自分でもできるの?」
そんな疑問や不安をお持ちの方は、まずは専門家に相談してみましょう。
状況を正確に把握することが、今後のリスクを減らす第一歩です。
7. 無料相談のご案内【CTA】
✅ 相続登記、何から始めればいいか分からない方へ
「名義が親のままの不動産があるけど大丈夫?」
「手続きが面倒そうで放置してしまっている…」
そんなお悩み、当事務所の司法書士が丁寧にサポートいたします。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「うちは仲がいいから大丈夫」「財産なんてそんなにないし揉めるはずがない」——
相続に関するこんな思い込みが、後々深刻な"争族トラブル"を引き起こすことがあります。
実際、家庭裁判所における遺産分割調停の件数は年間1万件以上(令和5年:12,098件)にも上り、しかもその7割以上が「相続財産5,000万円以下」の案件です。
つまり、相続トラブルは「資産家だけの問題」ではなく、どこの家庭にも起こりうる身近なリスクなのです。
この記事では、「なぜ相続で揉めるのか」「揉めないために何を準備すればいいのか」を、実例を交えながら分かりやすく解説します。
【目次】
1.相続トラブルの現状と統計
2.「揉める相続」にありがちな3つの原因
3.「揉めない相続」のためにやっておきたい準備とは
4.実例紹介:準備の有無でここまで違う
5.専門家に相談して対策を"見える化"しよう
6.まとめ:準備が"安心"に変わる
7.無料相談のご案内(CTA)
1. 相続トラブルの現状と統計
令和5年の家庭裁判所統計によると、遺産分割事件は12,098件にのぼり、依然として高い水準が続いています。
さらに、遺産分割事件のうち、相続財産が5,000万円以下の案件が74.3%、**1,000万円以下が31.3%**を占めています(出典:裁判所統計年報)。
これは、「うちは財産が少ないから揉めない」という考えが誤りであることを示しています。
2. 「揉める相続」にありがちな3つの原因
原因①:遺言書がない、または内容が曖昧
遺言がないと、誰が何を相続するかを遺産分割協議で決めなければなりません。意見が分かれると、調停や裁判にまで発展します。
原因②:財産の全容が不明
どこに何があるか分からない、借金があるかも分からない…そんな状態では相続人間での信頼関係が崩れやすくなります。
原因③:生前の公平感のズレ
「長男は大学まで行かせてもらったのに、自分は高卒だった」など、金銭面・待遇面の"記憶"が相続をきっかけに噴き出すこともあります。
3. 「揉めない相続」のためにやっておきたい準備とは
相続対策は、ただの"節税"ではありません。**「揉めないようにする準備」**こそがもっとも重要です。
準備①:遺言書の作成(公正証書遺言がおすすめ)
法的に有効で、内容が明確な遺言書を残すことで、相続人同士の無用な争いを防げます。
準備②:財産の「棚卸し」
不動産、預貯金、有価証券、借入金などをリスト化しておくことで、相続人が正確に全体像を把握できます。
準備③:家族への共有・意思表示
「どの財産を誰に残したいか」「自宅はどう扱ってほしいか」など、ご本人の意向を生前に家族に伝えておくことで、誤解や疑心を防げます。
4. 実例紹介:準備の有無でここまで違う
ケースA:遺言書なし、財産内容も不明
3人兄弟が相続人。不動産の価値評価をめぐり意見が割れ、調停に発展。解決までに1年半、弁護士費用・鑑定費用などで100万円以上の出費。
ケースB:公正証書遺言と財産目録あり
長男に自宅を、長女に現金を…とバランスよく記載された遺言書と財産リストがあったため、手続きもスムーズ。
相続人全員が納得し、1か月程度で手続き完了。
5. 専門家に相談して対策を"見える化"しよう
相続対策は、一人で抱え込むには負担が大きすぎます。
とくに以下のような方は、司法書士・税理士などの専門家に早めに相談しましょう。
不動産が複数ある方
子どもがいない、または前婚の子どもがいる方
家族間の関係に微妙な空気がある方
特定の相続人に多く残したい意向がある方
生前贈与や生命保険を活用したい方
専門家のサポートがあれば、法的リスクや家族関係への配慮をふまえた上で、**「納得感のある準備」**ができます。
6. まとめ:準備が"安心"に変わる
揉めるかどうかは、家族の仲よりも「準備の有無」によって決まります。
「まだ元気だから」「うちは大丈夫だから」と思っている今こそが、相続対策を始めるベストタイミングです。
将来、家族が穏やかに相続を迎えるためにも、今できる準備を一つずつ進めていきましょう。
7. 無料相談のご案内【CTA】
✅ 相続対策、何から始めればいいか分からない方へ
「遺言書を作るべき?」「財産リストってどう作るの?」「子どもたちにどう伝えればいい?」
そんな疑問を、相続の専門家が丁寧にお答えします。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「相続手続きは複雑そう」「何をどう始めればいいのか分からない」
そんな声を多く耳にします。実際、相続が発生すると、葬儀や年金の手続きから始まり、不動産の名義変更、預金の解約、遺産分割協議、税務申告など、やるべきことが山積みです。
しかし、「よく分からないから後回し」にしてしまうと、手続きの期限を過ぎたり、相続人同士の関係がこじれたりと、後々大きなトラブルに発展することも…。
この記事では、相続発生後の手続きの全体像を整理し、不安の正体を"見える化"します。相続に関わる全ての人に役立つ基本情報としてご活用ください。
【目次】
1.相続手続きは「やることが多すぎる」から不安になる
2.相続手続きの全体像をつかもう
3.実際にやることリスト(チェックリスト形式)
4.よくある失敗と注意点
5.専門家に相談するタイミングはいつ?
6.まとめ:可視化するだけで、不安はぐっと軽くなる
7.無料相談のご案内(CTA)
1. 相続手続きは「やることが多すぎる」から不安になる
相続に関する漠然とした不安の多くは、「何から手を付けていいか分からない」ことにあります。
手続きの種類も提出先も期限もバラバラで、全体像がつかみにくいために、精神的な負担が大きくなります。
とくに配偶者や子どもなど、身近な人を亡くした直後に、さまざまな手続きを短期間で進めなければならないことが、さらなるストレスの原因になっています。
2. 相続手続きの全体像をつかもう
相続手続きは大きくわけて、次の3つのフェーズに分けられます。
フェーズ①:死亡後の初期手続き(〜1か月以内)
死亡届の提出、火葬許可の取得
葬儀・埋葬手続き
年金・保険の受給停止と申請
公共料金・銀行・クレジットなどの名義変更や停止
フェーズ②:相続財産の確認と遺産分割(〜3か月以内)
相続人の調査(戸籍取得)
遺言書の有無の確認・検認手続き
財産の把握(不動産・預貯金・証券・負債等)
遺産分割協議(誰が何を相続するか話し合う)
フェーズ③:名義変更や申告手続き(〜10か月以内)
不動産の相続登記
銀行預金の解約と分配
相続税の申告・納税(必要な場合)
各種名義変更(自動車、株式、会員権など)
3. 実際にやることリスト(チェックリスト形式)

4. よくある失敗と注意点
遺言書があるのに勝手に開封してしまった
→家庭裁判所の「検認」が必要。勝手に開封すると無効になる可能性あり。
相続放棄の期限(3か月)を過ぎてしまった
→原則として全財産を相続することになり、借金も背負うリスクがある。
遺産分割協議がまとまらず登記ができない
→不動産の売却や利用ができず、空き家問題へと発展。
相続税の申告漏れ・期限超過
→延滞税や加算税が発生する可能性がある。
5. 専門家に相談するタイミングはいつ?
次のような場合は、専門家への相談を早めに検討すべきです。
相続人が複数いて、話し合いが進まない
不動産の名義変更が必要(共有・未登記など)
借金がある可能性がある
相続税の対象になるか分からない
遺言書の内容に疑問がある
特に、「分からないけど何となく不安」という方こそ、早めの相談が安心への第一歩になります。
6. まとめ:可視化するだけで、不安はぐっと軽くなる
相続手続きは、確かにやることが多く、専門的な内容も含まれています。
しかし、「何を」「いつまでに」「どこに」すればよいかが分かれば、着実に前へ進めることができます。
漠然とした不安は、「見えないこと」から生まれます。
その正体をひとつひとつ明らかにしていけば、相続は"対応できる問題"に変わります。
7. 無料相談のご案内【CTA】
✅ 相続の手続き、どこから始めればいいかわからない方へ
専門家による初回無料相談を行っています。
相続登記・遺産分割・相続放棄・遺言・相続税の申告など、どんなお悩みでもご相談いただけます。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「相続はまだ先の話」「うちは財産が少ないから関係ない」と思っていませんか?
しかし、実際に相続が発生した際、「何をすればいいのか分からない」「親族と揉めたくない」「手続きが複雑そう」と、漠然とした不安を抱える方は非常に多くいます。
この記事では、最新の調査データをもとに、相続に対して多くの人が感じている"漠然とした不安"の正体を探ります。
将来のトラブルや手続きの混乱を防ぐためにも、まずは「なぜ不安になるのか?」を知ることから始めてみましょう。
【目次】
1.相続に対して3人に1人が「ネガティブな印象」を持っている
2.「漠然とした不安」の内訳とは?
3.実際に相続を経験した人が困ったこと
4.なぜ不安になるのか?情報と経験の不足
5.不安を軽減する第一歩とは
6.まとめ:不安の正体を知ることで、相続は"対処可能"になる
7.無料相談のご案内(CTA)
1. 相続に対して3人に1人が「ネガティブな印象」を持っている
相続という言葉を聞いたとき、「面倒くさい」「揉めそう」「難しそう」と感じる方は少なくありません。
2024年に株式会社鎌倉新書が実施した全国調査(対象:40代以上の男女1,000人)によると、**32.4%の人が「相続にネガティブな印象を持っている」**と回答しています。
これは約3人に1人の割合。相続は一部の富裕層だけの問題ではなく、ごく普通の家庭でも"心配事"として認識されていることがわかります。
2. 「漠然とした不安」の内訳とは?
では、その"ネガティブな印象"の具体的な中身は何なのでしょうか。
同じ調査では、相続に不安を感じる理由として、以下の項目が挙げられています。
手続きが複雑そう・面倒そう:49.3%
親族間でのトラブルに繋がりそう:19.9%
制度やルールがよく分からない:13.4%
専門家に相談しづらい:7.1%
費用がかかりそう:6.3%
つまり、多くの方が"手続きや制度のわかりにくさ"に不安を感じており、さらに"家族・親族との人間関係の悪化"を心配していることがわかります。
3. 実際に相続を経験した人が困ったこと
こうした漠然とした不安は、実際に相続を経験した人たちの体験によって裏付けられています。
同調査によれば、相続時に「困ったこと」として多く挙げられたのは以下の通りです:
親族間での意見の不一致・争い:38.2%
相続財産の全体像が把握できなかった:29.5%
不動産の処分・管理が面倒だった:22.4%
誰に何を相談すればよいか分からなかった:17.8%
このように、相続手続きの内容や人間関係のこじれ、相談先の不明確さが現実的な問題として立ちはだかります。
4. なぜ不安になるのか?情報と経験の不足
相続が不安な理由の多くは、結局のところ「よく分からないから」です。
相続は一生のうちに何度も経験することではなく、しかも法律や税務など専門的な知識が必要とされます。
また、相続を「話題にしづらい」「縁起が悪い」と敬遠する風潮も、不安の温床になっています。
このように、「経験がない」+「情報がない」+「相談しづらい」という三重苦が、相続に対する"漠然とした不安"を強くしているのです。
5. 不安を軽減する第一歩とは
不安を取り除くための第一歩は、「情報を得ること」、そして「行動を始めること」です。
相続財産の全体像を把握しておく(不動産、預貯金、借金など)
家族と話し合う機会を持つ(思い込みのズレを解消)
エンディングノートや財産目録を作ってみる
専門家に相談してみる(初回無料のケースが多い)
特に、専門家との無料相談は、不安を"言語化"して具体的な対処法を知るきっかけになります。話すだけでも気持ちが軽くなることは少なくありません。
6. まとめ:不安の正体を知ることで、相続は"対処可能"になる
相続に対して「漠然とした不安」を抱くのは、あなただけではありません。
3人に1人が不安を感じており、その多くは"よく分からない"ことに起因しています。
けれども、不安の正体を知れば、対処方法は必ずあります。
手続きの複雑さ、人間関係のトラブル、費用の問題──それぞれに解決策があります。
だからこそ、不安を放置せず、小さな一歩から始めることが大切です。
7. 無料相談のご案内【CTA】
✅ 「うちの相続、大丈夫かな?」と感じたら…
初回無料相談を受付中です。
相続手続き・遺言・家族信託・不動産の名義変更など、何でもお気軽にご相談ください。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「親が公正証書遺言を残していたから、相続手続きは簡単だろう」と安心している方は多いかもしれません。
確かに、遺言書があることで遺産分割協議が不要となるケースもありますが、相続人調査そのものが不要になるわけではありません。
特に相続登記を行う際は、たとえ全財産を特定の人に相続させる遺言が存在していても、他の相続人の有無を確認し、その範囲を確定する必要があります。
この記事では、遺言がある場合における相続人調査の具体的なポイントや注意点、遺言の種類ごとの扱いの違いについて、司法書士の立場から解説します。
■ 目次
1.遺言書があると遺産分割協議は不要になる?
2.相続人調査が必要な理由とは
3.遺言の種類と効力の違い
4.公正証書遺言と相続登記の関係
5.自筆証書遺言・秘密証書遺言の注意点
6.相続人に廃除や相続欠格者がいる場合
7.遺留分と登記の関係
8.実務でよくある誤解とトラブル例
9.まとめ:遺言があっても、相続人調査は「必須」
10.アイリス国際司法書士事務所からのご案内(CTA)
1. 遺言書があると遺産分割協議は不要になる?
一般に、法的に有効な遺言書がある場合、その内容に従って相続手続きを行うことができます。
たとえば、「全財産を長男に相続させる」と記された公正証書遺言があれば、遺産分割協議を行わずとも長男単独で登記が可能となります。
ただしそれは、相続人の存在が明確であることが前提です。
遺言があっても相続人の存在を明らかにするための調査――すなわち戸籍収集などは必要となるのです。
2. 相続人調査が必要な理由とは
相続登記の際には、「この遺言書に書かれている人物以外に法定相続人がいない」ことを客観的に証明する必要があります。
そのため、遺言書の有無にかかわらず、以下の調査は必須です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の取得
相続人全員の戸籍・除籍・改製原戸籍の確認
相続関係説明図の作成
これは、後から相続人が現れて登記を無効にされるリスクを防ぐための重要なステップです。
3. 遺言の種類と効力の違い
遺言には以下の3種類があります。それぞれに効力の強さと登記時の手続きの手間が異なります。
公正証書遺言:公証人が関与するため、形式的な不備がなく、家庭裁判所の検認も不要。登記手続きがスムーズ。
自筆証書遺言:本人の手書き。法改正により一部パソコン印字も可能になったが、家庭裁判所の検認が必要。
秘密証書遺言:存在は証明されるが内容は秘密。利用は少なく、登記には検認を経たうえで遺言内容の確認が必要。
4. 公正証書遺言と相続登記の関係
最もスムーズに相続登記が可能なのが公正証書遺言です。
登記申請時には以下の書類が必要となります。
公正証書遺言(原本と謄本)
被相続人の出生~死亡までの戸籍
相続人の住民票・印鑑証明書など
不動産の固定資産評価証明書など
このように、公正証書遺言があっても、戸籍調査や書類の収集は必須となります。
5. 自筆証書遺言・秘密証書遺言の注意点
自筆証書遺言や秘密証書遺言は、家庭裁判所での「検認」手続きを経なければ、登記申請に使うことができません。
さらに、記載内容に曖昧さがある場合には、遺産分割協議が必要になるケースもあります。
また、法的に無効と判断されることも多いため、事前の確認が大切です。
6. 相続人に廃除や相続欠格者がいる場合
遺言書によって特定の相続人を「廃除」することも可能ですが、家庭裁判所の審判を経なければ効力は生じません。
また、法律で相続欠格に該当する行為があった相続人がいても、その事実を証明する戸籍や資料の収集が求められます。
つまり、どのような事情があっても、登記手続きには相続人の全体像の把握が欠かせないのです。
7. 遺留分と登記の関係
たとえ遺言書が「全財産をAに相続させる」としていても、他の法定相続人には遺留分侵害額請求をする権利があります。
ただし、これは登記に直接影響するものではなく、後日民事紛争となる可能性があります。
登記の時点では、請求の有無にかかわらず、遺言の内容に沿って進めることは可能です。
8. 実務でよくある誤解とトラブル例
「遺言書があるから他の兄弟の戸籍は不要」と思い込み、登記申請時に却下された
自筆証書遺言に不備があり、遺産分割協議が必要になった
廃除された相続人の証明書類が不十分で、申請を受理してもらえなかった
このように、「遺言があるから大丈夫」と安易に考えてしまうと、却って手続きが長引くケースが少なくありません。
9. まとめ:遺言があっても、相続人調査は「必須」
相続登記義務化の時代において、遺言書は相続手続きを簡素化する強力なツールですが、それでも戸籍を通じた相続人調査を省略することはできません。
誤解やトラブルを防ぐためにも、遺言の有無に関係なく、相続人の範囲を正確に把握する手続きが必要であることを、ぜひ覚えておいてください。
10. アイリス国際司法書士事務所からのご案内(CTA)
「親が遺言書を残していたけれど、手続きをどう進めたらいいか分からない」
「相続人調査や戸籍収集をどこまでやればいいのか不安」
そのようなときは、相続登記に強いアイリス国際司法書士・行政書士事務所にお任せください。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、
✅ 公正証書遺言・自筆証書遺言に対応
✅ 相続人調査~登記完了までトータルサポート
✅ 相続登記義務化にも完全対応
※戸籍のみの取得のご依頼は受け付けておりません。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

相続手続きを進めようとしても、「長年会っていない親族がいて連絡がつかない」「海外にいる兄弟の住所が不明」など、連絡が取れない相続人の存在が大きな障害になることがあります。
特に相続登記を行う際は、相続人全員の同意や署名押印が原則として必要になるため、一人でも所在不明者がいれば、登記手続きはストップしてしまいます。
この記事では、連絡が取れない相続人がいる場合の法的対処法として、不在者財産管理人の選任や失踪宣告の活用、遺産分割協議の進め方などを、司法書士の視点から解説します。
家族のつながりが希薄化する現代だからこそ、知っておきたい相続人不明時の対応策をしっかり押さえましょう。
■ 目次
1.相続登記における「相続人全員の合意」の原則
2.相続人と連絡が取れないケースの分類
3.「住所不明」「音信不通」の相続人への対応策
4.不在者財産管理人の選任手続き
5.長期不在・生死不明のケースと失踪宣告
6.相続放棄していた場合はどう扱う?
7.実務上の注意点とよくあるトラブル
8.まとめ:放置せず、専門家に早めの相談を
9.アイリス国際司法書士事務所からのご案内(CTA)
1. 相続登記における「相続人全員の合意」の原則
相続登記では、遺産分割協議により特定の相続人が不動産を取得する場合、相続人全員の同意と署名・実印・印鑑証明書が必要になります。
つまり、1人でも署名できない相続人がいれば登記申請ができません。この点が、連絡不能な相続人がいるときに大きな壁になります。
2. 相続人と連絡が取れないケースの分類
連絡が取れない相続人と一口に言っても、その状況はさまざまです。
主なケースを以下に分類します。
①音信不通(携帯・メール・SNSなども一切反応なし)
②住所不明(住民票の追跡でも現住所不詳)
③海外在住で連絡が取れない
④意思能力に疑義(高齢・認知症等で意思確認ができない)
⑤生死不明(長期間連絡がなく、死亡している可能性も)
対応策は、それぞれの事情に応じて異なります。
3. 「住所不明」「音信不通」の相続人への対応策
まずは、住民票・戸籍の附票・転出先調査などにより、相続人の現住所や所在を調査します。
しかし、住所が分かっても連絡が取れない場合や、完全に所在が不明な場合は、法的な措置が必要です。
4. 不在者財産管理人の選任手続き
連絡が取れない相続人がいるままでは遺産分割協議を進められません。
そのため、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる方法があります。
管轄:不在者の最後の住所地の家庭裁判所
申立人:他の相続人など
選任される人物:弁護士や司法書士等の専門家が多い
役割:不在者の利益を守りつつ、遺産分割協議に参加する
この制度により、相続人本人が参加できない場合でも、手続きを進めることが可能になります。
5. 長期不在・生死不明のケースと失踪宣告
生死不明状態が7年以上(戦争・災害など特例あり)続いている場合、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。
失踪宣告が認められれば、法律上「死亡したもの」として扱われるため、代襲相続などが発生し、次の手続きへと進むことができます。
ただし、手続きには期間がかかるため、早めに動くことが大切です。
6. 相続放棄していた場合はどう扱う?
「以前に相続放棄した」という相続人がいる場合、その証明として**家庭裁判所の「相続放棄受理証明書」**が必要です。
証明書があれば、該当者は相続人から外れるため、遺産分割協議に参加させる必要はなくなります。
7. 実務上の注意点とよくあるトラブル
勝手に「この人はもう関係ない」と判断し、登記を進めると後日、登記無効や訴訟の原因になる可能性があります。
海外在住の相続人がいる場合、その国の印鑑証明制度や公証制度の有無によって書類の取得が困難なケースも。
不在者財産管理人の選任は、裁判所の判断により数か月を要することもあるため、余裕を持った対応が必要です。
8. まとめ:放置せず、専門家に早めの相談を
相続人の中に連絡が取れない人がいると、手続き全体が止まってしまい、相続登記の義務期限(2024年4月から3年以内)が迫ると過料の対象になる可能性もあります。
相続登記は「いつかやればいい」ではなく、今できる手続きを先延ばしにしないことが最善策です。
早期に司法書士や弁護士と連携して対処することが、家族間のトラブル予防にもつながります。
9. アイリス国際司法書士事務所からのご案内(CTA)
「連絡が取れない相続人がいて、手続きが止まっている」
「不在者財産管理人の手続きをどう進めればいいか分からない」
そんなお困りごとは、アイリス国際司法書士・行政書士事務所が全力でサポートいたします。
相続登記の経験豊富な司法書士が、法的手続きから書類収集までワンストップで対応可能です。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

相続人の範囲を確定するためには、戸籍謄本を取得して法定相続人を確認する作業が不可欠です。
しかし、戸籍を集めるだけでは「完全に把握できた」とは限りません。なぜなら、戸籍上は表れない、あるいは見落とされやすい相続関係が存在するからです。
養子縁組、認知、非嫡出子、代襲相続など、見落としがちな相続関係を把握するには、戸籍の知識と"現場感覚"が必要です。
この記事では、相続人調査において注意すべき「戸籍からでは分からない盲点」について、司法書士の視点から具体的に解説します。
■ 目次
1.戸籍に現れにくい相続関係とは?
2.養子縁組と戸籍の"誤解"
3.非嫡出子と「認知」の問題
4.代襲相続と再代襲の落とし穴
5.戸籍の"記載ミス"や"解釈違い"によるトラブル
6.戸籍+ヒアリングで見えてくるもの
7.相続人調査で気をつけるべきチェックポイント
8.まとめ:戸籍は「万能」ではない
9.アイリス国際司法書士事務所からのご案内(CTA)
1. 戸籍に現れにくい相続関係とは?
戸籍制度は法的な家族関係を記録する制度ですが、すべてを表すものではありません。
以下のようなケースでは、戸籍を見ただけでは相続人の有無や立場を見誤る可能性があります:
生まれてすぐに養子に出されたが、出生戸籍に記録が残っている
認知されたが、その記録が別戸籍にしか残っていない
孫が代襲相続する場合の親の死亡が見えづらい
相続人のうち誰かがすでに亡くなっており、再代襲のケースとなっている
2. 養子縁組と戸籍の"誤解"
養子縁組は戸籍に明記されますが、「養子縁組=法定相続人になる」と思い込むのは危険です。
たとえば:
親の養子になったが、すでに死亡している場合(代襲が発生する)
養子縁組の効力が認められなかったケース(年齢制限や意思の欠如)
また、被相続人が誰かの養子であった場合、その親(養親)からの相続が発生する可能性もあるため、視点を広げる必要があります。普通養子は、実親及び養親全員の相続人になります。
3. 非嫡出子と「認知」の問題
非嫡出子(婚姻外の子)は、認知があれば法定相続人になります。
ただし、認知が戸籍に記載されているかどうかは、本籍や記載タイミングによって確認が難しいケースも。
特に注意が必要なのは、死亡後の死後認知や、相続開始後に認知無効を争われるようなケースです。
一見、相続人がいないように見えても、実は認知された子がいた、ということは現場でもよくある話です。
4. 代襲相続と再代襲の落とし穴
被相続人の子がすでに死亡している場合、その子の子(=孫)が代襲相続人になります。
さらに、代襲者も死亡していた場合は、その子(=曾孫)が再代襲相続することもあります。
ところが、戸籍を丁寧に見ないとこの関係が分からないことが多いのです。
出生順に複数の戸籍を読み解き、「誰が亡くなっているか」「その人に子がいるか」まで正確に追わなければ、正しい相続人を確定できません。
5. 戸籍の"記載ミス"や"解釈違い"によるトラブル
戸籍も「人間が作る書類」ですから、稀に記載ミスや不明瞭な記述があります。
実際のトラブル例:
名前の漢字の一部が異なっていたため、別人と判断されて相続漏れ
婚姻日と出生日が前後していることによる嫡出・非嫡出の誤解
養子縁組の事実が転籍後の戸籍に転記されていなかった
このような場合、法務局側から補足説明を求められることもあり、時間と労力がかかります。
※私自身も数回、戸籍の訂正について話が合ったことがあります。同一の役場での話ならいいのですが、管轄をまたぐと、お互いの記載が正しいと追って譲らず、法務局の審査で指摘され修正をするにもできず大変な思いをした先輩司法書士もいます。
6. 戸籍+ヒアリングで見えてくるもの
戸籍だけでは分からない情報は、やはり家族からのヒアリングで補う必要があります。
昔から親族間で「●●さんは実の子ではないらしい」と言われていた
「実は前の結婚で子どもがいた」というカミングアウト
養子縁組の事実が親族にも知らされていなかった
こうした話がヒントになって、戸籍の読み直しにつながることも珍しくありません。
7. 相続人調査で気をつけるべきチェックポイント
戸籍のつながりは出生までたどれているか?
転籍地を漏れなく取得できているか?
認知、養子縁組の有無を見落としていないか?
代襲相続が発生する関係に注意しているか?
家族の証言を戸籍と照らし合わせて矛盾がないか?
8. まとめ:戸籍は「万能」ではない
戸籍により、相続人の調査をすることはできますが、戸籍がすでに滅失しているケースなどでは、戸籍による証明ができない場合も数多く存在します。
また、見落としがあれば登記ができず、後に相続トラブルに発展する可能性もあるため、専門家による多角的なチェックが大切です。
9. アイリス国際司法書士事務所からのご案内(CTA)
「戸籍は全部そろえたはずなのに、相続登記ができないと言われた…」
「家族関係が複雑で、誰が相続人かよく分からない…」
そんなお悩みは、私たちアイリス国際司法書士・行政書士事務所にお任せください。
相続人調査に強い司法書士が、戸籍の取得・読み解き・ヒアリングまでトータルでサポートいたします。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

相続登記を行う際、法務局に提出する書類として「戸籍謄本一式」が必要となります。
ですが、実際に戸籍を取り寄せようとすると、「どこから?」「どこまで?」と戸惑ってしまう方が非常に多いのが実情です。
この記事では、「戸籍をどこまで集めれば相続人を確定できるのか?」という疑問にお答えします。
被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍が必要とはよく言われますが、実際には時代によって戸籍の様式も変わり、追い方にはコツがあります。
相続人調査を日々の業務で行っている司法書士が、実務目線で分かりやすく解説します。
■ 目次
1. 相続登記で必要な戸籍とは?
2. 「出生から死亡までの戸籍」の意味とは
3. 戸籍の改製って何?明治、大正、平成の違い
4. 具体的な取得の流れと注意点
5. 戸籍が取得できないケースとその対処法
6. 相続人の確定に必要な他の資料
7. まとめ:戸籍収集は時間も労力もかかる
8. アイリス国際司法書士事務所からのご案内(CTA)
1. 相続登記で必要な戸籍とは?
相続登記で必要となる戸籍は、主に以下の3種類です:
被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍含む)
相続人全員の現在の戸籍謄本
相続関係が分かる続柄の記載がある戸籍
これにより、「誰が法定相続人であるか」が明確になります。
2. 「出生から死亡までの戸籍」の意味とは
法務局では、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍をつなげて確認できる状態が求められます。
これにより、認知された子、前婚の子、養子縁組などの情報もすべてチェックできるのです。
そのため、戸籍の取得は被相続人の「最後の本籍地」だけでは不十分なことが多く、過去の本籍地へもさかのぼって請求する必要があります。
3. 戸籍の改製って何?明治、大正、平成の違い
戸籍には「改製(かいせい)」という制度があります。これは、戸籍の書式やルールが変更された際に、古い戸籍から新しい戸籍へと"改める"手続きです。主な改製は以下のとおり:
明治改製戸籍(明治31年式):最古の様式。手書きで読みづらい。
昭和改製戸籍(昭和32年以降):家ごとに作られていた戸籍。
平成改製戸籍(平成6年以降):個人単位の「戸籍法改正」によるもの。
改製されるたびに、前の戸籍は「除籍」または「改製原戸籍」となり、新しい戸籍に転記されます。
これが「つなげていく」作業を複雑にしているのです。
4. 具体的な取得の流れと注意点
以下は、一般的な戸籍収集の流れです:
被相続人の最後の戸籍(除籍)を取得
その戸籍に記載された前住所・本籍地をもとに、さらに前の戸籍を請求
出生時までさかのぼり、最初の親との続柄が確認できる戸籍まで収集
【注意点】
転籍が多い人は複数の市町村に請求する必要がある
手書き戸籍は判読が難しく、時間がかかる
5. 戸籍が取得できないケースとその対処法
まれに、古い戸籍が災害や廃棄によって取得できないことがあります。
その場合は:
法務局に事実関係を説明する上申書を提出
推定される相続人全員の戸籍から逆算して説明する
といった代替手段で対応します。
6. 相続人の確定に必要な他の資料
戸籍以外にも、以下の資料が相続人の確定に役立つ場合があります:
除票(住民票の除票):被相続人の住所の変遷を確認できる
戸籍附票:本籍地の変遷が分かる
7. まとめ:戸籍収集は時間も労力もかかる
「出生から死亡までの戸籍を集める」という一文に収まる作業ではありますが、
実際には複数の自治体に問い合わせ・請求し、手書き文字を読み解く根気と知識が必要です。
また、収集ミスがあると相続登記が受理されないため、専門家に依頼する方も増えています。
8. アイリス国際司法書士事務所からのご案内(CTA)
被相続人の戸籍を集める作業にお困りではありませんか?
「どの役所に請求すればいいか分からない」「改製原戸籍の読み方が分からない」など、
相続登記の前段階でつまずく方が多いのが現実です。
当事務所では、戸籍の取得から相続人の確定、相続登記まで一貫してお手伝いしています。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

相続登記を進めるうえで、最初にして最重要なのが「相続人の確定」です。
誰が相続人なのかを正確に見極めなければ、遺産分割協議も登記も進められません。特に、不動産の名義変更(相続登記)では、相続人の一人でも漏れていれば、法務局での登記は受け付けられず、やり直しになってしまいます。
この記事では、相続人の範囲について基本から丁寧に解説します。配偶者や子どもだけでなく、親や兄弟姉妹が相続人になる場合もあり、場合によっては"予想外の人物"が相続に関わってくることも。
この記事を読むことで、**「自分が誰と一緒に遺産を分ける立場なのか」**をしっかりと理解できるようになります。
執筆は、相続登記の専門家である司法書士が担当しています。実務経験をもとにしたリアルな視点で解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
■ 目次
1. 相続人の確認はなぜ重要なのか
2. 法定相続人の基本構造を理解する
3. 常に相続人となる「配偶者」
4. 子どもがいないときの相続人は誰?
5. 兄弟姉妹が相続人になるケース
6. 実は相続人になる?非嫡出子、養子、認知された子
7. まとめ:相続人の確定は戸籍だけでは見えないことも
8. アイリス国際司法書士事務所からのご案内(CTA)
1. 相続人の確認はなぜ重要なのか
相続が発生したとき、「まず誰が相続人なのかを確定すること」が最初のステップです。
相続登記や遺産分割協議は、すべての相続人の合意が前提となっているため、一人でも漏れていると無効になってしまう可能性があります。
たとえば、亡くなった方に子どもが3人いたのに、2人だけで遺産分割をしてしまった場合。後から発覚した1人が協議をやり直すよう求めたら、それまでの手続きは無効となるのです。
2. 法定相続人の基本構造を理解する
民法では、誰が相続人になるかを「法定相続人」として明確に定めています。
ポイントは次の2点です:
配偶者は常に相続人になる
配偶者以外の相続人には優先順位がある
この順位関係を整理すると、以下のとおりです:
優先順位
法定相続人
第1順位
子(または代襲相続人)
第2順位
父母などの直系尊属
第3順位
兄弟姉妹(代襲相続あり)
3. 常に相続人となる「配偶者」
配偶者は、常に法定相続人です。
これは「婚姻していた配偶者」に限られ、内縁の妻や夫は含まれません。
たとえば、子どもがいる場合の法定相続分は以下の通り:
配偶者:1/2
子ども:1/2(人数で等分)
子どもがいなければ、直系尊属(親)が代わりに相続人になります。
4. 子どもがいないときの相続人は誰?
子がいない場合、次に相続権があるのは**直系尊属(父母や祖父母)**です。
この場合の相続分は:
配偶者:2/3
直系尊属:1/3
さらに、親もいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。
5. 兄弟姉妹が相続人になるケース
子も直系尊属もいない場合に限って、兄弟姉妹が相続人となります。
相続分は:
配偶者:3/4
兄弟姉妹:1/4
なお、兄弟姉妹がすでに亡くなっていた場合、その子(甥や姪)が代襲相続することもあります。
6. 実は相続人になる?非嫡出子、養子、認知された子
相続人の中には、戸籍の記載をしっかり確認しなければ見落とす可能性がある人もいます。
非嫡出子(婚外子)も、現在では嫡出子と同じ相続権があります。
養子も実子と同様に相続人となります(ただし、実親の相続人にもなるケースあり)。
認知された子も相続人です。認知が戸籍に記載されているかどうかが重要です。
こうした相続人の存在は、戸籍を漏れなく取得して初めて確認できることもあります。
7. まとめ:相続人の確定は戸籍だけでは見えないことも
戸籍の取得と読み解きが正確でなければ、相続人の確定を誤るおそれがあります。
特に「認知」「養子縁組」「再婚と前婚の子」などが関わるケースでは、戸籍の記載を読み違えると大きなトラブルにつながります。
また、戸籍の記録が戦前にまでさかのぼる場合や、転籍が多い人のケースでは、何通もの戸籍を取り寄せて確認する必要があるため、専門家のサポートが有効です。
8. アイリス国際司法書士事務所からのご案内(CTA)
相続人の調査は、相続登記の第一歩であり、最も重要な部分です。
「どこまで戸籍を集めればいいのか分からない」「戸籍を見ても相続人が分からない」など、お困りの方は、ぜひご相談ください。
司法書士 橋本大輔が運営する
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、
相続登記のご依頼をいただけた方については、戸籍の取得から相続人の調査、登記手続きまでをワンストップでサポートしております。
※戸籍のみの取得の依頼は、受け付けておりません。
無断で他人の戸籍などを取得した場合、戸籍法により厳しく罰せられます。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

増加する空き家や所有者不明土地の問題に対し、日本政府は様々な制度整備を進めています。戦後の財産分散から始まった資産の細分化と価値の低下は、現代において大きな社会課題へと発展しています。本記事では、「空き家対策特別措置法」や「所有者不明土地法」などの制度を通して、次世代への円滑な資産承継のあり方を探ります。
■目次
1.所有者不明土地問題の深刻化
2.空き家対策特別措置法の施行とその効果
3.所有者不明土地法の概要と課題
4.相続登記義務化による改善の期待
5.資産承継を見据えた生前対策の重要性
1.所有者不明土地問題の深刻化
全国の土地面積のうち、約20%が「所有者不明土地」とされています。これは、相続登記が行われず、登記簿上の名義人が亡くなったまま放置されている土地が主な原因です。とくに山林や農地では、「利用価値がない」「売れない」といった理由で登記や管理が後回しになりがちで、結果として地域の活性化や防災、インフラ整備を妨げる大きな要因となっています。
2.空き家対策特別措置法の施行とその効果
2015年に施行された「空き家対策特別措置法」は、管理されていない危険な空き家を「特定空き家」として指定し、市町村が所有者に対し指導・勧告・命令を行える制度です。命令に従わない場合は行政代執行により解体されることもあります。法施行後、空き家の調査が進んだことで、地域の景観改善や防犯効果が見られる一方で、所有者不明の場合の対応には限界があります。
3.所有者不明土地法の概要と課題
2019年施行の「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(通称:所有者不明土地法)」では、一定の手続きを経れば、所有者が不明な土地を民間や行政が暫定的に利用できる制度が設けられました。しかし、土地の正確な権利関係の調査には時間と費用がかかり、また所有者が判明した際の対応も複雑です。制度の利用促進には、専門家の支援や行政のノウハウ蓄積が不可欠です。
4.相続登記義務化による改善の期待
2021年の民法・不動産登記法改正により、2024年4月からは「相続登記の義務化」が始まりました。これにより、相続により不動産を取得した相続人は、3年以内に登記申請をしなければならず、怠ると過料(罰金)の対象となります。この制度により、所有者不明土地の増加に歯止めがかかることが期待されていますが、相続人が複数いる場合の調整や、放棄された財産の扱いなど、実務上の課題も残っています。
5.資産承継を見据えた生前対策の重要性
制度による対応が進む一方で、根本的な解決には、生前の段階で「誰に」「何を」「どう渡すか」を明確にしておくことが重要です。遺言書の作成や家族信託の活用により、将来の相続争いや放棄のリスクを減らすことができます。また、使われなくなった不動産を早期に売却・寄附・活用することも、資産の流動性を高め、社会全体にとっても有益な選択肢となります。
■まとめ
所有者不明土地や空き家の増加という課題に対し、制度的な対応が進みつつありますが、それだけでは十分とは言えません。財産の承継は制度と個人の意識の双方がかみ合って初めてスムーズに行われます。そうした制度的背景と今後の方向性を見てきました。

バブル期の「持ち家信仰」により、多くの人が住宅を所有するようになりました。しかし、その多くは時代とともに資産価値が下落し、建物の老朽化や地域の過疎化、高齢化によって、子世代にとっては「相続しても使えない不動産」となるケースが急増しています。本記事では、戦後からの住宅政策の延長線上にある「相続放棄の増加」について、社会的背景と実態を整理します。
■目次
1.老朽化する住宅と資産価値の下落
2.高齢者単身世帯の増加と孤独死の問題
3.相続されない不動産と空き家の拡大
4.相続放棄という選択の増加
5.社会に広がる「負動産」の課題
1.老朽化する住宅と資産価値の下落
バブル期に購入された住宅は、築30年〜40年を超えるものが多く、建物としての価値はゼロに近づいています。さらに地方や郊外の住宅では、地価そのものが下がり続けており、「売れない」「貸せない」「壊すにも費用がかかる」といった状況が現実となっています。これらの住宅は、もはや資産ではなく、維持管理にコストがかかる「負債」としての性質を帯びてきています。
2.高齢者単身世帯の増加と孤独死の問題
総務省の統計によれば、65歳以上の単身世帯は年々増加しており、高齢者の4人に1人が一人暮らしという現状があります。身寄りがない、あるいは家族との関係が希薄な高齢者が住む家は、本人が亡くなると管理が途絶え、無人化します。孤独死による「事故物件」化や、死後に発見されずに遺体が放置されるといった深刻なケースもあります。
3.相続されない不動産と空き家の拡大
親が住んでいた家を、子どもが必ずしも相続したいとは限りません。都市部に住む子世代にとって、遠方の実家は通うのも管理するのも手間と費用がかかり、相続後の用途も見いだせないのが実情です。結果として、「相続放棄」が選択され、登記簿上は所有者不明、実態としては管理放棄された空き家が各地に点在することになります。これが社会問題として顕在化しているのが現在の状況です。
4.相続放棄という選択の増加
家庭裁判所における相続放棄の申述件数は、この10年で明らかに増加傾向にあります。借金の相続回避だけでなく、「維持費のかかる空き家を相続したくない」「売れない山林や農地は不要」といった消極的理由による放棄が増えています。とくに地方では、兄弟姉妹で話し合ったうえで全員が放棄する事例もあり、不動産が文字通り「誰のものでもない」状態になることも珍しくありません。
5.社会に広がる「負動産」の課題
こうした背景により、「資産=価値があるもの」という前提が崩れつつあります。売れない・使えない・処分できない不動産は「負動産」とも呼ばれ、個人だけでなく社会全体に課題をもたらしています。行政による空き家調査や解体助成制度が進められていますが、登記情報の不備や所有者不明土地問題も絡み、対応は遅れがちです。相続制度そのものの見直しも、今後避けて通れないテーマとなるでしょう。
■まとめ
高齢化と住宅の老朽化は、資産の価値を大きく損ね、結果として「相続されない不動産」が社会に増加しています。バブル期に憧れとともに取得されたマイホームも、次世代にとっては「厄介な遺産」となるケースが少なくありません。第4回では、そうした相続放棄の背景にある構造的問題を見てきましたが、次回はこれらの問題に対応すべく動き始めた新しい制度や、相続対策の実例について取り上げます。

相続と贈与、制度の違いや税制面のメリット・デメリットを理解しても、「実際、自分のケースではどちらが良いのか?」という疑問を持たれる方は多いでしょう。
相続税の節税や、家族間のトラブル防止、事業承継、孫への資産移転など、目的によって最適な方法は異なります。
この記事では、代表的な5つのケースを取り上げ、それぞれ相続・贈与のどちらが適しているかを解説。
ご自身の状況に当てはめながら、どのように活用していくべきかのヒントをお届けします。
【目次】
1.子に自宅を残したいケース
2.孫の教育資金を援助したいケース
3.将来の争族を防ぎたいケース
4.非上場会社の株式を後継者に引き継ぐケース
5.一人暮らしの高齢者が信頼できる人に財産を移したいケース
6.ケース別に見る「相続」と「贈与」の使い分けまとめ
7.【お気軽にご相談ください】あなたのケースに合わせた生前対策をご提案します
1. 子に自宅を残したいケース
自宅は相続財産の中でも大きな比重を占め、現金のように分けにくいのが特徴です。
この場合、相続で渡す方が有利なことが多いです。
相続では小規模宅地等の特例により、土地の評価額を80%減額できる場合があります。
被相続人と同居していた子であれば、この特例の適用が受けられ、相続税の大幅な軽減が可能です。
一方、贈与で自宅を渡すと、不動産取得税や登録免許税、固定資産税などの負担がかかり、コストが大きくなる傾向があります。
2. 孫の教育資金を援助したいケース
このケースでは贈与の方が適しています。
「教育資金の一括贈与非課税制度」を活用すれば、1,500万円まで贈与税がかからずに移転可能です(一定の条件あり)。
孫が受験や進学を控えている場合など、時期に合わせて計画的に贈与できるのが強みです。
また、孫への贈与は、将来の相続税の対象から除外できるため、財産の圧縮にもつながります。
3. 将来の争族を防ぎたいケース
家族間のトラブルを避けたい場合は、生前贈与を上手に組み合わせるのが有効です。
例えば、「遺言だけでは心配」という場合、一部を贈与し、残りは遺言書で明確に指定する方法があります。
毎年110万円以内の贈与を活用して、特定の子に資産を移しつつ、他の子には他の財産を相続させるといった分配の工夫が可能です。
さらに、**民事信託(家族信託)**を併用することで、「誰に・いつ・どのように」財産を渡すかのコントロールも可能です。
4. 非上場会社の株式を後継者に引き継ぐケース
事業承継を検討している中小企業経営者にとって、株式の移転は重要課題です。
早めの贈与により、株式の評価額が低いうちに移しておくことで相続税の圧縮が期待できます。
「事業承継税制」を活用すれば、一定の要件下で贈与税・相続税の納税が猶予される制度も存在します。
ただし、制度は複雑で、適用要件を満たさないと逆にリスクが生じることもあるため、専門家の関与が不可欠です。
5. 一人暮らしの高齢者が信頼できる人に財産を移したいケース
このケースでは、相続ではなく贈与+契約による明確な意思表示が重要になります。
身寄りがない、または相続人と疎遠な場合、信頼できる第三者に生前に財産を移しておきたいというニーズがあります。
この場合、贈与契約書をきちんと作成し、身元保証や介護支援などの契約とセットにすることがポイントです。
また、遺言や任意後見制度との併用も検討することで、財産の行方と生活の安心を両立できます。
6. ケース別に見る「相続」と「贈与」の使い分けまとめ

7. 【お気軽にご相談ください】あなたのケースに合わせた生前対策をご提案します
相続と贈与、どちらが正解かは、ご本人の目的や財産の性質によって異なります。
「我が家のケースではどのように考えたらよいか…」とお悩みの方は、ぜひ当事務所の無料相談をご活用ください。
司法書士、税理士、弁護士と連携し、制度を"戦略的に"活用するご提案をいたします。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「相続と贈与、どちらで財産を引き継ぐべきか?」
生前対策を考えるうえで、多くの方が直面するこの問い。税制や手続きの違いに加え、それぞれにメリット・デメリットがあるため、判断を迷うのも当然です。
相続にはまとまった基礎控除があり、贈与には時間をかけて税負担を軽減する方法がありますが、どちらにも"落とし穴"が潜んでいることをご存じでしょうか?
この記事では、相続と贈与の「利点」と「注意点」を整理し、目的別の使い分け方について解説します。
大切な資産を、よりスムーズかつ有利に次世代へつなぐためのヒントを、ぜひ手に入れてください。
【目次】
1.相続のメリットとは?大きな控除と配偶者の優遇
2.相続のデメリット:手続きの煩雑さと予期せぬトラブル
3.贈与のメリットとは?分散できる柔軟性と将来設計のしやすさ
4.贈与のデメリット:税率の高さと制度の複雑さ
5.相続と贈与の判断基準は?目的別の選び方
6.まとめ:制度の「合わせ技」が一番有効な場合も
7.【お気軽にご相談ください】あなたのケースに最適な選択肢をご提案します
1. 相続のメリットとは?大きな控除と配偶者の優遇
相続には以下のような強力なメリットがあります:
基礎控除が大きい
→ 3,000万円+600万円×法定相続人の数。一定額以下であれば、相続税が課されません。
配偶者の税額軽減
→ 配偶者が相続する分については、1億6,000万円または法定相続分のいずれか大きい金額までは相続税がかかりません。
一括で財産を移転できる
→ 登記、口座、保険金などの整理が一度に行われ、時間や労力の効率化につながります。
評価額の調整効果
→ 不動産や非上場株式は、一定のルールに基づき時価より低い評価額で課税されることがあり、相続のほうが有利な場合もあります。
2. 相続のデメリット:手続きの煩雑さと予期せぬトラブル
一方で、相続には見落とされがちなデメリットもあります。
手続きが煩雑
→ 戸籍収集、遺産分割協議、相続登記、税務申告など多岐にわたり、時間と専門知識が必要です。
争続(そうぞく)のリスク
→ 遺言がない場合、誰が何をもらうかをめぐって、相続人同士の対立に発展するケースも少なくありません。
相続税が高額になることも
→ 控除を超えた財産については、最大55%の税率が課せられる可能性があります。
突然の発生
→ 被相続人が亡くなるタイミングは予測できず、事前準備がなければ対応が後手に回ります。
3. 贈与のメリットとは?分散できる柔軟性と将来設計のしやすさ
贈与の大きな魅力は、「自分の意思」で「生前に」財産を移転できる点にあります。
年間110万円まで非課税(暦年贈与)
→ 数年にわたって計画的に贈与を行えば、税負担を最小限に抑えることが可能です。
相続人以外にも渡せる
→ 子や孫はもちろん、内縁の配偶者や法人にも贈与が可能です。
生前に確認できる
→ 財産を譲る相手がどのように活用するか、状況を見ながら調整することができます。
特例制度の活用
→ 住宅取得資金の贈与や、教育資金の一括贈与など、一定条件下で大きな非課税枠が使えるケースもあります。
4. 贈与のデメリット:税率の高さと制度の複雑さ
一見、贈与はコツコツ続ければ有利なように思えますが、注意点も多く存在します。
税率が高め
→ 110万円を超える部分に対して、10%〜55%の累進課税。相続と比較して割高になることも。
制度の選択ミスに注意
→ 相続時精算課税制度は非課税枠が大きい一方、一度選ぶと撤回できず、将来的に損をするケースも。
贈与契約の証拠が必要
→ 認識のズレを防ぐため、契約書の作成や贈与の事実を証明する通帳記録などが必要です。
税務署からの調査対象になりやすい
→ 暦年贈与を毎年同額で繰り返すと、「名ばかり贈与」と見なされる可能性があります。
5. 相続と贈与の判断基準は?目的別の選び方
目的ごとの選択ポイントは以下の通りです。

6. まとめ:制度の「合わせ技」が一番有効な場合も
相続と贈与、どちらか一方に決めるのではなく、「目的」「財産の種類」「相手との関係性」などを考慮してバランス良く組み合わせることが最も有効です。
例えば、毎年の贈与で財産を少しずつ移しつつ、最終的には相続で残りを渡すという形で、節税と家族の安心を両立させることが可能です。
次回(第3回)は、実際にどう活用するか、ケース別のシミュレーションを交えてご紹介します。
7. 【お気軽にご相談ください】あなたのケースに最適な選択肢をご提案します
「自分の財産をどう分ければよいか迷っている」
「贈与の特例が使えるのか知りたい」
そんな方は、司法書士による初回無料相談をご利用ください。税理士や弁護士とも連携し、あなたの状況に応じた最適な方法をご提案します。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

相続と贈与は、どちらも財産を次世代へ引き継ぐ手段ですが、その仕組みや税金、手続きの違いについて正しく理解していますか?
「相続税と贈与税はどう違うの?」「贈与のほうが得なの?」「相続って何から始めるの?」といった疑問を抱えている方も多いでしょう。
この記事では、相続と贈与の基本的な違いを、制度の概要から税制上のポイントまでわかりやすく解説します。
生前対策を考える上での第一歩として、ぜひ参考にしてください。
【目次】
1.相続と贈与とは?基本的な定義
2.財産の移転時期の違い
3.税金の仕組みと控除の違い
4.手続きと必要書類の違い
5.相続と贈与、それぞれの使いどころ
6.まとめ:目的に応じて制度を賢く使い分けましょう
7.【無料相談受付中】財産の引き継ぎに関するお悩み、解決しませんか?
1. 相続と贈与とは?基本的な定義
相続とは、人が亡くなった際に、その人の財産や権利義務を一定の法的ルールに従って他の人が引き継ぐことをいいます。引き継ぐ人を「相続人」、亡くなった人を「被相続人」と呼びます。
一方、贈与とは、生きている人が自分の意思で他人に無償で財産を譲る契約行為です。たとえば、親が子どもに毎年お金を渡しているケースなどが該当します。
2. 財産の移転時期の違い
相続は「死亡」をきっかけに自動的に発生します。被相続人の財産は、相続開始と同時に法定相続人へと包括的に移転します。
一方、贈与は「生前」に行われ、当事者同士の合意(契約)が必要です。あくまで「贈与したい人の意思」によって成立するため、本人の判断能力が必要になります。
3. 税金の仕組みと控除の違い
税制の面で大きな違いがあるのが、相続税と贈与税です。
▪ 相続税の特徴
相続税には大きな基礎控除があります。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、相続人が配偶者と子2人の場合、基礎控除額は4,800万円になります。
この控除額を超えた部分に対して税率がかかります。税率は10%〜55%と段階的に上昇しますが、配偶者には「配偶者の税額軽減」などの優遇もあります。
▪ 贈与税の特徴
贈与税には、毎年110万円までの暦年贈与の非課税枠があります。
それを超えた贈与には、10〜55%の税率で贈与税が課されます。特例として「相続時精算課税制度」や「住宅取得資金の非課税特例」などもありますが、要件が複雑で注意が必要です。
ポイント:
相続は「まとめて一括」で課税されるが、大きな控除あり
贈与は「一部ずつ分散」できるが、控除が小さく税率も高め
4. 手続きと必要書類の違い
相続の手続きは、主に以下のような流れになります:
戸籍の収集と相続人の確定
遺産分割協議書の作成
相続登記や預金解約などの名義変更手続き
相続税申告(原則として10ヶ月以内)
贈与の場合は比較的シンプルで、贈与契約書の作成や名義変更を行い、贈与税が発生する場合は翌年3月15日までに申告・納付します。
5. 相続と贈与、それぞれの使いどころ
それぞれの制度には向いている場面があります。
相続が向いているケース:
財産がまとまっていて相続人も明確な場合
不動産や株式など評価額が低めに計算される財産が中心
一括で名義変更や整理をしたいとき
贈与が向いているケース:
少しずつ財産を移転して税負担を分散したい場合
相続人以外に財産を渡したい(例:孫、内縁関係者など)
生前に意思を反映させたい場合
6. まとめ:目的に応じて制度を賢く使い分けましょう
相続と贈与はどちらが得かという単純な話ではなく、「どう使い分けるか」がポイントです。
それぞれにルールと特性があり、状況に応じて有効な組み合わせを考えることで、税負担を減らし、家族間のトラブルも防ぐことができます。
本シリーズの第2回では、それぞれの「メリット・デメリット」について、もう一歩踏み込んだ解説をしていきます。
7. 【無料相談受付中】財産の引き継ぎに関するお悩み、解決しませんか?
「自分の家庭の場合はどちらが適しているのか知りたい」
「相続税や贈与税の申告が不安」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。
司法書士として、相続登記や贈与契約書の作成を含め、最適な財産移転の方法を一緒に考えさせていただきます。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「遺言書を作りたいけれど、公正証書と自筆証書のどちらがいいのか分からない」
そんなお悩みを持つ方は少なくありません。
遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があり、それぞれにメリットと注意点があります。選び方を間違えると、せっかく書いた遺言が無効になったり、相続人に迷惑をかけたりする可能性も。
本記事では、2つの遺言の特徴・手続き・費用・安全性・おすすめのケースなどを司法書士の視点から詳しく解説します。ご自身やご家族の状況に合わせて、最適な方法を選ぶ参考にしてください。
◆目次
1.自筆証書遺言とは?特徴と注意点
2.公正証書遺言とは?特徴とメリット
3.自筆証書と公正証書の違いを比較表でチェック
4.どちらがおすすめ?それぞれのケース別適性
5.作成後の保管とサポート体制の違い
6.まとめ:自分に合った遺言のかたちとは
7.ご相談は司法書士へ|初回無料で対応します
1. 自筆証書遺言とは?特徴と注意点
自筆証書遺言は、全文を本人が手書きで作成する遺言のことです。費用がかからず、思い立ったときにすぐに作れるという手軽さが魅力です。
ただし、以下のような注意点があります。
法的形式を守らないと無効になる(例:日付が曖昧、押印がない等)
書き間違いや表現の不備があっても本人以外は訂正できない
保管方法によっては紛失や改ざんのリスクがある
死後、家庭裁判所での検認手続きが必要で、時間がかかる
2020年からは「法務局による遺言書保管制度」も利用できるようになり、一定の安全性が確保されるようになりましたが、それでも内容の法的有効性までは保証されません。
2. 公正証書遺言とは?特徴とメリット
公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与して作成する方式です。本人の意思を口頭で伝え、内容を確認の上、公証人が正確に文章化します。
主なメリットは以下の通りです。
法的に確実な形式で作成されるため、無効になるリスクが極めて低い
原本が公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配がない
死後、家庭裁判所の検認手続きが不要
高齢者や体が不自由な方でも、出張での対応や立会人のフォローが可能
デメリットは、費用がかかることと、証人2名が必要なことです(司法書士が証人を務めることも可能)。
3. 自筆証書と公正証書の違いを比較表でチェック

4. どちらがおすすめ?それぞれのケース別適性
以下のような状況の方には、それぞれ次の方法をおすすめします。
✅ 自筆証書がおすすめの方
今すぐ簡単に遺言を残したい
法務局での保管制度を利用し、費用を抑えたい
家族構成がシンプルで、分配方法に争いが起きにくい
✅ 公正証書がおすすめの方
遺産が多額、または不動産や株式など複雑な資産がある
家族関係が複雑(前婚の子がいる、内縁関係、養子縁組等)
確実に遺言を実現させたい
遺言内容について専門家のサポートを受けたい
5. 作成後の保管とサポート体制の違い
自筆証書遺言の場合、法務局の保管制度を使わない限り、自宅での保管となることが多く、紛失や発見されないリスクがあります。
また、内容に問題があっても、誰かが指摘するまでは気づかないことも。
公正証書遺言は、公証役場が原本を保管し、全国の公証役場で検索が可能。死亡後も迅速に遺言が確認され、実行される体制が整っています。
さらに、作成時には司法書士や弁護士が立ち会うことが多いため、内容面でも万全です。
6. まとめ:自分に合った遺言のかたちとは
どちらの遺言書にも長所と短所がありますが、「遺言書を確実に残したい」という方には公正証書遺言がおすすめです。
もちろん、まずは気軽に自筆証書から始め、状況に応じて後に公正証書に切り替えるという方法もあります。
大切なのは、「まだ元気なうちに」「今できる範囲で」行動を起こすことです。
ご相談のご案内(CTA)
「自分にはどちらが向いているのか分からない」
「専門家と一緒に内容を整理して作りたい」
そんな方は、ぜひ私たちにご相談ください。
📞 アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、
✅ 自筆証書と公正証書の選び方のご相談
✅ 遺言書の作成サポート(証人引受も可)
✅ 相続トラブルを未然に防ぐ文案づくり
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「遺言書は高齢になってから書くもの」――
そう考えていませんか?
実は、遺言書の作成には"早すぎる"ということはありません。むしろ、遺言書は元気で判断能力があるうちにこそ作っておくべきものです。また、一度書いたら終わりではなく、状況に応じて見直すことも大切です。
本記事では、遺言書を「いつ」書けばよいのかという疑問に対して、司法書士の視点から最適な作成時期と見直しのポイントをご紹介します。ライフステージや家族構成の変化に応じた判断材料として、ぜひ参考になさってください。
◆目次
1.遺言書の作成に「早すぎる」はない
2.遺言書を作るべき典型的なタイミング5選
3.見直しが必要となる主なケース
4.「まだ元気だから」は危険な思い込み
5.遺言書をタイムリーに見直すための工夫
6.次回予告:公正証書遺言と自筆証書遺言、結局どちらがいいの?
1. 遺言書の作成に「早すぎる」はない
多くの方が「まだ早い」と考えて遺言作成を後回しにしがちですが、実際には元気なうちにこそ備えるべきです。
なぜなら、認知症などで判断能力が低下した場合、遺言書の作成自体ができなくなるからです。
遺言書は本人の「意思能力」が必要不可欠であり、意思能力が曖昧と判断されると無効になることもあります。
そのため、60歳や70歳という年齢にこだわらず、財産や家族構成が整理できた時点で作成を検討するのがベストです。
2. 遺言書を作るべき典型的なタイミング5選
以下のようなライフイベントのときは、特に遺言書作成をおすすめします。
① 子どもがいない夫婦
→ 配偶者と兄弟姉妹が相続人になるため、配偶者にすべてを相続させたい場合は明確な遺言が必要です。
② 再婚・前妻(夫)との子がいる場合
→ 相続人間の関係性が複雑になるため、意図を明確に示す遺言が重要です。
③ 内縁の配偶者やお世話になった人に財産を残したいとき
→ 相続権がない人への配慮は遺贈として遺言書で行います。
④ 不動産が主な財産で分けにくいとき
→ 誰に不動産を渡すかを明確にしておかないと、共有相続になりトラブルの原因になります。
⑤ 家業や自社株を誰かに承継させたい場合
→ 事業承継にも遺言書は有効です。中小企業の経営者には特におすすめです。
3. 見直しが必要となる主なケース
一度遺言書を作った後も、次のような場合には内容の見直しが必要です。
結婚・離婚・子どもの誕生など、家族構成の変化
相続人の死亡
重大な財産変動(不動産の売却や購入、大きな贈与など)
相続税対策や事業承継の方向性の変更
心境の変化(特定の人に感謝を伝えたくなった 等)
状況が変わったまま放置すると、実態にそぐわない遺言内容になってしまうことも。
定期的な点検が重要です。
4. 「まだ元気だから」は危険な思い込み
遺言書は「まだ大丈夫」と思っているうちに書いておくべきです。
突然の病気や事故により意思表示ができなくなった後では、もはや遺言書を作ることはできません。
また、遺言がなければ、遺産分割協議が必要となり、家族に大きな負担やトラブルの種を残すことにもなりかねません。
5. 遺言書をタイムリーに見直すための工夫
◎ 定期的な点検のスケジュールを決める
→ 3年に一度や、年末の棚卸しのタイミングなどで見直す習慣をつけるとよいでしょう。
◎ 遺言書の控えを信頼できる専門家に預ける
→ 自分で保管していると存在自体を忘れてしまうこともあります。司法書士や弁護士、公証役場での保管も検討しましょう。
◎ 「もしもノート」「エンディングノート」と連動させる
→ 財産の状況や人間関係の変化を可視化しておくことで、遺言の修正時期を判断しやすくなります。
◆次回予告
第5回(最終回)は、「公正証書遺言と自筆証書遺言、結局どちらがいいの?」というテーマでお届けします。
それぞれのメリット・デメリットを司法書士が徹底比較。自分に合った遺言の形を一緒に考えましょう。
ご相談のご案内(CTA)
「今のままで大丈夫かな…?」
「何を書けばよいのか分からない」
そんなときは、おひとりで悩まず、専門家の力を借りてみませんか?
📞 アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、
✅ 遺言書作成のタイミングのご相談
✅ 見直しの要否チェック
✅ 最新の法改正に基づくアドバイス など
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「遺言書にどこまでのことを書けるのか?」
これは、実際に遺言書を作ろうとした方が直面する、意外に重要な問題です。
遺言書は「自分の最期の意思を残す手段」であり、法的に効力のあることを記載すれば、相続手続きに大きな影響を与えます。しかし、すべての思いや希望が法的に有効とは限りません。「書いても意味がないこと」や、場合によっては「トラブルの火種になる記載」も存在します。
この記事では、遺言書に**書けること(法的効力がある記載)**と、書かない方がよいこと・無効となる記載について、実例を交えてわかりやすくご説明します。
◆目次
1.遺言書に書ける「法的に有効な内容」とは?
2.意外と知られていない、書けないこと・意味のない記載例
3.書かない方がよいケースとは?
4.感謝や願いなどの「想い」を伝えるには
5.トラブルを避けるための注意点
6.次回予告:遺言書はいつ書くべきか?最適なタイミングと見直しのポイント
1. 遺言書に書ける「法的に有効な内容」とは?
遺言書で法的効力をもつ記載内容には、次のようなものがあります。
相続分の指定
→ 長男に全財産を相続させる/妻に1/2を相続させる 等
遺贈(相続人以外への財産の譲渡)
→ 内縁の妻にマンションを遺贈する/介護してくれた娘婿に100万円を遺贈する
遺言執行者の指定
→ 相続手続きを行う「遺言執行者」をあらかじめ指名しておく
認知(婚外子など)
→ 遺言によって非嫡出子の認知が可能
相続人の廃除・廃除の取消し
→ 著しい非行を理由に相続人の資格を奪うこともできる
子の後見人指定
→ 未成年の子がいる場合、後見人を指定しておくことができる
このように、「財産の行き先」「相続人の範囲」など、相続手続きに直接影響を与えることが書けます。
2. 意外と知られていない、書けないこと・意味のない記載例
一方で、法的には意味を持たない記載や、そもそも遺言書に書いても効力のないこともあります。
【例1】「次男には何も残さない」「一切の財産を渡さない」
→ 相続人には遺留分という最低限の権利があります。相続人の廃除をしない限り、一方的に排除することはできません。
【例2】「お墓は必ず長女が守ること」
→ 墓守の義務は法的拘束力を持たせにくく、遺言書で指定しても強制できません。
【例3】「家を売らないこと」「借金をしてはいけない」
→ 財産の使い方を縛る内容は、基本的に無効です。相続人の自由を侵害する内容は避けるべきです。
3. 書かない方がよいケースとは?
書くことができても、「書かない方がよい」内容も存在します。たとえば、
特定の相続人を批判するような記述
→ 感情的な内容はかえってトラブルの原因になります。
家庭内の秘密や過去の出来事の暴露
→ 家族間のしこりを残し、感情の対立を引き起こします。
曖昧な表現(例:「仲の良い人にあげる」「必要な人に渡す」)
→ 具体的でない内容は、無効になったり、相続人間の争いの原因になります。
4. 感謝や願いなどの「想い」を伝えるには
遺言書は法的な文書であると同時に、人生のメッセージでもあります。
法的効力のある部分とは別に、「付言事項」として、自由な言葉で想いや感謝を綴ることができます。
付言事項の例:
「これまで育ててくれてありがとう」
「長男には多くを任せるが、他の兄弟との関係も大切にしてほしい」
「家族皆が仲良く過ごしてくれることを願っています」
付言事項には法的効力はありませんが、相続人の心情に訴えるものとして、トラブル回避にもつながる重要な役割を果たします。
5. トラブルを避けるための注意点
遺言書の内容でトラブルが起こるのは、次のような場合が多く見られます。
財産の分け方が不公平である
説明不足のまま財産配分がなされている
感情的・恣意的な内容で家族関係にヒビが入る
対策としては、以下のような工夫が有効です。
専門家のチェックを受ける(公正証書遺言の活用も含め)
付言事項で思いを丁寧に伝える
可能であれば生前に家族と意思共有を図る
◆次回予告
次回第4回では、「遺言書はいつ書くべき?作成のタイミングと見直しのタイミング」をテーマに、若いうちに書いてもよいのか、何歳くらいから準備すべきなのか、またどんなときに内容を見直すべきなのかを解説します。
ご相談のご案内(CTA)
✅ 「この内容を書いて大丈夫?」
✅ 「遺言の文言に不安がある…」
そんなときは、プロにご相談ください。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、遺言書の文案チェックや添削、法的効力の確認も承っております。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「遺言書を作っておきたいけれど、どんな種類があるのかわからない」
これは多くの方が抱える疑問です。遺言書と一口に言っても、その形式によって効力や手続き、作成にかかる費用や手間が大きく異なります。
この記事では、遺言書の代表的な3つの種類、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言について、それぞれの特徴やメリット・デメリット、どのような方に適しているかをわかりやすく解説します。
「どの遺言書を選ぶべきか?」を考える第一歩として、ぜひ参考にしてください。
◆目次
1.自筆証書遺言 ― 手軽だがリスクもある
2.公正証書遺言 ― 費用はかかるが安心感あり
3.秘密証書遺言 ― 実は使われることの少ない形式
4.比較表で見る、3種類の違い
5.遺言書の選び方のポイント
6.次回予告:遺言書に書けること、書いてはいけないこと
1. 自筆証書遺言 ― 手軽だがリスクもある
自筆証書遺言とは、全文を自分で手書きし、日付・氏名を書き、押印することで作成できる最も簡便な遺言形式です。
法改正により、一部財産目録についてはパソコン作成や通帳のコピー添付も認められるようになりました。
メリット:
費用がかからず、自宅でも作成可能
誰にも知られずに作れる
デメリット:
方式不備で無効となるリスクが高い
死後に発見されないことがある
家庭裁判所での検認手続きが必要
また、近年「法務局での自筆証書遺言保管制度」が開始され、保管された遺言については検認が不要となるなど、自筆証書遺言を巡る制度も進化しています。
2. 公正証書遺言 ― 費用はかかるが安心感あり
公正証書遺言は、公証人が作成する公式な遺言書で、本人が口頭で内容を伝え、公証人が文章化します。証人2名の立会いが必要です。
メリット:
法的に無効となるリスクが極めて低い
家庭裁判所の検認が不要
公証役場に保管されるため紛失の心配がない
デメリット:
作成費用が発生する(相続財産額によって異なる)
証人2名の準備が必要(専門家に依頼可能)
財産が多い、相続人間の関係が複雑、遺言の効力を確実にしたいという方には、公正証書遺言がもっとも推奨されます。
3. 秘密証書遺言 ― 実は使われることの少ない形式
秘密証書遺言は、自分で遺言書を作成し封をした状態で公証人に提出し、作成日と存在の事実を証明してもらう方式です。内容の秘密は守られますが、形式不備で無効になるリスクがあります。
メリット:
内容を誰にも知られずに済む
公証役場で遺言の存在を証明できる
デメリット:
検認が必要
遺言内容の有効性は保証されない
実務ではほとんど使われていない
内容を秘密にしたいという強い理由がある場合を除き、現実的には他の方式の方が適しています。
4. 比較表で見る、3種類の違い

5. 遺言書の選び方のポイント
どの遺言書が最適かは、以下のような条件によって変わります:
費用をかけずにまず始めたい → 自筆証書遺言(+保管制度)
争いを防ぎ、確実に執行したい → 公正証書遺言
内容を完全に秘密にしたい → 秘密証書遺言(ただし実務向きではない)
特に相続人同士のトラブルが予想される場合や、遺言で特定の相続人を外す・財産配分を偏らせるようなケースでは、公正証書遺言による備えが強く推奨されます。
◆次回予告
第3回では「遺言書に書けること・書いてはいけないこと」をテーマに、内容面で注意すべきポイントや、法的に意味を持つ記載・意味を持たない記載の違いについて具体例を交えながらご紹介します。
ご相談のご案内(CTA)
あなたにとって最適な遺言書の形式はどれでしょうか?
一人ひとりの事情に合った選択が、相続を「争族」にしないための第一歩です。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「遺言書は特別な人が書くもの」と思っていませんか?
かつては資産家や高齢者だけの話と思われがちだった遺言書ですが、今では年齢や財産の多寡を問わず、関心を持つ方が急増しています。背景には、超高齢化社会の進展や家族構成の多様化、そして相続トラブルの増加といった社会的な変化があります。
本シリーズでは、「遺言書で未来を守る ― はじめての相続対策講座」と題し、5回にわたって遺言書の基本から実践的な活用方法までをわかりやすく解説してまいります。
第1回となる今回は、なぜ今、遺言書の重要性が増しているのか? その理由と役割について見ていきましょう。
◆目次
1.超高齢社会がもたらす「判断能力リスク」
2.増え続ける相続トラブルの現実
3.家族の形が変わった現代
4.遺言書が果たす三つの大きな役割
5.「作っておけばよかった」と後悔する前に
6.次回予告:遺言書の種類と特徴
1. 超高齢社会がもたらす「判断能力リスク」
日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進行しています。
平均寿命が延びる一方で、「元気な高齢者」がずっと元気とは限りません。厚生労働省の統計によれば、85歳以上の約半数が認知症を含む何らかの判断能力の低下を経験するとされています。
判断能力が失われてしまった後では、遺言書を作成することはできません。その時点でいくら意思があったとしても、法的に有効な遺言とは認められない可能性が高くなるのです。
だからこそ、「元気なうちに」備えておくことが肝要です。
2. 増え続ける相続トラブルの現実

家庭裁判所の統計によると、遺産分割調停の件数は年々増加傾向にあります。しかも、争いの多くは「遺産総額が5,000万円以下」の家庭で起きています。
つまり、「うちはそんなに財産がないから大丈夫」という考えは、もはや通用しません。
・兄弟間で不公平感が残る
・配偶者と子どもたちの主張が対立する
・再婚で生まれた"知らない相続人"が突然登場する
こうした事態は、誰の身にも起こり得るのです。
3. 家族の形が変わった現代
現代の家族は多様化しています。
・おひとり様
・事実婚や同性パートナー
・子どもがいない夫婦
・前妻との子どもがいる再婚家庭
こうした状況下では、民法に従った「法定相続分」だけでは想いが届かないこともあります。
例えば、事実婚のパートナーには法定相続権がありません。遺言書がなければ、どれだけ長く生活を共にしていても「他人」として扱われてしまうのです。
4. 遺言書が果たす三つの大きな役割
遺言書には、次のような役割があります。
① 争いを未然に防ぐ
遺産分割の方向性を明確にすることで、相続人同士の争いを避けやすくなります。
② 希望を形にする
法定相続では難しい「特定の人への配慮」「想いの継承」が可能になります。
③ 手続きの円滑化
遺言執行者を指定しておけば、相続手続きがスムーズに進み、時間と労力の負担を軽減できます。
遺言書は「財産の分け方を決めるための道具」というだけでなく、家族に迷惑をかけず、想いを伝えるためのメッセージでもあるのです。
5. 「作っておけばよかった」と後悔する前に
実際、相続の現場では「もっと早く遺言を作っていれば…」という声が後を絶ちません。
作成しておくことで、家族は迷わずに済み、感情的な対立を避けることができます。
そして何より、ご自身の想いをしっかり伝えることができるのです。
遺言書は、「死後の準備」ではなく「今を生きるあなたのためのツール」として捉えるべき時代に来ています。
◆次回予告
次回は「遺言書の種類と特徴を知ろう」と題し、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違いや、それぞれの活用方法について詳しく解説します。
あなたにとって最適な遺言書のスタイルが見えてくるかもしれません。
ご相談のご案内(CTA)
「うちはまだ早いかも」と思った方こそ、今がチャンスです。
遺言書の作成は、信頼できる専門家と一緒に進めることで、より安心かつ確実なものになります。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「遺産分割協議が無事終わってホッとしたのに、後から他の相続人が異議を唱えてきた……」「協議書に署名したが、実は内容をよく理解していなかった」――このように、遺産分割が終わったと思っても、後からトラブルになるケースは少なくありません。特に、法定相続人全員の合意がなかったり、内容に不公平があったりすると、やり直しや無効の主張が持ち上がることもあります。本記事では、遺産分割後のトラブルとその対処法、そして遺留分の主張や調停・訴訟での対応まで詳しく解説します。
■目次
1.遺産分割協議の成立とは?
2.協議書の無効が主張されるケース
3.遺産分割の「やり直し」は可能か?
4.遺留分侵害額請求とは何か?
5.トラブル回避のためにできること
6.弁護士や司法書士への相談の重要性(CTA)
1. 遺産分割協議の成立とは?
遺産分割協議は、被相続人の財産を誰がどう分けるかを相続人全員で合意する手続きです。そして、その合意内容を文書にしたものが「遺産分割協議書」です。
協議が成立するには以下の要件が必要です:
法定相続人全員が協議に参加している
各相続人の意思表示が自由である(強要や詐欺でない)
内容に重大な瑕疵がない(錯誤・誤解がない)
これらのいずれかが欠けていると、「協議そのものが無効」とされる可能性があります。
2. 協議書の無効が主張されるケース
以下のような事情がある場合、協議書の有効性に疑義が生じることがあります:
一部の相続人が協議に参加していなかった
押印したが内容を理解していなかった(認知症等)
偽造・改ざんされた協議書だった
強圧的な言動で同意を強いられた
無効が認められると、遺産分割はやり直しとなり、登記や口座解約の効力も影響を受ける可能性があります。
3. 遺産分割の「やり直し」は可能か?
協議が一度成立した後に、「やっぱり納得がいかない」と言っても、原則としては簡単にやり直しはできません。しかし以下のケースでは再協議が認められることがあります。
全相続人の合意がある場合:再協議書を作成すれば可能
新たな財産が発見された場合:追加の協議が必要
無効や取消の理由がある場合:家庭裁判所での争いになる可能性あり
一度成立した協議の効力は強いため、慎重に合意形成することが重要です。
4. 遺留分侵害額請求とは何か?
たとえば、ある相続人だけが大半の財産を相続するような協議がなされた場合、他の相続人が「自分の取り分が少なすぎる」と感じることがあります。このような場合に主張できるのが遺留分侵害額請求です。
遺留分とは、一定の相続人に保障された最低限の取り分のことです。遺言や協議によってこれが侵害された場合、侵害された人は他の相続人に対して、金銭での支払いを請求することができます。
ポイントは以下のとおり:
請求できるのは、直系卑属(子・孫)や配偶者、父母などの一部相続人のみ
原則として、相続開始と侵害を知ってから1年以内に請求しなければならない
裁判所に申し立てることで法的請求も可能
遺留分の主張は金銭請求に限られるため、不動産そのものの共有を求めることはできません。
5. トラブル回避のためにできること
遺産分割協議後のトラブルは、協議前にリスクを想定して対策を講じることで防ぐことが可能です。
たとえば:
協議書の内容を明確に記載し、専門家にチェックしてもらう
認知症の可能性がある相続人がいる場合は、後見制度を利用する
特別受益(生前贈与など)や寄与分の有無を事前に整理しておく
相続放棄をした人や連絡の取れない相続人の確認を怠らない
こうした配慮をすることで、協議の無効ややり直しリスクを大きく軽減できます。
6. 弁護士や司法書士への相談の重要性(CTA)
相続人間の協議は、感情的な対立や誤解が生じやすく、後からトラブルに発展することが少なくありません。とくに、**「知らずに協議書にサインしてしまった」「内容が不公平だった」**といったケースは、後で後悔しても取り返しがつかないこともあります。
当事務所(司法書士 橋本大輔|アイリス国際司法書士・行政書士事務所)では、
✅ 相談無料(要予約)
✅ 戸籍取得・調査の代行可能(相続登記のご依頼を受けた場合のみ)
✅ 相続放棄や登記手続きにも対応
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
◼シリーズ完結にあたって
5回にわたってお届けしてきた「遺産分割協議シリーズ」も、今回で完結となります。遺産分割は、法律と感情のバランスが難しいテーマです。だからこそ、早めの対策と専門家の関与が、トラブル回避の鍵になります。
これまでの記事も含めて、必要に応じて読み返していただければ幸いです。
今後も相続に関する情報をわかりやすく発信してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

相続手続きにおいて「遺産分割協議」がスムーズに進まないケースは少なくありません。とくに相続人の中に話し合いに応じない人や、意思疎通が難しい人がいる場合には、協議が成立せず、相続がストップしてしまいます。本記事では、そうしたケースでどのように対応すればよいのか、家庭裁判所を活用した「調停」や「審判」の制度について、実務的な視点から詳しく解説します。
■目次
1.話が通じない相続人とはどのような人か
2.遺産分割協議が成立しないとどうなる?
3.家庭裁判所を活用する2つの方法:調停と審判
4.遺産分割調停の手続きと流れ
5.調停が不成立になった場合はどうなる?
6.意思能力のない相続人がいる場合の対応(成年後見)
7.専門家に相談することのメリット(CTA)
1. 話が通じない相続人とはどのような人か
相続人同士の関係が希薄で連絡が取れないケース、もしくは連絡が取れても協議に非協力的なケースは珍しくありません。たとえば以下のような相続人が該当します:
何年も音信不通だった兄弟
感情的に対立しており、話し合いに応じない親族
そもそも遺産分割に興味がなく、反応が鈍い相続人
認知症などで意思表示ができない高齢の相続人
このような場合、遺産分割協議書が全員分揃わないため、名義変更などの手続きが一切できなくなります。
2. 遺産分割協議が成立しないとどうなる?
相続手続きにおいては、法定相続人全員の同意が必要です。たとえ一人だけでも署名や押印が欠けていれば、協議書は無効となり、以下のような事態に陥ります:
不動産の登記ができない
預金口座の解約・分配ができない
相続税申告期限に間に合わないリスク
他の相続人との間で争いが激化
こうした状況を避けるために有効なのが、家庭裁判所の調停・審判制度の活用です。
3. 家庭裁判所を活用する2つの方法:調停と審判
協議が成立しない場合、相続人の一人が**家庭裁判所に「遺産分割調停」**を申し立てることができます。これは、裁判官と調停委員が間に入り、相続人同士の合意形成をサポートする制度です。
仮に調停がまとまらなくても、最終的には遺産分割審判に移行し、裁判所が法的判断により分割方法を決定してくれます。
4. 遺産分割調停の手続きと流れ
調停の主な流れは次のとおりです:
管轄の家庭裁判所に申立書を提出(主に被相続人の最後の住所地)
相続人全員に呼出状が送付される
初回調停期日で、各自の主張を確認
必要に応じて不動産評価や資料収集が行われる
合意に達すれば「調停調書」が作成され、これは判決と同じ効力を持つ
調停には通常2~6回程度の期日がかかるため、数か月~1年ほどの期間を見込んでおくことが重要です。
5. 調停が不成立になった場合はどうなる?
調停でも合意が得られなかった場合、自動的に遺産分割審判へと移行します。審判では、裁判官が当事者の主張や資料を基に、法定相続分や特別受益などを踏まえて具体的な分割方法を決定します。
審判においては、以下のような判断が下されることがあります:
相続分に応じた現物分割
不動産を売却して金銭を分ける換価分割
特定の相続人が取得し、代償金を他の相続人に支払う代償分割
審判結果には不服申し立ても可能ですが、時間的・金銭的コストがかさむことに留意しましょう。
6. 意思能力のない相続人がいる場合の対応(成年後見)
相続人の中に認知症や精神障害などにより意思能力が欠けている人がいる場合、そのままでは遺産分割協議ができません。このようなケースでは、家庭裁判所に後見人や保佐人を選任してもらう必要があります。
後見人が選ばれると、その人が本人の代わりに遺産分割協議に参加できますが、以下のような制限があります:
他の相続人と利害が対立する場合、特別代理人の選任が必要
分割内容が本人にとって不利でないか家庭裁判所の審査対象になる
つまり、意思能力がない人を含む相続では、慎重な対応と手続きが必須です。
7. 専門家に相談することのメリット(CTA)
相続人同士で話し合いが困難な場合、解決までに時間と労力がかかります。「調停や審判ってどうやるの?」「後見人って誰に頼めばいいの?」といった不安がある方は、早い段階で司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
【アイリス国際司法書士・行政書士事務所】(司法書士 橋本大輔)では、
✅ 相談無料(要予約)
✅ 戸籍取得・調査の代行可能(相続登記のご依頼を受けた場合のみ)
✅ 相続放棄や登記手続きにも対応
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
次回は第5回「遺産分割後にトラブルが発生したらどうする?~やり直し・無効・遺留分の主張まで~」をお届け予定です。お楽しみに!

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を明文化する重要な書類です。この協議書がなければ、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しといった相続手続きを完了できません。しかし、ただ合意内容を書けばよいというわけではなく、法的な要件を満たしていなければ無効になることも。この記事では、遺産分割協議書の基本構成から実務上の注意点まで、専門家の視点でわかりやすく解説します。
■目次
1.遺産分割協議書とは何か?
2.遺産分割協議書の基本構成と必要記載事項
3.よくある記載ミスとその影響
4.実務で役立つ「添付書類」と「押印」の注意点
5.書式と文例の紹介
6.遺産分割協議書が不要なケースとは?
7.【無料相談受付中】協議書作成は専門家にお任せください(CTA)
1. 遺産分割協議書とは何か?
遺産分割協議書とは、相続人全員が「誰がどの財産を相続するか」を合意し、その内容を書面で記録したものです。この協議書があることで、不動産の登記変更や金融機関での口座解約、株式の名義変更などの手続きを進めることができます。
単なる話し合いだけでは、後に「そんな約束していない」といったトラブルが発生する可能性があるため、書面化することが極めて重要です。
2. 遺産分割協議書の基本構成と必要記載事項
協議書には、以下の項目をもれなく記載する必要があります:
被相続人の氏名、死亡日、最終住所、本籍地
相続人全員の氏名・住所・生年月日
相続財産の内容(不動産、預貯金、動産など)
財産の分配内容(誰が何を相続するか)
協議が成立した日付
相続人全員の署名と実印の押印
さらに、協議書の内容に従って登記や金融機関への提出を行うためには、**相続人全員分の印鑑証明書(発行後3か月以内)**も必要です。
3. よくある記載ミスとその影響
遺産分割協議書の作成において、以下のようなミスがあると、法務局や金融機関で手続きが進まないことがあります:
不動産の記載が「地番」ではなく「住所」になっている
預金口座の支店名や口座番号の誤記
相続人の名前に誤字がある(例:旧字体や戸籍上の表記ミス)
一部の相続人の署名・押印が欠けている
また、「財産目録」が別紙として添付されている場合には、別紙にも相続人全員の署名押印が必要です。
4. 実務で役立つ「添付書類」と「押印」の注意点
遺産分割協議書と一緒に準備すべき主な添付書類は以下の通りです:
被相続人の出生から死亡までの戸籍
相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の印鑑証明書
不動産の登記事項証明書
固定資産評価証明書(登録免許税の算定に使用)
また、押印には必ず「実印」を使用します。シャチハタなどのゴム印は無効です。印鑑登録されていない印鑑では登記申請が受理されません。
5. 書式と文例の紹介
実際の遺産分割協議書は以下のような形式で作成します(簡略化した文例):
「遺産分割協議書
被相続人 ○○ ○○(昭和○年○月○日生、令和○年○月○日死亡)の遺産について、相続人全員により下記の通り遺産分割協議を行い、合意した。
1.下記不動産は相続人Aが取得する。
(例:所在 ○○市○○町、地番 ○○番○、地目 宅地、面積 ○○㎡)
2.下記預金は相続人Bが取得する。
(例:○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号 ○○○○○)
令和○年○月○日
相続人A 住所・氏名(署名・実印)
相続人B 住所・氏名(署名・実印)
…以下、相続人全員分」
6. 遺産分割協議書が不要なケースとは?
すべての相続で遺産分割協議書が必要になるわけではありません。以下のような場合は、協議書が不要です:
相続人が1人だけの場合:協議が成立する余地がないため、単独で相続登記などが可能
遺言書がある場合:法的に有効な遺言書に基づいて相続を進めることが可能(ただし、全員の同意で協議に切り替えることも可能)
それでも、「後のトラブル防止」や「第三者への証明資料」として協議書を作成するメリットはあります。
7. 【無料相談受付中】協議書作成は専門家にお任せください(CTA)
「書き方がわからない」「間違えて無効にならないか不安」「相続人の一人が高齢で意思確認が難しい」——そんな不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所(司法書士 橋本大輔)では、
遺産分割協議書の作成から登記・名義変更手続きまで一貫してサポートしています。
✅ 相談無料(要予約)
✅ 戸籍取得・調査の代行可能(相続登記のご依頼を受けた場合のみ)
✅ 相続放棄や登記手続きにも対応
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
次回は第4回「相続人の中に話が通じない人がいたら?〜遺産分割協議の進め方と調停・審判の活用法〜」をお届けします。お楽しみに!

遺産分割協議を円滑に行うためには、事前の準備が不可欠です。中でも「相続人の確定」と「相続財産の調査」は、協議の土台となる極めて重要な工程です。これらが不十分だと、遺産分割協議が無効になってしまう恐れもあります。この記事では、司法書士が実務で直面するトラブル例も交えつつ、相続人や相続財産をどのように確定するのか、その手順と注意点を詳しく解説します。
■目次
1.なぜ相続人と財産の確定が必要なのか
2.相続人の確定方法と戸籍の取得
3.よくある相続人調査の落とし穴
4.相続財産の調査方法
5.負債も相続対象?マイナスの財産の扱い
6.遺産分割協議を有効に進めるための実務的なアドバイス
7.【無料相談受付中】相続の調査で不安な方へ
1. なぜ相続人と財産の確定が必要なのか
遺産分割協議は「相続人全員による合意」が原則です。誰か一人でも欠けていたり、逆に本来の相続人でない人が参加していた場合、協議自体が無効になってしまうおそれがあります。
また、相続財産についても、「不動産があるはず」「口座があった気がする」といった曖昧な記憶だけで協議を進めてしまうと、後から新たな財産が見つかり再度協議が必要になることも。これを防ぐためにも、事前に確実な調査を行うことが肝心です。
2. 相続人の確定方法と戸籍の取得
相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて収集する必要があります。
例えば:
本籍地が複数回移動している場合は、それぞれの役所から戸籍を取り寄せなければなりません
昔の戸籍(改製原戸籍)を読解する必要もあり、古い字体や記載形式に苦労することもあります
被相続人に前婚歴がある場合や、認知した子どもがいる場合など、法定相続人に思わぬ人物が含まれるケースも少なくありません。司法書士など専門家のサポートを得ながら慎重に進めましょう。
3. よくある相続人調査の落とし穴
以下のようなケースは特に注意が必要です:
被相続人に認知した子がいた場合
→ 戸籍の記載に「認知」と書かれているだけで、普段の家族関係には出てこない場合もあります。
未成年の相続人がいる場合
→ 法律上は親権者ではなく「特別代理人」を家庭裁判所で選任しなければ協議は無効になります。
疎遠な兄弟姉妹がいる場合
→「連絡がつかないから除外して進める」はNG。手紙や公示送達の手続きが必要になることもあります。
4. 相続財産の調査方法
相続財産には以下のようなものが含まれます:
土地・建物などの不動産
預貯金(銀行・信用金庫など)
株式や投資信託
生命保険金(受取人によっては「相続財産」に含まれない)
自動車、貴金属、骨董品などの動産
借金、連帯保証債務、未払いの医療費などのマイナスの財産
最近では、相続登記のための調査に「所有不動産記録証明制度」を利用するケースも増えています。また、複数の金融機関にまたがる預貯金や証券がある場合には、「相続手続一括サービス」を提供している銀行を活用することも検討できます。
5. 負債も相続対象?マイナスの財産の扱い
相続とはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継ぐ行為です。つまり、借金も相続の対象になります。
そのため、財産調査の際には以下の情報も確認が必要です:
カードローンや消費者金融の借入履歴
不動産に設定されている抵当権(担保)
保証人としての契約履歴(連帯保証人になっていなかったか)
もし負債が多く、相続放棄を検討する場合は、「相続を知った日から3か月以内」に家庭裁判所へ申述しなければなりません。相続放棄にも正確な調査が必要なのです。
6. 遺産分割協議を有効に進めるための実務的なアドバイス
遺産分割協議に入る前に行うべき実務的なステップは以下の通りです:
相続人調査の開始(戸籍の取得・読解)
相続財産の洗い出し(不動産、預貯金、負債の有無)
財産目録の作成
協議に必要な資料を事前に共有し、認識のズレをなくす
相続人の中に話し合いが難しい人がいる場合でも、先に正確な情報をそろえておくことで、後のトラブルを軽減できます。
7. 【無料相談受付中】相続調査で不安な方へ(CTA)
「戸籍ってどうやって取り寄せるの?」「本当にこれで全員なの?」「財産が隠れていたらどうしよう…」
そんな不安を抱えていませんか?
アイリス国際司法書士・行政書士事務所(司法書士 橋本大輔)では、
相続人調査・財産調査・遺産分割協議書の作成まで、すべての手続きを丁寧にサポートいたします。
✅ 相談無料(要予約)
✅ 戸籍取得・調査の代行可能(相続登記のご依頼を受けた場合のみ)
✅ 相続放棄や登記手続きにも対応
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

相続が発生した際、避けて通れないのが「遺産分割協議」です。しかし、「そもそも遺産分割協議って何?」「どんな場合に必要になるの?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事では、司法書士が実務の現場からお届けする視点で、遺産分割協議の基本から丁寧に解説します。相続手続きの第一歩として押さえておきたい知識をまとめましたので、スムーズな相続のためのご参考になれば幸いです。
■目次
1.遺産分割協議とは?
2.協議が必要となるケースと不要なケース
3.協議に参加すべき相続人とは?
4.協議を行うための準備とは
5.遺産分割協議の基本的な流れ
6.まとめ:まずは「全員参加」と「財産確認」から
7.【無料相談受付中】相続でお悩みの方へ
1. 遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、亡くなった方(被相続人)の財産を、法定相続人たちがどのように分けるかを話し合って決める手続きです。遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合に、相続人全員で遺産の分配方法を協議しなければなりません。
この協議によって決まった内容を書面にしたものが「遺産分割協議書」となり、これがあって初めて、不動産の名義変更や預貯金の解約・払い戻しなどの相続手続きを進めることができます。
2. 協議が必要となるケースと不要なケース
遺産分割協議が必要となるのは、以下のような場合です:
遺言書が存在しない場合
遺言書はあるが、すべての財産が網羅されていない場合
遺言の内容を相続人全員で変更したい場合
一方、不要な場合もあります:
相続人が一人だけのケース(単独相続)
遺言書にすべての財産についての明確な分配方法が記載されており、それに従う場合
相続人全員が法定相続分どおりに分けることに合意しており、特に協議書を必要としない手続きだけの場合(例:銀行口座の解約)
とはいえ、実務上は後々のトラブルを防ぐために、法定相続分どおりの分割であっても、簡単な協議書を作成することが推奨されます。
3. 協議に参加すべき相続人とは?
遺産分割協議は、すべての法定相続人が参加しなければ無効になります。誰か一人でも欠けると、その協議は成立しません。
たとえば:
兄弟姉妹の一人が音信不通でも、その人を除いて協議はできません
相続人が未成年者の場合は、特別代理人の選任が必要になります
認知症等で意思能力のない人がいる場合は、成年後見人の関与が必要です
「全員が合意している」という事実が何よりも大切です。
4. 協議を行うための準備とは
遺産分割協議を始めるには、次の2つの準備が必要です。
① 相続人の確定
戸籍を出生から死亡までさかのぼって確認し、法定相続人を確定します。
これはかなり煩雑で、相続人調査に数週間を要することもあります。
② 財産の把握(相続財産の調査)
被相続人名義の不動産や預貯金、株式、生命保険、負債など、すべての財産を洗い出します。
最近では「所有不動産記録証明制度」などの便利な制度も活用できます。
5. 遺産分割協議の基本的な流れ
協議の一般的な流れは以下の通りです:
相続人と財産の確定
相続人全員への情報共有と協議日程の調整
協議の実施(対面・オンライン・文書等)
合意内容の協議書化
署名・押印(原則として実印)+印鑑証明書の添付
この協議書は、その後の不動産登記や金融機関の手続きに使われます。
6. まとめ:まずは「全員参加」と「財産確認」から
遺産分割協議は、相続手続きの中心となる重要なステップです。
トラブルを避け、スムーズに進めるためにも、
相続人を正確に把握すること
財産の全体像を掴むこと
協議に全員が参加して合意を形成すること
この3点が非常に大切です。
7. 【無料相談受付中】相続でお悩みの方へ(CTA)
遺産分割協議に関するご不安や、誰に何を相談すればいいかわからないという方も多いかと思います。
私たち**アイリス国際司法書士・行政書士事務所(司法書士 橋本大輔)**では、
無料相談を実施しております。相続登記・遺産分割協議書作成・相続放棄のご相談も承っております。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
次回は、第2回「相続人の確定と財産の把握 ~協議の前にやるべきこと~」をお届けします!

「生命保険で相続税が節税できるって本当?」
「子どもが揉めないように、現金で遺してあげたい…」
そんなお悩みをお持ちの方へ。
生命保険は"亡くなった後"だけでなく、"亡くなる前"から使える生前対策の強い味方です。
遺言や成年後見、家族信託といった制度と比べて、手軽に始めやすく、また保険金は"受取人固有の財産"となるため、遺産分割協議の対象外で、相続トラブルを回避しやすいという利点があります。
この記事では、生命保険を使った賢い相続・生前対策の方法を、実例とともにわかりやすく解説します。
■目次
1.生命保険が生前対策になる理由とは?
2.保険金の非課税枠を活用しよう
3.相続トラブルを防ぐ仕組みとしての生命保険
4.「納税資金」としての使い方
5.よくある失敗事例と注意点
6.まとめ:生命保険で"争続"を防ぐ
7.ご相談のご案内(CTA)
1. 生命保険が生前対策になる理由とは?
生命保険は「亡くなったときに保険金が支払われる」という仕組みですが、あらかじめ誰にいくら渡すかを設計しておける点が、他の相続対策にはない特徴です。
たとえば…
・配偶者に生活費を確保したい
・同居して親の介護をしてくれている長女に多めに渡したい
・事業を承継する長男に資金を集中させたい
といった意向を反映できるのが、「受取人を指定できる」保険の強みです。
2. 保険金の非課税枠を活用しよう
生命保険には、相続税の非課税枠が認められています。
具体的には、以下のように計算されます。
📌 非課税限度額=「500万円 × 法定相続人の数」
たとえば、配偶者と子2人が相続人の場合、500万円 × 3人=1,500万円までが非課税。
これは、現金や預金では認められない優遇措置であり、生命保険ならではのメリットです。
ただし、以下の点に注意が必要です。
・被相続人の死亡によって支払われる契約であること
・受取人が相続人であること(相続人以外は非課税枠の対象外)
3. 相続トラブルを防ぐ仕組みとしての生命保険
生命保険は「遺産分割協議」の対象にならず、受取人がすぐにお金を受け取れるというスピード性が最大の特徴です。
そのため、以下のようなケースに非常に有効です。
・相続人同士の関係がぎくしゃくしている
・遺言がない、もしくは偏った内容の遺言がある
・預貯金の名義変更に時間がかかりそう
「〇〇に1000万円渡したい」という気持ちを確実に実現しつつ、他の相続人の同意を得る必要がないのが大きな強みです。
4. 「納税資金」としての使い方
相続税は、原則として現金で一括納付が求められます。
しかし、相続財産が不動産ばかりで現金が少ないと、納税に困ってしまうケースも。
そんなとき、あらかじめ生命保険で現金を準備しておくことで、以下の問題を回避できます。
・不動産を「やむなく売却」して納税するリスク
・相続人間で「納税額の負担割合」をめぐる争い
・手元資金が不足している相続人の困窮
また、法人契約の保険を使えば、事業承継と納税資金対策を両立することも可能です(専門家の設計が必要)。
5. よくある失敗事例と注意点
生命保険を使った生前対策にも、注意点があります。以下は代表的な失敗例です。
❌ 保険金の受取人が"相続人以外"になっており、非課税枠が使えなかった
❌ 保険の名義変更で"贈与税"がかかってしまった
❌ 契約内容を家族が知らず、保険金の請求ができなかった
❌ 兄弟間で「不公平だ」と不満が出て、逆に争族に…
生命保険は契約内容の設計が命です。
相続との関係を意識して、「誰が契約者で、誰が被保険者で、誰が受取人か」を明確にし、家族にも伝えておくことが重要です。
6. まとめ:生命保険で"争続"を防ぐ
生命保険は、相続対策の中で唯一、すぐに現金を残せる手段です。
・トラブルの予防
・相続税の節税
・納税資金の準備
・特定の相続人への配慮
これらを一手に解決できるポテンシャルを持っているため、早い段階での検討がおすすめです。
また、信託や遺言など他の制度と組み合わせることで、さらに強固な生前対策が可能になります。
7. ご相談のご案内(CTA)
「うちの家族構成でも、保険を使った対策は有効?」
「保険設計と遺言、どちらを優先すべきか悩んでいる…」
そんなお悩みがありましたら、ぜひアイリス国際司法書士・行政書士事務所にご相談ください。提携の保険会社の方のご紹介等可能です。
保険の仕組みと法律の両面から、オーダーメイドの生前対策をご提案いたします。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/

「親が認知症になったら、銀行口座も不動産も凍結されるって本当?」
「成年後見制度は手続きが大変そう…もっと柔軟な対策はないの?」
そんな不安を持つ方に、"家族信託"という新しい生前対策をご紹介します。
家族信託は、2007年の信託法改正により実用化された仕組みで、本人の判断能力があるうちに、自分の財産の管理や使い道を家族に託す契約です。
特に近年は、認知症対策・相続対策の一環として注目されており、司法書士などの専門職がサポートする事例も増えています。
今回は、成年後見制度との違いや活用例を交えながら、家族信託の仕組みをわかりやすく解説していきます。
■目次
1.家族信託とは何か?~基本のキ~
2.成年後見制度との違いとメリット
3.家族信託でできること・できないこと
4.よくある活用事例(不動産・介護費・障がいのある子への配慮)
5.契約時の注意点と信頼できる受託者の選び方
6.まとめ:家族の「安心」と「自立」を支えるしくみ
7.ご相談のご案内(CTA)
1. 家族信託とは何か?~基本のキ~
家族信託とは、「自分の財産を、自分の信頼する人に託して、管理・運用・処分を任せる」仕組みです。
信託の契約関係は以下の三者で成り立ちます。
●委託者:財産の持ち主(親など)
●受託者:財産を預かり、運用する人(子など)
●受益者:信託財産から利益を受ける人(通常は委託者本人)
たとえば、「自分が認知症になったときのために、長男に自宅の管理や売却を任せておく」など、将来のリスクを見越した対策が可能です。
2. 成年後見制度との違いとメリット
成年後見制度は、本人の判断能力が低下したあとに、家庭裁判所が選任した後見人が財産を管理する制度です。
しかし、
・原則として自由な財産処分が難しい
・家庭裁判所の監督が入り、柔軟性に欠ける
・一度始めると基本的に終身続く
といった制約があります。
一方、家族信託は
・判断能力があるうちに始められる
・本人の希望に基づくオーダーメイド契約ができる
・柔軟に家族内で資産管理を続けられる
という点で、より実践的で現実的な生前対策といえるでしょう。
3. 家族信託でできること・できないこと
✅ できること
・認知症対策としての財産管理
・自宅の維持・売却の権限移譲
・賃貸収入の管理と活用
・介護費用や施設入居費の準備
・2次相続(自分の死後の財産承継)の指定
❌ できないこと
・遺留分(相続人の最低限の取り分)の回避
・遺言の完全な代替(死亡後の全ての財産処分)
・借金の肩代わり(信託でできるのはあくまで"財産"の管理)
信託を検討する際は、「何を目的とするのか」を明確にし、それに合った設計をすることが重要です。
4. よくある活用事例
📌 不動産の管理・売却
→高齢の親が所有する自宅やアパートの管理を子に委任し、必要があれば売却も可能に。
📌 介護費用の支払い
→老後の医療・介護資金を子が管理して、必要時に柔軟に支出できる体制に。
📌 障がいのある子の将来の生活費支援
→信頼できる兄弟姉妹を受託者にして、特定の子の生活支援を長期的に継続する。
これらは、成年後見制度では実現しにくい柔軟性のある設計が可能な点が特徴です。
5. 契約時の注意点と信頼できる受託者の選び方
家族信託は、任意の契約であるため、設計次第で大きな差が出ます。
特に注意すべきは:
〇受託者の責任は非常に重い(法律上の義務あり)
〇受益者の利益を最優先に行動しなければならない
〇トラブル防止のためには専門家の関与(司法書士や弁護士)が有効
また、信託内容を公正証書で残すことや、登記を伴う不動産信託については、専門職の協力が必須となります。
6. まとめ:家族の「安心」と「自立」を支えるしくみ
家族信託は、「親の意思」と「家族の協力」が一体となって成り立つ制度です。
将来を見据えて、家族が安心して暮らせる仕組みを今のうちから作ることが、生前対策の本質と言えるでしょう。
特に認知症リスクが高まる現代において、「本人が元気なうちに、何を、誰に、どのように任せていくか」を明確にしておくことが、将来の家族間トラブルを防ぐ最大の武器になります。
7. ご相談のご案内(CTA)
「家族信託を検討したいけれど、どこから始めていいかわからない」
「成年後見との違いやメリット・デメリットを具体的に聞きたい」
そんな方は、ぜひアイリス国際司法書士・行政書士事務所にご相談ください。
家族信託に詳しい司法書士が、ご家庭の状況に合わせた設計をご提案いたします。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
▶次回の第5回では、「生命保険を使った生前対策」についてご紹介します。
どうぞお楽しみに!

「相続税が高くて困る…」「できるだけ税負担を軽くして財産を次世代に引き継ぎたい」――
こうした声に対し、"養子縁組"という法的手段を活用する方法があります。
実は、相続税の計算においては、「法定相続人の数」によって基礎控除額が変動します。
そして、養子も法定相続人としてカウントできるため、養子縁組によって基礎控除枠を拡大することが可能なのです。
ただし、養子縁組には厳密なルールや税務上の制限があり、誤った運用をすると否認されるリスクもあります。
今回は、司法書士の立場から、「相続対策としての養子縁組」について、法的・実務的なポイントを解説いたします。
■目次
1.養子縁組で相続税が軽減される理由
2.相続税の基礎控除のしくみと養子のカウント
3.法律的な要件:普通養子縁組と特別養子縁組の違い
4.養子の人数制限と税務上の注意点
5.よくある誤解と否認されないための対策
6.まとめ:家族の絆と税対策の両立を
7.無料相談のご案内(CTA)
1. 養子縁組で相続税が軽減される理由
相続税は、一定額を超える遺産に課税される仕組みです。
その「一定額」は以下のように決まります。
相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
つまり、相続人の数が多ければ多いほど、非課税枠も広がるというわけです。
養子を迎えることでこの数を増やせれば、課税対象となる遺産額を減らすことができます。
2. 相続税の基礎控除のしくみと養子のカウント
たとえば、実子1人しかいない方が、孫を養子にすると、相続人の数が「2人」となり、基礎控除額は3,000万円 + 600万円×2人=4,200万円になります。
このように、養子も"法定相続人"に数えられるため、相続税の節税効果が期待できるのです。
ただし、税務上、カウントできる養子の数には制限があります。詳しくは後述しますが、「何人でもいい」というわけではないので注意が必要です。
3. 法律的な要件:普通養子縁組と特別養子縁組の違い
養子縁組には2種類あります。
普通養子縁組:実親との親子関係はそのまま残り、新たに養親との親子関係が生まれる。相続税対策でよく使われるのはこちら。
特別養子縁組:主に児童福祉の観点から設けられた制度で、原則6歳未満の子どもが対象。実親との親子関係は消滅する。
相続対策としては、普通養子縁組が中心となります。
また、養子になるには、本人の同意が必要ですし、未成年の場合は実親の同意も必要となるため、計画的な準備が不可欠です。
4. 養子の人数制限と税務上の注意点
相続税法上、養子としてカウントできるのは以下の通りです。
実子がいる場合:養子1人まで
実子がいない場合:養子2人まで
それ以上の養子を取っても、基礎控除や税額軽減の対象とはなりませんので注意が必要です。
また、形式的な縁組(いわゆる"税逃れのための名義養子")と判断されると、税務署から否認される可能性もあります。
5. よくある誤解と否認されないための対策
養子縁組による節税は合法な手段ですが、以下のような誤解や失敗が多く見られます。
養子にしただけで安心してしまう
実際に交流がなく、名義だけの関係になっている
相続発生の直前に急いで縁組を行う
こうした場合、「真実性がない」として否認されるリスクがあります。
形式だけでなく、実態として親子関係があるかどうか(生活実態・扶養関係など)が重視されるため、定期的な交流や生活支援の実績があることが望ましいです。
6. まとめ:家族の絆と税対策の両立を
養子縁組は、税制上のメリットを享受できる強力な手段ですが、本来は「家族関係を築く」ことが根幹にあります。
制度の趣旨を理解し、節税だけでなく、家族の将来像を描いたうえで検討することが大切です。
そして、養子縁組は戸籍に関わる重要な手続きでもあり、一度行えば原則として取り消しができません。
司法書士としても、「制度を正しく使う」ことと「家族関係を円滑に保つ」ことの両立が重要だと考えています。
7. 無料相談のご案内(CTA)
「自分の場合は養子縁組でどの程度の節税が可能なのか?」
「孫や義理の子を養子にできるのか?」
そんな疑問や不安をお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
当事務所では、相続・贈与に強い司法書士が、法的な観点と家族関係への配慮を両立したアドバイスを提供しています。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:https://www.irisjs2021.com/
次回記事:
👉【第4回】「家族信託という選択肢~認知症時代の新しい財産管理のかたち~」をどうぞお楽しみに!

相続対策と聞くと、まず思い浮かぶのは「贈与」や「遺言書の作成」かもしれませんが、実は"生命保険"も非常に有効な生前対策の一つです。
令和6年の税制改正により、暦年贈与の使い勝手が悪くなった今、生命保険を活用した資産移転のニーズが急速に高まっています。
生命保険は単に「遺された家族の生活保障」のためだけの制度ではありません。契約の仕方次第で、相続税の非課税枠を活用しながら資産をスムーズに受け渡す手段として、非常に優れた効果を発揮します。
今回は、司法書士の視点から、生命保険を活用した相続・贈与対策の基本とそのポイントをわかりやすく解説します。
■目次
1.生命保険が生前対策になる理由
2.生命保険の非課税枠とは?
3.「契約者・被保険者・受取人」の関係性がカギ
4.贈与としての生命保険の使い方
5.注意点と落とし穴
6.まとめ:税と人の感情を意識した設計を
7.無料相談のご案内(CTA)
1. 生命保険が生前対策になる理由
生命保険の最大の特徴は、「現金を受取人が確実に手にできる」ことです。
相続が発生すると、不動産や預金などの資産は相続人全員の共有状態になり、遺産分割協議がまとまるまで自由に使うことができません。
しかし、生命保険は「受取人固有の財産」となるため、遺産分割を経ずに速やかに現金を受け取れるのです。
葬儀費用の確保、当面の生活資金、納税資金の準備として非常に有効です。
2. 生命保険の非課税枠とは?
生命保険には、**「500万円 × 法定相続人の数」**という非課税枠が設けられています。
たとえば相続人が配偶者と子2人の計3人なら、500万円 × 3人=1,500万円までが非課税で受け取れるということになります。
これは他の財産と比較しても非常に優遇された取り扱いです。現金や不動産を贈与するよりも、税負担が抑えられる可能性が高いという点で注目されています。
3. 「契約者・被保険者・受取人」の関係性がカギ
生命保険の契約には、3つの登場人物がいます。
契約者(保険料を支払う人)
被保険者(亡くなったときに保険金が出る人)
受取人(保険金を受け取る人)
この3者の組み合わせによって、税の種類(相続税・贈与税・所得税)が変わります。
たとえば、契約者と被保険者が親、受取人が子の場合は「相続税」の課税対象になりますが、
契約者が子、被保険者が親で、保険料を親が負担していた場合には「贈与税」が課される可能性があります。
このように、契約の形によっては"つもりで贈与"になってしまうケースもあるため、設計段階から専門家の助言が不可欠です。
4. 贈与としての生命保険の使い方
暦年贈与の代替として、生命保険を使う方法も注目されています。
たとえば、毎年110万円ずつ現金を贈与する代わりに、そのお金で子どもが自分名義の保険をかける「名義変更型」の運用が考えられます。
また、高齢の親が自分を被保険者として保険に加入し、受取人に孫世代を設定すれば、世代飛ばしによる資産移転も可能です(ただし注意点あり)。
制度の変更により"贈与のしやすさ"が薄れた今、こうした代替手段としての生命保険がますます注目されているのです。
5. 注意点と落とし穴
生命保険は便利な制度ですが、注意すべき点もあります。
「誰が保険料を払っていたか」が課税の分岐点になる
非課税枠を超えると、相続税が課税される可能性あり
「争続」を招かないよう、全相続人に公平感を持たせる配慮も重要
たとえば、特定の子だけに保険金を集中させてしまうと、他の相続人から不満が出て、かえって相続争いの火種となることも。
制度だけでなく、"家族関係"の設計が生前対策では非常に重要なのです。
6. まとめ:税と人の感情を意識した設計を
生命保険は、制度上のメリットが多く、生前対策において非常に有用なツールです。
ただし、「非課税枠を活かすための設計」や「課税関係をクリアにするための契約内容」、「家族間の公平性」といった視点を踏まえて活用することが必要不可欠です。
贈与税・相続税・所得税の違いを理解しながら、「誰が、いつ、どのように受け取るか」を丁寧に設計しましょう。
単なる節税だけでなく、残された家族への"思いやり"のかたちとして、生命保険の活用を検討する価値は大いにあります。
7. 無料相談のご案内(CTA)
当事務所では、司法書士・行政書士として、相続・贈与にまつわる制度設計のご相談を幅広く承っております。
「自分のケースでは保険を使った方がいいのか?」「贈与とどう使い分ければいいのか?」といった疑問に、丁寧にお応えいたします。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
次回記事:
👉【第3回】「"養子縁組"で基礎控除枠を拡大する~法的テクニックとしての活用法~」をどうぞお楽しみに!

2024年(令和6年)1月1日より、贈与税に関する制度が大きく見直されました。これまで生前贈与の王道とされてきた「暦年贈与制度」に対し、税制改正によって新たな制限が加わり、相続時精算課税制度が再評価されつつあります。
「これからは贈与の時代だ」「生前贈与で税負担を軽減しよう」といった声が聞かれた一方で、今回の法改正により、むしろ"安易な贈与"がリスクになるケースも。
この記事では、司法書士の視点から、贈与制度の変更点をわかりやすく解説し、今後どのように生前対策を考えていくべきかの基本的な考え方をお伝えします。
生前対策のシリーズ第一弾として、まずは「暦年贈与」と「相続時精算課税」の違いや、改正内容のポイントを押さえておきましょう。
■目次
1.暦年贈与制度とは?
2.令和6年の税制改正のポイント
3.相続時精算課税制度の再注目
4.なぜ制度は変わったのか?
5.贈与はもうしない方がいいのか?
6.まとめ:制度を知り、選択肢を持つことが重要
7.無料相談のご案内(CTA)
1. 暦年贈与制度とは?
暦年贈与とは、1年間(1月1日~12月31日)の間に、贈与を受けた金額が110万円以下であれば贈与税がかからないという制度です。
長年にわたり「毎年少しずつ贈与をして相続財産を圧縮する」という節税方法として多く利用されてきました。特に不動産や株式のような分割しづらい財産を抱える家庭では、手軽な生前対策として定番でした。
2. 令和6年の税制改正のポイント
今回の改正で、「持ち戻し期間」が3年から7年に延長されました。これは、亡くなる前7年間に贈与された財産については、相続財産に"戻して"課税するという制度です。
つまり、亡くなる直前に贈与をしても、「贈与したことにならない」可能性が高くなったのです。これにより、長期的・計画的に贈与を進めない限り、節税効果が薄れるようになりました。
3. 相続時精算課税制度の再注目
一方で、これまであまり使われてこなかった「相続時精算課税制度」が見直されています。
この制度は、60歳以上の親から18歳以上の子への贈与において、2,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。ただし、相続時にはすべてを加算して相続税を再計算します。
2024年の改正により、この制度でも年間110万円までの非課税枠が新設されました。これにより、小口の贈与にも活用できるようになりましたが、一度選択すると暦年贈与に戻れないという注意点があります。
4. なぜ制度は変わったのか?
背景には、「格差の固定化」や「資産移転の時期が遅すぎる」という課題があります。国としては、若い世代への早期の資産移転を促し、経済の活性化を図りたいという意図があります。
また、富裕層による過度な節税スキームの防止も目的のひとつです。これにより、「単に暦年贈与を繰り返すだけの相続対策」は、ますますリスクをはらむことになります。
5. 贈与はもうしない方がいいのか?
いいえ、そうではありません。大切なのは、「制度を理解して、目的に合った方法を選ぶこと」です。
たとえば、
相続税を抑えたいなら…長期的なプランニングが不可欠
認知症リスクに備えたいなら…家族信託などの活用も視野に
争続を防ぎたいなら…遺言書の作成や遺留分対策が有効
つまり、「贈与=万能」ではなくなった今、他の手法と組み合わせてバランスの良い対策を講じることが求められています。
6. まとめ:制度を知り、選択肢を持つことが重要
今回の改正により、「何となく毎年110万円贈与しておけばいい」という時代は終わりました。しかし、それは悲観することではなく、より本質的な"家族の在り方"を見つめ直すきっかけでもあります。
次回からは、贈与に代わるさまざまな生前対策を個別に深掘りしていきます。ぜひご自身やご家族の状況に照らし合わせながらお読みいただければ幸いです。
7. 無料相談のご案内(CTA)
生前対策は、誰にでも必要になる「未来の準備」です。
「自分のケースではどの制度が合っているのか知りたい」「遺言や信託も含めた対策を考えたい」とお考えの方は、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
次回記事:
👉【第2回】「"保険"という名の贈与対策~生命保険の活用術~」もお楽しみに!

「相続登記の義務化って結局いつまでにやればいいの?」「過料って本当に取られるの?」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
2024年4月1日からスタートした相続登記の義務化制度では、原則として"相続を知ってから3年以内"に相続登記の申請をしなければならないことになりました。この義務に違反した場合、**10万円以下の過料(罰金のようなもの)**が科される可能性があります。
本記事では、相続登記の申請期限に遅れた場合にどうなるのか、ペナルティを避ける方法、そして期限超過後の対処法について、司法書士の視点からわかりやすく解説いたします。
【目次】
1.相続登記の申請期限と「義務化」の意味とは?
2.期限を過ぎるとどうなる?過料の対象者と判断基準
3.なぜ義務化された?背景にある"所有者不明土地問題"
4.遅延を防ぐためのチェックポイント
5.期限を過ぎた後の対応と注意点
6.まとめ:今すぐできる対策から始めよう
1. 相続登記の申請期限と「義務化」の意味とは?
2024年4月1日以降に発生した相続については、相続人が自分が不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければなりません。
たとえば…
親が亡くなり、実家の土地を自分が相続することになったと知った日
遺産分割協議で取得者が決まった日
このようなタイミングから3年以内の申請が必要になります。義務違反の場合、「正当な理由」がなければ過料の対象となります。
2. 期限を過ぎるとどうなる?過料の対象者と判断基準
相続登記の義務違反によって科される過料は、最大10万円以下とされています。
ただし、必ずしも自動的に過料が科されるわけではなく、以下のような点が考慮されます。
判断基準の例:
故意または重大な過失があるかどうか
長期間にわたり放置されていたか
事情を説明できる合理的な理由があるか
たとえば、「高齢で判断能力が不十分だった」「遺産分割協議が長引いていた」など、やむを得ない事情があれば過料が軽減、あるいは免除される可能性もあります。
3. なぜ義務化された?背景にある"所有者不明土地問題"
相続登記の義務化の背景には、所有者不明土地問題の深刻化があります。
国土交通省の推計では、所有者不明の土地が**全国の約20%(九州本島より広い)**にのぼるとされ、公共工事や都市開発が進まないなどの問題が生じています。
この事態を解消するために、「誰が不動産の所有者であるかを明確にする」ことが法的に求められるようになったのです。
4. 遅延を防ぐためのチェックポイント
申請期限を守るために、相続発生後すぐに以下のポイントを確認しましょう:
相続人の調査と戸籍の取得
不動産の所在と評価額の把握
遺産分割協議の開始
登記に必要な書類の収集と準備
専門家(司法書士)への早期相談
できるだけ早い段階で登記申請の準備を始めることが、過料リスクを避ける最善策です。
5. 期限を過ぎた後の対応と注意点
仮に3年の期限を過ぎてしまっても、すぐに過料が科されるわけではありません。
大切なのは、「放置せずに早急に手続きを開始すること」です。
期限超過後にすべきこと:
遅延理由を整理・証明できる資料を準備
登記申請の準備を急ぐ
必要に応じて「相続人申告登記」(簡易な方法)を検討
「相続人申告登記」は、自分が相続人であることのみを登記簿に明示する制度で、申請義務を満たすことができます。
これにより、過料を回避しながら時間稼ぎをすることも可能です。
6. まとめ:今すぐできる対策から始めよう
相続登記の申請を先延ばしにすると、将来思わぬ形でペナルティを受ける可能性があります。
過料のリスクを回避するためには、**「3年以内に申請する」**というルールを常に意識し、早めの対処を心がけましょう。
「どこから手を付ければいいのかわからない」という方も、まずは一度専門家に相談してみてください。
相続人調査から不動産評価、登記手続きに至るまで、トータルでサポートいたします。
📝相続登記のご相談は専門家へ。今すぐ無料相談をご利用ください!
「相続登記の期限が迫っているけど手つかず…」「何をすればいいかわからない」
そんな方もご安心ください。当事務所では、相続登記義務化に対応したフルサポートをご提供しています。
相続人調査・戸籍収集
遺産分割協議書の作成
登記申請書類の準備・代理申請
相続人申告登記の活用アドバイス
初回相談は無料です。過料リスクを回避し、安心・確実な登記申請をお手伝いします。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

「相続人が多くて話し合いが進まない」「連絡が取れない相続人がいる」
こうした複雑な相続状況でも、相続登記は避けて通れません。2024年の法改正により、相続登記は義務化され、3年以内の申請が必要となったため、対応を先延ばしにすることで**過料(10万円以下)**の対象になる可能性もあります。
この記事では、相続人が多数いる場合や音信不通の相続人がいる場合の対応策、法的手続きの進め方、そして相続登記をスムーズに完了させるコツを、司法書士の視点からわかりやすく解説します。
【目次】
1.相続人が多い場合の主な問題点と解決策
2.連絡が取れない相続人がいる場合の対処法
3.不在者財産管理人の選任とは?
4.特別代理人・失踪宣告制度の活用
5.司法書士に依頼するメリット
6.まとめ:複雑な相続でも諦めずに一歩ずつ前進を
1. 相続人が多い場合の主な問題点と解決策
兄弟姉妹・甥姪・再婚相手の子などが相続人になるケースでは、関係者の数が多くなるほど合意形成が困難になります。
主な課題:
全員の署名・実印・印鑑証明が必要
価値観や利害の対立が起こりやすい
書類のやり取りだけで数か月かかることも
解決策:
代表相続人を立ててやり取りを一本化
中立の司法書士が間に入ることで調整がスムーズ
早い段階で「遺産分割協議書」のドラフトを作成する
相続人全員の信頼を得られる形で手続きを進めることが成功のカギです。
2. 連絡が取れない相続人がいる場合の対処法
音信不通の相続人が一人でもいると、遺産分割協議が成立せず、登記申請もできません。
この場合、以下のような法的手続きを取る必要があります。
3. 不在者財産管理人の選任とは?
行方不明の相続人がいる場合、家庭裁判所に申し立てることで**「不在者財産管理人」**を選任してもらうことができます。
手続きの概要:
申立人は相続人のうちの誰でも可能
管轄は不在者の最終住所地の家庭裁判所
申立書、戸籍、住民票の除票などが必要
裁判所が管理人(通常は弁護士や司法書士)を選任
不在者財産管理人は、不在者に代わって遺産分割協議に参加し、登記手続きを進めることが可能になります。
4. 特別代理人・失踪宣告制度の活用
相続人の中に未成年者や認知症などの判断能力に制限がある方が含まれる場合は、「特別代理人」の選任が必要です。
また、長年行方不明で生死が不明な場合には「失踪宣告」を活用することもできます。
特別代理人制度とは?
利益相反を避けるため、家庭裁判所が第三者を選任
未成年者の親などが相続人である場合に活用される
失踪宣告制度とは?
不在者の生死が7年以上不明な場合に、死亡とみなす
法的に相続手続きを前に進めることができる
これらの制度は時間がかかるため、早めの相談・対応が重要です。
5. 司法書士に依頼するメリット
複雑な相続案件ほど、専門家の関与が解決の早道になります。
司法書士に依頼することで以下のメリットが得られます:
関係者の調整役として中立的に対応
家庭裁判所への申し立てサポート
書類作成や登記申請までワンストップ対応
手続き全体のスケジュール管理と進行補助
特に、不在者管理人や特別代理人が必要なケースでは、司法書士の支援が極めて有効です。
6. まとめ:複雑な相続でも諦めずに一歩ずつ前進を
相続人が多い、または行方不明者がいる場合でも、法的手続きを踏めば相続登記を進めることは可能です。
ただし、時間や労力がかかるため、早期の対策がカギになります。
当事務所では、複雑な相続案件の相談を数多く受けており、不在者管理人の申立てや、遺産分割協議のサポートも得意としています。
次回(第5回)は、「期限切れになるとどうなる?相続登記の遅延によるペナルティとリスク」について詳しく解説します。お見逃しなく!
📝複雑な相続も安心。まずは無料相談からどうぞ
相続人の数が多い、連絡のつかない方がいる、遺産分割がまとまらない——
そんなお悩みも、専門家に相談することで前に進めることができます。
当事務所では、相続人調査・遺産分割・家庭裁判所手続き・登記申請まで、一括対応いたします。
初回のご相談は無料ですので、どうぞお気軽にご連絡ください。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
(第3回)相続登記の具体的な手続き方法と必要書類をわかりやすく解説

相続登記が義務化された今、「具体的にどうすればいいの?」という疑問をお持ちの方は多いはずです。
遺産分割や戸籍の取得、登記申請書の作成など、一見すると難しそうな手続きですが、流れと必要書類を正しく理解すればスムーズに進められます。
この記事では、相続登記の手続きの流れ・必要書類・よくあるミスや注意点まで、初めての方でも安心して読めるように丁寧に解説します。
司法書士などの専門家に依頼する際のポイントも紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
1.相続登記の流れを5ステップで解説
2.必要書類の一覧と取得方法
3.登記申請書の作り方と提出方法
4.よくある間違いと注意点
5.専門家に依頼する場合のポイント
6.まとめ:手続きは段取りがすべて
1. 相続登記の流れを5ステップで解説
相続登記の基本的な流れは、以下の通りです。
ステップ1:相続人の確定(戸籍の収集)
亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、誰が相続人になるかを明らかにします。
ステップ2:遺言書の確認
遺言書がある場合は、その内容に従って登記を行います。公正証書遺言であればそのまま使えますが、自筆証書遺言は検認が必要です。
ステップ3:遺産分割協議
相続人全員で不動産の分け方を話し合い、「遺産分割協議書」を作成します。これが登記に必要な書類のひとつとなります。
ステップ4:登記申請書の作成
法務局に提出するための「登記申請書」を作成します。専門知識が必要なため、不安な場合は司法書士に依頼するのがおすすめです。
ステップ5:法務局への提出と完了
必要書類をそろえて法務局に申請。登記が完了すると、「登記完了証」が交付され、名義が正式に変更されます。
2. 必要書類の一覧と取得方法
相続登記には以下の書類が必要です(主な例)。
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の住民票
固定資産評価証明書(不動産の所在地の市区町村で取得)
登記事項証明書(登記簿謄本)
遺産分割協議書(相続人全員の署名押印)
登記申請書
※相続内容によって追加書類が必要になる場合もあります。
3. 登記申請書の作り方と提出方法
登記申請書は手書きでも作成可能ですが、様式や記載内容にミスがあると補正(訂正)が必要になります。
申請先は不動産の所在地を管轄する法務局です。提出方法は以下の通り:
窓口に直接提出
郵送(控えを返送してもらうには返信用封筒が必要)
オンライン申請(司法書士など専門家向け)
登記申請書には「不動産の表示」「登記の原因」「登記権利者」など専門的な記述が必要となるため、不安な方は専門家に依頼した方が確実です。
4. よくある間違いと注意点
以下は相続登記でよくあるミスです:
被相続人の戸籍が一部欠けていて相続人が確定できない
旧姓のままの名前で記載してしまった
押印が実印ではなかった(印鑑証明書と不一致)
遺産分割協議書に不動産の表記ミス(登記簿と不一致)
不動産評価額の証明書が古い年度のものだった
これらはすべて補正対象となり、手続きが大幅に遅れる原因になります。
5. 専門家に依頼する場合のポイント
司法書士に依頼することで、書類の不備や記載ミスを避け、スムーズに登記が完了できます。
依頼の際は以下の点を確認するとよいでしょう:
相続登記の実績があるか
料金が明確に提示されているか(報酬+実費)
書類収集も任せられるか
相続人の数が多い・不在者がいるなど、複雑なケースへの対応力
一度相談してみることで、手間と時間を大きく削減できます。
6. まとめ:手続きは段取りがすべて
相続登記は一見複雑そうに見えますが、流れと書類を把握すれば、必要な準備が明確になります。
ご自身で進めるのが不安な方は、無理せず専門家に相談することをおすすめします。
次回は、相続人が多い・音信不通の相続人がいるなど、複雑なケースでの対応方法について解説します。
「登記ができないかもしれない…」とお悩みの方にとって、実用的な内容ですので、ぜひご覧ください。
📝相続登記のご相談はプロにお任せください
「何から手をつけていいかわからない」
「書類の集め方がわからない」
そんな方でもご安心ください。
当事務所では、相続登記に必要な書類収集から申請書作成、法務局への提出までワンストップでサポートいたします。
初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
(第2回)放置するとどうなる?相続登記を怠った場合の罰則とトラブル事例

相続登記の義務化により、2024年4月1日から相続によって不動産を取得した人は、3年以内に登記をしなければならないというルールがスタートしました。
しかし、
「どうせ罰金なんて取られないでしょ?」「名義を変えなくても問題ない」
と考えて、相続登記を放置してしまう方がいまだに少なくありません。
そこで本記事では、相続登記を怠った場合にどんなリスクがあるのか?
実際の罰則内容や、放置によって発生したトラブル事例などを具体的に紹介しながら、なぜ"早めの対応"が重要なのかを解説します。
【目次】
1.相続登記の義務化とは?おさらい
2.登記を怠るとどうなる?罰則の内容
3.相続登記を放置したことで起きた3つのトラブル事例
4.過料の対象になるケース・ならないケース
5.「うちは関係ない」は危険!放置しないための心構え
6.まとめ:罰則よりも"家族トラブル回避"の視点を
1. 相続登記の義務化とは?おさらい
2024年4月1日以降、相続登記は法律で義務化されました。
相続によって不動産を取得した人は、3年以内に登記を行わないと、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
これまで「任意」だった手続きが「義務」となったことで、これまで以上に速やかな対応が求められています。
2. 登記を怠るとどうなる?罰則の内容
法律上、正当な理由なく登記を怠ると「10万円以下の過料」が科されることがあります。
ここでいう「過料」は刑罰ではなく行政上のペナルティですが、それでも十分なプレッシャーになります。
特に以下のような場合は要注意です:
他の相続人と遺産分割協議が済んでいるのに、登記だけを怠っている
名義変更を先延ばしにしている間に、相続人が亡くなってしまった
売却などに必要な手続きが進まない
実際の過料の運用は柔軟とされていますが、制度が定着すれば厳格な対応がなされる可能性もあるため注意が必要です。
3. 相続登記を放置したことで起きた3つのトラブル事例
① 売却できないまま放置 → 土地の価値が下落
親名義のまま放置していた土地を売ろうとしたら、買主から「登記されていないと契約できない」と断られ、さらに土地の価値が下がって損をしたケースがあります。
② 代替わりで相続人が増え、協議が混乱
祖父の相続登記を放置していたら、次の世代に突入し、相続人が20人以上になって協議が不可能になったケースも。司法書士に相談しても、「まず相続人を確定させるところから」となり、長期戦に。
③ 兄弟間でのトラブル
「父の土地は自分が使っているから当然もらえると思っていた」と主張する兄と、「話もなく勝手に使ってるのが気に入らない」と主張する弟。名義が父のままだったため、泥沼の争いに発展した例もあります。
4. 過料の対象になるケース・ならないケース
以下のようなケースは、すぐに過料の対象とはなりません。
相続人の調査に時間がかかっている
遺産分割協議がまとまらない
遺言書が見つからない
こうした事情がある場合、正当な理由として認められる可能性がありますが、何もせず放置しているだけでは通用しません。
「分からないから先延ばし」は、過料だけでなく後々の大きなトラブルを招くおそれがあります。
5. 「うちは関係ない」は危険!放置しないための心構え
「うちは兄弟仲もいいし、特に問題ないはず」と思っていても、将来的に…
相続人の死去・認知症
配偶者・子どもが新たに関与
固定資産税の通知が来なくなる
といったことで問題が表面化することも。
いざというとき、登記されていない不動産は 誰も動かせない「負の遺産」 になります。
6. まとめ:罰則よりも"家族トラブル回避"の視点を
罰則を回避するという視点も大切ですが、それ以上に大切なのは将来のトラブルを未然に防ぐことです。
名義をきちんと整理することは、ご自身の財産を守ることでもあり、残された家族への思いやりでもあります。
次回の記事では、「具体的な相続登記の手続きの流れ」について、必要書類や費用感も含めて解説します。どうぞお見逃しなく!
📝相続登記のご相談はお早めに
「相続登記の義務化って、うちも対象になるの?」
「放置してきた土地があるけど、今からでも間に合う?」
そんなお悩みに、当事務所が丁寧にお応えします。
相続登記の基本から、複雑なケースまで、初回相談無料で対応いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
(第1回)なぜ今「相続登記」が話題なのか?義務化の背景と基本を押さえよう

2024年4月1日から、相続登記が法律で義務化されたことをご存知でしょうか?
「今まで放置していたけど、これってマズいの?」
「そもそも登記って何?」
と不安に思われている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、相続登記の義務化がなぜ行われたのか、その背景や基本的な考え方について、司法書士の視点からやさしく解説します。
今後のシリーズ記事では、義務違反の罰則や手続きの流れ、よくあるトラブルとその回避法まで、実務に即した情報をお届けします。
まずは第1回として「そもそも相続登記とは何か?」「なぜ義務化されたのか?」をしっかり押さえましょう。
【目次】
1.相続登記とは?
2.なぜ相続登記が義務化されたのか?
3.義務化で何が変わったのか?
4.誰がいつまでに登記するの?
5.まとめ:義務化は"罰則"より"備え"が大切
1. 相続登記とは?
相続登記とは、被相続人(亡くなった人)が所有していた不動産の名義を、相続人の名義に変更する登記手続きのことです。
これは法務局で行うもので、銀行口座の名義変更などとは異なり、義務ではないとされてきたのがこれまでのルールでした。
そのため、「親が亡くなっても、そのままにしておいた」というケースが日本中に山ほどあります。
ところが、不動産の名義が何世代にもわたって変更されない状態が続くと、トラブルや行政コストが膨らんでしまうのです。
2. なぜ相続登記が義務化されたのか?
最大の理由は、「所有者不明土地問題」です。
名義が更新されないまま数十年が経過した土地や建物が全国に散在しており、所有者の特定が困難なため、以下のような社会的な支障が出ていました。
公共事業や都市整備が進まない
空き家対策が困難
農地や山林が荒廃
実際、所有者が不明な土地は九州全土の面積に匹敵するとも言われており、これは深刻な社会課題です。
こうした状況を打開するため、2021年に法律が改正され、2024年から相続登記が義務化されたのです。
3. 義務化で何が変わったのか?
2024年4月1日以降、相続により不動産を取得した相続人は、3年以内に登記を申請しなければなりません。
これに違反すると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
ただし、すべてのケースに過料が発生するわけではありません。正当な理由(相続人の調査に時間がかかっている、遺産分割がまとまっていない等)がある場合は、柔軟に対応される見込みです。
とはいえ、「知らなかった」では済まされません。やはり早めに対策を講じることが重要です。
4. 誰がいつまでに登記するの?
相続登記の申請義務を負うのは、不動産を取得した相続人です。たとえば、遺産分割協議によって長男が土地を相続する場合、その長男が申請義務者になります。
登記の期限は以下のとおりです。
相続が発生した日から3年以内
(ただし、遺産分割が後から成立した場合は、成立日から3年以内)
また、「法定相続情報一覧図」などの制度を活用することで、手続きの簡略化も可能です。詳細は次回以降でご紹介します。
5. まとめ:義務化は"罰則"より"備え"が大切
相続登記の義務化は「罰する」ことが目的ではなく、「放置によるトラブルを防ぐ」ことが本質です。
名義変更を後回しにすることで、以下のような問題が起きかねません。
売却や活用ができない
他の相続人とのトラブル
将来的に相続人が増えて手続きが煩雑に
アイリス国際司法書士事務所では、そうしたお悩みや手続きのサポートを積極的に行っております。
次回は「第2回|放置リスクと罰則の実態」について詳しく解説いたします。ぜひお読みください。
📝相続登記に関するご相談はお早めに
相続登記の義務化によって、「いつかやろう」と後回しにしていた名義変更が、法律上の義務となりました。
「何から手をつけたらいいかわからない」「相続人が複雑で進められない」など、お悩みは人それぞれです。
当事務所では、初回相談無料で、相続登記の進め方や必要書類、トラブル防止策まで丁寧にご案内しております。
どうぞお気軽にご相談ください。
📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]
次回の記事では、実際に相続登記を放置するとどうなるのか?罰則の内容やよくある勘違いについて掘り下げてまいります。どうぞお楽しみに。
【第5回】空き家問題の本質――「相続されない家」が増え続ける社会

日本各地で深刻化する「空き家問題」。その背景には、バブル期に建てられた住宅が相続されず、取り残されている現実があります。本記事では、相続と空き家問題の関係性を歴史的視点から読み解きます。
■ 目次
1.空き家率上昇の現状データ
2.相続放棄が急増する背景とは
3.利用価値がなく処分費だけかかる家
4.放置された空き家の行政対応
5.今後求められる相続と不動産の整理術
1. 空き家率上昇の現状データ
総務省の「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は2023年時点で約920万戸、空き家率は13.8%と過去最高を記録しました。とりわけ地方の郊外や山間部では、集落単位で空き家が目立つ地域もあります。高齢化が進む中で、親が亡くなってもその家を誰も引き継がず、そのまま放置される事例が急増しているのです。
この問題は見過ごせるレベルではありません。倒壊の危険性、衛生・防犯面のリスク、景観の悪化といった問題にとどまらず、税収の減少や地域コミュニティの空洞化にもつながっています。
2. 相続放棄が急増する背景とは
空き家問題の根底には「相続放棄」の急増があります。法務省の統計によれば、家庭裁判所における相続放棄の件数は年間25万件を超えており、20年前の約2倍にまで増えています。特に不動産が含まれる相続案件で放棄される傾向が強く、価値のない土地や建物は「もらっても困る」というのが実情です。
バブル期に郊外のニュータウンやリゾート地に建てられた住宅は、現在では老朽化し、交通の便も悪く、生活インフラも整っていない場合が多いです。こうした不動産を相続しても使い道がなく、売ろうにも買い手がつかず、維持費や固定資産税だけがのしかかってくる――そのため、最初から相続自体を放棄する人が増えているのです。
3. 利用価値がなく処分費だけかかる家
建物は時間が経てば劣化します。築30年を過ぎれば修繕費も高額になり、家としての機能を維持するのが困難になります。しかも、不動産市場においては築年数が古い住宅は資産価値として評価されにくく、解体して更地にして売るにも数百万円単位の費用がかかります。
その結果、「使えない・売れない・解体も高い」という"三重苦"により、多くの住宅がそのまま放置されてしまうのです。特に地方では、親が残した家を見に行くことすらままならない遠方の相続人が、手続きの煩雑さを嫌って放置するケースも多く見られます。
4. 放置された空き家の行政対応
このような放置空き家に対し、行政も手をこまねいてはいません。2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、危険な空き家を「特定空家等」として指定し、所有者に対して修繕・撤去命令を出すことが可能になりました。命令に従わない場合は、行政代執行による強制撤去も行われます。
ただし、この法律が適用されるのは「危険度の高い空き家」のみで、多くの空き家は現状のまま取り残されています。また、そもそも所有者不明で連絡が取れない場合も多く、行政としても対処のしようがないのが実情です。
5. 今後求められる相続と不動産の整理術
空き家問題を解決するには、単に法律を整備するだけでなく、相続の段階からの備えが不可欠です。親の代で不動産の処分方針を決めておくこと、元気なうちに売却・賃貸・解体などの手続きを行っておくこと、そして遺言や生前贈与などを活用して、子世代の負担を最小限に抑えることが重要です。
また、不動産の相続は「資産を受け継ぐ」だけでなく「責任を引き受ける」ことでもあるという意識を社会全体で持つ必要があります。これからの時代、「持ち家=資産」という常識は通用しなくなっており、「住まない家はなるべく早く処分する」という発想が求められるのです。
■ まとめ
空き家問題は、高齢化社会の副産物であると同時に、バブル期の住宅政策のツケでもあります。「相続されない家」が増える今、個人レベルでの備えと、行政による支援の両輪が求められています。次回は、空き家や相続不動産の整理に役立つ制度や活用策について詳しく解説していきます。
【第4回】資産の価値は目減りし、ローンは残る――バブル崩壊の傷痕

バブル期に高値で購入された不動産は、バブル崩壊後に大きく値を下げ、多くの家庭が「資産の目減り」と「借金の残債」というダブルパンチを受けました。この記事では、不動産資産の幻想が崩れた現実を見ていきます。
■ 目次
1.不動産価格の急騰と熱狂の時代
2.バブル崩壊後の地価暴落
3.「資産」ではなく「負債」になった家
4.住宅ローン破綻と自己破産の増加
5.相続では引き取り手がない不動産へ
1. 不動産価格の急騰と熱狂の時代
1980年代後半、日本は未曾有のバブル景気に沸きました。土地神話が信じられていた当時、都市部の地価は毎年のように高騰し、「不動産は持っていれば必ず値上がりする」「土地は資産」という意識が広く浸透しました。企業も個人も土地を担保に巨額の融資を受け、銀行もこぞって不動産関連の融資を拡大。マイホーム購入が社会的ステータスとされる中、多くの家庭が背伸びをしてでも住宅ローンを組み、不動産を手に入れました。
2. バブル崩壊後の地価暴落
しかし1991年のバブル崩壊を境に状況は一変します。急激な金融引き締めにより不動産価格は暴落。わずか数年で、都心の一等地でさえ半値以下に、不便な郊外地では価格が10分の1近くまで落ち込むケースもありました。バブル期に高値で買った家は、すでに売ろうとしてもローン残高を下回る「オーバーローン状態」となり、実質的に売却不能な資産に変わりました。
3. 「資産」ではなく「負債」になった家
不動産は本来、資産として後世に残せるものでした。しかし、バブル崩壊後はそうした幻想が崩れ、住宅は「負債」に転じました。たとえば3,000万円で購入した住宅が10年後には1,000万円の価値しかなく、ローンはまだ2,000万円以上残っている――そんな家庭が全国に多数存在しました。都市部から遠く、交通インフラも乏しい地域では、買い手が見つからず、家を持っていることがむしろ足かせとなる事例も増加しました。
4. 住宅ローン破綻と自己破産の増加
返済能力を超えてローンを組んだ家庭では、返済が困難となり、やがてローン破綻・任意売却・競売・自己破産へと至るケースも続出しました。バブル期に家を買った団塊世代が中高年になるにつれ、収入の減少や退職といった要因も重なり、「人生最大の買い物」が「人生最大のリスク」へと転じたのです。
こうした背景のもと、住宅ローンの組み方やライフプラン設計のあり方が社会全体で見直されるようになりましたが、その過渡期で犠牲となった世代がいたことも忘れてはなりません。
5. 相続では引き取り手がない不動産へ
そして現在、こうした不動産を相続する世代が問題に直面しています。親の住んでいた家を相続したものの、「売れない・使えない・管理費がかかる」といった理由から、引き取りを拒否するケースが急増しています。特に地方や過疎地では、空き家として放置され、やがて倒壊の危険や近隣への悪影響を及ぼす「社会的負動産」へと変貌しています。
近年では、相続放棄を選ぶ人も多くなり、結果として所有者不明土地や空き家の増加につながっています。これはバブル期の無理な不動産取得の"ツケ"が、今になって次世代へと回ってきている現実の表れです。
■ まとめ
不動産はかつて「最も確実な資産」と信じられていました。しかし、バブル崩壊を機にその神話は崩れ、むしろ"負の遺産"となるケースも少なくありません。高値掴み、ローン残債、資産価値の目減り――そうした一連の流れは、相続世代にまで影響を与えています。第4回では、そうしたバブル崩壊の傷痕をたどりながら、現在の空き家・所有者不明土地問題の起点を探りました。次回は、これらの問題に対応する制度的アプローチについて解説していきます。
【第3回】バブル期の持ち家信仰と個人債務の拡大

1980年代後半、日本は未曾有の好景気「バブル経済」に突入し、人々の間には「持ち家こそが成功の証」という信仰が広がりました。この背景には、土地神話や住宅ローンの普及、税制優遇などがありましたが、無理なローンを組んで購入した住宅は、後に多くの家庭に経済的負担を残す結果となりました。本記事では、バブル期の持ち家信仰がいかにして個人債務を拡大させ、現在の相続や空き家問題の伏線となったのかを掘り下げます。
■目次
1.バブル経済と土地神話の誕生
2.「持ち家=成功」という価値観の定着
3.住宅ローンと個人債務の拡大
4.バブル崩壊後の資産価値下落と生活苦
5.相続と空き家問題への伏線
1.バブル経済と土地神話の誕生
1980年代、日本は株式市場と不動産市場の急激な高騰に沸いていました。都市部を中心に地価は連日上昇し、「土地は値下がりしない」「持っているだけで資産が増える」といった土地神話が生まれました。この幻想が企業だけでなく一般家庭にも波及し、「今のうちに家を買わなければ損だ」という集団心理が形成されていきます。
2.「持ち家=成功」という価値観の定着
戦後の住宅難を背景に、持ち家を持つことは長らく「豊かさ」や「安定」の象徴とされてきましたが、バブル期にはこれが極端な形で表れます。企業も住宅取得支援を打ち出し、団塊ジュニア世代を中心に一斉にマイホームを目指す動きが加速しました。「持ち家があって一人前」「借家暮らしは負け組」といった風潮も広まり、住宅購入は一種の社会的義務のように捉えられていたのです。
3.住宅ローンと個人債務の拡大
このような価値観のなかで、多くの家庭が収入に見合わない高額な住宅を購入し、長期かつ高額な住宅ローンを背負うことになります。当時の金融機関は審査を緩くし、「年収の7倍ローン」などの名のもとに、多額の借入を推奨していました。結果として、家計の大部分をローン返済に充てる「ローン奴隷」のような生活が日常化していきました。
4.バブル崩壊後の資産価値下落と生活苦
1991年のバブル崩壊後、地価は急落し、当初の購入価格を大きく下回る住宅が続出しました。ローン残高のほうが家の価値を上回る「オーバーローン」の状態に陥る家庭も多く、ローンを返済し続けても資産は残らないという事態が起きました。住宅の価値が下がり続けるなかで、離婚や失業、病気などのライフイベントによってローンの支払いが困難になる人も増加し、中には自殺に至るケースも報道されました。
5.相続と空き家問題への伏線
このようにして建てられた家々は、建物としての価値も時間とともに下落し、子世代が相続する際には「価値のない家」「売れない家」「処分に費用がかかる家」として扱われるようになります。その結果、相続人が放棄するケースが増え、誰も住まないまま放置された空き家が全国に拡大していきます。バブル期の持ち家信仰と過剰な住宅取得が、数十年後の日本社会に深刻な空き家問題という形で影を落としているのです。
■まとめ
バブル期における持ち家信仰は、多くの家庭に「豊かさ」という一時的な幻想をもたらしましたが、その裏では無理なローンと資産価値の下落により、長期にわたる経済的苦難が生まれました。そしてその影響は、世代をまたいで「相続できない住宅」「管理できない不動産」「空き家」という社会問題へと変化しています。次回は、こうしたバブル崩壊後の資産劣化と、それに伴う高齢化・相続放棄の問題について取り上げます。
【第2回】農地改革・財閥解体と財産分散の加速

戦後の日本社会において、財産のあり方は劇的に変化しました。GHQの主導による農地改革や財閥解体は、富の集中を排し、個々人への分散を意図した施策でしたが、その結果として、かつての地主層や資産家層は急速に衰退していきました。本記事では、これらの政策がもたらした財産構造の変化と、現代の相続問題への影響について掘り下げます。
■目次
1.農地改革の実施と地主制度の崩壊
2.財閥解体と企業資産の分散
3.所有から利用への価値転換
4.資産の小規模化と相続への影響
5.長期的な視点から見た財産分散の副作用
1.農地改革の実施と地主制度の崩壊
1947年からGHQの指導により断行された農地改革は、地主が所有していた農地を国家が買収し、小作人に売却・払い下げるという形で実施されました。これにより、全国の農地の約80%が小作地であった状況が大きく転換され、多くの小作人が「自作農」になった一方、地主層は土地資産の多くを失いました。世襲によって土地を守り続けてきた家々は、この改革によって経済的基盤を喪失し、家督制度の消失とともに、経済的にも「家の存続」が困難な時代へと突入していきます。
2.財閥解体と企業資産の分散
同様に、GHQの占領政策の一環として財閥解体が進められました。三井、三菱、住友といった大財閥が保有していた株式や企業支配権は強制的に解体され、企業の株式は広く一般市民や従業員に分配されました。これにより、企業経営が家単位や一族による継承から切り離され、個別株主による支配構造へと移行します。一族経営が途絶えたことで、企業資産の継承も分断され、家を中心とする富の集中はさらに困難になりました。
3.所有から利用への価値転換
農地や企業の「所有」は戦前において権威や安定の象徴でしたが、戦後は「利用」に価値が置かれるようになります。国民の多くがマイホーム取得を夢見るようになり、土地は「家を建てるためのもの」へと変化します。住宅ローンという概念も浸透し、戦後から高度経済成長期にかけて、持ち家信仰が国民の間に根付いていきます。土地を資産として維持するのではなく、個人の生活空間として消費するという価値観の変化が、財産の蓄積よりも消費を促す経済構造を形づくりました。
4.資産の小規模化と相続への影響
このような流れの中で、戦後生まれの世代は、分割された土地や個別住宅という「小さな財産」を保有するにとどまりました。相続の際には、それら小規模資産がさらに細分化されるため、結果として「相続しても使い道がない」「売却もできない」「管理費だけがかかる」といった問題が生じています。特に、地方においてはこの傾向が顕著で、相続放棄や空き家の放置が社会的問題として表面化しています。
5.長期的な視点から見た財産分散の副作用
財産の集中を防ぐという意味で、農地改革や財閥解体はある種の平等を実現しました。しかし、同時に「家」という経済単位が失われ、長期的に富を蓄積・承継する構造が壊れたことで、結果的に現代の日本では、多くの家庭が老後資金や相続問題に苦しんでいます。世代を超えて資産を維持・発展させる仕組みが失われたことは、個々の家族の経済的脆弱性にもつながっています。
■まとめ
農地改革と財閥解体は、日本の戦後民主化における象徴的な政策でしたが、それは同時に「家」と「資産」の解体でもありました。財産は広く分散され、富の集中は防がれたものの、その代償として長期的な視点での安定的な資産承継が難しくなりました。第2回では、そうした背景を概観しましたが、第3回では、バブル期における「持ち家信仰」とその副作用について掘り下げていきます。
【第1回】戦後日本における相続制度の転換とGHQの影響

戦後の日本社会における相続制度の変化は、単なる法律改正にとどまらず、価値観や財産構造そのものに大きな影響を与えてきました。特にGHQの占領政策を契機に、戦前までの家制度を支えていた家督相続制度が廃止され、個人単位での法定相続制度へと転換したことで、相続をめぐる諸問題が複雑化しました。本記事では、この転換点を歴史的背景とともに詳しく解説し、現代にまで続く制度的課題について考察します。
■目次
1.戦前の家督相続制度とは
2.GHQ占領政策の概要とその目的
3.民法改正と家制度の廃止
4.財産分散のはじまり
5.相続制度の変化がもたらした社会的影響
1.戦前の家督相続制度とは
戦前の日本においては、「家」単位での財産管理が中心でした。家長が全財産を一手に管理し、死後には長男など特定の家督相続人がそのまま全財産を承継する「家督相続制度」が存在していました。これは個人の財産権よりも、家の維持・存続を優先する制度であり、農地や不動産を守る役割も果たしていました。
2.GHQ占領政策の概要とその目的
第二次世界大戦後、連合国による日本の占領統治が始まり、GHQ(連合国軍総司令部)は戦前の日本社会の改革に着手します。財閥解体、農地改革、教育改革などと並び、家制度の撤廃もその一環でした。GHQの思想的根底には、特定の家や階級が富を独占することを避け、民主的な個人単位の社会構造を築こうとする意図がありました。
3.民法改正と家制度の廃止
1947年の民法改正により、家制度が正式に廃止され、相続制度も個人単位の「法定相続制度」へと大きく舵を切ります。これにより、長男に限らずすべての子や配偶者に均等な相続権が与えられることになり、財産が複数人に分割される「財産の分散」が制度上生じるようになりました。
4.財産分散のはじまり
法定相続制度の導入により、農地や自宅など分割の難しい資産までもが相続人間で共有・分割されるようになります。
これによって、土地の細分化や売却による換金が相次ぎ、戦前のような「代々続く地主」や「資産家」の存続が難しくなっていきます。
これが、後の空き家問題や農地放棄地問題の遠因ともなっています。
5.相続制度の変化がもたらした社会的影響
家督相続制度が廃止され、法定相続制度が導入されたことで、確かに個々の相続人の権利は保護されるようになりました。
しかしその一方で、財産の継承がスムーズにいかず、家庭内の争い(争続)が増えたり、税負担に耐えられない相続人が不動産を手放したりする事態も発生しています。
さらに、誰も引き取り手のない不動産が増え、地方では空き家問題が深刻化しているのが現状です。
■まとめ
戦後の民法改正は、日本社会に個人主義と平等の価値観を浸透させる契機となりましたが、同時にそれまで機能していた家制度的な相続の安定性を失わせる側面もありました。
この第1回では、その歴史的背景と制度転換の過程を概観しました。
次回は、農地改革や財閥解体によって広がった財産分散とその副作用について深掘りしていきます。
【香川県相続事例】「父の家が他人名義!?相続人が70人以上?共有名義の落とし穴と現実的な解決策」

共有名義の不動産は、時として想像を絶する相続トラブルを引き起こします。香川県高松市で実際にあった「名義人が知らない人」「相続人が70人以上」という事例をもとに、現実的な対応策と注意点を司法書士が解説します。
目次
1.ご主人の死後、自宅の名義が他人だった
2.遠縁の共有者、その数なんと70人超
3.相続放棄はもう間に合わない?
4.現実的な選択肢とご提案
5.相続放棄の限界──債務への注意点
6.法的な補足と制度の説明
7.まとめ:親の代で対応しないと、子に重荷が
1. ご主人の死後、自宅の名義が他人だった
特にこの数か月、相続に関するご相談が増加しております。そんなある日、ご相談者様がご主人を亡くされ、その相続登記を行うためにご自宅の登記簿を確認したところ、なんと名義人は見知らぬ名前になっていました。しかも複数名による「共有持分」の形で登記されていたのです。
この時点で「何かおかしい」と気づかれたご相談者様は、信頼できる別の専門家に相続関係の調査を依頼。すると驚くべき事実が明らかになりました。
2. 遠縁の共有者、その数なんと70人超
調査の結果、ご自宅は過去にご主人の遠い親戚と共有名義になっており、しかもその親戚側にもすでに複数回の相続が発生していたのです。そのため、現在の所有者(共有持分権利者)は約70名にのぼることが判明しました。
こうなると、ご主人の相続人である配偶者とお子様が不動産の名義をすべてまとめるには、70人全員の同意による遺産分割協議が必要です。現実的に見て、所在不明の方や協力が得られない相続人が出てくることは避けられず、「事実上、不可能」と判断されました。
3. 相続放棄はもう間に合わない?
ご主人が亡くなってから数年が経過していたため、一般的な相続放棄(家庭裁判所への申述)は法定の3ヶ月以内の期限を過ぎています。ただし、「相続放棄ができない」とは限りません。
相続人が相続の開始を知った時点が明確でない場合や、実質的な相続財産の存在を知らなかったと合理的に判断される場合には、家庭裁判所に申立てることで相続放棄が認められる可能性があります。しかし、これは準備と説得力ある資料提出が必要で、認められるかどうかはケースバイケースです。
4. 現実的な選択肢とご提案
そのため、私はご相談者様に次のような対応策を提案しました。
1.今回の父親の遺産分割協議において、配偶者(母親)に遺産をすべて相続させる形にする。
2.将来、母親の相続が発生した際に、子どもであるご相談者様が「相続放棄」を行う。
こうすることで、問題の不動産を自分たちの手に引き継がず、最終的には法定相続人不在で国庫に帰属させる流れも選択できます。
ただし、これは時間をかけて解決を先送りする「消極的対処法」であり、他の相続財産がある場合や将来の事情変更にも注意が必要です。
5. 相続放棄の限界──債務への注意点
注意すべきは、「相続放棄は借金も放棄できるが、放棄の時期や対応を誤ると効果がない」ことです。
さらに、今回のように「不動産に固定資産税などの負担がある場合」は、放棄しても管理責任を問われるケースもあり得ます。
また、いったん相続を承認したとみなされる行為(遺産の処分や取得)をしてしまうと、相続放棄はできなくなることもあります。
6. 法的な補足と制度の説明
▼相続放棄の根拠(民法第915条)
相続放棄は「自己のために相続があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所に申述する必要があります。ただし、開始時期の特定や事情次第では、期限を過ぎても受理される可能性があります。
▼不動産の共有(民法第249条〜)
共有名義の不動産は、持分ごとの処分・相続が可能であり、1人の行為で全体を動かすことはできません。共有者の1人でも協力が得られないと、名義変更や売却は原則できません。後々の手続きの複雑さを考えて、共有名義はお勧めしておりません。ただし、ご本人がどうしてもそうしたいというご要望であれば、ご説明をしたうえで対応しております。
▼国庫帰属制度(相続土地国庫帰属法)
令和5年から施行された制度により、一定の条件下で相続人が不要な土地を国に引き渡すことが可能となりました。ただし、負担金の支払いや除外条件も多く、誰でも使える制度ではありません。※対象は土地のみで建物は対象外。
7. まとめ:親の代で対応しないと、子に重荷が
このように、長年放置された共有不動産は、いざという時に「登記が進まず」「相続人の数が爆発的に増え」「対応が実質不可能」となります。
生前に対処しておけば、遺言書や持分整理などでスムーズに相続が進んだ可能性もあります。
大切なのは、「子どもに負担を残さない」という親の意思決定です。
早めの対策が、家族に安心をもたらします。
(論点)相続放棄後の債権者対応(通知から実務対応までの流れを詳しく解説)

相続放棄をした後、債権者から突然連絡が来て戸惑った経験はありませんか?「もう相続放棄したのに支払わないといけないの?」「何を説明すればいいのか分からない…」といった不安は多くの方が感じるものです。実際には、相続放棄によって法的な支払い義務は消滅しますが、債権者とのやり取りには一定の対応が必要です。本記事では、相続放棄後に債権者から連絡があった場合の対応フローを分かりやすく解説します。文例や注意点も紹介しますので、落ち着いて対処できるようになります。
目次
1.相続放棄とは?債務も引き継がない制度
2.債権者から連絡が来る理由
3.債権者対応の基本的な流れ
4.相続放棄を証明する書類の提出
5.債権者に対して伝えるべき内容と注意点
6.しつこい請求や裁判が来た場合の対応
7.まとめ:相続放棄と誠実な対応が信頼関係を築く鍵
1. 相続放棄とは?債務も引き継がない制度
相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産も債務も一切引き継がない手続きです。家庭裁判所で正式に手続きを行い、受理されることで、最初から相続人ではなかったことになります。そのため、被相続人が抱えていた借金やローン、未払い金などを支払う義務は法的にはありません。
2. 債権者から連絡が来る理由
それにもかかわらず、相続放棄した後に債権者から連絡が来ることは少なくありません。理由は以下の通りです。
・相続放棄の事実を債権者が把握していない
・債権者が他の相続人を探している最中
・形式的に請求通知を全相続人に送っている
つまり、悪意で請求しているわけではなく、情報不足による「確認」の場合が多いのです。
3. 債権者対応の基本的な流れ
相続放棄後に債権者から連絡が来た場合、以下のような対応が基本となります。
① 請求書や連絡内容を確認
② 債権者に「相続放棄済み」である旨を伝える
③ 裁判所の「相続放棄申述受理通知書」のコピーを送付
④ 必要に応じて、内容証明郵便で正式に通知
最初は電話や手紙での連絡でも問題ありませんが、再三請求が続く場合は文書対応に切り替えるのが望ましいです。
4. 相続放棄を証明する書類の提出
債権者には、家庭裁判所から発行される「相続放棄申述受理通知書」のコピーを提出することで対応できます。これは、相続放棄が正式に受理されたことを示す書類です。
・書類は家庭裁判所に請求すれば発行可能
・複数の債権者がいる場合はコピーを複数準備
・送付時には「相続放棄済みのため支払義務なし」の一文を添えると親切です
5. 債権者に対して伝えるべき内容と注意点
債権者には、以下のような内容を簡潔に伝えるのが適切です。
拝啓
貴社からのご請求について確認いたしましたが、当方は令和○年○月○日付で○○家庭裁判所に相続放棄の申述を行い、同年○月○日付で受理されております。
つきましては、被相続人○○○○様の債務に関しましては、一切の支払い義務はございません。
何卒ご了承のほどお願い申し上げます。
敬具
※書面で送る際は、内容証明郵便が望ましいですが、最初は普通郵便でも可です。
6. しつこい請求や裁判が来た場合の対応
相続放棄を証明したにもかかわらず、債権者がしつこく請求を続けたり、訴訟を起こしてきた場合は、以下のように対応します。
・裁判所から訴状が届いたら、放置せず回答書を提出
・相続放棄済みであることを証拠とともに主張
・必要に応じて弁護士や司法書士に相談
通常、相続放棄の証明書を提出すれば訴えは棄却されますが、放置すると判決が出てしまう恐れがあるため、必ず対応しましょう。
7. まとめ:相続放棄と誠実な対応が信頼関係を築く鍵
相続放棄をしたからといって、すべての債権者がその情報を把握しているとは限りません。
誤解や手違いで請求が来ることもありますが、冷静に対応し、相続放棄の事実を伝えれば問題は解決します。
トラブルを未然に防ぐためにも、証拠となる書類の準備と丁寧な説明が大切です。
万が一、請求が過激になったり、法的措置が取られた場合は、専門家に早めに相談することをおすすめします。
(論点)相続放棄したのに遺産がもらえる?例外ケースと注意点をわかりやすく解説

「相続放棄をしたのに遺産を受け取ることはできるのか?」「放棄したあとに財産をもらったら問題になるのでは?」――そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
相続放棄とは、法律上の相続人としての地位を放棄する行為であり、通常は遺産を一切受け取ることができなくなります。
しかし実は、特定の条件下では、放棄した人でも遺産の一部を受け取ることができるケースがあります。
この記事では、具体的な事例を交えながら、相続放棄後でも遺産を受け取れる可能性がある例外ケースについて解説します。
目次
1.相続放棄とは?基本の確認
2.相続放棄後でも遺産を受け取れる4つのケース
3.ケース別:注意すべき税務上のリスク
4.よくある誤解とトラブル例
5.まとめ:放棄後でも可能性はゼロではないが慎重に
1. 相続放棄とは?基本の確認
相続放棄とは、相続人が「一切の財産も義務(借金等)も引き継ぎません」と家庭裁判所に申し出る制度です。これにより、最初から相続人でなかったこととみなされます。
そのため、原則として、放棄した者は遺産を受け取ることができません。
2. 相続放棄後でも遺産を受け取れる4つのケース
ケース1:遺言による遺贈を受けた場合
相続放棄したAさんがいたとしても、被相続人の遺言に「Aに現金100万円を遺贈する」と書かれていれば、Aさんはその100万円を受遺者として受け取れます。
この場合、相続による取得ではないため、相続放棄と矛盾しません。
ケース2:他の相続人全員の同意で遺産をもらった場合
たとえば相続放棄した長男が、親の介護を長年担っていたといった背景がある場合、残った相続人が「少しでも感謝の気持ちとして渡したい」と合意すれば、遺産の一部を贈与できます。
ただしこれは贈与税の対象となる可能性があるため注意が必要です。
ケース3:相続放棄が無効だった場合
申述期限(相続開始から3か月)を過ぎていた
・家庭裁判所で正式な申述がされていなかった
・財産を処分するなどして相続放棄の意思と矛盾する行為をしていた
などの事情があると、相続放棄が認められず、「相続人としての地位が残っていた」と判断され、結果として遺産を受け取ることになるケースもあります。
ケース4:葬儀費用の補填や死後事務の実費精算として支出された場合
相続放棄した人が喪主を務め、葬儀費用を立て替えた場合などに、その費用を遺産から支払うことがあります。
これは遺産の「取得」ではなく、実費精算として認められることが一般的です。
3. ケース別:注意すべき税務上のリスク
相続放棄をした人が、形式上は放棄者でも実質的に遺産を受け取ったとみなされれば、相続税や贈与税が課税されるリスクがあります。
特に「他の相続人からの分け前をもらった」場合は、贈与税の対象となることが多く、税務署からの指摘で発覚することもあるため注意が必要です。
4. よくある誤解とトラブル例
誤解1:「相続放棄しても、兄弟から分けてもらえば問題ない」
→他の相続人の合意があっても、贈与税が課される可能性が高いです。税金対策のつもりがかえって不利になることも。
誤解2:「遺贈なら放棄者でも自由に受け取れる」
→遺贈も相続税の対象ですし、遺留分侵害になるような遺贈は争いの火種にもなり得ます。
トラブル例:親の死後、相続放棄した妹に兄が現金を渡したところ、のちに他の相続人から「不公平だ」と異議が出て、贈与税の申告漏れも判明した――というケースもあります。
5. まとめ:放棄後でも可能性はゼロではないが慎重に
相続放棄をしたからといって、必ずしも一切遺産を受け取れないわけではありません。
遺贈や葬儀費用の補填、他の相続人の同意など、例外的に受け取れるケースは存在します。
しかし、そこには法的・税務的な注意点も多く、慎重な対応が求められます。
特に贈与税や相続税の課税リスクには注意し、可能であれば専門家(司法書士や税理士、弁護士)への相談をおすすめします。
(論点)家庭裁判所ごとの相続放棄手続きの違いとは?郵送・持参・切手の準備まで詳しく解説

相続放棄の申立てを行う際、多くの方が「どの家庭裁判所に提出すればいいのか?」「裁判所によって何か違いがあるのか?」と疑問に感じます。実は、相続放棄の手続きは全国一律のようでいて、各家庭裁判所で若干の違いがあるのが実情です。この記事では、家庭裁判所ごとに異なる点、特に切手の金額や郵送の可否、提出様式の注意点などを中心に解説します。
目次
1.提出先は「被相続人の最後の住所地」を管轄する家庭裁判所
2.家庭裁判所ごとの違いとは?
3.切手の金額の違い
4.提出方法(郵送 vs 持参)の違い
5.電話・窓口対応に差があることも
6.まとめ:事前確認がトラブル回避の鍵
1. 提出先は「被相続人の最後の住所地」を管轄する家庭裁判所
相続放棄の申述書は、被相続人の「最後の住所地」を管轄する家庭裁判所に提出します。
たとえば、亡くなった方が東京都板橋区に住んでいた場合は「東京家庭裁判所・立川支部」ではなく「東京家庭裁判所 本庁」が管轄です。
2. 家庭裁判所ごとの違いとは?
裁判所ごとに下記の点に違いが見られます。
送付用封筒のサイズ指定
問い合わせ対応のスタンス(詳細に教えてくれる裁判所とそうでない裁判所)
3. 切手の金額の違い
最もよくある違いが「郵便切手の金額」です。申述人1名・通知先1カ所であっても、
東京家庭裁判所:84円×4枚+10円×2枚(2025年4月現在)
大阪家庭裁判所:84円×5枚+10円×5枚
札幌家庭裁判所:84円×3枚
といった具合に異なります。これは、裁判所によって通知書の送付方法が異なるためです。必ず各裁判所の公式サイトや電話で最新情報を確認しましょう。
4. 提出方法(郵送 vs 持参)の違い
現在、多くの家庭裁判所では郵送での提出が可能です。ただし、以下のような違いもあります。
一部の裁判所では「本人確認のために初回は持参を求める」ことがある
郵送提出の際は「切手と返信用封筒の同封が必須」
また、東京家庭裁判所などは提出後の「受理通知」の送付も行き届いており安心です。
5. 電話・窓口対応に差があることも
地方裁判所では窓口が空いていることが多く、丁寧に教えてもらえるケースが多い
大都市の家庭裁判所では、基本的な案内にとどまり詳細はWeb参照を促されることも
いずれにしても、**「必ず裁判所名+相続放棄+切手」で検索するか、事前に電話確認」**するのが最善策です。
6. まとめ:事前確認がトラブル回避の鍵
相続放棄の手続きは、表面上は全国共通ですが、細部では家庭裁判所ごとに違いがあります。
特に切手の金額や提出方法、必要書類の詳細などは必ず各裁判所で確認しましょう。
せっかく期限内に提出しても、書類不備で受理されなければ意味がありません。円滑な手続きのためには、「情報収集と慎重な準備」が何よりも大切です。
(論点)相続放棄申述書の記入例と注意点(実際の記載方法をわかりやすく解説)

相続放棄をするためには、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出する必要があります。しかし、申述書の書き方には独特のルールや注意点があり、記載ミスがあると受理されない可能性もあるため、慎重に作成する必要があります。本記事では、実際の相続放棄申述書の記入例をもとに、各欄の意味や書き方、記入時に気をつけるべきポイントをわかりやすく解説します。これから相続放棄の手続きを行う方や、ご自身で書類を作成したいと考えている方にとって、実務に役立つ内容です。
目次
1.相続放棄申述書とは
2.記入例:相続放棄申述書の具体的な書き方
3.記入時に注意すべきポイント
4.添付書類と提出先について
5.まとめ:申述書作成は慎重に進めよう
1. 相続放棄申述書とは
相続放棄申述書とは、相続人が相続を放棄する意思を家庭裁判所に伝えるための正式な書面です。
この申述書を裁判所に提出し、受理されることで、法律上「初めから相続人ではなかった」とみなされます。
申述書は家庭裁判所のホームページから入手でき、基本的には手書きでの記入が求められます。
2. 記入例:相続放棄申述書の具体的な書き方
記入例1:申述人が成人の場合

以下は、記入例に基づいた各項目の記載方法です。
【申述人】
氏名:山田 太郎
住所:〒123-4567 東京都千代田区○○1-2-3
生年月日:昭和55年4月1日
職業:会社員
【被相続人】
氏名:山田 一郎(申述人の父)
本籍:東京都千代田区○○1-2-3
最後の住所:同上
死亡日:令和6年3月1日
死亡時の住所:同上
【申述の趣旨】
「私は、上記被相続人の相続について、民法第939条により相続を放棄します。」
【申述の理由】
「被相続人には多額の債務があることが判明したため。」
このほか、家庭裁判所の指定様式には「相続関係」「他の相続人の有無」「遺言書の有無」などの欄がありますので、漏れなく記入します。
3. 記入時に注意すべきポイント
消せるボールペンや鉛筆の使用はNG:記入は必ず黒のボールペン等で行います。
誤字脱字は訂正印を使用:訂正がある場合は、訂正印を押して正確に直します。
申述理由は簡潔に書く:「借金が多いため」「遺産を望まないため」などでもOK。
被相続人との関係に誤記がないか要確認:例:父、母、兄、配偶者など。
4. 添付書類と提出先について
申述書の提出には以下の書類が必要です:
相続放棄申述書(正本+コピー)
被相続人の戸籍(死亡の記載のある除籍謄本)
申述人の戸籍(被相続人との関係がわかるもの)
申述人の住民票
郵便切手(裁判所によって異なるので確認が必要)
提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。郵送でも受け付けている裁判所が多いため、遠方の場合は郵送での提出も検討できます。
5. まとめ:申述書作成は慎重に進めよう
相続放棄申述書は、相続放棄の意思を法的に明確にするための非常に重要な書類です。
形式や記載内容に不備があると受理されないリスクがあるため、細かい部分まで丁寧に確認することが大切です。
申述書の記入に不安がある場合や、相続関係が複雑な場合は、司法書士や弁護士といった専門家の助けを借りることも視野に入れましょう。
正しい手続きを踏むことで、自分自身を不必要な負債から守ることができます。
(論点)相続放棄の影響とは?判断前に知っておきたい基礎知識と注意点

相続が発生した際、借金や負の財産が多い場合に「相続放棄」という選択肢を検討する方も少なくありません。しかし、相続放棄は一度手続きを行うと取り消すことができず、また他の相続人や周囲の人間関係にも思わぬ影響を及ぼすことがあります。この記事では、「相続放棄の影響」について、制度の概要から、判断に迷いやすいポイント、放棄後の生活や他の相続人への影響まで、分かりやすく解説します。相続放棄を検討している方、親族の死後に借金の請求を受けた方、または司法書士・弁護士に相談する前に基本知識を整理したい方におすすめの内容です。
目次
1.相続放棄とは何か?
2.相続放棄のメリット・デメリット
3.他の相続人や家族への影響
4.相続放棄後に起こりやすいトラブル
5.相続放棄の判断時に気をつけるべき点
6.まとめ:相続放棄は冷静な判断がカギ

1. 相続放棄とは何か?
相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産を一切受け取らないと家庭裁判所に申し立てることで、法律上は「初めから相続人ではなかった」ものとみなされる制度です。借金や負債が多い場合、相続人がその債務を背負わないための重要な選択肢です。相続開始を知ってから原則3か月以内に手続きをしなければなりません。
2. 相続放棄のメリット・デメリット
メリット
借金などのマイナス財産を引き継がずに済む
金融機関や債権者からの請求を法的に拒否できる
遺産分割協議に関わる必要がなくなる
デメリット
プラスの財産(不動産や預貯金など)も一切受け取れない
一度放棄すると原則として取り消せない
親族間で誤解や摩擦が生じることがある
3. 他の相続人や家族への影響
相続放棄をすると、自分が法定相続人から外れるため、次順位の相続人(兄弟姉妹や甥姪など)に相続権が移ります。結果として、思いがけず遠縁の親族に負債の連絡が届く場合もあり、トラブルの火種となることも。また、複数人で相続放棄を行った場合、最終的に誰が負債を背負うか分からない「相続リレー」のような状況になることもあります。
4. 相続放棄後に起こりやすいトラブル
放棄後に、放棄した人が遺品整理や家の管理を行っていたため、債権者から「相続の意思があった」と誤解される
他の相続人に放棄の事実を伝えず、後からトラブルになる
亡くなった方の家に住んでいた配偶者や親族が「名義変更できない」「立ち退きを求められた」などの問題に直面する
5. 相続放棄の判断時に気をつけるべき点
遺産の全体像(資産・負債の両方)をできるだけ早く把握する
3か月の熟慮期間を過ぎると相続を承認したものとみなされる可能性があるため、迅速な対応が必要
「一部の財産だけを引き継ぐ」ことは原則として認められていない
家庭裁判所への申述書の記載内容に不備があると受理されない場合があるため、専門家に相談するのが安心
6. まとめ:相続放棄は冷静な判断がカギ
相続放棄は、借金の負担を避けるための有効な手段ですが、その影響は想像以上に広範囲に及びます。自分自身だけでなく、他の親族の生活や感情にも波及する可能性があるため、冷静かつ慎重に判断する必要があります。相続財産の全体を調査し、法律的な知識を持った専門家に相談しながら、後悔のない選択を心がけましょう。
(論点)2024年4月1日施行!相続登記の義務化と期限、相続放棄時の注意点

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。これにより、相続が発生したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならず、違反した場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。また、相続放棄をした場合でも、登記名義が変更されないと義務違反とみなされるケースがあり、注意が必要です。本記事では、相続登記の義務化の背景や具体的な手続き、相続放棄時の対応策について詳しく解説します。
目次
1.相続登記の義務化とは?
2.相続登記の期限と罰則
3.相続登記の具体的な手続き
4.相続放棄時の注意点
5.まとめ

1. 相続登記の義務化とは?
なぜ義務化されたのか?
これまで相続登記は任意でしたが、その結果、所有者不明土地が増加し、不動産の管理や活用が困難になっていました。この問題を解決するため、国は2024年4月1日から相続登記を義務化しました。
義務化の対象者
不動産を相続したすべての相続人が対象となります。共同相続の場合でも、代表者が登記を行わなければなりません。
2. 相続登記の期限と罰則
期限
相続登記は、相続が発生したことを知った日から3年以内 に完了しなければなりません。
罰則
期限内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料 が科される可能性があります。ただし、正当な理由がある場合は免除されることもあります。
3. 相続登記の具体的な手続き
必要な書類
相続登記を行うには、以下の書類を準備する必要があります。
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのすべて)
相続人全員の戸籍謄本
相続人の住民票
固定資産税評価証明書
登記事項証明書
遺産分割協議書(必要な場合)
遺言書(ある場合)
登記申請の方法
1.法務局へ申請:不動産の所在地を管轄する法務局に必要書類を提出します。
2.申請書の作成:法務局の窓口またはオンラインで申請書を作成します。
3.登録免許税の納付:固定資産税評価額に応じた税額を納付します。
4.登記完了の確認:申請後、法務局から登記完了証明が発行されます。
4. 相続放棄時の注意点
相続放棄しても登記義務が発生する?
相続放棄をした場合でも、不動産の登記名義が変更されないままだと義務違反になる可能性があります。なぜなら、相続放棄をしても、名義変更を行わないと登記上は被相続人の名義のままとなるためです。
「相続人不存在」手続きを進める必要がある
相続放棄をした場合、次のような対応が必要です。
1.家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う
2.法務局で「相続人不存在」の手続きを申請する
3.相続財産管理人の選任(必要な場合)
相続財産管理人が選任されると、不動産は最終的に国庫へ帰属するか、新たな相続人へ引き継がれます。
5. まとめ
相続登記の義務化により、相続人は3年以内に登記を完了させる必要があります。違反すると10万円以下の過料が科される可能性があるため、早めの対応が重要です。また、相続放棄をしても登記の義務がなくなるわけではないため、適切な手続きを行いましょう。相続登記や相続放棄について不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
(論点)遺産分割協議書の正確な作成とは?記載漏れや相続人の押印確認の重要性

相続手続きを進める上で、遺産分割協議書の作成は非常に重要です。記載漏れや相続人の押印が不完全な場合、後々のトラブルの原因になりかねません。本記事では、遺産分割協議書を作成する際の注意点やポイントを詳しく解説し、スムーズな相続登記へとつなげる方法を紹介します。
目次
1.遺産分割協議とは?
2.遺産分割協議書の作成時に注意すべきポイント
記載漏れを防ぐ方法
相続人全員の押印と実印の重要性
3.遺産分割協議書の記載内容
必要な記載事項
書き方の注意点
4.遺産分割協議の無効リスク
相続人の署名押印がない場合
虚偽の情報が含まれている場合
5.まとめ

1. 遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった方)の財産を相続人がどのように分けるかを話し合い、合意することです。法定相続分に従うか、相続人の間で合意した内容で分割するかは、協議によって決定します。遺産分割協議が成立すると、その内容を明文化した「遺産分割協議書」を作成し、相続登記や銀行手続きに活用します。
2. 遺産分割協議書の作成時に注意すべきポイント
記載漏れを防ぐ方法
遺産分割協議書には、すべての相続財産を正確に記載する必要があります。特に、以下のような財産の記載漏れに注意しましょう。
不動産:固定資産税評価証明書や登記事項証明書を取得し、すべての不動産をリストアップする。
預貯金:銀行口座の一覧を作成し、銀行名・支店名・口座番号を明記する。
株式・投資信託:証券会社の取引明細を確認し、金融資産も含める。
負債:住宅ローンや借入金がある場合、その負担者を明確にする。
相続人全員の押印と実印の重要性
遺産分割協議書は、相続人全員の合意を証明する重要な書類です。そのため、以下のポイントに注意してください。
全相続人の署名・押印:1人でも署名・押印が欠けていると無効になります。
実印の使用:遺産分割協議書には、認印ではなく実印を使用し、印鑑証明書(発行から3か月以内)を添付する。
未成年の相続人がいる場合:法定代理人(親権者や未成年後見人)の同意が必要。
3. 遺産分割協議書の記載内容
必要な記載事項
遺産分割協議書には、以下の内容を正確に記載する必要があります。
被相続人の情報(氏名、生年月日、死亡日、本籍)
相続人の情報(氏名、住所)
相続財産の詳細(不動産、預貯金、株式などの具体的な内容)
各相続人の取得割合や内容(誰が何を相続するのかを明確にする)
特記事項(負債の処理や代償分割など)
相続人全員の署名・押印(実印)と印鑑証明書の添付
書き方の注意点
不動産の記載は登記事項証明書の記載と一致させる(地番や家屋番号を正確に)
預貯金や株式は具体的な数値を記載する
「その他一切の財産」などの抽象的な表現は避ける(財産の特定ができないため)
4. 遺産分割協議の無効リスク
相続人の署名押印がない場合
相続人の署名や押印が1人でも欠けると、遺産分割協議自体が無効になります。この場合、相続登記や銀行手続きが進められません。
虚偽の情報が含まれている場合
例えば、相続財産の一部を意図的に隠していた場合、後から発覚すると遺産分割協議の無効が争われる可能性があります。また、相続人の一部を意図的に除外すると、法的なトラブルに発展するリスクがあります。
5. まとめ
遺産分割協議書の作成は、相続手続きを円滑に進めるために不可欠なステップです。以下のポイントを押さえながら、正確に作成しましょう。 ✅ 記載漏れを防ぐために、すべての財産をリストアップする ✅ 相続人全員の署名・押印(実印)を確認する ✅ 遺産分割協議書には、登記簿や預貯金の詳細を正確に記載する ✅ 署名押印の漏れがないよう、確認を徹底する ✅ 虚偽の情報を記載しない(後のトラブルを防ぐ)
適切な遺産分割協議を行うことで、スムーズな相続登記が可能になります。不安がある場合は、司法書士や弁護士に相談し、確実な手続きを進めましょう。
(論点)相続登記で「公衆用道路」の漏れを防ぐための固定資産税評価証明書・名寄帳の活用法と評価額の算出方法

相続登記を進めるうえで見落としがちなのが、固定資産税が課税されていない不動産、特に「公衆用道路」の存在です。納税通知書には課税対象の不動産しか記載されないため、これに頼って登記対象を確定すると、相続登記の対象不動産に漏れが生じる可能性があります。特に公衆用道路は、評価額が「0円」と表示されていることが多く、その存在に気づきにくいのが現実です。本記事では、相続登記において公衆用道路の見落としを防ぐために取得すべき書類や、評価額が「0円」とされている土地の適切な評価方法について詳しく解説します。
目次
1.公衆用道路とは?
2.相続登記でなぜ「名寄帳」や「固定資産税評価証明書」が必要なのか
3.納税通知書だけでは不十分な理由
4.評価額が0円の場合の対応方法
5.評価額の算出:2つの方法
6.事前確認の重要性とまとめ

1. 公衆用道路とは?
「公衆用道路」とは、登記簿上で用途が「公衆用道路」となっている土地を指します。私道でありながらも、通行に供されているものが該当し、多くは無償で地域住民や公衆に開放されています。こうした土地は公共性が高いため、固定資産税が課税されない場合が多く、評価額も「0円」と表示されるのが一般的です。
2. 相続登記でなぜ「名寄帳」や「固定資産税評価証明書」が必要なのか
相続登記にあたって、所有しているすべての不動産を正確に把握することは極めて重要です。「名寄帳」や「固定資産税評価証明書」は、市町村が管理する不動産情報を一覧にした書類であり、納税通知書に載っていない非課税の土地、すなわち「公衆用道路」なども記載されます。これらの書類を取得することで、不動産の漏れを防ぎ、相続登記を漏れなく進めることができます。
3. 納税通知書だけでは不十分な理由
納税通知書には、固定資産税が課される不動産しか記載されていません。そのため、課税対象外となる公衆用道路や共有名義の私道、場合によっては山林などが記載されていないことがあります。納税通知書だけを基に相続登記を行うと、こうした不動産の存在に気づかず、将来のトラブルや再登記の手間につながる恐れがあります。
4. 評価額が0円の場合の対応方法
名寄帳や評価証明書で「公衆用道路」が記載されていたとしても、その評価額が「0円」である場合、登記手続きで問題となることがあります。登録免許税の算出には評価額が必要なため、「0円」では計算できないのです。そこで必要になるのが、「近傍宅地の価格」を参考にした評価額の算出です。
5. 評価額の算出:2つの方法
評価額が「0円」の場合、以下の2つの方法で評価額を算出することが可能です。
算出式は、近傍宅地の1㎡あたりの価格 × 面積 × 0.3 です(※乗率0.3は通常の私道評価の基準)。
この計算にあたり、近傍宅地の価格を取得するには次の2通りの方法があります。
① 法務局に申請して価格調査を依頼する方法
管轄法務局に申請し、評価額が「0円」とされている土地の近隣宅地の価格調査を依頼します。法務局は適正な資料に基づいて評価額の参考情報を出してくれるため、正確性と公的な根拠が伴う方法です。時間がかかることもありますが、確実性を求める場合には推奨されます。
② 市町村(役場)で近傍宅地の金額を記入してもらう方法
一部の自治体では、申請者が申し出ることで、固定資産税評価証明書の備考欄などに近傍宅地の評価額を記載してくれることがあります。この方法は法務局よりもスピーディーで、自治体によっては柔軟に対応してくれることもあります。
6. 事前確認の重要性とまとめ
上記2つの方法のどちらが適用できるかは、地域や法務局・市町村によって異なります。
そのため、登記申請前に必ず管轄法務局に相談し、どの方法で評価額を算出するか確認することが重要です。
まとめ
・相続登記では、「公衆用道路」など非課税の土地に注意が必要です。
・納税通知書だけでは不動産の全容は把握できないため、「名寄帳」や「固定資産税評価証明書」の取得が必須です。
・評価額が「0円」の場合には、近傍宅地価格×面積×0.3で評価額を算出し、登録免許税を算定します。
・法務局への申請、市町村での記入、どちらの方法が使えるかを事前に確認しましょう。
・見落としや再登記の手間を防ぐためにも、初めの一歩から丁寧に準備を行うことが、円滑な相続登記の鍵となります。
(論点)高齢者の生命保険を活用した相続対策(メリットと注意点)

相続対策は、多くの高齢者にとって重要な課題です。特に、生命保険を活用することで、効果的な相続税対策や円滑な財産承継が可能となります。本記事では、高齢者が生命保険を用いた相続対策を行う際のメリットと注意点について詳しく解説します。
目次
1.生命保険を活用した相続対策のメリット
1.1 相続税の非課税枠の活用
1.2 受取人固有の財産としての保険金
1.3 納税資金の迅速な確保
1.4 代償分割への活用
2.高齢者が生命保険に加入する際のポイント
2.1 終身保険の選択
2.2 一時払い終身保険の活用
2.3 高齢者でも加入可能な保険商品の検討
3.生命保険を活用する際の注意点
3.1 早期解約による元本割れのリスク
3.2 受取人の指定と非課税枠の関係
3.3 契約形態による課税方法の違い
4.まとめ
1. 生命保険を活用した相続対策のメリット
1.1 相続税の非課税枠の活用
生命保険の死亡保険金には、法定相続人の数に応じた非課税枠が設けられています。具体的には、「500万円 × 法定相続人の数」までの金額が非課税となります。例えば、法定相続人が3人の場合、1,500万円までの死亡保険金が非課税となり、相続税の負担軽減に寄与します。
1.2 受取人固有の財産としての保険金
死亡保険金は、受取人固有の財産とみなされ、遺産分割協議の対象外となります。これにより、特定の相続人に確実に財産を渡すことが可能となり、遺産分割におけるトラブルの防止にもつながります。
1.3 納税資金の迅速な確保
相続税の納税期限は被相続人の死亡後10か月以内と定められています。生命保険の死亡保険金は、請求手続きを行うことで比較的早期に受け取ることができ、納税資金として活用することが可能です。
1.4 代償分割への活用
不動産など分割が難しい財産が相続財産の大部分を占める場合、特定の相続人がその財産を取得し、他の相続人に対して代償金を支払う「代償分割」が行われることがあります。この際、生命保険金を代償金の支払いに充てることで、円滑な遺産分割が可能となります。
2. 高齢者が生命保険に加入する際のポイント
2.1 終身保険の選択
相続対策として生命保険を活用する場合、保障が一生涯続く終身保険が適しています。定期保険に比べて保険料は高くなりますが、確実な保障を得ることができます。
2.2 一時払い終身保険の活用
一時払い終身保険は、保険料を一括で支払うことで、手元の現預金を生命保険に置き換えることができます。これにより、相続財産の現預金部分を減少させ、相続税の課税対象額を抑える効果が期待できます。
2.3 高齢者でも加入可能な保険商品の検討
近年では、80代や90代でも加入可能な一時払い終身保険が登場しています。高齢であっても、相続対策として生命保険の活用を検討する価値があります。
3. 生命保険を活用する際の注意点
3.1 早期解約による元本割れのリスク
終身保険を早期に解約すると、解約返戻金が支払った保険料を下回る、いわゆる元本割れが生じる可能性があります。そのため、当面使用予定のない余剰資金で加入することが重要です。
3.2 受取人の指定と非課税枠の関係
生命保険金の非課税枠は、受取人が法定相続人である場合に適用されます。受取人を法定相続人以外に指定すると、非課税枠が適用されず、相続税の負担が増加する可能性があります。
(論点)生前贈与 vs. 相続:どちらが得か?

生前贈与と相続は、財産を次世代に引き継ぐ方法としてどちらも有効ですが、税負担や手続きの面で違いがあります。
それぞれのメリット・デメリットを比較し、どちらが「得」かを考えます。
目次
1. 税制面の比較
2. コスト面の比較
3. トラブルリスクの比較
4. どちらが得か?
結論
1. 税制面の比較
(1) 贈与税 vs. 相続税
生前贈与
贈与税は累進課税で税率が高い(10%〜55%)。
年間110万円までなら基礎控除があり、非課税で贈与できる。
2024年から**「相続前3年以内の贈与」が「相続前7年以内の贈与」**に拡大し、相続財産に加算される範囲が広がったため、短期的な贈与の節税効果が薄れた。
特例贈与(住宅取得資金、教育資金、結婚・子育て資金など)を活用すると税負担が軽くなる。
相続
相続税の基礎控除額は 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数) と大きい。
相続税の税率も累進課税(10%〜55%)だが、控除の影響で相対的に贈与税より負担が少ない場合が多い。
配偶者は1億6,000万円または法定相続分まで相続税が非課税(配偶者控除)。
小規模宅地の特例(最大80%評価減)を活用すれば、不動産相続時の評価額を大きく下げられる。
2. コスト面の比較
生前贈与
贈与契約書の作成費用がかかる。
登録免許税や不動産取得税がかかる(不動産を贈与する場合)。
受贈者(もらう側)が税負担をするため、資金の準備が必要。
相続
相続発生後の申告・登記費用がかかる。
不動産取得税はかからないが、登録免許税は必要(ただし贈与より安い)。
遺産分割協議が必要になる場合があり、手続きが煩雑になることも。
3. トラブルリスクの比較
生前贈与
他の相続人との不公平感が生まれやすい(特に遺留分減殺請求の対象になった場合)。
受贈者の財産管理能力が問われる(贈与した財産を無駄遣いされる可能性)。
認知症発症後の贈与は無効になる可能性がある(意思能力が必要)。
相続
遺産分割争いが起こりやすい(遺言がない場合、相続人同士の話し合いが難航することがある)。
遺言書を作成することである程度コントロール可能(遺留分対策も含め)。
家族関係が悪化していると、スムーズに分割できないリスク。
4. どちらが得か?

結論
税負担だけを考えるなら相続のほうが有利(特に小規模宅地の特例や配偶者控除を活用できる場合)。
時間をかけて計画的に贈与を行えば節税できる(毎年110万円ずつの贈与や特例贈与を活用)。
財産のコントロールを考えるなら生前贈与も有効(相続争いを避けるために事前に渡す)。
最適な方法は、財産の種類・家族構成・税制改正の影響を考慮して決めるべきです。
(論点)会社の相続と不動産の問題

2024年4月から相続登記の義務化が始まり、不動産相続に関する関心が高まっています。特に、会社経営者が亡くなった際の株式や不動産の相続について、多くの方が検索しているようです。この記事では、会社の相続に関する問題点や対策について詳しく解説します。
目次
1.会社の相続とは?
2.代表者が亡くなった場合の対応
3.株式の相続とその影響
4.不動産相続の問題点
5.相続税と評価額の関係
6.会社の相続対策
7.まとめ
1. 会社の相続とは?
会社の相続とは、会社の代表者や主要株主が亡くなった際に、その地位や資産が相続人に引き継がれることを指します。
法人自体は存続するため、基本的には後任の代表者を選任すれば業務を継続できます。しかし、亡くなった代表者が株主でもあった場合、株式の相続が発生し、会社の経営に大きな影響を与える可能性があります。
2. 代表者が亡くなった場合の対応
代表者が亡くなった場合、まず会社として新たな代表者を選任する必要があります。
一般的には、取締役会を開き、残った取締役の中から新たな代表を決定します。ただし、株式の相続問題が未解決の場合、株主総会の議決権に影響を及ぼすため、慎重な対応が求められます。
3. 株式の相続とその影響
亡くなった方が会社の大株主であった場合、その株式は相続人に分配されることになります。相続人が複数いる場合、法定相続分に従って株式が分けられることが多いですが、これは会社の経営にとって問題を引き起こす可能性があります。
例えば、相続人同士の意見が対立した場合、株主総会での意思決定が難しくなることがあります。
また、相続人の一人が会社経営に関心がない場合、不本意な売却や経営方針の対立が生じる可能性もあります。そのため、できる限り株式を一人に集約するか、事前に相続対策を講じることが重要です。
4. 不動産相続の問題点
会社が不動産を所有している場合、不動産の相続も重要な課題となります。
会社名義の不動産であれば法人の所有権に変更はありませんが、代表者個人名義の不動産であった場合は相続の対象となります。
特に、不動産の評価額が高額になると、相続税の負担が大きくなるため、事前に評価額を把握し、適切な対策を講じることが求められます。
5. 相続税と評価額の関係
相続税の計算において、不動産の評価額は重要な要素となります。不動産の評価には以下の2つの方法が用いられます。
固定資産税評価額:固定資産税の計算に使用される評価額で、相続登記時の登録免許税の基準となります。
相続税評価額:路線価や倍率方式に基づいて算出され、相続税の課税標準となります。
相続税評価額の方が一般的に高くなるため、相続税の負担を抑えるためには、不動産の分割や法人への移転などの対策を検討する必要があります。
6. 会社の相続対策
会社の相続問題をスムーズに解決するためには、事前の準備が不可欠です。具体的な対策として、以下の方法が考えられます。
1.事業承継計画の作成
事前に後継者を決定し、経営権の移行を計画的に進める。
2.株式の集中化
生前贈与や持株会の活用により、株式を後継者に集約する。
3.相続税対策
生命保険の活用や不動産の法人化により、相続税負担を軽減する。
4.遺言書の作成
明確な遺言を残し、株式の承継をスムーズにする。
会社の相続は、代表者の変更だけでなく、株式や不動産の相続問題を伴うため、慎重な対応が求められます。
特に、株式の分散による経営権の不安定化や、不動産相続に伴う税負担の増加が大きな課題となります。
7. まとめ
事前に適切な相続対策を講じることで、会社の安定した存続を確保し、円滑な事業承継を実現することができます。会社経営者の方は、早めに専門家へ相談し、相続対策を進めることをおすすめします。
(論点)相続登記における遺産分割協議書の必要性と費用負担の現状

2024年4月の相続登記義務化により、不動産の相続登記に関する関心が高まっています。特に「不動産 相続 遺産分割協議書 必要」という検索ワードが伸びており、多くの人が相続登記の手続きについて疑問を抱えていることがわかります。本記事では、遺産分割協議書が必要なケースと不要なケースの違い、また相続登記の費用負担の現状について詳しく解説します。
目次
1.相続登記における遺産分割協議書の必要性
2.相続登記の義務化と影響
3.相続登記の費用負担
4.相続登記の費用負担が増加している背景
5.費用を抑えるための対策
まとめ

1. 相続登記における遺産分割協議書の必要性
遺産分割協議書が必要なケース
相続人が複数いる場合に、特定の相続人が不動産を相続する場合は、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の合意を得る必要があります。これがないと、不動産の相続登記を単独で行うことができません。
遺産分割協議書が不要なケース
一方で、以下の場合には遺産分割協議書は不要です。
法定相続分通りに相続人全員で登記する場合
相続人が一人だけの場合
有効な遺言書がある場合
このように、ケースによって遺産分割協議書の必要性が変わるため、多くの人が「自分の場合は必要か?」と調べていると考えられます。
2. 相続登記の義務化と影響
2024年4月の相続登記義務化により、不動産の相続が発生した場合、相続を知った日から3年以内に登記をしなければならないとされました。
これに違反すると10万円以下の過料が科される可能性があります。この影響で、多くの人が「相続登記に何が必要か?」を検索するようになったと考えられます。
3. 相続登記の費用負担
登録免許税の計算方法
登録免許税は「固定資産税評価額 × 0.4%」で計算されます。不動産の評価額が高いほど税額も増えます。
司法書士報酬の相場
司法書士に依頼する場合、報酬の相場は5万円~10万円程度(案件の複雑さにより異なる)です。
その他の必要書類と取得費用
戸籍謄本・住民票の取得費用
固定資産評価証明書の取得費用
これらを含めると、相続登記にかかる費用は10万円以上になることも珍しくありません。
4. 相続登記の費用負担が増加している背景
経済的な影響
近年の物価上昇や経済的な不安から、相続登記にかかる費用を抑えようとする人が増えています。「自力でできるか?」と調べる人が増加しているのも、こうした背景があると考えられます。
空き家・低収益不動産の増加
相続した不動産が活用されておらず、固定資産税が発生するだけの「負動産」となっているケースも増えています。そのため、費用をかけてまで登記をするかどうか迷う人も多いでしょう。
相続登記の放置からの対応
これまで相続登記をせずに放置していた人が、義務化により急いで手続きを進めざるを得なくなっています。このため、検索ワードとして「遺産分割協議書 必要」が伸びていると考えられます。
5. 費用を抑えるための対策
自力での相続登記の進め方
自分で相続登記をする場合、法務局の**「相続登記の申請書作成支援サービス」**を利用することで、書類の準備をスムーズに進めることができます。
費用を抑えるためのポイント
・登録免許税の軽減措置が適用されるか確認する
・司法書士に依頼せず、自分で登記申請する
・必要書類を早めに準備し、余計な手続き費用を発生させない
専門家に依頼するメリット
ただし、登記手続きには専門知識が必要であり、書類の不備があると登記が完了しないリスクもあります。相続人が多い場合や、遺産分割協議が必要な場合は、専門家に相談することでスムーズに進められるでしょう。
まとめ
「不動産 相続 遺産分割協議書 必要」という検索ワードが伸びている背景には、相続登記の義務化による関心の高まり、費用負担への不安、手続きを自力で行おうとする人の増加があると考えられます。
費用を抑えながら確実に登記を進めるためには、自分のケースに応じた必要書類を確認し、必要に応じて専門家のサポートを受けることが重要です。
(論点)相続登記と相続税における不動産評価額の違いとは?

相続が発生した際、不動産を引き継ぐには相続登記が必要となります。その際、「登録免許税」が発生しますが、その課税標準となるのは「固定資産税評価額」です。一方、相続税の計算では異なる評価方法が適用され、結果として異なる評価額が算出されます。本記事では、相続登記と相続税における不動産評価額の違いを詳しく解説し、それぞれの評価基準や計算方法についてご紹介します。
目次
1.相続登記の登録免許税における不動産評価額
2.相続税の計算における不動産評価額
3.固定資産税評価額と相続税評価額の違い
4.実務における影響
5.まとめ
1. 相続登記の登録免許税における不動産評価額
相続登記を行う際に納める「登録免許税」は、不動産の「固定資産税評価額」を基準として計算されます。
固定資産税評価額とは?
>各市町村が毎年1月1日時点の評価額を基に算定。
>固定資産税課税明細書や固定資産評価証明書で確認可能。
>市場価格より低めに評価されることが多い。
登録免許税の計算方法
>課税標準額(固定資産税評価額)× 0.4%(相続登記の場合)
例えば、固定資産税評価額が1,000万円の土地であれば、登録免許税は 4万円(1,000万円 × 0.4%) となります。
2. 相続税の計算における不動産評価額
相続税を計算する際の不動産評価額は、国税庁の「財産評価基本通達」に基づいて決められます。
(1) 路線価方式(市街地の土地)
>国税庁が定める**路線価(1㎡あたりの価格)**を基に評価。
>計算式:土地の面積 × 路線価 × 補正率
>市場価格の約80%程度になることが多い。
(2) 倍率方式(郊外の土地)
>固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を掛けて算出。
>計算式:固定資産税評価額 × 倍率
(3) 建物の評価
>建物は固定資産税評価額をそのまま使用。
>土地と異なり、固定資産税評価額=相続税評価額となる。
3. 固定資産税評価額と相続税評価額の違い

4. 実務における影響
(1) 登録免許税の計算は相続税評価額より低め
相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額を基準とするため、市場価格や相続税評価額よりも低く算定されることが多いです。
(2) 相続税の評価額は固定資産税評価額より高くなる傾向
特に市街地の土地の場合、固定資産税評価額よりも高い路線価が使われるため、相続税評価額が高くなりやすいです。
(3) 節税対策のポイント
>小規模宅地等の特例を活用すれば、相続税評価額を最大80%減額できる可能性あり。
>土地の分筆や利用方法の変更で評価額を抑えることも検討。
5. まとめ
相続登記の際の登録免許税の課税標準は「固定資産税評価額」、一方で相続税の計算には「相続税評価額」が用いられます。土地の評価方法として、相続税では「路線価方式」や「倍率方式」が適用されるため、相続税評価額のほうが高くなることが一般的です。
そのため、相続登記時の税負担は比較的軽いものの、相続税を計算する際は慎重に評価方法を確認し、節税対策を検討することが重要です。特に、相続税の負担を抑えるためには、小規模宅地の特例の活用や評価額を下げるための工夫が有効となります。
相続に関する税金は複雑なため、具体的なケースについては専門家に相談することをおすすめします。
(論点)遺産相続で「揉める」「縁を切る」検索ワードが急増する背景とは

近年、インターネット検索において「遺産相続 揉める 縁 切る」というキーワードの検索数が急増している。特に、1500%という驚異的な増加率を記録したことが注目されている。この急激な検索数の伸びは、単なる偶然ではなく、社会的・経済的要因が絡み合った結果と考えられる。本稿では、なぜこのキーワードが急増しているのか、その背景と理由を探り、今後の対策についても考察する。
目次
1.遺産相続に関するトラブルの増加
2.家族関係の変化と相続意識の変容
3.法改正や社会情勢の影響
4.相続争いを避けるための対策
5.まとめ
1. 遺産相続に関するトラブルの増加
日本において、遺産相続を巡るトラブルは年々増加している。特に、相続財産が不動産中心である場合や、遺言書が不明確である場合に争いが発生しやすい。国税庁の統計によると、遺産分割協議がスムーズに進まず、家庭裁判所に持ち込まれるケースも増加傾向にある。相続に関する裁判件数の増加が、検索キーワードの急増に影響を与えている可能性が高い。
2. 家族関係の変化と相続意識の変容
現代の日本では、核家族化や少子高齢化が進行しており、親族との関係が希薄になりつつある。また、親世代と子世代の価値観の違いも、相続トラブルの原因となっている。昔は「家族全体のために相続を円満に進める」という考え方が主流だったが、近年では「自分が正当な取り分を得るべきだ」という個人主義的な意識が強まっている。特に、兄弟姉妹間で相続分に対する不満が高まり、「縁を切る」という強い言葉が検索される背景になっていると考えられる。
3. 法改正や社会情勢の影響
2019年の相続法改正により、配偶者の居住権が保護されるようになり、遺産分割の方法が変化した。このような法改正がトラブルの増減に影響を与えることは少なくない。また、新型コロナウイルスの影響で家族間のコミュニケーションが増えた一方、遺産問題が顕在化しやすくなったと考えられる。さらに、経済的不安定さが続く中で、相続財産に対する関心が高まり、争いが深刻化するケースも増えている。
4. 相続争いを避けるための対策
相続トラブルを防ぐためには、以下のような対策が有効である。
> 遺言書の作成: 公正証書遺言など、法的に有効な遺言書を作成しておく。
> 事前の家族会議: 相続について話し合い、各相続人の意向を確認する。
> 専門家への相談: 司法書士や弁護士に相談し、適切なアドバイスを受ける。
> 生前贈与の活用: 相続税対策とともに、円滑な資産承継を図る。
これらの対策を講じることで、相続に関するトラブルを未然に防ぎ、家族関係の悪化を避けることが可能になる。
5. まとめ
「遺産相続 揉める 縁 切る」という検索キーワードの急増は、遺産相続を巡るトラブルの増加や、家族関係の変化、社会情勢の影響によるものと考えられる。特に、経済的不安や価値観の変化が相続争いを激化させる要因となっている。相続トラブルを未然に防ぐためには、適切な法的手続きを踏むことや、家族間のコミュニケーションを大切にすることが不可欠である。今後も、相続に関する意識改革と法的対策の強化が求められるだろう。
(論点)デジタル遺品の整理と管理方法

近年、インターネットやSNSの普及により、多くの人々がオンライン上に個人情報やデータを保有するようになりました。これに伴い、死後に残される「デジタル遺品」と呼ばれるオンライン資産の整理や管理が新たな課題として浮上しています。
家族が知らないSNSアカウントやクラウド上のデータ、オンラインサービスの契約情報などがそのまま残ることは、トラブルを引き起こす可能性もあります。
本稿では、デジタル遺品の具体的な整理方法と、その対策について解説します。
目次
1.デジタル遺品とは何か
2.デジタル遺品が問題となる背景
3.デジタル遺品整理の重要性
4.デジタル遺品の管理方法
4.1 パスワード管理アプリの活用
4.2 遺言書への記載
4.3 サービス提供会社の遺品対応サービスの活用
5.デジタル遺品整理に関する法律やガイドラインの現状
6.最後に

1. デジタル遺品とは何か
「デジタル遺品」とは、故人がオンライン上で保持していたデータやアカウント、契約情報などのことを指します。具体的には、SNSやメールアカウント、クラウドストレージ内のデータ、仮想通貨、オンラインバンキングのアカウントなど、デジタル形式で残されたあらゆる情報が含まれます。
現代においては、多くの人が複数のデジタルサービスを利用しており、それらを整理せずに放置してしまうと、死後に遺族がその存在や管理方法に困るケースが多発しています。特に、パスワードやアカウント情報が適切に残されていない場合、遺族がこれらのデジタル遺品にアクセスできず、手続きを進めることが困難になることも少なくありません。
2. デジタル遺品が問題となる背景
デジタル遺品が問題視される背景には、オンラインサービスが広く普及したことが挙げられます。
従来の紙や物理的な財産と異なり、デジタル遺品は目に見えず、手元に残されることが少ないため、遺族がその存在を認識すること自体が難しい場合も多いです。
また、デジタル遺品には様々な価値が含まれており、特に仮想通貨やオンラインストアでのポイント、契約しているサブスクリプションサービスなど、金銭的な価値を持つものも存在します。
さらに、デジタル遺品の処理には個人情報保護の問題も絡んでおり、遺族がアカウントにアクセスできない場合、故人のデータが不正に利用されたり、トラブルを引き起こす可能性があります。
これらの問題を回避するために、生前からデジタル遺品の整理を行うことが重要となっています。
3. デジタル遺品整理の重要性
デジタル遺品を整理することは、遺族の負担を減らし、故人の意志を尊重した形で遺品を管理するために非常に重要です。
SNSアカウントがそのまま放置されると、故人のアカウントがハッキングされたり、悪用されるリスクがあります。
また、残されたメッセージや写真、データは、遺族にとって大切な思い出として整理する必要があります。
さらに、オンラインバンキングや仮想通貨など、デジタル形式で保持されている財産に関しても、適切な管理が行われなければ遺産分割の手続きが滞る可能性があります。
こうした理由から、デジタル遺品を整理することは、現代の相続対策において欠かせない要素となっているのです。
4. デジタル遺品の管理方法
デジタル遺品を適切に管理するためには、以下のような方法が考えられます。
4.1 パスワード管理アプリの活用
多くのデジタル遺品は、パスワードや認証情報が必要なアカウントに関連しています。生前にこれらの情報をまとめて管理するために、パスワード管理アプリを利用することが有効です。
1PasswordやLastPassといったパスワード管理ツールを使えば、全てのアカウント情報を一元管理でき、遺族に引き継ぎやすくなります。
これらのアプリでは、信頼できる人にアクセス権を与える機能もあるため、緊急時に遺族がスムーズにデータにアクセスできるように設定しておくことが可能です。
また、パスワードの変更や更新もリアルタイムで反映されるため、常に最新の情報を管理できます。
4.2 遺言書への記載
遺言書にデジタル遺品に関する指示を記載することも重要です。例えば、どのアカウントを削除すべきか、どのデータを保存すべきか、または誰にそのデジタル資産を譲渡するかといった具体的な内容を遺言書に残しておくことで、遺族がその処理方法に困らなくなります。
ただし、遺言書にはパスワードや認証情報そのものを記載することは避け、管理アプリの存在やアクセス方法のみを記載しておくことが望ましいです。
これにより、プライバシーを保護しながら、遺族に必要な情報を伝えることができます。
※遺言書ではなく、エンディングノートに記載することをお勧めいたします。
4.3 サービス提供会社の遺品対応サービスの活用
多くのSNSやオンラインサービスでは、ユーザーの死後にアカウントを削除したり、メモリアルアカウントとして保存する機能を提供しています。
Facebookでは、故人のアカウントを「追悼アカウント」として残すことができ、Instagramも同様の機能を提供しています。
また、Googleでは「アカウント無効化管理ツール」を使って、一定期間アカウントが使用されなかった場合に、特定の人にデータを譲渡する設定が可能です。
これらの機能を事前に設定しておくことで、遺族がSNSアカウントの扱いに困ることなく、故人の意志に沿った形で管理できるようになります。
5. デジタル遺品整理に関する法律やガイドラインの現状
日本では、デジタル遺品に関する法的なガイドラインや規制はまだ整備途上にあります。これにより、遺族が故人のアカウントやデータにアクセスする権利が明確ではないケースも多く、デジタル遺品の整理が進まないことがあります。
一部の弁護士や司法書士が、デジタル遺品に関する相談を受け付けているほか、専門の業者も増えてきており、こうしたサービスを利用して対策を講じることができます。
また、国や自治体によるガイドラインの整備が進むことが期待されています。
6. 最後に
デジタル遺品の整理と管理は、現代の終活において不可欠な要素となっています。
オンライン上に残されたデータやアカウントは、家族にとって重要な遺産であり、また適切に管理しなければトラブルの元にもなり得ます。
生前からパスワード管理アプリや遺言書を活用し、デジタル遺品の整理を進めておくことで、遺族の負担を軽減し、安心した終活が実現できます。
(論点)遺言書作成前のエンディングノートの意義

――自分の人生と財産を棚卸する大切な作業――
終活が注目される現代、遺言書の作成は相続対策の重要な一環として広く認識されています。しかし、遺言書をいきなり書き始めるのではなく、まずはエンディングノートを作成することが推奨されています。エンディングノートは法的拘束力を持たないものの、自分の人生を振り返り、財産や希望を整理することで、遺言書をより明確かつスムーズに作成する助けとなります。本稿では、遺言書作成前にエンディングノートを活用する意義について考察します。
目次
1.エンディングノートとは何か
2.遺言書との違いと補完関係
3.人生や財産の棚卸としてのエンディングノートの役割
4.エンディングノート作成の具体的なステップ
5.エンディングノートを通じた家族への配慮
6.最後に

1. エンディングノートとは何か
エンディングノートとは、自分の死後に向けて家族や親しい人に伝えたい情報や希望をまとめるためのノートです。内容は、遺言書ほど正式ではなく、自由な形式で書けるため、自分の言葉で気持ちや意思を残せるという特徴があります。
具体的には、自分の財産の状況、葬儀の希望、家族や親しい人へのメッセージ、デジタル遺品の管理方法、臓器提供の意思などを記載します。また、銀行口座や生命保険の契約情報、所有不動産の一覧など、遺族が手続きを進めやすいように具体的な情報も整理できます。
2. 遺言書との違いと補完関係
遺言書とエンディングノートは混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。遺言書は法的な効力を持ち、財産の分配や後継者の指名など、相続に関わる正式な意思表示を行うものです。一方、エンディングノートは法的拘束力がないため、あくまで補助的な役割を果たします。
しかし、この補完関係は非常に重要です。遺言書の作成は法的手続きや正確な表現が求められるため、事前にエンディングノートを作成しておくことで、自分の財産や人生の状況を整理し、遺言書に反映させる内容を明確にできます。エンディングノートを活用することで、漠然としたイメージを具現化し、遺言書作成時の迷いを減らすことができます。
3. 人生や財産の棚卸としてのエンディングノートの役割
エンディングノートを作成する作業は、単なる情報の整理にとどまりません。それは、これまでの自分の人生や現在の財産を「棚卸し」するプロセスでもあります。エンディングノートを通じて、今までの人生で何を大切にしてきたのか、自分の財産がどのように形成されてきたのかを改めて振り返ることができます。
多くの人は、自分の財産や持ち物が具体的にどのような状態になっているかを把握していないことが多いです。エンディングノートを作成する過程で、預貯金や不動産の有無、保険契約などを整理し、記載することにより、遺族が相続手続きで混乱することを防ぐことができます。また、自分の希望や価値観を明確にすることで、どのように遺産を分けるべきか、自分の意思が明確になり、遺言書作成時の参考資料となります。
4. エンディングノート作成の具体的なステップ
エンディングノートを作成する際は、次のステップに従って進めるとスムーズです。
ステップ1: 情報収集
まず、自分の財産に関する情報を収集します。銀行口座、証券口座、不動産、保険契約、借入金などの詳細を確認し、それぞれの管理情報を記載します。これにより、財産状況が一目で把握でき、相続人にとってもわかりやすくなります。
ステップ2: 自分の意思や希望を整理
次に、自分がどのような最期を迎えたいか、葬儀の形態や供養の方法などの希望を整理します。家族へのメッセージや、特に伝えたいことがあれば、それも記載しておくとよいでしょう。
ステップ3: 定期的な見直し
エンディングノートは、一度作成したら終わりではありません。人生の節目や財産の変動に応じて、定期的に内容を見直し、必要があれば修正を行います。これにより、常に最新の情報が反映され、いざというときに遺族が迷うことなく手続きを進められるようになります。
5. エンディングノートを通じた家族への配慮
エンディングノートは、自分自身のためだけでなく、家族への大きな配慮でもあります。遺族が相続手続きを進める際、故人の意思や希望がわからないまま進行することは、しばしばトラブルの原因となります。エンディングノートに自分の意思を明確に記載しておくことで、遺族が安心して手続きを進めることができ、感情的な摩擦も軽減されるでしょう。
また、デジタル遺品に関する情報を残しておくことも、近年ますます重要になっています。パソコンやスマートフォンに保存されているデータ、SNSアカウントなども、遺族が管理する必要がありますが、エンディングノートにその詳細を記載しておくことで、手続きがスムーズに行われるようになります。
6. 最後に
遺言書の作成は、法的に有効な相続対策ですが、その前にエンディングノートを作成することは、非常に有益な作業です。エンディングノートを通じて、自分の財産や人生を振り返り、遺言書に盛り込むべき内容を明確にすることができます。また、エンディングノートを残すことで、家族への配慮を示し、相続手続きが円滑に進むことにもつながります。定期的に見直し、更新することで、常に最新の状況を反映させたノートを保つことが重要です。
自分の最期に向けた準備を通じて、安心した老後を送るためにも、エンディングノートを積極的に活用していきましょう。
(論点)相続対策としての終活セミナーの重要性

――専門家の知識を活用して不安を課題に変える――
少子高齢化が進む日本において、相続対策の重要性がますます増しています。特に、相続に関連する手続きや税務処理は専門的な知識を必要とするため、多くの人にとって不安の種となっています。このような状況下、終活の一環として行われる相続対策セミナーや相談会のニーズが高まっており、アイリス国際司法書士・行政書士事務所も連携税理士とともにセミナーを実施しています。
相続は、家族や親族の将来に直接関わるため、漠然とした不安を抱える方が多いでしょう。しかし、漠然とした不安は、具体的な課題に落とし込むことで解消することが可能です。本稿では、相続に対する不安を解消し、必要な対策を理解するための終活セミナーの意義について解説します。
目次
1.終活と相続対策セミナーの意義
2.漠然とした不安を具体的な課題に変える作業
3.セミナー参加で得られる3つのメリット
4.アイリス国際司法書士・行政書士事務所のセミナー概要
5.最後に
1. 終活と相続対策セミナーの意義
終活とは、自分の死後やその後に起こる出来事に対する準備を行うことです。相続対策もその一環であり、自身の財産を家族に円滑に継承するための計画を立てることを指します。相続の分野では、遺産分割や相続税、遺言書作成など、さまざまな手続きが必要です。これらの手続きは複雑であり、専門知識がなければ誤った判断をしてしまうこともあります。
そのため、相続対策に関心を持つ人が増える一方で、何から手を付けるべきかわからないという方も多いです。このような方にとって、終活の一環として行われる相続対策セミナーは、相続の基礎知識を学び、具体的な課題を明確にする絶好の機会となります。
2. 漠然とした不安を具体的な課題に変える作業
多くの方が「相続は何となく不安だ」という感覚を持っていますが、その不安は、何が問題で、何をすべきかが見えていないことから生じています。例えば、相続財産がどれくらいあり、どのように分割されるのか、相続税がどの程度かかるのかなど、具体的な数字や事実を把握していないために不安が生じることが少なくありません。
相続対策セミナーでは、漠然とした不安を具体的な課題に変えるためのステップが提供されます。自分の財産状況を整理し、どのような手続きが必要なのかを専門家と一緒に確認することで、相続に関する課題を可視化し、その解決方法を見つけることができるようになります。
3. セミナー参加で得られる3つのメリット
相続対策セミナーに参加することで得られる主なメリットは、以下の3点です。
1. 基礎知識の習得
セミナーでは、相続に関する基本的な知識を専門家が分かりやすく説明します。遺言書の作成方法や相続税の基礎、遺産分割のポイントなど、実際の手続きで重要な内容を学ぶことで、相続に対する理解が深まります。
2. 専門家との相談の機会
セミナーでは、司法書士や税理士などの専門家が直接質問に答えてくれる時間が設けられることが多く、個別のケースに応じた具体的なアドバイスを受けることができます。これにより、自分にとって最適な相続対策を検討する手助けとなります。
3. 行動を起こすきっかけ
相続に関する不安を抱えたままでいると、つい後回しにしてしまうことが少なくありません。セミナーに参加することで、相続の問題を現実的な課題として捉え、早めの対策を講じるきっかけを得ることができます。
4. アイリス国際司法書士・行政書士事務所のセミナー概要
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、相続に関するセミナーを定期的に開催しています。これらのセミナーでは、連携税理士とともに相続税や遺言書作成、財産整理の方法など、相続対策に欠かせないテーマを中心に解説します。
特に、相続という漠然とした不安を具体的な課題に変えることを目的としています。セミナーに参加することで、参加者は自分の状況に合わせた相続対策のヒントを得ることができ、将来的な手続きへの不安が軽減されるでしょう。
また、相続手続きに関連する最新の法改正や、デジタル遺品など新しいテーマについてもカバーしており、時代に即した情報を提供しています。参加者は無料相談の機会も得られ、具体的な対策に進むためのサポートを受けることが可能です。
5. 最後に
相続対策は、漠然とした不安を抱えたままではなかなか進めることができません。専門家によるセミナーや相談会を利用し、相続に関する具体的な課題を整理し、早期の対策を講じることが重要です。アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、連携税理士とともに相続対策に関する知識を提供し、個々の状況に応じたアドバイスを行っています。少しずつでも行動を起こすことで、将来の相続に備えた安心感を得ることができるでしょう。ぜひ、セミナーや「相続法律・税務無料相談会」にご参加ください。
(論点)相続における不動産登記の困難要因とは

相続に関連する不動産登記は、遺産分割や財産の引き継ぎにおいて重要な手続きです。しかし、実際の登記手続きにおいては、さまざまな問題や困難が発生することが少なくありません。相続人が多い場合や、連絡が取れない相続人がいる場合など、特定の要因によって手続きが複雑化し、円滑に進まないことがあります。本稿では、相続時の不動産登記において生じやすい困難要因を具体的に解説し、その対策についても考察します。
目次
1.相続人が多い場合
2.相続人の行方不明や疎遠な相続人
3.未登記の不動産
4.共有名義の不動産
5.相続人間での争い
6.遺産分割協議が進まない場合
7.相続放棄による影響
8.相続税の問題
9.法定相続情報証明制度の活用不足
10.戸籍謄本や住民票の不足
1. 相続人が多い場合
相続人の数が多い場合、登記手続きは全員の同意を必要とするため、合意形成が難しくなります。特に相続人同士が意見対立している場合、協議が長引き、不動産の名義変更が遅れる可能性があります。
2. 相続人の行方不明や疎遠な相続人
相続人が行方不明であったり、疎遠で連絡が取りにくい場合、手続きが進行しにくくなります。この場合、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任する必要があり、時間とコストがかかります。
3. 未登記の不動産
被相続人が所有していた不動産が未登記である場合、所有権の証明が困難で、名義変更手続きが複雑化します。この場合、登記簿上に不動産の情報が存在しないため、新たに登記を行う必要があり、手続きが大幅に遅延することがあります。
4. 共有名義の不動産
相続により不動産が共有名義になった場合、全ての共有者の同意がなければ不動産の売却や登記変更ができません。共有者の数が多いほど、意見調整が難しくなるため、手続きが遅れる可能性があります。
5. 相続人間での争い
相続人間で遺産分割に関する争いが生じると、裁判所を介した調停や訴訟が必要になることがあります。不動産の評価額や分配方法をめぐって相続人が対立する場合、合意に達するまでに時間がかかり、登記手続きが滞ることが多くなります。
6. 遺産分割協議が進まない場合
遺産分割協議が難航すると、不動産の名義変更ができず、相続登記が完了しない事態に陥ります。相続人が遠方に住んでいる場合や、意見の対立がある場合、協議が長引くことがよくあります。
7. 相続放棄による影響
相続人の中で相続放棄を行う者がいると、その相続分は次順位の相続人に移るため、新たな相続人との協議が必要になります。相続放棄をしたかどうかの確認にも時間がかかる場合があり、手続きが複雑化します。
8. 相続税の問題
相続税の申告期限は相続開始後10か月以内です。しかし、不動産の評価が適切に行われていない場合、相続税の計算や支払いに影響が及びます。不動産評価の遅れが原因で、相続税の申告や支払いに支障をきたすことがあります。
9. 法定相続情報証明制度の活用不足
法定相続情報証明制度は、相続登記手続きを簡略化するために導入されています。この制度を利用することで、相続に関する複数の登記手続きを効率化できますが、制度の活用が不十分な場合、手続きが余計に複雑になることがあります。
10. 戸籍謄本や住民票の不足
相続登記には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人の住民票などの書類が必要です。これらの書類を揃えるのに時間がかかる場合があり、特に被相続人が転籍や改姓を繰り返している場合は、複数の市区町村で書類を取得しなければならず、手続きが煩雑化します。
結論
相続に伴う不動産登記には、さまざまな困難要因が存在し、手続きの円滑化を妨げることがあります。これらの困難を事前に認識し、適切な対策を講じることが重要です。相続人間の合意形成を円滑に進めるために、遺産分割協議を早めに開始することや、法定相続情報証明制度を活用するなどの方法が有効です。また、相続に関する専門家のサポートを受けることで、手続きの複雑さを軽減し、相続登記のスムーズな進行を図ることができます。
(論点)生命保険の受取人と遺産分割(相続対策としての活用法)

相続手続きにおいて、生命保険は重要な役割を果たします。
特に、受取人の指定やその取り扱いは、遺産分割や相続税の負担に大きな影響を及ぼします。
本稿では、生命保険の受取人と遺産分割に関する基本的な知識と、相続対策としての活用方法について詳しく解説します。
目次
1.生命保険金の基本的な取り扱い
1.1 生命保険金は遺産分割の対象外
1.2 受取人の指定による影響
2.生命保険金の相続税課税関係
2.1 みなし相続財産としての扱い
2.2 非課税枠の活用
3.受取人の指定と遺産分割協議
3.1 受取人指定の重要性
3.2 遺産分割協議への影響
4.相続税対策としての生命保険活用
4.1 生命保険を利用した節税方法
4.2 注意点と留意事項
5.まとめ
1. 生命保険金の基本的な取り扱い
1.1 生命保険金は遺産分割の対象外
被相続人が契約していた生命保険金は、原則として遺産分割の対象外です。
つまり、受取人が指定されている場合、その保険金は相続財産とはみなされず、遺産分割協議の対象にはなりません。
1.2 受取人の指定による影響
生命保険の契約時に受取人を指定することで、保険金が直接その人に支払われます。これにより、遺産分割協議を経ることなく、迅速かつ確実に資産を移転することが可能となります。
2. 生命保険金の相続税課税関係
2.1 みなし相続財産としての扱い
生命保険金は、受取人が法定相続人である場合、「みなし相続財産」として扱われます。これは、相続税の課税対象となることを意味します。ただし、受取人が法定相続人でない場合や、受取人が法人である場合は、課税関係が異なるため注意が必要です。
2.2 非課税枠の活用
法定相続人が受取人となる場合、生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が適用されます。この非課税枠を活用することで、相続税の負担を軽減することができます。
3. 受取人の指定と遺産分割協議
3.1 受取人指定の重要性
受取人を明確に指定しておくことで、遺産分割協議をスムーズに進めることができます。特に、特定の相続人に多くの資産を残したい場合や、遺産分割での争いを避けたい場合に有効です。
3.2 遺産分割協議への影響
受取人が指定されている生命保険金は、遺産分割協議の対象外となりますが、相続税の申告時にはその金額や受取人情報を正確に報告する必要があります。
4. 相続税対策としての生命保険活用
4.1 生命保険を利用した節税方法
生命保険を活用することで、相続税の節税対策を講じることが可能です。例えば、保険金受取人を法定相続人とし、非課税枠を最大限に活用する方法があります。
4.2 注意点と留意事項
生命保険を相続対策として利用する際は、保険料の支払い能力や、受取人の選定、保険金の使途など、慎重な検討が必要です。また、保険契約の内容や税法の改正等にも注意を払う必要があります。
5. まとめ
生命保険は、受取人の指定や非課税枠の活用を通じて、相続手続きや相続税対策において重要な役割を果たします。
遺産分割の対象外となるため、受取人の選定や契約内容の確認を行い、適切な相続対策を講じることが求められます。
専門家のアドバイスを受けながら、最適な方法を選択することが重要です。
(論点)各相続の手続きとその期限のまとめ

相続に関連する手続きには、各種期限が定められており、これらを守らないと税務上の不利益や法的な問題が発生することがあります。以下は、主要な相続手続きの内容と、その期限についてのまとめです。
目次
1.死亡届の提出
2.相続放棄・限定承認の申請
3.遺産分割協議
4.相続税の申告・納付
5.不動産の相続登記
6.青色申告承認申請書の提出
7.年金の手続き
8.銀行口座の凍結解除と名義変更
9.保険金の請求
まとめ

1. 死亡届の提出
期限:死亡から7日以内
提出先:市区町村役場
概要:被相続人が亡くなった場合、その事実を公的に届け出るために死亡届を提出します。この手続きを行わないと、相続手続きが始まらないため、まず最初に行う必要があります。
2. 相続放棄・限定承認の申請
期限:相続の開始を知った日から3か月以内
提出先:家庭裁判所
概要:相続放棄は、被相続人の財産や債務の全てを相続しない選択をする手続きです。限定承認は、相続財産の範囲内で債務を負担するという手続きです。この期間を過ぎると、相続人は自動的にすべての財産と負債を引き継ぐことになります。
3. 遺産分割協議
期限:特に法定の期限はなし(ただし税務申告との関係で早期に実施することが望ましい)
概要:相続人間で遺産をどのように分けるかを協議し、合意する必要があります。合意が得られたら、遺産分割協議書を作成し、署名捺印を行います。相続税申告との関係から、協議を迅速に進めることが重要です。
4. 相続税の申告・納付
期限:相続開始を知った日から10か月以内
提出先:税務署
概要:相続財産の評価を行い、相続税が発生する場合には、相続税申告書を提出し、納税を行います。相続税の申告を怠ると、ペナルティが課される場合があるため、期限内に手続きを完了することが重要です。
5. 不動産の相続登記
期限:2024年4月1日以降、相続開始から3年以内に義務化
提出先:法務局
概要:相続した不動産の名義を変更する手続きです。以前は任意でしたが、2024年4月1日以降、相続開始から3年以内に行うことが義務となります。義務化以降、これを怠ると過料が課される可能性があります。
6. 青色申告承認申請書の提出
期限:相続開始から4か月以内
提出先:税務署
概要:被相続人が青色申告を行っていた事業を引き継ぐ場合、相続人が新たに青色申告承認申請書を提出する必要があります。この期限を過ぎると、その年の青色申告ができなくなり、税務上の優遇措置を受けられません。
7. 年金の手続き
期限:相続開始から5年以内(ただし、速やかに手続きすることが推奨される)
提出先:年金事務所または市区町村役場
概要:被相続人が年金受給者であった場合、その受給停止や未支給年金の請求手続きを行います。未支給年金は、死亡した月までの年金を相続人が受け取る手続きです。基本的には早めに行うのが良いですが、5年以内に行えば請求が可能です。
8. 銀行口座の凍結解除と名義変更
期限:特に期限はないが、迅速に手続きすることが望ましい
提出先:各銀行
概要:被相続人の死亡後、銀行口座は凍結されます。凍結解除のためには、相続人全員の同意書や遺産分割協議書を提出し、手続きを行います。凍結解除が遅れると、相続財産の分配に支障が出る可能性があるため、早めに対応することが重要です。
9. 保険金の請求
期限:保険金請求権が発生した日から3年以内
提出先:生命保険会社
概要:生命保険に加入していた場合、死亡保険金の請求手続きを行います。この手続きを怠ると、保険金の請求権が失効する可能性があるため、期限内に申請することが大切です。
まとめ
相続に関する手続きは、それぞれに異なる期限が定められています。各手続きの期限を守ることは、相続人が余計な税負担や法的な問題を避けるために重要です。特に相続税の申告や不動産の相続登記、青色申告承認申請書の提出など、税務に関連する手続きについては期限内の対応が不可欠です。相続手続きが複雑な場合には、早めに専門家に相談することをお勧めします。
(論点)相続における青色申告承認申請書の提出期限と活用方法

相続に伴い、不動産や事業を継承する場合、税務面での手続きを適切に行うことが重要です。
特に青色申告を希望する場合には、事前に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。青色申告は税務上の優遇措置が得られるため、相続人が事業や不動産を引き継いだ後の税負担を軽減する有効な手段です。
しかし、申請には厳格な提出期限が設定されているため、この期限を守ることが大切です。
本稿では、青色申告承認申請書の提出期限とその活用方法について詳しく解説します。
目次:
1.青色申告承認申請書とは
2.相続における青色申告の重要性
3.青色申告承認申請書の提出期限
3.1 被相続人の事業を引き継ぐ場合
3.2 新たに事業を開始する場合
4.青色申告のメリット
5.申請を忘れた場合の影響
6.まとめ

1. 青色申告承認申請書とは
青色申告承認申請書は、税務署に提出する書類で、個人事業主や不動産所得者が青色申告を行うための承認を得るために必要な手続きです。青色申告を行うことで、さまざまな税務上の優遇措置を受けることができ、事業や不動産所得に対する税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
申請書を提出せずに青色申告を行うことはできないため、相続時に事業を引き継ぐ場合や新たに事業を開始する際には、必ず期限内にこの申請を行う必要があります。
2. 相続における青色申告の重要性
相続によって事業や不動産を継承する場合、青色申告を利用することは、相続人にとって税務上の負担を軽減する非常に有効な手段です。
特に、不動産や事業所得がある場合、青色申告を行うことで65万円の特別控除や、損失を3年間繰り越すことができるなどの大きなメリットがあります。
そのため、相続の一環として、相続人が事業や不動産を引き継ぐ場合には、早めに青色申告の手続きを行うことが勧められます。
3. 青色申告承認申請書の提出期限
青色申告を行うためには、事業を引き継いだ相続人が、税務署に青色申告承認申請書を提出し、承認を得る必要があります。
この申請には厳格な期限が定められており、期限を過ぎてしまうと、その年の青色申告を行うことができなくなるため、注意が必要です。
3.1 被相続人の事業を引き継ぐ場合
相続人が被相続人の事業を引き継ぎ、引き続き事業を営む場合、相続人が新たに青色申告承認申請書を提出する必要があります。この場合の提出期限は、被相続人が亡くなった日から4か月以内です。
例えば、被相続人が青色申告を行っていたとしても、その承認を相続人が自動的に引き継ぐことはできません。相続人が新たに事業者として青色申告を行うためには、改めて申請書を提出しなければなりません。
3.2 新たに事業を開始する場合
相続とは関係なく、新たに事業を開始する場合にも、青色申告承認申請書を提出する必要があります。
この場合の提出期限は、その年の3月15日までに申請する必要があります。
ただし、1月16日以降に事業を開始した場合は、開始日から2か月以内に申請書を提出することが求められます。
4. 青色申告のメリット
青色申告を行うことによるメリットは多岐にわたります。代表的なものには、以下のようなものがあります。
65万円の特別控除:青色申告を行うことで、65万円の控除を受けられます。これは事業所得や不動産所得に対して大きな税負担の軽減となります。
損失の繰越控除:青色申告を行っている場合、事業や不動産の損失を翌年以降の3年間にわたり繰り越すことができます。これにより、事業が赤字となった場合でも、将来的にその損失を相殺できるため、経済的な負担を分散することが可能です。
経費の計上:青色申告では、事業に関わる経費をより詳細に計上することができます。これにより、実質的な所得を低く抑え、税額を軽減することが可能です。
5. 申請を忘れた場合の影響
青色申告承認申請書の提出期限を過ぎてしまうと、その年の青色申告は適用されません。
この場合、青色申告による特典を享受することができず、控除や損失の繰越などの恩恵を受けられなくなります。
そのため、期限内に申請を行うことは非常に重要です。特に、相続時には事務手続きが多いため、提出期限を忘れないよう注意が必要です。
6. まとめ
相続における青色申告承認申請書の提出は、相続財産を引き継ぐ際に重要な税務手続きの一つです。
特に、事業や不動産所得を引き継ぐ場合には、期限内に申請書を提出し、青色申告のメリットを活用することで、相続後の税負担を軽減することができます。
被相続人が青色申告を行っていた場合でも、相続人が改めて申請書を提出しなければならないため、提出期限を守ることが大切です。
(論点)絵画購入を活用した相続税対策と将来の税制改正リスク

絵画や美術品を相続財産として活用することは、相続税対策として注目されています。特に富裕層において、時価評価の曖昧さや税制上のメリットを利用して節税する方法が広がっています。しかし、タワーマンション節税が是正されたように、将来的にこの手法にもメスが入る可能性があります。本稿では、絵画や美術品を利用した相続税対策の意味と、その将来のリスクについて考察します。
目次
1.絵画を活用した相続税対策の概要
2.タワーマンション節税と絵画相続の類似性
3.将来的な税制改正リスク
4.現時点での対策と今後の展望

1. 絵画を活用した相続税対策の概要
絵画や美術品は相続税対策の一環として利用されることがあります。理由は、その評価額が専門家の鑑定や市場価格に依存するため、比較的柔軟な評価が可能だからです。不動産や株式などの財産とは異なり、絵画の評価は曖昧さが残り、適切な鑑定士に依頼することで市場価格よりも低く評価されることもあります。このような特徴を活用することで、相続財産の総額を低く抑えることができ、相続税の負担を軽減することが可能です。
また、美術品には保管や管理のコストが少なく、長期的な価値保存が期待できるため、相続税対策以外にも資産運用の一環として利用されることが多いです。特に有名作家の作品などは市場価値が高騰する可能性があり、資産としての魅力も兼ね備えています。
2. タワーマンション節税と絵画相続の類似性
絵画を利用した相続税対策は、かつてのタワーマンション節税に似ています。タワーマンション節税では、特に高層階の物件において、土地の固定資産税評価額を基に相続税評価が行われるため、実際の市場価値よりも低い評価が適用されていました。この節税手法が広く利用され、不公平だとされた結果、2023年の税制改正で是正されました。これにより、高層階の部屋に対しては相続税評価額が引き上げられる措置が取られました。
同様に、絵画や美術品に関しても評価の曖昧さや柔軟さが富裕層の節税手段として利用されるリスクがあります。特に市場価格と鑑定価格に大きな乖離が生じるケースでは、税制改正が求められる可能性が高くなります。
3. 将来的な税制改正リスク
将来的に絵画や美術品を利用した相続税対策が規制される可能性は十分に考えられます。以下のような点から、税制改正が議論されることが予測されます。
1. 評価の不透明性
絵画や美術品の評価は専門家の判断に大きく依存し、時に市場価値と大きく異なることがあります。特に評価が低く設定される場合、適正な相続税が課されず、税逃れが疑われることがあります。このような評価の曖昧さが問題視されれば、統一的な評価基準が導入される可能性があります。
2. 富裕層による節税の過剰利用
タワーマンション節税が富裕層に集中して利用され、不公平だと指摘されたように、絵画や美術品も同様の批判を受ける可能性があります。富裕層の節税対策が一般的な相続人にとって不公正であるとの声が高まれば、政府は規制強化を図る可能性があります。
3. 市場の変動性
美術品市場は他の資産と比べて価格の変動が激しく、急激な価値の上昇や下降が起こり得ます。このような市場の不確実性は税務署が適切な評価を行う上での障害となり、税制改正が求められる要因となるでしょう。
4. 現時点での対策と今後の展望
現在、絵画や美術品を相続税対策に利用することは合法であり、適切に評価を行い、申告を行うことで相続税の軽減が期待できます。しかし、将来的な税制改正のリスクを考慮して、慎重な対策が求められます。例えば、他の相続対策手法と組み合わせることでリスク分散を図ることや、税制の動向を注視し、必要に応じて専門家の助言を受けることが重要です。
特に、税制が変わった際にすぐに対応できるよう、定期的に相続計画を見直すことが望ましいでしょう。また、富裕層向けの節税対策が次々と規制される傾向が続いているため、絵画や美術品に頼りすぎないバランスの取れた相続対策が求められる時代になりつつあります。
結論
絵画や美術品を相続税対策に利用することは、現在有効な手段ですが、将来的な税制改正のリスクを考えると、長期的な視点での準備と対策が必要です。市場の動向や税制の変化に対応できるよう、柔軟な相続計画を構築し、必要に応じて専門家と連携することが、最良の結果をもたらすでしょう。
(論点)相続で活用できる7つの裏技的手法

相続手続きにおいて、法律に基づいた「裏技的な」手法というのは、脱法や不正行為ではなく、あくまで正当な法律の範囲内でより効率的・効果的に資産を継承するための工夫や対策を指します。以下では、相続税や相続手続きの負担を軽減するための方法をいくつか紹介します。
目次
1.生前贈与を活用する
2.小規模宅地等の特例を使う
3.二次相続を見越した対策
4.不動産を活用した節税
5.遺言書で遺産分割を明確にする
6.家族信託を利用する
7.生命保険の活用

1. 生前贈与を活用する
生前贈与とは、相続が発生する前に、資産を贈与する方法です。年間110万円までの贈与は贈与税がかからないため、これを活用して生前から少しずつ財産を移すことで、相続時の課税対象を減らすことが可能です。
毎年少しずつ贈与: 110万円以下の非課税枠を利用して、複数年にわたって資産を移転する。
教育資金の一括贈与制度: 子や孫に対して教育資金を一括で贈与する場合、一定額まで非課税になる特例があります。
2. 小規模宅地等の特例を使う
「小規模宅地等の特例」は、被相続人の住んでいた宅地や事業用地について、一定の条件を満たせば、相続税の評価額を大幅に減額できる制度です。例えば、被相続人が住んでいた自宅の土地が条件を満たせば、評価額を最大80%減額することが可能です。
対象となる土地: 居住用、事業用などの土地が対象。
特例適用後の相続税負担軽減: 大きな土地や高額な不動産を相続する場合、この特例を適用することで相続税が大幅に軽減されます。
3. 二次相続を見越した対策
二次相続とは、最初の相続後に、相続した財産を引き継いだ人が次に亡くなった際に発生する相続のことです。たとえば、父親の財産を母親が相続し、その後母親が亡くなるという流れです。この際、二次相続では相続税が大きくなることが多いため、事前に対策を考えておくことが重要です。
一次相続で子供にも分配する: 母親がすべての財産を相続するのではなく、一次相続の段階で一部の財産を子供にも相続させることで、二次相続時の税負担を減らすことができます。
配偶者の税額軽減を適用しつつ、二次相続も考慮: 配偶者が相続する場合、税額軽減が適用され相続税はかなり減少しますが、二次相続時には課税されるため、長期的な視点での資産配分が重要です。
4. 不動産を活用した節税
不動産を活用した相続税対策も有効です。現金や預金で所有している財産よりも、不動産として所有するほうが相続税評価額が低くなることが多いです。特に賃貸不動産や土地の活用により、評価額を下げることができます。
賃貸不動産の活用: 賃貸物件の評価額は、土地や建物の評価額から借家権が差し引かれるため、結果として相続税の対象額が下がります。
土地の有効活用: 自宅や事業用地の評価額を特例で減額するほか、土地を有効に使って資産を減少させることで税金を抑える手法です。
5. 遺言書で遺産分割を明確にする
相続争いを防ぐため、また相続手続きのスムーズな進行を促進するために、遺言書を作成することが重要です。遺言書がない場合、法定相続分に基づいて遺産分割が進みますが、遺言書があることで、自分の意思に基づいて財産を分配することができます。
公正証書遺言: 公証人が作成するため、法的効力が強く、無効になるリスクが少ない形式です。
自筆証書遺言の保管制度: 自筆証書遺言も法務局に保管しておくことで、紛失や改ざんのリスクを防ぎ、スムーズに相続手続きを進めることが可能です。
6. 家族信託を利用する
家族信託は、財産の管理を信頼できる家族に委ね、相続時に資産がスムーズに引き継がれるようにする方法です。認知症などにより財産管理が困難になった場合に備える手段としても注目されています。
信託契約で資産管理を信頼できる人に託す: 財産を信託し、受益者(財産を受け取る人)の利益を守る。
柔軟な財産承継が可能: 遺言書に比べて柔軟に財産を承継することができ、相続税対策や財産管理対策として効果的です。
7. 生命保険の活用
生命保険も相続税対策に有効です。生命保険金は、法定相続人1人あたり500万円までが非課税枠として認められています。この非課税枠を活用することで、現金の一部を非課税で相続することができます。
保険金の非課税枠: 1人あたり500万円までの非課税枠があるため、相続税の軽減が期待できます。
保険金の分配で相続トラブル回避: 生命保険金は相続財産とは別に分配できるため、特定の相続人に多くの財産を分配したい場合にも有効です。
まとめ
相続手続きを効果的に進めるためには、事前にしっかりとした対策を講じることが重要です。生前贈与や生命保険、家族信託などを活用し、相続税の負担を軽減しつつ、スムーズな財産承継を目指しましょう。また、遺言書の作成や不動産の活用なども、財産の円滑な引き継ぎをサポートするための有効な手段です。相続は一度きりの大切な手続きですので、専門家の助言を受けながら計画を立てることをお勧めします。
(空き家対策)田舎の相続した実家が空き家になる場合の空き家対策

日本では地方の過疎化が進む中、相続により田舎の実家を受け継いだものの、空き家となってしまうケースが増えています。都市部に住む家族が地方にある実家に戻ることが難しく、結果的に空き家として放置されてしまうことが多いです。特に田舎の場合、都市部と比べて不動産の流動性が低く、空き家の処分や活用にはさらなる工夫が必要です。本記事では、田舎の実家が空き家になる可能性がある場合に取るべき有効な対策について解説します。
目次
1.田舎の空き家の放置によるリスク
2.有効な空き家対策
2.1.売却の選択肢と地方不動産の現実
2.2.空き家バンクや地域の移住促進プログラムの活用
2.3.リノベーションによる活用と地域活性化
2.4.農業・観光の体験型施設としての転用
2.5.田舎特有の地域コミュニティとの関係
3.空き家対策のポイント
4.まとめ

1. 田舎の空き家の放置によるリスク
田舎の空き家を放置すると、都市部と同様に、さまざまなリスクが発生します。まず、建物が老朽化しやすく、定期的な管理が欠かせません。田舎では不動産の需要が低いため、売却や賃貸の選択肢が限られていることが多く、固定資産税の支払いが続く一方で、収益を見込むのは難しいです。また、放置することで不法侵入や火災のリスクも高まり、周辺住民とのトラブルにつながる可能性があります。地域によっては、空き家が景観や防犯の問題として扱われる場合もあり、地方自治体からの改善命令が出ることもあります。
2. 有効な空き家対策
2.1. 売却の選択肢と地方不動産の現実
田舎の不動産を売却することは、空き家問題の根本的な解決策の一つですが、地方においては不動産市場が活発でないため、売却は難航することが少なくありません。不動産の価値が低下しやすく、売り手市場となっていないため、早めに売却を検討する必要があります。また、地元の不動産業者を通じて、地域の特性に合った売却戦略を立てることが重要です。空き家を少しでも良い状態に維持し、購入者にとって魅力的な物件とするためのリノベーションも有効です。
2.2. 空き家バンクや地域の移住促進プログラムの活用
多くの地方自治体では、移住促進の一環として「空き家バンク」を運営しています。これは、空き家を持つ所有者と、田舎暮らしを希望する移住者をつなぐ制度です。空き家バンクを利用することで、移住者に物件を売却または賃貸することが可能になります。さらに、一部の自治体では、移住者に対してリフォーム費用の補助金や定住支援を行っているため、これらの制度を活用することで、空き家を有効に活用できる可能性が高まります。
2.3. リノベーションによる活用と地域活性化
田舎の空き家をリノベーションして、新たな用途に変えることも効果的です。例えば、古民家を再生してカフェや民宿として活用するケースが増えています。地域特有の自然や文化を生かしたビジネスに転用することで、観光客や移住者を呼び込み、地域全体の活性化にも寄与します。さらに、空き家を地域コミュニティの活動拠点として提供し、住民同士の交流やイベントの場とすることで、空き家の価値を見直すことも可能です。
2.4. 農業・観光の体験型施設としての転用
田舎ならではの資源を活用して、農業や観光体験型の施設に空き家を転用する方法もあります。例えば、農業体験施設や地域の自然を楽しむ宿泊施設に改装することで、都市部からの観光客を引き寄せることができます。また、農業や工芸などの体験プログラムを提供することにより、地域の特産品をアピールすることもできます。このような施設は、地域経済に貢献しつつ、空き家の有効利用にもつながります。
2.5. 田舎特有の地域コミュニティとの関係
田舎では、地域コミュニティの存在が非常に重要です。空き家を活用する際には、地域住民との関係をしっかりと築き、地域のニーズに合った形で活用することが成功の鍵となります。例えば、空き家を利用したイベントスペースやコミュニティセンターを設けることで、住民にとっても有益な施設となる可能性があります。また、地域の祭りや伝統行事などに参加することで、地域とのつながりを深め、空き家の活用方法についてのアイデアを得ることができるでしょう。
3. 空き家対策のポイント
田舎の空き家対策を講じる際には、まずその家の状態と地域の状況をよく調査することが重要です。田舎では不動産の流通が限られているため、売却や賃貸が必ずしも容易ではありません。リノベーションや体験施設への転用など、地域の特性を生かした活用方法を模索することが必要です。また、空き家バンクや自治体の支援制度をうまく活用し、補助金や助成金を受け取ることで、費用負担を軽減することが可能です。
さらに、田舎では地域コミュニティとの協力が不可欠です。空き家の活用にあたっては、住民との協力を得て、地域に溶け込む形での活用を目指すことが成功への近道です。
4. まとめ
田舎の相続した実家が空き家になる場合、放置するとさまざまなリスクを引き起こしますが、適切な対策を講じることでそのリスクを回避できます。売却や賃貸、リノベーション、農業体験型施設への転用、空き家バンクの活用など、多様な選択肢があります。地域コミュニティとの連携を深め、地域にとっても有益な活用方法を探ることで、空き家が地域資源として生かされることが期待されます。
(空き家対策)相続した実家が空き家になる場合の空き家対策

近年、日本では少子高齢化や地方からの人口流出に伴い、相続された実家が空き家になるケースが増加しています。特に都市部に住んでいる家族が、地方にある実家を相続した際、そこに住むことが難しくなり、空き家として放置されることが少なくありません。空き家を放置すると、固定資産税の増加や建物の老朽化による維持費の問題、さらには地域の防犯や景観の悪化など、さまざまな問題が発生します。こうしたリスクを避けるためには、早めに空き家対策を講じることが重要です。本記事では、相続した実家が空き家になる可能性がある場合に有効な対策を紹介します。
目次
1.空き家の放置によるリスク
2.有効な空き家対策
2.1.売却や賃貸の選択肢
2.2.リノベーションによる活用
2.3.民泊や短期賃貸の活用
2.4.空き家バンクの活用
2.5.維持管理を委託する
3.空き家対策のポイント
4.まとめ

1. 空き家の放置によるリスク
空き家を放置することは、さまざまなリスクを引き起こします。まず、空き家の固定資産税が上がる可能性が高いです。住宅用地として特例措置を受ける場合、居住していない家屋はその特例が適用されず、税負担が大きくなります。また、空き家は時間とともに老朽化し、倒壊の危険性が高まります。これにより、周囲に住む人々の安全を脅かすだけでなく、解体や修繕費用が将来的に大きな負担となる可能性もあります。さらに、空き家は防犯上の問題もあり、放火や不法侵入などのトラブルを引き寄せる恐れがあります。
2. 有効な空き家対策
2.1. 売却や賃貸の選択肢
まず考えられる対策は、相続した実家を売却または賃貸に出すことです。売却を検討する場合、地域の不動産市場の動向を確認し、早めに売りに出すことが有効です。また、賃貸として空き家を活用する場合、長期的に収入を得られる可能性がある一方で、定期的な管理や修繕の責任が生じるため、これらを考慮した上での判断が必要です。
2.2. リノベーションによる活用
空き家をリノベーションし、新たな用途に合わせて活用する方法もあります。たとえば、実家の立地が良い場合、リノベーションを行い、カフェやレストラン、アトリエなどのビジネスとして利用することができます。地域の特性に合った用途で改装すれば、新たな収益源となり、地域にも貢献することができます。
2.3. 民泊や短期賃貸の活用
観光地や都市部にある実家であれば、民泊や短期賃貸として活用することも一つの手段です。特に、インバウンド需要が高まっている地域では、外国人観光客をターゲットにした民泊が人気です。ただし、地域の条例や法律による制約があるため、事前に確認が必要です。
2.4. 空き家バンクの活用
地方自治体が運営する「空き家バンク」を活用する方法もあります。空き家バンクは、空き家を持つ所有者と、購入や賃貸を希望する人をつなぐサービスです。地方移住を考える人々や、田舎暮らしを望む人々にアピールすることで、空き家の活用を促進できます。また、空き家バンクを通じて補助金や助成金を受けられる場合もあるため、地域の制度を確認しましょう。
2.5. 維持管理を委託する
どうしても空き家をすぐに活用できない場合、専門の業者に管理を委託する方法があります。定期的な清掃や点検、庭の手入れを業者に依頼することで、建物の劣化を防ぎ、長期的な管理コストを抑えることができます。管理を怠ることで発生するトラブルを防ぐために、適切な維持管理を行うことが重要です。
3. 空き家対策のポイント
空き家対策を検討する際のポイントとして、まずはその家がどのように利用できるかを明確にすることが重要です。売却する場合も、賃貸に出す場合も、立地条件や市場のニーズをよく調査し、最も適した方法を選ぶことが成功の鍵となります。また、リノベーションや民泊など、初期投資が必要な場合は、投資額と将来的な利益のバランスを見極める必要があります。
さらに、空き家を放置せずに早めに対策を講じることで、税金や修繕費などの負担を減らすことができます。自治体や専門家に相談しながら、最適な空き家活用法を見つけることが大切です。
4. まとめ
相続した実家が空き家になる場合、放置することはさまざまなリスクを伴います。売却や賃貸、リノベーション、民泊、空き家バンクの利用など、さまざまな選択肢を考慮しながら、早めに対策を講じることが重要です。維持管理の委託や自治体の制度を利用することも、効果的な対策となるでしょう。
【論点】国税、AI使うってよ!〜相続税の無申告調査が変わる?AIが選ぶ次のターゲット〜

相続税の申告、正直ちょっと面倒…そう思って後回しにしていませんか?ですが今、国税庁がAIを本格活用して無申告者を狙い撃ちにする時代に突入しつつあります。特に相続税に関しては、従来の経験則による調査から、AIを使って「申告漏れがありそうな人」を高精度でピックアップする新しい時代へ。この記事では、国税庁の統計データをもとに、令和元年からの相続税無申告事案の調査件数の推移や、今後の調査精度の向上にどのようにAIが関わってくるのかを解説します。
【目次】
1.国税が本気でAI活用を始めた理由
2.令和元年からの相続税無申告調査の実態
3.今後の調査対象はこう変わる!AIの導入で起こること
AIに狙われないために今できる相続対策とは?
無申告のリスクを避けるための無料相談ご案内
まとめ:相続こそ、先手必勝の時代へ
1. 国税が本気でAI活用を始めた理由
近年、国税庁はAIを活用した税務調査の精度向上に注力しています。これは人手不足や業務効率化といった背景に加え、「無申告・申告漏れ」への対応強化という目的も大きいのです。
従来の税務調査は、ベテラン調査官の経験や勘に頼る部分が多く、見逃しや偏りが課題でした。これを解決する手段として注目されたのがAI。過去の調査データ、資産情報、登記情報、取引履歴など膨大なデータを解析し、「調査すべき人」をリストアップするAIモデルが、すでに運用段階に入っています。
2. 令和元年からの相続税無申告調査の実態
国税庁が公表している「相続税の実地調査事績」によると、令和元年以降、相続税の無申告に関する調査件数は着実に増加傾向を見せています。

件数も金額も上昇傾向にあり、「うちは大丈夫」と油断している方こそ、AIにピンポイントで検出されてしまう可能性があるのです。
※以下の統計の推移は、高松国税局(管轄は四国)のものになります。

3. 今後の調査対象はこう変わる!AIの導入で起こること
AIの導入で何が変わるのか。最大のポイントは「誰が調査対象になるか」の選定精度が格段に高まるという点です。
AIは、たとえば次のようなデータをもとに無申告リスクの高い対象者を抽出できます。
登記簿上の不動産取得記録
預貯金・株式の名義変更履歴
戸籍情報と死亡届との連携
高額な医療費や介護費用の支払い記録
遺族間の資産移転(贈与・貸付等)
これまでは「目立つ」人だけが調査対象でしたが、今後は**「隠しているつもり」の人こそ発見されやすくなる**のです。
4. AIに狙われないために今できる相続対策とは?
AIに「怪しい」と判断される前に、やるべきことは明確です。
相続が発生したら速やかに税理士や専門家に相談
財産の全体像(不動産、預金、有価証券、保険など)を把握し申告漏れがないようにする
生前贈与や名義預金など、グレーな部分は早めに整理する
AIは正確なデータの整合性に敏感です。反対にいえば、正当な申告を行っていればリスクは格段に減るのです。
5. 無申告のリスクを避けるための無料相談ご案内
「正しく申告したつもりでも、どこかに抜け漏れがあるかも…」
「家族が他界して、何から手を付ければいいかわからない」
そんなときは、専門家への早期相談が最も効果的です。
当事務所では、司法書士・税理士と連携した相続に関する無料相談会を随時開催しています。ぜひ以下のリンクからご確認ください。
AIに選ばれる前に、ぜひプロの目で申告期間内にチェックしておきましょう。
6. まとめ:相続こそ、先手必勝の時代へ
相続税の申告や調査は、かつては「運が悪ければ調査に当たる」ものでした。しかしこれからは**「AIが合理的に選ぶ時代」**になります。
つまり、無申告・申告漏れの放置は、もはやリスクでしかないということ。
相続は、突然訪れる家族の出来事であると同時に、正しく向き合えば大きな節税やトラブル回避にもつながる重要なテーマです。
早めの準備と専門家への相談で、AIの網から外れた脱税とは異なる安心な未来を手に入れましょう。アイリスが相続専門の税理士の先生をご紹介いたします。
(論点)デジタル時代における遺産分割協議の進化とオンライン化の重要性

近年、インターネットの普及やデジタル技術の進展により、様々な手続きがオンラインで行われるようになってきました。相続における遺産分割協議も例外ではなく、特にコロナ禍以降、オンライン会議を利用した遺産分割協議の普及が進んでいます。遠方に住む家族や多忙な相続人が円滑にコミュニケーションを取るための手段として、オンライン協議はますます重要な役割を果たしています。本稿では、遺産分割協議のオンライン化の意義やメリット、また、アイリス国際司法書士・行政書士事務所で提供しているサービスについて紹介します。
目次
1.遺産分割協議のオンライン化の背景
2.オンライン協議のメリット
3.遠方の家族が参加しやすい環境づくり
4.アイリス国際司法書士・行政書士事務所の取り組み
5.オンライン協議の課題と今後の展望

1. 遺産分割協議のオンライン化の背景
遺産分割協議とは、相続人間で遺産をどのように分配するかを話し合い、合意を形成する手続きです。従来、この協議は相続人全員が一堂に会し、対面で行うのが一般的でした。しかし、現代社会では家族が全国各地、場合によっては海外に分散して住んでいるケースも少なくありません。また、相続手続きには時間がかかることが多く、忙しい相続人同士が集まること自体が困難な場合もあります。そうした状況に対応するため、インターネットを利用したオンライン協議が注目されるようになりました。
特に2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大により、直接対面することが難しくなった時期に、オンライン会議システムを利用した遺産分割協議の需要が急増しました。この背景には、感染リスクの低減や、移動制限に伴う物理的な制約を乗り越える必要があったためです。こうした状況を契機に、オンラインでの協議が浸透し始めたと言えます。
2. オンライン協議のメリット
オンラインで遺産分割協議を行うことには、いくつかの明確なメリットがあります。
>遠方に住む家族の参加が容易: 遠方に住む家族が物理的に移動することなく、協議に参加できるため、スムーズな合意形成が可能です。交通費や宿泊費の負担もなく、時間と費用の節約につながります。
>柔軟な時間設定: オンラインであれば、全員が参加しやすい時間帯を調整しやすく、効率的な協議が可能です。仕事や育児などで忙しい相続人も、参加しやすくなります。
>感染リスクの低減: 特に高齢の相続人が含まれる場合、対面での会議が感染リスクを伴うことがあります。オンラインであれば、感染リスクを気にせずに安心して協議が進められます。
>資料の共有が容易: 遺産分割協議では、財産目録や相続関連の書類を確認することが多いですが、オンライン会議システムを使うことで、画面共有機能を利用し、リアルタイムで全員が同じ資料を確認しながら進行することができます。
3. 遠方の家族が参加しやすい環境づくり
オンライン協議が便利である一方で、技術に慣れていない相続人がいる場合には、導入に戸惑うこともあります。特に高齢者やIT技術に詳しくない方々にとっては、Zoomなどのオンライン会議システムを使いこなすことが難しいと感じる場合もあるでしょう。こうした問題を解決するためには、相続手続きのサポートを提供する専門家や事務所が通信環境や機器の使い方をサポートすることが重要です。
4. アイリス国際司法書士・行政書士事務所の取り組み
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、オンラインでの遺産分割協議の環境を整えるために、次のような取り組みを行っています。
まず、事務所内に会議室スペースを設け、遠方に住む相続人や忙しい方でも安心して協議に参加できる環境を提供しています。特に、県外に住むご家族とのコミュニケーションが必要な場合、事務所の1階にある専用の会議室でZoomを利用したテレビ電話会議を開催し、スムーズな通信環境を整えています。
このサービスは、ご家族だけで遺産分割協議を進めることができるよう配慮されており、スタッフが必要に応じてサポートを提供します。対面での協議が難しい状況でも、オンライン会議を活用することで効率的かつ円滑な遺産分割が可能となります。
5. オンライン協議の課題と今後の展望
オンラインでの遺産分割協議は便利である一方、いくつかの課題も存在します。例えば、通信環境が不安定な場合、会議中に接続が途切れてしまうことがあり、円滑な協議が妨げられる可能性があります。また、デジタル技術に慣れていない相続人がいる場合、システムの利用に戸惑うこともあります。
これらの課題を解決するためには、事前の通信テストや機器の使い方の説明を行うことが重要です。さらに、オンライン協議の際には、感情面での配慮も必要です。画面越しでは感情のニュアンスが伝わりにくいため、丁寧なコミュニケーションを心がけることが大切です。
今後、オンラインでの遺産分割協議はますます普及していくと予想されます。それに伴い、各家庭や事務所での通信環境の整備や、相続手続きに関するサポート体制が一層重要となるでしょう。専門家の力を借りながら、効率的かつスムーズな相続手続きを進めることが求められています。
結論
デジタル時代における遺産分割協議のオンライン化は、遠方の家族や忙しい相続人にとって、非常に有効な手段です。アイリス国際司法書士・行政書士事務所の取り組みのように、専門家のサポートを活用しながら、スムーズなオンライン協議を実現することが可能です。オンライン協議を通じて、相続手続きをより効率的に進める環境づくりをしていきましょう。
(論点)デジタル遺産の取り扱いに関する関心の高まり

インターネットとデジタル技術が私たちの生活に深く浸透した現代、デジタル遺産の問題は相続においても無視できない課題となっています。従来の財産管理とは異なり、デジタル遺産は特有の扱いが必要であり、その重要性は近年ますます注目されています。
特にSNSアカウントやオンラインバンク、クラウドストレージに保存されたデータなど、これらデジタルな資産が遺族間でのトラブルを引き起こすこともあります。本稿では、デジタル遺産とは何か、どのような点に注意すべきか、そして生前からどのように準備するべきかを探っていきます。
目次
1.デジタル遺産とは?
2.デジタル遺産に関する課題
3.生前整理の重要性
4.トラブルを避けるための対策
5.専門家への相談とサポートの活用

1. デジタル遺産とは?
デジタル遺産とは、インターネットやデジタル機器を通じて生成・管理される財産や情報のことを指します。具体的には、以下のようなものが該当します。
SNS(Facebook、Twitter、Instagram など)のアカウント
インターネットバンキングや仮想通貨口座
電子メールやクラウド上に保存されたファイルやデータ
オンラインサブスクリプション(Netflix、Spotify など)
電子書籍やデジタル音楽、映画などのコンテンツ購入履歴
これらの資産は、従来の不動産や銀行口座のように、物理的に手元に残るものではありません。そのため、相続時に遺族がアクセスできない、内容を把握できないという問題が発生しやすいのです。
2. デジタル遺産に関する課題
デジタル遺産は物理的な資産と異なり、見つけること自体が難しいという点で特殊な課題を抱えています。さらに、以下のような問題も考えられます。
アクセス権の問題: アカウントのパスワードやアクセス権限が遺族に渡っていない場合、法律やプラットフォームの規約により、遺族がアカウントにアクセスすることができないことがあります。多くのプラットフォームでは、ユーザーの死亡時にアカウントを閉鎖するか、プライバシー保護のためにアクセスを制限する方針をとっています。
資産の評価と管理: デジタル遺産は、例えばビットコインのように価値が変動するものや、クラウド上のデータのように金銭的価値が測りにくいものも含まれます。これらの資産をどのように扱うか、またそれらの存在を証明するための手続きが必要になります。
相続の法的問題: デジタル遺産の相続に関する法整備はまだ完全ではなく、相続法やプライバシー保護法との兼ね合いで、相続人が正当に管理できるかどうかがケースバイケースで変わることがあります。
3. 生前整理の重要性
デジタル遺産に関して、遺族が混乱を避けるためには、生前からの整理が不可欠です。生前整理には、次のようなポイントを押さえることが重要です。
※以下の内容について、「エンディングリスト」に記載しておく必要があります。
アカウント情報のリスト化: 自身が利用している全てのオンラインアカウント、SNS、バンキング、メール、サブスクリプションなどのアカウント情報をリスト化しておくことが大切です。このリストには、各アカウントのIDやパスワード、連絡先などを含め、信頼できる人に保管してもらうことが望ましいです。
遺言書への記載: デジタル遺産も遺産として扱う意志を遺言書に明記しておくと、相続の際にトラブルを回避しやすくなります。どのアカウントを誰に引き継ぐかなどを具体的に記載することが有効です。
デジタル遺産管理サービスの利用: 最近では、デジタル遺産の管理を専門に行うサービスも登場しています。こうしたサービスを利用することで、遺族に混乱を与えることなく、スムーズに遺産を引き継ぐことが可能です。
4. トラブルを避けるための対策
デジタル遺産に関する相続トラブルを避けるためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。
パスワード管理: パスワードマネージャーを活用し、すべてのパスワードを一元管理しておくことで、相続人がアクセスしやすくなります。また、信頼できる人にこれらの情報を生前に共有することも検討すべきです。
プラットフォームごとの対策: 一部のSNSやクラウドサービスでは、アカウントを死亡後にどう処理するか事前に設定できる機能があります。たとえば、Facebookでは「記念アカウント」として残すか、削除するかの選択が可能です。各サービスでこうしたオプションを利用しておくことも、トラブル防止に役立ちます。
5. 専門家への相談とサポートの活用
デジタル遺産の相続に関しては、従来の遺産分割とは異なる点が多いため、相続に詳しい弁護士や司法書士などの専門家に相談することが推奨されます。
法律のサポート: デジタル遺産に関する法的な問題や、相続税の評価についてのアドバイスを受けることで、適切な相続手続きを進めることが可能です。また、遺言書作成の際にデジタル遺産をどのように取り扱うかについても、専門家の助言が役立ちます。
新しいサービスの活用: デジタル遺産に関する専門的な管理サービスやツールを利用することで、相続手続きの複雑さを軽減することができ、遺族にとっても負担が少なくなります。
結論
デジタル遺産は、今後ますます重要性が高まると考えられ、相続においても無視できない課題です。
遺族がスムーズにデジタル資産を引き継げるように、生前からの整理と準備が不可欠です。
適切な対策を講じ、専門家のサポートを受けることで、デジタル時代にふさわしい相続手続きを行うことが可能です。
(論点)終活に関するトレンド

終活に関するトレンドは、高齢化社会の進行やデジタル化の影響を受けて、さまざまな分野で進化しています。特に、終活は相続や財産管理だけでなく、人生の最終段階に向けた準備全般を含むようになっており、以下のようなトレンドが注目されています。
目次
1. エンディングノートの普及
2. デジタル遺産の取り扱い
3. 終活支援サービスの拡大
4. 生前葬の人気
5. 高齢者住宅・介護施設の選定
6. 遺言書作成の推進
7. オンライン終活の台頭

1. エンディングノートの普及
エンディングノートの利用増加: エンディングノートは、自分の人生の最終段階に関する希望や指示を残すツールとして、幅広い年齢層で利用が進んでいます。財産の配分、葬儀の希望、医療処置の方針、さらにはデジタル遺産やペットの世話に至るまで、詳細な情報を記載することができるため、家族に対する負担を軽減する手段として認識されています。特に、最近ではインターネットを通じて無料でダウンロードできるエンディングノートが普及し、自宅で簡単に始められる点が評価されています。
2. デジタル遺産の取り扱い
デジタル遺産の管理と処理: スマートフォンやパソコン、オンラインアカウント、SNS、クラウドストレージなど、現代の生活に密接に関連するデジタル資産が増加しています。このため、終活の一環としてデジタル遺産の管理や処理が大きな課題となっています。パスワード管理やデータの削除、SNSアカウントの削除やメモリアル化といった対応が求められるケースが増えており、それに対応する専門サービスも登場しています。特に、遺族がデジタル遺産を処理できるように、事前にアカウント情報を共有することが推奨されています。
3. 終活支援サービスの拡大
終活関連サービスの多様化: 終活を総合的に支援するサービスが増加しています。これらのサービスは、相続対策や葬儀の手配、墓の管理といった従来の終活内容だけでなく、デジタル遺産の整理、エンディングノート作成支援、医療や介護の希望を反映させたリビングウィルの作成支援など、多岐にわたります。特に、終活を専門とする相談窓口やセミナーも増えており、専門家によるアドバイスを受けることができるため、多くの人が積極的に利用しています。
4. 生前葬の人気
自分で葬儀を計画する生前葬の増加: 生前葬は、本人が自らの生前に葬儀を行うというスタイルで、近年その人気が高まっています。生前葬を行うことで、本人が葬儀の形式や内容を選び、家族に負担をかけずに最後の儀式を自ら演出できるというメリットがあります。特に、一度集まった家族や友人との最後の対面の場として、生前葬が感謝の気持ちを伝える場となることが多く、心理的な安堵感を得られる点が評価されています。
5. 高齢者住宅・介護施設の選定
介護施設や高齢者住宅の需要増加: 高齢化社会に伴い、自分の最期をどのような環境で迎えるかを考える人が増えています。介護施設や高齢者住宅の選定は、終活の重要な要素の一つとして注目されています。自立生活が難しくなった場合や、家族に介護の負担をかけたくないという理由から、早期に施設を選定するケースが増えています。特に、介護サービスの質や施設の場所、費用などを事前に確認しておくことが重要視されています。
6. 遺言書作成の推進
遺言書の重要性の再認識: 相続問題のトラブルを防ぐために、遺言書の作成が推奨されています。法務局による自筆証書遺言の保管制度が2020年に導入され、これにより、遺言書を自分で書いて法務局に預けることで、紛失や改ざんのリスクが軽減されるようになりました。これにより、自筆証書遺言の作成が一般化しつつあり、より多くの人が遺言書を残すことを検討しています。
7. オンライン終活の台頭
オンラインツールを使った終活の拡大: デジタル化が進む中で、オンラインで終活をサポートするツールやプラットフォームが増えています。オンラインで遺言書の作成サポートや、デジタル遺産の管理、エンディングノートの記入支援ができるサービスが提供されており、場所を問わずに終活を進めることが可能です。また、終活セミナーもオンラインで開催されることが増え、アクセスのしやすさから人気を集めています。
(論点)相続税対策としての不動産投資と最近のタワーマンション節税スキームの変更

相続税対策として、不動産投資は依然として効果的な手法の一つです。特に現金や有価証券よりも不動産の相続税評価額が低く抑えられることから、多くの相続人や資産家が節税を目的として不動産投資を活用しています。しかし、近年ではタワーマンションを利用した節税スキームに対する規制が強化され、一部の従来の節税手法が使えなくなりました。本稿では、不動産投資による節税効果とタワーマンションに対する規制強化について解説します。
【目次】
1.不動産投資による相続税対策の基本的な仕組み
2.賃貸不動産を活用した節税効果
3.小規模宅地等の特例を利用した節税
4.タワーマンション節税スキームの概要と規制の強化
5.不動産投資による相続税対策のリスクと注意点
6.まとめ

1. 不動産投資による相続税対策の基本的な仕組み
相続税の計算において、不動産の評価額は現金や有価証券と異なり、通常は市場価格よりも低く評価されます。土地や建物の評価額は、土地は「路線価」または「固定資産税評価額」、建物は「固定資産税評価額」に基づいて計算されるため、時価よりも低い値がつけられることが一般的です。これにより、相続税評価額が抑えられ、結果として相続税の負担が軽減されます。
2. 賃貸不動産を活用した節税効果
特に賃貸不動産を活用することで、さらなる節税効果が期待されます。賃貸物件を所有している場合、評価額は「借家権割合」などを考慮して減額されます。通常、借家権割合は30%で、建物の評価額は70%に減額されるため、相続税の負担をさらに軽減することができます。また、賃貸用土地も「貸宅地」として評価され、土地の評価額も低く抑えられます。
3. 小規模宅地等の特例を利用した節税
相続税の計算には、小規模宅地等の特例も活用できます。これは、相続人が居住する住宅や事業用の宅地に適用される制度で、一定面積までの土地に対して大幅な評価減が認められます。
居住用宅地の場合、330㎡までの土地に対して80%の評価減が適用されます。
事業用宅地の場合、400㎡までの土地に対して80%の評価減が適用されます。
これにより、自宅や事業用不動産の相続税評価額を大幅に引き下げることができ、節税効果が高まります。

4. タワーマンション節税スキームの概要と規制の強化
従来、タワーマンションを活用した相続税の節税スキームが多くの資産家に利用されてきました。タワーマンションは、一般的に上層階ほど市場価格が高いにもかかわらず、固定資産税評価額は建物全体に対して一律に設定されるため、上層階の高額物件を購入しても、評価額は低く抑えられていました。これにより、時価との差額を利用した節税が可能となっていました。
しかし、このタワーマンションを利用した節税スキームに対しては、不公平であるとの批判が強まり、2023年以降、国税庁は規制を強化しました。新しい規制では、タワーマンションの上層階と下層階の固定資産税評価額に差をつけ、上層階ほど高い評価がなされるようになりました。この変更により、タワーマンションを利用した大幅な節税は難しくなりました。
規制の背景
タワーマンションの上層階は時価で見ると極めて高額になる場合がありますが、相続税評価額が低いままだと、大規模な節税効果が得られてしまい、資産の集中や税負担の不公平さが問題視されていました。こうした背景から、評価方法の見直しが行われたのです。
新しい評価方法
規制強化後は、建物の階層ごとに評価額が設定され、上層階の高額物件にはより高い評価額が付けられるようになりました。これにより、タワーマンションを利用した節税スキームが封じられ、不動産投資による節税方法はより慎重に考慮する必要が生じました。

5. 不動産投資による相続税対策のリスクと注意点
不動産投資は相続税対策に有効な手段ですが、いくつかのリスクと注意点も存在します。
資産価値の変動リスク
不動産の価値は市場動向によって変動します。相続時には評価額が低く抑えられても、後に売却する際に市場価値が下落している場合、損失を被る可能性があります。
賃貸経営のリスク
賃貸不動産を活用する場合、空室リスクや維持管理費がかかることもあり、賃料収入が安定しない場合があります。適切な物件選定とリスク管理が必要です。

6. まとめ
不動産投資を活用した相続税対策は、評価額を引き下げることで相続税を軽減する効果が期待されます。
特に賃貸不動産や小規模宅地等の特例は有効な手段ですが、最近のタワーマンション節税スキームに対する規制強化により、従来のような大幅な節税効果を期待することは難しくなりました。
不動産投資を検討する際には、長期的な視点でのリスクや市場動向も考慮し、計画的な投資を行うことが重要です。
(論点)遺産相続に関する法律改正情報など

近年、遺産相続に関する法律や税制が改正されることが多く、相続手続きを円滑に進めるためには最新の法改正や判例を把握することが重要です。特に、相続税の負担や遺言書に関する規定の変化など、相続に直接影響を与える内容についての理解は、円滑な相続手続きと相続人間のトラブル防止に役立ちます。本稿では、相続に関する最新の法律改正、税制改正、および重要な判例について解説します。
目次
1.相続法の主な改正点
2.相続税制の最新改正情報
3.判例から見る相続における重要なポイント
4.相続法改正がもたらす実務上の影響
5.まとめ

1. 相続法の主な改正点
1.1. 配偶者居住権の創設
2020年4月から施行された相続法改正の一環として、配偶者居住権が新たに導入されました。この権利により、被相続人(亡くなった方)の配偶者は、自分が所有権を取得しなくても被相続人が住んでいた住宅に引き続き居住する権利を持つことが可能です。この制度は、配偶者が他の相続人と遺産分割協議を行う際、生活の基盤である自宅を守りながら、他の財産分割に柔軟に対応できるようにするために導入されました。
1.2. 遺言書保管制度の導入
遺言書保管制度も重要な改正の一つです。これまで、遺言書は家庭裁判所での検認が必要でしたが、2020年7月に導入された自筆証書遺言書保管制度により、法務局で遺言書を預かってもらうことができるようになりました。これにより、遺言書の紛失や改ざんのリスクを減らし、手続きが簡素化されました。

2. 相続税制の最新改正情報
2.1. 基礎控除額の変更
相続税に関しては、基礎控除額が大きな影響を与えます。2015年の改正以降、相続税の基礎控除額は「3000万円+法定相続人の数×600円」に引き下げられました。これにより、以前よりも多くの相続人が相続税の申告義務を負うようになり、中小企業や一般家庭にとっても相続税が身近な問題となっています。この改正によって、資産の計画的な生前対策の重要性が一層高まっています。
2.2. 小規模宅地等の特例
相続税の節税対策として広く活用されているのが、小規模宅地等の特例です。この制度は、被相続人が住んでいた宅地の評価額を大幅に減額することができ、配偶者や同居親族が引き続き住み続ける場合には、宅地の評価額を80%減額できるというものです。しかし、今後この特例の縮小や廃止の可能性が議論されており、法改正に関する最新情報に注意が必要です。

3. 判例から見る相続における重要なポイント
3.1. 遺留分侵害額請求の判例
遺留分(相続人に保障された最低限の財産取り分)に関する判例は、相続において重要な指針を示します。例えば、近年の判例では、被相続人が特定の相続人に大きな財産を遺贈した場合、他の相続人が遺留分を侵害されたとして請求するケースが増えています。この請求権は、法定相続人が自分の権利を守るための重要な手段であり、裁判所が遺留分をどのように判断するかが焦点となります。
3.2. 共有不動産の分割請求に関する判例
不動産が相続財産に含まれている場合、共有状態となることがよくあります。このようなケースでは、共有不動産の分割請求が問題となり、共有者の一人が他の共有者に対して不動産を売却するよう求めることができます。最近の判例では、共有者間の調整が難航した場合、裁判所が強制的に売却命令を出すケースも見られ、実務における重要な参考となっています。
4. 相続法改正がもたらす実務上の影響
4.1. 遺言書の作成の普及
相続法の改正により、遺言書の作成が今後ますます普及すると考えられています。特に自筆証書遺言の作成方法が簡素化され、保管制度も整備されたことで、多くの人が手軽に遺言書を作成できるようになりました。また、遺言書の存在により、相続人間のトラブルを未然に防ぐことが期待されています。
4.2. 生前贈与の活用促進
基礎控除額の引き下げや遺留分侵害額請求のリスクを踏まえ、多くの人が生前贈与を利用して相続税の負担を軽減しようとしています。贈与税は相続税よりも税率が高いものの、計画的に贈与を行うことで相続時の財産を減らし、相続税対策として効果的です。近年では、祖父母から孫への教育資金贈与や住宅取得資金贈与などの特例も活用されており、これらの制度をうまく利用することが求められます。

5. まとめ
相続に関する法律や税制は、近年大きく変化しています。特に、配偶者居住権や遺言書保管制度の導入は、相続手続きの簡素化と配偶者の権利保護を目的とした重要な改正です。また、相続税の基礎控除額引き下げにより、相続税申告の対象となる人が増加し、生前贈与や遺言書作成の普及が進んでいます。さらに、判例からも学べる重要なポイントがあり、相続人間のトラブルを避けるためには最新の法改正や判例を把握することが欠かせません。今後も法改正に注視しながら、適切な相続対策を講じることが重要です。
(論点)遺産分割協議の進め方

遺産分割協議は、相続人間で遺産の分配方法を話し合い、合意を得るための重要なプロセスです。しかし、相続に関わる感情的な問題や複雑な財産構成が原因で、協議が難航することも少なくありません。本稿では、遺産分割協議の基本的な手順、必要書類、そして協議が難航した場合の対処法について解説します。スムーズに進めるためのポイントを押さえて、適切に対応できるようにしましょう。
目次
1.遺産分割協議の基礎知識
2.遺産分割協議の手順
3.遺産分割協議に必要な書類
4.遺産分割協議が難航した場合の対処法
5.まとめ

1. 遺産分割協議の基礎知識
遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった方)の財産を相続人の間でどのように分配するかを決めるための話し合いです。相続人全員が協議に参加し、全員の同意を得ることが必要です。協議が成立すれば、遺産分割協議書が作成され、これに基づいて財産が分配されます。
重要なポイントとして、遺産分割協議は法的に強制されるものではありませんが、協議がなければ遺産分割ができず、相続手続きが進まないため、事実上必須のステップとなります。
2. 遺産分割協議の手順
遺産分割協議は以下の手順で進めるのが一般的です。
1. 相続人の確定
最初に行うべきは、相続人の確定です。被相続人が残した財産を受け継ぐ権利を持つ全員を特定し、戸籍謄本などを用いて確認します。相続人が誰であるかが不明確な場合、協議が進まなくなるため、最初にしっかりと確認することが重要です。
2. 遺産の把握
次に、被相続人が残した財産の全体像を把握します。不動産、預貯金、株式などのプラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金といったマイナスの財産も含まれます。財産目録を作成し、全員が認識を共有することが必要です。
3. 遺言書の確認
被相続人が遺言書を作成していた場合、まずその内容に従って分配が行われます。遺言書が存在しない、または全財産を指定していない場合に限り、遺産分割協議が必要となります。
4. 協議の実施
相続人全員で遺産の分配方法について話し合います。不動産は誰が取得するのか、現金はどのように分けるのかなど、具体的に決定します。この際、全員の同意を得ることが必要です。一人でも反対者がいると協議は成立しません。
5. 遺産分割協議書の作成
協議が成立したら、遺産分割協議書を作成します。これは、分割内容を法的に証明するための書類です。相続人全員の署名押印が必要で、この協議書があれば、相続財産を登記や金融機関に対して名義変更を行う際に使用できます。

3. 遺産分割協議に必要な書類
遺産分割協議を進めるためには、以下の書類が必要です。
被相続人の戸籍謄本:出生から死亡までの全ての戸籍謄本を揃えて、相続人を確定させます。
相続人全員の戸籍謄本:相続人であることを証明するために必要です。
遺産の一覧:不動産登記事項証明書、預金通帳の写し、株式の残高証明書など、財産の全体像を示す書類が必要です。
印鑑証明書:遺産分割協議書に署名押印する際に、実印とともに印鑑証明書が必要です。
これらの書類を用意することで、協議をスムーズに進める準備が整います。
4. 遺産分割協議が難航した場合の対処法
遺産分割協議が順調に進まない場合、いくつかの対処法があります。
1. 専門家の介入
弁護士や司法書士などの専門家を交えて協議を進めることで、法的な観点からアドバイスを受けながら合意形成を図ることができます。第三者の専門家が入ることで、感情的な対立が和らぎ、冷静な話し合いが可能になることもあります。
2. 家庭裁判所への調停申立て
相続人間で話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停委員が間に入り、相続人間の合意を促します。調停でも合意に至らない場合は、審判に移行し、最終的には裁判所が分割方法を決定します。
3. 代償分割
協議が進まない理由として、特定の相続人が不動産や特定の財産を独占したいという意向がある場合、代償分割という方法があります。これは、不動産を特定の相続人が取得し、他の相続人に対してその価値相当分を現金で支払う方法です。これにより、争いを避けながら公平な分配が可能となります。

5. まとめ
遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要な重要なプロセスです。手順を正確に踏み、必要書類を揃えておくことで、協議をスムーズに進めることができます。また、協議が難航した場合には、専門家の介入や家庭裁判所の調停を活用することで、問題解決を図ることが可能です。相続においては、感情的な問題が絡むことが多いため、冷静な対応と法的な知識を持つことが大切です。
(論点)保険を活用した相続対策のポイント

相続において、財産をスムーズに承継するためには様々な対策が必要です。特に、現金や不動産に比べて手続きが比較的簡単で、税制上のメリットもある生命保険は、相続対策として非常に有効です。本稿では、生命保険を活用した相続対策について、その具体的なメリットや注意点を解説します。相続の際に生じる問題を最小限に抑えるため、生命保険をどのように利用すればよいかを理解しましょう。
目次
1.生命保険が相続対策に有効な理由
2.相続税の非課税枠と生命保険の活用
3.遺産分割のトラブル防止策としての生命保険
4.生命保険契約の注意点とリスク
5.まとめ

1. 生命保険が相続対策に有効な理由
生命保険は、相続対策として有効な理由がいくつかあります。まず、生命保険は受取人が指定されているため、遺産分割の際にスムーズに相続人に分配される特徴があります。また、現金として受け取ることができるため、遺産を分ける際の流動性を高めることが可能です。不動産など流動性が低い資産が多い場合でも、保険金を用いることで、相続税の納税資金や遺産分割時の調整金として役立つ点が大きな利点です。
さらに、生命保険金は「みなし相続財産」として扱われ、一定の非課税枠が適用されるため、相続税の負担軽減にも繋がります。後述する非課税枠の詳細についても理解しておくことが重要です。
2. 相続税の非課税枠と生命保険の活用
生命保険が相続税対策に有効である理由のひとつが、相続税の非課税枠です。生命保険金には、法定相続人一人当たり500万円の非課税枠が設けられており、この枠内であれば保険金に対して相続税が課されません。例えば、法定相続人が3人いる場合、1,500万円までの保険金は非課税となるため、税負担を軽減することができます。
この非課税枠を活用することで、遺産全体の課税対象額を減らすことができるため、相続税の納税額を抑える効果が期待できます。ただし、非課税枠を活用するためには、契約者や受取人の設定が重要です。特に、保険契約者と受取人が誰であるかによって課税対象が変わるため、契約時には適切な設定が必要です。
3. 遺産分割のトラブル防止策としての生命保険
相続時に遺産分割のトラブルが発生する原因のひとつが、不動産や株式など、流動性の低い資産の分割です。このような資産は現金と異なり、簡単に分割することが難しいため、相続人間での争いの原因となりやすいです。ここで生命保険が有効です。受取人を明確に指定し、あらかじめ保険金として現金を用意しておくことで、遺産分割の際にスムーズな現金分配が可能となります。
また、特定の相続人に対して財産を多めに遺したい場合にも、生命保険を活用することで、公平感を保ちつつ意向を反映することができます。たとえば、長男が家業を引き継ぐ場合、他の相続人に対しては保険金で調整を行うことで、分割の公平性を確保することができるでしょう。

4. 生命保険契約の注意点とリスク
生命保険は相続対策として有効ですが、いくつかの注意点やリスクも存在します。まず、契約者・被保険者・受取人の設定に注意しなければならない点です。た
とえば、契約者と受取人が異なる場合、贈与税が課される可能性があります。したがって、契約内容をしっかりと確認し、専門家に相談することが重要です。
また、生命保険に依存しすぎることもリスクの一つです。あくまで生命保険は相続対策のひとつであり、遺言書や信託など他の対策と組み合わせて総合的に計画することが望ましいです。保険金の額が不足している場合や、逆に過剰な保険に加入してしまうと、無駄な保険料を支払うことになるため、適切な保険金額を設定することも大切です。

5. まとめ
生命保険は、相続税の非課税枠を活用しながら、遺産分割のトラブルを防ぎ、相続税の負担を軽減する有効な手段です。しかし、その一方で契約者・受取人の設定に注意し、他の相続対策と組み合わせる必要があります。生命保険を含めた総合的な相続対策を行うことで、相続人への負担を最小限に抑え、スムーズな資産承継を実現することができるでしょう。
(論点)遺言書に関する統計データについて

遺言書の作成に関する普及についての統計は、いくつかの公的機関や調査機関によって報告されています。
特に、自筆証書遺言の保管制度が導入された2019年以降、遺言書の作成が普及していることがわかるデータがあります。
目次
1. 法務局による自筆証書遺言書保管制度の利用状況
2. 遺言書作成率のアンケート調査
3. 遺言書に関する相談件数の増加
4. 遺言書に関するセミナーや講座の開催数

1. 法務局による自筆証書遺言書保管制度の利用状況
法務省のデータによると、2019年7月に開始された「自筆証書遺言書保管制度」の利用者数は年々増加しています。開始から約1年後の2020年6月までに、全国の法務局に保管された自筆証書遺言書の件数は約12,000件を超えました。これは、従来の自筆証書遺言が抱えていた紛失や改ざんのリスクを軽減する制度の効果が現れていると考えられます。
また、2023年の統計では、保管件数が年間20,000件を超えたという報告もあり、遺言書作成に対する関心が高まっていることが示されています。
2. 遺言書作成率のアンケート調査
民間の調査機関によるアンケート調査では、遺言書を作成している人の割合が徐々に増加していることが示されています。2022年の調査によると、60歳以上の人の約30%が遺言書を作成しているか、作成を検討しているとの結果が出ています。特に、高齢者の間で、相続トラブルを避けるために遺言書を用意することが一般化しつつあることがわかります。

3. 遺言書に関する相談件数の増加
全国の司法書士会や弁護士会への遺言書に関する相談件数も増加しています。日本司法書士会連合会によると、遺言書に関する相談は2010年代以降年々増加傾向にあり、2020年から2022年にかけては特に大幅に増加しています。これには、法改正による遺言書保管制度の導入や相続トラブルの増加が影響していると考えられます。
4. 遺言書に関するセミナーや講座の開催数
遺言書の作成に関するセミナーや講座の開催数も増加しています。自治体や民間企業による遺言書作成セミナーの開催件数は、2019年以降急増しており、多くの高齢者やその家族が遺言書作成に関する情報を学ぶ機会が増えています。
これらのデータから、遺言書作成の普及は着実に進んでいることがわかります。特に法務局の自筆証書遺言書保管制度の利用が広がることで、遺言書の作成に対するハードルが下がり、今後もさらに多くの人々が遺言書を作成するようになると予想されています。
(論点)相続対策としての生前贈与の統計データについて

生前贈与は相続税対策として広く活用されており、増加傾向を示す統計データもいくつか存在します。生前贈与の増加には税制上の特典や経済環境の変化が影響しており、特に高齢化社会の進行とともに贈与の活用が注目されています。
目次
1. 国税庁の贈与税申告件数
2. 贈与税の納税額の推移
3. 特定用途に対する贈与の利用増加
4. 金融機関の調査データ
5. 相続税改正後の贈与増加
まとめ

1. 国税庁の贈与税申告件数
国税庁が毎年発表している贈与税に関する統計によると、生前贈与の申告件数は増加傾向にあります。例えば、2020年度の国税庁のデータでは、贈与税の申告件数は約61万件となり、これは数年前に比べて増加しています。2015年と比較すると、2020年度には約10%以上の増加が見られ、生前贈与が資産承継の方法として一般化していることが伺えます。
2. 贈与税の納税額の推移
贈与税の納税額も増加傾向にあります。2019年から2020年にかけて、贈与税の納税額は約1.6兆円を超え、過去5年間で徐々に増加してきています。この背景には、高額な財産の贈与や、贈与税の非課税枠を利用した早期の資産移転が進んでいることがあります。
3. 特定用途に対する贈与の利用増加
特に教育資金や住宅取得資金の贈与に関する特例制度を利用するケースが増えています。この特例を利用することで、一定額までの贈与が非課税となるため、孫世代への教育資金や子どもへの住宅購入支援を目的にした贈与が増加しています。
教育資金贈与の利用状況
文部科学省の調査によると、2013年に導入された教育資金贈与の非課税制度を利用した贈与は、開始から2020年までに累計で約3兆円以上に達しています。年々利用者が増加しており、この制度が早期贈与を促進する一因となっています。
住宅取得資金贈与の利用状況
国土交通省によると、住宅取得資金に対する贈与の非課税制度も利用者が増加しており、特に低金利時代が続く中で、若年世代への住宅購入支援が増加しています。この特例を活用することで、子ども世代に大規模な贈与を行う動きが顕著になっています。
4. 金融機関の調査データ
大手金融機関や信託銀行の調査によると、生前贈与を行う人の割合が増えていることも示されています。例えば、三菱UFJ信託銀行のアンケート調査では、60代以上の回答者の約30%が生前贈与を行ったことがあると回答しており、さらに多くの人が将来の贈与を検討しています。

5. 相続税改正後の贈与増加
2015年に相続税の基礎控除額が引き下げられたことで、相続税対策として生前贈与を活用する人が増加しました。この改正により、相続税の負担が増える可能性のある資産家が、相続発生前に資産を移転する手段として贈与を積極的に利用するようになっています。相続税の対象となる遺産額が増えたことが、贈与の増加に影響しています。

まとめ
生前贈与の増加は、国税庁の贈与税申告件数や納税額のデータ、また特例制度を利用した贈与の増加傾向などからも明らかです。特に、相続税対策や資産承継のために、生前から資産を子や孫に移転する動きが加速しており、贈与に関する制度や特例がますます利用されるようになっています。このようなトレンドは、今後も続くと予想されています。
(論点)相続コンサルタント(民間資格)の役割と限界(士業との連携が求められる理由)

相続手続きは複雑で、多くの人々がどこから手を付けるべきか迷ってしまうものです。相続コンサルタントは、こうした手続きのサポートを提供することで、クライアントの負担を軽減する役割を担っています。しかし、相続には法律や税務が深く関与しており、これらの分野は弁護士や税理士などの専門資格を持つ者(士業)のみが扱うことが許されています。相続コンサルタントがどこまでサポートできるのか、その限界と役割について詳しく解説します。
目次
1.相続コンサルタントとは
2.法律業務と非弁行為の禁止
3.税務業務と税理士法違反
4.相続コンサルタントの適切な役割
5.士業との連携の重要性
6.結論

1. 相続コンサルタントとは
相続コンサルタントは、相続手続きに関する全体的なアドバイスやサポートを提供する専門家です。相続の流れや必要な書類、手続きの進め方をクライアントに案内し、手続きをスムーズに進行させることを目的としています。特に、相続財産の整理や管理、生前対策に関する相談に応じ、士業が必要な場合には適切な専門家に繋げる役割も果たします。
ただし、相続コンサルタントが扱える業務には限界があり、法的・税務的なアドバイスや具体的な手続きは資格を有する専門家に委ねる必要があります。
※民間資格である相続系のコンサル資格について、数日の研修を経て取得できるものもあり、国家資格とは明らかに知識やできることに差があります。
2. 法律業務と非弁行為の禁止
相続に関して最も重要なのが、遺産分割協議や相続放棄、遺言執行といった法律的な手続きです。これらの業務は、弁護士法に基づき、弁護士のみが行うことが認められています。無資格者が報酬を得て法律事務を行うことは「非弁行為」とされ、法的に禁止されています。
例えば、相続人同士の争いが発生した場合に、相続コンサルタントが法的な交渉を代行することや、遺産分割協議書を作成することはできません。こうした業務はすべて弁護士に依頼し、コンサルタントはクライアントの要望を整理し、必要に応じて弁護士に引き継ぐ役割を果たします。
3. 税務業務と税理士法違反
相続税の申告や財産評価は、税理士が行う専門領域です。税理士法により、無資格者が税務に関する具体的な相談や代理申告を行うことは禁止されています。相続コンサルタントが税務相談を受けたり、相続税申告の代理を行うことは法に触れる行為となります。
コンサルタントができるのは、相続税の概要や基本的な説明を行うことに留まり、具体的な対応が必要な場合は税理士に依頼する必要があります。税理士との連携を通じて、クライアントが適切な申告を行えるようサポートすることが重要です。

4. 相続コンサルタントの適切な役割
相続コンサルタントは法律や税務の業務を直接行えないため、以下のような役割を担うことが一般的です。
相続手続きのガイド: 相続の全体的な流れや手続きを分かりやすく説明し、必要な書類の整理や提出を支援します。法律的な判断が必要な場合は弁護士に相談し、税務的な問題が発生すれば税理士に繋げる役割を果たします。
財産の整理と管理: 相続財産を把握する作業は、法律や税務の範囲に含まれないため、コンサルタントが適切にサポートできます。例えば、預金口座や不動産、株式などをリストアップし、遺産分割や申告に備えることが可能です。
生前対策や遺言書の準備サポート: クライアントが生前対策を検討する際、一般的なアドバイスを行い、具体的な法的手続きについては専門家と協力して進めます。遺言書の作成に際しても、士業と協力して内容を精査します。
5. 士業との連携の重要性
相続コンサルタントが最大限にクライアントに貢献するためには、弁護士や税理士との密接な連携が欠かせません。法律的な問題が生じた場合には弁護士、税務に関する問題が生じた際には税理士と連携し、専門家が適切に対応できるようコーディネートします。
クライアントのニーズに応じて専門家と連携することで、トラブルを回避し、スムーズに相続手続きが進められるようサポートします。コンサルタントは士業の専門知識を借りながら、クライアントに安心感を提供し、相続手続きを円滑に進めるための重要な橋渡し役を担っています。

6. 結論
相続コンサルタントは、相続に関する相談や手続きをサポートする役割を担いますが、法律や税務に関しては士業に任せる必要があります。弁護士や税理士との連携を通じて、クライアントに最適なソリューションを提供することが相続コンサルタントの役割であり、相続に関する課題に対して効果的に対応するためには、士業との協力が不可欠です。
(論点)独り身で相続人がいない場合の財産処理と手続き 〜弟が相続放棄した場合の対処法〜

人生の終わりに向けて、財産の相続や処理について考えることは非常に重要です。特に独り身であり、相続人が限られている場合、適切な準備をしなければ、遺産が放置されたり、家族に不必要な負担をかける可能性があります。本記事では、独り身で親が他界し、相続人が弟のみでその弟も相続を放棄するといった状況において、どのように財産が処理されるのか、そして必要な手続きについて解説します。遺言書を作成する意義や、相続人がいない場合の財産処理の流れについても詳述します。
目次
1.相続人がいない場合の基本的な流れ
2.相続放棄の影響とその後の手続き
3.相続財産管理人の選任と予納金の必要性
4.特別縁故者への財産分配の可能性
5.最終的に財産が国に帰属するまでの手続き
6.遺言書作成の重要性と予防策
7.まとめ

1. 相続人がいない場合の基本的な流れ
まず、独り身で両親が既に他界している場合、相続人として考えられるのは通常、兄弟姉妹やその代襲相続人(甥や姪)となります。本ケースでは、唯一の相続人が弟であり、その弟が相続放棄を希望している場合、法定相続人が実質的にいない状態となります。この場合、遺産の処理は自動的には進行せず、一定の手続きを経る必要があります。
2. 相続放棄の影響とその後の手続き
相続人である弟が相続を放棄すると、その相続分は無効となり、次に相続するべき人がいない場合は、家庭裁判所に「相続人不存在」の申し立てを行う必要が出てきます。この手続きを行うのは、通常、利害関係者や債権者です。相続放棄が確定すると、相続人がいないとみなされ、相続財産の処理が開始されます。

3. 相続財産管理人の選任と予納金の必要性
相続人がいないことが確認されると、家庭裁判所によって「相続財産管理人」が選任されます。この相続財産管理人は、亡くなった人の財産を管理し、必要に応じて債務の清算や財産の整理を行います。相続財産管理人の選任にあたっては、予納金が必要です。予納金の額は、相続財産の内容や規模によって異なり、一般的には20万円〜100万円程度が相場となっています。この金額は、財産の管理や清算にかかる費用をカバーするためです。
相続財産管理人は、財産の整理だけでなく、官報での公告も行います。この公告により、まだ見つかっていない相続人や債権者が名乗り出ることが促されます。
4. 特別縁故者への財産分配の可能性
相続人がいない場合でも、亡くなった人と特別な関係を持つ人、いわゆる「特別縁故者」に財産が分配される可能性があります。特別縁故者とは、長年にわたって世話をしていた友人や、実質的に家族同様の関係を築いていた人物を指します。家庭裁判所に特別縁故者から申し立てがあれば、その人に財産の一部が分配されることがあります。
特別縁故者への財産分配の手続きは、相続財産管理人が財産の管理・清算を終えた後に行われます。このため、特別縁故者が財産を受け取るには、ある程度の時間がかかることが予想されます。
5. 最終的に財産が国に帰属するまでの手続き
特別縁故者もいない、または特別縁故者が財産を請求しなかった場合、最終的に財産は国に帰属します。相続財産管理人が家庭裁判所の指示に従い、財産を国庫に帰属させる手続きを行います。これが最終段階です。

6. 遺言書作成の重要性と予防策
このような複雑な手続きを避け、スムーズに財産を処理するためには、遺言書の作成が非常に重要です。遺言書を作成しておけば、誰にどの財産をどのように渡したいのかを明確に指示することができ、相続人がいない場合でも特定の団体や人物に財産を遺贈することが可能です。遺言書があることで、相続手続きが簡略化され、残された家族や関係者に不必要な負担をかけることも避けられます。

7. まとめ
独り身で相続人が弟のみ、かつその弟も相続放棄を予定している場合、財産は自動的に国に帰属するわけではなく、相続財産管理人の選任や公告、場合によっては特別縁故者への分配など、複雑な手続きを経ることになります。こうした手続きを避けるためには、遺言書を作成しておくことが最善の方法です。自分の意志に沿った財産分配を確実に実行するためにも、遺言書作成を検討することを強くお勧めします。
(論点)離婚後、別れた子供が財産を拒否する理由(贈与や保険金受取人の指定が引き起こす問題点)

離婚後に親が相続対策を進める際、過去に別れた配偶者との間にできた子供に財産を贈与しようとするケースや、生命保険の受取人としてその子供を指定する場合があります。しかし、このような提案に対して、子供が財産を受け取ることを拒否する場面も少なくありません。なぜなら、単純に親からの財産を受け取ることが利益にならない、もしくは心理的・実務的な理由で負担となることがあるからです。本稿では、そうした背景を具体的に解説し、子供が財産を受け取ることを躊躇する主要な理由を考察していきます。
目次
1.老後の介護を期待されることへの懸念
2.過去の感情的な確執
3.公平性や他の兄弟姉妹への配慮
4.既に自立した生活を確立している場合
5.他の親族との関係悪化を恐れる
6.税金や法律上の問題を懸念

1. 老後の介護を期待されることへの懸念
親が子供に財産を贈与することで、子供に老後の介護を期待しているのではないかという懸念を抱かせることがあります。特に離婚後に親子関係が疎遠になっている場合、突然の財産贈与や保険金受取の提案は、子供にとって将来的に親の介護責任を押し付けられるのではないかという不安を生むことがあります。子供にとって、財産を受け取ることが心理的な負担となり、介護負担を回避するために拒否するケースが考えられます。
2. 過去の感情的な確執
離婚後に親子関係が冷え込んでいる場合、親が財産を贈与しようとしても子供はそれを受け入れられないことがあります。親との関係に対する心理的な抵抗や、親に対する不満や傷ついた感情が残っている場合、財産を受け取ることで感情的な負担が増す可能性があります。特に、親が自分の人生にあまり関与してこなかったと感じる場合、今さら財産を受け取ることに意味を見出せないという理由で拒否されることがあります。

3. 公平性や他の兄弟姉妹への配慮
分かれた親との間に異母兄弟や異父兄弟がいる場合、財産を受け取ることが他の兄弟姉妹との間で不公平感を生むと感じることがあります。財産の分配が不平等になると、兄弟姉妹との関係が悪化する恐れがあり、それを避けるためにあえて財産を受け取らないという選択をすることがあります。親子関係だけでなく、兄弟間のバランスを考慮して、トラブルを回避しようとする姿勢が見られるのです。
4. 既に自立した生活を確立している場合
子供がすでに自立し、安定した生活を送っている場合、親からの財産を必要としないと感じることがあります。特に経済的に余裕があり、追加の財産が必須ではない場合には、無用なトラブルや管理の煩雑さを避けたいと考え、財産を受け取らない選択をすることがあります。こうした場合、子供にとって財産の有無が生活に大きな影響を与えるものではないため、関わりたくないという感情が働くのです。

5. 他の親族との関係悪化を恐れる
相続や贈与を巡るトラブルが親族間で発生することは珍しくありません。特に親が再婚して新たな家族ができている場合、その家族との間で関係が悪化することを恐れて財産を受け取らないことがあります。親族間の争いに巻き込まれたくない、もしくは家族関係を壊したくないという思いから、財産を受け取らない選択をするケースも多いです。分かれた親との関係だけでなく、新たな家族や親族との調和を優先する姿勢が見られます。
6. 税金や法律上の問題を懸念
贈与税や相続税の負担が発生する可能性がある場合、子供はそのコストを避けるために財産を受け取らないことがあります。特に、贈与や保険金受取後の財産管理や税金支払いに対する責任を負いたくないと感じることが理由になることがあります。また、財産を受け取ることが法律上の義務や責任を伴うことを懸念し、そのリスクを避けるために財産を拒否することも考えられます。特に、負債が含まれる財産の場合、債務の引き継ぎを避けたいと考えるのは自然な流れです。

結論
離婚後、親が生前に分かれた子供に対して財産を贈与しようとする場合や保険金の受取人に指定する場合、子供がその提案を拒否することは珍しくありません。老後の介護を期待されることや過去の感情的な確執、兄弟姉妹との関係悪化の懸念、さらには税金や法律上の問題など、さまざまな理由が絡み合って子供が財産の受け取りを拒否する要因となります。親子間の関係だけでなく、周囲の状況や実務的な負担が子供の選択に影響を与えるのです。心情面などを配慮しながら、取り組まなければならないと思います。
(論点)相続対策における養子縁組と財産減少の法的・税務的側面(注意すべきポイント)

相続対策の一環として、財産を減らす方法や、養子縁組を活用して法定相続人の数を増やすことが一般的に行われます。しかし、法律上と税務上では異なる基準が存在し、それらを理解せずに対策を講じると、思わぬ結果になることも少なくありません。本記事では、養子縁組による法定相続人の増加と財産を減らす方法に焦点を当て、相続対策を進める際に気を付けるべき法的・税務的側面を解説します。
目次
1.財産を減らすことによる相続対策
2.養子縁組による法定相続人の増加
3.法律上と税務上の違い:養子縁組の制約
4.専門家に相談する際の注意点
5.まとめ

1. 財産を減らすことによる相続対策
相続税対策の基本的な考え方として、財産の額を減らすことがあります。
財産を減らす方法として一般的なのが、生前贈与です。毎年110万円まで非課税で贈与できるため、この制度を活用して計画的に財産を減らしていくことが可能です。
また、親族や信頼できる第三者に財産を信託する家族信託の方法もあります。
家族信託では、被相続人が存命中に財産の管理を委ね、亡くなった際に遺産として相続人に渡る財産を計画的に減らすことができます。
このように、生前から少しずつ財産を減らしておくことで、相続時の財産規模を小さくし、相続税の負担を軽減することが可能です。

2. 養子縁組による法定相続人の増加
相続対策の一つに、養子縁組を行うことで法定相続人を増やし、相続税の基礎控除額を増やす方法があります。相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 法定相続人の数 × 600万円」という計算式で決まるため、養子を迎えて法定相続人を増やすことで基礎控除額を増やすことができます。
例えば、被相続人に子供がいない場合、養子を迎えることで法定相続人の数が増え、相続税の負担を軽減する効果が期待できます。しかし、養子縁組はただ法定相続人を増やすだけでなく、家庭の状況や相続人の意向を十分に考慮して行う必要があります。
3. 法律上と税務上の違い:養子縁組の制約
ここで注意すべきなのが、法律上の養子縁組と税務上の取り扱いが異なる点です。法律上、養子縁組は制限がなく、何人でも養子を迎えることができます。しかし、税務上の相続税計算における法定相続人の数には制限があります。
税務上の規定では、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合でも2人までしか、基礎控除の計算において養子縁組を考慮することができません。したがって、実子がいない夫婦が養子を3人迎えた場合でも、相続税の基礎控除を計算する際に考慮できるのは2人までとなります。
この税務上の制約を知らずに、多くの養子を迎えることで相続税を大幅に軽減しようと考えても、期待した効果は得られません。そのため、養子縁組を相続対策として活用する際には、この法律上と税務上の違いを十分に理解しておくことが重要です。

4. 専門家に相談する際の注意点
相続対策を進める際、多くの方が税理士や弁護士、司法書士などの専門家に相談します。しかし、専門家のアドバイスが全て万全とは限らず、法的な側面だけでなく、税務的な側面も十分に考慮していなければ「こんなはずではなかった」という結果になりかねません。
例えば、法律に詳しい専門家が養子縁組を無制限に勧めたとしても、税務上の制約については考慮されていなければ、後々予想以上の相続税が課されることもあります。逆に、税務の専門家が提案した節税対策が、法的には家族間のトラブルを引き起こすリスクがあることもあります。
そのため、相続対策を行う際には、法律と税務の両方に精通した専門家に相談するか、双方の専門家が集まる相談会で、総合的な視点でアドバイスを受けることが重要です。さらに、家族の意向や財産の種類など、個別の事情を反映した対策が求められます。
※アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、月一で「相続法律・税務無料相談会」を実施しております。税務の相談も必要と判断した場合、そちらの相談会へ誘導するようにしております。

5. まとめ
相続対策は、財産の減少や法定相続人の増加を目的に多様な手法が存在しますが、それぞれには法律上と税務上の違いがあることを理解しておく必要があります。特に養子縁組を活用した相続税対策では、税務上の制約により、思ったような効果が得られない場合もあるため注意が必要です。
また、専門家に相談する際も、法律面だけでなく税務面についても十分に検討することが大切です。相続対策は、単なる節税やトラブル防止にとどまらず、家族の将来を見据えた計画的な準備が求められます。最適な対策を講じるためには、専門家の意見を尊重しつつ、自分自身も十分な知識を持って準備を進めることが重要です。
(論点)相続対策の手法(目的別に考える効果的なアプローチ)

相続対策を効果的に進めるためには、被相続人が生前に何を準備しておくかが重要です。財産の分配、税負担の軽減、家族間のトラブル防止など、目的に応じた対策を講じることで、相続発生後にスムーズに手続きを進めることができます。本記事では、相続対策として被相続人が生前に行うべき手法を目的別に整理し、具体的な対策について解説します。
目次
1.トラブル防止を目的とした手法
2.税負担の軽減を目的とした手法
3.配偶者や家族の生活を守るための手法
4.財産分割を円滑に行うための手法
5.まとめ

1. トラブル防止を目的とした手法
相続時に家族間でのトラブルを防ぐため、被相続人が生前に明確な意思表示をしておくことが重要です。これにより、相続人同士での争いや不満を避けることができます。
遺言書の作成
遺言書は、相続人への財産分配を事前に指示するための重要な書類です。被相続人が生前に遺言書を作成しておくことで、法定相続とは異なる分配を行うことができ、家族間のトラブルを回避できます。特に公正証書遺言は法的に強力で、争いの防止に役立ちます。
家族信託の活用
家族信託は、信頼できる家族に財産の管理や分配を任せる手法です。特に、被相続人が認知症などで判断能力が低下した際にも有効に機能するため、早めの信託設定が推奨されます。家族信託を活用することで、被相続人の意思に基づく財産管理が可能となり、相続時のトラブルを避けられます。

2. 税負担の軽減を目的とした手法
相続税の負担は相続財産の額により大きく異なるため、被相続人が生前から対策を講じることが重要です。以下の手法で、相続時の税負担を軽減できます。
生前贈与の活用
生前贈与は、年間110万円までが非課税で贈与できる制度です。相続時に財産が一度に移転するのではなく、生前に計画的に財産を少しずつ移すことで、相続財産を減らし、相続税の負担を軽減できます。定期的に贈与することで、被相続人が元気なうちに相続財産をコントロールできます。
生命保険の非課税枠活用
生命保険を活用することで、相続税を軽減できます。生命保険金には法定相続人1人当たり500万円の非課税枠があり、この枠を利用して財産を分配すれば、相続税の節税効果が期待できます。生命保険は、配偶者や家族の生活費を確保する手段としても有効です。

3. 配偶者や家族の生活を守るための手法
相続後、配偶者や家族が安心して生活を続けられるようにするため、被相続人が生前に生活資金や住居に関する対策を行うことが大切です。
配偶者居住権の設定
配偶者居住権は、配偶者が亡くなった場合でも、残された配偶者が生涯にわたり自宅に住み続けられる権利です。これにより、配偶者が自宅を失うことなく生活を続けられるため、安心感が得られます。生前に配偶者居住権を確保するための手続きを行っておくことが重要です。
生活費や資産の確保
被相続人が遺言書や家族信託を通じて、配偶者や子供に十分な生活資金を確保しておくことは、相続対策の一環として欠かせません。特に生命保険や預貯金の分配方法を明確にしておくことで、配偶者や家族が安心して生活を続けられるようにできます。
4. 財産分割を円滑に行うための手法
相続発生後の手続きがスムーズに進むように、被相続人が事前に準備を整えておくことが重要です。
財産目録の作成
被相続人が生前に財産目録を作成し、すべての財産を把握しておくことが、相続手続きを円滑に進めるための基本です。財産目録には、不動産、金融資産、動産などすべての財産をリストアップし、各相続人にどの財産をどのように分配するかを明記しておくことで、遺産分割協議の際の混乱を防げます。
不動産の共有状態の解消
複数の相続人が不動産を相続する場合、共有状態が続くと後々の管理や処分に困難が生じます。被相続人が生前に不動産の名義を整理しておくか、共有状態を解消しておくことで、相続後のトラブルを避け、スムーズな財産分割が可能になります。

5. まとめ
相続対策は、被相続人が生前に何を準備し、どのような手段を講じるかが重要です。遺言書や家族信託、生前贈与などの対策を通じて、財産の分配や税負担の軽減、家族の生活を守るための措置を講じることができます。
特に、相続時のトラブルを未然に防ぐためには、早めの準備と計画が必要です。被相続人が生前に適切な相続対策を行うことで、相続人たちが安心して円滑な相続手続きを進めることができ、家族の未来を守ることができます。
(論点)子供がいない夫婦のための相続対策(安心できる未来のために)

子供がいない夫婦にとって、相続は非常にデリケートな問題です。夫婦間で財産をできるだけ配偶者に引き継ぎたいと考える一方で、法定相続人として親族が財産を受け取る可能性も高くなります。このような状況で、適切な相続対策を講じないと、配偶者の意思に反して、望まない形で財産が分割されるリスクがあります。この記事では、子供がいない夫婦が安心して将来に備えるための相続対策について詳しく解説します。
目次
1.法定相続の基本ルール
2.遺言書作成の重要性
3.生命保険の活用
4.生前贈与で財産の分割を円滑に
5.配偶者居住権の活用
6.公正証書遺言による確実な遺産分割
7.まとめ

1. 法定相続の基本ルール
子供がいない場合、夫婦間の相続は通常とは異なる法定相続ルールが適用されます。基本的に、配偶者は常に法定相続人として相続権を持ちますが、配偶者以外にも次の親族が相続人となる可能性があります。
**直系尊属(両親や祖父母)**が存命の場合、配偶者と共に法定相続人となります。配偶者が全財産の3分の2を、直系尊属が残りの3分の1を相続します。
兄弟姉妹が相続人となる場合は、両親や祖父母が既に他界している場合に限ります。この場合、配偶者が全財産の4分の3を相続し、兄弟姉妹が4分の1を相続します。
このように、子供がいないと親や兄弟姉妹が相続権を持つため、財産が思わぬ方向に分割される可能性があります。
2. 遺言書作成の重要性
子供がいない夫婦にとって、最も重要な相続対策は遺言書の作成です。遺言書がない場合、法定相続に基づいて遺産が分割されるため、配偶者が希望する形で財産が引き継がれないことがあります。
遺言書を作成することで、財産を誰にどのように分けるかを明確に指示でき、配偶者に全ての財産を残すことも可能です。

3. 生命保険の活用
生命保険は、相続税対策や財産のスムーズな移転を行うための有効な手段です。生命保険の受取人に配偶者を指定しておけば、保険金は相続財産には含まれず、税制上も有利な扱いを受けます。また、遺産分割の際に問題が生じたとしても、保険金は確実に配偶者の手に渡ります。
4. 生前贈与で財産の分割を円滑に
生前贈与を活用することも、相続対策の一つです。たとえば、配偶者に対して生前に財産を贈与することで、遺産分割時のトラブルを避けることができます。生前贈与には税金が発生する場合がありますが、年間110万円までの贈与については非課税となるため、長期的な計画を立てて少しずつ贈与を行うことで、税負担を軽減できます。
5. 配偶者居住権の活用
2020年から施行された配偶者居住権は、配偶者が住んでいる家に引き続き住む権利を確保するための制度です。
これにより、子供がいない場合でも、他の相続人との間で遺産分割が必要になった際、住み慣れた家を手放さずに済むことができます。この権利を活用することで、配偶者の生活の安定が図られます。

6. 公正証書遺言による確実な遺産分割
遺言書の中でも、特に公正証書遺言が推奨されます。公正証書遺言は、公証人の立ち会いのもとで作成されるため、法的に有効性が高く、後々の争いを避けることができます。子供がいない夫婦の場合、親族間での相続争いが発生するリスクがあるため、公正証書遺言を作成することで、そのようなトラブルを回避できます。
7. まとめ
子供がいない夫婦にとって、相続対策は非常に重要です。法定相続に任せると、親や兄弟姉妹が相続に関与することになり、望まない結果となる可能性があります。しかし、遺言書の作成や生命保険の活用、生前贈与などの対策を講じることで、配偶者に安心して財産を引き継がせることができます。また、配偶者居住権の活用や公正証書遺言の作成によって、より確実な相続対策を行うことが可能です。将来の不安を軽減するためにも、早めに相続対策を検討し、配偶者と共に安心できる未来を築きましょう。
(論点)不動産を含む遺産分割の方法とその注意点

相続において、遺産の中に現金や預金といった流動性の高い財産が含まれている場合、それを相続人間で分けるのは比較的容易です。しかし、遺産に不動産が含まれている場合は、流動性が低いため、相続人同士でどのように分割するかを慎重に検討する必要があります。不動産は、個々の相続人が物理的に分けることができないため、分割方法に迷うことが多く見られます。本稿では、不動産を含む遺産分割における具体的な方法と、それぞれのメリット・デメリットについて解説し、スムーズな相続を進めるためのポイントをまとめます。
目次
1.遺産分割の基本とは
2.不動産の遺産分割における選択肢
2.1 換価分割のメリットとデメリット
2.2 代償分割のメリットとデメリット
2.3 共有分割のリスク
2.4 現物分割の実際
3.不動産分割における実務上の注意点
4.まとめ

1. 遺産分割の基本とは
遺産分割とは、相続人全員で亡くなった人の財産をどのように分けるかを話し合い、合意することを指します。この遺産分割協議は、全ての相続人の合意が必要であり、合意が得られた場合はその内容を「遺産分割協議書」にまとめます。この協議書が公正かつ適切に作成されていないと、後々法的な問題が生じることもあります。
遺産分割の対象となる財産には、現金や預金、不動産、株式、債券、その他の有価証券などがあります。特に不動産の分割は、その性質上物理的に分けることが難しいため、慎重な対応が求められます。次章では、不動産の分割方法について詳細に解説します。
2. 不動産の遺産分割における選択肢
不動産を相続する場合、物理的に分割することができないため、主に以下の4つの方法で分割が行われます。
2.1 換価分割のメリットとデメリット
不動産を売却し、その売却代金を相続人間で分ける方法を「換価分割」といいます。この方法は、相続人間で不動産を実際に共有することなく、現金として遺産を分けられるため、公平かつシンプルです。しかし、不動産の売却には時間がかかることがあり、売却価格が期待通りにならないリスクも伴います。相続税の支払期限が迫っている場合には、売却が間に合わない可能性もあるため、事前に売却のスケジュールを考慮する必要があります。
2.2 代償分割のメリットとデメリット
「代償分割」とは、特定の相続人が不動産を単独で取得し、その代わりに他の相続人に対して相続分相当額の現金などを支払う方法です。この方法では、相続人の一人が不動産を引き継ぎたい場合に有効です。しかし、代償金の支払い能力があることが前提となるため、取得者の財政状況によっては難しい場合もあります。また、代償分割により取得者が一人で不動産を維持する負担が増すことも考慮すべきです。
2.3 共有分割のリスク
「共有分割」は、不動産を複数の相続人で共有する方法です。一見して公平な方法のように思えますが、後々のトラブルの種となることが多いため、注意が必要です。不動産を共有したままにすると、売却や賃貸などの意思決定に時間がかかり、全員の同意を得ることが難しくなります。また、修繕費用や固定資産税の支払いを誰が負担するかなど、運用面でも課題が生じます。さらに、共有者の一人が亡くなった場合には新たな相続が発生し、さらに複雑化することが多いです。
2.4 現物分割の実際
「現物分割」は、不動産の一部をそれぞれの相続人に分け与える方法です。たとえば、一つの土地を物理的に分割して、それぞれの相続人が所有することが可能です。しかし、土地の位置や価値が不均等になりやすく、不公平感が生じることもあります。また、実際に土地を物理的に分割するには測量費用や行政手続きが必要で、時間とコストがかかります。そのため、現物分割ができるかどうかは、状況に応じて判断する必要があります。

3. 不動産分割における実務上の注意点
不動産の遺産分割において、いくつかの注意点があります。まず、遺産分割協議が成立してから、不動産の名義変更(相続登記)を速やかに行う必要があります。相続登記を怠ると、後々の売却や貸借が困難になるばかりか、相続人が増えることでさらに手続きが複雑化するリスクもあります。
また、不動産の評価額は時間とともに変動することがあるため、遺産分割のタイミングで適切な評価を行うことが重要です。専門家に依頼して不動産の鑑定評価を受けることで、相続人間の不公平を防ぐことができます。
さらに、不動産に関わる固定資産税や管理費用についても、事前に相続人間で取り決めておくことが大切です。これらの費用が誰の負担になるのかを曖昧にしておくと、後にトラブルが発生する可能性があります。

4. まとめ
不動産を含む遺産分割は、現金や預金と異なり複雑な側面があります。適切な分割方法を選択し、相続人全員が納得する形で話し合いを進めることが大切です。換価分割や代償分割、共有分割など、状況に応じた方法を選択し、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、後々のトラブルを回避することができます。また、不動産の評価や管理に関する事前の取り決めも忘れずに行い、スムーズな相続を実現しましょう。
(論点)生前贈与と相続税の税率比較を基にした効果的な相続対策

相続対策において、生前に財産を贈与するか、相続時に一括して相続させるかは重要な選択です。税理士の先生が相談会で話された内容を基に、相続時の税率と生前贈与にかかる贈与税の税率を比較することで、新たな視点を得ました。特に、数億円規模の財産を持つ場合、生前贈与を活用することがどのように相続対策に寄与するかについて考察します。
目次
1.生前贈与と相続の税率比較の重要性
2.暦年贈与制度の基礎控除の限界
3.不動産の活用による生前対策
4.相続財産への組戻し期間の延長に伴う注意点
5.結論

1. 生前贈与と相続の税率比較の重要性
相続にかかる税率と、生前贈与を行った場合の贈与税率を比較することは、相続対策において非常に有効です。相続時には、財産の総額に応じて相続税が課されますが、生前贈与を行うことで一部の財産を相続税の対象外にできる可能性があります。特に、子供が相続する際の税率と、生前贈与を行った際の贈与税の税率を比較し、より低い税率で財産を移転させることで、税負担を減らすことができます。
2. 暦年贈与制度の基礎控除の限界
暦年贈与制度を活用する際に、110万円の基礎控除を最大限に使うことは一つの方法です。しかし、数億円単位の財産を持つ場合、この基礎控除では財産の目減り効果はほとんど期待できません。実際には、110万円の基礎控除を毎年使ったとしても、贈与を繰り返すだけでは全体的な財産の減少にはつながりにくいのです。したがって、他の方法と組み合わせて生前贈与を考える必要があります。
3. 不動産の活用による生前対策
特に不動産に関しては、今後の値上がりが予想される物件を生前贈与することが有効です。仮に今後価格が上がると見込まれる不動産を贈与しておけば、相続時にその不動産の評価額が上がり、結果的に相続税の負担が増えるリスクを軽減できます。つまり、相続時に課税される税率よりも低い贈与税率で不動産を贈与しておけば、その部分の財産については生前対策が可能となります。

4. 相続財産への組戻し期間の延長に伴う注意点
ただし、生前贈与を行う際には注意が必要です。暦年贈与制度において、令和6年1月1日以降、相続財産への組戻し期間が従来の3年から7年に延長されることが決まっています。つまり、贈与してから7年以内に相続が発生した場合、その贈与された財産は相続財産として再評価され、相続税が課される可能性があります。これを回避するためには、早めに計画的に生前贈与を行う必要があります。

5. 結論
相続対策において、生前贈与と相続税の税率を比較することは非常に重要なポイントです。特に、不動産のような将来的に価値が上昇する可能性のある財産を、相続税の負担を軽減するために早めに贈与しておくことが効果的です。しかし、贈与を行う際には暦年贈与制度の組戻し期間の延長を踏まえ、慎重かつ計画的に進めることが求められます。相続対策は早めに準備を進め、専門家のアドバイスを受けることが大切です。
この内容は相続対策を考える際の基礎的な部分をまとめたものであり、具体的な対策は各家庭や財産状況に応じて異なります。専門家の助言を受けながら、最適な方法を選択することが求められます。まずは専門家に相談。
(論点)遺産分割協議書を巡る注意点(郵送された場合の対応と法令違反リスク)

相続登記の際、遺産分割協議書は非常に重要な書類となります。しかし、時折相談者から「やってもいない遺産分割協議についての協議書が送られてきた」といった疑問や不安の声が寄せられることがあります。このような場合、法令に違反している可能性もありますが、協議の認識に誤解がある場合も少なくありません。本稿では、遺産分割協議書が郵送された場合の対応方法や注意すべき点について、実際の事例を交えながら解説します。
目次
1.遺産分割協議の基本事項
2.遺産分割協議書に関する誤解と事例
3.遺産分割協議書が郵送された場合の対応
4.遺産分割協議における法令違反のリスク
5.遺産分割協議の適正な進め方と確認事項
6.まとめ:慎重な対応が必要

1. 遺産分割協議の基本事項
遺産分割協議は、相続人全員が集まって、相続財産をどのように分けるかを話し合うプロセスです。この協議は、相続人全員が参加し、同意を得る必要があります。合意が成立した後、その内容を文書化したものが遺産分割協議書であり、これに相続人全員の署名と実印による押印が必要となります。この書類がなければ、相続登記を進めることができません。
2. 遺産分割協議書に関する誤解と事例
遺産分割協議書が突然送られてきたというケースは珍しくありません。多くの場合、相続人全員が一堂に会して正式な協議を行うイメージを抱いていますが、必ずしもその場で全ての内容が決まるわけではありません。たとえば、葬儀後の雑談や日常会話の中で協議がなされ、その後、改めて協議書が作成されることもあります。相談者自身が認識していなくても、非公式な形で全員が同意している場合もあるため、この点で混乱が生じることがあります。
一つの事例として、ある相談者が「遺産分割協議に参加していないのに、協議書が郵送された」と言ってきました。しかし実際には、葬儀後に集まった際、全員で簡単な話し合いを行い、その内容が協議書としてまとめられていたことが後に判明しました。相続人全員が口頭で同意しているため、特に法的な問題は発生しなかったケースです。

3. 遺産分割協議書が郵送された場合の対応
協議書が突然郵送されてきた場合、まず冷静にその内容を確認することが重要です。以下の手順を踏むことで、適切な対応を行えます。
1.協議内容の確認
協議書に記載されている遺産の分配内容が、自分の認識と合致しているか確認しましょう。もし、内容に疑問や不明点がある場合は、相続人同士で確認し合うことが必要です。
2.署名・押印の前に確認を
協議書に署名・押印する前に、全員が同意しているかを必ず確認します。不審な点がある場合は、相続人間で再度話し合いを持つか、専門家(司法書士や弁護士)に相談することをお勧めします。
3.合意がない場合の対処
もし協議が行われておらず、勝手に協議書が作成されている場合は、署名や押印を拒否し、協議のやり直しを要求することが可能です。この場合、法的なトラブルに発展する可能性もあるため、適切な対応が必要です。
4. 遺産分割協議における法令違反のリスク
遺産分割協議は、相続人全員が平等に参加し、合意を得ることが法的に求められます。協議が一部の相続人だけで行われ、他の相続人に内容が知らされないまま協議書が作成された場合、これは重大な法令違反となり、無効になる可能性があります。
特に、相続人の一部が故意に協議を進め、他の相続人を除外している場合は、不正行為と見なされ、訴訟に発展する恐れがあります。相続は感情的な対立を引き起こしやすいため、協議は慎重に進める必要があります。
5. 遺産分割協議の適正な進め方と確認事項
遺産分割協議を適正に進めるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
1.全員が参加すること
相続人全員が話し合いに参加し、平等に意見を述べる機会を確保することが重要です。
2.協議内容を明確にする
協議内容は、具体的で分かりやすい形で記録することが必要です。財産の配分方法やその理由など、全員が納得できる内容を文書化することが求められます。
3.専門家のアドバイスを受ける
協議が難航する場合や、法的な知識が不足している場合は、専門家の助言を受けることで、トラブルを回避できます。

6. まとめ:慎重な対応が必要
遺産分割協議書は、相続における非常に重要な書類であり、その内容や作成過程に不正があれば法的に無効となる可能性があります。特に、協議をしていないのに協議書が郵送された場合は注意が必要です。協議書が届いた際には、まず冷静に内容を確認し、合意が取れているかどうかを慎重に判断しましょう。最終的には、相続人全員が納得できる形での協議が行われることが最も重要です。
(論点)遺産分割協議書の重要性と作成時の注意点(相続登記におけるポイント)

相続が発生した際、遺産をどのように分割するかを決定するために、相続人全員で遺産分割協議を行います。遺産分割協議書は、その合意内容を正式に書面で残すものであり、特に不動産の相続登記を行う際に必須の書類となります。しかし、この協議書の内容が不備であったり、相続人全員の同意が得られていない場合、後々のトラブルを招くことがあります。本稿では、遺産分割協議書を作成する際に注意すべき点について詳しく解説し、トラブルを未然に防ぐための対策を考察します。
目次
1.遺産分割協議書とは
2.遺産分割協議書の法的効力
3.作成時の注意点
3.1 全相続人の同意と署名・押印の重要性
3.2 実印と印鑑証明書の必要性
3.3 不動産の明確な記載
3.4 遺産分割協議書に記載する内容
4.トラブル防止のための具体策
5.まとめ

1. 遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、相続が発生した際に、相続人全員が遺産の分割方法について合意した内容を記載した文書です。
この書類は、特に不動産や金融資産の相続登記や名義変更の際に、法務局や金融機関に提出する必要があります。
相続人間の合意を証明するための書類として法的に重要な役割を果たし、相続登記手続きを進める上で不可欠です。
2. 遺産分割協議書の法的効力
遺産分割協議書は、相続人全員が署名し、実印を押印した場合に法的効力を持ちます。
この協議書に基づいて、不動産の所有権移転登記や金融資産の名義変更が行われるため、協議書の内容が正確かつ明確であることが重要です。
また、一度合意した内容は、相続人全員の同意がなければ変更することができません。
したがって、協議書作成時には、相続人間の意見を十分に調整し、全員の納得を得た上で署名することが求められます。

3. 作成時の注意点
遺産分割協議書の作成において、以下の点に注意が必要です。
3.1 全相続人の同意と署名・押印の重要性
遺産分割協議は、法定相続人全員が参加し、合意しなければなりません。相続人の一部だけで協議を進めた場合、その協議は無効となり、後にトラブルが発生する可能性があります。たとえ相続人の一部が小額の遺産しか受け取らないとしても、全員の同意が必要です。また、協議書には全員の署名と実印の押印が必須です。
3.2 実印と印鑑証明書の必要性
遺産分割協議書には、相続人全員の実印を押す必要があります。また、実印が本人のものであることを証明するために、相続人全員の印鑑証明書を添付することが求められます。印鑑証明書の発行から3ヶ月以内のものでなければならない点にも注意が必要です。
3.3 不動産の明確な記載
遺産分割協議書に不動産が含まれている場合、その不動産を正確に特定するための情報を記載しなければなりません。不動産登記簿に記載されている所在地、地番、土地や建物の面積などの詳細を正確に記載することが求められます。不動産が複数ある場合も、すべてを正確に記載し、それぞれの不動産が誰に相続されるのかを明確に示す必要があります。
3.4 遺産分割協議書に記載する内容
遺産分割協議書には、単に不動産や金融資産の分割内容だけでなく、以下のような項目も記載することが推奨されます。
遺産の一覧:遺産の内容を全体的に網羅するため、現金、不動産、預貯金、株式などの遺産のすべてを記載します。
負債の分割:もし被相続人に借金やローンなどの負債がある場合、その返済義務をどの相続人が負うのかも明記します。
特別受益や寄与分の調整:相続人の中に、生前に被相続人から特別な援助を受けていた者がいる場合や、被相続人の介護に貢献した者がいる場合は、それらの特別受益や寄与分についても記載することが適切です。

4. トラブル防止のための具体策
遺産分割協議書を作成する際に、相続人間のトラブルを防ぐためには、以下の具体策を講じることが有効です。
相続人全員での十分な話し合い:特に、相続分に不満が出やすい場合は、事前に十分な話し合いを行い、納得感のある分割を目指すことが大切です。専門家(司法書士や弁護士)のサポートを受けながら、合意内容を明文化するのも効果的です。
公正証書での作成:遺産分割協議書を公正証書で作成することにより、紛失や偽造のリスクを避け、内容の信頼性を高めることができます。また、法的効力をより強固にするためにも有効な手段です。
特別受益や寄与分の正確な反映:相続人間で特別受益や寄与分に関しての認識に相違がある場合は、しっかりとその価値を反映したうえで遺産分割を行い、公平な協議を進めることがトラブルを防ぐために必要です。
5. まとめ
遺産分割協議書は、相続手続きの中でも重要な役割を果たし、その内容や署名押印の手続きが正確でないと、後々の相続トラブルを招く可能性があります。全相続人の同意を得て、実印および印鑑証明書を添付した協議書を作成することが不可欠です。また、不動産の情報や負債の処理、特別受益などの要素を正確に反映させ、将来的な争いを避けるための対策も必要です。
相続登記を円滑に進めるためには、法律に基づいた手続きを適切に行うことが重要です。専門家に相談し、誤りのない遺産分割協議書を作成することで、相続手続きをスムーズに進め、家族間のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
(論点)相続登記の添付書類(法定相続分による登記と二次相続対策としての所有権移転)

相続が発生した際、不動産の所有権移転を行うためには、相続登記を行う必要があります。一般的な相続登記では、父親が死亡し、配偶者と子供が相続人となるケースがよく見られます。この際に必要となる添付書類は、法定相続分による登記と、二次相続対策として子供に所有権を移転する場合で異なります。特に二次相続に備えるための所有権移転には慎重な準備が必要です。本稿では、それぞれのケースでの必要な書類を整理し、どのように進めるべきかを解説します。
目次
1.法定相続分による登記とは
2法定相続分による相続登記の添付書類
3.二次相続対策として子供に所有権を移転する場合
4.子供への所有権移転の際の添付書類
5.注意点とまとめ

1. 法定相続分による登記とは
法定相続分とは、民法に定められた各相続人が受け取るべき相続財産の割合です。配偶者と子供が相続人である場合、配偶者が2分の1、子供たちが残りの2分の1を等分するのが原則です。たとえば、子供が1人の場合、配偶者が1/2、子供が1/2を相続します。相続人全員が法定相続分通りに相続する場合、遺産分割協議は不要であり、法定相続分に基づいた相続登記が可能です。
2. 法定相続分による相続登記の添付書類
法定相続分による相続登記の際には、次のような添付書類が必要となります。
>被相続人(亡くなった父親)の戸籍謄本:出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要です。これにより、相続人が誰であるかを証明します。
>相続人全員の戸籍謄本:配偶者や子供が相続人であることを証明するための書類です。
>被相続人の住民票の除票または戸籍の附票:不動産の所有者であった被相続人の住所が登記簿に登録されている住所と一致していることを確認するための書類です。
>相続人全員の住民票:相続登記後の不動産所有者を明示するために必要です。
>固定資産評価証明書:登記の際に登録免許税を計算するために必要です。不動産の評価額に基づいて税額が決まります。
>相続関係説明図(任意):戸籍謄本に基づき、相続関係を図式化した書類で、法務局において手続きがスムーズに進むための補助資料として提出します。
3. 二次相続対策として子供に所有権を移転する場合
二次相続とは、最初の相続(父親の死亡による相続)が発生した後に、さらに配偶者が亡くなることで次に発生する相続です。二次相続に備えて、配偶者が相続する部分の不動産を子供に移転しておくことは、相続税対策や将来的な分割のトラブルを防ぐために有効な手段です。この場合、遺産分割協議を行い、相続人間で不動産の所有者を子供に定める必要があります。
4. 子供への所有権移転の際の添付書類
二次相続対策として、配偶者ではなく子供に所有権を移転する際には、法定相続分による登記に加え、以下の書類が必要となります。
>遺産分割協議書:相続人全員が集まり、遺産分割の内容について合意した旨を記載した書類です。相続財産のうち、特定の不動産を子供が相続することが明記されている必要があります。相続人全員の署名と実印が必要です。
>相続人全員の印鑑証明書:遺産分割協議書に押印された実印が、相続人のものと一致することを証明するために必要です。
>子供の住民票:相続後、不動産の新しい所有者となる子供の住所を登記するために必要です。
被相続人の戸籍謄本、除票、相続人の戸籍謄本・住民票等:法定相続分による登記の場合と同様、相続人を証明するための書類です。
>固定資産評価証明書:同じく、相続財産の評価額に基づいて登録免許税が算出されます。

5. 注意点とまとめ
法定相続分による登記と、二次相続対策としての子供への所有権移転は、それぞれ異なるプロセスと書類が必要です。特に、二次相続を見越した所有権移転では、遺産分割協議をしっかりと行うことが重要です。これにより、将来的な相続トラブルを未然に防ぐことができるため、相続登記を行う際には、家族全員で十分な話し合いを持つことが大切です。
また、相続登記の手続きにおいては、法律や制度が複雑なため、必要に応じて専門家(司法書士や弁護士)に相談することが推奨されます。適切な対策を講じておくことで、後々の手続きがスムーズに進み、不要なトラブルや負担を軽減することができます。
相続登記は単なる書類の提出だけでなく、家族の将来に関わる重要な手続きです。特に二次相続対策を考慮した所有権移転は、計画的に行うことで、税制面や法律面でも大きなメリットを得られる可能性があるため、慎重な準備が求められます。
(論点)電子戸籍の本格活用に向けた仕組みと利便性(16桁パスワードを用いた行政手続きの効率化)

共同通信の記事によると、2026年から本格化する「電子戸籍」の活用では、マイナンバーカードや新たに導入される「マイナ免許証」が重要な役割を果たすことが期待されています。具体的には、戸籍情報の取得や提供がデジタルで行われることにより、これまでの紙の戸籍謄本の提出が不要になるという利便性が強調されています。
その際に用いられるのが、16桁のパスワード(「戸籍電子証明書提供用識別符号」)です。これが、電子戸籍にアクセスするためのキーとなり、以下のプロセスを通じて行政手続きが行われます。
目次
1. 16桁のパスワード(戸籍電子証明書提供用識別符号)の役割
2. マイナンバーカードやマイナ免許証との連携
3. 戸籍情報の最寄りの行政機関への提供
4. 申請情報床の符号
5. メリットと今後の展望

1. 16桁のパスワード(戸籍電子証明書提供用識別符号)の役割
この16桁のパスワードは、申請者が電子戸籍の情報を取得・提供する際に使用する「識別符号」です。この符号は、個人の戸籍情報を安全に管理し、認証するために使われます。これにより、戸籍情報のセキュリティが保たれ、誤った情報の流出を防ぐことができます。

2. マイナンバーカードやマイナ免許証との連携
マイナンバーカードやマイナ免許証は、個人の身元を証明するためのデジタルIDとして機能し、この16桁のパスワードと連携します。申請者は、マイナンバーカードやマイナ免許証を使用して本人確認を行い、その後、パスワードを入力することで戸籍情報にアクセスできるようになります。
3. 戸籍情報の最寄りの行政機関への提供
申請者が、例えば旅券申請や婚姻届の提出などの手続きを行う際、この識別符号を使って申請情報を入力すると、法務省で一元管理されている電子戸籍の情報が、最寄りの行政機関に直接提供されます。このため、従来必要だった紙の戸籍謄本の提出が不要となり、行政機関がオンラインでリアルタイムに情報を確認できるようになります。
4. 申請情報床の符号
「申請情報床の符号」とは、申請手続きを行う際に用いられる識別子のことです。これにより、行政機関は申請者の手続き内容を電子的に追跡・確認することができ、迅速に対応することが可能になります。この符号は申請ごとに発行されるため、個人のプライバシー保護も強化されています。

5. メリットと今後の展望
この仕組みの導入により、戸籍関連の手続きが大幅に効率化され、国民にとって手続きの煩雑さが軽減されます。旅券の申請のみならず、結婚・離婚の届出、相続に関連する手続きなど、多くの場面で時間とコストの削減が見込まれます。
また、マイナンバーカードやマイナ免許証を使って簡単に戸籍情報を取り扱えるようになることで、行政機関の業務効率も大幅に向上します。これにより、日本全体のデジタル化がさらに進展し、将来的には他の分野でも同様のシステムが導入されることが期待されます。
この電子戸籍の仕組みは、日本のデジタル化政策の中核として、行政手続きをより簡便かつ効率的にする重要な役割を担うことになるでしょう。
(論点)戸籍氏名のフリガナ通知制度が2025年5月から開始

―その経緯と手続きの詳細について―
2025年5月より、戸籍氏名のフリガナの通知制度が日本全国で開始されます。この制度は、氏名の読み方に関する誤解やトラブルを減らし、行政手続きや民間サービスにおける個人認識の正確性を向上させる目的で導入されます。近年、日本では多様な名前の読み方が増えており、フリガナが記載されていないことが、正しい読み方の確認を困難にしていました。この問題を解決するため、政府は戸籍にフリガナを記載する制度を導入することとなりました。本稿では、この制度が導入されるに至った経緯と、具体的な手続きの流れについて詳しく説明します。
目次
1.戸籍氏名フリガナ制度導入の背景
2.制度導入に至った経緯
3.戸籍氏名フリガナ通知制度の手順
4.戸籍フリガナ制度がもたらす影響
5.終わりに

1. 戸籍氏名フリガナ制度導入の背景
日本では、個人の氏名は戸籍に基づいて登録されますが、戸籍には従来、氏名の読み方に関する記載はありませんでした。そのため、漢字の読み方が複数存在する場合、行政手続きや民間サービスにおいて、誤読が発生するケースが少なくありませんでした。例えば、役所での手続きや学校での出席確認、医療機関でのカルテ管理など、氏名の読み方が問題となる場面が頻繁に見られました。
特に最近では、名前の読み方に独自の読み方を付けるケースが増加しており、読み方の予測が難しくなっています。これに対応するため、戸籍にフリガナを付けて個人情報をより正確に管理しようという取り組みが進められてきました。
2. 制度導入に至った経緯
戸籍氏名フリガナ制度が議論され始めたのは、氏名の読み方に関する誤解やトラブルが増加したことが直接の要因です。特に、近年のデジタル社会において、オンラインでの手続きが増える中で、正確な名前の読み方が求められる場面が増えてきました。さらに、外国籍の住民が増加したことや、さまざまな文化的背景を持つ名前が増加したことも、正しい氏名の読み方を把握することを難しくしていました。
そのため、国民の利便性向上と行政手続きの効率化を図るために、政府は戸籍に氏名のフリガナを記載する新制度を導入することを決定しました。2024年に制度が法制化され、2025年5月から本格的に運用が開始されます。

3. 戸籍氏名フリガナ通知制度の手順
2025年5月から、全国の自治体は戸籍に記載されている氏名にフリガナを追加する作業を開始します。通知と手続きの大まかな流れは以下の通りです。
1.通知書の送付
市区町村役場から、各家庭に戸籍氏名のフリガナ通知書が送付されます。この通知書には、現在の戸籍情報が記載されており、氏名の正しい読み方を確認し、フリガナを記入する欄があります。受け取った住民は、自身や家族の氏名のフリガナを確認し、必要な修正があれば記入します。
2.フリガナの記入・提出
通知書には、氏名のフリガナを住民が自ら記入する欄が設けられており、正しい読み方を記入します。必要な箇所にフリガナを記入した後、所定の期限内に市区町村役場に提出します。提出は郵送やインターネットを通じたオンライン提出が可能な自治体も増えており、手続きの負担は少なくなる見込みです。
3.自治体による確認・登録
提出されたフリガナ情報を自治体が確認し、戸籍データベースに新たにフリガナ情報が追加されます。これにより、戸籍には漢字の氏名とともに、その読み方が記録されることになります。
4.修正・変更手続き
将来的に氏名のフリガナに変更が生じた場合、例えば改名や読み方の変更を希望する場合には、改めて役所に申請することで、フリガナの修正が可能です。

4. 戸籍フリガナ制度がもたらす影響
この制度がもたらす影響は多岐にわたります。まず、行政手続きにおいて、名前の読み方が統一されるため、誤読や手続き上のトラブルが大幅に減少することが期待されます。特に、住民票や免許証、パスポートなどの公的書類において、氏名の読み方が一貫していることが、本人確認の精度向上につながります。
また、医療機関や教育機関においても、氏名の読み方を巡る混乱が軽減され、スムーズな手続きや運用が可能になります。さらに、外国人住民に対しても、フリガナによって正確な氏名の読み方が共有されるため、異文化間のコミュニケーションにおいても利便性が向上すると期待されています。
一方で、個人情報の正確性を高める一方で、氏名の読み方を公に登録することに対して、プライバシーの懸念を抱く人々もいます。これに関しては、適切な個人情報保護の対応策が求められるでしょう。

5. 終わりに
2025年5月に開始される戸籍氏名のフリガナ通知制度は、日本における名前に関する正確な個人認識の向上を目指した重要な改革です。多様化する社会において、氏名の読み方が正しく認識されることは、行政手続きの効率化や市民生活の利便性向上に大きく貢献するものと考えられます。この制度が円滑に運用され、今後も改善が図られることで、日本の行政サービスがさらに向上することが期待されます。
(論点)相続人不存在の場合における遺産不動産の手続きについて

相続が発生した際、被相続人に相続人がいない場合や相続人が不明である場合、「相続人不存在」と呼ばれる状態になります。このようなケースでは、遺産である不動産が法的にどのように処理されるのかが重要な問題となります。不動産は相続の対象として扱われる財産の中でも特に価値が高く、また処分が難しい資産であるため、適切な法的手続きが必要です。本稿では、相続人不存在の場合における遺産である不動産の手続きについて、法的な背景や具体的な手順を解説します。
目次
1.相続人不存在とは
2.不動産の管理者の選任
3.相続財産管理人の役割
4.不動産の清算手続き
5.最終的な帰属先
6.手続きを行う上での注意点

1. 相続人不存在とは
相続人不存在とは、被相続人が亡くなった際に法定相続人が存在しない、または全ての相続人が相続放棄を行った場合を指します。相続人が不明の場合や、遺言による受遺者も存在しない場合、この状態が発生します。相続人が不存在であると確認された場合、遺産の管理や清算のために法的手続きが進められることになります。特に不動産は、そのまま放置されると管理費用や税金などの問題が発生するため、早急な対応が求められます。
2. 不動産の管理者の選任
相続人が存在しない場合、まずは家庭裁判所に申立てを行い、「相続財産管理人」の選任が必要です。相続財産管理人は、不動産を含む全ての相続財産を管理し、必要な処分を行う役割を担います。管理人が選任されるまでの間、急を要する場合には、利害関係者が不動産の管理者を一時的に選任することも可能です。この手続きにより、不動産が適切に維持されることが保証されます。
3. 相続財産管理人の役割
相続財産管理人は、選任後、被相続人の財産の調査および管理を行います。不動産に関しては、管理費用や固定資産税の支払い、維持管理、さらには売却手続きまで含まれます。相続財産管理人は、必要に応じて不動産を売却し、得られた資金を他の遺産と共に清算に充てます。また、相続債務がある場合には、管理人が清算手続きを進めることとなります。
4. 不動産の清算手続き
不動産が相続財産に含まれる場合、その管理とともに清算が必要です。相続人不存在の場合、不動産の売却が検討されることが一般的です。相続財産管理人は裁判所の許可を得て不動産を売却し、その売却代金を被相続人の債務や他の相続財産の管理費用に充当します。また、売却できない場合でも、財産としての評価を行い、管理費用や税金の支払いを続ける必要があります。

5. 最終的な帰属先
相続人不存在の場合、最終的に遺産は国庫に帰属します。これは民法第959条に基づくもので、相続人がいない財産は国が所有するという規定です。ただし、相続財産管理人が選任されてから遺産の国庫帰属までには一定の期間が必要であり、その間に被相続人に対する債権者や特別縁故者が財産の分配を申請できる可能性があります。特別縁故者とは、被相続人と生前に特に親密な関係にあった者であり、裁判所が認めた場合に財産を受け取ることができます。
6. 手続きを行う上での注意点
相続人不存在の場合の手続きは、通常の相続よりも複雑であり、家庭裁判所や相続財産管理人の関与が不可欠です。また、不動産の処分に際しては裁判所の許可が必要となるため、スムーズに手続きを進めるためには、法的な専門知識やサポートが求められます。さらに、特別縁故者がいる場合には、適切な申請を行うことが重要です。申請が遅れると、国庫帰属が確定し、財産を受け取る権利が失われる可能性があるため、迅速な対応が必要です。

まとめ
相続人不存在の場合における遺産不動産の手続きは、相続財産管理人の選任や不動産の管理・清算、最終的な帰属までを含む一連の法的手続きが求められます。特に不動産は管理費用や税金がかかるため、放置せずに適切に処理することが重要です。法的な手続きに従いながら、早期に対応することで、財産の無駄な消耗を防ぎ、適切な解決を図ることが可能です。
(論点)相続放棄を生前にしたいのですが、どうすればいいですか?

「相続放棄を生前にしたい」という質問をよくいただきますが、実際には、相続放棄は生前に行うことができません。相続放棄は、相続が発生してから3ヶ月以内に行う手続きであり、事前に放棄することはできません。この記事では、相続放棄の正しい手続きと、その背景について詳しく解説します。
目次
1.相続放棄とは?
2.なぜ生前に相続放棄ができないのか
3.相続発生後の相続放棄の手続き
4.相続放棄を検討する理由
5.相続放棄の期限と家庭裁判所への申述
6.まとめ

1. 相続放棄とは?
相続放棄とは、故人(被相続人)の財産や権利を一切相続しないという意思を表明する手続きです。
通常、相続はプラスの財産(現金、土地、不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金など)も引き継ぐことになります。相続放棄を行うことで、こうした負債を引き継がないようにすることができます。
ただし、相続放棄は、相続が発生した後でないと行うことができません。相続放棄を行うことで、相続人は最初から相続人ではなかったかのような扱いとなり、遺産分割協議や他の相続手続きに関与することはなくなります。

2. なぜ生前に相続放棄ができないのか
「生前に相続放棄をしたい」という相談を受けることがありますが、法律上、相続放棄は相続が発生してからでなければ行えません。
日本の民法では、相続が開始されるタイミングは被相続人が亡くなったときです。つまり、被相続人の生前に相続放棄をすることはできないということです。
この制度は、被相続人が生前に持っている財産の内容や状況が変わる可能性があるためです。
たとえば、被相続人が借金を抱えていたとしても、生前に借金を完済することや、財産の増減があるかもしれません。そのため、財産の最終的な状況が確定していない生前の段階で、相続を放棄することは合理的でないとされています。

3. 相続発生後の相続放棄の手続き
相続放棄は、被相続人の死亡により相続が開始された後、相続人が自分に相続があったことを知った時点から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述することで行うことができます。この「3ヶ月間」を「熟慮期間」と呼び、相続人はこの期間内に、相続を受けるか放棄するかを決定する必要があります。
具体的な手続きの流れは以下の通りです。
家庭裁判所に申述書を提出する
相続放棄を希望する相続人は、被相続人が亡くなった後、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出します。この申述書には、相続放棄をする理由や被相続人の基本情報を記載します。
裁判所による審査
提出された申述書は家庭裁判所で審査されます。審査では、相続人が本当に相続放棄を希望しているのか、またその意思に基づいて申述書が提出されたのかを確認されます。
相続放棄の決定通知
裁判所が相続放棄を認めると、相続人に対してその旨が通知され、相続放棄が正式に成立します。相続放棄が認められた後は、その相続人は相続財産や負債に対して一切関与することがありません。
4. 相続放棄を検討する理由
相続放棄を検討する主な理由として、以下のようなものが挙げられます。
被相続人の負債が多い場合
被相続人が多額の借金やローンを抱えている場合、相続放棄をすることでその負債を引き継がずに済むため、相続人にとっては負担を避ける選択肢となります。
不要な不動産がある場合
相続財産に、不動産が含まれている場合、その管理や維持費が相続人にとって負担になることがあります。特に、価値が低い、あるいは維持管理が難しい不動産を相続するリスクを避けるため、相続放棄を検討することがあります。
相続人間のトラブル回避
複雑な家族関係や親族間でのトラブルを避けるために、相続に関わらないことを選ぶケースもあります。この場合も、相続放棄が一つの手段となり得ます。

5. 相続放棄の期限と家庭裁判所への申述
相続放棄を行うためには、相続が発生してから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述をする必要があります。これを過ぎてしまうと、相続放棄の権利を失う可能性があります。特に、相続財産や負債について早急に把握することが重要であり、必要であれば、弁護士や司法書士など専門家に相談することをお勧めします。
また、申述後に裁判所が相続放棄を認めるかどうかの審査を行いますが、相続放棄を認められると正式に相続放棄が成立します。相続放棄が成立した後は、相続財産や負債の分割や管理に関わることはありません。
6. まとめ
相続放棄は生前に行うことはできず、相続が発生してから初めて手続きを進めることが可能です。相続が開始された後、3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述を行うことで、相続財産や負債を引き継がない選択が可能になります。
相続放棄を検討する際は、相続財産の内容や負債の状況を早急に把握し、期限内に正確な手続きを行うことが大切です。司法書士や弁護士といった専門家に相談しながら、適切な対応を進めましょう。
(論点)住所等変更登記を職権で進めるための「検索用情報の申し出書」について

不動産の所有者情報を正確に管理するため、法務省では住所等変更登記を職権で実施する制度が導入されています。この制度の円滑な運用に向けては、「検索用情報の申し出書」を提出する必要があります。このブログでは、登記官が職権で住所変更登記を行うための準備とその運用方法について、司法書士としてわかりやすく解説します。(令和7年4月21日施行)
目次
1.検索用情報の申し出書とは
2.職権による住所等変更登記の背景
3.検索用情報の提出方法
4.検索用情報に含まれるべき内容
5.住所変更登記の実施の流れ
6.まとめ

1. 検索用情報の申し出書とは
「検索用情報の申し出書」は、不動産所有者や関係者が、住所変更登記を進めるために必要な情報を法務省に提供するための書類です。この書類は、登記官が職権で所有者の住所変更を行う際に利用されます。不動産の住所変更を速やかに反映させ、正確な情報を管理するために不可欠な手続きです。
司法書士として、不動産登記の更新や変更手続きにおいて、顧客がスムーズに対応できるよう、必要な情報を準備し、適切に申請するサポートを提供します。
2. 職権による住所等変更登記の背景
法務省が導入した職権による住所変更登記制度の背景には、不動産の所有者情報の正確性を維持する必要があります。従来、住所変更は所有者自身が申請する必要がありましたが、手続きを忘れてしまうことや長期間放置されるケースが多く、結果として登記簿上の情報が古くなってしまう問題が発生していました。
そのため、登記官が職権で所有者の住所変更を行う仕組みが設けられ、これにより、不動産の取引や相続手続きが円滑に進められることが期待されています。
3. 検索用情報の提出方法
「検索用情報の申し出書」は、法務省の所定のフォーマットに従い、必要事項を記入して提出します。提出は、原則としてオンラインで行うことができ、紙ベースの提出も可能です。提出の際には、申出書とともに、現在の住所や連絡先に関する証明書類も添付する必要があります。
具体的な手続きとしては、まず、法務省のウェブサイトから申出書をダウンロードし、必要な情報を正確に記入した上で、法務局に提出します。提出後、登記官が情報を審査し、必要な確認作業を行った後、住所変更が職権で実施されます。
(所有権移転登記と同時に届け出る場合)



4. 検索用情報に含まれるべき内容
検索用情報には、以下の内容を記載する必要があります:
所有者の基本情報
氏名や旧住所、新住所といった基本的な個人情報が必要です。これは正確に記入することが重要で、誤りがあると手続きが遅れる可能性があります。
対象不動産の情報
登記簿に記載されている不動産の所在や地番、家屋番号などの詳細を記載します。これにより、対象となる不動産が特定され、住所変更の対象範囲が明確になります。
証明書類の添付
提出書類には、住民票や免許証のコピーなど、現在の住所を確認できる書類を添付する必要があります。これにより、登記官が所有者の最新の住所情報を確認できるようになります。
5. 住所変更登記の実施の流れ
住所変更登記は、以下の流れで進行します。
申出書の提出
まず、所有者や代理人が「検索用情報の申し出書」を法務局に提出します。提出が完了した後、登記官が申請内容を確認します。
登記官の審査
登記官は、提出された情報と不動産登記簿上の情報を突き合わせ、住所変更が必要かどうかを判断します。
職権での登記変更
審査が完了すると、登記官が職権で住所変更を実施します。所有者による申請は不要なため、手続きの負担が軽減されます。
確認通知の送付
住所変更が完了すると、法務局から所有者に対して変更内容の通知が送付されます。これにより、所有者は住所変更が正しく反映されたかどうかを確認できます。

6. まとめ
今回の法務省による「検索用情報の申出」制度は、不動産の住所等変更登記を職権で実施する際に非常に重要な手続きです。所有者が情報を正確に提供することで、迅速かつ確実に住所変更が行われ、不動産登記情報の正確性が保たれます。
司法書士として、顧客の皆様が適切に情報を提出できるようサポートすることは、手続き全体のスムーズさに直結します。住所変更手続きに関して不明点がある場合は、早めにご相談いただき、適切な手続きを進めましょう。
詳しくは、法務省HPまで。
(論点)遺産放棄に関する「念書」は有効か?

相続放棄の法的効力を理解するために
遺産相続の際、遺産を放棄する旨の「念書」を交わすケースがあるかもしれません。しかし、この「念書」が法的に有効なのか、またどのような条件で効力を持つのかについては、一般的には誤解が生じやすい部分です。本記事では、遺産放棄に関する「念書」が法的に有効か無効かを考察し、相続放棄における正しい手続き方法について解説します。
目次
1.遺産放棄とは?
2.「念書」の法的効力
2.1. 「念書」が効力を持つ場合
2.2. 「念書」の無効性について
3. 法的な相続放棄の手続き
3.1. 家庭裁判所での相続放棄申述
3.2. 相続放棄の期限と注意点
4. 「念書」を利用したトラブルの可能性
5. まとめ

1. 遺産放棄とは?
遺産放棄とは、相続が発生した際に、相続人が他の相続人との間で遺産分割協議により、被相続人(亡くなった人)の遺産を一切受け取らないことを合意する者です。その効力は対外的にはなく、あくまでも相続人間の合意という効力しかありません。根本的に相続放棄とは異なります。
相続放棄とは、初めから相続人ではなかったことになるという法律上の手続きであり、家庭裁判所に申述することにより行うものです。遺産放棄のように相続人間だけの話し合いではなく、法律上対外的にも効力を有する手続きとなります。そして相続放棄は、関連する債務も負わないというメリットがあります。
ただし、相続放棄の手続きは、法律に定められた正式なプロセスを経る必要があります。

2. 「念書」の法的効力
2.1. 「念書」が効力を持つ場合
遺産分割の際に、相続人同士で「私は遺産を受け取りません」といった内容の「念書」を交わすことがあるかもしれません。この「念書」自体が、家族間の合意を示すためのものであれば、あくまでプライベートな合意として一定の効力を持つ可能性があります。例えば、遺産分割協議書の一部として相続人の合意を示す補足的な文書として利用する場合です。
ただし、こうした「念書」は、法的には遺産放棄の証明としての効力を持たない点に注意が必要です。これは後述するように、相続放棄そのものが法律で定められた手続きによってのみ効力を持つためです。
2.2. 「念書」の無効性について
「念書」による相続放棄は、法律上の効力を持ちません。相続放棄は、家庭裁判所に対して正式に申述を行い、裁判所から認められる必要があります。したがって、口頭や「念書」の形での放棄は、相続においては意味がないということになります。たとえ家族間で合意が取れていたとしても、それが法的に認められるわけではありません。
特に「念書」に依存して相続放棄を行ったと考えていた場合、後にトラブルが発生するリスクがあります。遺産を受け取らないつもりでいた相続人が、正式な相続放棄手続きを行わなかった場合、その相続人は法律上の相続人として扱われ続け、債務の支払い義務などを負う可能性があります。

3. 法的な相続放棄の手続き
3.1. 家庭裁判所での相続放棄申述
相続放棄を正式に行うためには、相続人が家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出する必要があります。この申述書には、相続放棄をする理由や被相続人の情報、相続人自身の情報が記載されます。裁判所が相続放棄を認めると、相続人はその時点から一切の遺産および債務に対して権利や義務を持たなくなります。
3.2. 相続放棄の期限と注意点
相続放棄には期限があり、被相続人の死亡を知った日から3か月以内に手続きを行う必要があります。この3か月の期間は、相続人が遺産の内容や債務の有無を確認するための「熟慮期間」として設けられています。相続放棄を行う場合は、この期間内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
また、相続放棄は撤回することができないため、一度放棄した後で「やはり遺産を受け取りたい」と思っても、放棄の撤回は認められません。この点も十分に理解しておくことが重要です。
4. 「念書」を利用したトラブルの可能性
「念書」による相続放棄の意志表明は、家族間のトラブルを引き起こす可能性があります。特に、後になって相続人の間で意見が食い違った場合、念書が無効であることが明確になり、法的手続きに従わなかった相続放棄が無効とされることで、相続手続きが混乱することがあります。
また、相続放棄を行ったつもりでも、実際には相続人としての権利や義務を持ち続けてしまい、後々になって遺産分割協議のやり直しや、債務を負う可能性が出てくることもあります。これを避けるためには、正式な相続放棄の手続きを必ず行うことが求められます。

5. まとめ
遺産を放棄する旨の「念書」は、法律上の相続放棄としての効力を持ちません。遺産放棄を正式に行うためには、家庭裁判所に対して相続放棄申述を行い、裁判所が認めた時点で初めて効力を発揮します。口頭や念書に依存した相続放棄は、後々のトラブルを招く可能性があるため、必ず法律に基づいた手続きを取ることが重要です。
相続放棄の手続きは複雑ではありますが、家庭裁判所に正しい申述を行えば、相続人としての権利や義務を放棄することができます。「念書」による相続放棄に頼らず、法的に認められたプロセスをしっかりと踏むことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
(論点)法務局の登記相談を200%活用する方法

効率的な相談のために必要な準備と心構え
法務局の登記無料相談は、不動産の登記や相続に関する手続きをサポートするために非常に有効なサービスです。しかし、相談を有効活用するためには、事前準備や正確な情報提供が欠かせません。無料だからといって、全てを任せるのではなく、こちらも必要な資料や情報をしっかり準備して臨むことが、双方にとって有意義な時間を作り出すポイントです。本記事では、法務局の登記相談を200%上手に活用するための方法について解説します。
目次
1.法務局の登記相談とは
2.事前準備の重要性
2.1. 必要書類を確認する
2.2. 相談内容を明確にする
3. 相談中の対応
3.1. 担当者の質問には的確に答える
3.2. 正確な情報提供がカギ
3.3. 何でも依頼する姿勢を避ける
4. 相談後のフォローアップ
5. まとめ

1. 法務局の登記相談とは
法務局では、不動産登記や相続、会社設立に関する登記手続きなどについて無料で相談を受け付けています。特に、複雑な手続きが多い不動産や相続に関する登記は、専門知識が必要なことが多く、専門家に相談することで手続きを円滑に進めることができます。法務局の相談サービスは無料で利用できるため、多くの人が気軽に利用できますが、相談を有効に活用するためには、事前の準備が不可欠です。

2. 事前準備の重要性
2.1. 必要書類を確認する
法務局の登記相談を200%活用するためには、予約時に必要な書類を確認しておくことが大切です。例えば、不動産登記に関する相談であれば、該当する不動産の登記簿謄本や売買契約書、相続に関する相談であれば、被相続人の戸籍謄本や相続人の住民票などが必要になることがあります。事前に法務局に問い合わせて、具体的にどの書類が必要かを確認し、漏れがないように準備しておくことで、相談当日にスムーズな対応が可能になります。
2.2. 相談内容を明確にする
事前に相談内容を明確にしておくことも重要です。漠然とした質問では、相談の時間を有効に使うことができません。例えば、「相続登記について教えてください」ではなく、「相続登記に必要な書類や手続きの流れを知りたい」「具体的にどのタイミングで何を提出すれば良いのか」といった具体的な質問を用意しておくと、的確なアドバイスを受けることができます。また、相談内容をメモにまとめておくことで、相談時に聞き忘れを防ぐことができます。
3. 相談中の対応
3.1. 担当者の質問には的確に答える
相談中、担当者からいくつかの質問が投げかけられることがあります。これらの質問に対して的確に答えることが、より良いアドバイスを得るためのカギとなります。例えば、不動産の所有者や具体的な状況に関する質問があった場合、正確な情報を提示することで、担当者も適切なアドバイスを提供できます。たまに「さっき言いましたよね」と繰り返し話す方がいますが、正確な情報を提供せずに同じことを何度も説明させると、担当者の時間も無駄になり、相談内容の深掘りができなくなってしまいます。
3.2. 正確な情報提供がカギ
登記手続きや相続に関する相談では、正確な情報が必要です。例えば、不動産の相続手続きに関する相談であれば、対象となる不動産の正確な情報や相続人の数などをきちんと整理しておくことが求められます。正確な情報がなければ、担当者も判断がつかず、誤ったアドバイスを受けてしまう可能性もあります。これにより、後々の手続きが遅れる原因となるため、事前に必要な情報を正確に把握し、相談時に提示できるようにしておきましょう。
3.3. 何でも依頼する姿勢を避ける
無料相談だからといって、何でも担当者に依頼する姿勢は避けるべきです。「無料だから何でも聞ける」という態度で臨むと、相談の本来の目的から逸れてしまい、お互いにとって時間の無駄となります。登記や相続に関する相談は、あくまで具体的な手続きや法的なアドバイスを受ける場であり、全てを担当者に丸投げするような姿勢では、効果的な相談ができません。適切な準備をし、担当者のアドバイスを元に自ら対応できる部分をきちんと行うことが重要です。

4. 相談後のフォローアップ
相談が終わった後も、フォローアップを忘れないようにしましょう。相談中に受けたアドバイスをもとに、必要な手続きを速やかに進めることが大切です。場合によっては、追加の書類提出や手続きが必要になることもあるため、相談後に確認事項があれば再度法務局に問い合わせるなど、フォローアップを怠らないことが肝心です。また、必要に応じて専門家に再相談することで、より確実な手続きを進めることができます。

5. まとめ
法務局の登記無料相談は、相続や不動産登記に関する疑問を解消する非常に有効な手段ですが、相談を200%活用するためには、事前の準備や相談中の対応が重要です。必要書類を事前に確認し、相談内容を具体的に整理しておくことで、効率的かつ有益なアドバイスを得ることができます。また、相談中には正確な情報を提供し、担当者の質問には的確に答えることが、スムーズな手続きを進めるためのポイントです。何でも依頼する姿勢を避け、相談後のフォローアップもしっかり行うことで、より充実した相談が可能になります。
(論点)相続の生前対策としての法律上と税務上の注意点

スムーズな相続のために準備しておくべきこと
相続は、財産を遺す人と受け取る人にとって非常に大きな出来事です。円滑な相続を実現するためには、生前から適切な対策を講じることが重要です。しかし、相続には法律上および税務上の複雑な問題が多く存在し、これらを理解せずに対応することで思わぬトラブルや高額な税金が発生する可能性があります。そこで今回は、相続における生前対策として、特に注意すべき法律と税務のポイントについて解説します。
目次
1.相続の生前対策とは
2.法律上の注意点
2.1. 遺言書の作成
2.2. 贈与の活用
2.3. 後見制度の利用
3. 税務上の注意点
3.1. 贈与税と相続税の違い
3.2. 贈与税の非課税枠
3.3. 相続税の節税対策
4. まとめ

1. 相続の生前対策とは
相続の生前対策とは、亡くなる前に財産を整理し、相続に備えることを指します。具体的には、遺言書の作成や贈与の実施、節税対策などがあります。これらの対策を行うことで、遺族が相続手続きで苦労せずに済み、相続税の負担も軽減できる可能性が高まります。しかし、法律上や税務上のルールに従わないと、せっかくの対策が無効となったり、逆に税負担が増えることもあります。次に、それぞれの注意点を詳しく見ていきます。

2. 法律上の注意点
2.1. 遺言書の作成
遺言書は、相続に関する本人の意思を明確に示すための重要な書類です。遺言書がない場合、遺産は法律に基づいて分配されますが、これが家族間でのトラブルにつながることが多々あります。遺言書を作成する際には、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があり、それぞれに法的な要件が定められています。
> 自筆証書遺言:本人が手書きで作成するものですが、内容に不備があると無効になる可能性があるため注意が必要です。加えて、遺言書の保管方法にも気を配る必要があります。
> 公正証書遺言:公証人が関与して作成されるため、法的な確実性が高く、トラブルを回避しやすいです。費用がかかりますが、信頼性が高い方法といえます。
2.2. 贈与の活用
生前に財産を贈与することで、相続財産を減らし、相続税の負担を軽減することができます。しかし、贈与には贈与税がかかるため、年間110万円の非課税枠を上手に活用することが大切です。また、一度贈与した財産は原則として取り戻せないため、慎重な判断が求められます。さらに、相続開始前3年以内の贈与については相続財産に含まれるため、その点も注意が必要です。
2.3. 後見制度の利用
相続人の中に判断能力が低下している者がいる場合には、成年後見制度を活用することが考えられます。後見制度を利用することで、認知症などの理由で自らの財産を適切に管理できなくなった人に代わって、後見人が財産の管理を行います。ただし、後見人の権限や報酬についても十分に理解しておく必要があります。
3. 税務上の注意点
3.1. 贈与税と相続税の違い
生前贈与には贈与税が課され、相続には相続税が課されます。贈与税は、毎年の贈与額に応じて課税されますが、相続税は遺産全体の評価額に基づいて課税されます。一般的には、贈与税の方が税率が高いですが、年間110万円の非課税枠を利用することで、無駄なく財産を移転することが可能です。
3.2. 贈与税の非課税枠
贈与税には年間110万円の非課税枠があります。この枠内で毎年贈与を行うことで、相続税の対象となる財産を減らすことができます。また、特定の用途に対する贈与についても、非課税となる場合があります。たとえば、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与については、一定の条件を満たすことで非課税とされる特例があります。
3.3. 相続税の節税対策
相続税を減らすためには、評価額を低くする方法が有効です。たとえば、現金よりも不動産を所有することで、相続財産の評価額を下げることができる場合があります。さらに、小規模宅地の特例など、一定の条件を満たすことで大幅な評価減が認められる制度もあります。また、生命保険の非課税枠を活用することで、相続税の負担を軽減することも可能です。

4. まとめ
相続の生前対策として、法律上と税務上で注意すべき点を押さえておくことは、家族や相続人に対する思いやりともいえます。遺言書をしっかりと作成し、財産の贈与を上手に活用することで、遺族が負担を感じることなくスムーズな相続を実現できるでしょう。また、相続税に関する知識を持ち、適切な節税対策を講じることで、無駄な税負担を避けることができます。これらの対策は、早めに準備を進めることで、その効果を最大限に発揮することができるため、ぜひ一度専門家に相談することをお勧めします。
(論点)相続対策としてのエンディングノート

若くして亡くなった場合のサブスクやアプリ課金の解約トラブル...
エンディングノートは、終活の一環として作成されることが多いですが、近年、若い世代にもその重要性が認識されつつあります。特に、サブスクリプション(サブスク)やアプリ課金の普及により、亡くなった後の契約や解約手続きが複雑になり、家族や相続人にとって大きな負担となるケースが増えています。若くして突然亡くなった方の相続相談では、これらの解約が非常に困難であり、最終的にできなかったものもあるという事例が少なくありません。本稿では、エンディングノートの重要性と、特にサブスクやアプリの解約に関するトラブルを防ぐための対策について考察します。
目次
1.エンディングノートの役割とは
2.若年層の相続におけるサブスク・アプリ課金の問題点
3.サブスクやアプリ課金の解約手続きが難しい理由
4.エンディングノートによる対策
4.1 契約情報の記録
4.2解約手続きの詳細を記載
4.3デジタル遺品サービスの活用
5. まとめ

1. エンディングノートの役割とは
エンディングノートは、自分が亡くなった後に必要な手続きを円滑に進めるためのメモや指示書のようなもので、生前に家族や相続人に向けて残すものです。財産や保険、葬儀の希望だけでなく、最近ではデジタルコンテンツやサブスクの契約情報も記載することが推奨されています。特に、若い世代はデジタルサービスを多く利用しており、これらの情報が明確に整理されていないと、亡くなった後の手続きが煩雑になる可能性があります。
2. 若年層の相続におけるサブスク・アプリ課金の問題点
若い世代では、スマートフォンやパソコンを通じて多くのサブスクサービスやアプリの課金を利用していることが一般的です。これには、動画配信サービス、音楽ストリーミング、クラウドストレージ、さらにはゲームやフィットネスアプリなど、多岐にわたる契約が含まれます。これらの契約は、月額料金が自動的に引き落とされる形式が多いため、亡くなった後も放置されると費用がかかり続けるリスクがあります。遺族がこれらの契約情報を把握していない場合、解約手続きが遅れ、余計な負担となることがよくあります。

3. サブスクやアプリ課金の解約手続きが難しい理由
サブスクやアプリ課金の解約が難しい理由は、いくつかあります。
契約情報の把握不足:多くの場合、亡くなった方のサブスクやアプリ課金の情報が家族に共有されていないため、どのサービスを解約すべきかが分かりません。特に、複数のサービスを利用している場合、一つひとつの確認が必要になります。
IDやパスワードの管理:サービスの解約にはアカウントのIDやパスワードが必要となることが多いですが、これらが家族に伝えられていないと、アクセスすらできません。また、セキュリティ対策として二段階認証を導入しているサービスも多く、これがさらなるハードルとなります。
サービス提供者の対応:サブスクやアプリの提供者によっては、解約手続きに時間がかかる場合や、故人の契約を解除するために特別な書類が必要な場合もあります。死亡証明書の提出を求められるケースや、本人以外の解約が認められないケースもあります。

4. エンディングノートによる対策
これらの問題を解消するためには、エンディングノートに契約情報や解約手続きを明記しておくことが有効です。
4.1. 契約情報の記録
エンディングノートに、自分が契約しているサブスクやアプリ課金のリストを作成しておくことが重要です。具体的には、以下の情報を記載します。
契約しているサービス名
契約の開始日および終了日(解約したい場合の希望)
月額料金などの費用
アカウントのIDやパスワード
支払い方法(クレジットカード、銀行引き落としなど)
これにより、家族や相続人が亡くなった後にスムーズに解約手続きを進めることができます。
4.2. 解約手続きの詳細を記載
サービスごとに解約手続きの手順が異なるため、それぞれの解約方法についても記載しておくことが望ましいです。たとえば、特定のウェブサイトにアクセスする必要がある場合や、アプリからの操作が必要な場合、その方法を具体的に記載しておきます。また、二段階認証を設定している場合には、認証方法も説明しておくことで、スムーズにアクセスが可能となります。
4.3. デジタル遺品サービスの活用
最近では、デジタル遺品整理を専門とするサービスも登場しています。これらのサービスでは、故人のサブスクやアプリ課金の情報を一括して管理・解約するサポートを提供しています。エンディングノートには、こうしたサービスを利用する場合の連絡先や契約内容も記載しておくと良いでしょう。

5. まとめ
若くして亡くなった場合の相続手続きでは、サブスクやアプリ課金の解約が大きな課題となることが少なくありません。これらの契約情報を事前に整理しておくことで、遺族や相続人の負担を大幅に軽減することができます。
エンディングノートを活用し、契約内容や解約手続きを明確に記載することで、万が一の際に円滑な手続きが可能となるでしょう。また、デジタル遺品整理サービスの利用も一つの手段として検討することが有効です。
(論点)職務上請求の正しい利用方法とその限界:相続登記における戸籍取得の問題

司法書士や弁護士など、特定の職務を持つ専門家には、その職務を遂行するために特定の公的書類を取得する権限が与えられています。その一つが「職務上請求」であり、これは職務を遂行するために必要な場合、戸籍や住民票などの公的書類を取得できる制度です。しかし、職務上請求を利用できるのはあくまでその業務遂行において必要な範囲に限られており、不正な利用は法律や倫理の観点から厳しく制限されています。
今回、ある相談者から「相続登記は自分で行うので、戸籍だけ取得してほしい」という依頼を受けた場合、職務上請求を行うことは適切なのかという疑問が浮かびました。本稿では、この問題について、職務上請求の正しい利用範囲と、その限界について解説します。
目次
1.職務上請求とは何か
2.職務上請求の利用範囲:相続登記における実際のケース
3.相続登記を依頼しない場合の戸籍取得の問題点
4.目的外利用と職務上請求のリスク
5.正しい職務上請求の利用方法

1. 職務上請求とは何か
「職務上請求」とは、弁護士や司法書士が業務を遂行するために、公的機関から戸籍や住民票などの書類を取得できる権限です。これは依頼者からの依頼内容を実現するために必要な場合に限り行使できるものであり、その目的以外での使用は禁止されています。
たとえば、相続登記や成年後見などの手続きを行う際、必要な書類として相続人全員の戸籍や住民票が必要となります。こうした場合、依頼者のために、司法書士は職務上請求を用いてこれらの書類を取得することが認められています。

2. 職務上請求の利用範囲:相続登記における実際のケース
職務上請求が許されるのは、司法書士が自身の職務遂行に必要な場合のみです。たとえば、相続登記の手続きを依頼された場合、その手続きに必要な書類として相続人の戸籍謄本や住民票が必要となるため、この場合に限り職務上請求を利用して取得することが正当化されます。
しかし、依頼者が相続登記を自ら行う意思を持っている場合はどうでしょうか。この場合、戸籍の取得を依頼者が司法書士に求めることがありますが、ここに注意すべき点があります。それは、司法書士が業務上取得した戸籍が、果たして実際に相続登記に使用されたかどうかの確認が困難であり、目的外で利用されるリスクがあることです。
3. 相続登記を依頼しない場合の戸籍取得の問題点
仮に、相続登記を依頼せずに、戸籍取得だけを司法書士に依頼するケースを考えてみます。この場合、司法書士は本来の職務として相続登記を行っていないため、その業務遂行に必要な範囲で職務上請求を行う権限がない可能性があります。すなわち、職務上請求は依頼された業務(この場合は相続登記)の遂行を前提として行使されるものであり、業務そのものが依頼されていない場合には、その利用は不適切です。
また、戸籍が相続登記に使用されたかどうかを確認する方法が存在しないため、不正利用のリスクが高まります。こうした目的外の利用が発覚した場合、司法書士としての信用が損なわれるだけでなく、法的な問題に発展する可能性も否定できません。

4. 目的外利用と職務上請求のリスク
職務上請求で取得した戸籍や住民票を、目的外に利用することは法的に問題があります。具体的には、司法書士が職務上請求で取得した書類を、相続登記の目的ではなく、依頼者の個人的な利用のために提供した場合、それは職務上請求の本来の目的を逸脱していると言えます。
また、職務上請求によって取得した書類が、依頼者の個人的な目的で利用され、その後にトラブルが発生した場合、司法書士としての責任が問われる可能性があります。こうしたリスクを避けるためにも、職務上請求を行う際には、その目的が明確であり、かつ依頼者からの正式な依頼に基づいていることが重要です。
5. 正しい職務上請求の利用方法
以上を踏まえ、私の事務所では、職務上請求を利用する際には、必ず「相続登記」を含む手続きそのものを正式に依頼いただいた場合に限り利用するようにしています。このようにすることで、目的外利用のリスクを回避し、依頼者との信頼関係を保つことができるのです。
相続登記を自ら行う方のために戸籍を取得するという要望に対しては、その趣旨を理解しつつも、司法書士としての権限の範囲を超える行為であるため、お断りすることが適切であると考えます。このようなケースでは、依頼者に対して職務上請求の本来の趣旨を説明し、必要な書類はご自身で取得していただくよう促すことが重要です。

結論
職務上請求は、司法書士がその業務を遂行するために重要な権限ですが、それを適切に利用しなければリスクが生じます。特に、相続登記を依頼されていない場合における戸籍取得の問題は慎重に扱うべきです。司法書士としての信頼性を守るためにも、職務上請求はその本来の目的に即した範囲で行い、依頼者にもその趣旨をしっかりと説明することが求められます。
相続土地国庫帰属制度:施行から約2年後の現状と課題を法務省のデータから分析

令和5年4月27日に施行された「相続土地国庫帰属制度」は、相続された土地を国に引き渡すことができる制度として大きな注目を集めました。特に、相続人にとって管理・利用が困難な土地を国に返還できる仕組みは、今後の高齢化社会における土地管理問題の解決策の一つとして期待されています。本記事では、この制度の概要と施行から約1年が経過した現状、法務省の統計データを基にした実績や課題について解説します。
目次
1.相続土地国庫帰属制度の概要
2.制度施行後の影響と法務省の統計データ
3.制度活用における実務上の課題
4.今後の展望と制度の改良点
5.結論

1. 相続土地国庫帰属制度の概要
相続土地国庫帰属制度とは、相続された土地の管理や活用が困難な場合、一定の条件を満たせばその土地を国に引き渡すことができる制度です。この制度は、相続によって受け継いだ土地が使用されていない、管理が困難である、または経済的に負担となっている場合に、相続人がその土地を国庫に帰属させることで、将来的な負担を軽減する目的があります。
ただし、全ての土地が国に引き渡せるわけではなく、以下のような条件を満たしている必要があります。
土地に建物や不法投棄物が存在しないこと
土地が崩壊の恐れのない状態であること
土地の管理に過度な費用がかからないこと
これらの条件をクリアした場合、申請手続きを通じて土地を国に帰属させることが可能です。
2. 制度施行後の影響と法務省の統計データ
制度が施行されてから約2年が経過し、相続人による土地の国庫帰属申請件数が徐々に増加しています。法務省の最新データによると、施行初年度の申請件数は約3,000件(令和7年1月31日現在)に達し、そのうち約半数が実際に国庫へ帰属されたと報告されています。
この制度に対する関心の高さは、特に地方の農村部や山間部など、利用価値が低い土地を相続した相続人からの申請が多いことが背景にあります。これまで管理が行き届かず放置されていた土地が、国庫帰属制度の導入により、土地の管理問題が解決されつつあります。
しかし、全ての申請が受理されているわけではなく、不適合な土地に対しては国が帰属を拒否するケースも多く見受けられます。特に、建物の存在や、土地が管理不能な状態である場合には、申請が却下される傾向にあります。

3. 制度活用における実務上の課題
制度の導入により多くの相続人が土地の管理負担を軽減できるようになりましたが、いくつかの実務上の課題も明らかになっています。
まず、国庫帰属申請の際に必要となる調査や書類作成の負担が大きいという点です。土地の物理的状態を証明するために、測量士や建築士による評価書を作成する必要がある場合も多く、相続人にとって時間とコストがかかるケースが見られます。
また、法務省の統計によれば、申請の約半数が却下されていることから、国庫帰属のハードルが高いことが指摘されています。特に、申請者の多くが予想以上に条件を満たさない土地であることが判明し、帰属が認められないケースが多いことが課題です。
さらに、相続人の中には、国庫帰属を希望しているにもかかわらず、土地の状態や位置情報が不明であるため申請ができないという問題も報告されています。このような場合には、事前の調査や登記の正確な把握が不可欠です。
4. 今後の展望と制度の改良点
今後、相続土地国庫帰属制度の利用がさらに進むためには、いくつかの改良点が求められます。まず、手続きの簡素化や、申請時のコスト負担軽減に向けた支援策の導入が考えられます。相続人にとって、手続きが複雑であることが利用の障壁となっているため、オンライン申請の拡充や、専門家による無料相談制度などが有効な対策となるでしょう。
また、地方自治体や法務局が連携して、相続人に対して土地の状態を事前に調査する支援体制を整備することで、申請者がよりスムーズに手続きを進められるようになることが期待されます。特に、都市部と地方での土地管理の実情が異なるため、地域に応じた支援策が求められます。
さらに、今後の法改正によって、帰属対象となる土地の基準が緩和される可能性もあります。特に、管理が難しい土地に関しては、国による積極的な受け入れを進めることが、地域の土地問題解決に貢献すると考えられます。

5. 結論
相続土地国庫帰属制度は、施行から約2年が経過した現在、相続人が不要な土地を手放すための有効な手段として一定の成果を上げています。しかし、実務上の手続きや条件の厳しさから、全ての土地が国に帰属できるわけではないという現実も浮き彫りになっています。法務省の統計データに基づくと、申請件数は増加傾向にあるものの、制度の利用促進にはさらなる支援策や制度改良が必要です。
今後の展望としては、手続きの簡素化や申請時の負担軽減が進むことで、より多くの相続人が制度を活用できるようになることが期待されます。相続土地の国庫帰属は、高齢化社会における土地管理問題の一つの解決策として、今後も重要な役割を果たしていくでしょう。
令和6年4月1日施行の相続登記義務化:1年後の影響と変化を法務省のデータから読み解く

令和6年4月1日に施行された「相続登記義務化」は、長年問題視されてきた未登記不動産の増加を抑制し、相続に関わる不動産の権利関係を明確にするための重要な法改正です。この改正は、相続登記が義務化されたことで、相続不動産の登記が適切に行われず、不動産の権利が不明確になるリスクを減らすことを目的としています。本記事では、施行から1年経過した現時点での変化について、法務省の統計データを基に考察し、相続登記義務化がどのような影響をもたらしたのかを分析します。
目次
1.相続登記義務化の概要
2.相続登記義務化後の影響と変化
3.法務省の統計データから見る実施後の実態
4.相続登記義務化の課題と今後の展望
5.結論

1. 相続登記義務化の概要
相続登記義務化とは、不動産を相続した際に、相続人がその不動産について登記を行うことを義務付ける法改正です。
これまで、相続登記は義務ではなく、相続が発生しても登記がされずに放置されるケースが多々ありました。その結果、権利関係が曖昧な不動産が増え、特に相続人が複数にわたる場合には、登記手続きを後回しにすることで紛争が生じることもありました。
この法改正により、相続から3年以内に登記を行わない場合、10万円以下の過料が課されることが定められています。

2. 相続登記義務化後の影響と変化
施行から1年が経過し、実際の登記手続きにどのような変化が見られたのでしょうか。
まず、多くの相続人が義務を果たすべく登記手続きを迅速に行うようになり、登記未了の不動産の減少が確認されています。また、施行前に比べて、相続人間での合意形成がスムーズに進むケースも増えました。
登記手続きを怠ることによるリスクが明確化されたため、相続手続きが迅速かつ適正に行われるようになったことが主な要因です。
一方で、手続きに時間を要するケースや、手続き費用が課題となるケースも見られます。
特に、相続人が遠方に住んでいる場合や、相続する不動産が多数ある場合など、実務上の負担が大きくなることが依然として課題として残されています。

3. 法務省の統計データから見る実施後の実態
法務省が公開した最新の統計データによれば、相続登記義務化後の1年間で相続登記件数は大幅に増加しています。具体的には、相続登記が義務化される以前の年間登記件数に比べて、約20%増加したとの報告があります。このデータは、相続登記の重要性が周知され、相続人が早期に手続きを行うようになったことを示唆しています。
また、法務局への問い合わせ件数や登記手続きを行うための相談件数も増加しており、義務化による相続手続きの活発化が見受けられます。
特に、不動産に関わる専門家(司法書士や弁護士)への依頼が増加しており、相続登記手続きを専門家に任せる傾向が強まっていることが確認されています。
4. 相続登記義務化の課題と今後の展望
相続登記義務化は、相続手続きを迅速かつ適正に行うための重要な法改正である一方で、いくつかの課題も浮上しています。まず、登記手続きにかかる費用が負担となるケースが多く、特に相続財産が少額の場合や、相続人が多い場合には、登記費用を捻出することが難しいという問題があります。
さらに、相続人が海外に居住している場合や、高齢者が相続人となる場合には、登記手続きを行う際の物理的・精神的な負担も課題となっています。
これに対し、デジタル化やリモート対応の拡充が今後の重要なテーマとなるでしょう。
5. 結論
令和6年4月1日に施行された相続登記義務化は、1年が経過した現在、相続手続きの適正化に向けて一定の成果を上げていることが法務省のデータからも確認されています。
登記手続きの増加に伴い、未登記不動産の減少が期待される一方で、登記費用や手続きの負担が引き続き課題として残されています。
今後は、デジタル化や手続きの簡素化を進めることで、さらなる相続登記の円滑化が期待されます。
(論点)相続に伴う空き家問題とその解消方法

日本では少子高齢化が進行する中、相続によって空き家が増加しています。空き家は地域の景観や治安に影響を及ぼすだけでなく、所有者自身にも維持管理の負担が生じます。本稿では、相続に伴う空き家の問題点と、その解消方法について詳しく解説します。
目次
1.相続による空き家の増加
2.空き家の問題点
3.空き家問題の解消方法
3.1. 売却・譲渡
3.2. 賃貸化
3.3. 解体・更地化
3.4. 地域との連携
4.まとめ

1. 相続による空き家の増加
相続により、故人が所有していた住宅が相続人の手に渡ります。しかし、相続人が遠方に住んでいる、または住宅を必要としない場合、その家は空き家となることが多いです。総務省の統計によれば、空き家率は年々増加傾向にあり、その多くが相続によるものとされています。
2. 空き家の問題点
空き家が増えることで、以下のような問題が生じます。
地域の景観悪化:放置された空き家は老朽化が進み、地域の美観を損ないます。
治安の低下:空き家は不法侵入や犯罪の温床となる可能性があります。
固定資産税の負担:所有しているだけで固定資産税が課せられ、維持管理の費用も発生します。
相続人間のトラブル:空き家の管理や処分方法を巡って、相続人間で意見が対立することがあります。

3. 空き家問題の解消方法
空き家の問題を解消するためには、以下の方法が考えられます。
3.1. 売却・譲渡
空き家を売却することで、現金化し維持管理の負担を軽減できます。また、親族や知人に譲渡することで、家の価値を維持しつつ、相続人間のトラブルを防ぐことができます。ただし、売却時には不動産の査定や仲介手数料、譲渡所得税などの税金が発生する可能性があるため、事前の確認が必要です。
3.2. 賃貸化
空き家を賃貸物件として活用することで、定期的な収入を得ることができます。地域のニーズに合わせて、長期賃貸や短期賃貸(民泊)など、適切な方法を選択することが重要です。賃貸化する際は、賃貸契約書の作成や入居者の募集、物件の維持管理が必要となります。
3.3. 解体・更地化
老朽化が進み、売却や賃貸が難しい場合は、解体して更地にする選択もあります。更地にすることで、土地としての価値を高め、将来的な売却や活用が容易になります。ただし、解体費用や廃材の処理費用がかかるため、費用対効果を検討する必要があります。
3.4. 地域との連携
地域によっては、空き家の活用や解消に向けた支援制度や助成金を提供している場合があります。自治体や地域のNPOと連携し、空き家を地域資源として活用する方法も検討できます。例えば、地域の集会所や交流スペースとして改装することで、地域活性化に寄与することができます。

4. まとめ
相続に伴う空き家問題は、個人だけでなく地域全体の課題です。空き家の放置は、景観や治安の悪化、税負担の増加など、さまざまな問題を引き起こします。これらの問題を解消するためには、売却や賃貸、解体などの方法を検討し、地域との連携を深めることが重要です。具体的な方法や支援制度については、自治体や専門家に相談することで、最適な解決策を見つけることができます。
(論点)相続放棄の期限を超えても可能なケース:特例と実務対応

相続放棄は、相続人が負債や面倒な財産を引き継ぎたくない場合に、相続を拒否するための手続きです。一般的には、相続が発生したことを知った日から3か月以内に行う必要がありますが、一定の条件下では、3か月を過ぎた後でも相続放棄が認められることがあります。期限を過ぎた場合でも相続放棄が認められる具体的な状況や手続きについて、本稿では詳しく解説します。
目次
1.相続放棄の基本的なルール
2.3か月の期限を超えても相続放棄が可能なケース
3.事例紹介:知らなかった負債が後から判明した場合
4.3か月を超えて相続放棄をするための手続き
5.実務的な注意点と対策

1. 相続放棄の基本的なルール
相続放棄は、相続人が自らの意思で相続権を放棄する手続きです。放棄することで、相続人は被相続人の財産や負債を一切引き継がないことになります。
相続放棄の期限は、相続人が相続の発生を知った日から3か月以内とされています。この期間内に家庭裁判所に相続放棄の申述を行い、受理されれば、相続人は相続財産の一切を放棄できます。
しかし、この3か月の「熟慮期間」を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできなくなってしまいます。
2. 3か月の期限を超えても相続放棄が可能なケース
ただし、例外的に3か月の期限を超えても相続放棄が認められるケースがあります。これは、相続人が相続財産や負債の存在を知らなかった場合です。
法律では、相続人が「相続の対象となる財産や負債の全貌を知らなかったことが合理的に認められる場合」には、期限を過ぎた後でも相続放棄が認められることがあります。具体的には、次のようなケースが該当します。
・被相続人が多額の借金を隠しており、相続人がその事実を全く知らなかった場合
・被相続人が亡くなってから長期間経ってから新たな負債が発覚した場合
・遠方に住んでおり、相続財産の詳細を調査する時間が十分に取れなかった場合
これらの場合、相続人は「予期せぬ負債が判明した」という理由で、3か月を過ぎた後でも相続放棄を認められることが可能です。

3. 事例紹介:知らなかった負債が後から判明した場合
例えば、被相続人が多額の借金をしており、それを生前に隠していたケースでは、相続人は被相続人の死亡後に相続放棄の手続きを進める中で、財産を調査します。しかし、3か月が経過してから隠れていた借金が発覚することもあります。
この場合、相続人がその借金の存在を知らなかったことが認められれば、家庭裁判所に対して相続放棄の申立を行い、認められることがあります。こうした事例では、発覚したタイミングで速やかに行動することが重要です。
4. 3か月を超えて相続放棄をするための手続き
3か月の期限を過ぎて相続放棄を行うためには、家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行う必要があります。
その際には、相続財産や負債の状況を把握できなかった理由を具体的に説明し、書類を提出することが求められます。通常の相続放棄申述と異なり、裁判所が相続人がその財産や負債の存在を知らなかったと合理的に判断できる証拠が必要です。
例えば、負債の明細が記された通帳や新たに判明した負債の通知書などを提出することで、裁判所がその正当性を認める可能性があります。

5. 実務的な注意点と対策
3か月を過ぎた後で相続放棄を行うためには、迅速かつ的確な対応が求められます。
発覚した負債については、すぐに家庭裁判所に相談し、手続きを開始することが重要です。遅れが生じると、相続放棄が認められない可能性もあるため、できるだけ早い段階で対応しましょう。
また、相続財産の全貌を把握するために、専門家である司法書士や弁護士の助けを借りることも有効です。相続財産や負債が複雑な場合や、遠方に住んでいて調査が困難な場合は、これらの専門家に依頼することで、よりスムーズに手続きを進めることができます。
結論
相続放棄は、通常3か月以内に行う必要がありますが、一定の条件下では期限を過ぎても放棄が認められることがあります。
相続財産や負債の全貌が判明しなかった場合や、知らない負債が後から発覚した場合には、速やかに家庭裁判所に申述を行い、相続放棄の手続きを進めることが可能です。
実務的には、発覚した負債に対して迅速に対応し、専門家の助けを借りることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
(論点)甥・姪が相続人となるケース:法的背景と実務的な注意点

相続において、配偶者や子どもがいない場合や法定相続人全員が既に他界している場合、甥や姪が相続人となることがあります。しかし、甥・姪が相続人となるケースには、法的な制約や手続きの複雑さが伴うため、注意が必要です。
本稿では、甥・姪が相続人となる具体的な状況、相続の優先順位、手続き上のポイントを中心に解説し、実務的に役立つ情報を提供します。
目次
1.甥・姪が相続人となる状況
2.甥・姪が相続人となる場合の法定相続分
3.遺言書の重要性と留意点
4.甥・姪が相続人となる場合の手続き
5.実務的な注意点

1. 甥・姪が相続人となる状況
通常、相続は配偶者や子供に優先的に行われます。
しかし、配偶者も子供もいない、あるいは全員が先に他界している場合、甥・姪が相続人になることがあります。これは、被相続人の兄弟姉妹が相続権を持つ場合に該当します。兄弟姉妹が既に他界していると、その子供、つまり甥・姪が代襲相続として相続権を引き継ぎます。
代襲相続とは、相続人が亡くなっている場合に、その者の子供が相続権を代わりに取得する仕組みです。したがって、甥・姪が相続に関わるのは、兄弟姉妹が既に亡くなっている場合に限られます。
2. 甥・姪が相続人となる場合の法定相続分
甥・姪が代襲相続人となる場合、兄弟姉妹と同様の相続分を持ちます。
法律では、兄弟姉妹の相続分は全体の1/3です。例えば、被相続人に他の直系尊属(両親)や直系卑属(子供)がいない場合、兄弟姉妹が相続分を分け合うことになります。甥・姪が相続人となる場合、複数の甥・姪がいれば、その兄弟姉妹の相続分をさらに分け合います。
この際、実子と養子の間で法的な違いはありません。

3. 遺言書の重要性と留意点
甥・姪が相続人となるケースでは、遺言書の存在が非常に重要です。
遺言書がある場合、被相続人の意思に基づいて財産が分配されます。特に甥・姪に遺産を渡したい場合、遺言書がないと法定相続分に基づいて自動的に他の法定相続人に財産が配分されるため、特定の甥・姪に財産を渡すことができなくなります。
遺言書の作成は、相続人間の争いを防ぐためにも有効であり、正確な内容を残すために専門家に相談することが推奨されます。
4. 甥・姪が相続人となる場合の手続き
甥・姪が相続人となる場合の相続手続きは、通常の相続と異なる点があります。
まず、甥・姪が代襲相続人であることを証明するために、兄弟姉妹の死亡証明書や甥・姪の戸籍謄本を提出する必要があります。これによって、相続権が甥・姪に移ることを正式に確認します。さらに、相続人の間で遺産分割協議を行い、相続財産を分配する手続きが求められます。
協議が円滑に進まない場合は、家庭裁判所で調停や裁判を通じて解決することもあります。

5. 実務的な注意点
甥・姪が相続人になる場合、法的手続きが複雑になる可能性があるため、事前に準備を整えておくことが重要です。例えば、相続人が多い場合や相続財産が多様である場合、財産の分配に関する合意を得ることが難しくなることがあります。
また、代襲相続に関する書類の収集や確認が煩雑になるため、相続手続きを円滑に進めるためには司法書士や弁護士などの専門家の助言を受けることが推奨されます。
特に、財産の正確な把握や相続税の計算においては、専門的な知識が不可欠です。
結論
甥・姪が相続人となるケースは、一般的な相続に比べて手続きが複雑であるため、事前に準備を行い、遺言書の作成や専門家の助言を活用することが望ましいです。
適切な対応を行うことで、相続手続きを円滑に進め、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。
(論点)相続放棄した元相続人に対する相続税法上の取り扱い

相続放棄とは、相続人が被相続人の財産を相続しない旨を家庭裁判所に申し立てる手続きであり、相続放棄をした者は民法上、初めから相続人ではなかったこととみなされます。しかし、相続放棄をした場合でも、相続税法上の取り扱いには注意が必要です。特に、相続放棄をした元相続人が生命保険金を受け取る場合や、遺贈を受ける場合における相続税の扱いについては、いくつかの重要なポイントがあります。本記事では、相続放棄した相続人の取り扱いに関連する相続税法上の問題点として、①生命保険金に関する非課税規定の適用、➁相続放棄した元相続人が遺贈を受ける場合の相続税2割加算について解説します。
目次
1.相続放棄とは
2.生命保険金の非課税規定の適用
3.相続税の2割加算と相続放棄
4.結論

1. 相続放棄とは
相続放棄は、相続人が被相続人の遺産を受け取らないことを決定する法的手続きです。相続放棄をした者は、民法上で初めから相続人ではなかったとみなされ、相続に関連する権利と義務を一切負わないことになります。この手続きは、被相続人の遺産に関しては何も受け取らないという意思を表明するものであり、他の相続人にその相続分が割り当てられることになります。
しかし、相続放棄が相続税法にどのように影響を及ぼすかを理解することは重要です。相続放棄をした者が、相続税法上の非課税規定や税額加算の適用を受けるかどうかについて、慎重な判断が求められます。

2. 生命保険金の非課税規定の適用
相続税法では、生命保険金を受け取る際に、法定相続人に対して一定の非課税枠(500万円)が設けられています。具体的には、受取人が法定相続人である場合、その生命保険金に対して、相続税法上の非課税枠が適用されます。しかし、相続放棄をした相続人が生命保険金を受け取る場合、非課税枠は適用されません。
相続放棄を行った者は相続人としての地位を失い、法定相続人として扱われなくなるため、相続放棄をした者が生命保険金を受け取る場合には、非課税枠の適用を受けることはありません。つまり、生命保険金に関して相続税が課されることになります。
たとえば、相続放棄をした元相続人が被相続人の生命保険金を受け取った場合、その金額は通常の課税対象となり、500万円の非課税枠を受けることはできません。この点は、相続放棄を行った者が再度法定相続人として扱われることはないという相続法の原則に基づいています。

3. 相続税の2割加算と相続放棄
相続税法第18条では、相続税額に2割加算が行われる場合があります。これは、被相続人の相続人以外の者が相続や遺贈を受ける場合に適用され、特に相続人以外の親族に対して相続税額が増加する規定です。この加算は、相続人以外の者が受ける財産に対してのみ適用されますが、相続放棄をした元相続人が遺贈を受けた場合、加算されるのかどうかが問題となります。
結論として、相続放棄をした元相続人が遺贈を受ける場合、相続税の2割加算は適用されません。相続放棄をした者が遺贈を受けた場合でも、その者は依然として一親等の血族に該当します。このため、相続税法上では、遺贈を受けた者が一親等の血族であれば、2割加算の対象とはならないとされています。
たとえば、相続放棄をした子が遺言によって財産を遺贈された場合、この子は一親等の血族であるため、相続税の2割加算が適用されることはありません。この点を理解しておくことは、相続税の計算を行う際に重要です。

4. 結論
相続放棄をした元相続人に対する相続税法上の取り扱いについて、以下のようなポイントが挙げられます。
生命保険金に関しては、相続放棄をした相続人に対して非課税枠(500万円)は適用されません。相続放棄により相続人としての地位が失われるため、生命保険金に関しては通常の課税対象となります。
相続税の2割加算については、相続放棄をした元相続人が遺贈を受けた場合でも、加算は適用されません。相続放棄した者が一親等の血族に該当する限り、2割加算は行われないため、通常の相続税が課されます。
これらの点を踏まえ、相続放棄を行った場合でも、相続税に関連する取り扱いについては注意深く確認し、適切に対応することが重要です。
(参照)資産税 実務問答集 平本倫朗・岡本和之 編 P361、P400
(論点)遺産分割協議の解除

遺産分割協議は、相続人間で相続財産をどのように分割するかを合意する重要な手続きです。しかし、合意後に様々な理由からその協議を解除する必要が生じる場合もあります。遺産分割協議の解除は、法律上の効力が生じた後であっても可能な場合がありますが、その条件や影響については慎重に検討する必要があります。本記事では、遺産分割協議の解除に関する基本的な知識と手続きについて解説し、実際に協議を解除する際に留意すべきポイントを探ります。
目次
1.遺産分割協議とは
2.遺産分割協議の法的効力
3.遺産分割協議の解除とは
4.遺産分割協議の解除が可能なケース
5.遺産分割協議を解除する手続き
6.遺産分割協議解除の影響
7.遺産分割協議解除に関する注意点

1. 遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、相続人全員が集まり、相続財産の分割方法について合意する手続きです。遺言がない場合や遺言に記載されていない財産については、この協議を通じて分割方法を決定します。協議が成立すると、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名押印を行うことで正式な法的効力が発生します。
2. 遺産分割協議の法的効力
遺産分割協議が成立し、協議書に相続人全員が署名押印すると、その内容に基づいて財産の分配が行われます。法的には、この協議が一度成立すると、相続人間で新たに協議を行うことは原則として許されません。しかし、協議の際に重要な情報が欠けていたり、錯誤や詐欺によって合意が成立した場合には、法的効力を無効または解除することができる可能性があります。

3. 遺産分割協議の解除とは
遺産分割協議の解除とは、成立した協議を相続人間で取り消すまたは無効にする手続きのことを指します。通常、解除は相続人全員の合意があれば可能ですが、合意に至らない場合や解除が一方的に主張される場合には、法的な争いになることがあります。また、解除後は遺産分割協議を再度やり直す必要があるため、その影響は大きく、慎重な対応が求められます。
4. 遺産分割協議の解除が可能なケース
遺産分割協議を解除できるケースには、以下のような状況があります。
錯誤・詐欺の存在:相続人が重大な事実を誤認していた場合や、他の相続人に騙されて協議に合意してしまった場合。
重大な事実の発覚:協議成立後に新たに相続財産が発見されたり、協議時には知らされていなかった事実が判明した場合。
相続人全員の合意:相続人全員が協議を解除し、再度協議をやり直すことに合意した場合。
5. 遺産分割協議を解除する手続き
遺産分割協議の解除は、原則として相続人全員の合意が必要です。合意が得られた場合、再度協議を行い、新しい遺産分割協議書を作成します。また、協議の解除を求める際には、裁判所に申し立てを行うことも可能です。特に、錯誤や詐欺が疑われる場合には、裁判所に対して協議の無効や取り消しを求めることが一般的です。

6. 遺産分割協議解除の影響
遺産分割協議が解除されると、財産の分配が白紙に戻ります。そのため、すでに財産が分配されている場合には、相続人間で返還手続きが必要となる場合があります。また、税務面でも影響が生じる可能性があり、相続税の再申告や追加納税が必要となることもあります。したがって、協議を解除する際には、法的および税務的な影響を十分に考慮し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
7. 遺産分割協議解除に関する注意点
遺産分割協議の解除は、相続人間での合意が基本であるため、相続人間の信頼関係を大きく損なう可能性があります。特に、錯誤や詐欺が絡む場合には、法的な紛争に発展することも少なくありません。また、解除が認められない場合もあるため、解除を考える際には事前に法律の専門家に相談し、慎重に手続きを進めることが大切です。

結論
遺産分割協議の解除は、相続手続きにおいて非常に重要な判断となります。協議が一度成立した後に解除するには、相続人全員の合意や法的な根拠が必要です。また、解除後の手続きや税務面での対応も慎重に行う必要があります。相続に関するトラブルを避けるためには、事前の準備と適切な専門家のアドバイスが欠かせません。
(論点)遺産分割協議書の突然の送付に対する対応と問題点

相続が発生すると、遺産分割協議を行い、相続人全員が合意した上で遺産分割協議書を作成することが一般的です。しかし、時折、いきなり遺産分割協議書と称する書面が送られてきて、「署名押印し、印鑑証明書を添えて返送してください」といった依頼が届くことがあります。このような状況では、何も考えずに書面に署名・押印するのは危険です。本記事では、突然の遺産分割協議書送付における問題点と、その際の適切な対応について、外部情報を参照しながら解説します。
目次
1.突然の遺産分割協議書送付の背景
2.問題点1: 内容の理解不十分
3.問題点2: 相続人全員の参加確認不足
4.問題点3: 財産の不明確さ
5.問題点4: 署名押印の強要とトラブルのリスク
6.対処法: 応じるべきかどうか

1. 突然の遺産分割協議書送付の背景
遺産分割協議は、相続人全員が協議に参加し、話し合いの上で合意に至るプロセスです。しかし、現実には、全員が集まって協議する時間を取ることが難しい場合もあります。そのため、相続人の一部が内容を取りまとめて書面を作成し、他の相続人に送付するケースが発生することもあります。しかし、このような書面を受け取った場合、慎重な対応が必要です。内容に合意していない、もしくは重要な情報が欠けているまま署名してしまうと、後々トラブルに発展する恐れがあります。
2. 問題点1: 内容の理解不十分
突然送られてきた遺産分割協議書に署名・押印を求められた場合、内容を十分に理解していないことが大きな問題です。遺産分割協議書は法的な効力を持つため、一度署名・押印してしまうと後から「内容が理解できていなかった」「同意していなかった」と主張することは難しくなります。特に、複雑な財産分割の内容や法律的な事項が含まれている場合、専門家の確認を得ずに署名することは非常にリスクが高いです。書面の内容をしっかりと理解し、納得できるまで説明を求めることが重要です。

3. 問題点2: 相続人全員の参加確認不足
遺産分割協議は、法定相続人全員が参加して行う必要があります。誰か一人でも協議に参加していなかったり、同意を得ていない場合、その協議書は無効です。しかし、突然書面を送られてきた場合、他の相続人全員が協議に参加しているのかどうかを確認することが困難です。特に、相続人が多い場合や遠方に住んでいる場合、全員の同意が本当に得られているのかが不明瞭なことがよくあります。このような状況では、他の相続人に確認を取ることが必要です。
4. 問題点3: 財産の不明確さ
遺産分割協議書には、分割される財産の詳細が明記される必要がありますが、突然送られてきた書面には財産の範囲や評価額が不明確であることが多いです。財産に不動産や有価証券、預貯金、さらには負債が含まれる場合、それらすべての内容を確認することが大切です。財産が不正確に記載されていたり、一部が意図的に省かれていたりすることも考えられます。相続人が正しい情報を得られないまま協議書に署名してしまうと、不利益を被る可能性があります。

5. 問題点4: 署名押印の強要とトラブルのリスク
書面と共に「早急に返送してほしい」といった依頼がある場合、急かされることで冷静な判断を失うことがあります。特に、相続において感情的な圧力がかかることは少なくありません。たとえ家族間であっても、急いで署名押印を求める場合には、その裏にトラブルの芽が潜んでいることが考えられます。署名・押印を急がされる際には、一度立ち止まり、なぜ急ぐ必要があるのかを確認し、慎重に対応することが重要です。また、印鑑証明書を添付する場合、後々の法的なトラブルに巻き込まれるリスクが高まるため、特に注意が必要です。
6. 対処法: 応じるべきかどうか
では、突然遺産分割協議書が送られてきた場合、応じるべきかどうかについて考えてみましょう。まず、最初に行うべきことは、専門家に相談することです。司法書士や弁護士に相談し、書面の内容を確認してもらうことで、法的なリスクを回避することができます。また、他の相続人全員が協議に参加しているかどうかを確認し、財産の範囲や評価が適切かどうかも再確認することが必要です。
さらに、遺産分割協議書には訂正や修正が必要な場合もあるため、すぐに署名押印をせずに、必要に応じて協議の内容を再度話し合うことも重要です。感情的な対立がある場合や、納得できない内容が含まれている場合には、無理に応じる必要はありません。相続は感情的な要素が絡むため、慎重に対応することが求められます。

結論
突然遺産分割協議書が送られてきた場合、内容を理解しないまま署名押印することは危険です。相続人全員が協議に参加しているか、財産の内容が正確であるか、そして署名押印を急がされていないかを慎重に確認する必要があります。専門家に相談し、法的なリスクを十分に考慮した上で対応することで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
(論点)遺産分割協議において注意すべき6つのポイント

遺産分割協議は、相続人全員が話し合いの上で遺産をどのように分けるかを決定する重要なプロセスです。しかし、この協議には多くの法的・実務的な問題が絡み合うため、注意を怠ると後々のトラブルに発展することも少なくありません。本記事では、遺産分割協議において特に注意すべき6つのポイントを挙げ、協議を円滑に進めるための実践的なアドバイスを提供します。
目次
1.全相続人の参加が必要
2.遺産の範囲を正確に把握する
3.法定相続分と遺留分の考慮
4.実印と印鑑証明書の取り扱い
5.税務上の影響を把握する
6.合意書作成後の効力と変更

1. 全相続人の参加が必要
遺産分割協議を行う際には、相続人全員が参加する必要があります。もし相続人の一人でも欠けたまま協議が進められ、分割内容が決定されてしまうと、その協議は無効となります。特に認知されていない相続人や異母兄弟が存在する場合などは、事前に戸籍調査を行い、全ての相続人を確認することが重要です。
相続人が未成年の場合や判断能力が低下している場合には、その代理として親権者や後見人が協議に参加することになります。これにより、未成年者や認知症患者の権利が保護されます。
2. 遺産の範囲を正確に把握する
次に重要なのは、遺産の範囲を正確に把握することです。被相続人がどのような財産を残していたのか、遺産には何が含まれるのかを明確にしないまま協議を進めると、後々隠し財産や未申告の財産が発覚した際にトラブルが発生します。
土地や建物、金融資産、生命保険の受取金、負債など、全ての資産と負債をリスト化し、協議前に相続人全員でその範囲を共有することが大切です。また、不動産などの評価額を適切に把握するために、専門家による鑑定を依頼することも有効です。
3. 法定相続分と遺留分の考慮
遺産分割協議を進める上で、法定相続分や遺留分の権利を理解しておくことが重要です。法定相続分は民法で定められており、相続人がそれぞれどの程度の相続分を持っているかが規定されていますが、実際の協議ではこの割合にこだわる必要はありません。ただし、相続人全員が納得する形での分割が求められます。
また、特定の相続人に過剰な財産が遺贈された場合、他の相続人には遺留分として最低限の財産を請求する権利があります。この権利を考慮せずに分割を行うと、後で訴訟に発展する可能性があるため、遺留分を侵害しないよう注意しましょう。

4. 実印と印鑑証明書の取り扱い
遺産分割協議書を正式に作成する際には、相続人全員がその協議内容に署名・実印で押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。実印や印鑑証明書は法的に強力な証拠となるため、軽々しく提供すべきではありません。
時折、内容がよく分からないまま書類が送られてきて「署名と実印押印をして返送してください」と依頼されるケースがあります。このような場合、内容に不明な点があればすぐに応じるのではなく、専門家に相談して慎重に対応することが重要です。実印と印鑑証明書を提出した後では、内容を覆すことが難しくなるため、最終的に同意する前に全ての内容を確認しておく必要があります。

5. 税務上の影響を把握する
遺産分割協議は、相続税や所得税、贈与税などの税務に大きな影響を与えます。特に、相続税の基礎控除を超える場合には、どのような形で財産を分割するかによって、相続人が負担する税額が変わる可能性があります。
例えば、不動産を分割する場合、その評価額や相続税がどの程度発生するかを正確に理解しておく必要があります。また、相続税の特例を適用するためには、一定の条件を満たす必要があるため、税理士などの専門家に相談して適切なアドバイスを受けることが推奨されます。
6. 合意書作成後の効力と変更
遺産分割協議が全ての相続人によって合意され、正式に協議書が作成されると、その内容は法的に強制力を持ちます。相続人全員の署名と実印が押された協議書は、裁判所でも有効と認められ、協議内容に基づいて財産の分配が行われます。
しかし、一度合意された内容を後から変更することは非常に困難です。協議書作成後に新たな財産が発見されたり、相続人間で再度の話し合いが必要になった場合でも、全員の同意がなければ変更はできません。そのため、最初の協議の段階で慎重に全ての事項を確認し、全相続人が納得した上で合意書を作成することが重要です。

結論
遺産分割協議は、相続人全員が納得し、法的に有効な合意を得るための重要なプロセスです。協議の際には、全相続人の参加、遺産の範囲の確認、法定相続分と遺留分の理解、実印と印鑑証明書の慎重な取り扱い、税務上の影響の把握、そして合意書作成後の効力について十分な注意が必要です。これら6つのポイントを押さえて協議を進めることで、トラブルを回避し、円滑な相続手続きを行うことが可能になります。
(論点)一人っ子の相続手続きについて

一人っ子である場合の相続手続きは、一見単純に思われがちですが、実際には複雑な法律上の手続きが必要となります。特に両親のどちらかが先に亡くなり、その後、もう一方の親も亡くなった場合には、適切な手続きが求められます。本稿では、母親が亡くなり、父親と一人っ子が遺産分割協議を行わないまま、父親も亡くなった場合における不動産の相続手続きについて、法的な観点から考察します。
目次
1.東京高裁の平成26年9月30日判決について
2.相続登記手続きのポイント
3.遺産分割協議の必要性
4.遺産未分割の場合の相続登記手続き
5.父親との生前協議がある場合の対応方法
6.遺産分割協議書の文面について(事例)

1. 東京高裁の平成26年9月30日判決について
東京高裁において平成26年9月30日に下された判決は、一人っ子の相続における重要な判例の一つです。この判決では、母親が亡くなった後、父親と子供の間で遺産分割協議が行われないまま父親が亡くなった場合、一人っ子が母親の不動産を全て相続するという遺産分割協議書を添付して登記申請した事例に対して、登記官が不動産登記法第25条第9号に基づき、登記原因証明情報の提供がないとして登記請求を却下した判断が支持されました。
この判決の背景には、相続手続きにおける遺産分割協議の適正性が求められている点があります。遺産分割協議は複数の相続人の間で行われる必要があるため、父親との協議が行われていないままでは相続登記を進めることができないとされています。
2. 相続登記手続きのポイント
相続登記の手続きにおいては、残された配偶者との間で、 特に遺産分割協議が行われていない場合、法定相続分に基づく手続きを踏む必要があります。一人っ子であるからといって、必ずしも全ての財産を直接相続できるわけではなく、法律に従った手続きを進める必要があります。遺産分割協議が行われなかった場合でも、適切な手続きを踏むことで、最終的に財産を一人っ子に相続させることが可能となります。
3. 遺産分割協議の必要性
遺産分割協議は、複数の相続人がいる場合に、その財産をどのように分割するかを決定するための重要な手続きです。母親が先に亡くなった場合、父親と子供が相続人となり、その時点で遺産分割協議を行う必要があります。協議が行われないまま父親が亡くなった場合には、後の相続手続きにおいて問題が生じることがあります。
特に、父親と一人っ子の間で遺産分割協議が行われないまま、父親が亡くなると、母親の相続分についても法的な扱いが複雑化します。

4. 遺産未分割の場合の相続登記手続き
遺産分割が行われていない場合、法定相続分に基づいて1次相続の登記を行う必要があります。母親の死亡後、父親と子供が各々法定相続分を取得することとなり、具体的には父親が2分の1、一人っ子が2分の1の割合で母親の財産を相続します。その後、父親の死亡により父親の持分についても一人っ子が相続するため、父親の持分を子に相続させる登記が必要となります。
この手続きを踏むことで、最終的に母親及び父親の不動産を一人っ子が全て相続する形になりますが、2段階の相続登記を行う必要がある点に注意が必要です。

5. 父親との生前協議がある場合の対応方法
もし父親が生前に一人っ子との間で遺産分割協議を行っていた場合、この手続きは大幅に簡略化されます。遺産分割協議書は、遺産分割協議の内容をまとめた書面です。この書類が存在し、父親が亡くなる前に協議が成立していた場合には、父親の死亡後でも一人っ子が単独で相続登記を行うことが可能です。
具体的には、生前に父親と一人っ子の間で「母親の不動産は全て子供が相続する」といった内容の遺産分割協議が行われていた場合、その内容を反映した遺産分割協議書を作成し、それに基づいて相続登記を申請することができます。この場合、父親の生前に行われた協議に基づくため、遺産分割協議書には一人っ子のみの署名及び実印による押印が必要です。
ただし、この方法が有効であるのは、あくまで父親の生前に遺産分割協議が成立していた場合に限られます。
このような場合でも、母親が遺言書で一人っ子に不動産の名義を移す旨の内容で作成していれば、遺言書を使って母親から一人っ子への相続登記をすることが可能です。ただし、遺言が法的効力が生じていればの話です。ですので、遺言書を作成する場合は、専門家にご相談ください。

6. 遺産分割協議書の文面について(事例)
「 遺産分割協議書
平成20年11月12日○〇県○〇市○〇町〇丁目〇番〇号 A(母親)の死亡によって開始した相続における共同相続人B(父親)及びC(一人っ子)が平成23年5月10日に行った遺産分割協議の結果、○〇県○〇市○〇町〇丁目〇番〇号 C(一人っ子)が被相続人の遺産に属する後記物件を単独取得したことを証明する。
令和7年2月28日
○〇県○〇市○〇町〇丁目〇番〇号
(Aに相続人兼Aの相続人Bの相続人)C (実印)
不動産の表示 (省略)」
(論点)戸籍の取得方法の変化(電子交付に向けて)

日本では、相続手続きを行う際に必要な戸籍謄本や住民票などの戸籍証明書を取得するため、従来は市区町村の窓口に出向く必要がありました。しかし、近年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、政府はこれらの証明書を電子交付し、オンラインで取得できる仕組みを整備しつつあります。この取り組みは、相続手続きに関わる負担を軽減し、手続きの迅速化を図るものです。この記事では、戸籍証明書の電子交付に関する最新の動向とその背景、そして利用者にもたらす利便性について解説します。
目次
1.はじめに:相続手続きにおける戸籍証明書の重要性
2.現行の戸籍証明書取得方法
2.1 市区町村の窓口での取得
2.2 コンビニエンスストアでの取得
3.戸籍証明書の電子交付の概要
3.1 政府の取り組みと背景
3.2 デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環としての電子交付
4.電子交付による利便性と課題
4.1 相続手続きにおける負担の軽減
4.2 提出先における対応(金融機関、法務局、税務署など)
5.今後の展望:電子交付の普及と未来
5.1 個人情報の安全性とデータ管理
5.2 地域格差の解消に向けた課題
6.まとめ:電子交付がもたらす新たな相続手続きの形

1. はじめに:相続手続きにおける戸籍証明書の重要性
相続手続きでは、亡くなった方(被相続人)の戸籍謄本や相続人の戸籍抄本を取得し、各金融機関や法務局、税務署などに提出することが求められます。この手続きは、遺産分割協議書の作成や相続税の申告など、様々な局面で必要とされ、相続に関わる人々にとって重要なステップです。しかしながら、必要な書類を揃えるには時間と手間がかかり、特に相続人が遠隔地に住んでいる場合や、複数の証明書を集める場合には負担が大きくなります。
2. 現行の戸籍証明書取得方法
相続手続きを円滑に進めるためには、まず必要な戸籍証明書を迅速に揃えることが重要です。現在、日本では以下の方法で戸籍証明書を取得することが可能です。
2.1 市区町村の窓口での取得
従来の方法では、相続人が市区町村役場の窓口に出向き、戸籍証明書を申請・取得する必要がありました。この手続きには、相続人本人が役所に足を運ぶ時間と交通費、場合によっては郵送の手間が伴います。また、役所が遠方にある場合や平日しか開庁していないという制約があり、多くの人々にとって手間がかかる点が課題とされています。
2.2 コンビニエンスストアでの取得
近年、マイナンバーカードを活用することで、全国のコンビニエンスストアで住民票や戸籍証明書の取得が可能になりました。コンビニでの取得は24時間365日対応しているため、役所に出向く必要がないという利便性が評価されています。しかしながら、利用にはマイナンバーカードが必要であり、まだ普及率が十分とはいえません。また、コンビニのシステムを利用できない市町村も存在するため、完全な解決には至っていない状況です。

3. 戸籍証明書の電子交付の概要
3.1 政府の取り組みと背景
政府は、相続手続きのデジタル化を進める一環として、戸籍証明書を電子交付するための制度を検討しています。これにより、窓口に出向かず、オンラインで必要な戸籍証明書をPDF形式で取得できるようになる予定です。この仕組みが導入されることで、相続手続きに関わる多くの人々の負担が大幅に軽減されることが期待されています。
3.2 デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環としての電子交付
電子交付は、行政手続きのデジタル化、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として進められています。政府は、煩雑な手続きを簡素化し、効率化することを目指しており、戸籍証明書の電子化はその象徴的な取り組みの一つです。相続人はインターネットを利用して自宅や職場から手続きが可能となり、さらには提出先(金融機関、法務局、税務署など)にも電子データとして直接送付できるようになる予定です。
4. 電子交付による利便性と課題
4.1 相続手続きにおける負担の軽減
電子交付が実現すれば、これまでのように市区町村の窓口に行く必要がなくなり、また遠方に住む相続人も手続きを簡単に行えるようになります。さらに、取得したPDF形式の戸籍証明書をそのまま提出先にデータで送信できることで、書類の印刷や郵送の手間も省けます。これにより、手続きの迅速化と負担軽減が期待されています。
4.2 提出先における対応(金融機関、法務局、税務署など)
一方で、電子データの提出に対応していない金融機関や法務局、税務署も存在するため、全面的なデジタル化には時間がかかる可能性があります。特に、地方の金融機関や小規模な事務所では、まだ紙の書類が主流となっている場合が多く、これらの施設がデジタル化に対応するための準備が必要です。
5. 今後の展望:電子交付の普及と未来
5.1 個人情報の安全性とデータ管理
電子交付では、個人情報の安全な管理が重要な課題となります。インターネットを介したデータの送受信には、セキュリティ対策が不可欠であり、政府や金融機関はこの点に関して強固な対策を講じる必要があります。
5.2 地域格差の解消に向けた課題
また、電子交付の導入により、都市部と地方との間で利用可能なサービスの格差が広がる可能性も指摘されています。すべての自治体での迅速な導入が望まれますが、財政的な制約や技術的な準備不足が課題となる場合もあります。

6. まとめ:電子交付がもたらす新たな相続手続きの形
戸籍証明書の電子交付が実現すれば、相続手続きに関わる負担は大幅に軽減され、手続きの効率化が進むでしょう。行政手続きのデジタルトランスフォーメーションは、日本社会の高齢化とともにますます必要とされており、今後のさらなる展開が期待されます。
(論点)古い仮登記を発見したがどうやって消すのか?

古い仮登記が存在する場合、相続登記を完了しても不動産の売却が難しくなることがあります。仮登記とは、一定の条件が満たされることを前提に、本登記が行われるまでの間、権利保全のために行われる登記です。古い仮登記が残っている場合、その不動産に対する権利関係が曖昧な状態になり、売却先の買主や金融機関から不安視され、売却がスムーズに進まないことがあります。このような場合の対処法として、以下の方法が考えられます。
目次
1.はじめに
2.仮登記の抹消手続き
3.仮登記権利者が死亡している場合
4.裁判手続きによる仮登記抹消
5.消滅時効の主張
6.仮登記を残したまま売却する場合
まとめ

1. 仮登記の抹消手続き
最も一般的な方法は、仮登記の抹消を行うことです。仮登記を抹消するためには、仮登記権利者(仮登記に基づいて将来の権利を主張できる者)からの同意を得る必要があります。仮登記権利者が同意し、抹消登記申請を共同で行うことで、仮登記を抹消することができます。
ただし、仮登記権利者が所在不明であったり、死亡している場合は、同意を得ることが難しい場合があります。その場合には、以下の方法を検討することになります。
2. 仮登記権利者が死亡している場合
仮登記権利者がすでに死亡している場合は、その相続人と協議を行い、相続人から仮登記の抹消同意を得ることが必要です。相続人に連絡がつく場合は、相続登記を行った上で、相続人と共同で仮登記の抹消手続きを進めることが可能です。
しかし、相続人の連絡先が不明であったり、相続人が仮登記の抹消に協力しない場合には、裁判所に申し立てることが必要になる場合もあります。

3. 裁判手続きによる仮登記抹消
仮登記権利者が協力的でない場合や、所在不明で連絡が取れない場合は、裁判所に仮登記の抹消を求める訴訟を提起することが可能です。この手続きは時間と費用がかかる場合がありますが、裁判で勝訴すれば仮登記を抹消することができます。
また、仮登記権利者の所在が不明の場合は、仮登記の抹消に関する公示送達という手続きも検討されます。これは、権利者に連絡が取れない場合に、裁判所を通じて公告することで抹消手続きを進める方法です。
4. 消滅時効の主張
仮登記には通常、一定の条件が付随している場合があります。たとえば、売買予約や抵当権に基づく仮登記などです。これらの条件が実行されずに長期間が経過した場合、仮登記の権利が消滅時効にかかっている可能性があります。消滅時効が成立している場合には、仮登記権利者がその権利を主張することができないため、時効を主張して仮登記の抹消手続きを進めることができます。
ただし、不動産の一般的な仮登記には、時効による消滅の制度はありません。仮登記の原因となる債権の時効によって、仮登記の効力が消滅する場合があります。そして、この場合も原則共同申請です。単独申請が例外的に認められる場合がありますが、その場合は、仮登記名義人から行うケースと、利害関係人(登記名義人を含む)で借り登記名義人の承諾書(印鑑証明書付)を添付する必要があります。

5. 仮登記を残したまま売却する
仮登記を抹消せずに売却する方法もありますが、この場合、買主が仮登記のリスクを理解し、受け入れる必要があります。通常、仮登記がある物件は市場価値が低く評価されるため、売却価格の減額交渉が発生する可能性があります。また、買主が仮登記の問題を解決するために時間と費用を要する可能性があるため、事前にしっかりと合意を得ることが必要です。
※買主の同意が必要なため、現実的ではありません。

まとめ
古い仮登記が残っている不動産は、相続登記を完了しても売却が難しい場合があります。その対処法として、仮登記の抹消手続きを行うことが最も一般的な方法ですが、仮登記権利者が死亡していたり所在不明の場合は、裁判手続きを行う必要があります。また、場合によっては消滅時効の主張や、仮登記を残したまま売却する方法も検討することができます。いずれにしても、専門家の助言を受けながら慎重に対策を進めることが重要です。
(論点)人生100年時代における認知症対策:事前準備の重要性と具体的対策

現代社会では、医療の発展や生活水準の向上により、人生100年時代が現実のものとなりつつあります。長寿は喜ばしいものですが、年齢を重ねるにつれて発生するリスクにも目を向ける必要があります。その中でも特に注目されるのが認知症です。認知症は、判断能力が低下し、財産管理や意思決定が困難になる病気であり、家族にとっても多大な負担となります。そこで、認知症に備えるための対策が必要です。本記事では、認知症発症前にできる具体的な対策を中心に解説し、安心して長寿を迎えるための準備方法を考察します。
目次
1.任意後見制度の活用
2.成年後見制度の利用
3.財産管理の信託契約
4.遺言書の作成
5.終活としての準備

1. 任意後見制度の活用
認知症対策として最初に挙げられるのが、任意後見制度です。この制度は、まだ判断能力が健全なうちに、自らの意志で後見人を選任し、将来判断能力が低下した際に、財産管理や生活面での支援をお願いする仕組みです。契約の際に信頼できる人を後見人として指名し、家庭裁判所が監督することで、任意後見契約が正式に発効します。判断能力が低下した時点で契約が発効するため、後見人が本人の利益を最優先に考え、管理することが保障されます。
特に認知症のように判断能力が徐々に低下する病気の場合、任意後見契約を事前に結んでおくことで、財産や生活の管理を自分の意志に基づいた形で行えるというメリットがあります。これにより、本人が意図していない状況を回避し、安心して将来を迎えることが可能となります。

2. 成年後見制度の利用
任意後見制度が活用されないまま、認知症などで判断能力が失われた場合、成年後見制度が用いられることがあります。この制度では、家庭裁判所が後見人を選任し、本人に代わって財産管理や日常生活の支援を行います。法定後見制度は、家庭裁判所の厳格な監督下で後見人の行動が管理されるため、不正行為を防ぐための仕組みが整っています。
ただし、成年後見制度では本人の意志に基づく選任が難しく、裁判所の判断で後見人が選ばれるため、事前に信頼できる人物に任せることができる任意後見制度と比較すると、本人の意志が反映されにくい側面があります。そのため、判断能力が完全に失われる前に、家族や専門家と相談しながら後見制度の利用を検討することが重要です。
3. 財産管理の信託契約
財産の管理に不安がある場合、信託契約を活用することも有効な認知症対策です。信託契約とは、財産を信頼できる人物や専門家に委託し、管理・運用をお願いする制度です。たとえば、家族信託と呼ばれる形態では、財産を信頼する家族に託すことで、認知症による判断能力の低下後でも財産の適切な管理が行われます。
家族信託は、認知症が進行しても財産が適切に守られるため、本人にとっても家族にとっても安心感をもたらす制度です。また、遺産分割に関するトラブルを未然に防ぐ効果もあります。信託契約を活用することで、認知症リスクに備える財産管理の仕組みを整えることが可能です。

4. 遺言書の作成
認知症の発症に備えて、遺言書の作成も重要な対策のひとつです。遺言書は、財産分与や相続に関する本人の意思を明確に表す法的文書であり、これを事前に作成しておくことで、認知症により判断能力を失った場合でも、遺産分割に関するトラブルを避けることができます。
特に、遺言書がない場合、相続人同士での争いが発生する可能性が高まり、家族間の不和につながるリスクがあります。認知症が進行してしまうと、遺言書の作成は法律的に無効となるため、判断能力が健全なうちに準備することが重要です。これにより、自分の意思がしっかりと反映された相続が実現できます。
5. 終活としての準備
終活という言葉が一般的に広まる中、認知症対策も終活の一環として取り組むことが推奨されています。エンディングノートの作成や、葬儀の準備、そして財産分割に関する計画などを事前に行うことで、自分の意志がしっかりと反映される老後を迎えることができます。
認知症が進行すると、自分の意志を伝えることが難しくなるため、エンディングノートに自身の希望や要望を記載しておくことが非常に有効です。また、財産に関する情報や重要書類を整理しておくことで、家族に負担をかけずに済みます。終活を通じて、自分の意思を尊重しつつ、認知症対策を行うことができるのです。

まとめ
認知症対策は、単なる医療面の準備だけでなく、財産管理や法的手続き、そして家族への影響も考慮した包括的な計画が求められます。任意後見制度や信託契約、遺言書作成など、さまざまな法的手段を活用し、自分や家族が安心して老後を過ごせるような体制を整えておくことが、人生100年時代を迎えるための大切な準備となります。
(論点)法定後見制度の必要性と適用場面:判断能力低下時の適切な支援

法定後見制度は、判断能力が低下した人々の権利と財産を保護するための重要な法的枠組みです。しかし、この制度はすべての高齢者や障害者に適用されるわけではなく、適用の必要性は個々の状況に応じて判断されます。本稿では、法定後見制度が必要とされる具体的な場面を明らかにし、どのような状況でこの制度の利用が適切であるかを考察します。
目次
1.法定後見制度の概要
2.法定後見制度が必要とされる状況
2-1.判断能力の低下が顕著な場合
2-2.財産管理や契約行為に支障が生じている場合
2-3.身体的・精神的な障害が原因で日常生活に困難をきたしている場合
3.法定後見制度の適用が不適切な場合
4.まとめ

1. 法定後見制度の概要
法定後見制度は、判断能力が低下した人々を法的に保護し、支援するための制度です。この制度には、「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があり、本人の判断能力の程度に応じて適切な支援が提供されます。具体的には、家庭裁判所が選任した成年後見人、保佐人、または補助人が、本人の利益を考慮しながら、契約の代理や同意、取り消しなどの行為を行います。

2. 法定後見制度が必要とされる状況
2.1 判断能力の低下が顕著な場合
認知症や知的障害などにより、判断能力が著しく低下し、日常生活に支障をきたしている場合、法定後見制度の適用が検討されます。例えば、物忘れがひどくなり、家事が思うようにできなくなったり、金銭管理が困難になったりするケースです。
2.2 財産管理や契約行為に支障が生じている場合
判断能力の低下により、財産管理や契約行為が適切に行えない場合も、法定後見制度が必要とされます。例えば、無理な借金を繰り返す、詐欺的な契約を結ぶなどの行為が見られる場合です。
2.3 身体的・精神的な障害が原因で日常生活に困難をきたしている場合
身体的・精神的な障害により、日常生活全般に支障をきたしている場合も、法定後見制度の適用が検討されます。例えば、統合失調症などの精神障害により、生活全般に支障をきたしている場合です。
3. 法定後見制度の適用が不適切な場合
一方で、判断能力が低下していない、または軽度の低下にとどまる場合、法定後見制度の適用は不適切です。このような場合、任意後見制度や家族による支援、地域の福祉サービスなど、他の支援策が適切とされます。また、本人が自分の生活や財産を管理できる場合、法定後見制度の適用は必要ありません。

4. まとめ
法定後見制度は、判断能力が低下した人々の権利と財産を保護するための重要な制度です。しかし、すべての高齢者や障害者に適用されるわけではなく、適用の必要性は個々の状況に応じて判断されます。判断能力の低下が顕著で、日常生活や財産管理に支障をきたしている場合に、この制度の利用が適切とされます。一方で、判断能力が低下していない、または軽度の低下にとどまる場合は、他の支援策が適切とされます。適切な支援を受けることで、本人の生活の質を維持・向上させることが可能となります。
(論点)成年後見制度における不正事件とその背景:裁判所統計を基にした考察

成年後見制度は、高齢者や認知症などで判断能力が不十分な人々の財産や生活を守るために設けられた重要な法制度です。しかし、この制度の運用においては後見人による不正事件が後を絶たず、特に着服や財産管理の不適切な運用が大きな問題となっています。裁判所の統計によれば、後見人による不正行為が定期的に報告されており、その深刻な影響が社会問題として注目されています。本稿では、裁判所が発表した不正事件の統計を引用し、なぜこうした不正行為が依然として発生し続けるのかについて考察します。
目次
1.成年後見制度の概要
2.不正事件の統計(裁判所発表のデータ)
3.不正が発生する原因
4.現行制度の問題点と改善の方向性
5.結論

1. 成年後見制度の概要
成年後見制度は、判断能力が低下した人々が自らの財産や日常生活の管理を適切に行えなくなった場合に、後見人がその代理を務める制度です。成年後見には、法定後見と任意後見の2種類があり、法定後見は家庭裁判所によって選任される後見人が財産管理や契約行為の代理を行います。任意後見は、本人がまだ判断能力があるうちに、将来の後見人を指定する契約を結ぶ制度です。
後見人の役割は極めて重要であり、被後見人の財産を守るために高い倫理基準と責任が求められます。しかし、その一方で、後見人が被後見人の財産を不正に流用する事件も存在しています。

2. 不正事件の統計(裁判所発表のデータ)
裁判所が公表する成年後見制度に関する統計データによれば、毎年後見人による不正行為が一定数報告されています。2023年の統計では、成年後見に関連する不正事件は全国で約300件報告されており、その中でも特に財産の着服が多く見られました。これらの不正行為の総額は数億円に上るケースもあり、被後見人やその家族に大きな経済的打撃を与えています。
裁判所のデータでは、不正事件の内容としては以下のようなものが多く挙げられます。
⑴後見人による財産の不正使用
⑵家族後見人が自らの経済的利益のために財産を流用
⑶十分な財産管理の報告がなされないケース
特に、親族が後見人を務めるケースにおいて、不正が発生しやすいという傾向が見られます。家庭裁判所はこれらの事件に対して厳しい態度を取っており、不正が発覚した場合、後見人の解任や刑事告発が行われることもあります。

3. 不正が発生する原因
後見人による不正が発生する原因は複合的です。主な要因として、以下が挙げられます。
⑴財産管理の監視が不十分
成年後見制度では、家庭裁判所が後見人の活動を監督する役割を持っていますが、実際には後見人の財産管理に関する監視が十分に機能していないケースもあります。特に、親族後見人の場合、家庭裁判所の定期報告が形式的に行われることがあり、実質的なチェックが行われていないことがあります。これにより、不正行為が長期間見過ごされる可能性が高まります。
⑵道徳的ハザード
後見人に選任された者が自らの利益を優先し、被後見人の財産を私的に流用する「道徳的ハザード(モラルハザード)」の問題も大きいです。特に親族が後見人を務める場合、財産が身内のものと錯覚してしまい、被後見人の利益よりも自分や家族の利益を優先してしまうことがしばしば見受けられます。
⑶制度の複雑さと専門知識の不足
成年後見制度は法律的にも財務的にも複雑であり、後見人が制度の詳細や財産管理の方法について十分な知識を持たないことが問題となっています。親族後見人の場合、特に専門的な知識が不足していることが多く、意図的な不正ではなくても誤った財産管理が行われ、結果として不正と見なされるケースもあります。
4. 現行制度の問題点と改善の方向性
現行の成年後見制度には、制度そのものの監視・管理体制にいくつかの問題があります。家庭裁判所による監督は形式的なものにとどまり、後見人による財産の不正利用を未然に防ぐための仕組みが十分ではありません。また、後見人に対する教育や研修制度が不足しており、特に親族後見人に対する支援が不十分です。
このような問題を解決するためには、まず後見人の選任過程でより厳格な審査を行い、専門家の後見人(司法書士や弁護士)を増やす必要があります。さらに、親族後見人に対する研修制度の拡充や、家庭裁判所の監督体制の強化も求められます。定期的な監査や財産管理の透明性を高めるシステムの導入も、不正の防止に寄与するでしょう。

5. 結論
成年後見制度は高齢者や判断能力の低下した人々の財産や生活を保護するために不可欠な制度です。しかし、後見人による不正事件は依然として発生しており、特に財産の着服が深刻な問題となっています。裁判所の統計からも、不正事件が根強く残っていることが確認できます。今後、不正行為を減少させるためには、監督体制の強化や後見人に対する教育・研修の充実が不可欠です。成年後見制度の信頼性を高めるためには、制度の改善とともに社会全体での意識改革が求められています。

遺言執行者は、遺言内容を実現するために重要な役割を担います。しかし、遺言執行者の選定においては、利益相反のリスクを十分に考慮する必要があります。遺言執行者が相続人である場合や、遺言執行者に選任された弁護士が特定の相続人の代理人としても行動する場合、利益相反が発生する可能性があります。本稿では、遺言執行者として相続人を選任するリスクと、弁護士を遺言執行者に任命する際に生じる利益相反のリスクについて考察します。
目次
1.遺言執行者の役割と責務
2.相続人を遺言執行者に選任するリスク
3.弁護士を遺言執行者に任命する場合の利益相反のリスク
4.リスク軽減策と推奨される選任方法
5.結論

1. 遺言執行者の役割と責務
遺言執行者は、遺言の内容を確実に実行するための責任を負う重要な存在です。
具体的には、遺言の内容に基づき財産の分配を行い、登記などの手続きを実施します。また、遺言執行者は、相続人に対して公平かつ中立的に対応することが求められます。
この役割を担う人物の選定は、遺言の実現において非常に重要であり、適切でない選定は相続紛争を招く可能性があります。

2. 相続人を遺言執行者に選任するリスク
遺言執行者として相続人を選任することは、相続に関する知識や権利を直接持っている点ではメリットがあります。しかし、相続人自身が遺言執行者となることで、他の相続人との間で利益相反が生じるリスクがあります。
例えば、遺言の内容が一部の相続人に有利に働くものである場合、遺言執行者である相続人が自身の利益を優先する可能性が考えられます。また、他の相続人からは公平な遺産分割が行われたかどうかについて疑念を抱かれることが多くなり、相続手続きが円滑に進まない原因となる可能性があります。
さらに、相続人が遺言執行者として行動することで、感情的な対立がエスカレートしやすくなり、法的な争いに発展することもあります。
遺言執行者が相続人である場合、彼自身が利害関係者であることから、その行動が疑われる余地が大きくなるのです。

3. 弁護士を遺言執行者に任命する場合の利益相反のリスク
弁護士を遺言執行者に任命することは、法律的な専門知識を持つことから、相続手続きをスムーズに進められる点で有効です。しかし、弁護士が遺言執行者となった場合、特定の相続人の代理人としても行動することがあるため、利益相反のリスクが存在します。
例えば、弁護士がある相続人の利益を優先する立場に立った場合、その相続人に有利な解釈を行う可能性があります。これにより、他の相続人から公平性を疑われ、相続紛争が発生するリスクが高まります。また、特定の相続人の代理人としても活動する弁護士が遺言執行者である場合、法律上の利益相反の問題が発生し、他の相続人の信頼を損なう可能性があります。
さらに、弁護士が遺言執行者として行動する際、事務的な手続きが複雑化し、費用が高額になるケースも少なくありません。弁護士の利益を優先するあまり、相続人全体の利益が損なわれる可能性もあるため、慎重に検討する必要があります。

4. リスク軽減策と推奨される選任方法
遺言執行者の選任において、利益相反を防ぐためのリスク軽減策として、以下の方法が推奨されます。
まず、相続人以外の第三者を遺言執行者として選任することが有効です。専門知識を持つ信頼できる第三者(例えば、司法書士や信託銀行など)を選任することで、公平かつ中立的な立場から遺産分割を進めることができます。
また、弁護士を遺言執行者に任命する場合には、事前に利益相反の可能性について明確な合意を取ることが重要です。弁護士が特定の相続人の代理人を兼務しないことや、利益相反が生じた場合の対応方法をあらかじめ決定しておくことで、リスクを最小限に抑えることができます。
さらに、遺言書の作成時に相続人間の合意を得ることや、複数の遺言執行者を選任することで、利益相反のリスクを分散させることも効果的です。遺言書に記載された内容が曖昧である場合、相続人間の争いを招くことが多いため、遺言書の内容を具体的かつ明確にしておくことが大切です。
5. 結論
遺言執行者を相続人や弁護士に任命する際には、利益相反のリスクを十分に考慮する必要があります。
相続人を遺言執行者に任命することで、感情的な対立や疑念が生じやすくなり、相続紛争を招く可能性があります。
また、弁護士を遺言執行者に選任する場合も、特定の相続人の代理人として行動することにより、利益相反が発生するリスクが高まります。
遺言執行者の選任においては、専門知識を持つ第三者を選ぶことや、利益相反の防止策を事前に講じることが推奨されます。
最終的には、相続人全員の信頼と合意を得ることが、円満な遺産分割を実現するための重要な要素となります。

遺言書を作成することは、財産の分配や家族への配慮を明確にするための重要なプロセスです。しかし、遺言者の意思表示が法的に効力を持つためには、形式的な要件を満たしていればよいという側面がある一方で、家族間の合意形成が欠かせない場合も多くあります。遺産相続は、残された家族にとって感情的な問題となりがちであり、遺言がトラブルの原因となることもあります。本稿では、遺言を作成する前に考慮すべき事柄について、法的観点と実務的観点から説明し、家族のコンセンサスの重要性についても考察します。
目次
1.遺言作成における法的要件
2.家族間の意見調整の必要性
3.実務上で見られるトラブルとその対策
4.遺言作成のための具体的な準備
5.結論

1. 遺言作成における法的要件
遺言書が法的効力を持つためには、遺言者の意思表示だけでは不十分で、法律で定められた要件を満たす必要があります。代表的な遺言の形式には、自筆証書遺言、公正証書遺言がありますが、それぞれに異なる要件が存在します。
自筆証書遺言の場合、遺言者が遺言の全文を自筆し、署名捺印が必要です。加えて、日付も正確に記載されている必要があります。一方、公正証書遺言は公証人の立会いのもとで作成され、内容の正確性や法的適格性が保証されるため、法的効力がより強くなります。
遺言書を作成する際は、これらの要件を十分に理解し、適切な形式で作成することが重要です。

2. 家族間の意見調整の必要性
遺言書の作成において、遺言者の意志はもちろん尊重されるべきものです。しかし、実際の相続の場面では、「家族間の合意形成(コンセンサス)」が大きな役割を果たすことがあります。
例えば、遺言者が財産を特定の相続人に多く配分する意思を示す場合、他の相続人との間で不満や争いが生じる可能性があります。法的には遺言が有効であっても、家族間の不仲や感情的な摩擦が後にトラブルを引き起こすことも少なくありません。そのため、遺言者は家族間の意見調整を行い、可能な範囲で事前にコンセンサスを得ることが望ましいといえます。
特に、「遺留分(法定相続分の最低限の取り分)」に関する理解を深めることが重要です。遺留分を無視した遺言内容は、法的手続きによって修正を迫られる可能性があるため、事前に相続人たちと話し合いを持ち、納得を得ることが大切です。
財産の受け取る額に関係なく、遺言者の子供の方が、「重要な話の時はいつも私をのけ者にする」といって、話がこじれたケースもありました。「感情・心情」というものも大事にしてあげる必要性があると考えます。

3. 実務上で見られるトラブルとその対策
遺言があっても、遺産分割がスムーズに進まないケースは数多く存在します。実務の現場では、以下のようなトラブルが見られます。
相続人間の感情的対立
遺言内容が特定の相続人に有利な場合、不満が生じることがあります。法的に正当な内容であっても、家族間での不信感や感情的な軋轢が生じ、遺産分割協議が難航することがあります。
遺言書の不備や無効化
自筆証書遺言で形式に不備があった場合、遺言が無効となり、遺産分割が法定相続に従って行われることがあります。また、遺言書が発見されない、あるいは紛失・改ざんされるリスクも考えられます。
家族の異なる意見
遺産分割の方法について相続人同士の意見が一致しない場合、家庭裁判所での調停や訴訟に発展することもあります。このような事態を避けるためにも、遺言者と相続人があらかじめ話し合いを持つことが望ましいです。(既にこじれていて、遺産分割協議に支障が出るような場合ですと、むしろあらかじめの話し合いは不要になるといった場合もあります。)
これらのトラブルを回避するためには、遺言書を公正証書として作成することが有効です。公正証書遺言は、公証人が遺言の内容を確認し、作成過程を証人が見守るため、形式的な不備が発生しにくく、トラブルのリスクが低減します。また、家族と事前にコミュニケーションを図り、遺言内容についての納得を得ることも重要です。
4. 遺言作成のための具体的な準備
遺言を作成する前に、いくつかの具体的な準備を行うことが推奨されます。これにより、遺産分割を巡る争いを未然に防ぎ、遺言者の意思を確実に反映させることができます。
財産の全容を把握する
遺産の対象となる財産の一覧を作成し、誰にどの財産を相続させるかを明確にしておくことが重要です。特に不動産や株式などの評価が変動する資産については、専門家の助言を受けることが望ましいです。
家族との話し合いを行う
遺言者が家族に対してどのような意図で財産を分配しようとしているか、事前に話し合いを行い、家族の意見や希望を聞くことも重要です。これにより、家族間の理解が深まり、相続時のトラブルを防ぐことができます。
専門家のアドバイスを受ける
遺言書の作成にあたっては、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、法的に適切な遺言書を作成することが推奨されます。また、公正証書遺言を利用することで、形式的な問題を回避し、確実な相続手続きを進めることができます。

5. 結論
遺言は遺言者の意思を明確にし、遺産分割のトラブルを防ぐために非常に重要です。
しかし、法的な要件を満たすだけでは不十分であり、家族間の意見調整も重要な要素となります。
遺言を作成する前に、財産の全容を把握し、家族とのコミュニケーションを図ることが、円滑な相続を実現するための鍵となります。
また、専門家の助言を受けながら、適切な形式で遺言を作成することが望まれます。

人生の終盤を迎えると、財産や家族への思いをどのように伝えるかが重要になります。その手段として「遺言」は、相続トラブルを防ぎ、遺された家族に対して自分の意思を明確に伝えるための大切な法的文書です。しかし、遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれに法的効力を持たせるための要件や手続きが異なります。本稿では、遺言の種類について説明し、特に自筆証書遺言と公正証書遺言に焦点を当て、それぞれの特徴や作成手続きを詳しく解説します。
目次
1.遺言の種類
2.自筆証書遺言の特徴と法的効力を持つための要件
3.公正証書遺言の作成手続き
4.遺言の活用の重要性

1. 遺言の種類
遺言書にはいくつかの種類が存在し、それぞれに特徴と作成手続きの違いがあります。日本の民法では主に以下の2つの形式が認められています。
自筆証書遺言
自筆で遺言内容を書き、自ら署名捺印する形式です。簡単に作成できるため、最も普及していますが、法的要件を満たしていないと無効になるリスクがあります。また、保管場所によっては紛失や改ざんのリスクも考えられます。
公正証書遺言
公証役場で公証人の立ち会いのもと作成される遺言です。法律の専門家である公証人が内容を確認するため、形式や内容に不備がなく、法的に強い効力を持ちます。また、公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配もありません。
2. 自筆証書遺言の特徴と法的効力を持つための要件
自筆証書遺言は、遺言者が自分の手で全てを書き、署名捺印する必要があります。しかし、法的に効力を持たせるためにはいくつかの重要な要件を満たす必要があります。
全文を自筆で書く
遺言の内容は遺言者本人が手書きで書く必要があります。ワープロやパソコンで作成したものは無効となります。
日付と署名が必要
遺言書には必ず日付を明記し、遺言者の署名を行うことが求められます。日付がない場合や、複数の日付が書かれている場合は無効になる恐れがあります。
捺印の必要性
捺印も必須です。印鑑は実印である必要はありませんが、印鑑がないと遺言書が無効となる可能性があるため注意が必要です。
また、2020年7月から、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が導入され、保管された遺言書は家庭裁判所での検認手続きが不要となりました。この制度を活用することで、遺言書の紛失や改ざんのリスクが減少します。

3. 公正証書遺言の作成手続き
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成に関与するため、形式的な不備がなく、法的に強い効力を持ちます。以下の手続きが必要です。
公証役場での作成
遺言者は公証役場に赴き、公証人の立ち会いのもと、遺言の内容を口頭で伝えます。公証人はそれを元に遺言書を作成し、遺言者が内容を確認します。
証人の立ち会い
公正証書遺言の作成には2名の証人が必要です。証人には一定の要件があり、相続人やその配偶者、直系血族は証人になれません。
遺言書の保管
作成された公正証書遺言は公証役場で保管され、遺言者が亡くなった際に確実に開示されます。これにより、紛失や改ざんのリスクがほぼありません。
4. 遺言の活用の重要性
遺言書は、相続トラブルを防ぎ、自分の意思を家族に伝えるための重要な手段です。特に、相続人間の関係が複雑な場合や、遺産の分配について特別な希望がある場合、遺言書の作成は不可欠です。
遺言書がない場合、相続は法律に基づく「法定相続」によって行われますが、法定相続では遺産の分配が必ずしも遺言者の意思に沿ったものになるとは限りません。自筆証書遺言や公正証書遺言を活用して、自分の意思を明確にし、家族が円滑に相続手続きを進められるようにすることが重要です。

結論
遺言書は、家族のために自身の意思を明確に残すための有力なツールです。
自筆証書遺言や公正証書遺言など、適切な形式で作成することによって、遺産分割を巡るトラブルを未然に防ぐことができます。
各形式の特徴や手続きを理解し、適切なタイミングで遺言を作成することが、家族の将来に対する重要な準備と言えるでしょう。

相続手続きにおいて、相続人の一部が外国籍である場合、特有の手続きや注意点が存在します。日本国籍を有しない外国人の場合、戸籍が存在しないため、相続人の確認や必要書類の取得において、母国の役所での手続きや翻訳が求められます。また、遺産分割協議書への署名や押印に関しても、在留資格の有無や印鑑登録の有無により、手続きが異なります。
本稿では、外国人相続人がいる場合の相続手続きにおける具体的な注意点と実務上の対応方法について解説します。
目次
1.外国人相続人の戸籍取得と翻訳
2.遺産分割協議書への署名・押印の方法
3.印鑑登録が可能な国とその手続き
4.まとめ

1. 外国人相続人の戸籍取得と翻訳
日本国籍を有しない外国人の場合、日本の役場に戸籍が存在しません。そのため、相続手続きにおいては、相続人の確認のために母国の役所で発行された戸籍謄本や出生証明書などの公的書類を取得する必要があります。
これらの書類は、日本の法務局や金融機関に提出する際に、翻訳が求められることが一般的です。翻訳は、専門の翻訳者によるものが望ましく、翻訳証明書を添付することで、書類の信頼性を高めることができます。
2. 遺産分割協議書への署名・押印の方法
遺産分割協議書への署名や押印については、相続人の在留資格や印鑑登録の有無によって手続きが異なります。
在留資格がある場合:日本に在留している外国人相続人は、住民票の登録が可能です。住民票が登録されていれば、印鑑登録も行うことができます。この場合、遺産分割協議書に押印する際には、登録した実印を使用することが一般的です。
在留資格がない場合:日本に在留していない外国人相続人は、印鑑登録ができません。そのため、遺産分割協議書への署名は、母国の公的機関で行う必要があります。具体的には、母国の役場で署名証明を受けるか、母国の領事館でサイン証明を受ける方法が考えられます。

3. 印鑑登録が可能な国とその手続き
日本に在留している外国人相続人が印鑑登録を行う際、印鑑登録が可能な国とその手続きについて理解しておくことが重要です。
実務上、印鑑登録が可能な国としては、中国や台湾が挙げられます。これらの国では、在留外国人が日本で印鑑登録を行う際に、母国の公的機関で発行された印鑑証明書を提出することが求められる場合があります。
他にも、印鑑登録が可能な国が存在する可能性があります。具体的な国名や手続きについては、各自治体や法務局に確認することが推奨されます。

4. まとめ
外国人相続人がいる場合、相続手続きには特有の注意点が存在します。
戸籍の取得や翻訳、遺産分割協議書への署名・押印方法、印鑑登録が可能な国の確認など、各ステップで適切な対応が求められます。特に、印鑑登録が可能な国については、各自治体や法務局に確認し、必要な手続きを事前に把握しておくことが重要です。
これらの手続きを適切に行うことで、相続手続きを円滑に進めることができます。
外国籍の配偶者が被相続人の場合、日本の相続手続きには独自の課題が生じます。戸籍に記載されないため、外国の証明書類の準備や翻訳が必要となり、さらに相続後の在留資格の変更も避けて通れません。本記事では、相続時の戸籍取得や在留資格の届出、別資格への変更手続き、相続税の課題など、外国籍配偶者が直面する重要なポイントについて詳しく解説します。
目次
1.はじめに
2.戸籍取得の問題
3.配偶者の在留資格と届出義務
4.別資格への変更手続き
5.相続税と国際的な課税問題
6.まとめ
1. はじめに
被相続人の配偶者が外国人である場合、相続手続きは通常の日本人同士の相続と異なる点が多く、特に戸籍取得の難しさや在留資格の変更に関する特別な対応が必要です。
今回は、これらの相続に関わる重要なポイントを詳しく解説します。
2. 戸籍取得の問題
相続手続きを行う際、被相続人の戸籍謄本や、相続人の戸籍が必要になります。
しかし、外国籍の配偶者の場合は、日本の戸籍に記載されていないため、外国の出生証明書や婚姻証明書などを提出しなければなりません。これらの証明書を用意する際、外国の行政手続きや公証手続きが関わるため、通常よりも手続きに時間がかかることが予想されます。
さらに、これらの証明書は日本語への翻訳が必要で、翻訳文には公証人の認証を受けることが求められる場合もあります。
3. 配偶者の在留資格と届出義務
被相続人の配偶者が外国人である場合、相続手続きに加えて、在留資格にも注意が必要です。日本人の配偶者等の在留資格を有している外国人配偶者は、日本人の配偶者が亡くなると、その資格が維持できなくなります。
法律上、配偶者の死亡後、外国籍の配偶者は14日以内に入国管理局に届出を行う義務があります。これを怠ると在留資格の問題が生じ、最悪の場合、在留資格が取り消される可能性があります。この14日以内の届出は、婚姻解消(死亡を含む)に伴うものとして重要な手続きです。
4. 別資格への変更手続き
被相続人が亡くなった後、外国籍配偶者は6カ月以内に別の在留資格に変更する手続きを進める必要があります。この際、一般的には「定住者」や「就労ビザ」などの在留資格が選択肢となります。
変更手続きを行うためには、以下の条件を満たすことが必要です:
⑴日本での生活基盤が確立していることを証明する
⑵一定の経済的な自立が見込まれること
⑶居住歴や仕事の状況などを基に、日本での生活継続を希望する正当な理由があること
この手続きに時間がかかる場合があり、早期に対応することが推奨されます。必要な書類としては、被相続人の死亡証明書、外国籍配偶者のパスポートや在留カード、生活基盤を示す書類(例えば賃貸契約書、雇用証明書など)があります。
5. 相続税と国際的な課税問題
外国籍の配偶者が相続する場合、相続税の問題も重要です。日本国内にある財産については、日本の相続税が課されますが、外国籍の配偶者が外国に居住している場合、二重課税のリスクが生じることがあります。
このため、相続税の申告や納税の際には、日頃の居住状況や財産の所在を確認し、国際的な租税条約などを参考にしながら、正確な申告を行うことが必要です。
また、外国に所在する財産が含まれる場合、その国の法律に従った相続手続きや課税問題に対応しなければならないため、相続に関する専門家や税理士に相談することが強く推奨されます。
6. まとめ
外国籍の配偶者が日本で相続手続きを行う際は、戸籍の取得や相続税の申告だけでなく、在留資格の変更手続きも非常に重要なポイントとなります。
特に、在留資格の届出や変更手続きを怠ると、日本国内での滞在が困難になるリスクがありますので、迅速に対応することが求められます。
相続において、遺留分は法定相続人が最低限取得できる財産の割合を指し、被相続人の意思に反しても保障されています。
しかし、相続発生前に遺留分を放棄することは可能であり、その際には家庭裁判所の許可が必要です。
本稿では、相続放棄が被相続人の生前には行えない理由を説明し、生前に可能な遺留分の放棄について、家庭裁判所の判断要件を詳述します。
目次
1.相続放棄とその手続き
2.相続発生前の遺留分放棄の概要
3.遺留分放棄の家庭裁判所の判断基準
4.遺留分放棄の手続き方法
5.生前の遺留分放棄における注意点
1. 相続放棄とその手続き
相続放棄とは、相続人が相続開始後に相続権を放棄する手続きです。
相続開始前に相続放棄を行うことはできません。
放棄する場合は、相続開始を知った日から3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。相続放棄を行うと、最初から相続人でなかったとみなされ、相続財産や債務の一切を受け継ぐ義務がなくなります。
この手続きは撤回できないため、慎重な判断が必要です。
また、専門家への相談も推奨されます。
2. 相続発生前の遺留分放棄の概要
遺留分は、法定相続人が最低限取得できる財産の割合であり、相続開始前に遺留分を放棄することが可能です。この場合、家庭裁判所の許可が必要となります。
3. 遺留分放棄の家庭裁判所の判断基準
家庭裁判所が遺留分放棄を許可するためには、以下の要件を満たす必要があります。
⑴本人の意思確認:遺留分放棄は本人の自由な意思に基づくものであることが前提です。強制や不当な影響がないことが確認されます。
⑵合理的な理由と必要性:遺留分放棄には合理的な理由と必要性が求められます。例えば、相続人間での合意や特定の事情により放棄が適切と判断される場合です。
⑶放棄後の生活保障:遺留分放棄後、本人の生活が困難にならないよう、生活保障の措置が講じられていることが望ましいです。
4. 遺留分放棄の手続き方法
遺留分放棄の手続きは、以下のステップで行います。
申立書の作成:遺留分放棄の理由や状況を詳細に記載した申立書を作成します。
必要書類の準備:申立書の他、本人確認書類や戸籍謄本などの必要書類を整えます。
家庭裁判所への提出:被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書と必要書類を提出します。
審査と決定:家庭裁判所が審査を行い、遺留分放棄の許可または不許可の決定を下します。
5. 生前の遺留分放棄における注意点
生前に遺留分を放棄する際は、以下の点に注意が必要です。
放棄後の生活保障:遺留分放棄後の生活が困難にならないよう、生活保障の措置を検討することが重要です。
家族間の合意形成:遺留分放棄は家族間での合意が前提となるため、事前に十分な話し合いを行うことが望ましいです。
専門家への相談:手続きの適正性や法的な影響を確認するため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続発生前の遺留分放棄は、家庭裁判所の厳格な審査を受けるため、慎重な対応が求められます。適切な手続きを行い、家族間での円満な相続を実現するための一助となるでしょう。
生前贈与は、相続税対策として有効な手段です。特に不動産の贈与においては、持分移転を活用することで贈与税の負担を軽減し、相続時のトラブルを未然に防ぐことが可能です。本稿では、生前贈与の一般的なテクニックと、特に不動産の持分移転に焦点を当てて解説します。
目次
1.生前贈与の基本概念
2.不動産の持分移転による贈与税対策
3.相続時精算課税制度の活用
4.贈与税の基礎控除の活用
5.生前贈与の注意点
1. 生前贈与の基本概念
生前贈与とは、被相続人が生存中に財産を贈与することを指します。これにより、相続財産を減少させ、相続税の負担を軽減する効果があります。特に不動産は評価額が高いため、生前贈与を通じて早期に資産移転を行うことが有効です。
2. 不動産の持分移転による贈与税対策
不動産を一括で贈与するのではなく、持分を分割して贈与する方法があります。これにより、贈与税の基礎控除(年間110万円)を活用し、贈与税の負担を軽減できます。ただし、不動産移転時の登記費用や不動産取得税も考慮する必要があります。
3. 相続時精算課税制度の活用
相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与に適用されます。この制度を利用すると、贈与時に積算で2500万円まで非課税となり、相続時にその金額が加算されて相続税が計算されます。これにより、大きな財産を早期に移転し、相続時の手続きや争いを未然に防ぐことができます。
令和6年1月1日に、相続時精算課税を利用する場合、年間110万円の控除枠が設けられています。うまく利用すれば、2500万円の枠を極力利用せずに(つまり相続時に遺産として組み入れる枠を利用することなく)この制度を利用できます。ただし、この話は令和7年2月12日現在の話で、今後、税制が変更になっているかもわかりませんので、専門家である税理士に必ず確認をしてください。
4. 贈与税の基礎控除の活用
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。毎年少額ずつ不動産の持分を贈与することで、贈与税を抑えることが可能です。令和6年1月1日より、暦年贈与制度は、相続発生時からさかのぼり7年分を遺産に組み戻すことになりました(従前は3年分)。計画を立てて、早期から始めませんとなかなか恩恵に授かることは難しくなってきています。こちらも令和7年2月12日現在の話で、今後税制の変更がある可能性は十分に考えられますので、専門家に相談することをお忘れなく。
5. 生前贈与の注意点
生前贈与を行う際には、贈与税の負担や不動産移転時の登記費用、不動産取得税などの諸費用を考慮する必要があります。また、相続時精算課税制度を選択すると、その後の贈与にも適用されるため、慎重な判断が求められます。
生前贈与は、相続税対策として非常に有効な手段です。特に不動産のような高額な資産は、相続税対策の観点からも早目に贈与を検討する価値があります。計画的に活用することで、相続時の負担を軽減できます。ただし、制度の選択や贈与のタイミングについては、専門家との相談が不可欠です。ご自身の状況に合わせた最適なプランを検討しましょう。
相続が発生した際、預貯金の取り扱いについては注意が必要です。特に、亡くなった方が生前に行った贈与が「みなし預金」とされる場合、相続税の課税対象となる可能性があります。みなし預金とは、亡くなった方が亡くなる前に贈与を行った場合であっても、特定の条件を満たすと、実質的には亡くなった後の遺産とみなされるものです。そのため、生前贈与を行う際には適切な計画と手続きが重要です。本稿では、みなし預金とされないための生前贈与のポイントを解説し、賢く財産を引き継ぐ方法について考察します。
目次
1.生前贈与とは?
2.みなし預金の定義とその仕組み
3.みなし預金とされるケース
4.みなし預金とされないための生前贈与のポイント
5.具体的な対策例
6.まとめ
1. 生前贈与とは?
生前贈与とは、個人が亡くなる前に自分の財産を家族や親族などに贈与することを指します。これにより、相続が発生した際に相続税の課税対象となる遺産の総額を減らすことが可能です。生前贈与は、相続税対策として広く利用されていますが、贈与税がかかる場合もあるため、計画的に行う必要があります。
2. みなし預金の定義とその仕組み
みなし預金とは、被相続人が亡くなるまでの期間、被相続人から、相続人への贈与の際、預金通帳を被相続人が管理していた場合、それが実質的には親の財産として管理していたとみなされる制度です。国税庁は、被相続人の死亡前一定期間内に行われた贈与や預金の引き出しについて、相続税の逃れを防ぐために「みなし預金」として課税対象にしています。これにより、生前贈与があったとしても、贈与税や相続財産に含まれ、相続税が課されることがあります。
3. みなし預金とされるケース
みなし預金とされる代表的なケースには、以下のようなものがあります。
⑴毎月、子供名義の預金通帳に一定金額ずつ入金し親がその痛痒を管理している場合
⑵収入を得ていない専業主婦が、夫からもらった生活費の一部を内緒で自分名義の口座に入金する 場合
これらのケースでは、国税庁はその贈与を「贈与税や相続税の対象」として、当該預金をみなすことがあります。
4. みなし預金とされないための生前贈与のポイント
みなし預金とされないためには、いくつかの対策を講じることが重要です。
早めの計画的な贈与
生前贈与はできるだけ早期に計画的に行うことが大切です。死亡直前に行った贈与は、みなし預金とみなされる可能性が高くなります。定期的かつ小額ずつの贈与を行うことで、相続税の課税を避けやすくなります。
贈与契約書の作成
生前贈与を行う際には、贈与契約書を作成し、贈与が正式に行われたことを証明する書類を整備することが大切です。これにより、後に贈与が疑われる事態を避けられます。
贈与税の申告
贈与税がかかる場合は、適切に申告することが求められます。特に年間110万円を超える贈与には贈与税が課せられるため、贈与を行った際には税務署に対して申告を忘れずに行いましょう。
5. 具体的な対策例
以下は、みなし預金とされないための具体的な対策例です。
年間110万円の非課税枠を活用する
生前贈与には、年間110万円の非課税枠があります。この枠を毎年活用して、小額ずつの贈与を行うことで、相続税の課税対象を減らすことができます。
教育資金の一括贈与制度の利用
祖父母から孫への教育資金の一括贈与は、非課税となる特例があります。この制度を利用して、贈与を行うことが考えられます。
住宅取得資金の贈与特例
住宅購入資金を贈与する際には、特定の要件を満たす場合に非課税となる特例が適用されます。これにより、相続財産の一部を生前に移転することが可能です。
6. まとめ
生前贈与は、相続税対策として非常に有効な手段ですが、みなし預金として相続税の課税対象になるリスクもあります。贈与を行う際には、早めに計画的に実施し、贈与契約書の作成や贈与税の適切な申告を怠らないことが重要です。また、非課税枠や特例を上手に活用することで、効果的な生前贈与を実現できます。みなし預金とされないよう、十分な準備をして、生前贈与を行うことが大切です。分からない場合には、必ず専門家に相談してください。
生前贈与は、相続税の負担を軽減するための有効な手段として広く知られていますが、税務上および法律上のリスクを伴う行為でもあります。生前贈与を考える際には、贈与税の基礎控除額である110万円を超える場合の課税の可能性を踏まえた検討が必要です。また、相続時には遺留分の問題が生じるため、特定の相続人への贈与が「特別受益」として扱われ、他の相続人との間で不公平感が生じる可能性もあります。
目次
1.生前贈与と税務上の注意点
2.贈与税の基礎控除額と課税計算
3.生前贈与を行う際の判断基準
4.生前贈与と法律上の注意点
5.遺留分と特別受益の関係
6.生前贈与におけるリスク回避策
7.まとめ
1. 生前贈与と税務上の注意点
生前贈与は、財産の一部を相続前に受け渡すことで、相続税の負担を軽減することを目指した手法です。しかし、贈与は相続と異なり、贈与税という別の税負担が生じるため、十分な計画が求められます。特に贈与税の課税対象額が基礎控除額を超える場合、その贈与が課税されることを考慮しなければなりません。
2. 贈与税の基礎控除額と課税計算
贈与税の基礎控除額は、年間110万円です。この金額を超える贈与が行われた場合、贈与を受けた人はその超過額に対して贈与税を支払う義務が生じます。具体的な贈与税の額は、以下のように計算されます。
基礎控除額:110万円
課税される贈与額=(贈与総額 - 110万円)
税率:贈与額に応じて、10%から55%までの累進税率が適用されます。
例えば、300万円の生前贈与を行った場合、贈与税は以下のように計算されます。
課税対象額 = 300万円 - 110万円 = 190万円
税率 = 10%(200万円以下の贈与の場合)
贈与税額 = 190万円 × 10% = 19万円
このように、基礎控除額を超える部分に対して贈与税が課税されるため、生前贈与を行う前に、贈与税額を事前に確認し、その額が贈与を行う上で許容できるかどうかを慎重に判断する必要があります。
3. 生前贈与を行う際の判断基準
生前贈与を行うかどうかの判断は、贈与税額だけでなく、将来的な相続税負担や家族間の財産分配のバランスも考慮する必要があります。
特に、財産を受け取る相続人が相続税の基礎控除を受けられるか、また贈与を行った結果、相続税負担がどの程度軽減されるのかを計算することが重要です。
また、贈与額が大きい場合や複数年にわたる贈与を計画している場合は、累進税率の影響を十分に考慮し、無理のない範囲で贈与を行うことが望ましいです。
複数年にわたって毎年110万円以下の贈与を行う「暦年贈与」を活用することも、贈与税負担を軽減する一つの方法です。
ただし、相続発生時からさかのぼって7年分の生前贈与については、遺産に組み戻されますので注意が必要です。
4. 生前贈与と法律上の注意点
税務上の問題だけでなく、法律上の問題も生前贈与には存在します。特に、相続時に遺留分が侵害される可能性がある場合、贈与がトラブルの原因となり得ます。遺留分は、法定相続人に保障された最低限の取り分であり、被相続人がどのような財産処分を行っても、この権利を侵害することはできません。
5. 遺留分と特別受益の関係
遺留分の権利者には、子、配偶者、直系尊属が含まれます。これらの相続人に対しては、最低限の取り分が保障されており、特定の相続人に対して過度な生前贈与を行うと、他の相続人から「遺留分が侵害された」として異議が申し立てられることがあります。
特に、生前贈与が「特別受益」として扱われる場合、相続時にその贈与が考慮され、遺産分割に影響を与える可能性があります。
特別受益とは、ある相続人が他の相続人に比べて不当に多くの利益を享受したとみなされる場合のことを指します。例えば、ある子供にだけ高額な生前贈与を行った場合、その子供は他の相続人に対して不利な立場に置かれることがないように、贈与額が遺産に含まれ、再計算されることになります。
6. 生前贈与におけるリスク回避策
生前贈与を行う際のリスクを回避するためには、いくつかの対策を講じることが重要です。
遺言書の作成:遺言書を作成し、生前贈与を含めた全体の財産分配について明確にしておくことで、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。
遺留分放棄の活用:相続人間で合意を得た上で、遺留分権利者に対して遺留分放棄の手続きを取ることも有効な手段です。家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄することで、生前贈与の自由度を高めることができます。
家族間の事前調整:家族間で生前贈与に関する計画を共有し、財産分割について合意を形成することが重要です。これにより、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
7. まとめ
生前贈与は、相続税対策として非常に有効な手段ですが、贈与税の負担や遺留分の問題を考慮しなければなりません。
税務上の視点では、贈与税の基礎控除額を超える贈与に対して課税が発生するため、贈与税額を事前に確認し、無理のない範囲での贈与を計画することが重要です。
一方で、法律上の視点では、遺留分の権利を侵害しないように生前贈与を慎重に行う必要があります。
特別受益の問題や遺留分侵害を避けるために、家族間での合意や遺言書の作成が重要な対策となります。
生前贈与を行う際には、税務および法律の専門家と相談しながら進めることが望ましいでしょう。
近年、高齢者の相続対策の一環として、生前贈与が注目されています。生前贈与は、遺産を遺す前に財産を譲渡することで、相続時の税負担を軽減したり、資産分配を円滑に進めたりする目的で利用されることが多いです。しかし、生前贈与は遺留分との関係で注意が必要です。遺留分は法定相続人に保障された最低限の権利であり、生前贈与が過度に行われると、遺留分権利者の利益を損なう可能性があるため、法律上の争いが生じることも少なくありません。
目次
1.生前贈与とは
2.遺留分の基本概念
3.生前贈与と遺留分の関係
4.生前贈与による遺留分侵害のリスク
5.遺留分減殺請求とは
6.生前贈与と遺留分の調整方法
7.まとめ
1. 生前贈与とは
生前贈与は、被相続人が生存中に自分の財産を相続人や第三者に無償で譲渡する行為です。これにより、相続発生後に遺産分割をスムーズに進めることができるほか、相続税対策としても有効です。特に、相続税の基礎控除が引き下げられた現在、財産を事前に分散させることで、相続税の負担を軽減することが可能になります。
しかし、生前贈与には法的な制約が伴います。その一つが、相続人の遺留分に関する問題です。生前贈与が過度に行われると、遺留分権利者の利益を侵害する可能性があるため、その点に配慮が必要です。
2. 遺留分の基本概念
遺留分とは、被相続人が遺言などで自由に財産を処分できる範囲を制限し、一定の法定相続人に対して保障される最低限の財産取得権のことを指します。遺留分の目的は、相続人が遺産分割において不当な不利益を受けないようにすることです。日本の民法では、直系尊属、子、配偶者が遺留分権利者とされ、その割合は相続財産の半分、直系尊属のみの場合は3分の1と規定されています。
3. 生前贈与と遺留分の関係
生前贈与が遺留分と関わるのは、被相続人が相続財産を事前に贈与しすぎた場合です。民法第903条では、遺留分の算定において、生前に贈与された財産の一部が「特別受益」として扱われる可能性があると定められています。これは、相続人が他の相続人に比べて不公平な利益を享受することを防ぐための規定です。
例えば、被相続人が特定の子供に生前贈与を行った場合、その贈与額が遺産の多くを占めると、他の相続人の遺留分が侵害される可能性があります。このような場合、遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求を行う権利があります。
4. 生前贈与による遺留分侵害のリスク
生前贈与は有効な相続対策である一方、遺留分を侵害するリスクも伴います。特に、特定の相続人や第三者に対して大きな生前贈与を行う場合、他の相続人が遺留分を侵害されたと感じることがあります。贈与が死亡から1年以内に行われた場合、その財産は遺留分の計算に組み込まれることがあり、相続人間のトラブルの原因となることが少なくありません。
5. 遺留分減殺請求とは
遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害された相続人が、侵害分を取り戻すために請求できる権利です。生前贈与により遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は、侵害分を補填するために、贈与を受けた者に対して返還請求を行うことができます。ただし、この請求は、相続が発生した後1年以内に行う必要があり、時効が成立すると請求権は消滅します。
6. 生前贈与と遺留分の調整方法
生前贈与と遺留分の問題を回避するためには、いくつかの調整方法があります。例えば、贈与契約を行う際に、相続人間で予め合意を得ておくことが重要です。また、遺言書を作成し、遺留分権利者に対して十分な説明を行うことで、後のトラブルを防ぐことができます。
もう一つの方法は、遺留分放棄の制度を活用することです。遺留分権利者が家庭裁判所の許可を得て、遺留分を放棄することで、生前贈与や遺産分割の自由度を高めることができます。ただし、この放棄は遺留分権利者にとって重大な決定となるため、慎重な判断が必要です。
7. まとめ
生前贈与は、相続対策として非常に有効な手段ですが、遺留分との関係で注意が必要です。遺留分権利者の利益を侵害しないように、事前の計画や相続人間での合意形成が不可欠です。また、遺留分減殺請求のリスクを回避するためには、遺言書の作成や遺留分放棄制度の利用なども検討する必要があります。生前贈与を行う際には、法律的な観点を十分に考慮し、専門家の助言を受けることが重要です。
相続手続きにおいて、被相続人の不動産を正確に特定することは非常に重要です。現状では、各市区町村役場で「固定資産税評価証明書」を取得して、被相続人が所有する不動産を確認することが一般的ですが、家族が知らない県外の不動産がある場合、その特定は困難となり、相続登記に漏れが生じるリスクがあります。このような課題を解決するため、2026年2月に施行予定の「所有不動産記録証明制度」が導入されることが決定しました。この制度により、法務局で全国の登記簿謄本を一括して確認し、所有者ごとに不動産を名寄せすることが可能となります。
目次
1.現行制度の課題
2.「所有不動産記録証明制度」とは
3.制度導入のメリット
4.相続手続きにおける新制度の活用
5.まとめ
1. 現行制度の課題
現在、不動産を特定するためには、各市区町村ごとに「固定資産税評価証明書」を取得し、被相続人が所有する不動産を確認します。しかし、この方法にはいくつかの課題があります。まず、被相続人が所有している不動産のすべてを家族が把握していない場合、特に県外の不動産については、漏れが生じる可能性が高いです。例えば、被相続人がかつて投資用や別荘として購入した不動産がある場合、それが知られずに相続登記が完了しないという事態が発生することもあります。相続登記に不動産が漏れると、将来的にトラブルを引き起こす可能性が高く、相続人間での不動産分配が不完全なものとなるリスクもあります。
2. 「所有不動産記録証明制度」とは
2026年2月に施行される予定の「所有不動産記録証明制度」は、こうした不動産相続における課題を解消するために設けられた新しい制度です。この制度では、法務局が全国の登記簿謄本を基に、特定の所有者に属するすべての不動産を名寄せすることができます。つまり、相続人は法務局に申請することで、被相続人が全国のどの地域にどのような不動産を所有していたのかを一括で確認できるようになるのです。
現行の制度では、登記簿謄本は個別の不動産についてのみ取得でき、所有者を基準とした不動産の確認ができないため、複数の地域に不動産を持つ場合、相続人にとっては手間が増えるだけでなく、不動産の特定が困難となるケースも多々あります。この新制度はその点を大幅に改善し、相続手続きを簡素化する画期的な仕組みです。
3. 制度導入のメリット
「所有不動産記録証明制度」の導入により、相続手続きが効率化されるだけでなく、次のようなメリットが生まれます。
全国一括の不動産特定が可能
相続人が全国の不動産を個別に探す手間を大幅に削減できます。これにより、不動産の漏れを防ぎ、相続登記が正確に行われるようになります。
手続きの時間短縮
各市区町村での書類取得が不要となり、相続手続きがスムーズに進行します。特に、遠方の不動産を所有していた場合には、大幅な時間の短縮が期待されます。
透明性の向上
被相続人の不動産がすべて明確になることで、相続人間での不動産分配の公平性が保たれます。また、相続税の計算や登記の際のトラブルを未然に防ぐ効果もあります。
4. 相続手続きにおける新制度の活用
相続手続きを行う際、被相続人が所有していたすべての不動産を確実に特定することは重要です。特に、複数の不動産を所有していた場合や、県外に不動産がある場合、従来の方法では不動産の漏れが生じるリスクが高く、その結果、相続登記が不完全になる可能性があります。
この「所有不動産記録証明制度」を活用することで、相続人は法務局に一度の申請をするだけで、被相続人が所有していたすべての不動産を確認することができます。このように、制度の導入により、手続きが簡素化されるだけでなく、不動産漏れのリスクも回避できるため、相続登記がスムーズに進行することが期待されます。
また、この制度は相続以外の場面でも有効です。例えば、遺言作成時に自分の不動産資産を把握する際にも、この制度を活用することで、より正確な遺産分配が可能となります。
5. まとめ
相続手続きにおいて、被相続人の不動産を正確に特定することは非常に重要です。現行制度では、不動産の特定に手間がかかり、場合によっては漏れが生じるリスクもあります。しかし、2026年2月に施行予定の「所有不動産記録証明制度」によって、法務局で全国の不動産を一括して名寄せできるようになることで、相続手続きが大幅に効率化されます。この新制度を適切に活用することで、相続登記がスムーズに進行し、不動産漏れによるトラブルを未然に防ぐことが可能となります。
日本における相続手続きにおいて、遺産の範囲を確定することは非常に重要なステップです。しかし、遺産の範囲を確定するには、単に被相続人が生前に所有していた財産を確認するだけではなく、隠れた資産や負債、不動産の権利関係、遺言書の内容、さらには法律上の解釈の問題など、さまざまな要素が絡み合うため、しばしば複雑な問題が発生します。本稿では、遺産の範囲を確定する際に生じる主な問題点と、それに伴う対策について論じます。
目次
1.遺産の範囲の確定とは
2.不動産に関する問題
3.金融資産と負債の確認
4.遺言書の解釈と遺産分割協議
5.まとめ
1. 遺産の範囲の確定とは
相続手続きにおいて、まず最初に行わなければならないのは、被相続人の遺産の範囲を確定することです。遺産とは、被相続人が生前に所有していた財産や負債を指し、不動産や現金、預貯金、株式、動産などが含まれます。また、負債も相続の対象となるため、借金や未払いの税金なども遺産に含まれます。しかし、この遺産の範囲を正確に把握することは容易ではありません。
2. 不動産に関する問題
不動産は相続財産の中でも特に複雑な問題を引き起こす要素です。まず、登記が正しく行われていない場合や、所有権が不明確な場合があります。特に、古い不動産や過去に複雑な権利移動があった場合、その権利関係を整理するためには多大な時間とコストがかかることがあります。また、共有名義の不動産の場合、他の共有者との間で協議が必要となり、意見が一致しない場合には、相続手続きが進まないこともあります。
もう一つの問題点として、不動産の評価があります。不動産の価値は市場の動向や立地条件によって変動するため、相続税の計算や遺産分割の際に評価額を巡って争いが起こることがあります。不動産鑑定士による評価を依頼することが一般的ですが、鑑定結果に不満が生じることもあります。
3. 金融資産と負債の確認
金融資産の確認もまた問題を引き起こすことがあります。例えば、被相続人が複数の金融機関に口座を持っていた場合、それらの口座をすべて確認する必要があります。しかし、被相続人が生前に管理していた資産の全てを家族に伝えていなかった場合、口座の存在が発見されず、遺産の一部が見逃されることがあります。特に、近年ではインターネットバンキングの普及により、物理的な通帳や証書がない場合もあり、資産の特定が難航するケースも見受けられます。
また、負債の確認も重要です。被相続人が抱えていた借金や未払いの税金が相続人に引き継がれることになるため、それらを正確に把握しなければ、思わぬ負担が相続人に降りかかることがあります。特に、借金が相続財産を上回る場合には、相続放棄を検討する必要があります。
4. 遺言書の解釈と遺産分割協議
遺言書が存在する場合、それに基づいて遺産分割が行われますが、遺言書の内容が不明確であったり、相続人間で解釈が異なる場合、トラブルが発生します。例えば、「特定の不動産を誰に相続させるか」といった具体的な指示がない場合や、曖昧な表現が使われている場合、相続人同士の話し合いが必要となります。
遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要ですが、意見が対立する場合には協議が長期化することがあります。特に、遺言書がない場合や、相続人間の関係が悪化している場合、協議が進まず、最終的に家庭裁判所に調停を申し立てることになることもあります。
5. まとめ
遺産の範囲を確定する際には、不動産の所有権や評価、金融資産や負債の確認、遺言書の解釈、さらには相続人間の協議など、さまざまな問題が発生します。これらの問題を解決するためには、専門家の助言を仰ぎながら、遺産の詳細な調査を行うことが不可欠です。さらに、事前に相続対策を講じることで、相続発生後のトラブルを未然に防ぐことが重要です。
相続手続きを円滑に進めるためには、まず相続人の範囲を確定することが必要です。しかし、状況によっては相続人の確定が難航し、手続きが大幅に遅れることもあります。特に、前妻との子供が存在する場合や、長期間にわたって相続登記が行われていない場合など、調査が複雑化するケースでは、相続人を確定することが難しい課題となります。本記事では、相続人確定に立ちはだかるハードルとその具体的な例について説明します。
目次
1.相続人の確定における一般的な手続き
2.前妻との子供の存在による相続調査の複雑化
3.相続登記の未了がもたらす問題
4.相続人確定における具体例と対策
5.まとめ
1. 相続人の確定における一般的な手続き
通常の相続において、相続人の確定は比較的容易です。基本的な流れとしては、被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本を調査し、相続人の範囲を確認します。相続人は民法に定められた順位に基づいて決定され、子供、配偶者、直系尊属(親など)、兄弟姉妹が相続人となります。
被相続人の戸籍謄本を辿り、家族構成を確認することで、法定相続人を確定することができます。一般的な家族構成であれば、この調査はスムーズに進みます。しかし、複雑な家庭環境や、相続登記の未了などの状況があると、相続人の確定は一気に難易度が上がります。
2. 前妻との子供の存在による相続調査の複雑化
特に問題となるのが、被相続人が再婚しているケースです。再婚前の配偶者との間に子供がいる場合、その子供も法定相続人となります。再婚後の家庭でその子供の存在が知られていない場合や、長期間連絡が取れていない場合、相続人の確定は一筋縄ではいきません。
前妻との子供との関係性
前妻との子供が法定相続人であることを認識していても、その子供との連絡が途絶えている場合や、所在が不明な場合は、戸籍を追跡する必要があります。戸籍の追跡には時間がかかる上、場合によっては海外に移住しているケースもあり、さらに複雑化します。加えて、被相続人が認知していない非嫡出子が存在する場合、その調査は困難を極めます。
3. 相続登記の未了がもたらす問題
相続手続きにおいて、もう一つ大きなハードルとなるのが、長期間相続登記が行われていない場合です。これにより、現在の法定相続人が誰なのかを確定するのが難しくなります。
何代にもわたる相続登記の未了
特に問題となるのが、何代にもわたって相続登記が未了のまま放置されているケースです。このような場合、被相続人の遺産が、既に亡くなっている先代の相続人たちに帰属している可能性があります。この場合、先代の相続人の相続手続きも同時に行わなければならず、手続きは非常に複雑化します。
例えば、曾祖父の代から相続登記が行われていない土地があった場合、その土地の相続人は、曾祖父の子供、孫、曾孫にまで及ぶことがあり、全ての相続人を確定するのは困難を極めます。
4. 相続人確定における具体例と対策
具体例1: 前妻との子供が相続人であった場合
Aさんが亡くなり、相続人として現在の配偶者と子供が確認されました。しかし、調査の過程でAさんには前妻との間に子供がいることが判明。この子供が長年Aさんと連絡を取っていなかったため、戸籍を遡り、所在を確認する必要が生じました。この場合、最初にAさんの戸籍をすべて取り寄せ、再婚前の戸籍に遡って調査を行うことが不可欠です。場合によっては、家庭裁判所に申立てを行い、失踪宣告の手続きを取ることも検討されます。
具体例2: 相続登記が未了の土地の相続人確定
Bさんが相続することになった土地は、曾祖父の代から相続登記が行われていないことが判明しました。この土地の相続人を確定するためには、Bさんの親や祖父母、その兄弟姉妹に至るまで、相続人全員の調査が必要となりました。結果として、数十人に及ぶ相続人が確認され、各相続人の同意を得てようやく相続登記を完了させることができました。
5. まとめ
相続人の確定は、単純なケースでは比較的容易に進むものの、再婚や長期間の相続登記の未了など、複雑な事情が絡むと一気に難易度が増します。前妻との子供の存在や、相続登記が行われていない場合は、時間と労力を要することを覚悟する必要があります。相続手続きをスムーズに進めるためには、戸籍調査や法的手続きを的確に行い、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
今まで、多くの相続に携わりましたが、一つとして同じ相続はありません。似ていることはあっても、全く同じということはまずないです。つまり、相続は個々の事情によるオーダーメードのような対応が必要になります。
はじめに、相続手続きをスムーズに進めるためには、相続人の範囲と遺産の範囲を正確に確定することが不可欠です。これらの確認を怠ると、後々にトラブルが発生し、相続手続きが長期化するリスクがあります。本記事では、相続人と遺産の確定について解説し、注意すべきポイントを紹介します。
目次
1.相続人の範囲の確定
2.遺産の範囲の確定
3.相続手続きにおける注意点
4.まとめ
1. 相続人の範囲の確定
相続人の範囲を正確に確定することは、相続手続きを開始する上での最初のステップです。法定相続人の範囲は、民法によって定められていますが、状況によっては特別なケースもあります。
法定相続人の種類
相続人には、以下のような順位が定められています。
第一順位: 子(養子を含む)
第二順位: 直系尊属(親、祖父母など)
第三順位: 兄弟姉妹
配偶者は、常に相続人となり、上記の相続人と共に遺産を分け合います。
特殊なケース
非嫡出子: 法定相続人となりますが、認知が必要です。
離婚した前配偶者との子供: 相続権を持ちます。
養子: 養子縁組をしていれば、実子と同じく相続権を持ちます。
相続欠格や廃除: 相続人であっても、特定の事情がある場合、相続権を失うことがあります。
これらを考慮しながら、戸籍謄本などを用いて、法定相続人を確定することが重要です。
2. 遺産の範囲の確定
遺産の範囲を確定するためには、被相続人の全ての財産と債務を把握する必要があります。具体的には、不動産、現金、預貯金、有価証券、動産、権利義務などが遺産に含まれますが、どこまでが相続の対象となるかを確定することが重要です。
プラスの財産
不動産: 土地や建物の登記簿を確認し、被相続人名義の物件を調べます。
預貯金: 各金融機関で残高証明書を取得し、口座の有無を確認します。
有価証券: 株式、国債、社債なども遺産に含まれるため、証券会社や金融機関に問い合わせて残高を把握します。
動産: 高価な美術品や貴金属、骨董品なども遺産として評価されます。
マイナスの財産(債務)
借金やローン: 貸借対照表や取引明細を確認し、被相続人が抱えていた借金の額を特定します。
未払いの税金や医療費: 被相続人の未払いの税金や医療費も遺産として計上されます。
特定の権利や義務
保険金: 生命保険の受取人に指定されている場合、保険金は遺産に含まれませんが、受取人指定がない場合は遺産として扱われることがあります。
退職金: 退職金も、場合によっては相続の対象となるため、勤務先に確認が必要です。
3. 相続手続きにおける注意点
相続手続きを進める際、以下の点にも注意が必要です。
相続人間の合意形成
相続人が複数いる場合、遺産分割協議が必要です。全ての相続人が遺産分割に同意しなければなりません。ここで相続人間の対立が生じることが多いため、適切な調整が求められます。
税金対策
相続税の申告が必要な場合、期限内に正確な申告を行う必要があります。相続税は、基礎控除額を超えた財産に課されるため、早めに専門家と相談し、節税対策を検討することが重要です。
債務の確認
相続する財産がプラスばかりとは限りません。借金や未払いの医療費など、マイナスの財産を相続することも考慮に入れ、相続放棄や限定承認といった選択肢も検討しましょう。
4. まとめ
相続においては、まず相続人の範囲と遺産の範囲を正確に確定することが、スムーズな手続きの鍵となります。戸籍謄本や金融機関の資料、不動産登記簿などを活用して、法定相続人と遺産の全体像を把握し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。相続人間での合意形成や、税金、債務の確認も相続手続きの中で重要な要素となります。しっかりと準備を行い、スムーズな相続手続きのための対策を講じましょう。
分からない場合には、専門家に相談することをお勧めいたします。
保証契約は、主に債務者が返済を怠った場合に、第三者(保証人)がその債務を履行することを約束する契約です。この保証契約には、いくつかの種類があり、代表的なものとして「通常の保証人」「連帯保証人」「根保証」があります。各保証形態には異なる特徴や注意点があり、契約前に理解しておくことが重要です。本稿では、それぞれの保証契約の特徴と注意点を詳述します。
目次
1. 通常の保証人
2. 連帯保証人
3. 根保証
4. 保証人契約における共通の注意点
5. まとめ
1. 通常の保証人
通常の保証人とは、債務者が返済を怠った場合に、債権者から請求を受けた際に初めて責任を負う保証の形態です。この保証の特徴は、「債権者が債務者に対して履行の請求をした後、保証人に請求できる」というものです。具体的には、債務者が債務不履行を起こしても、保証人に請求が行われるのは、その後であり、保証人はその際に初めて責任を問われることになります。
注意点
保証人の責任の範囲: 通常の保証人は、債務者が履行をしない場合にのみ請求されます。そのため、保証人としての責任は、債務者の不履行に依存します。
請求の順番: 債権者はまず債務者に対して請求を行い、債務者が履行できない場合に保証人に対して請求します。そのため、保証人はまず債務者の対応を確認する必要があります。
保証契約の解除: 通常の保証契約は、債務者が債務を履行した場合、または契約の解除が合意されれば、保証人としての責任も免れることができます。
2. 連帯保証人
連帯保証人は、通常の保証人と異なり、債務者と同じように債務を負うことになります。連帯保証人は、債務者が債務を履行しない場合に、債権者から直接請求を受けることができます。つまり、債権者が債務者に対して履行の請求をする前でも、連帯保証人に請求が可能です。
注意点
請求の順番がない: 連帯保証人は、債務者と同じく直接請求されるため、債権者は債務者に請求することなく、最初から連帯保証人に対して請求することができます。これは連帯責任のため、保証人が求められるタイミングで責任を果たさなければなりません。
全額責任を負う: 連帯保証人は、債務者と同じ立場で責任を負います。債務額に制限はなく、債務者の履行しなかった分だけでなく、債務全額を負担する可能性があります。そのため、連帯保証人になる際には慎重に考える必要があります。
債務者の不履行に直面した際の対応: 債務者が不履行を起こした場合、連帯保証人は即座に責任を負うため、債務者がどうしても履行できない状況にある場合には、自分がその責任を負わなければならないことを理解しておくべきです。
保証契約の確認: 連帯保証人として契約する前に、その契約書を十分に確認し、どのような条件で責任を負うのかを明確に理解しておく必要があります。
3. 根保証
根保証とは、一定の範囲内で発生する複数の債務を保証する契約です。この保証契約は、例えば「A社に対する債務全般を保証する」という形で、一度保証契約を結ぶと、その後発生するすべての債務について保証することになります。具体的には、債務の発生時期や金額に関わらず、契約範囲内で保証を続ける形です。
注意点
無制限の保証: 根保証の特徴は、その保証の範囲が広範囲に渡り、保証する債務が複数であることです。したがって、保証人は全体の債務額を管理する必要があり、債務の範囲が予測できないことに注意が必要です。
保証額の増加: 根保証契約においては、最初の保証額が設定されていても、その後発生する債務により保証額が増加することがあります。保証額の変更や追加を避けるために、契約内容をよく確認し、制限を設けることが重要です。
契約解除のタイミング: 根保証契約は、契約者と保証人が合意することで解除できますが、解除後に発生する新たな債務に対しては保証の責任が生じることがあるため、解除タイミングには注意が必要です。
※根保証には、個人保証の場合と法人保障の場合で責任の範囲が変わります。詳しくは、契約前に専門家にご相談ください。
4. 保証人契約における共通の注意点
いずれの保証契約においても、以下の点には共通して注意が必要です。
契約内容の確認: 保証人として契約する際は、契約書の内容を十分に理解し、特に保証範囲や責任の範囲を確認することが重要です。
第三者に対する保証のリスク: 保証人は、債務者の不履行時に責任を負うことになります。そのため、債務者が実際に支払い不能になる前に、契約内容や債務の状況を確認しておくことが必要です。
債務者の信用状態の確認: 保証人は、債務者が返済できるかどうかを予測する必要があります。債務者の信用状態を確認し、必要に応じて担保を設定するなどの対策を考えることが望ましいです。
5. まとめ
保証契約は、債務者が履行しない場合に保証人が責任を負う重要な契約です。通常の保証人、連帯保証人、根保証それぞれに異なる特徴や注意点があります。契約を結ぶ際には、その契約内容を十分に理解し、リスクを適切に認識することが求められます。特に連帯保証人や根保証では、責任範囲が広がる可能性があるため、慎重な判断が必要です。
双方代理とは、同じ代理人が売主と買主など双方の代理を務めることを指し、民法第108条により利益相反のリスクから原則禁止されています。しかし、司法書士は不動産売買の登記申請をする際、売主と買主の双方の代理人として行為することをしています。なぜ、双方の代理人として登記申請ができるのでしょうか?
目次
1. 双方代理の禁止とその背景
2. 不動産登記における例外的な取り扱い
3. 利益相反が生じにくい理由
4. 司法書士の登記業務における責任
5. 結論
1. 双方代理の禁止とその背景
まず、双方代理が原則禁止されている理由について詳しく見ていきます。代理人の基本的な役割は、本人の意思を代わりに実現し、本人の利益を最大限守ることです。しかし、同一の代理人が取引の双方に関わると、代理人は一方の利益を優先した行為を行う可能性があり、その結果、他方に不利益を与えるリスクがあります。これを利益相反の問題と言います。
利益相反の問題が生じると、代理人がどちらか一方に利益を偏らせ、もう一方の権利を侵害することが容易になります。そのため、民法第108条では、双方代理による不公正な取引を防止するため、原則として双方代理を禁止しています。もし、双方代理が行われた場合、その法律行為は無効となる可能性があります。
2. 不動産登記における例外的な取り扱い
司法書士が不動産売買において、売主と買主の双方の代理人として登記申請を行うことが許されている背景には、不動産登記の特性が関係しています。不動産登記は、単に権利関係を公示するための手続きであり、売買契約の内容そのものには影響を与えないため、利益相反が生じにくいとされています。
2.1 司法書士法の特別規定
司法書士は、登記申請代理業務を行う際に、売主と買主の双方の代理人となることができます。これは、司法書士法や登記法による特別な規定に基づくものであり、司法書士が公正かつ中立な立場で、登記手続きを円滑に進めることを目的としています。ここで重要なのは、司法書士が関与するのは主に「登記申請」に限られる点です。売買契約の内容や条件交渉には関与せず、契約内容が既に合意された後の手続きを行うことに特化しているため、利益相反のリスクが低いとされています。
2.2 登記申請における司法書士の役割
不動産の売買契約において、登記手続きは重要な役割を果たします。売主から買主への所有権の移転や、抵当権の設定などが行われる場合、これらの登記は法律上公的に記録される必要があります。しかし、登記手続きは専門的かつ複雑であるため、司法書士がその代理人として登記申請を行います。この場合、司法書士は売主と買主の双方から依頼を受け、登記申請を代理して行いますが、その業務は契約の実質的な内容には関与せず、単に法的な手続きを代行するに過ぎません。
このため、司法書士が登記申請に関して双方代理を行う場合、利益相反の問題は生じにくいと考えられています。登記申請は、売主と買主の間で合意された内容を記録するためのものであり、契約そのものの交渉には関与しないため、双方の利益を同時に守る必要がないからです。
3. 利益相反が生じにくい理由
司法書士が売主と買主の双方の代理人として登記申請を行う際に利益相反が生じにくい理由は、以下の点に集約されます。
3.1 登記手続きの性質
不動産登記手続きは、取引の公示という側面が強く、契約の内容や交渉に直接関与しないため、代理人が一方の利益を偏らせる余地がほとんどありません。売買契約自体は、司法書士が関与する前に当事者間で合意されており、登記申請はその結果を公示するための技術的な手続きに過ぎません。
3.2 中立な立場
司法書士は、登記申請の場面において、売主と買主のどちらか一方に肩入れすることなく、公平かつ中立な立場で業務を行います。これは、司法書士の職業倫理としても重要視されており、司法書士法によってその公正性が保障されています。
3.3 合意済みの取引
登記申請が行われる時点で、売主と買主は既に売買契約を締結しており、取引内容についての交渉は完了しています。このため、登記申請において代理人が関与するのは、あくまで既に合意された内容を公示するための手続きに限られ、契約内容に影響を与えることはありません。
4. 司法書士の登記業務における責任
司法書士が売主と買主の双方の代理人として登記申請を行う際、重要なのは、適切な登記手続きを確実に進めることです。登記手続きにおいて誤りがあった場合、売買契約に基づく権利移転が適切に反映されず、将来的に法的な紛争が発生する可能性があります。そのため、司法書士は正確かつ迅速に登記申請を行い、登記事項の確認や書類の適正性を厳重にチェックする責任があります。
また、司法書士が双方代理を行う場合には、登記手続きにおいて利益相反が生じないように注意を払う必要があります。司法書士の業務は契約内容には関与しないものの、両当事者の信頼を損なわないように、公正かつ透明な手続きを行うことが求められます。
5. 結論
司法書士が不動産売買において売主と買主の双方の代理人として登記申請を行うことができるのは、登記手続きが契約内容に直接関与しないため、利益相反のリスクが低いからです。司法書士は、中立な立場で公正に登記手続きを行うことが求められ、登記申請における双方代理は、法律的に許容される例外として扱われています。
管理不全土地とは、所有者がいるにも関わらず適切に管理されていない土地を指し、周辺環境に悪影響を与えます。これに対処するため、法律では「管理不全土地管理人」制度が設けられており、土地の適正管理を促進し、地域社会や環境を保護するための措置を提供します。
目次
1. 管理不全土地の背景
2. 管理不全土地管理人の制度概要
3. 管理不全土地管理人の選任手続き
4. 管理不全土地管理人の権限と責任
5. 管理不全土地管理人の役割と課題
6. まとめ
1. 管理不全土地の背景
管理不全土地が発生する背景には、様々な要因が存在します。例えば、土地の所有者が高齢であったり、遠隔地に住んでいるために土地の管理が行き届かない場合、または土地の用途が不明確で活用されていない場合があります。特に、都市部では空き家や空き地が増加しており、地方部では放置された農地や森林が増え、これらの土地は適正に管理されないまま放置されることが多いです。
また、相続問題が絡む場合や、土地の所有者が複数名いる場合、相続手続きが未了で土地が無人状態となることもあります。これらの土地は周辺住民にとって景観や治安の悪化を招く可能性があり、放置されることによる公共の利益への影響が懸念されています。
2. 管理不全土地管理人の制度概要
管理不全土地管理人とは、土地の所有者が土地の管理を怠り、適切な管理が行われていない場合に、裁判所の命令により選任される人物です。管理不全土地管理人は、土地の所有者に代わって、その土地を適正に管理・運用する役割を担います。この制度は、所有者の不在や放置により公共の利益が損なわれることを防ぐため、土地の適正利用を促進する目的で設けられました。
管理不全土地管理人は、所有者が自ら管理する意志がない、または管理が困難な場合に、裁判所の許可を得て選任されます。選任された管理人には、土地の維持管理や清掃、賃貸契約の締結、必要に応じて売却の決定など、土地の適切な管理に必要な権限が与えられます。
3. 管理不全土地管理人の選任手続き
管理不全土地管理人の選任手続きは、裁判所に対して申立てを行うことで始まります。申立ては、土地の管理が不十分であり、地域社会に悪影響を与えていると認められる場合に行われます。例えば、周辺住民が土地管理不全による環境悪化や治安の悪化を訴える場合などが考えられます。
裁判所は申立てを受けて、管理不全土地の状態を確認し、その土地に対して管理人を選任する必要があるかどうかを判断します。選任される管理人は、法律に基づき、司法書士や弁護士などの専門家が選ばれることが多いです。管理人は、土地の適切な利用がされていない場合、その土地を賃貸したり、売却したりすることで、所有者の利益を守るとともに、公共の利益を最大化するよう努めます。
4. 管理不全土地管理人の権限と責任
管理不全土地管理人には、土地を適正に管理するための広範な権限が付与されます。管理人は、土地の清掃や保守、近隣住民との調整、賃貸契約の締結や土地の売却に関する手続きを行うことができます。また、所有者が相続放棄を行った場合や、管理権限を放棄した場合には、管理人が引き継ぐことになります。
一方で、管理人にはその行為に対する責任もあります。適切な管理を行わなかったり、法律に反する行為を行った場合、損害賠償責任を負うことになります。特に、管理不全土地が公共の利益に与える影響が大きいため、管理人は慎重に行動しなければなりません。
5. 管理不全土地管理人の役割と課題
管理不全土地管理人は、土地の適正な管理を確保し、地域の環境や治安を保つために重要な役割を果たします。しかし、実際の運用には課題も多く存在します。例えば、管理不全土地の所有者が遠隔地に住んでいる場合、管理人が適切に連絡を取ることが難しいことがあります。また、土地の売却や賃貸によって得られる収益が十分でない場合、管理にかかる費用をカバーできないこともあります。
さらに、管理不全土地が増加している現状において、管理人の選任に関する手続きや、管理不全土地の判定基準を整備することが求められています。特に、地方自治体との連携を強化し、効率的に土地を管理するための仕組みを構築することが重要です。
6. まとめ
管理不全土地管理人制度は、所有者が適切に管理を行わない土地に対して、適正な管理を促進するために設けられた重要な制度です。この制度を通じて、土地の放置や不適正な利用が地域社会や公共の利益に与える悪影響を最小限に抑えることができます。しかし、運用には課題も多く、効率的な運営を進めるためには、管理人の役割を強化し、地方自治体と連携した取り組みを進める必要があります。管理不全土地管理人の活動が効果的に行われることで、地域社会の健全な発展と環境の保全が実現されることが期待されています。
日本において、土地所有者が不明なまま放置されている「所有者不明土地」の問題は、近年深刻化しています。所有者が不明になる理由としては、相続手続きが未了であったり、長い間土地を使用していないことにより、所有者が誰であるか特定できなくなっているケースが挙げられます。このような土地は全国的に増加しており、公共事業の進行や地域の開発を妨げる要因となっています。このような状況を改善するため、法律上の措置として「所有者不明土地管理人」が重要な役割を果たします。
目次
1. 所有者不明土地問題の背景
2. 所有者不明土地管理人の制度概要
3. 所有者不明土地管理人の選任手続き
4. 土地管理人の権限と責任
5. 所有者不明土地管理人の役割と課題
6. まとめ
1. 所有者不明土地問題の背景
日本では、戦後の高度経済成長とともに都市化が進み、土地に対する需要が増加しました。しかし、時代の変化に伴い、相続の未処理や所有者が不在となる土地が増え、所有者が特定できないまま放置される土地が問題となっています。特に地方部では、相続人が都市部に移住して土地に関心を持たない場合や、複雑な相続関係により相続手続きが滞るケースが多く見受けられます。
土地の所有者が不明な状態では、公共事業や民間開発が進まないだけでなく、土地の利用や管理が適切に行われないため、環境問題や防災上のリスクも増大します。こうした背景の中で、所有者不明土地管理制度が整備され、土地の適正な管理が進められるようになりました。
2. 所有者不明土地管理人の制度概要
所有者不明土地管理人は、民法に基づいて設置されるもので、所有者不明の土地に対して必要な管理や処分を行う役割を担います。具体的には、所有者が不明のまま土地が放置されている場合、裁判所に申し立てを行い、土地管理人が選任されます。選任された土地管理人は、土地の維持や適正な利用に努めるとともに、場合によっては土地を売却し、管理費用の確保や、土地利用の活性化を図ります。
この制度は、土地が長期間にわたって放置されることによる不利益を回避するために設けられたもので、土地の有効活用を促進し、地域の発展や公共事業の円滑な遂行を支援する役割を果たします。
3. 所有者不明土地管理人の選任手続き
所有者不明土地管理人の選任は、主に土地が放置されていることにより不利益を被る利害関係者や行政機関が、裁判所に対して申し立てを行うことから始まります。裁判所は、申し立ての内容を審査し、必要があると判断した場合、適切な土地管理人を選任します。
土地管理人には、司法書士や弁護士など、法律の専門家が選任されることが多く、彼らが土地の管理・処分を行うことで、土地の適正な利用が図られます。管理人は、裁判所の監督下で業務を遂行し、所有者が判明した場合には、土地の返還手続きも行います。
4. 土地管理人の権限と責任
土地管理人には、土地の適正な管理を行うための広範な権限が付与されています。具体的には、土地の使用者と交渉し、賃貸契約の締結や、必要に応じて土地を売却することが認められています。また、土地の維持管理や環境整備のために必要な措置を講じる責任もあります。
一方で、管理人には厳格な責任も課されています。管理業務において過失があった場合や、不適切な処分を行った場合には、損害賠償責任が問われることがあります。そのため、管理人は裁判所の監督のもと、適正かつ慎重に業務を遂行する必要があります。
5. 所有者不明土地管理人の役割と課題
所有者不明土地管理人制度は、土地の放置問題に対処し、公共の利益を守るための重要な制度です。しかし、実際の運用においては課題も存在します。例えば、所有者不明土地の管理にかかる費用の負担や、管理人の選任までに時間がかかるケースがあることが指摘されています。また、管理人が土地を売却しても、その代金が所有者不明のままである場合、資金の保管や利用に関する問題も生じます。
さらに、所有者不明土地の数は今後も増加する可能性が高いため、管理人制度のさらなる強化や、管理にかかる費用の軽減策、迅速な選任手続きの整備が求められています。地方自治体や国との連携も重要であり、効率的な土地の利用促進に向けた取り組みが今後の課題となります。
6. まとめ
所有者不明土地管理人は、所有者不明の土地問題に対処するための制度として、土地の適正な管理と利用促進を目的に設けられた役割です。裁判所により選任された管理人が、土地の管理や処分を行うことで、放置された土地の問題解消に貢献します。しかし、制度運用には課題も多く、今後は管理体制の強化や手続きの迅速化が必要です。所有者不明土地の問題は地域社会全体に影響を及ぼすため、さらなる法整備や実務の改善が期待されます。
特別代理人は、通常の代理人と異なり、特定の状況において、特定の行為を行うために設置される代理人です。民法において代理人は、本人のためにその名義で行為をすることができる人物とされ、通常は本人の意思に基づいて行動しますが、特別代理人はその範囲が限定されることが特徴です。特別代理人が設置される主な場面は、利益相反の恐れがある場合や、特定の法的手続きに必要な場合です。
本稿では、特別代理人の設置される背景、役割、法律上の基盤、注意点について解説します。
目次
1. 特別代理人の役割と設置される場面
2. 特別代理人の設置基準
3. 特別代理人の役割
4. 特別代理人と通常の代理人との違い
5. 特別代理人の注意
6. まとめ
1. 特別代理人の役割と設置される場面
特別代理人は、主に以下のような状況で設置されます:
利益相反の場合: 例えば、親が子供の代理人になる場合など、代理人が代理権を行使することによって利益相反が発生する恐れがある場合に、特別代理人が必要とされることがあります。利益相反が発生すると、代理人が公平かつ適正に行動することが難しくなるため、第三者による監視が求められるのです。
未成年者や成年後見人の代理:未成年者が契約を結ぶ際に、親がその代理人となることが一般的ですが、その場合でも親が不正な利益を得る恐れがある場合、家庭裁判所が特別代理人を指定することがあります。また、成年後見制度においても、後見人が代理行為を行う際に利益相反の問題が生じる場合に特別代理人が選任されることがあります。
法定代理人の不在や不適格な場合:親が代理権を行使できない場合や、成年後見人が不適切な行動をした場合に、特別代理人が設置されることがあります。この場合、特別代理人は、法定代理人の業務を代行し、必要な手続きを進めます。
2. 特別代理人の設置基準
特別代理人は、主に家庭裁判所によって設置されます。設置の要件として、一般的に次の点が求められます:
利益相反の回避:代理人が行う行為が、代理人の私的利益と本人の利益が対立する可能性がある場合、特別代理人が選任されます。利益相反の問題がある場合、通常の代理人はその行為を適正に行うことが難しいため、第三者である特別代理人がその行為を担当します。
代理権の不適切な行使:代理人が本人の意思に反して行動したり、その行動が不適切であると判断された場合、家庭裁判所は特別代理人を指定して、代理行為を監視または修正することがあります。
必要な場合の指定:未成年者の契約や成年後見人の業務において、特別代理人が必要とされる場合、家庭裁判所は代理人を指定することができます。
3. 特別代理人の役割
特別代理人は、通常の代理人と異なり、特定の状況下でのみ代理権を行使します。特別代理人が行使する権限には次のような特徴があります:
権限の制限:特別代理人の権限は、一般的に限定的であり、任意の代理行為を行うことはできません。特別代理人が行うことができる代理行為は、家庭裁判所が指定した範囲内に限られます。例えば、未成年者の売買契約の代理を行う場合、その範囲や契約内容に対して厳密に管理されます。
公平性の確保:特別代理人の設置は、主に利益相反を回避し、代理人による不正な行為を防ぐことが目的です。特別代理人は、その名の通り特別な状況下で選任されるため、代理行為を行う際にはその公平性を確保し、本人の利益を最大限に守ることが求められます。
法的監督下での行動:特別代理人は、法的に監督された立場で行動することが求められます。家庭裁判所は、特別代理人が適正に代理行為を行っているかどうかを監督し、必要に応じて指導や修正を行います。
4. 特別代理人と通常の代理人との違い
通常の代理人と特別代理人との主な違いは、その設置の条件と権限にあります。通常の代理人は、基本的に本人の意思に基づき自由に行動しますが、特別代理人は、特定の状況においてのみ設置され、その行為には制限が設けられます。
設置の基準:通常の代理人は本人が自由に選任できますが、特別代理人は家庭裁判所によって選任されます。特別代理人の選任は、利益相反や法的監督が必要な状況に限定されます。
権限の範囲:通常の代理人は広範な代理権を持つ一方、特別代理人はその権限が限定的であり、特定の行為にのみ関与します。
監督の有無:特別代理人は家庭裁判所の監督下で行動し、適正に代理行為が行われるよう管理されますが、通常の代理人は監督を受けない場合がほとんどです。
5. 特別代理人の注意点
特別代理人を設置する際には、以下の点に注意が必要です:
選任の手続き:家庭裁判所による選任手続きが必要であるため、特別代理人を設置する際には法的な手続きが煩雑であり、時間がかかる場合があります。
権限の制限:特別代理人は、その権限が限られているため、契約や法的手続きを行う際には、その範囲内でのみ活動を行います。したがって、代理行為を行う際には、特別代理人がどの範囲で行動できるかを十分に確認することが重要です。
公正さと公平性:特別代理人は利益相反を回避するために設置されます。そのため、公正かつ公平に行動することが求められますが、その適正性を確保するために、家庭裁判所の監視が必要です。
6. まとめ
特別代理人は、利益相反や法的監督が必要な状況で設置される代理人であり、その権限は限られています。家庭裁判所の監督の下で行動し、特定の状況下でのみ代理行為を行います。
通常の代理人とは異なり、特別代理人はその設置基準や権限が厳格に制限されており、利益相反の回避や公平性の確保が主な目的です。
特別代理人の設置を検討する際には、その役割と責任を十分に理解し、法的な手続きを適切に進めることが求められます。
代理人とは、本人に代わって法律行為を行う権限を持つ者を指します。
代理制度は、本人が自ら行えない場合にその意思を実現するための法的手段であり、日常生活やビジネスの場面においても非常に重要な役割を果たしています。
本稿では、代理人の行為能力、権限の定めのない代理人の権限、法定代理人との違いについて解説します。
目次
1. 代理人の行為能力
2. 権限の定めのない代理人の権限
3. 法定代理人と任意代理人の違い
4. 代理制度の意義と今後の展望
5. 結論
1. 代理人の行為能力
代理人が本人に代わって行う行為を「代理行為」と呼びますが、代理行為が有効であるためには、代理人が一定の行為能力を有している必要があります。行為能力とは、法律行為を単独で有効に行う能力を指します。通常、行為能力の欠如は、未成年者や成年被後見人などに見られるため、これらの者が代理人として行為する場合には、行為の有効性が問題となることがあります。
1.1 未成年者の代理行為
未成年者が代理人として行為を行う場合、その行為能力に制限があるため、代理行為の有効性について慎重に考慮する必要があります。たとえば、未成年者が自分の法定代理人として、財産を処分するような重要な行為を行う場合、親権者や保佐人の同意が必要となることが多いです。しかし、日常的な行為であれば、未成年者でも有効に代理行為を行える場合があります。
1.2 成年被後見人の代理行為
成年後見制度の下で、行為能力が制限されている成年被後見人が代理人として行為を行う場合、その行為は無効となることがあります。成年後見人の選任などにより、本人に代わって法律行為を行う必要がある場合には、適切な法定代理人を選任することが求められます。
2. 権限の定めのない代理人の権限
代理人の権限は、原則として本人から与えられた範囲内で行使されます。しかし、代理人の権限が明確に定められていない場合、その代理人がどの程度の権限を持っているのかが問題となります。このような場合、代理人の行為がどの範囲で有効かについて、法的な考慮が必要です。
2.1 権限の黙示的な設定
権限が明示されていない代理人については、一般的に黙示の権限が認められる場合があります。黙示の権限とは、代理人が特定の法律行為を行うために必要不可欠な範囲で認められる権限のことを指します。たとえば、売買契約を締結する代理人が契約に必要な条件交渉を行うことは、通常、黙示的に許される行為とされます。
2.2 代理権の濫用
一方で、代理人が与えられた権限を超えて行為を行った場合や、本人の利益に反する行為を行った場合、その行為は無効となる可能性があります。これを代理権の濫用と呼びます。代理権の濫用が認められる場合、本人は代理人の行為に対して責任を負わず、行為の結果を無効にすることができます。
3. 法定代理人と任意代理人の違い
代理には大きく分けて、法定代理人と任意代理人の2種類があります。両者は、代理権が発生する理由や権限の範囲において異なります。
3.1 任意代理人
任意代理人とは、本人が自らの意思で選任し、特定の権限を与える代理人のことを指します。任意代理の典型的な例としては、弁護士や司法書士が本人に代わって手続きを行う場合などが挙げられます。任意代理人の権限は、本人が与えた範囲内で行使されるため、契約書や委任状などで代理権の範囲を明示することが一般的です。
3.2 法定代理人
一方、法定代理人とは、法律によって自動的に選任される代理人のことを指します。法定代理人の代表的な例としては、未成年者の親権者や成年後見人が挙げられます。法定代理人は、本人の意思に関係なく、法律の規定に基づいて選任されるため、本人が同意しなくても代理行為を行うことができます。
法定代理人は、本人の権利や財産を保護するために設けられており、その権限は広範囲に及びます。たとえば、未成年者の親権者は、未成年者の財産管理や契約締結など、本人に代わって多くの法的行為を行うことができます。
3.3 法定代理人と任意代理人の違い
法定代理人と任意代理人の大きな違いは、代理権の発生原因と権限の範囲にあります。法定代理人は、法律に基づいて自動的に代理権が発生し、本人の意思とは無関係に代理行為を行うことができます。一方、任意代理人は、本人が自らの意思で選任し、特定の行為に限定された代理権を行使します。
また、法定代理人の権限は、未成年者や成年被後見人など、本人の行為能力が制限されている場合に広範囲に及び、本人の財産や権利を包括的に保護するために設けられています。一方、任意代理人の権限は、特定の法律行為に限定される場合が多く、本人が行いたい行為に応じて委任されます。
4. 代理制度の意義と今後の展望
代理制度は、本人が自ら行うことができない法律行為を代理人に任せることによって、円滑な法律行為の遂行を可能にする重要な制度です。特に、高齢化社会において、判断能力が低下した高齢者が増加している現状では、法定代理人や任意代理人の役割がますます重要になっています。
今後は、代理人制度の利用がますます広がることが予想され、特に成年後見制度や任意後見制度の利用が進むと考えられます。代理人の選任に際しては、本人の権利や財産を保護しつつ、信頼性の高い代理人を選定することが求められます。
5. 結論
代理人は、本人に代わって法律行為を行う重要な役割を果たしており、代理権の行使には行為能力や権限の範囲が問題となります。
特に、法定代理人と任意代理人の違いを理解し、代理制度の適切な運用が必要です。
「不在者財産管理人」(ふざいしゃざいさんかんりにん)は、居場所が分からなくなっている人(不在者)の財産を保護し、適切に管理するために、家庭裁判所が選任する法的な役割を担う者です。長期間にわたって所在不明である場合、本人の財産が損なわれたり、権利が不利益を被ることを防ぐために、この制度が設けられています。以下では、不在者財産管理人の概要、選任方法、権限、役割、具体的な事例、制度の課題と今後の展望について説明します。
目次
1. 不在者財産管理人の概要
2. 不在者財産管理人の選任方法
3. 不在者財産管理人の権限と義務
4. 具体的な事例
5. 制度の課題と展望
6. 結論
1. 不在者財産管理人の概要
1.1 役割の定義
不在者財産管理人とは、長期間所在不明の人の財産を管理し、保全するために家庭裁判所が選任する人物を指します。対象となる「不在者」とは、失踪宣告を受けたわけではないが、居場所が分からなくなっている人のことです。例えば、急に連絡が取れなくなった親族や、外国に渡航したまま長期間音信不通になっているケースなどが該当します。
1.2 制度の必要性
不在者の財産は、本人が不在の間にも維持管理が必要です。例えば、不在者が所有している不動産は管理が必要であり、固定資産税の支払いなども発生します。また、不在者が賃貸物件を所有している場合は、賃料の管理や建物の維持修繕も行わなければなりません。さらに、契約上の権利や義務がある場合、適切に対応しなければ法的トラブルが発生する恐れがあります。このような状況で、不在者財産管理人は不在者の代わりにこれらの業務を遂行します。
2. 不在者財産管理人の選任方法
2.1 申し立て
不在者財産管理人は、親族や利害関係者(例えば、債権者や共同所有者など)が家庭裁判所に申し立てを行うことで選任されます。申し立てには、不在者が所在不明である事実や、財産管理が必要である理由を示す証拠が求められます。
2.2 裁判所の判断
家庭裁判所は、申し立て内容を審査し、適切と判断されれば不在者財産管理人を選任します。選任される人物は、不在者の親族や信頼できる第三者が多く、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。
2.3 任務の開始
不在者財産管理人に選任されると、裁判所の監督のもとで不在者の財産を管理する責任を負います。具体的には、銀行口座の管理、不動産の管理、契約の履行、債務の支払いなどを行います。
3. 不在者財産管理人の権限と義務
3.1 権限
不在者財産管理人の権限は、家庭裁判所が定めた範囲内で行使されます。例えば、不動産の売却や大規模な契約変更などの重要な財産処分行為は、事前に家庭裁判所の許可が必要です。一方で、日常的な財産管理や維持費の支払いなど、通常の財産管理に関する権限は、管理人が単独で行うことができます。
3.2 義務
不在者財産管理人には、管理する財産を適切に保全し、不利益が生じないようにする義務があります。また、家庭裁判所に定期的に報告を行い、管理状況や財産の現状について監督を受けます。不正や怠慢があった場合、管理人は責任を問われることがあります。
4. 具体的な事例
4.1 不在者が賃貸物件を所有している場合
不在者が賃貸物件を所有している場合、財産管理人は、賃料の徴収や建物の維持修繕を行い、契約が適切に履行されるように管理します。また、賃借人とのトラブルが発生した際には、その対応も行います。
4.2 銀行口座の管理
不在者が銀行口座を持っている場合、財産管理人はその口座を管理し、必要な支払いを行う権限があります。例えば、ローンの返済や税金の支払いなどが滞らないように、口座残高の管理を行います。
4.3 不在者が共同所有している財産の処分
不在者が共同で所有している財産がある場合、他の所有者が財産を処分したいと考えた際には、不在者財産管理人が代わりに処分に関与することがあります。例えば、共同所有の土地を売却する際に、不在者の権利を守りながら処分手続きを進めます。
5. 制度の課題と展望
5.1 課題
不在者財産管理人制度には、いくつかの課題があります。まず、財産管理人に選任される手続きが時間と費用を要することが挙げられます。また、管理人が選任されるまでに財産の管理が行われないため、その間に財産の価値が下がったり、損失が発生するリスクも存在します。さらに、不在者が帰還した場合、財産管理人が行った財産処分に対して不在者が異議を申し立てる可能性もあり、これがトラブルにつながることもあります。
5.2 今後の展望
不在者財産管理人制度は、現代の社会において重要な役割を果たしています。特に、高齢化社会において、家族が遠く離れて暮らしているケースや、海外に長期滞在する人々が増加している中で、不在者の財産を適切に管理する制度の需要が高まっています。今後は、制度の簡略化や迅速な手続きの導入などが検討されることで、より多くの人々が安心して利用できる制度となることが期待されています。
6. 結論
不在者財産管理人は、長期間所在不明となっている人の財産を保護し、適切に管理する重要な制度です。
この制度によって、不在者の権利が守られ、財産の損失が防がれますが、手続きの複雑さや管理期間中の責任に関する課題も存在します。
今後は、より簡便で利用しやすい制度としての改善が期待されます。
後見監督人は、成年後見制度における重要な役割を担う人物であり、成年後見人の行為を監督し、適正な運用がなされるように支援する役割を果たします。この制度は、精神的な障害などにより判断能力が不十分な成人(被後見人)を保護するために設けられたもので、後見人は被後見人の財産管理や生活支援を行います。しかし、後見人が自己の利益を優先する場合などの不正を防止し、被後見人の利益を守るために、後見監督人の設置が必要とされることがあります。本稿では、後見監督人の役割、設置の要件、職務内容などについて詳述します。
目次
1. 後見監督人の役割
2. 後見監督人の設置要件
3. 後見監督人の選任基準
4. 後見監督人の職務内容
5. 後見監督人の注意点
6. まとめ
1. 後見監督人の役割
後見監督人は、成年後見人がその職務を適切に遂行しているかどうかを監督する役割を担っています。後見人は被後見人の財産や生活に関する決定を行いますが、その行為が被後見人の利益に適っているかを確認し、必要に応じて指導や助言を行います。後見監督人は、後見人が不正行為を行わないように監視し、もし問題があれば、裁判所に報告する義務を負います。
後見監督人の主な役割は以下の通りです:
後見人の行為監督:後見人が被後見人の財産を適切に管理し、生活を支援しているかを監督します。財産管理においては、不正な使い込みや不適切な投資を防ぐために定期的にチェックを行います。
不正行為の防止:後見人が被後見人の利益を損なうような行為を行わないように監督します。もし後見人が不正を行っている場合、後見監督人はその問題を家庭裁判所に報告し、対処を求めます。
報告義務:後見監督人は定期的に家庭裁判所に報告書を提出し、後見人の業務が適正に行われているかどうかを伝えます。報告書には、後見人の財産管理や生活支援の状況が含まれます。
2. 後見監督人の設置要件
後見監督人は、原則として、家庭裁判所によって選任されます。後見監督人の設置が求められる場面は以下のような場合です:
成年後見人の任命時:成年後見人が任命されるとき、家庭裁判所は後見監督人を同時に選任することがあります。特に、後見人が家族であった場合や、後見人に財産管理の実績が少ない場合、後見監督人の設置が求められることがあります。
後見人の行為に疑念が生じた場合:後見人の行為に不正が疑われる場合や、被後見人の利益が損なわれている可能性がある場合には、家庭裁判所は後見監督人を設置し、監督を強化することがあります。
被後見人の要求:被後見人自身が後見人の行為に不満を抱いている場合、家庭裁判所に後見監督人の設置を申し立てることができます。これにより、被後見人が不安を感じることなく後見制度を利用できるようになります。
3. 後見監督人の選任基準
後見監督人は、家庭裁判所によって選任されますが、その選任基準には以下の点が考慮されます:
適任者の選定:後見監督人は、後見人の行為を適切に監督できる人物でなければなりません。通常、法律的な知識や実務経験が豊富で、後見人に対して公正に監視できる人物が選ばれます。
第三者の立場:後見監督人は、後見人と利害関係がない第三者であることが求められます。これにより、公正な立場から後見人の業務を監督することができます。
家族以外の人物:後見監督人は、原則として後見人と同じ家庭内の人物であってはいけません。これにより、後見人が家族内で利益相反の問題を生じさせることを防ぎます。
4. 後見監督人の職務内容
後見監督人の主な職務内容は、以下のようになります:
後見人の報告書の確認:後見監督人は、後見人から提出される報告書を定期的に確認し、その内容が適切であるかを判断します。特に、財産の管理状況や使途について詳細に確認します。
被後見人との面談:後見監督人は、必要に応じて被後見人と面談し、後見人の業務が被後見人の利益を守る形で行われているかを確認します。
後見人の行動の監視:後見監督人は、後見人が行う財産管理や契約行為を監視します。後見人が不正に被後見人の財産を処分したり、不当な利益を得たりしていないかを監視します。
裁判所への報告:後見監督人は、後見人の業務が適正に行われていない場合、その旨を家庭裁判所に報告し、必要な措置を求めることができます。また、適正に業務が行われている場合でも、その結果を家庭裁判所に報告する義務があります。
5. 後見監督人の注意点
後見監督人には、後見人の行為を監督する重要な責任が伴います。監督を行う際には以下の点に注意する必要があります:
適切な監視:後見監督人は、後見人の業務を適切に監視しなければなりません。そのためには、定期的に後見人からの報告書を精査し、必要な場合には被後見人と面談を行うなどして、実際の状況を把握することが求められます。
中立的な立場:後見監督人は、中立的な立場で監督を行わなければならず、後見人と被後見人の両者の利益を公平に守ることが求められます。
法的責任:後見監督人が監督を怠ったり、不適切な報告を行ったりした場合、その責任を問われることがあります。したがって、後見監督人は慎重に職務を遂行する必要があります。
6. まとめ
後見監督人は、成年後見制度において後見人が適正に職務を行うかどうかを監視する重要な役割を果たします。その設置は、主に家庭裁判所によって行われ、後見人が利益相反の状況を回避し、被後見人の利益を最大限に守ることを目的としています。後見監督人は、中立的な立場で後見人の業務を監督し、報告義務を負い、必要に応じて家庭裁判所に報告を行います。適切な監督が行われることによって、被後見人が安心して生活できる環境を提供することが可能になります。お金が関係しますので、ご本人にとってより安心できる財産管理ができるようにする仕組みでもあります。
「後見人」「保佐人」「補助人」は、認知能力の低下や精神的な障害により、日常生活や財産管理に支障をきたしている人々を支援するために設けられた法的な支援者です。
これらは成年後見制度(せいねんこうけんせいど)と呼ばれる制度に基づいており、支援の程度や内容が異なります。
以下では、各役割の違いとその機能、選任方法、権限と義務、具体的な役割について詳しく説明します。
目次
1. 後見人(こうけんにん)
2. 保佐人(ほさにん)
3. 補助人(ほじょにん)
4. 制度の選択と運用
結論
1. 後見人(こうけんにん)
1.1 概要
後見人は、認知症や精神的障害、知的障害などによって判断能力がほとんどない人(被後見人)を支援する役割を果たします。成年後見制度の中でも、最も強い支援を提供する位置づけです。後見人は、主に財産管理や日常生活の様々な決定を被後見人に代わって行います。
1.2 選任方法
後見人は、家庭裁判所の申し立てによって選任されます。親族や市町村などが申し立てを行い、裁判所が適任者を後見人として選任します。後見人には、被後見人の親族が選ばれることもあれば、専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士など)が選ばれることもあります。
1.3 権限と義務
後見人は、被後見人の財産全般を管理し、必要な契約の締結や支払い、収入の管理を行います。また、被後見人の生活を守るため、住居や介護サービスの選定、医療機関への入院手続きなども行うことができます。後見人には、被後見人のために誠実に行動しなければならない義務があり、財産を適切に管理する責任があります。
1.4 利点と課題
後見人の利点は、判断能力が著しく低下している人を総合的にサポートできる点です。一方で、後見制度は利用する際に費用がかかることがあり、また被後見人の自由が制約される面もあります。
2. 保佐人(ほさにん)
2.1 概要
保佐人は、判断能力が著しく不十分であり、後見ほどではないが、日常的な財産管理や法律行為に支障をきたしている人(被保佐人)を支援します。後見人と比べると、支援の範囲はやや限定されますが、重要な契約や財産の処分に関しては、保佐人の同意が必要とされます。
2.2 選任方法
保佐人も家庭裁判所によって選任されます。親族や市町村が申し立てを行い、裁判所が被保佐人の利益を考慮して選びます。後見人と同様に、専門職が選任されることもあります。
2.3 権限と義務
保佐人の役割は、被保佐人が単独で行うと不利益を被る可能性がある法律行為に対して同意を与えることです。具体的には、高額な財産の処分や借入契約、保証契約などが該当します。保佐人の同意がないままこれらの行為を行うと、無効となる場合があります。また、裁判所の許可を得ることで、より広範な財産管理を行うことが可能です。
2.4 利点と課題
保佐人の制度は、判断能力が部分的に低下している人に対して柔軟な支援を提供する点で有効です。ただし、後見制度と同様、利用には費用がかかることや、手続きが複雑であることが課題です。
3. 補助人(ほじょにん)
3.1 概要
補助人は、判断能力が不十分であり、一部の法律行為に支援が必要な人(被補助人)を支えるために選任されます。後見や保佐に比べて、支援の範囲がさらに限定されており、被補助人が単独で行える範囲が広く残されます。
3.2 選任方法
補助人の選任も家庭裁判所によって行われますが、被補助人本人の同意が必要です。被補助人がどのような支援を必要とするかについて、本人の意思を尊重して決定されるため、柔軟な運用が可能です。
3.3 権限と義務
補助人の役割は、被補助人が特定の法律行為を行う際に、その行為を支援することです。補助人の権限は、裁判所が定めた範囲に限られ、補助人の同意が必要な行為が限定されます。被補助人は基本的には自分で日常生活を営むことができるため、補助人の関与は最小限に抑えられます。
3.4 利点と課題
補助人制度の利点は、判断能力が部分的にしか低下していない人に対して、必要な支援だけを提供することで、本人の自立を尊重できる点です。一方で、支援が必要な範囲が限られているため、財産管理や法律行為においてトラブルが発生するリスクも残ります。
4. 制度の選択と運用
成年後見制度は、後見人、保佐人、補助人という三つの形態によって、判断能力が低下した人々に対して、状況に応じた柔軟な支援を提供する仕組みとなっています。これらの制度は、本人の判断能力や支援の必要性に応じて適切に選択されるべきです。
4.1 制度の利用状況
日本では、近年、認知症の高齢者が増加していることから、成年後見制度の利用が増加しています。特に後見制度の利用が多く、裁判所によって選任された後見人が被後見人の財産管理や日常生活を支援しています。一方で、補助制度や保佐制度の利用は比較的少なく、今後の普及が期待されています。
4.2 課題と今後の展望
成年後見制度には、手続きの複雑さや費用の問題が指摘されています。特に専門職後見人に依頼すると費用が高額になるため、家族が後見人や保佐人、補助人として選任される場合が多いです。しかし、家族が支援者として選任される場合、財産の管理や生活支援が適切に行われないリスクもあるため、専門家のサポートが求められる場面もあります。
また、制度の利用に対する知識不足や抵抗感から、必要な支援を受けていない人も多いとされています。今後は、成年後見制度の普及啓発とともに、より簡便な手続きや負担軽減策が検討されることが期待されます。
結論
後見人、保佐人、補助人は、判断能力が低下した人々を支援するための重要な法的役割を担っています。
それぞれの制度は、支援を受ける本人の状況に応じて選ばれ、適切なサポートを提供することが求められます。
まずは、ご本人の状況を確認し、医師等の判断を仰ぎましょう。
「相続財産清算人」とは、相続が発生した場合において、特に相続人が存在しない場合や相続放棄がなされた場合に、相続財産を整理・清算するために選任される人物です。
相続財産清算人は、相続財産の管理や処分を行い、債権者への弁済や残余財産の処理を担当します。遺言執行者とは異なり、相続人不在や放棄など特殊なケースで登場する役割です。
以下では、その役割や選任手続き、権限、責任について説明します。
目次
1. 相続財産清算人の必要性
2. 相続財産清算人の選任
3. 相続財産清算人の役割と権限
4. 相続財産清算人の責任
5. 報酬について
6. 相続財産清算人と遺言執行者の違い
7. 相続財産清算人の選任を避けるための対策
結論
1. 相続財産清算人の必要性
通常、相続が発生すると、相続人が遺産を受け継ぎ、財産の分配や管理を行います。しかし、次のような場合には相続財産清算人が必要になります:
①相続人がいない場合:被相続人(亡くなった人)に法定相続人がいない場合、遺産を管理し、適切に処理する者が存在しません。このような場合、遺産の放置を避け、債権者の権利を守るために清算人が必要です。
➁相続放棄がなされた場合:相続人が全員相続を放棄した場合、相続財産は誰の所有にもならない「無主物」となり、管理する者がいなくなります。これを防ぐために、家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、財産を整理・清算します。
③相続人が不明な場合:相続人が誰であるか判明していない場合や、遺産分割協議が成立しない場合も、相続財産清算人が選任され、遺産の適切な処理が行われます。
2. 相続財産清算人の選任
相続財産清算人は、家庭裁判所によって選任されます。相続人がいない場合や全員が相続放棄をした場合、利害関係者(例えば債権者や相続財産の受益者)が家庭裁判所に申立てを行い、その結果、裁判所が適任者を清算人として指名します。
選任される人物は、必ずしも相続人や親族である必要はなく、専門家(弁護士や司法書士など)が選ばれることが多いです。特に遺産が多岐にわたる場合や、債権債務が複雑なケースでは、法的知識を持つ専門家が選任されることが推奨されます。
3. 相続財産清算人の役割と権限
相続財産清算人は、相続財産を整理し、債務を弁済し、最終的に残余財産があればこれを国庫に帰属させるための一連の手続きを担当します。主な役割は以下の通りです:
①財産の管理:相続財産を適切に管理し、その価値を維持します。これは不動産の保全や、金融資産の管理、その他の財産の維持・管理を含みます。
➁債務の精算:被相続人に残された債務を確認し、債権者に対して適切に弁済します。この際、財産が債務を超えているかどうかの確認が重要です。
③財産の換価処分:必要に応じて、不動産や動産を売却し、その代金を債務の弁済に充てます。財産の処分は清算手続きの中で重要な業務の一つです。
④最終的な財産の処理:債務が全て弁済された後、残余の財産があれば、これを最終的に国庫に帰属させる手続きを行います。相続人がいない場合、最終的な財産は国のものとなります。
相続財産清算人は、これらの業務を行うにあたり、相続財産に関して広範な権限を持ちます。具体的には、財産の売却、債権債務の整理、法的手続きの進行などを、裁判所の許可や相続人の同意を得ずに進めることができます。
4. 相続財産清算人の責任
相続財産清算人には、財産の適切な管理と処理を行う法的義務があります。業務を怠った場合や、不適切な処理を行った場合、損害賠償責任を負うことがあります。例えば、財産の価値を適切に保全できず、相続財産が減少した場合や、債権者への弁済が不適切であった場合には、清算人が責任を問われる可能性があります。
また、相続財産清算人は業務を透明かつ誠実に行う必要があり、利害関係者への報告義務も伴います。債権者やその他の利害関係者に対して、進捗状況や財産の処理内容を定期的に報告することで、清算手続きの透明性を確保します。
5. 報酬について
相続財産清算人には、その業務に対して報酬が支払われます。報酬額は相続財産の規模や清算業務の難易度に応じて決められます。具体的には、家庭裁判所が相続財産から報酬を支払うことを認める場合が多く、清算人の労力や時間に見合った額が考慮されます。
6. 相続財産清算人と遺言執行者の違い
相続財産清算人と遺言執行者は、いずれも相続に関連する財産の管理や処理を行う役割ですが、その目的や背景には明確な違いがあります。
遺言執行者:遺言に従い、遺産を相続人に分配することを主な目的としています。遺言に基づく法的手続きを遂行するため、相続人が存在し、相続人間の遺産分割が主な業務です。
相続財産清算人:相続人がいない、または全員が相続を放棄した場合に、財産を清算し、債務を処理することが目的です。最終的に残った財産は国庫に帰属させます。
7. 相続財産清算人の選任を避けるための対策
相続財産清算人を必要とする状況を避けるためには、被相続人が生前に適切な相続対策を行うことが重要です。例えば、遺言書の作成や、相続人がいない場合の財産の帰属先を明確にすることが挙げられます。また、生前贈与や遺言寄付を活用することで、遺産が放置されるリスクを回避できます。
※相続財産の清算手続きには、清算人の選任を申し立てる際に、予納金(数十万円から約100万円)が必要になります。そのため、債権者等の利害関係人がいない限り、相続財産が放置状態になる可能性が非常に高いため、生前の対策が重要になるのです。
結論
相続財産清算人は、相続人がいない場合や相続放棄がなされた場合に、相続財産を適切に管理・処分するために選任される重要な役割です。
財産の清算や債務処理を通じて、利害関係者の権利を守るとともに、社会的な混乱を防ぐために存在します。信頼できる清算人が選任され、透明かつ適切に業務を行うことが、相続財産の健全な処理を確保する鍵となります。
「遺言執行者」とは、遺言の内容を確実に実現するために選任される人物で、遺言者の意思を尊重し、財産の分配や手続きを行います。遺言執行者は、遺言の実行を監督し、法的に決められた役割を果たす重要な立場です。
目次
1. 選任方法
2. 役割と義務
3. 遺言執行者の権限と責任
4. 報酬について
5. 遺言執行者の辞任や解任
結論
1. 選任方法
遺言執行者は、遺言書内で指名される場合が一般的ですが、遺言書に指名がなければ、相続人や利害関係者が家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が適任者を選任することもあります。
遺言執行者には特定の資格が求められませんが、弁護士や司法書士など、法的知識を持つ専門家が選ばれることが多いです。特に、財産が多岐にわたる場合や、相続人間で意見の対立が予想される場合には、専門家を選任するのが望ましいとされています。
2. 役割と義務
遺言執行者の主な役割は、遺言書に記載された内容に基づき、財産の分配を行うことです。具体的には、以下のような業務を行います:
遺言書の検認手続きの開始
財産目録の作成
相続財産の管理
遺産の分配および移転登記手続き
特定の相続人に財産を引き渡すための準備
債務の弁済
これらの手続きを適切に行うためには、遺言執行者は相続財産の現状を把握し、法的な手続きに従って相続人や利害関係者に報告する義務を負います。
特に、遺産が不動産や金融資産、企業の株式など多岐にわたる場合、これらを適切に管理し、分配するための法的な手続きが求められます。
3. 遺言執行者の権限と責任
遺言執行者は、相続財産に関して広範な権限を持っています。
例えば、相続財産の売却や管理、分配に関する手続きを自ら行うことができ、これには相続人の同意が必要ない場合もあります。ただし、執行者の行動は遺言の内容に厳密に従う必要があり、その権限を越えて行動することはできません。
また、遺言執行者は、遺言の執行に関して適切に職務を果たさない場合、相続人や利害関係者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
たとえば、財産の管理や分配が不適切であった場合、執行者の不注意や故意による損失があったと認められると、責任を追及されることがあります。そのため、遺言執行者には高度な信頼性と誠実さが求められます。
4. 報酬について
遺言執行者は、通常その業務に対して報酬を受け取ることができます。
遺言書に具体的な報酬が記載されている場合、その額に従いますが、記載がない場合には、相続財産の規模や業務内容に応じて適正な報酬が支払われます。
報酬額については、相続人や家庭裁判所が調整することもあります。
5. 遺言執行者の辞任や解任
遺言執行者は、やむを得ない事情がある場合や、職務を遂行できない理由がある場合には、辞任することができます。
この場合、家庭裁判所に辞任の許可を申請する必要があります。
また、相続人や利害関係者が、執行者が職務を適切に果たしていないと判断した場合、家庭裁判所に解任を申し立てることができます。
6. 遺言執行者の選任の必要性
すべての遺言書に遺言執行者が必要なわけではありません。
たとえば、財産の分割や移転手続きがシンプルな場合には、相続人自身でこれらの手続きを行うことができます。
しかし、遺言の内容が複雑であったり、相続人間での争いが予想される場合、遺言執行者を選任することで、相続手続きがスムーズに進むことが期待されます。特に、遺産分割協議が必要ない場合や、特定の相続人に財産を特定して相続させる場合には、遺言執行者が重要な役割を果たします。
7. 遺言執行者を選任する際の注意点
遺言執行者を選任する際には、信頼できる人物や専門知識を持つ人物を選ぶことが重要です。
信頼できる親族や友人がいない場合には、専門家に依頼することも考慮すべきです。
また、遺言執行者には、法的な手続きに対応できるだけでなく、相続人間の調整や紛争解決の役割も期待されるため、その人物の人格や能力も重要な要素となります。
結論
遺言執行者は、遺言の内容を正確に実行し、遺言者の意思を尊重する重要な役割を担います。信頼できる人物や専門知識を持つ人物を選任することで、相続手続きが円滑に進む可能性が高まり、相続人間の紛争を未然に防ぐことも期待されます。しかし、信頼できる方が亡くなってしまっている場合や、専門家にした場合、コストがかかるなどのデメリットもあります。そういった場合には、受遺者(遺産を受け取る方)を遺言執行者として、専門家を代理人として委任することでも執行は可能です。まずは専門家にご相談を。
「破産管財人」とは、破産手続きにおいて、破産者(債務者)の財産を管理し、その財産を清算して債権者に分配する役割を担う者です。破産管財人は、裁判所によって選任され、破産手続きの中核的な役割を果たします。以下では、破産管財人の役割、選任方法、権限と義務、責任、報酬、破産管財人が果たす重要性について説明します。
目次
1. 破産管財人の役割
2. 破産管財人の選任方法
3. 破産管財人の権限と義務
4. 破産管財人の責任
5. 破産管財人の報酬
6. 破産管財人の役割の重要性
結論
1. 破産管財人の役割
破産手続きの目的は、債務者が抱える債務を適切に整理し、債権者に公平に分配することです。この手続きを効率的かつ公正に進めるために、破産管財人が選任されます。破産管財人の主な役割は以下の通りです。
財産の管理: 破産管財人は、破産者の財産を管理し、適切に保全します。これには、不動産や動産、預金口座などの資産を確保し、破産者が財産を隠匿したり、不正に処分したりすることを防ぐための管理措置を講じることが含まれます。
財産の換価処分: 破産者の財産は、債権者に分配するために売却や処分が必要です。破産管財人は、財産を適切に売却し、その代金を債権者に分配するための準備を行います。この際、市場価値を考慮して最大限の利益を得るよう努めます。
債権者への分配: 財産を換価処分した後、破産管財人は債権者に対して、債権額に応じて公平に分配します。全額を弁済することができない場合も、公平な配分が行われるよう調整します。
破産者の調査: 破産管財人は、破産者の財産状況や債務状況を詳しく調査します。これは、財産隠匿や不正な行為を発見し、破産手続きを適切に進めるために重要です。破産者の過去の取引履歴や資産の流れを追跡し、不正があれば法的手段を講じます。
債権者集会の開催: 破産管財人は、債権者集会を開き、債権者に対して破産手続きの進行状況や財産の処分状況を報告します。この集会は、債権者が破産手続きについて情報を得る機会であり、管財人の説明を受けて意見を述べることができます。
2. 破産管財人の選任方法
破産管財人は、破産手続きの開始決定とともに裁判所によって選任されます。破産手続きには通常、弁護士が破産管財人として選ばれることが一般的です。弁護士が選ばれる理由は、破産手続きに関わる法的な問題を適切に処理し、公平かつ迅速に手続きを進めるためです。
裁判所は、破産者の財産規模や手続きの複雑さに応じて、適任者を破産管財人として選任します。また、破産管財人には中立的かつ公正な立場が求められるため、破産者や債権者と利害関係のない者が選ばれます。
3. 破産管財人の権限と義務
破産管財人は、破産手続きの中で幅広い権限を持ち、さまざまな義務を負います。主な権限と義務は以下の通りです。
財産の管理権限: 破産管財人は、破産者の財産に対して管理権を持ちます。破産者の財産を調査し、破産財団に含まれる財産を確定し、それを適切に処分する権限があります。破産者本人は、破産管財人の許可なしに財産を処分したり、利用したりすることができません。
債権者への報告義務: 破産管財人は、手続きの進行状況や財産の処分結果を債権者に報告する義務を負います。債権者集会において、破産管財人は手続きの詳細を説明し、債権者の質問に答える必要があります。
破産者の協力義務の確保: 破産者は、破産管財人に対して財産状況の報告や必要な資料の提出を行う義務があります。破産管財人は、破産者がこの義務を果たすように促し、協力が得られない場合には法的手段を講じることができます。
4. 破産管財人の責任
破産管財人は、財産の管理や処分にあたって誠実かつ慎重に業務を行う義務を負います。破産管財人がその職務を怠った場合や、不正を行った場合には、損害賠償責任を負うことがあります。たとえば、財産の処分において適正な市場価値を無視して低価格で売却した場合や、債権者への分配が不適切だった場合など、債権者や利害関係者に損害を与えた場合には責任を問われます。
また、破産管財人は、財産の隠匿や破産者による不正行為を見逃すことがないよう、慎重に調査を行う責任があります。不正が発覚した場合には、破産者を法的に追及し、財産を回収するなどの対応をとります。
5. 破産管財人の報酬
破産管財人には、その業務に対して報酬が支払われます。
報酬額は、破産手続きの複雑さや破産者の財産規模に応じて裁判所が決定します。通常、破産財団の中から報酬が支払われますが、財産が少ない場合や報酬が十分に確保できない場合には、国家が負担する場合もあります。
6. 破産管財人の役割の重要性
破産管財人は、破産手続きの公正性と円滑な進行を保証するために非常に重要な役割を果たします。破産手続きは、債権者と債務者の利益が対立する複雑な問題を含んでおり、管財人が中立的かつ専門的な立場で関与することで、債権者に対する公平な分配が実現されます。
また、破産管財人は、破産者の財産を適切に管理することで、破産手続きの不正行為や財産の隠匿を防ぎ、破産者が社会に再び参加できるよう支援する役割も担っています。破産者が財産隠匿などを行った場合には、厳正に対処し、不正行為があれば法的手続きを通じて責任を追及することが求められます。
結論
破産管財人は、破産手続きにおいて重要な役割を果たし、破産者の財産を管理・処分して債権者に公平に分配する責任を負います。
破産管財人の適切な業務遂行によって、破産手続きが公正かつ迅速に進行し、債権者や破産者の権利が守られることが期待されます。
民法第921条は、相続における法定単純承認の概念を規定しており、相続人が故人の債務を承認することで発生する法的効果を示しています。法定単純承認は、債務者(被相続人)の死後に、相続人が遺産を承認することによって、その債務の消滅時効が中断するという重要な役割を果たします。
本稿では、民法第921条を中心に法定単純承認の概念、要件、及びその法的効果について詳しく説明します。
目次
1. 法定単純承認の概要(民法第921条)
2. 法定単純承認の発生要件
3. 法定単純承認の法的効果
4. 法定単純承認を避けるための方法
5. 法定単純承認と時効
6. まとめ
1. 法定単純承認の概要(民法第921条)
民法第921条では、相続人が被相続人の遺産を承認することで、その債務について単純承認が成立することを規定しています。この単純承認とは、相続人が被相続人の遺産の一部または全てを承認する行為を指し、この行為によって債務の消滅時効が中断し、相続人がその債務を負うことになります。
具体的には、相続人が遺産を受け入れる意思を示すこと、または遺産を管理することによって、その時効が中断されるとされます。これにより、相続人は故人の債務についての責任を引き継ぎ、消滅時効が進行しないことになります。
2. 法定単純承認の発生要件
法定単純承認が成立するためには、相続人が以下の行為を行うことが必要です。
遺産の承認:相続人が遺産を承認する意思を示すことが重要です。例えば、相続人が遺産分割協議を行い、その過程で故人の債務を認識した場合、その認識が単純承認とみなされることがあります。
債務の履行:相続人が故人の借金やその他の債務を履行した場合も、法定単純承認が成立します。支払いが行われることで、債務の消滅時効が中断し、相続人は債務を負うことになります。
遺産の管理行為:相続人が故人の不動産を管理したり、事業を引き継いだりする行為も法定単純承認として認められることがあります。管理行為が行われると、遺産の受け入れが示され、その結果、債務の承認と見なされます。
3. 法定単純承認の法的効果
法定単純承認が成立すると、相続人は次のような法的効果を受けます。
債務の引き継ぎ:法定単純承認が成立した場合、相続人は故人が負っていた債務を引き継ぎ、その履行義務を負うことになります。このため、相続人は相続開始後、債務の履行を行う義務を負います。
消滅時効の中断:相続人が故人の債務を承認すると、その債務についての消滅時効が中断します。民法第144条に基づき、時効期間の進行が一時的に停止され、債務が消滅することがない状態となります。
債権者の権利行使:相続人が債務を承認した場合、債権者はその債務について再び請求を行うことができます。承認行為により、債権者は相続人に対して再度債務の履行を求める権利を持ちます。
4. 法定単純承認を避けるための方法
法定単純承認を回避するためには、相続放棄が有効な手段となります。相続放棄を行うことで、相続人は故人の遺産を一切承継せず、債務も負わないことになります。相続放棄は相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
また、相続人が故人の債務を認識し、その承認を避けたい場合は、遺産の管理行為や債務の履行を行わないことが重要です。相続人が故人の遺産を放置し、相続放棄をすることによって、法定単純承認の成立を防ぐことができます。
5. 法定単純承認と時効
法定単純承認によって、時効は一時的に中断され、債務は消滅しません。そのため、相続人が故人の債務を承認した場合、その後の消滅時効の進行は再開されます。時効期間の進行が停止されることにより、相続人は故人の債務に対して再度履行義務を負うこととなり、債務が引き継がれることになります。
時効が中断した後、相続人は債務の履行義務を果たさなければならないため、慎重に対応する必要があります。もし、債務を放置した場合、債権者は再度請求する権利を有することになります。
6. まとめ
法定単純承認は、相続において相続人が故人の債務を承認することで成立するものであり、その後の法的効果として、債務の引き継ぎや消滅時効の中断を引き起こします。
相続人は、故人の債務を履行したり管理したりすることによって、法定単純承認を行ったとみなされ、その責任を引き継ぐことになります。
相続放棄を行うことで、法定単純承認を回避することが可能であり、遺産の管理や債務履行について慎重な判断が求められます。
相続放棄と遺産放棄の違いは、法的な手続きとその効力に大きな違いがあります。多くの人はこの違いを誤解してしまうことがあり、その結果、法律上のトラブルに巻き込まれることがあります。ここでは、相続放棄と遺産放棄の違いを明確にし、その重要性について説明します。
目次
1.相続放棄とは何か
2.遺産放棄とは何か
3.相続放棄の特徴
4.遺産放棄の特徴
5.まとめ
1.相続放棄とは何か
手続き: 相続放棄は、相続人が家庭裁判所に対して申述し、手続きが認められることで効力が生じます。
効力: 効力が発生すると、その相続人は「初めから相続人ではなかった」ものとみなされ、すべての財産や借金を相続しない立場になります。
第三者への影響: 相続放棄は、債権者や他の相続人を含めた第三者にも効力を持ち、債権者は放棄した相続人に借金の返済を請求できなくなります。
2.遺産放棄とは何か
手続き: 遺産放棄は、相続人間での遺産分割協議に基づいて、ある相続人が遺産を受け取らないとする意思表示です。遺産放棄には家庭裁判所の関与は必要ありません。
効力: 遺産放棄の場合、財産を放棄しても相続人の地位は維持されるため、借金などの負債を引き継ぐ責任は残ります。
第三者への影響: 遺産放棄は相続人間の内部的な取り決めに過ぎず、債権者などの第三者には効力を及ぼしません。したがって、借金の返済を債権者から求められた場合は拒否できません。
3.相続放棄の特徴
法的効力: 家庭裁判所での正式な手続きを経るため、法的に相続人でなくなります。相続財産も負債も一切関係がなくなります。
手続きの期限: 相続放棄は、相続が発生したことを知ってから3か月以内に申述しなければなりません。期限を過ぎると、相続を承認したとみなされることがあります。
4.遺産放棄の特徴
相続人の地位: 遺産放棄をしても、法律上の相続人の地位は変わりません。そのため、負債を相続する責任は残ります。
相続人間での取り決め: 遺産放棄は、相続人間の協議に基づくものなので、相続人の間での関係に限られ、債権者などの第三者には影響を与えません。
相続放棄と遺産放棄の混同による問題
誤解のリスク: 遺産放棄をしただけで、借金も放棄したと勘違いしてしまう人がいます。家庭裁判所の手続きを経ない限り、相続放棄にはならず、債務の返済義務は残るため、特に借金がある場合には注意が必要です。
5.まとめ
相続放棄は家庭裁判所の手続きを経ることで、すべての財産と負債を放棄でき、第三者にも効力が及びます。
遺産放棄は相続人間での合意に基づくものに過ぎず、第三者には効力を持たず、負債の相続からは逃れられません。
相続放棄と遺産放棄の違いをしっかり理解し、正しい手続きを行うことが重要です。
相談業務で、相続放棄と遺産放棄を混同している方を多く見かけます。相続発生時に、専門家への相談を必ず実施するようにしてください。思い込みや、間違った情報で人生台無しになるのは嫌ですよね。近所の方など情報源の方が責任を取ってくれるわけもありませんから。専門家に相談すると、相続の内容から、相続放棄をした方がいいかどうかの判断もしていただけると思います。
労災(労働災害補償保険)は、労働者が業務中や通勤中に事故や災害に遭い、怪我をしたり病気になったりした場合に、治療費や休業補償を受けることができる制度です。しかし、労災事故には、会社や労働者以外の第三者が関与している場合もあります。このようなケースを「第三者行為による労災」といい、通常の労災事故とは異なる点がいくつかあります。
目次
1. 第三者行為とは
2. 労災保険と損害賠償請求
3. 労災と第三者行為の手続き
4. 第三者行為による労災の具体例
5. 第三者行為の注意点
6. まとめ
1. 第三者行為とは
第三者行為とは、労働者が業務中または通勤中に、労働者や会社以外の人や企業(第三者)による行為で怪我をしたり病気になったりすることを指します。たとえば、通勤中に交通事故に遭い、加害者が労働者やその雇用主とは無関係な場合や、業務中に他社の過失で事故が発生した場合が該当します。
このような場合、通常の労災と同様に、労災保険から治療費や休業補償を受けることができますが、第三者に対して損害賠償請求を行うことが可能です。
2. 労災保険と損害賠償請求
第三者行為による労災事故では、労災保険を利用するか、第三者に直接損害賠償請求をするかの選択肢があります。労災保険を利用する場合、労働者は治療費や休業補償などの一定の補償を迅速に受けることができますが、その後、第三者に対して損害賠償請求を行う際には、労災保険で支払われた分は重複して請求できないという制約があります。
具体的には、労災保険を利用して支払われた治療費や休業補償は、労災保険側が第三者に「求償権」を行使することで回収します。このため、労働者が第三者に直接損害賠償請求を行う際には、労災保険で受けた補償を差し引いた分を請求することになります。
一方、労災保険を利用せず、第三者に直接損害賠償請求を行うことも可能です。ただし、この場合は、労災保険の迅速な補償を受けられないため、賠償が確定するまでの間、治療費や生活費の負担が大きくなる可能性があります。
3. 労災と第三者行為の手続き
労災保険を利用する場合、通常の労災申請と同じ手続きを行います。ただし、第三者行為による場合には、追加で「第三者行為災害届」を提出する必要があります。この届出は、労働基準監督署や労働局に提出され、事故の詳細や第三者の情報を明らかにするためのものです。
届出が受理されると、労災保険から治療費や休業補償が支払われますが、労災保険側が第三者に対して求償権を行使し、労災保険で支払った分を第三者に請求します。これにより、労働者は迅速に補償を受けつつ、第三者に対しても責任を追及することが可能となります。
4. 第三者行為による労災の具体例
具体的な例として、通勤中の交通事故が挙げられます。労働者が通勤中に他の車と衝突し、その車の運転手に過失があった場合、労災保険の通勤災害として治療費や休業補償を受けることができます。同時に、その事故の加害者に対して、慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求を行うこともできます。
また、業務中に他社の過失で事故が発生した場合も同様です。例えば、建設現場で他社の重機が倒れて負傷した場合、その重機を運営していた企業に対して損害賠償請求を行うことが可能です。このような場合でも、労災保険を利用して補償を受けつつ、第三者に対して損害賠償請求を行うことができます。
5. 第三者行為の注意点
第三者行為による労災の場合、注意すべき点がいくつかあります。まず、労災保険を利用する場合、第三者に対して損害賠償請求を行う際に、労災保険で支払われた分を差し引いた額しか請求できない点です。これは、労災保険が既に支払われた補償分を第三者に請求するため、重複して補償を受けることができないという仕組みに基づいています。
また、労災保険を利用せず、第三者に直接損害賠償請求を行う場合、賠償が確定するまでの間、生活費や治療費の自己負担が大きくなる可能性があるため、慎重な判断が求められます。労災保険の迅速な補償を受けることで、経済的な負担を軽減できるため、多くの場合は労災保険を利用することが一般的です。
6. まとめ
第三者行為による労災事故では、労災保険と損害賠償請求の両方を利用することが可能です。
労災保険を利用することで迅速に補償を受けられますが、第三者に対して損害賠償請求を行う際には、労災保険で支払われた分を差し引く必要があります。第三者行為災害届の提出や、求償権の行使など、通常の労災とは異なる手続きが必要なため、適切な手続きを踏んで、迅速に補償を受けることが大切です。
自筆証書遺言は、遺言者が自らの手で書き記す遺言の形式であり、最も手軽に作成できる遺言書の一つです。しかし、その手軽さゆえに、法律上の要件を満たしていない場合には無効となるリスクも高いため、遺言者が自筆証書遺言を作成する際には、慎重に要件を満たす必要があります。
ここでは、自筆証書遺言が有効になるための法律上の要件について詳しく説明します。
目次
1. 自筆証書遺言の法律上の要件
2. 自筆証書遺言の保管制度
3. 自筆証書遺言が無効になるケース
4. 自筆証書遺言のメリットとデメリット
5. まとめ
1. 自筆証書遺言の法律上の要件
自筆証書遺言が有効であるためには、以下の法律上の要件を満たす必要があります。これらの要件は、民法第968条に基づいて定められています。
(1) 遺言者が自ら書くこと
自筆証書遺言の最大の特徴は、遺言者本人が自筆で全文を書き記すことが求められる点です。これは、他人の代筆や印刷された文章では認められません。具体的には、遺言の内容だけでなく、日付や署名も遺言者本人が手書きで行う必要があります。自筆証書遺言がパソコンやワープロで作成された場合や、遺言書の一部が他人によって書かれた場合は、その部分が無効となります。
ただし、2019年1月の法改正により、自筆証書遺言の中で財産目録に関しては、手書きでなくても良いとされました。財産目録は、パソコンで作成したり、不動産登記簿謄本や預貯金通帳のコピーを添付したりすることが認められています。この改正により、複雑な財産の管理がしやすくなりましたが、財産目録以外の部分(遺言内容や署名、日付など)は依然として自筆でなければなりません。
(2) 日付が明記されていること
自筆証書遺言には、遺言書が作成された具体的な日付が明記されていなければなりません。日付は「○年○月○日」という形で特定できるものである必要があり、例えば「令和○年○月吉日」や「○月末日」といった不特定な表記では無効となります。日付の記載は、遺言が作成された時期を確認するために重要であり、複数の遺言書が存在する場合には、どれが最新のものであるかを判断する材料になります。
(3) 遺言者の署名および押印
遺言書には、遺言者本人の署名が必要です。署名は遺言者の意思を明確に示すものであり、本人以外の署名や偽造された署名があった場合、その遺言書は無効となります。また、署名に加えて押印も必要です。押印には実印を使うのが望ましいですが、必ずしも実印である必要はなく、認印でも有効とされる場合があります。
署名と押印があることで、遺言者本人がその遺言書を作成し、遺言の内容に同意していることを示す証拠となります。したがって、署名や押印が欠けている場合、その遺言書は無効となるリスクが高まります。
2. 自筆証書遺言の保管制度
自筆証書遺言は、作成する際の手軽さがメリットですが、遺言書の紛失や改ざんのリスクが伴います。遺言書が自宅で保管されている場合、相続人が遺言書を見つけられない可能性や、意図的に破棄されてしまうリスクもあります。
この問題を解決するために、自筆証書遺言の保管制度が2020年7月から導入されました。
この制度では、遺言者が遺言書を作成した後、法務局にその遺言書を預けることができるようになりました。法務局に預けられた遺言書は厳重に管理され、相続開始後に相続人が遺言書を確認できるため、紛失や改ざんのリスクを防ぐことができます。また、法務局に保管された遺言書は、家庭裁判所での検認手続きが不要となるため、相続手続きがスムーズに進むというメリットもあります。
3. 自筆証書遺言が無効になるケース
自筆証書遺言が無効となるケースとして、以下のような状況が挙げられます:
署名や日付が欠けている場合:遺言書に署名がない、または日付が不明確な場合、その遺言書は無効となります。
遺言者の意思能力が欠如していた場合:遺言書作成時に遺言者が認知症や精神的な障害などにより判断能力を欠いていた場合、その遺言書は無効とされる可能性があります。遺言者の意思が明確でなければ、遺言書の効力は認められません。
遺留分の侵害:遺言書の内容が相続人の遺留分を侵害している場合、相続人から遺留分減殺請求を受けることがあります。これにより、遺言書に基づく分割が一部変更されることがあります。
4. 自筆証書遺言のメリットとデメリット
自筆証書遺言にはいくつかのメリットがあります。まず、自筆で作成するため、費用がかからず、弁護士や公証人を必要としない点が挙げられます。
また、遺言者が自分のペースで内容を考え、秘密にしたまま遺言を残すことができる点も大きな利点です。
一方で、デメリットとしては、法律上の要件を満たしていない場合に無効となるリスクが高いことや、遺言書の紛失や改ざん、偽造の危険性があることが挙げられます。
また、遺言書が自宅で保管されている場合、相続人がその存在に気づかずに手続きを進めてしまう可能性もあります。
5. まとめ
自筆証書遺言は、遺言者が手軽に作成できる遺言書の形式ですが、有効性を確保するためには法律上の要件を満たすことが不可欠です。遺言者本人が自らの手で全文を記載し、日付と署名、押印を行うことで初めて有効な遺言書となります。
また、財産目録に関しては手書きでなくても良いという法改正により、遺言書の作成がさらに容易になりましたが、それ以外の要件は依然として厳格です。
遺言書の保管や紛失リスクを軽減するためには、法務局での保管制度を利用することも有効な手段です。
自筆証書遺言を有効に活用するためには、法律上の要件を正確に理解し、適切に作成・保管することが重要です。
遺産分割は、被相続人が遺した財産を相続人間で分配する過程であり、これを適切に行わなければトラブルや紛争の原因となる可能性があります。遺産分割手続きを進めるためには、まず「相続人の範囲」と「遺産の範囲」を特定することが前提となりますが、それが完了した後、次に進むべきは「遺産分割手続き」です。この手続きは、遺言書の有無やその有効性により異なってきます。
目次
1. 遺言書がある場合の遺産分割手続き
2. 遺言書がない場合の遺産分割手続き
3. 遺言書が無効となるケース
4. 遺産分割協議が成立しない場合
5. 遺産分割における留意点
6. まとめ
1. 遺言書がある場合の遺産分割手続き
被相続人が遺言書を残している場合、基本的にはその遺言書の内容に従って遺産分割が行われます。遺言書は、被相続人の最終的な意思を反映したものであり、相続人全員がその内容に従う義務があります。
遺言書がある場合、相続人間で遺産分割協議を行う必要はなく、遺言書に記載された内容に従って相続手続きを進めることが一般的です。
遺言書には主に以下の2つの形式があります:
自筆証書遺言:被相続人が自分で書き記した遺言書で、全文を自筆で書く必要があります。近年では法務局で保管する制度も導入されましたが、保管されていない場合には、相続人によって家庭裁判所に提出し、検認を受ける必要があります。
公正証書遺言:公証役場で公証人によって作成される遺言書です。公正証書遺言は検認が不要であり、法的な要件を満たしているため、最も信頼性が高い形式です。
遺言書が有効であれば、相続手続きは比較的スムーズに進むことが多いです。
しかし、遺言書の内容に問題がある場合や、相続人の中にその内容に異議を唱える者がいる場合は、トラブルが発生する可能性もあります。
2. 遺言書がない場合の遺産分割手続き
一方、被相続人が遺言書を残していなかった場合、もしくは遺言書が無効であると判断された場合には、相続人全員で「遺産分割協議」を行う必要があります。
遺産分割協議とは、相続人全員が合意のもとで遺産をどのように分割するかを話し合う手続きです。
遺産分割協議は相続人全員の同意が必要であり、全員が合意しなければ遺産の分割は進みません。
遺産分割協議では、以下のような要素を考慮して遺産の分割方法を決定します:
・各相続人の法定相続分(民法で定められた割合)
・相続財産の内容(不動産、現金、株式など)
・遺産を平等に分けるための調整(不動産を現金化するなど)
相続人間で意見が一致すれば、遺産分割協議書を作成し、全員が署名・押印します。この協議書が作成されることで、遺産分割が正式に完了し、それに基づいて各種名義変更や相続登記を行うことができます。
3. 遺言書が無効となるケース
遺言書が存在する場合でも、その内容が法律上の要件を満たしていなければ無効となることがあります。
例えば、自筆証書遺言であれば、全文が自筆で書かれていない場合や、署名や日付が欠けている場合には無効となります。
また、遺言者が遺言を作成した際に判断能力を欠いていたと認められる場合や、第三者の強制や欺瞞によって遺言が作成された場合も、遺言書が無効となる可能性があります。
無効となった場合は、遺言書がない場合と同様に、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
遺言書が無効であったことが相続人間で争点となる場合には、家庭裁判所で遺言書の有効性を巡る争いが発生することもあります。
4. 遺産分割協議が成立しない場合
遺産分割協議は、相続人全員が合意しなければ成立しません。
しかし、相続人の中に協議に応じない者がいたり、分割の内容について意見が合わなかったりする場合は、協議が難航することがあります。
こうした場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員が相続人間の話し合いを仲介し、合意に向けた調整を行います。調停で合意に至れば、その内容に基づいて遺産分割が進められますが、調停が不成立となった場合には、最終的に家庭裁判所による審判に委ねられることになります。審判では、裁判官が法律に基づいて遺産分割の方法を決定します。
5. 遺産分割における留意点
遺産分割において、相続人間での合意が重要ですが、「遺留分」に配慮することも大切です。
遺留分とは、一定の相続人に最低限保証される相続分のことです。被相続人が遺言書で特定の相続人にすべての財産を相続させると記載していた場合でも、遺留分を侵害する内容であれば、他の相続人は遺留分の請求を行う権利があります。
また、相続税の負担も考慮しなければなりません。特に、不動産などの現物財産を相続する場合は、その評価額に応じて相続税が課されるため、相続税の支払いに備えて現金や金融資産を適切に分割することが求められます。
6. まとめ
遺産分割手続きは、相続における重要なステップであり、遺言書の有無や有効性によって進め方が異なります。
遺言書が有効であれば、その内容に従って分割が行われますが、遺言書がない場合や無効な場合には、相続人全員による遺産分割協議が必要です。
協議が難航する場合は、家庭裁判所での調停や審判に進むこともあります。
相続人間で円滑に手続きを進めるためには、遺言書の適正な作成や、相続財産の把握、税負担への配慮が重要です。
遺産の調査を行う際、特に不動産についての調査は重要です。不動産は高額な財産であり、相続手続きや分割の際に正確な把握が求められるからです。被相続人が所有していた不動産を正確に特定するには、固定資産税納税通知書や固定資産税評価証明書などの書類を使用して調査を進める必要がありますが、これらの書類だけでは不十分な場合もあります。今回は、現行の不動産調査の方法と、2026年2月に施行予定の「所有不動産記録証明制度」について解説します。
目次
1. 現行の不動産調査方法
2. 固定資産税評価証明書による調査
3. 所有不動産記録証明制度の導入
4. 相続登記義務化と不動産漏れの防止
5. まとめ
1. 現行の不動産調査方法
不動産の調査を行う際、まず目につくのは、被相続人の「固定資産税納税通知書」です。これは、毎年各自治体から所有者に送付されるもので、所有している不動産に対して課税される固定資産税の納税額や、対象となる不動産の情報が記載されています。
固定資産税納税通知書には、土地や建物の所在地や地番、課税対象となっている不動産の概要が記載されており、相続の際の初期調査として利用されることが一般的です。
しかし、固定資産税納税通知書だけでは不十分なケースがあります。
なぜなら、固定資産税納税通知書に記載されているのは、課税対象となる不動産だけだからです。例えば、農地などの固定資産税が課税されない不動産や、税の免除措置が適用されている不動産は、この通知書には記載されません。そのため、相続手続きにおいて、すべての不動産を正確に把握するためには、他の方法での調査が必要になります。
2. 固定資産税評価証明書による調査
相続において、被相続人の所有する不動産の価値を把握するために、固定資産税評価証明書の取得が推奨されます。この書類には、課税の根拠となる不動産の評価額や詳細な情報が記載されており、不動産の価値を確認するのに役立ちます。
しかし、固定資産税評価証明書にも課題があります。この証明書は、各自治体ごとに発行されるものであり、全国一律で名寄せされているわけではありません。
つまり、被相続人が複数の自治体に不動産を所有している場合、その全ての不動産を調査するには、各自治体に個別に問い合わせを行い、それぞれの評価証明書を取得する必要があるのです。
例えば、被相続人が東京都と大阪府に不動産を所有していた場合、東京都と大阪府それぞれの自治体に対して固定資産税評価証明書を請求しなければなりません。
また、不動産の名義が長期間更新されていない場合、たとえば土地の登記が数世代にわたって変更されていないケースなどでは、実際の所有者を特定するのに時間がかかることもあります。そのため、現行の制度下では不動産調査には手間がかかり、すべての不動産を漏れなく把握するのが難しい状況です。
3. 所有不動産記録証明制度の導入
このような不動産調査の煩雑さを解消するために、2026年2月から「所有不動産記録証明制度」が施行される予定です。この制度が施行されると、法務局でその名義人が所有している不動産を全国的に一括して調査することが可能になります。現行のように各自治体に問い合わせる必要がなくなり、法務局で名義人のすべての不動産が記載された所有不動産記録証明書が発行されることになります。
この制度により、相続登記や不動産の調査が一層効率化されることが期待されています。
具体的には、被相続人が全国各地に所有していた不動産について、まとめて一度に確認できるようになるため、不動産の漏れを防ぐことができます。相続登記の義務化に伴い、相続人が全ての不動産を把握して登記を行うことが求められるようになるため、この新しい制度は大きな助けとなるでしょう。
4. 相続登記義務化と不動産漏れの防止
2026年以降、相続によって取得した不動産に対しては、相続登記が義務化されます。これにより、相続人は被相続人の所有していた不動産を全て把握し、速やかに登記を行わなければなりません。
しかし、先述した通り、現行の制度では不動産のすべてを正確に調査するのが難しく、特に課税対象外の不動産や、遠方にある不動産などが見落とされるリスクがあります。
しかし、「所有不動産記録証明制度」の導入によって、法務局で一括して全国の不動産を調査できるようになるため、相続における不動産の漏れを防ぎ、確実に相続登記を行うことができるようになります。
また、所有者不明の土地問題の解消にもつながり、長年更新されていなかった土地の登記が促進されることも期待されています。
5. まとめ
遺産調査において、不動産の調査は特に重要です。固定資産税納税通知書や固定資産税評価証明書を利用して調査を進めることができますが、これらの書類だけでは不十分な場合があります。現在の制度では、全国各地に所有している不動産を一度に確認することは難しく、各自治体ごとに個別に調査を行う必要があります。
しかし、2026年2月に施行される「所有不動産記録証明制度」によって、法務局で全国的な不動産の一括調査が可能となり、相続における不動産の漏れを防ぐことができるようになります。
相続登記の義務化も進む中で、この新しい制度の導入は、相続手続きを円滑に進めるための大きな助けとなるでしょう。
生命保険金は、相続が発生した際に、被相続人が契約者として加入していた生命保険契約に基づいて受取人に支払われるものです。この生命保険金が相続財産に含まれるかどうかについては、法律上および税法上で異なる扱いがされており、その理解が重要です。
今回、法律上の観点から、生命保険金が相続財産に含まれない理由と、税法上「みなし相続財産」として扱われるケースについて解説します。
目次
1. 法律上の生命保険金の扱い
2. 税法上の生命保険金の扱い
3. まとめ
1. 法律上の生命保険金の扱い
まず、法律上、生命保険金は相続財産に含まれないとされています。これは、生命保険契約において、被相続人が保険契約者であり、相続人が受取人として指定されている場合、生命保険金は保険契約に基づく受取人固有の財産となるためです。具体的には、以下のような点が法律上重要です。
1.1. 受取人固有の権利
生命保険契約において、契約者は保険料を支払い、受取人に対して保険金を支払うという形で契約が成立しています。受取人が指定されている場合、生命保険金は受取人が保険契約に基づき受け取るものであり、遺産とは別個の「受取人固有の財産」として扱われます。したがって、法律上、受取人に支払われる保険金は相続財産に含まれません。
1.2. 相続財産とは異なる取り扱い
相続財産とは、被相続人が亡くなった時点でその名義で所有していた財産、すなわち不動産、預貯金、株式などが該当します。しかし、生命保険金は、保険契約に基づいて発生する受取人の固有の権利であり、相続手続きとは無関係に受取人に支払われるものです。したがって、相続人間で遺産分割の対象になることもありません。
1.3. 判例に基づく解釈
この取扱いは、生命保険契約における受取人指定の意義を重視する日本の最高裁判例にも基づいています。判例では、生命保険金は受取人固有の財産とされ、被相続人が遺した財産とは独立して扱われることが繰り返し確認されています。これにより、受取人が指定されている生命保険金は相続財産ではないという解釈が確立されています。
2. 税法上の生命保険金の扱い
次に、税法上の観点からは、生命保険金の扱いが異なります。税法では、生命保険金の一部が「みなし相続財産」として扱われ、相続税の対象となることがあります。これについて、具体的に説明します。
2.1. みなし相続財産の概念
税法上、生命保険金は直接の相続財産ではないものの、相続税の計算において「みなし相続財産」として扱われることがあります。みなし相続財産とは、被相続人の死亡によって受取人が取得する財産のうち、法定相続分に基づいて課税される財産を指します。具体的には、生命保険金も、被相続人の死亡を契機として支払われるため、税法上は「相続により取得した財産」とみなされ、相続税の対象となります。
2.2. 生命保険金に対する非課税枠
ただし、税法上は、生命保険金に一定の非課税枠が設けられています。この非課税枠は、法定相続人1人あたり500万円までの生命保険金が非課税となるというものです。具体的には、次の計算式で非課税枠が計算されます。
非課税枠の計算式:法定相続人の数 × 500万円
この非課税枠を超えた部分については、相続財産とみなされ、相続税の対象となります。たとえば、法定相続人が3人いる場合、非課税枠は500万円 × 3人分の1,500万円となります。この1,500万円までの生命保険金は非課税となり、それを超える部分が相続税の課税対象となるのです。
2.3. 法定相続人の数に基づく控除
法定相続人が多ければ多いほど、生命保険金に対する非課税枠が大きくなるため、課税される部分が減少します。したがって、生命保険金の相続税における課税対象額を減らすためには、法定相続人が何人いるかが重要な要素となります。なお、法定相続人とは、配偶者や子供など、民法で定められた相続権を有する者を指します。
2.4. 非課税枠を超えた場合の課税
前述の非課税枠を超える生命保険金については、相続財産と同様に相続税が課されます。課税額は、相続税の計算に基づき、他の相続財産と合算して計算されます。相続税の税率は、遺産の総額に応じて異なりますが、累進課税制度が適用され、遺産の額が大きくなるほど高い税率が適用されます。
3. まとめ
生命保険金の取り扱いについては、法律上と税法上で異なる側面があります。法律上、生命保険金は受取人固有の財産とされ、相続財産には含まれません。しかし、税法上は、生命保険金は「みなし相続財産」として扱われ、法定相続人1人あたり500万円までの非課税枠が適用されます。この非課税枠を超える部分については、相続財産とみなされ、相続税の課税対象となります。
生命保険金は、受取人が自由に使える財産であるため、相続手続きにおいてはその取り扱いが重要です。相続人間のトラブルを避けるためにも、生命保険金の非課税枠や課税対象額について理解し、適切な対策を講じることが求められます。
これらが理解できれば、相続税対策として、生命保険は非常に有効な手段となりえます。詳しくは専門家に相談してください。
相続が発生した際、遺産分割や相続税の申告のためには、遺産の範囲を正確に把握することが必要です。遺産の範囲を明確にすることで、相続手続きを円滑に進めることができ、相続人間での不必要なトラブルを防ぐことができます。今回は、遺産の調査方法について、不動産、預金、有価証券を中心に、どのように調査を進めるかを解説します。
目次
1. 遺産の範囲とは
2. 不動産の調査方法
3. 預貯金の調査方法
4. 有価証券の調査方法
5. その他の財産の調査
6. 結論
1. 遺産の範囲とは
遺産の範囲とは、被相続人が残した全ての財産を指します。遺産には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。具体的には、以下のような項目が遺産に該当します。
プラスの財産:不動産、預貯金、有価証券(株式や債券など)、現金、貴金属、家財、生命保険金(契約者が被相続人で保険金受取人が相続人でない場合)など。
マイナスの財産:借金、ローン、未払いの税金、未払いの医療費など。
今回は、主にプラスの財産である不動産、預金、有価証券について、その調査方法を詳しく説明します。
2. 不動産の調査方法
不動産は、相続財産の中でも大きな割合を占めることが多い資産です。不動産を正確に把握するためには、以下のような手順で調査を進めます。
2.1. 登記情報の確認
被相続人が所有していた不動産の調査には、まず登記簿謄本(現在では「登記事項証明書」)を取得することが必要です。法務局で登記簿を閲覧することで、被相続人の名義で登記されている不動産の情報が得られます。登記事項証明書には、次のような情報が含まれています。
所在地:不動産の所在地が記載されています。
所有者:所有権者の氏名が記載されており、被相続人の名前が確認できます。
権利関係:抵当権や賃借権が設定されているかどうかも確認できます。
2.2. 固定資産税通知書の確認
被相続人が亡くなると、役所から相続人宛に固定資産税の納税通知書が送られてくることがあります。これにより、被相続人がどの不動産を所有していたかを確認することが可能です。また、固定資産税評価額も記載されているため、不動産の価値を知る手がかりにもなります。
2.3. 不動産の現地調査
相続する不動産が遠方にある場合や、長期間管理されていない場合には、現地調査を行うことが重要です。不動産の状態や賃借人の有無、隣地との境界線の確認など、現状を把握することで、今後の管理方針や遺産分割の参考にすることができます。
3. 預貯金の調査方法
被相続人の預貯金の調査は、相続税の申告や遺産分割において重要なステップです。預貯金を把握するための主な調査方法は以下の通りです。
3.1. 通帳やキャッシュカードの確認
被相続人が残した通帳やキャッシュカードを確認することで、預貯金の存在を確認します。通常は被相続人の自宅や金庫に保管されていることが多いため、遺品整理の際に注意深く探す必要があります。
3.2. 取引履歴の確認
預貯金口座の取引履歴を確認することで、過去に預けた金額や引き出した金額を把握できます。銀行や信用金庫に対して、被相続人の死亡後に取引履歴の開示請求を行うことが可能です。この際には、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本や除籍謄本)を提出する必要があります。
3.3. 銀行への照会
被相続人の通帳やキャッシュカードが見つからない場合、銀行に対して口座の有無を確認する照会を行うことができます。特に、被相続人が複数の金融機関を利用していた場合には、銀行の本支店へ問い合わせを行うことで、すべての預貯金を漏れなく把握することが重要です。
※ゆうちょ銀行の場合、窓口で相続手続きができないため、データセンターの方へ必要書類をそろえて提出することになります。サポートについては、各窓口でしていただけます。
4. 有価証券の調査方法
有価証券(株式や債券など)も、遺産として含まれることが多く、その調査が必要です。有価証券の調査方法は以下の通りです。
4.1. 証券会社の取引口座の確認
被相続人が証券会社で口座を開設していた場合、証券取引に関する情報はその口座で管理されています。取引口座の取引履歴や残高報告書を確認することで、所有している株式や債券の詳細がわかります。
4.2. 株式の名義確認
株式については、株主名簿や株式の名義を確認することで、被相続人が所有していたかどうかを判断します。名義が変更されていない場合、証券会社や上場企業に問い合わせて名義を確認することが可能です。
4.3. 配当金の通知書の確認
被相続人が株式を保有していた場合、配当金が発生していることが多いため、配当金の通知書を確認することで、株式の所有を把握することができます。配当金の通知書は通常、被相続人の自宅に送付されるため、遺品整理の際に確認が必要です。
5. その他の財産の調査
不動産、預金、有価証券以外にも、遺産に含まれる財産の調査が必要です。例えば、次のような財産も調査の対象となります。
生命保険金:被相続人が保険契約者であった場合、保険会社に問い合わせて、保険金が支払われるかどうかを確認します。ただし、受取人が指定されている場合は、相続財産には含まれません。
借金・ローン:被相続人がローンや借金を残していた場合、マイナスの財産として相続財産に含まれます。銀行や消費者金融に問い合わせを行い、残債を確認します。
6. 結論
相続手続きを進める上で、遺産の範囲を正確に把握することは非常に重要です。不動産、預貯金、有価証券など、主な資産については、適切な調査手続きを行うことで、相続人間のトラブルを防ぎ、円滑な遺産分割を進めることができます。また、相続税の申告にも正確な財産の把握が必要であり、すべての財産をもれなく調査することが求められます。
相続が発生した際、相続手続きには相続人の範囲と遺産の範囲を正確に把握することが必要です。特に、相続人の範囲を明確にするためには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍や除籍謄本の取得が重要なステップとなります。
目次
1. 相続手続きにおける相続人の範囲
2. 必要な書類
3. 被相続人の出生から死亡までの戸籍取得
4. 相続手続きにおける書類の重要性
5. その他の確認事項
6. 結論
1. 相続手続きにおける相続人の範囲
相続が発生した際、相続人の範囲を確定することは非常に重要です。相続人の範囲は、法律に基づいて決定され、遺産の分配に直接影響を与えます。相続人は以下のように順位づけられています。
※配偶者は常に相続人となる。
①第一順位:子供(死亡している場合は孫など代襲相続人が相続)。
➁第二順位:直系尊属(両親、祖父母など)。
③第三順位:兄弟姉妹(死亡している場合は甥・姪が代襲相続)。
相続手続きをスムーズに進めるためには、この相続人の範囲を正確に把握し、相続権を持つ人々を特定する必要があります。
2. 必要な書類
相続人を調査し、確定するために、以下の書類が必要になります。
①被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本
被相続人の生涯の戸籍をすべて取得する必要があります。これにより、相続人を確定するための基礎的な情報が得られます。
被相続人がどこで生まれ、どのような家族構成だったか、結婚や子供の有無など、相続人の特定に重要な情報が含まれます。
➁相続人の戸籍謄本または抄本
相続人であることを証明するため、全ての相続人の戸籍謄本または抄本を取得する必要があります。これにより、相続人が生存しているかどうかや、代襲相続人の有無などを確認します。
3. 被相続人の出生から死亡までの戸籍取得
被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めることで、相続人を確定させることができます。この手続きは、被相続人が複数回転籍している場合や、転居が多い場合、戸籍を取得するのに時間がかかることがあります。具体的には以下の手順で取得します。
①出生地の役所で戸籍を取得:被相続人が最初に登録された戸籍を取得します。
➁婚姻後の戸籍取得:婚姻後に移転した戸籍も取得します。
③除籍謄本の取得:被相続人が死亡した際の戸籍も取得し、生涯の戸籍の変遷を確認します。
※特に、第一順位、第二順位、第三順位の相続人がすでに亡くなっている場合、その方の生まれてから亡くなるまでの戸籍が必要です。代襲相続等が発生するためです。
4. 相続手続きにおける書類の重要性
これらの書類が必要な理由は、相続人を確定するために欠かせない情報が含まれているからです。相続人が明確にならないと、遺産分割協議を行うことができず、手続きが遅れてしまいます。特に、被相続人に子供が複数いる場合や、前妻や後妻との間に子供がいる場合など、複雑な家族構成の場合には、正確な戸籍を取得することが特に重要です。
5. その他の確認事項
相続人の調査と並行して、次のような確認事項も必要です。
被相続人に隠し子がいないかの確認:被相続人に認知した子供がいた場合、その子供も相続権を持ちます。そのため、全ての戸籍を確認し、認知に関する記載があるかどうかを調べます。
相続人の失踪宣告:相続人が長期間行方不明である場合、失踪宣告を受けているかどうかの確認が必要です。
6. 結論
相続手続きを円滑に進めるためには、相続人の範囲を正確に把握することが不可欠です。そのために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本、相続人の戸籍謄本・抄本などの書類を取得し、相続人の特定を行う必要があります。これらの書類を正確に収集することが、円滑な遺産分割協議や相続税申告のための第一歩となります。
相談者が法律に関する問題に直面した際、専門家に相談せず、近所の方や親族などの意見に頼るケースが少なくありません。これには様々な理由が考えられますが、専門家に相談することがいかに重要であるかを理解していないことが多く見受けられます。以下では、専門家に相談する重要性について、具体的な理由や事例を交えて解説します。
目次
1. 専門家の知識と経験の重要性
2. 専門家以外の意見に頼ることのリスク
3. 無料相談会での実体験から見る問題点
4. 専門家の客観的な視点がもたらすメリット
5. 専門家に相談しない理由とその対策
6. まとめ
1. 専門家の知識と経験の重要性
法律問題は非常に複雑であり、特に相続や不動産問題などは専門的な知識が求められます。
例えば、遺産分割や相続放棄の手続き、遺言書の効力など、法律の知識がなければ正確に判断することが難しい場面が多々あります。
このような場合、法律の専門家である司法書士や弁護士に相談することで、適切な判断材料を得ることができ、問題解決への道筋が明確になります。
一方で、近所の人や親族の方は、個人的な経験や一般的な知識に基づいた意見を提供することが多いです。
彼らの意見が必ずしも間違っているわけではありませんが、個々の事例において適用できる法律や手続きは異なるため、専門家でない方の意見だけに頼ると、問題が解決しないどころか、逆に悪化してしまうこともあります。
2. 専門家以外の意見に頼ることのリスク
特に相続の問題では、事例が似ているからといって他人の経験をそのまま当てはめるのは非常に危険です。
遺産分割の方法や相続税の計算は、各家庭の事情や財産状況によって大きく異なります。たとえば、親族が「自分の場合はこうだった」といった体験談を語ったとしても、それはその家族の特殊な事情に基づいたものであり、全てのケースに通用するわけではありません。
ある相談者が近所の人や親族の意見に従って行動した結果、相続放棄の手続きを誤り、最終的に多額の債務を引き継ぐことになったというケースもあります。
専門家に相談していれば、正しい手続きや対処法を早期に知ることができ、問題を未然に防ぐことができたでしょう。
このように、専門家以外の意見に基づいて行動することは、問題解決どころか、さらなる問題を引き起こす可能性があるのです。
3. 無料相談会での実体験から見る問題点
筆者が無料相談会で経験した一例では、相談者が自分の行動を正当化し、ほとんど相談の時間内に自分の主張ばかりを繰り返し、専門家のアドバイスを聞こうとしないというケースがありました。
相談者は「近所のAさんやBさんもそう言っていた」という話を持ち出し、専門家のアドバイスに食い下がりました。さらに「AさんやBさんは法律の専門家か?」と尋ねると「そうではない」と認めましたが、依然として威圧的な態度で反論を続けました。
この相談者は、すでに他の専門家に相談していたにもかかわらず、不信感を抱いていたため、自分の主張を正しいものとして押し通そうとしたのです。
また、葬儀にかかった過剰な費用が不安材料となり、依頼している専門家の費用についても十分に把握していなかったことが判明しました。
ですので、必ず依頼先の方に見積書をもらうようにアドバイスしました。
このように、相談者が専門家に相談しながらも、他の情報源に左右されることで、問題解決が複雑化してしまうことがあります。
4. 専門家の客観的な視点がもたらすメリット
法律の専門家に相談する最大のメリットは、客観的かつ正確なアドバイスを受けられる点にあります。
専門家は法律知識だけでなく、多くの実務経験を積んでいるため、相談者が直面する問題に対して適切な解決策を迅速に提案することができます。また、専門家は相談者の感情や先入観に左右されず、法律に基づいた冷静な判断を下すことができます。
無料相談会のような短い時間での相談では、限られた時間内に現状を正確に把握し、的確なアドバイスを提供する必要があります。
このため、相談者が専門家の意見を聞かずに、自分の考えや他人の意見を優先してしまうと、解決までの時間が長引いてしまうことがあります。特に相続問題では、法的な期限が存在するため、早期に適切な対応を取ることが求められます。
5. 専門家に相談しない理由とその対策
では、なぜ多くの人が専門家に相談せずに、近所の人や親族の意見に頼るのでしょうか。その理由として、以下のような点が考えられます。
専門家に対する不信感:一部の相談者は、過去の経験や他人からの情報によって、専門家に対して不信感を抱くことがあります。これにより、専門家に相談することをためらい、他の情報源に頼ることになるのです。
費用に対する不安:専門家への相談には費用がかかることが多く、その金額が不明確な場合、相談をためらう原因となります。しかし、実際には多くの専門家が事前に見積もりを提示し、相談料や報酬について明確に説明しています。このため、費用について事前に確認することが重要です。
自己正当化の傾向:相談者の中には、自分の行動や考えを正当化したいという心理が働き、他者の意見や情報を自分に都合よく解釈する傾向があります。これにより、専門家のアドバイスを素直に受け入れず、問題解決が遅れることがあります。
これらの問題を防ぐためには、まず相談者が専門家に対する正しい認識を持つことが重要です。また、専門家側も、相談者に対して費用や手続きの透明性を確保し、不安を取り除く努力をすることが求められます。
6. まとめ
専門家に相談することの重要性は、複雑な法律問題を正確かつ迅速に解決するために不可欠です。
近所の人や親族の意見も参考にはなりますが、最終的には専門家の知識と経験に基づいたアドバイスが問題解決の鍵となります。
特に相続問題などでは、似た事例があっても、各家庭の事情は異なるため、専門家に相談することで最適な解決策を見つけることができます。
相談者が自分の先入観を外し、フラットな視点で専門家の意見を聞くことが、最も効果的な問題解決への道となるのです。
相続放棄を検討している場合、被相続人(亡くなった人)の遺品整理や賃貸アパートの解約を行うことには、注意すべき重要な問題点がいくつか存在します。相続放棄は、被相続人の財産や負債を一切相続しない意思を表明する手続きですが、その際にどのような行動を取るかによって、意図せず相続を承認してしまう可能性があるのです。ここでは、その問題点について具体的に説明します。
目次
1. 遺品整理や財産管理のリスク
2. 賃貸アパートの解約における問題点
3. 限定的な行動の推奨
4. 相続放棄の手続き前に専門家への相談を
5. まとめ
1. 遺品整理や財産管理のリスク
相続放棄を決意した場合、原則として被相続人の財産に関与する行為は慎重に行う必要があります。遺品整理は、故人の所有物を整理する行為ですが、これが法律上の「相続財産の管理行為」と見なされる場合があるのです。相続財産の管理を行ったと判断されると、相続放棄をしてもその行為が相続を「単純承認」したと解釈され、放棄が無効になる可能性があります。
たとえば、故人の財産や借金を整理するために遺品を売却したり、現金や銀行口座から引き出すような行為を行うと、それが相続人としての財産管理とみなされる恐れがあります。つまり、遺品整理を行う際は、慎重に内容や行為の範囲を考えないと、結果として相続を承認したと見なされる可能性があるため、相続放棄が無効になるリスクが生じるのです。
2. 賃貸アパートの解約における問題点
被相続人が賃貸アパートなどに住んでいた場合、その契約をどう処理するかも大きな問題となります。賃貸契約の解約手続きを相続放棄前に行った場合、賃借契約の権利や義務を引き継いだと解釈される可能性があります。これは、賃貸契約を「相続財産の一部」と見なして、解約手続きを行うことが相続の承認と判断されるリスクがあるからです。
具体的には、相続放棄の意思を表明しているにもかかわらず、相続人として賃貸契約を解約し、部屋を明け渡したり、保証金の返還請求を行ったりする行為は、相続を承認した行為と見なされる可能性があるため、注意が必要です。賃貸契約に関連する事項に関しては、放棄の意思を明確にする前に、弁護士などの専門家に相談することが重要です。
3. 限定的な行動の推奨
相続放棄を検討している間に、どうしても一定の管理行為を行わざるを得ない場合もあります。その場合は、法定相続人としての行為ではなく、あくまで「保存行為」や「緊急措置」としての行動に留めるべきです。保存行為とは、相続財産の価値を減少させないための行為を指します。たとえば、被相続人の財産を荒らされないように施錠する、郵便物を一時的に受け取るなどの行動は保存行為に当たる可能性が高いです。
また、緊急措置としては、故人が住んでいたアパートで漏水や火災などが発生した場合に、被害を防ぐために応急的に修理を依頼する行為などが挙げられます。こうした行為は、財産管理ではなく、財産を守るための必要最小限の措置と見なされる可能性があります。しかし、これらの行為を行う際も、相続を放棄する意思があることを明確にしておくべきです。
4. 相続放棄の手続き前に専門家への相談を
相続放棄をする際には、法律的な知識がない状態で行動を取ることは非常に危険です。遺品整理や賃貸アパートの解約といった行為は、相続放棄の意思がある場合、極めてデリケートな問題を伴います。相続放棄をしたいと考えている場合は、まず専門家に相談し、相続財産や借金についての情報を把握し、その上で放棄の手続きを進めることが重要です。専門家に相談することで、法律的なアドバイスを得られ、どのような行為が相続放棄を無効にするリスクがあるかを理解することができます。
たとえば、司法書士や弁護士は、相続放棄を円滑に進めるための手続きを支援するだけでなく、放棄の意思を明確にしつつ、相続財産の管理を慎重に行うためのアドバイスも提供してくれます。また、裁判所への相続放棄の申述書を作成する際にも、財産や負債の範囲を確認し、適切な手続きを取ることで、後のトラブルを防ぐことができるでしょう。
5. まとめ
相続放棄を行う際には、被相続人の遺品整理や賃貸アパートの解約をすることが、相続の承認とみなされるリスクがあるため、慎重に対応する必要があります。相続放棄の意思がある場合は、遺品整理や契約の解約などの財産管理行為を極力避け、あくまで保存行為や緊急措置に留めることが推奨されます。相続放棄を進める際には、専門家に相談し、法律的なアドバイスを受けながら適切な手続きを行うことが、相続放棄を確実にするための最善の方法です。
相続が発生した場合、相続人は複数の手続きを段階的に進める必要があります。これらの手続きは、法的な期間が定められているものもあり、適切なタイミングで進めなければ不利益を被ることがあります。ここでは、相続発生後の手続きと期限を大まかに分けて説明します。
目次
1. 7日以内:死亡届の提出と火葬許可証の取得
2. 3ヶ月以内:相続放棄や限定承認の申し立て
3. 4ヶ月以内:準確定申告の提出
4. 10ヶ月以内:相続税の申告と納付
5. 1年以内:遺留分侵害額請求の権利行使
6. その他の手続き
1. 7日以内:死亡届の提出と火葬許可証の取得
相続が発生した場合、まず最初に行わなければならないのは、死亡届の提出です。
死亡届は、死亡が確認された日から7日以内に市区町村役場に提出しなければなりません。これと同時に火葬許可証を取得し、葬儀や火葬の手続きを進めます。
この期間は故人の逝去に伴う感情的な整理がつかない中での作業になるため、家族にとっては非常に辛い時期です。
2. 3ヶ月以内:相続放棄や限定承認の申し立て
相続に関する最初の重要な期限は「相続の承認または放棄の選択」に関わるものです。
相続人が故人の資産を引き継ぐかどうかを決定するため、3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
相続を放棄する場合は「相続放棄」の手続き、債務が資産を超えるかどうか不安な場合は「限定承認」の手続きを行います。これを過ぎると、自動的に相続を単純承認したとみなされ、故人の資産だけでなく、債務も引き継ぐことになります。
3. 4ヶ月以内:準確定申告の提出
次に、故人が個人事業主や自営業者であった場合、相続開始日から4ヶ月以内に「準確定申告」を行う必要があります。
準確定申告とは、故人が亡くなる年の1月1日から亡くなる日までの所得に対して行う確定申告のことです。
相続人全員が連名で行うことが求められ、申告漏れがあると相続人に税負担がかかるため、専門家のサポートを得ることが推奨されます。
4. 10ヶ月以内:相続税の申告と納付
相続税の申告と納付は、相続が発生してから10ヶ月以内に行う必要があります。
この期間内に申告を行わないと、延滞税や無申告加算税が発生する可能性があります。
相続税は、相続人が取得した財産の総額が基礎控除額を超えた場合に課されるもので、基礎控除額は「3000万円 + (600万円 × 相続人の数)」と定められています。
相続税の申告は財産目録の作成が必要であり、土地や株式などの評価方法が複雑なため、税理士などの専門家の助けを借りて進めることが一般的です。
また、相続税の納付方法としては、現金納付が基本ですが、納税資金が不足している場合は、分割払い(延納)や物納(不動産や有価証券などでの納付)が認められることがあります。
5. 1年以内:遺留分侵害額請求の権利行使
遺留分とは、相続人が最低限受け取ることができる財産の割合を指します。
故人の遺言などで、遺留分を侵害する形で財産が分配されていた場合、遺留分を持つ相続人は相続開始から1年以内に「遺留分侵害額請求」の権利を行使する必要があります。
この請求を行わなければ、遺留分を取り戻す権利が失われるため注意が必要です。
6. その他の手続き
上記の法定期限のある手続きに加え、相続発生後に必要となるその他の手続きとして、以下のものがあります。
銀行口座の凍結解除:銀行口座は、相続が発生すると凍結されます。凍結を解除し、預金を引き出すためには、遺産分割協議書の提出や相続人全員の同意が必要です。
遺産分割協議の実施:遺産分割協議とは、相続人全員で故人の財産をどのように分割するかを決める話し合いです。この協議が整わないと、財産の分割や名義変更が進められないため、円滑に協議を進めることが求められます。
不動産の名義変更:故人が所有していた不動産の名義を相続人に変更する手続きです。名義変更が完了していないと、その不動産を売却したり担保に入れることができません。令和6年4月には、相続登記が義務化されており、相続発生から3年以内に登記が実施されない場合には、10万円以下の過料が科されることになります。
以上が、相続が発生した際に必要な主な手続きとその期限の概要です。
相続発生後は、人生を共にした伴侶との別れで、気持ちがふさがってしまうことも、十分理解はできます。が、手続きには期間が決められている者もあります。
もし、手続きがわからない方は、専門知識を要する部分が多いため、司法書士や税理士などの専門家の助言を受けながら進めることが望ましいでしょう。
共同根抵当権とは、複数の不動産を一括して担保に供することで、同じ債権を保障するために設定される根抵当権のことです。これにより、債務者や保証人が所有する複数の不動産に対して、債権者が同一の債権を回収できる仕組みが提供されます。共同根抵当権は、特に事業者や多くの資産を保有している個人に利用されることが多く、債権者にとっても複数の不動産を担保として確保することでリスクを軽減できるメリットがあります。
目次
1.共同根抵当権の同時設定
2.共同根抵当権の追加設定
3.前登記証明書とは
4.省略できる場合とできない場合
まとめ
1.共同根抵当権の同時設定
共同根抵当権の同時設定とは、同じ債権を担保するために、複数の不動産に対して一度に根抵当権を設定することを指します。この場合、すべての不動産が同じ登記内容を共有するため、登記の段階で債権の範囲や極度額(根抵当権が担保する最大額)も統一されます。同時に設定されることで、債権者は複数の不動産を担保に取ることができ、債務不履行が生じた場合には、どの不動産からでも回収が可能となります。
この同時設定には、以下の点が特徴として挙げられます:
①同一の債権を担保:全ての不動産が同じ債権を担保し、各不動産に対する根抵当権の内容が統一されています。
➁極度額の統一:担保する最大債権額である極度額が、すべての不動産において共通です。
③登記手続の効率化:一度に設定されるため、手続きが簡便であり、登記にかかる手数料や時間も削減される可能性があります。
2.共同根抵当権の追加設定
一方で、共同根抵当権の追加設定とは、既に設定された共同根抵当権に新たな不動産を追加して担保に供する手続きです。追加設定の場合、すでに根抵当権が登記されている不動産に加えて、新たに根抵当権を設定する不動産があるため、登記上の手続きが少し異なる点があります。追加された不動産も既存の債権を担保することになりますが、同時に設定された根抵当権とは異なり、追加する不動産については追加設定の登記手続きが必要です。
追加設定において重要な点は、追加された不動産が他の不動産と同様に同一の債権に対して担保されるかどうかということです。例えば、既存の共同根抵当権に変更を加える場合には、その変更内容が正確に登記に反映される必要があります。また、追加設定が行われる際には、前登記証明書(後述)が関わってくる場合があります。
3.前登記証明書とは
共同根抵当権の追加設定において重要となる「前登記証明書」とは、既存の根抵当権登記が正しく行われていることを証明する書類です。これは、不動産登記法に基づき、不動産に対する新たな登記を行う際に、すでに存在する登記の内容が変更されるかどうかを確認するために提出される書類です。具体的には、不動産登記事務取扱手続準則第125条第2項に基づき、前登記証明書は追加設定などで既存の登記に関与する場合に必要となることがあります。
4.省略できる場合とできない場合
前登記証明書の提出が省略できるかどうかは、主に次の要件に基づきます:
省略できる場合
前登記事項証明書の添付が省略できるのは、担保となる不動産が同一の管轄内に存在する場合です。つまり、共同根抵当権の追加設定を行う際に、担保とする複数の不動産がすべて同じ登記所の管轄区域内にある場合には、前登記事項証明書の提出は不要です。この状況では、登記内容の確認が一つの登記所内で完結するため、書類の添付が省略されます。
省略できない場合
一方で、担保とする不動産が複数の管轄登記所にまたがって存在する場合には、前登記事項証明書の添付が必要となります。この場合、各登記所でそれぞれの不動産に関する登記内容の確認が必要であり、適切な確認のために証明書の添付が求められるのです。
※ここ重要!
抵当権の場合は、前登記事項証明書の添付がなくても登記自体は可能ですが、この場合、登録免許税法第13条第2項による軽減措置が適用されず、通常の設定時と同様に登録免許税が1000分の4かかることになります。つまり、抵当権の場合は登録免許税の減免措置を受けるために添付するということになります。
一方で、根抵当権の場合は、単に登録免許税の減免措置のための添付書類というわけではなく、追加設定する根抵当権の「極度額」「債権の範囲」「債務者」が前に設定登記を受けた根抵当権と同じであることを登記官が審査するため添付をすることになります。抵当権の場合と意味合いが異なりますので、注意が必要です。ただし、変更した場合でも、同一管轄であれば、同一の法務局内での確認が可能ですので、添付を省略することができます。
まとめ
共同根抵当権は、複数の不動産を一括して担保に供する仕組みであり、同時設定と追加設定の違いが存在します。前登記証明書は、追加設定において特に重要な役割を果たし、その提出が省略できる場合とできない場合が登記内容や不動産の状況に応じて決まります。共同根抵当権の手続きには、不動産の所有者や登記内容に関する詳細な確認が必要であり、適切な手続きが求められます。
ローンを完済した後でも、登記簿に抵当権が残っている場合にはその抹消手続きを行わなければ、抵当権は消えません。今回は、環境衛生金融公庫(現在は日本政策金融公庫の一部)が設定した抵当権がある場合、その抹消手続きには一定のプロセスが必要です。以下では、環境衛生金融公庫の抵当権抹消手続きについて解説します。
目次
1. 抵当権の抹消が必要な理由
2. 抵当権抹消の手続きの流れ
3. 司法書士への依頼
4. 環境衛生金融公庫の抵当権抹消手続きにおける注意点
5. まとめ
1. 抵当権の抹消が必要な理由
抵当権は、債務の担保として不動産に設定されるもので、債務が返済された後も自動的に消滅するわけではありません。そのため、相続登記が完了しても、抵当権が設定されたままでは、不動産の所有権を自由に処分することができず、売却や新たな借入の際に支障が生じる可能性があります。環境衛生金融公庫が設定した抵当権も例外ではなく、債務完済後に抵当権抹消の手続きを行っておいた方がいいでしょう。
2. 抵当権抹消の手続きの流れ
抵当権抹消の手続きは、一般的に以下の流れで進められます。
2-1. 債務完済証明書の取得
まず、環境衛生金融公庫に債務が完済されたことを証明する書類を取得します。この書類は「債務完済証明書」と呼ばれ、抵当権抹消手続きにおいて非常に重要な書類となります。しかし、かなり昔の抵当権となると、原契約所や権利証などは残っていない可能性もあります。その場合には、残債等が残っていないことを確認してもらい「抵当権設定解除証書」をもらうことになります。債務完済が確認できれば原因は「年月日弁済」となり、原契約所や権利証が残っていない場合には、解除証書を用いて「年月日解除」となります。
2-2. 抵当権抹消登記申請書の作成
次に、抵当権抹消登記申請書を作成します。申請書には、対象不動産や抵当権に関する情報、そして債務完済証明書に基づく内容を記載します。記載内容に不備があると、法務局での手続きが滞る可能性があるため、正確に記入する必要があります。分からない場合には、司法書士に頼んだ方がいいです。手数料は数万円で手続きをしていただけます。
2-3. 環境衛生金融公庫からの委任状取得
さらに、抵当権抹消のためには、抵当権者である環境衛生金融公庫からの「委任状」も必要です。この委任状は、抵当権者が抵当権の抹消に同意していることを示すもので、申請書と一緒に法務局に提出します。委任状の取得には、環境衛生金融公庫に直接連絡し、手続きを進めることが必要です。
2-4. 登記手続きの申請
債務完済証明書、委任状、抵当権抹消登記申請書が揃ったら、法務局にこれらの書類を提出し、抵当権抹消の申請を行います。申請が受理され、手続きが完了すると、不動産の登記簿から抵当権の記載が抹消されます。
3. 司法書士への依頼
抵当権抹消手続きは、個人で行うことも可能ですが、法的書類の作成や申請手続きには専門的な知識が求められるため、一般的には司法書士に依頼することが推奨されます。特に、相続に絡む複雑な事例や書類の準備に時間がかかる場合、司法書士に依頼することで、迅速かつ確実に手続きを進めることができます。司法書士は、法務局への申請代行や書類の確認、さらには不備がないかどうかのチェックも行ってくれるため、安心して任せられます。
4. 環境衛生金融公庫の抵当権抹消手続きにおける注意点
環境衛生金融公庫が設定した抵当権抹消手続きには、いくつかの注意点があります。
4-1. 公庫との連絡
環境衛生金融公庫は、現在「日本政策金融公庫」として統合されていますが、当時の環境衛生金融公庫が設定した抵当権に関しても引き続き手続きを行うことができます。手続きに際しては、日本政策金融公庫に連絡し、必要な書類や手続きの詳細を確認することが大切です。本店ではなく、各地方の日本政策金融公庫に連絡をしてください。
4-2. 書類の準備
債務完済証明書や委任状など、必要な書類が全て揃っていないと、法務局での手続きが進みません。公庫とのやり取りに時間がかかることもあるため、早めに書類を取得しておくことが重要です。
4-3. 手続きの期限
抵当権の抹消には法的な期限は特に設けられていませんが、早めに手続きを行うことが推奨されます。相続や不動産の売却などでトラブルを避けるためにも、抵当権は速やかに抹消しておく方が安心です。
5. まとめ
環境衛生金融公庫の抵当権抹消手続きは、債務完済後に忘れずに行うべき重要な手続きです。債務完済証明書や委任状の取得、法務局への申請といった複雑なプロセスを正確に進めるため、必要であれば司法書士のサポートを受けることをお勧めします。特に相続が絡む場合、事前に抵当権の状況を確認し、スムーズな手続きを行うことで、後々のトラブルを防ぐことができま
相続の生前対策は、相続発生後のトラブルを防ぎ、スムーズな資産承継を実現するために非常に重要です。しかしながら、生前対策を行う際には、いくつかの落とし穴に陥るリスクがあります。ここでは、特に注意が必要なポイントをまとめます。
目次
1. 遺言書がない、または不備がある
2. 特定の相続人への偏った財産分配
3. 贈与税の負担を見落とす
4. 不動産の相続がスムーズにいかない
5. 生前贈与の不公平感
6. 家族信託の誤解
7. 介護費用や医療費の見落とし
8. 専門家に相談しないまま進める
1. 遺言書がない、または不備がある
遺言書は、財産分割の意向を明確に示すための重要な手段です。しかし、生前にしっかりとした遺言書を作成していないケースが多く見られます。遺言書がないと、法律に従った遺産分割が行われますが、これが必ずしも家族や親族間で望ましい結果をもたらすとは限りません。
また、遺言書があっても、法律の要件を満たしていないために無効とされる場合や、曖昧な表現により相続人間の解釈の違いが争いを生むこともあります。特に自筆証書遺言の場合、法律上の形式に厳格であり、全てを自筆で記載する必要があるため、不備が生じやすい点に注意が必要です。
ですので、アイリスでは公正証書遺言をお勧めしております。
2. 特定の相続人への偏った財産分配
相続の生前対策で、特定の相続人に多くの財産を渡したい場合がありますが、これは慎重に行うべきです。たとえば、家業を継ぐ子供に事業資産を多く与えると、他の相続人との間で不公平感が生まれ、相続争いに発展する可能性があります。
日本の法律では、相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限の取り分が保障されています。
遺留分を無視して遺産分割を行おうとすると、遺留分侵害額請求を受けることになり、生前対策がかえって家族間の争いを引き起こすリスクが高まります。
3. 贈与税の負担を見落とす
生前贈与は、相続税対策として広く利用されていますが、贈与税がかかることを忘れてはなりません。
年間110万円を超える贈与には贈与税が課税されるため、計画的に行わないと、贈与を受けた側に大きな税負担が発生します。
また、相続開始前7年以内に行われた贈与は、相続財産に加算されるため、結果的に相続税が増えることもあります。
生前贈与を効果的に活用するためには、贈与のタイミングや金額に注意し、税理士など専門家と相談しながら進めることが重要です。
4. 不動産の相続がスムーズにいかない
不動産は相続財産の中でも特にトラブルが起きやすい資産です。
不動産の評価額は一義的でないため、相続人間でその評価額について意見が分かれることがあります。また、不動産の相続には登記手続きが必要であり、これを怠ると将来的に相続人間で共有状態が続き、不動産の処分や管理が難しくなります。
さらに、相続税を支払うために不動産を売却しなければならない場合もありますが、その際、売却が思うように進まず、結果的に税金が払えずに困ることもあります。
事前に不動産の相続について具体的な対策を立てておくことが重要です。
5. 生前贈与の不公平感
生前贈与を行う際、相続人間で公平さを保つことが難しい場合があります。
特に、一部の相続人にのみ多額の贈与を行った場合、他の相続人が「不公平だ」と感じ、相続争いに発展することがあります。
贈与の意図を明確にし、他の相続人にも説明しておくことが重要です。
また、将来的に遺産分割に際してトラブルにならないように、贈与を行った場合でも、遺言書を作成しておくことが推奨されます。
6. 家族信託の誤解
家族信託は、近年、相続対策として注目されている手法です。
しかし、家族信託の仕組みや効果を十分に理解せずに利用すると、かえってトラブルの元になることがあります。
例えば、信託財産が適切に管理されず、受益者が不利益を被るケースや、信託契約が不十分であるために目的が達成されないケースが挙げられます。
家族信託は、信託契約書の作成や信託口座の管理など、専門的な手続きが必要なため、信託制度に詳しい専門家に相談しながら進めることが大切です。
また、毎年の税務申告が必要な点も重要です。あとでこんなはずではなかったということがないように、何人かの専門家と話をして、納得の上進めていきましょう。
7. 介護費用や医療費の見落とし
生前対策を考える際、自身の老後の生活費や介護費用、医療費を十分に考慮せずに財産を贈与してしまうケースがあります。
特に、高齢者の場合、介護が必要になったり、医療費が予想以上にかかることがあります。
その結果、贈与を行いすぎて手元に十分な資産が残らず、自分の生活が困難になるリスクがあります。
贈与や相続対策を行う際には、自分の生活費を確保しつつ、余裕のある範囲で行うことが重要です。
8. 専門家に相談しないまま進める
生前対策は法律や税金に関わる複雑な問題が多く含まれます。
それにもかかわらず、自分一人で判断して進めるケースが見受けられます。しかし、適切な対策を講じるためには、司法書士や税理士、弁護士などの専門家に相談し、正しいアドバイスを受けることが不可欠です。
特に、相続税対策や遺言書の作成、家族信託の設定などは、法律や税制に詳しい専門家の支援を受けることで、落とし穴を避け、より効果的な対策を講じることができます。
生前対策を成功させるためには、これらの落とし穴を理解し、慎重に準備を進めることが大切です。
家族や相続人が安心して財産を受け継げるように、早めに専門家に相談し、具体的な対策を立てることが求められます。
遺言書が必要な方とは、将来の相続に備え、自分の財産や遺産をどう分けるかを明確にしておきたい方のことを指します。特に以下のような状況にある方は、遺言書を作成することが重要です。
目次
1.家族構成が複雑な場合
2.配偶者や子供がいない場合
3.相続人同士の関係が悪い場合
4.事業承継が必要な場合
5.相続税対策を考えている場合
6.特定の人に財産を遺したい場合
7.遺産の分割が難しい場合
8.認知した子供がいる場合
まとめ
1.家族構成が複雑な場合
再婚や離婚を経験し、前配偶者との間に子供がいる場合や、配偶者や子供がいない場合など、家族構成が複雑な方は、遺産分割の際にトラブルが発生するリスクが高まります。遺言書がなければ、法律に基づいた相続分が適用されますが、それが必ずしも自分の意向に沿ったものとは限りません。たとえば、前妻との子供にどれくらいの遺産を分けるのか、現妻や後妻との間の子供にはどのように分配するのかを明確にすることで、家族間の争いを防ぐことができます。
2.配偶者や子供がいない場合
配偶者や子供がいない場合、法律上の相続人は兄弟姉妹や甥・姪になることが多いです。しかし、これらの相続人と疎遠な場合や、特定の人や団体に財産を残したいという希望がある場合には、遺言書を作成しておくことが必要です。遺言書がなければ、親族に自分の意向と反する形で財産が渡ることになります。
3.相続人同士の関係が悪い場合
相続人同士がすでに不仲である場合や、将来的に相続争いが起こる可能性がある場合は、遺言書を作成しておくことで、あらかじめ自分の意向を明確にしておくことができます。特に、不動産や事業の分割など、争いになりやすい財産がある場合には、遺言書を通じて具体的な分割方法を示すことが重要です。
4.事業承継が必要な場合
中小企業や自営業を営んでいる方にとって、遺言書は事業承継の重要な手段となります。会社の経営者が突然亡くなった場合、相続人間での経営権を巡る争いが起こることがあります。これを防ぐためには、遺言書で後継者を指定し、円滑な事業承継を図ることが求められます。
5.相続税対策を考えている場合
遺産の総額が大きく、相続税の課税対象になる場合、遺言書を作成しておくことで、相続税の負担を軽減するための対策を講じることができます。例えば、法定相続人に分ける以外に、財産の一部を寄付することなども有効な手段です。また、特定の相続人により多くの財産を渡す場合にも、その分の相続税をあらかじめ計算し、納税に備えておくことができます。
6.特定の人に財産を遺したい場合
法律上の相続人ではない人に財産を遺したい場合や、特定の相続人に多くの財産を残したい場合は、遺言書が必要です。例えば、内縁の配偶者や、長年面倒を見てくれた友人に財産を渡したい場合など、法律では認められない相続を実現するためには、遺言書で明確にしておく必要があります。
7.遺産の分割が難しい場合
不動産や株式、骨董品など、遺産の分割が難しい資産を持っている方は、遺言書で誰に何を相続させるのかを明示しておくことで、相続人間の争いを避けることができます。不動産を複数人で共有するのは管理が難しく、売却が必要になるケースも多いため、遺言書で適切な分配を指定しておくことが重要です。
8.認知した子供がいる場合
認知した子供がいる場合、遺言書でその子供の相続分を明確にしておくことが重要です。認知した子供には法定相続権がありますが、他の相続人との公平を図るために、遺言書で相続分を指定しておくことで、後の争いを防ぐことができます。
まとめ
総じて、遺言書を作成することで、相続に関する自分の意向を反映させ、家族間の争いを防ぐことができます。また、相続税や事業承継といった問題にも対処できるため、早めの準備が推奨されます。遺言書は、自分の死後の財産の行方を決定する重要な手段であり、適切に作成しておくことで、自身と家族の安心を確保することができます。
遺産分割協議で、結局まとまらず、その後、調停そして審判まで行くケースの原因の多くが上記の例です。該当する方は専門家に相談することをお勧めいたします。また、期限も存在します。それは、遺言者が認知症になる前です。
遺言書には大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の二つがあります。それぞれの形式には、作成方法や保管方法、そして法的な効力や手続きに違いがあり、遺言者がどの形式を選ぶかによって、相続手続きが大きく左右されます。ここでは、それぞれのメリットとデメリットを比較しながら、最終的に遺言者の意思を確実に相続人に伝えるために、公正証書遺言が推奨される理由について説明します。
目次
1.遺言書の種類とその特徴
2.自筆証書遺言のメリット
3.自筆証書遺言のデメリット
4.公正証書遺言のメリット
5.公正証書遺言のデメリット
6.遺言者の意思が相続人に的確に届くために
7.まとめ
1. 自筆証書遺言のメリット
自筆証書遺言は、遺言者が紙とペンで自ら作成する遺言書の形式です。この形式には以下のようなメリットがあります。
手軽に作成できる
自筆証書遺言は、いつでも自分で作成できるため、手続きが簡便です。特に法律の専門家に依頼する必要がなく、費用もかからない点が魅力です。
プライバシーが保たれる
自分一人で作成できるため、他人に知られることなく、内容を秘密にしておくことができます。
自由度が高い
内容や形式に縛られることが少なく、遺言者が自分の意思をそのまま反映しやすい形式です。
2. 自筆証書遺言のデメリット
しかし、自筆証書遺言には多くのデメリットも存在します。これらのデメリットは、遺言者の意思が確実に相続人に届かない可能性を生む要因となります。
形式不備による無効リスク
自筆証書遺言は、形式の不備によって無効になるリスクが高いです。法律では、全文を手書きで書くことや、日付、署名、押印などの形式的な要件を厳しく求めています。これらを満たさない場合、遺言書は無効となる恐れがあります。
紛失や改ざんの危険性
自筆証書遺言は、遺言者自身で保管することが一般的ですが、そのため紛失や第三者による改ざんの危険性があります。また、遺言者が亡くなった後、遺言書が発見されなかったり、相続人の間で争いになる可能性も考えられます。
検認手続きが必要
自筆証書遺言は、遺言者の死亡後に家庭裁判所で検認手続きを経る必要があります。これには時間と手間がかかり、その間、相続手続きが進まないという問題があります。
3. 公正証書遺言のメリット
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書の形式です。この形式には、以下のような大きなメリットがあります。
確実な法的効力
公正証書遺言は、公証人が作成し、法律に基づいて形式を整えているため、無効となるリスクが極めて低いです。遺言者の意思が確実に法的に保護され、相続手続きも円滑に進むことが期待できます。
保管の信頼性
公正証書遺言は、公証役場で厳重に保管されます。遺言者の意思が安全に守られるだけでなく、紛失や改ざんの危険性もありません。
検認手続き不要
自筆証書遺言と異なり、公正証書遺言は検認手続きが不要です。そのため、遺言者の死亡後、直ちに相続手続きに移行できる点も大きなメリットです。
第三者の立ち会いがあるため、争いを防ぎやすい
公証人の立会いのもとで遺言書が作成されるため、遺言の内容について相続人間で争いが起こる可能性が低くなります。遺言者の意思が明確に示されるため、後のトラブルを防ぐ効果が期待できます。
4. 公正証書遺言のデメリット
公正証書遺言にも多少のデメリットがありますが、それらは遺言者の意思を確実に伝えるために必要なものであると理解すべき点です。
作成費用がかかる
公証人に依頼して作成するため、費用が発生します。遺産の内容によっては、手数料も増加するため、コスト面での負担があります。
作成に手間がかかる
公証人役場に足を運び、遺言内容について公証人に説明する手間があります。また、遺言の作成には証人が必要となるため、複数人を立ち会わせる必要があります。
内容が他人に知られる可能性
公証人や証人が立ち会うため、遺言内容が完全に秘密にされるわけではありません。プライバシーの面で自筆証書遺言より劣る可能性があります。
5. 遺言者の意思が相続人に的確に届くために
以上の比較を踏まえると、遺言者の意思が確実に相続人に届くためには、公正証書遺言の方が推薦できる形式と言えます。自筆証書遺言は手軽でありながらも、多くのリスクを伴います。特に、形式の不備や保管に関する問題が発生しやすく、結果として遺言者の意思が反映されない可能性があるからです。
一方、公正証書遺言は、費用や手間がかかるものの、法的な安全性が高く、相続手続きもスムーズに進むため、遺言者の意思を確実に実現するためには最も適した方法です。特に、複雑な財産分与や相続人間で争いが予想される場合には、公正証書遺言を作成することで、遺言者の意図が相続人に正確に伝わり、後のトラブルを回避できる可能性が高まります。
6. まとめ
遺言書の形式には、自筆証書遺言と公正証書遺言の二つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。しかし、遺言者の意思を確実に相続人に伝え、円滑な相続手続きを進めるためには、公正証書遺言が最も適した方法であると言えます。作成にかかる費用や手間を考慮しても、相続人間のトラブルを避け、遺言者の意思が尊重されることが、最終的には大きなメリットとなるでしょう。
遺言書がある場合とない場合の相続に関する比較を項目に分けてまとめた内容となります。遺言書の有無が相続手続きに与える影響について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを整理していますので参考にしてみてください。
目次
1. 遺言書がない場合の相続手続き
2. 遺言書がある場合の相続手続き
3. 遺言書がない場合のデメリット
4. 遺言書がある場合のメリット
5. まとめ
1. 遺言書がない場合の相続手続き
遺言書がない場合、遺産は法定相続分に基づいて分割されますが、具体的には相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。この協議において、全相続人が合意しない限り、遺産の分割は行えません。
1.1 遺産分割協議
遺産を分割するためには、相続人全員が協議に参加し、全員の合意を得ることが必要です。協議がまとまるまでは、遺産はすべて法定相続分に基づく共有状態に置かれます。この共有状態は、特に以下の点で問題を引き起こす可能性があります。
1.2 共有状態の問題点
現金のように分割しやすい遺産は早期に分けることができますが、不動産など物理的に分割できない財産は、協議が成立するまで全相続人の共有状態となります。特に不動産においては、以下の問題が発生することが考えられます。
共有による管理の難しさ:共有状態では、不動産を売却したり処分したりするためには全員の同意が必要となり、意見が一致しない場合には不動産がそのまま放置されることもあります。
相続人の増加:協議が長引くほど、相続人が死亡し、さらにその相続人が新たに関わることになり、関係者が増えることで権利関係が複雑化します。
1.3 遺産分割協議の難航
相続人同士の協議がまとまらない場合、譲歩ができない状況に陥ることもあります。この場合、不動産や共有財産の処分が困難になり、相続が長引く大きなデメリットがあります。結果として、相続手続き全体が複雑化し、残された相続人に大きな負担がかかることになります。
2. 遺言書がある場合の相続手続き
遺言書が存在する場合、遺言者の意思が最大限に尊重され、相続手続きが進行します。遺言書の内容に基づいて遺産分割が行われ、遺言書がない場合に比べて迅速に相続手続きを進めることが可能です。
2.1 遺言書による遺産分割
遺言書が有効であれば、遺産分割協議は不要となり、遺言書の指示に従って遺産が分割されます。このため、相続人同士の合意を待つ必要がなく、相続がスムーズに進むというメリットがあります。
2.2 遺留分の考慮
遺言書がある場合でも、法定相続人には遺留分を請求する権利があるため、遺留分を侵害しないような配慮が必要です。しかし、遺留分が問題になるのは、遺言書に不公平な分配が記載されている場合に限られるため、多くのケースでは、遺言書に基づいて遺産が適切に分割されます。
2.3 権利関係の複雑化を防ぐ
遺言書が存在する場合、共有状態は避けられ、時間が経過しても権利関係が複雑化することはありません。遺言書に従った遺産分割が実施されるため、不動産の共有による問題や、相続人の増加による調査の手間が発生することはありません。
3. 遺言書がない場合のデメリット
遺言書が存在しない場合の主なデメリットとして、次の点が挙げられます。
協議の長期化:相続人間の意見が合わない場合、遺産分割協議が長期化し、遺産が共有状態で放置される可能性があります。
権利関係の複雑化:相続人の調査が困難になることで、相続手続きが煩雑化し、相続人間で争いが生じるリスクが高まります。
共有財産の管理困難:不動産などの共有財産が長期間分割されない場合、その管理や処分が非常に困難になります。
4. 遺言書がある場合のメリット
遺言書を作成しておくことで、次のようなメリットがあります。
遺産分割の円滑化:遺産分割協議を必要とせず、遺言者の意思に基づいてスムーズに遺産が分割されます。
相続人の負担軽減:協議の長期化や共有状態による問題を回避し、相続人が速やかに財産を受け取ることができます。
将来的なトラブル防止:遺言書により、相続に関わるトラブルや権利関係の複雑化を防ぐことができ、相続人間の関係を良好に保つことができます。
5. まとめ
遺言書がない場合、遺産分割協議が長引くことで権利関係が複雑化し、相続人間での争いが発生するリスクが高まります。特に不動産などの共有財産は管理が困難になるため、相続手続きがさらに煩雑化します。一方で、遺言書を作成しておけば、遺言者の意思に基づいて遺産が分割され、相続手続きが迅速に進むだけでなく、相続人の負担も軽減されます。残された相続人のためにも、遺言書の作成は非常に重要な手続きであり、将来的なトラブルを防ぐ有効な手段であると言えます。
以前、相続関連の相談をうけた内容になります。相談者の気持ちを尊重しつつ、遺留分対策としての遺言書作成の意味について説明したものです。ギャンブル好きの弟に対する財産分配に納得できない相談者への回答が整理されています。
目次
1. 相談内容と背景
2. お母様の遺言書の意図
3. 遺留分とは
4. 弟の遺留分対策
5. 遺言書の意義と家族の関係維持
6. 相談者の理解と納得
1. 相談内容と背景
相談者(長女)は、母親が作成した遺言書において、ギャンブル好きの弟にも少し財産を分けていることに納得がいかないとの相談を受けた。相談者としては弟に財産を渡すことに疑問を感じており、その意図について理解を求めていた。
2. お母様の遺言書の意図
母親が遺言書を作成する際に、弟に対しても一定の財産を分けることを明記していたのは、おそらく「遺留分対策」として専門家のアドバイスを受けたか、または自身で情報を取得しての判断であったと考えられる。遺留分とは、法定相続人が相続財産に対して最低限請求できる権利であり、これを無視すると後々トラブルになりやすい。
3. 遺留分とは
遺留分は、法定相続人が最低限相続できる権利のことであり、相続人が兄弟姉妹でない限り適用される。相談者の弟は、相続人として遺留分を主張する権利を持っている。この権利は、通常、法定相続分の2分の1に相当する。母親が遺産を分ける際に、弟の相続権を無視する形で遺産分割を行うと、弟が遺留分を請求する可能性が出てくるため、あらかじめ一定の分配を指定することは合理的である。
4. 弟の遺留分対策
母親は、おそらく弟が遺留分を請求することを避けるために、遺留分を超えない範囲で弟にも財産を分けることを遺言書に明記した。この方法は、遺言書が効力を持った際に、弟が遺留分の請求をしてトラブルが生じることを防ぐ手段である。もし、遺留分を無視して弟に全く財産を与えなかった場合、弟は法的に遺留分を請求することができ、結果として相談者が取得する財産が減少する可能性があった。
5. 遺言書の意義と家族の関係維持
お母様が弟にも一定の財産を分けることで、相続手続きがスムーズに進むだけでなく、家族内での対立を避ける意図があったと考えられる。特に相続は家族関係に影響を与えやすい問題であり、弟が不満を抱えたまま遺留分請求に至ることを防ぐために、適切な分配が重要である。
6. 相談者の理解と納得
相談者は、このような遺言書が弟の遺留分対策としての合理的な方法であると説明を受け、最終的に納得した。遺留分請求を封じるためには、事前に遺言書において相続人全員に一定の配慮を行い、将来的なトラブルを回避することが重要であるという点が理解されました。
以上が、相談者への回答内容を整理したものです。母親が遺言書を作成した背景には、相続における遺留分対策があり、それが相談者の理解を得られる形で説明できました。
ただし、このように遺言書に常に遺留分に留意した状態で作成しなければならないかというとそうではなく、とりあえず全財産を配偶者に渡したいとのことで、「全財産を配偶者に相続させる。」という遺言内容でも問題はありません。
また、遺言書を作る際に「面倒くさい」「費用がもったいない」という理由で作成を躊躇される方も少なからずいらっしゃいます。次回は、遺言書を作成した場合となかった場合を比較してみようと思います。
遺言書は、遺産分割において重要な役割を果たす文書です。法的効力を持つ遺言書を作成することで、遺産の分割に関する希望や指示を明確に示し、それを実現するための手段となります。しかし、遺言書だけで遺産分割を完全に決定できるわけではなく、いくつかの制約や条件が存在します。ここでは、遺言書が法的に効力を及ぼすことができる内容についてまとめます。
目次
1. 遺言書でできること
2. 遺言書でできないこと
3. 遺言書の作成と法的要件
4. まとめ
1. 遺言書でできること
遺言書には、以下のような事項を記載することができ、法的効力を持たせることが可能です。
1-1. 遺産分割方法の指定
遺言者は、遺産のどの部分を誰に渡すかを具体的に指定することができます。たとえば、不動産を特定の相続人に、現金や金融資産を別の相続人に渡すといった具体的な分配方法を遺言に記載することで、遺産の分割に関する意志を反映させることができます。このような遺言書は、法的に拘束力を持ち、基本的にその内容に従って遺産分割が行われます。
1-2. 遺言執行者の指定
遺言書では、遺産を実際に分割・管理する「遺言執行者」を指定することができます。遺言執行者は、遺言の内容に基づいて相続手続きや遺産の分配を行う役割を担います。遺言執行者が指定されている場合、その人が遺言に従って遺産分割を進める責任を負い、相続人間のトラブルを回避する助けとなります。
1-3. 相続人の廃除と認定
遺言書を通じて、特定の相続人を相続から廃除することができます。廃除の理由には、相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱を行った場合などが該当します。廃除は家庭裁判所の審判が必要ですが、遺言書にその旨を記載することで手続きが開始されます。
1-4. 相続分の指定
遺言者は、相続人ごとの具体的な相続分を指定することができます。法定相続分に基づく分割が通常ですが、遺言書で異なる相続分を指定することで、法定相続分とは異なる分配が可能になります。ただし、相続人には遺留分(最低限の取り分)が保障されているため、遺言書がその遺留分を侵害しない範囲で効力を持ちます。
1-5. 特定の財産の処分
遺言書では、遺産の中でも特定の財産についてその処分方法を指定することが可能です。たとえば、家庭内で大切にされてきた絵画や土地などの具体的な財産を、誰に譲るかを遺言で指定することができます。このような個別の財産処分は、相続人間での不必要な争いを避けるために役立ちます。
2. 遺言書でできないこと
遺言書だけでできることには限界があります。以下は、遺言書が法的効力を及ぼさない、または制限される場合です。
2-1. 相続人全員の同意が必要な場合
遺言書に遺産分割方法が明記されていたとしても、相続人全員がその内容に同意しなければ、遺言書通りの分割が行われない場合があります。たとえば、遺言書に記載されていない財産や、遺言書が不明確な場合、相続人間で協議が必要になります。その協議の結果、遺言書とは異なる分割方法が採用されることもあり得ます。
2-2. 遺留分の侵害
遺言書によって相続人の相続分が指定された場合でも、相続人には「遺留分」という法定で保証された最低限の取り分があります。遺留分を侵害する遺言書は、その部分について無効となり、相続人が遺留分を請求することができます。特に、遺留分を侵害する場合、相続人間での争いの原因となる可能性があるため、遺留分を考慮した遺言書作成が重要です。
2-3. 共同相続における共有財産の処分
遺産が不動産などの共有財産となる場合、遺言書だけではその共有状態を解消することができません。共同相続人の合意が必要となるため、遺言書があるからといってすぐに共有物が分割できるわけではありません。この場合、遺産分割協議や裁判手続きが必要となることがあります。
3. 遺言書の作成と法的要件
遺言書が法的効力を持つためには、厳密な要件を満たす必要があります。遺言書には主に以下の形式があり、それぞれに法的な要件があります。
3-1. 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が全文を自筆で記述し、署名押印することで成立します。ただし、遺言内容が不明確であったり、形式不備があった場合、無効になる可能性が高くなります。近年では、自筆証書遺言を法務局に預けることができる「法務局遺言書保管制度」が導入され、形式不備による無効リスクを低減する措置が取られています。
3-2. 公正証書遺言
公証人が作成する公正証書遺言は、もっとも安全かつ確実な方法とされています。遺言者が公証役場で遺言内容を伝え、公証人がその内容を公文書として記録します。公正証書遺言は、遺言者の死後、すぐに法的効力を持つため、相続人間での争いを回避しやすくなります。
4. まとめ
遺言書は、遺産分割に関して強力な法的手段であり、相続人間のトラブルを避け、被相続人の意思を尊重する重要な役割を果たします。ただし、遺言書だけで遺産分割がすべて完了するわけではなく、遺留分の問題や相続人間の合意が必要な場合もあります。遺言書を作成する際には、法的効力を持たせるための要件を理解し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
相続人が被相続人の財産を受け継ぐ際、遺産に含まれる負債(借金など)についても責任を負うことになります。しかし、すべての財産がプラスのものとは限らず、中には隠れ負債(現時点では把握できていない負債)がある可能性もあります。こうした負債に巻き込まれるリスクを避けるための手段として「相続放棄」という制度が存在します。
目次
1.相続放棄とは
2.相続放棄の要件と期限
3.申述期限
4.自ら家庭裁判所に申述する必要がある
5.相続放棄を他人に任せることはできない理由
6.隠れ負債と相続放棄の活用
7.最後に
1.相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人が遺した財産や負債をすべて放棄し、相続人としての地位を失う手続きのことです。これにより、プラスの財産だけでなく、負債に関する責任も免れることができます。たとえば、被相続人に多額の借金があった場合、相続放棄を行うことで、相続人はその借金の返済義務を負わずに済みます。逆に、相続を承認すると、隠れ負債が後から発覚した場合でも、その返済義務を免れることはできません。
2.相続放棄の要件と期限
相続放棄には法律で定められた要件と期限があります。特に重要なのは、相続放棄の申述は家庭裁判所で行う必要があり、他人に任せることはできないという点です。これに加えて、相続放棄の手続きには以下の2つの大きな制約があります。
3.申述期限
相続放棄の申述は、被相続人が死亡したことを知った日から3ヶ月以内に行わなければなりません。この期間内に家庭裁判所へ申述書を提出し、手続きを完了する必要があります。この3ヶ月の期間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続人が被相続人の財産の全貌を把握し、放棄するかどうかを判断するための期間です。ただし、負債の存在が不明瞭であったり、複雑な遺産が絡むケースでは、家庭裁判所に対して熟慮期間の延長を申請することも可能です。
4.自ら家庭裁判所に申述する必要がある
相続放棄は、自身が相続人として家庭裁判所に対して申述を行わなければならず、他人に任せて申述することはできません。たとえば、遺産分割協議や他の相続人との話し合いで相続を放棄した旨を表明しただけでは、法律上の相続放棄とは認められません。また、遺産を受け取らないと決めただけでも、負債を免除されるわけではなく、必ず法的な手続きが必要です。相続放棄が認められるためには、家庭裁判所の審査を経て、正式に認められることが求められます。
5.相続放棄を他人に任せることはできない理由
現行法では、相続放棄の手続きを他人任せにすることができないとされています。これは、相続放棄が個人の財産に直接関わる重大な判断であり、他人の意思や判断によって行われるべきではないと考えられているためです。仮に、相続放棄の手続きを他人に委任した場合、後から意思確認や手続きの不備を巡ってトラブルになる可能性が高まります。
さらに、相続放棄の手続きには家庭裁判所の関与が必要なため、相続人本人が手続きを行うことが法律で義務付けられています。相続放棄の申述において、本人確認や動機の確認が重要視されるため、他人が勝手に手続きを進めることが防止されています。
6.隠れ負債と相続放棄の活用
被相続人が負債を抱えているかどうかを完全に把握することは難しいケースが多く、とりわけ隠れ負債がある可能性が高い場合、相続放棄は有効な選択肢となります。被相続人が過去に借金をしていたり、保証人になっていた場合など、相続人がその事実を知らないまま相続手続きを進めてしまうと、後から大きな負担を抱えることになりかねません。
隠れ負債があるかもしれないと疑われる場合には、相続開始後にできるだけ早く被相続人の財産や負債の状況を調査し、放棄するかどうかを判断することが重要です。この際、相続放棄の手続きが法的に有効となるためには、家庭裁判所に申述しなければならないことを忘れないようにしましょう。
7.最後に
相続放棄は、相続人が被相続人の負債から身を守るための重要な手段ですが、その手続きには厳格な要件があり、特に他人任せにできない点には注意が必要です。相続放棄を希望する場合、早急に家庭裁判所に申述し、必要な書類を揃えて手続きを進めることが求められます。特に隠れ負債のリスクが高い場合、熟慮期間内に状況を的確に把握し、慎重に判断することが大切です。手に負えないと判断した場合は、早期に専門家に相談すべきと考えます。
「法律は知っている者の味方」という考え方は、特に相続において重要な意味を持ちます。相続の手続きにおいて、法定相続人は相続財産というプラスの財産を受け取る権利だけでなく、借金などの負の遺産を引き受ける義務も存在します。つまり、相続は財産だけではなく、被相続人(亡くなった人)の負債も含む全ての資産・負債が対象となるため、「負の遺産を受けたくないが、正の財産だけ欲しい」という要求は法律上通るものではありません。
目次
1. 相続には権利と義務が伴う
2. 義務を避ける唯一の方法:相続放棄
3. 権利だけを主張することのリスクと「自己防衛」
4. 専門家への相談が重要な理由
まとめ
1. 相続には権利と義務が伴う
法定相続人は、被相続人が亡くなった時点で自動的に相続の権利を持つと同時に、借金などの負の財産も受け取る義務を負います。これにより、相続人は遺産を承継することになりますが、その中には現金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金といったマイナスの遺産も含まれます。
多くの相続人は、相続における「権利」ばかりを主張し、プラスの財産のみを受け取りたいと考えがちです。しかし、法律は公平であるため、負の遺産を回避しながら生の財産だけを取得することはできません。相続はあくまで全体を受け継ぐものであり、プラスとマイナスの両方を引き受ける義務が発生します。このため、借金などの負の遺産が含まれる場合、慎重に対応しなければならないのです。
2. 義務を避ける唯一の方法:相続放棄
相続人が借金などの負の財産を引き受けたくない場合、その義務から逃れるための唯一の方法は「相続放棄」を行うことです。相続放棄とは、相続人が相続に関するすべての権利を放棄する手続きであり、これにより相続人はプラスの財産だけでなく、負の財産からも解放されます。しかし、相続放棄を行うためには、家庭裁判所に対して正式な手続きをとる必要があり、相続開始を知った時から3か月以内に行うことが義務付けられています。この「3か月の熟慮期間」を過ぎてしまうと、相続人は放棄の権利を失い、自動的に負の遺産も含めて相続しなければならなくなります。
相続放棄を行わない場合、相続人は債権者からの返済要求に応じる必要があり、相続財産が負債を上回っていれば問題はありませんが、逆に負債が財産を上回る場合は相続人自身の財産からも返済をしなければならないケースが出てきます。このような状況を避けるためにも、相続放棄は非常に重要な選択肢となります。
3. 権利だけを主張することのリスクと「自己防衛」
相続において、自分の権利ばかりを主張し、負の遺産を回避するための手続きを怠ることは、最終的に自分自身に大きな不利益をもたらす可能性があります。例えば、相続放棄をせずに放置していた場合、プラスの財産だけではなく、負債も自動的に相続することになります。これに対して、「知らなかった」という言い訳は通用しません。
法律の原則として、「知らなかった」ことは免責の理由にはなりません。相続放棄などの手続きは、相続人が自ら行動しなければならないものです。相続の知識がなく、不安を感じた場合には、専門家である司法書士や弁護士に相談するという選択肢が常に存在します。これを怠り、独自の判断で相続手続きを放置してしまうと、後に後悔する結果となりかねません。
相続の手続きは、相続財産が複雑な場合や負債が多い場合、非常に難解であり、正確な判断が求められます。専門家に相談することで、負の遺産を回避する方法や、最適な相続手続きを進めることが可能です。特に借金の有無やその金額が不明な場合、相続放棄を行うかどうかを慎重に検討する必要があります。
4. 専門家への相談が重要な理由
相続に関する手続きは、権利と義務の両方を正しく理解し、適切に対処しなければなりません。相続放棄の手続きを行うタイミングや方法を誤ると、後に負の遺産を引き継ぐリスクが高まります。こうした問題を避けるためには、早めに専門家に相談することが推奨されます。
司法書士や弁護士といった専門家は、相続に関する知識と経験を持っており、個々のケースに応じた適切なアドバイスを提供することができます。特に、相続放棄の手続きや期限、遺産分割協議に関する調整、債務の調査などは、専門的な知識が必要となるため、自分で判断するのではなく、専門家に相談することが安全です。
また、専門家に相談することで、相続手続き全般の負担を軽減することができ、相続人間のトラブルも未然に防ぐことが可能です。相続に関する手続きが複雑であったり、不安を感じた場合は、早めに相談することが自分自身を守る最善の方法です。
まとめ
「法律は知っている者の味方」であることを理解することは、相続において非常に重要です。相続人には、プラスの財産だけでなく、負の遺産も受け継ぐ義務があり、これを避けたい場合は、相続放棄という手続きを通じて自己防衛を図る必要があります。法律の知識がないことは免責の理由にはならず、専門家に相談し、適切な行動を取ることが、自分を守る唯一の方法です。相続に不安がある場合は、早めに専門家の助言を仰ぐことが最善の選択肢です。
2024年4月から相続登記が義務化されることにより、不動産の相続手続きを放置することができなくなりました。これにより、相続人は不動産の名義変更を行わなければならず、多くの方が自分で相続登記を行おうと考えるケースも増えています。しかし、単純な相続ならばともかく、相続人が複数いる場合や、遺産分割協議が必要な場合には、手続きが非常に複雑化し、専門知識が求められます。こうした場面で、司法書士という専門家の存在が重要になってきます。
目次
1. 相続登記義務化と自己登記のリスク
2. 相続登記の手続きと必要書類
3. 司法書士の役割と利点
まとめ
1. 相続登記義務化と自己登記のリスク
これまでの相続登記は、義務ではなく任意で行われていました。そのため、名義変更を行わずに放置することも少なくありませんでした。しかし、不動産の相続登記が義務化されたことで、相続発生後3年以内に登記を行わなければならなくなりました。これを怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続登記は、基本的な書類を揃えることで個人でも手続きが可能ですが、それはあくまで単純なケースに限られます。たとえば、以下のようなケースでは、相続登記が複雑になり、専門知識がないと対処が難しいことがあります。
相続人が多数いる場合
相続人が複数いる場合、それぞれの意見を調整し、遺産分割協議を行う必要があります。特に、相続財産が不動産の場合、共有名義にするのか、特定の相続人が単独で相続するのかといった問題を解決する必要があります。この協議の内容を反映した登記手続きが必要となるため、書類の準備や協議内容の法的整理が複雑化します。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書は、相続人全員が協議した結果を反映させた書面です。この書面には法的な要件があり、全員の合意が取れていなかったり、不備がある場合は登記が受理されないことがあります。特に相続人間の関係が悪化している場合、スムーズな協議が難しく、法的な視点での調整が不可欠となります。
相続人の一部が不明または所在不明の場合
長期間連絡が取れていなかった相続人がいる場合、その所在を確認するための手続きが必要です。この場合、相続人の調査や戸籍の収集など、相続関係を確認するための作業が増えます。これらの作業は専門的な知識がないとスムーズに進まないことが多く、場合によっては家庭裁判所の関与も必要になる場合があります。
相続放棄が絡むケース
相続人の中に相続放棄をする者がいる場合、その事実を考慮した上で相続登記を進める必要があります。相続放棄の申請が適切に行われていないと、相続関係が混乱し、最終的に不動産の登記が遅れることもあります。
2. 相続登記の手続きと必要書類
相続登記の基本的な流れは、以下のような手順を踏みます。
相続関係の確認
相続人を確定させるために、被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本や住民票を取得します。この作業だけでも、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を遡る必要があり、膨大な時間と手間がかかります。
遺産分割協議書の作成
相続人全員が合意した内容をもとに、法的に有効な遺産分割協議書を作成します。これには専門的な知識が必要で、記載内容に不備があると登記が受理されません。
登記申請書の作成と提出
最後に、登記申請書を作成し、法務局に提出します。申請書には不動産の評価額や登記原因証明情報、必要に応じて委任状などの書類を添付します。これらを漏れなく準備する必要があり、手続きに慣れていないとミスが発生しやすい部分です。
3. 司法書士の役割と利点
以上のように、複雑な相続登記には多くの専門的な知識と経験が必要です。ここで、司法書士という専門家の存在が大きな意味を持ちます。司法書士は、不動産登記に関する専門家であり、相続登記に関する複雑な手続きをスムーズに進めるための知識と経験を持っています。
手続きの簡略化と時間短縮
司法書士に依頼することで、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成、登記申請書の作成といった煩雑な作業を一括して任せることができます。これにより、相続人が自分で調べながら進める手間を省き、確実かつ迅速に相続登記を完了させることができます。
法的リスクの回避
相続登記には法的なリスクも伴います。たとえば、登記申請書に不備があった場合、再申請が必要となり時間がかかるだけでなく、過料の対象になることもあります。また、遺産分割協議が不適切に行われた場合、後に相続人間で争いが生じるリスクもあります。司法書士はこれらのリスクを回避し、円滑な相続手続きを支援します。
相続手続き全般の相談役
司法書士は相続登記だけでなく、相続手続き全般に関する相談も受け付けています。相続放棄や遺言書の作成、相続税対策など、相続に関わる幅広い法的サポートを提供しており、複雑な相続の問題に対しても総合的に対応することができます。
まとめ
相続登記が義務化された今、単純なケースでは個人でも手続きを行うことができますが、複雑な相続に関しては、専門的な知識と経験が必要です。特に、相続人が複数いる場合や遺産分割協議が必要な場合には、司法書士という専門家に依頼することで、確実かつスムーズな手続きが可能になります。相続登記に関して困難を感じた場合は、早めに司法書士に相談することをお勧めします。
生前贈与は、相続税対策として広く利用されていますが、2024年(令和6年)1月1日以降の税制改正により、これまでと異なる規定が導入されました。特に「組戻し」期間の変更や課税対象に影響を与えるため、慎重に進めることが必要です。ここでは、重要な3つの注意点に絞って解説します。
目次
1. 暦年贈与制度の組戻し期間の変更
2. 相続時精算課税制度との比較
3. 不動産の贈与に関する注意点
まとめ
1. 暦年贈与制度の組戻し期間の変更
これまで、生前贈与は「暦年贈与」として、年間110万円までの基礎控除を活用することで、贈与税が非課税となっていました。しかし、相続開始前3年以内の贈与額は相続財産に組戻され、相続税の計算対象となる「3年組戻し」規定がありました。
2024年の改正では、この組戻し期間が「3年」から「7年」に延長されます。これにより、相続開始前の7年間で行った贈与も相続財産に含まれることになります。つまり、7年以内に多額の生前贈与を行った場合、贈与税とは別に、相続税の課税対象となる可能性が高まります。
対策: この改正を踏まえ、相続税の負担軽減を目的とする場合は、7年以上前から計画的に贈与を進めることが重要です。急な大規模贈与ではなく、毎年基礎控除額内で贈与を行い、負担を分散させることが有効な戦略となります。を入力してください
2. 相続時精算課税制度との比較
贈与に関しては「暦年贈与制度」ともう一つ「相続時精算課税制度」があります。相続時精算課税制度では、生前贈与に対して2,500万円まで非課税で贈与が可能ですが、相続時に全ての贈与が相続財産として合算され、相続税が計算されます。この制度は、まとまった額を一度に贈与したい場合に便利ですが、一度適用すると暦年贈与制度には戻れず、相続時に贈与財産が全て課税対象となるため、十分な計画が必要です。
また、相続時精算課税制度を利用して贈与を行った場合、その後の資産運用や増加した価値にも相続税が課税されるため、将来的な資産価値の変動も考慮する必要があります。選択する際には、どの制度が適しているかを慎重に検討し、専門家に相談することが重要です。
3. 不動産の贈与に関する注意点
不動産を生前贈与する際には、特に注意が必要です。不動産贈与の場合、贈与税だけでなく、登録免許税や不動産取得税なども発生します。さらに、不動産の評価額が高額になることが多いため、贈与税の負担が大きくなる可能性があります。
不動産を贈与する際には、まずその評価額を確認し、贈与税や相続税の計算にどのように影響を与えるかを把握する必要があります。また、場合によっては、不動産の贈与よりも相続時に財産分割を行った方が有利な場合もあるため、事前のシミュレーションが不可欠です。
さらに、贈与後の不動産が将来どのように活用されるか、たとえば賃貸として運用するのか、相続人が居住するのかなどの計画も立てておくことが重要です。特に不動産は、贈与後の維持管理や税負担が継続するため、長期的な視点での管理が求められます。
まとめ
生前贈与は、相続税対策や財産の円滑な承継に役立ちますが、2024年からの税制改正により、組戻し期間の延長やその他の規定変更により、これまで以上に計画的な対応が求められます。暦年贈与制度を活用する際には、7年以上前からの計画的な贈与が鍵となります。また、相続時精算課税制度と暦年贈与制度の比較や、不動産贈与に伴う追加的な税負担も考慮し、専門家と連携して適切な対策を講じることが大切です。
相続に関する問題点は、多くの人が予期していないトラブルを引き起こす可能性があり、事前にそのリスクを理解して適切な対策を講じることが重要です。ここでは、相続に関連する代表的な問題を5つピックアップし、それぞれの内容について詳しく解説します。
目次
1. 遺産分割の紛争
2. 法定相続分と異なる遺言の存在
3. 相続税の負担
4. 相続財産の把握不足
5. 認知症や意思能力の低下による相続手続きの困難さ
まとめ
1. 遺産分割の紛争
遺産分割に関する争いは、相続人の間で最も一般的な問題の一つです。遺言がない場合、相続人たちが遺産の分け方について意見が分かれることがあり、特に不動産や事業を相続する場合にトラブルが発生しやすくなります。分割の方法によっては、一部の相続人が不満を持ち、法的手段に訴えるケースも少なくありません。
例えば、不動産は現金のように簡単に分割できないため、相続人全員が共有で所有することになった場合、その後の管理や売却についての合意が得られず、長期間にわたる紛争に発展することがあります。また、事業の継承に関しても、後継者問題や株式の分割が原因で親族間の争いが発生することがあります。
解決策:事前に遺言書を作成して、どの資産を誰に分けるかを明確に示すことで、こうした争いを避けることができます。また、信託を活用するなど、資産管理を他者に委ねる選択肢も有効です。
2. 法定相続分と異なる遺言の存在
日本では、遺言書がある場合、法定相続分に基づく相続ではなく、遺言内容が優先されます。しかし、遺言が法定相続分と異なる分配を指示していた場合、相続人の間で不公平感が生まれることがあります。特に、特定の相続人が大きな財産を受け取る一方で、他の相続人がほとんど相続しない場合、遺留分(法定相続人が最低限確保できる財産の割合)を巡る争いが起きることがあります。
遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行うことで、自身の相続分を取り戻すことができますが、これが原因で家族間の関係が悪化することもあります。
解決策:遺言を作成する際に、遺留分を考慮した内容にすることが重要です。また、相続人全員と事前に話し合いを行い、遺言の内容に納得してもらうことで、後々のトラブルを避けることができます。しかし、これも完全ではありません。生前からのコミュニケーションが重要だということです。
3. 相続税の負担
相続税は一定額以上の財産を相続する場合に課される税金ですが、その支払いが困難なケースが存在します。特に不動産を相続する場合、現金が不足していると相続税の支払いができず、資産の一部を売却せざるを得ないことがあります。これにより、相続した不動産を維持できなくなり、家族の思い出や代々続く家屋を失う可能性が高まります。
さらに、相続税の申告期限は相続開始から10か月以内とされており、遺産分割協議が長引くと、相続税の申告や支払いが遅れるリスクもあります。遅延すると加算税が課せられるため、経済的負担が増加する可能性があります。
解決策:相続税対策として、事前に生命保険を利用したり、生前贈与を行ったりすることで、相続財産の圧縮を図ることができます。また、専門家に相談し、適切な税務計画を立てることが重要です。
4. 相続財産の把握不足
相続財産がどのくらいあるかを把握していない場合、相続手続きが大幅に遅れる可能性があります。特に、亡くなった人が複数の金融機関に預金口座を持っていたり、海外に資産を保有していた場合、それらをすべて把握するのは容易ではありません。また、不動産や株式、保険など、さまざまな種類の財産が存在する場合、相続人がすべての資産を把握していないと、相続税の申告漏れや、遺産分割協議が不完全になるリスクがあります。
解決策:生前から財産目録を作成し、どのような資産があるのかを明確にしておくことが大切です。信頼できる家族や専門家に資産状況を伝えておくことで、相続手続きがスムーズに進行します。
5. 認知症や意思能力の低下による相続手続きの困難さ
相続人や被相続人が認知症などにより意思能力を失った場合、相続手続きが複雑化する可能性があります。被相続人が遺言書を作成できない状態になると、遺産分割の意思表示が困難になるため、法定相続分に従った相続手続きを行わざるを得ないことがあります。
また、相続人の一部が意思能力を失っている場合、その人を代表する後見人の選任が必要となり、手続きが長期化することがあります。意思能力が低下していると、遺言の内容を変更することも難しくなるため、結果として相続が複雑化する可能性があります。
解決策:早めに遺言書を作成することが重要です。また、任意後見制度を利用して、将来の認知症リスクに備えることも有効です。後見人を選任することで、相続手続きを円滑に進めることができます。
まとめ
相続には多くの問題点が潜んでおり、適切な対策を取らないと家族間の争いに発展する可能性があります。遺言書の作成や生前贈与、相続税対策など、事前にできることは多くありますが、これらは早めに準備しておくことが肝心です。
財産の把握や家族間の話し合いをしっかりと行い、スムーズな相続を目指すことが重要です。
専門家のアドバイスを受けながら、問題に応じた適切な対策を講じましょう。
遺言書を一度作成すると、変更はできないのかという疑問はよく寄せられるものです。実際には、遺言書は状況に応じて何度でも変更が可能です。ここでは、遺言書の変更について詳しく解説し、その際に気をつけるべきポイントを述べます。
目次
1. 遺言書は自由に変更可能
2. 新しい遺言書が最優先される
3. 変更が必要となる場合とは
4. 遺言書の修正時の注意点
5. 遺言書の作成後の見直しが重要
まとめ
1. 遺言書は自由に変更可能
遺言書は法律的に作成者の最終意思を表すものであり、その意思が変わる限り、何度でも変更することができます。遺言者が自分の意思を再考し、変更したいと思った場合には、新たに遺言書を作成するか、既存の遺言書を修正することが可能です。再作成が一般的です。
遺言書の変更手段
遺言書を変更する際にはいくつかの方法がありますが、最も一般的なのは新しい遺言書を作成することです。新しい遺言書を作成することで、以前の遺言書が無効となり、新しい内容が優先されます。変更内容が小規模な場合は、以前の遺言書に追記することも可能です。これを「補遺」と呼びますが、法的に有効に変更するためには、法律にのっとって行う必要があります。
2. 新しい遺言書が最優先される
遺言書が複数存在する場合、原則として最も新しく作成された遺言書が有効になります。例えば、遺言者が2010年に遺言書を作成し、2024年に新しい遺言書を作成した場合、2024年の遺言書が有効です。このため、遺言者が意思を変更した場合には、新しい遺言書を作成し、それが法的に問題ない形で存在していることが重要です。
ただし、全ての遺言書が無効になるわけではない点にも注意が必要です。新しい遺言書が特定の内容のみを変更するものであった場合、他の部分は依然として古い遺言書が有効となることがあります。このため、遺言書を変更する際には、明確にどの部分を無効にし、どの部分を新たに有効にするのかを示すことが重要です。
3. 変更が必要となる場合とは
遺言書の内容を変更する理由は多岐にわたりますが、一般的に次のような状況で遺言書を変更することが検討されます。
家族構成の変化
結婚、離婚、子どもの誕生など、家族構成が変わった場合には、遺言書の内容も変更が必要になることがあります。特に離婚や再婚によって相続人の範囲が変わる場合には、新しい状況に合わせて遺言書を見直すことが重要です。
財産の変動
遺言書を作成した後に、財産の内容が大きく変わることがあります。たとえば、持っていた不動産を売却したり、新しい資産を取得したりした場合には、それに応じた変更が必要です。
受遺者の状況変化
受遺者(遺言で財産を受け取る人)の状況が変わった場合、たとえば病気や死亡、あるいはその他の理由で受遺者を変更したいと感じた場合にも、遺言書を見直す必要があります。
4. 遺言書の修正時の注意点
遺言書を修正する際には、いくつかの重要な点に注意する必要があります。
正しい形式での作成
遺言書の変更は、新しい遺言書を作成する場合も、補遺を行う場合も、法律で定められた形式に従って作成する必要があります。手書きで作成する「自筆証書遺言」の場合でも、すべての項目を正確に手書きし、署名押印を行うことが求められます。形式が整っていない場合、遺言書全体が無効となる可能性があります。
新旧の遺言書の混在
新しい遺言書を作成した後、古い遺言書が残っている場合、それが誤って利用されないように古い遺言書を破棄することが望ましいです。ただし、複数の遺言書が存在することを家族に伝えておかないと、混乱を招くことがあります。必ず、最新の遺言書があることを明確に示しておきましょう。
5. 遺言書の作成後の見直しが重要
人生の変化や財産の状況が変わることは避けられません。そのため、一度遺言書を作成した後でも、定期的に見直しを行い、現状に適した内容になっているかを確認することが重要です。特に大きな変化があった場合には、専門家に相談しながら遺言書の見直しを行うことをお勧めします。
まとめ
遺言書は一度作成したからといって、永久にそのまま変更できないわけではありません。むしろ、状況に応じて何度でも変更できるという柔軟性を持っています。家族構成や財産の状況が変わったとき、または自身の意向が変わったときには、適切な手続きを踏んで遺言書を見直すことが必要です。変更を行う際には、法律の形式に従い、混乱を避けるために古い遺言書を破棄するなどの対策を講じましょう。
負動産の相続において、時折、相続人の中に次のような理由で遺産分割協議に協力しない方が見受けられます。
①「子供に負動産を引き継がせたくないから印鑑を押さない」、または
➁「配偶者との関係が悪いから協議に参加しない」といったものです。
こうした行動が実際に脅しとして効果があるのか、法律的観点から考えてみましょう。
目次
1.「子供に負動産を引き継がせたくない」という理由で協力しない場合
2.「配偶者との折り合いが悪くそんな負動産相続したくない」という理由で協力しない場合
まとめ
1.「子供に負動産を引き継がせたくない」という理由で協力しない場合
被相続人が亡くなり、遺言書がない場合、相続人には法定相続分に基づいた権利が与えられます。この段階で相続人全員が共有状態に置かれるため、遺産分割協議を経て各人の取り分を確定させる必要があります。しかし、「子供に負動産を引き継がせたくない」という理由で遺産分割協議書に印鑑を押さない場合、本当にその負動産の権利は子供に承継されないのでしょうか?
実際には、その相続人が亡くなると、その相続人の子供が法定相続人となり、再び遺産分割協議に参加することになります。つまり、協議に協力しなければ、その負動産が子供に渡ることを防げるわけではなく、逆に相続が次世代に持ち越され、相続関係がさらに複雑になる可能性があります。単に遺産分割協議を先延ばしにしているだけであり、法定相続分での権利が自動的に継承されることになります。
また、負動産の問題が解決されないまま相続が次世代に持ち越されると、その時点で相続関係はさらに複雑化し、負担が増えることもあります。協議の内容に不満がないのにもかかわらず、印鑑を押さないことは、結果的に子供の世代に負担をかける行為となりかねません。
2.「配偶者との折り合いが悪くそんな負動産相続したくない」という理由で協力しない場合
もう一つのよくあるケースが、「配偶者との関係が悪いから協力しない」というものです。このような場合、配偶者と折り合いが悪いのであれば、生前に離婚するという選択肢も考えられたはずです。しかし、離婚せずに戸籍上の関係を続けていた以上、配偶者も法定相続人であり、遺産分割協議に参加する権利があります。
もし遺産分割協議に協力せず、印鑑を押さないという選択をしたとしても、配偶者は法定相続分に従って権利を相続することになります。負動産を配偶者に引き継がせたくないという気持ちがあったとしても、協議に参加しないだけではその問題を回避することはできません。むしろ、遺産分割協議が進展しないまま、結果として自分の意図と異なる形で相続が進行することになります。
つまり、「印鑑を押さない」という行動は、一見すると自分の主張を通す手段のように思えますが、実際には法定相続分がすでに自動的に適用されており、自分自身がすでに権利者となっています。このまま放置をすると、次世代に相続問題を持ち越すことで相続関係が複雑化し、自分の首を絞める結果となりかねないのです。
まとめ
「負動産を子供に引き継がせたくない」「配偶者との関係が悪いから負動産を相続したくない」という理由で遺産分割協議に協力しないことは、相続手続きを停滞させるだけであり、結果的には法定相続分での相続が進行します。次世代に負担を先延ばしにすることになり、相続関係が複雑化するリスクもあるため、遺産分割協議には早期に協力することが重要です。そして、印鑑をつきたくない理由(子供に相続させたくない、自分が引き継ぎたくない)がそのまま現実のものとなってしまいます。
以前もお話をしましたが、法律は知っている者の味方です。自分のルールは当然ですが、法的に効力があるかどうかはわかりません。ですので、まずは専門家にご相談されることが先決だと思います。
登録免許税は、不動産登記を行う際に発生する税金であり、その額は不動産の価値に税率を乗じて算定されます。
不動産登記を進める上で、いくつかの場面で登録免許税を減算補正する必要が生じることがあり、その際に基準となる証明書類を適切に扱うことが求められます。
ここでは、登録免許税を減算補正すべき場合と、登録免許税の算定基準となる証明書類について説明します。
目次
1.登録免許税を減算補正すべき場合
2.登録免許税の算定基準となる証明書類
3.まとめ
1.登録免許税を減算補正すべき場合
まずは、一般的な補正方法として、計算の基準となる固定資産税評価証明書の価格について、その固定資産台帳に記載のある地積が、登記簿謄本の地積は異なっている場合、以下のケースが考えられます。
①台帳の地積が登記簿の地積より小さい
この場合、価格の評価の地積と比較して登記簿の地積が置きくなるため、増加する補正が発生します。
➁台帳の地積が登記簿簿地積より大きい
通常は、登録免許税の計算の基になる価格の補正は発生しません。
しかし、➁の場合で、登記簿の地積の変更が登記申請をする年に実施されている場合、減算の補正が発生します。
左の図は、不動産の登記簿謄本の見本です。当該申請を行ったのが、令和6年中でしたので、令和6年内に地積の修正が入っていますので、減算補正の対象となります。
登記申請を行う際にその年に地積の変更が生じているにもかかわらず、それに基づく補正が行われないと、登録免許税を正確に計算されていないとみなされる可能性があり、減算補正の結果、算出され多く納められた登録免許税については、還付の手続きを取らなければなりません。ですので、地積変更があった場合には、登記申請時の登録免許税については、補正を行わなければなりません。これは、固定資産税の算定基準である価格を定める場合、1月1日を基準にしているためであり、その後発生した変更には対応するということだそうです。ただし、その年でなければ、この補正はしません。
2.登録免許税の算定基準となる証明書類
登録免許税の算定においては、不動産の価格が重要な基準となります。この「価格」は、市町村が発行する「固定資産税評価証明書」や「名寄帳」を基に算定されることが一般的です。これらの書類には、不動産の固定資産評価額が記載されており、その額に基づいて登録免許税が計算されます。
ただし、これらの証明書類に対する法的要件として、「公印の有無」が一つの判断基準となります。具体的には、証明書に市役所の公印が押されていることが、法務局での受理において重要視される場合があります。ある司法書士の先輩によると、公印が押されている書類であることが確認できれば、これが正式な証明書類として法務局に提出できるとされています。
しかしながら、地域によっては、市役所が発行する名寄帳に公印が押されていない場合があります。たとえば、あるケースでは、高松市役所発行の名寄帳には公印がなく、そのために登記手続きを進める際に困惑が生じました。この状況について、市役所に確認したところ、高松市の名寄帳には公印を押す慣習がないとの回答がありました。このようなケースにおいては、法務局に問い合わせを行い、適切な対応方法を確認することが必要です。
実際に法務局に問い合わせた結果、司法書士が名寄帳や固定資産税評価証明書の内容を確認し、正当な書類であることを確認していれば、公印がない場合でも問題なく手続きを進められるという回答を得ました。このように、地域によって書類の取り扱いが異なる場合があるため、必要に応じて法務局や市役所に確認を取りながら手続きを進めることが重要です。
※固定資産材評価証明書や名寄帳については、本来法定添付書類ではないため上記のような手順で運用されているそうです。
3.まとめ
不動産登記における登録免許税の算定には、いくつかのポイントがあります。まず、1つ目は地積の変更がある場合には、その変更を反映させて登録免許税を減算補正する必要がある場合が存在することです。
2つ目は、登録免許税の算定基準となる「価格」についてです。価格の証明書類としては、市役所が発行する「固定資産税評価証明書」や「名寄帳」があり、これらの書類が適切に発行されていることが確認されることが重要です。ただし、公印の有無が要件となる場合があり、地域によっては公印が押されていない名寄帳も存在します。このような場合、法務局への確認が必要ですが、司法書士による書類確認が行われていれば問題なく登記手続きを進めることができるという実例があります。
これらのポイントを踏まえながら、不動産登記の手続きを円滑に進めるためには、証明書類の取り扱いや法務局との連携が重要です。
遺産分割協議において相続人間で意見が合わず、協議が進まない、いわゆる「もめた」場合、相続の手続きをどう進めるべきかという問題が発生します。
このような場合、法律で定められた手続きや、第三者の関与を通じて解決する方法が存在します。以下では、遺産分割協議が難航した際の手続きについて、順を追って解説します。
目次
1. 遺産分割協議とは
2. 家庭裁判所での調停手続き
3. 調停が不成立の場合の審判手続き
4. 裁判による解決の可能性
5. 弁護士の活用
6. もめないための事前対策
終わりに
1. 遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、相続が発生した後に、相続人全員が集まって遺産をどのように分けるかを話し合う手続きです。相続人全員の同意が必要であり、全員が合意した内容を書面にまとめ、署名・押印することで成立します。協議の際には、遺言書がある場合はその内容に従い、ない場合は法定相続分に基づいて話し合うことになります。しかし、相続人の感情的な対立や利害の衝突が原因で合意に至らないケースも少なくありません。
2. 家庭裁判所での調停手続き
遺産分割協議でもめた場合、次の手段として家庭裁判所に調停を申し立てることが考えられます。調停とは、裁判所の調停委員会が関与し、相続人同士の話し合いを仲介する手続きです。
調停委員会は、中立的な立場の調停委員と裁判官で構成され、双方の主張を聞きながら、円滑に解決できるように調整を行います。調停は、裁判のように判決が下されるわけではなく、あくまで当事者同士の合意に基づく解決を目指します。そのため、相続人が全員納得できる形での解決が期待できる点がメリットです。
調停の手続きは、まず相続人の一人が家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てます。申し立ては相続人の一人からでも可能で、他の相続人全員が調停の対象となります。申し立てに必要な書類は、被相続人の戸籍謄本、遺産目録、相続人全員の戸籍謄本などです。
調停の費用は比較的低額で済むことも多く、また、解決にかかる時間も裁判に比べて短期間で済むことが一般的です。調停が成立した場合、その内容は調停調書に記載され、これは法的効力を持つため、協議書と同じく強制力があります。
3. 調停が不成立の場合の審判手続き
調停でも合意に至らなかった場合、次のステップとして家庭裁判所は審判手続きに移行します。審判手続きでは、裁判所が相続人の主張や証拠をもとに、法的に適正な遺産分割の内容を決定します。
審判は、調停とは異なり、裁判所が最終的な判断を下す手続きです。審判では、被相続人の意思や遺言書の有無、相続人の生活状況や相続財産の種類・内容など、さまざまな要素を総合的に考慮して裁判官が遺産分割を決定します。
審判の結果は、審判書という形で通知され、これには法的拘束力があるため、相続人全員が従わなければなりません。審判に不服がある場合は、判決に対して不服申し立て(抗告)を行うことも可能ですが、基本的には審判の決定内容に基づいて相続が確定します。
4. 裁判による解決の可能性
審判で解決しない場合や、さらに争いが続く場合は、訴訟手続きに移行することもあります。これはいわゆる「遺産分割の裁判」として行われ、相続人同士が裁判で争う形となります。訴訟では、裁判所が証拠や主張をもとに法的に適正な判断を下し、遺産分割の方法を確定させます。
裁判手続きは、通常の民事訴訟と同様に、双方の主張や証拠をもとに進められるため、時間がかかることが一般的です。また、訴訟費用や弁護士費用などの負担も増大するため、可能な限り調停や審判での解決を目指すことが望ましいです。裁判での判決には法的拘束力があるため、最終的にはその判決に従って遺産分割が行われます。
5. 弁護士の活用
遺産分割がこじれた場合、早期に弁護士に相談することも有効です。遺産分割協議や調停、審判、裁判のいずれの段階においても、法律の専門家である弁護士のアドバイスや代理人としてのサポートが役立ちます。特に、相続人同士の感情的な対立が激しい場合や、相続財産が複雑な場合には、弁護士が関与することで冷静な話し合いが促され、解決が早まることがあります。
弁護士は、相続に関する法律や手続きについての専門知識を持っているため、遺産分割の際に法的に有効な解決策を提示してくれます。また、相続人間の交渉や家庭裁判所での手続きの際に代理人として動いてくれるため、当事者自身が直接争う必要がなくなり、精神的な負担を軽減することができます。
※司法書士にはこのような権限が法定されておりません。必ず弁護士にお問い合わせください。
6. もめないための事前対策
遺産分割がもめる原因の多くは、事前に適切な準備がされていないことにあります。これを防ぐためには、被相続人が生前に遺言書を作成し、遺産分割の方針を明確にしておくことが重要です。公正証書遺言であれば法的効力が確実であり、相続人同士の争いを未然に防ぐことができます。
終わりに
遺産分割協議がもめた場合、家庭裁判所の調停手続きや審判、さらには訴訟などの法的手続きを経て解決を図ることができます。しかし、法的手続きに移行する前に、できる限り冷静に話し合い、専門家の助けを借りることで、円満な解決を目指すことが大切です。相続人全員が納得できる形での解決を目指すためにも、早めの準備と適切なアドバイスが重要です。
遺言書の作成を考える際、多くの人は「書かなければ」と急いでしまいがちです。しかし、いきなり遺言書を書こうとしてもうまくいかないことがよくあります。遺言書は、財産をどのように分けるかや、自分が亡くなった後のことを記す重要な書類です。しかし、これを作成する前に、自分の財産や意向についてしっかりと現状を分析し、整理する必要があります。そこで、まずはエンディングノートの作成をお勧めします。市販のエンディングノートで十分ですが、この作業は後々の遺言書作成に向けて大きな助けとなるでしょう。
目次
1. エンディングノートとは?
2. エンディングノート作成のメリット
3. 遺産の範囲の確認
4. 自分の意思を臨場感を持って考える
5. エンディングノートを基にした遺言書作成
6. 終わりに
1. エンディングノートとは?
エンディングノートは、自分の人生の終わりに向けての情報や希望をまとめるためのノートです。遺言書と異なり、法的効力はありませんが、自分の意思を明確に家族に伝えるツールとして有効です。エンディングノートに記載できる内容は多岐にわたります。遺産の分割についてだけでなく、葬儀の希望や、親しい人に伝えたいメッセージ、医療や介護に関する希望なども含めることができます。これにより、亡くなった後のトラブルを避け、家族が円滑に手続きを進められるようにすることが目的です。
2. エンディングノート作成のメリット
エンディングノートを作成することで、まずは自分の現状を客観的に見つめ直すことができます。特に遺産の範囲を確認する作業は、遺言書を作成する上で極めて重要です。自分の資産や負債がどれだけあるかを整理し、そのすべてを書き出すことで、どのように遺産分割を進めるかの具体的なイメージが湧いてきます。これをせずに遺言書を作成すると、後になって「こんな財産もあったのか」と混乱が生じたり、誤解が生じてしまうことがあります。
また、エンディングノートには葬儀に関する希望も記載できます。「葬儀はどのように行いたいか」「どこで行いたいか」「どんな形式にしたいか」など、亡くなった後に家族が迷わないように、自分の意向を事前にまとめておくことができます。これにより、家族は故人の意思に従って葬儀を行うことができ、精神的な負担も軽減されます。
3. 遺産の範囲の確認
エンディングノートを作成する際にまず取り組むべきは、遺産の範囲を確認することです。これには、自宅や不動産、現金、預金、株式、保険、退職金、貴金属や絵画などの動産も含まれます。場合によっては、負債も遺産に含まれるため、それも明記しておくことが大切です。
また、デジタル遺産についても忘れずに記載することが重要です。インターネットバンキングやSNSアカウント、サブスクリプションサービスなど、デジタル遺産は現代社会において見過ごされがちですが、これらも適切に整理しておくことで、家族が手続きをスムーズに進められます。
4. 自分の意思を臨場感を持って考える
遺産分割や葬儀の希望を含め、エンディングノートに書き込む際には、自分の意思をできるだけ具体的に、臨場感を持って考えることが大切です。たとえば、遺産を分ける際には、相続人同士の関係や、それぞれの生活状況も考慮に入れる必要があります。単純に金額だけで分けるのではなく、それぞれがどのように受け取ることが一番良いのかを想像し、具体的に考えることが必要です。
さらに、財産だけでなく、家族や友人へのメッセージを記すことも有効です。遺言書では表現できない感謝の気持ちや思い出をエンディングノートに書き残すことで、家族にとっては大きな支えとなります。このように、細かな部分にも配慮することが、後々のトラブルを防ぎ、円満な相続を実現する鍵となります。
5. エンディングノートを基にした遺言書作成
エンディングノートが完成し、自分の遺産の範囲や意思が明確になったら、次に遺言書の作成に移ります。遺言書には法的効力があり、財産の分割や特定の相続人への遺贈など、具体的な内容を法的に確定するための手続きです。ここで重要なのは、エンディングノートで整理した内容を元に、専門家の助言を受けながら、法的に有効な形で遺言書を作成することです。
遺言書は、遺産分割に関して自分の意思を確実に伝えるための手段ですが、それだけでなく、家族間の争いを未然に防ぐ効果もあります。特に相続が複雑な場合や、特定の相続人に対して特別な配慮が必要な場合には、遺言書をしっかりと作成することが不可欠です。
遺言書は自筆で書くこともできますが、自筆証書遺言は法的要件が厳しく、要件を満たさないと無効になるリスクもあります。公正証書遺言であれば、公証人が作成するため、要件を満たすことが確実であり、後々のトラブルを防ぐことができます。
6. 終わりに
遺言書を作成する前にエンディングノートを用いて自分の現状を整理することは、円滑な遺言書作成のための重要なステップです。エンディングノートに記載することで、まずは自分の財産や意思を明確にし、次に遺言書を作成することで、法的に有効な形で自分の意思を遺すことができます。
遺言書は、ただ財産を分けるためのものではなく、家族への最後のメッセージでもあります。家族が迷わないように、また、争いを避けるためにも、早めにエンディングノートを作成し、遺言書を準備することが大切です。
遺言書を作成するタイミングについて、健康寿命や認知症発症年齢の統計を参考に検討することは、今後の人生設計において非常に重要です。高齢化社会が進む中、自分の意思を明確に遺すために、遺言書の作成は避けられないものとなりつつあります。特に、認知機能が低下する前にしっかりと法的な手続きを行うことが求められます。
ここでは、健康寿命と認知症の発症年齢を基に、遺言書作成を検討すべき最適な年齢について考察します。
目次
1. 健康寿命の現状
2. 認知症の発症年齢
3. 遺言書作成の最適な年齢
4. 遺言書作成を遅らせるリスク
5. 遺言書作成のタイミングとライフイベント
1. 健康寿命の現状
まず、「健康寿命」とは、日常生活に制限がない状態で生活できる期間のことを指します。厚生労働省の2020年の統計によれば、日本における平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳ですが、健康寿命は男性が72.68歳、女性が75.38歳となっています。この統計からわかるように、平均寿命と健康寿命の間には男性で約9年、女性で約12年の差があります。つまり、多くの人は健康寿命を超えた後、日常生活に何らかの支援が必要となり、認知機能の低下や身体的な不自由が生じやすくなります。
このデータを踏まえると、遺言書を作成するべきタイミングは、平均寿命を迎える前の健康寿命の範囲内で検討するのが合理的です。特に、日常生活に支障をきたす前に、しっかりと自分の意思を反映した遺言書を準備しておくことが重要です。
2. 認知症の発症年齢
次に、認知症の発症年齢に注目してみます。厚生労働省によると、日本における認知症の有病率は65歳以上の高齢者のうち約15%とされています。特に、85歳以上では約30%にまで上昇します。また、認知症の発症年齢の中央値は約80歳前後とされており、これは遺言書作成を検討する際の重要な指標となります。
認知症が進行すると、自分の意思を適切に表現することが難しくなり、法的な行為能力も失われるため、遺言書の作成が無効になる可能性があります。したがって、認知症を発症する前、すなわち70歳代までに遺言書を作成することが推奨されます。80歳を過ぎてからでは、認知機能の低下が始まっている可能性が高く、遺言書の作成自体が難しくなるリスクが高まるためです。
3. 遺言書作成の最適な年齢
これらの統計を踏まえると、遺言書を作成する最適な年齢は健康寿命が終わる前、すなわち60歳代後半から70歳代前半が理想的といえます。60歳代後半であれば、まだ身体的・精神的に余裕があり、十分な判断能力を持っていることが多いです。また、この時期に遺言書を作成することで、万が一の健康状態の悪化や認知症の発症に備えることができます。
特に、70歳代に差し掛かると認知機能の低下や他の健康リスクが増加し始めるため、早めに行動を起こすことが求められます。また、年齢が若ければ若いほど、将来に向けての修正や追加の遺言書を作成する余裕も生まれます。遺言書は一度作成すれば終わりではなく、ライフステージの変化に応じて内容を見直し、必要に応じて修正や更新を行うことが可能です。
4. 遺言書作成を遅らせるリスク
一方、遺言書作成を先延ばしにすることには多くのリスクが伴います。例えば、健康寿命を超えた後に作成を試みても、身体的・精神的な健康が悪化している場合、適切な判断ができず、法的に無効とされる恐れがあります。また、遺言書がないまま亡くなった場合、法定相続が適用され、遺族間でのトラブルが発生する可能性が高まります。特に、配偶者や子供が複数いる場合や、特定の相続人に特別な財産分配を希望する場合は、遺言書がないと問題が複雑化することが考えられます。
さらに、認知症が進行すると、成年後見制度の利用が必要になる場合もあります。成年後見制度では、本人の意思を十分に反映できないことが多く、財産分配や意思決定において本人の望む結果を得ることが難しくなります。そのため、認知機能が正常な状態のうちに、遺言書を作成しておくことが重要です。
5. 遺言書作成のタイミングとライフイベント
遺言書を作成する最適な年齢に加えて、ライフイベントに応じたタイミングも考慮すべきです。例えば、定年退職や子供の結婚、孫の誕生などの節目は、遺産の分配について見直す良い機会となります。また、財産の変動や家庭環境の変化(離婚、再婚、配偶者の死など)も遺言書を作成または更新する際の重要な契機となります。これにより、相続人間のトラブルを未然に防ぎ、遺産が望む形で分配されるように準備できます。
以上のように、健康寿命と認知症の発症年齢を基に考えると、遺言書を作成する最適な時期は60歳代後半から70歳代前半です。健康な状態で、自分の意思を明確に示し、家族や相続人に不必要な混乱や争いを引き起こさないためにも、早めの準備が重要です。遺言書作成を検討する際は、弁護士や司法書士などの専門家のアドバイスを受けることで、法的に有効で安心できる遺言書を作成することができるでしょう。
遺産分割協議を行う際には、多くの注意点が存在します。特に相続人間のトラブルを避け、公正かつスムーズに進めるためには、以下の5つのポイントを押さえることが重要です。
目次
1. 遺言書の確認
2. 相続人全員の参加
3. 遺産の範囲の確定
4. 遺留分の侵害に注意
5. 税金の問題を把握する
1. 遺言書の確認
遺産分割協議を始める前に、被相続人(亡くなった方)の遺言書があるかどうかを確認することが最優先です。
遺言書には、被相続人の意思が反映されており、その内容に従って遺産を分割する必要があります。公正証書遺言であれば家庭裁判所の検認は不要ですが、自筆証書遺言の場合は検認手続きが必要です。この検認を経ずに遺産分割を進めると、後々トラブルに発展する恐れがあるため、手続きは適切に進める必要があります。
遺言が存在しない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。
2. 相続人全員の参加
遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。1人でも協議に参加していない相続人がいる場合、その遺産分割協議は無効となり、後に無効確認訴訟が提起される可能性があります。したがって、遺産分割協議を行う前に、全ての相続人を特定し、全員に参加してもらうことが重要です。例えば、被相続人が再婚していた場合や、認知した子がいる場合は、相続人が誰になるのかを慎重に確認し、全員が協議に加わるよう手配します。
3. 遺産の範囲の確定
遺産分割協議を円滑に進めるためには、相続財産の範囲を正確に確定することが不可欠です。不動産や預貯金、有価証券、車両など、遺産に該当する財産を一つ一つ確認し、全ての相続人に情報を共有します。加えて、借金や未払金といったマイナスの財産も考慮する必要があります。相続財産の範囲を明確にしておかないと、後で財産が見つかった場合に再度協議が必要になり、相続人間での紛争が起こる原因になります。また、不動産の登記簿謄本や預貯金通帳の確認を怠ると、財産の過少申告や隠匿が疑われることがあり、信頼関係にヒビが入ることもあります。
4. 遺留分の侵害に注意
遺産分割協議を進める際に、遺留分についても注意が必要です。遺留分とは、一定の相続人(主に配偶者、子、直系尊属)に保障される最低限の相続分であり、被相続人が遺言で遺留分を無視して財産を分配することはできません。遺留分を侵害された相続人は「遺留分減殺請求権」を行使して、侵害された分の財産を取り戻すことができます。そのため、遺産分割協議の際には、遺留分を侵害しないように慎重に財産を分配することが大切です。特に、生前贈与や偏った遺言があった場合は、他の相続人の遺留分が減少していないか確認する必要があります。
ただ、中には、この協議の時に財産をもらわないようにしたので「相続放棄」したと勘違いされている方がとても多いです。この状態で、亡くなった方に多額の借金が判明した場合、遺産をもらわなかった相続人も債務を法定相続分負うことになります。※相続を知ったときから3ケ月以内に家庭裁判所に申述しないと、相続放棄(初めから相続人ではなかった)ができなくなりますので注意が必要です。
5. 税金の問題を把握する
遺産分割に関連する税金、特に相続税の問題も見逃せません。遺産分割協議によって相続税の額が大きく変わることがあります。例えば、土地や株式など流動性の低い資産を相続する場合、後にそれらの資産を売却しない限り、現金をすぐに得ることができず、相続税の支払いに苦労することがあります。また、分割の内容次第で、配偶者控除や未成年者控除、小規模宅地の特例などが適用される場合がありますので、相続税を少しでも軽減するために、適切な分割方法を考える必要があります。さらに、相続税の申告期限は相続開始後10か月以内と定められているため、遺産分割協議を早期に進めることが望まれます。
これら5つのポイントに注意しながら遺産分割協議を進めることで、相続人間のトラブルを最小限に抑え、スムーズに協議を完了することが可能です。遺産分割は感情的な問題が絡みやすく、相続人の間に対立が生まれやすい手続きです。したがって、必要であれば、専門家である司法書士や弁護士の助言を受けながら進めることが、長期的なトラブル回避に役立つでしょう。また、遺言書の作成や、生前対策をしっかり行うことで、相続人への負担を軽減することも重要です。
「遺産放棄」と「相続放棄」は、どちらも相続に関わる重要な選択肢ですが、その意味や手続き、効果に違いがあります。これらの違いを明確に理解することで、相続における適切な判断ができるようになります。ここでは、それぞれの定義、手続き、効果の違いについて詳しく説明します。
目次
1. 遺産放棄とは
2. 相続放棄とは
3. 遺産放棄と相続放棄の違い
4. 選択する際の注意点
結論
1. 遺産放棄とは
「遺産放棄」は、相続人が特定の財産や権利を受け取らない意思を示す行為です。これは、相続自体を全て放棄する「相続放棄」とは異なり、相続の一部を放棄することができるのが特徴です。例えば、相続人が複数いる場合に、不動産や現金など特定の財産に関して放棄することが考えられます。
遺産放棄の大きな目的の一つは、相続人間の話し合いで特定の相続財産の分配を調整することです。相続人同士が話し合って、一部の相続人がある財産を取得し、他の相続人が別の財産を取得する、といった柔軟な調整ができるのが遺産放棄の利点です。これにより、遺産の分配に関する争いを防ぎ、スムーズな相続手続きを進めることが期待されます。
しかし、遺産放棄は一度決めた後に取り消すことができません。放棄する財産や権利が何であるかを慎重に検討し、家族間で十分な合意を得ることが大切です。また、遺産放棄をしたとしても、他の財産については相続権を保持しているため、負債を相続する可能性がある点にも注意が必要です。
2. 相続放棄とは
一方、「相続放棄」は、相続人が一切の相続を拒否することを指します。これは、相続人が相続財産に対して持つすべての権利と義務を放棄する行為です。相続放棄をすると、財産だけでなく、借金やその他の負債についても相続しないことになります。
相続放棄の手続きは、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出することによって行います。相続放棄を希望する場合は、相続が開始されたことを知った時から3か月以内にこの手続きを完了しなければなりません。この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続人が財産や負債の内容を確認し、相続を引き受けるかどうかを判断するための時間です。
相続放棄の大きな特徴は、放棄した場合、最初から相続人ではなかったとみなされる点です。これにより、相続放棄をした相続人は相続財産の分割に一切関与せず、また相続に関連する債務も免除されます。このため、多額の負債がある場合や、不要な財産(例えば処理に費用がかかる不動産など)がある場合に有効な手段となります。
3. 遺産放棄と相続放棄の違い
両者の最も大きな違いは、「全体を放棄するか、一部を放棄するか」という点です。
遺産放棄は、特定の財産に対する相続権を放棄するものであり、他の財産は相続します。これにより、特定の財産に対する争いを避けたり、相続人間での調整を図ることが可能です。
相続放棄は、相続全体に対して放棄する行為で、相続人が相続財産や負債をすべて放棄する形になります。相続放棄を行うことで、相続人としての立場から完全に外れることになり、その後の相続手続きにも関与しません。
また、手続き面でも違いがあります。遺産放棄は家庭裁判所での手続きは不要ですが、相続放棄は裁判所への申述が必要です。また、相続放棄は3か月という期間制限がありますが、遺産放棄にはこのような明確な期間制限はありません。
4. 選択する際の注意点
遺産放棄を選ぶ際には、相続人間での話し合いを十分に行い、全員が納得できる合意を得ることが重要です。これができていない場合、後に相続人間でトラブルが生じる可能性があります。また、相続放棄を検討する際には、財産の中に負債が含まれているかを確認することが大切です。多額の負債がある場合、相続放棄をすることでその負債から免れることができますが、財産もすべて放棄することになるため、慎重な判断が求められます。
さらに、相続放棄を行う際には、他の相続人への影響も考慮する必要があります。例えば、第一順位の相続人全員が相続放棄を行った場合、相続権は次の順位の相続人に移るため、家族構成や関係者の意向を確認しておくことが大切です。
結論
「遺産放棄」と「相続放棄」は、いずれも相続の場面で利用される重要な手段ですが、その目的や効果は異なります。遺産放棄は、特定の財産に対する相続権を放棄することで、相続人間の調整を図るために利用されます。一方、相続放棄は、相続全体を放棄し、相続人としての立場から完全に外れる手続きです。それぞれの制度の違いを理解し、相続状況に応じて適切に選択することが重要です。相続問題は複雑で、専門家の助言を得ることで、より適切な判断ができるでしょう。
法律は、残念ながら知っている者の味方です。隣の人が言っていることを信じて、自分が相続放棄したと言っても、法的に効力が出るように「手続」を踏まなければ、3ケ月の期限切れで、相続放棄できなくなります。この時、被相続人(亡くなった方)に多額のお金を貸したという第三者が現れ、その有効な証拠も持っていた場合、法律はこの第三者の味方をします。
2024年4月に施行された相続登記の義務化は、全国の不動産所有者に大きな影響を与え始めています。この制度は、相続人が相続した不動産の登記を3年以内に行わなければならないというものです。これにより、未登記の不動産が減少し、不動産の管理や利用がより効率的に行われることを期待されています。しかし、実際の運用において、さまざまな影響が現れています。以下に、いくつかの主要な点を項目ごとにまとめます。
目次
1. 相続人への負担の増加
2. 未登記不動産の減少
3. 違反による罰則の適用
4. 地方自治体や法務局への負担
5. 地主や不動産オーナーへの影響
6. 不動産市場への影響
7. 長期的な社会的影響
1. 相続人への負担の増加
相続登記の義務化により、相続人は相続開始から3年以内に登記を行わなければなりません。これは従来、任意であった登記手続きを強制するものであり、特に遺産分割協議が難航する場合、相続人にとって大きな負担となります。
相続人間での調整が進まず、協議が長引くケースでは、登記が滞ることも考えられます。さらに、相続登記に必要な手続きや書類の準備には、時間や費用がかかります。特に不動産が複数にまたがる場合や、相続人が複雑に絡み合う場合、相続人にかかる負担は大きくなります。このような状況では、司法書士や弁護士など専門家の支援が欠かせませんが、コストの増加も避けられません。
2. 未登記不動産の減少
相続登記が義務化されたことで、相続が発生した不動産は登記されるようになり、これまで問題視されていた「未登記不動産」が減少することが期待されています。未登記不動産の増加は、所有者不明土地問題の原因の一つであり、公共事業や開発プロジェクト、土地利用において大きな障害となっていました。
義務化により、これまで相続登記が行われず、所有者が曖昧だった土地も、相続手続きが進められ、明確な所有者が判明するケースが増えるでしょう。これにより、土地の有効活用が進み、不動産市場の透明性も向上すると期待されています。
3. 違反による罰則の適用
相続登記の義務化には、罰則も伴います。相続登記を怠った場合、罰金が科せられる可能性があります。罰金の額は、それほど高額ではないものの、義務を怠った場合のペナルティがあることで、登記を放置するリスクが増大します。
この罰則の導入は、所有者が相続手続きを早急に進める動機付けになると考えられます。しかし、特に高齢者や相続手続きを把握していない相続人にとって、罰則の存在がプレッシャーとなり、負担が増すことも懸念されます。これにより、登記手続きのサポート体制の強化が求められています。
4. 地方自治体や法務局への負担
相続登記の義務化に伴い、法務局や地方自治体には相続登記の申請が増加しています。これにより、行政機関の業務負担が増加し、登記手続きの処理に時間がかかる場合もあります。特に登記申請が集中する時期には、処理の遅延が発生することが予想されます。
また、相続登記義務化により、相続人が手続きを怠った場合、行政がどのように対応するかという問題も浮上しています。未登記のままの不動産が放置されるケースに対して、行政がどこまで強制力を持って対応するのかは、今後の課題となるでしょう。
5. 地主や不動産オーナーへの影響
相続登記の義務化は、地主や不動産オーナーにも影響を与えています。特に、所有する土地や建物が多いオーナーにとって、相続が発生するたびに登記を行う必要があり、手続きや費用が重なります。さらに、相続人が遠方に住んでいる場合や、不動産が複数の自治体にまたがっている場合には、登記の手続きが煩雑になり、専門家への依頼が不可欠となるでしょう。
このような状況では、相続が発生する前に不動産の管理や整理を行う「生前対策」がより重要になります。生前に不動産の名義を整理し、相続時の手続きを簡素化することで、相続人の負担を軽減することが可能です。
6. 不動産市場への影響
相続登記の義務化は、不動産市場にも一定の影響を及ぼす可能性があります。これまで相続登記が行われていなかった不動産が登記されることで、流通に乗りやすくなり、不動産の取引が活発化することが期待されます。特に、長年未登記で放置されていた土地が売買可能になることで、土地の有効活用が進み、地域の発展にも寄与する可能性があります。
一方で、相続登記の手続きを行うこと自体が難しい場合や、相続人間での争いが発生した場合には、不動産の売却や活用が遅れるケースも考えられます。市場に流通する不動産の増加は期待されるものの、実際の影響は地域や状況により異なるでしょう。
7. 長期的な社会的影響
相続登記義務化の施行からまだ間もないため、長期的な社会的影響はこれから顕在化していくでしょう。しかし、現時点で見られる主な効果として、土地の所有者がより明確になることで、社会全体の不動産管理が効率化されることが期待されます。土地の有効活用が進むことで、農地や都市部の未利用地が活用され、経済活動や地域開発に好影響をもたらす可能性があります。
さらに、相続問題を未然に防ぐための意識が高まることで、相続に関する紛争が減少し、相続人同士の円滑な協議が促進されることも期待されます。
「所有不動産記録証明制度」は、2026年4月に施行予定の新たな不動産制度です。この制度は、相続時や不動産の管理に関する課題を解決するために設けられ、全国規模での不動産情報の把握を大幅に簡素化することを目的としています。
従来の不動産調査では、所有者が複数の市町村に不動産を所有している場合、各市町村役場で個別に調査する必要がありましたが、この制度により、一括して全国の不動産を確認できるようになります。
それでは、その内容を見ていきましょう。
目次
1.制度の最大のメリット
2.相続手続きにおける利便性
3.負不動産への対応
4.利用方法と注意点
5.今後の展望
1.制度の最大のメリット
所有不動産記録証明制度の最大のメリットは、「負不動産」と呼ばれる管理が困難な不動産も含めて、名義人が所有するすべての不動産を全国規模で洗い出せる点です。これまでは、不動産の調査が市町村ごとに分断されていたため、特に地方や複数の地域に不動産を所有している場合、その全体像を把握するのに手間と時間がかかっていました。
新制度では、法務局を通じて全国的な調査が可能となり、相続手続きが一層効率化される見込みです。
また、相続時に問題となることが多い「所有者不明土地」の解消にも役立つと期待されています。この問題は、特に地方部において、相続人が不動産の存在を知らなかったり、名義変更が長年行われていなかったりするケースで発生します。
所有不動産記録証明制度により、こうした所有者不明土地を事前に確認し、相続人間での適切な遺産分割が促進されるでしょう。
2.相続手続きにおける利便性
相続手続きにおいては、この制度が非常に有用です。被相続人がどの地域に不動産を所有しているかをまとめて確認することで、相続財産の全体像を早期に把握できるようになります。
これにより、遺産分割協議や相続登記の手続きがスムーズに進み、相続人間の争いやトラブルを未然に防ぐことが期待されます。
従来の方法では、不動産を正確に把握するために、各市町村で固定資産税の課税台帳(名寄帳)や登記簿を個別に取得する必要があり、特に複数の自治体にまたがるケースでは多大な時間と手間がかかっていました。
しかし、この制度により、法務局で一度の申請を行うだけで、全国の不動産を網羅的に確認できるため、非常に効率的です。
3.負不動産への対応
「負不動産」とは、管理が困難な土地や建物のことで、例えば維持管理コストが高い山林や空き家などが該当します。
これらの不動産は、所有者にとって負担となることが多く、相続時に放置されることもあります。所有不動産記録証明制度は、このような負不動産も含めて一括して把握できるため、早期に適切な対策を講じることが可能となります。
相続人が事前に不動産の管理や売却を検討することで、負担を減らすことができるでしょう。
4.利用方法と注意点
所有不動産記録証明書は、指定された法務局や登記所で申請することができ、申請にあたっては手数料が発生する予定です。
また、相続手続きにおいては、被相続人との関係を証明する書類や、その他必要な書類を提出する必要があると考えられます。具体的な申請手続きや手数料の金額は、今後の法務省の発表を待つ必要があります。
注意点として、登記情報が古い場合や、所有者の住所・氏名が変更されている場合は、正確な情報が取得できないことがあります。例えば、被相続人が住所変更を登記に反映していない場合、登記簿上の情報が最新でないことがあるため、早めに登記情報を更新しておくことが望ましいです。
5.今後の展望
所有不動産記録証明制度は、相続の際の不動産調査を大幅に簡素化し、特に地方や複数の不動産を所有する相続人にとって、大きな利便性をもたらすことが期待されています。
また、所有者不明土地や負不動産の問題解決にも寄与するため、社会的にも重要な役割を果たすでしょう。
2026年4月の施行に向けて、法務省や関連機関は具体的な手続きや制度の詳細を順次発表していく予定です。
相続や不動産管理に関心がある方は、早めに準備を進め、新制度の利便性を最大限に活用できるようにしておくことが重要です。
法定相続人とは、故人が遺言を残していない場合に、法律で定められた順序で相続権を持つ人々のことです。民法では、法定相続人の順位は親族関係に基づいて決められており、その順位ごとに相続の割合も異なります。
ここでは、法定相続人の一般的な順位と、養子縁組による相続人の数え方について説明します。
目次
1. 法定相続人の順位
2. 配偶者の相続権
3. 養子縁組による相続人の数え方
まとめ
1. 法定相続人の順位
法定相続人には、血縁や婚姻関係のある人々が対象となります。順位は次のように決められています。
第一順位:子(実子および養子)
故人に子がいる場合、子が第一順位の相続人となります。子が相続権を持つのは、実子と養子であり、婚外子も含まれます。子が複数いる場合は、法定相続分を平等に分割して相続します。また、子が既に死亡している場合、その子(孫)が代襲相続人となり、同様に相続する権利を持ちます。
代襲相続とは、相続人となるはずだった人が故人より先に亡くなっていた場合、その子が代わりに相続する制度です。例えば、長男が故人よりも先に亡くなっていた場合、その長男の子(故人にとっての孫)が代襲相続人となります。
第二順位:直系尊属(親など)
子がいない場合、故人の親や祖父母などの直系尊属が第二順位の相続人となります。親が健在であれば、親が相続人となり、親が既に死亡している場合は、祖父母が相続する権利を持ちます。この場合の相続分は、配偶者と直系尊属の間で分割され、直系尊属が複数いる場合でも、相続分は均等に分けられます。
第三順位:兄弟姉妹
子も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が第三順位の相続人となります。兄弟姉妹が複数いる場合は、均等に相続分を分け合います。兄弟姉妹が既に死亡している場合、その兄弟姉妹の子(甥や姪)が代襲相続人となりますが、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りとなります。つまり、甥や姪が代襲相続することはあっても、その子にまで相続権は及びません。
2. 配偶者の相続権
配偶者は常に法定相続人となり、他の相続人とともに相続します。配偶者の相続分は、他の相続人が誰であるかにより異なります。たとえば、子がいる場合は配偶者が1/2、直系尊属がいる場合は2/3、兄弟姉妹がいる場合は3/4を相続します。
3. 養子縁組による相続人の数え方
養子縁組をすることで、養子は実子と同じく法定相続人となります。養子の相続人としての数え方について、いくつかのポイントを説明します。
実子と養子の相続権の違い
養子も実子と同じく、第一順位の相続人としてカウントされます。養子であっても、実子と同様に遺産を相続する権利を持ち、実子と養子の相続分に差はありません。また、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類がありますが、どちらの場合でも養子は実子と同等の法定相続権を有します。
普通養子縁組と特別養子縁組の違い
普通養子縁組の場合、養子は養親の遺産だけでなく、実親の遺産も相続する権利を持ちます。つまり、養子となったとしても実親との法的な親子関係は残り、実親が死亡した際にはその財産を相続することができます。一方、特別養子縁組では、実親との親子関係が完全に断たれるため、実親の遺産を相続する権利はなくなります。特別養子縁組は、通常、子供が幼少のうちに行われることが多く、実親との関係が断絶されることが目的です。
養子の数による制限
日本では相続税対策として、複数の養子を迎えることがありますが、養子の数には相続税の計算上、一定の制限があります。税法上、相続税の基礎控除額を計算する際に、控除対象として認められる養子の数は、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までとされています。これを超える養子については、基礎控除の対象とはなりませんが、相続権自体は法律上有効です。
養子縁組による相続争いのリスク
養子が相続人になることで、他の相続人との間で相続争いが起こるケースも少なくありません。特に、実子と養子が相続人となった場合、遺産分割の際に不公平感が生まれることがあり、これが相続トラブルの原因となることがあります。このため、養子縁組を検討する際には、事前に遺言書を作成するなど、トラブル防止のための対策が重要です。
まとめ
法定相続人の順位は、故人の家族構成に応じて定まります。第一順位は子(実子および養子)、第二順位は直系尊属、第三順位は兄弟姉妹であり、配偶者は常に相続人となります。養子縁組によって養子も実子と同等の法定相続権を持ちますが、税法上の扱いには制限があることや、相続争いのリスクがある点に注意が必要です。養子縁組を含む相続計画を立てる際には、これらの要素を考慮し、遺言書の作成や専門家のアドバイスを受けることが有効です。
不動産登記簿に記載されている名義人の住所が、平成の大合併前の古い住所である場合、その住所の扱いには地域によって違いが生じることがあります。特に香川県の法務局では、「読み替え」という取り扱いが行われることがあり、この措置により、住所変更登記をせずに、登記簿上の旧住所が新しい住所として認められる場合があります。この記事では、不動産登記簿に記載された名義人の住所に関連する手続きの概要について、以下の2つのポイントを中心に説明します。
目次
1. 住所変更証明書が不要なケース
2. 資料で住所証明ができない場合の対応
まとめ
1. 住所変更証明書が不要なケース
通常、相続による所有権移転登記を行う際、被相続人の住所が大合併前のものである場合、住所変更を証明するために市役所や役場から住所変更証明書を取得し、添付書類として提出する必要があります。この証明書は通常無料で発行され、旧住所と新住所が一連のものであることを証明するための重要な書類として使用されます。
しかし、香川県内の法務局では、住所変更登記を行わなくても、登記簿上の旧住所が大合併後の新しい住所として「読み替え」してくれるため、住所変更証明書の提出が不要となるケースがあります。従来、住所変更証明書を取得して提出していた人にとって、この手続きの簡略化は大きなメリットとなります。証明書を用意するための手間や時間を節約できるうえ、書類作成の負担が軽減されるためです。ただし、この読み替えの措置は地域により異なるため、他の管区の法務局では対応が異なることがあります。したがって、相続手続きを行う際には、事前に該当地域の法務局に確認することが重要です。
2. 資料で住所証明ができない場合の対応
被相続人の住所が、取得した資料から証明できない場合は、別の手段を用いる必要があります。このような場合、通常は「権利証」(登記済証や登記識別情報)が有効な証拠となります。しかし、権利証を紛失している場合や、権利証そのものが存在しない場合、相続人全員が署名した「上申書」を提出しなければならないことがあります。この上申書には、相続人全員の実印による押印と印鑑証明書の添付が必要となります。
ここで注意すべき点は、印鑑証明書に関する取り扱いです。印鑑証明書には期限の制限がないものの、提出した印鑑証明書の「原本還付」が可能かどうかについては、法務局によって取り扱いが異なることがあります。インターネット上では、原本還付が可能であるとする情報と、そうでないとする情報が混在していますが、香川県の管区内の法務局では、原本還付は認められないという実例が報告されています。これは、提出された印鑑証明書が登記手続きのために法務局に保管されることを意味し、返却を希望する場合でもその原本は返却されないことがあります。
このように、法務局によって取り扱いが異なる点については、事前に各法務局に問い合わせを行い、地域ごとのルールを確認することが重要です。特に相続手続きでは、提出書類が多岐にわたるため、一つ一つの手続きを丁寧に確認しながら進める必要があります。
まとめ
不動産登記簿の名義人の住所に関して、香川県の法務局では住所変更登記を行わなくても新しい住所に読み替えることができるため、住所変更証明書が不要になる場合があります。また、登記簿上の住所を証明する資料がない場合には権利証や上申書が必要となり、印鑑証明書の原本還付については地域ごとに異なる取り扱いがあるため、香川県では還付ができないケースがあることに留意が必要です。これらの点を理解し、相続手続きにおける円滑な対応を進めるためには、法務局での事前確認が不可欠です。
相続手続きにおいて、被相続人名義の不動産登記簿上の住所が現在の住所や証明書類とつながらない場合、特定の対応が必要となります。通常、住所の証明には住民票の除票や戸籍の附票が利用されますが、これらが廃棄されている場合もあります。特に、除票や附票は保存期間が限られており、令和元年6月20日以前は、除票、附票は5年で廃棄されていたため、長期間経過している場合、これらの書類を取得することができませんでした。そのような場合でも、いくつかの代替手段が存在します。本記事では、住所を証明するための方法と、それが困難な場合に取られる追加の手段について解説します。令和元年6月20日以降は150年間と変更されました。
目次
1. 住民票の除票や戸籍の附票が取得できない場合の対応
2. 権利証や登記識別情報による証明
3. 上申書の提出
4. 固定資産税評価証明書などの名義人資料の提出
まとめ
1. 住民票の除票や戸籍の附票が取得できない場合の対応
被相続人の住所が登記簿上のものと異なる、またはつながらない場合、通常は住民票の除票や戸籍の附票を取得し、住所の連続性を証明します。除票や附票には、その人が過去に住んでいた住所の履歴が記載されており、これにより、登記簿に記載された旧住所と現在の住所を結びつけることができます。
しかし、前述の通り、これらの資料は保存期限があり、期限内に廃棄されてしまうことがあります。この場合、住所を証明する他の方法が必要となります。まず、戸籍の本籍地が表記されている住所と登記簿上の住所が同一であれば、それだけで同一人物であると認められるケースもあります。これは、特に地方の法務局においては、戸籍と登記簿の一致が重要な判断材料となるためです。
2. 権利証や登記識別情報による証明
戸籍の住所などでも住所のつながりを証明できない場合、次に利用できるのは「権利証」や「登記識別情報」です。権利証は、登記が完了した際に交付される書類で、被相続人が不動産の所有者であることを証明するものです。また、登記識別情報も同様に、不動産の登記が完了した際に発行される重要な情報です。
これらの書類が存在すれば、被相続人が当該不動産の所有者であることを確実に証明することができます。相続手続きにおいて、この権利証や登記識別情報を法務局に提出することで、住所の証明ができない場合でも、所有権の移転手続きを進めることが可能です。ただし、権利証や登記識別情報を紛失している場合や、相続が何代にもわたる場合には、これらの書類が存在しないこともあります。その際には、他の手段を検討しなければなりません。
3. 上申書の提出
権利証や登記識別情報が存在しない場合、次の手段として「上申書」を作成して提出する方法があります。この上申書には、相続人全員が署名押印し、実印を押したうえで、印鑑証明書を添付する必要があります。上申書は、被相続人が当該不動産の所有者であることを相続人全員で証明するための重要な書類です。
法務局は、相続人全員の同意と確認を求めるため、上申書に相続人全員の実印と印鑑証明書の提出が求められます。これにより、登記簿上の住所がつながらない場合でも、法務局はその人物が被相続人であることを判断し、所有権移転の手続きを進めることが可能です。ただし、印鑑証明書については、法務局によっては原本還付が認められないことがあるため、手続きを行う際は事前に確認しておくことが重要です。
4. 固定資産税評価証明書などの名義人資料の提出
これらの方法でも住所のつながりが証明できない場合、追加の証明資料が必要となることがあります。その一つが「固定資産税評価証明書」などの名義人に関する資料です。具体的には、過去3年分の固定資産税評価証明書や納税通知書を提出することが求められる場合があります。
固定資産税評価証明書は、毎年発行される不動産に関する評価額を示す証明書で、固定資産税の納税者が誰であるかを示す資料として利用されます。この証明書を3年分提出することで、名義人が一貫してその不動産に関する納税義務を果たしていたことが証明され、住所の連続性が曖昧な場合でも、所有者として認められる可能性が高まります。また、納税通知書も同様に、納税者としての証明となり得ます。
固定資産税評価証明書や納税通知書は、市町村の役場で取得することができるため、必要な場合はこれらの書類を準備して法務局に提出することが求められます。ただし、これらの資料は名義人の住所に関する直接的な証明ではなく、補足的な証明資料となるため、他の手段と併用して提出することが一般的です。
まとめ
被相続人の登記簿上の住所が現在の住所や証明書類とつながらない場合、まずは住民票の除票や戸籍の附票を取得して住所の連続性を証明します。しかし、これらの書類が廃棄されている場合や、十分な証明ができない場合には、権利証や登記識別情報を利用する方法があります。それでも証明できない場合には、相続人全員が署名押印した上申書の提出が求められることがあります。また、さらに証明が難しい場合には、固定資産税評価証明書などの名義人に関する過去3年分の資料を提出することで、住所の証明を補完することができます。
相続手続きにおいて、これらの書類を適切に準備することが重要であり、手続きが複雑になる場合は専門家の助言を仰ぐことが推奨されます。また、法務局によって対応が異なることがあるため、事前に必要な書類や手続きの確認を行うことが大切です。例えば、建物の保存登記が未了の物件で、表題部の住所がどうしても証明できない場合、上申書と固定資産税の評価証明書3年分両方を提出したというケースもあるようです。
相続において、「一次相続」と「二次相続」という概念があります。一次相続とは、被相続人が亡くなった際に最初に発生する相続を指し、二次相続は、その一次相続で相続を受けた配偶者が亡くなった際に再度発生する相続です。この二次相続に関しては、多くの人が見過ごしがちであり、一次相続の段階で適切な対策を講じなければ、相続人にとって大きな負担となることがあります。
目次
1. 二次相続の問題点
2. 二次相続に備えた解決方法
3. 相続税が発生しない相続における二次相続の手続き
4. 結論
1. 二次相続の問題点
一次相続の際に、被相続人の財産を全て配偶者に集中させる方法は、相続税の軽減策としてよく取られる手法です。配偶者は法定相続分相当額や、1億6,000万円までの相続財産について相続税がかからない「配偶者の税額軽減」という制度があるため、配偶者が全財産を相続しても、相続税の負担を抑えることができる場合があります。
しかし、この方法には大きなリスクが存在します。それは、配偶者がその後亡くなった際、二次相続で再度相続が発生する点です。一次相続で配偶者に財産を集中させていた場合、二次相続ではその配偶者が保有していた財産すべてが対象となり、配偶者のもともとの財産に加えて、一次相続で受け取った財産まで含めた遺産全体に対して相続税が発生する可能性があります。
例えば、一次相続の際に財産を配偶者に集中させた結果、その配偶者が後に亡くなった時には、子供たちは配偶者の遺産も含めて相続することになります。その際、一次相続で相続税が発生しなかったとしても、二次相続では遺産が大きくなっているため、相続税の負担が急増する可能性が高まります。これにより、結果的に二度の相続手続きと相続税の支払いが発生し、子供たちに多大な負担をかけてしまうことになります。
2. 二次相続に備えた解決方法
二次相続のリスクを回避するためには、一次相続の段階での計画的な相続対策が不可欠です。主な対策としては以下のものが挙げられます。
(1) 遺産分割の工夫
一次相続で配偶者に全財産を集中させるのではなく、子供たちにも一定の財産を分け与えることが考えられます。これにより、配偶者が亡くなった際に二次相続の対象となる遺産を減らし、相続税の負担を軽減することができます。また、配偶者が相続する分が少なくなることで、結果的に二次相続の際に遺産分割の手間も少なくなります。
(2) 生前贈与の活用
生前贈与は、二次相続を見越した相続対策として有効です。特に、年間110万円までの贈与は非課税となるため、これを利用して配偶者や子供たちに生前に財産を分け与えることで、二次相続の際の遺産総額を減らすことができます。生前に一定の財産を贈与しておくことで、後の相続手続きが簡素化される上、相続税の節税にも繋がります。
(3) 生命保険の活用
生命保険を活用することも有効な手段です。生命保険金は、500万円×法定相続人の人数分まで非課税となるため、この制度を利用して配偶者や子供に財産を残すことができます。生命保険金は相続財産には含まれないため、相続税の課税対象となる遺産額を減らすことができます。
3. 相続税が発生しない相続における二次相続の手続き
相続税が発生しない場合でも、二次相続を想定した相続手続きを進めることは非常に重要です。例えば、一次相続の際に配偶者が全ての不動産を相続した場合、配偶者が亡くなると再び二次相続のための相続登記が必要になります。しかし、一次相続の段階で将来の二次相続を見越した相続登記を行うことで、後の手続きを簡略化することが可能です。
具体的には、一次相続時に登記名義を配偶者に移す際、子供たちを含めた将来の相続人との間で事前に協議を行い、将来の二次相続時にスムーズに登記が行えるような体制を整えておくことが重要です。たとえば、配偶者が不動産を相続する際に、配偶者と子供たちの共同名義で登記することにより、将来的に配偶者が亡くなった後の相続登記の手間を省くことができます。これにより、配偶者が亡くなった際に再度相続登記を行う必要がなくなるため、手続きの簡略化に繋がります。
4. 結論
二次相続において、一次相続で配偶者に遺産を集中させることは、一見すると相続税の負担を軽減する良い策に見えますが、将来的な二次相続のリスクを考慮することが重要です。遺産分割の工夫や生前贈与、生命保険の活用などを通じて、相続税負担や手続きを軽減する対策を講じることが求められます。また、相続税が発生しない相続であっても、将来の二次相続を見越した相続登記を行うことで、二次相続時の手続きを省略し、スムーズに相続を進めることができます。
このように、相続対策は一次相続の段階から計画的に行うことが重要であり、将来的な負担を軽減するために、専門家のアドバイスを受けながら進めることをお勧めします。
重度認知症となると、自らの意思で法律行為を行う能力が失われるため、不動産の処分をはじめとした資産の管理・運用が大きな課題となります。認知症の進行が進むと、自己所有の不動産を処分することが事実上不可能になり、相続人が複雑な構成の場合には特に問題が顕著化します。以下では、法律的な対策について解説します。
目次
1.認知症後の法律行為の制限
2.現行の対策:「成年後見制度」
3.スポット後見の可能性と現状
4.事前の対策の重要性
5.終わりに
1.認知症後の法律行為の制限
法律行為を行うには「意思能力」が必要であり、重度認知症になると意思能力が失われるとみなされます。その結果、不動産売却や契約などの法律行為は無効となるリスクがあるため、本人が単独でこうした手続きを進めることは不可能です。さらに、相続人間の関係が複雑であれば、不動産処分の判断が合意に至らず、手続きがさらに困難となります。
2.現行の対策:「成年後見制度」
重度認知症の状態で法律行為を進めるには、成年後見制度を利用する必要があります。この制度では、家庭裁判所が選任した成年後見人が本人に代わって法律行為を行います。後見人は、不動産の売却を含む重要な財産管理に関して家庭裁判所の許可を得ることで対応します。ただし、この制度には以下のような課題があります。
①時間と手間がかかる
成年後見制度の利用には、家庭裁判所への申し立てが必要であり、手続き完了までに時間がかかります。
➁本人及び周りの家族の意思が反映されにくい
後見人は法律上適切な判断を行いますが、本人や世話をしている親族の意向を必ずしも完全に反映できるわけではありません。
③コストがかかる
後見人の報酬や裁判所の手続き費用が発生するため、経済的負担が増します。そして、その報酬は、飛行犬人が亡くなるまで続きます。
3.スポット後見の可能性と現状
成年後見制度の現行の形では、すべての財産管理を包括的に委任する必要があります。しかし、現場では特定の法律行為に限定して後見を行う「スポット後見」の需要が高まっています。スポット後見では、たとえば特定の不動産売却のみを後見人に委託する形を想定していますが、現在の法律制度にはまだ正式に組み込まれていません。このため、特定の行為だけを柔軟に依頼したいというニーズには応えられないのが現状です。
4.事前の対策の重要性
認知症となる前に適切な対策を講じることで、問題を未然に防ぐことが可能です。以下は主な対策例です。
①任意後見契約
意思能力が十分にあるうちに、自ら信頼できる人を後見人として指定し、契約を結ぶことができます。任意後見では、本人の意向を尊重した財産管理が可能となります。
➁遺言書作成
不動産を含む財産の処分方法を明確に遺言書に記載しておくことで、相続時のトラブルを減らせます。
③信託の活用
家族信託を活用することで、特定の財産について認知症後も柔軟に管理・運用が可能になります。不動産の処分についても、信託契約に基づいて柔軟に対応可能です。
5.終わりに
重度認知症になると、自らの意思で財産を管理・処分することは困難となり、現行制度では成年後見制度の利用が必須です。
しかし、制度の課題や手続きの煩雑さを考慮すると、認知症になる前の事前対策が極めて重要です。
任意後見契約や信託などを検討し、柔軟かつスムーズに財産管理が行える体制を整えることが、本人や家族の負担軽減につながります。
遺言書は、財産の分配や家族間のトラブル防止に重要な役割を果たします。しかし、いざ作成しようとすると、「どのように進めれば良いのか」という疑問が多く寄せられます。特に、遺言書に書ききれない個人の思いや日常的な希望を補完する手段として、エンディングノートを活用することが有効です。ここでは、遺言書作成に向けた具体的な前準備とエンディングノートの活用について解説します。
目次
1. 遺言書作成の目的を明確にする
2. 財産の全体像を把握する
3. 相続人の確認と意向の整理
4. エンディングノートを活用する
5. 遺言書作成の準備を進める
6. 定期的な見直しを忘れない
終わりに
1. 遺言書作成の目的を明確にする
まず、自分が遺言書を作成する目的を整理します。以下は主な目的です:
財産分配の明確化:家族間のトラブルを防ぎ、円滑な相続を実現する。
特定の人や団体への配慮:法定相続人以外の人や団体に財産を譲渡したい場合。
事業承継の計画:自営業や会社経営をしている場合、次世代へのスムーズな引き継ぎを確保する。
目的を明確にすることで、どの財産をどのように扱うべきかが整理され、次のステップに進みやすくなります。
2. 財産の全体像を把握する
遺言書を作成する前に、自分の財産と負債の状況を把握します。以下の手順を参考にしてください:
財産のリスト化
不動産、預貯金、株式、生命保険、貴金属、車両などの有形・無形資産を洗い出します。
負債の確認
借入金やローンなど、相続財産から差し引かれる負債も整理します。
評価額の算出
不動産や株式の価値を専門家に依頼して評価し、財産の総額を把握します。
このプロセスによって、相続人への分配額や遺言内容がより具体的に計画できます。
3. 相続人の確認と意向の整理
次に、自分の相続人が誰になるのかを確認します。これには、配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹などの法定相続人を確認し、遺留分を考慮した上で、各人にどのような財産を遺したいかを整理します。また、感謝の気持ちや今後の希望なども記録しておくと、遺言書作成の際に役立ちます。
4. エンディングノートを活用する
遺言書は法的拘束力のある文書ですが、書ける内容には限りがあります。一方、エンディングノートは法的効力こそないものの、自分の意思や希望を自由に記録できるツールです。以下の点で遺言書を補完します:
具体的な指示
日常的な希望(葬儀の方法や形態、親しい友人へのメッセージなど)を書き残せます。
財産管理以外の意向
ペットの世話、医療や介護に関する希望なども記録できます。
遺言書作成の下準備
財産のリストや分配希望を記録することで、遺言書作成時に情報を整理しやすくなります。
エンディングノートは、市販されている専用のノートを使うだけでなく、自分で用意したノートやデジタルツールを活用する方法もあります。
5. 遺言書作成の準備を進める
エンディングノートを活用して準備が整ったら、以下のステップに進みます:
遺言書の形式を選択する
法律上有効な遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。それぞれの特徴を確認し、自分に合った形式を選びます。
専門家への相談
弁護士や司法書士、公証人などの専門家に相談しながら、法的に適正な内容で作成します。特に、遺留分への配慮が必要な場合や相続人間でトラブルが予想される場合には、専門的なアドバイスが欠かせません。
6. 定期的な見直しを忘れない
遺言書やエンディングノートは、一度作成したら終わりではありません。家族構成の変化や財産状況の変更に応じて、定期的に内容を見直し、最新の状況に合わせて更新することが重要です。
終わりに
遺言書作成は、家族に対する最後の配慮であり、自分自身の意思を形に残す大切な作業です。財産の整理や相続人の確認といった準備に加え、エンディングノートを活用することで、よりスムーズに、そして家族に感謝の気持ちを伝えられる形で作成を進められます。早めの準備と見直しを心がけ、安心できる未来を築きましょう。
相続放棄は、相続人が被相続人の財産を一切引き継がないという決断をする場合に行われる手続きです。相続放棄を選択する理由はさまざまで、特に相続する財産よりも負債が大きいと判断された場合に選ばれることが多いです。しかし、財産や権利関係の複雑さ、家庭内の状況、または心理的な要因が背景にあることも少なくありません。以下、相続放棄が検討される代表的な事例をいくつか紹介します。
目次
1. 負債が財産を上回るケース
2. 財産が煩雑または価値がない場合
3. 家族関係の問題
4. その他の相続人への配慮
5. 手続き上の注意点
まとめ
1. 負債が財産を上回るケース
最も一般的な相続放棄の理由は、被相続人に借金やその他の負債が多く残っている場合です。相続は、財産だけでなく負債も引き継ぐため、相続人が放棄を選ぶことがあります。
事例: 負債の多い父親からの相続 Aさんの父親が亡くなり、相続が発生しました。しかし、父親は生前に事業を営んでおり、経営が悪化して大量の借金を残していました。Aさんは父親の残した財産を調査しましたが、少額の現金や数点の動産があるのみで、事業の負債が大きく残されていることが判明しました。Aさんは、この負債を相続してしまうと自身の生活に悪影響を及ぼすと考え、相続放棄を決断しました。
このように、相続人が負債を引き継ぐリスクを避けるために相続放棄が選択されることがよくあります。
2. 財産が煩雑または価値がない場合
相続財産が非常に複雑で手続きが煩雑になる場合や、価値のない財産が残っている場合も、相続放棄が検討されることがあります。たとえば、古い不動産や維持費がかかる物件が残されているケースでは、相続人がその管理や売却の手続きを行うことが負担になる場合があります。
事例: 維持困難な古い不動産 Bさんの母親が亡くなり、彼女に残された財産は、築数十年の古い家屋が含まれていました。この家屋は地方にあり、長年手入れがされていない状態でした。固定資産税や修繕費がかかることが予想され、さらに売却が難しい場所にあるため、Bさんはこの不動産を相続することに対して不安を感じました。手間と費用を考慮した結果、Bさんは相続放棄を選びました。
このように、価値が低いまたは維持費がかかる財産を避けるために相続放棄が検討されることがあります。
3. 家族関係の問題
相続放棄の背景には、家族間の関係が影響することも少なくありません。遺産相続に伴うトラブルや争いが予想される場合、相続人が意図的に関与しないために放棄を選ぶことがあります。また、被相続人との関係が悪かった場合、相続そのものに心理的な抵抗を感じることもあります。
事例: 疎遠だった親との相続 Cさんは父親と長年疎遠な状態でした。父親が再婚し、新しい家族との生活を優先していたため、Cさんとの関係は希薄でした。父親が亡くなった後、Cさんにも相続の権利があることが判明しましたが、Cさんは父親との関係が薄かったことから、相続に興味を持っていませんでした。さらに、父親の新しい家族との間で遺産分割協議が発生することを避けたかったため、Cさんは相続放棄を選択しました。
家族間の複雑な感情や人間関係が相続放棄の理由となることもあるのです。
4. その他の相続人への配慮
相続人が複数いる場合、相続放棄を選ぶことで他の相続人に全ての財産を譲るという配慮が行われることもあります。たとえば、配偶者や特定の家族に全財産を譲りたい場合や、経済的に困難な状況にある家族がいる場合、相続放棄が選ばれることがあります。
事例: 配偶者への配慮 Dさんは母親の相続人の一人ですが、母親の財産の大部分は父親との共同財産でした。Dさんは父親の生活を守るため、母親の遺産については自分の相続分を放棄し、父親に全ての財産を相続させることを望みました。Dさんは、父親が安心して生活できるようにとの配慮から、相続放棄を選びました。
このように、他の相続人のために相続放棄を行うことも少なくありません。
5. 手続き上の注意点
相続放棄を行う際には、家庭裁判所に対して正式な手続きを行う必要があります。相続放棄は、被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に申請しなければならず、その期限を過ぎると放棄が認められないことがあります。また、一度相続放棄をすると、撤回することはできませんので、慎重に判断する必要があります。
また、相続放棄を選んだ場合でも、次の相続人が負債を相続することになるため、複数の相続人がいる場合は、全員が協議の上で対応を決めることが推奨されます。
まとめ
相続放棄は、財産や負債、家族関係など様々な理由から検討される重要な選択肢です。負債が財産を上回る場合や、価値のない不動産を相続するリスクがある場合、または家族関係に配慮した判断など、個々の事情に基づいて慎重に検討することが求められます。相続放棄は一度行うと撤回できないため、財産や負債の内容をよく確認し、必要に応じて専門家の助言を得ながら進めることが大切です。
相続対策としての生命保険の活用は、遺産分割や納税資金の確保、節税効果など、多くの利点を持つ重要な手法の一つです。ここでは、その具体的な活用法について説明します。
目次
1. 遺産分割の円滑化
2. 納税資金の確保
3. 生命保険を活用した節税効果
4. 特定の相続人への財産の集中
5. 事前に決めた相続の意図を反映しやすい
6. 保険契約の設計に注意が必要
7. まとめ
1. 遺産分割の円滑化
生命保険は、遺産分割の手段として非常に有効です。例えば、不動産などの流動性が低い資産が多い場合、相続人間での遺産分割が難航することがあります。
不動産を現金に換えることは時間がかかり、相続人の間で分けにくいという問題があります。
しかし、生命保険金は指定された受取人に直接支払われるため、現金という流動性の高い資産として遺産分割に活用できます。これにより、他の相続人に対しても公平な遺産分配が可能になり、相続争いを防ぐことができます。
2. 納税資金の確保
相続税の納税資金を確保する手段としても生命保険は有効です。相続税は相続発生から10ヶ月以内に納付しなければなりませんが、納税に必要な現金が手元にない場合、不動産などの資産を売却する必要が生じることがあります。しかし、売却には時間がかかることがあり、納税期限に間に合わないこともあります。その点、生命保険金は迅速に受取人の手元に入るため、納税資金として活用することができます。特に、不動産や事業用資産が多いケースでは、相続税対策として生命保険を利用することが非常に有効です。
3. 生命保険を活用した節税効果
生命保険は相続税の課税対象にはなりますが、一定の非課税枠が設けられています。具体的には、「500万円 × 法定相続人の数」という計算式で非課税枠が決まります。例えば、法定相続人が3人であれば1,500万円までの生命保険金が非課税になります。この非課税枠を活用することで、相続税の負担を軽減することができます。生命保険の加入時にこの非課税枠を最大限に活用することで、相続財産全体に対する課税額を抑えることが可能です。
4. 特定の相続人への財産の集中
生命保険は受取人を自由に指定できるため、特定の相続人に対して財産を集中させることが可能です。例えば、家業を継ぐ長男には家業用の不動産や会社の株式を相続させ、他の相続人には生命保険金を相続させるという形で、財産分配を行うことができます。これにより、特定の相続人が不動産や事業資産をスムーズに引き継ぐことができ、他の相続人も適切に遺産を受け取ることができます。
5. 事前に決めた相続の意図を反映しやすい
遺言書による相続対策と異なり、生命保険は遺言書の内容に左右されず、指定した受取人に確実に保険金が渡るため、事前に決めた相続の意図を反映しやすいという特徴があります。遺産分割協議や遺留分請求の対象になりにくいため、相続が発生した後も受取人に対する財産移転がスムーズに行われる点も大きな利点です。
6. 保険契約の設計に注意が必要
ただし、生命保険を相続対策として利用する際には、契約内容に注意する必要があります。例えば、契約者・被保険者・受取人の関係によっては、所得税や贈与税の課税対象となる場合もあります。具体的には、契約者が親で被保険者が親、受取人が子供であれば相続税の対象となりますが、契約者が子供で受取人も子供の場合、贈与税が課される可能性があります。このように、契約者や受取人の設定次第で税負担が大きく変わるため、専門家と相談しながら契約を設計することが重要です。
7. まとめ
生命保険を活用した相続対策は、遺産分割や納税資金の確保、節税効果など多くの利点があります。
ただし、契約の設計には注意が必要で、適切な方法で活用することで、相続に伴うトラブルを未然に防ぎ、相続税負担を軽減することが可能です。生命保険の活用は、相続の円滑な進行と家族の負担軽減に貢献するため、早めに対策を講じることが望ましいでしょう。
相続に関して「子供がいない場合、全ての財産が配偶者に相続される」と思い込んでいる方は多くいますが、実際にはそうではありません。法定相続人の順位に基づき、配偶者以外の相続人が存在する場合は、配偶者が全ての財産を相続するわけではなく、遺産分割協議が必要になる可能性があります。
目次
1.法定相続人の順位
2.配偶者と直系尊属のケース
3.配偶者と兄弟姉妹のケース
4.解決方法: 遺言書の作成
5.放棄や遺留分の問題
6.まとめ
1.法定相続人の順位
まず、相続において法定相続人は民法によって定められています。法定相続人の順位は以下の通りです。
第一順位: 子供
子供がいる場合、配偶者と子供が共同で相続人となります。配偶者の法定相続分は1/2、子供の相続分は残りの1/2を子供の人数で分け合います。
第二順位: 直系尊属(父母、祖父母など)
子供がいない場合、親や祖父母など直系尊属が相続人となります。配偶者の相続分は2/3、直系尊属が1/3を相続します。
第三順位: 兄弟姉妹
子供も直系尊属もいない場合は、兄弟姉妹が相続人になります。この場合、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4を相続します。
したがって、子供がいないからといって自動的に配偶者に全ての財産が相続されるわけではなく、場合によっては配偶者以外の親族と相続分を分け合うことになるのです。
2.配偶者と直系尊属のケース
ご相談者のケースでは、子供がいないため、第二順位の直系尊属が法定相続人として登場する可能性があります。たとえば、被相続人の両親が存命であれば、配偶者が2/3、両親が1/3を相続することになります。また、両親がすでに亡くなっている場合でも、祖父母が生存していれば彼らが相続人になります。
この場合、配偶者が全ての財産を相続することを望んでいても、遺言書がなければ法定相続に従い、直系尊属との遺産分割協議が必要となります。仮に直系尊属が財産分与を求める場合、協議が整わなければ調停や裁判に発展するリスクもあります。
3.配偶者と兄弟姉妹のケース
さらに、被相続人の直系尊属もいない場合、第三順位の兄弟姉妹が相続人となります。配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4を相続します。兄弟姉妹との関係が希薄な場合でも、遺言書がなければ法律上の権利として遺産分割協議を行う必要があります。
兄弟姉妹が高齢であったり、疎遠であったりすると、協議の難航や財産分割を巡る争いが生じる可能性が高まります。このような場合も、配偶者が全財産を相続したいと望むのであれば、事前に対策を講じておくことが重要です。
4.解決方法: 遺言書の作成
配偶者に全財産を相続させたい場合、最も確実な方法は遺言書の作成です。遺言書があれば、被相続人の意思に基づき遺産分割が行われます。特に法定相続人が複数いる場合、遺言書がないと法定相続分に基づいて財産が分割されるため、配偶者が全ての財産を受け取ることは困難です。
遺言書を作成する際には、公正証書遺言にすることをおすすめします。公証人が関与するため、内容が法的に有効であることが確認され、また紛失や偽造のリスクが少ないため、遺言の確実な執行が期待できます。
5.放棄や遺留分の問題
直系尊属や兄弟姉妹が相続人となる場合でも、遺言書があれば配偶者に全財産を相続させることが可能ですが、直系尊属には遺留分という最低限の取り分が認められています。直系尊属の遺留分は法定相続分の1/2です。このため、直系尊属が遺留分を請求した場合、配偶者が全財産を受け取ることはできず、一定の割合を直系尊属に支払う必要が生じます。
一方で、兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、遺言書によって兄弟姉妹の相続分をゼロにすることが可能です。このため、兄弟姉妹が相続人の場合には、遺言書さえあれば、配偶者に全財産を相続させることが容易になります。
6.まとめ
今回のケースでは、子供がいないため、配偶者に全財産が相続されるとは限らず、法定相続人の順位に基づき直系尊属や兄弟姉妹との遺産分割協議が必要になる可能性があります。特に、直系尊属が相続人となる場合には、配偶者が全財産を相続することは難しくなります。
配偶者に全ての財産を相続させたい場合は、遺言書を作成することが最善の方法です。遺言書がなければ法定相続に基づいて財産が分割されるため、配偶者の希望が反映されないことがあります。
また、遺留分の問題にも注意が必要ですが、兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、遺言書によって配偶者が全ての財産を受け取ることが可能です。
代襲相続と数次相続は、どちらも相続において重要な概念ですが、それぞれのケースで相続人の取り扱いが異なります。特に養子縁組をしていた場合、縁組前の子供に関しては代襲相続が認められない一方で、数次相続においては権利が移転する可能性があります。これらの違いを理解することは、相続手続きにおいて非常に重要です。
目次
1. 代襲相続とは
2. 数次相続とは
3. 養子縁組における相続
4. 養子縁組における例外
5. 実務的な影響
まとめ
1. 代襲相続とは
代襲相続(だいしゅうそうぞく)は、本来相続人となるはずだった人が死亡している場合、その子供や孫などが代わりに相続する制度です。民法第887条に基づき、子が死亡している場合には、その子(孫)が代襲相続人となり、孫が死亡している場合にはさらにその子(ひ孫)が代襲相続人となります。代襲相続は、あくまで血縁による相続権の継承です。
代襲相続の特徴は、相続開始前に被相続人の子が死亡している場合に発生する点です。たとえば、祖父が亡くなり、祖父の子(父)がそれ以前に亡くなっていた場合には、その父の子(孫)が祖父の遺産を相続する権利を持つことになります。ここで重要なのは、代襲相続人は被相続人の直系卑属に限られ、兄弟姉妹の子には代襲相続が認められない点です。
2. 数次相続とは
数次相続(すうじそうぞく)は、相続開始後に相続人が死亡し、その相続分がさらに別の相続人に移転する場合を指します。数次相続は、一度相続権が確定した後に発生するため、通常の相続の延長線上にあるものといえます。
たとえば、父が亡くなり、その相続手続き中に母が亡くなった場合、母が受け取るはずだった相続分は母の相続人に引き継がれることになります。数次相続では、相続人の死亡時期によって次に相続権を持つ人が決定します。つまり、最初の相続手続きが終わる前に次の相続が発生することから、相続財産が二重に分配される形となるのが特徴です。
3. 養子縁組における相続
養子縁組が行われている場合、相続における取り扱いが変わります。養子は法的に実子と同じ相続権を持つため、養子縁組後は養親の相続権が発生します。ただし、縁組前の子供に関しては代襲相続は認められない点がポイントです。
たとえば、ある子供が祖父Aの相続に関して代襲相続人となるかどうかを考える場合、その子が養子縁組していた場合には、養親の相続に関しては権利を持ちますが、実親側の代襲相続権は失われる可能性があります。この取り扱いは、相続が養子縁組後に発生した場合に限定され、代襲相続の要件が満たされなくなるためです。
一方、数次相続の場合は、養子縁組前の相続人の権利がそのまま移転することがあります。たとえば、養子縁組した子供が自分の実親の相続権を既に確定していた場合、その子が亡くなった後、次の相続人が権利を継承する可能性があります。これは、数次相続が一度相続権が確定した後に発生するため、養子縁組の影響を受けないからです。
4. 養子縁組における例外
ただし、養子縁組に関連する相続の取り扱いには例外もあります。
たとえば、特別養子縁組の場合、実親との法的関係が完全に断絶するため、実親の相続において代襲相続や数次相続が認められないケースがあります。通常の養子縁組では実親との関係が維持されるため、実親側の相続権が完全に消滅することはありませんが、特別養子縁組の場合はその限りではないため、相続に影響を及ぼす可能性が高くなります。
5. 実務的な影響
相続手続きにおいて、代襲相続や数次相続の取り扱いが複雑になる場合があります。特に養子縁組が絡むと、法的な解釈が必要となり、事前にしっかりとした確認が求められます。代襲相続が発生するかどうか、数次相続の対象となるかどうかは、相続開始時の状況や相続人の関係性によって変わるため、司法書士や弁護士などの専門家に相談することが重要です。
また、遺言書を活用することで、養子縁組や相続の状況に応じた具体的な指示を残すことができます。養子縁組が行われた場合には、相続権に関する誤解や争いを避けるためにも、遺言書を通じて意向を明確にしておくことが推奨されます。
養子縁組をする場合、縁組前の子供については、代襲相続とはなりませんが、数次相続は対象になります。
まとめ
代襲相続と数次相続は、相続人の考え方が異なる二つの制度であり、特に養子縁組が絡むとその取り扱いが複雑になります。代襲相続では、縁組前の子供については代襲相続権が認められない一方、数次相続ではその権利が移転します。養子縁組や相続に関する法的な取り扱いについては、個別の状況に応じた確認と適切な手続きが必要となるため、専門家の助言を活用することが望ましいです。
日本国憲法の施行に伴う相続法の改正は、日本の法制度に大きな変革をもたらしました。この過渡期において、旧民法から新憲法に基づく新しい民法へと移行する際に、「日本国憲法の施行に伴う民法の応急措置に関する法律」(以下、応急措置法)が制定されました。この法律は、1947年(昭和22年)5月3日の日本国憲法の施行に伴い、旧民法の相続規定を改正し、新憲法の理念に沿った相続制度を準備するための一時的な措置として施行されました。
目次
1. 応急措置法の背景と目的
2. 旧民法における相続制度とその問題点
3. 応急措置法による相続制度の主な変更点
4. 応急措置法の施行後の影響と新民法への移行
5. まとめ
1. 応急措置法の背景と目的
応急措置法は、日本国憲法が掲げる新しい基本原則――特に平等の理念――に基づき、戦前の家父長制度に基づく相続法規を改正する必要がありました。旧民法のもとでは、家制度を中心とした家督相続が行われており、長男や戸主が家と財産を一括して相続する仕組みが取られていました。これは、家という単位が経済的・社会的に重要だった時代の制度ですが、日本国憲法では男女平等や個人の尊厳が重要な原則として採用されました。そのため、相続においても、家督相続ではなく、すべての相続人に対して平等な権利が与えられるべきとされました。
しかし、新しい相続制度の整備には時間がかかるため、この間を埋めるために応急措置法が施行されました。この法律の目的は、新しい憲法の理念に反しないように、旧民法の規定を改正・調整しながら、新しい民法が整備されるまでの間、暫定的に相続制度を運用することでした。
2. 旧民法における相続制度とその問題点
旧民法(明治民法)は、特に家督相続を中心に構築されており、以下のような特徴がありました。
家督相続の優先:相続においては、家督相続人である長男や戸主が家財を一括して受け継ぎ、他の子供や親族の相続権は極めて制限されていました。
女性の相続権の制限:女性の相続権は著しく制限されており、特に未婚の娘や後妻などは、ほとんど相続の権利を持たないか、極めて限られた範囲に留まっていました。
家制度の優先:個人の財産権よりも家の存続が重視され、家名を守ることが最優先されていたため、財産が家督相続人一人に集中することが一般的でした。
これらの点が、新憲法のもとでの平等な権利や個人の尊厳を損なうものであったため、改正が求められたのです。
3. 応急措置法による相続制度の主な変更点
応急措置法の施行により、旧民法の相続規定が一部修正され、新しい相続の枠組みが暫定的に導入されました。具体的な変更点は以下の通りです。
3.1 男女平等の相続権の確立
旧民法では、女性の相続権が極めて制限されていましたが、応急措置法では男女平等の原則が導入されました。これにより、男性だけでなく、女性も相続権を持つことが保証されました。これまで長男が優先されていた家督相続に代わり、子供たちが平等に相続することが可能となったのです。
3.2 家督相続の廃止
家制度を支えていた家督相続制度は応急措置法によって廃止されました。家督相続は、戸主(家長)が家の財産と地位をすべて受け継ぐ制度でしたが、これは家制度に基づくものであり、新憲法の理念に反するため、個別の財産を相続人間で分割する制度へと移行しました。
3.3 法定相続分の導入
応急措置法では、相続財産の分割について、法定相続分が明確に規定されました。これにより、相続人ごとの相続権が明確にされ、財産の公平な分配が図られるようになりました。具体的には、配偶者、子供、直系尊属、兄弟姉妹などの相続人がそれぞれ一定の相続分を持つことが定められました。
3.4 遺留分の保障
旧民法では、遺言による相続の自由が広く認められていましたが、応急措置法では、一定の相続人には最低限の相続分(遺留分)が保障されるようになりました。これにより、遺言で不当な分配が行われた場合でも、相続人が一定の財産を受け取る権利が守られました。
4. 応急措置法の施行後の影響と新民法への移行
応急措置法は、新民法が整備されるまでの一時的な措置として施行されましたが、この法律により、相続に関する多くの問題が改善されました。特に、男女平等の相続権の確立や、家督相続の廃止は大きな進展であり、新憲法の理念に沿った法制度への移行をスムーズに行うための重要な役割を果たしました。
その後、1947年に日本国憲法が施行され、翌1950年には改正された新しい民法(現行民法)が施行されました。新民法では、応急措置法で導入された原則が正式に定められ、相続においても完全な男女平等や個人の尊厳が保障されるようになりました。これにより、家制度から解放された現代の相続制度が確立され、相続人全員が平等に財産を分け合う仕組みが定着しました。
5. まとめ
「日本国憲法の施行に伴う民法の応急措置に関する法律」は、新憲法の理念に基づいて旧民法の相続制度を一時的に修正し、新しい相続制度の基盤を築くために制定されました。
この法律により、家督相続制度の廃止や男女平等の相続権が導入され、遺産相続における公平な分配が実現されました。
応急措置法は、新民法が施行されるまでの重要な橋渡しの役割を果たし、現在の相続制度の基礎を築いた重要な法律として位置づけられます。
明治31年(1898年)7月16日から昭和25年(1950年)5月2日までの間における相続制度は、旧民法(明治民法)によって規定されていました。特に、この時代の相続制度は「家督相続」と「遺産相続」という2つの異なる制度が存在しており、家制度(家族制度)に基づく相続形態が特徴的です。
目次
1. 家督相続と遺産相続の違い
2. 旧民法による家督相続の法的枠組み
3. 昭和25年の民法改正による変革
4. まとめ
1. 家督相続と遺産相続の違い
家督相続と遺産相続は、明治民法のもとで家制度を中心に展開されていました。
1.1 家督相続
家督相続とは、「家」を中心とした相続制度で、家を継承することが最も重要視されました。この制度では、家督(家の長たる地位)を相続する者を「家督相続人」とし、家督相続人が家の財産と地位を一括して受け継ぎます。家督相続には以下のような特徴がありました。
長男優先:家督相続は、原則として長男が相続人となり、他の兄弟姉妹は相続の権利を持たないか、非常に限定的でした。長男がいない場合には、次男やそのほかの親族が相続人となることがありましたが、基本的に「家を守る」という観点から、最も適格な者が家督を継承しました。
家制度の継続:家督相続は、単なる財産の相続だけではなく、家そのものの存続や家名を守ることが主目的でした。家は社会的な単位であり、個人の財産や権利よりも家の存続が重視されていたため、相続人は家を守る責務を負いました。
相続順位:家督相続は、家督相続人に定められた長男や家長による一括承継が原則でしたが、長男が死亡していたり、家を継げない場合には他の親族に相続権が移ることもありました。これにより、家の継承が確実に行われるように調整されていました。
1.2 遺産相続
一方で、遺産相続は家督相続とは異なり、個別の財産を相続する制度です。家督相続が家の存続を目的としているのに対し、遺産相続は故人の財産を親族間で分配することが目的です。
この制度では、家族や親族全員が関与する相続となり、家督相続の影響を受けない場合に適用されました。
財産の分割:遺産相続では、家督相続が行われない財産について、親族全員が相続に関わることができました。これは主に家督に属さない財産や家督相続人が相続できない財産が対象となりました。
遺産の平等な分配:家督相続が長男を中心とするものであったのに対し、遺産相続は親族間で比較的平等に財産が分割されました。遺産分割の際には、家族や親族全員で協議が行われ、遺産の分配が決定されました。
2. 旧民法による家督相続の法的枠組み
家督相続に関する規定は、明治民法のもとで明確に定められていました。特に以下の要素が家督相続に大きく影響を与えました。
2.1 戸主の地位
明治民法では「戸主」という家長の地位が非常に重視されており、家督相続はこの戸主の地位を受け継ぐことを中心に展開されていました。戸主は家族全体を統率し、家の財産や社会的な地位を維持する責任を負っていました。戸主の地位を継承する家督相続人は、家の存続を守り続ける責務を負ったのです。
2.2 家督相続の発生
家督相続は、主に以下の場合に発生しました。
戸主の死亡:戸主が死亡した場合、家督相続が発生し、長男などが戸主の地位を継承します。この場合、相続財産は家督相続人に一括して継承されます。
戸主の隠居:戸主が生前に隠居を決めた場合も、家督相続が発生します。隠居によって戸主が引退し、次世代の者に家督が引き継がれる形です。
2.3 家督相続人の条件
家督相続人になるためにはいくつかの条件がありました。
男子であること:原則として男子が家督相続人となり、女性が家督を継ぐことは例外的な場合を除いて認められませんでした。
長子であること:長男が優先的に家督相続人となりましたが、長男がいない場合や不適格とされた場合には、次男や他の男子親族が相続人となることもありました。
3. 昭和25年の民法改正による変革
昭和25年5月2日、戦後の民法改正により、家督相続制度は廃止され、現行の相続法に近い形での「遺産相続」が導入されました。
この改正は、家制度の解体を目的とし、個人の権利を重視する方向へと移行しました。家督相続が長男にのみ優先的に相続権を与えるものであったのに対し、改正後の民法では相続人全員が平等に財産を分け合うことが基本となりました。
この民法改正によって、家制度は法的には廃止され、相続においても個人の財産分配が重視されるようになったのです。この結果、男女平等の相続権が保障され、家族構成員全員が公平に遺産相続を行う権利を得ることになりました。
4. まとめ
明治31年7月16日から昭和25年5月2日までの相続制度では、家制度に基づいた家督相続が主流であり、家督相続人が家の財産と地位を一括して継承する形がとられていました。家督相続は長男を中心に行われ、家の存続と家名の維持が重視されていましたが、遺産相続では家督相続に属さない財産が親族全員で分割されました。
昭和25年の民法改正によって、家督相続制度は廃止され、家制度そのものが解体されることとなり、現代の相続制度の基盤が整えられました。この改正は、相続人全員に平等な権利を保障するという理念に基づいて行われたものであり、戦後の日本社会における大きな変革の一つでした。
遺贈(遺言により相続人以外が遺産を受け取る場合)の所有権移転登記手続きにおいて、遺言執行者が選任されているかどうかにより、申請方法や必要な書類が異なります。遺言執行者が選任されている場合、その者が単独で申請人となり、選任されていない場合は相続人全員が共同で申請することになります。ここでは、遺言執行者が選任された場合の代理権限の証明方法について、遺言執行者の選任方法に応じた添付書類について詳述します。
目次
1. 遺言執行者の代理権限とその役割
2. 遺言書による直接指定の場合
3. 遺言書に第三者指定がある場合
4. 裁判所指定の場合
5. 共同申請の原則と例外
6. まとめ
1. 遺言執行者の代理権限とその役割
遺言執行者は、遺言の内容を実現するための法的権限を持つ人物であり、相続財産の管理や分配、登記申請などを行います。遺言執行者が存在する場合、相続人や受遺者に代わって登記手続きなどを進めるため、遺言の実行がスムーズに進むことが期待されます。
遺言執行者の代理権限は、以下の3つの方法で選任される場合があります。
遺言書による直接指定
遺言書に第三者指定がある場合
裁判所指定の場合
これらの各選任方法に応じた、登記申請時に添付すべき書面を具体的に見ていきます。
2. 遺言書による直接指定の場合
最も一般的な遺言執行者の選任方法は、遺言者が遺言書において遺言執行者を直接指定するケースです。遺言者が自分の信頼する者(例えば親族や専門家)を遺言執行者として遺言書内で明示している場合、その者が遺言執行者として代理権限を持つことになります。
この場合、登記申請時に必要な添付書類は以下の通りです。
遺言書の原本またはその謄本:公正証書遺言であれば、公証役場で取得した謄本が必要となります。自筆証書遺言の場合、遺言書の検認手続きを家庭裁判所で経た後、検認済みの遺言書が添付されます。
遺言執行者の就任承諾書:遺言書で遺言執行者が指定されていても、執行者がその役割を承諾したことを証明する書面が必要です。この書面により、遺言執行者が正式にその職務を引き受けたことを確認します。
これらの書類により、遺言執行者の代理権限が適切に証明され、所有権移転登記が進められます。
3. 遺言書に第三者指定がある場合
次に、遺言書内で遺言者が遺言執行者を直接指定せず、第三者が遺言執行者を指定する権限を持つ旨が記載されている場合です。例えば、遺言者が「信頼できる弁護士に遺言執行者を選任してもらう」といった内容を遺言書に記載しているケースがこれに当たります。この場合、第三者によって遺言執行者が選任されます。
この場合の登記申請時に必要な書類は、以下の通りです。
遺言書の原本またはその謄本:遺言書に第三者が遺言執行者を指定する旨が記載されていることが確認できる書面です。
第三者による遺言執行者選任証明書:第三者が正式に遺言執行者を選任したことを証明する書面が必要です。この書面には、選任の経緯や選任された遺言執行者の氏名などが記載されている必要があります。
遺言執行者の就任承諾書:遺言執行者として指定された者が、その役割を引き受ける旨を証明する書類です。
第三者の指定が正当に行われ、遺言執行者がその役割を承諾したことが確認できれば、登記手続きが進められます。
4. 裁判所指定の場合
遺言者が遺言執行者を指定していない、あるいは遺言執行者が辞退するなどの理由で遺言執行者が存在しない場合、相続人や利害関係者は家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます。家庭裁判所が遺言執行者を選任する場合、選任された遺言執行者は裁判所の指示に基づき、遺言の執行を行うことになります。
この場合の登記申請時に必要な書類は、以下の通りです。
遺言書の原本またはその謄本:遺言書に遺言執行者が明記されていない場合でも、遺言の内容を確認するために必要です。自筆証書遺言であれば、検認済みの遺言書が必要です。
遺言執行者選任審判書:家庭裁判所が遺言執行者を選任した際に発行される審判書です。この書類により、遺言執行者が正式に選任されたことが証明されます。
遺言執行者の就任承諾書:遺言執行者が選任された後、その役割を引き受けたことを証明する書面です。
裁判所による遺言執行者の選任が確認され、遺言執行者が就任を承諾していれば、登記申請が可能となります。
5. 共同申請の原則と例外
遺言執行者がいない場合、所有権移転登記は相続人全員の共同申請によるものとなります。この場合、受遺者と相続人全員、あるいは受遺者が相続人の一人であれば、受遺者を除く相続人全員が共同して登記申請を行います。
また、遺言執行者が選任されている場合、原則としてその遺言執行者が単独で登記申請を行います。遺言執行者は遺言の内容を実現するための法的権限を持つため、他の相続人や受遺者の同意を得ることなく、単独で申請手続きを行うことが可能です。
6. まとめ
遺贈による所有権移転登記において、遺言執行者の選任があるかどうかで手続きの流れが異なります。遺言執行者が選任されている場合は、その者が単独で代理権限を持ち、登記申請を行います。遺言執行者の選任方法に応じて、必要な書類は異なり、遺言書による直接指定、第三者による指定、または裁判所による指定の各場合に応じた添付書類が必要です。
適切な書類を用意し、手続きを円滑に進めることが重要です。
慣れていない方は、事前に家庭裁判所に相談するか、専門家に相談しましょう。
民法第941条に基づく相続財産の分離は、相続人と債権者、受遺者などの利害関係者が一定の保護を受けるために行われる手続きです。相続財産分離は、相続開始後に相続財産を相続人の個人的な財産と区別する制度であり、相続財産そのものを相続債権者や受遺者のために確保することを目的としています。
目次
1. 民法第941条の背景と目的
2. 相続財産の分離を請求できる者
3. 相続財産分離の手続き
4. 相続財産分離後の所有権移転登記
5. 相続財産分離の意義
6. まとめ
1. 民法第941条の背景と目的
民法第941条では、相続開始後に、相続人の債権者が相続人の個人的な債務を相続財産から回収しようとすることを防ぐために、相続財産と相続人の個人財産を区別する「相続財産の分離」が規定されています。この制度は、主に相続債権者や受遺者が、相続財産を優先的に保護し、相続人の個人的な債務から守るために設けられています。
具体的には、相続人が負う個人的な債務が大きい場合に、相続財産がその返済に使われてしまうことを防ぎ、相続債権者や受遺者が正当な権利を行使できるようにする制度です。このため、相続財産の分離手続きが適用されるのは、相続人の個人的な債務が多額であり、相続債権者が自らの債権を回収するために相続財産を確保する必要がある場合に限定されます。
2. 相続財産の分離を請求できる者
相続財産の分離を請求できるのは、以下の者です。
相続債権者:相続財産に対して請求権を有する者。たとえば、故人が生前に借り入れたお金を返済していない場合、その債権者が相続財産の分離を請求することができます。
受遺者:遺言によって特定の財産を譲り受ける権利を有する者です。受遺者も相続財産を確保するために分離を請求することができます。
これらの者は、相続開始後に家庭裁判所に対して相続財産の分離を請求することができます。請求の期限は、相続の開始を知った時から3ヶ月以内となっています。
3. 相続財産分離の手続き
相続財産分離の手続きは、家庭裁判所に対して「相続財産分離の申立て」を行うことから始まります。具体的な流れは次の通りです。
(1)家庭裁判所への申立て
相続債権者または受遺者は、相続が開始されたことを知った日から3ヶ月以内に、故人が最後に住んでいた地域を管轄する家庭裁判所に対して相続財産分離の申立てを行います。この際、申立書には以下の情報を記載します。
申立人(相続債権者または受遺者)の氏名や住所
被相続人(故人)の氏名や住所、生年月日、死亡日
相続人の情報
相続財産の内容
相続財産分離を求める理由
(2)裁判所による調査と判断
家庭裁判所は、申立て内容に基づいて調査を行い、相続財産分離の必要性を判断します。必要があると認められれば、裁判所は相続財産の分離を決定します。この決定がなされると、相続財産は相続人の個人財産とは別に扱われ、相続債権者や受遺者の権利が優先されます。
4. 相続財産分離後の所有権移転登記
相続財産の分離が決定された場合、相続財産に含まれる不動産については所有権移転登記が必要となります。この際、所有権移転登記の原因欄には「相続財産分離」と記載し、家庭裁判所の決定を証明する書類を添付する必要があります。
(1)原因を「相続財産分離」とする場合の真正な添付書類
所有権移転登記の際に、原因として「相続財産分離」を記載する場合、以下の添付書類が必要です。
家庭裁判所の決定書の正本:相続財産分離の決定が下されたことを証明する書類です。これは、家庭裁判所から発行されます。
被相続人の死亡証明書:被相続人が死亡したことを証明するために必要です。戸籍謄本や死亡届がこれに該当します。
相続人の戸籍謄本:相続人を確認するために必要です。相続財産が誰に渡るかを明確にするための重要な書類です。
不動産登記事項証明書:相続財産に不動産が含まれている場合、その不動産の現状を確認するために必要です。
(2)所有権移転登記の手続き
所有権移転登記の手続きは、通常の相続登記と同様に法務局で行われます。ただし、相続財産分離の場合は家庭裁判所の決定が必要であるため、一般的な相続とは異なる書類が必要となります。登記申請書には、原因として「相続財産分離」と明記し、決定書の添付を忘れないように注意が必要です。
5. 相続財産分離の意義
相続財産分離は、相続人の個人的な債務から相続財産を守り、相続債権者や受遺者の権利を確保するための重要な手続きです。この制度があることで、相続人が多額の個人債務を抱えている場合でも、相続財産がその返済に使われることを防ぎ、故人が残した財産が正当に分配される可能性が高まります。
相続が発生すると、遺産分割や相続税の申告など複雑な手続きが発生しますが、相続財産分離を適切に行うことで、相続に関わる利害関係者全員の利益を守ることができます。また、分離手続きによって債権者や受遺者が優先的に保護されることで、相続人の間でも公平な財産分配が実現されやすくなります。
6. まとめ
相続財産分離は、相続人の個人債務と相続財産を明確に分けるための重要な制度であり、相続債権者や受遺者の権利を守るために設けられています。手続きには家庭裁判所への申立てが必要であり、所有権移転登記の際には「相続財産分離」として真正な添付書類を用意する必要があります。適切な手続きと書類の準備を行うことで、相続に伴うトラブルを未然に防ぎ、関係者全員の権利を保護することができます。
公正証書遺言は、遺言者の意思を確実に残すために公証役場で作成される遺言書です。遺言の内容が法的に有効であることを保証し、後のトラブルを防ぐために、専門家である公証人が遺言作成をサポートします。公正証書遺言の作成には特定の書類を提出する必要があり、手数料もかかります。ここでは、遺言作成に必要な書類と手続き、費用について詳しく説明します。
目次
1. 公正証書遺言の概要と特徴
2. 公正証書遺言作成に必要な書類
3. 証人の選定と必要書類
4. 公正証書遺言の作成手数料
5. 公正証書遺言作成の流れ
6. まとめ
1. 公正証書遺言の概要と特徴
公正証書遺言は、公証人が遺言者の口述を基に作成する公的な文書です。
遺言者が遺言内容を公証人に伝え、それを公証人が文章化し、遺言者および証人が署名・押印して完成します。遺言書は公証役場で保管され、万一遺言書の紛失や改ざんがあっても、正確な内容を確認することが可能です。
また、遺言執行の際に家庭裁判所の「検認」手続きが不要であるため、手続きが円滑に進みます。
2. 公正証書遺言作成に必要な書類
公正証書遺言を作成する際には、以下の書類を公証役場に提出する必要があります。
(1)本人確認書類
遺言者が自身の意思で遺言を作成していることを確認するため、本人確認書類が必要です。具体的には、以下のいずれかを提出します。
運転免許証
パスポート
マイナンバーカード
住民票の写し(写真付きの身分証明書がない場合)
本人確認は非常に重要で、遺言者が意識清明であることを確認するためにも行われます。遺言者が高齢であったり、認知症の初期症状がある場合は、医師の診断書が求められることもあります。
(2)印鑑登録証明書
遺言書には遺言者の実印が押印されるため、印鑑登録証明書を提出する必要があります。これは、遺言書の作成に使用する印鑑が正式なものであることを証明するためです。
(3)財産に関する書類
遺言書で取り扱う財産の特定が必要なため、財産に関する書類が必要です。具体的には以下のような書類です。
不動産登記事項証明書:不動産を遺言に含める場合、不動産の登記事項証明書が必要です。これは法務局で取得できます。
固定資産評価証明書:不動産の価値を明らかにするために使用します。固定資産税の計算に基づく評価額が記載されています。
預貯金通帳の写し:銀行口座の残高などがわかるように、遺言で取り扱う預貯金に関する情報を提出します。
株式や債券の明細書:証券会社から発行される明細書を提出し、株式や債券の存在と価値を証明します。
(4)相続人に関する書類
遺言書には、遺言者が誰に財産を譲り渡すかを明記するため、相続人や受遺者(財産を受け取る人)に関する情報が必要です。具体的には以下の書類が求められます。
相続人の戸籍謄本:相続人が誰であるかを確認するために必要です。
受遺者の住民票:遺産を受け取る人の現住所を確認するために必要です。
3. 証人の選定と必要書類
公正証書遺言の作成には、2名の証人が立ち会う必要があります。証人は、遺言の内容に利害関係がない人でなければなりません。具体的には、以下の人は証人になれません。
相続人や受遺者、その配偶者や直系血族
公証人の配偶者や4親等内の親族
公証役場の職員
証人の本人確認書類として、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書が必要です。証人が用意できない場合は、公証役場で証人を手配してもらうことも可能です(別途手数料がかかります)。
4. 公正証書遺言の作成手数料
公正証書遺言の作成には、手数料がかかります。手数料は遺言書に記載する財産の評価額によって変動します。以下は、手数料の目安です。
100万円以下の財産:5,000円
100万円超~500万円以下の財産:11,000円
500万円超~1,000万円以下の財産:17,000円
1,000万円超~3,000万円以下の財産:23,000円
3,000万円超~5,000万円以下の財産:29,000円
5,000万円超~1億円以下の財産:43,000円
1億円を超える財産については、財産の額に応じてさらに手数料が上がります。また、証人が公証役場で手配される場合には、1名あたり約6,000円の追加手数料が必要です。手数料は公証役場での支払いが基本ですが、事前に見積もりを依頼しておくと安心です。
5. 公正証書遺言作成の流れ
公正証書遺言作成の一般的な手順は以下の通りです。
公証役場へ事前相談
遺言の内容や必要な書類について、公証人と事前に打ち合わせを行います。この時点で、遺言者の意向を明確にし、必要書類を揃える準備をします。
必要書類の準備
遺言者本人と相続人、財産に関する書類を準備します。
公証人との面談と遺言書作成
公証人が遺言者の口述内容をもとに遺言書を作成します。証人2名の立会いのもと、遺言者は内容を確認し、署名・押印を行います。
公証役場での保管
作成された公正証書遺言は、公証役場に保管されます。遺言書の原本は公証役場に残され、遺言者には謄本が渡されます。
6. まとめ
公正証書遺言は、遺言の有効性を保証し、相続におけるトラブルを未然に防ぐための有力な手段です。作成には公証役場での手続きや手数料が必要ですが、その分信頼性が高く、法的効力も強固です。遺言内容が明確で、遺族や相続人に対する安心感を与える手続きとして、特に財産が多く複雑なケースでは公正証書遺言の作成が推奨されます。
生前贈与は、相続税の節税対策として効果的な手段です。財産を生前に贈与することで、相続時の課税対象となる財産を減少させ、相続税負担を軽減できます。
ここでは、代表的な節税方法をいくつか紹介します。
目次
1. 贈与税の基礎控除
2. 相続時精算課税制度
3. 教育資金の一括贈与制度
4. 結婚・子育て資金の一括贈与制度
5. 住宅取得資金の贈与税非課税制度
6. 生命保険を利用した贈与
結論
1. 贈与税の基礎控除
毎年利用できる贈与税の基礎控除額は、1人当たり年間110万円です。これを「暦年贈与」といい、親や祖父母が子や孫に毎年110万円以下の金額を贈与すれば、贈与税は課されません。この方法を長期間継続することで、相続財産の額を段階的に減らすことができ、相続税の節税効果が期待できます。
ただし、この暦年贈与には注意が必要です。相続開始前の3年間に行われた贈与については、相続財産に含まれ、相続税の対象となります。つまり、贈与があまりに直近だと、節税効果が減少する可能性があるため、計画的な贈与が重要です。
2. 相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母が、20歳以上の子や孫に対して贈与を行う際に利用できる制度です。この制度を利用すると、2,500万円までの贈与について贈与税が非課税となります。2,500万円を超える部分には、一律20%の贈与税がかかりますが、贈与を受けた財産は、相続時に贈与時の評価額で相続財産に組み込まれます。
この制度の利点は、2,500万円までの大きな贈与が非課税になる点ですが、デメリットとして、相続時にその贈与が再計算されるため、最終的な相続税の負担が増える可能性があります。また、いったんこの制度を選択すると、その後の贈与もすべて相続時精算課税制度の対象となり、暦年贈与の基礎控除が使えなくなるため、慎重な判断が求められます。
3. 教育資金の一括贈与制度
祖父母が孫に対して教育資金を一括で贈与する際に利用できるのが、教育資金の一括贈与制度です。この制度では、贈与された金額が1,500万円まで非課税となります。贈与された資金は、授業料や塾の費用など教育にかかる支出に充てることができます。ただし、孫が30歳になるまでに使い切れなかった残額は贈与税の課税対象となります。
この制度は、子や孫の教育費用を早めに準備することで相続財産を減らし、相続税を節税する有効な手段となります。しかし、教育資金の贈与はその使途が厳密に制限されており、適切な使い道でない場合は贈与税が課せられるため、利用には注意が必要です。
4. 結婚・子育て資金の一括贈与制度
結婚や子育てにかかる資金を贈与する際に利用できる制度です。この制度では、1,000万円までの贈与が非課税となります。
結婚費用には300万円までの制限があり、残りは子育て資金として使うことができます。この資金は、結婚費用、出産費用、育児費用、保育費用、学童費用など、幅広い目的に使用できるため、利用の幅が広いのが特徴です。
ただし、贈与を受けた子が50歳までに使い切らなかった場合や、贈与者が亡くなった際には、残額が相続税の課税対象となります。また、使い道が限られているため、他の目的で使用することはできません。
5. 住宅取得資金の贈与税非課税制度
住宅購入のために資金を贈与する場合に利用できる制度です。この制度では、贈与を受けた人が新築や住宅の購入、増改築を行う際に、一定の条件を満たせば、最大1,000万円(消費税率により異なる)が非課税となります。この制度を活用することで、贈与税を負担せずに多額の資金を生前贈与することが可能となり、相続財産の減少に繋がります。
ただし、適用には厳しい条件があり、贈与を受けた者の年収制限や住宅の取得目的など、細かな要件を満たす必要があります。加えて、この制度も相続時精算課税制度と同様に、一度適用を選択すると他の贈与税非課税制度を利用できなくなる場合があるため、適用前に十分な確認が必要です。
6. 生命保険を利用した贈与
生命保険を活用することも、節税対策として有効です。被相続人が保険契約者となり、子や孫を受取人に指定して生命保険に加入することで、相続財産の一部を生命保険金という形で非課税で渡すことが可能です。生命保険には「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠があるため、この枠を利用することで大きな節税効果が期待できます。
さらに、保険料を贈与として毎年少額ずつ渡すことで、贈与税の基礎控除も活用できます。この方法により、相続発生時にまとまった額を非課税で相続人に渡すことが可能となります。
結論
生前贈与を活用した節税対策は、相続税の負担を軽減するための重要な手段です。特に、毎年の暦年贈与や相続時精算課税制度など、計画的に利用することで、相続財産の減少が期待できます。また、教育資金や住宅取得資金など、目的に応じた非課税制度を活用することも有効です。ただし、各制度にはそれぞれ適用条件や制限があり、誤った利用は逆に税負担を増やす可能性があるため、事前に税理士のアドバイスを受けることを推奨いたします。
遺産分割協議を行う際、特別受益者がいる場合には特別な注意が必要です。特別受益者が受け取った生前贈与や財産は、遺産分割に影響を与えるため、正しく処理しないと協議が無効になる可能性があります。このような場合、「特別受益証明書」を準備することで、特別受益者が他の相続分に影響を与えないことを証明し、遺産分割協議を有効に進めることができます。この記事では、特別受益証明書の必要性や具体的な記載内容について詳しく解説します。
目次
0. 特別受益者を除いた遺産分割協議について
1. 特別受益証明書の目的
2. 特別受益証明書に必要な項目
3. 特別受益証明書の作成方法
4. 特別受益証明書の法的効果
5. まとめ
0. 特別受益者を除いた遺産分割協議について
特別受益者とは、被相続人(亡くなった人)から生前に特別な利益を受け取った相続人のことを指します。これは、被相続人が生前に特定の相続人に対して、通常の相続分以上の財産や利益を与えた場合に、その利益を相続財産の一部として扱うための概念です。この制度は、他の相続人との公平を保つために設けられています。
この特別受益者がいる場合、遺産分割協議においてその特別受益者を除外して協議を行った場合、その遺産分割協議は無効となります(登研507・198)。特別受益者とは、被相続人から生前贈与や婚姻、養子縁組の際に財産の譲渡を受けた相続人を指し、特別な利益を享受したと見なされます。遺産分割の際には、この特別受益分を考慮に入れる必要があるため、特別受益者を含めた遺産分割協議が必要です。
しかし、特別受益者がいる場合でも、ある手続きを踏むことで、無効となっている遺産分割協議を有効にすることが可能です。そのための方法として、「相続分のないことを証する書面(特別受益証明書)」を作成することが求められます。この証明書は、特別受益者が自分の相続分が既にないことを承認するための書類であり、法的効力を持つものです。以下では、特別受益証明書について詳しく解説し、その要件や作成方法、注意点についてまとめます。
1. 特別受益証明書の目的
特別受益証明書は、特別受益者が既に相続分を得ており、これ以上遺産の分割を求めないことを証明するための書類です。この書面があることで、特別受益者が遺産分割協議に加わらなくてもよいことが証明され、残りの相続人のみで遺産分割協議を有効に行うことが可能となります。特別受益者が証明書に署名することで、相続分に関する主張を放棄し、遺産分割協議の妥当性が確認されることになります。
2. 特別受益証明書に必要な項目
特別受益証明書を有効にするためには、いくつかの重要な項目を記載する必要があります。これらの項目は、特別受益者が自分の権利を明確に放棄することを確認し、法的に問題のない形で記録するために不可欠です。具体的には、以下の内容が含まれることが求められます。
①被相続人の情報
まず、特別受益証明書には被相続人(故人)の正確な情報を記載します。これには、被相続人の氏名、生年月日、死亡日、最後の住所地などが含まれます。被相続人の情報を正確に記載することで、どの相続に関する証明書であるかが明確に特定されます。
➁特別受益者の情報
次に、特別受益者の情報を詳しく記載します。特別受益者の氏名、住所、生年月日などを記載し、この特別受益者が相続においてどのような立場であるかを明示します。また、特別受益者が相続人であることと、相続分について放棄する意思を明確に表明することが求められます。
③特別受益の内容
特別受益証明書には、特別受益者が既に受け取った特別受益の内容を具体的に記載します。これには、被相続人から受け取った財産や利益の内容、価値、受領日などが含まれます。例えば、生前贈与として不動産や多額の現金を受け取っていた場合、その具体的な内容と金額、そして受け取った日付を明記します。
この情報が明確であることで、特別受益者がどれだけの財産を既に享受しており、その結果、これ以上相続財産を受け取る権利がないことが客観的に証明されます。
④相続分の放棄に関する意思表示
最も重要な項目は、特別受益者が自分の相続分を放棄することを明確に意思表示する文言です。特別受益者が、自身の特別受益によって相続分を既に得ており、これ以上の財産分割を請求しないことを明言します。この意思表示が明確でなければ、特別受益証明書の法的効力が疑問視される可能性があるため、注意が必要です。
➄証明書の作成日および署名・押印
最後に、特別受益証明書の作成日を記載し、特別受益者本人の署名と押印を行います。これにより、証明書が正式なものであることが確認されます。署名・押印の際には、本人確認書類の提出を求めるケースもありますので、身分証明書を用意しておくことが推奨されます。
3. 特別受益証明書の作成方法
特別受益証明書は、通常、遺産分割協議の前に作成されます。相続人全員が協議に参加する前に、特別受益者が自分の相続分を放棄する意思を明確にし、協議の対象外となることで、他の相続人だけで協議を進めることができます。
①公証役場での作成
特別受益証明書を作成する際には、法的な効力を確保するために、公証役場で公正証書として作成する方法が一般的です。公正証書として作成することで、証明書の偽造や無効化のリスクを防ぐことができ、遺産分割協議を円滑に進めることができます。
➁弁護士や司法書士によるサポート
特別受益証明書の作成は、専門的な法的知識を要する場合があります。遺産分割や相続に関する法律は複雑であるため、弁護士や司法書士などの専門家のサポートを受けることが推奨されます。専門家によるアドバイスを受けながら証明書を作成することで、法的なリスクを最小限に抑え、適切な手続きを進めることができます。
4. 特別受益証明書の法的効果
特別受益証明書が有効に作成されることで、特別受益者は自分の相続分を放棄したことが法的に証明されます。この結果、特別受益者を除いた相続人だけで遺産分割協議を行い、その協議内容に基づいて相続登記などの手続きを進めることが可能となります。また、相続人間のトラブルを防ぐためにも、特別受益証明書を事前(遺産分割協議前)に作成しておくことが重要です。
5. まとめ
特別受益者がいる場合の遺産分割協議は、特別受益者を除外して行った場合、無効となるリスクがあります。しかし、特別受益証明書を作成することで、特別受益者の相続分放棄が明確になり、無効な遺産分割協議を有効にすることが可能です。証明書の作成に際しては、必要な項目を正確に記載し、専門家のサポートを受けながら手続きを進めることが推奨されます。
自筆証書遺言を活用した相続手続きにおいて、従来は遺言書の保管や偽造・紛失を防ぐための対策が課題とされていました。そこで、2020年7月から導入されたのが「自筆証書遺言書保管制度」です。この制度により、法務局が遺言書を保管し、検認手続きを経ずに遺言書を相続手続きに使用できるようになり、手続きが大幅に簡略化されました。以下では、法務局への自筆証書遺言書保管制度の手続き方法やメリットについて詳しく解説します。
目次
1. 自筆証書遺言書保管制度の概要
2. 自筆証書遺言書保管制度の利用手続き
3. 相続発生後の手続き
4. 保管制度を利用する際の注意点
5. まとめ
1. 自筆証書遺言書保管制度の概要
自筆証書遺言書保管制度は、遺言者が自分で作成した遺言書を法務局で安全に保管するための制度です。遺言書を法務局に預けておくことで、偽造や改ざん、紛失のリスクを防ぎ、相続発生後のトラブルを回避できます。また、この制度を利用すれば、遺言書に対する家庭裁判所の検認手続きが不要となり、遺言の内容を迅速に執行することが可能になります。
2. 自筆証書遺言書保管制度の利用手続き
この制度を利用するには、いくつかの手続きを踏む必要があります。具体的な流れは以下の通りです。
(1)保管申請の準備
自筆証書遺言書を法務局に保管してもらうためには、遺言者が以下の準備を行う必要があります。
遺言書の作成:自筆証書遺言書保管制度を利用するためには、遺言書を自筆で作成する必要があります。遺言書は、民法の規定に基づいて全文を遺言者自身が手書きし、日付と署名を記載し、押印することが求められます。
必要書類の準備:遺言書保管のために法務局へ提出する書類を準備します。基本的には、遺言書そのものと本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)が必要です。
(2)法務局への保管申請
遺言書を保管してもらうには、遺言者が法務局に対して保管申請を行います。具体的な申請手続きは以下の通りです。
申請場所:自筆証書遺言書保管制度の申請は、遺言者の住所地、もしくは本籍地の法務局で行います。どこの法務局でも受け付けているわけではなく、対応している法務局に事前予約をして出向く必要があります。
本人が出頭する必要あり:保管の申請は、必ず遺言者本人が法務局に出向いて行う必要があります。代理人による申請は認められていないため、本人確認が厳格に行われます。また、郵送での申請も不可です。遺言者の意思を確認し、本人が遺言書を提出することが、この制度の信頼性を高めています。
保管の手数料:法務局に遺言書を保管する際には、手数料がかかります。2024年現在、手数料は3,900円とされています。この手数料は保管申請時に支払います。
(3)保管証の発行
法務局にて遺言書の保管が完了すると、「保管証」が遺言者に発行されます。保管証は、遺言書が法務局に安全に保管されている証拠となり、遺言者が将来必要な場合に保管状況を確認できる重要な書類です。
3. 相続発生後の手続き
遺言者が亡くなった後、相続人は遺言書の存在を確認し、必要な手続きを進めることができます。自筆証書遺言書保管制度を利用している場合、相続人は検認手続きが不要で、遺言書に基づいて速やかに相続登記などの手続きに移ることができます。
(1)遺言書情報証明書の請求
相続人は遺言者の死亡後、法務局から「遺言書情報証明書」を請求することができます。この証明書は、遺言書の内容を法務局が証明するもので、相続手続きにおいて法的に有効な証拠として使用することが可能です。遺言書情報証明書の請求には、相続人であることを証明するための戸籍謄本などの書類が必要です。
(2)検認手続き不要のメリット
従来の自筆証書遺言では、家庭裁判所の検認手続きを経なければならず、この手続きが完了するまで遺言書の内容を執行することができませんでした。しかし、法務局に保管された自筆証書遺言の場合、検認手続きが不要となるため、手続きが迅速に進むという大きなメリットがあります。これにより、相続人間の争いを未然に防ぎ、スムーズな相続手続きが可能となります。
4. 保管制度を利用する際の注意点
自筆証書遺言書保管制度を利用する際には、いくつかの注意点があります。
①遺言書の訂正や変更
一度法務局に保管した遺言書を訂正や変更したい場合は、遺言者が新たな遺言書を作成し、再度保管申請を行う必要があります。法務局では遺言書の内容を直接訂正することはできないため、訂正が必要な場合は、新しい遺言書を作成する必要があります。
➁遺言書の撤回
遺言者は、生前であればいつでも法務局に保管されている遺言書を撤回することができます。撤回を希望する場合は、遺言者本人が法務局に出向き、撤回申請を行います。撤回が完了した場合、その遺言書は無効となり、新たに遺言書を作成するかどうかは遺言者の自由です。
③保管されていない遺言書の扱い
遺言者が法務局に保管していない自筆証書遺言書を残していた場合、従来通り家庭裁判所での検認手続きが必要です。このため、法務局での保管制度を利用する場合は、遺言書の保管状況を相続人に事前に伝えておくことが重要です。
5. まとめ
自筆証書遺言書保管制度は、遺言書の安全な保管と相続手続きの簡略化を実現する有効な制度です。遺言者が法務局に遺言書を保管することで、検認手続きが不要になり、相続人にとってスムーズな相続手続きを進めることができます。また、遺言書の紛失や偽造のリスクを防ぐことができるため、遺言者にとっても安心できる制度です。制度を利用するためには、法務局への出頭や手数料の支払いが必要ですが、相続手続きの円滑化を考えると非常に有益な選択肢と言えるでしょう。
相続登記を行う際に、遺言書がある場合にはその種類によって必要な添付書類が異なります。遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類がありますが、それぞれの遺言書に応じて準備すべき書類や手続きに違いがあるため、適切な書類を揃えることが重要です。以下では、相続登記における遺言書の種類ごとの添付書類について詳しく解説します。
目次
1. 自筆証書遺言書を用いる場合の添付書類
2. 公正証書遺言書を用いる場合の添付書類
3. 自筆証書遺言と公正証書遺言の手続き上の違い
4. まとめ
1. 自筆証書遺言書を用いる場合の添付書類
自筆証書遺言は、遺言者が自分で書き残す遺言書です。この形式の遺言書を基に相続登記を行う際には、検認手続きが必須となります。検認手続きは家庭裁判所が遺言書の内容や形式が適正であるか確認する手続きであり、この手続きを経て初めて遺言書の内容が法的に有効となります。検認手続きが済んでいない自筆証書遺言を使って相続登記を行うことはできません。
自筆証書遺言書による相続登記に必要な書類
自筆証書遺言に基づいて相続登記を行う際に必要な書類は以下の通りです:
①遺言書の原本:自筆証書遺言そのものです。遺言者が自筆で作成し、署名捺印されたものを提出します。この時、民法上の要件がクリアされているかについて確認します。具体的には、「自書されている(財産目録は除く)」「日付の記載」「氏名の記載」「押印がある」「加除、その他変更が民法の要式に従っているか」です。
➁遺言書の検認済証明書:検認手続きを家庭裁判所で行った後、発行される証明書です。この証明書がなければ、遺言書の効力が法的に認められないため、必須の書類となります。家庭裁判所での検認が終了した際に発行されるので、相続登記を行う前に必ず取得しておきましょう。
③被相続人(故人)の除籍謄本:相続開始の事実を証明するために、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本(除籍謄本)が必要です。除籍謄本は、被相続人の最終的な戸籍から取得します。
④相続人の戸籍謄本または住民票:登記名義を移転する相続人の身分証明書として、戸籍謄本または住民票が必要です。戸籍謄本は、相続人であることを確認するため、住民票は住所を確認するために提出します。
➄登記申請書:法務局に提出する相続登記の申請書です。これは、相続人や代理人が記入して提出する書類です。
⑥固定資産評価証明書:登記する不動産の評価額を証明するための書類です。市町村役場や税務署で取得することができます。
⑦遺言執行者の選任がある場合は遺言執行者の戸籍謄本と印鑑証明書:遺言書に遺言執行者が指定されている場合、遺言執行者が相続登記の申請を行うため、その身分を証明する書類も必要です。
2. 公正証書遺言書を用いる場合の添付書類
公正証書遺言は、公証役場で公証人の立ち会いのもと作成される遺言書で、最も安全かつ信頼性が高い形式です。公正証書遺言はすでに公証人が作成し、保管されているため、自筆証書遺言のように家庭裁判所での検認手続きは不要です。この点で公正証書遺言は相続手続きを迅速に進めることができるというメリットがあります。
公正証書遺言書による相続登記に必要な書類
公正証書遺言を基に相続登記を行う場合に必要な書類は以下の通りです:
㋐公正証書遺言書の原本:公証役場で作成された遺言書の原本、またはその正本が必要です。公証役場で遺言書を保管している場合は、相続人がその写しを取得して法務局に提出します。
㋑被相続人の除籍謄本:自筆証書遺言と同様に、相続開始を証明するための戸籍謄本(除籍謄本)を提出します。これにより、被相続人の死亡を確認します。
㋒相続人の戸籍謄本または住民票:相続人であることを確認するために、戸籍謄本や住民票を提出します。
㋓登記申請書:公正証書遺言を基に不動産の相続登記を行うための申請書です。
㋔固定資産評価証明書:相続する不動産の評価額を証明するため、市町村役場で取得できる評価証明書を提出します。
㋕遺言執行者の戸籍謄本および印鑑証明書(必要な場合):遺言書に遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が登記を行うための書類として、その身分証明書や印鑑証明書を提出します。
3. 自筆証書遺言と公正証書遺言の手続き上の違い
自筆証書遺言と公正証書遺言は、手続きの面でいくつかの大きな違いがあります。
㋐検認の要否:自筆証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必須である一方、公正証書遺言は検認不要です。これにより、公正証書遺言は手続きがスムーズに進むというメリットがあります。
㋑作成時の信頼性:公正証書遺言は公証人が作成するため、遺言の内容が改ざんされる可能性が低く、相続人間の争いを未然に防ぐことが期待されます。自筆証書遺言は自分で作成するため、その信頼性に疑問が生じることもあります。
㋒手続きの迅速さ:公正証書遺言は、検認が不要なため、相続手続きを速やかに進めることができます。自筆証書遺言の場合は検認手続きが必要なため、その分だけ時間がかかる可能性があります。
4. まとめ
相続登記を行う際に、遺言書がある場合にはその種類によって必要な添付書類が異なります。自筆証書遺言を用いる場合は検認手続きが必要であり、検認済証明書を取得する必要があります。一方、公正証書遺言の場合は、検認手続きが不要であり、公正証書遺言の正本や写しを提出することで速やかに手続きを進めることができます。どちらの遺言書を利用するにしても、相続登記に必要な書類を正確に揃えることが、円滑な相続手続きの鍵となります。
遺言書の「検認」手続きは、相続において重要な役割を果たしますが、特に自筆証書遺言や秘密証書遺言に関しては、この手続きを経なければ法的に遺言書の内容が執行されません。以下では、家庭裁判所の公式情報を参考に、検認手続きの詳細についてまとめます。公正証書遺言の場合でも、封筒に封印して保管している場合には、検認が必要となるケースがありますのでご注意ください。
目次
1. 検認手続きの概要
2. 検認手続きの管轄と申立て方法
3. 検認手続きの流れ
4. 封筒の開封について
5. 検認の際に通知される事項
6. 検認後の手続き
7. 公正証書遺言の場合は検認不要
8. まとめ
1. 検認手続きの概要
検認手続きとは、遺言書が適正な形式で保管されていたかを確認し、その存在と内容を明確にするために家庭裁判所が行う手続きです。この手続きは、遺言書の内容の妥当性や有効性を判断するものではなく、あくまで遺言書が適切に保管されていたかどうかを確認するものです。検認が行われることによって、相続人間での遺言書の存在や内容に関する争いを未然に防ぐことができます。
2. 検認手続きの管轄と申立て方法
検認手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行われます。例えば、被相続人が東京都に住んでいた場合、東京家庭裁判所が管轄することになります。申立ては、相続人や遺言執行者が行います。
申立て方法としては、家庭裁判所に直接出向いて申立書を提出するほか、郵送での申立ても可能です。郵送による申立てを行う場合は、必要書類を揃えて家庭裁判所に送付し、受付が確認された後に手続きが進められます。申立書に加えて、以下の書類が必要です:
遺言書(原本)
被相続人の戸籍謄本(死亡が記載されたもの)
申立人(相続人)の戸籍謄本
その他、家庭裁判所が指定する書類
3. 検認手続きの流れ
検認の申立てが受理されると、家庭裁判所は相続人全員に検認手続きの通知を行います。この通知は、検認の日時や場所を伝えるものであり、相続人が手続きに立ち会うことができるように配慮されています。しかし、検認手続きにおいて全相続人が立ち会う必要はありません(最低限、申立人である相続人は田愛が必要です)。立ち会いは任意であり、欠席した相続人に対しても後日、検認の結果が記載された検認調書が送付されます。
4. 封筒の開封について
自筆証書遺言や秘密証書遺言が封筒に入れられている場合、家庭裁判所の検認手続きが行われるまで封印を開けてはいけません。もし、相続人や第三者が勝手に封を開けてしまった場合でも、検認手続きは進めることが可能ですが、遺言書の内容や信頼性に疑義が生じることもあり得ます。この場合、遺言書の状態が変わっていないか、内容が書き換えられていないかについて、検認手続きにおいて詳細に確認されます。
封印を開けてしまった場合の法的な罰則については、5万円以下の過料が科される可能性があります(民法第1005条)。過料とは、刑事罰ではなく、行政上の制裁であるため、刑事記録が残ることはありませんが、罰金を支払う義務が生じます。
5. 検認の際に通知される事項
検認手続きでは、家庭裁判所から相続人全員に対して通知が行われます。この通知には、検認手続きの日時や場所、そして遺言書の検認に関する説明が記載されています。相続人全員が立ち会うことが理想的ですが、先述の通り、立ち会いは義務ではなく、出席しなかった相続人にも検認の結果が通知されるため、手続きの透明性は確保されています。
6. 検認後の手続き
検認が無事に終了すると、家庭裁判所は「検認済証明書」を発行します。自筆証書遺言や秘密証書遺言を使って相続手続きを進める場合には、この検認済証明書が必要です。特に、相続登記などの法的な手続きを行う際には、遺言書と共に検認済証明書を提出しなければなりません。遺言書が検認されない限り、遺言書の効力を正式に主張することができませんので、相続手続きを進めるための重要なステップとなります。
7. 公正証書遺言の場合は検認不要
なお、公正証書遺言の場合は、検認手続きは不要です。公正証書遺言は公証人が作成するため、遺言の存在や内容が公証役場に保存され、改ざんの恐れがないと見なされます。このため、公正証書遺言は遺言書の中でも最も安全で信頼性が高い形式と言えます。ただし、封筒に封印して公正証書遺言を保管した場合には検認が必要となりますので、注意が必要です。
8. まとめ
検認手続きは、遺言書が適正に管理されていたかどうかを確認し、遺言書の存在や内容を確定させるための重要な手続きです。特に、自筆証書遺言や秘密証書遺言を使用する場合、家庭裁判所での検認を経なければ遺言書を法的に執行することができません。
手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申立てを行い、相続人全員に検認手続きの通知が行われます。検認手続きに全相続人が立ち会う必要はありませんが、相続人全員に対して検認結果が通知され、手続きの透明性が確保されます。また、遺言書が封印されている場合、勝手に封を開けることは法律で禁止されており、違反した場合は過料が科される可能性があります。
検認手続きが完了すると、検認済証明書が発行され、それを基に相続手続きを進めることが可能になります。相続に関わる手続きを円滑に進めるためには、検認手続きを適切に行い、法的な要件を満たすことが重要です。
相続登記において、遺言書がある場合とない場合では、必要書類や手続きの流れに違いがあります。特に遺言書がある場合、手続きは比較的スムーズに進むことが多く、一方で遺産分割協議を伴う相続登記では、相続人全員の合意が必要なため、手続きが複雑化する可能性があります。
以下では、遺言書がある場合とない場合の手続きについて、必要書類や注意点を修正・追加しながら比較します。
目次
1. 遺言書がある場合の相続登記
2. 遺言書がない場合の遺産分割協議による相続登記
3. 比較とまとめ
1. 遺言書がある場合の相続登記
遺言書がある場合、特に公正証書遺言であれば、手続きは非常に簡便です。遺言書に従って、相続人や財産の帰属が指定されているため、遺産分割協議を行う必要がありません。また、自筆証書遺言の場合も同様ですが、家庭裁判所での検認手続きが必要です。
ここで重要なのは、遺言書がある場合、相続人を確定するために出生から死亡までの戸籍謄本を提出する必要はないという点です。被相続人の死亡が確認できる除籍謄本のみで手続きを進められます。
必要書類
遺言書:公正証書遺言の場合、遺言書自体がすでに法的な証明力を持っているため、検認手続きは不要です。自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認証明書が必要です。この検認手続きは遺言書の有効性を確認するためのものであり、内容の妥当性や遺言の適正さを審査するものではありません。
被相続人の除籍謄本:遺言書がある場合、被相続人の死亡を証明するために、死亡が確認できる除籍謄本が必要です。遺言書に基づき遺産の帰属が明確にされているため、相続人全員を確定する必要はありません。
相続人の戸籍謄本:遺言書に指定された相続人の戸籍謄本が必要です。これは相続人が遺言書に従って指定されていることを証明するためです。
不動産登記簿謄本:相続する不動産の登記簿の写しを取得します。
固定資産評価証明書:相続税や登録免許税の計算に使用されるため、不動産の固定資産評価証明書が必要です。
手続きの流れ
必要書類の準備:遺言書(自筆証書遺言の場合は検認証明書含む)や被相続人の除籍謄本、相続人の戸籍謄本などを用意します。
登記申請書の作成:遺言書に基づいて、相続人が相続する不動産の登記申請書を作成します。
法務局へ申請:相続する不動産の管轄法務局に申請書を提出し、登記名義を変更します。
手続き上の注意点
検認手続きの必要性:自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、家庭裁判所での検認が必要です。検認手続きが完了しない限り、相続登記の手続きを進めることができません。
遺言執行者の指定:遺言書に遺言執行者が指定されている場合、相続登記は遺言執行者が行います。遺言執行者が指定されていない場合は、相続人が直接手続きを進めます。
2. 遺言書がない場合の遺産分割協議による相続登記
遺言書がない場合は、相続人全員が話し合いで遺産の分割方法を決定し、それに基づいて相続登記を行います。この場合、相続人全員の同意が必要であり、合意が得られなければ家庭裁判所での調停が必要になることもあります。さらに、相続人全員を確定するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を揃える必要があり、手続きが煩雑になることがあります。
必要書類
遺産分割協議書:相続人全員で協議を行い、分割の合意内容を記載した協議書を作成します。相続人全員の署名・実印が必要です。
相続人全員の印鑑証明書:遺産分割協議書には相続人全員の実印が押印されている必要があり、その証明として印鑑証明書が必要です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本:遺産分割協議においては、相続人全員を確定する必要があるため、被相続人の出生から死亡までの戸籍を揃えます。これは、全ての相続人が確定されていることを証明するためです。
相続人全員の戸籍謄本:相続人全員の現在の戸籍謄本も必要です。
不動産登記簿謄本:相続する不動産の登記簿の写しが必要です。
固定資産評価証明書:相続税や登録免許税の計算に使用されます。
手続きの流れ
遺産分割協議の実施:相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作成します。
必要書類の準備:相続人の戸籍謄本や被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、印鑑証明書などを用意します。
法務局へ申請:遺産分割協議書に基づいて登記申請書を作成し、法務局に提出して相続登記を行います。
手続き上の注意点
相続人全員の合意が必須:遺産分割協議は相続人全員の合意が前提です。合意が得られなければ登記手続きが進められません。場合によっては、家庭裁判所での調停や審判が必要になることもあります。
相続人の確定に時間がかかる場合がある:相続人の一部が行方不明だったり、連絡が取れない場合、相続人の確定や書類の収集に時間がかかることがあります。この場合、法定相続分に基づいて一時的に登記を行うことも考えられます。
3. 比較とまとめ
遺言書がある場合と遺言書がない場合の相続登記手続きの違いをまとめると、以下の点が挙げられます。
時間と手間:遺言書がある場合、相続人全員での協議が不要なため、手続きが迅速に進みます。一方、遺産分割協議が必要な場合は、相続人全員の合意を得るために時間がかかることがあります。
必要書類:遺言書がある場合、被相続人の死亡を証明するための除籍謄本のみで足りるのに対し、遺言書がない場合は相続人全員を確定するために被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。
手続きのリスク:遺産分割協議の場合、相続人間の意見の相違が生じた場合、調停に発展する可能性があり、手続きが長期化することがあります。遺言書があれば、こうしたリスクを避けることができます。
相続登記を円滑に進めるためには、遺言書の有無に応じた準備を適切に行い、それぞれの手続きのポイントを押さえることが重要です。
相続に関する相談の中で、特に遺言書がない場合、「相続人の確定」と「相続財産の確定」が重要なステップとなります。この2つの手続きが相続登記や相続税の申告に直接関わるため、確実かつ迅速に行う必要があります。
以下では、それぞれの重要性とプロセスについて説明します。
目次
1. 相続人の確定
2. 相続財産の確定
3. 相続人・財産の確定が必要な理由
4. 専門家のサポートが不可欠
まとめ
1. 相続人の確定
遺言書がない場合、相続手続きは法律で定められた「法定相続」に基づいて進められます。この際に最初に行うべきことが、誰が相続人であるかを明確にする「相続人の確定」です。これには以下のポイントが含まれます。
戸籍謄本の収集:相続人の確定には、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を集めることが必要です。これにより、配偶者や子どもがいるか、または前妻・前夫との間に子どもがいるかといった家族構成を正確に把握できます。さらに、子どもがいない場合は、両親や兄弟姉妹が相続人となるため、彼らの戸籍も調査対象になります。
法定相続人の範囲:日本の相続法では、配偶者は常に相続人となり、子ども、直系尊属(親)、兄弟姉妹がそれぞれのケースで相続人となります。このため、被相続人が複数の配偶者や子どもを持っている場合、法定相続分が複雑になることもあります。さらに、婚姻関係にない実子や養子がいる場合は、相続分が変わる可能性もあるため、慎重な確認が必要です。
2. 相続財産の確定
相続人が確定したら、次に重要なのは「相続財産の確定」です。特に、相続登記や相続税の申告において、財産の内容を正確に把握しておくことが求められます。主に不動産や現金、株式、債権などが対象となり、不動産が含まれる場合は登記手続きが必要です。
財産目録の作成:相続財産を正確に把握するためには、被相続人が持っていたすべての財産をリストアップした財産目録を作成します。この財産目録には、土地や建物、現金、預金、証券類の他、借金やローンなどの負債も含めます。これにより、相続税の申告に必要な資料が揃い、正確な財産評価が可能となります。
不動産の相続登記:不動産が相続財産に含まれている場合、相続登記を行う必要があります。相続登記は、不動産の名義を被相続人から相続人に移す手続きで、相続が発生した後、速やかに行うことが推奨されます。相続登記を怠ると、将来的に不動産の処分が難しくなったり、相続人が増えて手続きが複雑になるリスクがあります。相続人全員の同意が必要なため、事前に遺産分割協議を円満に進めることが重要です。
3. 相続人・財産の確定が必要な理由
遺言書がない場合、相続人と相続財産の確定は、後々のトラブルを避けるために不可欠です。相続人が特定できないと、遺産分割協議が進まないだけでなく、相続登記や相続税の申告も遅れ、延滞税や加算税が課されることもあります。特に、不動産に関しては、以下のようなトラブルが発生しやすいです。
共有名義の問題:不動産を複数の相続人で共有する場合、売却や賃貸などの処分が難しくなることがあります。相続人の一人が同意しなければ、売却ができないため、相続人間のトラブルにつながりやすいです。このため、相続財産を早期に確定し、遺産分割協議をスムーズに進めることが重要です。
不動産の評価:相続税の申告では、財産の評価額が重要になります。不動産の評価は、路線価や時価などに基づいて行われますが、評価方法が異なると納税額も変わるため、専門家のアドバイスを受けることが必要です。また、相続人が複数いる場合、誰がどの不動産を相続するかで相続税の負担が変わることもあるため、適切な財産分割が求められます。
4. 専門家のサポートが不可欠
相続人の確定や相続財産の確定は複雑な作業であり、法律的な知識も必要です。遺言書がない場合は、特に法的手続きや相続税の計算が煩雑になるため、早めに専門家(司法書士や税理士)のサポートを受けることが推奨されます。司法書士は相続登記の手続きを代行し、税理士は相続税の申告に関するアドバイスを提供します。
まとめ
遺言書がない相続においては、まず「相続人の確定」と「相続財産の確定」が最初の重要なステップです。相続人が確定しないと遺産分割が進まず、財産の確定ができないと相続登記や相続税の申告が遅れるリスクがあります。これらの手続きを迅速かつ正確に進めるためには、専門家の協力を得ながら、相続手続き全体をしっかりと計画することが大切です。
特に市役所や士業団体が開催している無料相談は、相談時間が30分と限られています。何度も足を運ばなくていい様に、戸籍を取得したり評価証明書を取得しなくても、ある程度確定した状態で相談をすることをお勧めいたします。
「周りで相続税を払った人を知らない」方が多いのはなぜか。
また、相続発生から半年後に税務署から青色の封筒(相続税についてのお知らせ)が送られる場合があります。
この場合の対処方法について、解説しております。
目次
1. 相続税がかかる割合
2. 税務署からの青色封筒の目的
3. 税理士に相談すべき理由
まとめ
1. 相続税がかかる割合
相続税は、日本の税制の中でも特に関心を集める分野の一つです。近年、基礎控除の引き下げによって、相続税が課税される割合が増加していることが報告されています。具体的には、2020年のデータによると、相続税の申告が必要となる割合は約8.8%に上昇しています。これは、相続が発生した人のうち、相続財産が基礎控除額を超えて課税対象となるケースの割合を指します。
この基礎控除額は、「3,000万円 + 法定相続人1人あたり600万円」と定められています。つまり、例えば法定相続人が2人いる場合、相続財産が4,200万円を超えると相続税の申告が必要です。2015年以前はこの基礎控除額がより高かったため、課税対象となる相続人の割合は約4%前後で推移していましたが、控除額の引き下げにより課税対象が拡大し、約2倍に増加しています。
このような制度変更により、相続税がかかる層が広がったことは、特に都市部で不動産を所有している世帯や、資産が比較的多い世帯にとって大きな影響を及ぼしています。固定資産税評価額の高い不動産を相続する場合や、金融資産が多い場合などは、相続税の課税対象となる可能性が高くなります。
2. 税務署からの青色封筒の目的
相続が発生してから約半年後、税務署から相続人に対して青色の封筒が送付されることがあります。この封筒には、相続税に関するアンケート(相続税についてのお知らせ)が同封されています。このアンケートの目的は、相続税の申告が必要かどうかを確認し、適切な申告が行われているかを確認するためです。
具体的には、相続財産の内容やその評価額、相続人の数、相続税申告の予定などに関する質問が記載されており、税務署はこのアンケートを基に申告漏れを防ぐための調査を行います。このアンケートは必ずしも全ての相続人に送られるわけではなく、相続財産の規模や申告状況に応じて送付されることがあります。
※放置した場合は、後に税務調査まで発展するケースがありますので、ご注意を。
3. 税理士に相談すべき理由
青色封筒を受け取った際、税理士に相談することが推奨されます。その理由は以下の通りです。
申告漏れや誤りを防ぐ
相続税の申告は非常に複雑で、財産の評価や控除額の計算、特例の適用など多くの専門的知識が必要です。申告内容に誤りがある場合、後から税務署の調査が入り、追徴課税やペナルティが科されるリスクがあります。税理士に相談することで、正確な申告が確実に行われます。
節税対策が可能
税理士は、相続税申告において活用できる節税対策を提案してくれます。例えば、配偶者に対する税額軽減や、小規模宅地等の特例など、相続財産の状況に応じた最適な節税方法を導入することで、相続税の負担を軽減することが可能です。専門家のアドバイスを受けることで、余計な税負担を避けることができます。
手続きの安心感
相続税申告には多くの書類や手続きが必要であり、期限内に申告を行わなければなりません。税理士に依頼することで、手続きがスムーズに進み、安心して相続手続きを終えることができます。
複雑な財産の評価
特に不動産や非上場株式など、財産の評価が難しい場合、専門家の助けを借りることで正確な評価が可能になります。これにより、過大な評価による不当な税負担を避けることができ、適正な相続税額の申告が可能となります。
まとめ
相続税がかかる割合は約8.8%と、以前に比べて増加しています。
これは基礎控除額の引き下げが大きく影響しており、特に都市部で不動産を所有している場合や、資産が多い世帯にとって注意が必要です。
また、税務署から青色の封筒で届く相続税に関するアンケートは、相続税の申告状況を確認し、申告漏れを防ぐためのものです。このアンケートを受け取った場合、相続税の申告が必要かどうかについて、税理士に相談することが推奨されます。税理士の専門知識を活用することで、正確かつ適切な申告が行われ、節税の可能性も広がります。
アイリスが参加している相続法律・税務無料相談会では、上記のように相続後に税務署から来た書類の内容についてのご相談も受け付けております。ぜひご利用ください。
相続登記義務化が始まってから約半年が経過し、相続した不動産をどう扱うか悩む人々が増えているようです。その中でも、相続不動産を迅速に処分できる手段として不動産買取業者に依頼するケースが増え、SNS広告などでも多く見られるようになりました。しかし、不動産買取に関しては、様々なトラブルも報告されています。
ここでは、不動産買取における代表的なトラブル例について説明します。
目次
1. 相場より買取金額が低い
2. 高額な費用や手数料の請求
3. 契約後に査定価格を下げられる
4. 悪徳業者と契約してしまうリスク
まとめ
1. 相場より買取金額が低い
不動産買取業者に依頼する際、多くの人が「市場価格に近い金額で買い取ってもらえる」と期待しますが、実際には買取業者が提示する金額は市場相場の6~7割程度に設定されることが業界の常識となっています。
これは、不動産業者が買取後に転売するための利益を確保するためです。一般の消費者はこれを知らずに、想定よりもはるかに低い価格で契約してしまうことが多く見受けられます。
そのため、売却を検討する際には、事前に市場相場を調べるか、複数の業者に見積もりを依頼することが推奨されます。
2. 高額な費用や手数料の請求
通常、不動産買取においては仲介手数料や売主負担の経費がかかることはほとんどありません。しかし、悪徳業者によっては、手数料や名目の不明な経費を請求することがあります。
たとえば、契約後や物件引渡し後に、不用品の処分費用や特別な手数料として高額な請求がくるケースがあります。これは売主が、事前に明確な契約条件を確認せずに契約を進めてしまうことが原因です。
特に高齢者や不動産取引に慣れていない人々が狙われやすいため、契約前に慎重に確認する必要があります。
3. 契約後に査定価格を下げられる
契約直前、または契約後に買取業者が一方的に査定価格を下げるケースも多く報告されています。
たとえば、初めに提示された査定額に合意して契約を進めた後、引渡し直前や契約直後に「物件に予想外の問題が見つかった」といった理由で価格の値下げを求められることがあります。これは、業者側が売主の弱みに付け込んで契約を不利な条件に変更しようとする手法です。
このようなトラブルを避けるためには、契約内容を慎重に確認し、できれば弁護士や司法書士に相談することが推奨されます。
4. 悪徳業者と契約してしまうリスク
全ての不動産買取業者が悪徳業者というわけではありませんが、一部には不誠実な手法で契約を進める業者が存在します。以下のような行為が典型的な悪徳業者の特徴として挙げられます:
① 手数料名目で不明瞭な費用を請求する
通常の買取契約には発生しない手数料を請求し、売主に負担を強いるケースです。
② 査定価格よりも低い価格で引渡しを要求する
契約後に「想定外の費用がかかる」などの理由で価格を下げ、売主が断りにくい状況を作り出します。
③ 不当に低い買取査定を行い、無理に契約させる
高齢者や不動産知識の少ない売主に対し、相場を無視した低価格の査定を提示し、強引に契約を進めることがあります。
④ 代金を支払わずに所有権移転登記を要求する
先に所有権移転手続きを進め、その後に代金を支払うと偽りながら、実際には代金を支払わないケースです。
⑤ 所有権移転に必要な書類を引渡し前に要求する
書類を先に取得し、売主が撤回できない状況を作り、契約条件を変更することがあります。
⑥ 換金できない小切手や不明な決済手段で支払う
代金支払いの際に、現金ではなく、実際に換金できない小切手や仮想通貨などで支払いを行う業者もいます。
※ありえないようなことが、悪徳業者と取引すると起こります。
まとめ
このようなリスクを避けるためには、契約書に記載された内容を細かく確認し、信頼できる業者と取引をすることが重要です。また、特に大規模な取引の場合、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、法的なサポートを受けることが推奨されます。
不動産買取業者を利用する際の注意点
不動産買取業者の利用は、相続した不動産を迅速に処分できる有効な手段ではありますが、業者選びに慎重さが求められます。以下の点を念頭に置いて取引を進めることが大切です。
1. 複数の業者に査定を依頼する
一つの業者だけに依存せず、複数の見積もりを比較することで、適正価格を把握しやすくなります。
2. 契約内容を細部まで確認する
特に費用や支払い方法に関する条項を注意深く確認し、疑問点があれば事前に質問しましょう。
3. 信頼できる専門家に相談する
トラブルを未然に防ぐためにも、取引を進める前に専門家の助言を受けることが有効です。
以上のように、不動産買取にはさまざまなトラブルが存在しますが、事前に正しい知識を持っていれば、リスクを大幅に軽減できます。
断っておきますが、すべての業者が悪いわけではありません。
老老相続は、高齢者が亡くなり、その相続人もまた高齢者であるケースのことを指します。
日本では長寿化が進み、親から子への相続が高齢者同士で行われる「老老相続」が増加しています。
この現象が社会に与える影響や、相続手続きにおける課題について考察します。
目次
1. 増加する老老相続の背景
2. 認知症の相続人による問題
3. 数次相続による複雑化
4. 経済への影響
5. 遺言書の活用
結論
1. 増加する老老相続の背景
日本の平均寿命が延びるにつれ、相続人も高齢化しています。
以前は、親の財産が子供世代に渡る際、その子供がまだ働き盛りであったり、現役世代であることが一般的でした。
しかし現在では、80歳の親が亡くなり、60〜70歳の子がその財産を相続することが多くなっています。
これが「老老相続」です。
2. 認知症の相続人による問題
老老相続の最大の問題は、相続人が認知症や身体的に介護を必要とする状況にある場合です。認知症の相続人がいると、遺産分割協議が円滑に進まなくなり、相続手続きが遅れる可能性があります。この場合、成年後見制度を利用することができますが、後見人は被後見人の財産を保全する役割があるため、遺産分割が不利にならないよう慎重に進める必要があります。
3. 数次相続による複雑化
さらに、老老相続が発生することで「数次相続」の問題も増加しています。数次相続とは、一次相続が完了しないうちに次の相続が発生するケースで、例えば親が亡くなり、その直後に相続人である子供も亡くなるという場合です。このような場合、相続手続きが複雑化し、相続人の数が増えることで協議が難航するリスクが高まります。
4. 経済への影響
老老相続の増加は、経済にも悪影響を及ぼします。高齢者同士の相続では、相続された資産が消費に回らないケースが多く、経済の停滞を招くことがあります。また、相続によって資産が固定化され、次の世代に渡るまで長期間かかることも経済活性化の阻害要因となります。
5. 遺言書の活用
こうした問題を防ぐためには、被相続人が元気なうちに遺言書を作成し、財産の分割方法を明確にしておくことが有効です。遺言書によって、遺産分割協議をスムーズに進めることができ、相続トラブルを未然に防ぐことができます。また、成年後見制度の利用を見据えた準備も重要です。
結論
老老相続は、相続手続きの遅延や経済停滞など、多くの社会的課題を抱えています。
高齢化社会が進む中で、早めの相続対策、特に遺言書の活用や成年後見制度の利用を検討することが、これらの問題を軽減するために重要です。また、政策的にも、老老相続の影響を軽減するための法制度や社会的支援が求められています。
実務で本当に多くの相続人の年齢が60代を超えています。
相続の生前対策として、以下のような贈与制度を活用することが効果的です。これらの制度は、相続発生前に財産を有効に活用し、相続税の負担を軽減するための手段として広く利用されています。以下、各項目ごとに詳しく解説します。
目次
1. 相続時精算課税制度
2. 夫婦間の居住用不動産の贈与による配偶者控除
3. 教育資金の一括贈与
4. 住宅取得等資金の贈与
5. 結婚・子育て資金の一括贈与
6. 特定障碍者に対する贈与税
まとめ
1. 相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫に対して、財産を生前贈与する際に利用できる制度です。この制度では、贈与時には2500万円まで非課税で財産を移転でき、超過部分については一律20%の贈与税がかかります。ただし、相続時にはこの制度を利用して贈与した財産が相続財産に加算され、相続税の計算に反映されるため、最終的な税負担が確定します。
この制度のメリットは、贈与を通じて早めに財産を移転できることにあります。また、大きな贈与を非課税で行えるため、将来的な相続税の負担を軽減する効果が期待されます。ただし、相続税の計算において、贈与財産が再度加算される点には注意が必要です。令和6年1月1日から、年間贈与の110万円控除が追加されています。
※相続時精算課税を登録すると途中でやめることはできなくなります。専門家と相談の上、利用の有無を検討してください。
2. 夫婦間の居住用不動産の贈与による配偶者控除
「夫婦間の居住用不動産の贈与による配偶者控除」は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で利用できる制度です。この制度を活用することで、居住用不動産またはその購入資金について、最大2000万円までの贈与が非課税となります。この控除は、一生に一度しか利用できませんが、夫婦間で居住用の財産を早めに贈与できるため、相続時の財産総額を減少させることができます。
この制度のメリットは、相続時に課税される財産を生前に減らせる点にあります。特に高額な不動産が夫婦の財産の一部である場合、将来の相続税対策として有効です。ただし、この制度を利用する際には、贈与後もその不動産に居住し続ける必要があるため、贈与後の生活設計を考慮することが重要です。
3. 教育資金の一括贈与
「教育資金の一括贈与」は、30歳未満の子や孫に対して教育資金を一括で贈与する際に、非課税枠を設ける制度です。
贈与額が1500万円までであれば非課税で贈与でき、贈与された資金は教育にかかる費用(授業料や教材費、留学費用など)に使用されます。この制度を利用することで、相続発生前に教育資金を効率的に移転し、相続財産を減らすことができます。
この制度のメリットは、教育費という将来の支出を前もって賄える点にあります。
また、贈与者の財産を相続時に減少させることで、相続税の軽減にもつながります。ただし、教育資金として適切に利用されなかった場合には、贈与税が課せられる可能性があるため、資金の使途に注意が必要です。
4. 住宅取得等資金の贈与
住宅取得等資金の贈与は、子や孫が自宅を購入する際に、その購入資金を贈与する場合に適用される非課税制度です。
贈与税の非課税枠は、贈与の対象となる住宅の種類や省エネ性能などに応じて異なりますが、最大で1000万円までが非課税となります。
この制度を活用することで、若い世代に対して住まいを確保する支援を行いながら、相続財産を減らすことができます。
また、住宅購入のタイミングに合わせた贈与が可能であり、早めに相続対策を行うことができます。
ただし、この制度も一度しか利用できないため、贈与のタイミングや金額について慎重に検討する必要があります。
5. 結婚・子育て資金の一括贈与
結婚・子育て資金の一括贈与は、子や孫が50歳未満の場合に、結婚や子育てに必要な資金を一括で贈与する際に利用できる制度です。最大で1000万円までが非課税で贈与でき、この資金は結婚式の費用や妊娠・出産費用、子育て費用などに充てることが可能です。
この制度のメリットは、相続財産を減らしつつ、家族の生活を支援できる点にあります。
また、子や孫が結婚や子育てのための資金を必要とするタイミングで贈与が可能なため、贈与者と受贈者双方にとって利便性の高い制度です。ただし、利用した資金が結婚・子育て以外の目的に使われた場合には贈与税が課せられるため、注意が必要です。
6. 特定障碍者に対する贈与税
特定障碍者に対する贈与税の特例は、特定の障碍者(重度の障碍を持つ者)に対して信託や贈与を行う際に、贈与税が軽減される制度です。
具体的には、障碍者の生活や医療費を賄うための信託を設定する場合、その信託財産のうち6000万円までが非課税となります。この制度を利用することで、障碍者の生活を安定させるための資金を確保しつつ、贈与税の負担を軽減できます。
この制度のメリットは、障碍者の生活を財政的に支えることができる点にあります。また、贈与税が非課税となることで、贈与者も財産を相続前に効率的に移転でき、相続時の負担を軽減することができます。
まとめ
相続の生前対策として、これらの贈与制度を活用することは非常に有効です。
各制度は、相続時の財産を減少させることで相続税の負担を軽減し、相続手続きの円滑化にもつながります。贈与を通じて早めに財産を移転することが、家族全体の経済的な安定にも寄与します。
しかし、各制度には利用条件や一度しか適用できない制限があるため、慎重に検討した上で活用することが重要です。
アイリスは、相続法律・税務無料相談会に参加しております。一度の相談時間を90分取り、相談者様の問題解決に向けて開催しております。
次回日程は11月20日(水)です。当日、予約件数は、原則3件です。お早めにご予約ください。
農地が共有で登記されているケースにおいて、相続が発生した場合、相続登記を行うだけでなく、最終的に所有者を一人にまとめたいという依頼が、ありました。この場合、特に農地が含まれている場合には、農地法の規定に従う必要があります。
相続に伴う農地の登記については、農地法3条の「届出」により、原則として許可を得ずに登記が可能ですが、持分を他の共有者に贈与する場合は、農地法3条の「許可」が必要となります。この許可の取得は、農地の引継ぎ先が農業に従事できるかどうかが重要な判断基準となります。
この場合どのように手続きを進めればいいのかについて解説いたします。
目次
1.農地法3条の許可制度とその要件
2.持分放棄による許可回避
3.民法上の持分放棄の解釈
4.持分放棄の実務的メリット
5.結論
1.農地法3条の許可制度とその要件
農地法3条の許可は、農地の所有権や利用権を移転する場合に必要となるもので、農業委員会がその許可を与えるかどうかを判断します。
特に、農地を譲渡する際には、受け手が適切に農地を管理し、農業を営む能力があるかどうかが重要視されます。この点で、県外に居住している者に対しては、実際に農業に従事できる可能性が低いため、許可が下りるのは難しいことが多いです。
これが、農地所有権の移転を一筋縄では行えない理由の一つです。
2.持分放棄による許可回避
しかし、持分を他の共有者に譲渡する際に農地法3条の許可を避ける手段として、「持分放棄」があります。これは、民法上の規定に基づき、持分を共有者に譲渡するのではなく、放棄するという手法です。
持分放棄とは、自身の持分権を放棄することであり、その結果、他の共有者がその持分を当然に取得することとなります。持分放棄は一方的な意思表示であり、他の共有者の同意を必要としないため、スムーズに行える点が特徴です。
農地法において、持分放棄に関する明確な規定はありませんが、通常の持分の譲渡とは異なり、対価が発生しないことや、移転が行われるわけではないため、許可を得る必要がないとされています。
この解釈に基づき、持分放棄を利用することで、農地法3条の許可を回避することが可能となります。
3.民法上の持分放棄の解釈
民法上、持分放棄は、共有者がその持分を放棄し、その結果として他の共有者が持分を引き継ぐという形をとります(民法255条)。持分放棄は、あくまでその権利を放棄する行為であり、譲渡や売買と異なり、対価を伴わない無償の行為です。
放棄の意思表示をした時点で、その共有者の持分は消滅し、他の共有者に帰属します。したがって、持分放棄をすることで、他の共有者がその持分を取得することとなり、所有者を一人にするという最終目標に近づけることができます。
また、持分放棄の意思表示があれば、農地法3条の許可について特段の手続きを必要としないため、登記手続き上も比較的簡便です。
ただし、放棄の結果として生じる登記の変更は、速やかに行う必要があります。登記上の手続きを適切に行うことで、持分放棄による所有権の一元化が法律上確定されます。
4.持分放棄の実務的メリット
持分放棄の最大のメリットは、農地法3条の許可を避けることができる点です。
特に、県外に住んでいるために農地を維持できない場合や、そもそも農業を行う意思がない場合には、持分放棄を活用することで、許可取得の手間を省くことができます。また、放棄によって他の共有者に自動的に持分が移転するため、贈与税や譲渡所得税などの税金を回避できる可能性もあります。
一方で、持分放棄を行った場合、放棄した者はその持分に対するいかなる権利も失うため、今後その土地の処分や利用に関して一切の関与ができなくなります。
これにより、持分放棄をする際には、慎重に検討する必要があります。
特に、将来的に土地の価値が上がる可能性がある場合や、他の共有者との関係が良好でない場合には、持分放棄が不利になることもあるため、事前にしっかりとした合意形成が重要です。
5.結論
農地が含まれる相続案件において、共有者の一部が農地法3条の許可を得るのが難しい場合、持分放棄を利用することで許可を回避し、所有者を一人にまとめることが可能です。
持分放棄は、民法上の一方的な意思表示による権利の放棄として認められ、無償で行われるため、他の共有者の同意が不要であり、農地法の許可要件を回避できる点で有効な手段です。
しかし、放棄後の法的影響や、共有者間の関係性について十分に理解し、慎重な判断が求められます。
根抵当権とは、不動産を担保にして設定されるもので、特定の債権ではなく、一定範囲内で複数の不特定債権を担保します。元本確定前は、借入れや返済が自由に行えますが、元本確定事由が発生すると、債権が固定され、新たな借入れは担保されなくなります。元本確定事由には、相続や破産、競売などがありますが、法人の破産は登記されないこともあります。
目次
1.根抵当権についての概説
2.元本確定とは何か
3.元本確定登記
4.債務者の破産と元本確定
5.共用根抵当権と破産
6.まとめ
1.根抵当権についての概説
根抵当権とは、不動産などの資産に対して設定される担保権の一種であり、一定範囲内の不特定の債権を担保することを目的としています。
通常の抵当権が特定の債権に対して設定されるのに対して、根抵当権ではその債権が不特定であり、定められた「極度額(上限金額)」と「債権の範囲」内であれば、何度でも借入や返済が可能です。
これにより、ビジネスや取引の継続的な資金需要に柔軟に対応できる点が根抵当権の大きな特徴です。
2.元本確定とは何か
根抵当権において、担保される債権は通常、流動的であるため、どの時点でどれだけの返済義務が残っているかが確定していません。この流動的な性質が「元本未確定」と呼ばれる状態で、根抵当権の大きな特徴の一つです。しかし、「元本確定事由」が発生すると、その時点での債務が確定され、それ以降は新たな債権を担保することができなくなります。具体的には、以下のような状況が元本確定事由となります。
①元本の確定期日が到来
根抵当権の契約で定められた期日が来た場合、元本が確定します。
➁相続が発生
根抵当権者や債務者が死亡し、相続が発生した際、相続開始後6ヶ月以内に根抵当権者や債務者間での合意がなされない場合、元本が確定します。
③合併が発生
根抵当権者または債務者が合併した際に、根抵当権設定者が確定請求を行うと元本が確定します。
④競売の申立てや差押え
根抵当権者が担保不動産について競売を申し立てた場合、または滞納処分による差押えが行われた場合、元本が確定します。
元本が確定すると、新たな貸付金はその根抵当権で担保されなくなり、流動性が失われ、元本確定時点での債権が確定します。これにより、根抵当権が普通の抵当権のように機能し、以後、新たな貸付には対応できなくなります。
3.元本確定登記
元本確定事由が発生した場合、原則として「元本確定登記」を行います。これにより、元本が確定したことが公示され、債権の流動性が失われたことが記録されます。しかし、いくつかの事例では、元本確定登記をしなくても「登記簿上で確認できる」状況が存在します。たとえば、次のようなケースです。
破産手続き開始決定
個人の根抵当権設定者が破産手続きを開始した場合、その事実は登記簿に記録され、これを見れば破産していることが分かるため、元本確定登記を行わずとも元本が確定したとみなされます。
ただし、法人が設定者である場合、破産の登記は個別の不動産登記簿には記載されず、法人の商業登記簿で確認することになります。これにより、法人が設定者の場合には重複した登記を避けるため、不動産の登記簿には破産の記録がなされないのです。
4.債務者の破産と元本確定
債務者が破産手続開始決定を受けた場合、元本は確定します。
ただし、ここで注意すべき点があります。それは、破産手続きの決定があっても、その後に効力が失われた場合、元本確定の効力も消滅する点です。具体的には、破産手続開始決定後、その手続きが中止されたり、無効になった場合には、元本確定も同時に解除されることがあります(民法398条の20第2項)。
これにより、再び流動的な担保の状態が復活することもありえます。
5.共用根抵当権と破産
根抵当権が設定されている場合、債務者が複数いるケースも存在します。
このような場合を「共用根抵当権」と呼びます。共用根抵当権の下で、債務者の一人が破産手続きを開始しても、全体の根抵当権が自動的に元本確定となるわけではありません。他の債務者が引き続き債務を履行することが可能であれば、根抵当権全体の元本確定は行われない場合があります。
この点において、共用根抵当権は通常の根抵当権よりも複雑な仕組みを持っており、個別の状況に応じて慎重な対応が求められます。
6.まとめ
根抵当権は、不動産を担保として柔軟な資金調達を可能にする重要な制度です。
しかし、元本の確定や債務者の破産、相続といった状況に応じてその性質が大きく変化するため、正確な理解と適切な手続きを行うことが求められます。
特に、複数の債務者が関与する共用根抵当権においては、個別の事例ごとの判断が必要です。
相続登記義務化がはじまりましたが、行政が取り組んできた施策にはいくつかの重要な要素があります。これらの取り組みは、相続登記の遅れや相続財産の管理が不明確になることによる社会的な問題(所有者不明土地問題)を解決するために行われています。特に、戸籍の集中管理や相続登記義務化に関する法整備が中心的な役割を果たしています。
目次
1. 相続登記義務化の背景
2. 戸籍の集中管理(法務省の取り組み)
3. 法務省によるその他の施策
4. 相続土地国庫帰属制度の導入
5. 相続登記義務化の施行と罰則
まとめ
1. 相続登記義務化の背景
相続登記義務化が導入された背景には、相続登記が行われないまま放置される「未登記土地」の増加が深刻な問題となっていたことがあります。登記がされない土地は、相続人が複数いる場合に共有状態となり、管理や処分が難しくなります。また、長期間登記が放置されると、相続人の中にはすでに亡くなっている人も出てくるため、さらなる相続が発生し、権利関係が複雑化します。このような土地は「所有者不明土地」と呼ばれ、公共事業の進行や土地の適切な利用を阻害する要因となっていました。
これらの問題に対処するため、政府は相続登記の義務化を進め、土地の権利関係を明確にし、土地の適切な管理と利用を促進しようとしています。
2. 戸籍の集中管理(法務省の取り組み)
相続登記を進めるために不可欠なもののひとつが、相続人を確定するための戸籍情報の管理です。これまでは、戸籍は各市町村が管理しており、相続登記を行う際には相続人が必要な戸籍をそれぞれの市町村から取得しなければなりませんでした。しかし、これは時間と手間がかかる作業で、特に古い戸籍を探す場合には複数の自治体に問い合わせが必要になることも多々ありました。
法務省はこの問題に対応するため、戸籍のデジタル化および集中管理を進めてきました。具体的には、以下の施策が行われています:
戸籍の電子化:各自治体が管理している紙の戸籍をデジタル化し、電子データとして管理できるようにする取り組みです。これにより、相続登記の際に戸籍をオンラインで取り寄せることが可能になり、登記手続きが効率化されました。
法務省の集中管理:戸籍情報を法務省のシステムで一元的に管理する仕組みを整備することで、相続登記に必要な戸籍の収集が容易になります。これにより、相続人が全国の自治体を回る手間を減らし、時間の短縮とコスト削減が実現されました。(広域制度の実現)
3. 法務省によるその他の施策
法務省は相続登記義務化を円滑に進めるため、他にもさまざまな施策を実施しています。
相続登記の申請手続きの簡素化:相続登記を怠った場合でも、相続人が多数いる、遺産分割協議が難航しているなどの正当な理由があれば過料が免除されることがあります。相続登記の義務化に伴い、手続きの簡素化が進み、相続人申告登記制度や必要書類の簡略化(全部ではありません)により、不動産相続がより円滑に行えるようになりました。スムーズな相続登記のためには、専門家の助言を受けることが重要です。
相続登記の登録免許税の減免措置:一定の条件を満たす場合には、相続登記にかかる登録免許税を免除する制度を導入しました。これにより、経済的な理由で登記を行わなかったケースを減少させ、相続登記の促進を図っています。ただし、適用には期限がありますのでご注意ください。
4. 相続土地国庫帰属制度の導入
また、相続登記義務化の一環として、相続人が相続した土地を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」も導入されました。これは、相続によって取得したものの、維持管理が困難な土地を国に帰属させることで、管理負担を軽減する制度です。この制度により、放置されがちな土地が国の管理下に置かれ、適切に利用されることが期待されています。
※相続土地国庫帰属制度に関するQ&A(法務省HP内)
リンク:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00459.html
「6 却下事由・不承認事由一般関連
(Q3)相続登記が義務化されたと聞きましたが、まだ相続登記をしていません。このような土地は相続土地国庫帰属制度の申請ができますか。
(A3) 相続登記が未了であっても、申請する土地を相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限ります。)によって取得したのであれば、申請することができます。ただし、所有者であることを証する書面(戸籍事項証明書等)を添付する必要があります。また、申請を取り下げたり、申請が却下・不承認となった場合は、承認申請者が引き続きその土地の所有者となりますので、相続登記を申請する必要があります。」(引用終わり)
ポイントは、相続土地国庫帰属制度に申請する場合には相続登記は必須ではありませんが、却下・不承認の場合は、相続登記の義務が生じることになります。
5. 相続登記義務化の施行と罰則
相続登記の義務化は、2024年4月1日から正式に施行されました。この制度により、土地を相続した人は相続が発生してから3年以内に登記を行う義務が課されます。もしこの義務を怠った場合、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。これにより、相続登記の放置が減り、所有者不明土地の問題が解消されることを狙っています。
まとめ
相続登記義務化を進めるうえで、行政が行ってきた主な取り組みとしては、戸籍の電子化と集中管理、相続登記手続きの簡素化、登録免許税の減免措置、登記手続きのデジタル化などが挙げられます。これらの施策は、相続登記を促進し、所有者不明土地問題を解決するために重要な役割を果たしています。
子供がいない夫婦における相続の問題は、特に長男の嫁という立場でより複雑化することが多いです。
配偶者の方が長男を亡くした後、子供がいないために相続や祭祀継承に関する問題が浮上しやすくなります。
以下に、具体的な問題とその対策について説明します。
目次
1. 祭祀承継者の問題
2. 長男の実家の相続と処分の問題
3. 遺言書の必要性と相続手続きの複雑さ
4. まとめ
1. 祭祀承継者の問題
まず、祭祀承継者(お墓や位牌を守る人)の指定についてです。長男が亡くなり、残された配偶者が子供のいない状況では、祭祀を誰が行うかが大きな問題となります。通常、祭祀承継者は法定相続とは別に決定されるため、遺産分割とは異なる視点で考える必要があります。もし遺言書で長男の家系の誰かを祭祀承継者に指定したい場合、その人との関係が良好であるかが重要です。特に親族間での合意がないまま祭祀承継者が指定されると、後々トラブルに発展することがあります。遺言書での祭祀承継者の指定は、家族間の感情的な問題にも配慮する必要があります。
対策として、遺言書の明確化と、家族との事前の話し合いが求められます。具体的にどのように祭祀を行い、どのような負担が発生するかを明記し、指定された人にその役割を引き受けてもらえるかを確認することが大切です。
2. 長男の実家の相続と処分の問題
もう一つの大きな問題は、長男の家系の実家に関する相続です。子供がいない場合、配偶者が相続する財産に長男の実家が含まれることが多いですが、実家が長男の家系の象徴的な存在である場合、処分がしづらいという心理的な負担が生じます。特に長男の両親や兄弟姉妹などの親族が実家に思い入れを持っている場合、配偶者が自由に売却や処分を行うことに対する抵抗感が強くなることが予想されます。
法的には、配偶者がその不動産を相続すれば処分する権利を持ちますが、実際には家系のシンボルであるため、売却やリフォームを行う際に親族との摩擦が生じることがあります。このような場合の対策として、以下のような方法が考えられます:
事前の合意形成:親族との関係が良好であれば、実家の処遇について話し合い、双方が納得できる形で合意を形成することが理想です。場合によっては、親族にその家を引き取ってもらう代わりに、別の形で財産を分配するなどの工夫も考えられます。
遺言書の作成:被相続人である長男が健在のうちに、実家の処遇について明確な指示を遺言書に記載しておくことも有効です。例えば、「実家は〇〇に譲渡し、他の財産を配偶者に相続させる」などの具体的な指示があれば、後のトラブルを防ぐことができます。
信託の活用:家族信託を利用し、実家の処分や管理に関する権限を信託財産として預けることで、配偶者が財産の維持や処分に関して直接的な負担を負わないようにする方法もあります。信託契約によって、親族が管理を続ける一方、配偶者の経済的な利益を守ることができます。
3. 遺言書の必要性と相続手続きの複雑さ
遺言書がない場合、長男が亡くなり配偶者だけが残されると、法定相続に従って遺産分割が行われます。長男の親が健在であれば、その親も相続権を持ち、配偶者が全財産を相続できない可能性が高まります。さらに、長男の兄弟姉妹や甥姪が相続に関わることもあり、相続手続きが非常に複雑化します。
このような状況を避けるためには、遺言書の作成が不可欠です。特に以下のポイントを明記することが重要です:
実家の処遇:先述の通り、実家の処遇について親族との合意が得られている場合、その内容を具体的に記載します。そうでない場合は、配偶者が自由に処分できることを明確に記載することが推奨されます。
祭祀承継者の指定:お墓や位牌を守る人物を明確に指定し、祭祀に関する費用の分担や管理方法を記載することも重要です。
配偶者への財産分配:長男の親や兄弟が相続権を持つ場合でも、遺言書で配偶者に多くの財産を相続させるように指定できます。これは法定相続を超えた部分でも認められるため、配偶者の生活を守るためにも活用できます。
4. まとめ
子供のいない夫婦における相続は、長男の家系に強い象徴性がある場合や、配偶者が遺産を相続する際に特有の問題が発生します。祭祀承継者の問題や、実家の処遇に関して親族間で摩擦が生じやすく、遺言書がなければ相続手続きが非常に複雑化することがあります。
これらの問題を防ぐためには、遺言書の作成と、親族間の事前の合意形成が重要です。また、信託や専門家の活用も、円滑な相続を実現するための手段として有効です。相続に関するトラブルを未然に防ぐためには、配偶者や家族、専門家との密なコミュニケーションが不可欠となります。
相続に関する話題で、「財産が少ないからもめない」という言葉を耳にすることがありますが、果たしてこれは本当なのでしょうか?
家庭裁判所の遺産分割事件におけるデータを基に、財産の価額別に見た相続の争いについて検証してみます。
目次
1. 相続の争いと財産の多寡
2. 家庭裁判所の遺産分割事件のデータ
3. 財産が少なくても争いが起きる理由
4. 遺産分割を巡るトラブルを防ぐ方法
5. 結論
1. 相続の争いと財産の多寡
一般的に、遺産が多ければ相続争いが激化し、財産が少なければ争いは起きないと考えられがちです。しかし、家庭裁判所で扱われる遺産分割事件のデータを見ると、必ずしも財産の多寡が争いの発生に直結しているわけではないことがわかります。
家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブルは、遺産の価額が少ないケースでも多く発生しています。
実際に、遺産分割の調停や審判に持ち込まれる案件の多くは、遺産の総額が5,000万円以下のケースが大半を占めています。
このことからも、相続財産の規模にかかわらず、相続人間での争いが生じる可能性は十分にあると言えます。
2. 家庭裁判所の遺産分割事件のデータ
家庭裁判所が公開している遺産分割事件の記録を見ると、相続争いがどのような財産規模で発生しているかを分析することができます。以下は、遺産の価額別に見た家庭裁判所での遺産分割事件の割合です。
5,000万円以下:全体の約7割
5,000万円〜1億円:約2割
1億円以上:約1割
このデータからわかるように、遺産価額が5,000万円以下の相続で家庭裁判所に持ち込まれるケースが最も多いのです。遺産が少ないから争いが起きないという考えは、このデータを見る限り当てはまらないことが明らかです。
3. 財産が少なくても争いが起きる理由
では、なぜ財産が少ない場合でも相続争いが発生するのでしょうか?その理由は以下のような要因によります。
(1) 感情的な対立
相続は、単なる財産の分配以上に、家族間の感情的な問題が絡み合うことが多いです。たとえ少額の財産であっても、親族間の関係が良好でない場合、分割方法や分配額をめぐって感情的な対立が起こりやすくなります。たとえば、長年の確執や親の介護負担の不均衡といった問題が表面化し、それが相続争いに発展することがあります。
(2) 分けにくい財産
現金のように簡単に分割できる資産が少なく、不動産や特定の物品が主な財産である場合、それをどのように分けるかで争いが生じることがあります。不動産は分割が難しく、売却するか、一人が相続する場合はその代償金を他の相続人に支払う必要がありますが、この代償金の算定や支払いを巡って争いになることが少なくありません。
(3) 法的知識や準備の不足
多くの人は相続について十分な法的知識を持っておらず、遺言書がない場合には法定相続に基づく遺産分割が必要になります。これがスムーズに進まない場合、相続人同士が意見を異にし、話し合いがまとまらずに調停や審判に進むことがあります。特に、遺産が少額である場合、弁護士を雇うことを躊躇し、結果として紛争が長引くこともあります。
4. 遺産分割を巡るトラブルを防ぐ方法
財産の多少にかかわらず、相続トラブルを防ぐためには事前の対策が重要です。以下の方法で、争いを未然に防ぐことができます。
(1) 遺言書の作成
最も有効な対策の一つは、遺言書を作成することです。遺言書があれば、相続人間での話し合いをスムーズに進めることができます。特に、遺言書が公正証書遺言として作成されている場合、その信頼性が高く、後のトラブルを防ぐ効果があります。
(2) 財産の把握と分配の検討
相続財産が少ない場合でも、事前に財産の内容や分割方法について家族と話し合っておくことが重要です。不動産や預貯金のほか、生命保険や債務の有無についても把握し、どのように分配するかを考えておくことで、後の紛争を避けることができます。
(3) 相続に関する専門家の活用
相続に関する問題は、専門家(弁護士や司法書士、税理士など)に相談することで、適切な解決策を見つけることができます。特に、法的知識がない場合や感情的な対立が避けられない状況では、第三者の専門家が間に入ることで、冷静な話し合いを進めることができるでしょう。
5. 結論
「財産が少ないからもめない」という考えは、家庭裁判所のデータを見る限り、必ずしも正しくありません。
むしろ、財産が少ない場合でも、感情的な対立や分けにくい財産が原因で相続争いが発生するケースが多いことがわかります。
相続トラブルを避けるためには、遺言書の作成や事前の家族との話し合い、専門家の活用が有効です。
財産の規模に関わらず、相続対策を怠らないことが、家族の円満な相続を実現するための鍵となります。
行政書士と司法書士は、どちらも法律に関する業務を取り扱う専門家ですが、それぞれの業務内容や専門分野に違いがあります。特に相続において不動産が含まれる場合、登記に関わる手続きが発生するため、司法書士に依頼することが適切です。
以下では、行政書士と司法書士の業務内容の違いを説明し、不動産相続において司法書士が果たす役割について詳しく解説します。
目次
1. 行政書士の業務内容
2. 司法書士の業務内容
3. 行政書士と司法書士の違い
4. 相続に不動産が含まれる場合、司法書士に任せるべき理由
5. まとめ
1. 行政書士の業務内容
行政書士は、主に「書類の作成」を業務とする法律専門職です。行政書士が作成する書類は、官公署(行政機関)に提出するものが多く、例えば許認可申請書、契約書、各種届出書などが挙げられます。相続においても、行政書士は以下のような業務を行います。
相続関係説明図の作成:相続人が誰であるかを明確にするための図を作成します。
遺産分割協議書の作成:相続人同士で遺産の分け方を決定した際、その内容を記した書類を作成します。
相続手続きのサポート:遺産分割協議や相続に関する行政手続きのサポートを行います。
行政書士は、遺産分割協議書や相続に関する各種書類を作成することができますが、実際の「登記」や「法的な手続き」を行う権限はありません。これは、司法書士が担当する業務に該当します。
2. 司法書士の業務内容
司法書士は、法律に基づく「登記」や「法務書類作成手続き」(司法機関、裁判所など)の専門家です。特に不動産に関する権利関係の登記や、相続における権利移転手続きが主な業務です。司法書士が行う主な業務は以下の通りです。法務局は行政機関なのに、なぜ司法書士なのかという話が出ることがありますが、かつて登記の管轄を裁判所がしていた名残のためです。
不動産登記:不動産の所有権や抵当権など、法律的な権利の変更や設定を登記簿に反映させる手続きです。売買や相続などで所有者が変わった場合、司法書士がその手続きを行います。
商業登記:会社法人の設立や現在の状態を反映させるための変更登記の手続きを代理することができます。
裁判所への提出書類の作成:例えば、相続放棄や遺言の検認手続きに関連する書類を作成し、必要に応じて裁判所に提出します。
相続において、不動産が含まれている場合は、必ず「登記」の手続きが必要です。このため、相続が発生した際に不動産がある場合は、登記の専門家である司法書士に依頼することが重要です。
3. 行政書士と司法書士の違い
行政書士と司法書士の違いは、主に「業務の範囲」にあります。
3-1. 行政書士の業務範囲
行政書士は、書類の作成に関して広範な権限を持っています。許認可申請や、相続に関する書類作成のサポートを行うことができるため、相続に関する手続きにおいても行政書士が活躍する場面は少なくありません。しかし、行政書士には登記に関する業務を行う権限がないため、不動産の相続手続きにおいては、その範囲を超えた登記申請の代理等の業務には対応できません。
3-2. 司法書士の業務範囲
司法書士は、法律に基づく登記手続きを行うことができ、相続に伴う不動産の所有権移転登記や、抵当権設定などの複雑な法的手続きに対応できます。ただし、相続人間でのトラブルが生じた場合に、法的な助言や裁判所への書類提出などは、弁護士の領域となります。
4. 相続に不動産が含まれる場合、司法書士に任せるべき理由
相続に不動産が含まれる場合、必ずその不動産の所有権移転登記が必要です。これは、相続人が正式に不動産を所有する権利を公的に証明するための手続きであり、登記をしないと第三者に対抗することができません。登記を怠ると、不動産を売却する際や、後にトラブルが発生した場合に、相続人が不利な立場に立たされる可能性があります。(令和6年4月1日より相続登記は義務化されています。)
4-1. 登記手続きの重要性
不動産登記は、不動産の権利関係を明確にし、誰がその不動産を所有しているかを公的に証明するためのものです。相続が発生した場合、以下のような問題が生じる可能性があります。
所有者が不明確になる:相続登記を行わないと、登記簿上の所有者が故人のままとなり、相続人がその不動産を売却したり利用したりする際に問題が生じます。
相続人間のトラブル:相続登記を怠ると、相続人間での不動産の権利関係が不明確になり、後にトラブルが発生するリスクが高まります。
不動産の売却が難しくなる:相続登記を行わないままでは、不動産の売却手続きが進められません。売却を希望しても、まず登記を完了させなければならず、手続きが遅れる原因となります。
これらの問題を避けるために、相続登記は速やかに行う必要があります。
4-2. 司法書士に任せるメリット
司法書士に相続登記を依頼することで、複雑な法的手続きを確実に行うことができます。不動産の相続手続きにおいては、以下のようなメリットがあります。
登記手続きの代理:司法書士は、相続人に代わって不動産の所有権移転登記を行うことができます。複雑な書類作成や手続きを全て任せることができるため、相続人自身が法律に詳しくなくても安心です。
トラブルの回避:相続登記が完了していない場合、後々トラブルが生じる可能性がありますが、司法書士が手続きを行うことで、権利関係を明確にし、将来的なリスクを軽減することができます。
法的アドバイスの提供:相続手続きにおいては、法的な判断が必要な場面が多々あります。司法書士は法的なアドバイスを提供し、最適な解決策を提案してくれます。
5. まとめ
行政書士と司法書士は、それぞれ異なる役割を持ちながら、相続手続きにおいて重要な役割を果たします。行政書士は、相続に関する書類作成や遺産分割協議書の作成を担当し、司法書士は不動産登記や法的手続きを行います。相続に不動産が含まれる場合、登記手続きが必要であるため、司法書士に依頼することが不可欠です。
不動産の相続登記は、相続人が正式にその不動産を所有する権利を確立するために必要な手続きであり、司法書士のサポートを受けることで、複雑な手続きや将来的なトラブルを回避することができます。
相続において不動産が含まれている場合は、速やかに司法書士に相談し、確実な登記手続きを行うことが重要です。
土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)と司法書士(しほうしょし)は、どちらも登記業務に関わる資格ですが、具体的な業務内容や専門分野は異なります。
登記に関連する業務を行う際に、これら二つの専門職の役割や違いを正確に理解しておくことは、依頼者にとって重要です。本稿では、土地家屋調査士と司法書士が扱う登記の違いを詳しく説明します。
目次
1. 土地家屋調査士の登記業務
2. 司法書士の登記業務
3. 土地家屋調査士と司法書士の違い
4. 共同業務と連携
5. 資格と業務範囲
結論
1. 土地家屋調査士の登記業務
土地家屋調査士の主な業務は、不動産の「物理的な状態」を登記に反映させることです。具体的には、土地や建物の境界を確定し、その形状や面積などを正確に測量し、登記簿に反映させる業務を担当します。土地家屋調査士の登記業務は、不動産の実体に基づく情報を公的に記録するものであり、これにより所有者や権利者が自分の不動産の正確な範囲や形状を証明できるようになります。
1-1. 主な登記業務
土地家屋調査士が扱う登記の代表的なものには以下があります。
土地分筆登記:一つの土地を複数に分割する場合に行う登記です。例えば、相続や売買などの際に、広い土地を細かく分ける必要がある場合に行われます。
土地合筆登記:複数の土地を一つにまとめる登記です。複数の土地を所有している場合、それらを統合して管理することが可能です。
建物表題登記:新築した建物を初めて登記簿に記載する際に行う登記です。この登記により、建物が公式に存在することが証明されます。
区分建物表題登記:マンションなどの区分所有建物の登記です。個々の区分所有部分の登記が必要な場合に行われます。
1-2. 土地家屋調査士の役割
土地家屋調査士は、主に測量技術に基づいて業務を行います。不動産の境界線や面積、建物の形状などの物理的な要素を正確に反映することが求められます。土地の境界に争いがある場合や、土地の面積が正確でない場合は、土地家屋調査士が現地で測量を行い、その結果を登記簿に反映させます。彼らの業務は、不動産の物理的な側面に関する専門知識が要求されるため、測量士としてのスキルが重要です。
2. 司法書士の登記業務
一方、司法書士の登記業務は、不動産の「権利関係」に関するものです。司法書士は、不動産の所有権や抵当権などの権利関係の変更や移転を登記簿に反映させる役割を担います。例えば、不動産の売買や相続による所有権の移転、銀行からの借り入れに伴う抵当権の設定などが、司法書士の主な業務に該当します。
2-1. 主な登記業務
司法書士が扱う登記の代表的なものには以下があります。
所有権移転登記:不動産の売買や相続などにより所有者が変わった場合に行う登記です。例えば、家を購入した場合は、司法書士が新しい所有者の情報を登記簿に反映させます。
抵当権設定登記:不動産を担保に借金をする場合に、金融機関が抵当権を設定する際に行う登記です。この登記により、債務者が借り入れた金額を返済できない場合に、金融機関が不動産を差し押さえる権利が公式に認められます。
所有権保存登記:新築物件の初めての所有権登記です。これは土地家屋調査士が行う建物表題登記とは異なり、新築の建物の所有者を明確にするために行われます。
抵当権抹消登記:ローンを完済した場合に、金融機関が設定した抵当権を抹消するための登記です。
2-2. 司法書士の役割
司法書士の業務は、不動産に関する法律的な権利関係を扱います。不動産売買の際に、所有権が正式に移転するためには、登記簿の所有者欄が変更される必要があり、その手続きを代行するのが司法書士の役目です。また、借り入れに際して抵当権が設定される場合や、相続で不動産が移転する場合にも、司法書士がその登記手続きを行います。これにより、権利関係が公に認められ、第三者にも対抗できる状態となります。
3. 土地家屋調査士と司法書士の違い
土地家屋調査士と司法書士の最大の違いは、扱う「登記の内容」にあります。
土地家屋調査士は、不動産の物理的な側面を取り扱い、土地や建物の形状、面積、境界などを正確に反映させることが主な業務です。土地の分筆や合筆、新築建物の登記など、物理的な変動を記録する役割を担います。
司法書士は、不動産の権利関係に関する登記を行い、所有権や抵当権の移転や設定、抹消など、法律上の権利を登記簿に反映させることが主な業務です。売買や相続など、法律的な側面に関与します。
4. 共同業務と連携
土地家屋調査士と司法書士は、不動産登記において互いに連携して業務を行う場面が多くあります。例えば、新築物件の登記の場合、まず土地家屋調査士が建物表題登記を行い、その後に司法書士が所有権保存登記を行うという流れです。また、土地の分筆や合筆が行われる場合にも、土地家屋調査士が物理的な変更を登記し、その後に司法書士が権利の変更を登記することがあります。
5. 資格と業務範囲
土地家屋調査士と司法書士は、それぞれの資格が必要であり、業務範囲が法律で定められています。土地家屋調査士は不動産の測量や登記に関する技術的な知識が要求され、司法書士は法律的な知識や契約書の作成、登記手続きの代行が求められます。両者の業務は密接に関連していますが、それぞれの専門分野において高度な専門性が必要です。
結論
土地家屋調査士と司法書士は、不動産登記において異なる役割を担いながらも、相互に補完し合う関係にあります。土地家屋調査士は不動産の物理的側面(登記簿謄本の表題部)、司法書士は権利関係の法律的側面(登記簿謄本の権利部)を扱い、両者が連携することで不動産の登記が正確かつ円滑に行われます。
司法書士の独占業務である「登記」は、日本の不動産取引や相続において極めて重要な役割を果たしています。不動産を購入したり、相続によって不動産の権利を取得したりした際には、登記を行うことが一般的です。
しかし、なぜ登記が必要なのか、また登記を怠った場合にどのようなリスクがあるのかを理解することは重要です。ここでは、登記の意義と、民法第177条に基づく対抗要件について詳しく説明します。
目次
1. 登記とは何か
2. 不動産の権利取得と登記の必要性
3. 民法第177条と
4. 登記をしない場合のリスク
5. 登記のメリット
6. 司法書士の役割
7. まとめ
1. 登記とは何か
登記とは、不動産や会社の権利関係を公示するための制度です。不動産の場合、誰がその不動産の所有者であるか、抵当権が設定されているかなど、権利に関する情報が法務局に備えられた登記簿に記録されます。これにより、不動産の権利関係が明確化され、第三者がその情報を閲覧できるようになっています。
2. 不動産の権利取得と登記の必要性
不動産を購入した場合や相続で不動産を取得した場合、その権利を取得したことを証明するためには「登記」が必要です。登記を行うことで、取得した権利が公的に認められ、他者に対してその権利を主張できるようになります。この点に関して、特に重要なのが民法第177条です。
3. 民法第177条とは
民法第177条は、不動産に関する権利の変動を第三者に対抗するためには、登記が必要であることを定めています。具体的には、以下のように規定されています。
「不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記しなければ、第三者に対抗することができない。」
この規定は、例えば、不動産の売買や相続によって所有権を取得したとしても、その権利を登記していない限り、他の第三者(例えば、別の購入者や抵当権者)に対してその権利を主張することができないことを意味します。つまり、登記をしていない場合、権利を持っていることを他者に証明できず、法的に不利な立場に立たされる可能性があるということです。
4. 登記をしない場合のリスク
民法第177条に基づく「対抗要件」は、第三者に対する権利の主張に深く関わっています。これにより、登記をしないことには以下のようなリスクが生じます。
4-1. 所有権が不明確になる
不動産を取得したにもかかわらず登記を行わない場合、法務局に記録されている登記簿上では、前所有者の名前が引き続き残ることになります。結果として、実際の所有者が誰であるかが不明確となり、後の売却や利用が難しくなる可能性があります。
4-2. 二重売買や詐欺のリスク
登記を行わない限り、第三者に対してその不動産を所有していることを証明する手段がありません。仮に、不動産の売主が二重に売買契約を結んだ場合、先に登記を済ませた購入者が法的に優先されるため、後から購入したとしても登記をしていなければ不利な立場に置かれます。これにより、登記を怠ると、自分が正当な所有者であっても権利を守ることができないというリスクがあります。
4-3. 相続における問題
相続で不動産を取得した場合も、登記を行わなければ権利を対外的に主張できません。相続人同士での争いが生じた場合、登記がされていないと、遺産分割がスムーズに進まないことがあります。また、相続人が複数いる場合、一部の相続人が勝手にその不動産を処分してしまうリスクも存在します。このような事態を避けるためにも、登記は迅速に行うことが求められます。
5. 登記のメリット
登記を行うことには、法的リスクを避けるだけでなく、さまざまなメリットがあります。
5-1. 権利の保護
登記を行うことで、不動産の所有者としての権利が公的に認められます。これにより、不動産を売却したり、抵当権を設定したりといった不動産の取引をスムーズに進めることが可能です。また、トラブルが発生した際にも、登記簿を用いて権利の有無を証明することができます。
5-2. 将来的なトラブルの回避
登記を行うことで、所有権が公的に確認できるため、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。特に、不動産は高額で価値のある資産であるため、権利関係が明確でないと相続や売買などの手続きが複雑化し、無用なトラブルを招く原因となります。
5-3. 不動産取引の透明性
登記によって不動産の権利関係が明確にされるため、不動産取引において信頼性が高まります。購入者や金融機関など、取引に関わるすべての当事者が安心して取引を進められるようになります。
6. 司法書士の役割
司法書士は、不動産登記に関する専門知識を持った法律職であり、登記手続きを代理して行うことができます。不動産取引においては、売買契約書の作成から登記申請までの一連の手続きを代行し、権利関係を法的に確定させる役割を果たします。特に、相続や贈与などで複雑な権利関係が絡む場合、専門家である司法書士に依頼することが推奨されます。
6-1. 司法書士の登記手続き
司法書士は、登記申請書類の作成から法務局への提出まで、登記に関する一切の手続きを行います。また、相続人や取引の当事者と協力して、必要な証明書類や書類の作成をサポートし、登記手続きをスムーズに進めるための助言を行います。これにより、権利の確定が迅速かつ確実に行われます。
6-2. トラブル予防のためのアドバイス
司法書士は、登記手続きだけでなく、将来のトラブルを予防するための法的アドバイスも提供します。相続において、相続人間の争いを防ぐための対策や、遺言の作成サポートなど、権利関係を円滑に進めるための提案も行います。
7. まとめ
不動産を取得した場合、登記を行うことは民法第177条に基づく「対抗要件」を満たすために不可欠です。登記を怠ると、第三者に対して権利を主張できず、トラブルが発生した際に不利な立場に立たされるリスクがあります。そのため、不動産を取得した際は速やかに登記を行い、権利関係を明確にしておくことが重要です。
登記手続きには複雑な法的要件が関わるため、司法書士に依頼することで、確実かつスムーズに手続きを進めることができます。
遺産分割協議は、相続人が遺産をどのように分配するかを話し合う重要な手続きです。以下は遺産分割協議についてのよくある質問(FAQ)形式でまとめたものです。
目次(質問)
1. 遺産分割協議とは何ですか?
2. 遺産分割協議を行う時期はいつですか?
3. 誰が遺産分割協議に参加できますか?
4. 相続人が未成年の場合はどうなりますか?
5. 協議がまとまらない場合はどうすれば良いですか?
6. 遺産分割協議書は必要ですか?
7. 遺産分割協議書を作成する際の注意点は?
8. 遺産分割協議後に新たな遺産が見つかった場合はどうなりますか?
9. 分割方法にはどのようなものがありますか?
10. 代償分割のメリットとデメリットは?
11. 相続放棄をした相続人は協議に参加できますか?
12. 遺産分割協議に司法書士や弁護士は関与しますか?
終わりに
1. 遺産分割協議とは何ですか?
遺産分割協議は、相続が発生した際に、相続人が遺産を分ける方法を協議する手続きです。遺言書が存在しない場合や、遺言書で定められた内容以外に分割を行う場合に、全ての法定相続人の同意が必要です。この協議によって、各相続人がどの財産をどのように取得するかが決定されます。
2. 遺産分割協議を行う時期はいつですか?
遺産分割協議を行う時期に法的な期限はありませんが、相続税の申告期限である相続開始から10ヶ月以内に協議を完了させることが推奨されます。10ヶ月以内に協議が完了しない場合、相続税の申告が遅れ、税金の負担が大きくなる可能性があります。
3. 誰が遺産分割協議に参加できますか?
遺産分割協議には、法定相続人全員が参加しなければなりません。法定相続人とは、被相続人(亡くなった方)の配偶者、子ども、直系尊属(両親や祖父母)、兄弟姉妹などです。遺言執行者が選ばれている場合は、遺言執行者も協議に関わることがあります。
4. 相続人が未成年の場合はどうなりますか?
相続人が未成年の場合、親権者または特別代理人が代わりに遺産分割協議に参加します。親権者が協議に参加する場合、自らの利益と相反するため、裁判所に申請して特別代理人を選任する必要があります。これにより、未成年者の権利が保護されます。
5. 協議がまとまらない場合はどうすれば良いですか?
全員の同意が得られない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てることができます。調停は、第三者である調停委員が仲介し、相続人間で合意を目指す手続きです。それでも合意に至らない場合は、審判へと進み、家庭裁判所が強制的に遺産分割を決定します。
6. 遺産分割協議書は必要ですか?
はい。遺産分割協議がまとまった場合は、遺産分割協議書を作成します。この書面には、協議で決定した内容が明記され、全ての相続人が署名捺印します。遺産分割協議書は不動産登記や預貯金の名義変更に必要な書類で、法的な効力を持ちます。
7. 遺産分割協議書を作成する際の注意点は?
遺産分割協議書は、相続人全員が内容に同意し署名捺印する必要があります。不動産が含まれる場合は実印を押し、印鑑証明書を添付します。また、遺産の内容が漏れなく記載されていること、書き方に誤りがないことも重要です。専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
8. 遺産分割協議後に新たな遺産が見つかった場合はどうなりますか?
協議後に新たな遺産が見つかった場合、再度相続人全員で協議を行い、その遺産をどのように分けるかを決めます。再び遺産分割協議書を作成する必要があり、全員の同意が求められます。
9. 分割方法にはどのようなものがありますか?
遺産の分割方法には、以下の3つの主な方法があります。
現物分割:不動産や現金などの遺産をそのままの形で分割する方法。
代償分割:相続人の一部が特定の財産を受け取り、他の相続人に代償金を支払うことで分配する方法。
換価分割:遺産を売却し、その売却代金を相続人で分割する方法。
10. 代償分割のメリットとデメリットは?
代償分割のメリットは、特定の財産(例:自宅や事業用不動産など)を一人が相続できるため、財産の維持が可能になることです。一方で、代償金の支払いが発生するため、支払い能力が求められる点がデメリットです。代償金を準備できない場合、最終的に換価分割に切り替えなければならない可能性もあります。
11. 相続放棄をした相続人は協議に参加できますか?
相続放棄をした相続人は、遺産分割協議に参加する権利も義務もありません。放棄をした時点で、その相続人は初めから相続人でなかったものとみなされます。ただし、遺産分割前に放棄が行われているかを確認する必要があります。
12. 遺産分割協議に司法書士や弁護士は関与しますか?
複雑な遺産分割や争いが予想される場合、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することが望ましいです。専門家は法律に基づいて適切なアドバイスを提供し、遺産分割協議書の作成や不動産の名義変更手続きなどを代行することができます。ただし、争いがある場合や想定される場合には、弁護士に依頼してください。
終わりに
遺産分割協議は、相続人全員の協力が必要な手続きであり、法的な知識も重要です。専門家のサポートを受けながら、円滑に手続きを進めることが、後々のトラブルを防ぐための最善の方法です。
自筆証書遺言と公正証書遺言は、遺言書を作成する際の代表的な方法です。どちらも法的効力を持ちますが、作成手続きや取り扱いに違いがあります。この記事では、これら2つの遺言書についてFAQ形式でその特徴や違いを解説します。
目次(質問)
Q1: 自筆証書遺言とは何ですか?
Q2: 公正証書遺言とは何ですか?
Q3: 自筆証書遺言と公正証書遺言の大きな違いは何ですか?
Q4: 自筆証書遺言を作成する際の注意点は何ですか?
Q5: 公正証書遺言を作成するための手続きはどうなりますか?
Q6: 自筆証書遺言を保管するための制度はありますか?
Q7: 遺言の作成には費用がかかりますか?
Q8: 証人は必要ですか?
Q9: どちらの遺言を選ぶべきですか?
Q10: どちらの遺言でも内容を変更したり、撤回することはできますか?
Q1: 自筆証書遺言とは何ですか?
A1: 自筆証書遺言とは、遺言者が自分で遺言内容をすべて手書きで記載した遺言書です。形式が簡便で、費用もかからないため、手軽に作成できる点が特徴です。しかし、法的要件を満たさない場合は無効になる可能性があり、遺言内容が法的に有効であるか確認するための専門知識も必要となる場合があります。
Q2: 公正証書遺言とは何ですか?
A2: 公正証書遺言とは、遺言者が公証人役場で公証人に遺言内容を口述し、公証人がその内容を文書にして作成する遺言書です。公証人が関与するため、遺言の内容が法律に沿ったものであることが確認され、無効になるリスクが低く、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配も少ないです。
Q3: 自筆証書遺言と公正証書遺言の大きな違いは何ですか?
A3: 大きな違いは作成手続きと安全性です。
㋐自筆証書遺言は、遺言者が一人で作成できる反面、書式や内容に誤りがあれば無効になる可能性があり、保管方法にも注意が必要です。また、遺言者の死後に家庭裁判所での「検認」という手続きが必要です。
㋑公正証書遺言は、遺言作成時に公証人が法的に適正かどうか確認し、さらに原本が公証役場に保管されるため、無効や紛失のリスクが低く、検認手続きが不要です。
Q4: 自筆証書遺言を作成する際の注意点は何ですか?
A4: 自筆証書遺言を作成する際は、以下の点に注意する必要があります。
①全文を自書:遺言者が遺言書の全文を手書きで書かなければなりません。パソコンや代筆は無効です。
➁日付を明記:日付を明記しなければ無効となります。具体的な日付を書く必要があり、「○月○日」や「吉日」といった曖昧な表現は避けるべきです。
③署名・押印:遺言者自身の署名と押印が必要です。印鑑は認印でもよいですが、実印を使うことが一般的です。
Q5: 公正証書遺言を作成するための手続きはどうなりますか?
A5: 公正証書遺言を作成するには、次の手順を踏みます。
①遺言の内容を事前に考え、公証人役場に相談します。
➁公証人と打ち合わせを行い、必要書類を準備します(遺言者の本人確認書類、不動産の登記簿謄本、相続人の戸籍謄本など)。
③公証人役場で遺言者が口述し、公証人が内容を文書化します。
④遺言者と証人2名の立会いのもと、遺言書を確認し署名します。公証人が原本を保管し、遺言者には正本と謄本が渡されます。
Q6: 自筆証書遺言を保管するための制度はありますか?
A6: 2020年7月より、「自筆証書遺言書保管制度」が導入されました。法務局で自筆証書遺言を保管してもらうことができ、遺言書の紛失や改ざんのリスクを減らすことができます。この制度を利用した場合、遺言者の死後に家庭裁判所での検認が不要になります。
Q7: 遺言の作成には費用がかかりますか?
A7:
自筆証書遺言の場合、基本的に費用はかかりません。ただし、内容の確認や作成にあたって専門家に依頼する場合は、相談料や報酬が発生することがあります。
公正証書遺言の場合、手数料がかかります。手数料は遺言の内容や遺産の額によって異なり、不動産や金融資産などの財産額が大きいほど高額になります。また、証人を依頼する場合の謝礼も別途必要です。
Q8: 証人は必要ですか?
A8:
自筆証書遺言の場合、証人は不要です。ただし、保管や信頼性の面では慎重に取り扱う必要があります。
公正証書遺言の場合は、2名の証人が必要です。証人には相続人やその配偶者、直系血族(親、子)など特定の立場の人はなれないため、第三者を依頼することが一般的です。
Q9: どちらの遺言を選ぶべきですか?
A9: 自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶかは、状況や遺言者の意向に応じて決めると良いでしょう。
自筆証書遺言は手軽で費用もかからないため、簡便に遺言を残したい場合に適しています。ただし、法的な不備がないか注意が必要です。
公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、内容が確実に有効である点が強みです。また、遺言書が公証役場に保管されるため、信頼性が高く安心です。財産が複雑であったり、相続人同士のトラブルが懸念される場合には公正証書遺言を選ぶことが推奨されます。
Q10: どちらの遺言でも内容を変更したり、撤回することはできますか?
A10: はい、どちらの遺言も遺言者が生存中であれば、いつでも内容の変更や撤回が可能です。ただし、新しい遺言書を作成した場合は、以前の遺言書と矛盾しないよう注意する必要があります。また、公正証書遺言の内容を変更する場合は、再び公証人の手続きを経る必要があります。
自筆証書遺言と公正証書遺言には、それぞれの利点と課題があります。自身の財産や家族の状況に応じて、適切な形式を選びましょう。
どちらの形式でも、遺言書が有効であるためには、法律の要件を満たしていることが重要です。
専門家のアドバイスを受けながら作成することをお勧めします。
経営者の皆様。
お手元に、法務省から封書は届いていますでしょうか?
「令和6年10月10日(木)、12年以上登記がされていない株式会社及び5年以上登記がされていない一般社団法人又は一般財団法人に対して、法務大臣による官報公告が行われ、同日付けで管轄登記所から通知書の発送を行いました。」(法務省HP引用)この封書を放置していますと、法人登記簿に登記官が職権で「みなし解散」の手続きとして、解散登記がなされます。
令和6年度においては
令和6年12月10日(火)までに
管轄の登記所に届出又は登記がされないときは、解散したものとみなされます。
「上記の株式会社や一般社団法人又は一般財団法人に該当する場合には、令和6年12月10日(火)までに必要な登記申請又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があり、これらの手続がされなかったときは、対象の会社等について「みなし解散の登記」がされることになります(会社法第472条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第149条及び第203条)。」 (法務省HP)
つまり、令和6年12月10日までに本店所在地の管轄法務局に解散していないことを報告し、放置していた登記の実施をしないといけません。
〇最後の登記から12年を経過している株式会社、又は最後の登記から5年を経過している一般社団法人若しくは一般財団法人は、事業を廃止していない場合、「まだ事業を廃止していない」旨の届出を管轄登記所にする必要があります。
〇公告の日から2カ月以内(令和6年12月10日(火)まで)に、「まだ事業を廃止していない」旨の届出がなく、また、必要な登記申請もされないときは、令和6年12月11日(水)付けで解散したものとみなされます。
※よくわからない方は、アイリス国際司法書士・行政事務所までご相談ください。
より詳しい内容はこちらのブログをご覧ください!
2024年4月1日から施行される「相続登記義務化」は、相続による不動産の所有権移転登記が義務化される制度です。この制度は、相続によって生じる不動産の権利関係を明確化し、所有者不明土地の発生を防ぐために導入されました。
この記事では、相続登記義務化に関するFAQ形式で、その概要とポイントをまとめます。
目次(質問)
Q1: 相続登記義務化とは何ですか?
Q2: 相続登記の義務化はなぜ必要なのですか?
Q3: 相続登記はいつまでに行わなければなりませんか?
Q4: 登記を行うために必要な書類は何ですか?
Q5: 遺産分割協議がまとまらない場合でも登記は必要ですか?
Q6: 義務違反に対する罰則はありますか?
Q7: 義務化の対象となる不動産はどのようなものですか?
Q8: 共同相続人がいる場合、誰が登記手続きを行うのですか?
Q9: 遺言書がある場合でも相続登記は必要ですか?
Q10: 登記の手続きを自分で行うことは可能ですか?
Q11: 相続登記を怠っていた過去のケースについてはどうなりますか?
Q12: 相続登記の義務化によりどのようなメリットがありますか?
Q1: 相続登記義務化とは何ですか?
A1: 相続登記義務化とは、相続により不動産を取得した際に、その不動産の所有権移転登記を行うことが義務付けられる制度です。従来は登記が任意でしたが、2024年4月1日からは義務となり、期限内に登記をしない場合には、過料が科される可能性があります。
Q2: 相続登記の義務化はなぜ必要なのですか?
A2: 相続登記の義務化は、所有者不明土地の増加を抑えることを目的としています。所有者が不明確な土地は、利用が困難になり、行政手続きや再開発などの際に大きな支障をきたすことがあります。この問題を解決するために、相続によって不動産を取得した場合には、その権利関係を登記によって明確にする必要があります。
Q3: 相続登記はいつまでに行わなければなりませんか?
A3: 相続登記は、相続が発生した日から3年以内に行うことが義務付けられています。相続発生の日とは、被相続人が死亡した日を指します。3年以内に登記を完了しなかった場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。
Q4: 登記を行うために必要な書類は何ですか?
A4: 相続登記に必要な書類は以下の通りです。
1.被相続人の戸籍謄本および除籍謄本(出生から死亡までの一連のもの)
2.相続人全員の戸籍謄本
3.相続人全員の住民票または住所証明書
4.遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)
5.不動産の登記簿謄本および固定資産評価証明書
Q5: 遺産分割協議がまとまらない場合でも登記は必要ですか?
A5: 遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続登記は必要です。この場合は、「相続人全員の共有名義」での登記を行うことが可能です。遺産分割が完了した後に、その結果に基づいて持分を修正する登記を行うことができます。
※3年を超えそうな場合、相続人申告登記(義務化の過料を免れる手続き)をしておけば、過料は課せられないので、その間に遺産分割協議を行い相続登記をすることも可能です。
Q6: 義務違反に対する罰則はありますか?
A6: はい、相続登記の義務を怠った場合には、過料が科される可能性があります。具体的には、相続開始から3年以内に登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科されるとされています。また、登記を意図的に怠る行為が認められた場合には、さらに厳しい罰則が適用されることも考えられます。
Q7: 義務化の対象となる不動産はどのようなものですか?
A7: 義務化の対象となる不動産は、すべての土地および建物です。農地、宅地、商業用地など、不動産の用途に関わらず、相続によって取得した全ての不動産に対して登記が必要となります。
Q8: 共同相続人がいる場合、誰が登記手続きを行うのですか?
A8: 共同相続人の中で、誰が登記手続きを行うかは特に法律で定められていませんが、一般的には代表相続人が手続きを進めることが多いです。ただし、最終的には相続人全員が登記申請に関与する必要があり、登記手続きを行う際には相続人全員の同意が必要です。
Q9: 遺言書がある場合でも相続登記は必要ですか?
A9: はい、遺言書が存在する場合でも、相続登記は必要です。遺言書に基づいて相続人が決定されている場合、その内容に従って登記を行うことになります。遺言書により特定の相続人に不動産が遺贈された場合、その相続人が相続登記を行います。
Q10: 登記の手続きを自分で行うことは可能ですか?
A10: 自分で相続登記の手続きを行うことも可能です。しかし、登記の手続きは専門的な知識が必要であり、書類の準備や法的要件を満たす必要があります。手続きに不安がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することをお勧めします。
Q11: 相続登記を怠っていた過去のケースについてはどうなりますか?
A11: 相続登記の義務化は2024年4月1日以降に発生した相続に適用されますが、過去に相続登記を怠っていた場合でも、義務化の対象となります。施行日の令和6年4月1日から3年の間に相続登記をしなければなりません。
Q12: 相続登記の義務化によりどのようなメリットがありますか?
A12: 相続登記が義務化されることで、以下のようなメリットが期待されています。
1.不動産の所有者が明確になるため、相続トラブルが減少する。
2.所有者不明土地の発生が抑制され、土地利用が円滑になる。
3.将来的な相続手続きが簡略化される。
相続登記の義務化は、相続手続きにおいて重要な転換点となります。相続人の方々は、この新制度の内容を十分に理解し、適切に対応することが求められます。
この相続登記義務化FAQ以外に、ご不明な点がある場合は、アイリス相続無料相談にてご質問ください。
相続が発生した際、遺産は法定相続人によって分割されますが、その中でも「遺留分(いりゅうぶん)」という法的に保護された最低限の相続分が重要な役割を果たします。遺留分は、被相続人(亡くなった方)が遺言などで特定の相続人や第三者に全財産を譲渡しようとした場合でも、法定相続人が最低限保証される相続権を持つ仕組みです。これにより、家族の経済的な保護を図ることが目的とされています。本記事では、法定相続人と遺留分の関係について詳しく解説します。
目次
1. 法定相続人とは
2. 遺留分とは
3. 遺言書と遺留分の関係
4. 遺留分の放棄
5. 遺留分を巡る相続トラブル
6. まとめ
1. 法定相続人とは
法定相続人とは、民法によって定められた相続権を持つ者を指します。被相続人が遺言を残さなかった場合、または遺言が無効であった場合、法定相続人が相続人となり、法律に基づいて遺産を分割します。法定相続人の範囲は以下のように定められています。
1.1. 法定相続人の順位
配偶者:常に相続人となります。配偶者は他の相続人がいても、常にその相続人と共同で相続します。
第1順位:子供:被相続人の子供(養子も含む)が法定相続人になります。もし子供が亡くなっている場合、その子供(被相続人の孫)が代襲相続人となります。
第2順位:直系尊属:子供がいない場合、被相続人の両親や祖父母などが相続人となります。
第3順位:兄弟姉妹:子供も直系尊属もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が亡くなっている場合、その子供(甥や姪)が代襲相続人となります。
1.2. 相続分の割合
相続分は法定相続分として定められています。配偶者がいる場合、配偶者の相続分は以下のように決まります。
配偶者と子供が相続人の場合:配偶者1/2、子供1/2
配偶者と直系尊属が相続人の場合:配偶者2/3、直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
2. 遺留分とは
遺留分とは、法定相続人が最低限確保できる相続分です。被相続人が全財産を特定の相続人や第三者に譲渡する遺言を残した場合でも、遺留分を持つ相続人は「遺留分侵害額請求権」に基づき、自身の遺留分を確保する権利があります。
2.1. 遺留分を持つ者
遺留分は、以下の法定相続人に限られます。
配偶者
子供(代襲相続人を含む)
直系尊属(両親や祖父母など)
兄弟姉妹には遺留分がありません。つまり、兄弟姉妹が相続人であっても遺留分請求を行うことはできません。
2.2. 遺留分の割合
遺留分は、相続財産全体の一定割合を相続人に保証するものです。遺留分の具体的な割合は以下の通りです。
直系尊属のみが相続人の場合:相続財産の1/3
その他の相続人がいる場合(配偶者や子供がいる場合):相続財産の1/2
遺留分は相続人全員で分割されます。例えば、配偶者と子供がいる場合、遺留分の半分を配偶者が、残りの半分を子供が分け合います。
2.3. 遺留分侵害額請求権
遺留分が侵害されている場合、相続人は遺留分侵害額請求権を行使できます。この請求権により、相続人は遺留分を超えて取得した者(通常は他の相続人や受遺者)に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の返還を求めることができます。遺留分請求は、相続開始後1年以内に行使しなければならず、これを過ぎると請求権は消滅します。
3. 遺言書と遺留分の関係
被相続人は遺言書によって、遺産を自由に配分することが可能です。しかし、法定相続人が遺留分を侵害される形で遺言が作成されていた場合、遺留分請求を行うことができ、遺言通りに全財産を特定の相続人や第三者に譲渡することはできません。
3.1. 遺言書による財産配分の自由
遺言書は、被相続人が自分の財産を誰にどのように分配するかを指定するための強力な手段です。しかし、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。そのため、遺言を作成する際には遺留分を考慮することが重要です。
3.2. 遺留分を侵害しない遺言の作成
遺留分を侵害しないように遺言を作成することが、相続トラブルを避けるためのポイントです。遺言者は、遺留分に配慮して遺産配分を計画し、遺言内容を法的に有効に保つために、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
4. 遺留分の放棄
遺留分は原則として保障されていますが、相続開始前でも放棄することが可能です。相続開始前においては、遺留分を放棄する場合、家庭裁判所の許可が必要です。
4.1. 遺留分放棄の手続き
遺留分の放棄は、相続開始前に家庭裁判所に対して申立てを行い、許可を得ることで有効となります。この手続きにより、放棄した相続人は遺留分の請求権を失い、遺産分割の際にも遺産を受け取る権利を失います。
4.2. 放棄の影響
遺留分を放棄した場合、その相続人は相続財産を一切受け取ることができなくなります。これにより、他の相続人や受遺者に対して遺留分請求を行うことができなくなるため、相続財産の分割がシンプルになります。
5. 遺留分を巡る相続トラブル
遺留分は相続人の権利を保護するための制度ですが、遺言によって特定の相続人に多くの遺産が譲渡された場合、他の相続人が遺留分請求を行うことでトラブルが発生することもあります。特に、家族間の感情的な対立が遺留分を巡る紛争を引き起こす原因となることが多いです。
6. まとめ
法定相続人と遺留分は、相続において重要な要素です。法定相続人は民法に基づいて定められており、遺留分はその法定相続人が最低限受け取ることができる相続財産を保証する制度です。
遺言を作成する際には、遺留分の存在を考慮し、相続トラブルを未然に防ぐために適切な配分を行うことが求められます。
死亡保険金受取人と法定相続人は、相続に関する手続きにおいて重要な役割を担いますが、その意味や権利には大きな違いがあります。
相続手続きを進める際には、この違いをしっかり理解することが必要です。
本記事では、死亡保険金受取人と法定相続人の違い、相続税の扱い、相続財産との関係などを中心に解説します。
目次
1. 死亡保険金受取人とは
2. 法定相続人とは
3. 死亡保険金は相続財産に含まれるか?
4. 死亡保険金と相続税
5. 死亡保険金と遺産分割の関係
6. まとめ
1. 死亡保険金受取人とは
死亡保険金受取人とは、生命保険契約に基づいて被保険者(通常、亡くなった方)が亡くなった際に、保険金を受け取る権利を持つ人のことです。
被保険者が生命保険に加入する際、受取人を指定することが一般的です。受取人として指定されるのは通常、家族や親族ですが、法定相続人でない第三者を受取人に指定することも可能です。
1.1. 指定された受取人の権利
生命保険金は、保険契約によってあらかじめ指定された受取人が権利を持つため、被相続人(亡くなった方)の遺産には含まれません。つまり、生命保険金は遺産分割協議の対象外となり、他の相続人と分け合う必要がありません。この点が、法定相続人に関わる遺産とは異なる重要な違いです。
1.2. 受取人の指定変更
生命保険契約では、受取人を後から変更することが可能です。契約者が変更を希望する場合は、保険会社に対して正式に手続きを行う必要があります。なお、受取人が変更されない限り、当初の指定受取人が保険金を受け取る権利を持ちます。
2. 法定相続人とは
法定相続人とは、民法に基づいて遺産を相続する権利を持つ人々を指します。被相続人が遺言書を残さなかった場合、または遺言書に特段の指定がない場合、法定相続人が相続財産を分割します。民法では、法定相続人の範囲を以下のように定めています。
配偶者は常に相続人となり、他の相続人と共に相続分を分け合います。
子供がいる場合、子供が第一順位の相続人です。
子供がいない場合、第二順位として直系尊属(両親や祖父母など)が相続人になります。
直系尊属もいない場合、第三順位として兄弟姉妹が相続人となります。
2.1. 相続分の割合
法定相続人の相続分は、配偶者と子供がいる場合、配偶者が遺産の半分を相続し、残り半分を子供が均等に分け合います。もし子供がいない場合、配偶者と直系尊属で相続分を分け合います。兄弟姉妹が相続人となる場合も、同様に相続分が定められています。
3. 死亡保険金は相続財産に含まれるか?
死亡保険金は、通常、相続財産には含まれません。これは、保険契約に基づいて特定の受取人に直接支払われるため、遺産分割協議の対象外とされるためです。そのため、生命保険金を受け取った受取人は、相続財産の分割に関しては基本的に影響を受けません。
しかし、例外的に「みなし相続財産」として相続税の対象となる場合があります。以下にその詳細を説明します。
4. 死亡保険金と相続税
死亡保険金は遺産には含まれないものの、相続税の課税対象となることがあります。ただし、一定の非課税枠が設けられており、法定相続人が受け取る保険金については、非課税限度額があります。
4.1. 非課税限度額
非課税限度額は、次の計算式で求められます。
「非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の人数」
例えば、法定相続人が3人いる場合、500万円×3=1,500万円が非課税限度額となり、この額までは相続税が課されません。それを超える金額については、相続税の対象となります。
4.2. 法定相続人以外の受取人の場合
受取人が法定相続人以外の人(例えば、友人や恋人)である場合、生命保険金は、非課税枠の適用は受けられません。
5. 死亡保険金と遺産分割の関係
死亡保険金は遺産分割協議の対象外であり、指定された受取人が保険金を単独で受け取る権利を持ちます。しかし、法定相続人の一部が受取人となり、他の相続人が全く保険金を受け取れない場合、相続人同士で感情的な対立が生じることがあります。このような場合、受取人が得た保険金の一部を相続財産として考慮し、遺産分割協議で調整することもありますが、法的には義務ではありません。
5.1. 遺留分への影響
相続人には、最低限の相続分である「遺留分」が法律で保障されています。死亡保険金は遺産には含まれませんが、場合によっては遺留分を巡る争いの原因となることもあります。例えば、全財産を特定の相続人に譲る内容の遺言書があった場合でも、他の相続人は遺留分減殺請求を行うことが可能です。しかし、死亡保険金自体はこの請求の対象とはなりません。
6. まとめ
死亡保険金受取人と法定相続人には、それぞれ異なる役割と権利が存在します。死亡保険金は保険契約によって指定された受取人が直接受け取るものであり、相続財産には含まれません。そのため、遺産分割協議の対象外ですが、相続税の課税対象にはなる場合があります。
法定相続人が死亡保険金の受取人である場合、一定の非課税枠が適用され、課税負担が軽減される一方で、受取人が法定相続人以外の場合は、相続税が全額課税されることに注意が必要です。
相続手続きを円滑に進めるためには、事前に受取人や相続人の権利を十分に理解しておくことが重要です。
法定相続人情報一覧図は、相続手続きにおいて法定相続人を明確にするための書類です。特に、相続財産の登記や銀行手続きなどで活用され、これにより相続人や相続割合を明確にすることで、円滑な相続手続きを進めることができます。
目次
1. 法定相続人情報一覧図の概要
2. 法定相続人情報一覧図の作成方法
3. 法定相続人情報一覧図の活用
4. 法定相続人情報一覧図の利点
5. 法定相続人情報一覧図の注意点
6. まとめ
1. 法定相続人情報一覧図の概要
法定相続人情報一覧図とは、亡くなった方(被相続人)の相続人が誰であるかを示した図表形式の書類です。この一覧図は、被相続人が亡くなった後に相続手続きを進める際、法定相続人全員の関係性や相続分を示すために必要です。
相続手続きにおいて、誰が法定相続人であるかを証明するためには、通常、戸籍謄本を遡って取得し、相続人を確定させる必要があります。
しかし、これに加えて法定相続人情報一覧図を提出することで、各相続手続きの際に何度も戸籍謄本を提示する手間を省くことができます。法務省が提供するこの制度を活用することで、相続手続きの簡素化が期待されます。
2. 法定相続人情報一覧図の作成方法
法定相続人情報一覧図は、法務局に対して「法定相続人証明制度」を利用することで作成できます。具体的な作成手順は以下の通りです。
2.1. 必要書類の準備
一覧図を作成するためには、まず被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本を取得する必要があります。この書類によって、誰が法定相続人であるかが明確になります。法定相続人とは、民法で定められた順序に基づいて相続権を持つ人々のことを指します。具体的には、以下の順序で相続人が確定します。
配偶者は常に相続人となり、他の法定相続人と共に相続分を分け合います。
子供がいる場合、子供が第一順位の相続人となります。
子供がいない場合、第二順位として被相続人の父母などの直系尊属が相続人となります。
直系尊属もいない場合、第三順位として被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。
2.2. 一覧図の作成
必要な戸籍謄本を取得したら、それを基に法定相続人情報一覧図を作成します。
法定相続人一覧図は、相続人と被相続人の関係を図示したものです。例えば、被相続人が亡くなり、その配偶者と子供が法定相続人である場合、配偶者と子供がそれぞれ相続人として図に記載され、相続分も記載されます。
2.3. 法務局への申請
法定相続人情報一覧図が完成したら、法務局に対して相続登記申請の一環として提出します。
この際、一覧図と共に被相続人や相続人の戸籍謄本も提出する必要があります。法務局がその内容を確認し、正当性が認められれば、法定相続人情報一覧図が正式に作成されます。
※法定相続情報証明制度となります。ここで作成された証明書は、預金の払い戻しなどに利用することが可能です。
3. 法定相続人情報一覧図の活用
法定相続人情報一覧図は、相続手続きを進める際に非常に便利な書類です。これを利用することで、相続財産の名義変更や銀行口座の解約手続きなどにおいて、相続人が誰であるかを示すための戸籍謄本を毎回提示する必要がなくなります。以下に具体的な利用例を挙げます。
3.1. 相続登記における利用
相続が発生した際に、不動産の相続登記を行う必要があります。この際、法定相続人情報一覧図を提出することで、相続人全員の戸籍謄本を再度取得する手間を省くことができます。これにより、不動産の名義変更手続きがスムーズに進みます。
3.2. 銀行手続きでの活用
被相続人が所有していた銀行口座の解約や相続手続きを進める場合、通常、相続人全員の戸籍謄本を銀行に提出する必要があります。しかし、法定相続人情報一覧図を提出することで、戸籍謄本の代わりとして相続人全員を確認する手段として利用でき、手続きが簡略化されます。
4. 法定相続人情報一覧図の利点
法定相続人情報一覧図を活用する主な利点は以下の通りです。
4.1. 手続きの簡素化
通常、相続手続きにおいては相続人全員の戸籍謄本を一つ一つ揃え、それを各機関に提出しなければなりませんが、法定相続人情報一覧図を一度作成しておけば、その後の手続きで繰り返し利用できるため、非常に便利です。
4.2. 時間とコストの削減
複数の相続手続きを行う場合、戸籍謄本を取得する費用や手間が大幅に減少します。また、複数の手続きを同時に進める際も、一覧図があれば効率的に処理できます。
4.3. 相続人間の確認
相続手続きでは、相続人間の関係性を正確に把握することが重要です。法定相続人情報一覧図を作成することで、相続人全員の関係が視覚的に明確になるため、相続人同士の混乱やトラブルを未然に防ぐことができます。
5. 法定相続人情報一覧図の注意点
法定相続人情報一覧図にはいくつかの注意点もあります。
5.1. 法務局への申請が必要
法定相続人情報一覧図を作成するためには、法務局に対して戸籍謄本を提出し、正式に申請する必要があります。このため、一覧図を作成するには一定の手間がかかります。
5.2. 戸籍謄本の正確な取得
一覧図の作成には、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本が必要です。万が一、抜け漏れがあった場合、法定相続人が正確に反映されず、手続きが進まないことがあります。そのため、戸籍謄本を正確に取得することが重要です。
6. まとめ
法定相続人情報一覧図は、相続手続きをスムーズに進めるための重要な書類です。
これにより、相続人全員の関係性や相続分を明確に示し、相続財産の登記や銀行手続きなどを効率よく進めることができます。相続手続きの簡素化やコスト削減の観点からも、この制度の利用は非常に有用です。
法務省の提供する法定相続人証明制度を活用し、必要な手続きをスムーズに進めましょう。
相続が発生すると、多くの手続きが必要となります。これらの手続きは法律で定められた期限内に行う必要があり、滞りなく進めるためには事前の準備が大切です。
以下、主な手続きを時期ごとにまとめています。
目次
1. 2週間以内に行うべき手続き
2. 3か月以内に行うべき手続き
3. 90日以内に行うべき手続き
4. 4か月以内に行うべき手続き
5. 10か月以内に行うべき手続き
6. まとめ
1. 2週間以内に行うべき手続き
① 死亡診断書の受け取り
医師による「死亡診断書」は、診療中の病気に関連して亡くなった場合に発行されます。それ以外の状況での死亡には「死体検案書」が必要です。
➁ 死亡届・火葬許可申請書の提出(7日以内)
死亡届は死亡診断書と一緒に提出し、市町村役場に届け出ます。葬儀社が代行してくれる場合もあります。死亡届のコピーは、死亡保険の請求に使うため、数枚用意しておくと便利です。
③ 世帯主変更届(14日以内)
市町村役場にて世帯主の変更を行います。
④ 健康保険・介護保険の手続き(14日以内)
亡くなった方が国民健康保険に加入していた場合、「資格喪失届」を提出します。75歳以上の方は、後期高齢者医療資格の喪失届も必要です。介護保険被保険者証の返却も14日以内に行います。また、葬祭費の申請を忘れずに行いましょう。支給額は3万~5万円です。
➄ 年金受給停止の手続き(10日以内)
厚生年金や国民年金の停止手続きを行い、未支給年金がある場合は請求を行います。年金事務所で相談すると、遺族年金の受給も確認できます。未支給年金と遺族年金の請求権は5年以内です。
2. 3か月以内に行うべき手続き
相続放棄・限定承認の手続き
相続開始を知った日から3か月以内に相続放棄や限定承認の手続きを行います。これらの手続きを怠ると、単純承認(負債も含めてすべてを引き継ぐ)とみなされます。
3. 90日以内に行うべき手続き
森林法に基づく届出
相続財産の不動産に「森林」が含まれる場合、「森林の土地の所有者届出書」を相続開始から90日以内に市町村役場に提出する必要があります。届出をしなかった場合、10万円以下の過料が課される可能性があるので注意が必要です。
4. 4か月以内に行うべき手続き
準確定申告
被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までの所得に対する確定申告を相続人が行います。申告は、相続開始を知った日から4か月以内です。税理士に相談することをお勧めします。
5. 10か月以内に行うべき手続き
① 農地法に基づく届出
相続財産に「田」や「畑」などの農地が含まれる場合、農地法に基づく届出が必要です。違反すると10万円以下の過料が課されますので、期限内に届け出ましょう。
➁ 相続税の申告・納付
相続財産が基礎控除額(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)を超える場合、10か月以内に相続税の申告と納付が必要です。税理士に相談することで、正確な計算ができます。
6. まとめ
相続発生後には多くの手続きを期限内に行う必要があります。死亡届や火葬許可申請書などは葬儀社がサポートしてくれる場合もありますが、相続放棄や税務関連などの手続きは個人で行うのが難しいこともあります。費用を考慮しながら専門家への相談を検討しましょう。
相続に関する問題においてよく議論されます。特に法定相続人の範囲や相続財産の分割方法について、家族間でトラブルになることが少なくありません。
この問題に正しく対処するためには、まず法定相続人が誰かを特定し、親の財産がどのように分割されるのかを知ることが大切です。
目次
1.法定相続人とは誰か?
2.遺産分割におけるトラブルの原因
3.法定相続人の特定と財産の特定
4.専門家の活用
5.まとめ
1.法定相続人とは誰か?
法定相続人とは、法律によって定められた相続人のことを指します。具体的には、被相続人(亡くなった親など)の配偶者や子どもが該当します。配偶者は常に相続人となり、これに子どもが加わります。子どもが亡くなっている場合、その子ども(被相続人の孫)が代襲相続人として相続権を持ちます。
さらに、子どもがいない場合は、親や兄弟姉妹が法定相続人となることがあります。民法では、相続人は次のように順位付けされています:
第一順位:子ども
第二順位:親
第三順位:兄弟姉妹
配偶者は常に相続人であり、第一順位の子どもと一緒に相続する場合が一般的です。子どもがいない場合には、第二順位の親が相続し、親もいない場合は兄弟姉妹が相続人となります。
2.遺産分割におけるトラブルの原因
親のお金が誰のものか、という論点が浮かび上がる最大の理由は、相続財産の取り分についての認識の違いや、被相続人の意思が不明確なことが原因です。法定相続分は法律で定められているものの、現実には以下のような要因でトラブルが発生することが多いです。
親の介護や扶養:特に一人の子が親の介護を担当していた場合、その子が他の兄弟よりも多く相続を望むことがあります。法定相続分では平等な分配が原則ですが、現実的には「貢献度」を主張するケースが増えています。
親の財産の把握:遺産分割協議を始める前に、親の財産を正確に把握することが重要です。しかし、親の財産状況が不透明だったり、隠されている場合、相続人間での信頼関係が崩れることがあります。
遺言書の有無:遺言書がない場合、法定相続分に従って分割されますが、遺言書がある場合は、その内容が優先されます。しかし、遺言書の内容が公平でないと感じられた場合、相続人同士の対立が深まることがあります。
3.法定相続人の特定と財産の特定
遺産分割協議を進めるにあたり、まず「法定相続人の特定」と「遺産の特定」が必要です。以下のような手順で進めるのが一般的です。
法定相続人の特定
法定相続人を特定するためには、被相続人の戸籍謄本を取得することが重要です。戸籍謄本を通じて、被相続人が生まれてから亡くなるまでの間にどのような家族構成だったかを確認します。特に、知られていない子どもがいないかどうかを調べることが大切です。また、配偶者がいるかどうか、または亡くなっている場合、その配偶者の相続権がどのように扱われるかも確認する必要があります。
戸籍謄本を取得するには、市区町村役場で申請するか、インターネットを通じて行政書士事務所などの代理申請サービスを利用することができます。特に相続人が多い場合や、被相続人の居住地が遠方の場合は、専門家のサポートを受けるのが効率的です。
遺産の特定
次に、遺産を特定する必要があります。親の財産には、不動産や預貯金、株式、保険など多岐にわたります。以下は主な遺産の特定方法です。
預貯金:被相続人の取引金融機関から残高証明書を取得します。これは、死亡時の預金残高を確認するために必要です。残高証明書を取得するには、金融機関に死亡届や相続関係の証明書類を提出する必要があります。
不動産:不動産の特定には、固定資産税評価証明書や登記簿謄本が必要です。これらの書類は、不動産の評価額を把握するために重要です。不動産が複数ある場合、それぞれの不動産についてこれらの書類を取得しておくことが推奨されます。
株式や投資信託:証券会社に対して、被相続人が保有していた株式や投資信託の残高証明を請求します。また、配当金の支払状況も確認しておくと良いでしょう。
生命保険:保険契約の内容によっては、相続財産として扱われる部分があります。被相続人が契約していた保険の契約書を確認し、受取人や保険金額を把握しておくことが必要です。
4.専門家の活用
相続手続きは、戸籍や財産の調査、遺産分割協議、相続税の申告など、専門的な知識が必要な場面が多くあります。特に法定相続人の特定や財産の特定において、手続きが煩雑になる場合、司法書士や税理士、弁護士などの専門家に相談することが有効です。
例えば、司法書士は不動産の相続登記を代行してくれるだけでなく、戸籍謄本の取得や遺産分割協議書の作成もサポートしてくれます。
また、税理士は相続税の申告や納税手続きについて助言を行い、節税対策も含めたアドバイスを提供してくれます。
5.まとめ
「親のお金は誰のものか」という問いに対する答えは、法的には法定相続人がその権利を持つことになります。しかし、相続の過程で家族間の意見の食い違いや感情的な対立が生じることが多く、相続人同士の合意形成が重要です。
法定相続人の特定と遺産の特定は、円滑な遺産分割協議を進めるための重要なステップです。これらの手続きを確実に行うことで、トラブルを未然に防ぎ、親の遺産を正しく引き継ぐことができます。
必要に応じて専門家のサポートを受けることで、複雑な手続きもスムーズに進められるでしょう。
遺産分割協議を円滑に進めるためには、まず「法定相続人の特定」と「遺産の特定」を正確に行うことが重要です。
これらは、相続人間の争いを未然に防ぎ、法的なトラブルを避けるためにも不可欠な手続きです。それぞれについて詳しく解説していきます。
目次
1. 法定相続人の特定
2. 遺産の特定
3. 遺産分割協議を進めるために
4. 専門家のサポート
5. まとめ
1. 法定相続人の特定
法定相続人の特定とは、相続に参加する権利を持つ人物を確定させる作業です。これは、相続の基盤となる重要なプロセスであり、全ての相続人が特定されていなければ、遺産分割協議が無効となる可能性があります。具体的には、被相続人(亡くなった方)が亡くなるまでに法的に認められた相続人を全て洗い出し、その相続人が誰であるかを確定することを指します。
1-1. 戸籍謄本の取得
法定相続人を特定するためには、まず被相続人の戸籍謄本を取得する必要があります。日本の戸籍制度は、被相続人が生まれてから亡くなるまでの婚姻や離婚、子供の有無などが記録されているため、これを基に相続人を正確に特定できます。
具体的な取得方法としては、被相続人が最後に住んでいた市区町村役場で「戸籍謄本」「除籍謄本」や「改製原戸籍」を申請します。これにより、現在確認できる子供以外に、婚姻関係外で生まれた子供がいるかどうか、また過去に養子縁組があったかなどの情報も把握できます。
1-2. 法定相続人の範囲
民法では、相続人の範囲が以下のように定められています。
配偶者(常に相続人となる)
子供(第一順位)
子供がいない場合、被相続人の父母(第二順位)
子供も父母もいない場合、被相続人の兄弟姉妹(第三順位)
ただし、相続に関しては「代襲相続」という制度もあり、相続人が既に亡くなっている場合、その子供や孫が相続権を持つことがあります。この点も、戸籍謄本で確認が必要です。
2. 遺産の特定
法定相続人が確定した後は、相続財産を特定する必要があります。これは、どの財産が遺産に含まれるかを明確にし、相続人がそれぞれ何を受け取るかを決定するための基礎となります。遺産には、不動産や金融資産、動産、負債などが含まれます。
2-1. 金融資産の確認
まず、金融機関における取引口座の残高証明書を取得することが重要です。被相続人がどの金融機関と取引をしていたかを確認するためには、過去の通帳やクレジットカードの利用履歴、口座引き落としの明細などを手がかりに、該当する金融機関に残高証明書を請求します。
残高証明書は、相続開始日時点での預貯金残高を証明する書類であり、遺産分割協議における重要な資料となります。また、被相続人が株式や投資信託を保有していた場合は、証券会社に口座の明細書や評価証明を依頼する必要があります。
さらに、生命保険金や退職金の有無も確認が必要です。これらは、相続財産としてではなく、保険金受取人に直接支払われるものですが、相続税の課税対象となるため、遺産分割に影響を与える可能性があります。
2-2. 不動産の確認
次に、不動産については、固定資産税評価証明書を取得する必要があります。この証明書は、市町村役場で取得でき、相続財産に含まれる不動産の評価額を確認する際に使用します。
また、登記簿謄本も確認しましょう。登記簿謄本を確認することで、被相続人名義の不動産がどこにあり、どのような権利が付いているかを把握できます。特に、抵当権や地上権が設定されている場合、相続後の財産処理に影響を与えるため、事前に確認しておくことが重要です。
2-3. 負債の確認
遺産には、資産だけでなく負債も含まれます。負債の確認を怠ると、相続後に思わぬ負債が発覚し、相続人が困ることになります。被相続人がどのような借入れをしていたかを確認するために、銀行や消費者金融、クレジット会社からの借入れ状況を調査しましょう。
また、住宅ローンが残っている場合は、団体信用生命保険に加入していたかを確認します。この保険に加入していた場合、被相続人が亡くなった時点でローンの残高が保険によって清算されることがあります。
3. 遺産分割協議を進めるために
これらの「法定相続人の特定」と「遺産の特定」が終わった段階で、ようやく遺産分割協議を進めることができます。相続人全員が揃って、相続財産をどのように分けるかを話し合い、合意が得られたら遺産分割協議書を作成します。この協議書には全ての相続人の署名と実印が必要です。
もし相続人の間で意見が一致しない場合は、家庭裁判所での調停手続きや審判手続きに移行することになります。そのため、遺産分割協議を円滑に進めるためにも、相続開始前に遺言書を作成しておくことが望ましいと言えます。
4. 専門家のサポート
相続の手続きは非常に煩雑であり、特に複数の不動産や金融資産、負債が絡む場合、専門家のサポートが必要になることがあります。司法書士や行政書士、税理士に相談し、遺産分割協議の進め方や法定相続人の特定、遺産の特定を適切に行うことが重要です。
相続税申告が必要な場合、相続税の計算や申告についても税理士に依頼することができます。専門家のサポートを受けることで、相続手続きが円滑に進み、相続人間の争いを未然に防ぐことができるでしょう。
5. まとめ
「法定相続人の特定」と「遺産の特定」は、遺産分割協議を進めるために不可欠なステップです。戸籍謄本や残高証明書、固定資産税評価証明書などを取得して正確に情報を集め、相続人全員が納得できる形で遺産を分割することが求められます。
また、専門家のアドバイスを受けることで、複雑な手続きや法的リスクを避け、円滑な相続を実現することができます。
遺産分割協議書が突然送られてきて、実印での押印や印鑑証明書の添付を求められるという状況は、相続における一般的な相談の一つです。特に、弁護士や司法書士から郵便で送られてくる場合、依頼者が驚きや不安を感じることが多いようです。
このような状況で、どのように対応すればよいかを明確にするために、遺産分割協議書の作成過程や問題点、専門家としての対応について詳しく検討していきます。
目次
1. 遺産分割協議書の役割と作成手順
2. 問題の発生源:遺産分割協議書が突然送られてくるケース
3. 専門家としての責任
4. 相続人としての対応策
5. まとめ
1. 遺産分割協議書の役割と作成手順
遺産分割協議書とは、相続財産の分割方法を記載した書面で、相続人全員の同意に基づいて作成されます。協議書には、各相続人が受け取る財産の内容や割合が明示されており、これに全員が合意することで相続財産の正式な分配が行われます。
遺産分割協議は、全ての相続人が参加して行われるべきものであり、各相続人の権利や希望が十分に反映されることが重要です。この協議が完了した後、協議内容を文書にまとめ、最終的に全相続人が署名・押印を行います。通常は、協議が終わった時点で遺産分割協議書が作成され、その後、相続人全員がその内容に同意して署名・押印を行います。
2. 問題の発生源:遺産分割協議書が突然送られてくるケース
遺産分割協議書が突然送られてきて、「実印を押印し、印鑑証明書を添付して返送してほしい」と依頼されるケースは問題視されることが多いです。このような手続きは、全相続人が十分な協議を経て合意に至っていることが前提ですが、現実には、相続人の一部が協議の過程に十分に参加していないことがあるためです。
この場合、遺産分割協議書が送られてくるまでの協議内容が十分に説明されておらず、相続人がその内容に納得していないことがあります。にもかかわらず、専門家(弁護士や司法書士)が書類を作成し、署名や押印を求める行為は、相続人に対して不安や疑念を抱かせることがあります。これは、相続人が自らの権利や財産分割の内容を正しく理解していない状況で、結果的に押印してしまうリスクを伴います。
3. 専門家としての責任
弁護士や司法書士は、相続手続きにおいて相続人の代理を務めたり、協議の進行をサポートしたりする役割を担っています。しかし、遺産分割協議書が相続人に不意に郵送され、同意を得ることなく押印を求める行為は、専門家としての倫理や責任に疑問を抱かせるものです。
専門家は、以下の点を十分に考慮しながら対応することが求められます。
①全相続人への説明義務
専門家は、遺産分割協議書の内容や協議の過程について、相続人全員に対して丁寧に説明する義務があります。相続人が協議に関与していない場合、その協議の結果がどのような経緯で導き出されたのか、また各相続人にとってどのような影響があるのかを明確に伝える必要があります。
➁相続人の意向を反映する
遺産分割協議書は、単に相続人の意思を反映した文書ではなく、協議の結果として成立するものでなければなりません。そのため、相続人が実際に協議に参加していない場合や、十分に説明を受けていない場合、その協議書の内容に同意することが不適切です。
③押印の強制は避ける
相続人に対して、押印や印鑑証明書の提出を強制することは避けるべきです。相続人が協議内容に納得していない状況であれば、無理に書類を返送させることはトラブルを引き起こす原因となります。また、相続人が不当に押印を求められた場合、将来的にその協議内容について争いが生じる可能性も高くなります。
4. 相続人としての対応策
このような状況で相続人がどのように対応すべきかを考えると、以下のポイントが重要です。
①協議の内容を確認する
まず、遺産分割協議書が送られてきた場合、その内容が自分の理解や意向に沿ったものであるかどうかを確認する必要があります。もし協議に参加していなかった場合や、内容に納得がいかない場合は、押印を保留し、専門家や他の相続人と再度協議を行うことが重要です。
➁専門家に質問する
送られてきた遺産分割協議書に対して不安や疑問がある場合は、弁護士や司法書士に対して積極的に質問を行いましょう。協議書の内容やその背景について詳しく説明を求めることで、自分の権利を正確に把握することができます。
③押印を慎重に判断する
協議書に同意しない場合は、押印を急ぐ必要はありません。自分が納得できるまで協議を続けることが大切です。また、遺産分割協議書に記載された内容が法的に妥当であるかどうかを確認するために、別の専門家に相談することも有効です。
5. まとめ
遺産分割協議書が郵送され、押印を求められるという状況は、相続手続きにおいてよく見られるものですが、その背後には相続人の権利や意向が十分に反映されていない場合があります。弁護士や司法書士が専門家としての役割を果たすためには、相続人全員に対する説明義務や協議内容の透明性が求められます。
また、相続人としては、協議の内容を十分に理解し、自分の権利が尊重されているかどうかを慎重に確認することが重要です。不安や疑問がある場合は、専門家に対して積極的に質問し、納得がいくまで協議を行うことが、スムーズな相続手続きを実現するための鍵となります。
専門家と相続人の双方が信頼と透明性を持って協議を進めることで、後々のトラブルを回避し、円満な相続手続きが可能となるでしょう。
遺産分割協議は、相続における重要な手続きの一つであり、遺産を円満に分けるためには慎重な対応が求められます。
協議に参加する全員が満足する結論に達するのは難しいこともありますが、適切な準備と注意を払うことで、トラブルを最小限に抑えることができます。
以下に、遺産分割協議において特に注意すべき5つのポイントを解説します。
目次
1. 相続人全員の同意が必要であること
2. 遺産の把握と適正な評価
3. 法定相続分と遺留分の理解
4. 遺産分割協議書の作成と法的効力
5. 相続税申告の期限と手続き
まとめ
1. 相続人全員の同意が必要であること
遺産分割協議を成立させるためには、相続人全員の同意が必要です。相続人の一部が協議に参加しなかったり、同意しなかった場合、協議は無効となります。
これにより、相続人が複数いる場合は、全員のスケジュール調整が必要となり、時間がかかることが予想されます。また、連絡が取れない相続人がいる場合、その人の権利をどう扱うかという問題も発生します。
特に、異母兄弟や、長年会っていない親族が相続人に含まれる場合、円滑に協議を進めるために、事前に関係者全員に連絡を取り、理解を得ることが大切です。
2. 遺産の把握と適正な評価
遺産分割協議を進める前に、遺産の全体像を把握し、その評価額を正確に算出することが重要です。これには、不動産、金融資産、動産(家具や車など)、負債などを含むすべての遺産の調査が必要です。
不動産の評価については、専門家による査定が求められることが多く、特に市場価値が変動しやすい資産に関しては、最新の評価を基に協議を進める必要があります。
また、相続税の課税対象になる財産については、税務署から指摘を受けないよう、適切に申告することが求められます。
こうした財産の評価が不十分なまま分割を行うと、後々トラブルに発展する可能性があるため、注意が必要です。
3. 法定相続分と遺留分の理解
相続分割の際に、法定相続分と遺留分の存在を理解することが不可欠です。
法定相続分とは、法律で定められた相続人が受け取るべき相続財産の割合であり、遺産分割協議の基本となるものです。たとえば、配偶者と子供が相続人となる場合、配偶者は2分の1、子供は残りの2分の1を等分に分けるのが法定相続分です。
しかし、法定相続分とは別に、相続人には「遺留分」という最低限保障された取り分があります。
特に、遺言によって相続財産が特定の相続人や第三者に多く分配される場合でも、遺留分が侵害されている場合は、その分の補填を請求する権利があります。
このため、遺産分割協議では、法定相続分と遺留分の調整をしっかり行い、全員が納得する形にまとめることが大切です。
4. 遺産分割協議書の作成と法的効力
遺産分割協議がまとまった後、必ず「遺産分割協議書」を作成することが重要です。これは、協議内容を文書として記録し、相続人全員の署名と押印をもって法的な効力を持つ書類となります。
遺産分割協議書がない場合、協議内容が不明確になり、後に相続人間でのトラブルが発生する可能性があります。
また、遺産分割協議書は、不動産の名義変更や金融機関での手続きに必要な書類でもあります。法的に有効な遺産分割協議書を作成するためには、専門家(司法書士や弁護士)のアドバイスを受けることが推奨されます。
5. 相続税申告の期限と手続き
遺産分割協議が終わった後、相続税の申告と納付を忘れずに行う必要があります。
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
この期間内に申告を行わないと、ペナルティが課される可能性があるため、協議が長引いた場合でも期限内に手続きを終えるようにスケジュールを立てることが重要です。もし、相続税の申告が必要かどうか分からない場合でも、早めに税理士に相談し、必要な対策を講じることが賢明です。
また、遺産分割協議が終了していない状態でも、法定相続分に基づいて一旦相続税の申告を行い、後に分割が確定した段階で修正申告を行うことも可能です。
まとめ
遺産分割協議は、法的な手続きや相続人同士の合意形成が重要であり、準備不足や不注意からトラブルに発展することも少なくありません。
上述の5つのポイントを押さえ、事前に適切な対応を心がけることで、スムーズな遺産分割を実現することができます。
専門家のアドバイスを受けながら、法的な手続きを進めることが、相続人全員にとって円満な解決への道となるでしょう。
「貸金庫は相続対策になるのか?」という問いに対して、まず、貸金庫の役割と使用方法、そして相続が発生した際の手続きについて理解する必要があります。
貸金庫は一般的に、貴重品や重要書類を安全に保管するための手段として利用されますが、相続の場面ではその利便性が問題になる場合があります。特に、相続発生後に貸金庫の内容を確認するために、金融機関によって相続人全員の同意や手続きが必要となるケースがあり、これが相続対策として適しているのかどうかを検討する必要があります。
目次
1. 貸金庫の利用と相続の関係
2. 貸金庫の開錠手続き
3. 相続対策としての適合性
4. 貸金庫利用における対策
5. まとめ
1. 貸金庫の利用と相続の関係
貸金庫は貴金属、重要書類、現金などを安全に保管するための設備であり、金融機関や一部の専門業者が提供しています。貸金庫は、所有物が直接金融機関の口座や資産管理システムに含まれないため、相続が発生しても自動的に相続手続きの一環として扱われるわけではありません。これは、貸金庫の内容が非公開であり、事前に相続財産として記録されていない場合、その中に何が保管されているかを把握するために相続人が協力して調査を行わなければならないということを意味します。
特に、貸金庫の利用者が死亡した場合、金融機関は通常、相続人全員の同意を得るまで貸金庫の開錠を認めません。
このため、貸金庫に保管された財産や書類が相続手続きの開始前に確認できないことがあります。例えば、遺言書が貸金庫内に保管されている場合、相続手続きの早い段階で確認できなければ、手続きが遅延する可能性があります。
したがって、貸金庫は必ずしも迅速な相続対策に直結するものではありません。
2. 貸金庫の開錠手続き
貸金庫を開けるための手続きは金融機関ごとに異なりますが、多くの場合、相続人全員の実印を押印した同意書と印鑑証明書が必要とされます。
これは、相続人の中に不正がないようにするための措置ですが、手続きを遅らせる一因ともなります。特に、相続人が複数いる場合、全員の署名や実印が揃わなければ開錠ができないため、時間と労力がかかります。
さらに、相続人が遠方に住んでいる場合や、関係が疎遠である場合、連絡や手続きがスムーズに進まないことも考えられます。
このため、貸金庫に遺産分割協議に影響を与える重要な書類や財産を保管する場合は、慎重な計画が必要です。
3. 相続対策としての適合性
貸金庫が相続対策として適しているかどうかを判断する際、次の点に注目する必要があります。
①相続人全員の同意を得る手間
先述の通り、貸金庫を開錠するためには相続人全員の同意が必要となる場合があります。この手続きがスムーズに進められないと、遺産の調査が遅れ、相続手続き全体に影響を与えることになります。特に、相続人間に信頼関係がない場合や、連絡が取りづらい相続人がいる場合は、手続きが煩雑になる可能性があります。
➁貸金庫の中身の把握が困難
貸金庫内に何が保管されているのかを事前に把握しておくことが難しいため、相続人が財産調査を行う際に混乱を招くことがあります。例えば、現金や貴金属が貸金庫に保管されている場合、それらが他の財産に含まれているかどうかを確認するために時間を要することがあります。特に、貸金庫内に遺言書や重要な財産証書が保管されている場合、早期に開錠できなければ遺産分割協議が進まないリスクがあります。
③他の相続対策と比較した場合のメリットとデメリット
貸金庫は確かに財産や書類の安全を守るための手段としては有効ですが、相続が発生した際に手続きが煩雑になるリスクがあります。これに対して、例えば、遺言書の保管や財産管理については、公正証書遺言や信託の活用が考えられます。公正証書遺言は公証人が作成し、法律的にも強力な効力を持ち、遺言の内容が明確になるため、相続手続きがスムーズに進む利点があります。また、信託を活用することで、相続人が財産を円滑に受け取ることができる仕組みを作ることも可能です。これに比べると、貸金庫はあくまで財産や書類の保管方法の一つに過ぎず、相続対策としては他の方法よりも手続きが煩雑である点がデメリットとなり得ます。
4. 貸金庫利用における対策
貸金庫を相続対策として利用する場合、いくつかの対策を講じることでリスクを最小限に抑えることができます。例えば、遺言書や財産に関する重要書類を貸金庫内に保管する際には、その旨を信頼できる相続人や専門家に事前に伝えておくことが重要です。また、遺言書を貸金庫に保管するのではなく、公証役場で保管することを検討するのも一つの方法です。さらに、相続人全員が納得できる形で事前に遺産分割計画を立てることで、貸金庫開錠時のトラブルを避けることができます。
5. まとめ
貸金庫は、安全に財産や重要書類を保管する手段として有効ですが、相続対策としては慎重な判断が求められます。
特に、相続発生時に相続人全員の同意が必要となる場合、手続きが煩雑になり、スムーズな相続手続きを妨げる可能性があります。そのため、貸金庫の利用に際しては、他の相続対策手段と比較検討し、適切な準備と対策を講じることが重要です。
相続財産調査の迅速化や遺産分割協議の円滑化を図るためにも、専門家の助言を得ながら計画的に対応することが望ましいでしょう。
遺産分割協議を進める際には、被相続人の財産を正確に把握することが重要です。
通常、遺産分割協議の前に行う「遺産調査」では、被相続人の名義となっている財産のすべてを確認することが求められます。しかし、どれだけ慎重に調査を行っても、全ての財産を網羅できないことがあります。特に、不動産に関しては、被相続人が所有している財産が思いがけない場所に存在していることがあるため、その把握が難しく、遺産として漏れてしまうこともあります。この場合、遺産分割協議書にどのような対策をしておけば、当該遺産分割協議書を用いて、後に発見された不動産の手続きもできるのかについて解説したいと思います。
目次
1. 遺産調査の重要性
2. 不動産調査の難しさ
3. 新たな財産発見に備える条項の必要性
4. 再協議の手間を省くメリット
5. 相続人間のトラブル防止
6. 条項を追加する際の注意点
まとめ
1. 遺産調査の重要性
遺産分割協議を行う前提として、被相続人の全財産を正確に把握することが必要です。
遺産調査を行い、すべての財産を明らかにすることで、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。
しかし、どれだけ慎重に調査を行っても、財産が漏れるリスクがあります。
2. 不動産調査の難しさ
不動産の調査は特に複雑で、役場から「固定資産評価証明書」を取得することで被相続人名義の不動産を確認できますが、その役場の管轄内の不動産しか調べることができません。他市町村に不動産がある場合、その市町村で別途調査が必要です。
また、被相続人が思いがけない場所に不動産を所有しているケースもあり、そうした場合には財産が漏れてしまう可能性があります。
3. 新たな財産発見に備える条項の必要性
遺産分割協議書に「すべての相続人は、個々に記載された以外の被相続人所有の不動産があった場合は、相続人〇〇が相続し、取得することに異議はないものとする」という条項を追加することで、遺産分割協議が完了した後に新たな財産が見つかった場合でも、その財産をスムーズに相続できるようになります。
この条項があると、再協議の手間を省き、相続手続きが簡略化されます。
4. 再協議の手間を省くメリット
通常、遺産分割協議後に新たな財産が発見されると、再度協議を行う必要がありますが、この条項を入れておくことでその必要がなくなります。これにより、時間や労力を節約できるだけでなく、相続手続きを迅速に進めることが可能です。
5. 相続人間のトラブル防止
この条項があることで、後から発見された財産に対して相続人間での新たなトラブルを避けることができます。特に高額な不動産や希少な資産が発見された場合、その取り扱いを巡って相続人間で争いが生じることが少なくありません。
事前に取り決めを設けることで、相続人間の信頼関係を守り、スムーズな相続手続きを進めることができます。
6. 条項を追加する際の注意点
条項を追加する際には、相続人全員がその内容に同意していることが重要です。相続人の中には、後から発見された財産について新たに協議を希望する者がいるかもしれません。そのため、遺産分割協議書作成時に、専門家から十分な説明を受け、相続人全員が納得した上で押印することが不可欠です。
まとめ
遺産分割協議書に「記載されていない財産が発見された場合、その取得に異議はない」とする条項を追加することで、相続手続きを円滑に進め、トラブルを未然に防ぐことができます。
相続人同士の関係を守りつつ、複雑な手続きを回避するためにも、この条項の導入は効果的です。
専門家と相談しながら、相続手続きをスムーズに進める準備を整えておくことが大切です。
登記識別情報(権利証)が提供できない場合、土地や建物の売買や贈与といった取引においては、「本人確認情報」または「事前通知」という手続きが用いられます。これらの手続きは、所有者が正当な権利者であることを確認するためのものであり、不動産取引の安全性を確保するために重要です。
以下では、それぞれの手続きの違いと、どのような場合に使えるのか、またそのメリットとデメリットについて解説します。
目次
1. 本人確認情報とは
2. 事前通知とは
3. 本人確認情報と事前通知の比較
4. どちらの手続きを選ぶべきか
5. 結論
1. 本人確認情報とは
本人確認情報は、登記識別情報や権利証が提供できない場合に、司法書士が本人確認を行い、その結果をもとに作成する書面です。具体的には、司法書士が権利者と面談し、本人の身分証明書(運転免許証やパスポートなど)を確認した上で、所有者が真の権利者であることを確認し、その情報を登記申請書に添付します。これにより、登記識別情報がなくても、登記手続きを進めることが可能です。
(本人確認情報のメリット)
迅速な手続き: 司法書士が直接本人確認を行い、手続きを進めるため、時間をかけずに登記を完了させることができます。売買や贈与の取引において、迅速に進めたい場合に特に有用です。
本人確認が確実: 司法書士が面談や書類確認を行うため、正当な所有者であることを第三者に証明できます。取引相手も安心して取引を進めることができる点が強みです。
(本人確認情報のデメリット)
費用が発生: 司法書士による本人確認には手数料がかかります。通常の登記手続きに加えて、本人確認情報の作成費用が必要となるため、コストが増加します。
面談の必要性: 所有者本人が司法書士と対面での面談を行う必要があります。遠方に住んでいる場合や、本人が面談に出向けない状況では、手続きが煩雑になる可能性があります。
本人確認情報が適用されるケース
登記識別情報(権利証)を紛失してしまった場合。
登記識別情報が発行されていない不動産の所有権移転時。
土地や建物を売却または贈与する際に、手続きを迅速に進めたい場合。
2. 事前通知とは
事前通知は、登記識別情報や権利証を提供できない場合に、登記申請者(売主)が登記官に対して登記を申請する際に使われる手続きです。具体的には、登記官が所有者に対して書面で通知を行い、その書面を受け取った所有者が一定期間内に回答することで、所有者本人であることを確認する方法です。登記識別情報の提供ができない場合でも、通知に対する返信が正当であれば登記手続きが完了します。
(事前通知のメリット)
費用が安い: 司法書士による本人確認情報の作成に比べ、費用がかからないか、非常に少額で済みます。そのため、コストを抑えたい場合に有利です。
本人の面談が不要: 所有者本人が司法書士と面談する必要がないため、遠方に住んでいる場合や、面談が難しい場合に有効です。
(事前通知のデメリット)
時間がかかる: 登記官から所有者に対して通知が送られるため、その返信を待たなければなりません。通常は、通知の返信がなされるまでに2週間ほどの時間がかかるため、取引を迅速に進めたい場合には不向きです。
所有者が通知に反応しないリスク: 所有者が通知を受け取らなかったり、返信を怠った場合には、登記手続きが滞る可能性があります。特に、高齢者や転居している場合など、通知を受け取らない事態が生じやすいです。
事前通知が適用されるケース
登記識別情報を紛失してしまったが、取引を急いでいない場合。
費用を抑えたい場合。
所有者が司法書士との面談を行うことが難しい場合。
※金融機関から融資を受けて取引をする場合に、融資後ただちに抵当権を設定する場合は事前通知のように日数がかかる手続きは不適合となり、「本人確認情報」を取引前にしておくようになります。
3. 本人確認情報と事前通知の比較
4. どちらの手続きを選ぶべきか
手続きの選択は、主に以下のポイントによって決まります:
急いでいるかどうか
売買や贈与を急いで行いたい場合は、本人確認情報の手続きを選ぶべきです。司法書士による確認が完了すれば、すぐに登記申請を進められるため、取引を迅速に完了させることができます。逆に、時間に余裕がある場合は、事前通知を選ぶことでコストを抑えることができます。
費用を抑えたいかどうか
手続きを低コストで行いたい場合は、事前通知が最適です。司法書士による面談や書類作成が不要なため、本人確認情報に比べて費用がかかりません。ただし、取引に時間がかかる点には注意が必要です。
面談が可能かどうか
所有者が司法書士との面談を行うことが難しい場合、たとえば高齢者であったり、遠方に住んでいたりする場合は、事前通知が有効です。面談を行う必要がないため、手続きがシンプルになります。一方で、司法書士との面談が可能で、取引を早く進めたい場合は、本人確認情報を選ぶことでスムーズに手続きが進められます。
5. 結論
登記識別情報や権利証が提供できない場合でも、本人確認情報や事前通知の手続きを利用することで、取引を進めることが可能です。
それぞれの手続きにはメリットとデメリットがあるため、取引の状況や要件に応じて適切な方法を選択することが重要です。
急ぎの場合や面談が可能であれば、本人確認情報を利用し、時間に余裕があり、費用を抑えたい場合には事前通知を利用すると良いでしょう。
土地の合筆や分筆を行った際の登記識別情報(いわゆる「権利証」)の取り扱いについて、詳しく説明します。土地を処分する際に、売主は、権利証又は登記識別情報を用意しなければなりません。合筆・分筆がなされた土地の場合、どのタイミングのものが必要になるのでしょうか?
目次
1. 合筆と登記識別情報の扱い
2. 分筆と登記識別情報の扱い
3. 登記識別情報の役割
4. 合筆・分筆時の登記識別情報に関するまとめ
1. 合筆と登記識別情報の扱い
合筆とは、複数の隣接した土地を一つにまとめる手続きです。この際、元々の各土地の登記簿は閉鎖され、合筆後の土地として新たな登記簿が作成されます。したがって、合筆後には、元々存在していた複数の土地の登記識別情報と、合筆後に発行される新しい登記識別情報が存在することになります。
①合筆後の登記識別情報
合筆の手続きが完了すると、通常、新しい土地に対して合筆後の登記識別情報が発行されます。しかし、この新しい識別情報が発行された場合でも、元々の各土地の登記識別情報は依然として有効です。つまり、合筆後の土地を譲渡する際には、合筆後に発行された登記識別情報を使用することも可能ですし、合筆前の各土地の登記識別情報を用いることもできます。この点は非常に柔軟であり、どちらの識別情報を使用しても登記の手続きを行うことができます。
➁合筆後の譲渡時のポイント
合筆後の登記識別情報を使用することも可能。
合筆前の各土地の登記識別情報も引き続き使用可能。
③合筆後の識別情報の取り扱い
合筆後の識別情報において特に注意すべき点は、登記簿上は新たに一つの土地として扱われるため、元の土地ごとの権利関係はすべて一つの地番に統合されるということです。したがって、譲渡や担保設定を行う際は、新たな地番に基づく登記識別情報を使用するか、元の識別情報を引き継いで利用することになります。特に、複数の土地の登記識別情報を持っている場合は、それぞれをきちんと管理し、必要に応じて適切なものを提供することが求められます。
2. 分筆と登記識別情報の扱い
次に、分筆についてです。分筆とは、一つの土地を複数に分割する手続きです。この場合、分筆前の土地に対して発行されていた登記識別情報は、引き続き分筆後の各土地に対して有効となります。重要な点として、分筆そのものでは新たな登記識別情報は発行されません。つまり、分筆後に新たに登記識別情報が交付されることはなく、分筆前の登記識別情報が引き続き利用されることになります。
①分筆後の登記識別情報
分筆後は、それぞれ新しい地番が付されますが、新しい登記識別情報が発行されるわけではありません。分筆前の識別情報をもとに手続きを進めることになります。これにより、分筆後の土地を譲渡する際は、分筆前の登記識別情報を利用して取引を行うことが可能です。
➁分筆後の譲渡時のポイント
分筆後に各土地を譲渡する場合、特に以下の点に注意が必要です:
分筆前の登記識別情報が依然として有効であること。
譲渡する際に、その土地が分筆後であることを明確にするために、登記簿の変更内容をしっかり確認すること。
3. 登記識別情報の役割
登記識別情報は、登記上の権利者がその土地の所有権を証明するために必要な情報です。土地の売買や譲渡、担保設定などの際には、登記識別情報を提供することによって、正当な所有者であることが証明され、登記手続きが適切に行われることを確認します。
登記識別情報の基本的な役割
所有権移転や抵当権設定などの不動産取引において、所有者が登記簿上の正当な権利者であることを証明する。
譲渡や売却の際に提供され、買主や第三者に対して所有権の正当性を示す。
万が一、登記識別情報が紛失した場合でも、代替手続きとして本人確認制度などを利用することで、所有権の証明が可能。
4. 合筆・分筆時の登記識別情報に関するまとめ
合筆および分筆において、登記識別情報の扱いにはいくつかの異なる側面がありますが、基本的なポイントは次の通りです。
合筆の際には、新たな登記識別情報が発行されますが、合筆前の土地の識別情報も引き続き有効です。したがって、合筆後の土地を譲渡する場合、合筆後の新しい識別情報、または合筆前の各土地の識別情報を使用することができます。
分筆の場合は、分筆後に新しい登記識別情報は発行されず、分筆前の識別情報を引き続き使用することになります。譲渡時にも、分筆前の識別情報を用いて取引を行います。
登記識別情報は、不動産取引における所有権の証明において重要な役割を果たし、取引の安全性を確保するために必要不可欠なものです。
以上のように、合筆や分筆を行った場合の登記識別情報の取り扱いは、ケースごとに異なりますが、どちらの場合でもその土地に対する正当な権利者としての証明において重要な役割を担っています。
土地の合筆・分筆は、不動産管理や相続対策など、さまざまな状況で利用される重要な手続きです。
これらの手続きは、土地の形状や利用目的に応じて、複数の土地をまとめたり、ひとつの土地を分けたりするものです。
ここでは、合筆と分筆について詳しく解説し、それぞれのメリットや手続きの流れ、注意点について説明します。
目次
1.合筆とは
2.分筆とは
3.合筆・分筆の注意点
4.終わりに
1.合筆とは
合筆(ごうひつ)とは、複数の隣接する土地を一つの土地として登記簿上でまとめる手続きのことを指します。たとえば、相続などで複数の地番が分かれている土地を受け取った場合や、購入した土地が隣接していて、管理や売却を容易にしたい場合に利用されます。
(合筆のメリット)
①管理の簡素化
複数の土地があると、登記上それぞれ別々に管理しなければならず、登記簿や固定資産税の計算が複雑になります。合筆を行うことで、一つの土地として管理できるため、煩雑さを解消できます。
➁固定資産税の軽減
場合によっては、複数の土地がある場合の方が固定資産税が高くなることがあります。合筆を行い、一つの土地として評価されることで、税額が軽減される場合があります。
③売却や譲渡が容易になる
土地を売却する際、ひとつの大きな土地として販売できるため、取引がシンプルになります。また、合筆された土地の方が市場価値が高くなることがあるため、有利に売却できる可能性もあります。
④合筆の条件と手続き
合筆にはいくつかの条件があります。まず、合筆する土地同士が**同一の地目(農地、宅地など)**であることが必要です。また、土地の所有者がすべて同じであり、隣接していることも条件のひとつです。
手続きは以下の流れで進みます:
合筆を希望する土地の資料(登記簿謄本、地図など)を揃える。
登記所に対して合筆申請書を提出し、登記官による審査を受ける。
審査が通れば、合筆登記が完了し、一つの地番にまとめられた土地として新たに登記されます。
2.分筆とは
分筆(ぶんぴつ)とは、一つの土地を複数に分割する手続きです。土地の一部を売却したい場合や、相続で複数の相続人に土地を分け与える際に利用されます。
(分筆のメリット)
①売却や相続の柔軟性
一部の土地を売却したい場合、分筆することで、その部分だけを売却できます。相続の場合も、土地を複数に分けて、相続人それぞれに均等に割り当てることができます。
➁土地利用の最適化
大きすぎる土地を小さく分けることで、それぞれの土地の用途に合わせた活用が可能になります。たとえば、住宅用地として売却する際には、小さな区画に分けて売る方が、買い手が見つかりやすくなることがあります。
③分筆の条件と手続き
分筆するには、土地の形状や法的な制限に適合しているかを確認する必要があります。特に、都市計画法や建築基準法などの規制が関わる場合があるため、事前に調査が必要です。また、分筆する土地が適切な形状や面積を有しているかを確認するために、土地家屋調査士による測量が行われます。
分筆の手続きの流れは以下の通りです:
分筆予定の土地について、土地家屋調査士による測量を依頼する。
測量結果に基づいて、分筆案を作成する。
分筆申請書を登記所に提出し、登記官による審査を受ける。
審査が通れば、分筆登記が完了し、新たに複数の地番が割り当てられた土地として登記されます。
3.合筆・分筆の注意点
税務上の影響
合筆や分筆によって、固定資産税の評価が変わることがあります。特に分筆の場合、新たに分けられた土地がそれぞれ個別に評価されるため、場合によっては税負担が増える可能性があります。
法的な規制
分筆の場合、分割する土地が建築基準法に定められた接道義務を満たしているかなど、法律的な制約をクリアする必要があります。これを怠ると、建物の建築ができない土地になるリスクがあります。
相続や贈与における影響
分筆は、相続や贈与の際に利用されることが多いですが、分筆することによって土地の価値が変わることも考慮する必要があります。また、相続時における分筆では、相続税の評価額に影響を与える場合があるため、税理士など専門家との相談が必要です。
測量費用と手続き費用
分筆には土地家屋調査士による測量が必要となるため、測量費用が発生します。また、合筆・分筆それぞれの登記手続きにも手数料がかかります。これらの費用を考慮して、手続きに踏み切るかどうかを判断する必要があります。
4.終わりに
合筆と分筆は、土地の管理や活用を効率的に行うための有効な手段です。
合筆は管理を簡素化し、税負担を軽減する可能性がある一方で、分筆は土地を柔軟に活用し、相続や売却の際に大いに役立ちます。しかし、どちらも法的な手続きや費用が発生し、事前に十分な調査と計画が必要です。
土地に関する意思決定を行う際は、司法書士や税理士、土地家屋調査士などの専門家に相談し、最適な手続きを選択することが重要です。
相続の際、法定相続分に従って財産が分配されるのが一般的ですが、相続人の中には、被相続人(亡くなった方)の財産形成や維持、または療養看護に特別な貢献をした者がいることがあります。このような場合、その貢献に応じて相続分が増額されることがあります。これを「寄与分」と言います。また、相続人ではない親族が特別な貢献をした場合、相続人から特別な報酬を請求できる「特別寄与料」という制度も存在します。本稿では、寄与分と特別寄与料についての解説と、それらが認められるための要件について詳述します。
目次
1. 寄与分とは何か
2. 特別寄与料とは何か
3. 寄与分と特別寄与料の違い
まとめ
1. 寄与分とは何か
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした法定相続人が、その貢献に応じて相続分を増額できる制度です。日本の民法では、相続人はその貢献度に応じて法定相続分よりも多くの遺産を受け取る権利が認められています。たとえば、被相続人が経営する事業を手伝い、財産を増加させた場合や、被相続人の介護を長期間にわたって行った場合など、通常の範囲を超えて特別な貢献をした相続人が寄与分を主張することができます。
(1) 寄与分が認められる条件
寄与分が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。
法定相続人であること
寄与分を主張できるのは、相続人として認められている者だけです。具体的には、被相続人の子供、配偶者、兄弟姉妹など法定相続人が該当します。非相続人である親族(例:姻族)や友人には寄与分は認められません。
被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をしたこと
寄与分が認められるためには、被相続人の財産を維持・増加させたことが証明される必要があります。具体的な例としては、以下が挙げられます:
被相続人の事業を手伝い、利益を上げた。
被相続人に対して特別な援助を行い、財産の減少を防いだ。
被相続人の介護を継続的に行い、その生活を支えた。
寄与が「特別」であること
寄与分が認められるためには、単なる通常の家事や介護の範囲を超えた「特別な貢献」である必要があります。たとえば、長期間にわたる介護や、他の相続人と比較して圧倒的に大きな貢献があった場合がこれに該当します。
(2) 寄与分の計算方法
寄与分は、相続財産の中から寄与の程度に応じた金額を算出し、それを寄与した相続人に分配する形で決定されます。具体的には、遺産の全体額に対して寄与度を計算し、その分を他の相続人の相続分から差し引く形で分配が行われます。このため、寄与分の金額は、遺産全体の額や他の相続人の人数によって異なります。
2. 特別寄与料とは何か
特別寄与料とは、相続人ではない親族が被相続人に対して特別な貢献を行った場合、相続人に対してその貢献に応じた報酬を請求できる制度です。2019年の法改正により新設されたこの制度は、相続人以外の親族(たとえば、被相続人の配偶者の子供や義理の兄弟姉妹など)が被相続人に対して特別な援助や介護を行った場合、その者が貢献に見合った報酬を受け取ることを可能にします。
(1) 特別寄与料が認められる条件
特別寄与料が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。
法定相続人ではない親族であること
特別寄与料を主張できるのは、被相続人と一定の親族関係にある者であり、かつ法定相続人ではない者です。例えば、被相続人の配偶者の連れ子、兄弟姉妹の配偶者、甥や姪などがこれに該当します。
特別な貢献を行ったこと
特別寄与料が認められるためには、相続人ではない親族が、被相続人に対して特別な貢献を行ったことが必要です。たとえば、長期にわたり介護を行ったり、被相続人の生活を経済的に支援した場合などが該当します。この貢献が、通常の範囲を超える特別なものであることが求められます。
無償で行ったこと
特別寄与料は、無償で行った貢献に対して報酬を請求する制度です。すでに報酬を受け取っていた場合や、契約によって介護などの対価が支払われている場合には特別寄与料は認められません。
(2) 特別寄与料の請求方法
特別寄与料を請求するためには、相続が開始した後、相続人に対して報酬請求を行う必要があります。この請求は、相続開始から6ヶ月以内に行う必要があります。請求が認められた場合、特別寄与料は相続財産から支払われるため、遺産分割協議においてその金額が調整されます。
3. 寄与分と特別寄与料の違い
寄与分と特別寄与料は、どちらも被相続人への貢献に基づいて報酬を受け取る制度ですが、いくつかの違いがあります。
対象者の違い
寄与分は法定相続人に認められる権利であるのに対し、特別寄与料は法定相続人ではない親族に認められるものです。第三者の場合は認められません。
貢献の範囲の違い
寄与分は被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に認められるのに対し、特別寄与料は主に介護や生活支援などの無償での援助が対象となります。
手続きの違い
寄与分は遺産分割協議の中で調整されるのが一般的なのに対し、特別寄与料は相続人に対して請求を行う手続きが必要です。
まとめ
寄与分と特別寄与料は、被相続人への貢献を評価し、それに応じた報酬を得るための重要な制度です。
特に寄与分は、法定相続人に認められるものであり、財産の維持・増加に大きく貢献した場合にその相続分を増額できるという点で重要です。
一方、特別寄与料は、相続人ではない親族が被相続人に対して特別な貢献をした場合に、報酬を請求できる制度です。
いずれの制度も、相続手続きにおいて適切に利用することで、公平な遺産分配が行われることを目指しています。
住宅を夫婦で購入する際に、その資金の出資割合に応じて持分割合を決めることが一般的です。しかし、持分の決定方法によっては税務上の問題が発生することがあり、特に贈与税の発生が懸念されます。本稿では、持分割合の決定方法、贈与税のリスク、そして実務上での持分放棄という選択肢について、項目に分けて解説します。
目次
1. 住宅購入時の持分割合の決め方
2. 贈与税が発生するリスク
3. 贈与税を回避する方法
4. 持分放棄の提案とその実務的な利点
5. 実務上の留意点
まとめ
1. 住宅購入時の持分割合の決め方
夫婦で住宅を購入する際には、一般的にそれぞれが出資した金額に応じて持分を設定します。たとえば、夫が70%、妻が30%の購入資金を出した場合、持分割合も夫70%、妻30%とするのが原則です。このような持分割合の設定は、以下の理由から重要です。
(1) 税務上の透明性の確保
夫婦間で出資割合に応じた持分を設定することにより、税務上の問題が発生しにくくなります。特に、贈与税の課税を回避するためには、実際の出資額に基づいた持分割合が重要です。
(2) 将来的な相続や贈与の影響
将来的に相続が発生した場合や、持分の変更が行われた場合にも、最初に設定した持分割合が基準となります。そのため、最初に正確な割合を設定することは、後々の手続きや税務に影響を与えるため、慎重に行う必要があります。
2. 贈与税が発生するリスク
夫婦で住宅を購入する際、持分が一方に偏りすぎている場合、税務上「贈与」とみなされ、贈与税が課されるリスクがあります。たとえば、夫婦が共同で住宅を購入したにもかかわらず、夫が100%の持分を取得した場合、妻が出資した金額が夫への贈与と見なされる可能性があります。この場合、妻が夫に贈与したものとして、贈与税が発生することになります。
(1) 贈与税の基本的な考え方
贈与税は、個人から個人へ財産が無償で移転した場合に課税される税金です。夫婦間の持分の設定が実際の出資割合と一致しない場合、その差額が贈与とみなされ、課税対象となります。
(2) 贈与と見なされるケース
たとえば、夫が全額出資して住宅を購入し、妻が無償でその一部の持分を取得した場合、この持分は夫から妻への贈与とされ、妻が受け取った持分に対して贈与税が発生します。逆に、夫婦の一方が実際に資金を出していないのに多くの持分を取得する場合も同様に贈与税が課される可能性があります。
3. 贈与税を回避する方法
贈与税を回避するためには、出資割合に基づいた持分割合の設定が最も効果的です。実際に住宅購入に際して夫婦それぞれが出した資金の額をもとに、持分を設定することで贈与税の発生を防ぐことができます。
(1) 適切な持分割合の設定
適切な持分割合を設定するためには、住宅購入時に夫婦がどれだけの資金を出したかを明確にしておく必要があります。また、住宅ローンを利用している場合も、ローンの返済割合に基づいて持分を設定することが重要です。
(2) 契約書や登記での明確化
持分割合は、契約書や不動産登記に明記することが必要です。持分割合を明確にすることで、後々のトラブルや税務上の問題を避けることができます。
4. 持分放棄の提案とその実務的な利点
今回の実務において、私は持分放棄という選択肢を提案しました。持分放棄は、一方の所有者が自らの持分を放棄し、他方の所有者に譲渡する方法です。持分放棄は贈与のように他方への財産移転とは異なり、放棄した者の意思表示だけで有効となるため、手続きが比較的簡便です。
(1) 持分放棄と贈与税の関係
持分放棄を行う場合、放棄した持分が他方に移転するため、贈与税の問題は残ります。実質的には持分が他方に譲渡されるため、税務上は贈与とみなされる可能性が高いです。しかし、持分放棄はあくまで一方の意思表示で完了するため、手続き自体はスムーズに進めることが可能です。
(2) 意思表示の効力
持分放棄は、その意思表示が一方の持分放棄者によってなされるため、その意思が明確である限り効力を持ちます。これは、贈与契約のように双方の合意を必要としないため、迅速な手続きが可能です。また、今回のケースでは、持分放棄者の意思表示が唯一の決定要因となったため、贈与ではなく持分放棄が適した選択肢とされました。
5. 実務上の留意点
持分放棄を選択する際には、いくつかの留意点があります。特に、放棄した持分が他方に移転するため、税務上の取り扱いが重要となります。また、持分放棄を行う場合は、放棄者が自らの意思で行うことが求められ、その意思が明確に表明されることが不可欠です。
(1) 税務申告の必要性
持分放棄が贈与とみなされる場合には、税務申告が必要です。贈与税の非課税枠を超える贈与が行われた場合、相応の税額が課されるため、適切な申告手続きが求められます。
(2) 意思表示の記録
持分放棄を行う際には、意思表示の内容を記録に残すことが重要です。これにより、後々のトラブルを回避し、税務上の問題にも対応できるようにすることができます。
まとめ
住宅購入における持分割合の設定は、税務上の問題を避けるために極めて重要です。出資割合に基づいた適切な持分設定を行うことで、贈与税のリスクを回避できます。
また、持分放棄という選択肢は、迅速かつ簡便に所有権の変更を行う方法ですが、税務上の取り扱いに留意する必要があります。
最終的には、持分割合の設定や放棄に関する意思表示を明確にし、適切な手続きを踏むことが大切です。
近年、結婚せずに生涯独身で過ごす「おひとりさま」や、子供がいない「夫婦二人世帯」が増加しており、こうした人々にとって相続は重要な問題となっています。特に、法定相続人がいない場合には、相続に関して特別な対策を講じておくことが重要です。
ここでは、おひとりさまの相続対策や、最終的に遺産がどうなるかについて解説します。
目次
1. 法定相続人がいない場合の問題点
2. 遺言書の作成
3. 信託の活用
4. 親しい人への財産分配や寄付の考慮
5. 成年後見制度の活用
6. 法定相続人がいない場合、最終的に遺産はどうなるのか?
まとめ
1. 法定相続人がいない場合の問題点
法定相続人がいる場合は、法律に従って相続手続きが進みますが、法定相続人がいない場合には、相続手続きが大きな問題となります。法定相続人がいないと、財産の行き先が不明確になり、親族や知人とのトラブルが発生することがあります。
また、遺産が適切に引き継がれず、最終的に国庫に帰属するリスクも高まります。おひとりさまの場合、以下の点に特に注意して相続対策を行うことが重要です。
2. 遺言書の作成
法定相続人がいない場合、最も効果的な相続対策の一つは、遺言書を作成しておくことです。遺言書がない場合、財産は最終的に国庫に帰属してしまいますが、遺言書を作成することで、財産の行き先を指定することができます。
遺言書の種類と注意点
遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は、自分で書くことができますが、形式的な不備があると無効になるリスクが高いため、公証役場で作成する公正証書遺言が推奨されます。公正証書遺言は、遺言者が自ら内容を伝え、公証人が作成するため、法的に有効な遺言書を確実に残すことができます。
遺言執行者の指定
遺言書には、遺言の内容を実行するための「遺言執行者」を指定しておくことも重要です。遺言執行者がいないと、遺言書の内容がスムーズに実行されず、財産分割や名義変更の手続きが遅れる可能性があります。信頼できる第三者や、司法書士・弁護士などの専門家を遺言執行者として指定することで、トラブルを防ぐことができます。
3. 信託の活用
おひとりさまの相続対策として、「民事信託(家族信託)」を活用することも有効です。信託とは、財産を信頼できる第三者に託し、指定した目的に従って財産を管理・処分してもらう制度です。信託契約を結ぶことで、生前に自分の意志に基づいて財産の管理や処分を行うことができ、相続に関するリスクを軽減することができます。
信託のメリット
信託を利用することで、遺言書だけではカバーしきれない財産管理の細かい点まで指示を出すことが可能です。例えば、信頼できる第三者に生前から財産管理を委ね、死亡後もその第三者が財産を適切に管理・分配するように指示することができます。これにより、相続手続きが複雑化することを防ぎ、財産の確実な引き継ぎが可能となります。
※信託を利用する場合、財産管理として預金を信託口口座で管理することになりますが、取扱金融機関が少なく、仮に口座の開設をする場合もそれなりの利用料が必要となります。
4. 親しい人への財産分配や寄付の考慮
法定相続人がいない場合、遺産を親族や友人、知人に遺贈することができます。遺贈とは、遺言によって特定の人に財産を贈ることを指します。遺贈を活用することで、感謝の気持ちを形にし、親しい人に財産を引き継ぐことができます。
特定の人への遺贈
例えば、長年世話になった友人や介護してくれた知人に対して、感謝の意を込めて財産を遺贈することができます。遺言書にその旨を明記し、遺産分配を確実に行うための手続きを整えておくことが重要です。
寄付の活用
また、遺産を慈善団体や社会貢献活動に寄付することも考慮するべき選択肢です。遺産の一部または全部をNPOや公益法人などに寄付することで、自分の財産が社会に役立つ形で活用されることを願うことができます。特に、遺言書で明確に寄付の意思を示しておくことで、確実な実行が可能となります。
5. 成年後見制度の活用
おひとりさまの相続対策では、認知症などによる判断能力の低下に備えて、成年後見制度を活用することも検討すべきです。成年後見制度は、判断能力が低下した場合に、後見人が財産管理や契約の手続きを代行する制度です。
任意後見制度の利用(身元保証サポートのサービスの一環として行う場合があります)
任意後見制度を利用することで、あらかじめ信頼できる第三者を後見人として指定し、判断能力が低下した際に財産管理を託すことができます。これにより、本人が健全な状態のうちに意思を反映させ、適切な財産管理が行われるようにすることができます。
6. 法定相続人がいない場合、最終的に遺産はどうなるのか?
法定相続人がいない場合、遺言書が存在しないと最終的に遺産は国庫に帰属します。これは、民法に基づき、相続人がいない場合には財産が国に引き渡されるという規定があるためです。しかし、遺言書や信託契約を作成することで、このような事態を回避し、財産を希望する相手に適切に引き継ぐことができます。
特別縁故者への分配
法定相続人がいない場合でも、特別縁故者(被相続人と生前に親しく付き合っていた人)が家庭裁判所に請求を行えば、財産の一部を受け取ることができる場合があります。ただし、この手続きは裁判所の判断によるため、確実に財産が引き継がれるわけではありません。
※特別縁故者もいないもしくは裁判所が認めなかった場合、その遺産は清算人により清算手続きが行われて、残った遺産については国庫に帰属します。
まとめ
法定相続人がいないおひとりさまの場合、相続対策を怠ると、財産が望まない形で処理される可能性があります。
遺言書の作成や信託の活用、寄付や遺贈の検討、成年後見制度の活用など、事前に対策を講じることで、自分の意思に基づいた相続手続きを確実に進めることができます。
また、相続人がいない場合でも、財産を寄付などをする手続きを行うため、遺言書の作成をしておくことが重要です。
相続手続きは、思っている以上に複雑でトラブルが発生しやすいものです。
遺産をめぐる相続人間の争いや、手続きの複雑さから生じる混乱は、予想外に長引くことも多いです。
特に以下の5つのケースでは、相続が大変になることが多く、注意が必要です。
目次
1. 遺産分割協議がまとまらない場合
2. 遺言書がない、または無効である場合
3. 相続財産の把握が難しい場合
4. 相続人が多い場合
5. 相続税の負担が大きい場合
まとめ
1. 遺産分割協議がまとまらない場合
相続人が複数いる場合、遺産分割協議が必要です。しかし、全員の意見が一致しないと協議が進まず、結果として長期化することがあります。特に、以下のような場合には分割協議が難航する傾向にあります。
①相続人間の関係が悪い
親族間の不仲や過去のトラブルが原因で協議が進まない場合があります。感情的な対立が先行すると、客観的な判断ができなくなり、冷静に話し合うことが困難になります。
➁財産の価値や分割方法に対する認識の違い
遺産が現金だけでなく、不動産や株式などの場合、その評価額や分割方法に対する意見が食い違うことがあります。特に不動産の場合、現物分割が難しいため、相続人の誰が不動産を引き継ぎ、他の相続人に代償金を支払うのかなど、複雑な話し合いが必要になります。
③感情的な遺産の分配
例えば、家宝や思い出の品、実家など感情的価値が高い財産をめぐって争いが起きることも少なくありません。こうした財産は金銭的な価値以上に相続人の感情に影響を与え、合意形成が難しくなることがあります。
2. 遺言書がない、または無効である場合
遺言書がない場合、法定相続分に従って遺産を分割することになりますが、これは必ずしも相続人全員が納得する結果にはならないことが多いです。また、遺言書が存在しても、その内容が法的に無効とされる場合や、遺言書自体が発見されない場合もあります。
①自筆証書遺言の不備
遺言書が手書きで作成された自筆証書遺言の場合、形式的な不備や署名・押印の欠如などで無効とされるケースがあります。法的に有効な遺言書を残すためには、公正証書遺言が推奨されますが、これを利用しない場合、遺言書の効力を巡って争いが生じることがあります。
➁遺言書が複数存在する場合
遺言書が複数あり、それらの内容が矛盾している場合、どの遺言書を有効とするかをめぐってトラブルが発生します。特に、最後に作成された遺言書が不明確であったり、日付が記されていない場合は、相続人間で争いが避けられません。
3. 相続財産の把握が難しい場合
被相続人が持っていた財産が明確でない場合、相続財産の調査が難航することがあります。預貯金、不動産、株式、保険など多岐にわたる財産を正確に把握するためには、時間と労力が必要です。また、被相続人が複数の金融機関に口座を持っていたり、不動産が遠隔地に存在していたりすると、さらに手間がかかります。
①隠し財産や未申告の財産の存在
被相続人が家族に知らせていなかった財産や、適切に申告されていない財産が後から見つかることがあります。これにより、相続手続きが再開される可能性があり、相続税の再計算が必要になる場合もあります。
➁不動産の登記情報の不一致
被相続人が所有していた不動産の登記情報が最新でない場合、相続手続きが煩雑化します。古い登記情報が残っていたり、名義変更が行われていない不動産がある場合、手続きが長引く原因になります。
4. 相続人が多い場合
相続人が多い場合、それぞれの意見をまとめることが難しくなります。法定相続分に従って遺産を分割することも、全員の同意が必要になるため、相続人が多ければ多いほど話し合いが複雑化します。また、相続人の中に行方不明者や意思疎通が難しい者がいる場合、手続きがさらに難航することがあります。
①海外在住の相続人がいる場合
相続人が海外に住んでいる場合、書類のやり取りや意思確認に時間がかかることがあります。さらに、現地の法令に従った手続きが必要になるため、国際的な手続きが加わり、相続全体が長引く可能性があります。
➁疎遠な親族が相続人である場合
被相続人が再婚している場合や、子供が別居している場合、疎遠になっている親族が相続人となるケースでは、感情的な対立が生じやすくなります。特に、被相続人の配偶者と前妻・前夫の子供たちとの間でトラブルが発生しやすいです。
5. 相続税の負担が大きい場合
相続財産の価値が高額な場合、相続税の負担が問題となります。特に、相続財産の多くが不動産で現金が少ない場合、相続税を支払うための現金が不足し、相続人間でトラブルになることがあります。
①不動産の売却が必要になる場合
相続税を支払うために、不動産を売却しなければならないケースもあります。しかし、不動産の売却には時間がかかり、相続手続き全体が長期化することがあります。また、売却価格が相続人間で合意できない場合、さらなる対立が生じます。
➁相続税の申告期限のプレッシャー
相続税の基礎控除を超えている場合、相続税の申告は、被相続人の死亡から10か月以内に行わなければならないため、期限内に財産を把握し、分割方法を決定する必要があります。この短い期間内で手続きを進めることが難しく、急いで分割協議を行うことで、後から問題が発生することもあります。
まとめ
相続が大変になるケースは、遺産分割協議の難航や遺言書の有無、相続財産の把握、相続人の多さ、相続税の負担など、さまざまな要因が絡み合っています。
事前に適切な対策を講じ、円滑な相続手続きが進むよう準備を整えておくことが、トラブルを避けるための最善策です。
相続対策として遺言書を作成することは、財産分配の明確化や相続争いの防止を目的としています。しかし、遺言者の死亡後に遺言書の効力が発生し、特に遺言者の認知能力に疑義が生じた場合、その遺言書の有効性が争われることがあります。このような事態は、遺言書の有効性をめぐる訴訟に発展することが多く、遺族間の関係に大きな影響を及ぼす可能性があります。以下では、遺言書の有効性に関する基本的な法的要件や、認知能力に関する疑義が生じた場合の対応について詳しく説明します。
目次
1. 遺言書の基本的な有効性の要件
2. 遺言者の認知能力に関する問題
3. 認知能力に関する証拠
4. 遺言書の無効となる場合
5. 遺言の有効性を確保するための対策
結論
1. 遺言書の基本的な有効性の要件
遺言書の有効性を確認するためには、いくつかの形式的要件を満たす必要があります。遺言書の形式には主に次の2つがあります。
①自筆証書遺言: 遺言者が自分で全文を書き、日付と署名を行うことが必要です。2020年の法改正により、自筆証書遺言の財産目録については、パソコンで作成したり、第三者が作成したものを添付することが可能になりましたが、本文は遺言者自身が手書きである必要があります。以下が民法の規定となります。
「民法(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」
➁公正証書遺言: 公証役場で公証人が作成する遺言です。遺言者が口述し、内容を公証人が文書にして作成するため、最も信頼性が高く、遺言者の認知能力に問題があった場合でも、作成時に公証人が、さらに確認時には証人2名を立ち会わせて確認を行うため争いが起こりにくいとされています。
遺言書がこれらの形式的要件を満たしていない場合、無効となるリスクが高くなります。
※特に、自筆証書遺言においては、法律の要件が重要となりますので、効力を出すためには専門家のサポートを受けた方がいいと思います。また、相続発生し、遺言書の効力が要件を充たして発生した場合においても、遺言書作成時の遺言者の認知能力について争いがある場合、他の相続人から裁判で無効の訴えを提訴される場合があります。
2. 遺言者の認知能力に関する問題
遺言書の有効性に対する最大の争点の一つが、遺言者の認知能力です。遺言を作成するためには、遺言者が遺言を行う時点で「意思能力」を有している必要があります。意思能力とは、自分の行為の意味や結果を理解し、適切に判断できる能力を指します。認知症や精神疾患などでこの能力が低下している場合、遺言書の有効性に疑義が生じることがあります。
認知能力が疑われるケース
遺言者が遺言書を作成した時期に認知症を患っていたり、精神的な不安定さがあった場合、その遺言書が法的に有効であったかどうかが問われることがあります。例えば、以下のような状況が認知能力に関する争いの原因となります。
認知症の診断: 遺言作成時に遺言者が認知症の診断を受けていた場合、その時点での意思能力が十分であったかどうかが問題視されます。診断が軽度であり、意思能力に問題がなければ有効ですが、重度の認知症で判断能力が大きく低下していた場合、遺言が無効とされる可能性があります。
精神的な圧力や強制: 遺言作成時に、遺言者が他者から精神的な圧力を受けていた場合や、遺言の内容が不自然である場合、遺言者が意思能力を失っていたと主張されることがあります。
3. 認知能力に関する証拠
遺言者の認知能力を巡る争いにおいて、意思能力の有無を判断するための証拠が重要となります。具体的には以下の証拠が利用されることが多いです。
医療記録: 遺言者の医師による診断書やカルテなどの医療記録は、遺言作成時の精神状態を示す重要な証拠となります。特に、遺言作成前後の医療記録が重要視され、意思能力があったかどうかを判断するための基礎資料となります。
公証人や証人の証言: 公正証書遺言の場合、遺言作成時に立ち会った公証人や証人の証言が意思能力を証明する手がかりになります。公証人は、遺言者が意思能力を有しているかどうかを確認する義務があるため、公正証書遺言の場合、認知能力に対する疑義は比較的少なくなる傾向があります。
家族や近親者の証言: 遺言者の行動や精神状態について、家族や近親者が証言することもあります。しかし、相続人間での利害関係が複雑な場合、この証言は偏りが生じる可能性があるため、客観的な証拠と組み合わせて検討されることが多いです。
実際、証拠を提出すると言っても、かなり難しいと思います。認知症が発症するリスクが高くなる年齢は、75歳を過ぎてからとなります。その前に、遺言書を作成しておけば、このような争いは避けられると思われます。遺言書の内容は、後で変更可能です。ぜひ、遺言書の作成の検討をしてみてください。
4. 遺言書の無効となる場合
認知能力に問題があり、意思能力が欠けていたと判断された場合、遺言書は無効となります。遺言書が無効とされた場合、遺言の内容に従った財産分配は行われず、法定相続分に従って財産が分割されます。このため、遺言者の意向が反映されなくなる可能性が高くなります。
無効の主張が認められる場合としては、以下のようなケースが考えられます。
遺言作成時に認知症が進行していた: 診断書や医療記録から、遺言作成時に認知能力が失われていたことが明らかな場合。
遺言書の内容が極端に不自然: 遺言者が過度に特定の相続人に有利な遺言を残した場合、精神的な圧力がかかった可能性があるとされることがあります。
5. 遺言の有効性を確保するための対策
遺言書の有効性を確保するためには、認知能力に疑義が生じないような対策が重要です。特に、遺言作成時に遺言者が高齢であったり、健康状態に問題がある場合、次のような対策が推奨されます。
公正証書遺言を利用する: 公証人が立ち会い、意思能力の確認を行うため、公正証書遺言を作成することで後の争いを防ぎやすくなります。
医師の診断を受ける: 遺言作成時に意思能力が十分であることを示すため、医師の診断書を取得しておくことが有効です。特に、認知症などの診断を受けている場合には、専門医の証明が重要です。
証人を立てる: 遺言書作成に信頼できる証人を立ち会わせることで、後に認知能力をめぐる争いが発生した場合の証拠とすることができます。
結論
遺言書の有効性は、遺言者の認知能力や意思能力が十分であったかどうかに大きく依存します。
遺言作成時に認知能力に疑義が生じる場合、争いが起こる可能性があり、そのための証拠収集や適切な遺言の形式選択が重要です。
公正証書遺言や医師の診断書などを活用することで、遺言書の有効性を確保し、相続人間の争いを防ぐための対策が求められます。
遺言認知とは、主に相続に関する場面で、非嫡出子(結婚していない関係で生まれた子)を、遺言を通じて父親が法律的に認知する行為です。遺言の形式で行われるため、父親が生存中には認知の効力は発生せず、父親が死亡した時点で遺言認知が成立します。この行為には相続においてさまざまな法的、感情的な問題が生じる可能性があります。以下では、遺言認知を行った場合に考えられる影響や問題点について説明します。
目次
1. 相続権の確立
2. 相続分の決定
3. 家族間のトラブル
4. 形式的な要件
5. 認知の争い
6. 認知の無効
7. 非嫡出子の感情的な影響
8. 税務上の影響
結論
1. 相続権の確立
遺言認知によって認知された非嫡出子は、父親の法定相続人となります。法的に認知されることで、非嫡出子も嫡出子と同様に相続権を持つことができ、父親の遺産を受け取る権利が生じます。遺言によって明確に認知が行われた場合、相続手続きにおいてこの認知は重要な役割を果たします。
2. 相続分の決定
認知された非嫡出子の相続分は、基本的に他の子(嫡出子)と同じになります。ただし、遺言によって認知されるだけでなく、具体的な遺産分割の指示が遺言に含まれている場合もあります。たとえば、遺産の一部またはすべてを特定の相続人に譲る指示があれば、非嫡出子の取り分が変わる可能性があります。しかし、遺留分(最低限の相続権)は、他の相続人と同様に非嫡出子にも保障されます。
3. 家族間のトラブル
遺言認知によって新たに認知された非嫡出子の存在が明らかになると、既存の家族関係に緊張が生じることがあります。特に、嫡出子や他の相続人が非嫡出子の存在を知らなかった場合、遺産分割に関して争いが生じることが考えられます。例えば、嫡出子たちは非嫡出子の相続分が自分たちの取り分を減らすと感じる可能性があり、その結果、法廷での争いに発展することがあります。
4. 形式的な要件
遺言による認知は、遺言の形式要件に厳格に従う必要があります。日本では、遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの形式があり、それぞれ法的に有効であるためには一定の要件を満たさなければなりません。たとえば、自筆証書遺言の場合、全文を遺言者自身が手書きし、日付と署名が必要です。これらの形式要件を守らなかった場合、遺言認知が無効とされるリスクがあります。そのため、遺言による認知を検討する場合は、専門家の助言を受けることが重要です。
5. 認知の争い
遺言によって認知された場合でも、他の相続人や親族がその認知の正当性を疑問視することがあります。例えば、遺言書の内容に不自然な点があったり、遺言が作成された当時の父親の精神状態に問題があったと主張される場合です。その結果、認知の有効性を巡って法廷で争われるケースも少なくありません。特に、高額な遺産が関与する場合、このような争いは長期化する傾向があります。
6. 認知の無効
遺言による認知が有効であるためには、遺言が父親の自由意思に基づいて作成されたことが重要です。父親が認知する意思を明確に持っていたことが証明されない場合や、遺言が作成された際に父親が認知能力を欠いていたと判断される場合、その認知は無効となる可能性があります。また、遺言自体が無効とされた場合、遺言認知も無効となります。たとえば、遺言書の作成が法的要件を満たしていなかったり、偽造や強制が疑われる場合です。
7. 非嫡出子の感情的な影響
遺言によって認知された非嫡出子にとって、父親が生前に認知を行わず、死後に遺言で認知されるという事実は感情的に複雑な問題を引き起こすことがあります。非嫡出子にとっては、父親が生前に自分を公に認めなかったという思いが残ることがあり、遺産分割を通じて解決する以上に、感情的な問題が残ることがあります。これにより、遺言認知を受けた子供と他の家族との間に感情的な距離が生まれる可能性もあります。
8. 税務上の影響
遺言による認知が行われた場合、認知された子供は相続税の対象となる可能性があります。相続税の計算においては、法定相続分に基づいて課税されますが、非嫡出子として認知された子供も他の相続人と同様に課税される対象となります。相続税の免税額や税率は、その時点の法制度によって変動するため、認知後の相続手続きにおいては税務の専門家の助言を仰ぐことが推奨されます。
結論
遺言認知を行った場合、相続に関する権利が法的に確立される一方で、家族間の争いや感情的な問題が発生する可能性が高くなります。また、遺言の形式的な要件や認知の有効性に対する法的な争いも発生するリスクがあります。そのため、遺言による認知を検討する際には、法的な助言を受けつつ、怒られることは承知の上で(ここ大事)、家族間のコミュニケーションも十分に行うことが重要です。
何度か私もこのような状況に立ち会ったケースがあるのですが、大体修羅場になります。
法務局が行う「地図作成」について、不動産登記法第14条第1項に定められた地図を基に作成される地図は、不動産の特定や取引の安全性を確保するうえで重要な役割を果たしています。ここでは、地図作成の概要や法的根拠、そしてそれに伴う効果について詳しく説明します。
目次
1. 地図作成の概要と不動産登記法第14条
2. 地図作成の法的根拠と歴史的背景
3. 不動産登記法第14条第1項に基づく地図の内容
4. 地図作成の手続き
5. 地図作成の効果
6. 地図作成の今後の展望
まとめ
1. 地図作成の概要と不動産登記法第14条
不動産登記法第14条第1項では、法務局が不動産の土地について「地図」を備え付ける義務が定められています。この地図は、各土地の境界や位置を明確にするために作成され、土地の特定や境界争いの防止、さらには不動産取引の円滑化を目的としています。これにより、不動産の登記簿に記録される土地の情報は、地図と連動して正確性が確保されることになります。
地図作成は、測量技術を駆使して正確な位置情報を示すための作業が行われ、法務局がその結果を公示します。作成された地図は、法務局で備え付けられ、誰でも閲覧できる状態にされるため、関係者が土地の情報を容易に把握できるようになっています。
2. 地図作成の法的根拠と歴史的背景
不動産登記法に基づく地図作成は、日本における不動産の取引や権利関係を明確にするために設けられた制度です。もともと、日本の不動産に関する制度は地籍調査や土地台帳に基づくものでしたが、地籍の不明確さや境界争いの増加に伴い、法務局が中心となって地図を作成し、土地の正確な位置を示す必要性が高まりました。
特に、土地の境界が曖昧であったり、所有者同士での争いが発生した場合、この地図が重要な証拠となります。従来は、各土地の所有者が独自に境界を示していましたが、現在では法務局が管理する地図が公式なものとされ、これに基づいて境界の確定や土地の取引が行われるようになりました。
3. 不動産登記法第14条第1項に基づく地図の内容
不動産登記法第14条第1項による地図は、土地の境界や面積、位置情報を明確にするための公的な地図です。この地図は、以下の内容を含んでいます。
①土地の境界線の明示: 地図には、各土地の境界が明確に描かれており、隣接する土地との境界がはっきりとわかります。これにより、境界に関する争いを未然に防ぐ効果があります。
➁土地の面積: 登記簿に記載される土地の面積と連動しており、正確な面積情報を確認することができます。
③位置情報の正確性: 地図は、測量技術を用いて作成されており、土地の位置を正確に特定することが可能です。これにより、土地の場所が誤って認識されることがなくなります。
4. 地図作成の手続き
地図作成は、法務局の管轄下で行われます。土地所有者や利害関係者が自らの土地の位置や境界を確認するために、法務局に地図の作成や修正を依頼することが可能です。また、地籍調査の結果に基づき、自治体や公共機関からの依頼を受けて法務局が地図作成を行う場合もあります。
地図作成の手続きには、通常、測量士や土地家屋調査士などの専門家が関与し、正確な測量が行われたうえで地図が作成されます。この測量結果に基づいて、土地の所有者や隣接地の所有者との合意が得られた場合、最終的に法務局に地図が備え付けられることになります。
5. 地図作成の効果
地図作成には、いくつかの重要な効果が伴います。
①土地の特定が容易になる
地図作成により、土地の境界や位置が明確になるため、土地を特定することが非常に容易になります。不動産取引の際には、土地の正確な情報が求められるため、この地図を参照することで、誤解やトラブルを防ぐことができます。
➁境界争いの予防・解決
地図に明示された境界線が公的なものとして認められるため、隣接地との境界争いが発生した場合でも、迅速に解決することが可能です。特に、境界不明の土地を取引する際には、この地図が重要な証拠として機能します。
③不動産の価値向上
地図作成によって土地の情報が正確に示されることで、その土地の価値がより正確に評価されるようになります。不動産の取引において、境界が不明瞭な土地は取引価格が下がるリスクがありますが、地図があることでこうしたリスクを軽減できます。
④法的効力の強化
法務局が作成した地図は、公的な効力を持つため、裁判所での証拠としても使用することが可能です。これにより、土地の境界や位置に関する法的な争いが生じた場合でも、地図に基づいて裁判を有利に進めることができます。
6. 地図作成の今後の展望
地図作成の技術は、近年の測量技術やデジタル技術の進展により、より正確かつ迅速に行われるようになっています。
法務局も、地図の電子化を進めており、オンラインでの閲覧や手続きが可能になることで、土地の取引や管理がさらにスムーズになることが期待されています。
また、今後は地籍調査の拡充や地図データの精度向上に向けた取り組みが進められることで、より信頼性の高い不動産取引環境が整備されるでしょう。
まとめ
法務局が行う地図作成は、不動産登記法第14条第1項に基づき、土地の境界や位置を明確にするための重要な役割を担っています。
この地図により、土地の特定が容易になり、境界争いの防止や不動産取引の安全性が高まる効果があります。地図作成の手続きやその効果を十分に理解し、不動産取引や管理に役立てることが、重要な役割を果たします。
所有者の方の立会や、隣接する土地の所有者の確認のご協力をお願いいたします。
日本における交通事故や離婚などの示談交渉に関しては、弁護士がその役割を担うことが原則です。特に、訴額が140万円を超える場合は弁護士が必要ですが、訴額が140万円以下の場合、認定司法書士も交渉に関わることが可能です。しかし、行政書士は示談交渉を行うことが法的に許可されていません。行政書士の職務範囲は書類作成や契約書の作成支援などに限られており、法的アドバイスや交渉代行はできないことが明確に規定されています。
目次
1. 示談交渉における弁護士と司法書士の役割
2. 行政書士の職務範囲と制限
3. 高知県宿毛市での行政書士による違法な示談交渉
4. 適切な専門家を選ぶことの重要性
5. 結論
1. 示談交渉における弁護士と司法書士の役割
示談交渉において、弁護士は全ての訴額の事件を担当することができ、特に訴額が140万円を超える場合は必須となります。弁護士は訴訟、交渉、和解の手続きを全面的に取り仕切る法的権限を有しており、複雑な法的トラブルに対応できます。
また、認定司法書士は、訴額が140万円以下の場合に限り、示談交渉に関与できる法律専門家です。司法書士は、日常的に不動産登記や会社設立の手続きに関与していますが、特別研修を経て認定考査に合格した場合、140万円以下の民事事件においては、示談交渉の代理も許されています。
※司法書士全員が認定司法書士であるわけではありません。
ですので、訴額がはっきりしない場合は、弁護士に相談するのがいいと思います。
2. 行政書士の職務範囲と制限
一方、行政書士の役割は、書類作成や行政手続きのサポートに限られています。行政書士は法的助言を行ったり、示談交渉の代理を務めることは法的に認められていません。
主な業務は、各種許認可申請、契約書の作成、遺言書の作成補助などであり、交渉や法的代理人としての活動はできないため、訴訟や示談交渉が必要な場合は弁護士または司法書士に依頼する必要があります。
3. 高知県宿毛市での行政書士による違法な示談交渉
令和6年9月9日のニュースで、高知県宿毛市で発生した事件は、行政書士が示談交渉に関与した事例として注目を集めました。この事件では、行政書士が職務範囲を超えて示談交渉を行ったことが問題視され、法的な責任を問われることになりました。行政書士がこうした行為に関与することは、法律に違反しており、顧客にとってもリスクが伴います。
この事件は、行政書士が示談交渉に関与することの危険性を浮き彫りにしました。行政書士に依頼する際には、彼らの職務が法的書類の作成に限られていることを理解する必要があります。行政書士が示談交渉に関与することは法律に反するため、依頼者としても注意が必要です。
4. 適切な専門家を選ぶことの重要性
今回の事件は、法的トラブルに直面した際に、適切な専門家を選ぶことの重要性を強調しています。示談交渉や訴訟を必要とする問題に対しては、弁護士または認定司法書士を選択するべきであり、行政書士に依頼する場合は、書類作成などの範囲内での業務に限るべきです。
法的な代理や交渉は、一般市民にとって複雑な手続きとなるため、法的な専門知識と権限を持つ弁護士や認定司法書士に依頼することで、問題の適切な解決を図ることができます。行政書士に依頼する場合も、彼らの業務範囲を明確に理解し、誤った依頼をしないように注意する必要があります。
5. 結論
示談交渉を行う場合、訴額に応じて弁護士または認定司法書士に依頼することが最善です。行政書士は、示談交渉や訴訟代理を行うことができないため、誤った依頼をすると法的なリスクを抱える可能性があります。
特に今回の高知県宿毛市での事件を通じて、行政書士が職務範囲を超えて示談交渉を行うことがいかに危険であるかが再認識されました。
依頼者としては、専門家の職務範囲を理解し、適切な法律専門家に依頼することが重要です。
相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった人)の財産や負債を一切相続しないことを選択する手続きです。通常、相続放棄は自分が相続人であることを知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。この3か月の期間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続を受けるかどうか慎重に判断するために設けられた期間です。しかし、熟慮期間内であっても、相続放棄ができないケースがいくつか存在します。
以下に4つの具体的な事例を挙げ、その理由を解説します。
目次
1. 相続財産の一部を処分してしまった場合
2. 相続財産を消費してしまった場合
3. 相続税の申告をしてしまった場合
4. 相続財産を管理した場合
まとめ
1. 相続財産の一部を処分してしまった場合
相続放棄ができない代表的なケースの一つは、相続人が被相続人の財産を処分してしまった場合です。たとえば、亡くなった親が所有していた自動車を相続人が売却してしまったとします。この場合、売却行為自体が「相続を承認した」とみなされ、相続放棄の手続きを行うことができなくなります。民法において、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、それは「法定単純承認」とされ、相続を放棄する権利を失うことになります。
【具体例】
被相続人が残した不動産を売却してしまい、その後に多額の負債があることが判明した場合、負債を避けるために相続放棄をしようとしても、不動産売却という処分行為が既に行われているため、相続放棄が認められないことになります。
2. 相続財産を消費してしまった場合
相続財産を使ってしまった場合も、相続放棄ができません。たとえば、亡くなった人の預金口座からお金を引き出して生活費に使ってしまうなどの行為が該当します。このような行為は相続財産を「取得」したとみなされ、やはり相続を承認したものと見なされるため、相続放棄ができなくなります。
【具体例】
親の預金口座から引き出したお金を家の修繕や生活費に使った後、親に多額の借金があることがわかった場合、相続放棄をしようとしても、既に預金を消費しているため、相続放棄は不可能です。
3. 相続税の申告をしてしまった場合
相続税の申告をすることも、相続放棄を妨げる要因となります。相続税は、相続財産を取得した者が納税するものであり、申告を行うこと自体が相続を承認した証拠とされます。相続税の申告を済ませた後に、相続放棄をしようとしても、その申告行為が相続の意思を示したものとみなされ、放棄は認められなくなります。
【具体例】
被相続人が多額の財産を持っていたときに、その財産について相続税の申告を行った後に、被相続人が抱えていた負債の存在が発覚した場合、相続放棄を試みても相続税の申告という事実が相続の意思を示したものとされ、放棄は認められません。そもそも、相続税の申告をするということは、自身の相続があったことを知っているわけですし、相続発生から10ケ月以内に申告をすることから、熟慮期間は超過してしまっているケースが多いと考えます。
4. 相続財産を管理した場合
相続財産を管理した場合も、相続放棄ができなくなるケースがあります。特に、亡くなった人の財産を整理し、負債の清算や財産の分配などの行為を行うことは、相続を承認したとみなされる可能性があります。たとえば、遺産分割協議に参加して他の相続人と話し合いを行うなどの行為も、相続を認めたものとされる場合があります。
【具体例】
兄弟で遺産分割協議を行い、不動産の分配について話し合った後で、被相続人が多額の負債を抱えていたことが判明し、相続放棄を希望しても、協議に参加していた時点で相続を承認したとみなされ、放棄は認められません。遺産分割協議に参加して協議内容に合意するということは、たとえ遺産を全くもらわなかったとしても、自身の持つ相続権を処分したとみなされますので、相続放棄はできなくなります。
まとめ
相続放棄は、相続財産に関する権利と義務をすべて放棄する手続きですが、熟慮期間内であっても、相続財産を処分したり、消費したり、管理したりすると、相続を承認したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。
相続人は、被相続人が亡くなった後に何らかの財産処分や管理を行う前に、慎重に相続放棄の手続きを検討することが重要です。
また、相続に関して不明な点がある場合や、負債の有無が不確かな場合は、早めに専門家に相談することが推奨されます。
相続の手続きは複雑であり、誤った判断や行動が後々大きな問題を引き起こす可能性があるため、十分な注意が必要です。
相続とは、被相続人(亡くなった人)の財産や権利義務を、相続人が引き継ぐことです。一般的には、土地や建物、現金、株式などの財産を想像することが多いですが、実際には相続できるものとできないものが存在します。相続できないものについて理解しておくことは、相続手続きを円滑に進めるために重要です。
本稿では、被相続人の財産の中で相続できないものについて説明します。
目次
1. 一身専属権
2. 生命保険金
3. 年金
4. 一部の損害賠償請求権
まとめ
1. 一身専属権
まず、相続できないものとして代表的なのが「一身専属権」です。これは被相続人の個人的な権利や義務であり、その人自身に密接に関連しているため、他人が引き継ぐことができないものです。一身専属権には次のようなものがあります。
※プロミュージシャンの子供が、コンサートやってもチケット買った人たちの債務履行とはなりませんよね。
(1) 身分関係に基づく権利義務
被相続人の身分に直接関連する権利や義務は、相続することができません。たとえば、親権、後見人としての権利義務、婚姻関係に基づく権利などは、一身に帰属するものであり、被相続人が亡くなった時点で消滅します。具体的には、次のようなものが該当します。
親権: 親が子供に対して有する親権は、親の死亡に伴い消滅します。親権は新たな親権者や後見人が家庭裁判所によって選任されるため、相続の対象にはなりません。
後見人としての義務: 法定後見や任意後見の後見人は、被後見人に対して責任を負いますが、後見人が死亡した場合、その義務は相続されず、新たな後見人が選任されます。
婚姻関係に基づく権利義務: 婚姻に基づく扶養義務や配偶者としての権利義務も相続の対象にはならず、被相続人の死亡により婚姻関係は終了します。
(2) 委任契約
被相続人が生前に行っていた業務委任契約や、弁護士や税理士などとの委任契約も相続されません。これらは被相続人自身の信頼に基づく契約であり、被相続人が死亡すると契約は終了します。もっとも、委任契約のうち未払いの報酬などについては相続の対象となる場合があります。
(3) 労務に基づく権利
被相続人が労働者として勤務していた場合、その労働契約も死亡によって終了します。労務の提供は個人に依存するものであり、相続の対象にはなりません。たとえば、給与や労働時間に関する権利は被相続人が持つものであり、死亡時点で契約は終了します。ただし、未払いの給与や退職金は相続財産として扱われることがあります。
2. 生命保険金
生命保険金は被相続人の死亡に伴い支払われるものですが、通常、保険金受取人が指定されている場合、生命保険金は受取人固有の権利として扱われます。そのため、生命保険金は相続財産には含まれません。具体的には次のような場合があります。
保険契約: 保険契約者(被相続人)が死亡した際、保険金受取人として指定された人が生命保険金を受け取ります。この場合、生命保険金は受取人の財産となり、相続財産には含まれません。
税務上の取扱い: 税務上は、生命保険金は相続税の課税対象となることがありますが、それでも相続財産とは区別され、受取人に直接支払われます。
ただし、生命保険金が過剰な額である場合や特定の相続人に対して偏った支給が行われた場合、他の相続人が異議を唱え、裁判所で「特別受益」として考慮されることもあります。この場合、相続財産の一部として評価される可能性があります。
3. 年金
年金も相続の対象外となります。年金は被相続人の生存に基づいて支給されるものであり、死亡した時点でその権利は消滅します。公的年金や企業年金など、被相続人が生前に受給していた年金は、基本的に死亡とともに支給が停止されます。
未支給年金: 被相続人が死亡する前に年金が支払われていなかった場合、その分は未支給年金として遺族が請求できる場合があります。この場合、相続財産とは別に遺族が直接受け取る形となり、相続の対象には含まれません。
4. 一部の損害賠償請求権
被相続人が損害賠償請求をしている場合、その請求権は相続の対象になることがありますが、例外的に相続できないものもあります。たとえば、慰謝料請求権がこれに該当します。被相続人が生前に被った精神的苦痛に対する慰謝料は、基本的にその人個人に帰属する権利であり、相続の対象とはなりません。ただし、すでに裁判が進行中で、慰謝料が確定している場合は相続されることがあります。
一方で、財産的損害に対する賠償請求権は相続されることが一般的です。たとえば、交通事故による財産的損害や、契約違反による損害賠償請求は相続財産として扱われます。
5. 公的な資格や地位
被相続人が有していた公的な資格や地位も相続の対象外です。たとえば、弁護士、医師、公認会計士などの資格は個人の能力や信頼に基づくものであり、これを相続することはできません。また、被相続人が公職に就いていた場合、その地位も死亡に伴い消滅します。
まとめ
相続できないものには、被相続人個人に強く結びついた一身専属権や、生命保険金、年金、そして公的な資格や地位などがあります。これらは個人的な権利や義務であり、他人に引き継ぐことができないため、相続財産として扱われません。また、一部の損害賠償請求権や慰謝料なども相続の対象外となる場合があります。
相続手続きを行う際には、どの財産が相続可能でどの権利が相続できないのかを理解することが重要です。
生命保険を活用した相続対策は、相続財産の分割を避ける手段として一般的に行われています。生命保険金は、契約者が指定した受取人に直接支払われるため、原則として相続財産には含まれず、遺産分割協議の対象にはならないとされています。
しかし、特定の受取人に対して過度に多額の保険金が支払われた場合、その保険金が他の相続人に不公平な利益をもたらすと考えられることがあります。このような場合、生命保険金が「特別受益」とみなされることが裁判で認められることがあるため、注意が必要です。
目次
1. 生命保険金の扱い
2. 特別受益とは?
3. 生命保険金が特別受益とみなされたケース
4. 判例の影響と今後の留意点
5. 結論
1. 生命保険金の扱い
まず、生命保険金は通常、相続税の計算において「みなし相続財産」として扱われますが、民法上の遺産分割の対象には含まれません。すなわち、生命保険金は被相続人の死亡によって受取人が受け取るものであり、直接の相続財産ではないため、遺産分割協議で争われることは通常ありません。
これにより、受取人は指定された金額を自由に使うことができ、他の相続人の意向に左右されずに保険金を受け取ることが可能です。また、生命保険金は相続税の課税対象になるものの、一定の非課税枠(法定相続人1人につき500万円)が設けられており、節税対策としても利用されることが多いです。
2. 特別受益とは?
特別受益とは、特定の相続人が生前に被相続人から特別な利益を受けていた場合、その利益を相続分に反映させて他の相続人との公平を図る制度です。民法第903条では、結婚資金や住宅資金の贈与、あるいは学資金などが特別受益に該当することが明示されています。
この制度は、特定の相続人が被相続人から生前に過剰な援助を受けていた場合、その分を相続財産の中で調整し、他の相続人との不公平を避けるためのものです。相続人の中には、生前贈与を受けた者とそうでない者が存在するため、特定の相続人が不当に優遇されることを防ぐ仕組みとなっています。
3. 生命保険金が特別受益とみなされたケース
生命保険金が特別受益とみなされることは、基本的には少ないですが、近年の判例では、特定の条件下で特別受益と認定されるケースが増えてきました。ここで重要なのは、保険金の金額や受取人の立場、そして他の相続人との相対的な関係です。
例えば、【東京高裁平成27年3月18日判決】では、生命保険金が特別受益に該当すると判断されました。この事例では、長男が生命保険の受取人として非常に高額の保険金を受け取りましたが、他の相続人(兄弟姉妹)にはほとんど遺産が残されていなかったため、他の相続人が不公平だと主張しました。裁判所は、長男が受け取った生命保険金が遺産の大部分を占めていたことや、長男が受けた利益が他の相続人に対して不相応に大きいことを考慮し、この生命保険金を特別受益と認定しました。
この判決のポイントは、生命保険金が通常は相続財産とはみなされないにもかかわらず、他の相続人との公平性を欠く状況下では、特別受益として考慮される可能性があるということです。
4. 判例の影響と今後の留意点
このような判例が示すように、生命保険金が特別受益とみなされるかどうかはケースバイケースであり、相続人間の関係や保険金の金額が大きな影響を与えます。受取人が被相続人から生前に多額の贈与を受けている場合や、生命保険金の金額が他の相続財産に比べて不釣り合いに大きい場合には、特別受益と判断される可能性が高くなります。
そのため、生命保険を活用した相続対策を行う際には、以下の点に注意する必要があります。
受取人の公平性の確保: 受取人が特定の相続人に偏っている場合、他の相続人が不公平を主張するリスクが高まります。受取人を複数の相続人に分ける、あるいは事前に遺言や遺産分割協議で受取額の公平性を確認しておくことが重要です。
生命保険金の額の調整: 保険金が他の遺産に比べてあまりにも大きな額になると、特別受益として認定されるリスクが高まります。保険金の額を相続財産全体のバランスに合わせて調整することが推奨されます。
相続人間のコミュニケーション: 相続に関するトラブルを防ぐためには、相続人間で事前に十分なコミュニケーションを図り、生命保険の受取に関しても合意を形成しておくことが重要です。
5. 結論
生命保険金は原則として相続財産に含まれず、遺産分割の対象にはならないものの、特定の相続人が過度に利益を得たと判断される場合には、裁判所によって特別受益とみなされることがあります。特に、保険金の額が遺産の大部分を占めるようなケースや、他の相続人とのバランスが著しく欠けている場合には、生命保険金も特別受益の対象となり得ます。
相続対策として生命保険を活用する際には、このような判例を踏まえて、相続人間の公平性を十分に考慮し、トラブルを未然に防ぐための準備を行うことが不可欠です。専門家への相談をされることをお勧めいたします。
おひとり様の身元保証サービスは、家族や親族がいない、または頼れる人がいない高齢者にとって重要なサポートを提供するものです。このサービスには、主に生活支援、医療・介護時のサポート、そして死後の手続きなどが含まれますが、その中でも契約に関連する部分は特に重要です。解説したいと思います。
目次
1. 身元保証契約の重要性
2. 生活支援契約とその内容
3. 医療・介護サポートにおける契約
4. 死後事務委任契約の役割
5. 契約内容のカスタマイズと調整
6. 契約書の内容と費用のポイント
7. 専門家の関与と法的サポート
8. 契約前の確認事項と適切な選択
まとめ
1. 身元保証契約の重要性
おひとり様の身元保証サービスの中心となる「身元保証契約」は、医療機関や介護施設における保証人としての役割をサービス提供者が担うことを約束するものです。契約の範囲や条件が明確に定められ、緊急時にも迅速に対応できることが求められます。
2. 生活支援契約とその内容
「生活支援契約」では、日常生活におけるサポートを受けるための条件や範囲が規定されています。買い物の代行や通院の付き添いなど、利用者の自立した生活を支えるための契約内容が含まれます。
3. 医療・介護サポートにおける契約
「医療・介護契約」は、利用者が必要な医療や介護を受ける際に、サービス提供者が保証人や代理人として対応することを定めた契約です。緊急時の入院や治療において、家族の代わりに同意書にサインするなど、利用者の意思を尊重しつつ適切なサポートを提供します。
4. 死後事務委任契約の役割
「死後事務委任契約」は、利用者が亡くなった後の手続きを代行するための契約です。葬儀の手配や遺品整理、行政手続きなどを含み、無縁仏にならないように最期を尊厳を持って迎えるためのサポートが行われます。
5. 契約内容のカスタマイズと調整
これらの契約は、利用者の希望や状況に応じたカスタマイズが可能です。利用者とサービス提供者の間で綿密な打ち合わせが行われ、必要に応じて契約内容が調整されます。特定の医療機関や葬儀の形式など、利用者の希望に沿った対応が可能です。
6. 契約書の内容と費用のポイント
契約書には、利用者の権利と義務、サービス提供者の責任が明記されています。契約期間や解約条件、費用の支払い方法なども重要なポイントとなり、特に費用に関しては一括払いと分割払いの選択肢が提供されることが一般的です。しかし、実費である程度必要な費用に関しましては、「預託金」として、前もって支払いが必要となります。
7. 専門家の関与と法的サポート
これらの契約には、司法書士や弁護士などの専門家が関与する場合があります。特に遺言書の作成や死後事務委任契約においては、専門家のアドバイスを受けることが推奨され、利用者の法的保護を強化します。しかし、契約関連については、争い等のケースが想定される場合ですと、弁護士にお願いしたほうがよろしいかと思います。
8. 契約前の確認事項と適切な選択
契約を結ぶ前に、サービスの詳細や料金体系、解約条件を十分に確認することが重要です。また、必要に応じて専門家の意見を求め、自分の希望や状況に最適な選択をすることが求められます。
どこまで、関与させるのかによっても大きく変わってきますので、各契約と目的がきっちりと合致しているか判断することが一番重要だと考えます。
まとめ
内閣府からのガイドライン(案)が出ました。完全にはまだまだといった感じなのですが、今までに問題になっていた点(遺産についてのサポート団体への遺言書による遺贈)については、明示することになりそうです。
生きている時のサービスは安くても、遺産を遺贈することを条件とされると、まずい点もあります。
なぜなら、医療・介護サポートで「もっと〇〇してほしい」という要望があっても、それを受け入れると将来の実入りが減少するということになってしまう場合、正常な判断ができるのか怪しいですからね。こういったトラブルを防止するという観点からも、身元保証サポート選びは、慎重にしたいものですね。
自分らしく最後まで生きていくサポートを提供してくれる団体にお願いするようにしましょう。
アイリスでもサービス提供団体の活動内容を拝見させていただいて、お勧めできる団体もございますので、是非ご連絡ください。勿論、ご紹介は致しますが、紹介の費用は掛かりませんし、サポートを受けるかどうかは、ご自身の判断でお願いしております。
再婚を経験した方が、前婚の元妻との間に子供がいる場合、特にその子供と長期間会っていない場合、遺産分割協議において残された家族に大きな負担がかかることがあります。
こうした状況を避けるためには、遺言を活用した事前の対策が非常に重要です。
目次
1.遺産分割協議における負担
2.遺言を使った対策方法
3.結論
1.遺産分割協議における負担
再婚後の家族にとって、遺産分割協議は非常にデリケートな問題です。前婚の子供が相続人として権利を持つ場合、以下のような負担が生じることがあります。
①感情的なストレス
長期間会っていない前婚の子供が突然現れ、相続権を主張することは、残された家族にとって大きな感情的ストレスとなります。特に、再婚相手やその子供たちにとっては、予想外の事態であり、家庭内の人間関係にも影響を及ぼす可能性があります。
➁協議の複雑化
前婚の子供が相続に関与することで、遺産分割協議が複雑化します。特に、相続人同士の関係が希薄である場合、協議が円滑に進まないことが多く、結果として時間や費用がかさむことがあります。また、遺産分割がスムーズに進まないと、法定相続分に基づく配分を余儀なくされ、全員が納得する結果が得られない場合もあります。
③財産管理の混乱
前婚の子供が遺産分割に関与することで、財産の管理が複雑になることがあります。たとえば、不動産が遺産に含まれる場合、共有名義となることで管理や処分が困難になる可能性があります。また、遺産分割が長引くと、相続税の申告期限に間に合わないリスクも生じます。
2.遺言を使った対策方法
こうした問題を避けるためには、遺言を活用した事前の対策が有効です。以下は、その具体的な方法です。
①遺言書の作成
遺言書を作成することで、相続人間での争いを未然に防ぐことができます。特に、再婚相手やその子供たちに対する配慮を明確に示すことで、遺産分割協議がスムーズに進む可能性が高まります。遺言書には、前婚の子供に対する配分を明記することで、後々のトラブルを防ぐことができます。
➁遺留分に配慮した遺言
前婚の子供が遺留分を主張する可能性がある場合、遺留分を考慮した遺言を作成することが重要です。遺留分を無視した遺言は、後で遺留分減殺請求が行われ、再婚後の家族がさらに困難な状況に陥る可能性があります。そのため、遺言を作成する際には、法定相続分や遺留分を考慮し、全員が納得できる内容とすることが望ましいです。
③専門家のアドバイスを受ける
遺言書を作成する際には、司法書士や弁護士などの専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。専門家の助言を受けることで、法的に有効な遺言書を作成できるだけでなく、相続人全員にとって公平で納得のいく内容にすることができます。また、遺言執行者を指定することで、遺産分割がスムーズに進行するようにすることも重要です。
3.結論
再婚後の家族にとって、前婚の子供との関係は遺産分割協議において大きな負担となることがあります。しかし、遺言を適切に活用することで、この負担を軽減し、残された家族が円滑に遺産を相続できるようにすることが可能です。
遺言の作成は、単なる形式的な手続きではなく、残された家族の未来を守るための重要な手段であることを認識し、早めに対策を講じることが求められます。
後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反の問題が生じる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
この論点について、以下に詳しく説明します。
目次
1. 後見人と身元引受人の役割
2. 同一人物が両方の役割を担う場合の問題点
3. 利益相反の具体例
4. 法的見解と対策
5. 結論
1. 後見人と身元引受人の役割
まず、後見人と身元引受人の役割を理解することが重要です。
後見人は、被後見人の財産管理や生活上の意思決定を支援する法的な役割を担います。被後見人が判断能力を欠く場合に、後見人がその権限を行使して、被後見人の利益を守ることが求められます。
一方、身元引受人は、施設入所時や医療機関での手続きにおいて、被後見人の身元を保証する役割を担い、緊急時の連絡先や、場合によっては医療・介護の意思決定に関与することがあります。
2. 同一人物が両方の役割を担う場合の問題点
後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反が生じるリスクがあります。後見人は被後見人の利益を最優先に考えるべきですが、身元引受人としての役割が重なると、被後見人の利益を損なう可能性が出てくることがあります。
例えば、後見人が被後見人の財産を管理する立場にある一方で、身元引受人として施設入所時の費用負担や契約の締結に関与する場合、後見人が身元引受人として自分自身の責任を軽減するために、被後見人に不利な決定をする可能性があります。このような状況では、後見人の義務である被後見人の最善の利益を守るという責務が果たされない危険性があります。
3. 利益相反の具体例
利益相反の具体例として、以下のようなケースが考えられます。
施設入所の契約締結: 身元引受人として施設入所の契約を締結する際、後見人が被後見人の財産から費用を支払うことを決定するが、実際には施設の費用が高額で、被後見人の財産が減少する結果になる場合があります。後見人としては、被後見人の利益を最優先に考え、費用対効果を十分に検討すべきですが、身元引受人としての立場があると、契約を急ぐあまり、被後見人の利益を損なう決定を下す可能性があります。
医療・介護の意思決定: 医療や介護に関する重要な意思決定が必要な場合、身元引受人としての責任と後見人としての財産管理の責任が衝突することがあります。例えば、身元引受人として長期入院を選択することが被後見人の財産に大きな影響を与える場合、後見人としては費用負担を軽減するために別の選択肢を探すべきかもしれません。しかし、身元引受人としての立場が強調されると、後見人としての判断が歪められるリスクがあります。
4. 法的見解と対策
日本の法制度では、後見人と身元引受人が同一人物であること自体は禁止されていません。しかし、利益相反のリスクが高い場合には、第三者機関や家庭裁判所の関与が求められることがあります。また、後見監督人(監督者)を設置することで、利益相反が発生しないように監視する仕組みを導入することが有効です。
さらに、後見人と身元引受人が同一人物である場合には、定期的に状況を見直し、必要に応じて役割を分離するか、監督機関に報告することで利益相反を回避する努力が必要です。家庭裁判所は、被後見人の利益を保護するために後見人の行動を監視し、必要に応じて指導や変更を行う権限を持っています。
5. 結論
後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反のリスクが存在するため、被後見人の利益を最優先に考えるべきです。
法的には同一人物が両方の役割を担うことは可能ですが、利益相反が発生しないようにするための対策が必要です。
後見監督人の設置や家庭裁判所の関与、定期的な見直しなどを通じて、被後見人の利益が適切に保護されるような仕組みを整えることが重要です。
遺産相続において、前妻との間に生まれた子供がいる場合、特にその子供に対して養育費や大学の費用、さらには結婚費用までを負担した後、遺留分放棄の念書を書いてもらった場合、遺産をその子供に相続させなくても良いのかという疑問が生じることがあります。この問題に対する正確な理解を深めるためには、遺留分放棄に関する法的な手続きについて理解しておく必要があります。
目次
1. 遺留分とは
2. 遺留分放棄の念書の効力
3. 養育費や結婚費用の負担と遺留分放棄
4. 遺留分放棄が認められなかった場合の影響
5. 結論
1. 遺留分とは
まず、遺留分とは、法律上、相続人が最低限保障されている相続財産の割合を指します。日本の民法では、相続人の権利を保護するために、被相続人(遺産を残す人)が遺言によって全財産を特定の人に譲る場合でも、他の相続人が最低限受け取るべき財産の割合が保証されています。遺留分は、法定相続人が不当に少ない遺産しか受け取れない場合に、その権利を主張することで、受け取ることができる財産の額を保護するための制度です。
法定相続人の第1順位、第2順位である子、直系尊属については、主張することができますが、第3順位の兄弟姉妹には、遺留分を主張する権利は民法上認められていません。
2. 遺留分放棄の念書の効力
次に、遺留分放棄の念書について考えてみましょう。遺留分を放棄すること自体は可能です。しかし、その放棄が有効であるためには、法律に定められた特定の手続きを踏む必要があります。つまり、各個人間で作成した私文書で、遺留分放棄の効力は認められません。
相続発生前に遺留分を放棄する場合、家庭裁判所の許可が必要です(民法第1043条)。この手続きを経ないで行われた遺留分放棄の合意や念書は、法的に無効とされる可能性が高いです。家庭裁判所が許可を与えるためには、放棄が相続人の自由意思に基づいて行われており、不当に不利益を被るものではないことが確認される必要があります。
3. 養育費や結婚費用の負担と遺留分放棄
質問の中で言及されている「養育費、大学の費用、結婚費用を負担したから、遺留分を放棄させた」という状況についても、重要な点があります。養育費や教育費、結婚費用の負担は、親としての義務や愛情表現として行われるものであり、それを理由に相続権の放棄を求めることは慎重に考える必要があります。
さらに、家庭裁判所が遺留分放棄の許可を与える際には、その放棄が公平であるか、被相続人から相続人への経済的な配慮が適切に行われたかが審査されます。養育費や結婚費用の負担だけでは、家庭裁判所が遺留分放棄を認めるかどうかは別問題であり、その許可が得られなければ、遺留分放棄の念書が法的に有効とならない可能性があります。
4. 遺留分放棄が認められなかった場合の影響
家庭裁判所の許可がない遺留分放棄は無効となるため、その場合、相続が発生した際に前妻の子供が遺留分を請求する権利を行使することができます。もしその子供が遺留分請求権を行使した場合、遺産の一部を請求される可能性があります。このような状況を避けるためには、適切な法的手続きを経ることが不可欠です。
5. 結論
結論として、遺産相続の前に遺留分放棄の念書を書いてもらったとしても、それだけでは前妻の子供に遺産を相続させなくても良いという保証にはなりません。遺留分放棄を法的に有効にするためには、家庭裁判所の許可を得る必要があり、この手続きを経ていない遺留分放棄は無効とされる可能性があります。したがって、前妻の子供に遺産を相続させたくない場合には、必ず専門家の助言を受け、適切な手続きを踏むことが重要です。
ちなみに、こういった場合のアドバイスとして、「遺言書」の作成をお勧めしております。なぜなら、遺言書に遺産の帰属先を記載することで、相続発生時に遺言書の効力が生じて、遺産はしてした方に帰属するからです。勿論、遺留分についての問題は残るものの、遺留分権利者がその権利を主張しなければ、遺留分の問題は発生しません。当然ですが、遺留分侵害額請求権を主張した場合には、その算出額を支払うことになるかもしれませんが、遺産の帰属は、指定者に移っています。
共有不動産の持分を解消する際、持分を贈与するのか、持分放棄をするのかという選択肢があります。この2つの方法には、それぞれ異なる法律上および税務上の影響があります。ここでは、それらの違いと注意すべき点を解説します。
目次
1. 持分贈与の法的側面
2. 持分贈与の税務面
3. 持分放棄の法的側面
4. 持分放棄の税務面
5. どちらの選択肢が有利か
6. 結論
1. 持分贈与の法的側面
持分贈与とは、共有不動産の持分を他の共有者に無償で譲渡することです。贈与は、贈与者の意思表示と受贈者(もらう側)の意思表示が必要です。贈与自体は意思表示時点で成立はしますが、証拠として贈与契約書を作成し、登記手続きを行うことで、持分の移転が正式に完了します。
この場合、受贈者は贈与を受けた持分を完全に自分のものとする権利を持ちます。法的には、贈与が完了した時点で、贈与者の持分は受贈者に移転し、贈与者はその不動産に関して一切の権利を失います。
2. 持分贈与の税務面
贈与を行った場合、受贈者には贈与税が課されます。贈与税の額は、贈与された持分の評価額に基づき算出され、税率は累進課税方式で適用されます。また、不動産の場合、固定資産税評価額を基準に評価額が決まりますが、実際の市場価値との差異があるため、税務署と相談しながら進めることが重要です。さらに、贈与税の基礎控除額(年間110万円)を超える場合、課税される点にも注意が必要です。
また、贈与後に不動産を売却するときの「譲渡所得税」の「取得費」について、受贈者は、贈与物件に係る贈与者の取得日・取得費を引き継ぐことになります。
3. 持分放棄の法的側面
一方、持分放棄は、共有者が自らの持分を無償で放棄する単独行為です。持分を放棄することで、その持分は他の共有者全員のものとなり、持分比率に応じて再配分されます。法的には、持分放棄を行うことで、放棄した共有者はその不動産に関する権利を失い、他の共有者は持分が増える形となります。持分放棄は贈与とは異なり、特定の共有者に対して持分を移転するのではなく、共有者全体に対して持分が分配されることが特徴です。ただし、共有者が2名であり、そのうちの1名が持分放棄をした場合、上記の持分を贈与したのと同じ効果が得られます。複数名居た場合は、残された共有者の持ち分比率に応じて持分が移転します。
4. 持分放棄の税務面
持分放棄の場合、放棄された持分が他の共有者に移転する際、移転を受ける側に贈与税が課される可能性があります。特に、持分放棄が特定の共有者に利益をもたらす場合、その共有者に対して贈与とみなされるケースがあり、贈与税が発生することがあります。さらに、持分放棄による共有者間の持分調整が、市場価値に対して無償で行われたと判断される場合、税務署が贈与と認定するリスクがあるため注意が必要です。まずは課税される可能性が高いので、確定申告時に申告しておくことをお勧めします。よくわからない場合には、税理士にご相談ください。
それと、持分放棄後に当該不動産を売却する場合の譲渡所得税についての「取得費」について、贈与課税時は、概算取得費(売却金額の5%等)が取得費となり取得費の引き継ぎがないので、当局側の課税の実務では、贈与課税時の時価を取得費とすることから、二重課税はないということになります。
5. どちらの選択肢が有利か
持分贈与と持分放棄のどちらが有利かは、具体的な状況によります。贈与の場合、受贈者に贈与税が課されますが、特定の相手に持分を渡すことができるため、相続や家族間の財産分与を考慮した場合に有効です。一方、持分放棄は共有者全体に平等に持分が分配されるため、特定の相手に財産を集中させたくない場合や、税務リスクを最小限に抑えたい場合に適しています。
ただし、持分放棄は共有者が2名でないと、共有関係の解消には至らないということや、税務上のメリットデメリットが存在します。詳しくは専門家にご相談ください。
6. 結論
共有不動産の持分を解消する際には、持分贈与と持分放棄のそれぞれに法的および税務的な影響があります。どちらを選択するかは、個々の事情や目的に応じて慎重に検討する必要があります。贈与税の負担や持分の再配分の影響を考慮し、最適な方法を選ぶためには、専門家のアドバイスを求めることが重要です。
ただし、不動産登記手続きについては、登記原因証明情報の内容と当為原因が異なる程度で、それ以外で異なる部分はありません。
相続が発生した際、相続人が存在しない場合、その財産はどこへ行くのかという疑問が生じます。
このようなケースは「相続人不存在」と呼ばれ、法律に基づく手続きが定められています。以下、その手続きと財産の行方について説明します。
目次
1. 相続人不存在の確認
2. 遺産管理人の選任
3. 相続財産の公告と受遺者の探索
4. 相続財産の国庫帰属
5. 国庫帰属後の手続き
6. 結論
1. 相続人不存在の確認
相続人が不存在であると判断されるのは、被相続人が死亡した際に法定相続人(配偶者、子、親、兄弟姉妹など)がいない場合です。また、相続人がいても全員が相続放棄をした場合も同様に相続人不存在の状態となります。
相続人がいるかどうかは、被相続人の戸籍謄本などを調査して確認します。この手続きは通常、遺産管理人や家庭裁判所が担当します。
2. 遺産管理人の選任
相続人不存在が確認されると、家庭裁判所は「遺産管理人」を選任します。
遺産管理人は、相続財産の保全、処分、債務の支払いなどを行うために選ばれる第三者です。遺産管理人は、弁護士や司法書士など、法律に精通した専門家が任命されることが一般的です。
遺産管理人が選任されると、財産の管理とともに、相続債務の清算や未払いの税金の支払い、債権者への対応などを行います。また、遺産の一部を売却するなどして、債務の支払いに充てることもあります。
当然ですが、この遺産管理人への報酬も、前もって家庭裁判所に予納することになりますが、その額は数十万円から数百万円が想定されます。(いったい誰が支払うのでしょうか?)勿論、予納金が支払われない場合、手続きは進みません。
3. 相続財産の公告と受遺者の探索
遺産管理人は、相続財産の内容を公告し、受遺者や相続人の可能性がある者を探します。この公告は、遺産管理人が選任されてから通常2か月以内に行われ、一般的には官報などで公示されます。公告期間中に相続人や受遺者が現れれば、その者に対して相続手続きが行われます。
しかし、公告期間中に相続人や受遺者が現れない場合、最終的にはその財産の処理が行われます。
4. 相続財産の国庫帰属
公告期間が過ぎても相続人が現れなかった場合、相続財産は「特別縁故者」に分与される可能性があります。特別縁故者とは、被相続人の生前に特に親しい関係にあった者で、例えば、長年同居していた友人や内縁の配偶者などが該当します。特別縁故者が財産の分与を希望する場合、家庭裁判所にその旨を申し立てることができます。
特別縁故者への分与が行われない場合、相続財産は最終的に「国庫」に帰属します。これは、相続人不存在の場合に限られる特殊な措置で、国が相続財産を受け取ることになります。国庫帰属の対象となる財産には、不動産、預貯金、株式などが含まれます。
5. 国庫帰属後の手続き
財産が国庫に帰属した後、これらの財産は国有財産として処分されます。不動産であれば、売却されたり、公共の利用に供されたりします。現金や預貯金は、国の財政に組み入れられます。また、株式などの有価証券は、国が売却して現金化することが一般的です。
一度国庫に帰属した財産は、相続人や特別縁故者が後に現れたとしても、その返還が認められることは基本的にありません。したがって、相続人不存在が確定する前に、全ての可能性を考慮して手続きを行うことが重要です。
6. 結論
相続人が不存在の場合、その財産はまず遺産管理人によって管理され、特別縁故者への分与が行われる可能性がありますが、最終的には国庫に帰属します。このようなケースは、法律に基づいた厳格な手続きが必要となり、遺産管理人や家庭裁判所の役割が非常に重要です。相続人不存在の問題は、誰が財産を受け取るのかという個別の問題だけでなく、社会全体における財産の管理や再分配にも関連する重要なテーマです。
ちなみに、日本全体で、受取人のいない遺産額「647億円(2021年朝日新聞記事引用)」だったみたいです。
任意後見契約は、将来の判断能力の低下に備えて信頼できる後見人を事前に選び、契約を結ぶ制度です。
この契約時に、財産の開示が求められる理由と、開示しないことのデメリットについて説明します。
目次
1. 財産開示の重要性
2. 財産目録作成条項を含めない契約の例外
3. 財産目録がない場合のデメリット
4. 結論
1. 財産開示の重要性
任意後見契約を締結する際、原則として本人は後見人に対して財産の開示を行います。これは、後見人が本人の財産状況を正確に把握することで、後見が開始された際に適切な財産管理が行えるようにするためです。財産の開示は、本人が保有する資産や負債、収入源などの全体像を後見人が理解し、将来的な支出計画や財産の保全を確実に行うための基礎となります。
財産開示を行うことで、後見人は本人の生活維持に必要な資金をどのように確保するか、どの資産をどう管理するかを計画的に決定できます。また、家族間のトラブルや財産の不正利用を未然に防ぐ効果も期待されます。後見人が最初から財産状況を把握していれば、本人が判断能力を失った後でもスムーズに財産管理が行えるため、本人や家族にとって安心感が得られます。
2. 財産目録作成条項を含めない契約の例外
例外として、任意後見契約書に財産目録作成の条項を含めない場合、財産の開示を行わずに契約を締結することも可能です。これは、本人がプライバシーを重視し、財産を開示することに抵抗がある場合や、信頼関係が十分に構築されているため、後見人に財産を開示する必要がないと判断した場合に選ばれることがあります。
しかし、財産目録を作成しない契約にはリスクが伴います。特に、将来的に認知能力が低下し、家族や後見人が財産管理に疑問を持った際に、問題が顕在化します。
3. 財産目録がない場合のデメリット
財産目録がない状態で任意後見が開始された場合、本人の財産がどの程度存在していたのか、どの資産がどれだけ減少したのかを証明する手段が限られます。例えば、家族が「何かおかしい」と感じても、財産の移動や減少が不審であるかどうかを確認するのが難しくなります。
財産目録が存在すれば、後見が開始された時点の財産状況と現在の状況を比較することで、不正な取引や不審な財産移動がないかを検証できます。しかし、財産目録がない場合は、このような証拠を確保する手段がなく、不正が行われていたとしても、それを証明することが非常に困難になります。
例えば、本人が判断能力を失う前に不正な取引が行われていた場合、財産目録がなければその不正を証明するための証拠が不足し、後見人や家族が取り返しのつかない状況に陥る可能性があります。結果として、本人の財産が不正に減少していたとしても、それを追跡し、適切な対処を行うことができなくなります。
さらに、財産目録がないことで、後見人が適切な財産管理を行っていたかどうかの判断も困難になります。家族や関係者が後見人の行動を監視・評価する際に、財産目録がないと透明性が欠如し、後見人に対する信頼が揺らぐ可能性があります。
4. 結論
任意後見契約において財産を開示することは、後見人が適切に本人の財産を管理し、本人の生活を守るために不可欠な手続きです。
財産目録を作成しない契約も可能ですが、その場合、将来的に財産管理に問題が生じた際に、それを証明する手段がないため、リスクが高まります。
したがって、任意後見契約を締結する際には、可能な限り財産目録を作成し、後見人が適切に業務を遂行できるような体制を整えることが重要です。
成年後見制度は、高齢者や認知症患者、精神障害者など判断能力が低下した人々を法的に保護するための制度です。
この制度には「任意後見」と「法定後見」の2種類があります。
また、成年後見制度の利用状況と市民後見人についてもお話をしたいと思います。
目次
1.任意後見
2.法定後見
3.利用率と裁判統計から見る現状
4.市民後見人の役割と課題
5.結論
1.任意後見
任意後見は、本人がまだ判断能力がある段階で、将来に備えて信頼できる人物を後見人として選び、任意後見契約を結ぶ制度です。
契約内容には、後見人が将来、本人の生活、財産管理、医療に関する意思決定を代行することが含まれます。この契約は、公証役場で公正証書として作成され、本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に申請して正式に後見が開始されます。
任意後見のメリットは、本人の意向を最大限に反映できる点にあります。
本人が信頼する人物を選ぶことで、後見人に対する安心感が得られ、財産の管理や医療に関する決定がスムーズに行われる可能性が高まります。
2.法定後見
法定後見は、すでに判断能力が低下している場合に、市町村長や親族などからの申し立てにより家庭裁判所が後見人を選任する制度です。法定後見には、後見、保佐、補助の3種類があり、それぞれの対象者の判断能力に応じて後見人の権限が異なります。後見人は、本人の生活や財産管理、契約の締結などに関する意思決定を代行します。
法定後見の選任プロセスでは、家庭裁判所が後見人を選定しますが、本人や親族が希望する人物が選ばれるとは限りません。そのため、後見人の選任に関しては、しばしば家族内での意見の相違や法定後見人に対する不満が生じることがあります。
勿論、専門家が選任された場合、その報酬が発生し、それは現行制度ですと、本人が亡くなるまで発生することになります。
3.利用率と裁判統計から見る現状
成年後見制度の利用は年々増加しており、特に法定後見の利用が目立ちます。家庭裁判所の統計によれば、後見に関する申立件数は過去10年間で着実に増加しており、2023年には年間で約4万件に達しました。このうち、任意後見の利用は全体の約10%に留まっており、圧倒的に法定後見の利用が多い状況です。
法定後見が主流となっている背景には、本人や家族が判断能力の低下に早期に気づかず、任意後見契約を締結するタイミングを逃してしまうケースが多いことが挙げられます。
また、任意後見契約の締結には公証役場での手続きが必要であり、その手続きの煩雑さや費用が利用のハードルとなっている可能性も考えられます。
また、市町村長による申し立てが圧倒的に多くなってきています。これは、いままで介護度の確認などで契約当事者として、親族相手でも慣習として行っていたところ、だんだん厳しくなり、本人相手で介護度の確認をするにあたり認知症発症している可能性が高い場合、法定後見制度を利用して、後見人(法定代理人)として本人に代わって契約するように厳格化されてきているからだと考えられます。
4.市民後見人の役割と課題
市民後見人は、専門家ではなく、市民が後見人として家庭裁判所に選任される制度です。市民後見人の導入は、高齢化社会に対応するための重要な施策とされています。特に、家族や親族がいない、または親族間で後見人を務めることが難しい場合に、市民後見人が重要な役割を果たします。
しかし、市民後見人の利用には課題もあります。まず、後見業務に関する専門知識や経験が不足しているため、十分な支援を提供できない可能性があります。
また、市民後見人の育成や支援体制の整備が十分でないため、安定した後見業務を行うための環境が整っていない場合があります。そのため、市民後見人の質を高めるための研修制度やサポート体制の強化が急務とされています。
5.結論
成年後見制度は、判断能力が低下した人々の権利を保護するための重要な制度です。
任意後見と法定後見の選択肢があることで、個々の状況に応じた保護が可能となりますが、現状では法定後見が主流となっています。
また、市民後見人の導入は、社会的な需要に応える重要な施策である一方で、その運用には改善の余地が残されています。
子供がいない夫婦の相続においては、一般的な相続よりも複雑な点が多く、事前にしっかりと準備をしておくことが重要です。
相続人第1順位の子がいないので、いきなり相続人第2順位の直系尊属(両親等)が関与してきますが、すでに両親等が無くなっている場合には、第3順にの兄弟姉妹になります。
ここでは、子供がいない夫婦が相続に関して注意すべき点を5つ挙げ、それぞれを解説します。
目次
1. 法定相続人の範囲と相続割合の確認
2. 遺言書の作成の必要性
3. 配偶者居住権の確保
4. 親族との関係維持と遺産分割協議の重要性
5. 相続税の負担と節税対策
まとめ
1. 法定相続人の範囲と相続割合の確認
子供がいない夫婦の場合、相続人の範囲が通常のケースとは異なります。具体的には、配偶者が相続人であることは変わりませんが、相続人が配偶者一人のみとは限りません。
子供がいない場合、配偶者以外の相続人としては、被相続人の親や兄弟姉妹が含まれることになります。もし被相続人の親が存命であれば、配偶者と親が相続人となり、配偶者が3分の2、親が3分の1を相続します。
親がすでに他界している場合、兄弟姉妹が相続人となり、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続することになります。
兄弟姉妹がすでに他界している場合は、その子供(甥や姪)が代襲相続することもあります。
配偶者が全ての財産を相続するわけではないため、法定相続人の範囲と相続割合を確認しておくことが重要です。
2. 遺言書の作成の必要性
子供がいない夫婦の場合、遺言書の作成が特に重要です。遺言書がない場合、遺産は法定相続分に従って分割されるため、配偶者以外の相続人にも遺産が分配されることになります。
しかし、遺言書があれば、被相続人は財産の分配方法を自由に決定することができます。たとえば、全ての財産を配偶者に相続させたい場合や、特定の財産を特定の親族に遺贈したい場合には、遺言書が不可欠です。
遺言書を作成することで、相続がスムーズに進み、遺族間の紛争を防ぐことができます。
特に、第3順位の広大終いに関しては、「遺留分」の主張はできません。
遺言書を作成しておくことで遺産を自身の意思通りに承継することが可能となりますので、ぜひ遺言書作成の検討を考慮ください。
もちろん、後々の問題を考慮して「公正証書遺言」で行うことをお勧めいたします。
3. 配偶者居住権の確保
子供がいない夫婦の場合、相続によって配偶者が住んでいる家を失うリスクがあります。
例えば、配偶者以外の相続人が相続分を主張し、家の売却や分割を要求することが考えられます。このような状況を避けるためには、配偶者居住権を確保することが重要です。
配偶者居住権とは、配偶者が相続により、被相続人が住んでいた住居に引き続き住む権利を保護する制度です。これにより、配偶者が安定して生活できる環境を確保することができます。
ただし、配偶者居住権を有効に活用するためには、遺言書にその旨を明記しておく必要があるため、事前の準備が必要です。
4. 親族との関係維持と遺産分割協議の重要性
子供がいない夫婦の場合、相続時に配偶者と親族(被相続人の親や兄弟姉妹)との間で遺産分割協議が必要になります。
この協議がスムーズに進まないと、相続手続きが長引く可能性が高く、感情的な対立が生じることもあります。特に、親や兄弟姉妹が相続人として関与する場合には、配偶者と親族との間での協力と理解が重要です。
被相続人の生前から親族との関係を良好に保つことで、相続時のトラブルを防ぐことができます。また、遺産分割協議では、全相続人の同意が必要なため、相続人間の調整が求められます。
このため、遺言書を残しておくことが非常に有効ですし、必要に応じて司法書士や弁護士などの専門家の助言を受けることも検討すべきです。
5. 相続税の負担と節税対策
子供がいない夫婦の場合、相続税の負担が大きくなる可能性があります。
法定相続人が少ないと、基礎控除額が減少するため、相続税の課税対象となる遺産額が増えることがあります。たとえば、子供がいる場合には法定相続人の数が増えるため、基礎控除額も増加しますが、子供がいない夫婦では配偶者と親または兄弟姉妹が相続人となるため、控除額が少なくなります。その結果、相続税の負担が大きくなる可能性があります。
相続税を軽減するためには、生前に適切な対策を講じることが重要です。具体的には、生前贈与や保険の活用、信託の設計などが考えられます。
また、遺産分割の際には、配偶者の税額軽減措置を活用することも有効です。これにより、配偶者が相続した財産に対する相続税を大幅に軽減することができます。
6.まとめ
以上の5つの点を踏まえ、子供がいない夫婦の相続においては、法定相続人の確認や遺言書の作成、親族との関係維持など、事前にしっかりと準備をしておくことが求められます。適切な対策を講じることで、配偶者の生活を守り 、遺産の円滑な相続を実現することが可能です。
相続は家族間の重要な問題であり、専門家の助言を受けながら慎重に対応することが望ましいでしょう。
家族信託が出始めたころには、夢のような制度として脚光を浴びましたが、利用が進むにつれて、その問題点も浮き彫りになってきて、「後見制度に代わる」制度ではないことが明らかになってきました。そもそも、財産管理の方法を契約で当事者同士でするものが家族信託で、家庭裁判所の管理下で行うものが後見制度です。その目的も財産管理という名目は同じでも内容は全く違うものです。現状、家族信託はそこまで浸透していない様に見えます。その原因を紐解いてみました。
目次
1. 家族信託の概要
2. 受託財産の管理が大変(信託口口座による管理)
3. 委託者への報告を怠っているケースが多い
4. 税務署に対する報告ができていないケースが多い
5. どこからクレームが来るのか
6. 家族信託に対する誤解や過信
1. 家族信託の概要
家族信託とは、委託者(通常は親)が受託者(通常は子供)に財産を信託し、将来、委託者が認知症などで判断能力を失った場合でも、信託契約に基づいて財産を管理・運用する仕組みです。
この制度は、特に高齢者の認知症対策として広く利用されていました。
信託契約によって、受託者が委託者の代わりに財産を管理できるため、親族間の紛争を防ぐことが期待されていました。
2. 受託財産の管理が大変(信託口口座による管理)
家族信託の利用が減少している理由の一つとして、受託財産の管理の煩雑さが挙げられます。信託財産を管理するためには、信託専用の口座(信託口口座)を開設する必要がありますが、金融機関によってはこの信託口口座を開設してくれない場合があります。
このような場合、受託者は信託財産の管理が難しくなり、管理業務が大きな負担となります。特に高齢の受託者にとっては、この管理作業が複雑で負担が大きいため、家族信託の利用を敬遠する要因となっています。
3. 委託者への報告を怠っているケースが多い
信託契約では、受託者が委託者に対して定期的に財産の管理状況を報告する義務がありますが、現実にはこれが十分に行われていないケースが多いです。家族間での信頼関係があるために、受託者が報告を怠りがちで、信託の透明性が損なわれるリスクがあります。
このような状況では、信託が適切に機能していないと見なされる可能性があり、家族信託の効果が十分に発揮されないことがあります。
4. 税務署に対する報告ができていないケースが多い
家族信託を利用する場合、信託財産に関する税務申告が必要ですが、多くの受託者がこの義務を十分に理解していません。そのため、確定申告時に信託財産を正しく申告できていないケースが多く見られます。
税務署への報告が不十分な場合、後に税務署から指摘を受けたり、追徴課税が発生したりするリスクがあります。信託財産が大規模であるほど、税務管理が重要となり、適切な申告がなされていないことで、信託制度全体の信頼性が損なわれる結果となっています。
5. どこからクレームが来るのか
家族信託は、委託者と受託者の間で締結される契約ですが、管理される財産は最終的に相続人の遺産となります。そのため、他の相続人が受託者の管理方法に疑義を抱いた場合、クレームが発生することが多くあります。
特に信託財産が大きい場合や、相続人間で利害関係が複雑な場合には、これが紛争に発展することもあります。受託者が信託の内容を適切に管理し、透明性を確保していないと、家族間の関係が悪化するリスクが増加します。
6. 家族信託に対する誤解や過信
家族信託が普及し始めた当初、一部の専門家や業者が「家族信託を利用すれば、後見制度は不要になる」といった誤った情報を提供していたケースがありました。
しかし、家族信託と後見制度は異なる制度であり、家族信託を利用しても後見制度が不要になるわけではありません。このような誤解が広まった結果、家族信託に対する過信が生まれ、制度の限界に直面する利用者が増えました。
これにより、家族信託の利用が見直され、結果として利用者が減少する要因となっています。
これらの理由により、最近では家族信託の利用が減少しています。
家族信託は有用な制度ですが、その管理の煩雑さや税務管理の重要性、そして相続人間の関係に注意しながら慎重に利用することが求められます。
連れ子に相続権はあるのか?また、連れ子を養子にする意味について解説しています。
また、この場合、あなたが亡くなるまでに残された家族にすべき手続きについてもお話をしています。
目次
1. 連れ子の相続権について
2. 養子縁組した場合の相続権
3. 例外的な取り扱い
4. 養子縁組して相続権はあるが、あなたがしておくべき手続
5. まとめ
1. 連れ子の相続権について
日本の民法において、連れ子とは一方の親が再婚相手との間にできた子供ではなく、前配偶者との間に生まれた子供を指します。
連れ子は再婚相手と血縁関係がないため、法定相続人には含まれません。
すなわち、再婚相手が亡くなった場合、連れ子には相続権がありません。
これは民法第887条に基づいており、法定相続人は配偶者と血縁関係にある子供に限られるからです。
2. 養子縁組した場合の相続権
しかし、連れ子を再婚相手が養子縁組した場合、その法的地位は大きく変わります。養子縁組が成立すると、連れ子は法律上の「子」となり、再婚相手との間に法的な親子関係が生じます。
この結果、養子は再婚相手の法定相続人として認められ、実子と同等の相続権を有します。つまり、養子縁組によって、連れ子は再婚相手の相続財産を相続する権利を持つことになります。
具体的には、再婚相手が亡くなった場合、その相続人は配偶者と子供(養子を含む)となります。もし配偶者と養子が相続する場合、相続分は民法の規定により、配偶者が1/2、養子が1/2となります(他に相続人がいない場合)。
3. 例外的な取り扱い
ただし、養子縁組後の相続においても、養子縁組が形式的に行われた場合、つまり相続対策としてのみ行われ、実質的な親子関係がない場合には、裁判所が養子縁組を無効と判断することがあります。このような場合、相続権が否定される可能性もあります。
また、養子縁組した連れ子が他の兄弟姉妹と共同で相続する場合、遺産分割協議において、遺留分や相続分の取り決めが必要となります。遺留分は、法定相続人が最低限相続できる割合であり、養子縁組が行われたとしても、他の相続人との間で相続分が調整されることがあります。
4. 養子縁組して相続権はあるが、あなたがしておくべき手続
あなたが仮に亡くなり、相続が発生した場合について考えてみましょう。
確かに養子縁組した連れ子の方には、相続権は発生しています。遺産の分割協議をすることになりますが、この協議は相続人全員の参加が必要です。
もし、再婚前のあなたの前妻との間にお子様がいる場合、このお子様も相続人となり、協議に参加して署名、実印による押印、印鑑証明書の提供がなければ、遺産分割協議は成立しません。
果たして、前妻との間の子供が、気持ちよく協議に参加してもらえるような関係が構築できているならいいのですが、そうでない場合、協議は難航します。
相続発生時の遺産分割協議という負担を残された家族に残さないためにも、「遺言書」(できれば公正証書遺言)の作成をアドバイスしております。このような状況にある方は、年齢に関係なく公正証書遺言を作成しておくことがいいと思います。人間いつ亡くなるか誰にもわかりませんからね。
5. まとめ
連れ子は再婚相手と養子縁組をしない限り、再婚相手の相続権を持ちません。しかし、養子縁組を行うことで、連れ子は法定相続人として認められ、実子と同等の相続権を持つことになります。このため、再婚家庭においては、将来的な相続問題を見据えた上で、養子縁組を検討することが重要です。
また、養子縁組後の相続においては、他の相続人との間で適切な調整を行う必要があります。これらの法律的な側面を十分に理解し、適切な手続きを行うことが、家庭内の円満な相続を実現するために不可欠です。
また、相続発生時のことも考慮して、早めに遺言書の作成をしておくことをお勧めしております。遺留分の問題もあるじゃないかと言われるかもしれませんが、遺留分は遺産の帰属先が決まったのちの話で、相手方が請求してくるものです。遺産の帰属先が遺産分割協議をするまで共有という状態ではありません。
近年、空き家物件に対する火災保険料が大幅に値上がりしています。この動向は、保険会社が空き家をリスクが高いと評価し、損害発生の可能性を考慮して保険料を見直しているためです。特に、火災や自然災害による損害のリスクが高まっている地域では、保険料の上昇が顕著です。これにより、多くの空き家所有者が保険の継続を迷う状況に立たされています。
では、火災保険を続けるべきか、それとも辞めるべきかを検討してみましょう。
目次
1.火災保険の必要性
2.保険料の負担
3.保険を辞めるリスク
4.保険の継続を検討する場合
5.保険を辞める場合の対応策
6.結論
1.火災保険の必要性
空き家でも火災保険が必要な理由は明確です。
まず、火災のリスクは空き家であっても存在します。空き家は、長期間の無人状態が続くため、火災が発生しても発見が遅れることが多く、その結果、被害が拡大しやすいです。
また、空き家が放火や不審火の標的になりやすいことも考慮すべきです。
さらに、隣接する物件に被害が及んだ場合、その賠償責任を負う可能性があるため、火災保険はリスク管理の重要な手段です。
2.保険料の負担
一方で、保険料の負担は無視できません。空き家物件に対する保険料が値上がりすると、所有者にとって経済的な負担が増すことになります。特に、物件が収益を生まない場合、その維持費や税金に加えて保険料の負担が重くのしかかります。そのため、経済的な観点から火災保険の継続を見直すことも一案です。
3.保険を辞めるリスク
しかし、火災保険を辞めることにはリスクが伴います。前述の通り、火災や自然災害が発生した場合、保険がなければ全ての損害を自己負担することになります。また、隣接物件への被害が発生した場合、その賠償も自己負担となり、大きな経済的打撃を受ける可能性があります。さらに、空き家を売却する際、火災保険がかけられていない物件は購入希望者にとってリスクが高いと判断され、売却が難しくなることも考えられます。
4.保険の継続を検討する場合
火災保険を継続する場合、保険料の節約方法を検討することが重要です。
例えば、保険会社によっては、一定の条件を満たすことで保険料の割引が適用されることがあります。防犯対策を強化し、定期的な点検を行うことで、リスクを軽減し、保険料の引き下げが可能な場合もあります。
また、保険の見直しを行い、補償内容を必要最低限に調整することも一つの方法です。
5.保険を辞める場合の対応策
もし火災保険を辞めることを検討する場合は、代替策を考えることが不可欠です。例えば、空き家を管理するための管理会社を利用し、定期的な点検や清掃を行うことで、火災リスクを軽減できます。
また、空き家を賃貸物件として活用し、収益を得ながら維持費を賄うことも一つの選択肢です。さらに、空き家の売却を検討する場合には、保険を辞める前に市場の動向をよく調査し、売却時期や価格を見極めることが重要です。
できれば、保険額を下げてでも、火災保険を継続したほうがいいかもしれません。
2.保険料の負担
一方で、保険料の負担は無視できません。空き家物件に対する保険料が値上がりすると、所有者にとって経済的な負担が増すことになります。特に、物件が収益を生まない場合、その維持費や税金に加えて保険料の負担が重くのしかかります。そのため、経済的な観点から火災保険の継続を見直すことも一案です。
3.保険を辞めるリスク
しかし、火災保険を辞めることにはリスクが伴います。前述の通り、火災や自然災害が発生した場合、保険がなければ全ての損害を自己負担することになります。また、隣接物件への被害が発生した場合、その賠償も自己負担となり、大きな経済的打撃を受ける可能性があります。さらに、空き家を売却する際、火災保険がかけられていない物件は購入希望者にとってリスクが高いと判断され、売却が難しくなることも考えられます。
4.保険の継続を検討する場合
火災保険を継続する場合、保険料の節約方法を検討することが重要です。
例えば、保険会社によっては、一定の条件を満たすことで保険料の割引が適用されることがあります。防犯対策を強化し、定期的な点検を行うことで、リスクを軽減し、保険料の引き下げが可能な場合もあります。
また、保険の見直しを行い、補償内容を必要最低限に調整することも一つの方法です。
5.保険を辞める場合の対応策
もし火災保険を辞めることを検討する場合は、代替策を考えることが不可欠です。例えば、空き家を管理するための管理会社を利用し、定期的な点検や清掃を行うことで、火災リスクを軽減できます。
また、空き家を賃貸物件として活用し、収益を得ながら維持費を賄うことも一つの選択肢です。さらに、空き家の売却を検討する場合には、保険を辞める前に市場の動向をよく調査し、売却時期や価格を見極めることが重要です。
できれば、保険額を下げてでも、火災保険を継続したほうがいいかもしれません。
6.結論
空き家物件の火災保険料の値上がりに直面した場合、その継続か解約かを慎重に検討する必要があります。経済的な負担とリスクを天秤にかけ、自身の状況に最も適した選択をすることが求められます。
保険の継続が最善と判断した場合は、保険料の節約策を講じ、逆に辞める場合は代替策をしっかりと計画することが重要です。
「所有不動産記録証明制度」は、不動産登記名義人の住所と氏名から、その名義人が所有している不動産を全国的に一括して調査し、所有不動産記録証明書というリストで証明する制度です。
被相続人(以下、亡くなった人)名義の不動産だけでなく、存命の名義人や法人名義の不動産も調査できます。つまり、不動産の全国規模の「名寄せ」が可能になるということです。
目次
1. 所有不動産記録証明制度の開始時期
2. 遺産である不動産の調査におけるメリット
3. おわりに
1. 所有不動産記録証明制度の開始時期
所有不動産記録証明制度は、2026年2月に正式に導入される予定です。この制度は、不動産登記名義人の住所と氏名から、その名義人が所有している不動産を全国的に一括して調査し、所有不動産記録証明書というリストで証明する制度です。
被相続人(以下、亡くなった人)名義の不動産だけでなく、存命の名義人や法人名義の不動産も調査できます。つまり、不動産の全国規模の「名寄せ」が可能になる問うことです。
2. 遺産である不動産の調査におけるメリット
所有不動産記録証明制度は、特に相続の際における不動産調査において、多くのメリットをもたらします。以下にその主要な利点をまとめます。
(a) 情報の一元管理とアクセスの容易化
現行制度では、不動産の所有権情報は各地の法務局で管理されていますが、所有不動産記録証明制度では、全国の不動産情報が一元的にデジタル管理されます。これにより、相続人や司法書士が必要な情報に迅速にアクセスできるようになります。例えば、相続発生後、相続人が所有している不動産を調査する際に、複数の法務局を訪れる必要がなくなり、一度の手続きで全国の不動産情報を確認することができます。
(b) 所有権の確認とトラブル防止
相続における不動産の所有権確認は、時に複雑で時間がかかる作業です。特に、相続人が多数存在する場合や、長期間にわたり相続手続きが行われていなかった場合、不動産の所有者が特定できないことが問題となります。しかし、所有不動産記録証明制度の導入により、所有者情報が一元管理されるため、相続不動産の所有者確認が迅速かつ正確に行えます。これにより、相続人間のトラブルや誤解を未然に防ぐことができます。そもそも、遺産の不動産が漏れてしまった場合、相続登記義務化に抵触する可能性が出てしまいます。
(c) 遺産分割協議の円滑化
相続人が遺産分割協議を行う際、不動産の評価額や所有状況を正確に把握することが重要です。所有不動産記録証明制度により、各不動産の最新の評価額や所有権の変遷が明確になるため、遺産分割協議がスムーズに進められるようになります。また、この制度は、第三者による不正な所有権移転を防止する効果もあり、相続人が安心して協議を進められる環境が整います。
(d) コストと時間の節約
所有不動産記録証明制度の導入により、相続に関連する調査や手続きに要するコストや時間が大幅に削減されることが期待されます。従来の手続きでは、不動産の所有者確認や評価額の算定に多大な労力と費用がかかっていましたが、この制度により、一元的に必要な情報が取得できるため、これらの負担が軽減されます。特に、相続税申告に際しては、正確な不動産評価額の算定が求められるため、この制度は相続人にとって大きな助けとなるでしょう。
※現状、固定資産税の請求通知書が来ている場合には、遺産の不動産を確認することができますが、固定資産税の課税対象とならない価値の低い不動産の場合、通知書には載ってこないために、役場が発行する「名寄帳」または「固定資産税評価証明書」を確認する必要がありました。しかし、これらの証明書も役場単位ですので、全国規模で確認する方法ができますので、相続登記の際に、漏れが無くなることが期待できます。
3. おわりに
所有不動産記録証明制度は、相続における不動産調査の効率化と正確性向上を図るための重要な制度です。
この制度の導入により、相続手続きの円滑化、トラブルの防止、コストの削減が期待されており、相続人や司法書士にとって非常に有益なツールとなるでしょう。
2026年の導入を前に、関係者は制度の詳細や運用方法について十分に理解し、備えておくことが重要です。
会社の経営者にとって、相続対策は重要な課題です。
特に、自社株式が相続の対象となる場合、その株式の評価額が相続税に大きな影響を与えることは避けられません。そのため、適切な相続対策を講じるためには、会社の資産価値を正確に把握することが必要です。
その一環として、決算時における一株当たりの価値を調べておくことが重要なステップとなります。
目次
1. 一株当たりの価値の重要性
2. 決算時における価値の把握
3. 生前対策のための準備
4. 税務リスクの軽減
5. 専門家の活用
1. 一株当たりの価値の重要性
会社の一株当たりの価値は、会社の純資産を株式総数で割ることで算出されます。この数値は、会社の財務状況や経営状態を反映したものであり、相続時において非常に重要な役割を果たします。
特に、中小企業の経営者にとって、自社株の評価は、相続税の計算基準となるため、適切なタイミングでこの価値を把握しておくことが求められます。が、その概要すらわかっていない状態で、いざ相続が発生した場合、相続税がいくらになるのかさっぱりわかりません。
そうならないように、決算時に顧問の税理士先生にお願いをして、会社の一株当たりの資産額を概算でもらっておくとよいでしょう。
2. 決算時における価値の把握
会社の一株当たりの価値は、決算時に最も正確に把握できます。決算時は、会社の収支や資産、負債が明確に整理され、会社の純資産が確定する時期です。
このタイミングで一株当たりの価値を計算することで、相続対策や事業承継の際に活用できる正確なデータが得られます。
また、決算書を基に評価を行うことで、税務当局に対しても透明性のある説明が可能になります。
3. 生前対策のための準備
会社の一株当たりの価値を把握しておくことで、生前に相続対策を講じる際の準備が整います。
例えば、株式の分散や生前贈与を検討する際には、株式の現在の価値を基に具体的な計画を立てることができます。
また、事業承継においては、後継者に対する株式の移転をスムーズに行うための基礎資料として役立ちます。
さらに、会社の将来価値を見据えた対策を講じることで、相続発生時における相続人の負担を軽減することが可能です。
4. 税務リスクの軽減
決算時に一株当たりの価値を把握し、それに基づいて相続対策を行うことで、税務リスクを軽減することができます。
相続税の評価額が不確定な状態で放置されると、相続時に予想外の高額な税負担が発生する可能性があります。
しかし、決算時の正確なデータを基に対策を講じておけば、相続税の負担を抑え、予測可能な範囲で税務対応を行うことができます。
また、これにより、税務調査などのリスクも軽減されます。
5. 専門家の活用
会社の一株当たりの価値を正確に把握し、適切な相続対策を講じるためには、専門家の協力が不可欠です。税理士や会計士、司法書士などの専門家に相談することで、会社の財務状況や法的リスクを総合的に評価し、最適な相続対策を策定することができます。
特に、自社株の評価は複雑なプロセスを伴うため、専門家のアドバイスを受けながら進めることが望ましいです。
会社の資産価値を正確に把握し、適切な相続対策を講じることは、経営者にとって重要な責務です。
決算時における一株当たりの価値の把握は、そのための基礎となるステップであり、将来の事業承継や相続税対策を成功させるために欠かせない要素です。
経営者の皆様には、この重要性を理解し、早めに準備を進めることを強くお勧めします。
遺言書作成は、財産や相続人に対する思いを形にする大切な手続きですが、その前に考慮すべき重要なステップがあります。これらのステップをしっかりと踏むことで、遺言書がより確実に、自分の意志を反映し、後々のトラブルを避けるためのものとなります。財産の把握と整理が必要です。自分が所有する財産を正確に把握し、それが現金、預金、不動産、有価証券、貴金属、家財、その他の財産にどのように分かれるかを整理することが重要です。また、負債がある場合にはその内容も把握し、遺言書に反映させるべきです。これにより、相続人が財産の内容を正確に理解でき、相続手続きがスムーズに進む基盤を築けます。
目次
1. 財産の把握と整理
2. 相続人の確認と整理
3. 遺言執行者の選定
4. 税務面での影響の確認
5. 専門家への相談
1. 財産の把握と整理
遺言書を作成する前に、まず自身の財産を把握し整理することが重要です。現金や預金、不動産、有価証券、貴金属、家財など、所有する財産がどのように分かれているのかを明確にしましょう。また、負債がある場合にはその内容も正確に把握し、相続時にどのように処理されるべきかを考慮する必要があります。これにより、相続人が財産の全体像を理解し、後々のトラブルを防ぐための基盤が整います。
ただし、自身の預金口座が日本国内で点在していたり、所有不動産も行政単位を超えて点在する場合など、把握することが困難なケースもありましたが、次第に手続きがしやすいような方向に進んでいるといえます。今までにできている財産調査等の仕組みと、今後できる財産調査等の仕組みについてまとめてみました。
①生命保険契約照会制度(既に稼働)
➁戸籍取得の広域制度(令和6年3月より稼働)
③預貯金口座検索(令和7年4月より開始予定)
④不動産の全国規模の名寄せ(令和8年2月より開始予定)
2. 相続人の確認と整理
次に、相続人を確認し整理することが必要です。法定相続人だけでなく、特定の人物に財産を譲りたい場合もあるかもしれません。家族構成や各相続人の事情を考慮し、誰にどのように財産を分配するかを明確にすることが重要です。この段階でしっかりと整理しておくことで、遺言書の内容が具体的かつ公平なものとなり、相続トラブルを避けることができます。
3. 遺言執行者の選定
遺言書に記載された内容を実行するためには、遺言執行者の選定が必要です。遺言執行者は、遺言の内容に従って手続きを進める責任を負う人物です。信頼できる家族や友人、もしくは専門家を選ぶことで、遺言書の内容が確実に実行されることを保証できます。
私の場合、財産を受け取る方を遺言執行者として指定するようにしております。遺言執行者は、亡くなった被相続人の本人の地位で法律行為を行うことになります。そして、自信でできない内容については、専門家に委任すべきと考えるためです。専門家を遺言執行者にしてしまいますと、本人の立場での手続きということになってしまいます。
4. 税務面での影響の確認
遺言書を作成する前に、税務面での影響を十分に考慮することも大切です。相続税や贈与税が課税される財産の種類や評価額を確認し、相続税対策を検討する必要があります。生前贈与や生命保険の活用、納税資金の確保など、税金に関連する計画を立てることで、相続人の負担を軽減することができます。この段階で適切な対策を講じておくことが、後のトラブル回避に繋がります。生前対策を十分に講じることも重要ですが、いざ相続が発生した場合、不動産を引き受けた相続人には、相続税を支払う際のキャッシュが不足する可能性もあります。こういったことも考慮しつつ、固定資産⇒流動資産について、税理士の先生を交えて対応するようにしております。
5. 専門家への相談
遺言書作成にあたり、司法書士や弁護士、税理士などの専門家への相談を検討することが重要です。法律的な観点や税務上のリスクを正確に理解し、適切なアドバイスを受けることで、遺言書が法的に有効であることを確認できます。特に、財産が多岐にわたる場合や家族関係が複雑な場合には、専門家の意見を取り入れることが推奨されます。税理士と司法書士が同じ相談会に参加する相続法律・税務無料相談会を月一で実施しております。
これらのステップを踏むことで、遺言書が自身の意志を確実に反映し、円満な相続を実現するためのものとなります。最後に重要なことは、残される相続人とのコミュニケーションです。「みんな仲がいい」と思っていても、それはあなたという存在があるからかもしれません。あなたという存在が亡くなった場合に、「みんな仲がいい」状態になるとは限りませんからね。
相談業務を行っている際、未だに「相続放棄」と「財産放棄」という言葉を混同して使われている方がいらっしゃいます。
相続放棄の手続きは、家庭裁判所に申述をして受理の可否を行います。
当然、相続登記にこの時に家庭裁判所から発行される「証明書」の添付を要求されます。
それでは、相続放棄者がいる場合の相続登記について、解説していきたいと思います。
目次
1.相続放棄者がいる場合の添付書類
2.限定承認を特定の相続人が行い、他の相続人が相続放棄をしている場合
3.相続放棄と持分放棄について
1.相続放棄者がいる場合の添付書類
家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書を相続証明情報の一部として添付します。
「相続放棄申述受理証明書」以外の書類を添付することの可否について以下に指名します。
①相続放棄者、その他の相続人が作成した相続放棄証明書は、相続証明情報とはなりえない。
※相続放棄は家庭裁判所に対する要式行為だからである。
➁相続放棄順術受理通知書を相続証明情報とすることはできない。(登研720号)※後に変更
③相続を原因とする所有権の移転登記の申請において、相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載された「相続放棄等の申述有無についての紹介に対する家庭裁判所からの回答書」や「相続放棄申述受理通知書」を登記原因を証する情報の私費部とすることができる。(登研808号)
※これにより、登研720号の取り扱いは変更になっています。
2.限定承認を特定の相続人が行い、他の相続人が相続放棄をしている場合
「相続が開始した場合,相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。
①相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認
➁相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄
③被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認」
このうち、限定承認の申述は、相続人全員で行う必要があります。
共同相続人のうち特定の相続人が限定承認を行い、他の共同相続人は相続の放棄を行った場合において、その相続登記の申請の添付情報として、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本及び限定承認をした旨を証する家庭裁判所の限定承認受理証明書のほかに、相続人を確定するために筆応となる戸籍謄本又は除籍謄本及び相続放棄をした者に係る相続放棄を証する家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書の提供が必要となる。(登研699号)
家庭裁判所は限定承認の申述がされたときは、相続人を確定するために必要な戸籍謄本又は除籍謄本及び相続放棄申述受理証明書の提出を受け、これにより相続人となるべき者を確定し、相続人全員による限定承認の申述であることを確認したうえで、受理の審判を行うことになるが、後日相続放棄の取り消し等により、限定承認の効力が覆されていることもあり得ることから、登記官が登記の申請時において、改めて限定承認が相続人全員によりなされたものであることを確認する必要があるために、再提出させ判断をしている。
3.相続放棄と持分放棄について
共同相続人甲乙丙のうち、乙丙の「自分たちは遺産分割協議によって金銭の分配を受けたので、相続財産である不動産に関する持ち分は放棄する。」旨の持分放棄証明書を添付してされた、こう単独名義の相続登記申請は受理されない。(昭28.4.25民甲697号)
※持分放棄もしくは財産放棄という呼称で、相談の中でも話される方がいらっしゃいますが、相続そのものを放棄する場合は「家庭裁判所の手続きによる相続放棄」をすべきですし、特定財産をもらった代わりに不動産の持分を放棄するのであれば「相続人全員による遺産分割協議書」によるべきです。
相続手続きにおける「相続人の確定」は、相続財産の分配や手続きを進める上で最も重要なプロセスの一つです。このプロセスでは、通常、相続人の身分を証明するために戸籍謄本や除籍謄本が提出されます。しかし、戦災や自然災害などの理由でこれらの書類が提出できない場合、どのように相続人を確定させるかが問題となります。この点に関する取り扱いについて、昭和44年3月3日付けの民甲373号通達と平成28年3月11日付けの民二219号通達での変更点を踏まえ、以下に整理します。
目次
1. (昭44.3.3民甲373号)の取り扱い
2. 平成28年3月11日付け(平28.3.11民二219号)での変更点
3. まとめ
1. (昭44.3.3民甲373号)の取り扱い
昭和44年の民甲373号通達では、戸籍や除籍が提出できない場合の相続手続きに関する取り扱いが定められていました。この通達は、主に以下のような状況に対応するために発出されました。
まず、戦災や災害によって戸籍が焼失した場合や、長期間にわたり戸籍が適切に保管されていなかった結果、必要な戸籍や除籍を提出できない場合がありました。このような状況下では、相続人の確定が難しくなるため、民甲373号通達では、相続人全員による「他に相続人はいないことの証明書」の提出が要求されていました。
2. 平成28年3月11日付け(平28.3.11民二219号)での変更点
平成28年の民二219号通達では、昭和44年の取り扱いを見直し、相続人の確定に関する取り扱いが緩和されました。主な変更点は以下の通りです。
まず、戸籍や除籍が提出できない場合、相続人の確定に関する調査を行い、すでに滅失している戸籍等については、行政が発行する「滅失証明書」に添付を従来通り求めることは引き続き必要です。
また、特に戦災や災害により戸籍が消失している場合でも、可能な限りの資料を収集し、それらを基に相続人を確定することが求められるようになりました。このように、平成28年の通達では、相続人全員による証明書の提供が不要となりました。これは、昭和44年の回答からすでに50年が経過しており、相続人全員の同意を得ることが困難な事案が増加していることを鑑み、相続人全員の同意書及び印鑑証明書の添付がなくても、除籍等の滅失証明書等の行政機関の証明書があれば、相続登記は受理されるとされました。
3. まとめ
①昭和44年3月3日付け(昭44.3.3民甲373号)の取り扱い
昭和44年の民甲373号通達では、戦災や災害によって戸籍や除籍が焼失し、これらを提出できない場合に対応するための取り扱いが定められていました。この通達では、相続人の確定が難しい場合、相続人全員による「他に相続人はいないことの証明書」の提出が求められ、相続手続きを進めるための証拠とされていました。
➁平成28年3月11日付け(平28.3.11民二219号)での変更点
平成28年の民二219号通達では、昭和44年の取り扱いが見直され、相続人の確定に関する手続きが緩和されました。具体的には、相続人全員による証明書の提供が不要となり、行政機関が発行する「滅失証明書」などの証明書があれば、相続登記が受理されるようになりました。この変更は、相続人全員の同意を得ることが困難な事案が増加したことを考慮したもので、滅失した戸籍に代わる証明手段が整備されたことにより、相続手続きがより円滑に進められるようになりました。
生存配偶者が姻族関係終了の意思表示を行うと、亡くなった配偶者の親族(姻族)との法律上の関係を解消できます。
これにより、扶養義務などに関する権利が消滅し、心理的・社会的負担も軽減されます。
手続きは市町村役場に「姻族関係終了届」を提出することで行い、慎重な判断が求められます。
目次
1. 姻族関係とは
2. 姻族関係終了の意思表示の意義
3. 効果の概要
4. 手続きの流れと注意点
5. 結論
1. 姻族関係とは
姻族関係とは、結婚によって配偶者を通じて形成される親族関係を指します。具体的には、夫や妻の親や兄弟姉妹、そしてその配偶者などが姻族に該当します。姻族は、日本の民法上、配偶者とともに家族として扱われる存在であり、法律上の権利や義務が発生することがあります。例えば、扶養義務や相続に関する権利などが姻族に関する法律的な関係です。
しかし、姻族関係は血縁による親族関係とは異なり、結婚や死亡などの状況に応じて変化するものです。特に配偶者が死亡した場合、生存配偶者は姻族関係を維持するか、終了させるかを選択することができます。これを可能にするのが、民法第728条第2項に定められた「姻族関係終了の意思表示」です。
2. 姻族関係終了の意思表示の意義
姻族関係終了の意思表示は、配偶者が死亡した後に残された生存配偶者が、配偶者の親族(姻族)との法律上の関係を終了させるための手続きです。この意思表示により、生存配偶者は法律的に姻族との関係を解消し、その後は法的な親族関係として扱われなくなります。
3. 効果の概要
姻族関係終了の意思表示を行うことにより、生存配偶者は以下の効果を得ることができます。
①法律上の親族関係の終了
姻族関係が終了すると、姻族とは法律上の親族関係が消滅します。これにより、姻族に対する扶養義務や相続に関する権利が消滅し、法律的な負担や義務が軽減されます。特に、配偶者の親や兄弟姉妹に対する扶養義務が解消されることは、生存配偶者にとって重要な効果です。
➁相続関係の明確化
姻族関係が終了することで、相続における権利関係が明確になります。姻族との関係が続く場合、複雑な相続問題が生じる可能性がありますが、関係を終了させることで、生存配偶者が自らの財産を守りやすくなります。これにより、将来的な相続争いを防ぐ効果も期待できます。
※ただし、子供がすでにいる場合ですと、その子供が相続人となるケースが存在します。
③感情的・心理的な安定
配偶者の死後、姻族との関係が負担となることがあります。特に、義父母や義兄弟姉妹との関係が緊張している場合、関係の継続は生存配偶者にとって大きな精神的ストレスとなり得ます。姻族関係を終了させることで、これらの感情的負担を軽減し、新たな生活を始めやすくなります。
④社会的な義務の軽減
姻族関係が続く場合、法事や冠婚葬祭などの社会的義務が生存配偶者に課されることがあります。これらの義務が生存配偶者にとって負担となる場合、姻族関係の終了により、これらの義務から解放されることが可能です。これにより、社会的なストレスや負担を軽減することができます。
4. 手続きの流れと注意点
姻族関係終了の意思表示は、市町村役場に「姻族関係終了届」を提出することで行います。この手続きにより、戸籍に記載され、法的な効力が発生します。意思表示は配偶者の死亡後、随時行うことができ、特に相続や扶養義務の整理を考慮したうえで、速やかに手続きを進めることが望ましいです。
ただし、姻族関係終了の意思表示を行った場合、その後、再び姻族と法律上の関係を結ぶことはできません。また、この意思表示が義父母や他の姻族に与える感情的な影響も無視できません。慎重な判断とともに、家族間の感情や関係性を考慮することが重要です。
5. 結論
生存配偶者が姻族関係終了の意思表示を行うことで、法律的な義務や権利から解放され、相続関係の整理や感情的な負担を軽減することができます。この手続きは、生存配偶者が配偶者の死後、新たな人生を歩むための一助となりますが、その影響と慎重な判断が求められます。法律的な効果に加え、家族や姻族との感情的な側面も含めて総合的に判断することが大切です。
相続の際、相続放棄の話の中で、「もう相続放棄の手続きをしたのだから、今回の相続放棄も大丈夫ですよね。」とおっしゃられる方がいますが、実は、相続放棄は各被相続人毎にしなければなりません。
また、未成年者を相続放棄をする場合には、親権者が法定代理人として相続放棄手続きをすることになりますが、「利益相反行為」を考慮に入れる必要性がります。
その他注意点について述べたいと思います。
目次
1.代襲相続した相続人の一人が死亡した場合
2.未認知の非嫡出子が父親の養子になっていた場合
3.親権者が親権に復する子を代理して相続放棄手続きをする場合
1.代襲相続した相続人の一人が死亡した場合
祖父甲が亡くなる前に、父親である乙がすでに亡くなっていたため、乙の子供A、B、Cについて、甲の相続につき代襲相続が発生しています。甲には多額の借金があったためにB、Cは相続放棄手続きを行ったが、Aは相続発生時入院しており手続きができなかった。その後、B、Cの相続放棄手続受理されたのち、Aが死亡した。Aは生涯独身であった。
このケースの場合、B、Cの甲に対する相続放棄の効力が、Aの相続についても及ぶのかどうかという点です。
結論は、BCは甲の死亡で開始した相続権を放棄しても、Aの相続で開始した相続権を放棄したことにはならない。(登研384号)
甲の相続権は、BCは相続放棄しているのでAが承継することになります。そして、Aが死亡したことで、相続の第3順位の兄弟姉妹に相続権が移ることになりますが、甲の相続権+Aの相続権の状態になっていますが、甲の相続権はAが引き受けている状態ですので、当然、Aの債権債務すべてを承継することになると考えられます。そのため、BCはAの相続について放棄する手続きを期間内に実施する必要があります。
※今回の事例では、BCが相続放棄をすることで新たに相続人が発生することはありませんが、新たに相続人になる方が出てくる場合には、一連の流れを一報入れて頂くようにお願いをしております。不意打ちでは、その次の手続きの際に協力していただけなる可能性が出てきますからね。
2.未認知の非嫡出子が父親の養子になっていた場合
未認知の非嫡出子が父親の養子になっていたが、養子として相続放棄手続きをしました。その後、死後認知の裁判が確定した場合、非嫡出子としての相続権も取得しない。(昭48.8.5第2688号)養子という法律上子供としての地位を有していたのに相続を放棄しているため、その後、裁判で死後認知が確定しても、相続権は復活しないというものです。
3.親権者が親権に復する子を代理して相続放棄手続きをする場合
この場合、親権者である親が同一の相続において相続権を持っているかどうかで見ていきます。相続権を持つ場合には、「利益相反行為」となりますので、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。
同一の相続で相続権を持たない場合には、利益相反行為とはなりません。また、同一の相続で相続権を有する場合でも、利益相反とはならないケースが存在します。
それが「親権者がその親権に復する子を代理して相続放棄をする場合でも、親権者がすでに相続放棄をしているか、又は子と同時に相続放棄をするときは、子を代理してした相続放棄は利益相反行為には該当しません。(最判昭53.2.24)
4.その他、関連事項
①生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をして、市町村長に届出をしても、その者の相続権は奪われない。(登研406号)
➁胎児は相続放棄できない。(昭36.2.20法曹会議決議)
③相続放棄を証する情報から、受理新お案の日の前日に申述人の一人が死亡していることが認められる場合でも、当該相続登記は受理される。(昭47.5.2第1776号)
※相続放棄申述の時点で生存していれば、その申述は有効だから。
ここでは、一般的な法定相続人の確定ではなく、レアケースとはなりますが、血族相続人の地位を有している養子、配偶者相続人の地位を有している養子のケースや、二重の相続資格者の相続放棄についての先例について解説をいたします。ポイントは、二重の地位について、法定相続分を双方もらえるのか、片方だけなのかという点と、二重の地位の片方だけ相続放棄ができるのかどうかという点になってくると思います。
目次
1.血族相続人の資格を有している場合の相続分
2.配偶者相続人の資格と結相続人の資格を有する場合の相続分
3.二重の相続資格者の相続放棄(事例1)
4.二重の相続資格者の相続放棄(事例2)
5.まとめ
1.血族相続人の資格を有している場合の相続分
前提として父親 甲、母親 乙の子供 長男B、次男丙と丙の子A(甲からすると孫)がいます。甲の生前にAを甲の養子としていました。
自己の孫であるAを養子としている行が死亡した場合、Aは、甲の養子として、また丙を代襲して2つの身分で相続分を取得することになる。(昭26.9.18民甲1881号)
ここでのポイントは、代襲の孫としての地位と、養子としての地位、双方で相続分を取得できる点です。
2.配偶者相続人の資格と結相続人の資格を有する場合の相続分
下図において、Aは配偶者としての相続分のみを取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得できない。(昭23.8.9民甲2371号)
前回の孫と養子の関係と異なり、配偶者と養子(兄弟姉妹)では、配偶者の地位しか主張できないということです。
3.二重の相続資格者の相続放棄(事例1)
下図において、Bが養子として相続放棄をした時、Bが兄弟姉妹の立場で相続することができるかが問題となります。この場合には、兄弟姉妹としての相続権についても放棄の効果が及びます。(昭32.1.10民甲61号)
※相続放棄は単純明快である必要があり、血族相続人としての相続権の一部に対する放棄は認められないとして画一的処理を図る必要があるためであるとされています。
4.二重の相続資格者の相続放棄(事例2)
配偶者と妹としての祖王族人の資格を併有する者(配偶者とともに養子となる養子縁組をしているケース)から相続による所有権移転の登記が申請され、相続を証する情報として、戸(徐)関の謄本及び相続放棄申述受理証明書のほか、「配偶者として相続の放棄異をしたことを確認することができる相続放棄申述書の謄本及び妹としては総ぞ億の放棄をしていない旨記載された印鑑証明書付きの上申書が提供された場合」、配偶者としての相続の放棄の効果は、妹としての相続人の資格には及ばないものとして取り扱い、本件の申請を受理して差し支えない。(平27.9.2民二363号)
事例1では、「相続放棄は単純明快であるべき」としている一方で、相続放棄について相続人の地位を分けて考えているようにも見えます。一見、全く反しているように考えることもできますが、もう一方の相続人としての地位について、要件付きで受理しても差し支えないという取り扱いとなっています。
5.まとめ
このように、相続人としての複数の地位を有する方たちの権利について、認められる範囲や、相続放棄などの意思表示をした際に、どこの範囲までの放棄をしたのかという点が非常に重要となってくることが解ると思います。
ご自身のケースはどうなのかについては、今回のケースが当てはまらない場合には、専門家の相談を受けることをお勧めいたします。
相続において最も重要なステップの一つが、「相続人の確定」と「相続財産の確定」です。
これらの手続きを適切に行うことで、後のトラブルを避け、スムーズな相続手続きを進めることが可能となります。
専門家に相談する際に、専門家の立場からお話をすると、この2点が確定していない状態では、相続手続きを進めることはできません。
無料相談で、時間を有効活用することができるようになります。
目次
1. 相続人の確定
2. 相続財産の確定
結論
1. 相続人の確定
a. 相続人とは?
相続人とは、被相続人が亡くなった際に、その遺産を受け継ぐ権利を有する者を指します。相続人の範囲は民法で定められており、基本的には配偶者と血縁関係にある親族が該当します。具体的には、配偶者は常に相続人となり、これに加えて以下の順位で血縁者が相続人となります。
第一順位: 子(嫡出子、非嫡出子、養子を含む)
第二順位: 直系尊属(主に父母)
第三順位: 兄弟姉妹
相続人の確定は、これらの順位を確認することで行います。なお、第一順位に該当する相続人がいない場合にのみ、第二順位が相続人となり、さらに第二順位の相続人もいない場合に第三順位が相続人となります。
b. 相続人の特定
相続人の特定作業には、戸籍謄本の取得が必要です。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、全ての相続人を確認することが求められます。これにより、相続人の数やその相続割合を確定させます。
また、注意すべき点として、相続人が養子である場合や、認知された子がいる場合は、追加の戸籍調査が必要になることがあります。さらに、被相続人が複数回結婚している場合は、前妻・前夫との間に生まれた子も相続人となるため、これらの状況も慎重に確認する必要があります。
c. 相続放棄と限定承認
相続人の中には、相続を放棄する場合や限定承認を行う場合があります。相続放棄とは、全ての遺産を受け取らない意思を表明することで、家庭裁判所に申立てを行います。限定承認は、相続財産が負債を上回る場合に、その超過部分のみを承認する手続きです。これらの手続きを行うことで、相続人が負うリスクを軽減することができます。
2. 相続財産の確定
a. 相続財産とは?
相続財産とは、被相続人が死亡時点で所有していた全ての財産を指します。これには、現金や預貯金、不動産、有価証券、車両などのプラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金、ローンなどのマイナスの財産も含まれます。
b. 財産の調査方法
相続財産を確定するためには、まず被相続人の財産の全体像を把握することが必要です。これには、銀行口座の取引履歴、不動産登記簿、保険証券、借入契約書などの書類を収集し、財産をリストアップします。また、被相続人が複数の銀行に口座を持っていた場合や、未公開の株式を所有していた場合など、財産の全容を確認するためには専門的な知識が必要となることもあります。
さらに、被相続人が賃貸不動産を所有していた場合、賃貸借契約書を確認し、将来的な収益やリスクを考慮に入れる必要があります。この段階で、財産がどのように分配されるべきか、遺言が存在するかどうかも確認することが重要です。
c. 財産の評価と分割
相続財産の評価は、現実的な市場価値に基づいて行う必要があります。不動産の評価には不動産鑑定士、株式や有価証券の評価には証券会社の専門家が関与することが一般的です。財産の評価が終わったら、相続人間で公平に分配する方法を検討します。遺産分割協議が必要な場合は、相続人全員が同意することが求められます。
d. 注意点と専門家の役割
相続財産の確定は、法律や税務の知識が必要とされる複雑な作業です。特に相続税の申告期限は、被相続人が死亡してから10ヶ月以内であるため、早期の対応が求められます。相続財産の確定が難航する場合や、相続人間での争いが生じた場合は、司法書士や税理士、弁護士などの専門家に相談することが望ましいです。
※不動産だけに限って言えば、その年度の「固定資産税評価証明書」を取得することで、役場単位での不動産を特定することができます。令和6年4月1日より「相続登記義務化」が始まっています。毎年、固定資産材納税通知書の内容のみを相談時に持参される方がいらっしゃいますが、不動産に漏れがあった場合、再度相続登記をしなければならなくなってしまいます。相談時には、その年度の「固定資産税評価証明書」を取得するようにしてください。
結論
「相続人の確定」と「相続財産の確定」は、相続手続きを円滑に進めるための基盤となる重要なプロセスです。これらのステップを確実に行うことで、相続に関するリスクやトラブルを最小限に抑え、相続人全員が納得できる形で遺産を受け継ぐことが可能になります。専門家の助けを借りながら、慎重に進めていくことが肝要です。
遺言書に全財産の半分を相続人Aに相続させ、残りの半分をXに贈与(遺贈)するとの記載がある場合、特に不動産の登記をする場合、各ケースごとに、どのような手続きになるのかについて解説をしたいと思います。
また、これらを踏まえて、専門家に相談することに優位性についてもお話をしたいと思います。
目次
1.遺贈の登記と相続登記、どちらが先に手続きをするのか?
2.相続登記後に被相続人が土地の一部を売却する契約をしていた場合
3.もうお気づきになっているとは思いますが・・・・
1.遺贈の登記と相続登記、どちらが先に手続きをするのか?
「全財産の2分の1は相続人Aに相続させ、残りの2分の1はXに贈与する」旨の遺言書があった場合、「遺贈」で一部移転登記を申請した後、持分全部移転の相続登記を申請する(登研523号)。
つまり、遺贈による登記を相続登記に先んじてしなければならないという点です。相続登記と遺贈の登記は、根本的に異なる点が、「共同申請」か「単独申請」かという点です。相続登記は、単独申請であるため亡くなった名義人の住所に変更があったとしても、それを証明する資料を添付すれば、同一人認定していただけますが、遺贈の場合、「住所変更の手続」を要します。詳しいことは、専門家にご相談ください。
※遺贈の単独申請について(要件を確認してください)
法律改正により、令和5年4月1日からは、遺贈により不動産を取得した相続人(受遺者=登記権利者)は、その所有権の移転の登記を単独で申請することができるようになります。 なお、令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた相続人(受遺者)についても同様に、令和5年4月1日からは、単独で所有権の移転の登記を申請することができるようになります。
2.相続登記後に被相続人が土地の一部を売却する契約をしていた場合
仮に、A名義の甲土地をA死亡により、その子B及びCに2分の1づつ相続登記をした後に、実はAが生前にDに持分2分の1を売却していたという事実が判明したというもの。
本来の事実関係からすると、A死亡時にその持分の2分の1はDのものだったということになります。これを実現しようとすると、すでに申請している相続登記は、事実とは異なる内容ということになり、抹消登記をすべきということになります。
しかし、この場合、「B持分4分の1、C持分4分の1移転」という、すでになされている相続登記を活かし、相続人から等しい割合による持分2分の1の移転登記で、実態に合わせることが可能です。
3.もうお気づきになっているとは思いますが・・・・
実は、不動産登記法という法律について、長年、司法書士と法務局の登記官との間で意見交換を実施して、法律に則り、実務に即した形での運用を念頭に様々な「先例」等が存在いたします。
登記簿の全部事項証明書に記載されている内容については、実態を表現するように申請書類を準備し、実態に合った形での登記実行がなされています。
受験生時代に、民法で法令上に則った形で実現する登記と、不動産登記法を学習した際に出てくる、「いわゆる便宜上の登記」というものを区別し、関連付けながら進めていったことを思い出します。多くの方は、この部分でつまずいているのではないでしょうか。
また、相続登記で、ご近所の方と自分のものが微妙に異なるなんてのも、これらが関連している可能性もあります。
そうなんです。相続登記とひとくくりにお話をしておりますが、実はお一人お一人、その対処すべき内容というのが変わってくることが多いです。ですので、専門家への相談ということが、非常に大事になってくると考えております。
相続について、今一度確認しておきます。
民法896条「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」とあります
。遺産に含まれる不動産について、各ケースについて考え、相続登記の要否・可否について解説したいと思います。
目次
1.農地の売主に相続発生
2.農地法の許可を停止条件とする仮登記がある場合
3.仮登記が存在する場合で、すでに相続登記がある場合
4.それでは、農地法許可申請前に売主が死亡した場合
5.農地法の許可到達前に買主が亡くなった場合
1.農地の売主に相続発生
「農地の売主が死亡した後、農地法3条の許可があった場合には、その農地の相続登記を経た後でなければ、買主への所有権移転の登記をすることはできない。」(昭40.3.30民三309号)
①売買契約(売主甲、買主乙)
➁甲死亡(甲の子丙へ相続登記)
③乙に対する農地法3条許可発行(売買を原因とする丙から乙への所有権移転登記)
このケースでは、①から③の順序で登記をしなければなりません。なぜなら、農地法の許可が所有権移転の対抗要件である以上、その許可前に相続が発生すると、丙が当該農地をいったん取得することになるためです。しかし、丙は甲の所有権移転義務・登記移転義務を承継していますので、その後、丙から乙への所有権移転登記を行うことになります。
2.農地法の許可を停止条件とする仮登記がある場合
前の事例では、許可待ちの状態でしたが、今回の事例では、農地法の許可を条件に仮登記を実施している点が異なります。「仮登記」というキーワードが出てきましたので、説明いたします。
(仮登記)「不動産登記における所有権移転の仮登記とは、所有権の移転が未確定の段階で、将来的に所有権が移転する可能性があることを第三者に対して公示するための登記手続きです。通常、仮登記は本登記が行われるまでの一時的な措置として利用されます。たとえば、不動産売買契約が締結されたが、売買代金の全額がまだ支払われていない場合や、登記原因証明情報が未完備である場合などに、所有権移転の仮登記が行われます。仮登記をしておくことで、後日正式な登記がなされた際に、仮登記の順位に基づいて効力が発生するため、登記権利者の権利保全に役立ちます。ただし、仮登記には本登記に比べて制約があり、第三者への対抗力が限定されるため、最終的には本登記を行うことが重要です。」
それでは、今回のように農地法の知事の許可を停止条件とする仮登記がすでに登記されている場合、許可が発行され仮登記に基づく本登記をする場合、許可前に所有権登記名義人が死亡している時でも、「本登記を前提として、相続登記をすることを要しない。(昭35.5.10民三328号)
この先例は、本来は、相続登記をしてから本登記をすべきですが、その場合せっかく実施した相続登記はすぐに抹消されることになるため、便宜、相続登記の省略を認めたものです。
3.仮登記が存在する場合で、すでに相続登記がある場合
順位1番で甲が名義人となっており、順位2番で甲から乙への所有権移転仮登記の後、順位3番で甲の子丙への相続登記がある場合を考えます。
農地法の許可が到達した時点で、丙と乙が順位2番の仮登記に基づく本登記をすることになります。この本登記がなされた場合、順位3番の相続登記は、職権(登記官の権限により)で抹消されることになります。(登研576号)
4.それでは、農地法許可申請前に売主が死亡した場合
農地法の許可申請前に売主が亡くなった場合ですので、許可を申請する当事者の一方がすでにいないわけです。ですので、相続登記を行い、この相続人と買主とで、農地法の許可を申請し、手続きを進めていくことになります。
5.農地法の許可到達前に買主が亡くなった場合
この場合、すでに亡くなっている買主への許可は無効であり、買主の相続人が当該許可を証する情報を提供して所有権移転登記を申請しても受理されません。(昭51.8.3民三第4443号)。なぜなら、亡くなった買主について農業適格者としての許可証が、農地法の許可に当たり、亡くなった買主の相続人が農業適格者の判断は、当該許可証では行われていないために、無効という扱いとなります。この場合は、改めて売主と買主の相続人とで許可申請をやり直す必要があります。
結論から言いますと、書類がすべてそろっているようであれば、権利証の提供は不要となります。しかし、提出すべき書類の中には、相続が発生するタイミングによっては、入手できないものも存在します。今回は、通常の取引(売買)では、権利証が必要となるのに、相続では不要になるのか、またどのようなときに必要となるのかについてお話をしたいと思います。
目次
1.不動産の登記の概略
2.不動産の相続登記に必要な書類について
3.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限
4.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限経過している場合の対応
5.まとめ
1.不動産の登記の概略
売買の場合、売主(現所有者)と買主がいます。この2当事者間で、売る意思表示と、買う意思表示が合致すれば、売買は成立します。それでは、相続登記を見てみましょう。被相続人(亡くなった方で現所有者)と、相続人(遺産分割協議により特定の相続人とする)と、こちらも2当事者がいるように思えるかもしれませんが、1方当事者である被相続人は亡くなっており、意思表示をすることはできません。つまり、相続とは、被相続人の身の上に発生した時、相続人全員に対して平等にその権利と義務が承継されることを指します。意思表示は関係ありません。そのため、被相続人が多額の借金を残して亡くなり、めぼしい財産もない場合には、「相続放棄」という手続きにより、すべてを承継する相続人ではなかったことにしてもらうことができます。
2.不動産の相続登記に必要な書類について
相続登記に必要な添付書類について、「亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍」「相続人全員の戸籍」「不動産を取得する者の住民票の写し」「遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書(相続登記の場合、期間制限はなし)」などに加え、登記簿上の被相続人の本人特定のために、「住民票の除票」又は「戸籍の附票(名義人の住所の履歴が記載されたもの)」が必要となります。不動産を異なるタイミングで取得しているような場合ですと、A不動産では、A市住所、B不動産の名義人の住所が、B市住所ということもあり得ます。そして、登記官及び登記のシステムは、同一人の判定を「氏名」と「住所」で行っているため、住所がつながらなければ、同一人とは見ていただけないということになります。
3.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限
今までは住民票の除票も戸籍の附票も保管期間が5年間だったため、抹消されて取得することができませんでした。そのため、5年以上前に死亡した被相続人の相続登記を申請するためには、住民票の除票と異なる書類を用意しなければならず、相続登記の現場では難儀したものです。しかし、法改正によって150年間は保管してくれることになりましたので、その問題は解決することができます。
しかし、保管期間が150年に改正されたのは、令和元年6月20日以降の住民票の除票や戸籍の附票ですから、令和になる前の平成以前の住民票の除票や戸籍の附票が取得できないことに違いありません。
4.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限経過している場合の対応
保存期限が超過している住民票の除票や戸籍の附票は取得することはできませんので、「調査はやりましたが見つからなかった証拠」として、「廃棄証明書」を発行してもらうようにします。
ここで初めて、登記名義人の特定をするために次の手が打てるわけです。公の資料での同一人の証明は困難となりました。そこで使うのが「権利証」です。
しかし、権利証も紛失しているケースは十分考えられます。
そこで、権利証までない場合には、戸籍の本籍地として記載されている住所表記が、登記簿の住所と同じであれば、同一人の判断をしていただけます。
これもだめだった場合、相続人全員の同意に基づく「上申書」を提出することになります。
5.まとめ
不動産登記における売買は、売主と買主の意思表示により成立し、その後登記されます。一方、相続登記では、被相続人の意思表示は関係なく、死亡と同時に相続人へ権利と義務が承継されます。相続登記には「戸籍」「住民票の写し」などが必要で、住所がつながらないと同一人物と認められません。以前は住民票の除票や戸籍の附票の保管期限が5年でしたが、法改正により150年に延長されました。ただし、平成以前の書類は対象外で、取得できない場合は「廃棄証明書」を発行し、他の証明手段(権利証の添付)を検討します。
既に設定された共同根抵当権について、変更登記のご依頼がありました。
概略は、債権の範囲の変更と、債務者に法人を追加する変更という内容でした。
変更の内容は、2つでありますが、一つの変更申請書で登記をすることができるのでしょうか。
少し解説したいと思います。
目次
1.共同根抵当権で、2つの項目を変更する場合
2.司法書士作成の報告形式の登記原因証明情報をする場合
3.今回のケースについて(契約書が2通)
4.一申請情報申請の要件
5.まとめ
1.共同根抵当権で、2つの項目を変更する場合
通常ですと、金融機関から司法書士に共同根抵当権の変更登記申請の依頼と併せて、「根抵当権変更契約書(債権の範囲の変更及び債務者の追加変更)」を作成してもらえないかということで話があります。ですので、登記原因証明書として提出する契約書の内容は、登記の申請内容に則したものとなります。登記原因証明情報は1通ですので、形式上も問題なく1つの申請で申請することが可能です。また、契約書に不動産の表示も含まれますので、物件印字も契約書作成の段階で記載することができます。
2.司法書士作成の報告形式の登記原因証明情報をする場合
今回のように変更登記申請の内容を取りまとめ、権利者・義務者の記名押印及び不動産の表示等の法令上の要件を充たした内容となっていることが必要です。この「報告形式の登記原因証明情報」は、登記申請としては有効です。しかし、「原本還付されない」という難点があります。報告形式の登記原因証明情報は、法務局に差し入れてしまうことになりますので、当然、金融機関と設定者間の契約書は必要となります。それだったら初めから、一つの契約書に取りまとめておいた方がいいということで、私の経験上では、ほとんど取り扱ったことはありません。
3.今回のケースについて(契約書が2通)
今回のケースについては、「根抵当権変更の契約書様式があるので、契約書記載後お渡しをして、その後物件印字等をすることになりました。変更登記申請後に、融資の実行が控えており、この点も考慮しなければなりません。
実行日の前日に書類を預かりに行きました。「登記原因証明情報」としての「共同根抵当権変更契約書」が、債務者のものと、債権の範囲の変更のものと2通ありました。変更の契約日は双方合わせていました。
ここで改めて「一申請情報申請」の要件について確認しました。
4.一申請情報申請の要件
「同一登記管轄区域の数個の不動産につき同一の申請情報で登記申請することが認められるもの」とあります。わかりやすく見ていきますと
①管轄登記所が同一であること ※あります
➁登記の目的が同一であること ※共同根抵当権の変更です
③登記原因及びその日付が同一であること ※年月日変更です(先例では共同根抵当権の場合、日付が異なっていてもできるとの先例があります)
④申請人が同一であること
※所有者が土地と建物で異なっている(抵当権の抹消登記の場合では、先例がある)
いくつか不安要素はあるものの、先例などを短時間で調べ上げて、申請書を提出しました。勿論、登記原因証明情報は、2通の契約書で「原本還付手続」をしました。
5.まとめ
登記手続きが完了する前に、登記官の方から連絡がありました。「先生もご存知の通り・・・・・」という内容でしたが、通常は「契約書」は司法書士で作成していたが、今回は金融機関所定の要式での対応となったことと、共同根抵当権の場合、原因日付が同じではなくても申請ができるが、今回の申請は登記原因証明情報が2通となってしまっているため、日付は統一させていただいた旨をしっかりお話をさせて頂きました。
「まあ、今回のところは、」というところで、何とかなりました。
次回からは、金融機関とお役様との間の契約書は作成していただきとして、司法書士側から、変更内容の登記原因証明情報として、報告形式の登記原因証明情報の作成の提案をさせて頂こうと思いました。
相続に関するトラブルは、多くの家族にとって避けたい問題ですが、現実にはしばしば発生します。
以下では、相続における代表的なトラブルを5つ取り上げ、それぞれの具体例や解決策を交えながら説明します。
目次
1. 遺言書の有無と内容の不備
2. 生前贈与の問題
3. 相続人間のコミュニケーション不足
4. 財産の評価額に対する争い
5. 遺留分侵害の問題
結論
1. 遺言書の有無と内容の不備
トラブルの内容
遺言書がない場合や、遺言書に不備がある場合、相続人同士で意見が分かれ、トラブルに発展することがあります。特に遺産分割の割合や特定の財産の分配方法について争いが生じやすいです。
具体例
例えば、父親が亡くなり遺言書が見つからなかった場合、相続人である兄弟姉妹の間で家屋や預貯金の分配について意見が対立することがあります。また、遺言書があっても、内容が曖昧で解釈が分かれる場合や、法律的に無効とされる記述が含まれている場合もトラブルの原因となります。
解決策
遺言書を作成する際には、公証人による公正証書遺言が推奨されます。これにより、遺言の内容が法的に有効であり、紛争のリスクを最小限に抑えることができます。また、遺言書の内容は定期的に見直し、家族状況の変化や法改正に対応することが重要です。
2. 生前贈与の問題
トラブルの内容
生前贈与は、相続税対策として有効ですが、適切な手続きが行われないとトラブルの元となります。特に、贈与の公平性や贈与税の問題が発生することがあります。
具体例
例えば、親が長男にのみ大きな額の生前贈与を行った場合、他の兄弟姉妹が不公平だと感じ、相続時に争いが生じることがあります。また、贈与税の申告が適切に行われていない場合、税務署から追徴課税が発生するリスクもあります。
解決策
生前贈与を行う際には、全ての相続人に対して公平であることが重要です。また、贈与税の申告を確実に行い、税務リスクを回避するために、専門家の助言を受けることが推奨されます。
3. 相続人間のコミュニケーション不足
トラブルの内容
相続人間のコミュニケーションが不足していると、誤解や不信感が生まれ、トラブルに発展しやすくなります。特に、相続財産の分配方法や手続きについて意見が異なる場合に問題が顕在化します。
具体例
例えば、相続手続きの進行状況を一部の相続人のみが知っている場合、他の相続人が情報を共有されず、不信感を抱くことがあります。その結果、話し合いが難航し、法的手段に訴えるケースも少なくありません。
解決策
相続手続きにおいては、全ての相続人が情報を共有し、透明性を保つことが重要です。定期的な家族会議を開き、専門家を交えて話し合うことで、誤解や不信感を解消することができます。
※このコミュニケーション不足による問題を多く見てきましたが、子供たちの仲の良さは、被相続人(亡くなった方)を中心に形成されていたものであり、亡くなった後、それぞれの意見がぶつかるといったこともよくあります。きっと大丈夫だろうと安易に考えるのではなく、遺言書のように「形」に残す形で、ご自身の意思表示をしっかりしておき、その内容についての話も定期的にするようにしておくことをお勧めいたします。
4. 財産の評価額に対する争い
トラブルの内容
相続財産の評価額について相続人間で意見が分かれることがあります。特に、不動産や株式などの評価が難しい財産において、評価額の妥当性が争点となることが多いです。
具体例
例えば、親の遺産として残された不動産の評価額について、相続人の間で意見が分かれ、一方が過大評価だと主張し、他方が過小評価だと感じる場合があります。このような場合、相続財産の分配が進まず、長期的な争いに発展することがあります。
解決策
財産の評価は、公平な第三者である不動産鑑定士や公認会計士に依頼することが重要です。専門家の評価を基に話し合いを進めることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
5. 遺留分侵害の問題
トラブルの内容
遺留分とは、法律で定められた最低限の相続分のことを指し、これを侵害する遺言書や生前贈与が行われると、相続人が異議を唱えることができます。遺留分が侵害された場合、遺留分減殺請求が行われることがあり、トラブルの原因となります。
具体例
例えば、親が遺言書で全ての財産を特定の子供に遺贈した場合、他の子供が遺留分を侵害されたとして遺留分減殺請求を行うことがあります。この請求が認められると、遺言の内容が変更されることになります。
解決策
遺言書を作成する際には、遺留分に配慮することが重要です。遺留分を侵害しないような分配方法を検討し、必要に応じて相続人と事前に話し合うことが推奨されます。また、遺留分に関する法的なアドバイスを受けるために、専門家の助言を仰ぐことが重要です。
結論
相続に関するトラブルは、多岐にわたりますが、事前の準備と適切な手続きを行うことで多くの問題を回避することができます。遺言書の作成や生前贈与の計画、相続人間のコミュニケーションの強化、専門家の助言を受けることが、円滑な相続手続きを実現する鍵となります。これらのポイントを押さえ、家族間の絆を守りながら相続問題を解決していきましょう。
不動産の相続登記をしないことで起こるデメリットは、法的、経済的、社会的な側面から多岐にわたります。
以下にその主なデメリットを詳細に説明します。
目次
1. 法的デメリット
2. 経済的デメリット
3. 社会的デメリット
まとめ
1. 法的デメリット
(1) 権利の不確定性
相続登記を行わないと、相続人が法的に不動産の所有権を主張することが困難になります。登記は、所有権の公示機能を果たすため、登記がなければ第三者に対して所有権を主張することができません。その結果、相続人間での権利関係が不明確になり、紛争の原因となります。
また、その資産価値にもよると思いますが、相続人間で誰が実家を引き継ぐのかでもめるケースもあります。離島の一軒家で利用価値が居住以外に乏しく、周りの方も高齢化している場合などでは、引き受ける相続人の方にとっても負担になります。しかし、とりあえず誰が所有者なのかを確定しなければ、その処分もできない状態になってしまいます。
相続登記を放置することで、さらに相続が発生していくことになり、権利関係が時間の経過とともに複雑化するといったことも起こりえます。
(2) 売却・担保提供の制約
登記がされていない不動産は、売却や担保提供が困難です。買主や金融機関は、所有権が確定していない不動産を購入したり、担保として受け入れたりすることに慎重になります。これにより、相続人は不動産の流動性を失い、資金調達が困難になる可能性があります。
2. 経済的デメリット
(1) 税金の問題
相続登記をしないまま放置していると、固定資産税や都市計画税などの税金の支払いが滞る可能性があります。未登記の不動産に対する税金の支払い義務は相続人にありますが、誰が負担するのかが不明確になり、最終的には延滞金や罰則が科されることもあります。
(2) 相続税の課税
相続登記を行わない場合でも、相続税の課税対象となります。相続税の申告期限は、被相続人の死亡から10ヶ月以内ですが、登記をしないと適正な評価額を算出することが難しくなり、過少申告や延滞に繋がるリスクがあります。
3. 社会的デメリット
(1) 遺産分割協議の困難
相続人が複数いる場合、相続登記を行わないと、遺産分割協議が滞ることがあります。特に、不動産が共有名義となるケースでは、全ての相続人の合意が必要となるため、意見の対立が起きやすくなります。これにより、相続人間の関係が悪化し、協議が長期化する恐れがあります。
(2) 地域社会への影響
相続登記未登記の不動産が放置されると、空き家や荒れ地となり、地域の景観や治安に悪影響を及ぼすことがあります。また、管理が行き届かない不動産は、火災や倒壊などのリスクを伴い、近隣住民にとっても迷惑となります。
まとめ
不動産の相続登記をしないことは、多くのデメリットを伴います。法的な権利の不確定性から経済的な損失、さらには社会的な問題まで、幅広い影響が生じます。相続登記は、相続手続きの一環として速やかに行うことが重要であり、これにより相続人間の紛争を防ぎ、円滑な相続手続きと財産の有効活用が可能となります。相続登記を怠らず、早期に手続きを進めることが、相続人にとっての最善の策と言えるでしょう。
相続時精算課税制度は、高齢者が生前に財産を贈与しやすくするために設けられた制度です。
しかし、この制度を利用するにはいくつかの注意点があります。
以下に、相続時精算課税を利用する際の注意点を5つのポイントにまとめて説明します。
目次
1. 適用条件の確認
2. 2500万円の特別控除の理解
3. 相続時の税負担
3. 相続時の税負担
4. 不動産の贈与に関する注意点
5. 制度利用の長期的な計画
結論
1. 適用条件の確認
相続時精算課税制度を利用するには、適用条件を満たしていることが必要です。具体的には、贈与者が60歳以上であり、受贈者が20歳以上の直系卑属(子や孫)である必要があります。また、適用を受けるためには、受贈者が「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出する必要があります。この条件を満たしていない場合、この制度を利用することはできません。
2. 2500万円の特別控除の理解
相続時精算課税制度では、贈与者から受贈者に対して、2500万円までの贈与については贈与税が課されません。ただし、これを超える金額については、一律20%の贈与税が課されます。この2500万円の特別控除は一生に一度限りのものであり、超過分の贈与税は申告しなければなりません。この特別控除の適用範囲や計算方法をしっかり理解しておくことが重要です。
そして、令和6年1月1日から、年間の贈与額から110万円の控除も追加されていますので、計画的に生前贈与を行えば、110万円の控除を複数年適用を受けることができます。
3. 相続時の税負担
相続時精算課税制度を利用すると、贈与された財産の価値は、贈与時の価値で相続財産に加算されます。相続時には、贈与時に課された贈与税額を差し引いた額で相続税が計算されます。このため、相続時に予想以上の税負担が生じる可能性があります。贈与時の財産評価額が相続時に増加する場合、相続税が高額になることを見越して、将来の税負担を考慮した計画を立てることが重要です。
2500万円分の相続時精算課税を利用して贈与した場合の110万円は暦年贈与制度のように7年に遡っての相続財産への組み戻しはありません。
4. 不動産の贈与に関する注意点
不動産を相続時精算課税制度で贈与する場合、その評価額を慎重に考慮する必要があります。不動産の評価額は市場価格に基づくため、贈与時と相続時で評価額が変動することがあります。特に地価が上昇している地域では、相続時に高額な評価額がつく可能性があり、結果として相続税が増加するリスクがあります。また、不動産を贈与する際には、登記費用や贈与税申告の手続きなどの追加費用も発生するため、事前にこれらの費用も考慮しておくことが重要です。
※110万円の控除(相続時精算課税制度も暦年贈与制度も含め)を有効利用するために、一度に所有権を移転するのではなく、「持分」を少しづつ計画的に生前贈与するケースもあります。詳しくは、税理士又は司法書士にご相談ください。
5. 制度利用の長期的な計画
相続時精算課税制度を利用する際には、短期的な節税効果だけでなく、長期的な資産運用計画も考慮する必要があります。例えば、将来的に家族がどのように財産を活用するか、財産の分割方法や管理方法などを含めた総合的な資産計画を立てることが重要です。また、制度の利用を決定する前に、専門の税理士やファイナンシャルプランナーと相談し、個別の状況に応じたアドバイスを受けることも有効です。
結論
相続時精算課税制度は、贈与者が生前に財産を子や孫に移転しやすくするための有効な手段ですが、その利用には慎重な計画と適切な判断が求められます。適用条件の確認、2500万円の特別控除の理解、相続時の税負担の予測、不動産贈与の際の注意点、そして長期的な資産計画の策定といったポイントをしっかりと押さえて、制度の利用を検討することが重要です。適切な準備と計画を立てることで、将来の税負担を軽減し、家族の財産を効果的に管理することができます。
相続登記は、不動産を相続した際に、相続人がその不動産の所有権を正式に登記する手続きです。この手続きを適切に行わないと、後々の売買や譲渡が難しくなり、相続人間でのトラブルの原因となることがあります。相続登記における重要なポイントと注意点について、以下に詳しく説明します。
目次
1. 相続登記の必要性
2. 相続登記の法的期限
3. 必要書類の準備
4. 遺産分割協議書の作成
5. 法定相続分の確認
6. 相続税の申告
7. 不動産の評価額の確認
8. 登録免許税の支払い
9. 専門家の助言を受ける
10. 相続登記後の管理
まとめ
1. 相続登記の必要性
相続登記を行うことで、不動産の所有権を相続人に正式に移転します。この手続きを怠ると、相続人が不動産を売却する際に問題が生じたり、相続人間でのトラブルが発生する可能性があります。相続登記を早期に行うことで、相続手続きをスムーズに進めることができます。
2. 相続登記の法的期限
2024年4月1日から、相続登記が義務化されることになりました。これにより、相続開始から3年以内に相続登記を行わなければなりません。この期限を過ぎると、過料が課される可能性がありますので、相続が発生したら速やかに相続登記の手続きを進めることが重要です。
3. 必要書類の準備
相続登記を行うためには、以下の書類が必要です:
被相続人の死亡を証明する書類:戸籍謄本や死亡診断書など
相続人を証明する書類:戸籍謄本や戸籍抄本など
不動産の登記簿謄本:法務局で取得
遺産分割協議書:相続人全員の合意に基づく遺産分割協議書
遺言書:遺言がある場合
固定資産評価証明書:市町村役場で取得
相続登記申請書:法務局で記入・提出
これらの書類を正確に準備し、不備なく提出することが重要です。
4. 遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書は、相続人全員の同意のもとに作成される書類であり、不動産の分割方法や所有者を明記します。この協議書は全員の署名と押印が必要であり、不備があると相続登記が受理されないことがあります。遺産分割協議書の作成には、専門家の助言を受けるとスムーズに進められます。
5. 法定相続分の確認
相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合、法律で定められた相続分(法定相続分)に従って相続することになります。法定相続分に基づいて相続登記を行う場合も、相続人全員の同意が必要です。法定相続分に従った相続は、トラブルを避けるために重要です。
6. 相続税の申告
相続登記を行う前に、相続税の申告が必要な場合があります。相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内であり、期限内に申告を行わないと延滞税が課されることがあります。不動産の評価額を正確に算出し、必要な場合は相続税を適切に申告することが重要です。
7. 不動産の評価額の確認
相続税の計算や相続登記の手続きには、不動産の評価額を確認する必要があります。評価額は、市町村役場で発行される固定資産評価証明書や、国税庁の路線価図などを参考にします。不動産の評価額を正確に把握し、相続税の申告や遺産分割協議書の作成に役立てます。
8. 登録免許税の支払い
相続登記には、登録免許税がかかります。登録免許税は、不動産の評価額に応じて計算され、登記手続きの際に支払います。登録免許税の計算方法や支払い方法については、法務局や専門家に相談すると良いでしょう。
9. 専門家の助言を受ける
相続登記は複雑な手続きであり、専門家の助言を受けることでスムーズに進めることができます。司法書士や弁護士に依頼することで、書類の準備や手続きの進行をサポートしてもらえます。また、相続税の申告についても税理士の助言を受けることで適切に対応できます。
10. 相続登記後の管理
相続登記が完了した後も、不動産の管理や保全が重要です。相続した不動産を売却する場合や、賃貸する場合には、適切な手続きを行う必要があります。また、不動産の固定資産税の支払いも忘れずに行うことが大切です。
まとめ
相続登記は、不動産を相続する際に欠かせない重要な手続きです。相続登記を適切に行うことで、相続人間のトラブルを防ぎ、円滑な相続手続きを実現できます。以下のポイントを押さえて、相続登記を進めましょう:
相続登記の必要性と法的期限を理解する
必要書類を正確に準備する
遺産分割協議書を作成する
法定相続分を確認する
相続税の申告を行う
不動産の評価額を確認する
登録免許税を支払う
専門家の助言を受ける
相続登記後の不動産管理を行う
これらのステップを踏むことで、相続登記を円滑に進め、相続人全員が安心して不動産を受け継ぐことができます。
会社の代表者が亡くなった場合、法人の株式の相続は複雑で重要な手続きとなります。
以下に、株式の相続について考慮すべき主要なポイントを5つに分けて説明します。
目次
1. 株式の評価と相続税
2. 会社の経営権の継承
3. 相続による会社の安定性の確保
4. 株式の譲渡制限と承認手続き
5. 専門家のサポート
6. まとめ
1. 株式の評価と相続税
株式の評価は相続税を計算するために重要です。株式の評価方法には以下のようなものがあります。
評価方法
上場株式:市場価格に基づいて評価されます。亡くなった日の終値、またはその前後1ヶ月の平均値などが基準となります。
非上場株式:評価が難しく、国税庁の「財産評価基本通達」に基づいて評価されます。主な評価方法には「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」があります。
相続税の計算
株式の評価額が確定したら、それを基に相続税が計算されます。相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。
2. 会社の経営権の継承
株式を相続することで、会社の経営権も相続されることがあります。これにより、会社の経営に大きな影響を与える可能性があります。
経営権の移行
遺言の確認:被相続人が遺言を残している場合、その内容に従って株式が分配されます)。
遺産分割協議:遺言がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、株式の分配方法を決定します。
株主総会:株式の相続が確定した後、新しい株主は株主総会で承認を受ける必要があります。
3. 相続による会社の安定性の確保
株式の相続によって会社の安定性が損なわれるリスクがあります。このため、事前に対策を講じることが重要です。
事前対策
株主間契約:株式の譲渡や相続に関する規定を事前に定めておくことができます。これにより、相続後の混乱を防ぎます。
遺言信託:遺言書を信託会社に預け、専門家の管理下で株式の分配を行う方法です。
株式分散の防止:株式の相続が複数の相続人に分散することを防ぐため、特定の相続人に集中させる方法も検討されます。
※株式の分散は避けるべきです。例えば、定款を変更するためには、株主総会の特別決議が必要となります。要件は「原則として、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とする決議」です。つまり、2人で仲良く半分ずつでは、仲たがいが生じた場合、定款の変更すらできない状態に陥ります。注意が必要です。
4. 株式の譲渡制限と承認手続き
会社の定款には、株式の譲渡に制限がある場合があります。相続によって株式が移転する際にも、この制限が適用されることがあります。
譲渡制限の確認
定款の確認:会社の定款に譲渡制限が記載されているかを確認します。相続による株式の移転も、株主総会や取締役会の承認が必要な場合があります。
承認手続き:必要に応じて株主総会や取締役会で承認手続きを行います。承認が得られない場合、会社側が株式を買い取る権利を行使することもあります。
5. 専門家のサポート
株式の相続手続きは複雑で専門知識が必要です。弁護士や税理士、公認会計士などの専門家のサポートを受けることが重要です。
専門家の役割
弁護士:法的手続きや遺産分割協議のサポートを行います。
司法書士:争いのない法的手続きや商業登記等、遺産分割協議についてのサポートをします。
税理士:株式の評価や相続税の申告、納付手続きをサポートします。
公認会計士:株式の評価や財務分析を行い、相続後の会社の経営をサポートします。
6. まとめ
会社の代表者が亡くなった場合の法人の株式の相続は、評価方法や相続税、経営権の移行、会社の安定性の確保、譲渡制限と承認手続き、専門家のサポートなど、さまざまな要素を考慮する必要があります。これらのポイントを踏まえ、事前に適切な対策を講じることで、相続後のトラブルを未然に防ぐことができます。相続手続きが円滑に進むよう、専門家のサポートを受けながら計画的に進めることが重要です。
遺産分割協議を困難にする主な事例とその解決方法について説明します。
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要であり、さまざまな問題が発生することがあります。
以下に、代表的な事例とその解決方法を挙げていきます。
目次
1. 相続人間の意見対立
2. 相続人の所在不明
3. 遺産の評価に関する争い
4. 遺言書の有効性に関する争い
5. 特定の相続人に対する偏った遺産分配
まとめ
1. 相続人間の意見対立
事例
相続人間で意見が一致しないことは一般的です。特に、不動産などの分割が難しい財産の場合、各相続人の希望が対立することがあります。
解決方法
①調停:家庭裁判所に調停を申し立て、第三者の仲裁を受けることで合意を目指す。
➁専門家の仲介:弁護士や司法書士などの専門家を仲介役として依頼し、公平な視点から解決策を提案してもらう 。
③不動産の売却:不動産を売却して現金化し、その分配を行うことで、物理的な分割の難しさを解消する 。
2. 相続人の所在不明
事例
相続人の一人が所在不明で連絡が取れない場合、協議が進まないことがあります。
解決方法
①家庭裁判所への不在者財産管理人選任の申し立て:所在不明の相続人の財産を管理するための管理人を選任し、代わりに協議に参加してもらう。
➁失踪宣告を受ける:家庭裁判所に、通常7年超。
3. 遺産の評価に関する争い
事例
遺産の評価額に関して相続人間で意見が分かれる場合、協議が難航することがあります。特に、不動産や株式などの市場価値が変動する資産は評価が難しいです。
解決方法
①専門家の評価:不動産鑑定士や公認会計士などの専門家に評価を依頼し、公正な評価額を算定する 。
➁複数の評価:複数の専門家による評価を比較し、平均値を取るなどの方法で公平性を保つ 。
4. 遺言書の有効性に関する争い
事例
遺言書の内容やその有効性に関して相続人間で争いが生じることがあります。特に、自筆証書遺言の場合、形式不備や偽造の疑いが問題となることがあります。
解決方法
①遺言無効訴訟:遺言書の有効性に疑義がある場合、家庭裁判所に遺言無効訴訟を提起し、法的に解決を図る。
➁遺言書の検認:家庭裁判所で遺言書の検認を受け、形式的な有効性を確認する。
③専門家の意見:弁護士に相談し、遺言書の法的有効性について意見を求める。
5. 特定の相続人に対する偏った遺産分配
事例
特定の相続人に対して偏った遺産分配が遺言書に記載されている場合、他の相続人が不満を持つことがあります。このような場合、遺留分の問題が生じることがあります。
解決方法
①遺留分侵害額請求:遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行うことができます。これにより、最低限の相続分を確保することができます。
➁和解:相続人間で話し合いを行い、公平な分配を目指すために和解を試みる。弁護士などの第三者を介することで、冷静な話し合いが可能になります。
③調停や仲裁:家庭裁判所に調停や仲裁を申し立て、法的に公平な解決を図る。
まとめ
遺産分割協議を困難にする事例は多岐にわたりますが、各事例に対して適切な解決方法を講じることで、円満な相続を実現することが可能です。相続人間の意見対立や所在不明、遺産の評価問題、遺言書の有効性、偏った遺産分配などの問題に対しては、専門家の助言を得ることが重要です。弁護士や司法書士、鑑定士などの専門家のサポートを受けながら、法的に適切な手続きを進めることで、相続問題を円滑に解決することができます。
遺言書が見つかり、その内容が「全財産を愛人に遺贈する」と記載されていた場合、相続人としてはショックを受けることでしょう。しかし、このような場合でも適切に対処する方法があります。以下に、その手順とポイントを詳しく説明します。
目次
1. 遺言書の確認と検認
2. 遺留分の確認と請求
3. 遺留分侵害額請求の手続き
4. その他の対応策
まとめ
1. 遺言書の確認と検認
まず、遺言書が正式なものであるかを確認します。遺言書の種類に応じて、検認が必要な場合があります。
公正証書遺言:公証人によって作成された遺言書であれば、検認は不要です。
自筆証書遺言・秘密証書遺言:これらの場合、家庭裁判所での検認が必要です。検認は遺言書の形式的な有効性を確認する手続きであり、内容の有効性を判断するものではありません。
2. 遺留分の確認と請求
民法には「遺留分」という制度があります。遺留分は、一定の相続人(配偶者、子供、直系尊属など)が最低限相続できる財産の割合を保障するものです。遺留分の割合は以下の通りです:
配偶者と子供がいる場合:配偶者と子供それぞれが相続財産の1/4を遺留分として持つ。
配偶者と直系尊属がいる場合:配偶者が1/3、直系尊属が1/6。
子供のみの場合:子供が相続財産の1/2を遺留分として持つ。
「全財産を愛人に遺贈する」という遺言書が見つかった場合、遺留分を侵害している可能性が高いです。この場合、相続人は遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)を行うことができます 。
3. 遺留分侵害額請求の手続き
遺留分侵害額請求を行うためには、以下の手順を踏みます。
3.1 請求の意思表示
遺留分を侵害された相続人は、相手方(愛人)に対して遺留分侵害額請求の意思表示を行います。この意思表示は、口頭でも書面でも可能ですが、証拠を残すために書面で行うのが一般的です。内容証明郵便を利用することで、意思表示の事実と日時を明確に証明できます。
※裁判をしないと主張できないという方がいらっしゃいますが、遺留分侵害額請求権の行使は、裁判上でも裁判外でも可能です。
3.2 調停・仲裁
意思表示後、当事者間で話し合いが行われますが、合意に至らない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停では中立的な第三者が介入し、合意に向けた調整が行われます 。
3.3 裁判
調停が不成立の場合、最終的には裁判に進むことになります。裁判では、遺留分の具体的な金額や支払い方法について判決が下されます 。
4. その他の対応策
4.1 遺言無効訴訟
遺言書の内容や作成過程に不正があった場合(例えば、遺言者が精神的に不安定な状態であった、あるいは脅迫や詐欺によって作成された場合)、遺言無効訴訟を提起することができます。この訴訟では、遺言の無効を証明するための証拠を提出する必要があります。
4.2 和解
愛人との間で話し合いが可能であれば、相続人の遺留分を尊重しつつ、遺産の一部を愛人に分与する形で和解を図ることも考えられます。これにより、法的手続きにかかる時間と費用を節約することができます。
5. 専門家への相談
相続問題は複雑で感情的なものが多いため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが重要です。専門家は法的なアドバイスを提供し、適切な手続きをサポートしてくれます。
まとめ
「全財産を愛人に遺贈する」という遺言書が見つかった場合、遺留分を侵害している可能性が高いです。相続人は遺留分侵害額請求を行うことで、自身の権利を守ることができます。適切な手続きを踏み、必要に応じて専門家に相談することで、相続問題を円滑に解決することが可能です。
まずは、争いも想定されますので、はじめから弁護士と相談の上、手を打って行った方がいいと思います。
公正証書遺言を作成する際の費用について説明します。
公証役場での公正証書遺言作成費用は、基本手数料、書類の取り寄せ費用、証人の日当、専門家への報酬など、複数の要素で構成されています。
目次
1. 公証役場手数料
2. 書類の取り寄せ費用
3. 証人の日当
4. 公証人の出張費用
5. 専門家への報酬
まとめ
1. 公証役場手数料
公証役場の基本手数料は、遺言に記載する財産の価額によって異なります。具体的な費用は以下の通りです:
財産が100万円まで:5,000円
100万円超200万円まで:7,000円
200万円超500万円まで:11,000円
500万円超1,000万円まで:17,000円
1,000万円超3,000万円まで:23,000円
3,000万円超5,000万円まで:29,000円
5,000万円超1億円まで:43,000円
1億円超3億円まで:5,000万円ごとに13,000円加算
3億円超10億円まで:5,000万円ごとに11,000円加算
10億円超:5,000万円ごとに8,000円加算
さらに、全体の財産が1億円以下の場合には、基本手数料に11,000円が加算されます。また、遺言書の枚数によっては、謄本手数料(コピー代)が3,000円から5,000円程度加算されることがあります。
※ポイントは、遺産を渡す各相続人を基準に算定し、合計額が手数料となります。遺産の総額で手数料を計算するわけではありませんので注意が必要です。
2. 書類の取り寄せ費用
公正証書遺言を作成するためには、各種書類が必要です。これらの書類の取得には費用がかかります:
戸籍謄本:1通450円
印鑑証明書:1通300円
住民票:1通300円
評価証明書(不動産1物件):300円
登記事項証明書(不動産1物件):600円
※各自治体により、書類意取得の手数料の金額が異なります。取り寄せる書類を管理している自治体に確認してください。
3. 証人の日当
公正証書遺言の作成時には、証人2名の立ち会いが必要です。証人を専門家や公証人役場に依頼する場合、1名につき7,000円から15,000円程度の日当がかかります。(高松市の場合1名5,000円)知人に頼む場合は、この費用はかかりません。
ただし、証人は誰でもいいというわけではなく、一定の要件があります。
公正証書遺言の証人となるためには、以下の要件を満たしている必要があります:
①成人であること:証人は20歳以上の成人である必要があります。
➁遺言者の直系尊属・直系卑属ではないこと:遺言者の両親や子供などの直系尊属・直系卑属は証人になることができません。
③遺言者の配偶者ではないこと:遺言者の配偶者も証人になることができません。
④遺言の受益者やその配偶者、直系尊属・直系卑属ではないこと:遺言により利益を受ける者、その配偶者や直系尊属・直系卑属も証人になることができません。
➄未成年者や成年被後見人、被保佐人ではないこと:法律上、未成年者や成年被後見人、被保佐人は証人としての資格を持ちません。
これらの要件を満たすことが、公正証書遺言の証人として適格であることを確認するために重要です。つまり、近しい家族にお願いする場合、要件を充たさない場合があります。
4. 公証人の出張費用
遺言者が公証役場に行けない場合、公証人が自宅や病院などに出張することも可能です。この場合、手数料が1.5倍に加算され、公証人の日当として1日あたり2万円(4時間以内の場合は1万円)が必要です。また、交通費も実費で請求されます。
5. 専門家への報酬
公正証書遺言の作成を弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合、その報酬が発生します。報酬の額は依頼する事務所や業務の範囲によって異なりますが、一般的には数万円から数十万円程度が相場です。
まとめ
公正証書遺言の作成には、遺言に記載する財産の価額によって手数料が変動する基本手数料、必要書類の取り寄せ費用、証人の日当、そして公証人の出張費用などが含まれます。また、専門家に依頼する場合はその報酬も考慮に入れる必要があります。これらを総合して計画を立てることが重要です
まずは、専門家への相談をして検討してみてください。
公正証書遺言は、公証人が作成する信頼性の高い遺言書です。以下に、公正証書遺言を作成する際の具体的な手順を説明します。
目次
1. 遺言内容の検討
2. 公証役場の選定と予約
3. 必要書類の準備
4. 証人の確保
5. 公証役場での手続き
6. 公正証書遺言の保管
7. 遺言書の見直し
まとめ
1. 遺言内容の検討
まず、遺言内容をじっくり検討します。以下の点を考慮して内容を決めます。
遺産の分配方法:財産をどのように分配するか、誰に何を相続させるかを決めます。
特定の相続人への配慮:特定の相続人に対して、特別な配慮が必要な場合はその旨を記載します。
遺言執行者の指定:遺言内容を実行する遺言執行者を指定します。信頼できる人物を選びます。
2. 公証役場の選定と予約
遺言内容が決まったら、公証役場を選び、予約を取ります。予約時に以下の情報を伝えます。
遺言者の氏名、住所、生年月日
証人2名の氏名、住所、生年月日※公証役場に証人の依頼をしている場合は不要
遺言内容の概要
公証役場の連絡先はインターネットで検索するか、最寄りの役場に問い合わせると良いでしょう。
3. 必要書類の準備
公正証書遺言を作成するためには、以下の書類が必要です。
本人確認書類:遺言者および証人2名の運転免許証やパスポートなどの身分証明書
※本人の場合は、印鑑証明書での本人確認をする場合が多いです。
財産に関する書類:不動産登記簿謄本、預貯金の通帳の写し、株式の証券など
その他の書類:家族構成を確認するための戸籍謄本、遺言執行者を指定する場合はその同意書など
4. 証人の確保
公正証書遺言の作成には、2名の証人が必要です。証人には以下の条件があります。
(証人の要件)
遺言者の配偶者や直系血族でないこと
遺言の利益を受ける者でないこと
成年であること
弁護士や司法書士など、専門家を証人として依頼することも可能です。
5. 公証役場での手続き
予約した日時に公証役場に出向きます。手続きの流れは以下の通りです。
公証人による説明:公証人が遺言の内容について説明し、遺言者が理解しているか確認します。
遺言内容の確認:遺言者が遺言内容を読み上げ、誤りがないか確認します。
署名・押印:遺言者と証人が遺言書に署名・押印します。
公証人の署名・押印:公証人が遺言書に署名・押印し、公正証書遺言が完成します。
6. 公正証書遺言の保管
公正証書遺言は公証役場に保管されます。遺言者には遺言書の正本と謄本が交付されます。遺言書の保管方法について家族に知らせておくと、相続時にスムーズに手続きを進めることができます。
7. 遺言書の見直し
遺言内容は一度作成しても、状況に応じて見直すことが可能です。例えば、家族構成や財産状況に変化があった場合は、遺言書を更新することを検討します。新しい遺言書を作成する場合も、同じ手続きを踏むことになります。
まとめ
公正証書遺言を作成する手順は以下の通りです。
遺言内容の検討
公証役場の選定と予約
必要書類の準備
証人の確保
公証役場での手続き
公正証書遺言の保管
遺言書の見直し
これらの手順を踏むことで、公正証書遺言を確実に作成し、相続トラブルを未然に防ぐことができます。公正証書遺言は公証人が関与するため、法的な効力が強く、信頼性が高いです。遺言の内容が明確であり、相続人同士の争いを防ぐために、有効な手段と言えるでしょう。
今回は、不動産を共有で所有することの不利益について解説したいと思います。
共有不動産は、様々な問題を抱えています。
元のオーナー間で、関係性が良好でも、その次の世代ではどうなるかわかりません。
また、身分上の変化(例えば離婚)などにより、関係性が悪化する場合も考えられます。
目次
1. 意思決定の難航
2. 維持費用の負担と分担
3. 利用方法の衝突
4. 相続時の問題
5. 不動産の売却の困難
結論
1. 意思決定の難航
不動産を共有する場合、複数の共有者が関与するため、重要な決定を下す際に全員の合意が必要となります。例えば、不動産の売却や賃貸に関する決定、修繕やリノベーションの実施、あるいは不動産の利用方法についての決定など、共有者全員の同意を得ることが求められます。
例: ある不動産を3人の共有者が所有している場合、一人が不動産を売却したいと思っても、他の2人が反対することがあります。このような場合、売却を進めることはできません。合意を得るための交渉が長引き、結果として迅速な意思決定が困難になります。
2. 維持費用の負担と分担
不動産の共有者は、維持費用や修繕費用を分担する必要があります。しかし、各共有者がその負担をどのように分け合うかについて意見が一致しないことがあります。一部の共有者が費用負担を拒否したり、経済的に負担できない場合、他の共有者がその分を補填しなければならないことがあります。
例: 建物の屋根が老朽化し、修繕が必要な場合、共有者の一人が修繕費用を負担できないとしたら、他の共有者がその分を負担することになり、不公平感が生じます。また、修繕が先延ばしにされることで、不動産の価値が下がるリスクもあります。
3. 利用方法の衝突
共有不動産の利用方法についても意見の対立が生じることがあります。ある共有者がその不動産を賃貸に出したいと考える一方で、別の共有者は自己利用を望むことがあります。このような場合、利用方法についての合意を得ることが難しく、不動産の効果的な利用が妨げられます。
例: 共有不動産が都市部のマンションで、一部の共有者が投資目的で賃貸に出したいと考え、他の共有者が自己利用や家族のために利用したいと考える場合、双方の意見が対立し、最適な利用方法を見つけることが困難です。
4. 相続時の問題
共有不動産は相続時に特に複雑な問題を引き起こすことがあります。共有者の一人が亡くなった場合、その持分は相続人に引き継がれますが、相続人が複数いる場合、新たな共有者が増えることになります。これにより、意思決定がさらに複雑化し、摩擦が生じやすくなります。
例: 共有者の一人が亡くなり、その持分が3人の子供に相続された場合、新たに3人の共有者が加わります。これにより、共有者の数が増え、全員の意見を一致させることがますます難しくなります。特に、相続人同士が意見を異にする場合、長期的な対立が生じる可能性があります。
5. 不動産の売却の困難
共有不動産を売却する場合、全ての共有者の同意が必要です。これが得られない場合、売却は困難となり、結果として不動産の流動性が低下します。また、一部の共有者が売却に積極的でない場合、市場価格よりも低い価格での売却を余儀なくされることもあります。
例: 共有者の一人が緊急に現金を必要とし、不動産を売却したいと考えても、他の共有者がこれに同意しない場合、売却は進められません。結果として、緊急に資金が必要な共有者は他の方法で資金を調達する必要が生じ、場合によっては不利な条件での取引を余儀なくされることがあります。
結論
不動産の「共有」は、一見するとリスク分散や共同利用の利点があるように見えますが、実際には多くの不利益をもたらします。意思決定の難航、維持費用の分担の不公平、利用方法の衝突、相続時の問題、売却の困難など、共有者間の摩擦や対立が生じやすく、これらが長期的に不動産の価値や利用効率に悪影響を与えることがあります。共有不動産を所有する場合、これらの問題を予見し、共有者間で明確なルールを設定し、信頼関係を築くことが重要です。それでもなお、共有による不利益を完全に避けることは難しいため、個別所有や法人による所有など、他の所有形態を検討することも一つの選択肢となります。
言語化とは、思考や感情を言葉として明確に表現することを指します。これは日常生活において、自己理解を深めるだけでなく、他者とのコミュニケーションを円滑にするためにも重要です。特に人生の終末期において、自己の希望や意思を明確に伝えることが求められる場面が増えます。そこでエンディングノートと遺言書という二つのツールが大きな役割を果たします。本稿では、この二つのツールの効力の違いについて説明します。
目次
1.エンディングノート
2.遺言書
3.効力の違い
4.結論
1.エンディングノート
エンディングノートは、本人が生前に自身の希望や意志を記録しておくためのノートです。例えば、葬儀の形式、遺産の分配、介護の希望、財産の管理などについて記載します。このノートは、法的効力を持たないものの、家族や関係者に対して本人の意思を伝えるための重要な手段です。
①エンディングノートの利点
(1)自由度の高さ: エンディングノートには、何を書いても構いません。形式に拘らず、自分の言葉で自由に意思を表現できます。
(2)感情の共有: 法的文書には表現しにくい感情や思いも、エンディングノートを通じて伝えられます。例えば、「家族への感謝の言葉」や「過去の思い出」など。
(3)生活の質の向上: 自分の望む介護や医療について具体的に記載することで、生活の質を向上させることができます。
➁エンディングノートの限界
(1)法的効力の欠如: エンディングノートは、法的拘束力を持ちません。つまり、記載された内容が法的に実行される保証はありません。
(2)解釈の自由: 書き手の意図が十分に伝わらない場合、解釈の違いから意図した通りに実行されない可能性があります。
2.遺言書
遺言書は、法律に基づいて作成される文書で、遺産の分配やその他の希望を法的に拘束力を持って定めるものです。日本では、民法に基づいて遺言書の作成方法が規定されており、法的に有効な遺言書を作成するためには、一定の要件を満たす必要があります。
①遺言書の種類
(1)自筆証書遺言: 遺言者が自らの手で全文、日付、氏名を記載し、押印する形式です。法的に有効であるためには、形式的な要件を満たす必要があります。
(2)公正証書遺言: 公証人が作成し、遺言者および証人2名の立会いのもとで署名・押印される遺言書です。信頼性が高く、紛失や改ざんのリスクが低いです。
(3)秘密証書遺言: 遺言者が署名・押印し、封をした遺言書を公証人に提出して確認を受ける形式です。
➁遺言書の利点
(1)法的効力: 遺言書は法律に基づいて作成されるため、記載された内容が法的に実行されます。これにより、遺産の分配やその他の希望が確実に実現されます。
(2)明確な指示: 遺産の分配方法や特定の希望を明確に指示することで、遺族間の争いを未然に防ぐことができます。
(3)遺言執行者の指定: 遺言書に遺言執行者を指定することで、遺産の分配をスムーズに行うことができます。
③遺言書の限界
(1)作成の複雑さ: 法的要件を満たすためには、形式や内容に厳格な規定があるため、作成が複雑です。特に公正証書遺言の場合、公証人との面談や証人の確保が必要です。
(2)費用: 公正証書遺言を作成する場合、公証人への報酬や証人への謝礼が必要となり、費用がかかります。
3.効力の違い
エンディングノートと遺言書の最大の違いは、その法的効力にあります。エンディングノートは本人の意思を伝えるためのツールであり、法的拘束力はありません。一方、遺言書は法律に基づいて作成されるため、記載内容が法的に実行されます。このため、具体的な遺産分配や法的手続きを必要とする希望がある場合は、遺言書を作成することが重要です。
ただし、エンディングノートは、遺言書の補完的な役割を果たすことができます。例えば、遺言書には記載しにくい感情的な内容や、日常の希望、細かな指示などをエンディングノートに記載することで、遺族や関係者に対して総合的な意思を伝えることができます。
4.結論
言語化することの大切さは、人生の終末期において特に顕著です。エンディングノートと遺言書を併用することで、法的な手続きと感情的な意志の双方をバランスよく伝えることができます。エンディングノートは感情や希望を自由に表現できる一方で、法的効力を持たないため、重要な法的事項については遺言書を作成することが求められます。この二つのツールを適切に活用することで、自身の意思を確実に伝え、遺族や関係者が安心して後の手続きを進めることができます。
今まで携わった相続関連業務で、公正証書遺言を作成した後にお迎えが車が来るまで少し話をした時のことです。一仕事終えたというのと、これでひとまず安心という気持ちから、いろいろなことを話しました。会社を心配されていたのですが、相続人の方が引き受けてくれるという意思表示があったことを大変喜んでいました。その時心から「良かったですね。本当に。これで心配事がずいぶん減ったんじゃないですか?」というと、何かほっとしたような顔をされていました。そしてその数か月後に亡くなったのですが、今までの経緯をすべて日記にしたためていたようで、相続人の方全員からすごく感謝されました。この経験から改めて、人の大事な意思表示のお手伝いができるということについて、これからも継続して行っていこうと思いました。勿論、新しい取り組みも含め、「不安」を「安心」に代えていけるよう続けていこうと思います。
お客様には「さあ、遺言書を作りましょう」と言ってはいるものの、作成には、家族関係やそのご本人の背景的なことを外しては、作成できません。財産を分けるにも、それなりの理由が必要ですし納得していないと、安心するはずの遺言書作成が無意味になってしまいます。そこで先日、一般社団法人四国ライフエンディング協会・株式会社人生百年サポート主催の「エンディングノートの勉強会」に参加しました。その内容を踏まえ、エンディングノートの効果をお話したいと思います。
目次
1.エンディングノートと遺言書:今後のことと人生の棚卸
2.なぜエンディングノートをはじめに設定すべきと考えるようになったのか
3.エンディングノート:人生の棚卸と今後のこと
4.遺言書:法的効力を持つ意思表示
5.まとめ
1.エンディングノートと遺言書:今後のことと人生の棚卸
エンディングノートと遺言書は、人生の終わりを見据えた計画と、その実現のための法的手段を提供する重要なツールです。エンディングノートは、自分の人生を振り返り、今後のことを家族や友人に伝えるためのものであり、遺言書はその意思を法的に実行するためのものです。以下では、エンディングノートと遺言書の役割や作成方法、注意点について詳しく説明します。
2.なぜエンディングノートをはじめに設定すべきと考えるようになったのか
エンディングノート作成のセミナーに参加させていただき、意外にもエンディングノートの効力を目の当たりにして、遺言書でいきなり自分の意思をまとめるのではなく、エンディングノートで一度人生の棚卸をしてから、その後の相続についての遺言書を考えると、私自身、スムーズに遺言書の内容を決めることができました。まるで、エンディングノートが遺言書を作るための「潤滑油」のような働きを体験したわけです。そこで、エンディングノートについて少しお話をしたいと思いました。
3.エンディングノート:人生の棚卸と今後のこと
エンディングノートの目的
エンディングノートは、人生の振り返りと今後の意思を明確にするためのものです。具体的には、自分の生い立ちや家族構成、経歴、趣味、友人関係などを記録し、自分がどのように生きてきたかを振り返ります。また、自分が大切にしている価値観や信念、最後に伝えたいメッセージ、葬儀の希望、財産の分配などを記載します。
エンディングノートの内容
エンディングノートの内容は、個人の自由に任されていますが、以下の項目が一般的に含まれます:
個人情報:名前、生年月日、住所、連絡先、家族構成
人生の振り返り:生い立ち、学歴、職歴、趣味、特技、友人関係
健康情報:病歴、現在の健康状態、かかりつけ医の情報
資産情報:銀行口座、保険、年金、証券、不動産、負債
終末期の希望:延命治療の希望、臓器提供の意思、介護の希望
葬儀の希望:葬儀の形式、場所、喪主、宗教、戒名
遺言書の有無:遺言書の場所、内容の概要
メッセージ:家族や友人への最後のメッセージ、感謝の言葉
エンディングノートの作成と保管
エンディングノートは、書店やインターネットで購入できる専用のノートを使用するか、自分で作成することも可能です。内容を定期的に見直し、最新の情報を反映させることが重要です。また、エンディングノートは法的効力を持たないため、家族や信頼できる人に存在を知らせ、適切に保管しておくことが大切です。
4.遺言書:法的効力を持つ意思表示
遺言書の役割
遺言書は、エンディングノートで示した意思を法的に実行するための文書です。遺産の分割方法や財産の管理者、未成年の子どもの後見人、葬儀の方法など、具体的な指示を法的に拘束力のある形で残すことができます。遺言書を作成することで、相続人間のトラブルを防ぎ、自分の意思を確実に実現することができます。
遺言書の種類
遺言書には、主に以下の3種類があります:
自筆証書遺言:本人が遺言の全文、日付、署名を自筆で書き、押印します。費用がかからず、手軽に作成できますが、形式の不備や紛失のリスクがあります。
公正証書遺言:公証人が遺言者の意思を聞き取り、公正証書として作成します。公証人役場で保管されるため、紛失の心配がなく、法的に確実です。費用がかかりますが、最も信頼性の高い方法です。
秘密証書遺言:本人が遺言書を作成し、署名押印した後、公証人と証人の前で封印して保管します。遺言の内容を秘密にできる一方で、形式不備のリスクがあります。
遺言書の作成と保管
遺言書を作成する際には、以下の点に注意する必要があります:
形式要件の遵守:遺言書の形式要件を厳守することが重要です。不備があると無効となる可能性があります。
専門家の助言:弁護士や司法書士に相談し、適切な内容と形式で遺言書を作成することをお勧めします。
保管方法:自筆証書遺言の場合、遺言書保管制度を利用して法務局で保管するか、信頼できる人に預けると良いでしょう。公正証書遺言は公証人役場で保管されるため、安心です。
エンディングノートと遺言書の連携
エンディングノートと遺言書は、互いに補完し合う関係にあります。エンディングノートで自分の思いや希望を整理し、遺言書でその意思を法的に実行することで、総合的な人生設計を実現できます。具体的には、以下のように連携させると効果的です:
エンディングノートの活用:エンディングノートで示した希望や思いをもとに、遺言書の内容を具体化します。特に、財産分与や葬儀の希望など、法的に重要な事項を明確にします。
遺言書の見直し:エンディングノートの内容を定期的に見直し、遺言書の内容も必要に応じて更新します。家族状況や財産状況の変化に応じて、遺言書を最新の状態に保つことが重要です。
家族とのコミュニケーション:エンディングノートを通じて家族に自分の意思を伝え、遺言書の存在と内容についても理解を得るよう努めます。事前に家族との話し合いを行うことで、相続トラブルを未然に防ぐことができます。
5.まとめ
エンディングノートと遺言書は、人生の最終段階における意思を明確にし、その実現を法的に保障するための重要なツールです。エンディングノートで自分の思いや希望を整理し、遺言書でその意思を法的に実行することで、家族に安心と信頼を与えることができます。以下のポイントに注意して、エンディングノートと遺言書を効果的に活用しましょう:
エンディングノートで人生を振り返り、今後のことを整理する。
遺言書を作成し、法的効力を持たせる。
専門家の助言を受け、適切な形式で遺言書を作成する。
エンディングノートと遺言書を連携させ、総合的な人生設計を行う。
家族とのコミュニケーションを大切にし、意思を共有する。
これらの手順を踏むことで、安心して人生の最終段階を迎えることができ、家族に対しても負担を軽減することができます。
そうなんです。皆、なぜ遺言書を作成するのかというと「安心」が欲しいわけです。遺言書にも「付言事項」といって、法的効力は及ばないものの、家族への想いなどを残せるようにはなっていますが、長文で書かれている者は見たことがありません。家族への想いや自分の考えなどは、まずはエンディングノートにしたため、その後、遺言書を作成することで円滑に進められると感じました。
自筆証書遺言は、遺言者が自分で書き残す形式の遺言書で、作成や変更が比較的容易であるため、多くの人に利用されています。しかし、その一方で法的効力を持たせるためには一定の要件を満たす必要があります。以下に、自筆証書遺言を作成する際に気を付けるべきポイントを詳しく説明します。
目次
1. 全文を自筆で書く
2. 日付の記載
3. 署名と押印
4. 遺言内容の明確化
5. 法定相続分の確認
6. 保管場所の選定
7. 訂正方法の注意
8. 家族や相続人への配慮
9. 法的アドバイスの活用
10. 定期的な見直し
11. 遺言執行者の指定
12. 公正証書遺言との比較
まとめ
1. 全文を自筆で書く
自筆証書遺言の最大の特徴は、遺言者が全文を自筆で書かなければならない点です。パソコンやワープロを使って作成したり、他人に書いてもらったりすることは無効です。また、本文だけでなく、日付や署名も全て自筆で書く必要があります。
2. 日付の記載
遺言書には、作成した日付を必ず記載しなければなりません。日付がなければ遺言書としての効力を持ちません。また、「平成〇〇年〇月〇日」といった具体的な日付を書く必要があり、「吉日」などの曖昧な表現は避けましょう。日付が特定できない場合、遺言書全体が無効になる可能性があります。
3. 署名と押印
遺言書には、遺言者の署名と押印が必要です。署名は自筆でフルネームを記載し、押印は実印でなくても構いませんが、認め印よりも印鑑登録されている印鑑が望ましいです。署名と押印を忘れると、遺言書が無効になる恐れがあります。
4. 遺言内容の明確化
遺言内容はできるだけ具体的かつ明確に書きましょう。例えば、財産の分割方法や相続人の指定について、曖昧な表現を避け、具体的な金額や割合、物件の詳細などを記載します。また、相続人が複数いる場合は、それぞれの相続分を明確に示すことが重要です。遺言内容が不明確であると、遺言書が無効になったり、相続人間で争いが生じる可能性があります。
5. 法定相続分の確認
遺言書作成時には、法定相続分についても確認しておきましょう。法定相続分を無視した内容にすると、相続人間で争いが生じる可能性があります。特に、遺留分を侵害しないよう注意が必要です。遺留分は、一定の相続人に最低限保障されている相続分であり、これを侵害すると遺留分減殺請求が行われる可能性があります。
6. 保管場所の選定
自筆証書遺言は遺言者自身で保管することが多いですが、遺言書の存在や場所が相続人に知られなければ意味がありません。信頼できる人に保管場所を伝えるか、公証役場や法務局での預かりサービスを利用することを検討しましょう。2019年7月からは、自筆証書遺言を法務局で保管する制度も始まりました。この制度を利用すると、紛失や偽造のリスクを軽減できます。
7. 訂正方法の注意
自筆証書遺言の訂正には厳格なルールがあります。内容を訂正する場合は、訂正箇所に二重線を引き、訂正した旨を記載し、訂正箇所の近くに署名と押印を行います。訂正方法が適切でない場合、訂正部分が無効になる可能性があるため、慎重に行う必要があります。
8. 家族や相続人への配慮
遺言書の内容について、家族や相続人に配慮することも大切です。突然の遺言内容に驚かせたり、相続人間のトラブルを招かないように、できるだけ事前に意向を伝えておくと良いでしょう。これにより、遺言の内容を理解してもらいやすくなり、円滑な相続手続きを進めることができます。
9. 法的アドバイスの活用
自筆証書遺言を作成する際には、法律の専門家に相談することをお勧めします。弁護士や司法書士、税理士などの専門家のアドバイスを受けることで、遺言書が法律的に有効であることを確認できます。また、専門家の助言により、相続税の対策や財産分割の方法についても最適なアドバイスを受けることができます。
10. 定期的な見直し
自筆証書遺言は、一度作成したらそれで終わりではありません。家庭状況や財産状況が変わるたびに、定期的に見直しを行うことが重要です。見直しを怠ると、遺言書の内容が現状に合わなくなり、相続トラブルを招く可能性があります。
11. 遺言執行者の指定
遺言執行者を指定することで、遺言書の内容を確実に実行することができます。遺言執行者には、信頼できる家族や友人、または専門家を選ぶと良いでしょう。遺言執行者が指定されていない場合、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる必要が出てきます。
12. 公正証書遺言との比較
自筆証書遺言には多くのメリットがありますが、リスクも伴います。特に、形式不備による無効リスクや、紛失や改ざんのリスクを考慮すると、公正証書遺言も検討する価値があります。公正証書遺言は公証人が関与するため、法的効力が高く、形式不備のリスクが少ないです。
まとめ
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、法的効力を持たせるためには多くの注意点があります。全文自筆、日付の記載、署名と押印、明確な内容、法定相続分の確認、保管場所の選定、訂正方法の注意、家族や相続人への配慮、専門家のアドバイス、定期的な見直し、遺言執行者の指定、公正証書遺言との比較といったポイントを押さえて、適切な自筆証書遺言を作成することが重要です。こうした注意点を踏まえて遺言書を作成することで、相続人間のトラブルを未然に防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。
不動産は、生前対策として非常に有効な手段です。相続税の負担を軽減し、遺産分割をスムーズに行うために不動産を活用することは、多くのメリットがあります。以下に、不動産を利用した生前対策のメリットを詳しく説明します。
目次
1. 不動産の評価減効果
2. 賃貸不動産による収益の確保
3. 生前贈与による相続税対策
4. 不動産の活用による財産の保全
5. 不動産の活用による相続人間の公平性の確保
6. 事業承継の円滑化
7. 相続税の納税猶予制度の活用
8. 遺言書との併用
9. 不動産のリノベーションによる価値向上
まとめ
1. 不動産の評価減効果
不動産の評価額は、相続税評価額として固定資産税評価額や路線価などが基準となります。これらの評価額は、実際の市場価格よりも低く設定されることが一般的です。そのため、不動産を相続財産に組み込むことで、評価額を低く抑え、相続税の負担を軽減することができます。また、賃貸物件の場合、借地権や借家権が考慮され、さらに評価額が減少する可能性があります。
2. 賃貸不動産による収益の確保
賃貸不動産を所有している場合、相続人にとって安定した収益源となります。賃貸収入は現金収入であり、相続税の支払いや生活費の確保に役立ちます。また、賃貸物件は相続時における評価額が減少するため、相続税の負担をさらに軽減する効果があります。特に、長期間にわたり安定した収益を得られる賃貸物件は、相続後の家族の経済的な安定にも寄与します。
3. 生前贈与による相続税対策
不動産を生前に贈与することで、相続税の課税対象となる財産を減少させることができます。生前贈与には年間110万円までの非課税枠があり、この枠を利用して少額ずつ贈与することが一般的です。また、不動産の一部を贈与することで、相続時の評価額を分割し、相続税の負担を軽減することができます。特に、子供や孫に不動産を贈与することで、将来の相続税負担を分散させることが可能です。
※不動産の場合、評価額は高額になると思われます。そこで、生前贈与対策として行うのは、「持分の割合をきめて贈与する」手法で対策をすることができます。
4. 不動産の活用による財産の保全
不動産は、現金や株式と異なり、物理的な財産であるため、価値が安定しやすい特性があります。これにより、インフレーションや市場の変動によるリスクを回避しやすく、財産の保全に役立ちます。特に、立地条件の良い不動産は、将来的に価値が上昇する可能性が高く、長期的な資産価値の維持に寄与します。
5. 不動産の活用による相続人間の公平性の確保
不動産を活用することで、相続人間の公平性を確保することができます。例えば、遺言書で不動産の分割方法を明示することで、相続人間のトラブルを防ぐことができます。また、複数の不動産を所有している場合、それぞれの相続人に異なる物件を分配することで、公平な相続を実現することができます。さらに、特定の相続人に対して生前に不動産を贈与することで、相続時の不公平感を軽減することも可能です。
6. 事業承継の円滑化
不動産を所有している場合、事業承継がスムーズに行えるというメリットがあります。特に、事業用不動産は、事業の継続性を保つために重要な資産です。生前に事業用不動産を後継者に贈与することで、事業承継の準備を整え、相続時の混乱を防ぐことができます。また、事業用不動産を利用した経営資源の活用や、新たな事業展開の基盤としても活用することが可能です。
7. 相続税の納税猶予制度の活用
農地や事業用資産を相続する場合、一定の条件を満たすことで相続税の納税猶予を受けることができます。これは、農業や事業の継続を支援するための制度であり、生前に適切な準備を行うことで、この制度を活用することができます。例えば、農地の相続においては、農業を継続する意思を明確にし、適切な手続きを行うことで、相続税の負担を軽減することができます。
8. 遺言書との併用
不動産を活用した生前対策は、遺言書と併用することでさらに効果を高めることができます。遺言書に不動産の分割方法や受取人を明確に記載することで、相続時のトラブルを防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。また、遺言書を作成することで、生前に贈与した不動産についても明確に意思を示すことができ、相続人間の混乱を防ぐことができます。
9. 不動産のリノベーションによる価値向上
生前に不動産をリノベーションすることで、資産価値を向上させることができます。リノベーションにより、不動産の魅力を高め、賃貸収益を増加させることが可能です。また、相続人にとっても、リノベーション済みの不動産は魅力的な資産となり、相続後の活用がしやすくなります。これにより、相続時のトラブルを防ぎ、円滑な資産承継を実現することができます。
まとめ
不動産を利用した生前対策には、不動産の評価減効果、賃貸不動産による収益の確保、生前贈与による相続税対策、不動産の活用による財産の保全、不動産の活用による相続人間の公平性の確保、事業承継の円滑化、相続税の納税猶予制度の活用、遺言書との併用、不動産のリノベーションによる価値向上など、多くのメリットがあります。これらのメリットを最大限に活用するためには、専門家の助言を受けながら適切な不動産戦略を立てることが重要です。不動産を効果的に活用することで、相続税の負担を軽減し、家族の生活基盤を守りつつ、円滑な相続手続きを実現することができます。
生命保険は、相続対策として非常に有効な手段の一つです。相続税の負担を軽減し、遺産分割をスムーズに行うために生命保険を活用することは、多くのメリットがあります。以下に、生命保険を利用した生前対策のメリットを詳しく説明します。
目的
1. 非課税枠の活用
2. 相続税の支払い資金の確保
3. 遺産分割の円滑化
4. 迅速な支給
5. 受取人の自由な指定
6. 遺留分対策
7. 保険金の種類に応じた柔軟な対応
8. 保険料の払い込みと相続税の軽減
9. 保険商品の多様性
まとめ
1. 非課税枠の活用
生命保険金には、相続税の非課税枠があります。具体的には、法定相続人一人当たり500万円の非課税枠が適用されます。このため、生命保険に加入することで、一定額までの保険金が相続税の課税対象外となります。例えば、法定相続人が3人いる場合、最大1500万円までの生命保険金が非課税となり、相続税の負担を大幅に軽減することができます。
※生命保険の保険金は、法律上は「受取人の財産」となります。しかし、これでは遺産の大半を生命保険にすることで、相続税申告を潜脱することにもなりかねませんので、生命保険金は「みなし相続財産」として、控除枠を設け、控除枠を超過した金額が遺産と指摘見込まれます。
2. 相続税の支払い資金の確保
相続財産に不動産や株式などの現金以外の資産が多い場合、相続税の支払いに困ることがあります。生命保険金は、受取人に直接現金で支給されるため、相続税の支払い資金として活用することができます。これにより、不動産や事業資産を売却せずに相続税を支払うことが可能となり、家族の生活基盤を守ることができます。
3. 遺産分割の円滑化
生命保険金は、指定した受取人に直接支給されるため、遺産分割協議を経ずに相続人に分配することができます。これにより、相続人間での遺産分割の争いを防ぐことができます。また、遺言書に生命保険金の受取人を明確に指定しておくことで、特定の相続人に対して確実に財産を遺すことができ、遺産分割の手続きを円滑に進めることができます。
4. 迅速な支給
生命保険金は、遺言執行や遺産分割協議を待たずに迅速に支給されます。通常、被保険者の死亡後、短期間で保険金が支払われるため、相続人が速やかに資金を受け取ることができます。これにより、葬儀費用や相続税の支払いなど、急な出費にも対応しやすくなります。
※収益物件の不動産(ローン残あり)などの現金化しにくい遺産を多く引き取った相続人に、相続税支払いのために保険の受取人にするなどの活用方法があります。
5. 受取人の自由な指定
生命保険では、受取人を自由に指定することができます。これにより、相続人以外の第三者や特定の相続人に対して確実に財産を遺すことができます。また、遺言書と併用することで、受取人の指定を明確にし、相続トラブルを未然に防ぐことができます。特に、家族構成が複雑な場合や特定の相続人に多く遺したい場合に有効です。しかし、生命保険の受取人を相続人以外の第三者にしてしまうと、税法上は「みなし相続財産の控除枠」が使えませんので注意が必要です。
6. 遺留分対策
生命保険金は遺留分の計算に含まれないため、遺留分対策としても有効です。遺留分とは、法定相続人に最低限保障される相続分のことですが、生命保険金は遺留分の対象外となります。このため、遺言書に生命保険金の受取人を指定することで、遺留分を侵害せずに特定の相続人に多くの財産を遺すことができます。
※なぜなら、遺留分という法律上の相続人の権利となり、法律上、生命保険金は受取人の固有の財産とされているためです。
7. 保険金の種類に応じた柔軟な対応
生命保険には、定期保険、終身保険、養老保険など、さまざまな種類があります。これにより、個々の状況やニーズに応じて、最適な保険商品を選択することができます。例えば、相続税の負担が大きい場合には、終身保険に加入して長期的に保険金を受け取ることができるようにすることが有効です。一方、短期間で多額の資金が必要な場合には、定期保険を活用することが考えられます。
8. 保険料の払い込みと相続税の軽減
生命保険料の払い込みは、被保険者が自分で行うことが一般的ですが、相続人が保険料を支払う場合には、相続税の軽減効果があります。相続人が保険料を負担することで、被保険者の財産が減少し、その結果、相続税の課税対象額が減少します。これにより、相続税の負担を軽減することができます。
9. 保険商品の多様性
生命保険には、多様な商品があり、個々のニーズに応じたプランを選択することができます。例えば、特約を付けることで、介護費用や医療費に備えることができる商品もあります。これにより、相続対策だけでなく、生前のリスクにも備えることができます。
まとめ
生命保険を利用した生前対策には、相続税の非課税枠の活用、相続税の支払い資金の確保、遺産分割の円滑化、迅速な支給、受取人の自由な指定、遺留分対策、保険金の種類に応じた柔軟な対応、保険料の払い込みと相続税の軽減、保険商品の多様性など、数多くのメリットがあります。これらのメリットを最大限に活用するためには、専門家の助言を受けながら適切な保険商品を選択し、早めに対策を講じることが重要です。生命保険を効果的に活用することで、相続税の負担を軽減し、家族の生活基盤を守りつつ、円滑な相続手続きを実現することができます。
遺言書の形式には、主に公正証書遺言と自筆証書遺言の2種類があります。
これらの遺言書のうち、公正証書遺言は、法的に確実でトラブルを防ぎやすい形式として広く利用されています。
以下に、公正証書遺言のメリットを自筆証書遺言と比較しながら詳しく説明します。
目次
1. 公正証書遺言のメリット
2. 自筆証書遺言との比較
まとめ
1. 公正証書遺言のメリット
法的確実性の高さ
公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、法的に確実な遺言書となります。公証人は法律の専門家であり、遺言内容が法律に適合しているかを確認しながら作成します。そのため、公正証書遺言は形式不備や内容不明確による無効リスクが極めて低くなります。一方、自筆証書遺言は遺言者が自分で書くため、法的要件を満たさない場合や、内容が曖昧な場合に無効になる可能性があります。
紛失や改ざんのリスクが低い
公正証書遺言は、公証役場に保管されるため、遺言書が紛失したり、第三者によって改ざんされるリスクが低いです。公証役場に保管されているため、遺言書の存在を確認しやすく、相続人間でのトラブルを防ぐことができます。一方、自筆証書遺言は遺言者自身で保管することが多く、保管場所が不明だったり、紛失したりするリスクが高くなります。
内容の明確化
公正証書遺言は、公証人が内容を確認しながら作成するため、遺言内容が明確であることが保証されます。公証人は遺言者の意思を正確に反映し、法律に基づいて適切な表現を用いて遺言書を作成します。そのため、相続人間での解釈の違いや争いが生じにくくなります。一方、自筆証書遺言は遺言者が自由に書くため、内容が曖昧であったり、誤解を招く表現が含まれている場合があります。
遺言執行の容易さ
公正証書遺言は、公証人が認証しているため、遺言執行がスムーズに行われます。遺言書が法的に確実であることから、相続手続きが迅速に進むことが期待できます。また、公証人が遺言書の内容を証明するため、相続人間での争いが少なくなります。一方、自筆証書遺言は、遺言書の内容や形式に不備がある場合、遺言執行が困難になることがあります。特に、認知の争い(「うちの親父は、この遺言書を書いたとき認知症だったんだ」といったもの)について、公証人と証人2人の立会で作成しますので、ある程度は防ぐことができます。
訂正や変更の簡便さ
公正証書遺言は、公証人に依頼することで簡単に訂正や変更が可能です。遺言者の意思を正確に反映するために、公証人が内容を確認しながら訂正を行います。一方、自筆証書遺言は、遺言者自身で訂正を行う必要がありますが、訂正方法に厳格なルールがあり、適切に訂正しないと無効になる可能性があります。
2. 自筆証書遺言との比較
手軽さと費用の違い
自筆証書遺言は、遺言者が自分で書くため、作成や変更が手軽で費用もかかりません。一方、公正証書遺言は、公証人に依頼するため、手続きがやや煩雑であり、作成費用も発生します。しかし、公正証書遺言は法的確実性が高く、相続トラブルを防ぐための投資と考えることができます。
法的要件の厳格さ
自筆証書遺言は、全文を遺言者が自筆で書く必要があり、日付や署名、押印も自筆で行う必要があります。これに対し、公正証書遺言は、公証人が作成するため、遺言者が自筆で書く必要はありません。そのため、身体的な制約がある場合でも、公正証書遺言は作成しやすいです。
保管と開示の違い
自筆証書遺言は、遺言者自身が保管するため、保管場所が不明確な場合や、紛失・改ざんのリスクがあります。一方、公正証書遺言は公証役場に保管されるため、遺言書の存在や内容を確実に確認でき、相続人間のトラブルを防ぐことができます。
遺言執行のスムーズさ
自筆証書遺言は、遺言執行の際に検認手続きが必要です。検認手続きとは、家庭裁判所が遺言書の形式を確認し、遺言書の存在を相続人に知らせる手続きです。この手続きがあるため、遺言執行が遅れる可能性があります。一方、公正証書遺言は検認手続きが不要であり、遺言執行が迅速に行われます。
専門家の関与とアドバイス
公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、法律の専門家のアドバイスを受けながら作成することができます。これにより、遺言内容が法律に適合し、相続トラブルを未然に防ぐことができます。一方、自筆証書遺言は、遺言者自身が作成するため、専門家のアドバイスを受ける機会が少なく、法的に不備が生じる可能性があります。
まとめ
公正証書遺言は、法的確実性の高さ、紛失や改ざんのリスクの低さ、内容の明確化、遺言執行の容易さ、訂正や変更の簡便さなど、多くのメリットがあります。一方、自筆証書遺言は、手軽さと費用の安さがメリットですが、法的要件の厳格さや保管のリスク、遺言執行の煩雑さがデメリットとなります。遺言書を作成する際には、自身の状況やニーズに応じて、公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらが適しているかを検討し、専門家のアドバイスを受けながら適切な遺言書を作成することが重要です。これにより、相続トラブルを未然に防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。
ただし、公正証書遺言であっても、争いにより裁判で覆る可能性があります。遺言者の状態をしっかりみて、推定相続人である家族の方たちとしっかりコミュニケーションをとって、対策を講じることが重要です。
生前対策を考えるとき、相続発生した場合を想定して行います。しかし、何から手を付けていいやらわからない方も多いのではと思います。今回、専門家への相談も含め、具体的な内容について少しお話をしたいと思います。
目次
1.遺言書の作成
2.生前贈与
3.不動産の活用
4.生命保険の活用
5.専門家に相談
1.遺言書の作成
遺言書の作成は相続対策の基本です。遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、公正証書遺言が最も一般的で信頼性が高いです。公証人の立会いのもと作成され、改ざんの心配がないため、法的効力が強いです。遺言書を作成することで、遺産分割の方法を明確にし、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。特に、家族構成が複雑な場合や特定の相続人に多く遺したい場合などは、遺言書を作成することが有効です。また、遺言執行者を指定することで、遺産分割の手続きがスムーズに進むようになります。
2.生前贈与
生前贈与は、相続財産を減少させることで相続税の負担を軽減する方法です。年間110万円までの贈与は非課税であるため、この非課税枠を活用して少額ずつ財産を贈与することが一般的です。また、特定の目的のための贈与も有効です。例えば、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与には、それぞれ非課税枠が設けられており、これを活用することで、子供や孫のための資金を提供しつつ、相続税の課税対象額を減少させることができます。さらに、住宅取得資金の贈与も非課税枠があるため、家族の住宅購入を支援しつつ、相続税対策を行うことが可能です。
※暦年贈与は、令和6年1月1日から相続発生時からさかのぼって7年間分の贈与を相続財産に組み戻すことになっております。
3.不動産の活用
不動産は相続財産の中でも大きな割合を占めることが多く、これを有効に活用することで相続税対策が可能です。例えば、不動産を賃貸物件として運用することで収益を得ることができます。また、不動産の評価額は市場価格よりも低くなることが多いため、相続税の負担を軽減する効果があります。持ち家を子供名義に変更することで、生前贈与の非課税枠を利用して相続税の負担を軽減することも考えられます。ただし、不動産の運用や名義変更には法的な手続きや費用がかかるため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
※実際、これを活用されている方もいます。しかし、融資の額が大きく、不動産の評価の額が小さくなるといった、額が大きい内容での節税対策になりますので、利用できる方は限られます。
4.生命保険の活用
生命保険は、相続税対策として非常に有効な手段です。生命保険金には、法定相続人1人当たり500万円の非課税枠が設けられており、この枠を活用することで相続税の負担を軽減することができます。また、生命保険金は受取人が指定されているため、遺産分割協議を経ずに迅速に支給されるメリットもあります。これにより、相続税の支払い資金を確保することができるため、相続人が現金不足に陥るリスクを軽減できます。さらに、生命保険は契約者が自由に受取人を指定できるため、特定の相続人に対して確実に財産を遺すことができます。
5.専門家に相談
相続対策は非常に複雑であり、個々の状況に応じた最適な対策を講じるためには、専門家の助言が欠かせません。税理士や弁護士、司法書士などの専門家に相談することで、最新の法改正や税制に基づいた適切な対策を講じることができます。例えば、税理士は相続税の申告や生前贈与の計画において有益なアドバイスを提供し、弁護士は遺言書の作成や遺産分割協議の進行をサポートします。専門家のアドバイスを受けることで、相続税の負担を最小限に抑えつつ、円滑な相続手続きを実現できます。
まとめ
これらの生前対策を組み合わせることで、相続税の負担を軽減し、相続人間のトラブルを防ぎ、円滑な財産の承継を実現することが可能です。早めに対策を始めることで、より効果的な相続対策が行えます。
しかし、上記内容を検討する前に、まずは、専門家への相談を考えてください。分からない状態での対策は、実際何も効力がないケースもございます。せっかくの対策を効果的に実現するためにも、専門家への相談は欠かせませんからね。
今回は、不動産を共有で所有することの不利益について解説したいと思います。
共有不動産は、様々な問題を抱えています。
元のオーナー間で、関係性が良好でも、その次の世代ではどうなるかわかりません。
また、身分上の変化(例えば離婚)などにより、関係性が悪化する場合も考えられます。
目次
1. 意思決定の難航
2. 維持費用の負担と分担
3. 利用方法の衝突
4. 相続時の問題
5. 不動産の売却の困難
6.結論
1. 意思決定の難航
不動産を共有する場合、複数の共有者が関与するため、重要な決定を下す際に全員の合意が必要となります。例えば、不動産の売却や賃貸に関する決定、修繕やリノベーションの実施、あるいは不動産の利用方法についての決定など、共有者全員の同意を得ることが求められます。
例: ある不動産を3人の共有者が所有している場合、一人が不動産を売却したいと思っても、他の2人が反対することがあります。このような場合、売却を進めることはできません。合意を得るための交渉が長引き、結果として迅速な意思決定が困難になります。
2. 維持費用の負担と分担
不動産の共有者は、維持費用や修繕費用を分担する必要があります。しかし、各共有者がその負担をどのように分け合うかについて意見が一致しないことがあります。一部の共有者が費用負担を拒否したり、経済的に負担できない場合、他の共有者がその分を補填しなければならないことがあります。
例: 建物の屋根が老朽化し、修繕が必要な場合、共有者の一人が修繕費用を負担できないとしたら、他の共有者がその分を負担することになり、不公平感が生じます。また、修繕が先延ばしにされることで、不動産の価値が下がるリスクもあります。
3. 利用方法の衝突
共有不動産の利用方法についても意見の対立が生じることがあります。ある共有者がその不動産を賃貸に出したいと考える一方で、別の共有者は自己利用を望むことがあります。このような場合、利用方法についての合意を得ることが難しく、不動産の効果的な利用が妨げられます。
例: 共有不動産が都市部のマンションで、一部の共有者が投資目的で賃貸に出したいと考え、他の共有者が自己利用や家族のために利用したいと考える場合、双方の意見が対立し、最適な利用方法を見つけることが困難です。
4. 相続時の問題
共有不動産は相続時に特に複雑な問題を引き起こすことがあります。共有者の一人が亡くなった場合、その持分は相続人に引き継がれますが、相続人が複数いる場合、新たな共有者が増えることになります。これにより、意思決定がさらに複雑化し、摩擦が生じやすくなります。
例: 共有者の一人が亡くなり、その持分が3人の子供に相続された場合、新たに3人の共有者が加わります。これにより、共有者の数が増え、全員の意見を一致させることがますます難しくなります。特に、相続人同士が意見を異にする場合、長期的な対立が生じる可能性があります。
※通常は遺産分割協議により、相続人のどなたか一人に移転しますが、争っている場合、法定相続分での登記がなされてしまい、共有状態になります。
5. 不動産の売却の困難
共有不動産を売却する場合、全ての共有者の同意が必要です。これが得られない場合、売却は困難となり、結果として不動産の流動性が低下します。また、一部の共有者が売却に積極的でない場合、市場価格よりも低い価格での売却を余儀なくされることもあります。
例: 共有者の一人が緊急に現金を必要とし、不動産を売却したいと考えても、他の共有者がこれに同意しない場合、売却は進められません。結果として、緊急に資金が必要な共有者は他の方法で資金を調達する必要が生じ、場合によっては不利な条件での取引を余儀なくされることがあります。
6.結論
不動産の「共有」は、一見するとリスク分散や共同利用の利点があるように見えますが、実際には多くの不利益をもたらします。意思決定の難航、維持費用の分担の不公平、利用方法の衝突、相続時の問題、売却の困難など、共有者間の摩擦や対立が生じやすく、これらが長期的に不動産の価値や利用効率に悪影響を与えることがあります。
共有不動産を所有する場合、これらの問題を予見し、共有者間で明確なルールを設定し、信頼関係を築くことが重要です。
それでもなお、共有による不利益を完全に避けることは難しいため、個別所有や法人による所有など、他の所有形態を検討することも一つの選択肢となります。
相続人が一人であっても、相続の手続きは必ずしも簡単ではありません。
その理由について、以下で詳しく説明します。
目次
1.相続の基本的な流れ
2.手続きが簡単でない理由
3.結論
1.相続の基本的な流れ
相続の手続きは、相続人の人数に関係なく、以下のような基本的な流れをたどります。
(1)相続人の確認:相続人が一人であることを確認するために、被相続人(亡くなった方)の戸籍を遡って確認する必要があります。この過程で、知られていなかった相続人がいる可能性もあり、複雑になることがあります。
(2)遺産の調査:被相続人の財産を調査し、相続対象の資産と負債を把握します。これには、不動産、預貯金、株式、生命保険などが含まれます。また、負債があればそれも含めて調査しなければなりません。
(3)相続放棄の検討:相続財産に負債が多い場合、相続人は相続放棄を検討することがあります。相続放棄をする場合、家庭裁判所に手続きを行う必要があり、手続き自体が複雑です。
※遺産分割協議書の作成:相続人の調査の結果、他にも相続人がいることが判明した場合、遺産分割協議書を作成して相続内容を明文化することが求められます。
(4)名義変更手続き:相続した財産の名義変更手続きが必要です。例えば、不動産の名義変更や銀行口座の解約・名義変更などが挙げられます。これには、それぞれに異なる書類や手続きが必要です。(法務局にて、法定相続情報一覧図の作成することで、共通する戸籍等の書類を持参しなくてもよくなります。)
2.手続きが簡単でない理由
相続人が一人であっても、相続の手続きが簡単でない理由はいくつかあります。
複雑な書類手続き
相続手続きには、多くの書類が必要です。例えば、被相続人の死亡届、戸籍謄本、遺産分割協議書、相続関係説明図、財産評価証明書などがあります。これらの書類を揃えるだけでも時間と手間がかかります。特に、相続人が一人でも、すべての財産に対して適切な書類を用意し、各機関に提出する必要があります。
財産の評価と分割
被相続人が複数の財産を持っていた場合、それらの評価を行う必要があります。不動産の場合、評価額を算定するために専門家の査定が必要となることがあります。また、金融資産も種類ごとに評価額を確認しなければなりません。相続人が一人であっても、これらの手続きは省略できません。
税務申告
相続財産が一定の額を超える場合、相続税の申告が必要です。相続税の計算には、複雑な税法の知識が必要であり、税理士の助けを借りることが多いです。また、税務署に対して提出する書類も多く、申告期限も厳格です。相続人が一人でも、相続税の申告手続きを行わなければならない場合があります。
負債の調査
被相続人が負債を抱えていた場合、その全貌を把握する必要があります。負債がある場合、相続人はそれを引き継ぐか、相続放棄を選択することができます。負債の有無を確認するためには、被相続人の過去の金融取引や借入記録を詳しく調査しなければならず、これも一筋縄ではいきません。
遺言書の存在
被相続人が遺言書を残していた場合、その内容に従って相続手続きを進める必要があります。遺言書が法的に有効かどうかを確認し、内容が法定相続分と異なる場合には、相続人として異議を申し立てることも考えられます。このようなケースでは、弁護士の助けを借りることが多くなります。
3.結論
相続人が一人であっても、相続手続きは多岐にわたり、複雑な手続きを要します。書類の準備、財産の評価、税務申告、負債の調査など、すべてのプロセスを適切に遂行するには専門的な知識と時間が必要です。特に、遺産に負債が含まれている場合や、複数の財産がある場合、手続きの複雑さは一層増します。このため、相続手続きが簡単でないことを理解し、必要に応じて専門家の助けを借りることが重要です。
借金の帳消しや過払い金が戻るといった宣伝が行われていますが、そのすべてが詐欺であるわけではありません。しかし、こうした宣伝には詐欺的な手法が含まれているケースもあるため、注意が必要です。以下に、具体的なポイントを挙げて説明します。
目次
1. 過払い金返還請求の現実
2. 借金帳消しの宣伝とそのリスク
3. 詐欺のリスクと注意点
4. 信頼できる情報源の活用
5. まとめ
1. 過払い金返還請求の現実
過払い金の実態:
2000年代後半から2010年代前半にかけて、過払い金返還請求は非常に多くの人々に利用されました。この時期には、消費者金融などが法定上限を超える高金利で貸付を行っていたため、多くの借り手が過払い金を請求できる状況にありました。しかし、現在では、こうした高金利の貸付がほぼ解消されており、過払い金を請求できるケースは非常に少なくなっています。
(裁判所の司法統計を確認すると)
ピーク時:
件数: 約220,000件(2010年)
理由: 高金利の借入が多く、過払い金請求が急増。
現在:
件数: 約10,000件(2023年)
理由: 高金利の借入が解消され、対象となる借入がほぼなくなった。
※つまり、ピーク時の5%ほどしか、過払い事件として存在していないということになります。
過払い金の対象者:
過払い金返還請求の対象となるのは、過去に高金利で借り入れを行った人々です。現在、法定上限金利を守っている貸金業者がほとんどであり、新たな借り入れに関しては過払い金が発生しないため、過払い金の返還請求を行える人は限られています。
2. 借金帳消しの宣伝とそのリスク
借金帳消しの手段:
「借金帳消し」という言葉は、自己破産や個人再生などの法的手続きを指すことが多いです。これらの手続きは、借金を法的に整理する方法であり、実際に債務を免除または減額することが可能です。しかし、これには一定の条件が必要であり、全ての人が簡単に利用できるものではありません。
手続きの影響:
自己破産や個人再生を行うと、信用情報にその情報が記録され、一定期間は新たな借り入れが難しくなります。また、自己破産の場合は、持ち家や財産を処分する必要があるなど、生活に大きな影響を与える可能性があります。
3. 詐欺のリスクと注意点
詐欺的な業者の手口:
一部の業者は、過払い金返還や借金帳消しを簡単に行えると謳って、顧客を集めています。こうした業者は、高額な手数料を請求したり、必要のない法的手続きを勧めたりすることがあります。特に、過払い金請求の権利がないにも関わらず、請求ができると偽って手数料を取るなどの詐欺行為が問題となっています。
怪しい宣伝に注意:
「簡単に借金がゼロになる」「過払い金が必ず戻ってくる」といったキャッチフレーズを使っている業者は特に注意が必要です。こうした宣伝は、現実を誇張していることが多く、詳細を確認せずに契約すると、後で大きなトラブルに発展する可能性があります。
※特に最近ひどいと思った事件は、令和6年6月22日熊本放送が報じた「全国B型肝炎訴訟の熊本弁護団の(元)団長が1億4千万円を着したとされる問題」です。B型肝炎の広告も最近よく見ますよね。
4. 信頼できる情報源の活用
専門家のアドバイス:
借金問題や過払い金請求について検討する場合は、信頼できる弁護士や司法書士に相談することが重要です。彼らは、適切な手続きを踏んで問題を解決するためのアドバイスを提供してくれます。また、弁護士会や司法書士会などの公的な機関も利用できます。
消費者センターの利用:
不安な場合は、地元の消費生活センターに相談することも有効です。消費生活センターは、詐欺的な手口や問題のある業者についての情報を提供しており、具体的なアドバイスを受けることができます。
5. まとめ
過払い金請求や借金帳消しを謳った宣伝には注意が必要です。すべてが詐欺というわけではありませんが、中には高額な手数料を要求する悪質な業者も存在します。次の点に注意して対応することが重要です。
過払い金返還請求の現実を理解する:
現在では過払い金を請求できるケースが少なくなっているため、対象となるかどうかを慎重に確認する必要があります。
借金帳消しの手続きとその影響を把握する:
自己破産や個人再生などの手続きには一定の条件があり、生活に大きな影響を与えることがあるため、適切な情報を得ることが重要です。
詐欺のリスクを避ける:
怪しい宣伝や不必要に高額な手数料を要求する業者には注意し、信頼できる専門家や公的機関を活用して問題を解決するよう心がけましょう。
信頼できる専門家や機関を利用して、適切な情報とサポートを得ることが、トラブルを避けるための最善の方法です。
仮登記と処分禁止の仮処分は、どちらも不動産や権利に関する法律手続きにおいて重要な役割を果たしますが、それぞれの目的や効果、手続き内容は異なります。
以下に、仮登記と処分禁止の仮処分の違いについて、具体的な説明を交えながらまとめます。
目次
1.仮登記について
2.処分禁止の仮処分について
3.仮登記と処分禁止の仮処分の主な違い
4.結論
1.仮登記について
①定義と目的
仮登記は、登記の内容が最終的に確定していない段階で、将来の登記手続きに備えて権利関係を一時的に登記簿に記録する手続きです。これにより、権利の優先順位を仮に保全し、後に本登記を行う際の権利主張を確保します。
➁具体的な例
例えば、不動産の売買契約が成立したが、正式な登記が完了するまでに時間がかかる場合に仮登記を行うことが一般的です。この仮登記により、契約成立後に第三者が不動産を取得しようとしても、仮登記を行った買主の権利が優先されることになります。
③手続き
仮登記の手続きは、登記所に対して申請書を提出し、必要な書類や費用を納付することで行われます。仮登記は一時的なものであり、将来的に本登記を行うことが前提とされています。
④効果
仮登記は、権利の優先順位を確保するために重要な役割を果たしますが、仮登記自体には完全な対抗力はありません。つまり、仮登記のみでは第三者に対して完全に権利を主張することはできません。本登記が完了することで、初めて正式な権利が確定します。
※このため、本登記を急がないと、仮登記に送れる権利者(本登記することでその登記を失う者)が発生してしまうと、その権利者の「承諾証明書」がなければ、本登記をすることができません。
➄主な利用場面
不動産売買契約の成立後に正式な登記が完了するまでの間の保全
抵当権設定契約の仮段階での権利確保
農地の権利移転における農地法許可待ちの状態での保全
2.処分禁止の仮処分について
①定義と目的
処分禁止の仮処分は、裁判所が、特定の財産や権利に関して、その処分(売却や譲渡など)を一時的に禁止する命令を出す手続きです。この仮処分により、当事者間の紛争が解決するまでの間、財産や権利の現状を維持し、紛争の対象となっている財産が不当に処分されるのを防ぎます。
➁具体的な例
例えば、不動産の所有権を巡って争いがある場合に、裁判所がその不動産を処分することを禁止する仮処分を命じることで、裁判が終了するまでの間、不動産の売却や譲渡ができなくなります。これにより、裁判が長引いても、財産の現状が維持され、権利の争いが公正に解決されることが保障されます。
※仮に仮処分の登記後に登記をしたとしても、裁判で権利が認められると、当該権利者の承諾証明書がなくても、簡易な手続きで、その登記の抹消をすることができます。
③手続き
処分禁止の仮処分は、裁判所に対して申立書を提出し、必要な証拠を提出することで行われます。裁判所は、仮処分を命じるために必要な要件を満たしているかどうかを審査し、要件が満たされていると判断した場合、仮処分命令を発出します。
④効果
処分禁止の仮処分は、裁判所の命令によって強制力を持ち、当事者がその命令に従わない場合には、法的な制裁が科されることがあります。これにより、当事者が不動産や権利を不当に処分することができなくなり、財産の現状が維持されます。
➄主な利用場面
不動産や動産の所有権を巡る紛争の間に、財産が不当に処分されるのを防ぐ
企業間の契約違反などで、特定の財産が処分されるのを防ぐ
家庭内の離婚や相続などで、財産分与に関連する財産が勝手に処分されるのを防ぐ
3.仮登記と処分禁止の仮処分の主な違い
①目的の違い
仮登記:将来の権利関係を確定するための準備として、権利の優先順位を仮に保全することを目的としています。
処分禁止の仮処分:財産や権利の現状を維持し、紛争の対象となっている財産が不当に処分されるのを防ぐことを目的としています。
➁手続きの違い
仮登記:登記所に対して申請を行い、必要な書類や費用を納付することで手続きが進められます。
処分禁止の仮処分:裁判所に対して申立てを行い、裁判所の審査を経て命令が発出されます。
③効果の違い
仮登記:権利の優先順位を確保するが、完全な対抗力は持たない。将来的に本登記を行うことで権利が確定します。
処分禁止の仮処分:裁判所の命令により強制力があり、命令に従わない場合には法的な制裁が科されることがあります。
④利用場面の違い
仮登記:主に不動産取引や権利移転の準備段階で利用されます。
処分禁止の仮処分:財産や権利を巡る紛争がある場合に、その財産や権利の現状を維持するために利用されます。
4.結論
仮登記と処分禁止の仮処分は、それぞれ異なる目的と手続きを持ち、異なる状況で利用されます。仮登記は将来の権利関係を確定するための準備として、権利の優先順位を仮に保全する手続きです。一方、処分禁止の仮処分は、財産や権利の現状を維持し、紛争の対象となっている財産が不当に処分されるのを防ぐ手続きです。
両者の違いを理解し、適切な場面でそれぞれの手続きを活用することが、法的なリスク管理において重要です。
ちなみに、処分禁止の仮処分の登記での裁判が確定した場合、仮処分に遅れる登記を抹消するには、判決による登記と移転登記を同時に申請する方法があります。
遅れる登記がない場合は、処分禁止の仮処分登記抹消の嘱託を書記官に依頼する必要があります。遅れる登記の抹消には、仮登記のように相手の承諾証明書は必要なく、「単独申請」で登記申請することが可能です。
その際に、添付する書類として「通知証明情報」というものがありますが、これは、抹消される遅れる登記の権利者に対し通知をしたことを証する書面となります。
名義人の登記簿上の住所地に内容証明郵便により通知をし、これを発した日から1週間経過で到達したものとみなされます。
仮登記の承諾証明書よりも手続き上、楽ですし確実です。
裁判するのが面倒だから仮登記を安易に選択すると、後に事故の権利の主張ができないなんてことが起こりえますので、専門家に相談することをお勧めいたします。
相続に関する準備を進める中で、「生前の覚書」が遺言書として有効なのかどうかという疑問を持つ人は少なくありません。遺言書は、遺産の分割や相続の際に重要な役割を果たしますが、その形式や内容には法律上の厳格な要件が存在します。
本稿では、生前の覚書が遺言書として認められるかどうかについて、具体的な条件や考慮すべき点を詳細に解説します。
目次
1. 遺言書の法的要件
2. 生前の覚書と遺言書
3. 覚書が無効となるケース
4. 遺言書を確実に作成するためのアドバイス
5. まとめ
1. 遺言書の法的要件
まず、遺言書として有効であるためには、法律で定められた要件を満たす必要があります。日本の民法では、以下の3つの形式が主要な遺言の方法として認められています。
1.1. 自筆証書遺言
全文自筆: 遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自筆で書き、押印します。
自筆でなければ無効: 全文を自筆で書くことが求められ、パソコンで作成したものや他人に書かせたものは無効です。
家庭裁判所での検認: 遺言者の死後、家庭裁判所での検認手続きが必要です。
1.2. 公正証書遺言
公証人の作成: 遺言者が公証人の前で遺言の内容を口述し、公証人が筆記して作成します。
証人の立会い: 遺言者が口述した内容を2人以上の証人が立ち会い、その正確性を確認します。
検認不要: 公証人が作成するため、家庭裁判所での検認手続きは不要です。
1.3. 秘密証書遺言
遺言者が作成し封印: 遺言者が遺言書を作成し、封印します。署名押印は遺言者自身が行います。
公証人と証人の確認: 公証人および2人以上の証人の前で遺言者が封印された遺言書を提出し、内容は確認されません。
検認が必要: 遺言者の死後、家庭裁判所での検認手続きが必要です。
2. 生前の覚書と遺言書
生前の覚書が遺言書として有効かどうかを判断するためには、上記の要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。
2.1. 形式の要件
自筆証書遺言の要件: 覚書が遺言者の自筆で書かれているか、日付と氏名が記載されているかを確認します。また、覚書が押印されていることも重要です。これらの要件が満たされていなければ、覚書は自筆証書遺言として無効とされる可能性が高いです。
公正証書や秘密証書の要件: 公証人や証人の関与がない場合、覚書はこれらの形式を満たすことができないため、公正証書遺言や秘密証書遺言としては無効です。
2.2. 内容の要件
遺言者の意思の明確性: 覚書の内容が遺言者の意思を明確に示しているかが重要です。遺言者の意向が明確でなく、曖昧な記述がある場合、法的に有効な遺言書として認められない可能性があります。
法定相続人の権利: 覚書の内容が法定相続人の権利を侵害している場合や、法定相続分に違反している場合は、その効力が制限されることがあります。
3. 覚書が無効となるケース
以下のような場合、覚書は遺言書として無効となる可能性があります。
3.1. 法定形式を満たさない場合
自筆でない覚書: パソコンで作成された覚書や、他人が代筆した覚書は無効です。自筆証書遺言としての要件を満たしていないため、法的効力は認められません。
日付や署名の欠如: 覚書に日付がない場合や、遺言者の署名がない場合、遺言書としての法的要件を満たさないため無効となります。
3.2. 遺言の内容が曖昧な場合
明確な意思表示がない: 覚書の内容が不明確で、遺言者の意思が具体的に示されていない場合、遺言書としての効力が認められないことがあります。
誤解を招く表現: 覚書の内容に曖昧な表現や、法的な解釈に誤解を招く可能性のある表現が含まれている場合、無効とされることがあります。
4. 遺言書を確実に作成するためのアドバイス
4.1. 専門家への相談
弁護士や司法書士の利用: 遺言書を確実に作成するためには、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが重要です。法的に有効な遺言書を作成するための助言を得ることができます。
4.2. 公正証書遺言の作成
確実な手続き: 公正証書遺言は公証人が作成するため、法的要件を確実に満たすことができます。また、家庭裁判所での検認手続きが不要なため、手続きがスムーズに進むメリットがあります。
4.3. 定期的な見直し
内容の更新: 遺言書は定期的に見直し、変更が必要な場合は新しい遺言書を作成します。遺言者の意思が変わった場合や、家族構成に変更があった場合は、遺言書を最新の状態に保つことが重要です。
5. まとめ
生前の覚書が遺言書として有効かどうかは、法律で定められた形式的および内容的要件を満たしているかによって決まります。一般的に、覚書が遺言書として認められるためには、自筆証書遺言としての要件を満たす必要がありますが、法的要件を満たしていない場合は無効となります。遺言書を確実に有効なものとするためには、専門家の助言を受け、公正証書遺言など、法的に確実な方法で作成することが推奨されます。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
相続人の方が、すでに別所帯を持っており、実家をどのようにすればいいのか、悩まれている方も多いと思います。
今回は、実家の相続手続きをする際の注意点についてお話をしたいと思います。
目次
1. 相続手続きの基本的な流れ
2. 相続手続きにおける注意点
3. 実家の相続における特有の注意点
4. 専門家の活用
5. まとめ
1. 相続手続きの基本的な流れ
実家の相続手続きは、以下のような一般的なステップを経て進められます。
①相続の開始:被相続人(親など)が死亡した時点で相続が開始されます。
➁相続人の確定:戸籍謄本などを用いて法定相続人を確定します。被相続人に子供がいない場合、両親や兄弟姉妹など、関係者全員の確認が重要です。
③遺産の調査・評価:遺産のリストアップと評価を行います。具体的には不動産、預貯金、株式、負債などを含みます。
④遺産分割協議:相続人全員で遺産の分割方法を協議し、合意を得ます。合意内容は遺産分割協議書に記載します。
➄相続税の申告・納付:基礎控除を超える遺産がある場合、相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行います。配偶者控除(1億6千万円)を適用する場合も、申告が必要です。
⑥登記・名義変更:不動産の登記名義変更や金融機関での名義変更を行います。
2. 相続手続きにおける注意点
(1)相続人の調査
相続人の漏れがないか確認: 戸籍謄本を遡って確認し、すべての相続人を確定することが重要です。特に、兄弟姉妹が多い場合や複雑な家族構成の場合、相続人の漏れが起きやすいため、注意が必要です。
(2)遺産の調査
遺産の把握: 実家の不動産以外にも、預貯金や株式、負債など、すべての遺産を漏れなく調査することが大切です。遺産が複数の地域に分散している場合や、海外に資産がある場合は特に注意が必要です。
(3)遺産の評価
不動産評価の方法: 実家の不動産評価には、公示価格や固定資産税評価額、相続税評価額などの評価基準があり、それぞれ異なるため、正確に把握することが求められます。評価額が不適切だと、相続税額や分割協議に影響を及ぼす可能性があります。相続税のための評価については、税理士に確認が必要です。また、不動産登記の基準は、その年度の固定資産税評価証明書又は納税通知書に記載のある、評価額が基準になります。納税通知書の場合は、固定資産税が課税される不動産のみの記載しかありませんので、相続の場合には、固定資産税の評価証明書を取得することが必要となります。
(4)遺産分割協議
全員の合意が必要: 遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。特に実家のような大きな財産は分割が難しく、意見の対立が生じやすいです。話し合いが難航する場合は、第三者の専門家(弁護士、税理士など)の助けを借りることが有効です。
(5)相続税の申告と納付
申告期限を守る: 相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行う必要があります。期限を過ぎると、延滞税や加算税が課されるため、注意が必要です。
節税対策: 生命保険金の非課税枠や配偶者控除など、節税対策を検討することも重要です。専門家のアドバイスを受けて、適切な節税対策を講じることが求められます。
(6)不動産の登記と名義変更
速やかな名義変更: 不動産の名義変更は相続手続きの中でも特に重要です。名義変更を怠ると、後々の売却や担保設定に支障が生じる可能性があります。相続人の同意が得られない場合や、遺産分割が未決定の場合は、遺産分割調停・審判を行うことも検討します。
(7)遺言書の確認
遺言書の存在確認: 被相続人が遺言書を残している場合、遺産分割の際にその内容が優先されます。公正証書遺言、自筆証書遺言などの遺言書が残されている可能性があるため、遺言書の存在を確認します。
遺言書の検認: 自筆証書遺言の場合、家庭裁判所での検認手続きが必要です。検認を経ずに開封すると過料が発生するため、注意が必要です。
3. 実家の相続における特有の注意点
①不動産の評価と分割
共有名義のリスク: 実家の不動産を共有名義で相続すると、売却や利用に関する意思決定が難しくなることがあります。将来的なトラブルを避けるため、共有名義はできるだけ避け、一人の相続人が取得するか、売却して現金で分配する方法を検討します。
代償分割の検討: 実家を一人の相続人が取得する場合、他の相続人に対して代償として現金などを支払う「代償分割」を検討することが有効です。これにより、公平な相続が可能になります。
➁空き家の管理と処分
空き家問題の対策: 実家が空き家になる場合、適切な管理が求められます。空き家の管理が不十分だと、固定資産税が増加する可能性や、近隣に迷惑がかかる場合があります。売却や賃貸、解体など、空き家の活用方法を検討します。実家に思い入れがあり、地元の管理会社に管理をお願いした場合、高額な管理費用を請求される場合があります。処分で検討された方がいいと思います。
固定資産税の確認: 空き家の状態によっては、固定資産税の特例措置が適用されない場合があるため、現地の税務署や市区町村に確認します。
③住宅ローンの確認
ローンの残高確認: 実家に住宅ローンが残っている場合、残高を確認し、返済方法を検討します。返済が難しい場合は、売却してローンを完済するか、相続放棄を検討します。
4. 専門家の活用
(1)弁護士や司法書士の相談
法律問題の解決: 相続人間でのトラブルや遺産分割の協議が難航した場合、弁護士の助言を受けることが有効です。法的な観点から適切なアドバイスを得ることで、円滑な手続きを進めることができます。
(2)税理士の活用
相続税の申告と節税: 相続税の申告が必要な場合、税理士に依頼することで、正確な申告が可能になります。また、節税対策についても専門的なアドバイスを受けることができます。
(3)不動産鑑定士の利用
不動産の正確な評価: 実家の不動産評価が複雑な場合、不動産鑑定士に依頼して正確な評価を行うことが推奨されます。正しい評価に基づく相続手続きが可能になります。
5. まとめ
実家の相続手続きは、法的な手続きや税金、不動産の管理など、多岐にわたる問題が絡み合うため、慎重な対応が求められます。相続人全員が協力し、適切な専門家の助けを借りながら進めることが、円滑な相続手続きの鍵となります。事前に十分な情報を収集し、計画的に対応することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
遺産分割協議は、相続人同士で遺産をどのように分割するかを決定する重要なプロセスです。
この協議は慎重に行わなければならず、失敗すれば長期的なトラブルに繋がる可能性があります。
以下に、遺産分割協議において注意すべき6つのポイントをまとめました。
目次
1. 相続人の確認と全員参加
2. 遺産の範囲と評価の確定
3. 遺言書の有無の確認
4. 公平性の確保
5. 争族を避けるための配慮
6. 書面での合意と法的手続きの確認
まとめ
1. 相続人の確認と全員参加
遺産分割協議を行う前に、まず全ての相続人を正確に確認することが重要です。相続人は、民法で定められた法定相続人だけでなく、被相続人(亡くなった方)が遺言で指定した受遺者や、養子なども含まれます。また、協議には全相続人が参加しなければなりません。一人でも欠けると、その協議は無効になります。相続人の確認が不十分だと、後から新たな相続人が現れるなどしてトラブルになる可能性があるため、戸籍謄本を取得して慎重に確認しましょう。
2. 遺産の範囲と評価の確定
遺産分割協議を行う前に、遺産の全体像を把握することが重要です。遺産には、現金や不動産、株式、車などのプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。また、被相続人の名義の口座や土地なども確認し、全ての財産をリストアップします。その上で、各財産の評価を行い、公平な分割ができるようにしましょう。不動産の評価には、不動産鑑定士などの専門家の意見を参考にすると良いでしょう。
3. 遺言書の有無の確認
遺産分割協議の前に、被相続人が遺言書を残しているかどうかを確認する必要があります。遺言書がある場合、その内容に従って遺産を分割します。遺言書が公正証書遺言であればそのまま効力を持ちますが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認が必要です。遺言書の内容に問題がある場合や、相続人全員が合意している場合には、遺言書に基づかずに協議を進めることも可能ですが、その際には慎重な対応が求められます。
4. 公平性の確保
遺産分割においては、相続人全員が公平に遺産を受け取ることが原則です。しかし、実際には相続人それぞれの状況や希望が異なるため、完全に平等に分けることは難しいことが多いです。そのため、各相続人の意見を尊重しつつ、全員が納得できる形で遺産を分割することが求められます。例えば、不動産は現金と違って分割が難しいため、売却してその代金を分配するか、特定の相続人が取得して他の相続人に代償金を支払うなどの方法を検討します。
5. 争族を避けるための配慮
遺産分割協議は、相続人間での争い(いわゆる「争族」)が起きやすい場面です。争いを避けるためには、協議の進行を公正に保ち、全相続人の納得を得ることが重要です。話し合いが難航する場合は、弁護士などの専門家に仲介を依頼するのも一つの方法です。また、日程調整や協議の場所選びなどにも気を配り、全員が参加しやすい環境を整えることも大切です。
6. 書面での合意と法的手続きの確認
遺産分割協議で合意が得られた場合、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残します。この協議書には、全相続人が署名押印する必要があり、それによって法的な効力を持つことになります。協議書が作成されていない場合、後日合意内容に争いが生じるリスクがありますので、必ず書面で残すようにしましょう。また、協議書の内容を確実に実行するために、不動産の名義変更や銀行口座の解約手続きなど、必要な法的手続きも確認し、速やかに行うことが重要です。
まとめ
遺産分割協議は、相続人全員が納得できる結果を得るための重要なプロセスです。上記のポイントをしっかりと押さえ、慎重に進めることで、トラブルを避け、円満な相続を実現することができるでしょう。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1回実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続登記義務化に伴う手続きについて、以下の6つのポイントに絞って解説します。
この法改正は、2024年4月1日から施行され、日本における不動産の相続手続きに大きな影響を与えます。
その手続きの概要を示し、6つのポイントについてお話をしたいと思います。
目次
1. 相続登記の義務化の背景と目的
2. 相続登記の義務化の内容と期限
3. 手続きの流れと必要書類
4. 相続放棄と登記義務
5. 法定相続情報証明制度の活用
6. 過去の未登記不動産の対応
7. まとめ
1. 相続登記の義務化の背景と目的
背景と目的: 日本では、長年にわたり相続登記が行われないまま放置されている不動産が多く存在していました。この「所有者不明土地」問題は、土地の有効活用や管理を妨げ、社会的、経済的に多くの問題を引き起こしています。このような問題を解決し、土地の管理を適正化するために、相続登記の義務化が導入されました。これにより、相続発生後に迅速に登記が行われることが期待され、土地の管理や流通の円滑化が促進されます。
2. 相続登記の義務化の内容と期限
内容と期限: 新法では、相続人が不動産を相続した場合、その相続登記を義務付けることが定められました。具体的には、相続人は相続開始から3年以内に登記を行わなければなりません。これに違反した場合、正当な理由がない限り、罰則が科される可能性があります。相続登記を怠ると、10万円以下の過料が課されることになります。これにより、相続登記を迅速に行うことが求められます。
3. 手続きの流れと必要書類
手続きの流れ: 相続登記の手続きは、主に以下のステップで行います。
①遺言書の確認: まず、遺言書が存在するかどうかを確認します。遺言書があれば、その内容に従って相続手続きを進めます。
➁相続人の確定: 次に、相続人を確定するために、被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本などを取得します。
③遺産分割協議: 相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分配方法を決定します。合意が得られたら、遺産分割協議書を作成します。
④相続登記の申請: 必要書類を準備し、法務局で相続登記の申請を行います。
➄必要書類: 相続登記に必要な主な書類は以下の通りです。
㋐被相続人の死亡を証明する戸籍謄本
㋑相続人全員の戸籍謄本
㋒不動産の固定資産評価証明書
㋓遺産分割協議書(遺言書がない場合)
㋔登記簿上の住所の記載のある被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票
※役場で取得できないケースがあります。その場合は、司法書士に相談しましょう。
㋕登記申請書
これらの書類を揃えることで、相続登記を進めることができます。
4. 相続放棄と登記義務
相続放棄の場合: 相続人が相続を放棄する場合は、家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行う必要があります。相続放棄が認められると、その相続人は初めから相続人でなかったことになります。相続放棄をした場合、登記義務は発生しませんが、次順位の相続人に登記義務が移ります。したがって、相続放棄を考えている場合は、家庭裁判所での手続きと登記の影響について十分に理解しておく必要があります。しかし、相続登記を長年放置していた場合は、相続放棄ができない場合もあります。
5. 法定相続情報証明制度の活用
法定相続情報証明制度: 相続登記を含む各種相続手続きを簡素化するために、法定相続情報証明制度を活用することが推奨されます。この制度では、法務局で一度、相続関係を証明するための書類を提出すれば、登記や金融機関での手続きを行う際に、その証明書を複数回使用できるようになります。この制度を利用することで、相続手続きの負担が軽減され、効率的に手続きを進めることが可能です。
6. 過去の未登記不動産の対応
過去の未登記不動産: 新法施行前に相続が発生したものの、相続登記が行われていない不動産についても、登記が義務化されました。この場合、相続発生から3年以内に登記する必要はなく、速やかに登記を行うことで義務を果たすことが求められます。過去の未登記不動産がある場合は、早めに相続登記を行い、法的な義務を履行することが重要です。
7. まとめ
これらのポイントを押さえることで、相続登記義務化に伴う手続きについて理解を深め、適切に対応することが可能です。相続登記は法律に基づいた義務であり、迅速かつ正確に行うことが、財産管理や相続トラブルの回避に繋がります。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1回実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続問題は、多くの家庭や個人にとって避けて通れない問題であり、感情的なトラブルや法的な紛争を引き起こすことが少なくありません。
以下では、相続問題の具体的な事例を挙げつつ、主要な問題点や解決策についてまとめます。
目次
1.相続問題の具体的事例
事例1: 家族間の不公平感
事例2: 遺言の無効主張
事例3: 遺産分割協議の難航
事例4: 未成年の相続人
2.相続問題の解決に向けた一般的な対策
3.まとめ
1.相続問題の具体的事例
事例1: 家族間の不公平感
【背景】
父親が亡くなり、母親と3人の兄弟(長男、次男、長女)が相続人となった。父親は遺言を残しておらず、相続は法定相続分に従うことになった。しかし、長男は父親の生前に家業を手伝っていたため、他の兄弟よりも多くの財産を受け取るべきだと主張。一方で、次男と長女は公平な分配を求めた。
【問題点】
長男は、家業への貢献を理由に法定相続分以上の相続を主張。
次男と長女は、貢献度にかかわらず、法定相続分に基づく公平な分配を希望。
家族間の信頼が損なわれ、感情的な対立が激化。
【解決策】
調停を通じて、長男の貢献を考慮した上で、公平な分配を模索。
弁護士や信頼できる第三者の仲介により、冷静な話し合いを実施。
家族全員が納得できるような解決策として、長男には家業関連の資産を多く配分し、他の財産については法定相続分に基づき分配。
※ここまでくると、司法書士では対応できませんので弁護士をご紹介するようにしています。
事例2: 遺言の無効主張
【背景】
父親が亡くなり、遺言書が発見された。しかし、その遺言書は特定の相続人(次男)に有利な内容であり、長女は遺言書が無効であると主張した。理由は、遺言書が作成された当時、父親は認知症の診断を受けており、意思能力がなかったとされているためである。
【問題点】
長女は遺言書の無効を主張し、法的手続きに入った。
次男は遺言書が父親の意思に基づくものであり、有効であると主張。
遺言書の有効性に関する法的紛争が発生し、裁判にまで発展。
【解決策】
遺言書の有効性を判断するために、医師の証言や当時の診断書を確認。
法律の専門家を交えて、遺言書の作成過程や意思能力の有無を検証。
裁判所の判断に基づき、遺言書が無効とされた場合には法定相続分での分配、または新たな遺言書の作成を促進。
事例3: 遺産分割協議の難航
【背景】
母親が亡くなり、遺産分割を行うことになったが、遺産には不動産が含まれていた。この不動産は価値が高く、相続人(兄、妹)間で分割方法を巡って意見が対立。兄は不動産を売却して現金で分割することを提案したが、妹は思い出の詰まった不動産を保持したいと主張した。
【問題点】
不動産を売却するか保持するかで相続人間の意見が対立。
不動産の評価額についても相続人間で異なる意見があり、協議が難航。
感情的な要素が絡み、解決が遅れる。
【解決策】
不動産の専門家に依頼して、公正な評価額を算定。
妹が不動産を保持したい場合、その価値分を他の財産で調整するか、兄に対して代償金を支払う案を提案。
不動産を一部売却して一部保持するなどの柔軟な分割案を検討。
事例4: 未成年の相続人
【背景】
両親が交通事故で突然亡くなり、未成年の子供(15歳)が相続人となった。遺産には多額の現金や不動産が含まれており、未成年の子供が相続手続きを行うために、後見人が必要となった。しかし、両親が後見人を指定していなかったため、親族間で後見人を巡る争いが発生。
【問題点】
未成年の相続人のために、信頼できる後見人を選定する必要がある。
親族間で後見人の選定を巡る意見の対立が発生。
未成年の子供の利益を最優先に考えた相続手続きが必要。
【解決策】
裁判所に後見人選任の申立てを行い、公正な手続きで後見人を選定。
未成年者の権利と利益を守るため、法律の専門家(弁護士や司法書士)を介して相続手続きを進める。
未成年者が成人するまでの間、後見人が適切に遺産を管理し、必要に応じて生活費や教育費を確保することが重要。
2.相続問題の解決に向けた一般的な対策
①遺言書の作成
【目的】
遺言書は相続人間のトラブルを未然に防ぐための重要な手段です。明確な指示を残すことで、相続人間の争いを減らし、公正な分配を行うことができます。
【方法】
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの形式があり、それぞれ法的な要件を満たす必要があります。
➁相続税対策
【目的】
相続税の負担を軽減するための対策を講じることが重要です。相続税が高額になる場合、遺産分割が難航する可能性があります。
【方法】
生命保険の活用、生前贈与、遺産分割方法の工夫などを検討します。
③生前贈与
【目的】
生前に財産を贈与することで、相続発生時の遺産分割を円滑にすることができます。
【方法】
一定額まで非課税となる制度を活用し、生前に子供や孫に財産を贈与することが考えられます。
④家族信託の活用
【目的】
家族信託を利用することで、財産管理や相続の円滑な引き継ぎを行うことができます。特に高齢者や障害者の財産管理に有効です。
【方法】
信託契約を締結し、信頼できる家族を受託者に任命して財産を管理します。
➄法律専門家の相談
【目的】
相続問題は法律が絡むため、専門家の助言を得ることが重要です。弁護士や税理士、司法書士に相談することで、法的な問題を適切に解決できます。
【方法】
事前に信頼できる専門家を選定し、必要に応じて相談を行います。
3.まとめ
相続問題は、法的な知識だけでなく、家族間のコミュニケーションや感情的な要素も関わるため、複雑でデリケートな問題です。事前の準備や対策を講じることで、円満な相続を実現することが可能です。
ここでご紹介した事例は、私が受任した相続ではなく、一般事例として挙げられた内容を取り上げました。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
令和6年4月19日に内閣府が発表した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」は、高齢者やその家族が信頼できる終身サポート事業者を選択するための基準を提供し、悪質な事業者からの被害を防止することを目的としています。このガイドラインは、特に契約書の作成、預託金の保全、身元保証契約に関する注意点を示しています。以下にその要点をまとめます。
目次
1. 契約書の作成
2. 預託金の保全
3. 遺贈や死因贈与を条件とする身元保証契約の回避
1. 契約書の作成
ガイドラインでは、終身サポート事業者が提供する契約書について詳細な指針が示されています。具体的には、死後事務委任契約、財産管理契約、事務委任契約など、各種の契約書の作成が求められています。
死後事務委任契約は、契約者が亡くなった後に、葬儀や財産の処分などの事務手続きについて委任する契約です。この契約書には、具体的な事務内容、委任者と受任者の権利義務、報酬の額と支払い方法などを明記することが推奨されています。契約者が安心して老後を過ごせるように、透明性を確保し、後に紛争が生じないように詳細な記載が必要です。
財産管理契約については、契約者が生前に自身の財産管理を第三者に委任する契約です。この契約書には、管理対象の財産の種類と範囲、管理方法、報酬の支払い条件などを明示し、契約者の利益を保護することが重要です。
事務委任契約は、日常の事務作業や生活支援を委任する契約です。具体的な支援内容や支援の範囲、契約期間、報酬などを契約書に明記することで、契約者が安心して生活を委ねることができるようになります。
2. 預託金の保全
ガイドラインは、事業者が受け取る預託金についても厳格な管理を求めています。特に、預託金の保全措置として信託銀行または信託会社を利用することが推奨されています。
預託金は、将来のサービス提供や事務手続きの費用として事前に受け取る金銭です。この金額は、事業者の倒産や経営悪化時にも保全される必要があります。ガイドラインは、預託金を信託銀行または信託会社に預けることで、その安全性を確保するよう求めています。信託機関は、厳格な監督下にあり、資金の安全性が高いため、預託金の信託保全は、利用者にとって非常に安心できる仕組みです。
※仮に、事業者名義の預金で管理していた場合、破産した場合に差押え等のリスクにさらされることになります。信託にすることにより、手数料はかかりますが、差押え対象から除外されるメリットがあります。
3. 遺贈や死因贈与を条件とする身元保証契約の回避
ガイドラインでは、遺贈や死因贈与を条件とする身元保証契約を避けることを強く推奨しています。遺贈とは、遺言により財産を譲ることを指し、死因贈与は死亡を原因とする贈与契約です。
これらの契約は、契約者が死亡後にその財産を保証人に譲渡することを条件とするため、悪用されるリスクが高いです。特に、契約者が認知症などの判断能力の低下により、不適切な契約を結ばされる可能性があります。ガイドラインは、こうしたリスクを避けるため、事業者が遺贈や死因贈与を契約条件とすることを禁止し、身元保証契約において契約者の財産を保全する措置を講じることを求めています。
身元保証契約は、高齢者が安心して生活を送るために必要なサポートを提供する契約であり、契約者の生活と権利を保護することが求められます。そのため、ガイドラインは、保証人が契約者の財産を不当に取得しないよう、契約内容の透明性と適切な契約書の作成を強調しています。
4. まとめ
内閣府が発表した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」は、高齢者やその家族が安心してサービスを利用できるよう、契約書の作成、預託金の保全、遺贈や死因贈与を条件とする契約の回避について詳細な指針を提供しています。このガイドラインに従うことで、利用者は信頼できる事業者を選び、安心して老後を過ごすためのサポートを受けることができるでしょう。
そして、これらの身元保証サポート事業者の監督官庁はどこかというと、内閣府のHPでも、「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の取組(i)消費者庁において、身元保証や死後事務等を行う身元保証等高齢者サポート事業による消費者被害を防止するため、厚生労働省その他関係行政機関と必要な調整を行うこと。」とされており、事業所の監督官庁による定期的な監査で是正するのではなく、消費者庁に届け出ることにより、ガイドラインに合っていない契約からの消費者保護という仕組みとなっています。
日本では、相続問題がますます複雑化しており、専門家のアドバイスを求めることが一般的です。しかし、近年では司法書士や弁護士といった専門家に依頼せず、民間資格を持つ人々が相続手続きをサポートする事例が増えています。これには費用面の負担軽減や手軽さが利点とされていますが、その一方で重大なリスクも存在します。今回は、相続における民間資格の危うさについて、専門家に依頼しないことのリスクと合わせて考察します。
目次
1.民間資格の概要
2.民間資格の危うさ
3.専門家に依頼するメリット
4.まとめ
1.民間資格の概要
民間資格とは、国や自治体の公的資格とは異なり、企業や団体が独自に認定する資格を指します。相続に関連する民間資格としては、「相続診断士」や「家族信託コーディネーター」などが存在します。これらの資格は、数日から数週間の短期間で取得可能であり、相続に関する基礎知識を学ぶことができます。しかし、実際の法律知識や実務経験が乏しいことが多く、専門的な判断を要する場面で問題が発生することが懸念されています。
※そんなことはない、インターネット上に転がっている情報を集めればそれなりに相談できるという方がいらっしゃいましたが、それこそ危険で、法律上の判断をしながら、情報の精査ができるのが国家資格者です。仮に、専門的な相談をしたいなら、あなたを信じて相談に来るお客様のためにも、数日から数週間で取れる民間資格ではなく、国家資格を取るべきです。国家資格がベースにある民間資格者なら問題ないと思います。
2.民間資格の危うさ
①法的な権限の欠如
民間資格を持つ者には、司法書士や弁護士のような法的な権限がありません。たとえば、相続登記や遺産分割協議書の作成といった法的手続きは、法に基づいて専門知識を持った司法書士や弁護士によって行われる必要があります。法律相談も然りです。民間資格者がこれらの手続きを行うことは、法律上許されていないため、無資格のままこれを行うと、違法行為に該当する可能性があります。
➁誤った情報提供のリスク
民間資格を持つ者が提供する情報が必ずしも正確であるとは限りません。相続手続きには、税務や法務の複雑な知識が必要であり、誤ったアドバイスが財産分配に重大な影響を及ぼすことがあります。例えば、相続税の申告漏れや、遺産分割協議書の不備により、相続人が後にトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。
③責任問題
民間資格者によるアドバイスが原因で問題が発生した場合、その責任を追及することが難しい場合があります。公的資格を持つ専門家には、職業上の倫理規定や監督機関が存在し、トラブル発生時にはこれに対処するための仕組みが整っています。しかし、民間資格者の場合、こうした制度が不十分であり、被害を受けた依頼者が救済を求めることが難しいのです。
④費用面の不透明さ
一部の民間資格者が提供する相続サービスには、料金体系が不透明なものが多く、依頼者が知らない間に高額な費用を請求されるリスクがあります。また、事前に契約書を交わさずにサービスを提供するケースも見られ、後になって費用トラブルが発生することもあります。
3.専門家に依頼するメリット
①法的な保障
司法書士や弁護士といった専門家に依頼することで、法的に認められた資格者が手続きを行うため、法律に基づいた正確な手続きが保証されます。また、これらの専門家は法律に基づいた責任を負うため、トラブル発生時にも安心です。
➁高度な専門知識
相続には税務や法務、金融など多岐にわたる知識が必要です。専門家は長年の経験と知識に基づき、依頼者にとって最適な解決策を提供することができます。例えば、相続税の適切な申告や、相続人間での公正な財産分配など、専門的なアドバイスが求められる場面での対応が可能です。
③透明な費用体系
専門家に依頼する場合、事前に契約書を交わし、費用についても明確に説明を受けることが一般的です。これにより、後で不当な請求を受ける心配がなく、依頼者は安心してサービスを利用することができます。
④万が一のトラブルに備えての保険制度
国家資格の士業には、万が一のトラブルに備えて、団体の補償制度に加え任意の保険に加入しているケースが多いです。何かトラブルがあったとしても、このような制度で保証してもらえるという安心感があります。
4.まとめ
相続手続きを行う際に、民間資格を持つ者に依頼することは、手軽で費用面でも魅力的に思えるかもしれません。しかし、法的な権限や専門的な知識に欠けることが多いため、誤った情報提供やトラブルのリスクが高まります。相続手続きは人生の中でも重要なイベントであり、専門家に依頼することで正確で安心な対応を得ることができます。専門家のサポートを受けることで、法的に正確な手続きが保証され、依頼者が安心して財産を管理・分配できる環境を整えることが重要です。
参考文献
「相続診断士とは?」 日本相続診断協会
「家族信託コーディネーターの役割」 信託協会
「司法書士法の概要」 日本司法書士会連合会
「相続登記の手続きと注意点」 法務省
「相続税の申告漏れが多い理由」 税理士法人
「弁護士の役割と責任」 日本弁護士連合会
「相続手続きの費用とその内訳」 不動産ジャーナル
「相続における司法書士の役割」 法務省
「相続税の正しい申告方法」 税理士会
「弁護士の費用体系とトラブル防止」 弁護士ドットコム
令和6年4月1日に相続登記が義務化されました。義務化の罰則は、最大10万円以下の過料です。この過料を免れるためには、相続登記を申請するか、正当な理由がある場合には、相続人申告登記をすることとなります。この「相続人申告登記」について、解説していきたいと思います。
目次
1.相続人申告登記とは
2.相続人申告登記に必要な書類
3.相続人申告登記の意外な使い方
4.まとめ
1.相続人申告登記とは
相続人申告登記とは、相続によって不動産の所有権が移転した場合に、法定相続人がその事実を法務局に申告し、不動産登記を行う手続きです。この制度は、2024年4月1日に施行された「不動産登記法の一部を改正する法律」により新設され、相続登記が義務化された背景のもと、登記手続きを簡便化し、相続による不動産所有権の変動を適切に記録することを目的としています。
相続人申告登記は、相続登記義務化の罰則である過料を免れることができます。過料が科せられない正当な理由とは、以下の通りです。
「(1) 相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
(2) 相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
(3) 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
(4) 相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
(5) 相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合」(法務省HP引用)
今後、遺産分割協議をする予定だが、現状もめていて話が進まないような場合、義務化の期限である3年以内に相続登記ができないような場合、申出人から「相続人申告登記」を入れておけば、当該申出人については、罰則の過料は免れます。
2.相続人申告登記に必要な書類
「一般的に、
ア.(被相続人と申出人の戸籍等)
①被相続人(死亡した方)の死亡した日が分かる戸籍の証明書(戸除籍謄本等)
②申出人が被相続人の子であることが分かる戸籍の証明書
③被相続人の死亡した日以後に発行された申出人についての戸籍の証明書
が必要になります。
1通の証明書で①~③を満たす場合には、その証明書の添付で足ります。」(法務省HP引用)
例えば、申出人である配偶者・子が除籍謄本に含まれている場合などです。
「イ.(登記簿上の名義人と被相続人の住所を証明する書類)
被相続人(死亡した方)の最後の氏名及び住所が登記記録上の氏名及び住所と異なる場合や被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には、被相続人が登記名義人(登記記録上の所有者)であることが分かる被相続人の本籍の記載のある住民票の除票又は戸籍の表示の記載のある戸籍の附票の写し等が必要となります。」(法務省HP引用)
※他のHPで、この書類が含まれていないケースがありました。登記システム上では、本人の特定を「氏名」と「住所」の一致で行います。そのため、最後の住所地と登記簿上の住所地が異なっている場合、住民票の除票で証明することになりますが、子の住民票の除票には「前住所」までしか記載されていません。そのため、「登記簿上の住所」と、「亡くなった住所地」とのつながりを除票では証明できない場合、「戸籍の附票」が必要となってきます。
「ウ.(申出人の住民票の写し(原本))
申出人の住民票の写し(原本)です。住民票上の申出人の氏名のふりがな及び生年月日を記載した場合は、提出する必要はありません。なお、住民票の写しを提出する場合は、マイナンバー(個人番号)が記載されていないものを取得し提出してください。 また、申出人の現在の住所が記載されている法定相続情報一覧図の写しを提出するか、その法定相続情報番号(法定相続情報一覧図の写しの右上に記載された番号)を申出書に記載することで、住所証明情報の添付に代えることができます。」(法務省HP引用)
※申出人も相続人申告登記の情報となりますので、申出人の住民票の写しを添付します。
3.相続人申告登記の意外な使い方
とある方から聞いた話ですが、とある相続人の方が他の相続人と遺産分割協議をすることを打診したのですが、全く連絡をよこさないといったことがあったようです。今後、態度が軟化することも期待できないため、相談に来られた相続人を申出人とする、相続人申告登記を申請し、3年後に過料徴収の通知がなされたときに、遺産分割協議を相手方が打診してくるのを待つ、という使い方をされている方がいるようでした。
ただし、相手方次第となりますので、本当に遺産分割協議ができるかどうかはわかりません。現状が膠着しているような場合なら、確率は低いと思うのですが、効果があるかもしれませんね。
4.まとめ
相続人申告登記をすることで、相続登記義務化の罰則である過料を免れることができます。相続人申告登記に必要な書類は、「被相続人の除籍謄本」「被相続人と申出人の関係を証する戸籍謄本」「被相続人の最後の住所地と登記簿謄本上の住所の一致を証する住民票の除票の写し又は戸籍の附票」「申出人の現在戸籍」「申出人の住民票の写し」となります。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1回実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
就労継続支援事業所は、障がい者が社会的自立を目指すための重要な施設です。
日本の福祉制度において、これらの事業所は障がい者の就労支援と社会参加を促進するための重要な役割を果たしています。
本稿では、就労継続支援事業所の目的、種類、対象者、提供されるサービス、及びその意義について説明します。
また、今「A型」支援事業で起こっている問題についてもお話をしたいと思います。
目次
1.就労継続支援事業所の目的
2.就労継続支援事業所の種類とその内容
3.就労継続支援事業所の意義
4.現在「A型」事業所で起こっている問題
5.まとめ
1.就労継続支援事業所の目的
就労継続支援事業所の主な目的は、障がい者に対して安定した職場環境を提供し、職業訓練や生産活動を通じて就労能力を向上させることです。これにより、障がい者が社会に貢献し、自己実現を達成する機会を得ることが期待されます。さらに、これらの施設は、障がい者が社会の一員として尊重され、自立した生活を送るための支援を行います。
2.就労継続支援事業所の種類とその内容
就労継続支援事業所は、「A型」と「B型」の2種類に分けられます。それぞれ異なる特性と目的を持っています。
(A型)
A型は、労働契約に基づいて賃金が支払われる形式です。雇用関係が明確に存在し、障がい者は労働者としての権利と義務を持ちます。このタイプの事業所は、障がい者が通常の企業での就労が難しい場合に、より柔軟な働き方を提供しつつ、一般就労に近い形での労働経験を積むことができます。主な対象は、一定の就労能力を持ち、一般企業での就労が難しい障がい者です。
(B型)
B型は、雇用契約がないため、労働時間や作業内容が比較的自由で柔軟な形式です。賃金は作業量に応じて支払われますが、A型よりも少額になることが一般的です。この形式は、一般企業での就労が困難であり、支援が必要な障がい者に対して、日中活動の場を提供し、社会参加の機会を促進します。主な対象は、重度の障がいや精神的な障がいを持つ人々で、長時間の就労が難しい場合に適しています。
(対象者)
就労継続支援事業所の対象者は、身体障がい、知的障がい、精神障がい、または発達障がいなどを持ち、一般就労が難しいと認められた人々です。これらの施設は、障がいの種類や程度に応じた適切な支援を提供し、個々のニーズに応じた就労支援を行います。
(提供されるサービス)
就労継続支援事業所では、以下のような多岐にわたるサービスが提供されます。
(職業訓練と技術指導)
障がい者に対して、職業訓練や技術指導を行います。これにより、障がい者は新たなスキルを身につけ、就労能力を高めることができます。具体的には、軽作業や製造業務、農作業など、多様な業務が含まれます。
(就労準備支援)
就労継続支援事業所では、就労に必要な基礎的な知識やスキルを習得するための支援が行われます。これには、面接対策や履歴書の書き方、職場でのコミュニケーション能力の向上などが含まれます。
(社会適応訓練)
社会生活に必要な基本的なスキルやマナーを学ぶための訓練も提供されます。これにより、障がい者が職場や地域社会で円滑にコミュニケーションを図り、適応する力を養います。
(生活支援)
就労以外の面でも、生活全般にわたる支援が行われます。例えば、健康管理や金銭管理、日常生活のサポートなどが含まれます。
3.就労継続支援事業所の意義
就労継続支援事業所の存在は、障がい者の社会参加を促進し、生活の質を向上させるために極めて重要です。これらの施設は、障がい者が自分の能力を最大限に発揮し、社会に貢献する場を提供します。また、障がい者が働く姿を通じて、社会全体に対する理解と受容の促進にも寄与しています。
さらに、就労継続支援事業所は、障がい者の家族にとっても大きな支えとなります。家族は、障がい者が安心して働くことのできる環境を提供されることで、精神的な安定を得ることができます。
4.現在「A型」事業所で起こっている問題
令和6年6月16日の山陽新聞の記事で「岡山県内A型事業所廃止や規模縮小相次ぐ 300人余り解雇の見通し、報酬改定影響か」という記事がありました。なぜ「A型」でこのようなことが起こっているのか、B型との違いから見ていきたいと思います。
(A型とB型の違い)
①雇用契約
A型: 雇用契約あり、利用者は従業員として扱われる。
B型: 雇用契約なし、利用者は支援を受ける立場。
➁賃金
A型: 最低賃金以上の賃金が支払われ、安定した収入が得られる。(賃金)
B型: 出来高払いで、一般的にはA型よりも低い賃金。(工賃)
③対象者
A型: 比較的軽度の障がいを持ち、一定の就労能力がある人。
B型: 重度の障がいや精神的な障がいがあり、長時間の就労が難しい人。
④支援の内容
A型: 実際の業務を通じて就労訓練を行い、スキルを向上させる。
B型: 軽作業や手作業を通じて日中活動と社会参加を支援。
➄経営の方向性
A型: 収益を上げることが求められ、一般企業に近い経営。
B型: 福祉的な支援が中心で、収益はあまり重視されない。
B型が、より福祉関連事業に近いが、A型は通常の企業に近いものです。しかし、通常の企業と異なり生産性の向上などの方針をとることは困難で、補助金でその賃金を支払っているところ、福祉関連の報酬基準が定期的に見直されるところ、この報酬改定の影響が出てしまったため、A型の事業廃止やB型への移行をする事業所が出てきたということでした。
5.まとめ
就労継続支援事業所は、障がい者が自立した生活を送るための重要な支援を提供する施設です。A型とB型の2種類があり、それぞれ異なる特性を持ちながら、障がい者のニーズに応じた柔軟な支援を行っています。これらの施設を通じて、障がい者は社会に貢献し、自己実現を達成する機会を得ることができます。就労継続支援事業所の存在は、障がい者の社会参加と生活の質向上に大きく貢献しており、今後もその重要性は増していくことでしょう。
一方で、厚生労働省の定期的な報酬規程の見直しの影響もあるため、A型事業所にとっては運用が厳しくなっている状況だと考えられます。
あなたの大切な人生の時間、その価値がいかほどのものか、実際わからない方もいらっしゃいます。当然ですが、お金で時間そのものを買うことはできませんが、お金を払うことで、煩わしい手続きを専門家にお願いすることで、日常を維持することができます。明確に理解している必要はありませんが、あまりにもお金に固執している方を見ると、「ご自身で」ということになります。今回は、専門家にお願いするという論点で、人生の中でのお金と時間について、お話をしたいと思います。
目次
はじめに
1.相続手続きの複雑さと時間の負担
2.精神的負担の軽減
3.お金の節約と最適化
4.時間とお金のバランス
5.まとめ
はじめに
相続手続きは、故人の財産を法定相続人や遺言書に従って分配するための重要なプロセスです。しかし、この手続きは非常に複雑で、特に精神的に辛い時期に行わなければならないため、遺族にとって大きな負担となることが多いです。人生において時間はお金では買えない貴重な資源であることを考慮すると、相続手続きを専門家に依頼することには大きなメリットがあります。以下に、その詳細を説明します。
1.相続手続きの複雑さと時間の負担
相続手続きには、多くの手続きと書類が必要です。例えば、不動産の名義変更、遺産分割協議、相続税の申告など、各手続きに関連する書類の準備や申請が求められます。また、役所や金融機関などへの訪問も必要です。これらを個人で行う場合、かなりの時間と労力が必要となります。特に、平日に役所や銀行に行く必要があるため、仕事を休んだり、他の重要な活動を犠牲にしたりすることになるでしょう。
相続手続きを専門家に依頼することで、これらの煩雑な手続きを代行してもらうことができます。専門家は、相続手続きの流れや必要な書類について熟知しており、スムーズに進めることができます。これにより、遺族は自分たちの時間を他の重要なことに使うことができるのです。時間は有限であり、失った時間は二度と戻ってきません。この貴重な時間を、手続きのために浪費するのではなく、自分たちの生活をより充実させるために使うことができるのは、非常に大きなメリットです。
2.精神的負担の軽減
相続手続きは、家族が亡くなった直後に行わなければならないため、精神的な負担が大きいです。このような状況で煩雑な手続きを行うことは、遺族にとってさらに辛いものとなるでしょう。専門家に依頼することで、精神的な負担を大幅に軽減できます。専門家が手続きを代行してくれることで、遺族は心の整理をつける時間を持つことができ、家族の思い出を大切にしながら、新たな生活に向けて気持ちを整えることができます。
また、相続手続きには感情的な側面も絡んでくることが多いです。例えば、遺産分割に関する家族間の意見の相違や、遺言書の内容に対する不満など、感情的な対立が生じることがあります。このような場合でも、専門家が中立的な立場からアドバイスを提供することで、冷静で公正な解決を導き出すことができます。これにより、家族間の関係を悪化させずに円満に手続きを進めることができます。
3.お金の節約と最適化
専門家への依頼には費用がかかりますが、長期的に見れば経済的に有利であることが多いです。相続税の計算や財産評価は非常に複雑で、素人が行うとミスが発生しやすく、結果として過剰な税金を支払うことになりかねません。専門家は、相続税の最適な対策を提案し、合法的に税負担を軽減する方法を提供してくれます。これにより、結果的に大きな節約につながります。
例えば、相続税の控除を最大限に活用するためのアドバイスや、遺産分割の方法によって税金を減らすことができる場合があります。これらの知識は、専門家ならではのものです。また、手続きのミスによる再提出や罰金といった予期せぬ費用を避けることができるため、経済的にも非常に効率的です。
※アイリスにご相談いただいた場合で、相続税関連のご相談につきましては、提携税理士の面談をセッティングいたします。ワンストップで時短できます。
4.時間とお金のバランス
相続手続きを自分で行うことで、専門家に支払う費用を節約しようと考える人もいるかもしれません。しかし、手続きにかかる時間と労力、さらには精神的な負担を考慮すると、専門家に依頼することのコストパフォーマンスは非常に高いと言えます。時間はお金では買えない貴重な資源です。その時間を手続きに費やすよりも、専門家に任せて、自分の時間をもっと有意義な活動に使うことが、結果的には最良の選択です。
5.まとめ
相続手続きは、人生の中で避けられない重要なプロセスです。しかし、その複雑さや時間のかかる性質を考えると、専門家に依頼することが賢明です。特に、人生において時間はお金では買えない貴重な資源であり、その時間を有効に活用することが、生活の質を高める上で非常に重要です。専門家に手続きを任せることで、時間とお金を効率的に使い、安心して相続手続きを進めることができます。これにより、遺族は自分たちの時間を大切にし、心豊かに生活を送ることができるのです。
先日、教訓めいた動画を見ました。内容は、余命いくばくもない方からのメッセージという体で話が進みます。「あなたに、10億円あげると言ったら、きっとあなたは、「はい」と答えるだろう。しかし、10億年あげるが、あなたには明日が来なくなるというと「いいえ」と答える。つまり、明日が来るということは、価値が測れないほど尊いものだということだ。」と言っていました。これは極論めいていますが、実際のところ「時間そのもの」を売っている場所はありません。その代わり、お金で時間を買える場合というのが存在します。その数少ない場合が正に専門家に依頼することだと思います。もちろん、ご自身でできるなら、わざわざ無料相談などに来て時間を浪費せずに、ご自身でやればいいと思います。無料相談を渡り歩いても、細かな手続きを指導してくれる専門家は、おそらくいません。なぜなら、それが専門家の生業なわけですから。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続手続きは、亡くなった方の財産や債務を正当に分配するための重要なプロセスです。しかし、この手続きは非常に複雑で時間がかかるため、専門家に依頼することが多くのメリットをもたらします。以下に、専門家に相続手続きをお願いするメリットについて詳しく説明します。
目次
1.手続きの煩雑さからの解放
2.法的リスクの軽減
3.適切な財産評価と分配
4.相続税対策の提案
5.スムーズな遺産分割協議
6.遺言書の作成・検認のサポート
7.複雑な相続ケースへの対応
8. 心理的な負担の軽減
9.まとめ
1.手続きの煩雑さからの解放
相続手続きには、多くの書類作成や提出が必要であり、それぞれが異なる役所や機関に対するものです。専門家に依頼することで、これらの煩雑な手続きをプロフェッショナルが代行してくれるため、自分で行う手間と時間を大幅に削減できます。また、提出書類に不備があると再提出が必要になることも多いため、初めから専門家に任せることで、スムーズに手続きを進めることができます。
2.法的リスクの軽減
相続手続きには法律が深く関わっており、誤った手続きを行うと法的なトラブルに発展する可能性があります。専門家は相続に関する最新の法規や規制に精通しており、法的に正確な手続きを行うことで、相続人間の争いや税務上の問題を未然に防ぐことができます。これにより、安心して手続きを進めることができます。
3.適切な財産評価と分配
相続財産には、現金や不動産、株式など多岐にわたる資産が含まれます。これらの資産の評価は、専門知識が必要であり、適切に行わなければ相続税が過大に課される可能性があります。専門家に依頼することで、正確な財産評価を行い、公正かつ最適な分配が可能になります。また、複数の相続人がいる場合、専門家が間に入ることで、公平な財産分配が実現しやすくなります。
4.相続税対策の提案
相続税は、相続財産の一定額を超えると発生しますが、その計算方法や控除項目は非常に複雑です。税理士などの専門家は、相続税に関する豊富な知識と経験を持っており、合法的に相続税を軽減するための最適な対策を提案してくれます。これにより、相続税負担を最小限に抑えることが可能です。
※アイリスにご相談いただければ、提携税理士及び他士業との連携で、ワンストップで問題解決に向けて進めることが可能です。
5.スムーズな遺産分割協議
遺産分割協議は、相続人全員が合意する必要がありますが、意見の対立が生じることが少なくありません。専門家である弁護士が仲介することで、公平かつ効率的な協議が可能となり、円滑な解決が図れます。また、事前に司法書士や弁護士にご相談いただければ、法律に基づいたアドバイスを提供するため、協議内容が法的に問題ないかを確認しながら進めることができます。
※すでに争いがある場合は弁護士が関与することになります。これを予防するための事前の相談につきましては、弁護士、司法書士でも対応可能です。争いが顕在化した時点で、提携の弁護士にお繋ぎをしております。
6.遺言書の作成・検認のサポート
遺言書がある場合、その内容を法的に有効にするために検認手続きが必要です。専門家は、この手続きを迅速かつ正確に行い、遺言書に記載された内容に基づく円滑な相続をサポートします。また、遺言書がない場合でも、法的に適切な遺産分配を提案してくれるため、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。
7.複雑な相続ケースへの対応
相続には、複雑なケースが多々あります。たとえば、複数の国に資産がある場合や、相続人が海外にいる場合などです。これらの場合、各国の法律に精通した専門家のサポートが不可欠です。また、相続人が未成年である場合や、認知症の親がいる場合など、特殊な事情がある場合も、専門家が最適な解決策を提供してくれます。
8. 心理的な負担の軽減
相続手続きは、家族が亡くなった直後の精神的に辛い時期に行わなければならないため、心理的な負担が大きいです。専門家に手続きを任せることで、遺族が心の整理をつける時間を確保でき、精神的な負担を軽減することができます。また、専門家が細かな調整や対応を行ってくれるため、遺族は心身の負担を減らして相続手続きに臨むことができます。
9.まとめ
専門家は、今まで様々な相続手続きを経験しており、相談者に適した内容の手続きをご提案することができます。「何をしていいかわからない」という方にとって、相続の今後手続なんて、ゴールが見えていない状態で対応することになります。関係各所に出向き、話を聞きながら対応していくことになりますが、重複する証明もあるにもかかわらず、個々に対応するようになるために、膨大な手続きにさらされている錯覚をしてしまっている方が多いです。年金暮らしで、時間は有り余っていると感じている方は、ご自身で対応される方もいると思うのですが、仕事をしながら相続手続きをするということは、あまり現実的ではないと考えます。重要な人生の時間をどのように使うのかは、本人次第ということになりますが。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
生前贈与をしたいが、実はその対象建物が未登記だった場合、どのようにすればいいのでしょうか。また、暦年贈与制度を利用するのか、相続時精算課税制度を利用するのかによっても、税理士にお願いする手続きの内容が異なってきます。
今回は、暦年贈与制度の基礎控除額110万円を超える場合について、お話をしたいと思います。
目次
1.未登記建物について相続登記義務化の対象範囲に入るのか?
2.未登記建物の生前贈与の手続き
3.暦年贈与制度で行う場合
4.相続時精算課税制度を利用する場合
5.まとめ
1.未登記建物について相続登記義務化の対象範囲に入るのか?
令和6年4月1日に施行された、相続当為義務化ですが、登記簿上の相続による名義変更ができていない場合が対象となります。未登記建物は、法務局に「登記簿は存在しません」。そのため、相続登記義務化の対象からは外れています。
しかし、このままだと固定資産税を課税できないので、市町村役場の資産税課などは、調査を行い未登記の建物がある場合でも、固定資産税台帳に掲載しています。
登記されている不動産については、登記が変更された場合、その情報が役場や税務署などに通知される仕組みになっております。ですので、その所有者の名義が誰であるかわかるわけですが、未登記建物の場合、物件は調査できても名義人が変更されたことまでは把握できません。そのため、未登記物件の場合、登記ではなく届出を市町村役場に行うことになります。勿論、提出する届出書以外に、添付書類が必要です。これは、相続だけではなく、売買・贈与の場合にも所定の添付書類は必要になります。
2.未登記建物の生前贈与の手続き
今回は生前贈与の手続きとなるので贈与になります。贈与も未登記建物の名義を変更するために「贈与契約書」と「名義変更の届出書」が必要です。高松市の場合、資産税課で取得することができます。印鑑については、高松市では認印でもよいらしいですが、各自治体で異なる場合があると思いますので、必ず事前に確認をしてください。
3.暦年贈与制度で行う場合
暦年贈与制度では、1年間(暦年)に110万円までの贈与は非課税となります。このため、長期間にわたり計画的に資産を分散させるのに適しています。しかし、年間110万円を超える贈与には、贈与税が課されます。税率は贈与額に応じて異なり、最高で55%です。注意点として、連続した贈与は一括贈与とみなされる可能性があるため、慎重に計画する必要があります。
個人の場合は、確定申告の時期に贈与税の申告をしなければなりません。忘れないように、ご自身で行うか、解らない場合には、税理士に頼みましょう。
4.相続時精算課税制度を利用する場合
特定の親(65歳以上)から子(20歳以上)への贈与に適用され、最大2,500万円まで非課税で贈与できます。相続時にその贈与分が相続財産に加算され、相続税が再計算されます。この制度は、大きな資産を一度に移転する際に有利ですが、相続時に再び税が計算されるため、相続税の負担が増える可能性があります。
相続時精算課税制度を利用する場合にも、確定申告の時期に届出と申告をしなければなりません。相続時精算課税制度を使うと、その相手との間の今後の贈与で暦年贈与制度を使うことはできなくなりますので、注意が必要です。税理士の無料相談を利用して、暦年贈与制度と相続時精算課税制度のどちらを使った方がいいのか確認する必要があると思います。
5.まとめ
このように、未登記建物の生前贈与の手続きについては、市町村役場で、「贈与契約書」「届出書」の提出で、問題なく名義の変更をすることができます。そもそも、未登記建物は登記簿が存在しないため、相続登記義務化の対象ではありません。
しかし、生前贈与の場合、贈与税の検討をする必要があります。相続税を見据えた対策として、「暦年贈与制度」と「相続時精算課税制度」の利用が候補に上がりますが、相続時精算課税制度を利用すると、その相手との今後の贈与では暦年贈与制度は使えなくなる点には注意が必要です。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
先日、生前贈与の相談で登記簿を確認すると、登記簿の地目は「田」のままになっているのに、すでに建物が存在していました。通常は、建物を建てる際に地目変更を行う必要がありますし、行政の農地転用の申請をして許可を得なければ、農地を宅地に地目変更はできないというのが原則だと思いますが、何があったのでしょうか?
目次
1.家が建っているのに地目が田である場合
2.家を建築する前にすべき手続き
3.なぜこんなことが起こったのか?
4.まとめ
1.家が建っているのに地目が田である場合
登記簿だけから判断すると、当然、農地転用の手続きを経ずに建物を建ててしまっているので、完全にアウトです。しかし、事実確認をしていくと、固定資産税の通知書に記載されている地目は、「田」ではなく「宅地」になっていました。つまり、市町村の役場は、その土地が農地ではなく宅地であることを把握して、ずいぶん前から宅地として課税しているようでした。
そもそも、違法状態で建築会社が建物を建設するというのは、行政処分の対象となりますので、そもそも引き受けないと考えられます。相談に来られた方に話を聞いても、なんか的を得ませんので、実際に市役所に確認することにしました。
2.家を建築する前にすべき手続き
市役所で聞いたお話をする前に、家を建築する前に、家を建てる土地が農地の場合、どのような手続きが必要なのかお話をしたいと思います。
まずは、農地に家などを建てるには、農地転用という手続を行います。自分の土地であっても、勝手に農地を造成して家などを建ててはいけません。
そして、地目変更の手続きについては、以下の手続きを踏まなければなりません。
「農地転用手続・開発関係手続・建築関係手続」→「工事開始」→「工事完了」
工事が完了した後に、役場の農業委員会へ「現況証明願」を依頼して、農地から宅地に変わったことの確認をしてもらいます。確認が終わった段階で、農業委員会から証明書をもらいこれをもって法務局へ登記簿表題部の地目変更を申請することになります。
3.なぜこんなことが起こったのか?
実際に家が建っているということは、農地転用の許可と開発・建築手続きについては終わっているものと考えます。仮に、何の許可も得ずに建築している場合、当然、役場の調査が入り、しかるべき指導が入ります。
しかし、今回のケースで見ると、固定資産税の納税通知明細には、すでに宅地になっているので、役場側では宅地に変更したことは承知しているということです。
つまり、「農地転用手続・開発関係手続・建築関係手続」→「工事開始」→「工事完了」、および現況証明まで終わっているのに、法務局に地目変更の申請をしていなかったということになります。
このために、役場は宅地として認識しているのに法務局の登記簿では農地のままといった現象が現れるわけです。
4.まとめ
結局、相談者の方には、土地家屋調査士の方にお願いして、地目変更の申請をしていただくようにしました。その後、贈与を原因とする所有権移転登記ができるようになります。地目が農地のままだと、農業委員会の許可証の添付を要求されます。
違法建築かどうかの判断は、「固定資産税の納税通知明細」の地目が、農地のままか、宅地に変更されているかでできると思います。勿論、役場の農業委員会等に確認をすることは必要になってきますが。その後、現況証明(農業委員会に過去の履歴があれば、すぐに取得できます)があれば、土地家屋調査士の方にお願いをして、法務局の表題部の地目の変更登記をしていただければ、問題なく所有権移転登記はできます。
ただし、違法建築の場合については、役場の関係部署の担当者に、農地転用等の手続きからお願いできるか相談するしかありません。正常な状態にするような手続きが必要となってきます。固定資産税の通知明細の地目が農地のままで、すでに家が建っている状態でしたら、専門家に相談することをお勧めいたします。
相続登記を放置することにより、不動産の権利関係が混乱することは、相続人やその債権者にとって深刻な問題を引き起こします。
この権利関係の混乱が具体的にどのような問題をもたらすのか、また相続人の債権者による差押えがどのような影響を及ぼすのかについて、詳しく説明します。
目次
1. 相続登記の放置と権利関係の不明確さ
2. 複数世代にわたる相続での権利関係の複雑化
3. 相続人間の紛争と法的手続きの必要性
4. 相続人の債権者による差押えのリスク
5. 不動産の処分の難しさと市場価値の低下
6. 行政手続きや税務上の問題
7. 法改正による相続登記の義務化
8. まとめ
1. 相続登記の放置と権利関係の不明確さ
相続登記を行わないと、不動産の名義は故人(被相続人)のままとなり、新たな所有者が法的に確定しません。この状態では、不動産の所有権が誰にあるのかが不明確になり、相続人間での権利関係が混乱することになります。このような状況では、不動産を売却したり、担保に提供したりすることが困難になり、資産の流動性が著しく低下します。
2. 複数世代にわたる相続での権利関係の複雑化
相続登記が何世代にもわたって放置されると、相続人の数が増加し、誰がどの部分の不動産に権利を持つのかを確定するのが極めて困難になります。例えば、祖父母の代で相続登記が行われずにそのまま放置されると、子供や孫の世代までに権利関係が引き継がれ、相続人の間での利害調整が非常に複雑化します。このような状況では、相続人全員の同意を得るのが難しく、遺産分割協議が長期間にわたることになります。
3. 相続人間の紛争と法的手続きの必要性
相続登記が行われないと、相続人間での所有権をめぐる紛争が発生するリスクが高まります。例えば、ある相続人が「この不動産は自分のものだ」と主張し、他の相続人が異議を唱えた場合、裁判所での法的手続きが必要になります。こうした紛争は、時間と費用がかかり、相続人同士の関係を悪化させることがあります。
4. 相続人の債権者による差押えのリスク
相続登記を放置した場合、相続人の個別の財政問題が不動産に影響を与えることがあります。具体的には、相続人の債権者がその相続人の債務を回収するために、相続財産である不動産を差し押さえる可能性が生じます。相続人が複数いる場合でも、特定の相続人の債務が全体の不動産に影響を与えることがあります。
差押えのメカニズムと影響
債権者は、相続人の財産に対して強制執行を行い、不動産を差し押さえることができます。相続登記が完了していない状態では、不動産の権利関係が明確でないため、差押え手続きが複雑化し、他の相続人にも不利益をもたらす可能性があります。例えば、相続人Aが借金を抱えている場合、その債権者はAが所有する部分の不動産を差し押さえようとしますが、登記が未了であるために他の相続人BやCの権利も影響を受けることがあります。
これは、たとえ遺産分割協議が完了していても、差押えの登記と相続登記の前後で優劣が決まります。遺産分割協議が確定しているなら、早めに相続登記を実施しましょう。
5. 不動産の処分の難しさと市場価値の低下
相続登記が行われていない不動産は、市場での売却が非常に困難です。所有権が不明確であるため、購入者は法的なリスクを負うことになり、価格が大幅に低下するか、そもそも買い手がつかない可能性があります。また、登記が未了の不動産は、担保としての価値が低く、金融機関からの融資を受けることも難しくなります。
6. 行政手続きや税務上の問題
相続登記を放置することにより、行政手続きや税務上の問題も発生します。不動産の固定資産税の納税義務者が曖昧になることで、税金の未払いが発生し、自治体からの督促や差し押さえが行われる可能性があります。また、相続税の申告においても、相続人が誰であるかが明確でないと、正確な申告ができず、ペナルティが課されることがあります。
7. 法改正による相続登記の義務化
2024年4月1日から、相続登記が義務化されることになり、相続発生から3年以内に登記を行わない場合、過料が課されることになりました【出典】法務省、2024年施行の改正法】。この法改正により、相続登記を早期に行うことが求められるようになり、権利関係の混乱を未然に防ぐための措置が強化されます。
8. まとめ
相続登記を放置することによる権利関係の混乱は、相続人やその債権者にとって大きなリスクを伴います。不動産の権利関係が不明確であることは、相続人間の紛争を招き、不動産の売却や利用を困難にします。また、相続人の債権者による差押えが行われると、他の相続人にも影響が及び、さらなる権利関係の混乱が生じます。相続登記を適切に行うことで、これらの問題を未然に防ぎ、安心して不動産を管理・活用することが可能となります。法改正により義務化が進む中で、早期の対応がますます重要になっています。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続税対策として一般的だった「暦年贈与」と「相続時精算課税」について、令和6年1月1日より、大きく変わっています。
暦年贈与と同じ「110万円控除」というキーワードでも、相続時精算課税制度とは、中身が全く異なってきます。セミナーで伺った内容についてまとめてみました。
詳しい内容につきましては、税理士にご確認ください。
アイリスでは、香川県内の方を対象に、相続税無料相談会へのご案内をしております。ぜひご利用ください。(遺留分対策としても、使える場合があります。)
目次
1.暦年贈与と相続時精算課税
2.令和6年1月1日以降何が変わったのか
3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる
4.まとめ
1.暦年贈与と相続時精算課税(令和5年12月31日までの取り扱い)
暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、年間贈与額から基礎控除額「110万円」を使い、相続発生時まで贈与を毎年重ねて総ぞ億財産を目減りさせていく相続税対策です。基本、贈与者、受贈者の要件はなく、誰でも使えます。現状では相続人への贈与について、相続発生前3年分の贈与は、相続財産に組み戻されます。
相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に財産を贈与した場合、贈与者の生涯において2500万円を特別控除として、相続発生時にこの2500万円を相続財産に全額組み込む仕組みの制度です。特徴として、この暦年贈与精算課税制度を選択した場合、税務署への届出が生じ、暦年贈与との併用は禁止されていますので、途中で暦年贈与に変更できなくなります。
上記を見てわかるように、今までは圧倒的に暦年贈与の利用が一般的でした。なぜなら、暦年贈与制度は、毎年の控除額110万円は、組み戻される財産以外は控除されたままの状態となるためです。相続時精算課税は、2500万円の枠で使った額がそのまま組み戻されますので、暦年贈与制度の利用が多かったのもうなづけます。
2.令和6年1月1日以降何が変わったのか
ところが、令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わっています。
改正される内容は、以下の通りです。
①暦年贈与制度
暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税っ対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。
➁相続時精算課税
(令和5年12月31日までに計算式)
{(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率
(令和6年1月1日以降の計算式)
{(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)
―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率
新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。
※ただし、現状ではその取扱いは明確ではありません。今後、通達等で取り扱いが明確になってくると思われますので、本制度をご利用の際は、税理士に事前に確認をするようにしてください。
3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる
キーワードとして「110万円の基礎控除」とありますが、暦年贈与でも、相続時精算課税制度でも出てきます。単純に、110万円の基礎控除を使って相続税対策と言っても、どちらの制度のものか理解していないと、効果が出ないということも考えられます。
セミナーの中で講師の方が言っていたのが、「同じ110万円の控除でも、7年以上生きないと使えない暦年贈与制度の110万円控除と、節税効果抜群の相続時精算課税制度の110万円控除」という表現をされていました。
また、講師からの注意事項として、税務署は暦年贈与制度を廃止したいと考えており、相続時精算課税制度への移行を促している傾向が見受けられますが、今後、今の暦年贈与制度のように大きく変更される可能性もあり得るとのこと。ご存知の通り相続時精算課税制度は一端選択してしまうと、暦年贈与制度は利用できなくなりますので、慎重に判断をする必要があるとのことです。
4.まとめ
(まとめ画像→)
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
生前の遺留分対策は、相続において遺留分権利者(配偶者や子供など)が最低限保障されるべき相続分を確保しつつ、被相続人の意思を尊重した財産分配を実現するために重要です。
以下に主要な対策を詳しく説明します。
目次
1. 生前贈与
2. 生命保険の活用
3. 信託の利用
4. 遺言書の活用
5. 養子縁組の活用
6. 家族間の合意形成
7.まとめ
1. 生前贈与
(1)生前贈与の意義
生前贈与は、被相続人が生存中に財産を特定の相続人や第三者に贈与することを指します。これにより、相続開始時の遺産の総額を減少させ、相続税の負担を軽減する効果があります。ただし、贈与税及び、不動産の場合の登録免許税、その際の専門家への報酬等も興梠しなければなりません。
(2)遺留分への影響
生前贈与は、原則として相続財産に含まれ、遺留分の計算対象となります。ただし、贈与から10年以上経過している場合、その財産は遺留分の計算に含まれません【※】。このため、長期的に計画的な贈与を行うことが重要です。
※ 2020年の民法改正により、遺留分の計算において、遺留分権利者に対する贈与については相続開始前の10年間まで遡って計算されるようになりました(民法1044条)。
(3)具体的な方法
暦年贈与: 毎年110万円以内の非課税枠を利用して贈与を行う。ただし、相続発生後、7年間遡って、その間に贈与した財産は、相続財産となってしまいます。
相続時精算課税:こちらは2500万円までの財産を贈与税なしで生前贈与し、相続発生時に2500万円分を相続財産とする手続きです。ここで令和6年1月1日より、年間基礎控除110万円が追加されています。相続時精算課税を使う場合、税務署への届出が必要となります。そして、一度、相続時精算課税を選択すると、暦年贈与を使うことはできなくなりますので注意が必要です。
教育資金・結婚・子育て資金の贈与: 特定の目的で非課税枠を活用して贈与する。詳しくは税理士にご相談ください。
2. 生命保険の活用
(1)生命保険の特性
生命保険金は、受取人の固有財産とみなされ、相続財産とは別に扱われます。生命保険金の非課税枠は「500万円 × 法定相続人の数」で設定されており、これを利用することで相続税の負担を軽減できます。
(2)具体的な方法
受取人を遺留分権利者以外に指定: 特定の相続人が受け取れるように受取人を設定する。
保険金の受取方法の工夫: 被相続人の意向を反映するため、保険金の分配方法を工夫する。
3. 信託の利用
(1)家族信託とは
家族信託は、被相続人が自分の財産を信頼できる受託者に託し、指定した受益者に利益を分配する仕組みです。信託財産は相続財産とみなされないことから、遺留分対策として有効です。
(2)具体的な方法
特定信託: 特定の相続人や第三者を受益者とする信託契約を設計する。
分割信託: 複数の受益者に財産を分割して分配する信託契約を作成する。
4. 遺言書の活用
(1)遺言書の効力
遺言書を作成することで、被相続人の意向を明確にし、相続人間のトラブルを防ぐことができます。特別受益の持ち戻しを免除することを記載することで、特定の相続人に対して多くの財産を残すことが可能です。ただし、遺留分侵害額請求をなされた場合は、相続人への特別受益の場合、10年以内の遺産は、遺留分侵害額請求の際の遺産の対象となります。
(2)具体的な方法
持ち戻し免除の記載: 遺言書に、特別受益の持ち戻しを免除する旨を明記する。
配分の調整: 遺留分を侵害しない範囲で、財産の配分方法を明確に指定する。
5. 養子縁組の活用
(1)養子縁組の意義
養子縁組は、被相続人と養子との間で法的な親子関係を結ぶことを指します。養子は法定相続人となり、法定相続分が発生します。これにより、相続人の数が増え、結果的に各相続人の遺留分が減少することになります。法律上は、養子の数に制限はありませんが、税務上では制限があります。相続税の基礎控除に加算できる養子の人数には注意が必要です。
(2)遺留分への影響
養子縁組をすることで、遺留分権利者の人数が増え、それに伴い遺留分の総額が減少します。例えば、相続人が増えることで、1人あたりの遺留分割合が減少し、相続財産を柔軟に配分しやすくなります。一人当たりの法定相続分を下げることができ、結果、遺留分の額も減少します。
(3)具体的な方法
養子縁組による相続人の追加: 養子を迎えることで法定相続人を増やし、遺留分の減少を図る。
特別養子縁組の活用: 20歳未満の子供を養子とすることで、相続人の数を増やし、相続財産の分配を調整する。
6. 家族間の合意形成
家族間の協議
相続において家族間の合意形成は不可欠です。被相続人の意向を尊重しつつ、遺留分権利者を含む全ての相続人が納得する形で財産分配を進めます。
具体的な方法
家族会議の開催: 定期的に家族会議を開き、相続に関する理解と合意を深める。
遺留分放棄の協議: 遺留分権利者に対して事前に遺留分の放棄を求める(家庭裁判所の許可が必要)。当然、当事者に納得していただくために相応の財産の提供が必要となります。
※ すべての相続問題に言えることですが、この家族間の合意の形成(コミュニケーション)をしっかりやらず、きっと大丈夫と思いつつ放置し、相続が始まったときに家族間に亀裂が入るといった事案が散見されます。
7.まとめ
生前の遺留分対策は、遺留分権利者の権利を尊重しながら、被相続人の意思を最大限に実現するための重要なプロセスです。生前贈与、生命保険の活用、信託の利用、遺言書の作成、養子縁組、相続税対策の併用、そして家族間の合意形成など、様々な方法を組み合わせることで、相続が円滑に進行し、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。これにより、相続財産の分配がスムーズに行われ、家族の将来に対する安心感を得ることができるます。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続において特別受益と持ち戻し、遺言書による持ち戻しの免除と遺留分に関する事項は、法的に重要なテーマであり、家族内の公平性を保つために多くの配慮がなされる分野です。
以下に、それぞれの概念と関連事項を説明します。
目次
1.特別受益と持ち戻し
2.持ち戻しの具体的な計算方法
3.遺言書による持ち戻しの免除
4.遺留分と持ち戻し免除の関係
5.遺留分侵害額請求の手続き
6.まとめ
1.特別受益と持ち戻し
(1)特別受益とは
特別受益(とくべつじゅえき)とは、被相続人(亡くなった人)が相続人に生前贈与した財産や、相続開始前に特別に利益を受けた場合のことを指します。典型的な例には、結婚資金や住宅購入資金の援助、事業の立ち上げ資金などがあります。これらの贈与は、他の相続人と比較して特定の相続人が過度の利益を得ているとみなされるため、相続分の計算において考慮される必要があります。
(2)持ち戻しとは
持ち戻し(もちもどし)とは、特別受益を受けた相続人が相続財産を公平に分配するために、その受益額を相続財産に加算する手続きです。これにより、全相続財産の総額を算定し、その上で各相続人の相続分を決定します。
たとえば、被相続人が死亡時に残していた財産が1000万円で、生前に特定の相続人に300万円の贈与をしていた場合、相続財産は1300万円とみなされます。これを各相続人の法定相続分に基づいて分配します。
持ち戻しを行う理由は、相続財産の公平な分配を図るためです。特別受益を考慮せずに遺産分割を行うと、生前贈与を受けた相続人が不当に多くの財産を手にすることになり、他の相続人にとって不公平になる可能性があります。
2.持ち戻しの具体的な計算方法
持ち戻しは、特別受益を受けた時点での価額を基準に行われます。特別受益が持ち戻しされる際の価額は、相続開始時点での評価額を基準とし、特別受益を受けた相続人の相続分から控除します。
1.特別受益と持ち戻し
(1)特別受益とは
特別受益(とくべつじゅえき)とは、被相続人(亡くなった人)が相続人に生前贈与した財産や、相続開始前に特別に利益を受けた場合のことを指します。典型的な例には、結婚資金や住宅購入資金の援助、事業の立ち上げ資金などがあります。これらの贈与は、他の相続人と比較して特定の相続人が過度の利益を得ているとみなされるため、相続分の計算において考慮される必要があります。
(2)持ち戻しとは
持ち戻し(もちもどし)とは、特別受益を受けた相続人が相続財産を公平に分配するために、その受益額を相続財産に加算する手続きです。これにより、全相続財産の総額を算定し、その上で各相続人の相続分を決定します。
たとえば、被相続人が死亡時に残していた財産が1000万円で、生前に特定の相続人に300万円の贈与をしていた場合、相続財産は1300万円とみなされます。これを各相続人の法定相続分に基づいて分配します。
持ち戻しを行う理由は、相続財産の公平な分配を図るためです。特別受益を考慮せずに遺産分割を行うと、生前贈与を受けた相続人が不当に多くの財産を手にすることになり、他の相続人にとって不公平になる可能性があります。
2.持ち戻しの具体的な計算方法
持ち戻しは、特別受益を受けた時点での価額を基準に行われます。特別受益が持ち戻しされる際の価額は、相続開始時点での評価額を基準とし、特別受益を受けた相続人の相続分から控除します。
3.遺言書による持ち戻しの免除
(1)持ち戻し免除とは
被相続人は遺言書を通じて、特定の相続人に対する特別受益の持ち戻しを免除することができます。これは、被相続人が特定の相続人に対して特別な事情や感情的な理由がある場合に、他の相続人の了承を得ることなく行うことが可能です。例えば、特定の相続人が被相続人の介護を行ったり、経済的な援助をしていた場合などに、持ち戻しを免除することでその相続人の貢献を認める形になります。
(2)持ち戻し免除の効果
持ち戻し免除の効果は、免除を受けた相続人が、特別受益を受けた分を相続財産に加算せずに相続できることを意味します。これにより、他の相続人と比較してより多くの財産を得ることが可能になります。
例えば、前述の例で、特定の相続人が300万円の特別受益を受けていた場合でも、遺言書で持ち戻しが免除されていると、その300万円は相続財産に加算されず、生前贈与を受けた300万円の財産については、遺産に持ち戻す必要が無くなります。
4.遺留分と持ち戻し免除の関係
(1)遺留分とは
遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人が最低限保障される相続財産の割合を指します。遺留分は、相続人が被相続人の意思に反して財産を全く受け取れない事態を防ぐための制度です。通常、直系尊属(親)や子、配偶者などが遺留分権利者となります。
遺留分の割合は法定相続分の半分または3分の1(直系尊属のみが相続人の場合)であり、これにより相続人が最低限保障されるべき財産を確保します。ほとんどの場合が、その割合は、法定相続分の2分の1となります。
(2)遺留分に対する持ち戻し免除の影響
持ち戻し免除が遺留分に及ぼす影響は、複雑です。遺留分は相続財産の公平な分配を保障するため、持ち戻し免除が遺留分権利者の権利を侵害する場合があります。例えば、特定の相続人に対して多額の特別受益があり、その持ち戻しが免除されると、他の相続人の遺留分が侵害される可能性があるのです。
この場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求権の行使を行うことができます。遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害する範囲内で遺産をもらった相続人に対して請求を行います。この請求は、裁判上でも裁判外でも構いません。つまり、口頭での請求でも効力はありますが、後にもめたときの訴訟の対策として、書面で作成し内容証明郵便で意思表示することをお勧めいたします。請求の結果、遺留分を認めたり、裁判で認められた場合、民法改正前は、財産の返還でしたが、改正後は、金銭的な補償を求める手続きとなりました。
5.遺留分侵害額請求の手続き
遺留分侵害額請求は、相続開始後に遺留分権利者が家庭裁判所に対して行います。この手続きにより、遺留分を侵害された相続人は、正当な相続分を取り戻すことができます。
請求には時効があり、改正民法第1048条は,遺留分侵害額請求権の時効について,「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。 相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」となっています。
6.まとめ
相続における特別受益と持ち戻し、遺言書による持ち戻しの免除、そして遺留分の関係は、相続人間の公平性を保つために重要な要素です。
特別受益の持ち戻しは相続財産の分配を公平にするために必要な手続きですが、被相続人の意思により持ち戻しが免除される場合もあります。この場合、遺留分権利者の権利を保護するための制度が整備されており、遺留分侵害額請求によって最低限の相続分が保障されています。
これらの制度は、相続において被相続人の意思と相続人の権利のバランスを保つために重要な役割を果たしています。
アイリスでは、随時無料済談を受け付けております。来訪、電話、オンラインによるZOOM面談、いずれにも対応しております。
海外に長期居住している場合、日本での住民票及び印鑑証明書は抹消されます。
遺産分割協議については、相続人全員の参加と遺産分割協議書には、署名及び実印による押印が要求されます。
しかし、相続人の一人が海外居住者だった場合、「印鑑証明書」は取得できません。
この場合に使用する「署名証明書(サイン証明書)」が必要となりますが、手続き・種類について解説したいと思います。
目次
1.署名証明書(サイン証明書)とは
2.署名証明書(サイン証明書)の方式
3.まとめ
1.署名証明書(サイン証明書)とは
海外に住所を移してしまった日本人(日本国籍有)の方は印鑑証明書を取得することができません。この場合、現地の領事館で取得できるのが署名証明書(サイン証明書)です。署名証明書(サイン証明書)は日本の印鑑証明書に代わるものとして発行されるもので,申請者の署名(又は拇印)が確かに領事の目の前でなされたことを証明するものです。
署名証明書(サイン証明書)、原則は領事館に出向く必要があります。いきなり当日訪問しても受付してもらえない予約制となっているところもあるため、事前に事前に管轄をする領事館を確認の上で申請方法について問合せしてください。
しかし、領事館まで遠く離れている場合など,領事館のサイン証明書(署名)を取得することが困難なときは,外国の公証人が作成した署名証明を添付して登記の申請をすることも認められています。
2.署名証明書(サイン証明書)の方式
署名証明書(サイン証明書)には2つ形式があります。
①形式1:貼付型又は合綴型といわれる領事館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した書類(遺産分割協議書など)を綴り合わせて割印を行うもの
➁形式2は単独型といって印鑑証明書のようにその紙単体で申請者の署名をで証明するもの
この2種類があります。法務局で不動産登記などに使用する場合の署名証明書(サイン証明書)は、形式1を求められます。貼付型又は合綴型といわれる署名証明書(サイン証明書)を取得するためには、綴る書面とパスポートなどの必要書類を持参の上、現地の領事館に出向き申請します。
ですので相続人間の遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書が作成された後ではなければ申請をすることができません。遺産分割協議書と合綴型した証明書は、海外から日本へ送ってもらう必要があります。万が一の郵便事故等に備え、1枚に相続人全員が押印する方式ではなく1人1枚押印する遺産分割協議証明書方式で用意することが望ましいです。
3.まとめ
署名証明書(サイン証明書)は、海外在住の日本国籍者が印鑑証明書の代わりに使用できる証明書です。これは申請者の署名(または拇印)が確かに領事の目の前でなされたことを証明するもので、現地の領事館で取得できます。原則として領事館に出向く必要があり、予約制のところもあるため、事前に確認と問い合わせが必要です。しかし、領事館が遠い場合やその他の理由で訪問が難しい場合、外国の公証人が作成した署名証明を使うことも認められています。
名証明書(サイン証明書)の方式には2つの形式があります。
形式1:貼付型(合綴型)
概要:領事館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した書類(例えば遺産分割協議書など)を綴り合わせて割印を行うものです。
使用例:法務局での不動産登記など。
手続き:綴る書面(遺産分割協議書など)を準備。パスポートなどの必要書類を持参し、領事館で申請。
形式2:単独型
概要:印鑑証明書のように、その紙単体で申請者の署名を証明するものです。
不動産登記などに使用する場合は形式1が求められます。相続人間で遺産分割協議がまとまった後に申請し、署名証明書を日本に郵送します。郵便事故を避けるため、相続人全員が1枚に押印するのではなく、1人1枚ずつ証明書を作成することが望ましいです。
また、スケジューリングも領事館が開いている日時に予約して来訪しないといけませんので、事前に遺産分割協議書を送付した後に対応していただく必要があります。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続人の中に精神疾患がある方がいる場合の遺産分割協議は、特別な配慮が必要となります。
どのような配慮が筆応なのかについて、お話をしたいと思います。
目次
1.成年後見制度の利用
2.本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合の対処
3.まとめ
1.成年後見制度の利用
遺産分割協議は、「相続人全員の参加」が要件です。つまり、相続人の中に精神疾患を患っている方がいる場合でも、その方を除外して遺産分割協議を成立させることはできません。これが大前提になります。性疾患と言っても、どの程度のレベルにあるのかについては、医師の診断にもよると思いますが、意思表示が困難な場合、成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。
精神障害がある相続人が意思決定能力を欠いている場合、その相続人の利益を守るために成年後見制度を利用するのが一般的です。この制度では、家庭裁判所が成年後見人を選任し、後見人がその相続人の代理として遺産分割協議に参加します。
成年後見制度には以下の種類があります:
①後見:意思能力が欠如している場合に適用され、後見人が全面的に財産管理や法律行為を代行します。
➁保佐:意思能力が不十分な場合に適用され、保佐人が特定の行為について同意を必要とします。
③補助:意思能力が一部不十分な場合に適用され、補助人が本人の希望に応じて一部の行為について同意を行います。
家庭裁判所への申立には、申し立てができる方が制限されています。具体的には、本人,配偶者,4親等内の親族,成年後見人・保佐人・補助人(以下「成年後見人等」という。),任意後見人,任意後見受任者,成年後見監督人等,市区町村長,検察官です。(裁判所HP引用)
必要書類は、「申立書」「医師の診断書」「本人の財産に関する書類」などが必要となります。専門家(弁護士・司法書士)に相談するか、裁判所のHPを参照してみてください。
成年後見人が選任された場合、成年後見人は遺産分割協議に本人の代理人として参加することになりますが、本人の利益を最大限に守るために行動する責任があります。具体的には、遺産分割の内容が相続人にとって不利にならないように注意を払い、適切な分割案を検討します。
こうしてまとまった遺産分割協議の内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。この協議書には、すべての相続人(後見人を含む)が署名・捺印する必要があります。精神障害がある相続人の場合、後見人が代理で署名・捺印を行います。協議書の内容が明確で、公平であることを確認することが重要です。
精神障害がある相続人に対しては、配慮をもって対応することが重要です。必要に応じて、福祉サービスや専門家(弁護士や司法書士など)の助言を得ることも検討してください。精神障害を持つ相続人が適切な支援を受けられるように、家庭裁判所や関連機関と連携することも重要です。
2.本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合の対処
特定の事情により利益相反が生じる場合や、成年後見人が適当でない場合などに「特別代理人の選任」が必要となります。
「後見人が他の相続人である場合」には、注意が必要です。この場合、本人と成年後見人との間に、利益相反関係が生じているため特別代理人の選任をする必要があります。
家庭裁判所への申立ては、利益相反が生じる可能性がある相続人や利害関係者が行います。特別代理人は相続人の代理として適切な判断を下し、その利益を守ります。特別代理人の役割と責任は重大であり、適切な行動が求められます。相続問題において特別代理人が必要な場合は、早めに専門家に相談し、適切な手続きを進めることが重要です。
利益相反関係になっているかどうかがよくわからない場合には、専門家に相談することをお勧めいたします。
3.まとめ
精神障害がある相続人を含む遺産分割協議は、法的手続きや専門的な知識が求められるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを強くお勧めします。専門家のアドバイスを受けることで、法的な手続きがスムーズに進み、全ての相続人の利益が適切に守られることが期待できます。
以上が、精神障害がある相続人を含む遺産分割協議の基本的な流れとポイントです。適切な手続きを踏むことで、トラブルを避け、円満な遺産分割が実現することが期待されます。
私の経験ですが、相続関連の話し合いの時に心無い言葉を使う親族の方がいました。その親族の方は、被相続人が生前、土地や山林の所有権を自分たちに移転してほしいと言いましたが、断られたため「あなたの躾が悪いから、引きこもりになるんや。」といったそうです。そもそも、親族には相続権はありませんが、精神疾患になる可能性なんて、今の日本ではだれでもある訳です。私が確認した事案は、言った方が相続人ではないので、遺産分割協議では支障はありませんでしたが、その方たちが遺産分割協議に参加した場合、相当揉めると思います。権利を主張するのも大事なのですが、遺産分割協議に集まった方たちすべてに同じだけの権利があることを念頭に、節度ある対応をしていただきたいです。
2021年に改正された民法および不動産登記法により、日本では相続登記が義務化されました。
この制度は2024年4月1日から施行されており、相続による不動産の登記が義務付けられています。
相続登記の義務化は、不動産の所有者不明問題を解消し、透明性を高めることを目的としていますが、その一方でいくつかの問題点も指摘されています。
以下に、その主要な問題点について詳述します。
目次
1. 手続きの煩雑さとコスト負担
2. 罰則のリスク(10万円以下の過料)
3. 相続人間のトラブル
4.まとめ
1. 手続きの煩雑さとコスト負担
相続登記には様々な書類の準備が必要であり、手続きが煩雑であることが大きな障害となっています。
①書類の準備:
戸籍謄本や住民票、不動産の評価証明書など、多くの書類を揃える必要があります。特に相続人が多数いる場合や相続人が遠方に住んでいる場合、これらの書類の収集は時間と労力を要します。
➁専門家への依頼:
登記手続きを確実に行うために、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することが一般的です。しかし、これには相応の費用がかかり、経済的負担となることがあります。特に遺産が少ない場合や相続人が高齢である場合、この費用負担は大きな問題となります。
※自治体によっては、相続登記費用の補助金制度がある場合があります。最寄りの市役所等に確認してみてください。
2. 罰則のリスク(10万円以下の過料)
相続登記の義務化に伴い、登記を怠った場合の罰則が導入されました。
①罰則の存在: 罰則の存在が相続人に対してプレッシャーを与える一方で、相続手続きを迅速に進める動機にはなるかもしれません。しかし、相続人が手続きに不慣れであったり、高齢や健康問題などで迅速に対応できない場合、罰則の適用は不公平に感じられることがあります。
➁罰則の実効性: 実際に罰則がどの程度の頻度で適用されるかについては不透明であり、その実効性に疑問が持たれることもあります。また、罰則が適用された場合の相続人の対応方法や救済措置が十分に整備されていないことも問題です。
※法務省から、要件については既に発表されています。過料を免れる方法もありますので、詳しくは専門家である司法書士に確認してください。
3. 相続人間のトラブル
相続登記義務化により、相続人間のコミュニケーションや協力が求められますが、これがトラブルの原因となることがあります。すでに発生している相続において、相続人間でもめているため塩漬けにしていたケースが見受けられますが、義務化により、何らかの解決策を講じて、相続登記を勧めなければならなくなっています。
①相続人間の意見の相違: 相続人間で遺産分割に関する意見が一致しない場合、登記手続きが進まないことがあります。特に、相続財産が不動産のみの場合や共有持分が複雑な場合、協議が難航することがあります。
➁遠隔地に住む相続人: 相続人が遠隔地に住んでいる場合、連絡や手続きの調整が困難となり、手続きの遅延や誤解が生じやすくなります。これにより、相続人間の関係が悪化するリスクもあります。
すでにトラブルが発生している場合は、弁護士に相談したほうがいいかもしれません。もめてから時間がたっている場合、家庭裁判所で「遺産分割調停」又は「遺産分割審判」で何らかの決着をつけることができます。
4.まとめ
相続登記義務化は、日本における不動産管理の透明性を高め、所有者不明の不動産問題を解消するための重要な改革です。しかし、その一方で、手続きの煩雑さやコスト負担、罰則のリスク、相続人間のトラブルといった様々な問題点が存在します。これらの問題に対処するためには、専門家による支援体制の整備、罰則の適用基準の明確化などが必要です。相続登記義務化の制度が円滑に運用され、実効性を持つためには、これらの課題に対する継続的な改善と支援が不可欠です。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
2021年の民法および不動産登記法の改正により、日本では相続登記が義務化されることとなりました。この改正は2024年4月1日から施行され、相続による不動産の登記が義務付けられることで、所有者不明の不動産の問題を解消し、透明性を高めることが目的とされています。以下では、相続登記義務化の背景、具体的な内容、そしてその影響について詳しく説明いたします。
目次
1.相続登記が義務化に至った背景
2.改正の内容
3.今後想定される影響
4.まとめ
1.相続登記が義務化に至った背景
日本では、相続登記が未完了のまま放置されている不動産が多く存在します。相続人が相続登記を行わない理由として、手続きの煩雑さや費用の問題が挙げられます。しかし、これによりいくつかの深刻な問題が生じています。
①所有者不明不動産の増加:
不動産の所有者が明確でない場合、公共事業の用地取得や再開発が困難になることがあります。特に、インフラ整備や災害対策において、迅速な対応が求められる場面で支障が出ることがあります。実際に、東日本大震災の際には、所有者不明の土地のために、復旧が遅れていました。
➁空き家問題:
相続登記が行われずに放置された不動産が空き家となり、防災や防犯の観点から地域社会に悪影響を及ぼしています。空き家は放火や不法侵入のリスクを高めるだけでなく、景観の悪化や資産価値の低下を招きます。
2.改正の内容
相続登記義務化に関する改正では、以下のような具体的な内容が盛り込まれています。
①相続登記の義務化:
相続が発生したことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務付けられます。(すでに発生している相続については、令和6年4月1日より3年以内)相続登記を行わない場合、罰則が科される可能性があります。これは相続人が自身の権利を明確にし、適切に不動産を管理するための重要なステップです。
➁相続登記の簡素化:
手続きの簡素化を図るため、必要書類の取得が容易になります。具体的には、戸籍謄本や住民票の取得手続きが簡略化されるほか、オンライン申請の導入も進められています。これにより、相続人の負担が軽減され、スムーズに登記手続きを行うことが可能になります。
③所有者不明土地の管理制度の整備:
自治体が所有者不明の土地を管理できる制度が整備されました。これにより、放置された土地の適切な管理が期待され、公共事業や地域開発の障害が取り除かれることが期待されます。
3.今後想定される影響
相続登記義務化により、いくつかの重要な影響が見込まれます。
①相続人の義務の明確化:
相続人は、不動産の相続が発生した場合に速やかに登記手続きを行う義務があります。これにより、相続人間でのトラブルが減少し、不動産の管理がより効率的に行えるようになります。特に、相続人間での共有持分の明確化が進むことで、不動産の有効利用が促進されます。
➁不動産市場の透明性向上:
相続登記が義務化されることで、不動産の所有者が明確になります。これにより、不動産取引の透明性が向上し、市場の信頼性が高まります。特に、投資家にとっては安心して取引を行える環境が整うことが期待されます。
③公共事業の円滑化:
所有者が明確な不動産が増えることで、公共事業の用地取得がスムーズに進むようになります。これにより、インフラ整備や地域開発が効率的に行われ、地域社会全体の発展に寄与します。
④空き家問題の解消への第一歩:
相続登記が義務化されることで、空き家の発生が抑制されます。これにより、防災や防犯の観点からも地域の安全性が向上し、住環境の改善が期待されます。また、適切に管理された不動産は、地域の資産価値向上にも寄与します。
4.まとめ
相続登記の義務化は、日本における不動産管理の改善と透明性の向上を目的とした重要な改革です。相続人はこの新しい制度に対応するために、相続が発生した際には速やかに登記手続きを行うことが求められます。これにより、社会全体としての不動産管理がより適切に行われることが期待されています。
不動産の相続登記が義務化されることで、所有者不明の不動産が減少し、地域社会の発展や不動産市場の健全化が進むことが期待されます。この制度は、相続人にとっても権利を守り、不動産の有効利用を促進する重要な役割を果たします。相続登記の手続きを確実に行い、新しい制度に対応することが、将来的なトラブルを防ぐためにも重要です。
また、ご自身の権利を主張するため(不動産を処分する場合に、契約の当事者を主張するため)に、相続登記をしておかなければできません。将来、所有している不動産を処分しようと考えている方は、相続登記は早めにしておくことをお勧めいたします。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
エンディングノートと遺言書は、どちらも人生の終わりを迎える際に必要な事項を整理しておくための書類ですが、それぞれの目的や法的効力には大きな違いがあります。
今回は、エンディングノートと遺言書の違いについて解説したいと思います。
目次
1.エンディングノートとは
2.遺言書とは
3.エンディングノートと遺言書の比較
4.遺言書に法的効力が及ばない付言事項とは
1.エンディングノートとは
エンディングノートとは、自分の希望や思いを家族や友人に伝えるためのものです。
記載する内容として以下のものが主なものです。
①医療や介護についての希望
➁葬儀の方法や希望
③デジタル資産の管理方法
④親しい人へのメッセージ
➄遺産の分配についての希望(法的効力はありません)
エンディングノートには法的効力はありません。そのため、遺産分割の際には遺言書の内容が優先されます。エンディングノートはあくまで家族や関係者が故人の希望を理解するための参考資料となります。
2.遺言書とは
遺言書とは、法律に基づいて、遺産の分配や相続人の指定を明確にするためのものです。
遺言書の内容として、民法上で以下の内容を定めることができます。
①遺産の分配方法の指定
➁相続人の指定
③遺言執行者の指名
④その他法律に基づく指示
エンディングノートとは異なり、遺言書は法的に効力があり、適切に作成されている場合、遺産分割や相続において法的に拘束力があります。自筆証書遺言で法務局以外で保管されている遺言書は、相続発生後、家庭裁判所の検認を経ることで、法的効力が確定します。
自筆証書遺言書でも、法務局に保管されている場合や、公正証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けなくても、相続発生時に法的効力を生じます。
遺言書には、遺言書には大きく分けて、自筆証書遺言・公正証書遺言の2種類があります。これらは法律に従って正しく作成される必要があり、特に公正証書遺言は公証人の関与及び、遺言者の意思確認時に証人2名の立会が求められます。遺言書の内容は、遺言者又はその代理人とのヒアリング等により、公証人が遺言書を作成します。
一方で、自筆証書遺言の場合、遺言者本人が自筆で作成するため、法的効力を生じるように専門家のサポートなどが必要になるばあがあります。せっかく遺言書を書いても、法的効力が生じなければ意味がありませんから。
3.エンディングノートと遺言書の比較
(目的)エンディングノートは個人の希望を伝えるためのものであり、遺言書は法的に遺産分割を指示するためのものです。
(内容)エンディングノートは医療、葬儀、デジタル資産など幅広い希望を含むことができるのに対し、遺言書は主に遺産分割に関する事項に限定されます。
法的効力 エンディングノートには法的効力がないのに対し、遺言書には法的効力があります。
エンディングノートと遺言書を併用することで、故人の意向をより明確に伝え、法的に確実な形で遺産を分配することができます。また、最近はやりのデジタル資産についても、パスワードやアクセス方法なども、エンディングノートに記載しておくことで、遺産を見つけやすくすることも可能になります。
4.遺言書に法的効力が及ばない付言事項とは
遺言書の付言事項とは、遺言書に法的拘束力のある事項とは別に、遺言者が相続人や遺族に対して伝えたいメッセージや希望を書き加える部分のことです。これには法的拘束力はありませんが、遺言者の意向や思いを伝えるための重要な役割を果たします。
つまり、家族への想いなどについては、遺言書の中の「付言事項」に書きしたためることができます。付言事項には、法的効力が及ばないため、甲的効力を及ばしたい内容は、別項目で記載しなければなりません。
「付言事項」には以下のような内容を記載します。
①感謝の言葉
➁遺産分割の理由
③遺族へのメッセージや希望
などです。
付言事項の重要性は、法的拘束力はないものの、遺言者の思いを直接遺族に伝える手段として非常に重要です。これにより、遺族は遺言者の真意を理解しやすくなり、遺産分割に関する争いを防ぐことにもつながります。遺言書に付言事項を加えることで、遺言者の意向がより明確に伝わり、遺族間の調和が保たれることが期待されます。
5.まとめ
このように、エンディングノートと遺言書は、別の働きがあります。エンディングノートを書いても、法的効力が生じないため、その中で「長男に全財産を相続させる」と記載しても、遺産分割協議をして遺産を分割しなければ、個々の財産の帰属先が明確にはなりません。使い分けをして、「安心」を手に入れましょう。
もし、よくわからない場合には、専門家に相談することをお勧めいたします。
海外が関連すると、相続手続きは一気にハードルが上がります。
被相続人が海外で亡くなった場合、相続放棄の手続きは、どのようにすればいいのでしょうか?
管轄の家庭裁判所ってどこになるのか?
少しお話をしたいと思います。
目次
1.管轄の家庭裁判所はどこ?
2.どの士業にお願いすればいいのか
3.まとめ
1.管轄の家庭裁判所はどこ?
相続放棄の管轄の家庭裁判所は、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。その住所地が、海外であった場合、外国の裁判所への相続放棄というのが原則になるわけです。家事手続法では、日本の裁判所に相続放棄の管轄を認めていません。
しかし、その国に相続放棄のような手続きがそもそもなかったり、仮に相続放棄に類似の手続きがあっても、制約があり相続放棄類似の手続きができないといったことが起こりえます。さらに、首尾よく外国の裁判所で相続放棄ができたとしても、その効力が日本国内でも有効とは限りません。日本国内の債権者に対抗できない相続放棄の手続きをしたとしても、意味がありません。
このような場合、民事訴訟法で以下のように規定されています。
「(管轄裁判所の特例)
第十条の二 前節の規定により日本の裁判所が管轄権を有する訴えについて、この法律の他の規定又は他の法令の規定により管轄裁判所が定まらないときは、その訴えは、最高裁判所規則で定める地を管轄する裁判所の管轄に属する。」
相続放棄制度がないことや、日本での相続放棄の手続きが必要な理由を主張立証して、日本の家庭裁判所に相続放棄の緊急国際裁判管轄を認めてもらう必要があります。
そして、日本の裁判所に原則的に国際裁判管轄がない場合に、特別に日本の裁判所の緊急国際裁判管轄を認めてもらう場合の裁判所は必ず東京家庭裁判所になります。
海外に居住する被相続人が亡くなり、多額の借金がある場合、若しくは、すでに離婚した配偶者が海外で死亡し、債務がいくらあるのかわからないため、子に借金を負わせたくないなどの理由で、相続放棄の手続きを行う場合には、東京の家庭裁判所に問い合わせた方がいいです。ただし、事例的に取り扱った件数が多いようですとすんなり手続きに入れますが、緊急国際裁判管轄を認めてもらうためには、認めてもらう必要があることを立証しなければなりません。
2.どの士業にお願いすればいいのか
以上のように、緊急国際裁判管轄を認めてもらうためには、必ず東京家庭裁判所で行うことになります。ここで、どの士業に頼めば、手続きがスムーズに進むのかについてお話をしたいと思います。
司法書士は、読んで字のごとく「司法の書類作成をする者」となります。行政書士では無理です。しかし、今回のように書類作成のみならず、その前段階で「緊急国際裁判管轄」を認めてもらう必要がありますので、弁護士一択だと思います。
認定司法書士には、簡易裁判所における訴額140万円以下の民事訴訟については、訴訟代理人となることができますが、家庭裁判所は地方裁判所扱いです。書類作成だけで、ご本人に知識がなく代理人を必要としている場合は、認定司法書士でも出る幕はありません。
3.まとめ
他の相続手続きもそうなのですが、グローバル社会になっているのに、海外が関係すると、一気にそのハードルは高くなります。今回は、相続放棄ですので、相続発生後の対応になります。
しかし、遺産分割協議も外国に相続人が済んでいるというだけで、やはりハードルは上がります。この場合は、生前に遺言書を作成し、遺産分割協議をしなくてもいい様にしておくことで、煩雑な手続きを避けることができます。この場合でも、債務は相続人に来ますので、相続放棄をするとなると、海外から相続放棄手続きを被相続人の死亡井の住所地を管轄する家庭裁判所に行わなければなりません。当然ですが、期限もあります。
生前に、海外に居住割ている方は、事前に専門家に相談しておいた方がいいかもしれませんね。
戸籍や住民票について、士業には、「職務上請求」というものがあります。職務上請求については、なんでもかんでも士業なら取得できるといった誤った認識の依頼してくる方がいらっしゃいます。が、当然、なんでもかんでも取得できるというわけではありません。職務に関連していなければ、取得は士業と言えどもできません。詳しく解説いたします。
目次
1.本人請求ができる範囲
2.職務上請求で取得できる範囲
3.職務で密接に関係すると言っても・・・
4.まとめ
1.本人請求ができる範囲
戸籍を本人が本人のものを取得するのは当然できますが、それ以外にどの範囲まで、取得できるのでしょうか?
配偶者、祖父母、父母などの直系尊属、子、孫などの直系卑属の戸籍が範囲となります。自分で戸籍を取得する場合、本籍のある市区町村の役場で関係が確認できない場合には、関係が分かる戸籍で証明しなければなりません。証明できないと、請求している本人との配偶者・直系尊属・直系卑属といった関係を役場の窓口の担当者がわからないためです。
まずは、請求者本人の戸籍や改正原戸籍などを取得して、そのあとに請求することになると思います。
2.職務上請求で取得できる範囲
先にも書きましたが、「職務上請求」は、士業の職務に関連している場合をもって、取得が可能となります。例えば、相続登記をするために遺産分割協議書を作成しなければならないとき、法定相続人全員の参加が義務付けられていますので、この場合は、法定相続人に関連する戸籍を取得することができますが、遺言書作成となりますと、話は大きく変わってきます。遺言書(特に公正証書遺言)を作成する場合、士業に依頼したとしても、その範囲は、依頼者(遺言者)本人が、取得できる範囲と受遺者のものまでとなります。
3.職務で密接に関係すると言っても・・・
相続登記をした配偶者の方が遺言書を作成するときに、戸籍の取得の依頼がありました。その時に、本人で取得できる範囲までであることを告げると、「先生、相続登記の時に、相続人全員の戸籍取得してくれたじゃないですか?」とおっしゃられましたが、職務内容が異なってしまいますので、上記範囲までの取得しか、職務上請求でも許されていません。職務で取得できる範囲があることを伝え、納得していただきました。
行政書士として遺言書作成のご依頼を受任しても、行政書士の職務上請求書では、本人取得範囲までしか認められていません。依頼があれば制限なしに戸籍謄本や住民票を取得できるというわけではなく、依頼者が本人又は第三者として請求できるものを代わりに請求できるに過ぎません。依頼者の方が請求できないものは、いくら職務上請求でも取得することができません。職務上請求は、法令上万能ではありません。
しかし、職務上請求を使うと、取得できてしまうケースがあります。ですので、権限外の取得や、興信所などに職務上請求を販売する事件が後を絶たないわけです。
※行政書士会では、職務上請求書購入の際、申請書類には「誓約書」「使用済みの職務上請求書」「研修(職務上請求に関する研修)の終了証」の添付を要求されます。
4.まとめ
稀にですが、戸籍の取得のみの依頼があることがありますが、お断りするようにしています。戸籍の取得のみでは、根本となる職務ではないためです。それに、トラブルに巻き込まれることが、極めて高い確率で予想できるためでもあります。
専門家である士業が、適切に職務上請求を使ってこそ意味があります。管理も当然必要なのですが、管理しやすくするために、職務上請求は、複数冊購入することもできますが、必ず1冊ずつ購入するようにしており、厳重に保管しております。
以上のことからわかるように、独身の方で、ご兄弟の方に遺言書を作成される方の場合には、依頼者の方から、受遺者の方に戸籍等の取得のお願いをしていただいております。
相続人の中に成年後見人がついている場合、遺産分割協議について、当該相続人の法定代理人として、成年後見人が参加して行うことになります。
成年後見人が遺産分割協議に参加するにあたり注意すべき点がいくつかありますので解説していきたいと思います。
目次
1.家庭裁判所の許可が必要か?
2.被後見人の利益を最優先
3.利益相反の回避
4.適切な専門家の助言
5.遺産分割協議書の作成と確認
6.透明性の確保
7.まとめ
1.家庭裁判所の許可が必要か?
成年後見人が判断能力を欠いている相続人(本人)に代わり、遺産分割協議に参加する場合は、家庭裁判所の許可は不要です。
しかし、家庭裁判所と相談しながら本人の利益を守る観点から、協議内容に問題がないか判断した方が良いでしょう。判所の許可はいりませんが、事前に相談等をしておいた方が、後のトラブル回避にもつながります。
なにより、後見人には善管注意義務があり、被後見人の権利を守ることが職務だからです。
ただし、遺産分割を行った場合は、その結果を裁判所への定期報告の際に報告する必要があります。
2.被後見人の利益を最優先
先にも書いた通り、成年後見人には善管注意義務があります。
そして、成年後見人の最も重要な役割は、被後見人の利益を保護することです。
遺産分割協議においても、被後見人の権利や利益が最大限に保護されるようにする必要があります。適切な分割が行われるよう、注意深く協議内容を検討し、不利な条件を避けることが求められます。
以上のために、「後見人は被後見人の法定相続分の財産を確保しなければいけない」ことになります。法定相続分は、成年被後見人の保証された権利ですので、その確保が求められるわけです。
ですので、合理的な理由がない場合や、合理的な理由があっても裁判所が認めてくれない場合には、代理人として本人(被後見人)が法的に有する権利(法定相続分)を相続放棄したり、不当に少ない相続分で合意したりすることはできません。
3.利益相反の回避
遺産分割協議には複数の相続人が関与するため、利益相反の問題が生じる可能性があります。成年後見人が他の相続人の利益と被後見人の利益との間で板挟みになることがないよう、利益相反を避けるための措置が必要です。必要に応じて、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てることも考慮すべきです。
このような状況が生じるケースは、司法書士や弁護士が成年後見人ではなく、親族(相続人の一人)が、成年後見人になっている場合です。親族成年後見人の場合には、利益相反の注意が必要です。
4.適切な専門家の助言
専門家が成年後見になっている場合には、問題となることは少ないと思いますが、親族成年後見人の場合ですと、法律の知識が乏しいため、専門家のサポートを要することがあります。
遺産分割の手続きは法的に複雑であるため、弁護士や司法書士などの専門家の助言を受けることが重要です。成年後見人が正確かつ適切に手続きを進めるためには、専門家のサポートが不可欠です。
5.遺産分割協議書の作成と確認
遺産分割協議がまとまった場合、その内容を遺産分割協議書として文書化する必要があります。
この文書には全相続人の署名と捺印が必要です。成年後見人は被後見人に代わって署名を行いますが、内容をしっかり確認し、被後見人に不利益がないようにすることが重要です。
6.透明性の確保
遺産分割協議の過程および結果は、透明性を保つことが重要です。成年後見人は、被後見人や関係者に対して適切な説明を行い、協議内容が明確かつ公正であることを示す必要があります。
7.まとめ
成年後見人が遺産分割協議に参加する際には、被後見人の利益を最優先ることが不可欠です。また、利益相反の回避、専門家の助言の活用、協議書の適切な作成、透明性の確保が求められます。これらの注意点を踏まえ、慎重に手続きを進めることが重要です。
相続登記において、住所が異なるが、戸籍の附票で同一性を証明することが必要となります。
生前贈与で持分を数回に分けて移転している方の相続登記にて、同一物件内で、住所表記が異なっている場合にはどのような影響が出るのか、解説したいと思います。
目次
1.不動産登記簿のシステム
2.相続登記の際の被相続人の登記簿との同一性
3.同一であることを確認できたとしても
4.まとめ
1.不動産登記簿のシステム
法務省の不動産登記のシステムについて、「同一性(本人であることを判別)」を「氏名」と「住所」で見極めています。つまり、住所が異なるが、氏名は同じという場合、変更の登記をしておかなければ、同一人とはみなされないわけです。
所有権を売買により第三者に移転する場合、その前提として住所・氏名を現状に合わせるために「変更登記」をしてから、売買による所有権移転登記がなされます。仮に、この変更登記を抜かした場合は、却下となってしまいます。決済の際には、特にこの点を調査し、変更登記が必要かどうかの判断をしなければなりません。
2.相続登記の際の被相続人の登記簿との同一性
それでは、相続登記の場合にはどのように実務で行っているのかと言いますと、被相続人(登記簿の名義人で亡くなった方)の住所が現状と異なる場合には、前住所が登記簿上の住所ですと「住民票の除票」の添付で構いません。
しかし、登記簿上の住所が、前住所よりも前の住所である場合には、「戸籍の附票」を用いて、同一性の証明をすることになります。直近の相続については問題はないのですが、ずいぶん前に亡くなった方の相続登記をする場合、この「住民票の除票」も「戸籍の附票」も廃棄されてしまっている場合があります。
この場合の対応として、「廃棄証明書」を取得し、同一性を証明する「住民票の除票」も「戸籍の附票」すでにないことを相続登記申請書に記載し、他の方法での同一性の証明をすることになります。
①住所と戸籍謄本に記載されている本籍の住所が同一である場合には、これだけで証明可能。
➁権利証の添付で、被相続人本人であることを証明可能。
③上申書を作成し、これに相続人全員が署名、実印による押印をして、全員の印鑑証明書を添付することで証明責任を免れます。
上記の3つの手続きが必要となります。
現住所が異なる場合で、住所のつながりを証明できない場合、被相続人の同一性を証明が、一つのポイントとなります。そして、この証明は、登記官の検査によりなされますので、書類がそろっていれば、相続登記は可能となるわけですが、住所を変更していない場合の問題点は、これ以外にもあります。
3.同一であることを確認できたとしても
さて、相続登記の審査のために、被相続人の同一性を証する書面として「住民票の除票」または「戸籍の附票」が必要なことは、すでにお話しました。
それでは、不動産登記システム上でも何も問題がないのかと言いますと、場合によっては弊害が出てきます。
所有権全部の移転や同一の住所で登記されている持分を相続人に相続させる場合には問題とはなりませんが、例えば、1筆の土地を戦前の相続対策で、一部移転を複数回実施しており、その間に住所が変わったにもかかわらず、過去の住所の変更をしなかった場合に、問題が起こります。
それは、「登記の目的」が、単純な「所有権移転」や「○〇持分全部移転」とはならず、「○〇持分全部移転(順位番号3番の持分)及び○〇持分全部移転(順位番号4番の持分)」という表記になってしまいます。
これは、登記官の審査で同一性が証明できたとしても、システム上では、住所が変更されていなければ、別人と扱われてしまうためです。
4.まとめ
以上、所有権などの登記名義人が、住所・氏名が変更になった場合には、変更登記をすることで、上記のような問題を防ぐことができます。登記簿を見た方が、「先生、何かミスったの?」と言われる場合がありますので、書類の返却の際には、必ず、ご説明をさせて頂いております。
また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
一時払い終身保険(生命保険)(契約者は亡くなった被相続人とする)は法律上では、相続財産を生命保険に切り替え、相続人の一人に受取人指定すれば、相続財産から外すことができます。
一方、税務の面では、生命保険は「みなし相続財産」として取り扱われるため、控除枠(法定相続人×500万円)を除いた残りが相続財産となります。
生命保険の活用は、比較的メジャーですので、注意点についてお話ししたいと思います。
目次
1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか
2.受取人は誰が一番いいのか
3.まとめ(体験談含む)
1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか
被相続人が保険金を支払っている契約者であり、保障の対象となる被保険者である場合、保険金の受取人が「妻」や「子」である(相続人)ときには、亡くなった場合にみなし相続財産の非課税枠を利用することができます。
注意しないといけない点は、その生命保険の契約の内容です。若いころから入っている生命保険があると思われている方もいるかもしれませんが、多くの場合「定期付終身保険」の可能性があります。「定期付終身保険」とは、3000万円の保険金となっていても、100万円の終身保険(主契約)に2900万円の定期保険(特約)が組み合わされた保険で、一定の年齢を超えてから亡くなると主契約の100万円分しか受け取れない契約になっていて、非課税枠を十分に活用できない可能性があります。
保険会社に現状の保険の契約内容を必ず確認しておくようにしましょう。
これから契約をしようとしている方も、終身保険の金額と自身の推定相続人の数を把握して、税理士などの専門家と相談しながら進めるといいかもしれません。
2.受取人は誰が一番いいのか
前提として「契約者」と「被保険者」が被相続人(夫)である場合のケースで考えていきます。※被保険者が妻(配偶者)の場合などにつきましては、複雑化しますので、税理士に確認をするようにしてください。
①配偶者(妻)を受取人とした場合
配偶者は、必ず相続人にカウントされるため生命保険の非課税枠は当然使うことができます。しかし、相続税申告をする際に配偶者控除枠1億6千万円を使うことができるため有効活用できるかというと微妙かもしれません。なぜなら、2次相続でこの保険金が、配偶者の遺産となるからです。
➁子供を受取人とした場合
一番効果が出るケースです。
③孫を受取人とした場合
子供が存命の場合、生命保険の非課税枠は利用できません。代襲相続や養子となっている場合では、非課税枠を利用できるケースもあります。
厄介なのが、子供が存命で孫を受取人とした場合、相続税額2割が加えられて計算されるという仕組みが適用される場合があります。この辺につきましては、税理士にご相談ください。
3.まとめ
生命保険を活用した相続対策を考える場合には、まずは、生命保険の契約内容について確認をすること。契約内容が主契約の終身保険の額ではなく、特約の額が多い場合には、相続税対策には効果が薄い場合があります。
次に、受取人を誰にするのかという点。保険に加入する際に、妻が受取人でないことで文句を言うケースもあるようですので、なぜ妻(配偶者)にしないのかについては、専門家の税理士などを交えて、しっかりと事前に話し合いをしておく必要があると思います。
実際にあった話として、とある証券会社に相続手続きで解約した後、管理口座にまとまった金額の預金ができました。まだ、相続税の支払いも終わっていないのに、営業を配偶者にかけて生命保険契約を締結させようとしました。事前にご相談がありましたので、相続税の支払いで現金が足りない場合、生命保険を解約しないといけない状況となることが考えられ、この場合の解約返戻金は、元本割れを起こします。相続税を支払ったのちに考えても遅くはないことを説明し、専門家の立場ではなく、人として、その証券会社は、あなたのことなどどうでもいいと思っていることを伝えました。ひどい話ですよね。
相続対策が必要な場合、税理士を含めた無料相談でじっくり説明し、一時払い終身保険の活用などの対策が必要な場合、知り合いに保険会社の方がいない場合には、こちらからご紹介しております。勿論、紹介料などの費用は掛かりません。単に保険会社の方を紹介するだけです。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
令和6年4月1日に施行されたのは、相続登記義務化だけではありません。不動産登記において、所有権の登記名義人について、任意・必須項目が追加されています。その内容について、解説したいと思います。
目次
1.旧姓の併記
2.会社法人等番号
3.外国人名のアルファベット表記
4.まとめ
1.旧姓の併記
不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第7号)により、現在の所有権の登記名義人の氏名に旧氏を併記することができるようになりました。結婚等により、姓が変わった方が所有者の場合、旧姓の氏名もカッコで表記できるようになりました。
(表記)
権利部(甲区)
順位番号 登記の目的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項
1 所有権移転 年月日第〇号 香川県高松市番町一丁目1番1号
香川 髙子
(讃岐 髙子)
ただし、旧姓表記ができる所有者である登記名義人の要件があります。それは、
「旧氏は現在の所有権の登記名義人の氏名にのみ併記することができ、これ以外の者は、旧氏併記の対象とはなりません。
また、日本の国籍を有しない者については、旧氏を併記することはできません。」
申出をすることができる場合として
「次の(1)及び(2)の登記を申請する場合に、それぞれに定める者が当該登記の申請人である場合には、登記官に対し、その一の旧氏を申請情報の内容として、当該旧氏を登記記録に記録するよう申し出ることができます(※)。(規則第158条の34第1項)
※併記したい旧氏が登記される氏と同一である申出をすることはできません。
また、次の(1)及び(2)に定められた方以外の方が申し出ることはできません。
(1) 所有権の保存若しくは移転の登記、合体による登記等(不動産登記法(平成16年法律第123号)第49条第1項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る。)又は所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る。) 所有権の登記名義人となる者
(2) 所有権の登記名義人の氏についての変更の登記又は更正の登記 所有権の登記名義人
※名前や住所のみの変更の登記の申請と併せて申出をすることはできません。」
(法務省HP引用)
つまり、所有権を取得した者が、所有権保存・所有権移転登記等を行うときや、氏名の変更が生じたときのみにしかできません。例えば、すでに今の姓で登記がなされている場合に、住所変更のみ生じ、住所変更の登記を申請する場合は、同時に旧姓の登記をすることはダメということを言っています。
(登記申請例)
登記の目的 所有権移転
原 因 令和○年○月○日売買
権 利 者 ○○市○○町一丁目5番6号
法 務 太 郎( 登 記 太 郎 )
義 務 者 ○○郡○○町○○34番地
甲 野 花 子
添付情報 登記識別情報(登記済証) 登記原因証明情報
代理権限証明情報 印鑑証明書 住所証明情報
旧氏を証する情報
登記識別情報(又は登記済証)を提供することができない理由 □不通知 □失効 □失念 □管理支障 □取引円滑障害 □その他( ) □登記識別情報の通知を希望しません。 令和○年○月○日申請 ○○ 法務局(又は地方法務局)○○支局(又は出張所)
(以下省略)
2.会社法人等番号
令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が法人であるときの所有権の登記の登記事項として法人識別事項が追加されました。この理由としては、法務省から以下の通り説明があります。
①所有権の登記名義人である法人の識別性が向上。
➁令和8年4月1日からは、所有権の登記名義人が会社法人等番号を有する法人であって、その会社法人等番号が所有権の登記に記録されているときは、会社法人等番号を検索キーとして、商業・法人登記システムの情報に基づき、登記官が職権で法人の名称又は住所の変更の登記をすることが想定されていため。
とされています。
(法人識別事項申出書の例)
申出の目的 ○番所有権変更
法人識別事項証明情報 会社法人等番号 1234-56-789012
申 出 人 ○○市○○町一丁目34番地 法務商事株式会社
代表取締役 法 務 太 郎
添付情報 法人識別事項証明情報(会社法人等番号がある法人に関しては、なしとなります) 代理権限証明情報
令和○年○月○日申出 ○○ 法務局(又は地方法務局)○○支局(又は出張所)
(以下省略)
ここで、「法人事項証明情報」とは何かといいますと、「民法等の一部を改正する法律により、令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が法人であるときの所有権の登記の登記事項として、会社法人等番号その他の特定の法人を識別するために必要な事項(以下「法人識別事項」といいます。)が追加されました。」とあります。すでに閉鎖されている法人の場合には、会社法人等番号を確認することができる閉鎖事項証明書又は閉鎖登記簿謄本を提供する必要があります。
3.外国人名のアルファベット表記
外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請の際(※1)には、ローマ字氏名(氏名の表音をアルファベット表記したもの)を申請情報として提供する必要があります。また、添付情報として、ローマ字氏名を証する情報(※2)を提供する必要があります。ただし、代位により登記を申請する場合その他の登記名義人となる者等以外の者が登記を申請する場合において、登記名義人となる者等が住民基本台帳に記録されていない外国人であるためローマ字氏名を証する情報の提出が困難であるときは、例外的にローマ字氏名を申請情報として提供しないこととして差し支えありません。
(法務省HP引用)
例外の代位登記によりアルファベットが住民基本台帳に乗っていないなどの理由がある場合のみ、アルファベット表記のみでもよいというもので、原則、カタカナ表記(アルファベット表記)という形で申請するようになります。
(登記申請書の例)
登記の目的 所有権移転
原 因 令和○年○月○日売買
権 利 者 ○○市○○町一丁目5番6号
ジョン・スミス(JOHN SMITH) 義 務 者 ○○郡○○町○○34番地
義 務 者 甲 野 花 子
添付情報 登記識別情報(登記済証) 登記原因証明情報 代理権限証明情報 印鑑証明書 住所証明情報 ローマ字氏名証明情報
※ローマ字氏名証明情報について、具体的には、「住民票の写し(ローマ字氏名が記載されているものに限ります。)」
4.まとめ
今回ご紹介した不動産登記についての変更点について、1.旧姓の併記は「任意」ですが、2.会社法人等番号と3.外国人のアルファベット表記については、「必須」事項となります。
今後、不動産登記で所有権が法人もしくは外国人に移転する場合には、注意が必要となります。
最近、外国在住者の方からの相談も増えてきました。
その中で、「相続放棄」の手続きを外国からでもできるのかといった質問がありました。
手続き自体はできるのですが、相続放棄には期間制限があります。被相続人の所在地の家庭裁判所に申述することになるのですが、提出する書類を集めるのも一苦労します。
今回は、外国在住の日本人の相続放棄について、解説したいと思います。
目次
1.相続放棄とは
2.相続放棄に必要な書類
3.どの士業にお願いするのが良いのか?
4.まとめ
1.相続放棄とは
相続放棄は、相続人が被相続人(亡くなった人)の財産を受け取らない決定をする法的手続きです。これにより、相続人は財産だけでなく、負債やその他の義務も放棄します。相続放棄を選択する理由として、被相続人の負債が多いために相続することが不利と考えられる場合や、特定の家庭内事情がある場合などが挙げられます。
①相続放棄の手続き
㋐家庭裁判所への申述:
相続放棄をするためには、被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。
㋑必要書類:次項で記載します。
㋒相続放棄の申述に関する照会書の送付:
照会書とは、今回の申述について、申述者の相続放棄の意思の確認と背景状況などを確認するために送付されます。内容が不明瞭や裁判所が確認したい事項がある場合、出頭を求められる場合がありますので、返答に関しましては専門家と相談したほうがいいです。
※原則、相続放棄は書面のやり取りで完結する手続きですが、家庭裁判所へ出頭を求められる場合もあります。
㋓申述の結果通知:
申述書が受理されると、家庭裁判所から相続放棄が認められた旨の通知が送られてきます。
➁相続放棄の効果
㋐全面的な放棄:
相続放棄をすると、その相続人は被相続人の財産や負債を一切引き継がなくなります。
㋑後順位相続人への影響:
相続放棄が認められると、次順位の相続人に相続権が移行します。例えば、配偶者が相続放棄をすると、子供に相続権が移ります。
③注意点
㋐相続放棄の取消:
原則として、一度認められた相続放棄は撤回できません。ただし、詐欺や脅迫による相続放棄は例外として認められる場合があります。
㋑限定承認との違い:
相続放棄は財産も負債も一切引き継がないのに対し、限定承認は相続した財産の範囲内で負債を返済することを条件に相続を承認する手続きです。
2.相続放棄に必要な書類
(配偶者・第1順位の相続人の場合)
①申述人の戸籍謄本
➁被相続人の戸籍謄本 (申述人と同一の戸籍の場合 不要)
③被相続人の住民票除票又は戸籍附票
④第1順位の相続人が孫の場合は,孫の親(被相続人の子)の死亡がわかる戸籍謄本も必要
➄収入印紙 800円分 切手 84円×2枚(本人の持参による提出の場合は, 84円×1枚)
※切手の必要額と枚数については、事前に管轄の家庭裁判所に確認を取ってください。
⑥海外在住者の場合、在留証明書及びサイン証明(署名証明)も必要
※上記ケース以外の必要書類につきましては、裁判所HPを参照してください。
3.どの士業にお願いするのが良いのか?
相続放棄は、特に負債が多い場合や家庭内での複雑な事情がある場合に有効な手段です。しかし、手続きには法律的な知識が必要となるため、弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。
戸籍等の取得に関しましては、司法書士も弁護士も「職務上請求」により取得が可能です。
今回の前提である、海外在住の日本人の相続放棄の手続きについて考えますと、時間的な余裕があり、ある程度ご自身で行える知識があれば、費用面で見れば司法書士でも構わないと思いますが、司法書士には、裁判所とのやり取りの「代理権」がありませんので、申述書提出後の照会書の受け取り等につきましては、行うことができません。申述書を提出した後、照会書の受領や結果の受領の代理までお願いしたい場合には、費用は掛かりますが、弁護士にやってもらった方がいいと思います。
4.まとめ
外国在住の日本人の方が相続放棄をする場合、戸籍等の取得については、司法書士・弁護士でも問題ありませんが、家庭裁判所とのやり取りを代理してもらう場合には、弁護士の方がいいです。ただし、費用は司法書士にお願いする場合よりもかかります。司法書士にお願いする場合、家庭裁判所とのやり取りは、ご本人で外国からのやり取りとなります。相続放棄は、相続を知ってから3ケ月です。時間的なゆとりがない場合には、弁護士に代理していただくのがいいと思います。
先日、遺産分割協議書を作成し署名と実印による押印を実施したのですが、印鑑証明書と照合すると、明らかに印影がかけた状態のものがありました。
他の書類も確認したのですが、すべて印影の丸枠のほとんどが出ていない状態でしたので、実印の現物を確認すると、完全に欠けている状態でした。
このような場合、どのような対応をすればいいのか、実体験をもとにお話をいたします。
目次
1.登録する印鑑の印影の制限(香川県高松市役所)
2.印鑑がかけている場合の対応
3.まとめ
1.登録する印鑑の印影の制限(香川県高松市役所)
これは、私が香川県の高松市役所HPの内容と、今回の事案の問い合わせについての話をしたいと思います。
香川県高松市役所での取り扱い
まずは印鑑を登録できるのは、高松市に住民登録がある15歳以上の方
※意思能力のない方は、印鑑登録をすることができません。
※成年被後見人の方は、本人が窓口にお越しになり、法定代理人(成年後見人)が同行している場合に限り、申請することができます。
そして、登録できる印鑑は一人1つです。
住民票に旧姓(旧氏)併記を申請し、記載された方は、旧姓(旧氏)でも印鑑登録ができます。
一方で、登録できない印鑑については、
①住民登録している氏名と異なるもの
➁職業、資格など、氏名以外の事項を表しているもの
③自己流のくずし文字、極端な図案化などで、本人の氏名を表してないもの
④印影の大きさが、一辺の長さ8ミリメートルの正方形に収まる小さなもの
➄印影の大きさが、一辺の長さ25ミリメートルの正方形に収まらない大きなもの
⑥ゴム印など変形しやすいもの
⑦輪郭がないもの又は30%以上欠損しているもの
⑧竜紋や唐草模様等を外郭としたもの
⑨押印すると文字が白くなるもの(逆さ彫り印)
⑩同一世帯内の方が既に登録しているもの
※⑦輪郭が仮に20%あれば登録できるのかと言いますと、高松市役所では、登録を控えていただくように話をしているようです。(問い合わせで確認)
2.印鑑がかけている場合の対応
高松市への問い合わせで、輪郭部分がかなりかけた印鑑でしたので、かけた状態での登録はできないと言われました。
そこで、印鑑屋に同行し、新たに印鑑を購入いただき、その足で市役所窓口に行き、買った印鑑を登録し印鑑証明書を取得しました。
本人が行った場合、数十分で印鑑証明書まで発行されますが、本人以外の代理人の場合、
「登録者ご本人宛に郵送による照会をしますので、登録までに1週間程度かかります。窓口には、申請時と回答書持参時の2回、お越しいただくことになります。」
とのことで、すぐに印鑑証明書を取得することはできません。注意が必要です。
3.まとめ
相続で必要となる添付書類である遺産分割協議書には、実印で押印の上、印鑑証明書を添付します。もちろん、印影と実印が異なる場合には、相続登記はできません。
ご高齢になられ、「もう必要ないだろう」と、実印がかけたままにされている方もいらっしゃるようですが、相続は、いつ発生するかわかりません。
かけた実印を所有されている方は、お元気なうちに印鑑登録のやり直しをすることをお勧めいたします。高松市では、ご本人以外の方が印鑑の登録をやり直す場合、1回の来訪ではできなくなっております。
令和6年4月1日に施行された「相続登記義務化」ですが、猶予期間3年以内に相続登記を正当な理由なく放置した場合、最大10万円以下の過料を科されます。それでは、その「正当な理由」とは何なのか、また、正当な理由に該当しない場合の回避方法を解説いたします。もちろん、相続登記を早期に済ませておけば、過料の対象とはなりませんが。
目次
1.相続登記義務化とは
2.相続登記義務化の過料が科される場合
3.相続登記義務化の過料を免れる場合
4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法
5.まとめ
1.相続登記義務化とは
相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行) 相続により(遺言による場合を含みます。) 不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。
また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。(法務省HP引用)
2.相続登記義務化の過料が科される場合
正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。
3.相続登記義務化の過料を免れる正当事由とは
※正当な理由の例
(1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
(2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
(3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
(4)経済的に困窮している場合
などが挙げられています。
4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法
「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
5.まとめ
最近の法律相談で相続登記義務化についてのご質問が増加してきておりますので、今回、過去の記事からの抜粋で「過料の回避方法」にスポットを当てて解説いたしました。
また、相続登記を受任して調査すると、複数世代にわたって相続登記をしていない建物のケースが10件に3件ほどありました。未登記の建物は、役所に届出をすればいいのですが、そもそも建物を新築する場合には、1か月以内に表題登記をしなければならないと規定されているため、厳密にいえば違法状態だといえます。表題登記のみの建物も散見されるのですが、相続人の調査が膨大になり、そのままになっているケースもありました。
今後、おそらくこのような建物も対象になってくる可能性があるかもしれませんね。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
被相続人に配偶者・子が無く、すでに両親も他界しているため、兄弟姉妹に相続が発生してしまっている場合、遺産はどのように分ければいいのでしょうか。
相談者の方が、積極的に亡くなった方の身の回りの世話をしていて、他の相続人が何もしていなかった場合、世話をしていた相続人は多く遺産をもらえるのか?遺留分は考慮しないといけないのか?
解説していきたいと思います。
目次
1.兄弟姉妹への相続
2.寄与分制度
3.遺産分割協議をするにあたり
4.まとめ
1.兄弟姉妹への相続
まずは、相続人の順位を見ていきたいと思います。
配偶者がいる場合、この方は常に相続人となります。
そして、血族相続人とその順位は、第1順位(子又はその代襲相続人)、第2順位(直系尊属)、第3順位(兄弟姉妹又はその代襲相続人)。
ここで注意したいのは、血族第1順位の子の代襲相続人と、第3順位の兄弟姉妹の代襲相続人の範囲が異なる点です。
①子の代襲相続人 被代襲者の子であること。被相続人の直系卑属であること。
➁兄弟姉妹の代襲相続人 被相続人の子であること。
つまり、子の代襲は再代襲があり、兄弟姉妹の代襲相続人には再代襲はありません。
また、法定相続分も変化します。
①配偶者・子 各2分の1
➁配偶者・直系尊属 配偶者3分の2 直系尊属3分の1
③配偶者・兄弟姉妹 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1
上記は配偶者がいた場合ですが、いない場合、各順位ごとの相続人間で人数分の按分となります。
ただし、代襲相続人が複数人いる場合は、被代襲相続人の法定相続分を代襲相続人の人数で除した数でさらに按分します。
今回の相談では、亡くなった方の兄弟が4名おり、今回の相談者以外の方たちはすでに亡くなっていて、甥姪が複数人いるとのことでした。
この時点で、相談者が受け取れる法定相続分が4分の1であることを説明しました。
その時に、「私は、〇〇さんを亡くなるまで世話してきたが、他の兄弟は全く寄り付かなかった。亡くなった本人も全部私にくれると言っていた。だから、私が多く遺産をもらうということはできないか?」との質問を受けました。
2.寄与分制度
寄与分制度は、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、その貢献に応じて相続分を増やすことができる制度です。以下に寄与分制度の主要なポイントを説明します。
①寄与分の要件
(1)特別の寄与:
寄与分を主張するためには、相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別な寄与をしたことが必要です。一般的な扶養や介護の範囲を超えた貢献が求められます。
(2)寄与の種類:
寄与の具体的な例としては、以下のようなものがあります。
㋐被相続人の事業に対する労務提供
㋑被相続人の事業に対する財産提供
㋒被相続人の療養看護
㋓その他、被相続人の財産の維持・増加に特別な寄与をした行為
➁寄与分の算定方法
寄与分は、被相続人の財産全体の中で寄与の程度に応じて算定されます。具体的な額や割合は、相続人間で協議して決定しますが、協議が成立しない場合は家庭裁判所が決定します。
③寄与分の効果
寄与分が認められると、その分だけ他の相続人の相続分が減少します。寄与分は被相続人の遺産全体に対して加算されるため、寄与者の取り分が増加します。
④寄与分を主張する手続き
協議:まず、相続人間で寄与分について協議を行います。協議が成立すれば、その合意に基づいて遺産分割を行います。
家庭裁判所への申し立て:協議が成立しない場合、家庭裁判所に寄与分の申し立てを行うことができます。家庭裁判所は、寄与の程度や具体的な事実を基に寄与分を判断します。
⑤注意点
寄与分の請求期間:相続開始後に一定の期間内に寄与分を主張しないと、その権利が消滅する場合があります。具体的な期間は法律で定められていますので、早めの対応が必要です。
証拠の収集:寄与分を認めてもらうためには、特別の寄与を立証する証拠が必要です。例えば、被相続人の事業への貢献を示す書類や証言などを準備することが重要です。
※証拠があっても、具体的な金額として寄与していなければ認められるのは困難です。
寄与分制度は、相続人が被相続人に対して特別な貢献をした場合、その貢献を公正に評価するための制度です。
通常の寄与では足りません。なぜなら、法定相続分で報われていると判断されるためです。
3.遺産分割協議をするにあたり
寄与分の話をした時に、相談者の方は、かなり落胆されていました。
しかし、相続の権利者は、法定相続人すべてにありますので、この点については納得していただきました。そして、現在凍結されている被相続人の預金の解除をするためには、「遺産分割協議書」が必要であることを説明しました。
先ほどの寄与分の話から、遺産分割協議は相続全員でするものであり、協議が成立しなければ預金も凍結されたままになってしまうことを説明し、他の相続人たちの様子を見て、今までの事情をはなしをして、自身の相続分について意見をもらうようにしてみてくださいとアドバイスをいたしました。
4.まとめ
今回のケースでは、「遺言書」があれば、全額今回の相談者の方が遺産を取得できたケースです。
「遺留分」があるから、全部は無理なのでは?とお思いになる方もいるかもしれませんが、「遺留分」を主張できるのは、配偶者・子・直系尊属のみで、兄弟姉妹には主張することができません。
遺産を全部上げるという言葉だけではなく、「遺言書」という形で残しておかなければ、法的な効力は生まれません。
生前の相続相談を専門家にしておく意味は、十分に感じられるケースでした。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相談の中に、「身元保証サポート」を家族の一人が利用したばかりに、おかしなことになっているというものがありました。
以前、身元保証サポートの問題点として、「亡くなった後の遺産がサービス提供者へ渡っている」点を指摘していましたが、今回は、ご家族がいるのに、何らかの原因で身元保証サポートを利用するとどのようなことが起こるのか、お話したいと思います。
目次
1.法定代理人とは
2.身元保証サポートのサービス内容
3.今回の相談で問題となったこと
1.法定代理人とは
法定代理人(ほうていだいりにん)とは、法律によって特定の人(被代理人)のために代理権を付与され、その人の法律行為を代行する権限を持つ者のことを指します。これは、未成年者や成年被後見人など、自己の意思で法律行為を行うことが難しい人々を保護するための制度です。
(法定代理人の役割と権限)
法定代理人は、被代理人に代わって契約を結ぶなどの法律行為を行います。これにより、被代理人の権利や利益を保護し、適切な意思決定が行われるようにします。具体的な役割や権限は、代理人の種類や被代理人の状況によって異なります。
(法定代理人の種類)
①親権者
未成年者の法定代理人として、親権者(通常は両親)がその役割を担います。親権者は、子供の財産管理や法律行為を行う権限を持ちます。
➁未成年後見人
親が亡くなった場合や親権を失った場合、裁判所によって選任される未成年後見人が法定代理人となります。未成年後見人は、未成年者の生活や財産の管理を行います。
③成年後見人
成年後見制度に基づき、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な成人のために選任される法定代理人です。成年後見人は、被後見人の財産管理や日常生活の支援を行います。
(法定代理人の選任方法)
法定代理人は、法律や裁判所の決定に基づいて選任されます。親権者は通常は自動的に法定代理人となりますが、未成年後見人や成年後見人は、家庭裁判所によって選任されます。
(法定代理人の責任)
法定代理人は、被代理人の利益を最優先に考えて行動する義務があります。これには、被代理人の財産を適切に管理し、不利益を避けるよう努める責任が含まれます。法定代理人がこの義務を怠った場合、被代理人やその関係者から責任を追及されることがあります。
まとめると、法定代理人は、法律によって代理権を付与され、自己の意思で法律行為を行うことが難しい人々を保護するために、重要な役割を果たします。親権者、未成年後見人、成年後見人などの法定代理人は、それぞれの状況に応じて被代理人の利益を守り、適切な意思決定を行う責任を負っています。
2.身元保証サポートのサービス内容
身元保証サポートサービスは、主に高齢者や身寄りのない人、障害者などが安心して生活できるように、様々なサポートを提供するサービスです。このサービスは特に、日本において高齢化社会が進む中で重要性が高まっています。以下は、一般的な身元保証サポートサービスの内容です。
① 住居の保証
賃貸契約の保証: 賃貸住宅を借りる際に、保証人がいない場合に身元保証サービスが代わりに保証人となります。
施設入居の保証: 老人ホームや介護施設に入居する際の保証も提供されます。
➁医療機関での保証
入院時の保証: 病院に入院する際に必要な保証人となります。これにより、家族が遠方にいる場合や身寄りがない場合でも安心して医療を受けることができます。
医療費の支払い保証: 入院中の医療費や治療費の支払いを保証します。
③生活サポート
日常生活の支援: 買い物の代行や通院の付き添い、日常的な手続きのサポートなど、生活の質を向上させるための支援を提供します。
緊急時対応: 緊急事態が発生した際の連絡先となり、迅速に対応します。
④財産管理
財産の管理: 高齢者や障害者の財産を適切に管理し、不正利用を防止します。
遺言執行: 被サービス者が亡くなった後の遺言の執行や財産の整理を行います。
➄介護サポート
介護サービスの手配: 必要に応じて、介護サービスの手配や調整を行います。
介護計画の作成: 個々のニーズに応じた介護計画を作成し、適切な介護を受けられるよう支援します。
⑥法的手続きのサポート
契約書の作成と確認: 賃貸契約やサービス契約の作成と確認を行います。
法的代理: 必要に応じて、法的代理人として各種手続きを代行します。
⑦見守りサービス
定期的な連絡: 定期的に電話や訪問を行い、被サービス者の安否を確認します。
緊急通報システム: 緊急時に迅速に対応できるよう、通報システムを設置します。
以上のように、身元保証サポートサービスは、特に高齢者や身寄りがない人々にとって、安心して生活するための強力なサポートを提供します。住居の保証や医療機関での保証、日常生活の支援、財産管理、介護サポート、法的手続きのサポート、見守りサービスなど、多岐にわたる支援を通じて、被サービス者が安全で快適な生活を送れるようにします。
3.今回の相談で問題となったこと
身元保証サポートのサービス内容として、生前の財産管理・身上監護、死後の事務委任・遺言執行などが挙げられます。生前のサポートを実現するために「任意後見契約」を締結します。つまり、サービス提供する業者が「法定代理人」となって、財産管理・身上監護を行うことになります。
そのために、ご家族がいる被後見人の場合、被後見人の病状などの意思の説明義務は、状況にもよると思うのですが、ご家族ではなく法定代理人となり、財産管理のため通帳等は業者が管理することになります。当然、これらの管理の監督は、最終的に家庭裁判所が関係することになりますので、定期的な報告を法定代理人は求められることになります。
詳しい内容は言えませんが、ご家族に起こった不測の事態で家族が混乱している時に、(この部分は、私の推測)本人が不安になって、あることは話を盛って、ない話も付け加え悪い推測の上で、介護施設関係者等 に話をしたために、介護施設関係者等 が事実確認をご家族にしたが、連絡も取れず、結果、話だけが進み、家族の問題が解決したときは、医師からの話も聞けず、ご本人の通帳等も返却してもらえない状況になっているという話でした。
※契約段階で、本人とご家族での話し合いがあれば、このような事態は起こらないのですが、「虐待」等の危険性を施設側が判断した場合には、このような事態になることもあります。
ここで言えることは、関係者皆に非がありますが、誰も責めることはできない点です。
司法書士では、これらのトラブルについて介入することはできません。弁護士を通じて、業者と話し合い、契約の解除をするしか方法はない旨お話をさせて頂きました。
高齢者の方は、普段と状況が異なると不安になり、一人の場合特に、悪方向に物事を考えてしまう傾向があります。以前施設介護の施設長をしている時も、この類の話はよくありました。定期的に行っている訪問や、連絡については、できる限り、続けるようにすることが、誤解を招かない方法だと考えます。コミュニケーションが不安定になったとき、同じようなことが起こるかもしれませんからね。
令和6年4月1日から相続登記義務化が施行されました。
それまでは任意だった相続登記なのですが、相続登記をしないとどうなるのでしょうか。
事例を交えながら、わかりやすく解説していきます。
目次
1.相続登記義務化とは
2.相続登記をしないとどうなる
3.相続登記義務化の過料だけじゃない
4.まとめ
1.相続登記義務化とは
2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まりました。
いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。
「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用
2.相続登記をしないとどうなる
今回の相続登記義務化における法律の改正では、相続登記義務化に対する罰則は、10万円以下の過料となっています。
「なんだ、10万円払えばいいんじゃないの。」と思われるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。
また、「相続人申告制度」という制度があり、こちらをすることで過料を免れることはできますが、「相続登記をしないこと」の問題点は、過料だけではありません。
3.相続登記の問題は義務化の過料だけじゃない
相続登記をしないということは、当該不動産の名義人が亡くなった方のまま放置されるということを意味します。放置している間に相続が数次的に発生した場合、現行の民法では、相続人と数次相続が発生した方たちの相続人も権利関係者となります。東京近郊の空き家の相続関係者が100人にも上るという記事を見かけたことがあります。この100人の権利者間で、法定相続分で相続登記を行うか、遺産分割協議をして相続人の一人に不動産を帰属させて、相続登記はできません。
それでは、相続登記をしないとどうなるのかと言いますと、その朽ち果てた建物を処分できません。共有の問題で、処分行為をする場合には、共有者全員の同意を要するからです。
これらのことが面倒だからと言って、放置していた場合、さらに深刻な問題が発生いたします。それが「所有者責任」です。
不動産に限らず、ものを所有するということは、その管理責任は所有者にあります。しかも「無過失責任(過失があろうとなかろうと責任を負うことになる)」です。不動産を相続登記せずに放置した場合、老朽化や管理不全のために放置された状態であったために、第三者が不利益を被った場合、と書くと難しくなりますので、例えば、管理ができていなかった家の外壁が崩れて、誰かが死傷した場合、その責任を所有者が負うということです。名義人が既に死亡していた場合も、その相続人が責任を負うことになります。相続というのは、亡くなったからの権利義務をすべて引き継ぐからです。
こういった問題が常に付きまとう状況となりますので、やはり相続登記は早めに行い、使わない不動産は、早期の処分を行うことをお勧めいたします。
4.まとめ
相続登記義務化に関して「しないとどうなる」という観点からお話をさせて頂きました。相談者の方も、罰則である「過料」についてよくご存じなのですが、「所有者責任」を知っている方は、ほとんどいません。相続登記を放置して、自身がまだ済んでいる状態なら管理もできると思いますが、すでに相続人と別居していて、戻ってくる予定もないような場合ですと、相続登記が未了の場合、処分ができませんので、早急に相続登記をして、家族で話し合いの場を持ち、その処分について話し合ってみてはいかがでしょうか。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続登記が義務化されたことで罰則である「過料」が設定されました。一定の要件を充たすことで、過料を免れることとはなるのですが、その後、相続登記の義務まで免れるわけではありません。他にどのような手段があるのでしょうか。相続登記義務化の罰則である過料を免れる方法として、簡素化した手続きの「相続人申告登記」があります。過料は免れますが、他に問題はないのでしょうか?
目次
1.「チャチャっとできる相続登記でお願い」?
2.過料を免れるための「相続人申告登記」
3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・
4.まとめ
1.「チャチャっとできる相続登記でお願い」?
「チャチャっとできる相続登記でお願い」。この言葉は、最近の相談で、相談者の方から聞いた言葉です。相続登記後に、土地と家を売却して、介護施設入所の費用の足しにしたいから、長男の名義にして、ゆくゆくは売却の方向で考えたいと相談を受けました。そこで、相続登記について必要書類や、ご家族に行っていただく手続きについてお話をしたところ、この言葉を言われました。
はじめ、何のことを言っているのかわかりませんでしたので、相続登記については、説明した 通りの手順が必要で、登記を申請しないと、後の不動産の処分はできない旨説明しました。そうすると「そんなことはない。近所の方が、相続登記をチャチャっとやったって聞いた。先生、それでやってください。チャチャっとできる相続登記でお願いします。」と言われました。相続登記で、そのような簡単な手続きはなく、遺言書があっても戸籍と住民票などは必要になることを説明したのですが、「近所の方」のやった方法をやってほしいと譲ろうとはしませんでした。そこで、その手続きがおそらく「相続人申告登記」で、将来、不動産を処分する場合には、これだけでは不十分で、結局は相続登記をしなければならなくなる旨説明しました。将来処分することが分かっているのに、相続人申告登記だけ済ませることはできないことも話しましたが、とても不服そうな感じで、「先生、チャチャっとやる相続登記を知らないんですか?」と言いました。
「ご近所の方は、司法書士とか法律関係の仕事をしているんですか?」と尋ねると、年金暮らしのお年寄りであり専門家でないことがわかりました。そのあと少し話したのですが、平行線をたどっていましたので、うちではできない旨を伝えてお引き取り頂きました。
2.過料を免れるための「相続人申告登記」
「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。
(画像)相続人申告登記の登記簿のイメージ
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
4.まとめ
「相続人申告登記」は、相続登記義務化の過料を免れるためには、有効な手段となりますが、相続登記自体を免れるわけではないので、注意が必要です。
相続登記自体を免れないとは、例えば、相続した不動産が、すでに誰も住まなくなってしまっているような場合、「売却」を考えている方もいらっしゃると思いますが、こういった不動産の処分をするためには、相続登記を経て行わなければならなくなるためです。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続登記義務化を控えて、相談件数、ご依頼の件数が増加しております。
そんな中で、相続登記を急ぐ意味がよく分からないという方がいらっしゃいました。
被相続人の方や相続人の状況によっては一刻を争う事態であることも少なからずありますので、解説していきたいと思います。
目次
1.民法177条の意味
2.遺言・遺産分割協議と債権者の関係
3.まとめ
1.民法177条の意味
民法177条では
「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定されています。
つまり、正当な所有者であることを明示したいのであれば、不動産登記をしなければ第三者に対抗することはできないということです。商業登記(会社法人の登記)は、登記をすることは義務ですが、不動産登記については、現状では義務ではありません。その代わり、所有権を争う第三者が先に登記を具備してしまった場合、もう対抗する手段はないというわけですので、自己の権利主張のために登記を入れなさいというのが建前です。
その結果、第三者をあまり意識する必要のない相続登記について放置しているケースが横行し、結果、東日本大震災の復興において、大きな妨げになったため、今回の相続登記義務化の流れができたと言われています。義務化になっても相続を知ってから3年以内に登記をすれば、罰則である過料はかかりません。それでは、3年間放置しておいても問題ないのかと言われると、実はそうではないケースも多く存在します。
2.遺言と債権者の関係
相続人の債権者(相続人の一人が借金をしている先)がおり、借金も相当額ある場合、債権者には債務を取り立てる正当な権利があります。その場合、代位登記で法定相続分にて相続登記を代位で行い、さらに債務者である相続人の持分を差し押さえることができてしまいます。
特定財産承継遺言(民法1014条2項)、民法改正前に「相続させる旨の遺言」と呼ばれていた遺言です。従前はこの遺言をした場合、第三者が登記を入れた場合でも、遺言で指定されている相続人が所有権の全部を主張できていましたが、現在では変わっております。上記のような状況になった場合、仮に当該不動産全部の遺言指定がなされていたとしても、債権者の登記が先の場合、指定された相続人は債権者に対して、法定相続分の権利しか主張できません。つまり、取り戻すために債権者と交渉し、債務者である相続人の持分を取り戻すしか方法が亡くなります。先に指定相続人が相続登記をしておけば、債権者は代位で相続登記ができません。
相続登記を急ぐ意味は、十分あります。
3.まとめ
このように、状況次第とはなりますが、相続登記を遅らせたために、正当な権利を持つ第三者により登記されてしまいますと、自身の法定相続分の持分の権利しか主張できなくなってしまいます。特定財産承継遺言がある場合には、司法書士に早めの相談をした方がいいと思います。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続対策をしているのとしていないのでは、大きな差が出てくる場合があります。特に、相続対策をしていなかったばかりに、相続発生後に遺産分割協議がまとまらないであるとか、相続税が思った以上にかかって大変といったことがあるかもしれません。今回は、一般的な相続対策についてご紹介いたします。相続税対策にも通じる部分もありますが、法律と税法は、似て非なる部分がありますので、法律面について解説いたします。
目次
1.相続対策の必要性といつまでにすればいいのか
2.相続対策①生前贈与
3.相続対策➁生命保険
4.相続対策③公正証書遺言
5.相続対策④養子縁組
6.まとめ
1.相続対策の必要性といつまでにすればいいのか
相続対策をする必要性は、周りで起こっている相続の問題をみればよくわかると思います。やったらいいのはわかっているけど、まだ早いよと思いの方も多いのではないでしょうか。この後、解説する相続対策について、自身が動けるうちにしておいた方が良いものもあります。今元気でも、相続対策を思いったった時も元気であるとは限りませんからね。
客観的な指標で言いますと、「平均寿命」と「健康寿命」があります。
「平均寿命とは「0歳における平均余命」のことで、2019(令和元)年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です。 一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、2019(令和元)年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。」(厚生労働省e-ヘルスネット記事引用)
どうでしょうか?意外と健康寿命の年齢が若いことに気づかれるかもしれません。
そうなんです。相続対策については、元気なうちに仕込んでおかないと、それ以上になりますと、気力的に持たないことが多いです。
無料相談会に参加された方たちの中にも、高齢になってから対策を考えて相談に来られる方も少なくないのですが、対策の手続きの話をすると「そんなに大変なら、やっぱりいいです。」となる方もいらっしゃいます。元気で、自身が動ける間に対策を始めることが大事です。
2.相続対策①生前贈与
生前贈与の効果は、亡くなった時点での個人財産を目減りさせておくことが目的です。資産として現金が多い方は、現金での贈与でも構わないのですが、現金が少ない場合には、土地や建物、動産なども有効な手段です。名義が記録としてきっちり残るものとして、土地、建物の不動産で、実際に生前贈与されている方もいらっしゃいます。暦年贈与の110万円の控除額を念頭に入れ、税理士と相談をしながら「持分」形式で少しずつ所有権を子供又は孫に移転していく方法です。
今回は、対象ではありませんが、相続税対策として一般的だった「暦年贈与制度」は、組み戻し期間が、3年から7年へ、大幅に延長され、対策が遅れてしまいますと、せっかくした生前贈与が無駄になってしまうかもしれません。早めの対策が必要になってきます。
相続時精算課税制度の110万円の控除を使った手法もありますが、こちらは税務署への届出が必要となります。専門家と相談しながら、進めてください。
3.相続対策➁生命保険
こちらも、現預金が多い方向けの相続対策となります。生命保険に加入することで、その額を相続財産から減少させることができます。ただし、保険に加入すればいいだけではなく、ここで重要となるのは「受取人を本人以外にしておくこと」です。受取人を「子供」にしておいた場合、法律上、その支払われる保険金は、「子供の財産」となります。
税法上では、保険金は「みなし相続財産」となり、500万円×法定相続人の数を超える者についてのみ、相続財産とみなされます。
それでは、資産が全て現預金だけで、全額生命保険にしておけば、相続財産0じゃないの?と考える方もいるかもしれませんが、裁判所の判例では、半分を超える金額については、認められないものもありますし、30%しか認めていないものもあります。その額と、状況によると思うのですが、あまりにもたくさんの財産を保険に切り替えるのはお勧めできません。
4.相続対策③公正証書遺言
遺言でもめた場合、争点は遺言者の意思能力に及びます。自筆証書遺言(仏壇から出てきた手書きの遺言書など)は、作成された年月日によっては、認知症が疑われた時期などに重なっている場合には、問題となるケースが多いです。
そこで、アイリスでも、できる限りおすすめ割いているのが「公正証書遺言」の活用です。
自筆証書遺言と異なり、遺言者は(予約を取って)公証役場に出向くか、公証人に来訪していただくかの形になり、どの場合でも、公証人が読み聞かせ、「2人の証人」がいることは要件となっています。この場合、本人の意思能力について、全くないとは言えませんが、争点になることは少ないです。
アイリスで行う公正証書遺言サポートでは、専門家の司法書士が承認の一人となりますので、仮に裁判になった場合でも、証人として証言することも可能です。
また、元気な間に第1回目の遺言書を作成しておくことで、後にやっぱり変えたいと思ったときにも、変更することは可能です。
5.相続対策④養子縁組
これは、法律上では「遺留分対策」、そして、税務上では「相続税対策」として有名です。
法定相続人を増やすことで、各法定相続人に割り当てる相続分を少なくする方法です。
ここでも、法律上と税法上の違いがあります。
法律上では、養子にした場合でも、法定相続人の数え方は、全員「子供」としてカウントされますが、税法上では、①被相続人に実の子供がいる場合「1人まで認められます」、➁被相続人に実の子供がいない場合「2人まで認められます」となります。
法定相続人の人数の影響は、以下の場合に影響します。
①相続税の基礎控除額
➁生命保険金の非課税限度額
③死亡退職金の非課税限度額
④相続税の総額の計算
税法上は、5人養子にして基礎控除額を増やそうとしても、実子がいる場合は1人のみ、いない場合は2人までしか認められませんので注意が必要です。
6.まとめ
まとめると、相続対策は健康寿命を考え、元気なうちから対策を始めること、そして、大部分の対策が、相続財産の目減り効果を利用したものですので、専門家に相談の上、きっちり対策を講じていくことが重要となります。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続登記を放置することによるリスクについて、相続人の状況は次第に変化するために、その調査が膨大になったり、新たな手続きをしなければ先に進めないといった事案を引き起こす可能性が出てきます。それでは、お話をしていきたいと思います。
目次
1.放置している間のリスク
2.長期放置していなくても
3.解決策はないのか?
4.まとめ
1.放置している間のリスク
相続を長期放置していることで発生する可能性のあるリスクは、「相続人の状況が変わること」で引き起こされる、手続きなどの増加です。具体的な事案に対する手続きをお話しますと、
①放置している間に相続人が亡くなり、相続の範囲が広がってしまう
相続人の調査対象範囲が広がります。当然、相続登記に必要な戸籍の取得数は増加します。
➁放置している間に相続人が認知症になってしまう
成年後見人の申し立てを家庭裁判所に行い選任してもらい、その成年後見人と遺産分割協議をすることになります。
③放置している間に相続人が海外で居住し始める
海外に居住すると「印鑑証明書」が日本国内で取得できなくなります。印鑑の制度のない外国の場合、領事館で「サイン証明」の手続きが必要になります。
④放置している間に相続人が行方不明になる
7年経過していた場合、「失踪宣告」の手続きにより、家庭裁判所に当該相続人の「死亡みなし」をしてもらうことになります。7年を経過していない場合には、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申立で、その不在者財産管理人も含めて遺産分割協議をすることになるのですが、当該相続人の法定相続分の確保が必要となります。
2.長期放置していなくても
長期間放置していなくても、相続発生時に相続人の中に「認知症の方がいる」「海外居住者がいる」「行方不明者がいる」「前妻との間に子供がいる」などの状況があるケースがあります。被相続人が生前からこういった状況が発生している場合、相続が発生すると「遺産分割協議」は、難航すると思います。
それでは、すでにこのような状況が発生している、もしくは近い将来、このような状況が発生する可能性が非常に高い場合、何らかの対策をとることはできないのでしょうか?
3.解決策はないのか?
生前の相続対策として、「遺言書」で解決を図ることは可能です。遺言書を書いたからと言ってすべて万事解決、というわけではないのですが、少なくとも相続発生時に、残されたご家族に「遺産分割協議の呪縛」からは、少なからず解放されます。遺言書で遺産の帰属先を予め指定しておくことで、相続発生時に遺産が指定先に帰属します。自筆証書遺言の場合で法務局に保管していない場合には、検認の手続きが必要となります。また、その内容が法的に有効かどうかは、解りません。作成時に専門家の指導を受けて作成した場合には、有効となる可能性は高いのですが、そうでない場合は微妙です。ですので、公正証書遺言をお勧めいたします。公正証書遺言の場合、文面や内容は、遺言者とヒアリングをして公証人が作成してくれますので、検認も不要で、登記の際、公正証書遺言と相続の時とは比較できないほど少ない戸籍ですることができます。遺言書があれば、遺産分割協議で相続人全員でその内容を変更できる場合もあるのですが、そもそも遺産分割協議ができないまたは困難な状況なので利用する価値は十分にあると考えます。そして、遺言書の内容は、遺産分割協議の内容に優先します。
4.まとめ
相続相談の内容で、問題となるのが遺産分割協議ができないなどのお話が多数を占めます。当該相続では、しんどい思いをされた方には、年齢に関係なく、今後ご自身の相続の対策として「公正証書遺言の作成」を強く薦めております。現状仲がいいこと度間の関係も、あなたという存在があって保たれている可能性があり、あなたが亡くなった場合、どうなるかは、誰にも予想が付きません。また、遺言は一度作成されても、その後、異なる内容の遺言書を作成することも可能です。残されたご家族のためにも、遺言書の作成をぜひご検討ください。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続登記を放置することによるリスクについて、具体的に見ていきたいと思います。
相続登記をするためには、「遺産の確認」と「相続人の確認」が必要ですが、長期放置している間に遺産は変化ありませんが、相続人の状況は次第に変化してきます。それでは、お話をしていきたいと思います。
目次
1.放置している間に相続人が亡くなると
2.放置している間に相続人が音信不通
3.放置している間に相続人が認知症に
4.まとめ
1.放置している間に相続人が亡くなると
相続人の中に亡くなった方がいますと、被相続人の方同様に、その方の生まれてから亡くなるまでの戸籍と除籍謄本が必要であることは先にも述べました。
そしてさらに、その方の子供の中に亡くなった方がいる場合、同じような状況となります。つまり、相続人の範囲が際限なく広がっていきます。
その中には、あまり面識のない方もいるかもしれませんし、亡くなった相続人との関係は良くても、その子供との間で親族間のトラブルにより、険悪な状況となっているかもしれません。
放置するということは、不確定要素が一気に拡大します。
相続の取りまとめをしている相続人から、戸籍の附票の最後の住所地宛に手紙を送った場合、返事が来れば、話し合いもできますが、受け取っていても返事がない場合が発生するかもしれませんね。この場合は、遺産分割調停を家庭裁判所に申し出て、解決を図る必要があります。
2.放置している間に相続人が行方不明
それでは、手紙を出したが、そのままあて先不明でその手紙が戻ってきた場合は、どうすればいいのでしょうか。
この場合、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立て、この不在者財産管理人と遺産分割協議をすることになります。この時、不在者の法定相続分の確保が必須要件となりますので、仮に長男名義にしたいが次男が失踪している状態での、不在者財産管理人との遺産分割協議では、長男2分の1、次男2分の1となってしまいます。
勿論、代償分割(不動産をもらう相続人が、不在者となっている相続人の持分相当額を支払うことで、自身の名義とする分割方法)はすることができますが、支払う現金を用意できなければ、持分による登記をすることとなります。
そして、不在者財産管理人をも推立てる場合、家庭裁判所にその報酬として、数十万円から100万円の予納金を納めることになります。
失踪期間が7年を超えている場合には、「失踪宣告」の申し立てを家庭裁判所に行い、死亡みなしとすることができます。
3.放置している間に相続人が認知症に
相続登記を放置している間に、相続人の一人が認知症になってしまった場合、もはや認知症になった相続人は、遺産分割協議を行うことはできません。
そこで、4親等以内の親族の方が、成年後見人を家庭裁判所に申し立てて、成年後見人を就任させることになり、その成年後見人と遺産分割協議をすることになります。
遺産分割協議が終わったのち、この成年後見人を解任することはできず、亡くなるまで財産管理をすることになります。
当然、報酬は亡くなるまでの期間必要となります。
4.まとめ
現状、相続人全員と意思疎通できる状況にある方は、迷わず相続手続きを進めてください。放置は何の解決策にもならず、後世へ大きな負担を残す結果となってしまいます。
もしご自身で、何から始めればいいのかわからないようでしたら、専門家に相談してください。
無料相談ですと、法務局や市役所、司法書士会などで定期的に開催されています。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続登記を放置することによるリスクは、令和6年4月1日に施行された相続登記義務化の罰則である、最大10万円以下の過料だけではありません。最近の相談内容でも、長期間放置したことによる手続きの停滞など、余儀なくされている事例をよく見ます。それでは、お話をしていきたいと思います。
目次
1.相続登記をするために必要な手続き
2.放置している間に相続人が亡くなると
3.相続人が海外居住している場合
4.まとめ
1.相続登記をするために必要な手続き
相続が発生した場合、「遺産の確定」と「相続人の確定」が必要となります。
(遺産の確定)
遺産は、現預金、有価証券、生命保険などについては、通帳や定期的に郵送される郵便物などから、判明します。一方で、不動産の場合には、同一市区町村内であれば、市役所や役場で「固定資産評価証明書」を取得することにより、不動産を探し出すことができます。
(相続人の確定)
こちらは、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍・除籍謄本を取得し、その方の配偶者、子供を確認することができます。そして、相続人の現在戸籍と当該不動産を引き継ぐ相続人の住民票が必要となります。
法定相続分で引き継ぐ場合には、法定相続分の持分で不動産の名義の変更を実施することになりますが、相続人の一人に引き継がせる場合には、生前に遺言書がある場合か遺産分割協議を経なければ、することができません。将来、当該不動産の売却を考えている場合には、地元に残っている相続人の方名義にしておき、その方と買主との間で売買契約を締結することになります。亡くなった方(不動産の名義)の遺言書がなければ、「相続人全員」で遺産分割協議をし、その内容を遺産分割協議書に取りまとめて、各相続人が署名、実印での押印と相続人全員の印鑑証明書を添付することにより、相続登記に必要な遺産分割協議書が完成します。
2.放置している間に相続人が亡くなると
相続人の確認に必要な書類の概要について、上記で述べていますが、実際、相続人の中にすでに亡くなっている方がいた場合、どのようになるのでしょうか?
その場合、相続人だった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍、除籍謄本が必要となります。例えば、父親で発生した父親の遺産を受け取る権利は、子である相続人が取得することになります。そして、その子である相続人が亡くなってしまった場合、その子の相続人全員に承継されることになります。(数次相続の場合)
こういった事情が一人二人ならさほど負担にはならないと思いますが、その方に離婚歴があり、前の妻との間に子供がいた場合どのようになるのかと言いますと、その方も今回遺産分割をするために必要な相続人となります。遺産分割協議の大前提は、相続人全員で行うことです。少し雲行きが怪しくなってきたことがわかると思います。
3.相続人が海外居住している場合
また、すでに外国に居住されている方が相続人の中にいた場合、国によっては「印鑑証明書」のないケースが存在します。印鑑証明書が取得できないケースでは、外国の日本領事館等でサイン証明を受ける必要があります。
日本領事館が近くにあったり、交通の便がいい場合には、その相続人の方の負担は軽減されますが、行くまでに命がけといった場合もあります。
4.まとめ
今回は、一般的な相続登記に必要な書類等について、お話をしてきました。
必要書類の説明をすると、「なーんだ、それだけ?」と言われる方もいますが、相続人の状況や長年放置することにより、次第に相続登記で名義の変更をするというゴールへのハードルが一気に高くなってきます。
生前対策として、アイリスでは相談者の方に、積極的に遺言書の作成のアドバイスをしております。
遺言書を作成することにより、どのようなメリットがあるのか、いまいちピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。
遺言書があった場合と、なかった場合の比較も含めて解説したいと思います。
目次
1.遺言書の種類
2.遺言書があった場合の相続登記の書類
3.遺言書がなかった場合の相続登記の書類
4.まとめ
1.遺言書の種類
遺言は、方式、種類、作成方法が民法で定められており、この定めに従っていない遺言は無効となります。
一般的な方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、特別証書遺言の3種類の遺言があります。それぞれ作成手続きが異なります。
①自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付及び氏名を自筆し、押印する必要があります。(民法968条1項)
ただし、財産目録については、パソコン等で作成することが可能となっています。
➁公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言者が口述した遺言内容を公証人が筆記する方式の遺言です。(民法969条)
実務上では、事前に遺言者にヒアリングし、遺言の内容を決めたのち、公証人が文書にまとめ、面談当日に公証人から遺言者に読み聞かせ、その内容で問題なければ、署名、実印による押印をするものです。その面談の際に証人2人以上が同席することとなります。
遺言書は公証人が作成し、公証人と証人2名以上の下で面談が行われるため、意思能力等の面で覆しにくくなります。また、文字が書けない、目が見えないといった障害がある方でも、この方式での遺言書の作成は可能です。
③秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が自分で作って封印した遺言書を公証役場に持参し、公証人に、その遺言書が間違えなく遺言者本人のものであることを公証しもらう方式の遺言です。
公証人が遺言内容を作成するわけではありませんので、自筆証書遺言同様遺言者がある程度、知識を持っている必要があると思います。
ただし、どうしても中身を誰にも知られたくないときに使う方式です。
遺言者は、証人2人以上と共に公証役場に行き、持参した封書を公証人と証人の前に提出して、自己の遺言書である旨とその筆者の住所、氏名を申述します。
これを受けて公証人は、提出の日付及び遺言者の申述を封紙に記載します。この秘密証書遺言は、遺言者本人が保管することになります。
一般的なのは①と➁です。また、①の自筆証書遺言書を作成した場合、法務局で保管できる制度があります。この場合、相続が発生した場合の検認の手続きが不要となります。
2.遺言書があった場合の相続登記の書類
①遺言書(検認手続きを経た自筆証書遺言書であっても、中身の有効性まで証明するものではありませんので、自筆・日付、氏名の記載・押印・加除の方式が規定に従っているかについて、確認が必要です。自筆証書遺言書の場合、検認した場合の検認済証明書の添付も必要です。(法務局に保管されている場合は、検認済証明書は不要)
➁被相続人の死亡の事実がわかる除籍謄本
③被相続人の住民票の除票(登記簿上の住所と一致するもの)
④不動産を取得する相続人の現在戸籍(被相続人死亡日後に取得されたもの)
➄不動産を取得する相続人の住民票
⑥固定資産評価証明書
⑦司法書士に依頼する場合の委任状
以上となります。それでは、遺言書がなかった場合どのようになるのでしょうか
3.遺言書がなかった場合の相続登記の書類
※遺産分割協議により、特定の相続人に不動産の名義を変更するケース
①被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍(除籍、改正原戸籍)
※数次相続により、すでに亡くなっている方も生まれてから亡くなるまでの戸籍が必要
➁被相続人の住民票の除票(登記簿上の住所と一致すること)
③相続人全員の現在戸籍(被相続人死亡日後に取得されたもの)
④遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印による押印)
➄印鑑証明書(相続人全員分 申請人分は除けます)
⑥相続関係説明図
⑦不動産を取得する相続人の住民票
⑧固定資産評価証明書
⑨司法書士に依頼する場合の委任状
以上となります。
被相続人の戸籍は、生まれてから亡くなるまで、そして、相続人の戸籍は全員分となります。
そして、その相続関係を表した、相続関係説明図を作成して添付することになります。
4.まとめ
遺言書があった場合とない場合の相続登記の申請書に添付する書類の違いを解説してきました。
確かに、遺言書がなかったら書類が増えるのはわかるがそれだけでしょう、という方もいらっしゃいますが、それは、「遺産分割協議が争いなくできる状況にある」という前提があるからそう思われるのかもしれません。
しかし、いくつかのケースで、圧倒的に遺言書があった場合、相続登記がスムーズにいくケースがあります。例えば
①前婚の配偶者との間に子供がおり、現在の配偶者と婚姻後は、全く連絡を取っていない場合
その子供も「相続人」です。
残された配偶者と今の子供たちは、前婚の際の子供とは全く面識がありません。
前婚社との子供の心情として、すんなり遺産分割協議に協力していただけるか疑問です。
➁外国に相続人がいる場合で、外国居住者が相続登記の手続きについて手間を取りたくない場合
外国に居住していても、相続人であることには変わりません。外国に住居を移すことで、印鑑証明書や住民票は取得できなくなります。
これに代わって、「サイン証明」を日本領事館等で手続きをすることになるのですが、領事館に行くまで命がけという方もいらっしゃいました。
上記のような状況に当てはまる方は、遺言書を作成しておくことで、残された家族にかかる負担を軽減することが可能になります。
ぜひ、生前対策としての遺言書の作成を検討してみてください。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
随分前になるのですが、相続放棄をしたいという相談がありました。話の中で、負動産は取得したくないが、現金預金だけもらうことはできないのかと質問されました。このようなことはできるのでしょうか?
目次
1.相続放棄とは
2.負動産はいらないが現金預金は欲しいとき
3.結局、相続放棄という制度を使うと
1.相続放棄とは
相続放棄とは、民法で以下のように規定されています。
「(相続の放棄の方式)
第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
(相続の放棄をした者による管理)
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
2 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。」
つまり、相続放棄とは、民法に書かれている手続き(家庭裁判所への申述)をすることで、認められれば、当該相続において、初めから相続人ではなかったとみなされるということです。はじめから相続人ではなくなりますので、財産にせよ借金にせよ、受け取る権利、引き受ける義務、双方ともに無くなるということになります。
2.負動産はいらないが現金預金は欲しいとき
上記の通り「相続放棄」という制度を利用した場合、相続人ではなくなるため、その相続で発生した権利義務共に負わなくてもよくなります。「借金が多い」という場合であれば、相続財産と比較して、「相続放棄」又は「限定承認」という手続きを選択することができますが、「負動産」の場合、価格がついていなくても、財産と扱われます。同じ財産で金は欲しいが不動産はいらないというわけにはいかないんですよね。相談者の中の多くは、ネットなんかで調べていて「できない」ことを知ったうえで相談してくるケースがすごく多いです。
結局、負動産を抱えて相続する場合には、周りにもらってくれる方がいた場合には贈与を検討する。しかし、周りも同じように過疎化が進んでいて、高齢化している状態では、「空き家」化してしまうこととなり、そうなってくると「相続土地国庫帰属制度」を検討するしかなくなってきます。勿論「相続土地国庫帰属制度」の対象は土地となりますので、建物を取り壊したり、引き取ってくれるような状態にできるのか考える必要があります。当然ですが、その分のコストも発生します。だって、国に管理してもらうのに「タダで」というわけにはいきませんからね。
3.結局、相続放棄という制度を使うと
相続放棄という制度を利用すると、当該相続において、初めから相続人ではないとみなされますので、相続で発生した財産も受け取る権利は無くなってしまいます。いくら現預金をたくさん持っていても、相続放棄をしてしまいますと、それを受け取る権利は、無くなります。
結局、現金預金だけもらって負動産を無視することはできません。そして相続放棄という選択肢も使えなくなります。現金預金を使った段階で、相続財産を処分したということで、相続放棄をすることはできなくなります。また、一度、相続放棄を認められていても、相続財産の処分により「法定単純承認(相続人であることを認めた)」したことになり、承認された相続放棄は取り消されることになります。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
遺産分割前に、預貯金の口座が凍結されてしまい、相続人の調査が難航し相続発生後の生活に困ってしまうといった事態が、実際に起こっていました。子供がいれば、サポートも受けられると思うのですが、子供がおらず、自分以外の相続人が誰かわからない状態で、預金が凍結されますと日々の生活を続けられなくなる方もいます。そこで、2019年7月1日の民法改正により、「遺産の分割前における預貯金債権の行使」についての規定が盛り込まれています。どのような内容になっているのか確認していきましょう。
目次
1.そもそも何が問題なのか
2.民法改正により遺産分割前の預貯金の取り扱いの変更点
3.事例で考える
4.まとめ
1.そもそも何が問題なのか
前のブログでも書きましたが、相続発生を金融機関が確認した場合、被相続人の口座は凍結されます。これは、金銭(現金・預金)について、当然には分割されません。遺産分割前にその金銭を保管する相続人に他の共同相続人が自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません。これが、2019年7月1日より前の民法の取り扱いでした。
私がまだ司法書士資格の受験生だった時に、予備校の講師(司法書士)が言っていたのですが、子供のいない夫婦の夫が亡くなり、すべて夫名義の預金しかなく、夫の入院費用や葬儀代を支出してしまったのち、手持ちの現金が底を尽き、預貯金も凍結されている状態で日々の生活にも困る状態で相談に来られた方がいたそうです。いろいろ手を尽くしたのですが、結局ダメで、相続人との遺産分割協議をするにも、夫の兄弟姉妹は遠方に住んでいて、すぐにできる状態ではなかったそうで、とても大変な思いをしたということでした。
こういったことを踏まえて、民法が改正されています。
2.民法改正により遺産分割前の預貯金の取り扱いの変更点
「(民法909条の2)
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」
前段の部分が重要で、遺産分割が成立する前であっても一定額の預貯金については、各共同相続人が単独でその権利を行使できる旨が規定されています。その一定額とは、「法定相続分の3分の1」です。
それでは、夫の預貯金が90億円あるので「法定相続分の3分の1」なら、億単位のお金の引き出しができるのかというとそうではなく、上限が定められています。
「民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令
民法第909条の2に規定する法務省令で定める額は、150万円とする。」
つまり、150万円が上限として定められています。これは、各金融機関ごとに150万円が限度となり、一つの金融機関内に複数の口座があっても、その合計額は150万円が限度となります。
3.事例で考える
例えば、夫婦と子供一人がいましたが、子供は行方不明で連絡がつかない状態です。預貯金の口座はすべて夫名義で900万円の残高があったとします。この時妻は、自分の法定相続分2分の1の3分の1、つまり150万円までなら、遺産の一部分割みなしとして金融機関からの引き出しが可能となります。ただし、各金融機関の手続きが必要となりますので窓口にお問い合わせください。
4.まとめ
今回は、相続発生後、遺産分割までの間の預貯金の「いわゆる仮払い制度」の取り扱いについて解説いたしました。
相続が発生して、手持ちの現金がない場合の手段として有効かと思います。遺産分割に時間がかかりそうな場合にはぜひ活用してみてください。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続発生前に、被相続人(亡くなった方)が自ら出金し消費していた事実が分かっている場合には、特に問題とはなりませんが、被相続人の預金の管理を相続人お一人が管理していた場合、多額の使途不明金が生じていた場合、どのようにすればいいのでしょうか。
目次
1.相続発生前の使途不明金の取り扱い
2.相続発生後の使途不明金の取り扱い
3.まとめ
1.相続発生前の使途不明金の取り扱い
被相続人A、相続人B・Cで、BがAの講座の管理をしており、使途不明金500万円が生じている場合
「第〇条 相続人B及び相続人Cは、次の財産が被相続人A(年月日死亡)の遺産であることを確認し、これをBが取得するものとする。
X銀行Y支店普通預金(口座番号123456)の使途不明金500万円に係る被相続人AのBに対する返還請求権」とします。
Bが生前Aの預金を管理していた場合には、AとBとの間に「預金の管理に関する委任契約が成立」していたと考えられるため、使途不明となったAの預金について、被相続人Aは、管理の受任者である相続人Bに対して、返還請求権(民法646条1項)又は損害賠償請求権(民法709条)という「相続財産」が発生することになるためです。
当然、Aの債権はB・Cに相続されます。Bは自分が負うこれらの債務との相殺をすることになり、Cは、相続で受けた権利をBに対して返還請求することとなります。
2.相続発生後の使途不明金の取り扱い
遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分した財産を遺産分割の対象に含めることができます。(民法906条の2 1項)
また、共同相続人の一人または数人により財産が処分されたときは、当該共同相続人以外の共同総ぞ属人全員の同意によって、遺産分割の対象とすることができます。(民法906条の2 2項)
この条項は、民法改正により追加されたものです。
当初は、共同相続人全員の同意がないと、処分された財産について、遺産に含めることはできませんでした。そうすると、処分した相続人が、仮に反対した場合、処分された財産は遺産に含めることができなくなるため、勝手に処分した相続人の同意は不要とされています。
(事例)
被相続人Aが死亡し、相続人の子供B・Cがいたとします。財産は、被相続人Aが居住していた家と土地、そして現金200万円があったはずなのですが、200万円がいつの間にかなくなっていることに気づきました。
①BはCが盗んだと疑っており、Cは否定しています。しかし、お互い消えた200万円を遺産に含めることに争いがない場合、200万円は遺産分割の対象とすることができます。
➁現金200万円をCが勝手に使ったことが判明しました。BはCの同意がなくても、現金200万円が遺産分割の対象とすることができます。
つまり、民法906条の2で言っているのは、共同相続人に消えた財産を遺産分割の対象にすることに争いがなければ、対象とすることができるし、勝手に処分した方が判明している場合、その方の同意がなくても、他の共同訴z九人全員の同意で、遺産分割の対象とすることができると言っています。
3.まとめ
財産の使い込みなどの処分について、相続発生前後において、法律上生じる根拠が異なることが分かります。相続開始前だと、委任契約における受任者の責任として、そして、相続発生後において、共同相続人全員の同意で、亡くなった財産を遺産分割の対象にすることができますし、使い込んだ相続人が判明している場合には、その財産を遺産分割の対象とすることに、当該相続人の同意は不要とされています。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
遺産分割協議書を作成しても、その後の調査で、その時に判明していなかった遺産が発見される場合があります。このような場合に、当初の遺産分割協議書に「条項」を盛り込むことで、遺産の引継ぎ方法を取り決めておくことができます。
目次
1.法定相続分通りに取得させる場合
2.法定相続分とは異なる配分で取得させる場合
3.一人の相続人に取得させる場合
4.判明したときに別途協議する場合
5.まとめ
1.法定相続分通りに取得させる場合
「第〇条 本協議に記載のない新たな遺産が発見されたときは、当該遺産につき、相続人A及びBは、2分の1ずつそれぞれ取得する。」
※事例は、子A・Bのみが相続人であった場合を想定しています。
のちに遺産が発見されるなど、最初の遺産分割において遺産の一部を脱漏した一部分割の可否についての法律上の規定はありません。しかし、このような取り決めは有効とされています。ただし、初めの一部分割時に脱漏した遺産が判明していれば、最初の遺産分割のような分割は行わなかったと主張する相続人の方がいる場合には、民法95条1項により、錯誤取消になる場合があります。
2.法定相続分とは異なる配分で取得させる場合
「第〇条 後日、本協議書に記載のない遺産が発見された場合には、当該遺産につき、相続人Aが4分の3、相続人Bが4分の1を取得するものとする。」
「1.法定相続分通りに取得させる場合」と同様に、予め新たに遺産があることが判明した場合の条項を取り決めておくことも可能です。勿論、錯誤取消になる場合もあります。
3.一人の相続人に取得させる場合
「第〇条 本協議世に記載のない新たな遺産が発見された場合には、当該遺産については相続人Aがすべて取得する。(これについて、Bは意義がないことを確認する。)」
「1.法定相続分通りに取得させる場合」と同様に、予め新たに遺産があることが判明した場合の条項を取り決めておくことも可能です。勿論、錯誤取消になる場合もあります。
例えば、相続人Aは、被相続人である父親と同居しており、相続人Bは遠方に住んでおり、実家に関連する遺産は、基本相続人Aにすべて帰属させたいといった要望がある場合、このような条項を盛り込みます。今まで、実務上で最もよく使う項目です。
4.判明したときに別途協議する場合
「第〇条 後日、本協議書記載のない新たな遺産が発見された場合には、当該遺産の分割について別途協議をする。」
一部分割後の残余財産の分割方法としては規定がありません。残余財産のみの分割で足り角か、はたまた、再度、当該遺産を含めた遺産すべてについて協議を行うのか?悩ましいところです。
一部分割の際の当事者の意思表示の解釈に関する裁判例があります。
「遺産の公平な総合的分配のために、すでに一部分割された遺産も分割時において存在するものとして、遺産の総額を評価し、それに各当事者の法定相続分を乗じて具体的相続分を算定し、さらに一部分割により各当事者の取得した遺産の評価額を算定して、具体的相続分と一部分割による取得分との可不足分を算出しなければならない。」(東京家審昭47.11.15家月25.9.107)
しかし、現実問題として、仮に遺産分割審判までもつれた状態で、新たに発見された遺産について別途協議するというのは、無理があると思います。実際、遺産分割審判書にこの条項が盛り込まれており、また遺産分割調停を申し立てた事例を見たことがあります。家族関係がさらに悪化してしまいますよね。
5.まとめ
民法の相続法改正により、遺産分割協議によって一部分割が可能であることが明文化されています。(民法907条1項)しかし、新たに発見された遺産について、その財産のみの分割協議でいいのか、再度、全体として遺産分割協議をやり直すのかについては、状況観て判断するようにしております。勿論、司法書士として、その内容にまで介入することはありませんが、家族関係の状況によっても変わってきます。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
相続が発生したときに、相続人全員で遺産分割協議をしようにも、亡くなった方の遺産を特定できないと、分割協議の対象である遺産を確定しないと、協議ができません。
どのように遺産を調べればいいのか、お話をしたいと思います。
目次
1.預貯金について
2.不動産について
3.(番外編)生命保険
4.まとめ
1.預貯金について
亡くなった方の通帳や郵送物などから、預金している金融機関を特定します。
ここで重要なのが、「パソコン」「スマホ」の中身を確認することです。
最近、金融機関によっては、預金通帳を発行しない、スマホやパソコンで残高確認や送金ができるアプリなどで完結している場合もあります。また、スマホの場合、仮想通貨などのデジタル資産のアクセスツールになっている場合もあります。
ですので、スマホを亡くなってすぐに解約するのではなく、良く調査してみてください。
調査の結果、亡くなった方が保有する口座の金融機関を割り出します。そして、その金融機関の窓口に行き、亡くなった方の口座があるか調べてもらいます。(この段階で、金融機関は口座名義人が亡くなったことを知るため、口座が凍結されてしまいます。)
おそらく、口座凍結解除のために、金融機関から、亡くなった方の戸籍と、自分が亡くなった方の相続人であることがわかる戸籍を準備するように指示があると思います。基本的には、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍、相続人の現在戸籍が必要になります。(相続人特定のため)
そして、金融機関によっては、相続人全員から同意書(実印押印のもの)と印鑑証明書を求められる場合があります。
これに代わるものとして、遺言書やすでに遺産分割協議を終えている場合は、そちらを要求されます。
すでにお分かりになると思うのですが、全金融機関に網羅的に紹介する仕組みは現在ありません。
通帳などから、各金融機関を調べていくことになります。
2.不動産について
不動産が存在している各管轄する自治体の「名寄帳」を取得することで、亡くなった方の詳細な不動産の特定が可能です。ただし、不動産があるその自治体(市役所や町役場)ごとになりますので、そこを外れた不動産は、見つけることができません。
2026年2月2日から、法務局で全国の不動産を一括名寄せができるようになります。が、現状はできません。
法務局によっては、相続登記で名義変更をする際の登録免許税の計算の基礎となる「固定資産税評価額」の証明書として利用できない場合もありますので、名寄帳ではなく固定資産税評価証明書を取得していただくようにお願いしております。
固定資産税納税通知書と一緒に送付される「固定資産税明細」についても使えるのですが、この明細に記載されているのは、固定資産税が課税される不動産のみ記載されています。
公衆用道路など、評価のない土地については、この通知書では把握できませんので、固定資産税評価証明書を取得してください。
3.(番外編)生命保険
契約者が亡くなった方で、受取人を相続人とした生命保険の保険金は、法律上は相続財産ではなく、受取人の財産となりますので番外編とさせていただきました。
こちらも、亡くなった方の戸籍と自分が相続人と分かる戸籍を集めます。
そして、「生命保険契約紹介制度」を利用します。インターネット経由で照会を行いますので、集めた戸籍類をPDFにし、ホームページからアップロードします。
この紹介制度を利用するには、利用料3000円がかかりますので、クレジットカードで決済します。
4.まとめ
相続の手続きに必要な戸籍類については、事前に法務局にて、「法定相続情報証明制度」を利用して、「法定相続情報一覧図」を入手しておくと、手続きが楽になります。
費用は掛かりませんし、戸籍の束を持ち歩く必要もありませんので、お勧めです。
また、令和6年4月1日から、法定相続情報に割り振られます「法定相続情報番号」を相続登記の申請書に記載することで、法定相続情報一覧図の添付を省略できるようになっております。
このように、財産の種類によって、手続きが異なります。詳しくは専門家に相談しましょう。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
令和6年4月1日に施行された「相続登記義務化」ですが、この制度の中に「相続人申告登記」というものがあります。相続した不動産は、3年以内に相続登記をしないと、最大10万円の科料に処せられますが、相続人申告登記をすれば、個の過料を免れることができます。それでは、当該不動産を処分できるのでしょうか?
目次
1.相続人申告登記とは
2.相続人申告登記をしたから不動産を処分できる?
3.まとめ
1.相続人申告登記とは
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。こちらも、令和6年4月1日より施行されます。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。(相続人申告登記をした時の登記簿の内容)
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。※司法書士に代行してもらうには、司法書士報酬がかかります。
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
2.相続人申告登記をしたから不動産を処分できる?
「相続人申告登記」をすると、確かに相続登記義務化の罰則である「最大10万円以下の過料」の適用を免れることができますが、この状態で当該不動産を処分することができるのでしょうか?
答えは、「できません」。
(法務省HP引用)
「相続登記を申請しようとする場合、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸除籍謄本などの書類を収集して、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定する必要があります。
そこで、期限内(3年以内)に相続登記の申請をすることが難しい場合に簡易に相続登記の申請義務を履行することができるようにする仕組みとして、「相続人申告登記」が新たに設けられました。
なお、相続人申告登記は、簡易に義務を履行することができる一方で、以下のような留意点があるため、直ちに遺産分割や相続登記の申請をすることが難しい場合などに、義務を果たすために利用いただくことが想定されます。
〇 遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできない
〇 不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要がある」
(引用終わり)
「相続人申告登記」は、一般的な不動産登記のような権利関係を公示する目的のものではないため、当該不動産の処分まではできないとされています。
3.まとめ
先日の相談会で、「相続登記をしたから、不動産の処分をしたいので不動産屋を紹介してほしい。」と言われたので、相続登記がなされているのか確認するために登記簿を確認すると、相談者のみの「相続人申告登記」が入っていました。他に相続人がいるのかを確認すると、その方と亡くなった方の間に子供がおらず、亡くなった方の両親も既に他界されているとのことで、その兄弟姉妹に相続権がある旨を説明し、その方たちと「遺産分割協議」をしたのちに、「相続登記」をしないと、不動産の処分ができない旨を伝えました。よくよく話を聞くと、すでに不動産屋に行ったのですが、このままではできないから、司法書士の先生の所に行ってくれと言われたために相談に来たそうです。戸籍を集めて、相続人を特定し、遺産分割協議をして、相続登記ができることを伝え、その手続きを受任いたしました。
相続人申告登記は、義務化の過料は免れますが、権利関係の公示の効力はありませんので、将来的に不動産の処分を検討されている方は、ご注意ください。
遺言書で検認手続きを要するのは、自筆証書遺言です。
公正証書遺言では、検認の手続きは必要ありません。
そして、検認の手続きについて、家庭裁判所に申し立て、その後手続きをすることになるのですが、見なかったことにしたり、この検認手続きをしないとどうなるのか?
お話をしたいと思います。
目次
1.自筆証書遺言の検認手続き
2.自筆証書遺言でも検認の手続きを要しない場合とは
3.見なかったことにしたり、検認手続きを怠ると
4.まとめ
1.自筆証書遺言の検認手続き
検認とは、相続人に対し遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
遺言書の検認手続きは、次のような流れで行われます。
①遺言書を見つけ、種類を特定する
➁相続人を明確にする(戸籍等をそろえる)
③家庭裁判所の管轄を確認する
(被相続人(遺言作成者)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。)
④家庭裁判所に提出する書類を作成する
➄家庭裁判所に検認を申し立てる
⑥家庭裁判所から検認期日について通知が届く
⑦当日、家庭裁判所での検認に出席する
※相続人全員に通知されるので、相続人全員の立会が必要なのかという疑問について
「Q1. 相続人には,検認手続が行われることをだれが連絡するのですか。また,相続人のなかには,高齢で出頭できない人がいるのですが,問題ありませんか。
A. 相続人には,申立後,裁判所から検認期日(検認を行う日)の通知をします。申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは,各人の判断に任されており,全員がそろわなくても検認手続は行われます。」(裁判所パンフレット引用)
⑧遺言書の返還を受け、検認済証明書を申請する
2.自筆証書遺言でも検認の手続きを要しない場合とは
自筆証書遺言でも、検認の手続きを省略することができます。
それは、法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用した場合です。
すでに、法務局担当官が、自筆証書遺言の形式の確認をして、本人確認後、原本とそのデータを保管するため、偽造変造の恐れがないためです。
(法務局パンフレット引用)
「相続をめぐる紛争を防止する観点から,本制度では,
①自筆証書遺言に係る遺言書を法務局(遺言書保管所)でお預かりし,その原本及びデータを長期間適正に管理します(原本:遺言者死亡後 50 年間/画像データ:遺言者死亡後 150 年間)。
②保管の際は,法務局職員(遺言書保管官)が民法の定める自筆証書遺言の方式について外形的な確認(全文, 日付及び氏名の自書,押印の有無等)を行います。※遺言の内容について,法務局職員(遺言書保管官)が相談に応じることはできません。※本制度は,保管された遺言書の有効性を保証するものではありません。
③相続開始後は,相続人等に遺言書の内容が確実に伝わるよう,証明書の交付や遺言書の閲覧等に対応します。
④本制度で保管されている遺言書は,家庭裁判所の検認が不要となります。
⑤相続人等が遺言書情報証明書の交付を受けたり,遺言書の閲覧をした場合には,その他の全ての相続人等へ遺言書が保管されている旨の通知をします。」
(引用終わり)
3.見なかったことにしたり、検認手続きを怠ると
遺言書を検認しないと、次のような問題が生じる可能性があります。
①5万円以下の過料が科せられる
➁相続人の欠格事由になる
③相続放棄や限定承認の期限が過ぎてしまう可能性がある
④相続手続きが遅れてしまう
➄相続人同士のトラブル
⑥相続財産の名義変更ができなくなる
この中で、特に重要なのが、遺言書を見つけて、他の相続人には黙って、遺産分割協議をした場合、➁の相続人の欠格事由となるケースがあります。
欠格事由に該当すると、相続人としての権利をはく奪されますし、場合によっては刑事罰を受けることにもなりかねません。
必ず、ご自身だけで判断せずに、相続人全員に相談して対応を検討してください。
遺言書がある場合でも、遺産分割協議で、相続人全員が合意をした場合には、遺産分割協議が有効に成立する場合もあります。
詳しいことは専門家にご相談ください。
4.まとめ
自筆証書遺言の検認手続きについて解説をしてまいりました。一般的な手続きは、上記のような内容となっております。
遺言書がない場合、相続人の中で、海外在住の方がいる場合や音信不通の方がいる場合など、現実的に遺産分割強をすることが困難になることがありますので、生前に遺言書を作成しておくことは重要だと考えております。
また、セミナーや相談会で、必ず出てくる質問で「遺産分割協議をしたのに、何年もたってから仏壇から遺言書が出てきたけど、どうしたらいいですか?」というものがあります。
見なかったことにして放置したり、検認手続きを怠った場合のリスクも存在しますので、このような事案が発生した場合、専門家に相談することをお勧めいたします。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
先日、相談者の方から、「うちの両親はお互いに遺言書を書いているから、大丈夫。」というお話がありました。
その内容を聞くと、一見、確かに両親間でうまく遺産を承継させることができるように見えるのですが、「2次相続を想定していない。」遺言書の内容となっていました。
2次相続にも対応した遺言書は、どのように作成すればいいのでしょうか?
目次
1.遺言書の効力
2.1次相続・2次相続とは
3.予備的遺言を使った2次相続対策
4.まとめ
1.遺言書の効力
遺言書の効力とは、遺言者が死後に財産や遺産の処分を定めるために書かれた文書が、法律においてどのような法的な効果を持つかを指します。
一般的に、遺言書は遺言者の最後の意思を表すものとして尊重され、その内容に基づいて財産の分割や処分が行われます。
ただし、効力を発揮するためには、特定の法的要件を満たす必要があります。
公正証書遺言では、公証人が遺言内容の法的効力が有効になるように、条項を作成してくれますが、自筆証書遺言の場合、自分で自筆しなければなりません。
ここで、自筆証書遺言において法的効力を有効にするために必要な項目をご紹介したいと思います。
①遺言書の全文,遺言の作成日付及び遺言者氏名を,必ず遺言者が自書し,押印します。
遺言の作成日付は,日付が特定できるよう正確に記載します。
例)「令和3年3月吉日」は不可(具体的な日付が特定できないため)。
②財産目録は,自書でなく,パソコンを利用したり,不動産(土地・建物)の登記事項証明書や通帳のコピー等の資料を添付する方法で作成することができますが,その場合は,その目録の全てのページに署名押印が必要です。
③書き間違った場合の訂正や,内容を書き足したいときの追加は,その場所が分かるように示した上で,訂正又は追加した旨を付記して署名し,訂正又は追加した箇所に押印します。
以上は、全体の要件で、各種条項についても要件を充たいしていないと、有効にならない場合がありますので、専門家に相談することをお勧めいたします。
2.1次相続・2次相続とは
最初の相続(1次相続)で配偶者と子供が相続した後、その配偶者が亡くなったことで発生する二度目の相続のことを2次相続と呼びます。
相続は一般的には両親の死亡に伴って発生します。 父と母、それぞれが死亡したときに相続が発生しますが、このうち一度目を1次相続、二度目を2次相続といいます。
例えば、AB夫婦に子XYがいたとします。
AB間で、相互にAの遺言書には「全財産をBに相続させる。」とし、Bの遺言書には「全財産をAに相続させる。」といていた場合、どちらかが亡くなったときは、遺言書の内容で、相互に補完することができます。
しかし、この状況は、1次相続の範囲を対象としています。
2次相続(A死亡後、Bが死亡したケース)では、この遺言書の内容では、対応ができません。
遺言書についてのご相談で、この2次相続を想定していない内容の場合が、散見されます。
3.予備的遺言を使った2次相続対策
それでは、具体的に2次相続にも対応した遺言書の条項はどのようにすればいいのでしょうか。
その答えは、「予備的遺言(補充遺言)」を追加しておくことです。
予備的遺言とは、相続人又は受遺者が、遺言者の死亡以前に死亡(遺言者の死亡より先に又は遺言者の死亡と同時に)する場合、相続人が相続を放棄する場合、受遺者が遺贈を放棄する場合等に備えて、遺言者があらかじめ、財産を相続させる者又は受遺者を、予備的に定めておく遺言です。
2の事例で言いますと、仮に1次相続でAが亡くなった場合、Bの遺言書に「第〇条 遺言者は、Aが遺言者の死亡以前に死亡したときは、第□条に相続させるとした財産を長男のX(生年月日、住所)に相続させる。」という項目を追加することで、1つの遺言書で2次相続対応も可能になります。
勿論、A又はBどちらが先に亡くなるかなんてわかりませんから、お互いの遺言書に、個の予備的遺言を入れておくことにより、2次相続対策も万全になります。
さらに、長男Xも病気で余命宣告されている場合などでも、その孫についても追加することが可能です。
4.まとめ
遺言作成の際に注意すべき、「2次相続も想定した内容」の遺言書作成について「予備的遺言」をご紹介いたしました。
相談等で、話を聞いている際、必ず遺言書の条項に予備的遺言があるかどうかを確認するようにしております。
相談者の中には、専門書を読み込んで「これで安心だが、もしかしたらと思い相談に来た。」という方もいらっしゃり、内容を確認すると2次相続を想定していないこともよくありました。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
負の財産が多い場合、そもそも相続人としての立場を放棄する「相続放棄」ですが、令和4年度の件数が、過去最多の26万件を突破したとの記事を見ました。
記事の中に「借金」や「不動産」を相続したくないので相続放棄をしたといった内容で書かれていましたが、実務ではよく聞く話です。
少しお話をしたいと思います。
目次
1.相続放棄とは
2.「相続放棄、過去最多26万件 空き家増え、対策課題」(共同通信記事引用)
3.空き家の対策
4.まとめ
1.相続放棄とは
相続放棄は、被相続人のすべての相続財産(プラスの財産もマイナスの財産も)を相続することなく、最初から相続人ではなかったとみなされることです。
多額の借金をしている方が亡くなられた場合、相続人がその借金を引き継いで支払わなくていいように、相続人には相続放棄という権利が与えられています。
相続放棄の申述を家庭裁判所に対し手続きを行う必要がありますが、この手続きには、相続を知ったときから3ケ月という制限があります。
3か月を超えてからの相続放棄の申述は、原則認められません。
また、最初から相続人ではなかったとみなされるため、代襲相続も起こりません。
そのため、当該相続人として次順位の相続人となるため注意が必要です。
相続相談等では、字順位の相続人に、相続人となったことを伝えてあげた方がいいとアドバイスをしております。
なぜなら、レアケースにはなるのですが、字樹陰の相続人が独身の兄弟姉妹で、両親がすでにいない場合、その方が亡くなった場合、再度、自信が相続人となってしまうことがあり得ます。連絡は密にしておいた方が親切でもあり、安全です。
2.「相続放棄、過去最多26万件 空き家増え、対策課題」(共同通信記事引用)
「相続放棄、過去最多26万件 空き家増え、対策課題(共同通信記事引用)
不動産や借金などプラス、マイナスどちらの遺産も受け継がない「相続放棄」が年々増え、2022年は全国の家庭裁判所で過去最多の26万497件が受理されたことが9日、司法統計で分かった。
人口減少や過疎化が進む中、専門家は空き家となった実家を手放したり、縁遠い親族の財産を受け取らなかったりする例が目立つと指摘。
放置された家屋や土地への対策が課題で、行政が適切に管理できるよう制度設計を求める声もある。
民法は、人(被相続人)が死亡した場合、配偶者や子らが一切の遺産を相続すると定めており、マイナスの遺産も相続しなければならない。
これを避けるため、相続放棄を家裁に申し立てることができる。全国の家裁で受理件数が増加。司法統計で19年は22万5416件、20年が23万4732件、21年が25万1994件だった。
相続に関する手続きを多く扱う弁護士法人「心」(本部・名古屋市)によると、親が亡くなり、子どもが地元を離れている場合、維持費や固定資産税の負担を嫌って実家の相続を放棄することが多い。孤独死した人と疎遠な親族が遺産を放棄する例もある。」(引用終わり)
3.空き家の対策
空き家の対策として、行政も「空き家バンク」などの取り組みをしております。
しかし、空き家がここまで急速に増加してくるとなると、何らかの手段をとらないとだめになるかもしれません。
昨年のニュースでは、京都市が「空き家税」なる課税を検討しているというものもありました。
しかし、空き家といえども、元は個人資産なわけで、義務化された相続登記で所有者を特定しなければ、処分することもできません。
相続関連の相談を受けている時も、空き家になるかもしれない、田舎の実家が問題となることはよくあります。
4.まとめ
司法統計で、相続放棄が過去最多となっている記事をご紹介しました。
記事の中で気になったのが、借金と(価値のない)不動産が同列で語られている点でした。確かに、子供からすれば、田舎の実家は、負担以外の何物でもないかもしれません。処分できる不動産ならまだしも、田舎の集落的な場所の不動産は、処分もままならないと思います。
実際、相続登記後、業者にリフォームして売却の方向で相談者が話を進めていたのですが、ぎょすやから連絡があり、「周りの建物のほとんどが空き家になっているので、リフォームしても意味がない」と言われたことがありました。
ご自身が使っていない実家については、早めに処分の方向で検討しておいた方がいいかもしれません。
任意後見制度は、委任者が自分の判断能力が十分なうちに、あらかじめ後見人となってくれる人(「任意後見受任者」といいます。) と任意後見契約を締結し、そこで選任しておいた任意後見人に、将来、自分が認知症や精神障害等で判断能力が不十分になったときに支援を受ける制度です。
目次
1.法定後見制度と任意後見制度
2.認知症になるとできなくなること
3.成年後見制度の種類
4.任意後見契約
5.任意後見のメリット・デメリット
6.まとめ
1.法定後見制度と任意後見制度
事前に準備しておかなかった場合、認知症と判断されると「成年(法定)後見制度」の利用一択になってしまします。
法定後見では、家庭裁判所に申し立てをしたのちに、お子様を後見人にしたいとの希望を提出していた場合でも、家庭裁判所では、「他の家族が反対している」「財産が多い」「後見人になった後に複雑な法律行為を予定している」などの状況を踏まえるため家庭裁判所の判断で「司法書士・弁護士」が後見人になるかもしれません。司法書士や弁護士が選ばれた場合、継続的に報酬(月額2~6万円)が発生し、亡くなるまで発生します。
また、後見人は裁判所に報告義務があり、家族には報告義務はないため、ご家族が財産の状況把握ができない可能性があります。
あらかじめ後見人になってもらいたい家族と任意後見契約を結ぶことで、ご家族を後見人として財産の管理ができるようになります。
2.認知症になるとできなくなること
認知症と診断され他場合、以下のことができなくなります。
①預金の処分
➁不動産の処分
③福祉関係の契約・手続き
④相続が発生したときの遺産分割協議 等
上記が発生した場合、法定後見を利用するしか方法はありません。
3.成年後見制度の種類
法定後見になると、誰が後見人になるのかわかりません。
「父の財産を管理したい」長男様が、自身で家庭裁判所に後見の申し立てをした際、長男様のお名前を推薦人として書いていたので安心していたところ、弁護士が選任され、慌てて即時抗告しましたが、覆ることはありませんでした。
そもそも家庭裁判所の決定に、抗告をすることはできません。(体験談)
法定後見制度を利用したくない場合には、判断能力喪失前に任意後見契約を締結しておく必要があります。
4.任意後見契約
任意後見契約は、ご本人と任意後見人になる予定の方(任意後見受任者)との間で締結する契約です。しかし、この任意後見契約だけでは、実際にご本人が認知症になったとき、効力は発生しません。
この任意後見契約につきましては、公証役場において公正証書で作成しなければなりません。
契約を締結してすぐに後見人として活動できるかというとそうではなく、ご本人が認知症等で判断能力が低下したときに、任意後見受任者が家庭裁判所に「任意後見監督人の選任の申し立て」をします。
家庭裁判所が選任した任意後見監督人が就任したときに、任意後見受任者は任意後見、財産管理や身上監護といったことができるようになります。
公証役場で任意後見契約を締結する内容として、判断能力低下時に代理してもらいたいことを定めておきます。
(代理目録サンプルとして)
①不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項
➁金融機関、証券会社との全ての取引に関する事項
③保険契約(類似の共済契約を含む。)に関する事項
④定期的な収入の受領、定期的な支出を要する費用の支払いに関する事項
➄生活費の送金、生活に必要な財産の取得に関する事項及び支払いに関する事項
⑥医療契約、入院契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約、福祉関係施設入所契約に関する事項
⑦要介護認定の申請及び認定に関する承認または審査請求並びに福祉関係の措置(施設入所措置を含む。)の申請及び決定に対する審査請求に関する事項
⑧登記済権利証・登記識別情報、印鑑、印鑑カード、住民票基本台帳カード、個人番号(マイナンバー)カード、マイナンバー通知カード、預貯金通帳、各種キャッシュカード、有価証券・その預り証、年金関係書類、健康保険証、土地・建物賃貸借契約書等の重要な契約書類その他重要書類の保管および各事項の事務処理に必要な範囲内の使用に関する事項
⑨居住用不動産の購入及賃貸借契約並びに住居の新築・増改築に関する請負契約に関する事項
⑩登記及び供託の申請、税務申告、各種証明書の請求に関する事項
⑪遺産分割の協議、遺留分侵害額請求、相続放棄、限定承認に関する事項
などを取り決めて任意後見契約を公証役場にて公正証書で作成します。
5.任意後見のメリット・デメリット
(メリット)
①ご家族をほぼ確実に任意後見人にできる
※任意後見人を付けることが本人のためにならないといった特別の事情がない限り認められます。
「成人であれば、誰でも、あなたの信頼できる人を、任意後見人にすることができます。身内の者でも、友人でも全然問題ありません。ただし、法律がふさわしくないと定めている事由のある者(破産者、本人と訴訟をした者、不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由のある者(例えば金銭にルーズな人)など)はダメです。」日本公証人連合会HP引用
➁身上監護(福祉サービス利用契約、要介護認定の申請)なども任せられる
※家族信託の場合、できない。
③年金の入金される口座も管理できる
※家族信託の場合、できない。
④不動産に抵当権が付いていても金融機関の承諾は不要
※家族信託の場合、金融機関の承諾が必要。
(デメリット)
①任意後見監督人の報酬が必要となる
管理財産5000万円以下 月1万円~2万円
管理財産5000万円超 月2万5千円~3万円
※法定後見の場合でも次の場合、後見監督人が付く可能性が大(報酬面は同じとなる)
預金1000万円以上ある場合(地域によって額が異なります)
※後見制度支援信託を利用して、後見人の手元には200万円程度の預金を残し、残りを信託銀行などに信託し、家庭さん板書の書類がないと引き下ろしできないような仕組みをとる場合があります。しかし、ご本人が遺言書を作成している場合、この後見制度支援信託を利用することはできなくなるため、その場合に後見監督人が付く可能性が高くなります。
このような状況ですと、後見監督人への継続報酬が必要になります。
6.まとめ
法定後見で家族が後見人に選任され後見監督人が付かなければ一番コストがかからないということになりますが、法定後見では第三者が後見人に選任されてしまう可能性があるという点。
また、預貯金1000万円以上で遺言書を作っているなら監督人が付く可能性が高くなるという点。
これらを踏まえると、監督人への継続報酬が同じなら、家族をほぼ確実に後見人にできる(後見人報酬が発生しない)任意後見契約を締結しておいた方が良いのでは、ということになります。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
生命保険(契約者は亡くなった被相続人とする)は法律上では、相続財産を生命保険に切り替え、相続人の一人に受取人指定すれば、相続財産から外すことができます。
一方、税務の面では、生命保険は「みなし相続財産」として取り扱われるため、控除枠(法定相続人×500万円)を除いた残りが相続財産となります。
生命保険の活用は、比較的メジャーですので、注意点についてお話ししたいと思います。
目次
1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか
2.受取人は誰が一番いいのか
3.まとめ
1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか
被相続人が保険金を支払っている契約者であり、保障の対象となる被保険者である場合、保険金の受取人が「妻」や「子」である(相続人)ときには、亡くなった場合にみなし相続財産の非課税枠を利用することができます。
注意しないといけない点は、その生命保険の契約の内容です。若いころから入っている生命保険があると思われている方もいるかもしれませんが、多くの場合「定期付終身保険」の可能性があります。「定期付終身保険」とは、3000万円の保険金となっていても、100万円の終身保険(主契約)に2900万円の定期保険(特約)が組み合わされた保険で、一定の年齢を超えてから亡くなると主契約の100万円分しか受け取れない契約になっていて、非課税枠を十分に活用できない可能性があります。
保険会社に現状の保険の契約内容を必ず確認しておくようにしましょう。
これから契約をしようとしている方も、終身保険の金額と自身の推定相続人の数を把握して、税理士などの専門家と相談しながら進めるといいかもしれません。
2.受取人は誰が一番いいのか
前提として「契約者」と「被保険者」が被相続人(夫)である場合のケースで考えていきます。※被保険者が妻(配偶者)の場合などにつきましては、複雑化しますので、税理士に確認をするようにしてください。
①配偶者(妻)を受取人とした場合
配偶者は、必ず相続人にカウントされるため生命保険の非課税枠は当然使うことができます。しかし、相続税申告をする際に配偶者控除枠1億6千万円を使うことができるため有効活用できるかというと微妙かもしれません。
➁子供を受取人とした場合
一番効果が出るケースです。
③孫を受取人とした場合
子供が存命の場合、生命保険の非課税枠は利用できません。代襲相続や養子となっている場合では、非課税枠を利用できるケースもあります。
厄介なのが、子供が存命で孫を受取人とした場合、相続税額2割が加えられて計算されるという仕組みが適用される場合があります。この辺につきましては、税理士にご相談ください。
3.まとめ
生命保険を活用した相続対策を考える場合には、まずは、生命保険の契約内容について確認をすること。契約内容が主契約の終身保険の額ではなく、特約の額が多い場合には、相続税対策には効果が薄い場合があります。
次に、受取人を誰にするのかという点。保険に加入する際に、妻が受取人でないことで文句を言うケースもあるようですので、なぜ妻(配偶者)にしないのかについては、専門家の税理士などを交えて、しっかりと事前に話し合いをしておく必要があると思います。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
生前の相続対策として「遺言書作成」があります。遺言書を作成しておくことで、ご自身の意思を残された家族に伝えることと、不要なトラブルを避けることもできるかもしれません。ただし、遺言書作成が有効と判断されるためには、法律の要件をクリアしておく必要があります。
目次
1.遺言書作成のタイミング
2.自筆証書遺言と公正証書遺言
3.遺言書がある場合とない場合の手続きの差
4.遺言書の未来
5.まとめ
1.遺言書作成のタイミング
遺言書は、健康な状態で作成することが望ましいです。
一度病気になってしまうと、判断力が低下したり、医療処置によって精神状態が変化する可能性があります。
早めに遺言書を作成することで、自分の望む財産分配方法を明確にし、遺言執行者の指名や葬儀の方法なども記載することができます。
ご高齢の相談者様の中には、遺言書の手続きについて説明すると「そんなに大変なら、考えます。」と言って、相談を打ち切られる場合がよくありますが、健康で元気である間に、遺言書を作成することが重要になってきます。
2.自筆証書遺言と公正証書遺言
①自筆証書遺言(しひつしょうしょゆいごん)
遺言者自身が手書きで書いた遺言書のことです。
遺言者が自らの意思を文書に記し、日付や署名を行います。
法的効力を持つためには、遺言者が死亡する前に遺言書に自筆で署名し、日付を入れる必要があります。
法律上の要件を満たすために、自筆で書かれ、遺言者の署名があることが重要です。また、内容が明確であることも求められます。
➁公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)
公証人が立会いし、遺言者の意思を確認した上で作成される遺言書のことです。
公証人は遺言者に対し、遺言書の内容や意味を確認し、遺言者の意思を理解したうえで遺言書を作成します。
遺言者は公証人の前で署名します。公証人も署名し、証人も立ち会います。
自筆証書遺言と比べて、法的な証拠力や信頼性が高いとされています。遺言書の内容や遺言者の意思が明確に公証されるためです。
要するに、自筆証書遺言は遺言者自身が書いたものであり、公正証書遺言は公証人が立会いし作成されたものです。
どちらも法的な効力を持ちますが、相続人間で争いが生じた場合、公正証書遺言の方が通常、法的な証拠力が高いとされています。
3.遺言書がある場合とない場合の手続きの差
それでは、遺産が相続人に帰属するタイミングについてお話をいたします。
(1)遺言書がある場合
遺言者(亡くなった方)の遺志に従って、財産の帰属先が決定します。
(2)遺言書がない場合
相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を取りまとめることで、相続財産の帰属先が決まります。
つまり、遺産分割協議がまとまるまでは、法定相続分での状態になってしまうということです。
その間に、相続人の中には法定相続分の持分を買い取り業者などに売却したりする方などが発生してしまいますと、遺産分割協議がうまくまとまらなくなってしまう可能性も出てきます。
遺産分割に関するトラブルは、遺言書がない場合、法律上の相続人の割合に従って分割されますが、これが家族や親族間での紛争を引き起こすことがあります。
早めに遺言書を作成することで、財産の帰属先が宙に浮くことを未然に防ぐことができます。
相続人間の争いについては、遺言書があってもなくても、起こるときは起こりますし、起こらないときは起こりません。
家族間のコミュニケーションや、相続発生後の手続きの煩雑さなどから見ても、遺言書があるおかげで、ずいぶん軽く済んだケースを多く見てきました。
ここで言えることは、相続関連の手続きで戸籍類など亡くなった方と相続人の関係を証明するための書類は圧縮され、遺言者と遺産を受け取る方の戸籍で関係性を証明すれば、手続きを始めることができる点です。
なぜなら、遺産の帰属先は既に決まっているためです。
4.遺言書の未来
これまで紙でしか認められなかった遺言が、ついにパソコンやスマホからでも作成が可能になるというニュースがでましたね。
(令和5年5月5日 日本経済新聞)
今までだと、自筆証書遺言ですと財産目録以外は、原則紙に直筆で書き込み、自署・押印が成立の要件となっていました。公正証書遺言も、公証人及び証人2名と自身で、書面上で書かれた内容について確認する作業が必要で、保管も書面での保管となっています。
※公証役場での公正証書遺言の保管は、デジタル化されています。
5.まとめ
遺言書について解説してまいりました。
遺言書は、健康年連を考慮すると「70歳を超えたとき」に検討し始めた方がいいと思います。
中には、「うちは財産が少ないから、遺言書なんて必要ない」と思われている方もいるかもしれませんが、実は、家庭裁判所の統計データを見ますと、遺産分割調停・審判の件数で財産額が5000万円以下で全体の78%を占め、1000万円以下では35%にも及びます。
勿論、揉めた場合、家族関係はぎくしゃくしてしまうでしょう。
このような事態を防止する意味でも、遺言書は有効な手段だと考えます。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
生前の相続対策として、生きている間にどなたかに財産を贈与するという方法があります。
以前はよく使われていた「暦年贈与制度」ですが、令和6年1月1日よりルールが変更になり、贈与税110万円の非課税枠は利用できても、相続時に相続人に贈与していた財産について、相続財産に持ち戻しされる範囲が、従前の3年から7年に延長されました。
これ以外にも注意すべき点がありますので、解説していきたいと思います。
目次
1.生前贈与の留意点
2.こんなはずじゃなかった生前贈与
3.暦年贈与制度と相続時精算課税制度
4.まとめ
1.生前贈与の留意点
財産を生きている間に、誰かに贈与することを生前贈与と言います。
生前贈与は、一般の贈与と同じく贈与税の対象となります。基礎控除額は110万円ですが、これを超えると贈与税がかかります。
相続税と比較すると、控除額については、相続税の場合、「3000万円+600万円×法定相続人の人数」となりますので、贈与税の控除額110万円とは比較にならないほど大きく控除額が設定されています。
また、不動産の名義変更のための税金である「登録免許税」は、贈与の場合1000分の20ですが、相続で登記をする場合1000分の4と5分の1となります。急いで、生前贈与すべきかどうかの判断はやはり必要だと思います。
贈与税も相続税も、税務署への申告が必要です。
贈与税の場合、確定申告の際に届け出ることとなり、相続税の場合は、相続発生から10ケ月以内に申告をすることになります。忘れると税務署から呼び出しが来ますので、解らない場合には、税理士に相談してください。
2.こんなはずじゃなかった生前贈与
以前、「もう使わない宅地があるから、孫に贈与したい。」と相談がありましたので、固定資産税評価証明書を確認すると合計額が1000万円を超えていました。
贈与税がかかる旨話をすると、「孫に迷惑はかけれないから、私が贈与税を払う。」と言っていました。
税理士に相談していただきますと、贈与税に加え、贈与税を肩代わりすると、そこにも贈与税がかかってくると言われ、少し考えさせてほしいと言い、その後、それでも贈与したいということでしたので手続きをしました。
業際の関係で、司法書士だけで相談してしまいますと、税務について概略程度はお話しできるのですが、細かい内容まで相談に応じることはできません。税理士法に違反してしまうためです。
アイリスでは、提携先の税理士をご紹介しております。
3.暦年贈与制度と相続時精算課税制度
暦年贈与制度の相続人への贈与について、持ち戻しの期間が3年から7年に伸びたことは既にお話をしましたが、他にも相続時精算課税制度と異なる点があります。
それは、相続時精算課税制度を利用する場合には、税務署へ届出が必要となり、届け出後は暦年贈与制度を利用することはできなくなります。
令和6年1月1日の変更点は相続時精算課税制度にもあり、年間控除額110万円を利用できるようになりました。こちらは、控除した場合、暦年贈与制度のように相続財産への持ち戻しがありません。
詳細につきましては、比較表を以下に示します。
4.まとめ
生前贈与を検討する場合、やはりコスト面についての検討が必要です。
相続で実施したほうが安くなる場合があります。
また、どの制度を使えば、ご自身が考えている生前贈与として活用できるのかの判断も必要です。
税金関係の相談は、司法書士は受けることができませんので、必ず税理士に相談し、手続きが発生するようなら、専門家である税理士に依頼してください。
司法書士は、不動産の名義の変更の手続きはできますが、税務署への届出や申告はできません。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
既に始まっている相続登記義務化ですが、なぜ相続登記が義務化されたのか?
そして、相続登記をしないことによる弊害は、罰則である過料だけなのか?
そして、不動産を所有するということについて今一度考えていただきたく、詳しく解説していきます。
北海道新聞の記事によくまとまったものがありましたので、こちらを引用しながらお話をしていきます。
目次
1.相続登記とは何?
2.相続登記をしないことによる支障
3.空き家問題と直結。放置すると何が良くない?
4.所有することによる責任問題について
5.まとめ
1.相続登記とは何?
「登記は土地の場所や広さ、建物の構造など不動産の状態と、その権利関係を記したものです。現在の所有者がだれで、抵当権が付いているかどうかなどをだれでも確認することができ、不動産取引を安全に行うための制度です。そして、相続登記は、家や土地など不動産の所有者が亡くなった後、不動産の所有名義を相続人に変更する手続きのことをいいます。」(北海道新聞記事引用終わり)
つまり、亡くなった方名義のままでは、公示された登記簿からは、亡くなった方の氏名住所しかわかりません。もし、処分(売買等)しようと思っても、死者は契約当事者にはなることはできません。
現在生きている当事者でなければなりません。そのためには相続登記をしておかなければ、処分すらできないという状態になるわけです。
それでは、なぜ相続登記を放置する方が今まで多かったのかと言いますと、通常不動産取引をした場合の権利関係を明確にするために「登記(名義の変更)」をして、第三者に対抗する要件を備えるわけです。
登記をしないと、前の所有者から買ったとする第三者に対抗できないという事態が生じるわけです。
つまり、自己の権利を主張するために登記が必要なんです。不動産の登記は任意というのはここからきています。
それが今まで相続登記にも及んでいたために、令和6年4月1日までは、任意で行うものとされていました。任意ですので、罰則もありませんから、「やらない」という選択肢があったわけです。
しかし、東日本大震災の時、復興のため被災した土地を再開発しようとしたとき、この相続登記の放置による所有者不明となっている土地がネックになり、再開発が遅れたそうです。
そこで、政府が所有者不明土地の調査をしたところ、九州の面積に匹敵する土地が該当したため、相続登記義務化の方向に方針を転換したと言われています。
2.相続登記をしないことによる支障
先ほどは、相続登記をしないことについて、社会的な支障についてお話をしてきました。それでは、相続登記をしなかった方たちにとってどのような支障が出てくるのかを見ていきたいと思います。
まずは、今回の義務化の罰則である過料です。最大10万円以下の過料となります。
それでは、10万円払えばそれで終わりなのか?または、相続人申告登記をして、過料だけは免れておけばいいのか?という点について、考えていかなければならないと思います。次で述べたいと思います。
3.空き家問題と直結。放置すると何が良くない?
建物放置は空き家問題に直結しますし、損壊の危険や治安悪化も懸念されるところです。
季節の変わり目になりますと、放火事件などが増加しますが、空き家が狙われるケースも少なくありません。
「空き家はさまざまな問題を生じさせます。人が管理しない状態が続くと、台風などの自然災害で損壊したり、雨水が入って朽ちたりして周囲に危険を及ぼします。動物が入り込んで繁殖すれば、衛生面でも問題になります。悪い人がたむろして治安の悪化を招く可能性もあります。その他にも景観面や地価の低下も問題となります。そこで、一つの対策として不動産登記法などが改正され、相続登記を義務化することになりました。」(北海道新聞記事引用)
こちらもどちらかと言えば、社会的な問題に起因するものですが、地域の問題になってきますね。例えば、倒壊しそうな空家が倒壊し、近隣住民に被害が出た場合に、相続人の方たちは「関係ない」といえるのでしょうか?次で解説していきます。
4.所有することによる責任問題について
「民法(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第717条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。」
上記民法の規定は、土地の工作物(建物、橋、電柱、エスカレーター等)について、責任の所在を指しています。
例えば、空き家を放置していたために、倒壊し、近隣住民に損害が発生した場合、空き家に占有者はいませんので、その責任は所有者に行くことになります。
つまり、相続人です。よく条文を見ていただければわかると思うのですが、占有者(賃借人など)には、ちゃんと管理していることが証明されれば責任を免れますが、所有者にはその文言はありません。
つまり、損害が発生した場合、所有者に係る責任は、免責事由がなく無過失責任となります。
相続人にいかなる事情があったとしても、とりあえずは責任がかかります。そして損害を賠償した後、「損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。」とされるわけです。
使わない不動産(特に老朽化した建物)について、処分方法の検討を促しているのには、このような事情がある訳です。
5.まとめ
このように、相続登記を放置することで相続人が負う責任は、義務化の過料だけではないことがお分かりいただけたと思います。
所有者の責任というのは無過失責任です。使わない実家などがある場合、アイリスでは相談を受けつけております。このような物件を専門に買い取りをされている業者がおりますので、そちらにお繋ぎしております。
漠然とした不安が現実のものになる前に、是非検討してみてください。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続登記をご自身でされる場合もあると思いますが、申請書の記載が間違っていたり、法定の要件を欠く場合に法務局側で行う手続きに「補正」「却下」があります。また、申請人が行う手続きとして「取下げ」があります。それぞれ、内容が異なりますので解説したいと思います。
目次
1.「補正」とは
2.「取下げ」とは
3.「却下」とは
4.「却下」・「取下げ」による書類の還付
5.まとめ
1.「補正」とは
補正とは、登記の申請に不備がある場合において、申請人がその補正をすることをいいます。
補正の方法としましては、「電子申請」と「書面申請」で取り扱いが異なります。
①電子申請の補正(不動産登記規則60条2項1号)
法務大臣の定めるところにより、電子情報処理組織を使用して申請の補正をする。
➁書面申請の補正(不動産登記規則60条2項2号)
登記所に提出した書面を補正し、又は補正にかかる書面を登記所に提出する。
※申請書田添付情報の補正は、「登記官の面前」でさせなければならないとあります。(不動産登記法準則36条3項前段)この場合、当該書面が資格者代理人(司法書士)の作成によるものである時、当該資格者代理人本人に補正させなければならない。(不動産登記法準則36条3項後段)
個人の意見として、この時は、非常に恥ずかしいと感じます。
ここで、「登録免許税の追加納付のみ」の補正の場合は、電子申請による場合でも、領収書または収入印紙を窓口に提出又は送付する方法で行います。
2.「取下げ」とは
取下げとは、申請人の意思により、登記申請を撤回することです。取下げには、登記の申請を補正するための取り下げと、申請を完全にやめるための取り下げの2種類があります。
注意点として、取下げできる期間があり、「登記の完了後又は却下後」にはすることができません。(不動産登記規則39条2項)
取下げの方法として、
①電子申請(特例方式含む)※特例方式とは、添付書類だけ書類で申請する方式。
法務大臣の定めるところに従い、電子情報処理組織を使用して申請を取り下げる旨の情報を登記所に提供する方法による。(不動産登記規則39条1項1号)
➁書面申請
申請を取り下げる旨の情報を記載した書面を登記所に提出する方法による。(不動産登記規則39条1項2号)
ここで重要になってくるのが、司法書士などの代理人に依頼している場合の「委任状」に記載されている事項です。補正のための取り下げの場合には、取下げのための特別の授権を要しません(昭29.12.25民甲2637号)が、申請を完全に撤回するための取り下げの場合、取下げのための特別の授権をようします。(昭29.12.25民甲2637号)
また、取下げの際の塘路億免許税の還付についてですが、書面・特例方式の場合、領収書または収入印紙を台紙に貼った書面を取下げの日から1年以内に再使用することができる旨の証明を求めたときは、「再使用証明」がなされます。台紙等に再使用の印が押されますので、再度申請する際に利用できます。しかし、電子納付の場合は、還付の手続きをすることになります。
※登録免許税額がそれなりに大きい場合で、申請書類に自信がない場合には、還付するにも時間がかかりますので、「再使用証明」で行った方がいいと思います。
3.「却下」とは
登記官は、登記申請が25条列挙事由に該当する場合には、理由を付した決定をもってその申請を却下しなければならない。(不動産登記法25条)
ただし、その申請の不備が補正可能なものであって、申請人が登記官が定めた相当の期間内に補正した場合には、却下されない。(不動産登記法25条但し書き)
※25条列挙事由とは、却下事由になり、これに該当する場合には却下されるという取り扱いになっています。詳細内容については、今回は割愛いたします。
申請却下時には、登記官から、却下決定書が交付されます。代理人により申請した場合には、当該代理人に交付されます。(不動産登記規則38条1項、2項)
この時、添付書面は還付されますが、登録免許税のために収入印紙を貼った申請書は返却されません。ですので、取下げの場合と異なり、再使用証明ができませんので注が必要です。
4.「却下」・「取下げ」による書類の還付
却下と取下げについて、比較した表を右に示します。
5.まとめ
「補正」「取下げ」「却下」の手続きの違いについて解説をしてきました。
例えば、最近よく見かけるのですが、本人申請の際に窓口で修正を促している様子を見かけます。こちらは、「補正」に当たると思います。そして、受理前に書類の不足などを指摘して、追加で持ち込んでいただくのも、一種の補正だと思います。また、法務局では、事前に登記相談なども行われたり、司法書士による相談を予約制で受け付けています。司法書士による相談で、詳細まで聞くことはかなり難しいと思いますが、法務局職員による登記相談はいろいろと教えていただけると思います。
登記の申請は、まずは提出することから始まります。そこで、何か問題があればアドバイスをいただけると思います。法務局に足を運ぶ回数を減らしたい、時間を書けれないというのであれば、やはり司法書士に相談して、申請をお願いするのが良いと考えます。
日本語だけで解釈しようとするとおそらく解らない方が多いと思います。
今回、4月1日に、不動産登記関連の登記事項証明書(登記簿)の公示される実際の住所の代わりにその者から申出のあった場所(公示用住所提供法務局等)とする申出を申請時に行い、DVなどの被害を未然に防ぐことを目的とする制度です。
くわしく解説いたします。
目次
1.登記事項証明書等における代替措置とは
2.代替措置を受けられる要件
3.代替措置を申請するときの「承諾書」(何を承諾するのか)
4.まとめ
1.登記事項証明書等における代替措置とは
今まで、一般的な不動産の登記事項証明書については、売買などの不動産取引の安全を重視し、登記簿上に本人の住所を記録するようにしています。
改正前まで特例的に、登記実務上、例えば、登記名義人等がDV被害者等の被支援措置者である場合には、被支援措置者の保護の観点から現住所を秘匿する必要性が高いことに配慮して、一定の場合に、現住所への住所の変更の登記を不要とする取扱いや、前住所又は前々住所を登記権利者の住所として申請することを許容したり、登記申請書等に記載されている被支援措置者の住所の閲覧制限の取扱いを行っていたりしていました。
しかし、昨今の義務化された相続登記や住所等の変更登記など、不動産登記簿の情報を最新のものにするための方策を実施するにあたり、DV被害者等を保護する観点からその住所を非公開とする取り扱いの必要性も一層高まっているため、これらの措置に法的根拠が設け、今回の改正により、住所を表示する代替措置等をするようになりました。
不動産登記関連の登記事項証明書(登記簿)の公示される実際の住所の代わりにその者から申出のあった場所(公示用住所提供法務局等)とする申出を申請時に行うことで、DVなどの被害を未然に防ぐことが目的となります。
2.代替措置を受けられる要件
「(1) 登記記録に記録されている者(自然人であるものに限る。)は、その住所が明らかにされることにより、次のア又はイに掲げる場合(以下「措置要件」という。)に該当するときは、代替措置申出(法第119条第6項に規定する申出をいう。以下同じ。)をすることができるとされた。
ア 人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合(法第119条第6項)
イ 当該登記記録に記録されている者その他の者(自然人であるものに限る。)について次に掲げる事由がある場合(規則第202条の3)
(ア) ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号)第6条に規定するストーカー行為等に係る被害を受けた者であって更に反復して同法第2条第1項に規定するつきまとい等又は同条第3項に規定する位置情報無承諾取得等をされるおそれがあること。
(イ) 児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)第2条に規定する児童虐待(同条第1号に掲げるものを除く。以下この(イ)において同じ。)を受けた児童であって更なる児童虐待を受けるおそれがあること。
(ウ) 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者であって更なる暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの(後記(エ)において「身体に対する暴力」という。)を除く。)を受けるおそれがあること。
(エ) 前記(ア)から(ウ)までに掲げるもののほか、心身に有害な影響を及ぼす言動(身体に対する暴力に準ずるものに限る。以下同じ。)を受けた者であって、更なる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがあること。
(2) 前記(1)の「登記記録に記録されている者」には自然人であること以外に特段の限定は付されていないことから、登記名義人であった者、信託目録に記録されている者、閉鎖された登記記録に記録されている者等もこれに該当する。また、登記記録に記録されている者の住所が明らかにされることにより、当該者以外の者(例えば、登記記録に記録されている者と同居する者等)に前記(1)ア又はイに掲げるおそれがある場合も、措置要件に該当する。ただし、この場合においても代替措置申出をすることができるのは登記記録に記録されている者に限られる。
(3) 次に掲げる者が更なる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがある場合には、前記(1)イ(エ)の事由があるものとして取り扱うものとする。
ア 特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的以外の目的により前記(1)イ(ア)のストーカー行為等と同様の態様による行為に係る被害を受けた者
イ 前記(1)イ(イ)の児童虐待と同様の態様による行為に係る被害を受けた満18歳以上の者(例えば、高齢者など)
ウ 保護者でない者から前記(1)イ(イ)の児童虐待と同様の態様による行為に係る被害を受けた児童
エ 配偶者以外の者から前記(1)イ(ウ)の暴力と同様の態様による行為に係る被害を受けた者
オ 名誉又は財産等に対する脅迫を受けた者
カ 正当な理由なくインターネット上で生活状況を含めたプライバシー情報がさらされている深刻な状況にある者
これらに該当しない者であっても、個別の事案における具体的な事情に応じ、前記(1)イ(ア)から(ウ)までに掲げる言動と同程度の心身に有害な影響を及ぼす言動を受け、更なる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがある場合には、同(エ)の事由があると認められる。」(通達要件部分引用終わり)
つまり、自然人(法人ではない個人)であり、DVだけでなくストーカーや脅迫などを受けている場合で、有害な影響を受ける恐れがある場合に、代替え措置の提供を受けることができるとなっています。
3.代替措置を申請するときの「承諾書」(何を承諾するのか)
法務局の住所を公示するにあたり、代替措置の申出書に加え「承諾書」を要求されます。その内容は以下の通りです。
「☑ 前記2の内容に変更が生じた場合には、速やかに前記1に記載した公示用住所提供者(規則第202条の10に規定する公示用住所提供者をいう。以下同じ。)である法務局又は地方法務局(以下「公示用住所提供法務局等」という。)に変更後の事項を申し出ます。
☑ 公示用住所提供法務局等が受領するのは、申出人に宛てて公示用住所提供法務局等に送付された文書に限り、文書以外の物は受領しないことを承諾します。
☑ 裁判所による特別送達、本人限定受取郵便その他の公示用住所提供法務局等において受領することが性質上予定されていない方法によりに公示用住所提供法務局等に送付された文書は、公示用住所提供法務局等において受領しないことを承諾します。
☑ 公示用住所提供法務局等が受領した文書は、当該受領の日から1か月間に限り公示用住所提供法務局等で保管するものとし、申出人本人又はその代理人がその期間内に当該文書を受領しないときは、公示用住所提供法務局等において当該文書を廃棄することを承諾します。
☑ 申出人に宛てて公示用住所提供法務局等に送付された物が文書であることを確認するため必要があるときは、申出人の承諾なく、公示用住所提供法務局等において開封その他の必要な処分をすることを承諾します。
☑ 規則第202条の11第2項第4号及び第202条の16第3項第3号に規定する取扱い(以下「本取扱い」という。)は、次に掲げる日のうち最も早い日に終了し、当該日以後に申出人に宛てて公示用住所提供法務局等に送付された文書その他の物は、公示用住所提供法務局等において受領しないことを承諾します。
⑴ 公示用住所提供法務局等を公示用住所提供者とする代替措置等申出(規則第202条の4第1項に規定する代替措置等申出をいう。以下同じ。)があった日から10年を経過した日(この法務大臣の定める事項と同様の事項を記載した書面を提出して公示用住所提供法務局等に対して本取扱いの延長を申し出た場合を除く。)
⑵ 規則第202条の15第1項の規定による代替措置申出の撤回があった日
⑶ 申出人の死亡の日
☑ 不動産登記法(平成16年法律第123号)第119条第6項の申出に関する情報を保有する法務局又は地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が、本取扱いに必要な限度で、公示用住所提供法務局等に対して当該情報を提供することについて承諾します。
☑ 公示用住所提供法務局等の所在地に変更があった場合であっても、規則第202条の16第1項の規定による公示用住所の変更申出がない限り、登記事項証明書又は登記事項要約書に記載される公示用住所(規則第202条の10に規定する公示用住所をいう。)は変更されないことを理解しました。
☑ 公示用住所提供法務局等の故意又は重過失による場合を除き、本取扱いに関して発生した損害について、国は賠償責任を負わないことについて承諾します。」(承諾書引用終わり)
4.まとめ
今回の法改正により、一定の要件を充たす必要はありますが、公示される登記事項証明書に「住所」を仮の住所(法務局等)することができ、「文書(荷物はNG)」の保管を1か月間行っていただけるという点。
運用によっては、また変更がされるかもしれませんが、良い方向に進んでいると思います。
私が、相談を受けた方の中には、このような被害にあわれていている方にお会いして話を聞くこともありましたので、少しずつ前進していると思います。
相続登記を実施する際に、添付書類として法定相続人を特定するために戸籍謄本等から確認します。そして、当然、遺産の分配について、原則法定相続分となるわけですが、そこからさまざまな事情を踏まえて、相続人間で遺産分割協議をして遺産を分割します。一方で、相続放棄の申述は、家庭裁判所の手続きを要します。先日の相談で「相続分のないことの証明書」を作成し、署名押印したので、私は相続放棄をしたことになるのかとの相談を受けました。果たして相続放棄なのでしょうか?
目次
1.相続放棄とは
2.「相続分のないことの証明書」とは何を証明しているのか
3.被相続人の借金を負わないために
4.まとめ
1.相続放棄とは
民法では相続放棄について、以下のように規定されています。
「(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」
つまり、手続きとして家庭裁判所に申述しなければならず、その期間は熟慮期間と呼ばれ「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」以内にしなければなりません。3か月と言いますと、あっという間です。また、相続放棄は、被相続人が生きている間にはできません。相続発生後にできる手続きとなりますので、3か月経過直前に相談に来られる方もいますが、相続放棄ができなくなる可能性も出てきます。
そして、相続放棄の効果は、「相続人とならなかったものとみなす」、よって、被相続人が有する債権債務のすべてを受けられなくなります。
2.「相続分のないことの証明書」とは何を証明しているのか
ここで、過去に相続登記をされた方の中で、「相続分のないことの証明書(特別受益証明書・寄与分を取り決めた遺産分割協議書など)」を作成したという方がいらっしゃるかもしれません。これは、相続登記を申請する際に添付する登記原因証明情報の一つとして、証明された方は財産をもらわなかったという証明書になります。この手続きは「財産放棄」といいます。あくまでも、相続人間で財産の分配の方法を決めるために行う手続きです。
3.被相続人の借金を負わないために
さて、「相続放棄」と「財産放棄」について解説してきましたが、実際のところ被相続人(亡くなった方)の負債を負わなくていいのは、どちらなのでしょうか?皆さんはわかりますか?
初めから相続人ではなかったとみなしてくれる「相続放棄」と、相続人間のみで取り決める「財産放棄」。被相続人の債権者が影響を受けるのは「相続放棄」です。
「初めから相続人ではないとみなす=この相続で受ける債権債務を引き継がない」ということになるからです。
それでは遺産分割協議で財産をもらわなかった場合、相続負債を負わなくてもいいのでしょうか?
「(遺産の分割の効力)
第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」
遺産分割協議を相続人間ですることは自由なのですが、但書で「第三者の権利を害することはできない。」とあります。つまり、相続債権者の権利は害せないわけです。結果、負債を相続人として受けることになります。
今までも、相談に来られる方の中に、「相続放棄」と「財産放棄」を混同されている方が多くいらっしゃいました。相続放棄は、必ず家庭裁判所の手続きが必要です。もし、家庭裁判所の手続きをしていなければ、それは相続放棄ではないかもしれません。
4.まとめ
「相続放棄」「財産放棄」について、手続きとその効力について解説してきました。「財産放棄」であるのに、相続放棄をしたと勘違いしてしまいますと、後に、被相続人の債権者から多額の請求を受けることになります。また、相続放棄は家庭裁判所の申述により行われます。ご自身ですることも可能です。一般的には書面のみの手続きとなりますが、申述する内容によっては、家庭裁判所に出頭を命じれられる可能性もあります。ですので、熟慮期間の残りの期間と相続放棄手続きについて、専門家に相談されることをお勧めいたします。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
会社の役員(取締役等)の所有する土地を自身が役員を務める法人に売却する場合、「利益相反取引となります。他にも、担保権(抵当権など)の設定などにおいても、この「利益相反取引」となり売る場合があります。それでは、利益相反取引の状態で売却は可能なのか?解説していきたいと思います。今回は、法人と個人の取引についてお話をします。
目次
1.不動産登記における利益相反取引
2.利益相反取引かどうか見極めるポイント
3.利益相反取引の場合の添付書類
4.まとめ
1.不動産登記における利益相反取引
不動産取引における利益相反取引ですが、一番わかりやすいのは、個人の不動産をその方が代表を務める会社に売却するケースです。売買契約自体は問題なくできるでしょうが、問題点は、どちらも立場が異なるだけで、「同一視」できる点です。ですので、不当に安い値段で売却したり、不当に高く売却することが可能になってしまいます。要は、契約内容は自由ですので、第三者に売却する場合と比べると、不当に高く売却する場合、法人から合法的に資金を個人に移転できてしまうわけです。法人の資金が外部に流出して損害を被るのは、「株主」です。ですので、原則、株主総会決議を要するわけです。
2.利益相反取引かどうか見極めるポイント
不動産登記関連での利益相反取引については、様々な事例があります。まずは、権利の種類から見ていきます。
①不動産の所有権の場合
所有権が移転する場合、それが買主・売主の立場であっても双方ともに考慮が必要です。なぜなら、「会社の資産を安く売る行為」(売主側)、「会社が高く買う行為」(買主側)で、利益相反の可能性が出てくるわけです。それでは、個人・法人間の取引では、どのように見ていけばいいのでしょうか?その個人が、取締役に含まれているかどうかで判断します。
それでは、法人・法人間取引では、どのようにみるのかと言いますと、自身が代表を務める法人に対し、相手方の法人にその代表者が取締役としている場合が該当します。
➁担保権(抵当権)の場合
担保権の場合、担保権を設定している不動産の所有権者が「法人」の場合注意が必要です。なぜなら、個人所有不動産に法人の担保権を設定するのは自由ですし、法人の債務を個人資産で担保してくれるので、株主に損害を及ぼすこともありません。
㋐抵当権を設定する場合
法人所有の不動産に、個人債務を担保するために抵当権を設定する場合、利益相反取引となります。
㋑抵当権の債務者を変更する場合
個人所有の土地に、個人債務者の抵当権が設定されている状態で、この債務者を法人に変更をする場合、利益相反行為となります。会社が個人の債務を肩代わりするわけですからね。株主総会決議は必要とはなりますが、登記の際、承諾証明情報として、株主総会議事録の添付は不要です。なぜなら、個人所有の不動産のため、最終的に抵当権が実行されると、不動産を失うのは個人ですから。
3.利益相反取引の場合の添付書類
不動産登記の申請書に添付する書類として、「株主総会議事録(取締役会設置会社においては、取締役会議事録)」が必要です。通常、商業登記の申請において、株主総会議事録を添付する場合、併せて「株主リスト」の添付を要求されますが、不動産登記の商大証明情報として「株主総会議事録」を添付する場合、この「株主リスト」の添付は要求されていません。(不動産登記令9条、規則36条4項)
先の、抵当権の債務者の変更について、故人の債務を肩代わりしているのに、なぜ株主総会議事録が要らないのかという点については、法務局ではあくまで「形から入る」、つまり、外形が利益相反に見えるかどうかで判断します。これは利益相反の登記に限らず、どのような事情でも外形上の判断になります。
しかし、登記に必要ないからと言って、決議を省略してはいけません。実質上は利益相反取引ですからね。
4.まとめ
先の、抵当権の債務者の変更について、故人の債務を肩代わりしているのに、なぜ株主総会議事録が要らないのかという点については、法務局ではあくまで「形から入る」、つまり、外形が利益相反に見えるかどうかで判断します。これは利益相反の登記に限らず、どのような事情でも外形上の判断になります。
しかし、登記に必要ないからと言って、決議を省略してはいけません。実質上は利益相反取引ですからね。
利益相反取引については、「相続人の遺産分割協議で未成年の代理人が自分も相続人である場合」なども含まれてきます。
このように、利益相反かどうかの判断は、専門家に相談して手続きを進めていくべきだと考えます。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
過去に不動産を譲渡(売買・贈与)したが、その後、当事者が亡くなり相続人が調査すると、その登記が未了であることが発覚。しかも、契約書などの書類は見つからず途方に暮れているという相談です。
契約書類がなく、しかもその当事者が双方とも死亡している場合、登記はできるのでしょうか?
目次
1.民法上の譲渡契約について
2.具体的にどうすればいいのか
3.相続を証する書面とは
4.まとめ
1.民法上の譲渡契約について
それでは、譲渡(売買・贈与)契約をした場合、どのような時点で契約が成立するのでしょうか。
「民法(売買)
第555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」
「民法(贈与)
第549条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」
つまり、双方の意思表示が合致したときにその契約は成立するとなっています。
ただし、法律上書面等での契約を規定しているものもあります。
「民法(保証人の責任等)
第446条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」
2.具体的にどうすればいいのか
それでは、具体的に登記をする場合にはどのようにしたらいいのか、そもそも亡くなった方の意思表示はどうするのかについて、解説していきます。
今回の事例は、売主・買主双方ともに亡くなっているケースでお話をいたします。
申請書に添付する「登記原因証明情報」がありますが、契約書がなければ契約書を添付することはできません。そこで、司法書士が報告形式の登記原因証明情報を作成し、相続人の皆様に署名押印をしていただくことになります。
所有権の名義変更について、申請書には以下のように記載をします。
A→Xの贈与の後、双方死亡し、Aの相続人がB・C、Xの相続人がY・Zとします。
(申請書)
登記の目的 所有権移転
登記の原因 年月日贈与
権利者 亡X
上記相続人 Y
上記相続人 Z
義務者 亡A相続人 B
亡A相続人 C
※権利者側のY又はZが申請人となり登記をすることができます。権利者側は、保存行為として、その1人から登記ができるためです。
※義務者側のAの相続人については、相続人全員が申請人になることを要します。(昭27.8.23民甲74号)
しかし、上記の相続人としてどのように証明すればいいのでしょうか。それは、申請書に添付する書面として「相続証明情報」が必要になります。(不動産登記令7条1項5号イ)
3.相続証明情報とは
被相続人(亡くなった方)の生まれてから亡くなるまでの戸籍、相続人の現戸籍です。
売主・買主双方に相続が発生している場合には、双方の書面が必要となります。加えて、被相続人の住民票の除票も必要になります。(譲渡側:登記簿の住所と氏名で本人を特定するため、受取側:亡くなった方の最後の住所の証明として)
また、これらの書類の原本還付ができるかどうかについては、法務局HPを参照すると
(法務局HPより引用)
「「原本還付」される情報原本還付される主な情報(書面)は,以下のとおりです。
① 登記原因証明情報のうち売買契約書,抵当権設定契約書及び弁済証書,解除証書の原本など いわゆる報告的な登記原因証明情報は 原本還付されません。
② 住所証明情報(住民票など)
③ 資格証明情報(会社・法人の代表者事項証明書など)
④ 相続を証する情報(遺産分割協議書,被相続人の住民票の除票など)※ 相続の登記に添付する「相続を証する情報」のうち戸籍全部(個人)事項証明書(戸籍謄抄本 ,閉鎖戸籍全部(個人)事項証明書(除籍謄抄本 )))は,相続関係説明図を提出すれば,原本還付を請求することができます。なお,原本還付の請求が可能かどうか不明な場合は,最寄りの法務局又は地方法務局に御相談ください。」とあります。
4.まとめ
このように、契約当事者がすでに死亡しており、契約書も無い登記未了の物件について、現状で登記をすることは可能です。
また、時効取得として要件を充たす場合には、そちらで現利用者に名義を移転することも可能です。
詳しくは、司法書士まで相談してください。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
前回お話した身元保証サービスの闇ですが、令和6年2月2日に全国初となる身元保証サービス提供事業者の認証制度を静岡市が導入した記事を見つけました。業界内外で、サービスの正常運用化に向けた取り組みはしているものの、まだまだやりたい放題の業者もいるわけで、今回は「業界の正常化に向けた第1歩」だと思います。
目次
1.身元保証サービスの問題点のおさらい
2.静岡市「身元保証」 全国初の事業者の認証制度を導入
(静岡News Web)
3.まとめ
1.身元保証サービスの問題点のおさらい
第一に、身元保証サポートのサービスについて、法律上の整備がなされていません。それゆえに、各社サービス内容もまちまちです。金額が安いからということで契約しても、実際のサービス内容が、契約者にとって満足いくものとは限りません。
第二に、預託金を信託口口座など、安全な場所に保管管理できていないケースもある点です。自社の口座で管理していた場合、破産した場合、そのお金は債権者に差し押さえられてしまい、回収することはできないでしょう。
第三に、サービス提供会社の中には、「公正証書遺言」の内容に、「団体(法人)への寄付」を義務付けている場合があります。過去の判例で、とあるNPO法人がこれをしていたため、甥・姪から相続の侵害として訴えられ、最高裁で「無効」との判決が出ました。しかし、このケースでは、権利を侵害された相続人がいたために発覚したことであり、身寄りのない「おひとりさま」の場合、未だにこのようなことをしている団体(法人)があるそうです。
※今回は、この点で争いになっています。
「お世話になった団体に寄付して何が悪いんだ」との反論も聞こえてきそうですが、考えてみてください。あなたが重病を患い多額の医療費がかかるとき、医者と身元保証人との間で、あなたは治療してもらいたくても、あらかじめ決めておいた医療の方針を実施するとの話し合いがあった場合、どうすることもできません。悪い言い方をすれば「多額の治療費を使って治療すること=将来、団体が受ける実入りが減る」の関係になってしまっているため、果たして寄付前提の契約をした身元保証人が、あなたのご意見を聞いてくれるか疑問です。
2.静岡市「身元保証」 全国初の事業者の認証制度を導入(静岡News Web)
前回お話した身元保証サービスの闇ですが、令和6年2月2日に全国初となる身元保証サービス提供事業者の認証制度を静岡市が導入した記事を見つけました。ここまで社会問題となっていて、裁判で争っている方もいらっしゃる身元保証サービスですが、私は国の怠慢だと考えます。おひとり様が亡くなった場合、ものをいう方がいない場合が圧倒的に多いので、表面化しないだけです。ですので現状目に見えているのは氷山の一角です。業界内でも、身元保証サービスを正常化する動きもありますが、業者には監督権限なんてありませんから、強制力がないんですよね。このまま放置はできないということで、静岡市がついに動きました。
(令和6年2月2日 静岡News Web記事引用)
「身寄りのない高齢者の入院時などの「身元保証」を行う民間のサポート事業の需要が高まる一方、契約をめぐるトラブルが問題となる中、全国で初めてとなる事業者の認証制度を静岡市が導入することになりました。
民間の「身元保証等高齢者サポート事業」は、家族などに代わって保証人の役割を担ったり、日常生活の支援、死後の葬儀などを行うもので、単身高齢者の増加で需要が高まる一方、所管する省庁や法律がなく、契約に関するトラブルも報告されています。
こうした中、事業者の質の保証に行政も関わる必要があるとして、静岡市は事業者の認証制度を導入を決め、1日の説明会には、事業を行うNPOや社会福祉法人など7社が集まりました。
静岡市では、契約ルールや解約時の返金の手続き、死後の寄付などの基準を新たに定め、条件を満たす場合に限り、3年間「優良事業者」の認証が与えられます。
その後は更新制で、市は申請のあった事業者からサービス内容や料金体系、財務状況などを審査した上、認証した場合はホームページなどで公表することにしています。
総務省によりますと、自治体が身元保証事業者の認証制度を創設するのは全国で初めてだということです。
参加した事業者は「独身の人が増え、生前や死後事務を代行するニーズが高まっているので行政が関わる認証は大事だと思います」と話していました。
静岡市地域包括ケア・誰もが活躍推進本部の酒井真本部次長は「前例のない基準づくりに苦労したが、皆さんが安心して利用できるよう事業者と一緒に体制を整備していきたい」と話していました。」(記事引用終わり)
静岡市が、身元保証サービスを提供している事業者を対象に「認証制度」を全国初で導入したという内容です。特筆すべきは、認証したらそれで終わりではなく、3年間「優良事業者」の認証としている点です。やっと動き始めましたね。
3.まとめ
身元保証サービスを提供する事業者に対し、静岡市が全国初で3年間の認証制度を導入した記事をご紹介しました。
実際のパンフレットなどを見たときに、生前のサービスの料金が他の事業者と比較して異常に安い場合は、死後の財産を法人に移転することを要件としている場合もあります。勿論、安くてもそのような要件はない場合もありますが、サービス提供を受け始めてから、遺言書と死因贈与契約書を作成するケースもあります。事前にどの事業者が問題があるのかがわからないというところに、最大の闇が存在します。
この認証制度が全国に広がることを期待しております。
随分前からある身元保証サービスを提供する法人が、利用者に「法人に全財産を相続させる」という遺言書と死因贈与契約書を作成し、親族がこれを無効とする裁判の判決が名古屋地裁で出ました。過去のブログでも、身元保証を提供する法人すべてが問題なのではなく、亡くなった後の財産を法人が総取りする仕組みを利用してる業者が問題であることは、お話をしてきました。内容を見ていきましょう。
目次
1.「全財産相続させる」本人の筆跡と違う契約無効の判決 高齢者の身元保証NPO敗訴(中日新聞記事より)
2.これまでも問題となっている身元保証サービス
3.何が問題なのか
4.まとめ
1.「全財産相続させる」本人の筆跡と違う契約無効の判決 高齢者の身元保証NPO敗訴(中日新聞記事より)
身寄りのない高齢者らの身元保証を請け負う名古屋市内のNPO法人が、同市内の90歳と74歳の姉弟と交わした死亡後の贈与契約について、親族が「(姉弟の)署名は自筆でない」として契約無効の確認を求めた訴訟の判決が28日、名古屋地裁であり、棚井啓裁判官は「契約は無効」と親族の訴えを認めた。
判決によると、2022年8月、「私は全財産をNPO法人に相続させる」と記載され、姉弟がそれぞれ本人名義で署名、押印した遺言書が作成された。死亡と同時に全財産の所有権がNPO法人に移る死因贈与契約書も、本人名義の署名でそれぞれ作成された。」(記事引用終わり)
今回は、おひとり様ではなく、親族の方がいたので争いになっています。本当におひとり様の場合、争う相続人がいませんので、財産は遺言書や死因贈与契約先の法人のものになっていたのでしょう。また、身元保証サービスを提供しているのは、NPO法人だけとは限りません。
2.これまでも問題となっている身元保証サービス
(2021年1月30日 東京新聞)
「身寄りのない高齢者の身元保証代行を請け負う愛知県内のNPO法人が、死亡した高齢者との贈与契約に基づき金融機関に預金の返還を求めた訴訟の判決が名古屋地裁岡崎支部であり、近田正晴裁判官は「公序良俗に反する契約で無効」として請求を棄却した。高齢者と身元保証代行団体との間で交わされた、死亡時の財産の贈与契約(死因贈与契約)を無効とする司法判断は極めて珍しい。」(記事引用終わり)
こちらは、おひとり様の死亡後、契約に基づいて預金の支払いをしようとしたところ、金融機関が拒んだことで裁判となった事例です。
※以前、金融機関から後合わせで、「死因贈与契約書(公正証書ではない)」を持ってきた預金の承継屋を名乗る方に、預金の払い戻しができるかという問い合わせがありましたが、預金には譲渡禁止特約が付いています。知らないというのは通りません。なぜなら預金が自由に取引でき、詐欺の温床になってしまうためです。そのため、相続人全員の同意書がなければ、契約で譲渡をしようとしても譲渡禁止特約を主張できる旨アドバイスをしたことがあります。しかし、おひとり様の場合ですとこの判例から、「公序良俗に反する契約で無効」が言えそうですね。ただし、地裁の判断ではありますが。
3.何が問題なのか
第一に、身元保証サポートのサービスについて、法律上の整備がなされていません。それゆえに、各社サービス内容もまちまちです。金額が安いからということで契約しても、実際のサービス内容が、契約者にとって満足いくものとは限りません。
第二に、預託金を信託口口座など、安全な場所に保管管理できていないケースもある点です。自社の口座で管理していた場合、破産した場合、そのお金は債権者に差し押さえられてしまい、回収することはできないでしょう。
第三に、サービス提供会社の中には、「公正証書遺言」の内容に、「団体(法人)への寄付」を義務付けている場合があります。過去の判例で、とあるNPO法人がこれをしていたため、甥・姪から相続の侵害として訴えられ、最高裁で「無効」との判決が出ました。しかし、このケースでは、権利を侵害された相続人がいたために発覚したことであり、身寄りのない「おひとりさま」の場合、未だにこのようなことをしている団体(法人)があるそうです。
※今回は、この点で争いになっています。
「お世話になった団体に寄付して何が悪いんだ」との反論も聞こえてきそうですが、考えてみてください。あなたが重病を患い多額の医療費がかかるとき、医者と身元保証人との間で、あなたは治療してもらいたくても、あらかじめ決めておいた医療の方針を実施するとの話し合いがあった場合、どうすることもできません。悪い言い方をすれば「多額の治療費を使って治療すること=将来、団体が受ける実入りが減る」の関係になってしまっているため、果たして寄付前提の契約をした身元保証人が、あなたのご意見を聞いてくれるか疑問です。もちろん、寄付の義務を要求する団体・法人ばかりではありませんし、適切に身元保証サポートサービスを運用されている団体・法人もあります。
4.まとめ
今回の判決を受けて、過去の判例を調べていきますと、判例を見ていくと、昭和のものもありました。随分前から問題になっているわけですがなぜこのようなことがいまだに続いているのでしょうか?
それは、身元保証代行は監督官庁がなく、契約の不透明さがしばしば指摘されているにもかかわらず、何ら法整備ができていないためです。2016年には日本ライフ協会(東京)が高齢者からの預託金を流用していたことが発覚して破産し、社会問題になったという事件もありました。
監督官庁がなく、法律も整備されていない状態では、この手の事件は減らないと思います。
そんな中・・・・(次号に続く)
法定相続人が不動産を相続して10年以上たった後、他にも相続人がいるとする遺言が見つかった場合、誰が不動産を所有できるのか?
セミナーなどでよく質問がある論点です。
これについて、先日、最高裁が初めて判断を示したみたいです。
目次
1.事件の概要(令和6年3月19日 日経新聞記事引用)
2.相続回復請求権とは
3.まとめ
1.事件の概要(令和6年3月19日 日経新聞記事引用)
「法定相続人が不動産を相続して10年以上たった後、他にも相続人がいるとする遺言が見つかった場合、誰が不動産を所有できるのか――。こうした点が争われた訴訟の上告審判決が19日、最高裁第3小法廷(渡辺恵理子裁判長)であった。同小法廷は法定相続人による相続財産の取得は遺言によって妨げられないとする初判断を示した。
民法は、所有する意思を持ち善意・無過失で10年間、不動産などを占有した場合はその所有権を取得できるとする「時効取得」を定める。下級審では最近も「時効取得は成立しない」とする判断が出ていた。
最高裁が時効取得の成立を認め、遺言に基づく相続権の主張では既にある登記を覆すことはできないとしたことで、同種の事案は今回の結論に沿って判断されるとみられる。
判決などによると、原告の女性は2004年、養子縁組をしたおばの不動産を唯一の法定相続人として相続、登記した。
ところが、10年以上過ぎた18年に遺言の存在が判明。裁判官が立ち会って開封する「検認」が行われたところ、女性や女性のいとこを含む3人に「遺産を等分する」と書かれていた。
女性は既に時効取得が成立しており、いとこらに遺産の返還を求める権利はないとして19年に提訴した。
裁判でいとこ側が主張したのは、民法が規定する「相続回復請求権」と呼ばれる権利だ。
本来、相続人でない人に相続権を侵害された場合、侵害を知ってから5年以内なら財産を取り戻すことができるとする。
いとこ側は、侵害の事実を知ったのは検認を経て遺言の内容を把握した時点で、まだ5年が経過していないと強調。
家督相続に関する訴訟を巡り、相続回復請求権を行使できる状態では時効取得は成立しないとした1932年の大審院(現在の最高裁)の判例などを根拠に、女性に対して不動産を返すよう求められると反論した。
第3小法廷は、回復請求権に5年間などの期限が設けられた目的は「相続権の帰属や法律関係を早期、終局的に確定させること」にあると確認。
行使できなくなるまで時効取得を認めないのは「趣旨に整合しない」とした。
相続回復請求権が残っている状態でも時効取得は成立すると結論付け、女性側の請求を認めた二審・東京高裁判決を支持。
いとこ側の上告を棄却した。
いとこ側が言及した大審院の判例については「家督相続制度を前提とするものだ」として、今回の判断は「抵触しない」と述べた。
相続回復請求権が主張されるのは、遺言などによって自身に相続権があることを後から知るケースに限られる。ベテラン裁判官は「こうした場面はあまり想定されず、判決の影響は限定的だろう」とみている。」(記事引用終わり)
(原告 法定相続人の主張)
時効取得が成立しており、いとこらに遺産の返還を求める権利はない。
(被告 いとこ側の主張)
相続回復請求権を行使できる状態では時効取得は成立しないとした1932年の大審院(現在の最高裁)の判例などを根拠に、女性に対して不動産を返せ。
(最高裁の判断)
いとこ側の上告を棄却。原告の主張を支持した。
※却下という のは「要件を備えていない不適法な訴えなどと して内容が審理(検討)される前に退けられるこ と」をいいます。これに対して内容が審理されたうえで訴えが 退けられることを「棄却(ききゃく)」といいます。
2.相続回復請求権とは
「民法(相続回復請求権)
第八百八十四条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする。」
3.まとめ
今回は、法定相続した後に、遺言書が発見されたものですが、期間が取得時効の善意取得の期間である10年を超えていたため、原告が時効取得を主張し、それが最高裁判所に認められたという内容でした。
それでは、取得時効の善意取得できる期間である10年を下回った場合、どうなるのか?現状では、まだ判断は出ていませんので何とも言えません。
しかし、今回取り上げた内容は、完全に争いが生じておりました。
裁判では、途中、和解を勧められますが、最高裁まで争ったところを見ると相当揉めていたことがうかがえます。
遺言書を作成された方は、ご家族に内容は伝えないまでも、その「想い」を確実に伝達できるように、その保管場所を伝えておきましょう。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
根抵当権とは、特定の債務を担保する抵当権と異なり、契約・登記の「極度額」まで去っていされた取引から生じる債務を担保します。しかし、「元本確定事由」が発生しますと、それまでの債務と利息、遅延損害金を担保する抵当権のようになります。
この根抵当権で、債務者に相続が発生した場合、どのような手続きが発生するのでしょうか。
目次
1.根抵当権と抵当権の違い
2.相続発生後6ケ月以内にできる対応
3.相続発生後6か月経過後にできる対応
4.債務者が法人で、その代表者に相続が発生した場合
1.根抵当権と抵当権の違い
(抵当権)
抵当権とは、住宅ローンで融資を行う金融機関が、借入を受ける人が購入する不動産などをローンの担保として設定する権利のことです。
担保となる不動産などは債務者が利用できますが、もしローンを返済できなくなった場合は、代わりに担保に設定された不動産を金融機関に差し押さえられます。
つまり、「借入金=抵当権で担保する債権」ということになります。
抵当権の債務者に相続が発生した場合には、相続による債務者の変更の登記が必要になります。
(根抵当権)
根抵当権とは抵当権の一種であり、複数回の貸付・借入を行う契約において利用されます。
根抵当権では、担保となる目的物から貸付の限度額を定め、その範囲内で貸付・借入を行います。
抵当権は、一度の貸付・借入ごとに設定する必要があり、同じ債務者・債権者同士で契約を行う場合でも、その都度、抵当権を設定しなければなりません。
しかし、根抵当権であれば、貸付限度額の範囲で何度でも貸付・借入を行えます。カードローンの借り入れに似ています。
要は、借入金も担保されますが、それ以外に借りた借入金も担保でき、発生消滅を繰り返しても、根抵当権の効力は継続します。
抵当権の場合、借入金を全額返済した場合、抵当権はその担保権としての効力が無くなり抵当権を抹消することができます。
一方で、根抵当権の場合には、元本確定事由が発生しない限り、債務を全額返済しても根抵当権の効力は無くなりません。
この点が一番抵当権と異なる部分です。
勿論、債務者が債権者である金融機関等と話をして、根抵当権がもう必要なければ、「解除」により抹消することは可能です。
2.相続発生後6ケ月以内にできる対応
(元本を確定させないための登記)
元本確定前の根抵当権の債務者が亡くなったときは、相続開始後6カ月以内に指定債務者の合意の登記をしないと担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされます。
金融機関と相談した上、指定債務者を選び登記するように指定があった場合、指定債務者の合意の登記をするためには、その前提として被相続人の相続人全員を債務者とする債務者の変更登記をしなければなりません。
つまり、①相続人全員の債務者変更登記、➁指定債務者の合意の登記、の2回の登記が必要となります。債務者の変更の登記となりますので、登録免許税は、共同根抵当権が設定されている物件の数×2回分×1000円となります。
また、相続発生から合意までの間の各相続人が承継した債務を担保するためには、さらに③債権の範囲の変更登記も必要になります。
(事例)
根抵当権者X銀行、債務者Yの根抵当権があり、Y所有の不動産があったとします。
Yの相続人はA,Bで、Aが不動産を遺産分割協議で相続登記をしているものとします。
①相続人全員の債務者変更登記
「登記権利者 X銀行
登記義務者 A
変更後の事項 債務者(被相続人 甲) A B」
➁指定債務者の合意の登記
「登記権利者 X銀行
登記義務者 A
指定債務者 A」
③債務者及び債権の範囲の変更登記
「登記権利者 X銀行
登記義務者 A
変更後の事項
債務者 A
債権の範囲 銀行取引 手形債権 小切手債権
○年○月○日債務引受(旧債務者B)にかかる債権
○年○月○日相続によるAの相続債務のうち変更前根抵当権の被担保債権の範囲に属するものにかかる債権」
※AがYの相続により承継した債務及びBが相続した債務を免責的に引き受けたものにかかる債務は根抵当権によって担保されませんので、特定債権として追加する必要があります。債務者をAとする変更登記は交替的変更となりますので、変更前に生じたXのAに対する債権の範囲に属するものにかかる債権も根抵当権によって担保されることになります。
元本確定前の根抵当権において、債務者が変更した場合、新たな債務者の債権は担保するものの、今までの債権は外れてしまいますので、このような特定債権として、根抵当権の債権の範囲を変更することで、根抵当権の担保範囲に加えることができます。
3.相続発生後6か月経過後にできる対応
先にも書いた通り、元本確定前の根抵当権の債務者が亡くなったときは、相続開始後6カ月以内に指定債務者の合意の登記をしないと担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされます。
元本が確定すると、その後は通常の抵当権のように相続時の債権を担保する抵当権と同じになりますが、極度額まで「利息」「遅延損害金」を担保することができます。
当然、相続後に発生した債権については、当該根抵当権では担保できなくなってしまいます。
そして、確定後の債務を全額返済すれば、根抵当権は効力を失います。
それでは、具体的にどうなるのかと言いますと、以前のブログの抵当権の債務者の相続と同じ手順で行うことになります。金融機関から指定があると思うのですが、①遺産分割協議による相続登記を行う方法と、➁相続登記後に免責的債務引受による債務を承継する相続人の債務引受けの登記の2種類となります。
これらの登記は、元本が確定していないとできませんので、相続発生から6か月経過後に行うことができます。
①相続人全員の債務者変更登記
「年月日相続」を原因として
「登記権利者 X銀行
登記義務者 A
変更後の事項 債務者A B」(法定相続人全員を登記)
➁免責的債務引受けにおける債務者の変更
「年月日Bの債務引受」を原因として
「登記権利者 X銀行
登記義務者 A
変更後の事項 債務者 A」(債務を引き受ける相続人を登記)
※➁の登記原因証明情報として「根抵当権変更契約書(債務者相続による免責的債務引受)」の契約書を作成します。
※すべての根抵当権変更登記において、登記権利者(根抵当権者)、登記義務者(所有権の名義人)となります。
4.債務者が法人で、その代表者に相続が発生した場合
法人の代表者が死亡した場合、債務者が法人の根抵当権はどうなるのでしょうか?
確かに代表者の方は亡くなっていますが、法人そのものは存続していますし、法人の代表者は別の方が鳴っていたとしても、法人と金融機関が交わした契約そのものが無効になるわけではありません。
先にも書いた通り根抵当は、継続取引を想定した担保権です。
ですので、故人が債務者の根抵当権とは異なり、代表者に相続が発生しても登記は発生しません。
しかし、法人と金融機関との間の債務を代表者が個人として、連帯保証人になっているようなケースでは、連帯保証人の脱退加入の契約が必要となります。
このような場合には、取引先の金融機関にお問い合わせください。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
先日、ニュース記事で「妻に自宅を贈与する」記事が出ていました。
贈与税を念頭に贈与を検討していました。
婚姻期間20年超の夫婦間の配偶者へ住宅又は住宅を取得するための資金を贈与した場合の特別控除があります。
果たして、これだけで問題がないのでしょうか?
また、生前贈与した自宅を相続発生時に「みなし相続財産として持ち戻し」の対象になるのかについて、お話をしたいと思います。
目次
1.夫婦間で20年以上の期間の贈与税の控除額
2.記事「「結婚後20年経てば贈与税がかからない」は本当か?」(健美家記事引用)
3.司法書士の答え(健美家記事引用)
4.生前自宅が贈与されていた場合、みなし相続財産として持ち戻しされないのか?
5.まとめ
1.夫婦間で20年以上の期間の贈与税の控除額
戸籍上、夫婦としての婚姻期間が20年以上経過していれば、配偶者へ住宅又は住宅を取得するための資金を贈与した場合、2000万円まで(基礎控除110万円と合わせれば2110万円まで)贈与税がかからないことになっています。
同じ配偶者から一生に1回だけ認められる非課税特典です。
つまり、贈与税という観点から見れば、自宅が2110万円以内であれば、贈与税は発生しませんが、要件があります。
①夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
➁配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
③贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
要件クリアしても、贈与する金額が2110万以下だった場合は、贈与税は0円となりますが、必ず申告期限(贈与を受けた翌年3月15日)までに贈与税の申告書を税務署に提出する必要があります。
2.記事「「結婚後20年経てば贈与税がかからない」は本当か?」(健美家記事引用)
それでは、記事に書かれていた内容を見ていきましょう。(健美家記事引用)
「(略)令和4年末に住宅ローンを完済しました。
そして、住宅ローンを完済したタイミングで自宅を妻に贈与しようと考えました。
自宅を贈与する目的は、私の不動産投資に何かあっても妻と家族に自宅を残すためです。不動産投資が上手くいかなくなった時に、自宅が任売や競売になるのは、妻や家族には大変申し訳ない事になります。
私は、毎月税理士事務所に打ち合わせに行っていますが、以前、税理士さんが、「結婚して20年過ぎると、配偶者に自宅を贈与しても税金がかからない」と言っていたのを覚えていたことも、後押しになりました。」(引用終わり)
おそらく、この方の物件も要件を充たしていたため贈与税はかからなかったのでしょう。
しかし、不安なようで司法書士にも相談してみたいですね。
3.司法書士の答え(健美家記事引用)
「(略)とりあえず司法書士さんに相談することにしました。
25年以上前に自宅の登記でお世話になり、現在は収益物件の登記でお世話になっている司法書士さんです。
司法書士さんから最初に出てきた言葉は、「本当にやるんですか?」と、いうものでした。
司法書士さんは、明らかにこの贈与の話を思い留まらせようとしていました。
詳しく説明を聞くと、無税なのは贈与税だけで、不動産取得税と登録免許税は、普通にかかるという事です。
さらに司法書士費用も必要で、妻への自宅の贈与にかかる費用は、総額で40万円くらいという話でした。
不動産取得税、登録免許税、司法書士費用という言葉は、収益物件の購入ではよく聞く言葉ですが、自宅となると全く頭から抜けていました。
司法書士さんは、再確認するように、「本当に贈与税の免除のためだけに40万円もかけるんですか?普通はやりませんよ」と、真顔で聞いてきました。」(引用終わり)
総額40万円というのは、物件価格(固定資産税評価額)によって変わってきます。
まずは、所有権の名義を変更するために必要な「登録免許税」があります。贈与ですと1000分の20ですが、相続で行う場合、1000分の4となります。
贈与の時の5分の1ですよね。
また、これだけではありません。相続の場合、配偶者控除として1億6千万円の枠があります。
生前に贈与する場合、自身の相続後の二次相続対策のケースが圧倒的に多いです。
なぜなら、もらった配偶者に相続が発生した(二次相続)では、相続の配偶者控除1億6千万円が使えなくなってしまうためです。
同じ相続で不動産の名義変更を予め子供にしておくことで、配偶者の相続発生時に相続税がさらに発生してしまうことを嫌う方が多いためです。
※相続税のご相談は税理士に確認してください。
4.生前自宅が贈与されていた場合、みなし相続財産として持ち戻しされないのか?
それでは、生前に配偶者へご自宅を贈与してしまったのちに相続が発生し、みなし相続財産の適用で持ち戻しが発生するのかどうかについて解説します。
「民法第903条第4項
婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」
とあります。
つまり今回のケースのように、生前、配偶者に自宅を贈与していても、相続財産の持ち戻し(贈与でもらった住宅を相続財産とすること)は、発生しないことになります。
5.まとめ
今回は、配偶者に自宅を生前贈与した場合について、事例を交えてお話をいたしました。
仮にアイリスに同様のご相談があった場合、情報はすべて開示して、最終判断は、相談者の方に決めていただいております。今まで同じような相談が何件かありましたが、半数の方は費用の面でやめられる方がいました。
一方で、そのまま進められる方もいらっしゃいました。
どちらの方も、その後の相続対策について、熱心に相談されていました。
相続対策は、きっかけがないとなかなか進められないものです。
このように何か一つでも、きっかけがあれば、対策をすることができます。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっております。
必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
遺言書を作成するにあたり、ある相続人に集中して遺産を相続させようとしたときに遺留分の問題が発生する可能性があります。
この場合、ご依頼者から具体的に対策をしたいと相談された場合、どのように対策をするのかについて解説していきたいと思います。
目次
1.遺留分対策のアプローチ
2.遺留分対策①早期の生前贈与
3.遺留分対策➁生前贈与と相続放棄
4.遺留分対策③遺留分の生前放棄
5.遺留分対策④生命保険の活用
6.遺留分対策➄養子縁組制度の活用
7.まとめ
1.遺留分対策のアプローチ
まずは、各相続人に遺留分侵害額がどのくらいになるのかを予め試算します。
その時に取るべき対策のアプローチとして以下の5点が考えられます。
㋐遺留分権利者の特別受益・遺贈する額を増加させることで、遺留分侵害額を減少・消滅させる
※遺留分侵害額の算定で、減産の額を増加させることにより「パターン➁」の状況に持ち込む方法です。
㋑遺留分権利者の権利を相続前又は相続後に遺留分を放棄してもらう
㋒相続人である受遺者の特別受益を対象外にする
㋓遺産そのものを減らし遺留分侵害額を減少・消滅させる
㋔法定相続分を減少させることで遺留分侵害額を減少させる
具体的な対策についてみていきたいと思います。
2.遺留分対策①早期の生前贈与
遺留分侵害額請求の対象となるのは遺贈と贈与になります。
贈与とは遺言書で財産を引き継がせることであり、遺贈は必ず遺留分を計算するうえで対象財産となります。
一方、生前贈与は一定の期間制限があります。この期間制限外での贈与については、遺留分侵害額請求の対象財産とはなりません。
つまり、「一定期間内に行われた贈与が遺留分の対象となる=期間外の贈与は遺留分侵害額請求の対象から除かれる」となります。
この「一定期間」については、相続人と相続人以外で異なってきます。(民法第1044条)
(遺留分算定のための財産の価額に算入される贈与)
※特別受益:自宅購入資金、事業資金、不動産をもらう等の扶養の範囲を超えた資金的援助を受けることを言います。
例えば、12年前に長男が自宅購入資金として2千万円、父親から援助を受けその後相続が発生した場合、この2千万円は、特別受益に該当する贈与とはなりません。
また、遺留分権利者を害すると知ってなされた贈与については、期間制限はなくなりますので注意が必要です。これに該当するかどうかの要件は、
①その贈与が、個人の財産が増加しないという予見があること
➁将来、個人の財産が増加しないという予見があること
→「全く収入が立つ予定がないのに贈与する行為=損害を与えることを知っていた」
と、判断される可能性があります。
ご高齢で定職がない状態での贈与は、該当する可能性があります。
相続はいつ発生するかわかりませんので、できるだけ早期の対策が必要となります。
3.遺留分対策➁生前贈与と相続放棄
遺留分権利者とは、「配偶者」「子供」「直系の親」が該当します。つまり、相続人が対象になります。
そこで、「相続放棄」を検討していきます。
相続放棄した相続人は、初めから相続人ではなかったと扱われます。そうなると、相続人以外の贈与の対象となりますので、相続発生前1年以内のものでなければ遺留分侵害額請求の対象財産ではなくなります。
ただし、この場合も遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与である場合には、この1年という期間制限はなくなってしまいますので注意が必要です。
遺留分権利者により裁判となった場合、この「遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与である」ことの立証責任は遺留分権利者側になりますので、相当困難にはなると思われますので、権利行使されないことが多くあると思われます。
4.遺留分対策③遺留分の生前放棄
相続放棄は、被相続人の生前にはすることができません。
相続を相続人が知ったのち3か月以内にすることができます。しかし、遺留分の放棄は、被相続人の生前であってもすることは可能です。
遺留分対策として、「最も確実な方法」として、生前に相続人となる方と話し合い遺留分を放棄していただく方法があります。
遺言書の相談で最も多い内容が、「どうやって、対象の相続人の方に遺留分を放棄してもらうか」です。
「念書」を書いてもらっていたら大丈夫なのかというお話をされる方もいらっしゃいますが、生前の遺留分放棄の手続きとしては、民法1049条にある通り、「家庭裁判所の許可」がなければ、当該念書に法的な効力はありません。
家庭裁判所の許可を要する理由としては、被相続人による不当な圧力によって、不本意に遺留分の放棄が行われてしまう可能性があるためです。
遺留分権利者が不当に権利を奪われることがないようにとのことで、家庭裁判所で許可を得る要件として次の事項が挙げられます。
①遺留分権利者の自由な意思によること(強制的な遺留分の放棄は不可)
➁遺留分放棄の必要性や合理性が認められること
③遺留分権利者へ十分な代償が行われていること(遺留分に相当する程度の贈与を行うこと)
なお、遺留分を放棄した相続人は、相続人として遺産を相続することができます。この点が相続放棄と大きく異なる点です。
ですので、遺言書を書いて当該相続人への遺産の相続をしないように意思表示しておかなければ、遺留分放棄者は法定相続人として相続財産を相続することとなってしまいます。
5.遺留分対策④生命保険の活用
あらかじめ相続財産に現金・預金が多くある場合には、「生命保険」の活用が考えられます。
生命保険の活用は、相続税対策においても有効ですが、遺留分対策においても有効です。
相続対策に活用する保険は、終身型の死亡保険となります。
被保険者が亡くなったときには、「受取人」に死亡保険金が支払われることになります。
相続対策の生命保険活用する場合の保険料は、一時払いで現金・預金を保険金に変えることができます。
この死亡保険金の大きな特徴は、相続財産として取り扱われないという点があります。
①相続税法上は相続財産とされるので、相続税の課税対象となりますが、「相続人の人数×500万円」の控除の枠があります。
➁相続する上では相続財産から除外されています。つまり、相続財産ではありません。
つまり、死亡保険金は、受取人である相続人固有の財産ということになり、遺産分割協議などなくても、保険証書をもって死亡保険金の受け取りができます。
相続財産ともされていないため、遺留分の対象ともなりません。
生命保険の活用も、過度の利用(遺産総額に対して50%程度)となりますと、相続財産と扱われて、遺留分の対象となる可能性が高いため、利用する割合については注意が必要です。
6.遺留分対策➄養子縁組
養子縁組は、相続税対策にも活用されていますが、遺留分対策にも有効です。養子縁組によって各相続人の遺留分も減少します。
事例で、父親が何もしていない場合、相続分は長男、次男それぞれ2分の1ずつとなり遺留分はそれぞれ4分の1となります。
父親が、長男の配偶者と孫を養子とした場合、各相続分は4分の1となり、それぞれの遺留人は8分の1となります。
相続税の側面でも、相続税の基礎控除(3000万円+法定相続人の数×600万円)で相続人の数が4人としたいところですが、
①実子がいる場合は、養子は1人まで
➁実子がいない場合は、養子は2人まで
この基礎控除の相続人の人数に加えることができます。
一方で、遺産を相続する側面では、人数制限はありません。
相続税の考え方と相続の考え方では、違いがありますので詳しくは各専門家に相談してください。
7.まとめ
遺留分対策のアプローチとして挙げた5つについて、
㋐遺留分権利者の特別受益・遺贈する額を増加させることで、遺留分侵害額を減少・消滅させる
㋑遺留分権利者の権利を相続前又は相続後に遺留分を放棄してもらう
③遺留分の生前放棄(家庭裁判所の許可が必要)、相続発生後は家庭裁判所の許可は不要。
㋒相続人である受遺者の特別受益を対象外にする
①早期の生前贈与、➁生前贈与と相続放棄
㋓遺産そのものを減らし遺留分侵害額を減少・消滅させる
④生命保険の活用
㋔法定相続分を減少させることで遺留分侵害額を減少させる
➄養子縁組活用
位置づけることができます。
㋐については、遺言書内又は、遺産分割協議書内で遺留分額と同等額の財産を分与することで達成することができます。
テクニカルなことは以上ですが、各検討されている方たちの個別の状況に応じて、手段は選ぶべきだと考えております。
テクニカル面ばかり重視しすぎると、家族関係がその後おかしくなったりすることがあります。
「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、各専門家への相談をお勧めいたします。
※内容でも少し触れましたが、「相続」と「相続税」についての考え方が異なる個所があります。
専門家に相談しながら、対策を進めていくことをお勧めいたします。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
「遺留分の生前対策➁」で、遺留分の算定から遺留分侵害額の算定まで解説しております。遺留分侵害額が算定出来ましたら、遺留分権利者による遺留分侵害額請求権の請求ができることになります。その効力範囲などを解説していきます。
目次
1.遺留分侵害額請求権とは
2.遺留分侵害額の請求順
3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲
4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効
5.まとめ
1.遺留分侵害額請求権とは
被相続人が財産を遺留分権利者以外に贈与又は遺贈し,遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合,遺留分権利者は,贈与又は遺贈を受けた者に対し,遺留分を侵害されたとして,その侵害額に相当する金銭の支払を請求することできます。 これを遺留分侵害額の請求といいます。(民法1046条)
遺留分侵害額請求権の法的性質は形成権であることから、受遺者又は受贈者に対する具体的な金銭請求権は、遺留分侵害額請求権を行使して初めて発生することになります。
※形成権:権利者の一方的な意思表示によって現存の権利関係に一定の変更を生じさせる権利のことです。
2.遺留分侵害額の請求順
①受遺者と受贈者がある場合
(受遺者:遺言で遺産を受けた場合、受贈者:生前に贈与を受けた場合)
先に受遺者が負担することとなります。(民法1047条第1項第1号)
➁受遺者が複数ある場合又は、贈与者が複数あるときで贈与が同時に行われた場合
原則:受遺者。受贈者は遺贈・贈与の目的の価額の割合に応じて負担
例外:遺言者がその遺言に別段の意思表示をした時は、その意思に従う
(民法1047条第1項第2号)
③受贈者が複数あるとき(上記➁を除く)
後の受贈者から順次前の受贈者が負担(民法1047条第1項第3号)
※贈与を先にした場合、明確にならない場合があるので、遺贈が先の順位となります。
遺贈は遺言者の死亡により効力を発生するので同時になり、贈与も同時なら価額の割合になります。贈与の場合は、前後関係があるので新しい後の贈与から順番に負担することがルールとして定められています。
※受遺者又は受贈者が無資力(請求時に財産がない状態)で遺留分権利者が満足を得ることができない(金銭債権を回収できない)場合の損失の負担は、遺留分権利者が負担することになります。(民法1047条第4項)つまり、請求しても請求先が無資力なら、次の順位の受遺者、受贈者が負担するのではなく、遺留分権利者自身が負担することになるということです。
3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲
①金銭債権の発生(民法1046条第1項)
※金銭債権が発生するものの、いきなり受遺者に支払えと請求しても、遺贈されたものが不動産などすぐに金銭に変換できないもので、受遺者に資力が乏しかった場合には、裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、金銭支払債務の支払いに係る期限の許与をすることができます。(民法1047条第5項)
➁受遺者又は受贈者が、第三者弁済等により遺留分権利者が負担すべき相続債務を消滅させた場合、遺留分権利者に対する意思表示により、消滅した債務の額の限度において、遺留分侵害額請求権によって負担する債務の消滅を請求することができます。(民法1047条第3項)
※受遺者、受贈者が、遺留分権利者が負うはずだった債務を消滅させたのだから、その分減額してと言える権利です。これも遺留分権利者に受遺者又は受贈者が減額又は消滅させてと意思表示しなければ効力は生じません。
4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効
遺留分侵害額請求は、遺留分権利者から相手方に対する意思表示によって行います。そして、この意思表示は、「裁判上」でも「裁判外」でも構いません。
つまり、単純に相手方に請求すれば、遺留分侵害額請求をしたことになりますので、請求時に金銭債権が発生することになります。
ここで、いつまでも侵害額請求することができるとすると、受遺者や受贈者にとって、いつ請求されるかわからないという不安がずっと続くことになりますので、民法上遺留分侵害額請求権の消滅時効が設けられています。
①遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年(民法1048条前段)
※単に相続開始・贈与・遺贈があったことを知るのみでなく、それが遺留分を侵害し、遺留分侵害額請求を市うべきものであることを知ったときである。(最判昭57.11.12参照)
➁相続開始の時から10年(民法1048条後段)(除斥期間-多数説)
※つまり、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときが相続開始から10年経過していた場合には、もはや請求することはできません。
5.まとめ
遺留分侵害額請求権を行使した場合のルールについて解説してきました。遺留分侵害額請求権は、各相続人に残された最終的に行使できる権利です。他の相続人たちから妨害されないような仕組みになっていますが、権利ですのでいつまでも行使しないと時効にかかってします仕組みもあります。
また、遺留分侵害額請求権の行使につきましては、裁判上、裁判外共に行使することができます。
よくわからない場合には、専門家にご相談ください。
遺言書の相談内容、遺産分割協議でしばしば出てくる「遺留分」。いったい誰が主張でき、どのように具体的な遺留分の価額を算出するのかを解説していきます。
目次
1.遺留分とは
2.遺留分を主張できる相続人とは
3.遺留分の割合
4.遺留分の算定
5.遺留分侵害額の算定
6.まとめ
1.遺留分とは
遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。
遺言書を作成すれば、法定相続人以外の人に全財産を遺贈することもできます。しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得ます。
こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する「遺留分(いりゅうぶん)」という制度が規定されています。
2.遺留分を主張できる相続人とは
兄弟姉妹以外の相続人、すなわち、①子(代襲相続を含む)、➁直系尊属(両親又は祖父母など)、③配偶者です。(民法1042条第1項)
包括受遺者及び、相続欠格・排除・相続放棄により相続権を失った者は、相続人ではないので、遺留分の主張はできません。
3.遺留分の割合
①総体的遺留分として
(1)直系尊属のみが相続人の場合、被相続人の財産の3分の1(民法1042条第1項第1号)
(2)その他の場合、被相続人の財産の2分の1(民法1042条第1項第2号)
➁個別的遺留分とは
遺留分権利者が2人以上いる場合、各人の遺留分を個別的遺留分と呼び、その算定方法は民法1042条第2項が準用する民法900条及び901条の法定相続分になります。
小難しく書いておりますが、①は全体に適用する遺留分割合で、➁が実際、各相続人が主張できる遺留分の割合(法定相続分×総体的遺留分割合)になります。つまり、実務で必要なのは➁になります。
(事例)もし、配偶者と子供2人のうち長男が遺留分を主張する場合、①総体的遺留分は2分の1となります。そして長男の法定相続分は4分の1となるので2分の1×4分の1で8分の1が長男の遺留分になります。
4.遺留分の算定
被相続人が相続開始時に有していた積極財産(不動産、預貯金、動産など)の価格を確定します。
次に加算をすべき項目があります。いわゆる「特別受益」と呼ばれる財産で
(1)相続人以外の者が被相続人から相続開始前1年以内に贈与で受け取った財産
(2)相続人が被相続人から相続開始前10年以内に贈与で受け取った財産
※もし、贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた場合には、期間制限がなくなることに注意が必要です。
具体的に「贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた場合」とは、贈与者に収入がないにもかかわらず多額の財産を贈与する行為などが挙げられます。遺留分対策をする場合には注意が必要です。
※遺留分対策として、相続放棄を利用するケースがあるのも、この特別受益の期間を相続人ではなくなることで、特別受益の算入の期間を10年から1年に短縮できる点にあります。当然こちらも、遺留分権利者を害する行為としてなされたと判断された場合、期間制限はなくなりますので、注意が必要です。
5.遺留分侵害額の算定
遺留分の侵害額の計算
遺留分額から
①減算対象項目
㋐遺留分権利者が受けた特別受益の価額
㋑遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
➁加算対象項目
遺留分権利者が承継する債務の額
を調整することで、遺留分侵害額の算定ができ、これが遺留分侵害額請求権の額となります。
※遺留分権利者が実際に受けた特別受益と遺産については減算し、引き受けた債務については加算とします。
債務を加算すると言われると、遺留分額の算定と逆になっており、なにかこう抵抗感がありますが、遺留分権利者の立場で見ると、自信がもらったものは減算して、負担したものは加算すると考えれば、納得がいくと思います。
6.まとめ
今回は、遺留分について、遺留分を主張できる者と、遺留分の算定方法について解説をいたしました。
相続開始前では、相続後相続人間で争いが起こらないようにするために「遺留分を侵害しない額」までの生前贈与や、この額を想定した遺産分割を記した遺言書の作成などの手法が考えられます。
相続開始後では、遺産分割協議の際に「遺留分侵害額請求」がなされる場合があります。民法改正により、不動産などの分割など行わなくても、金銭によりその額を支払うことになります。
遺留分は相続人に残された最後の権利であるので、侵害した場合には「遺留分侵害額請求権」の行使が認められています。
専門家に相談をして、対策をしましょう。次回は、遺留分の侵害額の計算方法の解説をいたします。
相続登記義務化が施行されましたが、問い合わせ内容に「相続登記義務化の対象は土地だけでしょう」という話をする方がいらっしゃいました。
相続義務化の対象範囲について、再度、お話をしたいと思います。
目次
1.相続登記義務化の発端
2.相続登記義務化の対象範囲
3.まとめ
1.相続登記義務化の発端
Q1.知りませんでした!不動産(土地・建物)の相続登記が義務化されるのはなぜですか?
「相続登記がされないため、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加し、周辺の環境悪化や公共工事の訴外など、社会問題になっています。この問題解決のため、令和3年に法律が改正され、これまで任意だった相続登記が義務化されることになりました。」(法務省パンフレット引用)
東日本大震災後の復興作業の際、土地の所有者を特定するために大変苦労したということがあったみたいです。
実際に、仙台などで各地の司法書士を臨時の公務員として雇い、相続人の調査を行い所有者を特定していったという話を聞きました。そのため、復興作業が大幅に遅れたそうです。
この時問題になったのが、任意である相続登記の放置です。現在、所有者不明土地の面積は、九州と同じ面積だそうです。これが原因となり、今回の相続登記義務化の流れになっています。
2.相続登記義務化の対象範囲
Q2.相続登記の義務化とは、どういう内容ですか?
「相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得できたことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になります。
正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
遺産分割の話し合いで不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、登記をする必要があります。」(法務省パンフレット引用)
Q3.義務化が始まるのはいつからですか?始まった後に、対応すれば大丈夫でしょうか?
「「相続登記の義務化」は、令和6年4月1日から始まります。ただ、今から備えておくことが重要です。
また、令和6年4月1日より以前に相続した不動産も、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります(3年間の猶予期間があります。)ので、要注意です。」(法務省パンフレット引用)
これらの質問で、不動産の対象範囲が土地だけだと勘違いされている方が、意外に多いです。おそらく、相続登記義務化の発端となったのが「所有者不明土地問題」だからだと思いますが、相続登記義務化の対象範囲は、不動産(土地・建物)です。
質問内容にもあったのですが、義務化が始まってからやればいいというお話がありましたが、今元気な方でも、時間の経過により状況は変わってきます。
亡くなった場合には、さらに相続人が増えるケースや、認知症などになってしまい、遺産分割協議の際に成年後見人の申請が必要になったりする場合があります。
相続人の調査や成年後見人を就けるにも、それなりのコストが発生してしまいます。早めの対処が、「安心」をもたらしてくれます。
早めに相続の対応をするように心がけてください。
3.まとめ
「相続登記義務化」のキーワードを知っていても、その中身まで詳しく知っている方はなかなか見たことがありません。
アイリスでも、相続無料相談や相続法律・税務無料相談会、無料セミナーなどを通じて、啓蒙活動を実施しております。
アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。
いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。
ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。
手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)
また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。
こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。
相続登記が義務化されました。相続登記をする際に問題となるのが「遺産分割協議」です。日本国内に、すべての相続人がいる場合でも、その関係性が良くない場合にはトラブルとなるケースはありますが、手続き自体は通常の相続登記と変わりません。しかし、相続人お方が、外国に居住し、なかなか帰国できない場合もあるかと思います。このような場合の相続手続きについて解説いたします。
目次
0.外国で帰化した元日本国籍の方の相続について
1.在外日本人の相続手続について
2.外国に帰化した相続人がいる場合の手続について
3.生前の対策の重要性
4.まとめ
0.外国で帰化した元日本国籍の方の相続について
ここで、前提条件として、亡くなった方(被相続人)は、日本に居住されていた日本人とさせていただきます。被相続人が、外国に行きその国で帰化しているような場合、「法の適用に関する通則法」に、以下のとおり定められています。
「第六節 相続
(相続)
第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。
(遺言)
第三十七条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。
2 遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。」
つまり、相続・遺言に関しては、帰化した外国の法律に従うことになります。
1.在外日本人の相続手続について
日本国籍はそのままで、外国に居住されている方が、相続人の方の中にいる場合についてお話をします。無料相談などで、意外とこの手の相談が多いように感じます。
遺言書がない場合、相続発生後に遺産分割協議をして遺産の分割を行うわけですが、外国に居住する相続人を外して遺産分割協議をすることはできません。法律上、「相続人全員」で協議することになっているためです。
(1)遺産分割協議についての問題点
当然、当該相続人は海外にいるので、対面の協議をする場合、帰国しないとだめになります。しかし、ZOOMなどを利用した、テレビ電話を用いた遺産分割協議も検討する価値はあると思います。アイリスでも、別室(事務所以外の部屋)を利用し、インターネット経由で遺産分割協議ができるようにしています。このように遺産分割協議自体は、帰国しないでも問題なくできますが、さらに問題点は続きます。
(2)相続登記を含む手続きに必要な印鑑証明書と住民票
遺産分割協議書が整えば、これに実印で押印し「印鑑証明書」を添付します。また、当該相続人が日本の不動産を相続により取得する場合、「住民票」が必要となります。
しかし、外国に居住されている日本の方は、「印鑑証明書」・「住民票」共に取得することができません。それでは、通常必要となる書類(印鑑証明書や住民票など)に代わる証明書はどういったものが該当するのでしょうか。
①印鑑証明書に代わる「サイン証明書」
台湾や韓国を除いて、日本以外の国では印鑑証明書や住民票の制度が存在しません。この場合、海外では、実印の代わって署名(サイン)で行いますので、海外にいる相続人は、遺産分割協議書に署名(サイン)を行うことで代替え手段を使います。そして、印鑑証明書の代わり、日本領事館等の在外公館に出向いて遺産分割協議書に相続人が署名した旨の証明(サイン証明)をもらってきて、このサイン証明を遺産分割協議書に添付することで対応します。この場合、遺産分割協議書は、日本にいる相続人も含めた全員分(1通)のものではなく、内容が同じ、サインをする相続人のみの署名欄がある遺産分割協議書にしておきましょう。
➁住民票に代わる「在留証明書」
当該相続人が日本にある不動産を相続する場合、住民票が必要となりますが、先にも書いた通り、住民票は取得できません。ですので、代替え手段である「在留証明書」を取得する必要があります、手続きは、現地の日本領事館にパスポートや運転免許証といった現住所にいつから居住しているのかを証明できる書類を提示することによって申請・取得することができます。
2.外国に帰化した相続人がいる場合の手続について
他国に帰化した人でも、相続人であることを証明する必要があります。日本人であれば、当然のように相続人であることを戸籍で証明することができますが、外国人には戸籍がありません(海外では戸籍制度がない国の方が多い)。
そこで、戸籍に代わって相続人であることを証明する「相続証明書」が必要となります。
この「相続証明書」という証明書が存在するわけではなく、被相続人と当該相続人との関係性を証明する書類になります。例えば「出生証明書」「婚姻証明書」「死亡証明書」等が該当します。
3.生前の対策の重要性
海外にお子様などが居住しており、自分に相続が発生した場合、家族に迷惑がかかるのではないかと不安に感じておられる方も少なくはないと思います。
このような場合、「遺言書」の作成をお勧めします。特に、預貯金や有価証券、不動産の手続きには、遺言書がない場合には、遺産分割協議書が必要となるために、遺産をもらわない海外居住の相続人についても、相続手続きに協力してもらう必要があります。
しかし、遺言書があれば、亡くなった方の死亡を証する除籍謄本と財産をもらう方の戸籍謄本及び住民票(不動産の場合)、があれば、手続きが可能です。
ただし、海外居住する相続人に遺産を渡したい場合には、上記書類が必要となります。
4.まとめ
今回は、海外に居住または帰化した相続人がいるケースについて解説をいたしました。遺言書がない場合、取得しなければならない書類がたくさんあり、その書類を取得するために「日本領事等」に出向かなければなりません。場合によっては、半日かけて日本領事まで出向かなければならないこともあります。
このように、海外とのやり取りや、書類取得の負担を考え、是非「遺言書」を検討されてはどうかと思います。
無料法律相談で内容を精査しますと、一番多いのは、「相続が発生してから、いったい何をしていいのかわからない。」という内容です。相続に必要な手続きを一通りご説明すると、そこから手続きが必要になる場合には、こちらからどのくらいの費用が掛かるのかをお話しするのですが、不動産がなく、相続税の基礎控除内の相談の場合、相談だけで済みケースも多くありませんので、今回まとめてみました。
目次
1.2週間以内にすべきこと
2.3か月以内にできること
3.90日以内にすべきこと
4.4か月以内にすべきこと
5.10か月以内にすべきこと
6.まとめ
1.2週間以内にすべきこと
①死亡診断書の受け取り
医師が「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡した」と認められる場合には「死亡診断書」
上記以外の場合には、「死体検案書」
➁死亡届・火葬許可申請書の提出(7日以内)
※葬儀社によっては、書類一式を用意・代行していただける場合もあります。
死亡届(死亡診断書と一緒の用紙についている)については、記入したものを数枚コピーを何枚かとっておくことをお勧めいたします。死亡保険の請求に使用する場合があるためです。
③世帯主変更届(14日以内) 市町村役場
④健康保険・介護保険の手続き(14日以内)
(国民健康保険の場合)
国民健康保険に加入していた方の場合、亡くなった方の住所地の市町村役場に「資格喪失届」を提出。
亡くなられた方が75歳以上の場合、「後期高齢者医療資格喪失届」を提出します。
返却物として「国民健康保険被保険者証」「国民健康保険高齢受給者証(対象者)」「後期高齢者医療被保険者証(対象者)」
葬祭費の申請をする場合、葬儀の領収書や喪主の通帳などが必要となります。
※通常葬祭費の申請は、窓口で説明があります。3万円から5万円の支給がありますので忘れないようにしましょう。
(健康保険の場合)
会社員や公務員の場合、5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出しますが、会社側で手続きをしていただける場合が多いので会社に相談してみてください。
亡くなった方の健康保険の扶養に入っていた場合、ご自身が国民健康保険に入るか、会社員である他の家族の扶養にはいる必要があります。
(介護保険について)
14日以内に「介護保険資格喪失届」を市町村役場に提出し、介護保険被保険者証を返却します。
➄年金受給停止の手続き(厚生年金の場合10日以内、国民年金の場合には14日以内)
手続の際には、本人確認や押印を求められることがありますので、運転免許証又はマイナンバーカード、認印を所持しておいてください。
未支給年金の請求
亡くなった月の分までの年金を受け取っていないものがある場合、生計を同じくしていた遺族が受け取れます。この請求権の時効は、5年です。
また、「遺族年金の受取」について、年金事務所に相談しましょう。こちらの債権も時効期間は5年となります。
2.3か月以内にできること
相続放棄・限定承認などの手続きの期間となります。
「民法第915条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。 ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」
※限定承認の場合、民法第924条で第915条を準用していますので同じ期間になります。
3.90日以内にすべきこと
もし、相続財産の不動産に地目が「森林」となっているものがある場合、森林法に基づく「森林の土地の所有者届出書」を当該不動産の所在地である市町村役場に届出書を提出する義務がある可能性があります。指定の森林が対象となるので、事前に市町村役場に、当該不動産の森林が対象であるがどうかの確認をしてください。相続の場合、財産分割がされていない場合でも、相続開始の日から90日以内に、法定相続人の共有物として届出をする必要があります。届出をしない、又は虚偽の届出をしたときは、10万円以下の過料が課されることがあります。
※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。
4.4か月以内にすべきこと
所得税の「準確定申告」をすることになります。「準確定申告」とは、被相続人の所得にかかる「所得税」についての手続きで、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの期間に所得が生じた場合において、そ族の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に相続人が行う確定申告のことです。
※詳しくは、税理士の方に相談してください。アイリスでは、税理士のご紹介も可能です。
5.10か月以内にすべきこと
①農地法第3条の3第1項の規定による届出書
相続財産の不動産の地目が「田」・「畑」等の農地である場合、届出が必要になります。
「第六十九条
第三条の三の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。」となりますので、忘れないように届出をしましょう。
※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。
➁相続税の申告・納付
相続税申告の要否について、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」の基礎控除額を相続財産の合計額が超える場合には、相続税の申告が必要となります。
詳しくは、税理士に相談していただきます。香川県高松市の税理士であれば、取引先である税理士の紹介も可能です。
6.まとめ
なかなか、期間別でまとまっている資料が少なかったので、まとめてみました。
相続が発生して、死亡届出等は葬儀社がサポートや代行してくれますが、それ以外の手続きについては、ご自身で行えない場合には、費用なども考慮しながら専門家への相談をしてください。
長年相続登記を放置していた場合に多く見られますが、相続登記に必要な書類の一つである、亡くなった不動産名義人の「住民票の除票の写し」又は「戸籍の附票」が取得できない場合があります。これは、令和元年6月19日までは、「住民票の除票」の保存期間が、消除された日から5年間とされていたため、長年相続登記を放置した場合、取得できないケースも発生することがあります。この場合の対処法として、どのようにすればいいのでしょうか。解説していきます。
目次
1.法定相続情報証明制度を申請する場合
2.相続登記に必要な場合の代替手段
3.まとめ
1.2週間以内にすべきこと
①死亡診断書の受け取り
医師が「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡した」と認められる場合には「死亡診断書」
上記以外の場合には、「死体検案書」
➁死亡届・火葬許可申請書の提出(7日以内)
※葬儀社によっては、書類一式を用意・代行していただける場合もあります。
死亡届(死亡診断書と一緒の用紙についている)については、記入したものを数枚コピーを何枚かとっておくことをお勧めいたします。死亡保険の請求に使用する場合があるためです。
③世帯主変更届(14日以内) 市町村役場
④健康保険・介護保険の手続き(14日以内)
(国民健康保険の場合)
国民健康保険に加入していた方の場合、亡くなった方の住所地の市町村役場に「資格喪失届」を提出。
亡くなられた方が75歳以上の場合、「後期高齢者医療資格喪失届」を提出します。
返却物として「国民健康保険被保険者証」「国民健康保険高齢受給者証(対象者)」「後期高齢者医療被保険者証(対象者)」
葬祭費の申請をする場合、葬儀の領収書や喪主の通帳などが必要となります。
※通常葬祭費の申請は、窓口で説明があります。3万円から5万円の支給がありますので忘れないようにしましょう。
(健康保険の場合)
会社員や公務員の場合、5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出しますが、会社側で手続きをしていただける場合が多いので会社に相談してみてください。
亡くなった方の健康保険の扶養に入っていた場合、ご自身が国民健康保険に入るか、会社員である他の家族の扶養にはいる必要があります。
(介護保険について)
14日以内に「介護保険資格喪失届」を市町村役場に提出し、介護保険被保険者証を返却します。
➄年金受給停止の手続き(厚生年金の場合10日以内、国民年金の場合には14日以内)
手続の際には、本人確認や押印を求められることがありますので、運転免許証又はマイナンバーカード、認印を所持しておいてください。
未支給年金の請求
亡くなった月の分までの年金を受け取っていないものがある場合、生計を同じくしていた遺族が受け取れます。この請求権の時効は、5年です。
また、「遺族年金の受取」について、年金事務所に相談しましょう。こちらの債権も時効期間は5年となります。
2.3か月以内にできること
相続放棄・限定承認などの手続きの期間となります。
「民法第915条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。 ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」
※限定承認の場合、民法第924条で第915条を準用していますので同じ期間になります。
3.90日以内にすべきこと
もし、相続財産の不動産に地目が「森林」となっているものがある場合、森林法に基づく「森林の土地の所有者届出書」を当該不動産の所在地である市町村役場に届出書を提出する義務がある可能性があります。指定の森林が対象となるので、事前に市町村役場に、当該不動産の森林が対象であるがどうかの確認をしてください。相続の場合、財産分割がされていない場合でも、相続開始の日から90日以内に、法定相続人の共有物として届出をする必要があります。届出をしない、又は虚偽の届出をしたときは、10万円以下の過料が課されることがあります。
※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。
4.4か月以内にすべきこと
所得税の「準確定申告」をすることになります。「準確定申告」とは、被相続人の所得にかかる「所得税」についての手続きで、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの期間に所得が生じた場合において、そ族の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に相続人が行う確定申告のことです。
※詳しくは、税理士の方に相談してください。アイリスでは、税理士のご紹介も可能です。
5.10か月以内にすべきこと
①農地法第3条の3第1項の規定による届出書
相続財産の不動産の地目が「田」・「畑」等の農地である場合、届出が必要になります。
「第六十九条
第三条の三の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。」となりますので、忘れないように届出をしましょう。
※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。
➁相続税の申告・納付
相続税申告の要否について、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」の基礎控除額を相続財産の合計額が超える場合には、相続税の申告が必要となります。
詳しくは、税理士に相談していただきます。香川県高松市の税理士であれば、取引先である税理士の紹介も可能です。
6.まとめ
なかなか、期間別でまとまっている資料が少なかったので、まとめてみました。
相続が発生して、死亡届出等は葬儀社がサポートや代行してくれますが、それ以外の手続きについては、ご自身で行えない場合には、費用なども考慮しながら専門家への相談をしてください。
法定相続情報証明制度を利用する場合、戸籍全部事項証明書、除籍謄本、改正原戸籍謄本などを取得する必要があります。多いときで10通を有に超える場合もあります。この戸籍の束をもって、各金融機関に名義変更や解約の手続きに持参するのは、非常に手間であるため、法定相続情報証明制度が、平成29年5月29日に実施されました。
この法定相続情報証明制度で証明されるのは、原則「戸籍類」の法定相続関係の証明です。住所は任意での申請になりますが、申請人の本人確認として、住民票の写しが必要になってきますので、少なくとも申請人に関しては住民票が必要になります。
任意で住所も法定相続情報証明に記載してもらうためには、それぞれ相続人の住民票、被相続人の除票が必要となります。ここで注意しなければならないのは、申請人の本人確認のために提出する住民票を原本でかねてしまいますと、法務局に申請人の住民票を取得されてしまいますので、コピーに原本に相違ない旨を記載し署名押印したものも併せて提出する点です。
先ほども書きましたように、法定相続情報証明制度で証明できる内容は、戸籍に記載されている法定相続情報がメインとなりますので、被相続人の除票や戸籍の附票がない場合、「最後の本籍」の項目で事足ります。
それでは、相続登記の必要書類としての住民票の除票や戸籍の附票が取得できない場合どのようにすればいいのでしょうか?
登記官が不動産の所有者の名義の同一性を確認するために「氏名」「住所」で特定します。つまり、被相続人の最後の住所と不動産名義の住所が一致しており、氏名も同じであれば同一人物との判断をしてもらえます。しかし、住所が異なる場合には注意が必要です。最後の住所の一つ前の住所であれば、住民票の除票に「前住所の表記」で確認をすることができます。しかし、それより前の住所が登記簿に記録されている場合、住民票の除票が使えません。その場合は、戸籍の附票を使って特定していきます。
しかし、令和元年6月20日以前に廃棄された場合、「除票」も「戸籍の附票」も取得はできません。この場合、以下の方法で登記官に同一性を認めていただく必要があります。
①権利証(登記済証)
権利証は、不動産に権利があることを証明する書類だからです。通常、相続登記では権利証を提出する必要はありません。相続は、相続の発生という事実の発生によって登記申請をします。不動産の持ち主は死亡した被相続人なので意思確認をしたくてもできません。
ですので、不動産の持ち主の意思を確認する必要がなく、権利証を用意する必要がないのです。権利証を提出不要にする代わりに、事実の発生を証明する戸籍謄本等を提出する必要があります。被相続人の住所の移り変わりを証明することができない場合、権利証を提出して登記簿に書いてある人であると証明することができます。被相続人の権利証を提出した場合、被相続人の住所の移り変わりを証明していませんが、権利者であると証明したことになります。
➁上申書
権利証は紛失しても再発行されません。通常は大切に保管して簡単に人目にさらしたりしないものですが、相続など大切な場面で見つけることができなくなることは多々あります。被相続人が保管していた場合、保管場所を共有していない家族が見つけられなくなるのです。権利証が見つけられない場合、権利証を提出して権利者であることを証明することはできません。権利証を提出することができない場合、相続人全員からの印鑑証明書付き上申書を提出します。上申書は「不動産の所有者は被相続人に間違いありません」という法務局宛てのお願いです。相続人全員とは、遺産分割協議に参加するべき人全員です。その財産を相続する人だけではありませんので、注意が必要です。その財産を受け取らないけど他の財産を相続する人など遺産分割協議に参加するべき人全員から上申書を提出します。遺産分割協議に参加するべき人全員が、実印で押印し印鑑証明書を添付します。印鑑証明書について期間制限はないので、古いものでも差し支えありません。
法務局によっては、上申書の他に不在住証明書や不在籍証明書が必要になります。固定資産税の納税証明書の提出が求められる場合があります。固定資産税は、一般的に所有者が負担するものだからです。固定資産税を負担していた場合、所有者であったと認めてもらいやすくなります。住所がつながらない場合などイレギュラーな場合の取り扱いは、管轄の法務局によって異なる場合があります。必ず、管轄法務局に確認をするようにしてください。
③被相続人の本籍と登記上の住所が一致する場合は住民票の除票は不要
本籍地と登記上の住所が一致する場合、法務局は同一人物と認めてくれます。あらためて、住民票の除票を提出する必要はありません。
3.まとめ
このように、相続登記を長年放置した場合、相続登記に必要な書類がすでに廃棄されているケースが少なくありません。早めの相続登記を心掛けるようにしてください。
相続登記義務化が始まり、相談件数、ご依頼の件数が増加しております。相談者の中に、「義務化はわかるのだが、相続登記を急ぐ意味がよく分からない」という方がいらっしゃいました。被相続人の方や相続人の状況によっては一刻を争う事態であることも少なからずありますので、解説していきたいと思います。
目次
1.民法177条の意味
2.遺言・遺産分割協議と債権者の関係
3.まとめ
1.民法177条の意味
民法177条では
「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定されています。
つまり、正当な所有者であることを明示したいのであれば、不動産登記をしなければ第三者に対抗することはできないということです。商業登記(会社法人の登記)は、登記をすることは義務ですが、不動産登記については、現状では義務ではありません。その代わり、所有権を争う第三者が先に登記を具備してしまった場合、もう対抗する手段はないというわけですので、自己の権利主張のために登記を入れなさいというのが建前です。
その結果、第三者をあまり意識する必要のない相続登記について放置しているケースが横行し、結果、東日本大震災の復興において、大きな妨げになったため、今回の相続登記義務化の流れができたと言われています。義務化になっても相続を知ってから3年以内に登記をすれば、罰則である過料はかかりません。それでは、3年間放置しておいても問題ないのかと言われると、実はそうではないケースも多く存在します。
相続人の債権者(相続人の一人が借金をしている先)がおり、借金も相当額ある場合、債権者には債務を取り立てる正当な権利があります。その場合、代位登記で法定相続分にて相続登記を代位で行い、さらに債務者である相続人の持分を差し押さえることができてしまいます。
特定財産承継遺言(民法1014条2項)、民法改正前に「相続させる旨の遺言」と呼ばれていた遺言です。従前はこの遺言をした場合、第三者が登記を入れた場合でも、遺言で指定されている相続人が所有権の全部を主張できていましたが、現在では変わっております。上記のような状況になった場合、仮に当該不動産全部の遺言指定がなされていたとしても、債権者の登記が先の場合、指定された相続人は債権者に対して、法定相続分の権利しか主張できません。つまり、取り戻すために債権者と交渉し、債務者である相続人の持分を取り戻すしか方法がなくなります。先に指定相続人が相続登記をしておけば、債権者は代位で相続登記ができません。
また、持分を対象に買い取りをする業者も存在ます。持分だけでは、その全体の不動産を利用することは困難ですので、不動産価値の持分分の価格より買いたたいて仕入れます。その後、「共有物分割請求」をして持分分の価格を回収しようとします。
このように、状況次第とはなりますが、相続登記を遅らせたために、正当な権利を持つ第三者により登記されてしまいますと、自身の法定相続分の持分の権利しか主張できなくなってしまいます。特定財産承継遺言がある場合には、司法書士に早めの相談をした方がいいと思います。
相続登記義務化に注目が集まっていますが、本来相続登記はしておかないと、様々な場面で不利益が発生する恐れが潜在化します。
「法定相続情報証明制度」とは、相続登記に必要な戸籍や住民票を法務局に申請し、取得できる書類になります。「法定相続証明情報」を活用し、預金の名義変更・解約、相続登記に添付する戸籍の代わりに提出することができます。すでに制度が始まり数年が経過していますが、改めて、取得方法についてまとめてみたいと思います。
目次
1.法定相続情報証明制度とは
2.法定相続情報証明一覧図の申請書
3.申請書に添付する書類について
4.申請窓口
5.注意する点
法定相続情報証明制度(ほうていそうぞくじょうほうしょうめいせいど)は、日本の相続手続きにおいて、相続人が相続財産についての情報を証明するための制度です。この制度は、相続人が法務局に提出する「法定相続情報証明書」に基づいています。
法定相続情報証明書は、相続人が相続財産の内容や詳細な情報を記載した文書であり、これによって相続手続きが円滑に進むことが期待されています。
2.法定相続情報証明一覧図の申請書
①被相続人の表示(氏名、最後の住所、生年月日、死亡年月日)
➁申出人の表示(住所、氏名、連絡先、被相続人との続柄)
③代理人の表示(住所(事務所)、氏名、連絡先、申出人との関係)
④利用目的(不動産登記、預貯金の払い戻し、相続税の申告、年金等手続、その他 から選択)
➄必要な写しの通数・交付方法
⑥被相続人名義の不動産の有無(有・無、有の場合には不動産の所在又は不動産番号)
※不動産は、申請書を提出する法務局の管轄内にある不動産であることが必要です。記載する不動産は、複数ある場合は、そのうちの一つの未記載で大丈夫です。
⑦申し出先登記所の種別(被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地 のいずれかを選択)
(必ず用意する書類)
①被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸除籍謄本
➁被相続人(亡くなられた方)の住民票の除票
③相続人の戸籍謄抄本
④申出人の氏名。住所を確認することができる公的書類
(運転免許証の表裏面のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票の写し)
※これらのコピーには、「原本と相違ない旨」を記載し、申出人の記名をしなければなりません。
(必要となる場合がある書類)
➄法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合(任意です)各相続人の住民票の写し
⑥委任による代理人が申し出の手続きをする場合
㋐委任状
㋑(親族が代理をする場合)申出人と代理人が親族関係にあることがわかる戸籍謄本
㋒(資格者代理人が代理する場合)資格者代理人団体所定の身分証明書の写し等
⑦➁の住民票の除票を取得することができない場合の戸籍の附票
申請窓口は、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地のいずれかに該当する管轄法務局に提出をします。
申請後、法定相続情報一覧図の再発行を申請する場合、利用しやすい申出人の住所地の法務局に申請することをお勧めいたします。
5.注意する点
注意する点として2点あります。
まず一点目は、提出する相続情報一覧図(申請人もしくは代理人が作成するもの)で、相続人が縦に記載されている場合、一番下の相続人の下部に「以下余白」の文字を記載することが必要です。私が使っている作成ソフトでは、この「以下余白」の記載が出力されませんので、ワード出力後に編集をしています。
次に、相続人の情報に住所を記載するために「住民票の写し」を添付することになるのですが、申出人の氏名・住所を確認しることができる公的書類にも「住民票の写し」が含まれており、兼用することも可能なのですが、兼用した場合、申出人の住民票の写しが証明情報として法務局に取得されてしまい還付されません。この場合、申出人の住民票の写しのコピーを作成し、「原本と相違がない旨」を記載し、氏名、押印をして添付することで、原本の申出人の住民票の写しが還付されることになります。返却されなかった場合、せっかく取得した申出人の住民票の写しを再度市役所等で取得しなければならなくなりますので、注意が必要です。
令和6年4月1日(ブログアップ日)、相続登記が義務化されました。もう一度相続登記義務化について、アナウンスしたいと思います。今後の法改正等により、今回の相続登記義務化だけでなく、相続登記を放置することによる罰則が強化する可能性もあります。早めの対策をすることで、「安心」して不動産を後世に繋ぐことができます。
目次
1.相続登記義務化の内容
2.相続登記をしないことによるデメリット
3.相続人申告登記
4.まとめ
1.相続登記義務化の内容
2024年(令和6年)4月1日に、相続登記が義務化されます。不動産を相続したことを知ったときから、3年以内に相続登記をしなければ、「10万円以下の過料」が科せられます。
また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。(法務局2022年12月27日発表では、施行日は今後決定されます。)
というのが概要です。
改正前だと相続登記は義務ではありませんでした。このため、相続登記が放置され何世代にもわたり相続が発生した場合、相続人の人数が増え特定するために相当の時間を費やす、もしくは特定できないといった状態が発生しています。この状態になりますと、不動産を処分や管理しようと思っても、それができないといったことが発生してしまうことになります。
相続登記が実施できていない不動産について相続登記を推進するために今回の改正となりました。
「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知ったときから3年以内に相続登記」となっています。
相続人に対する遺贈・相続させる旨の遺言がある場合でも同様に3年以内に相続登記をしなければ過料の対象となります。
2.相続登記をしないことによるデメリット
相続登記義務化により、「正当な理由」なく相続登記を怠った場合の法律上の罰則は、「最大10万円以下の過料」です。しかし、相続登記をしないことによるデメリットは、過料以外にもあります。
①処分できない
処分するためには、当該不動産の名義人を明示する必要があります。最終的に売却することになっても、亡くなった方相手に売買契約はできません。権利関係が明確にできない状態で、処分することはできないということです。そのためにはどうしても、相続登記をして、現存する名義人に変更しておかなければなりません。
➁権利関係が複雑になる
戦後民法は、遺言書がない場合、相続人全員に相続の権利があるとしています。ですので、数代にわたり相続登記を放置していた場合、権利関係が複雑になり、相続人の調査だけで、相当な費用が発生してしまいます。また、名義人となる方に名義変更を行うには、相続人全員と遺産分割協議をする必要があります。仮に、法定相続人全員の持分ごとの相続登記をしたとしても、処分する場合には、その全員と相手方で手続きをすることになります。いずれにしても、相続人全員を特定する必要があります。
③共同相続人の中にお金に困っている方がいた場合
先ほども話をしましたが、遺産分割協議で特定の相続人に名義を変更するそ族登記と、法定相続人の持ち分に応じた相続登記、どちらもすることもできます。しかし、㋐借金に窮している相続人の債権者が「代位による登記」にて、法定相続登記を行い、その持分に抵当権を設定したり、㋑当該相続人が不動産の持分を持分買い取り業者に売却してしまうこともあり得ます。
もし、㋑が発生した場合、他の相続人にできる相続分の取戻権があります。
「(相続分の取戻権)
民法 第九百五条 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。」
とあり、1ケ月を過ぎますと、権利行使できなくなってしまいます。その後、共有持分を得た業者は、「共有物分割請求」をしてくる可能性があります。
共有持分の買取価格は、仮に3000万円の3分の1の持分を売却しても、1000万円にはなりません。相当低い価格になってしまいます。業者は、共有物分割請求をすることで、1000万円を回収しようとするでしょう。そうやって、業者が儲けているわけです。
3.相続人申告登記
過料を免れる制度として「相続人申告登記」があります。
4.まとめ
施行されました相続登記義務化について、その制度と罰則の過料、過料の免れる方法をお話してきました。そして、相続登記をしないことによるデメリットについても触れました。
今後、ニュースなどによりますと、国や行政の対策に所有者が協力する努力義務が課され用としています。つまり、不動産の所有者に対する責任を増やしていく施策が検討されています。そうなってきますと、使わない家族の不動産を早く手放したいと思う方もいるかもしれませんが、このような処分をするにも、「相続登記」をしておかなければ、何もできない状態になってしまいます。早めの相続登記をしておくことが、何をするにしても重要になります。
今までに何度か相続人が音信不通となっているケースがありました。音信不通と言っても、住所や居住場所が特定されている場合には、何とか連絡をする方法はあるのですが、中には戸籍などからは追えず、他の相続人も今まで何の連絡もないと話している場合には、どのように遺産分割協議を進めていけばよいのでしょうか。
目次
1.遺産分割協議を成立する要件
2.住所・連絡先が分からない場合
3.連絡をしても何も返信がない場合(拒否している場合を含む)
4.完全に行方不明の場合
5.まとめ
1.遺産分割協議を成立する要件
相続財産の分配方法を決めるためには遺産分割協議が必要です。この遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければならず、誰か一人でも欠けた状態で行われた協議は無効となります。相続登記においても法定相続人全員が記名し実印にて捺印した遺産分割協議書と印鑑証明書の添付が必要となります。
つまり「相続人全員」でなければ、遺産分割協議は無効となります。ですが、行方不明など連絡がつかなかったり所在がわからない場合にはどうすればいいのでしょうか。
2.住所・連絡先が分からない場合
疎遠になった相続人の住所を調べる方法として、戸籍の附票を確認することで確認できる場合があります。ただし、本籍地で取得ができますので、調査が必要となるかもしれません。相続人の調査として、弁護士、司法書士、行政書士にお願いすると、「職務上請求」をすることにより調査が可能です。勿論、調査を要する他の相続人の方でも窓口で取得することができます。
所在が明らかとなっても、その方が応じてくれるかどうかはわかりません。
3.連絡をしても何も返信がない場合(拒否している場合を含む)
何かしらの理由で連絡しても応答してもらえない、または話し合いを拒否されてしまう場合には家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるという手段があります。調停を申し立てると家庭裁判所から呼び出し状が送達されるので、家庭裁判所で話し合いを行い、遺産分割を成立させることになります。
しかし、いきなり家庭裁判所に調停を申し立てると、「なぜ返信しないのか」「なぜ拒否するのか」といったことが、法廷での話し合いの場で明らかになるので、話し合いがこじれるかもしれません。このケースではトラブルに発展する場合が多いので、自身でもしくは代理人として依頼した弁護士に内容証明郵便で、調停の手続きに入る前に解決できるかどうか探ってみた方がいいと思います。
4.住居すらわからない行方不明の場合
戸籍の附票などに記載された住所には存在せず、どこで暮らしているかも分からず、連絡手段もない状態になってしまっている場合、遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要があるので、相続人の中に不在者がいる場合にはこれを行うことができません。
この場合には、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることで、その管理人を含めて遺産分割協議をすることができます。不在者財産管理人の申立ては、利害関係人または検察官が家庭裁判所に対して行いますが、相続人の一部が不在者の場合には他の相続人が利害関係人に該当するのでこの申立てを行うことができます。
家庭裁判所が介在するので、仮に行方不明者をないがしろにしたような遺産分割協議の場合、家庭裁判所が許可を出さない可能性もありますので、注意が必要です。
また、失踪宣告を活用する場合もあります。失踪宣告とは、不在者についてその生死が7年間明らかでないときに、家庭裁判所の審判によって法律上死亡したものとみなす制度です。
※戦時中の死亡宣告の制度もあり、こちらは戸籍を確認すると記載されています。
5.まとめ
このように、行方不明でもその状況次第で対応する手法が変わってきます。
連絡が着く状態であれば、できる限り穏便に話を進めることを心掛けてください。
また、どの状況にあるのかわからない場合には、専門家に相談をすることをお勧めいたします。どのような資料を取得して調査するのか、相続専門の専門家なら答えを持っているはずです。そしてその後の対応についてもアドバイスをしていただけると思います。
複数の会社経営をしていたAさんが亡くなり、配偶者と子供2人いました。さて、どのように相続すればいいのか、という問題になってきます。一般の方であれば、遺産分配を遺産分割協議を経て決めていただく必要があるのですが、経営者が保有する「株式の評価」によっては、様々な問題が発生してきます。また、不動産が経営者の個人名義であった場合にも、事業継続そのものに問題が発生するケースもあります。
目次
1.会社経営者Aさんの相続発生
2.会社継続に留意しなければならない理由(株式の分散防止)
3.建物は法人所有だが土地が経営者個人名義の場合の問題点
4.まとめ
1.会社経営者Aさんの相続発生
まずは、遺言書の有無の確認が必要です。遺言書があれば、その内容に従って遺産を分割することになります。しかし、遺言書がなかった場合、遺産の範囲を見ていかなければなりません。
遺言書の有無にかかわらず、遺産の範囲とその額の確定作業は、専門家に任せた方がいい場面です。総合的に課税される相続税を想定しながら、遺産をどのように配分すればいいのかを相続専門の税理士先生に確認し、Aさん名義の預金、有価証券、保険、保有株式、不動産、動産の額を確定していきます。特に時間を要するのが、経営者Aさんの保有する自社の株式の1株当たりの純資産の評価のために、3期分の決算書などが必要となってきます。
そして、遺言書の内容又は遺産分割協議の内容に従って、遺産を分配することになるのですが、不動産の名義の変更や法人の代表者の変更は、司法書士が対応することになります。
2.会社継続に留意しなければならない理由(株式の分散防止)
法人の役員変更の内容については相続人の方に決めていただく必要があります。法人の事業を引き継ぐ意思の確認やその素養なんかも踏まえて決めていただく必要があります。
事業を引き継ぐ意思があっても素養がなければ、事業を承継しても経営ができない可能性があるからです。ここはじっくり話し合って決めていただくようにしています。
そして一番の問題は、経営者が保有していた株式を誰に引き継がせるかという点。特に株式会社では、「所有」と「経営」が分離しています。「経営」の面は、先ほど話した事業を引き継ぐ相続人の意思と素養なのですが、株式は株式会社の「所有」を意味しています。
例えば、定款の目的の内容を変えて、新規事業を始めたいと思った場合、「株主総会の特別決議」が必要となりますが、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が要件となります。経営者が保有していた株式を分散させてしまいますと、意見の対立が起こった場合、この要件を充たすことができず、定款変更すらできない状態に陥るリスクがあります。
3.建物は法人所有だが土地が経営者個人名義の場合の問題点
以前、県外の方で、酒造会社の経営者が亡くなり、工場は法人名義でしたが、土地が経営者の個人名義でした。会社を弟が引き継ぐことになったことに対して相続人間(子供である兄弟)で争いになり、結局、法定相続分(各2分の1)で土地名義を変更することになりました。その後、兄の方から「共有物分割請求」をされてしまい、土地の価額の半分を支弁できなかった弟は、工場を撤去して土地を現物分割することになってしまいました。つまり、事業継続できなかったということになります。
※知り合いの税理士の先生に確認すると、実は、土地を個人名義、建物を法人名義にして、土地を法人に貸し出す形にすることにより、税金対策として良く用いられる手法であることを聞きました。
4.まとめ
経営者の相続に関してお話をしてきました。ポイントは「自社の保有株式の分散防止」と会社の工場などに関連する不動産で、「個人名義の不動産を生前に法人名義に変えておく」などの対処法を考える必要があるかと思います。
生前、相続税対策として、個人名義で賃貸マンションを購入し、金融機関から融資を受けているケースについての相続を考えてみます。物件価格が高額で融資額が大きいと「相続税対策」として、事前に税理士などのアドバイスを受けて購入している場合が多いです。このような収益物件がある場合について、お話をしていきたいと思います。
目次
1.個人名義で賃貸不動産を購入すると相続税対策になる?
2.収益物件の相続手続き
3.収益物件が相続発生年内に新築されている場合の注意点
4.ローンが残っている時の注意点
5.まとめ
1.個人名義で賃貸不動産を購入すると相続税対策になる?
アパートのような収益物件は、相続税評価額がかなり低くなる点が大きなメリットです。アパート等の不動産の相続税評価額は一定のルールに基づいて計算され、時価(実際の価値)の30~50%程度になるので、節税になります。
新築の場合でも、金融機関からの融資を受けた場合、新築の収益物件とローンが残りますので、その差額で相続税対策をしているケースもあります。
2.収益物件の相続手続き
まずは大きく以下の手順が必要です。
①相続登記する。
名義を亡くなった方から、相続人のどなたかに名義を変更する必要があります。
➁管理会社に連絡し、入居者に通知する。
管理契約の当事者が亡くなっていますので、基本的に物件を引き継いだ相続人と管理契約を取り交わす必要があるためです。また、アパートの所有者が変わったことを入居者に通知し、賃料の支払先を変更する必要がある場合があります。
③アパートローンがある場合は金融機関に相談する。
アパートローンに「団体信用生命保険」が付いている場合には、借りた人が亡くなると保険金でローンが返済されます。
相続税の節税目的で建てられたアパートの場合には、借入金があれば相続税評価額を圧縮できるので、団体信用生命保険は付けていないことが多いです。団体信用生命保険なしのアパートローンで、ローン残高が残る場合には、今後の支払いについて金融機関と相談し、契約を引き継ぐ手続きを行います。
④準確定申告を4ヶ月以内に行う
亡くなった人の不動産収入について、相続人が代わりに申告・納税を行う必要があります。これを準確定申告といいます。通常の確定申告は、1年分を翌年の2月16日から3月15日までに手続きしますが、準確定申告は特別に、相続を知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があるのでご注意ください。
➄相続税を10ヶ月以内に申告する
相続税がかかる場合には、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税します。
3.収益物件が相続発生年内に新築されている場合の注意点
2①の相続登記をする場合、亡くなった年の新築物件は、固定資産税評価証明書には記載されません。固定資産税の評価額は、その年の1月1日時点の物件について評価額が記載されるためです。それでは、どのように新築物件の評価額を出せばいいのかと言いますと、「○〇法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表」を参照します。建物を新築した場合も、所有権保存登記の登録免許税の計算に使用される価格基準になります。物件の登記簿の「種類」「構造」から、1㎡あたりの単価を見つけて、登記簿の床面積を乗じた数値を評価額として計算します。
4.ローンが残っている時の注意点
アパートのローンを残したまま親が亡くなってしまった場合、遺産分割協議の前に連帯保証人が誰か確認します。連帯保証人の銀行の審査基準は、法定相続人であること、または事業継承ができる見込みのある人である場合が多いです。やはり、資力のない方への変更は、金融機関側が拒否する可能性があります。
また、連帯保証人が相続人であった場合、ローンが残っているアパートの相続放棄ができません。当該相続人の方は、亡くなった主債務者と同等の責任をもって、ローンを返済する必要があるためです。どうしても、アパートの経営やローンの返済をやめたい場合は、該当のアパートを売却するしかないでしょう。
5.まとめ
このように、収益物件を相続する際には、様々な手続きや注意点が存在します。
令和6年4月1日から相続登記義務化が始まります。それまでは任意だった相続登記なのですが、相続登記をしないとどうなるのでしょうか。事例を交えながら、わかりやすく解説していきます。
目次
1.相続登記義務化とは
2.相続登記をしないとどうなる
3.相続登記義務化の過料だけじゃない
4.まとめ
1.相続登記義務化とは
2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まります。いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。
「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用
2.相続登記をしないとどうなる
今回の相続登記義務化における法律の改正では、相続登記義務化に対する罰則は、10万円以下の過料となっています。
「なんだ、10万円払えばいいんじゃないの。」と思われるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。
また、「相続人申告制度」という制度があり、こちらをすることで過料を免れることはできますが、「相続登記をしないこと」の問題点は、過料だけではありません。
3.相続登記の問題は義務化の過料だけじゃない
相続登記をしないということは、当該不動産の名義人が亡くなった方のまま放置されるということを意味します。放置している間に相続が数次的に発生した場合、現行の民法では、相続人と数次相続が発生した方たちの相続人も権利関係者となります。東京近郊の空き家の相続関係者が100人にも上るという記事を見かけたことがあります。この100人の権利者間で、法定相続分で相続登記を行うか、遺産分割協議をして相続人の一人に不動産を帰属させて、相続登記はできません。
それでは、相続登記をしないとどうなるのかと言いますと、その朽ち果てた建物を処分できません。共有の問題で、処分行為をする場合には、共有者全員の同意を要するからです。
これらのことが面倒だからと言って、放置していた場合、さらに深刻な問題が発生いたします。それが「所有者責任」です。不動産に限らず、ものを所有するということは、その管理責任は所有者にあります。しかも「無過失責任(過失があろうとなかろうと責任を負うことになる)」です。不動産を相続登記せずに放置した場合、老朽化や管理不全のために放置された状態であったために、第三者が不利益を被った場合、と書くと難しくなりますので、例えば、管理ができていなかった家の外壁が崩れて、誰かが死傷した場合、その責任を所有者が負うということです。名義人が既に死亡していた場合も、その相続人が責任を負うことになります。相続というのは、亡くなったからの権利義務をすべて引き継ぐからです。
こういった問題が常に付きまとう状況となりますので、やはり相続登記は早めに行い、使わない不動産は、早期の処分を行うことをお勧めいたします。
4.まとめ
相続登記義務化に関して「しないとどうなる」という観点からお話をさせて頂きました。相談者の方も、罰則である「過料」についてよくご存じなのですが、「所有者責任」を知っている方は、ほとんどいません。相続登記を放置して、自身がまだ済んでいる状態なら管理もできると思いますが、すでに相続人と別居していて、戻ってくる予定もないような場合ですと、相続登記が未了の場合、処分ができませんので、早急に相続登記をして、家族で話し合いの場を持ち、その処分について話し合ってみてはいかがでしょうか。
相続登記義務化は、所有者不明土地問題から議論され出てきたものです。義務化されたことで罰則である「過料」が設定されました。一定の要件を充たすことで、過料を免れることとはなるのですが、その後、相続登記の義務まで免れるわけではありません。他にどのような手段があるのでしょうか。相続登記義務化の罰則である過料を免れる方法として、簡素化した手続きの「相続人申告登記」があります。過料は免れますが、他に問題はないのでしょうか?
目次
1.相続登記義務化
2.過料を免れるための「相続人申告登記」
3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・
4.まとめ
1.相続登記義務化2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まります。いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。
「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用
2.過料を免れるための「相続人申告登記」
「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
4.まとめ
「相続人申告登記」は、相続登記義務化の過料を免れるためには、有効な手段となりますが、相続登記自体を免れるわけではないので、注意が必要です。
相続登記自体を免れないとは、例えば、相続した不動産が、すでに誰もすまなくなってしまっているような場合、「売却」を考えている方もいらっしゃると思いますが、こういった不動産の処分をするためには、相続登記を経て行わなければならなくなるためです。
早めの対策・対応をとることが相続を円滑に進めるコツだと考えます。
令和6年4月1日に始まる「相続登記義務化」の罰則である最大10万円以下の過料。この過料を免れる要件と、この要件に該当しない場合の回避方法を解説いたします。もちろん、相続登記を早期に済ませておけば、過料の対象とはなりません。また、相続登記そのものをせずに過料を回避しても問題点が残ってしまいますので、そちらも併せて解説いたします。
目次
1.相続登記義務化とは
2.相続登記義務化の過料が科される場合
3.相続登記義務化の過料を免れる場合
4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法
5.まとめ
1.相続登記義務化とは
相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行) 相続により(遺言による場合を含みます。) 不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。
また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。(法務省HP引用)
2.相続登記義務化の過料が科される場合
正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。
3.相続登記義務化の過料を免れる正当事由とは
※正当な理由の例
(1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
(2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
(3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
(4)経済的に困窮している場合
などが挙げられています。
4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法
「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
5.まとめ
最近の法律相談で相続登記義務化についてのご質問が増加してきておりますので、今回、過去の記事からの抜粋で「過料の回避方法」にスポットを当てて解説いたしました。
相続登記義務化の罰則である過料を免れる方法として、
①相続発生後、3年以内に相続登記を実施する
➁相続人申告登記を実施する
がありますが、①の遺産分割をしない法定相続分での登記は共有関係となるためお勧めできません。➁の相続人申告登記も相続登記義務化は免れますが、この後売買する場合には相続登記が必要となります。
司法書士が、相続登記を受任して調査すると、複数世代にわたって相続登記をしていない建物のケースが10件に3件ほどありました。未登記の建物は、役所に届出をすればいいのですが、そもそも建物を新築する場合には、1か月以内に表題登記をしなければならないと規定されているため、厳密にいえば違法状態だといえます。表題登記のみの建物も散見されるのですが、相続人の調査が膨大になり、そのままになっているケースもありました。
今後、おそらくこのような建物も対象になってくる可能性があるかもしれませんね。
令和6年4月1日より始まる相続登記義務化について、罰則である過料。すでに法務省よりその過料の運用方針が示されています。相続登記義務に違反した場合の過料の運用方法や、免れるための「正当な事由」とは何かについて解説します。
目次
1.はじめに
2.相続登記義務化による過料の要件
3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン
4.①過料通知およびこれに先立つ催告
5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法
6.③「正当な理由」があると認められる場合
7.まとめ
1.はじめに
2024年4月1日より相続登記義務化がスタートします。不動産を取得した相続人に、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を義務化するものであり、正当な理由がないのに申請を怠ると10万円以下の過料の可能性があります。今回の解説は、2023年3月23日、法務省が過料の運用方針を発表しましたので、その内容となります。
2.相続登記義務化による過料の要件
相続登記義務化により、以下の2つの要件を満たす必要があります。
①「相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならない。」
➁「遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない。」
※①で法定相続分で登記を入れた共有状態で、その後遺産分割により当該相続人の一人に相続させ、移転登記をする場合でも、遺産分割から3年間以内にその登記をしなければならないということになります。
正当な理由がないのに、①又は➁の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用多少になります。
3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン
2023年3月23日、法務省が、相続登記義務化に際して、予定している運用上の取扱い等を「相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン」として発表されました。
相続登記の申請義務化の運用方針の決定したものであり、以下の内容があります。
①過料通知およびこれに先立つ催告
➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法
③「正当な理由」があると認められる場合
が定められています。
4.①過料通知およびこれに先立つ催告
相続登記を怠っている者を登記官が把握し、まず、法務局から当該相続人に対し催告が(相続登記を促す手紙)なされます。これに応じて相続登記をした場合は、「過料事件」の裁判所への通知はされません。
しかし、催告があっても相続登記をしなかった場合、法務局から裁判所へ過料事件の通知がなされます。そして、裁判所で要件に該当するか否かを判断して、過料を科する旨の裁判することになります。
5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法
登記官が登記審査の過程等で把握した情報により行うこととなります。
➁―1相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権に浮いても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき
➁―2相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産を所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨の記載がされていたとき
※つまり、相続登記申請時に添付する「遺言書」「遺産分割協議書」に他の不動産の帰属先が記載されていた場合に、それを参考にして判断するということを言っています。
6.③「正当な理由」があると認められる場合
③―1数次相続が発生して相続人が極めて多数に上がり、かつ、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
③―2遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合
③―3相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
③―4相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶ恐れがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
③―5相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合
※正当な理由の判断について、これらの場合に限定されないということです。
7.まとめ
相続登記等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。また、遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
これらの義務を怠った場合には、10万円以下の過料の適用対象になります。
登記官の催告に応じて相続登記を申請すれば過料事件とはなりません。
相続登記の申請義務化は、2024年4月1日から施行されますので、正当な理由がない場合、早めの相続登記の申請をお願いいたします。
不動産購入時に、夫婦で購入代金を別々で支払う場合も少なくありません。この場合、不動産を夫婦共有での登記をしています。なぜなら、代金をそれぞれ払っているのにもかかわらず、共有名義にせず単独名義にした場合、名義人以外の者から名義人に対する「贈与税」を負わされてしまうためです。
新築の家屋の場合、出した金額に応じて共有持分を決めて保存登記をするケースが多いです。その後、夫婦どちらかに相続が発生した場合、もう一方に持分の権利が自動的に移転するわけではありません。
詳しく解説していきます。
目次
1.共有者と法定相続人の関係
2.共有名義の片方に持分を移転するには、どのような手続きが必要なのか
3.まとめ
1.共有者と法定相続人の関係
共有者と法定相続人の関係が、ここでは問題になってくると思います。亡くなった共有者の財産(遺産)の権利は、いったい誰のものになるのでしょうか。
まず一番初めにしなければならないのは、亡くなった共有者が「遺言書」を作成していたかどうかです。
遺言書は、遺言者が亡くなることで効力を生じ、その内容が有効になります。つまり、夫婦で購入し、夫が亡くなった際に、遺言書で「不動産の持分を妻に相続させる」旨の記載があれば、妻が夫の持分を取得することになります。
当然、他の相続人の遺留分を侵害していた場合には、遺留分侵害額請求権を行使されることはあるかもしれませんが、ここでは想定しないことにいたします。
遺言書がなかった場合、亡くなった共有者の持分の権利は、亡くなった方の法定相続人が民法規定の法定相続分で共有している状態になります。
仮に、亡くなった以外の共有者が、法定相続人ではない第三者(内縁の妻等)の場合には、そもそも相続権はありませんので、取得することは困難でしょう。
また、内縁の妻の場合、相続人が不存在である場合に特別縁故者として家庭裁判所が認定してもらえれば、その持分を取得する可能性はあります。認めてもらえるかどうかは、家庭裁判所の判断次第ということになります。
2.共有名義の片方に持分を移転するには、どのような手続きが必要なのか
①他の共有者のみが相続人であった場合
問題なく、その亡くなった共有者の持分の権利は、他の共有者に移転します。
➁他共有者が相続人の1人であった場合
他の相続人全員と「遺産分割協議」により、帰属先を協議しなければなりません。協議を経なければ、法定相続人の法定相続分の割合で持分権利をさらに共有している状態になります。協議がこじれた場合には、「遺産分割調停・審判」の手続きを要します。協議等を経て帰属先が他の共有者だとなれば、その持分の権利は、他の共有者のものになります。
③他共有者が全くの第三者であった場合
相続人ではないので、遺産分割協議への参加はできません。ですので、相続人の中からどなたかが持分を取得し、共有状態は解消されないことになります。もっとも、相続人間で持分の売却等の提示もしくは、こちらからの意思表示を受け入れてくれれば、持分を取得することは可能です。
3.まとめ
まとめると、共有者だからと言って、相続発生時に必ず持分を取得できるとは限らないということが言えます。
夫婦である場合でも、他に相続人がいる場合、「遺産分割協議」を経て持分の帰属先を他の共有者にしないと持分の取得はできません。
内縁の妻の場合、そもそも相続人ではないので、相続人の遺産分割協議への参加する権利はありません。
対処法としては、共有者から生前に持分を生前贈与(不動産評価額が大きい場合、何回かに分けて贈与)することが挙げられます。
また、共有者の生前に「遺言書」を作ってもらうことも有効な手段です。遺言書の場合、持分の権利は、他の共有者に必ず移転します。ただし、第三者の場合には、税金がかかってくるかもしれませんが、相続人から「共有物分割請求」をされて、住む場所を失ってしまうリスクも否定はできないからです。
今回は、わかりやすくするためにできるだけ簡単な事例で紹介いたしました。詳しい内容に関しましては、専門家に相談することをお勧めいたします。
アイリスでは、相続対策・相続手続きにつきまして、随時予約制で無料相談会を実施しております。
予約をいただければ、土曜日、日曜日、祭日も対応しております。ぜひご活用ください。
また、事務所とは別会場にて、月に一度「相続法律・税務無料相談会」を実施しております。
こちらは完全予約制となりますので、電話で予約状況確認の上、予約をして下さい。
相続専門家が対応しております。
認知症対策として、「任意後見契約」と「家族信託契約」があります。
家族信託万能論を唱えている専門家の方もいらっしゃるみたいですが、同じ「財産管理」であっても、その内容は大きく異なります。
実際にいずれかの対策をした後に、こんな筈ではなかったとならないために、比較解説していきます。
目次
1.はじめに
2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い
3.結局どちらの制度がいいのか?
4.まとめ
1.はじめに
認知症対策として「任意後見制度」と「家族信託」という2つの制度があります。
「どちらの制度がいいの?」、認知症対策相談の時、相談者様からよく質問を受けます。どちらの制度も一長一短があります。制度の内容を要理解せずに、表面的なメリットのみとらえて選択してしまうと、「こんなはずではなかった。」ということにもなりかねません。
内容をよく理解した上で選択することが重要になります。なぜなら、この2つの制度は、性質が異なるものだからです。ご家族の置かれた状況からどちらの制度を選択すればよいか見えてくると思います。
それでは解説してまいります。
2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い
(事例)母は既に亡くなっており、父親が最近少し物忘れが多くなってきており、長男夫婦と次男夫婦がいる事例で見ていきます。
このような事例で、長男が「財産管理」をしていきたい場合を考えていきます。
※父親に判断能力がまだあることが前提条件となります。すでに判断能力を失われている場合には、法定の成年後見制度を利用することになります。
※2つの制度共に詐欺被害などにあった場合の「取消権」がないので対応はできません。法定の成年後見制度にはありますので、ここでも選択の判断が分かれます。
3.結局どちらの制度がいいのか?
事例から見ますと、父親に「身上監護まで必要」であるなら任意後見制度を利用し、必要なければ「家族信託」という選択になります。
しかし、家族信託のみで対応していたがために、父親の認知症が進み、要介護認定の申請手続きや、介護施設への入所契約など発生した場合、「法定の成年後見制度」を利用しなければならなくなります。
そこで、大きな財産については「家族信託」で財産管理をして、それ以外の財産と身上監護を「任意後見制度」を併用する方法もあります。
また、併用だとコスト面で大きくなるのであれば、どちらがいいのかの選択が必要となってきます。
この場合は、ご家族でよく話し合ったうえで決めていただきます。
4.まとめ
①積極的な財産管理を行いたいのであれば「家族信託」
➁身上監護が必要なら「任意後見」
③裁判所の関与を避けたいのであれば、「家族信託」
④どちらの制度もご要望になじむのであれば、費用で比較する
「任意後見制度」も「家族信託」もどちらかを選択すれば完ぺきといった制度ではありません。それぞれの制度の趣旨が異なるためです。
どちらもご要望に馴染まない場合がありますので、制度をよく理解して決めなければなりません。専門家と相談しながら進めていくのがいいと思います。
1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)
早めに遺言書を作成することのメリット
遺言書は、健康な状態で作成することが望ましいです。一度病気になってしまうと、判断力が低下したり、医療処置によって精神状態が変化する可能性があります。早めに遺言書を作成することで、自分の望む財産分配方法を明確にし、遺言執行者の指名や葬儀の方法なども記載することができます。
ご高齢の相談者様の中には、遺言書の手続きについて説明すると「そんなに大変なら、考えます。」と言って、相談を打ち切られる場合がよくありますが、健康で元気である間に、遺言書を作成することが重要になってきます。
また、遺産分割に関するトラブルは、遺言書がない場合、法律上の相続人の割合に従って分割されますが、これが家族や親族間での紛争を引き起こすことがあります。早めに遺言書を作成することで、財産の帰属先が宙に浮くことを未然に防ぐことができます。相続人間の争いについては、遺言書があってもなくても、起こるときは起こりますし、起こらないときは起こりません。家族間のコミュニケーションや、相続発生後の手続きの煩雑さなどから見ても、遺言書があるおかげで、ずいぶん軽く済んだケースを多く見てきました。
※ご本人の状態により、使える法律行為や制度が異なる点にもご注意ください。特に認知症発症後は、法定後見制度一択になります。
3.相続財産が相続人に帰属するタイミング
3-1.遺言書がある場合
遺言者(亡くなった方)の遺志に従って、財産の帰属先が決定します。
3-2.遺言書がない場合
相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を取りまとめることで、相続財産の帰属先が決まります。つまり、遺産分割協議がまとまるまでは、法定相続分での状態になってしまうということです。
※遺留分の問題があるから遺言書は進めないという方もいらっしゃるようですが、相続発生時の相続財産の帰属先は一端は決まる点がメリットだと考えますので、アイリスでは遺言書の作成についてお勧めをしております。
4.遺産分割協議でもめてしまうことも
遺言書がなく亡くなられた被相続人の相続人全員で遺産分割協議をする場合、もめるケースがあります。一旦もめてしまうとなかなか遺産分割協議がまとまらなくなります。
こうなった場合には、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることになります。それでもまとまらない場合には、家庭裁判所による審判で遺産分割を決定することとなります。
ここまで行ってしまいますと、家族関係は完全に悪くなってしまいます。一度悪くなった家族関係は、もう元には戻らないでしょう。このようなことからも、遺言書作成の意義は、とても大きいと考えます。
5.まとめ
最後に、遺言書は遺言者の意志を尊重するものであるため、遺言者自身が最も納得できる内容を記載することが大切です。しかし、遺言書が法律に反する内容を含んでいる場合などは、遺言書は無効となることがあります。遺言書を作成する際には、法律に基づいた内容であるかどうか専門家に相談し、確認するようにしましょう。
相続が発生し、死亡保険金が受取人(相続人の一人)によって受け取られたときに、それは相続財産として遺産に含むものなのでしょうか。当然、相続人以外のどなたかに、死亡保険金の受取人とした場合には贈与税の対象に、また、亡くなった被相続人本人が受取人の場合には、相続財産として取り扱われることになります。
今回は、相続人の一人が受取人に指定されていた場合について、法律面と税制面の両面から解説していきます。
目次
1.死亡保険金は相続財産に含まれるのか
2.死亡保険金が相続財産に含まれる場合
3.死亡保険金の税制面での取り扱い
4.まとめ
1.死亡保険金は相続財産に含まれるのか
保険契約に基づき受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又は、これを行使して取得した死亡保険金は、民法903条第1項に規定する遺贈又は、贈与に係る財産には原則的には当たりません。
つまり、法律上、死亡保険金は、相続財産とはなりません。ですので、相続の生前対策として生命保険(死亡保険)が活用されるケースがあります。相続財産となりうる額の一部をを生命保険契約をすることで、目減りさせることができるためです。それでは、相続財産のほとんどを生命保険に切り替えても相続財産とはならないのかというと、そういうわけではありません。どのような基準があるのかを次の項目で解説をいたします。
2.死亡保険金が相続財産に含まれる場合
(最判平16.10.29)
「法律上、生命保険金は原則的には相続財産に該当しませんが、当該保険料が被相続人が生前に保険者に支払ったものであり、それにより保険金受取人である相続人に保険金請求権が発生することなどに鑑みると、保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし、到底是正することができないほどに著しいものであると評価すべき「特段の事情」が存する場合には、民法903条の類推適用により、当該保険金請求権を特別受益に準じて持戻しの対象となると解する。
この「特段の事情」の有無の判断は以下のような点などの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断する。」とあります。
それでは、判例で言っている特段の事情とはどういった内容なのでしょうか。
①保険金の額
➁保険金の額の遺産の総額に対する比率
③同居の有無
④被相続人の介護等に対する貢献の度合い
以上、4つの内容を考慮したうえで判断されます。
➁の比率については、明確な基準はないですが、平成17年の判例では、遺産総額のほぼ全額(99%超)を保険金が占めており、また、平成18年の判例では61%を保険金が占めていて、相続とみなされました。
他の要件も加味されますので、50%を超える場合には注意しておいた方がいいかもしれません。
3.死亡保険金の税制面での取り扱い
「被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続税の課税対象となります。
この死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合、すべての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。
(注1) 法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
(注2) 法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。」
(国税庁HPより引用)
4.まとめ
死亡保険金は、法律上では原則、相続財産とはなりませんが、
①保険金の額
➁保険金の額の遺産の総額に対する比率
③同居の有無、
④被相続人の介護等に対する貢献の度合い
といった内容を考慮して特別受益と認められる場合があります。
特別受益と認められた場合、その死亡保険金は相続財産に組み入れられてしまいます。
また、税法上は、死亡保険は「みなし相続財産」とされ、基礎控除を超える額は相続財産とされます。
詳しい内容につきましては、各専門家への相談をお勧めいたします。
アイリスでは、ワンストップでの相続のお悩みを解決する場として「相続法律・税務無料相談会」をご紹介しております。
法律のお悩みのみの場合につきましては、「アイリスDEいい相続」の無料相談会にて対応をいたします。ぜひ、この機会にご活用ください。
「代位登記」は他の人が変わって申請する登記のことですが、一定の要件が必要です。それでは、代位登記等について解説します。
目次
1.代位登記とは
2.代位登記ができる要件
3.実際の申請書記載
4.まとめ
1.代位登記とは
代位登記とは、債権者、自己の債権を保全するために、民法423条の規定により、債務者の有する「登記申請権」を代位行使して登記㋓㋔申請することを言います。
「民法423条(債権者代位権の要件)
第1項 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。」
規定の表現は、債権者、債務者となっており、良くイメージできない方もいるかもしれませんので具体的に言いますと、
(事例1)AからBに売買によりBに余裕権が移転し、その後、Bがその所有権をCに売ったとします。この場合の住所は、A→Bの所有権移転をした後に、B→Cへの所有権移転登記をすることになります。しかし、Bが所有権移転登記を請求しない場合、Cは既に所有権を持っているのに、待つことしかできない状態になってしまいます。A→Bの登記請求権は、Bが持つ権利です。それをC(債権者)が、B(債務者)のもつAへの所有権移転請求権を代位行使するができます。
2.代位登記ができる要件
民法の規定では、「債権者は、自己の債権を保全するため必要があるとき」とあります。上記事例ですと、CはBに請求はできますが、Bの持つ請求権は直接行使できません。こうなると、CはBに対する請求権(被保全債権)を保全(履行してもらうようにすること)する必要がある訳です。この「請求権の保全」が、要件になります。
(いくつか事例を示します)
①賃借権について登記する旨の特約がない場合、被保全債権となるべき賃借権設定登記請求権を有しないため、所有権移転登記の代位はできない。
➁表題部所有者A、Aの債権者(当該不動産を買った人)Bがいる場合、BはAに代位して、Aの所有権保存登記を代位できる。被保全債権はBからAへの所有権移転登記請求権。
などが挙げられます。
3.実際の申請書記載
(事例1)の申請書
登記の目的 所有権移転登記
原 因 年月日売買(A→Bの売買が発生した年月日)
権 利 者 (被代位者)B
代 位 者 C
代位原因 年月日売買の所有権移転登記請求権
義 務 者 A
添付情報 登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書 住所証明情報
代位原因証明情報 代理権限証明情報
となります。通常の申請書と異なる部分は、「被代位者・代位者」「代位原因」の記載と、添付書類に、「代位原因証明情報」があることです。事例のような売買の場合は契約書などがこれに当たります。
この「代位原因証明情報」を添付しなくてもいいときがあります。
それが、すでに登記簿上にある抵当権の抵当権者が請求権を代位行使する場合です。この場合でも、添付情報欄に「代位原因証明情報は、年月日受付〇号をもって本物件に抵当権設定登記済につき添付省略」の記載は必要です。
4.まとめ
今回は、代位による登記のお話をしてきました。代位するには、要件が必要です。その要件は、「債権者は、自己の債権を保全するため必要があるとき」です。迷惑をかけられて登記ができない方の請求権を保全するために必要であるならば、代位による登記も可能となります。
前に、離婚調停書正本(確定証明書付)を添付して、所有権移転登記を単独で申請する場合をご紹介しました。その際に、名義人の住所が変更になっているときも、住所変更登記を代位によりすることが可能です。ただし、登記原因証明情報(住民票)の添付は必要となります。
代位の要件を充たしているかどうかにつきましては、専門家にご相談ください。
相続相談に来訪される方で、すでに遺言書作成する目的を明確に持っている方もいらっしゃいますし、相談内容に付随する形で、「遺言書の作成」を勧めても、「うちは財産少ないし、関係ないよ」とおっしゃる方もいます。
しかし、財産が少なくても遺言書を作らないという選択肢を選ぶということは、本当に正解なのでしょうか。
目次
1.遺言書作成の目的
2.財産が少ない方でも遺言書を作成する意義
3.まとめ
1.遺言書作成の目的
遺言書を作成しようとされる方には、何らかの目的があります。
例えば、相続発生後の遺産分割方法を指定することで、相続人間の争いごとを抑制したいと思って作る方もいらっしゃいます。
事業をしている方の場合は、個人資産が会社の財産と密接に関係あるような場合には、「事業継続」を視野に遺言書を作成するでしょう。
また、再婚歴のある方であれば、再婚後の家族と再婚前の相続人との間で遺産分割協議をする負担を軽減するために、作成されると思います。(遺言執行者により、遺言の内容は、すべての相続人に知らせなければならないため、その後の反応はわかりませんが、少なくとも遺産の帰属先は指定できるわけです。)
このように、遺言書を作成する目的を明確に持たれている方だけが、遺言書を作成することでいいのでしょうか?
2.財産が少ない方でも遺言書を作成する意義
財産が少ない方の場合でも、目的がはっきりしていれば遺言書作成をしている方は多いと思います。
しかし、遺言書作成の目的がない様なら、果たして作成しなくても問題はないのでしょうか?
そこで、財産が少なく、目的が現状ない方向けに、作成しないことで起こりうる問題点をお話したいと思います。
①財産別の遺産分割調停・審判の統計データ
(令和2年度家庭裁判所 遺産分割事件件数統計)
ご覧のように、財産が多い方は、専門家に相談の上、生前に相続対策される一環で遺言書を作成している場合が多いため、遺産分割調停・審判事件の割合が低いことが分かります。
一方で、1000万円以下の相続財産でもめるケースが多いことが見て取れます。
財産が少ないことは、遺言書を作成しない理由とはならないことがわかると思います。
➁未来のことは誰にも予測はできません
現状、家族関係が良くても、将来、どのようになるのかはわかりません。
親の目線からの関係と、現状の子供間の実際の関係は見えていない可能性もあります。
人というのは、意外と細かいことを根に持っている場合があります。
「子供の時から、親父は弟ばかりひいきしてきた。」と、亡くなった後に吐露し始める方を見ました。ご存命の間は、本当の心情を隠されているかもしれません。
それでは、遺言書を書いたから、すべてうまくいくかというとそうではありません。
上記のような例ですと、子供時代から蓄積された感情がありますので、難しいと思いますが、少なくとも相続時点での財産の帰属先は決まります。
「遺留分」の問題にも発展する可能性がありますが、遺留分で主張できるのは法定相続分の2分の1です(例外もあります)。
(財産が少なくはないですが、事業継続にも影響します)
京都の老舗の造り酒屋さんで、相続が発生し、建物や工場は法人名義でしたが、敷地は父親の個人名義でした。
弟が継承することに反対だった兄が、遺産分割調停を申し立て、遺産分割審判までもつれ、結局半分ずつの持分で兄・弟で登記しました。
その後、兄は共有物分割請求をしましたが、現金がなかった弟は代償分割ができず、結局建物工場を解体して、敷地を第三者に売却して、換価分割を選択しました。
当然、事業は継続できなくなり、法人は解散となってしまいました。
この事例は、遺言書があってもだめだった可能性がありますが、遺留分が半分で済みことを考えると、もしかしたら、何とかなった可能性もあったのでは?と思ってしまいます。
3.まとめ
まとめると、財産の額にかかわらず、遺言書を書いておくメリットはあります。
できれば、早い段階で一つ作り上げ、その後の状況で内容を変更することはできます。
公正証書遺言では、費用が掛かるというのであれば、自筆で作成を続け、ある程度納得いく時期に来た時に、公正証書遺言を作成することで、費用は抑えることができます。
亡くなった後の家族関係を円満に保つためにも遺言書の作成をお勧めいたします。
認知症になった後の財産管理制度として、「成年後見制度」があります。
現在、成年後見制度をより使いやすい制度にすべく見直しを行っている最中ですが、家族を成年後見人にしたことで事件が発生しております。成年後見制度の成年後見人は、実質、本人に代わって解散管理をはじめ様々な権限が与えられます。専門家を指定した場合、報酬が発生するため、家族を成年後見人に指定して申請する方も多いかと思います。
今回はこの事件について解説したいと思います。
目次
1.事件の概要
2.問題が引き起こす連鎖反応
3.まとめ
1.事件の概要
(令和6年2月27日テレビ静岡記事引用)
「成年後見人の立場を悪用して、認知症の母親の口座から現金 約890万円を引き出したとして42歳の派遣社員の男が逮捕されました。
業務上横領容疑で逮捕されたのは千葉県市川市に住む契約社員の男(42)で、認知症になった実の母親の成年後見人に選任されていた2020年7月から2021年11月までの間、自らが使用する目的で母親の口座から40回以上にわたって現金 計890万円を引き出した疑いです。
警察によると、男は累計の出金額が多額だったため2021年11月に成年後見人を解任されていて、その後、後見人に選任された弁護士が刑事告訴していました。
男は容疑を認めていて、警察が犯行の動機や金の使い道などを調べています。」(記事引用終わり)
記事を見る限り、成年後見人に選任された家族が、被成年後見人(本人)の口座の管理を任されているのも関わらず、自分で使用する目的で預金を使い込んだというものです。
2.問題が引き起こす連鎖反応
以前、他士業の方から、成年後見の申し出を出してほしいとの話をいただきましたが、断った経緯があります。
その理由として、成年後見人として指定者されていたのが、家族だったからです。
財産は比較的少ない方だったのですが、リーガル登録(成年後見人としての講習を受け、登録をしている)されている司法書士の先生にお願いするようにアドバイスしました。
財産の多い少ないの問題でなく、専門家でない成年後見人が選任された場合には、上記のようなことが発生しうるからです。ただし、成年後見人を選任するのは、あくまで家庭裁判所であり、指定していたからと言ってその方が選任されるわけではありません。その場合には、指定されていた家族からクレームの電話が来ます。決定内容に不服があれば、当然控訴なども考えられますが、この家庭裁判所の判断については、控訴等は受け付けてくれません。対象外になっているためです。
逆に、このようにクレームの電話が来るケースについては、「よからぬことを考えていたのでは?」と勘ぐってしまいます。
このように使い込みが発生した場合、家族であっても刑事事件として告訴されます。
そして、他に相続人がいた場合、問題はこれだけでは収まりません。
将来発生する相続で得られるはずだった財産について、民事訴訟を起こされる可能性もあります。こうなると家族間の関係は、修復不可能になるでしょう。
3.まとめ
財産を管理する成年後見人は、報酬を支払ってでも専門家にするのか、それとも家族にすればいいのかという問題は付きまといます。
ただし、家族が鳴った場合でも、家庭裁判所で選任した後見監督人が選任される場合がありますので、結局報酬が発生する可能性もあります。
このような事件の発生を抑止する意味でも、専門家にお願いしたほうがいいのではと考えてしまいます。
一方で、財産管理の手法で、家族と専門家の成年後見人との間で意見の違いが発生する場合もあります。
いずれにしても、成年後見制度を利用する場合には、家族で話し合い、家族の中から指定者を選ぶ場合にも、慎重に判断すべきだと思います。
令和6年2月7日に日本郵便株式会社と「終活に関する広報等の連携に関する協定書」締結式を開催しました。
日本郵便株式会社では、「終活サポート」の窓口としてサービス提供をしています。過去に、どのような団体・法人・会社と協定しているのか少し調べてみました。
目次
1.日本郵便株式会社の提供する「終活日和」とは
2.実は知ってました
3.日本郵便株式会社が過去に協定を結んでいた先(調査)
4.まとめ
1.日本郵便株式会社の提供する「終活日和」とは
2024年2月19日Impress Watchのニュース記事引用
郵便局で「郵便局の終活日和」提供開始
日本郵便は、全国の郵便局で顧客の終活をサポートするサービス「郵便局の終活日和」を2月16日から開始する。相談料は無料。
専用のコールセンター「生活相談ダイヤル」で顧客の相談に乗り、内容に応じて、終活関連の提携企業を紹介するサービス。'18年度から北海道と首都圏において試行された「終活紹介サービス」が好評だったことから、全国の郵便局で提供を開始する。
コールセンターに直接電話をかけることのほか、郵便局の社員がコールセンターへの電話をサポートすることもできる。
提携企業を紹介できるサービスは、相続手続の代行、介護施設や賃貸住宅へ入居時の身元保証、死後事務委任、葬儀場の案内、墓石等の紹介、介護施設の案内、入院後等の家財整理、空き家の解体など。自分史作成や思い出写真撮影サービスも紹介可能。
提携企業を紹介後、相談と見積りまでは無料。サービス提供は有料。」(引用終わり)
このサービスの一環として、日本司法書士会連合会との協定締結があったものと思われます。
2.実は知ってました
昨年の8月、協力先の先生が東京に行ったときに、北海道と東京で実施していた「終活紹介サービス」が全国展開する話を聞いてきました。そこで、地元郵便局に確認したのですが、まだサービス提供前なので、何とも言えないと回答されていました。
営業先のチャンネルの一つになればいいなとは思っていましたので、その後の情報については、アンテナを張っていました。
先日、その郵便局を訪れたときに、いよいよ具体的に動き出している話を聞いて、その内容やパンフレットをいただいてきたところでした。
3.日本郵便株式会社が過去に協定を結んでいた先(調査)
上記記事に「'18年度から北海道と首都圏において試行された「終活紹介サービス」」という点で、その時の提携先が気になり調べてみました。
2018年9月20日@Press記事引用
「日本郵便株式会社との連携による終活紹介サービスの 試行開始に関するお知らせ
不動産取引にかかる事務効率化を推進する株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:本間英明、東証一部(証券コード:6093)、以下 EAJ)の子会社である株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託(東京都千代田区、代表取締役 今中 弘明/以下「EAJ信託」)と日本ATM株式会社(東京都港区、代表取締役社長 中野 裕/以下「ATMJ」)は、2018年10月10日より、日本郵便株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 横山 邦男/以下「日本郵便」)及び株式会社鎌倉新書(東京都中央区、代表取締役社長 相木 孝仁/以下「鎌倉新書」)と連携し、終活紹介サービスの試行を開始することをお知らせいたします。」(引用終わり)
以前の記事にも書きましたが、令和2年に東京司法書士会が日本司法書士会連合会に照会を出して問題となった会社が含まれていました。
なぜ問題になったのかと言いますと、当該会社は、日本郵便株式会社から預かった案件を個々の司法書士に会員として登録させて登録料を徴取し、登録した司法書士に案件を紹介していたからです。
これ、司法書士法の「不当誘致」で、問題となります。
その後、鎌倉新書をはじめとするWEB公告集客系の営業がありましたが、鎌倉新書の「いい相続」が、案件紹介の司法書士対象のサービスを停止していました。
令和4年に開業した後の話ですので、繋がりましたね。
この事件の後のWEB案件紹介は、「ポータルサイトに登録し、見た方が連絡先に電話等する方式」に様変わりしています。直接の顧客の紹介はまずいですからね。
4.まとめ
今回は、令和6年2月7日に日本司法書士会連合会と日本郵便株式会社との間で「終活に関する広報等の連携に関する協定書」締結したことを取り上げました。
その中で、2018年から日本郵便株式会社が提供する「終活紹介サポート」から、東京司法書士会で懲戒事案にもなった事件の全貌を知ることができました。
今後の、司法書士と郵便局との連携についても具体的に知りたいですね。
遺産分割協議をした後に遺言書を発見した場合、どうすればいいのでしょうか?「見なかったことにする」で済むのでしょうか?わかりやすく解説したいと思います。
目次
1.遺言書の効力
2.遺産分割協議後、遺言書が発見された場合
3.家庭裁判所で行う検認とは
4.遺言執行者とは
5.まとめ
1.遺言書の効力
遺言では「相続方法」を指定することができます。法定相続分以外の割合で遺産を分け与えたり、特定の遺産を特定の相続人や相続人以外の人へ受け継がせたりすること(遺贈)が可能になります。法律では「遺言によって指定された相続方法は法定相続に優先する」と規定されているためです。
「(遺言による相続分の指定)
民法 第九百二条 被相続人は、前二条の規定(法定相続・代襲相続について)にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。」
つまり、遺言があると、法定相続分を超える相続や下回る相続も有効となります。遺言書を使うと、以下のような事項を指定できます。
①相続分の指定、➁遺産分割方法の指定、③遺贈、④寄付、➄遺産分割の禁止(5年以内)、⑥認知、⑦相続人の廃除、⑧保険金受取人の変更、⑨遺言執行者・遺言執行者を指定する人の指定。
逆に、民法で定められている項目以外の事項を遺言書に書いても効力はありません。
2.遺産分割協議後、遺言書が発見された場合
法定相続した遺産を協議で帰属先を定めるのが、遺産分割協議です。この協議は、法定相続人全員の参加が要件です。しかし、協議の後に相続人お一人が遺言書を発見した場合、どうなるのでしょうか?
もし、未開封の遺言書を相続人の一人が発見した場合、「見なかったことにする。」のはやめてください。民法で定められている相続人の「欠格」事由に該当する可能性があります。
まずは、相続人全員に連絡をして、家庭裁判所での「検認」の手続きをしてください。
3.家庭裁判所で行う検認とは
「「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。 遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。」(裁判所HP引用)
つまり、検認手続きでは、遺言の有効無効を判断するものではなく、遺言書の現状を公的機関で保管する手続きです。封がされている遺言書の場合、未開封のまま、家庭裁判所に持ち込んでください。家庭裁判所で開封された遺言書は、すぐにコピーがとられ裁判所で保管します。仮に開封したとしても、検認手続きはできますが、「過料」が発生しますのでご注意を。
4.遺言執行者とは
遺言執行者とは、遺言内容を実現する役割を負う人です。遺言者が遺言で指示したことが実現するように、財産目録の作成や預貯金の払い戻し、相続人への分配、不動産の名義変更、寄付などを行います。遺言執行者は民法で「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権限」が認められています。(民法1012条)
遺言執行者は、遺言者が遺言内容に指定することもできますし、
遺言執行者に弁護士や司法書士などの専門家を指定する場合もありますが、遺言執行者は、遺言者の遺言内容を実現するために相続人に代わって行うために、代理人ではなく本人という立場で執行することになります。2019年の法改正により、遺言執行者は単独で不動産の名義変更できるようになりました。
5.まとめ
遺産分割協議と遺言書では、遺言書の効力の方が優先されます。そのため、相続人全員で遺産分割協議をした後に、相続人の一人が遺言書を発見した場合、速やかに相続人全員に連絡をして、家庭裁判所で検認の手続きを受けなければなりません。
遺言内容を執行するには、遺言執行者が必要です。遺言執行者は、遺言書の指定があればその方、その方がすでに亡くなっていたり指定されていない場合には、遺言執行者の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
認知症になった方の財産を管理するための「成年後見制度」ですが、現行の制度では問題点もあるため、改正の動きが出ているようです。
随分前から「スポット後見」などの要望があり、これらを現行制度に取り入れようとする話は聞いたことがあったのですが、動きがあったみたいです。
目次
1.成年後見制度(法定後見制度)とは
2.成年後見制度の何が問題なのか
3.令和6年1月法務省「成年後見制度の見直しに向けた検討」内容
4.まとめ
1.成年後見制度(法定後見制度)とは
「認知症、知的障害、精神障害などの理由で、ひとりで決めることが心配な方々は、財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続など)や身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結、履行状況の確認など)などの法律行為をひとりで行うのがむずかしい場合があります。
また、自分に不利益な契約であることがよくわからないままに契約を結んでしまい、悪質商法の被害にあうおそれもあります。
このような、ひとりで決めることに不安のある方々を法的に保護し、ご本人の意思を尊重した支援(意思決定支援)を行い、共に考え、地域全体で明るい未来を築いていく。それが成年後見制度です。」(厚生労働省HP引用)
2.成年後見制度の何が問題なのか
包括的な問題として、多様性がうたわれている現状で、認知症発症後の制度が、「現行の成年後見制度」一択という状況になっていて、その成年後見制度が使いにくいものであることが挙げられます。どのような点が使いにくいのかというと、
①利用動機の課題
例えば、遺産分割協議に参加するために成年後見制度を利用した場合、遺産分割協議が終わっても、亡くなるまで成年後見人が就いた状態になってしまい、弁護士・司法書士が就任している場合、その分の報酬が発生してしまう点。
➁成年後見人の包括的な取消権・代理権
成年後見人(財産の処分等には、家庭裁判所の許可が必要)のこれらの権限により、本人の意思を必要以上に制限してしまうことがある点。
他にも、問題点が挙げられていましたが、主には上記の2点が、成年後見制度が使い辛い原因になっていると思います。
特に、①に関しては、遺産分割協議のためだけに親族を候補者として申請しても、成年後見人を選任する権限は家庭裁判所にあるため、専門家である弁護士・司法書士が選任される場合もあります。そうすると、報酬が亡くなるまで発生しますし、制度趣旨が「本人の財産の保護」ですので、ご家族の意向にマッチしないことも発生する可能性があります。
3.令和6年1月法務省「成年後見制度の見直しに向けた検討」内容
(画像 法務省HP引用)
2①➁の内容を含めて、大きく4つの項目について(他に検討事項もあります)、書かれています。私的には「法定後見制度における開始、終了等に関するルールの在り方」に、注目をしています。
他にも、私の老人ホームの施設長だったころの経験から、認知症と言っても、その症状は様々です。
軽度の者から重度のものまで様々です。かなり進んでいても、日によっては正常に戻る時があったりします。
おそらくこういった内容も含まれて来るとは思います。
4.まとめ
実務において、遺産分割協議の際に相続人の中に認知症の方がいた場合、成年後見制度を申請するかどうかで悩まれる方を数多く見てきました。
その原因というのが、今回の「主な検討テーマ」に含まれる内容です。今回の制度改正で、より使える成年後見制度になってほしいと思います。
従来は本籍地の市区町村でしか戸籍謄本等を取得できませんでしたが、広域交付制度の導入により、本籍地以外の市区町村でも戸籍謄本等を取得できるようになっています。広域制度について解説したいと思います。
目次
1.広域制度とは
2.広域制度を利用できる対象者
3.弁護士、司法書士などの「職務上請求」は広域制度で使えるか?
4.まとめ
1.広域制度とは
広域交付制度とは、本籍地以外の市区町村の窓口において、戸籍証明書や除籍証明書を請求できる制度です。事例として、高松市役所で、徳島市役所に本籍地のある戸籍を取得できるという制度です。
2024年3月1日以降、改正戸籍法の施行によって新たに広域交付制度が導入されます(改正戸籍法120条の2、120条の3)。
これが実現できた背景として、以前から法務省一元管理化に向けた取り組みをしており、各自治体の戸籍のデータを法務省でデータベース化することにより、各自治体から法務省データベースにアクセスすることにより、本籍地以外の自治体の窓口でも、戸籍を取得できるようになりました。
データ化された戸籍を取り扱うことから、データ化されていない戸籍に関しましては、広域制度の対象外となります。広域制度で取り扱うことのできる文書は、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本が対象となります。
2.広域制度を利用できる対象者
広域交付制度を利用して戸籍謄本類を請求できるのは、以下のいずれかに該当する人です。
①本人
➁配偶者
③直系尊属(父母、祖父母など)
④直系卑属(子、孫など)
なお、広域交付制度を利用した請求は、代理人によって行うことは認められていません。上記のいずれかに該当する人が、必ずご自身が市区町村役場の窓口に行って手続きを行う必要があります。
3.弁護士、司法書士などの「職務上請求」は広域制度で使えるか?
「2.広域制度を利用できる対象者」として、司法書士、弁護士等は含まれておりません。つまり、弁護士や司法書士などに認められている「職務上請求」については、広域交付制度の利用は認められていません。そのため、相続人の調査などをご依頼される場合の弁護士、司法書士等による職務上請求は、通常の戸籍請求手続となり、本籍地が最寄りの市町村役場に無い場合には、郵送請求となります。
4.まとめ
相続が発生した場合、被相続人の戸籍等の文書が、すべてデータ化されている場合には、この広域制度で、最寄りの市町村役場で相続に必要な戸籍類を取得することが可能です。この点ではめりとは大きいと考えます。
しかし、一部データ化できていない戸籍類がある場合には、通常の取得方法になります。ご本人で取得する場合及び、弁護士、司法書士等に依頼する場合には、郵送による手続きで取得することになります。
詳しくは、最寄りの市町村役場の窓口、又は専門家にお問い合わせください。
相続とは異なり、生前贈与は売買同様に、添付書類として、「権利証又は登記識別情報」の提出を求められます。
このような場合、どのように手続きを進めていけばいいのでしょうか。解説していきたいと思います。
目次
1.権利証・登記識別情報の添付
2.権利証・登記識別情報を紛失した場合
3.手続き①事前通知
4.手続き➁本人確認
5.手続き③公証人の認証制度
6.まとめ
1.権利証・登記識別情報の添付
相続では、登記簿上の名義人は、すでに亡くなっているため、当事者として手続きに参加できません。そして、相続は一般承継と呼ばれ、その権利等を相続人が全て承継するとされていますので、登記簿上の名義人の特定の資料を就ければ問題なく申請は受理されます。
しかし、生前贈与の場合、登記簿上の名義人の方は、存命です。
ですので、手続きの参加が必要になる点は、売買と同じです。つまり、登記簿上の名義人の方は、自身の意思表示(贈与すること)を証明するために、自身が保管している「権利証又は登記識別情報」及び「印鑑証明書」の提出を求められます。
司法書士が作成する委任状や登記原因証明情報への実印での押印も必要です。
2.権利証・登記識別情報を紛失した場合
それでは、添付書類として「権利証又は登記識別情報」を紛失してしまった場合、生前贈与の申請はできなくなってしまうのでしょうか?
3.手続き①事前通知
法務局から登記申請人に対し直接「登記申請についての意思確認の照会」を行う制度です。
権利証を添付せずに登記申請を行うと、数日後、法務局から売主である登記義務者に対して登記申請についての本人の意思を確認するための書面が郵送で通知されます。
法務局からの通知を受けた登記義務者は、一定期間内に「登記申請の内容について間違いのない旨の申出」を行う必要があります。(本当に贈与をしたかどうかの確認)
具体的には、法務局から送られてくる事前通知書に「この登記申請の内容は真実です」という回答欄がありますので、署名および実印で捺印をし法務局へ持参または郵送で送り返します。
指定の期間(後述)までに書類が法務局に到着することで、権利証がなくても不動産の売却手続き(受贈者への名義書換)を行うことが可能になります。
ちなみに、申出期間は、法務局が通知を発送した日から二週間以内と定められており、この期間内に法務局に登記義務者から申出がなければ、登記申請自体が却下されるか、または登記申請を取下することになりますので、指定の期日までに法務局へ返信が届くよう注意が必要です。
※親族間での贈与や抵当権抹消といった緊急性をあまり必要としない登記申請に、適しています。
4.手続き➁本人確認
登記の申請代理人である司法書士(資格者代理人)がご本人様と直接面談し、本人のパスポートや運転免許証等の身分証明書の提示を受けて本人であることを確認して、司法書士がその責任において本人確認をしたことを明らかにした上で、その内容を本人確認情報という書類を作成して、法務局に提供するというものです。
その本人確認情報が適正であれば、条件によっては事前通知を省略して登記が実行されます。
ただし、あくまで「登記を代理して申請する司法書士等」が本人確認をしなければなりませんので,本人確認だけを知り合いの司法書士等に依頼し,登記だけは別の司法書士に依頼するということはできません。
この司法書士による本人確認をすれば,前住所通知等様々な手間が省けるため,権利証を紛失している場合に一番多く使われている方法です。
※前住所通知は、前の所有権移転から3か月以内に再度所有権移転が発生した場合に実施されます。
※費用は別途発生します。ですので、金融機関から融資を受けての売買においては、よく使われる手続です。
5.手続き③公証人の認証制度
公証人の面前で、司法書士に対する登記申請委任状等にご署名・ご捺印いただき、公証人が間違いなく本人であることを確認し、その書類が真正なものであることの認証を受ける手続です。
公証人による認証を受けた登記委任状を添付し、法務局に登記申請を行います。
こちらの手続きは、数千円程度の認証手数料を支払うだけで済みますので、本人確認情報を作成する費用を抑えることができます。
ただし、公証人による本人確認は,印鑑証明書、ご実印,運転免許証等の身分証及び認証文を付ける委任状を持って、公証役場が空いている時間(平日)に公証役場へ直接行っていただく必要がございます。
6.まとめ
「権利証又は登記識別情報」を紛失しても、所有権移転登記(名義変更)はできます。
しかし、特に本人確認の手続きについてですが、他の手続きと異なり、公証役場や法務局が関与しません。
登記を任された司法書士が行うため、「地面士」による不正に用いられることがありますので、「本人であることが確認」できるまでは、登記の実行は致しません。
場合によっては、手続き自体もう一度やり直すこともあります。
そして、明らかに本人が確認できる場合を除き、事前に登記簿上の住所に訪問し、本人確認を行いますので、費用はそれなりにかかります。
アイリスでは、生前贈与などの相続対策のご相談をお待ちしております。
離婚又は婚姻の取り消しにより、一方が財産の分与を請求した時に、その財産の中に不動産が含まれる場合、「財産分与」を原因とする所有権移転登記(名義変更手続き)がされます。今回は、この「財産分与」について解説していきます。
目次
1.財産分与とは
2.財産分与に関する先例
3.離婚手続きの違いによる添付書類と原因日付
4.住宅ローン債務者の変更について(重要)
5.まとめ
1.財産分与とは
財産分与(ざいさんぶんよ)とは、法律上の用語であり、通常は離婚などの場面で使われます。これは、共有されている財産を分割することを指します。具体的には、配偶者間での財産分与は、離婚の際に共有財産を公平に分割することを指します。
財産分与は、公正な取り扱いを確保し、関係者間の紛争を最小限に抑えるための重要な手続きです。裁判所の判断に基づいて行われることもありますが、関係者間で協議によって行われることもあります。
財産分与に関する財産の中に不動産がある場合、当該不動産の名義の変更手続きが必要となります。
2.財産分与に関する先例
離婚又は婚姻の取り消しをした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます。(民法749条、768条、771条)
分与される財産に不動産が含まれる場合、「財産分与」を登記原因とする所有権移転登記ができる場合があります。
※登記原因とは、「売買」「贈与」「相続」といった、権利移転が発生した原因のことを指し、申請書類に記載する事項です。
内縁解消をし、「被告は原告に対しA不動産につき、年月日財産分与を原因として所有権移転登記手続きをせよ」との判決製本を添付して所有権移転登記を申請する場合、登記原因を「財産分与」とすることができる。(先例 昭47.10.20民三559号)
※本来、「内縁解消」は対象ではなところ、判決文に記載されている内容が財産分与である場合には、財産分与を登記原因として使ってもよいという先例です。
有責配偶者が相手方に財産分与とは別に慰謝料として不動産を給付する場合の所有権移転登記の登記原因は、「代物弁済」である。(登研531号)
※財産分与とは、婚姻している期間に夫婦共同で作り上げた財産を分与することを言います。一方、離婚の慰謝料は、離婚に伴う精神的苦痛や損害の補償を目的として支払われる金銭です。支払う側が債務者となり、受け取る側が債権者となります。つまり、お金の貸し借りに似ていますよね。で、その債務を不動産というもので支払うということで、代物弁済という原因になります。
この辺りの詳しい話は、必ず専門家にご相談ください。知り合いの法律に詳しい人では、誤った判断をするかもしれません。
3.離婚手続きの違いによる添付書類と原因日付
まずは、司法書士に依頼する場合の添付書類から、各離婚の手続きの違いごとに必要書類をまとめていきます。
①協議離婚の場合
(財産を分与する側)
㋐不動産の登記済権利証(または、登記識別情報通知)
㋑印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
㋒印鑑(実印)
㋓固定資産評価証明書(紛失されている場合には、固定資産税評価証明書でも可)
㋔離婚の記載のある戸籍謄本
※財産分与する方の登記簿上の住所(氏名)が、印鑑証明書の住所(氏名)と異なる場合、財産分与による所有権移転登記に先立ち、所有権登記名義人住所(氏名)変更の登記が必要です。その際は、住所変更の経緯が分かる住民票(戸籍附票)、氏名変更が分かる戸籍謄本などが必要です。
(財産を受ける側)
㋐住民票
㋑印鑑(認め印)
上記の他に、登記原因証明情報、および司法書士への委任状(権利者、義務者の双方)が必要ですが、どちらも司法書士が作成したものに署名押印をいただくのが通常です。
もらう側も受け取る側も、名義変更に参加するため「共同申請」となります。
➁調停、審判、訴訟など裁判上の離婚の場合
こちらは、裁判所の手続きにより決まるのですが、「単独申請(もらう側のみで登記手続きができる)」でできる場合と、協議離婚の場合のように「共同申請」でする場合とがあります。
ポイントは、調停調書等に「申立人は、相手方に対し、離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の不動産を譲渡することとし、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」というような記載がある場合には、「単独申請」でできます。理由としては、調停調書等の文言に分与する側の意思擬制が働くためです。
しかし、この文言に「申立人と相手方は協力して所有権移転登記をする」というような記載の場合には単独申請ができず、協議離婚と同じ「共同申請」になってしまいます。文言に2人で手続きをしなさいと書いているためです。
共同申請の場合には、協議離婚と同じ添付書類に加え、判決書正本(確定証明付)、調停調書(確定証明付) 、審判書(確定証明付) も必要です。
(単独申請の場合の添付書類)財産を受け取る側だけのものになります。
㋐登記原因証明情報(調停調書、審判書、和解調書など)
㋑住民票
㋒認め印
㋓固定資産評価証明書(紛失されている場合には、固定資産税評価証明書でも可)
㋔離婚の記載のある戸籍謄本
※財産分与する方の登記簿上の住所が、調停調書記載の現住所と異なる場合、財産分与による所有権移転登記に先立ち、所有権登記名義人住所変更の登記が必要ですが、この住所変更の登記についても、分与する方の協力を得ずにおこなうことができます(代位による登記)。
4.住宅ローン債務者の変更について(重要)
住宅ローンが残っている不動産を財産分与する場合、財産分与による所有権移転登記をしても、住宅ローンの債務者は変更されません。
たとえば、夫が所有者で、かつ住宅ローン債務者である不動産を妻に財産分与し、それに伴う所有権移転登記をしたとします。この場合、所有者は妻となりますが、住宅ローン債務者は夫のままです。もしも、債務者の変更をするならば、借入先(銀行等)の承諾を得る必要がありますが、なかなか難しい場合も多いでしょう。
※債権者の承諾を得ていなくても、財産分与による所有権移転登記をしてしまうことは可能です。しかし、借入先に無断で名義変更をするのは、住宅ローン契約に違反する可能性が高いため注意が必要です。必ず、ローンの融資先の金融機関と話し合って決めるようにしてください。また、そこでは保証人の方も考慮する必要性が出てくるかもしれません。
4.まとめ
今回は「財産分与」による不動産の名義変更手続きと、融資を受けた住宅ローンの手続きについてお話をしてきました。離婚は当人同士の協議、調停・審判、裁判で片が付きます。特に協議書による場合には、今後の養育費等の取り決めをより実行してもらうために、「公正証書」によることをお勧めしております。
不動産の所有権の名義の変更は、上記の書類があればできるのですが、当該不動産についている住宅ローンの債権を担保している抵当権の変更まで考慮する必要があります。
財産分与による所有権移転の手続きをする前に、まずは、融資先の金融機関の担当者に相談をしてください。
また、所有権の名義変更をする際に、現名義人の方がすでに別居されていて住所が異なる場合や、氏名が変更になっている場合には、所有権移転登記の前に、名義人の氏名・住所の変更登記が必要になります。
詳しくは、専門家にご相談ください。
先日、「デジタル遺言制度」について、毎日新聞記事「遺言状もデジタルで 全文手書きの見直しを法制審に諮問へ」という記事を見つけましたのでご紹介いたします。
目次
1.デジタル遺言制度とは(令和6年2月13日 毎日新聞記事引用)
2.デジタル遺言で最も重要な点
3.まとめ
1.デジタル遺言制度とは(令和6年2月13日 毎日新聞記事引用)
「小泉龍司法相は13日の閣議後記者会見で、デジタル技術を活用して本人が遺言を作成できるようにする民法の見直しについて、15日に法制審議会(法相の諮問機関)に諮問すると明らかにした。現行は、遺言の全文を自書する必要があるが、デジタル化によって負担を軽減し、相続トラブルの防止につなげる狙い。小泉法相は「国民にとってより利用しやすいものにする必要がある」と述べた。
民法は、本人が遺言を作成する「自筆証書遺言」の場合、自ら全文と日付、氏名を手書きし、押印しなければならないと定める。
財産目録については2018年の民法改正で、パソコンでの作成・添付が認められたが、本文は対象とされていない。本人の真意に基づくことを担保するためだが、本文の全文手書きは作成時の負担が大きいとの指摘があった。
法制審では、パソコンをはじめとするデジタル機器を使った遺言書の作成方式が検討される。手書きと違って本人が書いた遺言と確認しづらくなるため、電子署名を活用したり、入力する様子を録音・録画したりする案も取り上げられる見込み。押印する必要性の検証やデジタル機器を使える範囲も議論されるとみられる。」(引用終わり)
今回の諮問で、具体的な案が浮上するかもしれませんね。
以前の日経新聞では、「法務省が年内に有識者らで構成する研究会を立ち上げ、2024年3月を目標に新制度の方向性を提言する。法相の諮問機関である法制審議会の議論を経て民法などの法改正をめざす。」(令和5年5月5日 日経新聞)」とありましたが、2024年3月って、法改正や制度の構築を考えると時間的に間に合いそうにはないですね。
2.デジタル遺言で最も重要な点
①フォーマットに沿って入力するので、形式的な理由で無効になることがない。
すでに、いろいろなサービスでフォームへの入力方式をとられていますが、今回のデジタル遺言制度も同様にフォーマットが用意されており、そこに入力する形で作成するみたいですので、自筆証書遺言のように自分なりの文章で書いたためにその内容が効力を生じないとはなり辛いと思います。
全くないとは、現段階ではどのような仕組みを使ってするのかがわかりませんので、あえて全くないとは言い切れません。
➁紛失がなく、ブロックチェーン技術を使えば、改ざん防止も可能。
デジタル空間で一番気になるのが、なりすましや改ざんといった不正行為のチェック機能だと思います。
そこは、どうもブロックチェーン技術を使うみたいですね。
ブロックチェーン技術とは、デジタル通貨ですでに実績のあるの技術ですね。改ざんがないことや所有者本人であることの証明をするための技術になります。
この2つの中でも、本人の特定を技術的にどのようにするのかが、一番重要になってくると思います。
第三者が勝手に作成・変更できるようでは、制度そのものが崩壊しますからね。
3.まとめ
デジタル技術を使った、「紙」媒体の法制度をデジタル化する流れは、もう止められないでしょうね。
会社の設立に関しても、電子証明書を獲得して、これを使うことで、印鑑の登録がない会社も出てきています。
私の周りでは、すごく少ないですが、すでに法制度として確立されています。
また、戸籍の取得も、各自治体管理から法務省一括管理となります。
こうなることで、最寄りの自治体窓口で、管轄外の戸籍も取得できるようになります。
相続に関連する手続きを円滑にするための施策は、今後も出てくると思います。期待したいところです。
昨年、一度、地元の金融機関からの依頼で「独立行政法人 住宅金融支援機構」の抵当権抹消登記の依頼があったのですが、県外から当該記事を見て問い合わせがあり、前回の抵当権抹消と少し異なる内容でしたので記録しておきたいと思います。
目次
1.令和5年に受けた住宅金融支援機構の抵当権抹消
2.今回、問い合わせがあった住宅金融支援機構の抵当権抹消
3.まとめ
1.令和5年に受けた住宅金融支援機構の抵当権抹消
(前提の状況)
もともと、地元金融機関が3分の2、住宅金融支援機構の融資が3分の1であり、それぞれ独立した抵当権が2つある状態でした。抵当権抹消の対象は、地元金融機関の抵当権と住宅金融支援機構の抵当権、2つの抹消依頼でした。
当然ですが、「解除証書」「委任状」は、地元金融機関のものと住宅金融支援機構のものの2種類ありました。その中の住宅金融支援機構の依頼主である方のお名前の肩書が「代理人」となっており、住宅金融支援機構の理事長の名前とも異なる方でしたので、代表者の名前と代表理事の肩書を申請データに入れ申請したところ、補正が入り、肩書「代理人」、氏名は解除証書と委任状に記載のある名前を記載するように指導がありました。
2.今回、問い合わせがあった住宅金融支援機構の抵当権抹消
今回県外からの問い合わせは、住宅金融支援機構が100%融資し、その窓口(取扱店)が地元の金融機関といった構成になっていました。令和5年に受けた抵当権抹消とは少し条件が異なっています。つまり、本来であれば、抵当権者である「住宅金融支援機構」からの「解除証書」「委任状」となるはずが、取扱店の地元金融機関の代表印しかない「解除証書」と「委任状」だったという内容でした。
私が連絡を差し上げたときには、管轄法務局に連絡した後だったそうですが、やはり抵当権者である住宅金融支援機構の押印がある「解除証書」と「委任状」でなければだめということだったそうです.
3.まとめ
それでは、令和5年に私が抹消する前の抵当権の登記簿の記載は、以下の通りでした。
そして、私が住宅金融支援機構から預かった「解除証書」と「委任状」にあった記載については、以下の通りでした。(画像)
しかし、今回問い合わせがあった住宅金融支援機構の登記簿の記載は、上記と全く同じでしたが、「解除証書」「委任状」の記載は以下の通りでした。(画像)
こ取扱店の金融機関は抵当権者ではないので、これでは、登記は受け付けてもらえません。
画像の記載では、取扱店である信用金庫の解除の意思はしていますが、抵当権者である住宅金融支援機構の解除の意思は、押印がないため表示されていません。
この点が前回の申請の書類と大きく異なる点です。
このように、抵当権の抹消にも、権利者の解除の意思表示がなければ登記申請の書類としては不適切です。「解除証書」「委任状」に記載されている名称とその代表の氏名、そして名称の法人の印鑑の押印により、解除の意思表示を確認します。ですので、住宅金融支援機構の押印がなければ、法務局側では、解除の意思表示とは見ていただけませんので注意が必要です。
令和6年4月1日に始まる「相続登記義務化」、すでにご存じの方も多いと思うのですが、法務局や司法書士会が、様々な場所で無料相談会を実施しています。
アイリスでも、随時無料相談を受け付けております。
義務化の影響として、相談件数は増加してきております。相談の内容として、相続登記義務化のポイントをお話したいと思います。
目次
1.相続登記義務化
2.相続登記義務化の罰則
3.相続登記義務化の対象範囲
4.まとめ
1.相続登記義務化
2024年(令和6年)4月1日に、相続登記が義務化されます。
不動産を相続したことを知ったときから、3年以内に相続登記をしなければ、「10万円以下の過料」が科せられます。
また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。(法務局2022年12月27日発表では、施行日は今後決定されます。)
というのが概要です。
改正前だと相続登記は義務ではありませんでした。
このため、相続登記が放置され何世代にもわたり相続が発生した場合、相続人の人数が増え特定するために相当の時間を費やす、もしくは特定できないといった状態が発生しています。
この状態になりますと、不動産を処分や管理しようと思っても、それができないといったことが発生してしまうことになります。
相続登記が実施できていない不動産について相続登記を推進するために今回の改正となりました。
「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知ったときから3年以内に相続登記」となっています。
相続人に対する遺贈・相続させる旨の遺言がある場合でも同様に3年以内に相続登記をしなければ過料の対象となります。
2.相続登記義務化の罰則
正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。
3.相続登記義務化の対象範囲
相続相談で、すでに相続が発生しているものについてのご質問がよくありますのでご説明いたします。
結論から言いますと、「過去の発生した相続についても今回の改正は適用」になります。
「(附則案 経過措置)第五条六項 新不動産登記方第七六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。(以下省略)」
「(附則 経過措置)第五条六項 施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は①自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日②施行日のいずれか遅い日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない」
つまり、相続登記義務化前に、すでに相続が発生し相続による名義変更の登記をしていない不動産についても、施行日(2024年4月1日)から3年以内に相続登記をする義務が発生することになります。
また、相続登記義務化の不動産の対象は、土地・建物です。
4.まとめ
相続登記の義務化については、罰則があり「最大10万円以下の過料」に科される可能性があります。
対象範囲は、土地・建物ともに相続が発生した場合、相続登記が必要です。
土地だけではないので、注意してください。
また、過去に発生している相続についても対象となります。
相続登記を放置している場合には、速やかに専門家に相談してください。
アイリスでは、随時、相続に関する無料相談会を実施しております。
要予約となりますので、下記電話番号に連絡してください。
【電話番号】 087-873-2653(平日9時から19時30分の間)☆土日祭日も可
相続対策をしているのとしていないのでは、大きな差が出てくる場合があります。特に、相続対策をしていなかったばかりに、相続発生後に遺産分割協議がまとまらないであるとか、相続税が思った以上にかかって大変といったことがあるかもしれません。今回は、一般的な相続対策についてご紹介いたします。相続税対策にも通じる部分もありますが、法律と税法は、似て非なる部分がありますので、法律面について解説いたします。
目次
1.相続対策の必要性といつまでにすればいいのか
2.相続対策①生前贈与
3.相続対策➁生命保険
4.相続対策③公正証書遺言
5.相続対策④養子縁組
6.まとめ
1.相続対策の必要性といつまでにすればいいのか
相続対策をする必要性は、周りで起こっている相続の問題をみればよくわかると思います。
やったらいいのはわかっているけど、まだ早いよと思いの方も多いのではないでしょうか。
この後、解説する相続対策について、自身が動けるうちにしておいた方が良いものもあります。今元気でも、相続対策を思いったった時も元気であるとは限りませんからね。
客観的な指標で言いますと、「平均寿命」と「健康寿命」があります。
「平均寿命とは「0歳における平均余命」のことで、2019(令和元)年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です。
一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、2019(令和元)年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。」(厚生労働省e-ヘルスネット記事引用)
どうでしょうか?意外と健康寿命の年齢が若いことに気づかれるかもしれません。
そうなんです。相続対策については、元気なうちに仕込んでおかないと、それ以上になりますと、気力的に持たないことが多いです。
無料相談会に参加された方たちの中にも、高齢になってから対策を考えて相談に来られる方も少なくないのですが、対策の手続きの話をすると「そんなに大変なら、やっぱりいいです。」となる方もいらっしゃいます。元気で、自身が動ける間に対策を始めることが大事です。
2.相続対策①生前贈与
生前贈与の効果は、亡くなった時点での個人財産を目減りさせておくことが目的です。
資産として現金が多い方は、現金での贈与でも構わないのですが、現金が少ない場合には、土地や建物、動産なども有効な手段です。
名義が記録としてきっちり残るものとして、土地、建物の不動産で、実際に生前贈与されている方もいらっしゃいます。
暦年贈与の110万円の控除額を念頭に入れ、税理士と相談をしながら「持分」形式で少しずつ所有権を子供又は孫に移転していく方法です。
今回は、対象ではありませんが、相続税対策として一般的だった「暦年贈与制度」は、組み戻し期間が、3年から7年へ、大幅に延長され、対策が遅れてしまいますと、せっかくした生前贈与が無駄になってしまうかもしれません。早めの対策が必要になってきます。
相続時精算課税制度の110万円の控除を使った手法もありますが、こちらは税務署への届出が必要となります。専門家と相談しながら、進めてください。
3.相続対策➁生命保険
こちらも、現預金が多い方向けの相続対策となります。
生命保険に加入することで、その額を相続財産から減少させることができます。
ただし、保険に加入すればいいだけではなく、ここで重要となるのは「受取人を本人以外にしておくこと」です。
受取人を「子供」にしておいた場合、法律上、その支払われる保険金は、「子供の財産」となります。
税法上では、保険金は「みなし相続財産」となり、500万円×法定相続人の数を超える者についてのみ、相続財産とみなされます。
それでは、資産が全て現預金だけで、全額生命保険にしておけば、相続財産0じゃないの?と考える方もいるかもしれませんが、裁判所の判例では、半分を超える金額については、認められないものもありますし、30%しか認めていないものもあります。
その額と、状況によると思うのですが、あまりにもたくさんの財産を保険に切り替えるのはお勧めできません。
4.相続対策③公正証書遺言
遺言でもめた場合、争点は遺言者の意思能力に及びます。
自筆証書遺言(仏壇から出てきた手書きの遺言書など)は、作成された年月日によっては、認知症が疑われた時期などに重なっている場合には、問題となるケースが多いです。
そこで、アイリスでも、できる限りおすすめ割いているのが「公正証書遺言」の活用です。
自筆証書遺言と異なり、遺言者は(予約を取って)公証役場に出向くか、公証人に来訪していただくかの形になり、どの場合でも、公証人が読み聞かせ、「2人の証人」がいることは要件となっています。この場合、本人の意思能力について、全くないとは言えませんが、争点になることは少ないです。
アイリスで行う公正証書遺言サポートでは、専門家の司法書士が承認の一人となりますので、仮に裁判になった場合でも、証人として証言することも可能です。
また、元気な間に第1回目の遺言書を作成しておくことで、後にやっぱり変えたいと思ったときにも、変更することは可能です。
5.相続対策④養子縁組
これは、法律上では「遺留分対策」、そして、税務上では「相続税対策」として有名です。
法定相続人を増やすことで、各法定相続人に割り当てる相続分を少なくする方法です。
ここでも、法律上と税法上の違いがあります。
法律上では、養子にした場合でも、法定相続人の数え方は、全員「子供」としてカウントされますが、税法上では、①被相続人に実の子供がいる場合「1人まで認められます」、➁被相続人に実の子供がいない場合「2人まで認められます」となります。
法定相続人の人数の影響は、以下の場合に影響します。
①相続税の基礎控除額
➁生命保険金の非課税限度額
③死亡退職金の非課税限度額
④相続税の総額の計算
税法上は、5人養子にして基礎控除額を増やそうとしても、実子がいる場合は1人のみ、いない場合は2人までしか認められませんので注意が必要です。
6.まとめ
まとめると、相続対策は健康寿命を考え、元気なうちから対策を始めること、そして、大部分の対策が、相続財産の目減り効果を利用したものですので、専門家に相談の上、きっちり対策を講じていくことが重要となります。
アイリスでは、随時、無料相談を受け付けております。
また、相続について法律・税務無料相談会を月1で実施しております。
相続対策は、遅れると遅れるほど、採れる対策の種類が減少してきますので、是非ご活用ください。
連件申請に規定がないことはすでに述べましたが、登記には「一申請情報申請」「同時申請」「連件申請」というものが存在しています。
一つの申請に複数の申請をする場合などの例外的な扱いの要件について解説したいと思います。
目次
1.一件一申請情報主義と位置情報申請の例外
2.一申請情報申請の要件
3.一申請情報申請の可否
3-1.一つの申請情報によって申請することができる場合
3-2.一申請情報申請が法定されている場合
3-3.一つの申請情報によって申請ができない場合
4.まとめ
1.一件一申請情報主義と位置情報申請の例外
一つの申請で複数の申請を登記申請する場合として「一申請情報申請」「同時申請」「連件申請」があります。
①一申請情報申請
同一登記所管轄区域内の数個の不動産につき同一の申請情報で登記申請することが認められるもの。同一の申請書に複数の登記申請情報が記載できるものをいいます。
➁同時申請
同一の不動産に関して同時に数件の登記申請がされ、同一の受付番号が記載されるもの。申請書は別になりますが、同じ申請で複数の申請を同一順位で登記されるものです。
③連件申請
連続して数件の登記申請がされ、連続した受付番号が付されるもの。別々の申請書を一つの申請でおこなうものです。
一件一申請情報主義の原則とは、登記の申請は、1個の不動産ごとに、格別の申請情報を作成すべきであるという原則をいいます。しかし、申請人の負担軽減と登記事務の迅速処理のため、一定の場合に一の申請の申請情報によって申請することが認められています。
「不動産登記令4条(申請情報の作成及び提供)
申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。」とあります。
しかし、この規定は「一申請情報申請」(一つの申請書に一つの申請情報)について述べています。
2.一申請情報申請の要件
登記の一申請情報申請をするには、原則として次の要件を充たさなければなりません。
(一申請情報申請の要件)
①管轄登記所が同一であること
➁登記の目的が同一であること
③登記原因及びその日付が同一であること
④申請人が同一であること
3.一申請情報申請の可否
一の申請情報によって申請ができる場合、できない場合、そして一申請情報申請が法定されているケースについて、具体例を例示します。
3-1.一つの申請情報によって申請することができる場合
①共同(根)抵当権の設定・変更、更正、抹消(昭39.3.7民甲588号)
(所有者を異にする場合も同様に一つの申請情報で可能です)(明32.6.29民刑1191号)(昭41.4.21民甲1119号)(昭42.3.12民甲305号)
➁共有者AB(別住所)が、同一の住所に変更する場合(登研575号)
③仮登記及びこれに基づく本登記を解除を原因として、その抹消登記を申請する場合
(登記の目的:〇番所有権本登記及び仮登記抹消 となります)(昭36.5.8民甲1053号)
④A所有の土地すべてをBに売却。その中に権利証がなく事前通知による申請をする場合(昭37.4.19民甲1173号)
などが挙げられます。
3-2.一申請情報申請が法定されている場合
①信託による不動産の所有権移転の登記と信託の登記(不動産登記令5条2項)
➁受託者が信託財産である不動産を処分・受託者の固有財産・信託終了などした場合の所有権移転登記と信託登記の抹消登記(不動産登記令5条3項、不動産登記法104条1項)
③公売処分による登記の嘱託(不動産登記法115条)
④民事執行法の強制競売による売却、又は担保権の実行による売却に基づく所有権移転と、それに付随する各種の抹消登記の嘱託(民事執行法82条1項)
➄民事保全法の処分禁止の仮処分の登記と、保全借り登記の嘱託(民事保全法53条2項)
※法定のものについては、「信託登記」と「裁判所の嘱託登記」であることが分かります。
3-3.一つの申請情報によって申請ができない場合
①所有者が異なる数個の不動産を、同時に取得した場合(明33.8.21民刑1176号)
➁未登記不動産及び既登記不動産を同一の登記原因(売買、贈与など)により取得した場合(明33.12.28民刑2044号)
③単有名義から共有名義への所有権移転登記と、当該共有者間で定めた共有物分割禁止の定めがされた場合の共有物分割禁止の定めの登記を申請する場合(昭49.12.27民三6686号)
④根抵当権の相続による債務者の変更登記と指定債務者の合意の登記
などが挙げられます。
4.まとめ
今回は、一申請情報申請について解説してきました。それでは、他の「同時申請」や「連件申請」についてはどうなのかと言いますと、「同時申請」については、登記の順位番号を同一にしてほしいというものですが、登記簿中の甲区の所有権ではありえず、乙区の担保権(抵当権など)で、使われる場合が多いです。
この場合の表記は、「1番(あ)抵当権、一番(い)抵当権」と記載されます。
そして、「連件申請」ですが、その中身は別々の登記であり、受付番号も申請順に割り当てられますので、一申請情報申請とは異なります。
別々に登記することもできるのですが、便宜1つの申請で行うものです。
しかし、連件申請には、明確な規定がありません。不動産売買の決済などでは、「①名義変更」「➁担保権抹消」「③所有権移転」「④担保権設定」の順序で連件申請をします。なぜなら、④担保権設定には、金融機関の融資が新しい所有者になされており、登記申請後に発行される受付番号を迅速に知らせなければならないためです。
このように実務上、連件で行う必要の者もあれば、数次相続で祖父の土地と父親の建物を子が相続する場合、連件でなくてもいいのですが、添付する書類に共通する資料が多い場合には連件で申請することもできます。
ただし、全く性質の異なる複数の登記申請を連件申請した場合、一方を却下される場合もありますので、注意が必要です。
遺贈(相続人以外の方に遺言書で財産を贈与すること)発生時に被相続人の住所が異なる場合、数次相続発生の場合など、一つの相続に付随する登記があったり、複数の相続登記がある場合などに連件申請を行います。連件申請をする場合、共通する書類を1つの申請でできるのでよく使いますが、連件申請には要件はあるのでしょうか。お話をしたいと思います。
目次
1.連件申請とは
2.連件申請の要件
3.相続登記で連件申請が発生する場合
4.まとめ
1.連件申請とは
連件申請とは、複数の登記手続きを同時に行う事を言います。
基本的に相続登記をする場合には相続による所有権の移転などを登記することになります。
遺言書で法定相続人以外の方に遺贈をする場合など登記簿上の住所が異なると、事前に住所変更の登記がある場合はそれを行ってから登記をする必要があります。
相続後に不動産を売却した場合には相続登記後に売却の登記もする必要が出てくることがあるのです。
このような場合に複数の登記申請を同時に行う事を連件申請と言います。
2.連件申請の要件
連件申請の規定は、おそらくありません。不動産登記令4条に規定には
「不動産登記令4条(申請情報の作成及び提供)
申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。」
と規定されており、これは、「一申請情報申請」(一つの申請書に複数の登記を記載する場合)についてに書かれたものです。
つまり、連件申請には明確な規定はありません。
連件申請についての規定がないのであれば、なんでも複数登記を1つの申請に連権で入れればいいじゃないかというと、そうではありません。
例えば、「氏名や住所の変更・更正登記」が挙げられます。「氏名や住所の変更・更正登記」を先順に位置付けて「所有権の移転登記」を行うわけです。
なぜなら、所有権を移転するには、登記名義人が義務者となり、印鑑証明書が必要となりますが、そこに記載される「住所」や「氏名」が変わっていた場合、いきなり所有権移転登記はできません。
却下事案となってしまいます。
3.相続登記で連件申請が発生する場合
相続関連の遺言書による遺贈の所有権移転についても、名義人の氏名又は住所が、登記簿上の氏名又は住所と異なる場合には、氏名又は住所の変更・更正登記をしなければ遺贈の所有権移転登記はできません。
一方で、法定相続人間で遺産分割協議をして協議を基に相続登記を実施する場合には、登記名義人である被相続人の氏名及び住所と公的文書(除籍謄本、戸籍謄本、除票、戸籍の附票)から確認します。
ですので具体的な変更登記は不要となります。
2.で説明した通り、連件申請には具体的な規定がないため、3.の事例以外のケースでは、制限は少ないです。
例えば、祖父名義の土地と、父親名義の建物があった場合で、祖父も父親も死亡しているケース(祖父の次に父親が亡くなっているとします)では、連件申請できるのでしょうか?
結果から言えば、連件申請できます。連件申請のメリットは、共通する添付書類をまとめることができる点です。後順番の相続登記の添付書類の欄に、「前件添付」とすればいいからです。ただし、すべての書類が「前件添付」記載でできるわけではないので注意が必要です。
4.まとめ
連件申請には具体的な規定が存在していないので、基本出来ますが、事案によっては、その順番が重要になってくる場合がある点には注意が必要です。
また、連件申請のメリットである添付書類をまとめることができる点についてですが、それぞれの申請の内容を見て判断をする必要があります。
全く同じ書類をすべて前の申請の添付書類を参照してほしい場合には、後順番の添付書類の後に「(前件添付)」と記載します。
一方で、上記事例のように祖父の相続登記の書類の一部を父親の相続登記の資料として参照してほしい場合には、「(一部前件添付)」という記載になります。具体的には
(祖父の相続登記の添付情報の記載)
登記原因証明情報(一部原本還付)
住所証明情報(原本還付)
代理権限証明情報
(父親の相続登記の添付情報の記載)
登記原因証明情報(一部前件添付)
住所証明情報(原本還付)
※祖父の相続も父親の相続も同じ相続人が引き受ける場合には(前件添付)
代理権限証明情報
という記載になります。
アイリスでは、ワンストップ相続解決を目指すために「相続法律・税務無料相談会」に参加しております。
月一度に、相続の法律相談と税務相談が一緒に受けられます。
時間も90分と、行政機関等が行っている法律相談等は30分が多いので、約3倍の時間を費やし、相談者様の問題を解決に導きます。
アイリス独自でも、相続無料相談を実施しております。随時、ご予約を受け付けておりますので、是非この機会にご活用ください。
先日、遺産分割協議書を作成し署名と実印による押印を実施したのですが、印鑑証明書と照合すると、明らかに印影がかけた状態のものがありました。他の書類も確認したのですが、すべて印影の丸枠のほとんどが出ていない状態でしたので、実印の現物を確認すると、完全に欠けている状態でした。このような場合、どのような対応をすればいいのか、実体験をもとにお話をいたします。
目次
1.登録する印鑑の印影の制限(香川県高松市役所)
2.印鑑がかけている場合の対応
3.まとめ
1.登録する印鑑の印影の制限(香川県高松市役所)
これは、私が香川県の高松市役所HPの内容と、今回の事案の問い合わせについての話をしたいと思います。
香川県高松市役所での取り扱い
まずは印鑑を登録できるのは、高松市に住民登録がある15歳以上の方
※意思能力のない方は、印鑑登録をすることができません。
※成年被後見人の方は、本人が窓口にお越しになり、法定代理人(成年後見人)が同行している場合に限り、申請することができます。
そして、登録できる印鑑は一人1つです。
住民票に旧姓(旧氏)併記を申請し、記載された方は、旧姓(旧氏)でも印鑑登録ができます。
一方で、登録できない印鑑については、
①住民登録している氏名と異なるもの
➁職業、資格など、氏名以外の事項を表しているもの
③自己流のくずし文字、極端な図案化などで、本人の氏名を表してないもの
④印影の大きさが、一辺の長さ8ミリメートルの正方形に収まる小さなもの
➄印影の大きさが、一辺の長さ25ミリメートルの正方形に収まらない大きなもの
⑥ゴム印など変形しやすいもの
⑦輪郭がないもの又は30%以上欠損しているもの
⑧竜紋や唐草模様等を外郭としたもの
⑨押印すると文字が白くなるもの(逆さ彫り印)
⑩同一世帯内の方が既に登録しているもの
※⑦輪郭が仮に20%あれば登録できるのかと言いますと、高松市役所では、登録を控えていただくように話をしているようです。(問い合わせで確認)
2.印鑑がかけている場合の対応
高松市への問い合わせで、輪郭部分がかなりかけた印鑑でしたので、かけた状態での登録はできないと言われました。そこで、印鑑屋に同行し、新たに印鑑を購入いただき、その足で市役所窓口に行き、買った印鑑を登録し印鑑証明書を取得しました。
本人が行った場合、数十分で印鑑証明書まで発行されますが、本人以外の代理人の場合、
「登録者ご本人宛に郵送による照会をしますので、登録までに1週間程度かかります。
窓口には、申請時と回答書持参時の2回、お越しいただくことになります。」とのことで、すぐに印鑑証明書を取得することはできません。注意が必要です。
3.まとめ
相続で必要となる添付書類である遺産分割協議書には、実印で押印の上、印鑑証明書を添付します。もちろん、印影と実印が異なる場合には、相続登記はできません。
ご高齢になられ、「もう必要ないだろう」と、実印がかけたままにされている方もいらっしゃるようですが、相続は、いつ発生するかわかりません。かけた実印を所有されている方は、今のうちに印鑑登録のやり直しをすることをお勧めいたします。
先日、とある方から質問を受けました。「相続登記をしなくてもバレませんよね?」。話を聞くと、ずいぶん長く相続登記を放置した不動産がある様子でした。専門家としては、相続登記はできるだけ早く済ましておかないと、時間の経過で相続関係が複雑になると、コストが跳ね上がるので、相続人が把握できている段階で相続登記をしましょうというのですが。本当にばれないんでしょうか?
目次
1.長期相続登記未了土地についての国土交通省及び法務局の対応
2.根拠となる法令等
3.いつから対応しているのか
4.通知書が届いたら
5.まとめ
1.長期相続登記未了土地についての国土交通省及び法務局の対応
「登記官は、起業者(土地収用法第8条第1項)その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者からの求めに応じて調査した結果、当該事業を実施しようとする土地が「特定登記未了土地※」に該当し、かつ、所有権の登記名義人の死亡後政令で定められた期間超えて相続登記等がされていないと認めるときは、当該土地(「長期相続登記等未了土地※1」といいます。)の所有権の登記名義人となり得る者を探索しています(法第44条。所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和4年法律第38号)により、第40条から改正。)。
法第44条では、死亡後の期間を10年から30年とされていますが、令第13条では10年と定められています。」となっています。
※1特定登記未了土地とは
所有権に係る相続登記等がされていない土地であって、収用適格事業の実施その他の公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るために、当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるものを言います(法2条4項)。
また、令和4年4月1日より、民間が行う事業のうち、法律上の根拠(土地区画整理法・都市再開発法等)のある事業であり、公共性の高いもの(土地区画整理事業・市街地再開発事業等)についても要望受け入れの対象となっています。
これらの土地で、長期相続登記がなされていない特定登記未了土地が存在した場合には、各法務局は入札を経て(司法書士が対応することが多い)、法定相続人の調査を実施し、法定相続人情報を作成して戸籍とともに納品する手順になっています。
法定相続人情報には作成番号が付されて法務局で保管されます。そして登記官は、職権で「所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨」の付記登記※2を行います。
法務局は調査対象区域の事前調査により同一登記名義人の土地を把握しており、同一登記名義人が所有(共有)する土地には全て付記登記がなされることになります。
※2長期相続登記未了土地である旨の付記登記
(画像)
この付記登記だけでは、法定相続人の方は認知できませんので、「通知書」が送付されることになります。
この通知書により、法務局の窓口に相談、法定相続情報を取得して、相続登記をすることになります。
2.根拠となる法令等
法 :所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法
令 :所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法施行令
省令:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等に規定する不動産登記法の特例に関する省令
通達:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)
上記法令等により国土交通省及び法務省が対応をしております。
3.いつから対応しているのか
法務省・法務局における所有者不明⼟地問題の解消に向けた取組として、⻑期相続登記未了⼟地の解消に向けた仕組みの創設を平成30年11⽉15⽇から施⾏されています。
4.通知書が届いたら
法務局から任意の相続人に対して「長期相続登記等がされていないことの通知」が届くことがあります。
この「長期相続登記等がされていないことの通知」が届いたら、その通知を持って管轄法務局へ行き、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)やすでに調査により判明している法定相続人情報を閲覧することをお勧めします。
この法定相続人情報の閲覧には、通知に記載されている法定相続人情報の「作成番号」、運転免許証などの本人確認書類、閲覧手数料(450円)が必要となります。
また法定相続人情報があれば、本来相続登記で必要となる戸籍謄本を省略して相続登記をすることができます。
5.まとめ
このように、相続登記を放置していても、行政、民間で公共性の高い開発をする際には、長期相続登記未了土地が存在する場合には、相続人の調査が入り通知書が送付されます。
長い間、相続登記が放置されたことによって相続人が増え、今まで聞いたことがなかった親戚の名前が載っているかもしれません。
そのような場合には、お近くの司法書士事務所、または法務局へぜひご相談ください。
分かりやすく説明されることで気持ちも軽くなると思います。
熟慮期間(相続開始を知った時から原則3ヵ月以内)に相続人が相続放棄または限定承認の手続きをしなかった場合や、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合などに、相続人が当然に相続を単純承認(被相続人の権利義務を無制限かつ無条件に承継)したものとみなされる制度となります。知らない間に、せっかく手続きをした相続放棄や限定承認が無駄になります。そうならないためにも、判例等の事例を解説いたします。
目次
1.法定単純承認とは
2.相続財産の処分とされた判例等
3.民法921条3号の問題とは
4.まとめ
1.法定単純承認とは
法定単純承認とは、熟慮期間(相続開始を知った時から原則3ヵ月以内)に相続人が相続放棄または限定承認の手続きをしなかった場合や、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合などに、相続人が当然に相続を単純承認(被相続人の権利義務を無制限かつ無条件に承継)したものとみなされる制度と、熟慮期間(相続開始を知った時から原則3ヵ月以内)を徒過した場合に「法定単純承認」により、単純承認(財産も債務もすべて引き受ける)したものとみなされます。
①相続財産の処分
「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき。(民法921条1号本文)」
「ただし、保存行為や短期賃貸借は除かれる。(民法921条1号但し書き)」
➁考慮機関の徒過
「相続人が民法915条1項の考慮機関内に限定承認または放棄をしなかった場合、単純承認したものとみなされます。(民法921条2号)
そもそも➁のケースでは、考慮期間中に、相続放棄も限定承認もしなかった場合ですが、①のケースでは、すでに相続放棄や限定承認を認められていても、その効力を失う場合がありますので、相続財産の処分には、注意が必要です。
2.相続財産の処分とされた判例等
①処分とは、限定承認又は相続放棄をする以前の処分に限られ(大判昭5.4.26)、それ以後に処分したときは、民法921条3号の問題となります。(この点については3.で述べます)
➁相続人が相続財産である「金銭債権を取り立てこれを消費する行為」は、法定単純承認事由である「相続財産の一部を処分したとき」(民法921条1号本文)に該当する。(最判昭37.6.21)
③法定単純承認事由である「相続財産の処分」は、相続人が被相続人の「死亡の事実を知った後」か、「確実に死亡を予想しながら」したものでなければならない。(最判昭42.4.27)
④処分には、「法律的処分」だけでなく「事実的処分」も含む。
放火は「処分」に含まれますが、失火・過失で滅失させた場合は含まれません。
➄保存行為。短期賃貸借は含まない。
㋐保存行為について、修繕・時効更新手続き等・不法登記の抹消請求が例として挙げられています。
㋑短期賃貸借は管理行為に該当するが、相続財産の管理人としての立場がある(民法918条)ので、その行為をもって単純承認とすることはできない。
⑥未成年である相続人の親権者が相続財産を処分した場合は該当する。
未成年者=法定代理人(親権者)とみています。つまり、「処分」について法定代理人で見ているということになります。
⑦一部について処分があれば、他の相続財産についても放棄はできなくなります。
3.民法921条3号の問題とは
「相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。 ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。」となっています。
詳しく言いますと、相続人が限定承認または放棄をした後に、相続財産の一部を隠匿し、私に(自分勝手にほしいままに)消費し、悪意で財産目録に記載しなかったとき、原則として、単純承認したものとみなされてしまいます。
相続人が限定承認をする場合に、債務の引き当てとなるべき財産を明確にするために作成する財産目録を作成しますが、現金や預金、動産、不動産といった積極財産だけでなく、消極財産(債務など)も記載しなかった場合にも民法921条3号の適用がありますので注意が必要です。(最判昭61.3.20)
4.まとめ
基本、相続財産の処分は、限定承認または放棄を申請する前の話をしていますが、限定承認又は放棄を受けたのちも、処分する行為をしないようにしないと、法定単純承認となり、単純承認(財産も債務もすべて引き受ける)とみなされてしまいますので、相続財産について何もしないことが大事です。
かつて、予備校講師の司法書士先生が話していた内容になるのですが、被相続人の「形見」を財産目録に記載していなかったために、限定承認が取り消されたと話をしていました。これくらいは、という気持ちにはなるかもしれませんが、それ相応のリスクを伴います。
不明な点は、専門家に必ず相談するようにしましょう。
先日、収益物件の相続登記の際に、債務者を被相続人とする共同根抵当権が被相続人の個人債務者として設定されていました。当然土地・建物の相続登記はする必要がありますが、根抵当権の場合どのように対応をすればいいのでしょうか。解説していきます。
目次
1.根抵当権と抵当権の違い
2.相続発生後6ケ月以内にできる対応
3.相続発生後6か月経過後にできる対応
4.まとめ
1.根抵当権と抵当権の違い
(抵当権)
抵当権とは、住宅ローンで融資を行う金融機関が、借入を受ける人が購入する不動産などをローンの担保として設定する権利のことです。
担保となる不動産などは債務者が利用できますが、もしローンを返済できなくなった場合は、代わりに担保に設定された不動産を金融機関に差し押さえられます。
つまり、「借入金=抵当権で担保する債権」ということになります。
抵当権の債務者に相続が発生した場合には、相続による債務者の変更の登記が必要になります。
(根抵当権)
根抵当権とは抵当権の一種であり、複数回の貸付・借入を行う契約において利用されます。根抵当権では、担保となる目的物から貸付の限度額を定め、その範囲内で貸付・借入を行います。
抵当権は、一度の貸付・借入ごとに設定する必要があり、同じ債務者・債権者同士で契約を行う場合でも、その都度、抵当権を設定しなければなりません。
しかし、根抵当権であれば、貸付限度額の範囲で何度でも貸付・借入を行えます。カードローンの借り入れに似ています。
要は、借入金も担保されますが、それ以外に借りた借入金も担保でき、発生消滅を繰り返しても、根抵当権の効力は継続します。
抵当権の場合、借入金を全額返済した場合、抵当権はその担保権としての効力が無くなり抵当権を抹消することができます。
一方で、根抵当権の場合には、元本確定事由が発生しない限り、債務を全額返済しても根抵当権の効力は無くなりません。この点が一番抵当権と異なる部分です。勿論、債務者が債権者である金融機関等と話をして、根抵当権がもう必要なければ、「解除」により抹消することは可能です。
2.相続発生後6ケ月以内にできる対応
(元本を確定させないための登記)
元本確定前の根抵当権の債務者が亡くなったときは、相続開始後6カ月以内に指定債務者の合意の登記をしないと担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされます。
金融機関と相談した上、指定債務者を選び登記するように指定があった場合、指定債務者の合意の登記をするためには、その前提として被相続人の相続人全員を債務者とする債務者の変更登記をしなければなりません。
つまり、①相続人全員の債務者変更登記、➁指定債務者の合意の登記、の2回の登記が必要となります。債務者の変更の登記となりますので、登録免許税は、共同根抵当権が設定されている物件の数×2回分×1000円となります。
また、相続発生から合意までの間の各相続人が承継した債務を担保するためには、さらに③債権の範囲の変更登記も必要になります。
(事例)
根抵当権者X銀行、債務者Yの根抵当権があり、Y所有の不動産があったとします。Yの相続人はA,Bで、Aが不動産を遺産分割協議で相続登記をしているものとします。
①相続人全員の債務者変更登記
「登記権利者 X銀行
登記義務者 A
変更後の事項 債務者(被相続人 甲) A B」
➁指定債務者の合意の登記
「登記権利者 X銀行
登記義務者 A
指定債務者 A」
③債務者及び債権の範囲の変更登記
「登記権利者 X銀行
登記義務者 A
変更後の事項
債務者 A
債権の範囲 銀行取引 手形債権 小切手債権
○年○月○日債務引受(旧債務者B)にかかる債権
○年○月○日相続によるAの相続債務のうち変更前根抵当権の被担保債権の範囲に属するものにかかる債権」
※AがYの相続により承継した債務及びBが相続した債務を免責的に引き受けたものにかかる債務は根抵当権によって担保されませんので、特定債権として追加する必要があります。債務者をAとする変更登記は交替的変更となりますので、変更前に生じたXのAに対する債権の範囲に属するものにかかる債権も根抵当権によって担保されることになります。
元本確定前の根抵当権において、債務者が変更した場合、新たな債務者の債権は担保するものの、今までの債権は外れてしまいますので、このような特定債権として、根抵当権の債権の範囲を変更することで、根抵当権の担保範囲に加えることができます。
3.相続発生後6か月経過後にできる対応
先にも書いた通り、元本確定前の根抵当権の債務者が亡くなったときは、相続開始後6カ月以内に指定債務者の合意の登記をしないと担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされます。
元本が確定すると、その後は通常の抵当権のように相続時の債権を担保する抵当権と同じになりますが、極度額まで「利息」「遅延損害金」を担保することができます。当然、相続後に発生した債権については、当該根抵当権では担保できなくなってしまいます。そして、確定後の債務を全額返済すれば、根抵当権は効力を失います。
それでは、具体的にどうなるのかと言いますと、以前のブログの抵当権の債務者の相続と同じ手順で行うことになります。
金融機関から指定があると思うのですが、①遺産分割協議による相続登記を行う方法と、➁相続登記後に免責的債務引受による債務を承継する相続人の債務引受けの登記の2種類となります。
これらの登記は、元本が確定していないとできませんので、相続発生から6か月経過後に行うことができます。
4.まとめ
以上が、根抵当権の債務者の相続による変更登記の内容です。
抵当権と比較すると、元本確定前の「指定債務者の合意の登記」が特殊ですね。
また、債権が発生消滅を繰り返しているので、相続発生時を基準に「債務者と債務の範囲の変更登記」も必ず考えなければなりません。
一方で、元本が確定してしまった場合、通常の抵当権と同じ扱いになっていることが分かります。
前回実務で、相続不動産に個人債務者の共同根抵当権が設定されており、相続人と金融機関との話し合いで、元本確定する方向で決まりましたので、6か月経過後に債務引受の遺産分割協議により登記原因証明情報を作成し登記を実行いたしました。
このように根抵当権の債務者の相続は、かなり複雑ですので、金融機関とご相談の上、専門家に相談することをお勧めいたします。
アイリスでは、「アイリスDEいい相続」の無料相談会を随時実施しております。また、ワンストップの相談会「相続法律・税務無料相談会」を月に1度実施しておりますので、是非ご活用ください。
住宅ローンが残った状態で亡くなった場合の相続登記として、土地・建物の名義変更は当然なのですが、住宅ローンの借入金を担保している抵当権の債務者の変更登記も必要となります。この辺りについて解説したいと思います。
目次
1.抵当権とは
2.債務者の変更する2種類の登記
3.まとめ
1.抵当権とは
抵当権とは、住宅ローンで融資を行う金融機関が、借入を受ける人が購入する不動産などをローンの担保として設定する権利のことです。
担保となる不動産などは債務者が利用できますが、もしローンを返済できなくなった場合は、代わりに担保に設定された不動産を金融機関に差し押さえられます。
つまり、「借入金=抵当権で担保する債権」ということになります。
抵当権の債務者に相続が発生した場合には、相続による債務者の変更の登記が必要になります。この登記を実現するためには、2通りのやり方があります。ほとんどの場合、債権者である金融機関から指定があると思います。
2.債務者の変更する2種類の登記
①遺産分割協議による方法
債権者(金融機関)の承諾を得て、遺産分割協議によって相続人の一人が債務を承継する、抵当権変更登記のやり方です。登記申請書は、1件で済みます。
具体的には、「債務は、相続人全員が法定相続分によって承継し、遺産分割協議の対象とはならない」とされていますが、これは債権者保護を考えてのことなので、債権者が承諾するのであれば、債務の遺産分割協議も有効にすることができます。
遺産分割協議の効果は相続開始時にさかのぼるため(民法第909条)、債務を引き受けた相続人は、被相続人の死亡日にさかのぼって債務を承継することになります。
抵当権変更登記申請のやり方ですが、「〇年〇月〇日相続」を原因として、1件の登記申請によって、債務者を特定の一人の相続人に変更できます。
「〇年〇月〇日相続」の日付は、被相続人の死亡日です。
「変更後の事項」は、「債務者」として、債務を承継することになった相続人の住所氏名を記載します。
登記申請の添付書類としては、報告形式の登記原因証明情報があれば、相続を証する戸籍謄本や遺産分割協議書の添付は必要ありません。
➁免責的債務引受による方法
第1に、相続を原因として、債務者を共同相続人全員に変更する抵当権変更登記を行い、その次に、相続人の一人が免責的債務引受を行ったことによる抵当権変更登記を行うやり方です。登記申請書は、2件必要です。
1件目の抵当権変更登記申請で、「〇年〇月〇日 相続」を原因として、債務者を相続人全員(ここではABCの3人)に変更します。
2件目の抵当権変更登記申請で、「〇年〇月〇日 B及びCの債務引受」を原因として、債務者をAに変更します。この2件目の免責的債務引受については、債権法改正により、法務省より通達(令和2年3月31日付法務省民二第328号)が出ています。
※免責的債務引き受けをする場合には、次の4パターンが考えられます。ここでは(X債権者、Y債務者、Z引受人)とします。当然その債務の性質は、「他人が変わって履行することができる債務であること」です。住宅ローンのような金銭債務の場合は対象となります。さて、契約のパターンと、効力が生じる要件についてお話をいたします。その内容は、
(免責的債務引受契約の契約当事者と契約が有効になる要件)
①XYZの三者間の契約
問題なく有効となります。
➁X(債権者)Z(引受人)間の契約
(民法472条2項)により、Y(債務者)の意思に反しても可能です。ただし、X(債権者)からY(債務者)に対して「通知」した時に効力を生じます。
③Y(債務者)Z(引受人)間の契約
(民法472条3項)により、X(債権者)の承諾があれば有効です。
④X(債権者)Y(債務者)間の契約
Z(引受人)の意思に反してはできません。
債務を引き受ける契約はこれでいいのですが、実際に担保権(ここでは抵当権)を移転する場合の注意点は、
①引受人への担保権の移転
債権者は、免責的債務引受によって債務者が免れる債務に設定された担保権(抵当権)を移転することができます。(民法472条の4第1項)ただし、当該担保権を設定した者が引受人以外の場合の者である場合には、その者の承諾(担保権移転の意思表示)を得なければならない。(民法472条の4第1項但書)
➁引受人に対する意思表示
担保権の移転は、免責的債務引き受けを行うよりも前に又は同時に、引受人に対する意思表示によって行わなければならない。(民法472条の4第2項)
③保証人の承諾
債務者の債務に付された保証債務を引受人の債務を担保するものとして移すためには、保証人の承諾を要する。(民法472条の4第3項)保証人の承諾は、書面又は電磁的記録でしなければならない。(民法472条の4第4、5項)
※令和2年の債権法改正の論点になります。詳しくは専門家にご相談ください。
3.まとめ
このように、免責的債務引受けの場合、単純に債務を引き受けてもらうだけの契約をしてその内容を登記するだけ、とはなりません。相続が発生した場合、金融機関への相談及び専門家に相談を必ずするようにしてください。
相続登記義務化の施行日に近づくごとに、問い合わせが増えています。その中で、ご質問が多い「義務化の対象範囲」について、再度、解説をしたいと思います。
目次
1.相続登記義務化の発端
2.相続登記義務化の対象範囲
3.まとめ
1.相続登記義務化の発端
Q1.知りませんでした!不動産(土地・建物)の相続登記が義務化されるのはなぜですか?
「相続登記がされないため、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加し、周辺の環境悪化や公共工事の訴外など、社会問題になっています。この問題解決のため、令和3年に法律が改正され、これまで任意だった相続登記が義務化されることになりました。」(法務省パンフレット引用)
東日本大震災後の復興作業の際、土地の所有者を特定するために大変苦労したということがあったみたいです。
実際に、仙台などで各地の司法書士を臨時の公務員として雇い、相続人の調査を行い所有者を特定していったという話を聞きました。そのため、復興作業が大幅に遅れたそうです。この時問題になったのが、任意である相続登記の放置です。現在、所有者不明土地の面積は、九州と同じ面積だそうです。
これが原因となり、今回の相続登記義務化の流れになっています。
2.相続登記義務化の対象範囲
Q2.相続登記の義務化とは、どういう内容ですか?
「相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得できたことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になります。
正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
遺産分割の話し合いで不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、登記をする必要があります。」(法務省パンフレット引用)
Q3.義務化が始まるのはいつからですか?始まった後に、対応すれば大丈夫でしょうか?
「「相続登記の義務化」は、令和6年4月1日から始まります。ただ、今から備えておくことが重要です。
また、令和6年4月1日より以前に相続した不動産も、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります(3年間の猶予期間があります。)ので、要注意です。」(法務省パンフレット引用)
これらの質問で、不動産の対象範囲が土地だけだと勘違いされている方が、意外に多いです。おそらく、相続登記義務化の発端となったのが「所有者不明土地問題」だからだと思いますが、相続登記義務化の対象範囲は、不動産(土地・建物)です。
質問内容にもあったのですが、義務化が始まってからやればいいというお話がありましたが、今元気な方でも、時間の経過により状況は変わってきます。
亡くなった場合には、さらに相続人が増えるケースや、認知症などになってしまい、遺産分割協議の際に成年後見人の申請が必要になったりする場合があります。
相続人の調査や成年後見人を就けるにも、それなりのコストが発生してしまいます。早めの対処が、「安心」をもたらしてくれます。
早めに相続の対応をするように心がけてください。
3.まとめ
「相続登記義務化」のキーワードを知っていても、その中身まで詳しく知っている方はなかなか見たことがありません。
アイリスでも、相続無料相談や相続法律・税務無料相談会、無料セミナーなどを通じて、啓蒙活動を実施しております。
身近の人や親せきの方で専門家以外の方は、専門家ではありません。
以前、ご相談を受けた際、かたくなに相続登記は土地だけでいいとおっしゃる方がいました。どうして、土地だけなのか聞いてみますと、「詳しいおじさんが、土地の名義だけ変更すれば義務は免れると言っていた。」とおっしゃっていました。そこで、法務局が出しているパンフレットを見せて、相続登記義務化の範囲が不動産(土地・建物)であることを伝えると、両方相続登記をしてくださいという話になりました。
このように、情報ソースを誤ると誤った判断のもとに行動してしまう恐れがありますので、必ず専門家への相談をするようにしてください。
先日、住民票の住所に「○〇方」という表記がありました。相続登記のような名義人を変更する場合、申請の際に住民票を添付するのですが、果たして住民票に記載されている表記すべてを名義人の住所として記載する必要があるのかについて解説したいと思います。
目次
1.住民票の表記
2.アパート・マンション・〇〇方
3.まとめ
1.住民票の表記
最近、住所に関する質問や間違いが多いので、少し解説したいと思います。
「〇丁目」の表記ですが、「一丁目(漢数字)」「1丁目(アラビア数字)」のどちらで登記すればいいのでしょうか?この場合は、必ず漢数字になります。たまに、住民票上の住所は「1丁目」なのに間違っているとおっしゃる方がいらっしゃいますが、「××〇丁目」は固有名詞と解されている(例えば「錦町二丁目」)ので漢数字を使うようです。
ここ何年かで町名がアラビア数字で表記されている住民票や印鑑証明書をたまに見かけることがありました。確かに、役所の文書の表記が正しいと思ってしまうのは、当然と言えば当然なのかもしれませんね。
2.アパート・マンション・〇〇方
マンションの住民票の住所の表記は、少し特徴があります。住所の表記として、「〇番〇号××マンション101号」「〇番〇-101号××マンション」のように、「号」が来る位置が違ったり、マンション名があったりなかったり、部屋番号があったりなかったりしています。現に私の住まいも「〇番〇-101号××マンション」という表記になっています。
これがアパートと呼ばれる建物になりますと、「〇番〇号××アパート」という表記が一般的です。過去に登記した資料を確認すると、アパートの場合は確かにこのような表記になっています。
それでは、マンションやアパートの名義変更の際に登記すべき住所の表記はどのようなものになるのでしょうか。実務では、「~号」までは必ず登記しなければならず、それ以下は任意で登記できることになっています。ですので、「〇番〇-101号」なのに「〇番〇号」と登記することはできません。必ず部屋番号まで含めた〇―101号と登記しなければならないわけです。末尾のマンション名は登記してもしなくても構いません。
最後に、「○〇方」という表記の場合には、どのようにすればいいのかお話をしたいと思います。この「○〇方」ですが、役所への申し出によって表示することや表示しないことができます。そのため、住所としては必ず表記しなければならないものではありません。よって、登記も同じということになりますので、住民票に(住所)○〇方の場合、(住所)のみの表記で登記申請しても受理されます。
3.まとめ
まとめますと、
①「〇丁目」の表記は、不動産登記を申請する場合は漢数字での表記となります。
➁「〇番〇号」までが不動産登記の住所表記しなければならない範囲となるため、アマパート、マンション名の表記は省略することができます。ただし、部屋番号が号の表記に含まれる場合には、部屋番号までが登記の際に表記しなければならない範囲となります。
③(住所)「〇〇方」の場合、「〇〇方」の表記は任意となります。
住民票や印鑑証明書に記載されている住所を全部登記に反映しなければならないと思われている方もいますが、実は上記のように、省略することも可能な部分もあります。
令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。すでに相続が発生している場合も対象になります。義務化されますので、罰則も規定されています。アイリスでは、「相続の不安」を少しでも軽減するために、セミナー、無料相談会を通じて情報を発信してまいります。
目次
1.相続登記義務化の概略
2.相続登記義務化の罰則
3.相続登記義務化の対象範囲
4.相続法律・税務無料相談会のご案内
5.生前対策についてのご相談
1.相続登記義務化の概略
2024年(令和6年)4月1日に、相続登記が義務化されます。不動産を相続したことを知ったときから、3年以内に相続登記をしなければ、「10万円以下の過料」が科せられます。
また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。(法務局2022年12月27日発表では、施行日は今後決定されます。)
というのが概要です。
2.相続登記義務化の罰則
先にも記載しましたが、法令で相続登記が義務化されましたので、「罰則」が存在します。
罰則の内容は、「正当な理由なく相続登記を怠った場合、最大10万円の過料」が科せられます。過料を支払ったからと言って、相続登記の義務を免れるわけではありません。ご自身で相続調査を行い相続登記を行うか、専門家である司法書士に依頼するかの選択に迫られます。
司法書士に依頼する場合、10万円から15万円ほどの手数料がかかります。(相続による所有権移転登記に必要な登録免許税は、専門家に頼んでも、ご自身で登記を申請してもかかる必要な税金となります。手数料は登録免許税額を除いています。)
早めに専門家に相談をして、義務化に備えるようにしてください。
3.相続登記義務化の対象範囲
すでに相続が発生している場合についてのご質問が多く寄せられていますが、過去の発生した相続も、この度の相続登記義務化の対象となります。
誤った情報を聞いて相談される方が多くいます。法律に詳しい親戚や近所の方は専門家ではありません。
必ず、専門家(司法書士等)や行政の無料相談会等をご活用いただき、正しい情報を得てください。
また、数代にわたり相続登記が実施されておらず、相続人がどなたかわからないケースもよく見ます。この場合、相続人の調査が広範囲にわたる場合には、専門家に必ず相談をして、相続人を特定するようにしましょう。費用は掛かりますが、自分で判断するのはかなり難しいです。
なぜ相続人の特定が必要なのかと言いますと、「遺産分割協議」を行い、将来処分することも含めて、当該不動産を管理可能な相続人に所有権を移すために必要となります。遺産分割協議の要件は、相続人全員で協議することです。そのため、相続人が全員特定できていない遺産分割協議は無効となりますので、必ず専門家に相続人調査の依頼をしてください。
4.相続法律・税務無料相談会のご案内
アイリスでは、ワンストップで相続を解決するために、相続登記などの法律・相続税などの税務について、合同の無料相談会を月1(第三水曜日)に開催しております。
時間帯は3つで、すべて予約制となりますので、事前に電話でご予約ください。
ご予約・詳細はこちらをクリック!
5.生前対策についてのご相談
アイリスでは、相続登記に関するご相談以外にも、相続の生前対策のご相談を受け付けております。こちらも予約制となっておりますので、電話で確認の上、アイリス国際司法書士・行政書士事務所まで来訪ください。
(生前対策として)
①遺言書作成サポート
➁家族信託
③生命保険活用の相続対策
などについて、ご案内させていただいております。
また、介護施設様、金融機関様でのセミナー開催も受け付けております。ぜひ、ご活用ください。
セミナー開催の場合、参加者には「相続登記義務化について」「生前の遺留分対策」についてのテキストをお渡ししております。
先日相続登記を受任し、戸籍を集める中で、とても悲しい記載がありました。それは、戦後外国から未帰還のため行政が、未帰還者に関する特別措置法に基づいて死亡宣告をしているというものでした。ちょうど戦後の混乱で日本国本土に帰還できなかった方に出す死亡宣告です。この内容について、お話をしたいと思います。
目次
1.満州国における戸籍の取り扱い
2.未帰還者に関する特別措置法の戦時死亡宣告(せんじしぼうせんこく)
3.まとめ
1.満州国における戸籍の取り扱い
満州国(または満洲国)は、かつて存在した国家で、1932年から1945年まで存在しました。
正式名称は「満洲帝国」で、日本によって中国東北部の満洲地域に建国されました。
第二次世界大戦が進む中、1945年の敗戦に伴い、満州国は崩壊し、溥儀は戦犯として起訴されました。中国東北部は再び中華民国(中華人民共和国の前身)の統治下に戻りました。
満州国に駐在した日本人は、本土に本籍地を置いたまま活動をしていた ため、「満州の戸籍」というのは実はないのです。 当時は、満州国の全権大使に出生を届けると、本土のその家の役場に通知がいき、その家 の戸籍に入る手続きが取られていました。
つまり、日本に置いていた本籍地で、満州国で生まれた方の戸籍も取得可能です。
実務上でも、特に問題なく戸籍を取得することができました。
戸籍には、「昭和〇年〇月〇日満洲国東安省東安市東安陸軍官舎〇の〇で出生父A届出同年〇月〇日在満洲国特命全権大使受附同月〇日送付入籍」と記載されていました。
2.未帰還者に関する特別措置法の戦時死亡宣告(せんじしぼうせんこく)
「戦時死亡宣告(せんじしぼうせんこく)とは、未帰還者に関する特別措置法2条1項に基づき未帰還者(未帰還者留守家族等援護法2条1項に規定する未帰還者)について厚生労働大臣の請求により行われる失踪宣告(未帰還者に関する特別措置法2条3項参照)。
太平洋戦争終結後、旧満州など、海外に行ったまま日本に帰って来ない未帰還者の整理を進めるために設けられた制度。1959年に成立した未帰還者に関する特別措置法により、生死不明の未帰還者が戸籍上は死亡したものとして扱われることとされた。」(Wiki引用)
厚生労働大臣の請求により、戦地からの未帰還者に関しては、戸籍上死亡宣告をすることで、死亡みなしという取り扱いになっています。
「敗戦後に旧満州や中国、南方(東南アジアやオセアニア)などから引き揚げた軍人軍属と民間人は計約630万人にのぼり、混乱の中、消息不明の人が数多く残された。1959年、7年間以上生死不明の未帰還者に戦時死亡宣告ができる「未帰還者に関する特別措置法」が成立。厚生労働省社会・援護局によれば、2万583人が宣告を受けた。2012年3月末時点で336人が未帰還とされている。戦死した日本人は約310万人で、うち約240万人が外地で死亡した。」(Wiki引用)
帰還できなかった方で、死亡宣告を受けた方が数多くいることがわかりました。
3.まとめ
司法書士業務をしていると、このような場面に遭遇することは、少なくありません。
実務上では、死亡という扱いになり、相続人もいなければ、その方は当該相続には関係がなくなります。
しかし、何でしょうね、この複雑な気持ちになるのは・・・・。
相続登記義務化を控えて、相談件数、ご依頼の件数が増加しております。そんな中で、相続登記を急ぐ意味がよく分からないという方がいらっしゃいました。被相続人の方や相続人の状況によっては一刻を争う事態であることも少なからずありますので、解説していきたいと思います。
目次
1.民法177条の意味
2.遺言・遺産分割協議と債権者の関係
3.まとめ
1.民法177条の意味
民法177条では
「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定されています。
つまり、正当な所有者であることを明示したいのであれば、不動産登記をしなければ第三者に対抗することはできないということです。商業登記(会社法人の登記)は、登記をすることは義務ですが、不動産登記については、現状では義務ではありません。その代わり、所有権を争う第三者が先に登記を具備してしまった場合、もう対抗する手段はないというわけですので、自己の権利主張のために登記を入れなさいというのが建前です。
その結果、第三者をあまり意識する必要のない相続登記について放置しているケースが横行し、結果、東日本大震災の復興において、大きな妨げになったため、今回の相続登記義務化の流れができたと言われています。義務化になっても相続を知ってから3年以内に登記をすれば、罰則である過料はかかりません。それでは、3年間放置しておいても問題ないのかと言われると、実はそうではないケースも多く存在します。
2.遺言と債権者の関係
相続人の債権者(相続人の一人が借金をしている先)がおり、借金も相当額ある場合、債権者には債務を取り立てる正当な権利があります。その場合、代位登記で法定相続分にて相続登記を代位で行い、さらに債務者である相続人の持分を差し押さえることができてしまいます。
特定財産承継遺言(民法1014条2項)、民法改正前に「相続させる旨の遺言」と呼ばれていた遺言です。従前はこの遺言をした場合、第三者が登記を入れた場合でも、遺言で指定されている相続人が所有権の全部を主張できていましたが、現在では変わっております。上記のような状況になった場合、仮に当該不動産全部の遺言指定がなされていたとしても、債権者の登記が先の場合、指定された相続人は債権者に対して、法定相続分の権利しか主張できません。つまり、取り戻すために債権者と交渉し、債務者である相続人の持分を取り戻すしか方法が亡くなります。先に指定相続人が相続登記をしておけば、債権者は代位で相続登記ができません。
相続登記を急ぐ意味は、十分あります。
3.まとめ
このように、状況次第とはなりますが、相続登記を遅らせたために、正当な権利を持つ第三者により登記されてしまいますと、自身の法定相続分の持分の権利しか主張できなくなってしまいます。特定財産承継遺言がある場合には、司法書士に早めの相談をした方がいいと思います。
相続登記に必要な書類の一つに、亡くなった不動産名義人の「住民票の除票の写し」又は「戸籍の附票」が必要です。
しかし、令和元年6月19日までは、「住民票の除票」の保存期間が、少女された日から5年間とされていたため、長年相続登記を放置した場合、取得できないケースも発生することがあります。
この場合の対処法として、どのようにすればいいのでしょうか。
目次
1.法定相続情報証明制度を申請する場合
2.相続登記に必要な場合
3.まとめ
1.法定相続情報証明制度を申請する場合
法定相続情報証明制度を利用する場合、戸籍全部事項証明書、除籍謄本、改正原戸籍謄本などを取得する必要があります。
多いときで10通を有に超える場合もあります。この戸籍の束をもって、各金融機関に名義変更や解約の手続きに持参するのは、非常に手間であるため、法定相続情報証明制度が、平成29年5月29日に実施されました。
この法定相続情報証明制度で証明されるのは、原則「戸籍類」の法定相続関係の証明です。住所は任意での申請になりますが、申請人の本人確認として、住民票の写しが必要になってきますので、少なくとも申請人に関しては住民票が必要になります。
任意で住所も法定相続情報証明に記載してもらうためには、それぞれ相続人の住民票、被相続人の除票が必要となります。
ここで注意しなければならないのは、申請人の本人確認のために提出する住民票を原本でかねてしまいますと、法務局に申請人の住民票を取得されてしまいますので、コピーに原本に相違ない旨を記載し署名押印したものも併せて提出する点です。
先ほども書きましたように、法定相続情報証明制度で証明できる内容は、戸籍に記載されている法定相続情報がメインとなりますので、被相続人の除票や戸籍の附票がない場合、「最後の本籍」の項目で事足ります。
2.相続登記に必要な場合
それでは、相続登記の必要書類としての住民票の除票や戸籍の附票が取得できない場合どのようにすればいいのでしょうか?
登記官が不動産の所有者の名義の同一性を確認するために「氏名」「住所」で特定します。
つまり、被相続人の最後の住所と不動産名義の住所が一致しており、氏名も同じであれば同一人物との判断をしてもらえます。
しかし、住所が異なる場合には注意が必要です。最後の住所の一つ前の住所であれば、住民票の除票に「前住所の表記」で確認をすることができます。
しかし、それより前の住所が登記簿に記録されている場合、住民票の除票が使えません。その場合は、戸籍の附票を使って特定していきます。
しかし、令和元年6月20日以前に廃棄された場合、「除票」も「戸籍の附票」も取得はできません。この場合、以下の方法で登記官に同一性を認めていただく必要があります。
①権利証(登記済証)
権利証は、不動産に権利があることを証明する書類だからです。通常、相続登記では権利証を提出する必要はありません。
相続は、相続の発生という事実の発生によって登記申請をします。不動産の持ち主は死亡した被相続人なので意思確認をしたくてもできません。
ですので、不動産の持ち主の意思を確認する必要がなく、権利証を用意する必要がないのです。
権利証を提出不要にする代わりに、事実の発生を証明する戸籍謄本等を提出する必要があります。
被相続人の住所の移り変わりを証明することができない場合、権利証を提出して登記簿に書いてある人であると証明することができます。
被相続人の権利証を提出した場合、被相続人の住所の移り変わりを証明していませんが、権利者であると証明したことになります。
➁上申書
権利証は紛失しても再発行されません。通常は大切に保管して簡単に人目にさらしたりしないものですが、相続など大切な場面で見つけることができなくなることは多々あります。
被相続人が保管していた場合、保管場所を共有していない家族が見つけられなくなるのです。権利証が見つけられない場合、権利証を提出して権利者であることを証明することはできません。
権利証を提出することができない場合、相続人全員からの印鑑証明書付き上申書を提出します。
上申書は「不動産の所有者は被相続人に間違いありません」という法務局宛てのお願いです。相続人全員とは、遺産分割協議に参加するべき人全員です。
その財産を相続する人だけではありませんので、注意が必要です。
その財産を受け取らないけど他の財産を相続する人など遺産分割協議に参加するべき人全員から上申書を提出します。
遺産分割協議に参加するべき人全員が、実印で押印し印鑑証明書を添付します。印鑑証明書について期間制限はないので、古いものでも差し支えありません。
法務局によっては、上申書の他に不在住証明書や不在籍証明書が必要になります。固定資産税の納税証明書の提出が求められる場合があります。
固定資産税は、一般的に所有者が負担するものだからです。固定資産税を負担していた場合、所有者であったと認めてもらいやすくなります。
住所がつながらない場合などイレギュラーな場合の取り扱いは、管轄の法務局によって異なる場合があります。必ず、管轄法務局に確認をするようにしてください。
③被相続人の本籍と登記上の住所が一致する場合は住民票の除票は不要
本籍地と登記上の住所が一致する場合、法務局は同一人物と認めてくれます。あらためて、住民票の除票を提出する必要はありません。
3.まとめ
このように、相続登記を長年放置した場合、相続登記に必要な書類がすでに廃棄されているケースが少なくありません。
令和6年4月1日から相続登記義務化が始まります。アイリスでは、予約制で、相続登記のご相談を無料で受け付けております。
また、月に一度「相続法律・税務無料相談会」を実施しております。相続登記、相続税についてお悩みの方は、是非ご活用ください。
2024年4月1日より始まる相続登記義務化について、法務省よりその過料の運用方針が示されました。相続登記義務に違反した場合の過料の運用方法や、免れるための「正当な事由」について解説します。
目次
1.はじめに
2.相続登記義務化による過料の要件
3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン
4.①過料通知およびこれに先立つ催告
5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法
6.③「正当な理由」があると認められる場合
7.まとめ
1.はじめに
2024年4月1日より相続登記義務化がスタートします。
不動産を取得した相続人に、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を義務化するものであり、正当な理由がないのに申請を怠ると10万円以下の過料の可能性があります。
今回の解説は、2023年3月23日、法務省が過料の運用方針を発表しましたので、その内容となります。
2.相続登記義務化による過料の要件
相続登記義務化により、以下の2つの要件を満たす必要があります。
①「相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならない。」
➁「遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない。」
※①で法定相続分で登記を入れた共有状態で、その後遺産分割により当該相続人の一人に相続させ、移転登記をする場合でも、遺産分割から3年間以内にその登記をしなければならないということになります。
正当な理由がないのに、①又は➁の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用多少になります。
3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン
2023年3月23日、法務省が、相続登記義務化に際して、予定している運用上の取扱い等を「相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン」として発表されました。
相続登記の申請義務化の運用方針の決定したものであり、以下の内容があります。
①過料通知およびこれに先立つ催告
➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法
③「正当な理由」があると認められる場合
が定められています。
4.①過料通知およびこれに先立つ催告
相続登記を怠っている者を登記官が把握し、まず、法務局から当該相続人に対し催告が(相続登記を促す手紙)なされます。これに応じて相続登記をした場合は、「過料事件」の裁判所への通知はされません。
しかし、催告があっても相続登記をしなかった場合、法務局から裁判所へ過料事件の通知がなされます。そして、裁判所で要件に該当するか否かを判断して、過料を科する旨の裁判することになります。
5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法
登記官が登記審査の過程等で把握した情報により行うこととなります。
➁―1相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権に浮いても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき
➁―2相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産を所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨の記載がされていたとき
※つまり、相続登記申請時に添付する「遺言書」「遺産分割協議書」に他の不動産の帰属先が記載されていた場合に、それを参考にして判断するということを言っています。
6.③「正当な理由」があると認められる場合
③―1数次相続が発生して相続人が極めて多数に上がり、かつ、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
③―2遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合
③―3相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
③―4相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶ恐れがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
③―5相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合
※正当な理由の判断について、これらの場合に限定されないということです。
7.まとめ
相続登記等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
また、遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
これらの義務を怠った場合には、10万円以下の過料の適用対象になります。
登記官の催告に応じて相続登記を申請すれば過料事件とはなりません。
相続登記の申請義務化は、2024年4月1日から施行されますので、正当な理由がない場合、早めの相続登記の申請をお願いいたします。
詳しくは司法書士までご相談ください。
アイリスでは、無料相談を随時受け付けております。まずは、ご予約をお願いいたします。
令和6年4月1日より始まる相続登記義務化ですが、「義務化」の文字で漠然と不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが、相続登記をすれば問題ありません。ただし、「義務化」により罰則である10万円以下の過料もあります。長年放置していた相続登記も義務化には含まれます。早めの対応をしていただくために解説をいたします。
目次
1.はじめに
2.改正前の相続登記について
3.相続登記義務化の内容について
4.相続人申告登記について
5.過去の相続については?
6.相続登記に係る実費
7.まとめ(司法書士への報酬等)
1.はじめに
2024年(令和6年)4月1日に、相続登記が義務化されます。不動産を相続したことを知ったときから、3年以内に相続登記をしなければ、「10万円以下の過料」が科せられます。
また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。(法務局2022年12月27日発表では、施行日は今後決定されます。)
というのが概要です。
2.改正前の相続登記について
改正前だと相続登記は義務ではありませんでした。このため、相続登記が放置され何世代にもわたり相続が発生した場合、相続人の人数が増え特定するために相当の時間を費やす、もしくは特定できないといった状態が発生しています。この状態になりますと、不動産を処分や管理しようと思っても、それができないといったことが発生してしまうことになります。
3.相続登記義務化の内容について
相続登記が実施できていない不動産について相続登記を推進するために今回の改正となりました。
「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知ったときから3年以内に相続登記」となっています。
相続人に対する遺贈・相続させる旨の遺言がある場合でも同様に3年以内に相続登記をしなければ過料の対象となります。
また、遺産分割協議がまとまっていなくても、法定相続分での登記が必要となりますが、この場合、法定相続分による相続登記を免れる方法がありますので、次に述べます。
4.相続人申告登記について
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
5.過去の相続については?
相続相談で、すでに相続が発生しているものについてのご質問がよくありますのでご説明いたします。
結論から言いますと、「過去の発生した相続についても今回の改正は適用」になります。
「(附則案 経過措置)第五条六項 新不動産登記方第七六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。(以下省略)」
「(附則 経過措置)第五条六項 施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は①自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日②施行日のいずれか遅い日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない」
つまり、相続登記義務化前に、すでに相続が発生し相続による名義変更の登記をしていない不動産についても、施行日(2024年4月1日)から3年以内に相続登記をする義務が発生することになります。
6.相続登記に係る実費
①登録免許税
登記する際に、不動産の評価額の1000分の4の収入印紙をが必要です。
➁登記情報閲覧
システムから、現状の登記簿の内容を確認します。不動産の数×332円
③登記事項証明書
登記完了後、取得して変更を確認します。不動産の数×600円
④戸籍謄本・住民票等
役所に支払います。価格は役所により異なります。(金額は香川県高松市役所の場合)
※郵送で取得する場合、定額小為替で請求いたしますので、発行手数料1枚200円及び郵送費用(レターパック520円×2※1役所に対し)が必要となります。
➄公図、名寄帳
相続対象の不動産に漏れがないかを確認するために取得することがあります。
公図 1枚664円(システムから司法書士が取得)、名寄帳(役所で取得) 1通350円(高松市役所)
⑥評価証明書
相続登記をするための登録免許税の計算のために評価額を使用します。
評価証明書(役所で取得) 1通350円(高松市役所)
7.まとめ
2024年4月1日から相続登記が義務化になり、相続登記を怠った者には、10万円以下の過料に処されます。遺産分割協議が長引くなどの理由がある場合には、「相続人申告登記制度」を利用して、3年以内の相続登記義務を回避することはできますが、そのままでは処分等ができないため最終的には遺産分割協議を経て(または法定相続分の共有で)相続登記をすることになります。
法上、未成年者は制限行為能力者という扱いになっております。未成年者へ生前贈与として不動産を贈与契約することは可能なのか?という点が問題になってくると思われます。贈与契約はどのようにすればいいのか、そして、不動産登記の際に未成年者を権利者として名義変更をすることができるのかについてお話をしていきたいと思います。
目次
1.未成年者への贈与契約はできるのか
2.贈与契約書は作成しなければならないのか
3.名義を変更する登記の際に必要な書類
4.まとめ
1.未成年者への贈与契約はできるのか
細かい点にはなるのですが、「贈与」と「贈与契約」は法律上別物です。
贈与とは、贈与者が一方的に財産を譲渡するものであり、受贈者の合意、承諾などは不要です。
これに対し、贈与契約とは、贈与者が贈与することを約束し、受贈者がこれに合意することによって成立します。
贈与契約には、受け取る側にも「意思表示」が必要となります。しかし、民法上未成年者は制限行為能力者なので親権者の同意が必要となります。
未成年者の意思表示については、親権者である法定代理人が同意することで贈与契約も可能になるということです。
2.贈与契約書は作成しなければならないのか
未成年者でも贈与契約はできることは先にもお話をしました。
贈与は、贈与者の「あげます」という意思表示に対し、受贈者の「もらいます」という意思表示が合致すれば成立する契約だからです。
最低限このことが理解できる年齢であれば、契約自体は成立します。
しかし、親権者の同意を得るか、親権者を代理として契約を結ばなければ後から親権者によって贈与契約が取り消される可能性があります。
そのため、契約書を交わす際は、親権者の署名押印も要れた方がいいでしょう。未成年者が署名できるなら署名押印し、それに加えて親権者も署名押印します。
意思表示の合致だけでは、親権者代理人の意思がわかりません。
また、生前贈与の場合は、贈与者の死後、相続人間でトラブルが起こることや、税務署から本当に贈与がされたか、もしくは譲渡されたのが本当に贈与によるものかについて指摘を受ける可能性があるので、このようなリスクを回避するためにも、契約書を交わしておくことが大切です。
3.名義を変更する登記の際に必要な書類
さて、贈与契約書まで作成できましたら、次は登記の手続きが必要です。贈与を原因とする所有権移転登記を申請することになります。
通常の贈与による所有権移転登記の添付書類は
①贈与者(譲渡人)に必要な書類
㋐利証書(登記済証又は登記識別情報)
㋑印鑑証明書(有効期限3か月)
㋒固定資産税評価証明書等の評価額がわかる書類
㋓実印
㋔身分証明書(運転免許証・パスポート) 本人確認資料のため
以上が基本的な必要書類です。また住所変更・氏名変更がある方は、その変更登記が事前に必要となるため、住民票・戸籍の附票・戸籍謄本等が必要になります。また、事案によっては上記以外の書類等が必要になる場合があります。
②贈与を受けられる方に必要な書類
㋐住民票
㋑印鑑(認印でも可能です)
㋒身分証明書(運転免許証・パスポート) 本人確認資料のため
未成年者に贈与する場合は、契約は未成年者の親権者だけでなく、未成年者自身が締結できますが、登記申請においては、親権者が未成年者に代わって申請する事が一般的です。
この場合通常の必要書類に加えて、以下の書類が必要となってきます。
➁贈与を受けられる方に必要な書類(受贈者が未成年である場合の追加資料)
㋓親権者と未成年者の親子関係が分かる戸籍謄本(有効期限3か月)
㋔親権者及び未成年者の本籍地入りの住民票
基本的に、親権者の戸籍謄本及び本籍地入りの住民票(家族全員)を取得すれば良いと思われます。なお上記㋓にも記載していますが、戸籍謄本には3か月以内の有効期限がありますので、ご注意ください。
4.まとめ
親から未成年の子への贈与をする場合、贈与を原因とする所有権移転登記をする場合、通常の贈与による所有権移転登記に必要な添付書類に加えて、親子関係がわかる戸籍謄本(3か月以内のもの)と親権者及び未成年者の本籍入りの住民票が必要になります。
また、重要な点としては、「贈与税」が発生する場合があるという点です。税金につきましては、税理士先生への相談が必要となります。
アイリスでは、ワンストップで法律上の問題と税務上の問題を解決すべく「法律・税務無料相談会」を定期的に開催しております。ぜひご活用ください。
相続放棄は、家庭裁判所の手続きを踏まなければ効力を生じません。相談会などで「他の相続人は皆、放棄したから私が相続することになります。」とおっしゃる方がいますが、単に相続人間の決め事なのか、家庭裁判所の手続きを経た相続放棄なのかわからない場合がよくあります。相続放棄の手続きなどについて、お話をしたいと思います。
目次
1.相続放棄をする場面
2.相続放棄の手続きと注意点
3.相続放棄手続きに必要な書類など
4.まとめ
1.相続放棄をする場面
相続放棄は、ある財産や遺産を受け継ぐ権利を放棄することを指します。相続放棄を選択する理由はさまざまで、負債や相続税の問題、家族関係の複雑さなどが挙げられます。相続を放棄すれば、法的にはその財産を受け継ぐ資格(初めから相続人ではなかったことになる)を失います。
ここでは、被相続人(亡くなった方)に多額の借金がある場合を考えていきます。
2.相続放棄の手続きと注意点
亡くなった方に借金があった場合、相続を知ったときから3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きをすることになります。
相続放棄を進めていくうえで、第1に注意すべき点は、「被相続人の財産の処分をしないこと」です。被相続人の財産の処分をできるのは、相続人だけです。つまり、被相続人の財産を処分する行為は、自らが相続人であることを認める行為となります。財産の処分行為はいろいろあるのですが、「相続人間の遺産分割協議に参加して、署名押印をした場合」が該当します。この遺産分割協議で、財産をもらわなかったから、相続放棄をしたとおっしゃる方もいますが、それは相続放棄ではありません。それどころか、自らの法定相続分を処分しているわけですから、相続放棄はできない状態になってしまいます。相続放棄の手続きで得られる効果は、初めから相続人ではなかったことになるので、財産も負債も放棄したことになります。遺産分割協議で財産をもらわなかったとしても、借金の債権者にとっては関係のない話になるのです。以前、形見のロレックスの時計を財産目録に入れていなかったばかりに、相続放棄をできなくなったという事例を聞いたことがあります。遺産の処分行為については、特に注意が必要です。この場合、「みなし単純相続」とされてしまいます。
第2に、相続放棄の申述期間である3か月を超過しないことです。借金が多き被相続人の場合には特に重要となります。相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行う必要があります。
この期間を熟慮期間といいますが、熟慮期間については判例上(最判昭和59年4月27日)以下のとおり考えられています。
「原則として、相続人が相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から起算する。
ただし、相続人が、上記事実を知つた時から3か月以内に相続放棄をしなかつたのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があつて、相続人においてこのように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算する。」とあります。
つまり、自らが相続人であることと、その相続で自身に相続財産が存在していたことの認識の2点がそろったタイミングが起算点(相続放棄の3か月の計算の開始点)とされています。が、死亡から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出す他方が望ましいです。(安全のため)
加えて、相続人の順位があります。第1順位 子供、第2順位 直系尊属(親)、第3順位 兄弟姉妹 となっております。先順位の相続人が全員相続放棄をした場合、字順位の相続人が相続放棄ができる期間は「先順位の相続人が相続放棄をしたために相続人をなった場合、その相続放棄をしてから3か月」となります。
第3に、相続放棄した後も「相続財産を隠す」「相続財産を勝手に消費する」もしてはいけません。せっかく取得できた相続放棄も取り消される可能性があるためです。
3.相続放棄手続きに必要な書類など
家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する場合の注意点。
①管轄の家庭裁判所:亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所
➁印紙、郵券:収入印紙800円、郵券とは切手のことです。裁判所ごとに異なります。高松家庭裁判所での相続放棄手続では、84円切手が2枚と、10円切手が1枚(合計178円分)が必要です。
③相続放棄申述受理証明書発行手数料の印紙:1通につき150円分必要です。
④配偶者や子が相続放棄する場合の必要書類
(1)申述人の戸籍謄本
(2)被相続人の住民票の除票(戸籍の附票)
(3)被相続人の死亡の旨の記載のある戸籍謄本
(4)※代襲相続人の場合 被代襲者(本来の相続人)の死亡の胸の記載のある戸籍謄本
※配偶者・子以外の相続人が相続放棄をする場合の書類につきましては専門家にご相談ください。
4.まとめ
相続放棄の注意点や、相続放棄申述の手続きについて解説をしてきました。被相続人の借金が多い場合には、相続放棄申述の手続きを必ず相続発生から3か月以内にすることが必要です。よくわからない場合には、専門家にご相談ください。
相続税対策として一般的だった「暦年贈与」と「相続時精算課税」について、令和6年1月1日より、大きく変わるそうです。同じ「110万円」というキーワードでも、制度が全く異なってきます。令和6年1月1日より先日、セミナーで伺った内容についてまとめてみました。詳しい内容につきましては、税理士にご確認ください。アイリスでは、香川県内の方を対象に、相続税無料相談会へのご案内をしております。ぜひご利用ください。
目次
1.暦年贈与と相続時精算課税
2.令和6年1月1日以降何が変わったのか
3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる
4.まとめ
1.暦年贈与と相続時精算課税(令和5年12月31日までの取り扱い)
暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、年間贈与額から基礎控除額「110万円」を使い、相続発生時まで贈与を毎年重ねて総ぞ億財産を目減りさせていく相続税対策です。基本、贈与者、受贈者の要件はなく、誰でも使えます。現状では相続人への贈与について、相続発生前3年分の贈与は、相続財産に組み戻されます。
相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に財産を贈与した場合、贈与者の生涯において2500万円を特別控除として、相続発生時にこの2500万円を相続財産に全額組み込む仕組みの制度です。特徴として、この暦年贈与精算課税制度を選択した場合、税務署への届出が生じ、暦年贈与との併用は禁止されていますので、途中で暦年贈与に変更できなくなります。
上記を見てわかるように、今までは圧倒的に暦年贈与の利用が一般的でした。なぜなら、暦年贈与制度は、毎年の控除額110万円は、組み戻される財産以外は控除されたままの状態となるためです。相続時精算課税は、2500万円の枠で使った額がそのまま組み戻されますので、暦年贈与制度の利用が多かったのもうなづけます。
2.令和6年1月1日以降何が変わったのか
ところが、令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わります。
改正される内容は、以下の通りです。
①暦年贈与制度
暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税っ対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。
➁相続時精算課税
(令和5年12月31日までに計算式)
{(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率
(令和6年1月1日以降の計算式)
{(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)
―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率
新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。
※ただし、現状ではその取扱いは明確ではありません。今後、通達等で取り扱いが明確になってくると思われますので、本制度をご利用の際は、税理士に事前に確認をするようにしてください。
3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる
キーワードとして「110万円の基礎控除」とありますが、暦年贈与でも、相続時精算課税制度でも出てきます。単純に、110万円の基礎控除を使って相続税対策と言っても、どちらの制度のものか理解していないと、効果が出ないということも考えられます。
セミナーの中で講師の方が言っていたのが、「同じ110万円の控除でも、7年以上生きないと使えない暦年贈与制度の110万円控除と、節税効果抜群の相続時精算課税制度の110万円控除」という表現をされていました。
また、講師からの注意事項として、税務署は暦年贈与制度を廃止したいと考えており、相続時精算課税制度への移行を促している傾向が見受けられますが、今後、今の暦年贈与制度のように大きく変更される可能性もあり得るとのこと。ご存知の通り相続時精算課税制度は一端選択してしまうと、暦年贈与制度は利用できなくなりますので、慎重に判断をする必要があるとのことです。
4.まとめ
(まとめ画像)
認知症対策として、「任意後見契約」と「家族信託契約」があります。先の家族信託万能論の罠でも解説している通り、同じ「財産管理」であっても、その内容は大きく異なります。こんな筈ではなかったとならないために、比較解説していきます。
目次
1.はじめに
2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い
3.結局どちらの制度がいいのか?
4.まとめ
1.はじめに
認知症対策として「任意後見制度」と「家族信託」という2つの制度があります。
「どちらの制度がいいの?」、認知症対策相談の時、相談者様からよく質問を受けます。どちらの制度も一長一短があります。
制度の内容を要理解せずに、表面的なメリットのみとらえて選択してしまうと、「こんなはずではなかった。」ということにもなりかねません。内容をよく理解した上で選択することが重要になります。
なぜなら、この2つの制度は、性質が異なるものだからです。ご家族の置かれた状況からどちらの制度を選択すればよいか見えてくると思います。それでは解説してまいります。
2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い
(事例)母は既に亡くなっており、父親が最近少し物忘れが多くなってきており、長男夫婦と次男夫婦がいる事例で見ていきます。
このような事例で、長男が「財産管理」をしていきたい場合を考えていきます。
※父親に判断能力がまだあることが前提条件となります。すでに判断能力を失われている場合には、法定の成年後見制度を利用することになります。
※2つの制度共に詐欺被害などにあった場合の「取消権」がないので対応はできません。法定の成年後見制度にはありますので、ここでも選択の判断が分かれます。
3.結局どちらの制度がいいのか?
事例から見ますと、父親に「身上監護まで必要」であるなら任意後見制度を利用し、必要なければ「家族信託」という選択になります。
しかし、家族信託のみで対応していたがために、父親の認知症が進み、要介護認定の申請手続きや、介護施設への入所契約など発生した場合、「法定の成年後見制度」を利用しなければならなくなります。
そこで、大きな財産については「家族信託」で財産管理をして、それ以外の財産と身上監護を「任意後見制度」を併用する方法もあります。
また、併用だとコスト面で大きくなるのであれば、どちらがいいのかの選択が必要となってきます。この場合は、ご家族でよく話し合ったうえで決めていただきます。
4.まとめ
①積極的な財産管理を行いたいのであれば「家族信託」
➁身上監護が必要なら「任意後見」
③裁判所の関与を避けたいのであれば、「家族信託」
④どちらの制度もご要望になじむのであれば、費用で比較する
「任意後見制度」も「家族信託」もどちらかを選択すれば完ぺきといった制度ではありません。
それぞれの制度の趣旨が異なるためです。どちらもご要望に馴染まない場合がありますので、制度をよく理解して決めなければなりません。
専門家と相談しながら進めていくのがいいと思います。
最近の相談者の年齢と希望するサービスの内容について、いろいろと考えることがあります。ライフステージごとに、できること・しなければならないことをまとめてみました。そして、遺言書を積極的に考える理由についても解説しています。
目次
1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)
2.遺言書を作成する意味
3.相続財産が相続人に帰属するタイミング
3-1.遺言書がある場合
3-2.遺言書がない場合
4.遺産分割協議でもめてしまうことも
5.まとめ
1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)
早めに遺言書を作成することのメリット
遺言書は、健康な状態で作成することが望ましいです。一度病気になってしまうと、判断力が低下したり、医療処置によって精神状態が変化する可能性があります。早めに遺言書を作成することで、自分の望む財産分配方法を明確にし、遺言執行者の指名や葬儀の方法なども記載することができます。
ご高齢の相談者様の中には、遺言書の手続きについて説明すると「そんなに大変なら、考えます。」と言って、相談を打ち切られる場合がよくありますが、健康で元気である間に、遺言書を作成することが重要になってきます。
また、遺産分割に関するトラブルは、遺言書がない場合、法律上の相続人の割合に従って分割されますが、これが家族や親族間での紛争を引き起こすことがあります。早めに遺言書を作成することで、財産の帰属先が宙に浮くことを未然に防ぐことができます。相続人間の争いについては、遺言書があってもなくても、起こるときは起こりますし、起こらないときは起こりません。家族間のコミュニケーションや、相続発生後の手続きの煩雑さなどから見ても、遺言書があるおかげで、ずいぶん軽く済んだケースを多く見てきました。
※ご本人の状態により、使える法律行為や制度が異なる点にもご注意ください。特に認知症発症後は、法定後見制度一択になります。
2.遺言書を作成する意味
遺言書を作成することで、家族や親族間でのトラブルを防ぐこともできます。遺言書がない場合、相続財産は法定相続分に従って、それぞれの相続人の持ち分となりますが、不動産のように物理的に分けられないものも存在します。不動産を取得したがために、現金が手に入らず生活に困窮する相続人が発生したのでは、具合が悪いことになってしまいます。
また、相続関係が複雑で、専門家に調査を依頼しなければわからないケースも何度も見てきました。
そこで、遺言書を書いておくことで、相続財産の帰属先を相続発生時に決めることができます。
3.相続財産が相続人に帰属するタイミング
3-1.遺言書がある場合
遺言者(亡くなった方)の遺志に従って、財産の帰属先が決定します。
3-2.遺言書がない場合
相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を取りまとめることで、相続財産の帰属先が決まります。つまり、遺産分割協議がまとまるまでは、法定相続分での状態になってしまうということです。
※遺留分の問題があるから遺言書は進めないという方もいらっしゃるようですが、相続発生時の相続財産の帰属先は一端は決まる点がメリットだと考えますので、アイリスでは遺言書の作成についてお勧めをしております。
4.遺産分割協議でもめてしまうことも
遺言書がなく亡くなられた被相続人の相続人全員で遺産分割協議をする場合、もめるケースがあります。一旦もめてしまうとなかなか遺産分割協議がまとまらなくなります。
こうなった場合には、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることになります。それでもまとまらない場合には、家庭裁判所による審判で遺産分割を決定することとなります。
ここまで行ってしまいますと、家族関係は完全に悪くなってしまいます。一度悪くなった家族関係は、もう元には戻らないでしょう。このようなことからも、遺言書作成の意義は、とても大きいと考えます。
5.まとめ
最後に、遺言書は遺言者の意志を尊重するものであるため、遺言者自身が最も納得できる内容を記載することが大切です。しかし、遺言書が法律に反する内容を含んでいる場合などは、遺言書は無効となることがあります。遺言書を作成する際には、法律に基づいた内容であるかどうか専門家に相談し、確認するようにしましょう。
アイリスからのご提案、健康年齢を考慮して「70歳を過ぎれば、遺言書の検討を」です。
法務省HPにて、令和5年12月28日に令和5年11月30日現在の「相続土地国庫帰属制度の統計」が出ていましたので、ご紹介いたします。令和5年4月27日に始まった制度ですが、負動産である土地を国に引き取ってもらい管理してもらう制度です。相続登記義務化と併せて、所有者不明土地発生の抑止のための制度となります。
目次
1.相続土地国庫帰属制度とは
2.令和5年11月30日現在の状況(速報値)
3.まとめ
1.相続土地国庫帰属制度とは
2021年4月に成立した法律です。 相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を手放して、国庫に帰属させることができる制度です。
つまり、「相続した不要な土地の所有権を国に対して返すことができる制度」です。
なんでもかんでも引き取ってくれるわけではなく、一定の要件があります。
結論から言うと「抵当権等の設定や争いがなく、建物や樹木等がない更地」です。通常の管理や維持に必要以上の費用や労力を要する土地に関してはだめというわけです。
それでは、具体的な該当してはいけない要件についてみていきましょう。
①建物がある土地
➁担保権又は使用収益及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路など他人によって使用されている土地
④土壌汚染対策法に規定する特定有害物質で汚染されている土地
➄境界が明らかでない土地、その他所有権の存否、帰属や範囲に争いのある土地
⑥崖のある土地など、通常の管理にあたり過分の費用又は労力を要する土地
⑦工作物や樹木、車両が地上にある土地
⑧除去が必要なものが地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者などと争訟をしなければ使えない土地
⑩その他、管理や処分をするにあたり過分の費用又は労力がかかる土地
になります。建物や樹木、放置車などある場合、とりあえず撤去しなくてはいけません。
上記10項目すべてに該当しなければ、晴れて本制度を利用することができるわけです。
2.令和5年11月30日現在の状況(速報値)
①申請件数 1349件
(地目別)
田・畑:522件
宅地 :487件
山林 :198件
その他:142件
➁帰属件数 48件
(種目別)
宅地 :25件
農用地:10件
森林 : 2件
その他:11件
③帰属土地が所在する都道府県
北海道、宮城県、秋田県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県、
富山県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、
岡山県、広島県、徳島県、 香川県、愛媛県、佐賀県、熊本県、
宮崎県、鹿児島県
④却下件数 0件
➄不承認件数 4件
⑥取下げ件数 92件
※ 取下げの原因の例
㋐自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した
㋑隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった
㋒農業委員会の調整等により農地として活用される見込みとなった
㋓審査の途中で却下、不承認相当であることが判明した
3.まとめ
制度発足から順調に推移しているように見えます。
統計データから見えてくるのは、相続土地国庫帰属制度に申請しつつ、負動産の処分について、隣地所有者への処分や農業委員会の農地のあっせんなどにも登録をしておき、うまくいけば取下げをして、ダメなら審査を待っているように見えました。
このように負動産の処分の選択肢が増えたことで、並行して処分方法を実施していくことが、早期の処分につながるものと考えます。
生命保険(契約者は亡くなった被相続人とする)は法律上では、相続財産を生命保険に切り替え、相続人の一人に受取人指定すれば、相続財産から外すことができます。一方、税務の面では、生命保険は「みなし相続財産」として取り扱われるため、控除枠(法定相続人×500万円)を除いた残りが相続財産となります。生命保険の活用は、比較的メジャーですので、注意点についてお話ししたいと思います。
目次
1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか
2.受取人は誰が一番いいのか
3.まとめ
1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか
被相続人が保険金を支払っている契約者であり、保障の対象となる被保険者である場合、保険金の受取人が「妻」や「子」である(相続人)ときには、亡くなった場合にみなし相続財産の非課税枠を利用することができます。
注意しないといけない点は、その生命保険の契約の内容です。若いころから入っている生命保険があると思われている方もいるかもしれませんが、多くの場合「定期付終身保険」の可能性があります。「定期付終身保険」とは、3000万円の保険金となっていても、100万円の終身保険(主契約)に2900万円の定期保険(特約)が組み合わされた保険で、一定の年齢を超えてから亡くなると主契約の100万円分しか受け取れない契約になっていて、非課税枠を十分に活用できない可能性があります。
保険会社に現状の保険の契約内容を必ず確認しておくようにしましょう。
これから契約をしようとしている方も、終身保険の金額と自身の推定相続人の数を把握して、税理士などの専門家と相談しながら進めるといいかもしれません。
2.受取人は誰が一番いいのか
前提として「契約者」と「被保険者」が被相続人(夫)である場合のケースで考えていきます。※被保険者が妻(配偶者)の場合などにつきましては、複雑化しますので、税理士に確認をするようにしてください。
①配偶者(妻)を受取人とした場合
配偶者は、必ず相続人にカウントされるため生命保険の非課税枠は当然使うことができます。しかし、相続税申告をする際に配偶者控除枠1億6千万円を使うことができるため有効活用できるかというと微妙かもしれません。
➁子供を受取人とした場合
一番効果が出るケースです。
③孫を受取人とした場合
子供が存命の場合、生命保険の非課税枠は利用できません。代襲相続や養子となっている場合では、非課税枠を利用できるケースもあります。
厄介なのが、子供が存命で孫を受取人とした場合、相続税額2割が加えられて計算されるという仕組みが適用される場合があります。この辺につきましては、税理士にご相談ください。
3.まとめ
生命保険を活用した相続対策を考える場合には、まずは、生命保険の契約内容について確認をすること。契約内容が主契約の終身保険の額ではなく、特約の額が多い場合には、相続税対策には効果が薄い場合があります。
次に、受取人を誰にするのかという点。保険に加入する際に、妻が受取人でないことで文句を言うケースもあるようですので、なぜ妻(配偶者)にしないのかについては、専門家の税理士などを交えて、しっかりと事前に話し合いをしておく必要があると思います。
相続が発生し、死亡保険金が受取人(相続人の一人)によって受け取られたときに、それは相続財産として遺産に含むものなのでしょうか。当然、相続人以外のどなたかに、死亡保険金の受取人とした場合には贈与税の対象に、また、亡くなった被相続人本人が受取人の場合には、相続財産として取り扱われることになります。今回は、相続人の一人が受取人に指定されていた場合について、法律面と税制面の両面から解説していきます。
目次
1.死亡保険金は相続財産に含まれるのか
2.死亡保険金が相続財産に含まれる場合
3.死亡保険金の税制面での取り扱い
4.まとめ
1.死亡保険金は相続財産に含まれるのか
保険契約に基づき受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又は、これを行使して取得した死亡保険金は、民法903条第1項に規定する遺贈又は、贈与に係る財産には原則的には当たりません。
つまり、法律上、死亡保険金は、相続財産とはなりません。ですので、相続の生前対策として生命保険(死亡保険)が活用されるケースがあります。相続財産となりうる額の一部をを生命保険契約をすることで、目減りさせることができるためです。それでは、相続財産のほとんどを生命保険に切り替えても相続財産とはならないのかというと、そういうわけではありません。どのような基準があるのかを次の項目で解説をいたします。
2.死亡保険金が相続財産に含まれる場合
(最判平16.10.29)
「法律上、生命保険金は原則的には相続財産に該当しませんが、当該保険料が被相続人が生前に保険者に支払ったものであり、それにより保険金受取人である相続人に保険金請求権が発生することなどに鑑みると、保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし、到底是正することができないほどに著しいものであると評価すべき「特段の事情」が存する場合には、民法903条の類推適用により、当該保険金請求権を特別受益に準じて持戻しの対象となると解する。
この「特段の事情」の有無の判断は以下のような点などの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断する。」とあります。
それでは、判例で言っている特段の事情とはどういった内容なのでしょうか。
①保険金の額
➁保険金の額の遺産の総額に対する比率
③同居の有無
④被相続人の介護等に対する貢献の度合い
以上、4つの内容を考慮したうえで判断されます。➁の比率については、明確な基準はないですが、平成17年の判例では、遺産総額のほぼ全額(99%超)を保険金が占めており、また、平成18年の判例では61%を保険金が占めていて、相続とみなされました。
他の要件も加味されますので、50%を超える場合には注意しておいた方がいいかもしれません。
3.死亡保険金の税制面での取り扱い
「被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続税の課税対象となります。
この死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合、すべての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。
(注1) 法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
(注2) 法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。」
(国税庁HPより引用)
4.まとめ
死亡保険金は、法律上では原則、相続財産とはなりませんが、
①保険金の額、➁保険金の額の遺産の総額に対する比率、③同居の有無、④被相続人の介護等に対する貢献の度合い
といった内容を考慮して特別受益と認められる場合があります。特別受益と認められた場合、その死亡保険金は相続財産に組み入れられてしまいます。
また、税法上は、死亡保険は「みなし相続財産」とされ、基礎控除を超える額は相続財産とされます。
詳しい内容につきましては、各専門家への相談をお勧めいたします。
アイリスでは、ワンストップでの相続のお悩みを解決する場として「相続法律・税務無料相談会」をご紹介しております。
法律のお悩みのみの場合につきましては、「アイリスDEいい相続」の無料相談会にて対応をいたします。ぜひ、この機会にご活用ください。
今まで遺産分割時の相続分の修正として、特別受益についてお話をしてきましたが、今回は寄与分・特別寄与料について解説いたします。こちらも、遺産分割を公平にするための規定です。算出方法については、特別受益と比較してお話をいたします。
目次
1.寄与分とは
2.特別寄与料とは
3.特別受益と寄与分の算出方法の比較
4.まとめ
1.寄与分とは
被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした共同相続人(寄与分権利者)があるとき、その者の本来の相続分(法定相続分又は推定相続分)に一定の加算をして、相続人間の実質的衡平を測ろうとする制度です。要件は以下の通りです。
①共同相続人であること。
※内縁の妻、相続欠格者、非廃除者については、該当しません。
➁被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者であること。
※通常の寄与(一緒に生活をして身の回りの世話をすること)では足りず、特別の寄与(本来施設で介護をすべきところ、自宅で介護をすることなど)。こうすることで、本来、被相続人が支払うべき施設利用料を払わなくてよくなっているので、その分、特別の寄与をしたということになります。
寄与分の確定手続きについては、原則として、共同相続人間の協議で行われます。(民法904条の2第1項)
そして協議が整わない場合又は協議をすることができない場合には、家庭裁判所が、寄与者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定めることになります。(民法904条の2第2項)
2.特別寄与料とは
被相続人に対して無償で療養看護等をした特別受益者は、その貢献を考慮するために方策として、相続人に対して寄与に応じた金銭の支払いを請求することができます。この金銭のことを特別寄与料と言います。ただし、誰でも特別寄与者になることはできず要件があります。
①被相続人の親族であること。
※相続人、相続放棄者、相続欠格者、非廃除者は該当しません。
(長男の配偶者などが該当します。)
➁無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと。
特別寄与料の価額の確定は、原則として、特別寄与者と相続人間の協議により行われます。(民法1050条第2項)
協議が整わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、特別寄与者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料を定めることになります。(民法1050条第3項)
※寄与分の請求と特別寄与料の請求の相違点の一つとして、「請求に期間制限」がある点があります。寄与分には期間制限は設けられていないのですが、特別寄与料には期間制限があります。
①特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6か月を経過
➁相続開始の時から1年を経過したとき
この時を経過してしまいましたら、特別寄与料の請求をすることはできません。
ただし、寄与分も遺産分割協議の期間制限(5年・10年)ができましたので、こちらを過ぎた場合、相続人全員の合意がない限り請求できないことになります。
3.特別受益と寄与分の算出方法の比較
4.まとめ
このように、遺産分割協議において相続分の修正には「特別受益」と「寄与分」があることを解説してきました。今まで制限がなかった遺産分割協議の期間が2023年4月1日より以下の内容で変更されましたので、特別受益・寄与分を考慮した遺産分割ができる期間が制限されます。
また、2020年4月1日の民法改正で新たに規定されました「特別寄与料」は、相続人以外の被相続人の親族対象で、被相続人の寄与をした方にも、その請求権を認めるものですが、相続及び相続人を知ったときから6か月、相続発生から1年と比較的短期間の請求が認められていますので、該当する方は請求を検討することができるようになりました。
分からない場合には、専門家の無料相談を活用することをお勧めいたします。
遺産分割をする際に、遺産の範囲を定める必要性があります。その時、生前に贈与を受けていた場合、その期間によっては遺産に含めるといった基準が存在します。また、被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした共同相続人には寄与分が認められています。これら規定は、公平に遺産を分割するための基準となります。今回は、特別受益(生前贈与など)について解説いたします。
目次
1.特別受益者の意義
2.特別受益者の相続分
3.算定の基礎となる相続財産の推定
4.受贈者の行為とは?
5.法定相続分又は指定相続分による算定と特別受益者に関する修正
6.特別受益の確定手続
7.持戻しの免除(民法903条第3項)
8.夫婦間における持戻しの免除の意思表示推定規定(民法903条第4項)
9.まとめ
1.特別受益者の意義
共同相続人の中で被相続人から遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者のことを指します。それでは、どのような基準に基づき遺贈・生前贈与の財産を相続財産に算入するのでしょうか?
2.特別受益者の相続分
「(民法903条)
1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3.被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4.婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」
それでは、具体的にみていきましょう。
3.算定の基礎となる相続財産の推定
被相続人が相続開始時に有した財産の価額に特別受益たる贈与の価額を加える(みなし相続財産)。
このような処理を特別受益の持戻しと言います。贈与がされた後、相続開始までの間に、受贈者の行為によって、贈与の目的財産が滅失し又はその価格の増減があったとしても、現状(受贈当時の状態)のままであるとみなして計算します。
※(事例)相続人が特別受益の期間内に家の贈与を受け、相続開始時には火事で滅失していても、受贈者の行為によるもので滅失したのであれば、その価格を相続財産に加算するということです。
4.受贈者の行為とは?
①故意の場合はもちろん過失の場合も含むと一般に解されています。
➁家裁による滅失・取り壊し等の事実行為による物理的滅失のほか、贈与・売買等による法律行為による経済的な滅失も含まれます。
③受贈者の行為によらず、転載その他の不可抗力によって滅失した場合は含みません。
5.法定相続分又は指定相続分による算定と特別受益者に関する修正
2.の価額に、各共同相続人の法定相続分又は指定相続分の割合を乗じた値を算出します。
そして、特別受益者については、上記算出した値から特別受益である遺贈又は贈与の価額を控除したものが相続分となります。
何を言っているのかよくわからないと思いますので、図で示します。
(特別受益者の具体的相続分の計算)
つまり、今現存していない・価額が減少していても、贈与時の価額を相続財産に加算し、そこから相続分を乗じて自身の取得できる財産の価額を算出し、そこから受けた贈与の価額を減じることで産出されます。
仮に、その計算結果がゼロ又はマイナスの場合には、特別受益者が相続で取得する財産は有りません。マイナスの場合でも、他の相続人にその価額を返還する必要はないことに注意が必要です。
贈与・遺贈の価額≧相続分の価額:具体的な相続分はありません。
6.特別受益の確定手続
持戻しを適正に行うためには、特別受益である贈与の有無や目的物の価額を確定する必要があります。これは、原則として、共同相続人間の協議でされます。
(最判平7.3.7)
「ある財産が特別受益財産にあたるかどうかは、遺産分割申立て事件、遺留分侵害額請求に関する訴訟など具体的な相続分又は遺留分の各手を必要とする侵犯事件又は訴状事件における前提問題として審理判断されるのであり、それらの事件を離れて、特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。」
遺産分割事件・遺留分侵害額請求の訴訟で審理判断されるから、特別受益かどうかの判断を別の確認訴訟ですることは不適法であると言っています。
7.持戻しの免除(民法903条第3項)
被相続人が特別受益の持戻しに関する民法規定と異なる意思表示(方式は問わない)をした時は、その意思表示に従うとあります。遺言書などに、これらの事項が記載されている場合などが該当します。
8.夫婦間における持戻しの免除の意思表示推定規定(民法903条第4項)
長年連れ添った配偶者に対する持戻し免除の推定規定があります。
次の3つの要件を満たした場合、持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。
①婚姻期間が20年以上の夫婦であること。
➁①の夫婦の一方である被相続人が他の一方に対する遺贈又は贈与であること。
③遺贈又は贈与の対象物が、居住の用に供する建物またはその敷地であること。
持戻し免除推定規定では、婚姻期間・遺贈、贈与の対象物について制限を設けています。
※推定規定とみなし規定の違い
推定規定は、裁判になった場合に推定はされるものの、相手方の証拠などにより覆る可能性がある規定です。一方、みなし規定は、裁判になった場合でもみなされますので、相手方の証拠などにより覆ることがありません。
9.まとめ
特別受益者の相続分についてお話をしてきました。その算出方法と、関連する持戻しの内容について理解を深めることで、共同相続人間の遺産分割を公平に実施することができます。特に、配偶者の要件に該当する場合、持戻しの免除の推定規定があります。有効に活用することで、配偶者の相続発生後の生活の基盤を失うことなく生活することができます。
細かい内容になっておりますので、専門家に相談して遺産分割をスムーズに実施しましょう。
遺産分割前に、預貯金の口座が凍結されてしまい、相続発生後の生活に困ってしまうといった事態が、実際に起こっていました。そこで、2019年7月1日の民法改正により、「遺産の分割前における預貯金債権の行使」についての規定が盛り込まれています。どのような内容になっているのか確認していきましょう。
目次
1.そもそも何が問題なのか
2.民法改正により遺産分割前の預貯金の取り扱いの変更点
3.事例で考える
4.まとめ
1.そもそも何が問題なのか
前のブログでも書きましたが、相続発生を金融機関が確認した場合、被相続人の口座は凍結されます。これは、金銭(現金・預金)について、当然には分割されません。遺産分割前にその金銭を保管する相続人に他の共同相続人が自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません。これが、2019年7月1日より前の民法の取り扱いでした。
私がまだ司法書士資格の受験生だった時に、予備校の講師(司法書士)が言っていたのですが、子供のいない夫婦の夫が亡くなり、すべて夫名義の預金しかなく、夫の入院費用や葬儀代を支出してしまったのち、手持ちの現金が底を尽き、預貯金も凍結されている状態で日々の生活にも困る状態で相談に来られた方がいたそうです。いろいろ手を尽くしたのですが、結局ダメで、相続人との遺産分割協議をするにも、夫の兄弟姉妹は遠方に住んでいて、すぐにできる状態ではなかったそうで、とても大変な思いをしたということでした。
こういったことを踏まえて、民法が改正されています。
2.民法改正により遺産分割前の預貯金の取り扱いの変更点
「(民法909条の2)
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」
前段の部分が重要で、遺産分割が成立する前であっても一定額の預貯金については、各共同相続人が単独でその権利を行使できる旨が規定されています。その一定額とは、「法定相続分の3分の1」です。
それでは、夫の預貯金が90億円あるので「法定相続分の3分の1」なら、億単位のお金の引き出しができるのかというとそうではなく、上限が定められています。
「民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令
民法第909条の2に規定する法務省令で定める額は、150万円とする。」
つまり、150万円が上限として定められています。これは、各金融機関ごとに150万円が限度となり、一つの金融機関内に複数の口座があっても、その合計額は150万円が限度となります。
3.事例で考える
例えば、夫婦と子供一人がいましたが、子供は行方不明で連絡がつかない状態です。預貯金の口座はすべて夫名義で900万円の残高があったとします。この時妻は、自分の法定相続分2分の1の3分の1、つまり150万円までなら、遺産の一部分割みなしとして金融機関からの引き出しが可能となります。ただし、各金融機関の手続きが必要となりますので窓口にお問い合わせください。
4.まとめ
今回は、相続発生後、遺産分割までの間の預貯金の「いわゆる仮払い制度」の取り扱いについて解説いたしました。
相続が発生して、手持ちの現金がない場合の手段として有効かと思います。遺産分割に時間がかかりそうな場合にはぜひ活用してみてください。
相続発生後、遺産分割協議をして一度は決まった遺産分割。長男が母親を扶養するということで、他の相続人より多くの分割を受けていたのに、長男はその義務を尽くさないときに、他の相続人から、当該遺産分割協議を解除することはできるのでしょうか。そもそも、一度決まった遺産分割協議を解除することはできるのでしょうか。この辺りについて解説していきます。
目次
1.遺産分割協議の解除
2.事例で遺産分割協議の解除について考える
3.どうすれば遺産分割協議を解除できる
4.まとめ
1.遺産分割協議の解除
遺言の中に負担付遺贈というものがあります。財産を特定の人に遺贈する代わりに、相続が発生するまで、残された奥様の世話をしてほしいという条件付きだった場合、受遺者が世話をしなかった場合、相続人は相当の期間を定めてその履行の催告をすることができます。 この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができることになっています。
それでは、相続発生後に、相続人全員が集まり協議して遺産の分割方法を決めた場合、その相続人の一人から当該遺産分割協議を解除できるのかといった問題があります。各家族において事情は様々ありますが、特定の相続人に遺産を多く分割したのに、その時に付加した条件を履行しない場合、負担付遺贈のように解除できるのでしょうか?
2.事例で遺産分割協議の解除について考える
父親が亡くなり相続が発生しました。遺産分割協議の際、残された母親の面倒を見る(扶養する)という条件で、長男が他の相続人より多くの遺産をもらうことで合意しました。
ところが、その長男が母親の扶養義務を尽くさない・・・・。
業を煮やした次男が、遺産分割の解除を言い始めましたが、果たして解除することはできるのでしょうか?
結論から言いますと、上記の場合ですと解除することができません。
「(最判平元.2.9)
遺産分割協議において、共同相続人の一人が他の相続人に対して負担した債務を履行しないことを理由に当該遺産分割協議を解除することはできない。」
この理由は、遺産分割協議はもともと遺産の分割そのものを目的とするもので、それは協議の成立とともに終了しています。解除の原因となるべき不履行が概念できないということです。解除を認め、遺産を再分割するということになると法的安定性が著しく害されてしまうことが理由です。
それでは、一度成立した遺産分割協議は、解除することはできないのでしょうか?
3.どうすれば遺産分割協議を解除できる
上記のように法定解除(債務不履行解除)はすることができませんが、合意解除はできます。(共同相続人全員で合意して、新たに遺産分割協議を行うこと)
当事者間の新たな契約となるので問題がないということです。
そもそも当事者全員が合意しているのだから、法的安定性は害さないということなのでしょう。
4.まとめ
遺産分割協議において、共同想像人の一人が他の相続人に対して負担した債務を履行したことを理由に当該遺産分割協議を解除することができないとする判例により否定されています。この解除を認め遺産の再分割を許すことは、法的安定性が著しく害されることが理由です。
遺産分割協議を契約とみて法定解除(民法541条)を相続人の一人から相当期間を定めて催告後、期間経過での解除ということはすることはできませんが、共同相続人全員の合意により解除することができるということです。
遺産分割前に共同相続人の一人が、遺産の一部を使ってし待った場合の取り扱いはどのようになるのでしょうか。長男が両親と同居しており、次男が帰省の際に目にしていた財産が、遺産分割の時に無くなっていた、なんて場合がこれにあたると思います。遺産分割協議の時にもめる原因ともなりますので、その取扱いについて解説したいと思います。
目次
1.遺産分割前に遺産に属する財産を処分された場合の遺産の範囲
2.事例から考える
3.まとめ
1.遺産分割前に遺産に属する財産を処分された場合の遺産の範囲
「民法906条の2
1.遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2.前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。」
とあります。
つまり、すでに見当たらない財産について、遺産分割の対象に含めるか含めないかは、共同相続人全員の合意でできるということです。もちろん、所在不明の財産についても全員の同意があれば含めることができます。
一方、共同相続人のうちの一部の者が処分した場合には、その者の同意は不要になるということです。
2.事例から考える
両親と長男の家族があったとします。父親が亡くなったときの財産は
①土地家屋 500万円
➁現金 200万円
だったとします。
しかし、父親が亡くなった後に調べてみると、仏壇の中にしまってあった現金200万円がないことに母親が気付きました。母親は長男が使ったと疑っていますが、確たる証拠はありません。もちろん、母親が長男に尋ねましたが、長男は200万円の現金の持ち出しには、否定しています。民法906条の2の第2項では、共同相続人の一部がその財産を処分した場合について規定しています。このような場合にはどのようにすればいいのでしょうか?
もし、母親、長男共に現金200万円を遺産に含まれることに争いがなければ、現金200万円は遺産分割の対象とすることができます。長男が200万円の盗難を否定していても、遺産分割に含めることについて同意すれば問題ないということです。
もちろん、長男が持ち出したことを認めている場合には、長男の同意がなくても、遺産分割の対象とすることができます。
この規定の制度趣旨は、遺産を持っているものが遺産分割前に処分して自分の利益としても、それがまかり通らないようにすることです。公平な遺産分割をするための規定と言えます。
3.まとめ
なぜ、このような論点が重要になってくるのかと言いますと、遺産分割で法定相続分での分割をした場合、2の事例では、母親2分の1、長男2分の1となります。
不動産は物理的に分けることはできないので、代償分割(長男が取得する持ち分を現金で埋め合わせる分割方法)でした場合、長男に渡す現金は、
①現金200万円を含めた場合:代償金額は、150万円
➁現金200万円を含めなかった場合:代償金額は、250万円
となり、含めた場合と比較すると100万円多く、母親が長男に渡すことになります。現金が少ない場合には、もめる原因となります。
しかし、現状では「配偶者居住権」や「相続分の修正にかかる夫婦間における持ち戻しの意思表示推定」などが規定されており、より配偶者が被相続人と暮らした不動産を取得しやすいように改正がなされました。
※特別受益:相続人の中に、被相続人から遺贈や生前贈与によって特別の利益を受けた者がいる場合に、その相続人の受けた贈与等の利益のこと。
※特別受益の持ち戻し:被相続人から特定の相続人に対し生前贈与等が行われた場合には、特別受益があるわけですが、特別受益分を遺産の中に入れて具体的相続分を計算すること。
アイリスでは、ワンストップでの相続のお悩みを解決する場として「相続法律・税務無料相談会」をご紹介しております。
法律のお悩みのみの場合につきましては、「アイリスDEいい相続」の無料相談会にて対応をいたします。ぜひ、この機会にご活用ください。
本日、私の携帯にSMSメッセージが届きました。内容は、簡単なアルバイトで毎日6千円から1万2千円を稼ぐことができるそうです。外出不要でコミッションを稼ぐことで報酬が得られるというもの。怪しさ満点のメッセージでした。そこで、気になったのが、このようなSMS詐欺の動向。調べると2020年から2022年までのまとめたものがありましたのでお話をしたいと思います。
目次
1.きっかけのSMSメッセージ
2.世界の詐欺レポート2022年(2023年3月31日whoscall株式会社)
3.まとめ
1.きっかけのSMSメッセージ
(←写真)
2万円以上の金額ではなく、なんとなく働けば一日で稼げるような金額設定にしている点が、胡散臭さを醸し出していますよね。SMSメッセージを使った一種のフィッシング詐欺のことを「スミッシング」と呼ぶみたいですね。コロナ中は運送会社の宅配を装ったSMSなんかもよく来ていましたね。この時は、呼び込むサイトのサーバーがどの国にあるのか調査したことがありました。Ducksdnsという台湾のDNSを使い、自身の作成した詐欺サーバーに誘導して個人情報などを抜き取る仕組みをとっていました。
※司法書士になる前には、大手IT企業でネットワークエンジニアをしていましたから、特定はお手の物ですよ。
2.世界の詐欺レポート2022年(2023年3月31日whoscall株式会社)
「(世界で4億件以上の詐欺電話・SMSが横行!さらにSMSが詐欺事件の"最初の接触"として使用される傾向も判明)
新型コロナウイルスの流行によりオンラインサービスがさらに普及して以来、詐欺行為は2年以上にわたり各国で加速しています。
Whoscallは、世界のユーザーを対象に2022年の詐欺電話・SMSを調査したところ、4億540万件以上に上りました。
前年比13%減となりましたが、詐欺件数はパンデミック以前よりも圧倒的に多い結果となり、重要な問題であることを示唆しています。
さらに今回の調査では、詐欺師は普及率が高くコストが低いSMSを優先的に使用するため、詐欺事件における「最初の接触」の76%をSMSが占め、これまでで最も高い数値となりました。
また国別で比較すると、日本では95%、台湾、韓国、マレーシアでは80%以上の詐欺事件がSMSを通して発生し、日本では他国と比べ、圧倒的に詐欺SMSの割合が高いことがわかりました。
また、詐欺SMS以外にも、詐欺電話の手口である「ワン切り詐欺」携帯電話を1回だけコールして着信履歴を残すワン切りの電話をかけ、折り返しかけてきた電話を有料サービスへ接続して高額な料金を請求する詐欺)が横行しています。
Whoscallは台湾で、前年比3倍の件数となる年間最大46万件のワン切り詐欺電話をブロックしました。
またVoIPシステム(インターネット回線を利用して音声データを送受信する技術)を使った詐欺電話は、書店や社会福祉団体を装うものが多いこともわかりました。
また日本においては、スリランカからの「ワン切り詐欺電話」を検知しました。
このような、海外からのワン切り着信は「国際ワン切り詐欺」と呼ばれています。万が一折り返してしまった場合、高額な通話料金が請求されるほか、詐欺の「カモリスト」に載せられてしまい、新たな詐欺ターゲットになってしまう可能性があるので注意が必要。
また、万が一電話に出てしまった場合は、すぐに電話を切ることをお勧めします。
(個人情報漏えいにおいて、日本で最も流出した情報は名前、ログインパスワード、電話番号であることが判明)
個人情報保護法は、氏名、生年月日、指紋、性生活、医療歴、犯罪歴など、直接または間接的に特定可能な個人情報を保護する法律です。
しかし、官公庁や民間企業で保管されている個人情報は、管理が行き届かず、第三者がアクセスすることで流出することがあります。
Whoscallを開発するGogolook(本社・台湾)では、各国の市場で、どのような個人情報の漏えいが多いかを調べ、情報漏えいのリスクに注意を払うように促しています。
日本と韓国では上位3項目が、名前、ログインパスワード、電話番号です。
4位から8位は、国籍、メールアドレス、住所、誕生日、ID番号となり同順です。
また台湾、タイ、マレーシアでは、上位にログインパスワード、電話番号、氏名が占めており、4位から8位は、国、住所、誕生日、Emailがそれぞれ3つの国で順番が若干異なっています。
流出した情報は、それぞれ異なる"リスクシナリオ"(起こりうるリスク)につながります。
例えば、パスワードが流出した後、オンラインバンキングやソーシャルネットワークのアカウントが盗まれることがあります。
また詐欺師が、名前、電話番号のほか、支払いや買い物の記録にアクセスすると、簡単に電話やSMSによる詐欺を開始することができます。
さらに名前や住所が流出すると「到着時に代引きで支払いを要求される身に覚えのない荷物」が届く可能性があります。
(各国別の漏洩した情報順位)
」(引用終わり)
3.まとめ
SMSメッセージを使った詐欺を防止するには、登録された連絡先以外からのメッセージに貼られたリンク(HPなどを表示させるアドレス)をクリックしたり、その電話番号には絶対に返信しないことが重要です。どうしても興味を持ってしまいますが、何もしないのが一番の対策です。特に電話番号に「+○〇」と数字が記載されている電話番号は、国番号が指定されているというもので、外国からのメッセージです。怪しいと思ってください。
相談者の中で「相続放棄をしたから、債務は私には来ませんよね。先生。」とおっしゃられる方がいます。私が「家庭裁判所に相続放棄申述書を出されたんですか?」と尋ねると、出していないと答えられ、「遺産分割協議で遺産をもらわなかったから、相続放棄した。」と言ってました。これって相続放棄なのでしょうか?
目次
1.遺産分割前の相続財産についての法律関係
2.相続財産の遺産分割についての関連判例
3.遺産分割の効力
4.まとめ
1.遺産分割前の相続財産についての法律関係
相続財産の個々の財産の上に持ち分がある状態です。(共有と同じ状態)
そして、遺産分割前におけるその持分の譲渡は有効となります。
ですので、不動産の相続登記を法定相続分で行う場合には、遺産分割協議書と印鑑証明書を求められてはいません。
それでは、被相続人の債権(貸金など)・債務(借金など)は、どのようになるのでしょうか?
これは、各相続人に当然に分割されます。
この部分が、今回の議論の上で考慮しなければならない箇所になります。それでは、具体的にみていきましょう。
2.相続財産の遺産分割についての関連判例
①最判昭29.4.8:金銭債権
金銭債権(被相続人の貸金など)について、当然に分割される。つまり遺産分割の対象とはならないとあります。
他の財産の遺産分割前でも債務者にその相続分に相当する金銭の支払いを求めることができるということになります。
※ただし、これをしてしまうと、単純承認となり相続放棄はできなくなりますので、相続放棄を考えている場合には、請求してはいけません。
➁最判平4.4.10:金銭
金銭(現金・預金)について、当然には分割されない。
遺産分割前にその金銭を保管する相続人に他の共同相続人が自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません。
※このために、金融機関は被相続人の預金を凍結するわけです。
③最判昭52.9.19:特定不動産売却
共同相続人の全員の合意により遺産を構成する特定の不動産を第三者に売却した場合、その代金債権は、各相続人にその持分に応じて帰属し、各相続人は、遺産分割をすることなく、個々にこれを請求することができます。
なぜなら、特定の不動産(共有状態)のものを相続人全員の同意で売却し、①の金銭債権にしたため、分割前に各相続人の持ち分に応じた請求が可能になるわけです。
判例は、金銭・金銭債権といったプラスの財産についてその基準を示しています。
それでは、被相続人の債務はどう考えればいいのでしょうか?
3.遺産分割の効力
「民法909条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」
遺産分割協議がまとまれば、その内容で相続開始時にさかのぼって効力を生じます。しかし、この内容は、被相続人の債権者のような第三者の権利を害することはできません。
例えば、債務を長男が全部背負う代わりに、長男が財産を多くもらう遺産分割協議が成立したとします。この内容は、相続人全員の間では有効ですが、亡くなった父親の借金の債権者の権利は害せないと言っているのです。
「遺産分割協議で遺産をもらわなかったから、相続放棄した。」というのは、父親の借金の請求者の権利は害せないということになり、「相続放棄」ではないということになります。単に、相続人間で合意しただけの内容ということになります。
誤解されていた方もいたのではないでしょうか。
4.まとめ
①遺産分割前の金銭は当然には分割されない。
➁遺産分割前の金銭債権は当然に分割される。
③遺産分割協議で財産をもらわなくても、第三者の権利を害することはできないので「相続放棄」ではない。
以上です。
注意していただきたいのは、遺産分割協議をして相続登記をした場合、自身の相続分を処分したものとみなされて、たとえ相続放棄を期間内に申述しても相続放棄はできなくなるので注意が必要です。
必ず、相続放棄をしたい場合には、専門家のアドバイスを受けてください。
相続が発生し、遺言書もないときに相続人全員で遺産分割協議をして遺産を分割していきます。この時に、どうしても協議がまとまらない場合にどのような手段があるのでしょうか。その点について、解説していきます。
目次
1.遺産分割の方法
2.遺産分割協議がうまくいかなかった場合
3.遺産分割調停の手続き
4.どこの家庭裁判所に申立てをするのか
5.遺産分割調停の申立てに必要な書類等
6.遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合どうなるの?
7.最後に
1.遺産分割の方法
①遺言による指定分割
「民法第908条前段
被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定め(遺産分割方法の指定)、もしくはこれを定めることを第三者に委託すること(遺産分割方法の指定の委託)ができます。」
➁協議分割
「民法第907条第1項 遺産分割自由の原則
共同相続人は、遺言による遺産分割方法の指定又は指定の委託がない限り、いつでも協議で遺産の全部または一部の分割をすることができます。」
※令和5年4月1日から施行される「遺産分割新ルール 10年・5年の猶予期間」になり、遺産分割協議はいつでもできるわけではなくなるので注意が必要です。期間を過ぎた場合には、法定相続による遺産分割協議しかできなくなります。
③裁判分割
「民法第907条第2項
協議がととのわないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、家庭裁判所にその全部または一部の分割を請求することができる。
民法第907条第2項但し書き
ただし、遺産簿一部分割をすることにより他の共同相続人の利益を害する恐れがある場合には、一部分割を請求することはできない。」
つまり➁の協議(話し合い)でまとまらないなら、家庭裁判所の遺産分割調停によることとなります。
2.遺産分割協議がうまくいかなかった場合
遺産分割協議は、相続人の全員が参加し、全員の同意がなければなりません。ですので、時として、協議がうまくまとまらないケースもあります。そんな時は、家庭裁判所に対して「遺産分割調停」を申立することとなります。
3.遺産分割調停の手続き
相続人全員で遺産分割の内容を裁判所で行うための手続きとなります。遺産分割調停では、裁判所の調停委員にサポートしていただきながら手続きを進めていくことになります。顔を合わせたくない相続人との話し合いも、裁判所の配慮により調停委員が間に入り顔を合わせることなくスムーズに進めていくことができます。調停委員が間に入ることによって、相続人同士が冷静に話し合うことができます。
調停の手続きでまとまった内容は、調停調書にまとめられます。その後、調停調書の内容に従って遺産の分配を進めていくことになります。
4.どこの家庭裁判所に申立てをするのか?(管轄裁判所)
遺産分割調停は、相手方のうち1人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てをすることができます。相手方とは、申立てをする相続人以外の相続人の方のことです。また、申立人とそれ以外の相続人との合意によって決めた家庭裁判所に対しても申立てをすることができます。
5.遺産分割調停の申立てに必要な書類等
例)被相続人:夫、相続人:妻、子供の場合
①被相続人(亡くなられた方)1人に対して1,200円分の収入印紙と切手
(必要な額と枚数が家庭裁判所ごとに異なるので事前に確認が必要です。)
➁遺産分割調停申立書
③被相続人(亡くなられた方)の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
④相続人全員の戸籍謄本・住民票
➄相続関係説明図
⑥遺産を証明するもの(固定資産評価証明書、預金通帳の写し等)
※必要書類は、相続の内容により異なりますので、専門家への相談をお勧めいたします。
6.遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合どうなるの?
遺産分割調停は、話し合いによって解決を目指す手続きです。相続人の全員が合意しなければ成立はしません。1人でも納得しない人がいると成立しないのです。調停が不成立になると「自動的に審判手続きに移行」します。
遺産分割調停では、調停委員が間に入り話し合いにより解決する手続きですが、審判では「話し合いは行われません」。裁判と同じように証拠に基づいて裁判官が審判を下します。つまり、調停のように話し合いではなく、裁判官が審判を下して遺産の分割方法を決めるということになります。そして、この審判には強制力がありますので、必ず従わなければなりません。相続人の希望に沿った結論ではない場合もありますが、どうしても解決できなかった場合の解決手段と考えてください。
遺産分割により取得した不動産については、この遺産分割調停調書、審判書を基に登記をすることとなりますが、すでに家庭裁判所で相続関係を確認しているために、再度戸籍等の添付が不要となります。
7.最後に
相続に関する相談で遺産分割協議に応じてくれない、そもそも遺産分割協議に参加してくれないといった相談を受けることがありますが、家庭裁判所の遺産分割調停・審判の手続きを話し、それでもダメな場合は実際に手続きに入っていただくようにアドバイスしております。
極力家庭裁判所の手続きを避ける理由としては、その後の家族関係の悪化です。できる限り話し合いで解決したほうが良いと考えております。
遺産分割調停や審判の話をすると、たいていの場合、遺産分割協議に応じてくれるケースが多いです。ただし、応じてくれない場合も当然あるので、上記手続きの内容を参考にしてみてください。
相続が発生し遺言書がなかった場合、相続人全員による協議をして特定の財産を度の相続人の所有にするのかを定める「遺産分割協議」をする必要性が出てきます。遠方に住んでいる相続人が亡くなった父親の土地家屋の持ち分を相続しても管理は難しいですからね。当然、相続人全員にとって財産価値的に平等にするのがいいのですが、不動産はあるが現金預金が少ない場合などは協議が紛糾する可能性があります。これを円満に行うためのコツについて、解説していきます。
目次
1.遺産分割協議書とは
2.遺産分割協議を円満に終わらせるコツ
3.遺産分割協議でもめた場合
4.裁判所の調停、審判による遺産分割協議について
5.まとめ
1.遺産分割協議書とは
遺産分割協議書は、相続人たちが相続に関する紛争を解決し、遺産を分割するために作成される書類です。
遺産分割協議書には、以下のような内容が記載されます。
①遺産の資産価値や内容
➁相続人の氏名や続柄
③相続人が受け取る遺産の内容、受け取る割合、受け取る時期など
④遺産分割に関する約束事やルール、決定事項など
遺産分割協議書は、相続人全員が合意した内容をまとめた書類となります。この書類に署名及び実印での押印をすることで、相続人全員がこの内容に同意し、それぞれの権利や義務が確定することになります。
また、遺産分割協議書は、民法上の契約書として法的な効力を持ちます。そのため、遺産分割協議書に記載された内容は、相続人たちの間での紛争が起こった場合に、裁判所での審判材料として利用されることがあります。
2.遺産分割協議を円満に終わらせるコツ
遺産分割は、相続人間で紛争が起きることがあるため、円満に終わらせるためには以下のようなコツがあります。
①話し合いの場を設ける
遺産分割協議は、相続人全員が集まって話し合いをすることが望ましいです。相続人全員が同じ場所に集まることで、話し合いがスムーズに進むことが期待できます。
➁適切なタイミングで話し合う
遺産分割協議は、葬儀や葬式などの精神的負担が大きな時期に行うことが多いですが、そのようなタイミングで話し合うことは避けるべきです。適切なタイミングで話し合いをすることが大切です。
③専門家のアドバイスを仰ぐ
遺産分割協議は、専門的な知識が必要です。弁護士や税理士などの専門家に相談することで、遺産分割協議が円滑に進むことが期待できます。
④相続人の意見を尊重する
遺産分割協議は、相続人全員の意見を尊重しなければなりません。相続人全員が満足できる遺産分割協議を目指し、お互いの気持ちを理解することが大切です。
➄感情的にならない(一番大事)
遺産分割協議は、相続人間で感情的になることがあるため、冷静な対応が求められます。相手の言い分を聞いた上で、冷静な判断をすることが大切です。
⑥部外者を協議に参加させない
以前、兄弟の配偶者で「法律に詳しい方」にお願いして協議を進めようと思います、という話を聞いたことがあります。これ、全くの間違いです。まずは、「法律に詳しい方」は専門家ではありません。しかも、相続人の配偶者は第三者ではなく「利害関係人」です。その相続人の取り分が大きくなれば間接的に、その方の懐も潤う関係になるからです。もめる原因になりますので、必ず相続人だけで話し合いをするようにしましょう。
以上のようなコツを意識しながら、相続人全員が満足できる遺産分割協議を目指すことが重要です。
3.遺産分割協議でもめた場合
遺産分割協議でもめた場合は、以下のような手続きが考えられます。
①仲裁や調停の申立て
まず、専門家に相談して、仲裁や調停の申立てを行うことができます。調停は、調停員と呼ばれる専門家の仲介のもとで、双方が話し合いをし、解決することを目的とした手続きです。調停が成立すれば、遺産分割協議書を作成し、解決を図ることができます。
➁裁判の提起
調停の手続きでは遺産分割協議書を作成することができない場合、法的な手続きで解決を図る必要があります。この場合、裁判を提起することになります。裁判所には、相続に関する法律に基づき、遺産分割を決定する権限があります。裁判所での審判は、公正かつ公平な判断を下すことが期待されます。
③相続放棄
遺産分割協議がまったく成立しない場合、相続放棄という手続きをとることができます。相続放棄とは、相続人が自らの相続権を放棄することです。相続放棄を行えば、その相続人に関しては遺産分割の問題がなくなります。(相続人ではなくなってしまうため)相続放棄には相続が発生したのち3か月以内という期間制限があります。また、相続放棄をした場合、相続人ではなくなるため、当該相続での相続分を受け取ることはできません。
遺産分割協議でめぐりめぐって紛争が起きた場合には、弁護士に相談したり、調停や裁判などの手続きを行うことで解決を図ることができます。
4.裁判所の調停、審判による遺産分割協議について
遺産分割協議において、相続人たちの合意が得られない場合には、裁判所による調停や審判が行われることがあります。
調停は、裁判所に申し立てをし、専門家による仲介のもとで相続人たちが話し合い、解決を図る手続きです。調停によって解決が図れれば、遺産分割協議書を作成し、その内容に基づいて遺産分割が行われます。
一方、審判は、裁判所による判断で、法的な手続きが行われます。裁判所は、相続に関する法律に基づき、相続人たちが主張する内容や証拠を審査し、遺産分割の判断を下します。審判の結果、遺産分割が行われる場合は、その内容が裁判所の決定として確定します。
調停や審判は、裁判所による手続きであるため、法律の知識を持った弁護士の支援が必要となる場合があります。遺産分割協議で紛争が生じた場合には、弁護士に相談し、適切な手続きを行うことが重要です。
5.まとめ
遺産分割協議書の作成において、相続人全員の協力なしでは完結することは困難です。協議をするうえで、感情的にならないということが重要になってきます。
また、相続税も遺産の分け方により、その額が大きく異なる場合が出てきます。
出来上がった「遺産分割協議書」「遺産分割調停書」「遺産分割審判書」は、相続した不動産の名義の書き換え登記に必要となります。「遺産分割協議書」には、各相続人の印鑑証明書の添付が必要となりますが、調停書や審判書には不要です。
つまり、遺産分割が終わらない限り、当然ですが不動産の名義の変更はできないということになりますので、専門家のアドバイスを受けながら、円満な遺産分割を目指すようにしましょう。
令和5年4月1日の民法改正により、遺産分割協議のルールが変更になっています。ルール変更に伴い、期間制限が発生しています。この期間制限と他の法令の期間制限を比較しながら解説していきます。
目次
1.遺産分割協議の改正内容
2.他法令の期間制限
3.まとめ
1.遺産分割協議の改正内容
遺産分割協議には、法律上の期限はありません。つまりいつ行っても問題はないということです。しかし、2021年4月の民法改正により、「特別受益」と「寄与分」の内容が変更されたことにより、影響が出ています。
①特別受益とは
相続開始後10年が経つと、被相続人(亡くなった人)から一部の相続人だけが生前贈与や遺贈、死因贈与で受け取った利益
➁寄与分とは
相続財産の維持・増加への貢献度に応じて認められる相続分の増額分
これらの特別受益・寄与分について、相続開始後10年経過すると、その権利を主張できなくなってしまいました。
そのために、遺産分割協議を10年以内にする必要があると言われるようになりました。
民法改正は、2023年4月1日から施行されます。また、2023年4月1日以前に発生した相続にも適用され、その場合、施行日から5年間の猶予期間となっていますので注意が必要です。
※期間経過した場合、原則、法定相続分での分割となるのですが、相続人全員の同意があれば、法定相続分以外の分割も可能です。
2.他法令の期間制限
それでは、今回の民法改正で10年以内に遺産分割協議をすれば安心・・・というわけではありません。他にも法令による期間制限を受ける場合があります。
①不動産登記法の改正
2024年4月1日より、不動産登記法が改正され「相続登記義務化」が始まります。
相続が発生し、不動産の所有権を取得したことを知ったときから3年以内に不動産の名義変更登記をすることが義務づけられました。また、②遺産分割協議が成立したときは、成立した日から3年以内に名義変更登記をすることが義務づけられています。これらの義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となります。
3年以内に遺産分割協議がまとまらない場合、この過料を免れるためには、いったん法定相続分による相続登記をするか、相続人全員の「相続人申告登記」をしておく必要があります。法定相続分による登記は、登録免許税等が発生しますし、「相続人申告登記」をしたとしても、そのまま不動産を売却することはできませんし、その間に新たな相続が発生するリスクも抱えています。
➁相続税申告
相続税申告が必要な場合、相続が発生したことを知った日から10カ月以内に申告し、納税しなければいけません。申告期限内に申告をしないと、無申告加算税や延滞税が課されてしまいます。
また、10カ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合、配偶者控除の特例や小規模宅地の特例など相続税額を低くする特例が使えません。相続税申告時に「3年以内の分割見込書」を提出すれば、その後遺産分割が成立した際に更正請求を行うことで、特例の適用を受けて納めすぎた金額の還付を受けることはできます。ただし、更正請求の手間が増える、相続税申告時の納税額が高くなり納税資金を確保する必要が生じるため、できるだけ期限内に遺産分割協議を済ませておいた方が、手間はかかりません。
3.まとめ
遺産分割協議自体には法律上の期限はありませんが、特別受益や寄与分の主張が制限される期限、相続登記期限、相続税申告期限、といった期限があります。
これらの期限近くになり、焦ることのないよう、早めに専門家に相談し、期限内に遺産分割協議をまとめることをお勧めいたします。
ご相談者の中でも、収益物件を所有されている夫が亡くなり相続登記をしておらず、奥様の方も最近認知症気味で、どうすればいいのかというご相談を受けます。相続人が認知症になった場合には、遺産分割協議をするには、成年後見人を就けるしか方法はなくなってしまいますので、事前の対策を早急に検討してみてください。
相続が発生した場合に、被相続人の遺言書がなかった場合、遺産分割協議を相続人全員でしなければ具体的な相続分を定めることはできません。その遺産分割協議書の様式や記載内容などについて解説いたします。
目次
1.遺産分割協議書の書式
2.遺産分割協議書作成のポイント
3.財産別に作成した遺産分割協議書
4.相続人ごとに作成した遺産分割協議書 5.まとめ
1.遺産分割協議書の書式
遺産分割協議書は、相続人全員で相続財産をどのように分割するのかを話し合い、同意した内容を書面にまとめたものですが、法的に必ず作成しなければならない書面ではありません。 そのため、決まった書式もありません。
しかし、適当に書けばいいのかというとそうではありません。各項目において、今まで問題なく遺産分割の協議の内容の効力を有効にするコツみたいなものがあります。
2.遺産分割協議書作成のポイント
遺産分割協議書の各文言には、細心の注意が必要です。記載内容によっては、遺産分割協議書そのものが使えなくなってしまう場合がありますので、注意が必要です。
①一部の相続人の印鑑証明書の交付を渋っている場合
その者に対する「遺産分割協議書真否確認の勝訴判決」をもって、その者の印鑑証明書変えることができます。(昭56.11.20民三6726号)
➁相続人の一部が遺産分割協議書への実印での押印を拒んでいる場合
右遺産分割により、特定の不動産を単独で相続することとなった者は、押印を拒んでいる者に対する「所有権確認訴訟の勝訴判決」及び当該遺産分割協議書(他の相続人等の印鑑証明書付)を添付して、単独で遺産分割による相続の登記を申請することができます。(平4.11.4民三6284号)
また、以前取り扱った遺産分割裁判の判決書を添付しての相続登記をする際、当該遺産分割裁判時の不動産から漏れていた建物がありました。裁判の内容とは異なる物件になりますので、「すべての相続人は、個々に記載された以外の財産又は債務があった場合は、相続人Aに相続させることに異議はないものとする。」という漏れた財産の帰属先を決めておきます。しかし、その判決書には「改めて協議することとする。」と記載していました。もめているから裁判をしたのに協議なんてできるわけありませんよね。本当にこの時は困りました。
3.財産別に作成した遺産分割協議書
こちらも依頼の際にニーズがある話なのですが、遺産分割協議書は一般的には、不動産、預貯金等の相続財産をどのように分けるのかを相続人全員で協議し合意して成立します。
つまり、相続財産全てについて記載があるわけなのですが、この遺産分割協議書は、各種相続手続きに使用しますので、それぞれの手続きをする際に遺産分割協議書を提出すると、不動産をどれだけ持っているかなどの手続き先以外の財産の状況も、手続き先に全て知られてしまいます。
これを嫌う方もおり、不動産登記には不動産の遺産分割内容だけなど財産ごとに作成する場合もあります。もちろん、このような形の遺産分割協議書も、各財産について、相続人全員の署名と実印の押印があれば成立することになります。
「遺産分割協議書は必ず1通で作成しなければならないという制限はない。(昭35.12.27民甲3327号)」
4.相続人ごとに作成した遺産分割協議書
遺産分割協議書が相続人ごとに作成されている場合であっても、遺産分割協議書の内容が同一であり、相続人全員が合意できている事実が書類上で確認できるものであれば、遺産分割協議書として取扱うことができます。
つまり、このような遺産分割協議書を有効に成立すると認めてもらうには
①遺産分割協議書の内容が同一
➁相続人全員が合意できている事実が書類上でわかる
ことが要件になります。
不動産登記の実務上も、遺産分割協議書と同一の内容を、相続人の人数分「遺産分割証明書」として作成し、当該証明書に相続人全員が署名(記名)と実印を押印することで相続登記が可能です。
可能であれば、1枚の遺産分割協議書に連署・押印する形が望ましいですが、時間が限られている場合や、一部の相続人が海外に居住している場合などは、前述の遺産分割証明書の形が適しているケースもあります。例えば、相続人の一人が海外に住んでいる場合などがこれにあたると思います。
「(『登記研究』170号・100頁・質疑応答)
質問:同一内容の遺産分割協議書を、共同相続人が各人別に夫々作成(連署せず)した場合は、遺産分割の協議を証する書面といえないか。
回答:同一内容の遺産分割協議書を数通作成し、それに各自が各別に署名捺印したものであっても、その全部の提出があるときは、遺産分割の協議書とみて差しつかえないものと考えます。」
5.まとめ
相続登記義務化に伴い、相続発生後の相談件数が増加しております。その中で、とりまとまった遺産分割協議の内容を反映した遺産分割協議書作成の依頼も多数ありました。
専門家に依頼した場合、こういった細かい内容についても必ずチェックしています。
インターネットにも各種雛形が掲載されていますが、どのケースでも利用できるとは限りませんので、ご自身に合った内容にすることが重要です。少しでも不安がある場合には、専門家への相談をお勧めいたします。
また、遺産の分け方によっては、相続税が変わってくる場合がございますので、「相続法律・税務無料相談会」もご活用ください。
先日、岡山県倉敷市の倉敷公証役場に出張したとき、面談室内の机に「尊厳死宣言公正証書」の記載サンプルがありました。内容を確認すると、終末医療での延命措置の禁止についてなど、細かく内容を記載してありました。7年程前まで介護施設の施設長をしていたので、興味がわき拝見させていただきました。この「尊厳死宣言公正証書」についてお話をしたいと思います。
◆目次◆
1.「尊厳死宣言公正証書」とは
2.どのような内容を記載できるのか
3.まとめ
1.「尊厳死宣言公正証書」とは
「過剰な延命治療を打ち切って、自然の死を迎えることを望む人が多くなってきており、事実実験の一種として、「尊厳死宣言公正証書」が作成されるようになってきました。
「尊厳死」とは、一般的に「回復の見込みのない末期状態の患者に対して、生命維持治療を差し控え、または中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせることをいう。」と解されています。
近代医学は、患者が生きている限り最後まで治療を施すという考え方に忠実に従い、生かすべく最後まで治療を施すことが行われてきました。しかし、延命治療に関する医療技術の進歩により、患者が植物状態になっても長年生きている実例等がきっかけとなって、単に延命を図る目的だけの治療が、果たして患者の利益になっているのか、むしろ患者を苦しめ、その尊厳を害しているのではないかという問題認識から、患者本人の意思(患者の自己決定権)を尊重するという考えが重視されるようになりました。
「尊厳死」は、現代の延命治療技術がもたらした過剰な治療を差し控え、または中止し、単なる死期の引き延ばしを止めることであって、それは許されると考えられるようになりました。
近時、我が国の医学界等でも、尊厳死の考え方を積極的に容認するようになり、また、過剰な末期治療を施されることによって近親者に物心両面から多大な負担を強いるのではないかという懸念から、自らの考えで尊厳死に関する公正証書の作成を嘱託する人も出てくるようになってきました。
「尊厳死宣言公正証書」とは、嘱託人が自らの考えで尊厳死を望む、すなわち延命措置を差し控え、または中止する旨等の宣言をし、公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にするものです。
ところで、尊厳死宣言がある場合に、自己決定権に基づく患者の指示が尊重されるべきものであることは当然としても、医療現場ではそれに必ず従わなければならないとまではいまだ考えられていないこと、治療義務がない過剰な延命治療に当たるか否かは医学的判断によらざるを得ない面があることなどからすると、尊厳死宣言公正証書を作成した場合にも、必ず尊厳死が実現するとは限りません。
もっとも、尊厳死の普及を目的としている日本尊厳死協会の機関誌「リビング・ウィル」のアンケート結果によれば、同協会が登録・保管している「尊厳死の宣言書」を医師に示したことによる医師の尊厳死許容率は、近年は9割を超えており、このことからすると、医療現場でも、大勢としては、尊厳死を容認していることがうかがえます。いずれにしろ、尊厳死を迎える状況になる以前に、担当医師等に尊厳死宣言公正証書を示す必要がありますので、その意思を伝えるにふさわしい信頼できる肉親等に尊厳死宣言公正証書をあらかじめ託しておかれるのがよいと思われます。」(公証人連合会HPより引用)
公証役場で尊厳死宣言の公正証書を作成する場合には、宣言をされる方の印鑑登録証明書または運転免許証などの顔写真付きの官公署発行の身分証明書を用意していただき、あらかじめ電話で日時を予約して、相談、打合せにお越しください。 宣言の内容等について、公証人が十分な打合せをさせていただいた上で公正証書作成の準備をしていただけます。
2.どのような内容を記載できるのか
例文の中で一番に目を引いたのは、「延命措置」の否定と、「緩和ケア」の要望です。治る見込みのない状況での延命措置を否定し、死に至るまでに機関の中で痛みを伴う場合には、緩和措置を積極的にしてほしいという内容でした。
これを施設に入所するときに施設の責任者に見せて、意思表示をしておく必要があります。
3.まとめ
以前、介護施設の施設長の経験がありますが、施設に入所してくる利用者の方の状態は様々で、意思表示をしっかりできる方もいれば、すでに認知症が進み意思表示できない方もいらっしゃいます。
意思表示できれば問題ないですが、意思表示できない場合、ご家族の意思表示が優先されていたように思います。はじめに医師に係る段階で自身の意思表示を公正証書をもってしておけば、ご自身の意思が優先されます。
元気なうちに、ご自身の延命治療などについての意思表示として「公正証書」で残しておくこともできます。近いうちに私自身も作成しようと思っております。その時についてもお話をしたいと思います。
複数の会社経営をしていたAさんが亡くなり、配偶者と子供2人いました。さて、どのように相続すればいいのか、という問題になってきます。一般の方であれば、遺産分配を遺産分割協議を経て決めていただく必要があるのですが、経営者が保有する「株式の評価」によっては、様々な問題が発生してきます。また、不動産が経営者の個人名義であった場合にも、事業継続そのものに問題が発生するケースもあります。
◆目次◆
1.会社経営者Aさんの相続発生
2.会社継続に留意しなければならない理由(株式の分散防止)
3.建物は法人所有だが土地が経営者個人名義の場合の問題点
4.まとめ
1.会社経営者Aさんの相続発生
まずは、遺言書の有無の確認が必要です。遺言書があれば、その内容に従って遺産を分割することになります。しかし、遺言書がなかった場合、遺産の範囲を見ていかなければなりません。
遺言書の有無にかかわらず、遺産の範囲とその額の確定作業は、専門家に任せた方がいい場面です。総合的に課税される相続税を想定しながら、遺産をどのように配分すればいいのかを相続専門の税理士先生に確認し、Aさん名義の預金、有価証券、保険、保有株式、不動産、動産の額を確定していきます。特に時間を要するのが、経営者Aさんの保有する自社の株式の1株当たりの純資産の評価のために、3期分の決算書などが必要となってきます。
そして、遺言書の内容又は遺産分割協議の内容に従って、遺産を分配することになるのですが、不動産の名義の変更や法人の代表者の変更は、司法書士が対応することになります。
2.会社継続に留意しなければならない理由(株式の分散防止)
法人の役員変更の内容については相続人の方に決めていただく必要があります。法人の事業を引き継ぐ意思の確認やその素養なんかも踏まえて決めていただく必要があります。
事業を引き継ぐ意思があっても素養がなければ、事業を承継しても経営ができない可能性があるからです。ここはじっくり話し合って決めていただくようにしています。
そして一番の問題は、経営者が保有していた株式を誰に引き継がせるかという点。特に株式会社では、「所有」と「経営」が分離しています。「経営」の面は、先ほど話した事業を引き継ぐ相続人の意思と素養なのですが、株式は株式会社の「所有」を意味しています。
例えば、定款の目的の内容を変えて、新規事業を始めたいと思った場合、「株主総会の特別決議」が必要となりますが、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が要件となります。経営者が保有していた株式を分散させてしまいますと、意見の対立が起こった場合、この要件を充たすことができず、定款変更すらできない状態に陥るリスクがあります。
3.建物は法人所有だが土地が経営者個人名義の場合の問題点
以前、県外の方で、酒造会社の経営者が亡くなり、工場は法人名義でしたが、土地が経営者の個人名義でした。会社を弟が引き継ぐことになったことに対して相続人間(子供である兄弟)で争いになり、結局、法定相続分(各2分の1)で土地名義を変更することになりました。その後、兄の方から「共有物分割請求」をされてしまい、土地の価額の半分を支弁できなかった弟は、工場を撤去して土地を現物分割することになってしまいました。つまり、事業継続できなかったということになります。
4.まとめ
経営者の相続に関してお話をしてきました。ポイントは「自社の保有株式の分散防止」と会社の工場などに関連する不動産で、「個人名義の不動産を生前に法人名義に変えておく」などの対処法を考える必要があるかと思います。
今までに何度か相続人が音信不通となっているケースがありました。
音信不通と言っても、住所や居住場所が特定されている場合には、何とか連絡をする方法はあるのですが、中には戸籍などからは追えず、他の相続人も今まで何の連絡もないと話している場合には、どのように遺産分割協議を進めていけばよいのでしょうか。
◆目次◆
1.遺産分割協議を成立する要件
2.住所・連絡先が分からない場合
3.連絡をしても何も返信がない場合(拒否している場合を含む)
4.完全に行方不明の場合
5.まとめ
1.遺産分割協議を成立する要件
相続財産の分配方法を決めるためには遺産分割協議が必要です。
この遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければならず、誰か一人でも欠けた状態で行われた協議は無効となります。
相続登記においても法定相続人全員が記名し実印にて捺印した遺産分割協議書と印鑑証明書の添付が必要となります。
つまり「相続人全員」でなければ、遺産分割協議は無効となります。ですが、行方不明など連絡がつかなかったり所在がわからない場合にはどうすればいいのでしょうか。
2.住所・連絡先が分からない場合
疎遠になった相続人の住所を調べる方法として、戸籍の附票を確認することで確認できる場合があります。ただし、本籍地で取得ができますので、調査が必要となるかもしれません。相続人の調査として、弁護士、司法書士、行政書士にお願いすると、「職務上請求」をすることにより調査が可能です。勿論、調査を要する他の相続人の方でも窓口で取得することができます。
所在が明らかとなっても、その方が応じてくれるかどうかはわかりません。
3.連絡をしても何も返信がない場合(拒否している場合を含む)
何かしらの理由で連絡しても応答してもらえない、または話し合いを拒否されてしまう場合には家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるという手段があります。調停を申し立てると家庭裁判所から呼び出し状が送達されるので、家庭裁判所で話し合いを行い、遺産分割を成立させることになります。
しかし、いきなり家庭裁判所に調停を申し立てると、「なぜ返信しないのか」「なぜ拒否するのか」といったことが、法廷での話し合いの場で明らかになるので、話し合いがこじれるかもしれません。このケースではトラブルに発展する場合が多いので、自身でもしくは代理人として依頼した弁護士に内容証明郵便で、調停の手続きに入る前に解決できるかどうか探ってみた方がいいと思います。
4.住居すらわからない行方不明の場合
戸籍の附票などに記載された住所には存在せず、どこで暮らしているかも分からず、連絡手段もない状態になってしまっている場合、遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要があるので、相続人の中に不在者がいる場合にはこれを行うことができません。
この場合には、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることで、その管理人を含めて遺産分割協議をすることができます。不在者財産管理人の申立ては、利害関係人または検察官が家庭裁判所に対して行いますが、相続人の一部が不在者の場合には他の相続人が利害関係人に該当するのでこの申立てを行うことができます。
家庭裁判所が介在するので、仮に行方不明者をないがしろにしたような遺産分割協議の場合、家庭裁判所が許可を出さない可能性もありますので、注意が必要です。
また、失踪宣告を活用する場合もあります。失踪宣告とは、不在者についてその生死が7年間明らかでないときに、家庭裁判所の審判によって法律上死亡したものとみなす制度です。
5.まとめ
このように、行方不明でもその状況次第で対応する手法が変わってきます。
連絡が着く状態であれば、できる限り穏便に話を進めることを心掛けてください。
また、どの状況にあるのかわからない場合には、専門家に相談をすることをお勧めいたします。どのような資料を取得して調査するのか、相続専門の専門家なら答えを持っているはずです。そしてその後の対応についてもアドバイスをしていただけると思います。
例えば、相続税対策として、個人名義で賃貸マンションを購入し、金融機関から融資を受けているケースについての相続を考えてみます。物件価格が高額で融資額が大きいと「相続税対策」として、事前に税理士などのアドバイスを受けて購入している場合が多いです。このような収益物件がある場合について、お話をしていきたいと思います。
目次
1.個人名義で賃貸不動産を購入すると相続税対策になる?
2.収益物件の相続手続き
3.収益物件が相続発生年内に新築されている場合の注意点
4.ローンが残っている時の注意点
5.まとめ
1.個人名義で賃貸不動産を購入すると相続税対策になる?
アパートのような収益物件は、相続税評価額がかなり低くなる点が大きなメリットです。アパート等の不動産の相続税評価額は一定のルールに基づいて計算され、時価(実際の価値)の30~50%程度になるので、節税になります。
新築の場合でも、金融機関からの融資を受けた場合、新築の収益物件とローンが残りますので、その差額で相続税対策をしているケースもあります。
2.収益物件の相続手続き
まずは大きく以下の手順が必要です。
①相続登記する。
名義を亡くなった方から、相続人のどなたかに名義を変更する必要があります。
➁管理会社に連絡し、入居者に通知する。
管理契約の当事者が亡くなっていますので、基本的に物件を引き継いだ相続人と管理契約を取り交わす必要があるためです。また、アパートの所有者が変わったことを入居者に通知し、賃料の支払先を変更する必要がある場合があります。
③アパートローンがある場合は金融機関に相談する。
アパートローンに「団体信用生命保険」が付いている場合には、借りた人が亡くなると保険金でローンが返済されます。
相続税の節税目的で建てられたアパートの場合には、借入金があれば相続税評価額を圧縮できるので、団体信用生命保険は付けていないことが多いです。団体信用生命保険なしのアパートローンで、ローン残高が残る場合には、今後の支払いについて金融機関と相談し、契約を引き継ぐ手続きを行います。
④準確定申告を4ヶ月以内に行う
亡くなった人の不動産収入について、相続人が代わりに申告・納税を行う必要があります。これを準確定申告といいます。通常の確定申告は、1年分を翌年の2月16日から3月15日までに手続きしますが、準確定申告は特別に、相続を知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があるのでご注意ください。
➄相続税を10ヶ月以内に申告する
相続税がかかる場合には、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税します。
3.収益物件が相続発生年内に新築されている場合の注意点
2①の相続登記をする場合、亡くなった年の新築物件は、固定資産税評価証明書には記載されません。固定資産税の評価額は、その年の1月1日時点の物件について評価額が記載されるためです。それでは、どのように新築物件の評価額を出せばいいのかと言いますと、「○〇法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表」を参照します。建物を新築した場合も、所有権保存登記の登録免許税の計算に使用される価格基準になります。物件の登記簿の「種類」「構造」から、1㎡あたりの単価を見つけて、登記簿の床面積を乗じた数値を評価額として計算します。
4.ローンが残っている時の注意点
アパートのローンを残したまま親が亡くなってしまった場合、遺産分割協議の前に連帯保証人が誰か確認します。連帯保証人の銀行の審査基準は、法定相続人であること、または事業継承ができる見込みのある人である場合が多いです。やはり、資力のない方への変更は、金融機関側が拒否する可能性があります。
また、連帯保証人が相続人であった場合、ローンが残っているアパートの相続放棄ができません。当該相続人の方は、亡くなった主債務者と同等の責任をもって、ローンを返済する必要があるためです。どうしても、アパートの経営やローンの返済をやめたい場合は、該当のアパートを売却するしかないでしょう。
5.まとめ
このように、収益物件を相続する際には、様々な手続きや注意点が存在します。
相続登記義務化は、所有者不明土地問題から議論され出てきたものです。義務化されたことで罰色である「過料」が設定されました。一定の要件を充たすことで、過料を免れることとはなるのですが、その後、相続登記の義務まで免れるわけではありません。他にどのような手段があるのでしょうか。
目次
1.相続登記義務化
2.過料を免れるための「相続人申告登記」
3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・
4.まとめ
1.相続登記義務化
2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まります。いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。
「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用
2.過料を免れるための「相続人申告登記」
「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。
(画像)相続人申告登記の登記簿のイメージ
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
4.まとめ
「相続人申告登記」は、相続登記義務化の過料を免れるためには、有効な手段となりますが、相続登記自体を免れるわけではないので、注意が必要です。
相続登記自体を免れないとは、例えば、相続した不動産が、すでに誰もすまなくなってしまっているような場合、「売却」を考えている方もいらっしゃると思いますが、こういった不動産の処分をするためには、相続登記を経て行わなければならなくなるためです。
早めの対策・対応をとることが相続を円滑に進めるコツだと考えます。
先日、とある方とお会いする機会があり、その方が独立して事業を始めるということで、会社に退職願を申し出たところ、経営者の方にめちゃくちゃ切れられた、というお話を聞きました。私自身も、いままで様々な業種を渡り歩いてきて、会社を辞めるときにドライな感じだったり、恫喝に近いような脅しを受けたりと両手以上の経験がありますのでお話をしたいと思います。
目次
1.法律上いつまでに退職願を出すべきなのか
2.なぜ、辞めると経営者は怒るのか
3.恫喝された場合の対処法
4.まとめ
1.法律上いつまでに退職願を出すべきなのか
期間の定めのない雇用、つまり正社員として雇われている一般的な正社員の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。
また、会社の承認がなくても、民法(明治29年法律第89号)の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります(民法第627条第1項)。
ただし、期間の定めのある雇用、契約社員などの場合は別です。
雇用契約を結んでから1年以内は、やむを得ない事情がないかぎり退職できません。
「(民法627条)
第1項 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
第2項 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
第3項 6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。」となっております。
2.なぜ、辞めると経営者は怒るのか
この点については、人によってさまざまな見解があると思うのですが、総じて言えることは、退職願を出した方が重要なポジションにあるなど、経営者が「当てにしていた」方なのではないかなと思います。私も多くの経験をしてきましたが、組織の規模が大きくなると、結構ドライで、退職願を出せば問題なく辞められます。逆に組織規模が小さいと、引き留め工作がうっとうしかったり、経営者に切れられる場面が多かったような気がします。
3.恫喝された場合の対処法
すぐに「労働基準監督署」に相談します。「労働基準監督署」に連絡するのは、「そうかそうか、大変だね。うちが解決してあげるよ。」なんてことにはまずはなりません。労働同基準監督署は労働基準法に違反している明確な証拠がないと深く相談にのってもらえません。ただ、嫌みを言われただけでは、まだ相談に乗ってくれるレベルではありませんから。それではなぜ、連絡する必要があるのかと言いますと、「後でもめたときの証拠づくり」です。公的な機関なので、相談すればその記録は保管されます。なので、恫喝を言われたらすぐに相談の連絡をしておくべきだと考えます。
私の場合の恫喝は、「街を歩けなくしてやる。」的なことを言われました。勿論労働基準監督署にすぐに連絡をして、その後は退職願を出し普通に仕事をして、引継ぎの打診があったので引継ぎをしましたが、退職日ぎりぎりに行い、引継ぎの最後には「解らないことがあったら、またお願いします。」と言われたので、「私、退職後は絶対に来ませんよ、ここに。」と言いました。
※その後、町を定期的に散歩するようにしました。だって癪じゃないですか、そんな恫喝されて。たまに、商店街であったときは鬼の形相でにらんできましたが、私は丁寧にお辞儀をして通り過ぎました。
また、とある会社を退職した後、以前所属していた部署から「お前が導入したシステムで問題が起こっているから、今すぐ来てくれ。」と言われましたので、「業者に連絡してください。私は既に退職した人間なので雇用関係はありません。それでも来いという根拠がわかりません。仮に、どうしても必要な人材であるなら、なぜ辞めるときに反対しなかったんですか?」と質問すると電話を切りました。ご都合くんで使おうとしたのでしょうか?それはルール違反だと思います。一度でも対応したなら、次も次もと要求が増加していきます。給料ももらっていないのに要求にこたえる義理はありませんから、きっちり断るのが筋だと思います。
4.まとめ
今回は、雇用者目線での「退職」についてお話をしてきました。経営者の方も話し合いでは解決できない事情が退職者にはあるということを理解しておいた方がいいかもしれませんね。私のケースでいうと、会社を辞めるタイミングは、「将来」を考えて行動している場合が多いです。「お金」の面だけなら話し合いも通用するかもしれませんが、その人の未来まで奪う権利は、誰にもありませんからね。
令和6年4月1日に始まる「相続登記義務化」ですが、罰則である最大10万円以下の過料を免れる場合と、このケースに該当しない場合の回避方法を解説いたします。もちろん、相続登記を早期に済ませておけば、過料の対象とはなりませんので、ご安心を。
目次
1.相続登記義務化とは
2.相続登記義務化の過料が科される場合
3.相続登記義務化の過料を免れる場合
4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法
5.まとめ
1.相続登記義務化とは
相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行) 相続により(遺言による場合を含みます。) 不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。
また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。(法務省HP引用)
2.相続登記義務化の過料が科される場合
正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。
3.相続登記義務化の過料を免れる正当事由とは
※正当な理由の例
(1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
(2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
(3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
(4)経済的に困窮している場合
などが挙げられています。
4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法
「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
5.まとめ
最近の法律相談で相続登記義務化についてのご質問が増加してきておりますので、今回、過去の記事からの抜粋で「過料の回避方法」にスポットを当てて解説いたしました。
相続登記義務化の罰則である過料を免れる方法として、
①相続発生後、3年以内に相続登記を実施する
➁相続人申告登記を実施する
がありますが、①の遺産分割をしない法定相続分での登記は共有関係となるためお勧めできません。➁の相続人申告登記も相続登記義務化は免れますが、この後売買する場合には相続登記が必要となります。
司法書士が、相続登記を受任して調査すると、複数世代にわたって相続登記をしていない建物のケースが10件に3件ほどありました。未登記の建物は、役所に届出をすればいいのですが、そもそも建物を新築する場合には、1か月以内に表題登記をしなければならないと規定されているため、厳密にいえば違法状態だといえます。表題登記のみの建物も散見されるのですが、相続人の調査が膨大になり、そのままになっているケースもありました。
今後、おそらくこのような建物も対象になってくる可能性があるかもしれませんね。
令和6年4月1日より始まる相続登記義務化について、罰則である過料。法務省よりその過料の運用方針が示されています。相続登記義務に違反した場合の過料の運用方法や、免れるための「正当な事由」について解説します。
目次
1.はじめに
2.相続登記義務化による過料の要件
3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン
4.①過料通知およびこれに先立つ催告
5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法 6.③「正当な理由」があると認められる場合
7.まとめ
1.はじめに
2024年4月1日より相続登記義務化がスタートします。不動産を取得した相続人に、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を義務化するものであり、正当な理由がないのに申請を怠ると10万円以下の過料の可能性があります。今回の解説は、2023年3月23日、法務省が過料の運用方針を発表しましたので、その内容となります。
2.相続登記義務化による過料の要件
相続登記義務化により、以下の2つの要件を満たす必要があります。
①「相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならない。」
➁「遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない。」
※①で法定相続分で登記を入れた共有状態で、その後遺産分割により当該相続人の一人に相続させ、移転登記をする場合でも、遺産分割から3年間以内にその登記をしなければならないということになります。
正当な理由がないのに、①又は➁の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用多少になります。
3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン
2023年3月23日、法務省が、相続登記義務化に際して、予定している運用上の取扱い等を「相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン」として発表されました。
相続登記の申請義務化の運用方針の決定したものであり、以下の内容があります。
①過料通知およびこれに先立つ催告
➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法
③「正当な理由」があると認められる場合
が定められています。
4.①過料通知およびこれに先立つ催告
相続登記を怠っている者を登記官が把握し、まず、法務局から当該相続人に対し催告が(相続登記を促す手紙)なされます。これに応じて相続登記をした場合は、「過料事件」の裁判所への通知はされません。
しかし、催告があっても相続登記をしなかった場合、法務局から裁判所へ過料事件の通知がなされます。そして、裁判所で要件に該当するか否かを判断して、過料を科する旨の裁判することになります。
5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法
登記官が登記審査の過程等で把握した情報により行うこととなります。
➁―1相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権に浮いても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき
➁―2相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産を所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨の記載がされていたとき
※つまり、相続登記申請時に添付する「遺言書」「遺産分割協議書」に他の不動産の帰属先が記載されていた場合に、それを参考にして判断するということを言っています。
6.③「正当な理由」があると認められる場合
③―1数次相続が発生して相続人が極めて多数に上がり、かつ、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
③―2遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合
③―3相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
③―4相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶ恐れがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
③―5相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合
※正当な理由の判断について、これらの場合に限定されないということです。
7.まとめ
相続登記等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。また、遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
これらの義務を怠った場合には、10万円以下の過料の適用対象になります。
登記官の催告に応じて相続登記を申請すれば過料事件とはなりません。
相続登記の申請義務化は、2024年4月1日から施行されますので、正当な理由がない場合、早めの相続登記の申請をお願いいたします。
詳しくは司法書士までご相談ください。
アイリスでは、無料相談を随時受け付けております。まずは、ご予約をお願いいたします。
ここに文章を入令和6年4月1日より始まる相続登記義務化ですが、「義務化」の文字で漠然と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、司法書士がわかりやすく解説いたします。相続登記義務化の概要と、今回の義務化の対象範囲、罰則である10万円以下の過料と罰則を免れる条件などについてお話をしていきたいと思います。
目次
1.はじめに
2.改正前の相続登記について
3.相続登記義務化の内容について
4.相続人申告登記について
5.過去の相続については?
6.相続登記に係る実費
7.まとめ(司法書士への報酬等)力してください
1.はじめに
2024年(令和6年)4月1日に、相続登記が義務化されます。不動産を相続したことを知ったときから、3年以内に相続登記をしなければ、「10万円以下の過料」が科せられます。
また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。(法務局2022年12月27日発表では、施行日は今後決定されます。)
というのが概要です。
2.改正前の相続登記について
改正前だと相続登記は義務ではありませんでした。このため、相続登記が放置され何世代にもわたり相続が発生した場合、相続人の人数が増え特定するために相当の時間を費やす、もしくは特定できないといった状態が発生しています。この状態になりますと、不動産を処分や管理しようと思っても、それができないといったことが発生してしまうことになります。
3.相続登記義務化の内容について
相続登記が実施できていない不動産について相続登記を推進するために今回の改正となりました。
「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知ったときから3年以内に相続登記」となっています。
相続人に対する遺贈・相続させる旨の遺言がある場合でも同様に3年以内に相続登記をしなければ過料の対象となります。
また、遺産分割協議がまとまっていなくても、法定相続分での登記が必要となりますが、この場合、法定相続分による相続登記を免れる方法がありますので、次に述べます。
4.相続人申告登記について
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
5.過去の相続については?
相続相談で、すでに相続が発生しているものについてのご質問がよくありますのでご説明いたします。
結論から言いますと、「過去の発生した相続についても今回の改正は適用」になります。
「(附則案 経過措置)第五条六項 新不動産登記方第七六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。(以下省略)」
「(附則 経過措置)第五条六項 施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は①自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日②施行日のいずれか遅い日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない」
つまり、相続登記義務化前に、すでに相続が発生し相続による名義変更の登記をしていない不動産についても、施行日(2024年4月1日)から3年以内に相続登記をする義務が発生することになります。
6.相続登記に係る実費
①登録免許税
登記する際に、不動産の評価額の1000分の4の収入印紙をが必要です。
➁登記情報閲覧
システムから、現状の登記簿の内容を確認します。不動産の数×332円
③登記事項証明書
登記完了後、取得して変更を確認します。不動産の数×600円
④戸籍謄本・住民票等
役所に支払います。手数料の価格は役所により異なります。
➄公図、名寄帳
相続対象の不動産に漏れがないかを確認するために取得することがあります。
公図 1枚664円(システムから司法書士が取得)、名寄帳(役所で取得) 1通350円(高松市役所)
⑥評価証明書
相続登記をするための登録免許税の計算のために評価額を使用します。
評価証明書(役所で取得) 1通350円(高松市役所)※所有の場合と共有の場合は、それぞれに発行されます。
7.まとめ
2024年4月1日から相続登記が義務化になり、相続登記を怠った者には、10万円以下の過料に処されます。遺産分割協議が長引くなどの理由がある場合には、「相続人申告登記制度」を利用して、3年以内の相続登記義務を回避することはできますが、そのままでは処分等ができないため最終的には遺産分割協議を経て(または法定相続分の共有で)相続登記をすることになります。
無料法律相談で内容を確認するのですが、一番多いのは、「何をしていいのかわからない。」という内容です。相続に必要な手続きを一通りご説明すると、そこから手続きが必要になる場合には、こちらからどのくらいの費用が掛かるのかをお話しするのですが、不動産がなく、相続税の基礎控除内の相談の場合、相談だけで済みケースも多くありませんので、今回まとめてみました。
目次
1.2週間以内にすべきこと
2.3か月以内にできること
3.90日以内にすべきこと
4.4か月以内にすべきこと
5.10か月以内にすべきこと
6.まとめ
1.2週間以内にすべきこと
①死亡診断書の受け取り
医師が「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡した」と認められる場合には「死亡診断書」
上記以外の場合には、「死体検案書」
➁死亡届・火葬許可申請書の提出(7日以内)
※葬儀社によっては、書類一式を用意・代行していただける場合もあります。
死亡届(死亡診断書と一緒の用紙についている)については、記入したものを数枚コピーを何枚かとっておくことをお勧めいたします。死亡保険の請求に使用する場合があるためです。
③世帯主変更届(14日以内) 市町村役場
④健康保険・介護保険の手続き(14日以内)
(国民健康保険の場合)
国民健康保険に加入していた方の場合、亡くなった方の住所地の市町村役場に「資格喪失届」を提出。
亡くなられた方が75歳以上の場合、「後期高齢者医療資格喪失届」を提出します。
返却物として「国民健康保険被保険者証」「国民健康保険高齢受給者証(対象者)」「後期高齢者医療被保険者証(対象者)」
葬祭費の申請をする場合、葬儀の領収書や喪主の通帳などが必要となります。
※通常葬祭費の申請は、窓口で説明があります。3万円から5万円の支給がありますので忘れないようにしましょう。
(健康保険の場合)
会社や公務員の場合、5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出しますが、会社側で手続きをしていただける場合が多いので会社に相談してみてください。
亡くなった方の健康保険の扶養に入っていた場合、自分で国民健康保険に入るか、会社員である他の家族の扶養にはいる必要があります。
(介護保険について)
14日以内に「介護保険資格喪失届」を市町村役場に提出し、介護保険被保険者証を返却します。
➄年金受給停止の手続き(厚生年金の場合10日以内、国民年金の場合には14日以内)
手続の際には、本人確認や押印を求められることがありますので、運転免許証又はマイナンバーカード、認印を所持しておいてください。
未支給年金の請求
亡くなった月の分までの年金を受け取っていないものがある場合、生計を同じくしていた遺族が受け取れます。この請求権の時効は、5年です。
また、「遺族年金の受取」について、年金事務所に相談しましょう。こちらの債権も時効期間は5年となります。
2.3か月以内にできること
相続放棄・限定承認などの手続きの期間となります。
「民法第915条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。 ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」
※限定承認の場合、民法第924条で第915条を準用していますので同じ期間になります。
3.90日以内にすべきこと
もし、相続財産の不動産に地目が「森林」となっているものがある場合、森林法に基づく「森林の土地の所有者届出書」を当該不動産の所在地である市町村役場に届出書を提出する義務がある可能性があります。指定の森林が対象となるので、事前に市町村役場に、当該不動産の森林が対象であるがどうかの確認をしてください。相続の場合、財産分割がされていない場合でも、相続開始の日から90日以内に、法定相続人の共有物として届出をする必要があります。届出をしない、又は虚偽の届出をしたときは、10万円以下の過料が課されることがあります。
※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。
4.4か月以内にすべきこと
所得税の「準確定申告」をすることになります。「準確定申告」とは、被相続人の所得にかかる「所得税」についての手続きで、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの期間に所得が生じた場合において、そ族の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に相続人が行う確定申告のことです。
※詳しくは、税理士の方に相談してください。アイリスでは、税理士のご紹介も可能です。
5.10か月以内にすべきこと
①農地法第3条の3第1項の規定による届出書
相続財産の不動産の地目が「田」・「畑」等の農地である場合、届出が必要になります。
「第六十九条
第三条の三の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。」となりますので、忘れないように届出をしましょう。
※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。
➁相続税の申告・納付
相続税申告の要否について、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」の基礎控除額を相続財産の合計額が超える場合には、相続税の申告が必要となります。
詳しくは、税理士に相談していただきます。香川県高松市の税理士であれば、取引先である税理士の紹介も可能です。
6.まとめ
なかなか、期間別でまとまっている資料が少なかったので、まとめてみました。
相続が発生して、死亡届出等は葬儀社がサポートや代行してくれますが、それ以外の手続きについては、ご自身で行えない場合には、専門家への相談をしてください。
アイリスでは、「相続法律・税務無料相談会」に参加しております。法律相談は、アイリスの代表が致しますが、税務関連につきましては、祖図億専門の税理士先生に対応をお願いしております。月に一度(第三水曜日)に実施しております。ぜひご活用ください。
ここに文ここに文章を不動産購入時に、夫婦で購入代金を別々で支払う場合も少なくありません。これは、代金をそれぞれ払っているのにもかかわらず、共有名義にせず単独名義にした場合、名義人以外の者から名義人に対する「贈与税」を負わされてしまうためです。新築の家屋の場合、出した金額に応じて共有持分を決めて保存登記をするケースが多いです。その後、夫婦どちらかに相続が発生した場合、もう一方に持分の権利が自動的に移転するわけではありません。詳しく解説していきます。
目次
1.共有者と法定相続人の関係
2.共有名義の片方に持分を移転するには、どのような手続きが必要なのか
3.まとめ入力してください章を入力してください
1.共有者と法定相続人の関係
共有者と法定相続人の関係が、ここでは問題になってくると思います。亡くなった共有者の財産(遺産)の権利は、いったい誰のものになるのでしょうか。
まず一番初めにしなければならないのは、亡くなった共有者が「遺言書」を作成していたかどうかです。遺言書は、遺言者が亡くなることで効力を生じ、その内容が有効になります。つまり、夫婦で購入し、夫が亡くなった際に、遺言書で「不動産の持分を妻に相続させる」旨の記載があれば、妻が夫の持分を取得することになります。当然、他の相続人の遺留分を侵害していた場合には、遺留分侵害額請求権を行使されることはあるかもしれませんが、ここでは想定しないことにいたします。
遺言書がなかった場合、亡くなった共有者の持分の権利は、亡くなった方の法定相続人が民法規定の法定相続分で共有している状態になります。仮に、亡くなった以外の共有者が、法定相続人ではない第三者(内縁の妻等)の場合には、そもそも相続権はありませんので、取得することは困難でしょう。
また、内縁の妻の場合、相続人が不存在である場合に特別縁故者として家庭裁判所が認定してもらえれば、その持分を取得する可能性はあります。認めてもらえるかどうかは、家庭裁判所の判断次第ということになります。
2.共有名義の片方に持分を移転するには、どのような手続きが必要なのか
①他の共有者のみが相続人であった場合
問題なく、その亡くなった共有者の持分の権利は、他の共有者に移転します。
➁他共有者が相続人の1人であった場合
他の相続人全員と「遺産分割協議」により、帰属先を協議しなければなりません。協議を経なければ、法定相続人の法定相続分の割合で持分権利をさらに共有している状態になります。協議がこじれた場合には、「遺産分割調停・審判」の手続きを要します。協議等を経て帰属先が他の共有者だとなれば、その持分の権利は、他の共有者のものになります。
③他共有者が全くの第三者であった場合
相続人ではないので、遺産分割協議への参加はできません。ですので、相続人の中からどなたかが持分を取得し、共有状態は解消されないことになります。もっとも、相続人間で持分の売却等の提示もしくは、こちらからの意思表示を受け入れてくれれば、持分を取得することは可能です。
3.まとめ
まとめると、共有者だからと言って、相続発生時に必ず持分を取得できるとは限らないということが言えます。夫婦である場合でも、他に相続人がいる場合、「遺産分割協議」を経て持分の帰属先を他の共有者にしないと持分の取得はできません。内縁の妻の場合、そもそも相続人ではないので、相続人の遺産分割協議への参加する権利はありません。
対処法としては、共有者から生前に持分を生前贈与(不動産評価額が大きい場合、何回かに分けて贈与)することが挙げられます。
また、共有者の生前に「遺言書」を作ってもらうことも有効な手段です。遺言書の場合、持分の権利は、他の共有者に必ず移転します。ただし、第三者の場合には、税金がかかってくるかもしれませんが、相続人から「共有物分割請求」をされて、住む場所を失ってしまうリスクも否定はできないからです。
今回は、わかりやすくするためにできるだけ簡単な事例で紹介いたしました。詳しい内容に関しましては、専門家に相談することをお勧めいたします。
令和7年ごろ、公正証書遺言がビデオ通話で作成可能になるということが発表されました。
現状、公正証書遺言を作成するためには、公証人とじかに合う必要があります。私が受任した公正証書遺言書の作成も、施設や病院に入院されている場合で面会謝絶状態だった時には大変苦労いたしました。このような状況でもビデオ通話で公証人と会うことが許されれば、飛躍的に活用しやすくなりますね。
それでは解説していきます。また、遺言もパソコンやスマホで作成できるようになるかもしれません。この辺りを詳しく説明いたします。
◆目次◆
1.公正証書遺言について
2.現状の公正証書遺言書作成の流れ
3.公証人法改正によるビデオ通話による公正証書遺言書作成
4.「公証人が相当と認めるとき」とは
5.デジタル遺言制度創設検討開始
6.デジタル遺言制度のメリット
7.デジタル遺言の偽造防止策として
8.まとめ
1.公正証書遺言について
公正証書遺言とは、公証人が関与して作成する遺言書のことです。費用は掛かってしまいますが、自分で書く遺言書(自筆証書遺言書)より、以下の点でお勧めです。
①公証人が関与するので形式面での無効になる可能性がまずありません。
➁内容が不明瞭で相続手続きに支障が出る可能性も低いです。
③公証役場委に返本が保管されているので、紛失リスクがありません。
④相続開始後に家庭裁判所の検認手続きが不要。
2.現状の公正証書遺言書作成の流れ
①公証役場で相談する。(士業等にサポートを依頼する場合は士業等に相談して下さい。士業が代理人として公証役場との打ち合わせ等をいたします。)
➁必要書類意を取得する。
③予約の上、公証役場に実印をもって臨む。(実印での証明には、印鑑証明書が必要となります。)
※証人2人が必要。(士業サポートの場合、士業の方で証人をそろえていただくことも可能です。また、公証役場にお願いをすれば、証人の手配をしていただけます。)
※ここからは、公証役場で当日実施する内容です。
④遺言者が公証人に遺言の趣旨を口述(証人以外は同席することはできません。)
➄公証人が遺言者の現行を読み聞かせを実施。
⑥遺言者と証人が署名押印(遺言者は実印で押印)
⑦公証人が署名押印
⑧公証人手数料を支払って、公正証書遺言の正本・謄本をもらう。
3.公証人法改正によるビデオ通話による公正証書遺言書作成
令和5年6月6日、改正法が成立し、令和5年6月14日公布されております。そして、公布から2年6か月以内の政令で定める日が施行日となりますので、おそらく令和7年ごろからの開始となりそうです。
改正後は、公証人の面前での手続きについて、遺言者が希望し、公証人が相当と認めるときは、ビデオ通話を利用できるということになっています。この場合の本人確認は、マイナンバーカードの電子証明書が利用されることになっております。
4.「公証人が相当と認めるとき」とは
公証人が相当と認めるときとは、いったいどんな時なのかという疑問がわいてきますね。こちらについては、「法務省 公証実務のデジタル化に関する実務者との協議会」の資料によると、「必要性と許容性とを総合的に勘案して判断」するそうです。これまた、よくわからない表現になっています。
必要性とは?(必要性で問題とならない場合)
①心身の状況や就業状態等により公証役場に出向くのが難しい場合
➁公証役場委に行くのが困難な地域
③感染予防のため施設や病院に外部の人が入れない状態
などが挙げられます。
許容性とは?(許容性で問題となる場合)
①本人確認、意思確認をビデオ通話でも問題なくできない。
➁遺言能力について問題となりやすい高齢者。
③遺言能力に影響を及ぼす可能性のある病気・症状の診断を受けている。
④合理的な理由なく一部の相続人に全財産を相続させる遺言内容。
➄公証人への事前相談が遺言内容に利害関係を有する一部の親族を通じてされている。
このような場合には、公証役場も後々にもめることを考慮して慎重に許容性を判断することになります。
5.デジタル遺言制度創設検討開始
これまで紙でしか認められなかった遺言が、ついにパソコンやスマホからでも作成が可能になるというニュースがでましたね。(令和5年5月5日 日本経済新聞)
今までだと、自筆証書遺言ですと財産目録以外は、原則紙に直筆で書き込み、自署・押印が成立の要件となっていました。公正証書遺言も、公証人及び証人2名と自身で、書面上で書かれた内容について確認する作業が必要で、保管も書面での保管となっています。
デジタル化されることにより、いったいどのようなメリットがあるのでしょうか。
6.デジタル遺言制度のメリット
①フォーマットに沿って入力するので、形式的な理由で無効になることがない。
すでに、いろいろなサービスでフォームへの入力方式をとられていますが、今回のデジタル遺言制度も同様にフォーマットが用意されており、そこに入力する形で作成するみたいですので、自筆証書遺言のように自分なりの文章で書いたためにその内容が効力を生じないとはなり辛いと思います。全くないとは、現段階ではどのような仕組みを使ってするのかがわかりませんので、あえて全くないとは言い切れません。
➁紛失がなく、ブロックチェーン技術を使えば、改ざん防止も可能。
デジタル空間で一番気になるのが、なりすましや改ざんといった不正行為のチェック機能だと思います。そこは、どうもブロックチェーン技術を使うみたいですね。
ブロックチェーン技術とは、デジタル通貨ですでに実績のあるの技術ですね。改ざんがないことや所有者本人であることの証明をするための技術になります。
7.偽造防止策として
いくらブロックチェーン技術を使っていても、作成の段階で成りすましていたらその信頼性が揺らいでしまいます。そこで、どうも偽造防止策として、「ネット上で顔撮影」+「電子署名」などで対応するみたいです。海外などでは、証人2名という事例もあるそうですので、今後の議論に注目ですね。
8.まとめ
遺言書があれば、多くの相続手続きにて、相続人の負担を軽減できることは前にも書きましたが、そう遠くない未来に、遺言書作成のハードルは下がる施策が多く出てきます。現状では、今までと同じ手順を踏まなければなりませんが、遺言書の優位性は変わりません。
残されたご家族の負担軽減のためにも、遺言書作成を検討してみることをお勧めいたします。
相続手続きで遺言書があった場合、なぜ相続人の負担が軽減されスムーズに手続きを進めることができるのかについて解説したいと思います。
遺言書があったおかげで、揉めた話もよく聞くのですが、揉める事例(相続人以外の第三者に全財産を遺贈する)などについても解説しております。
◆目次◆
1.相続手続きに遺言書があった場合の「スムーズになる」とは
2.遺言書がなかった場合の相続手続き
3.亡くなったからが、全財産を愛人等(第三者)に遺贈した場合
4.遺留分とは
5.遺言書で相続財産の帰属先が決まる
1.相続手続きに遺言書があった場合の「スムーズになる」とは
「楽」という表現は、相続手続きにおいて遺言書があった場合に、手続きがスムーズかつ簡単に進むことを意味しています。遺言書がある場合、遺された人々や財産の分割方法が明確に示されており、法的手続きの際に問題が生じることが少なくなります。また、遺言書によっては、相続人間の紛争を回避するために、明確な規定がなされていることもあります。このため、遺言書がある場合は、遺産分割や手続きのトラブルを避けることができるため、「スムーズに手続きができる」と表現されることがあります。
それでは、遺言書がなかった場合、どうなるのでしょうか。
2.遺言書がなかった場合の相続手続き
遺言書がない場合には、相続人全員で相続財産を遺産分割協議により分割しなければなりません。そんなの、家族みんな仲がいいから大丈夫という方もいるかもしれません。しかし、今仲が良くても相続財産の話し合いになったとき、少しでも公平でなさそうな場合には、文句を言う相続人が出てくるとも限りません。また、離婚した前妻の子供も相続人になります。こうなってくると、一気にハードルが高くなってきます。もし、前妻の子供を入れないでなされた遺産分割協議は「無効」です。なぜなら、遺産分割協議は、相続人全員参加が条件だからです。文句を言っている相続人を外しても同じ結果になります。
遺産分割協議がうまくまとまらない場合、遺産分割調停を経て審判まで行きますと、家族の関係はかなり険悪になります。
3.亡くなったからが、全財産を愛人等(第三者)に遺贈した場合
遺言書はすべてを解決する万能なツールなのかというとそうではありません。内容次第で、前向きにも後ろ向きにもなってしまう可能性があります。なぜなら、遺言書は、遺言者の一方的な意思表示により作成され(もちろん法廷の要件はありますが)、遺言者の死亡によりその遺言書は効力を生じます。その内容が「すべての財産を愛人に遺贈する」でもです。ただし、この遺言が、愛人契約をするために作成されたなどの事情(公序良俗違反)がある場合は、相続人から無効を主張することができますが、主張・立証が困難な場合もあるかもしれません。それでは、残された相続人たちは、遺言書の効力のために相続財産を全くもらえないのでしょうか。
4.相続人の遺留分とは
遺言書を作成すれば、法定相続人以外の人に全財産を遺贈することもできます。しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得ます。
こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する「遺留分(いりゅうぶん)」という制度が規定されています。ネガティブな遺言書の内容であった場合、相続人の遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求権を行使することができます。
※遺留分は、相続人の相続の権利を守る最後の砦となります。
5.遺言書で相続財産の帰属先が決まる
遺言書がない場合、「遺産分割協議」を経なければ、相続財産の帰属先は決まりません。
遺産分割協議が固まるまでは、遺産が宙に浮く形になってしまうわけです。遺産分割協議をまとめるために、専門家に依頼したとしても、費用・時間・手間が残された相続人の方に負担となってしまうわけです。
一方で、遺言書を作成し相続財産の帰属先を決めておくことで、相続発生時に遺産の帰属先は、一応決まるわけです。その後に、相続人全員の協議により変更はできるものの、宙に浮く状態を避けることができます。
先ほど解説した遺留分も、帰属先が気に食わないから、最低限、私(相続人)の取り分をくださいと請求するものです。つまり、相続財産の帰属先が決まった後の話になります。
6.まとめ
相続財産の帰属先の話をしてきましたが、遺言書を作成することで、遺言者の「想い」を形にすることができるというだけでなく、その後に発生する遺産分割協議がなくても相続財産の帰属先が決まるという利点があります。つまり、相続登記や預金の名義変更の手続きが、遺言書があればスムーズに進めることができます。
欧米では遺言書は紳士のたしなみと言われるくらい一般的ですが、日本では約10%ほどの利用しかありません。
遺言であなたの「想い」を形にしておくことで残されたご家族の負担が減ることも大きな利点です。
ぜひ遺言書の作成をご検討されてはいかがでしょうか。
最近の相談者の年齢と希望するサービスの内容について、いろいろと考えることがあります。ライフステージごとに、できること・しなければならないことをまとめてみました。
そして、遺言書を積極的に考える理由についても解説しています。
◆目次◆
1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)
2.遺言書を作成する意味
3.相続財産が相続人に帰属するタイミング
3-1.遺言書がある場合
3-2.遺言書がない場合
4.遺産分割協議でもめてしまうことも
5.まとめ
1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)
早めに遺言書を作成することのメリット
遺言書は、健康な状態で作成することが望ましいです。一度病気になってしまうと、判断力が低下したり、医療処置によって精神状態が変化する可能性があります。
早めに遺言書を作成することで、自分の望む財産分配方法を明確にし、遺言執行者の指名や葬儀の方法なども記載することができます。
ご高齢の相談者様の中には、遺言書の手続きについて説明すると「そんなに大変なら、考えます。」と言って、相談を打ち切られる場合がよくありますが、健康で元気である間に、遺言書を作成することが重要になってきます。
また、遺産分割に関するトラブルは、遺言書がない場合、法律上の相続人の割合に従って分割されますが、これが家族や親族間での紛争を引き起こすことがあります。早めに遺言書を作成することで、財産の帰属先が宙に浮くことを未然に防ぐことができます。相続人間の争いについては、遺言書があってもなくても、起こるときは起こりますし、起こらないときは起こりません。家族間のコミュニケーションや、相続発生後の手続きの煩雑さなどから見ても、遺言書があるおかげで、ずいぶん軽く済んだケースを多く見てきました。
※ご本人の状態により、使える法律行為や制度が異なる点にもご注意ください。特に認知症発症後は、法定後見制度一択になります。
2.遺言書を作成する意味
遺言書を作成することで、家族や親族間でのトラブルを防ぐこともできます。遺言書がない場合、相続財産は法定相続分に従って、それぞれの相続人の持ち分となりますが、不動産のように物理的に分けられないものも存在します。不動産を取得したがために、現金が手に入らず生活に困窮する相続人が発生したのでは、具合が悪いことになってしまいます。
また、相続関係が複雑で、専門家に調査を依頼しなければわからないケースも何度も見てきました。
そこで、遺言書を書いておくことで、相続財産の帰属先を相続発生時に決めることができます。
3.相続財産が相続人に帰属するタイミング
3-1.遺言書がある場合
遺言者(亡くなった方)の遺志に従って、財産の帰属先が決定します。
3-2.遺言書がない場合
相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を取りまとめることで、相続財産の帰属先が決まります。つまり、遺産分割協議がまとまるまでは、法定相続分での状態になってしまうということです。
※遺留分の問題があるから遺言書は進めないという方もいらっしゃるようですが、相続発生時の相続財産の帰属先は一端は決まる点がメリットだと考えますので、アイリスでは遺言書の作成についてお勧めをしております。
4.遺産分割協議でもめてしまうことも
遺言書がなく亡くなられた被相続人の相続人全員で遺産分割協議をする場合、もめるケースがあります。一旦もめてしまうとなかなか遺産分割協議がまとまらなくなります。
こうなった場合には、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることになります。それでもまとまらない場合には、家庭裁判所による審判で遺産分割を決定することとなります。
ここまで行ってしまいますと、家族関係は完全に悪くなってしまいます。一度悪くなった家族関係は、もう元には戻らないでしょう。このようなことからも、遺言書作成の意義は、とても大きいと考えます。
5.まとめ
最後に、遺言書は遺言者の意志を尊重するものであるため、遺言者自身が最も納得できる内容を記載することが大切です。しかし、遺言書が法律に反する内容を含んでいる場合などは、遺言書は無効となることがあります。遺言書を作成する際には、法律に基づいた内容であるかどうか専門家に相談し、確認するようにしましょう。
アイリスからのご提案、健康年齢を考慮して「70歳を過ぎれば、遺言書の検討を」です。
自筆証書遺言のほかに、公正証書遺言があります。
公正証書遺言は、公証人と証人2名立ち合いの中で、公証人が読み聞かせる遺言書を内容を確認する遺言です。公証人が読み聞かせ、ご本人が承諾する手続きとなります。事前に公証役場で担当公証人と打ち合わせます。その際に、相続人への遺贈なら関係がわかる戸籍(他の相続人も含めて)、第三者への遺贈の場合も相続人全員がわかる戸籍を要求されます。理由は、遺言執行者が、相続人全員に遺言書の内容を通知(民法1007条第2項)の確認のためです。
◆目次◆
1.公正証書遺言とは?
2.公正証書遺言で作成する意味とは?
3.公正証書遺言に必要な書類
4.公証役場での遺言書作成の手続き
5.公正証書遺言にかかる手数料
6.まとめ
1.公正証書遺言とは?
公正証書遺言は公証人に作成してもらう遺言書のことです。下記のメリットがあることから、費用はかかるものの、自筆証書遺言よりも公正証書遺言の作成がおすすめです。
①公証人が関与することから、方式不備で無効になるおそれがない
➁公証役場で原本を保管するため、紛失・隠蔽等のおそれがない
③相続人が遺言を発見することも容易(遺言検索サービス)
④家庭裁判所での検認が不要
➄文字を書けなくても作成できる
2.公正証書遺言で作成する意味とは?
わざわざ遺言書を公正証書で作成する意味合いとしては、第三者である『公証人』が作成することで、公文書として扱われることにあります。
相続発生後に遺産分割が整いそうにないような場合に、遺言を公正証書で作成しておくことで、文書の真正を担保することができます。
また、紛争の可能性が少ない家族構成であったとしても、公正証書の遺言で予め遺産の分け方を確定しておくことで、紛争予防としての効果も発揮します。
もし自筆証書で遺言を作成しておいたとしても、それが本当に遺言者本人の真意であるかどうか疑った相続人が争いを起こすことも想定されますので、公文書として作成された公正証書遺言は絶対的に「強い」のです。
(さらに大きなメリットとして)公正証書では本人の意思能力が争点となりにくいという点が挙げられます。遺言書が残された遺産相続の紛争事案の多くは、「遺言作成当時の意思能力」が問題となります。しかし、もしその遺言書が公証人及び証人2名の立会いのもと正式に作られた公正証書であるなら、あえて意思能力で争うことは考えないはずです。
たとえいま現時点で仲が良い兄弟だとしても、相続発生時に揉める可能性はないとは言えないと思います。余計な争いを防ぐ目的としても公正証書で遺言を作る意味合いは非常に大きいのではないかと考えています。
3.公正証書遺言に必要な書類
公正証書遺言を作成するために必要な書類
①遺言者本人の本人確認資料(印鑑登録証明書(3か月以内に発行されたもの)又は運転免許証等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ)
※公証役場では基本的に印鑑証明書による本人確認をしております。
➁遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
③財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票(法人の場合には資格証明書)
④財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
➄財産の中に株式等の有価証券や預貯金がある場合には、その種別とだいたいの金額を書いたメモ
⑥遺言書の方で証人を用意する場合には、証人予定者の名前、住所、生年月日及び職業を記載したメモ
※証人には欠格事由があります。(民法第974条)
①未成年者
➁推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
③公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人
証人は、アイリスでご紹介することも可能です。その際には、証人への日当が発生いたします。
必要書類は遺言内容によって異なります。また、公証役場によって若干運用も異なるので、事前に公証役場に確認するのが確実です。こちらも、アイリスが確認しサポートいたします。
4.公証役場での遺言書作成の手続き(日本公証人連合会HPより)
① 公証人への相談及び依頼
➁相続内容のメモ及び必要資料の提出
3.の書類を郵送または持参等して公証人に提出します。
③遺言者公正証書の案の作成と修正
公証人が提出された資料を基に、遺言公正証書の案を作成しメール等により提示されますので、内容を確認し修正する個所についてコミュニケーションを図りながら遺言公正証書の案を修正していきます。この時のサポートもアイリスで実施いたします。
④遺言公正証書の作成日時の打合せと確定
遺言公正証書の案が確定した場合には、いよいよ公証役場での面談を予約いたします。
※確定時に手数料も決まりますので、公証役場から公証人への手数料が決まります。
➄遺言公正証書の作成当日
作成当日には、遺言者本人から、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げていただき、公証人は、それが判断能力を有する遺言者の真意であることを確認した上、確定した遺言公正証書の案に基づきあらかじめ準備した遺言公正証書の原本を、遺言者及び証人2名に読み聞かせ、又は閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらいます(内容に誤りがあれば、その場で修正することもあります。)。
内容に間違いがない場合には、遺言者及び証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印をすることになります。
そして、公証人も、遺言公正証書の原本に署名し、職印を押捺することによって、遺言公正証書は、完成します。
5.公正証書遺言にかかる手数料
①公証役場で手続きをする場合
※注意点として、上記財産額ごとの手数料は、相続人1人毎の金額になります。
つまり、妻に300万円分の財産、長男に700万円分の財産の場合、妻の手数料は11,000円、長男の手数料は17,000円の合計金額となります。
(加算)
(1)遺言加算:全体の金額が1億円以下の場合、11,000円を加算
(2)枚数加算:遺言書の枚数が4枚目から1枚250円加算
(3)正本・謄本加算:1冊につき250円加算
(4)祭祀主宰者の指定:11,000円加算
(5)遺言の取消:11,000円加算
➁出張してもらう場合の手数料
遺言者が高齢あるいは病気などのため、公証役場に出向くことが難しい場合には、公証人に遺言者の自宅や老人ホーム、病院などに出張してもらい遺言書を作成することができます。ただし、この場合は、前記の「公正証書遺言作成の手数料」記載の表の手数料が1.5倍になります。
また、公証人の日当(1日2万円、4時間まで1万円)と、現地までの交通費がかかります。
公証人出張の場合、現場で遺言書の内容の変更など対応ができませんので、利用時には確定した内容に固めておくことが重要です。
6.まとめ
多少の費用はかかっても、トラブルを防止し、自分の意思を確実に実現できる内容の遺言書を作成することを第一に考えるべきです。公正証書遺言を作成するにはいろいろと手間もかかりますので、円滑に手続きが進むようアイリスのサポートをご検討ください。
公正証書遺言サポート費用(公証役場への手数料とは別)110,000円(税込)~内容により変わります。相続関係・不動産調査等も含まれます。
証人サポート日当 1人11,000円(税込)※司法書士が証人として入ります。
後日、裁判等になった場合、証人として証言いたします。専門家を証人に入れておくことのメリットだと考えます。
アイリスでは、手続きに入るまでのご相談は、無料で行っております。ぜひご利用ください。
遺言書作成で最も手軽にできる自筆証書遺言ですが、遺言は民法の要式に合致していなければ効力を生じません。保管場所なども苦慮するところですし、相続発生後相続人が遺言書を発見した場合、家庭裁判所で検認の手続きが必要でしたが、令和2年7月10日より法務局の保管制度が開始されました。法務局保管制度を利用した場合、改ざん防止や検認手続を省略することができます。
目次
1.自筆証書遺言とは
2.要件:遺言書前文の自筆
3.要件:日付の自書
4.要件:氏名の自書
5.要件:押印
6.自筆証書遺言の法務局保管制度の手順
7.まとめ
ローマ時代にできた諺「地獄への道は善意で舗装されている」 。同調圧力も関係ある話なのですが、何らかの意図をもって「あなたのためだから」というキーワードを使ってすり寄ってくる方に、私は今までたくさん出会ってきました。
この善意が本物の善意なのかそうでないのか、今となれば見分けるのは簡単ですし、その対処法も持ち得ています。全く無視をすればいい話なのですが、相手が近しい人の場合、ついつい、自分の意見をぶつけて話し合いをされようとするかもしれませんが、これは全くもって無駄な努力です。
岡田斗司夫ゼミで話している内容で、理由付けができましたので掲載いたします。
目次
1.地獄への道は善意で舗装されている
2.「善意」とは何か?
3.事例など
4.まとめ
1.地獄への道は善意で舗装されている
「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉は、人間関係においても使われることがあります。これは、善意や親切心からくる行動が逆にトラブルや問題を引き起こす場合を指しています。以下は、この言葉が人間関係においてどのように適用されるかを説明した例です。
例えば、ある人が他の人に対して過度に関心を寄せ、手助けをしようとする場合、相手がそれを歓迎せずにストレスを感じることがあります。また、善意からくるアドバイスや干渉が、相手のプライバシーを侵害したり、自由を奪うこととなる可能性があります。これが続くと、関係が緊張し、争いが生じる可能性があります。
この表現は、善意や思いやりがあるというだけでなく、相手の感情や境界を尊重し、バランスを取ることの重要性を示唆しています。善意が過ぎてしまうと、逆に良い関係が悪化する可能性があるという教訓を含んでいます。
2.「善意」とは何か?
「地獄への道は善意で舗装されている」という表現において、「善意」は一般的に「良い意図や思いやりがあること」を指します。つまり、他者に対して良い行動や利益をもたらそうとする気持ちや行為を指します。例えば、誰かの助けになりたい、他者を励ます、社会に貢献するなどが善意の表れとされます。
ただし、この表現が警告として用いられる場合、善意が逆効果となってしまう可能性があることを示唆しています。時には、善意が過度になりすぎると相手がその意図を理解せず、または善意が相手にとって不適切である場合には、問題が生じることがあります。
善意をもって行動することは大切ですが、相手の意向や状況を考慮し、適切なバランスを保つことが重要です。行動や言葉が善意から生まれる場合でも、相手のニーズや境界を尊重することが、健全な人間関係の構築に寄与します。
もし本当にすべての人がここまで配慮することができれば、ローマ時代にできた諺「地獄への道は善意で舗装されている」は、生まれなかったと思いますね。
3.事例など
価値観や考え方が全く異なる方の善意は果たして他人にとって善意なのか?腹を割って話し合ったり、お互いの理解を求める行為が果たして必要なのか?ここらあたりの考え方が重要になってくると思います。
極端な例でいうと、自分を付け回しているストーカーに、「私の立場をわかっていただいて、適切な距離をとってお付き合いしたい。」といったところで、同じことを繰り返してきますよね。はっきり言って意味がないんですよ。こちらが嫌な思いをするだけなんです。(岡田斗司夫ゼミ引用事例)
これが親族関係や近しい友人となってくると、考え方が揺るぎがちになると思うのですが、事象は同じだと私は考えています。
行き過ぎた環境活動や宗教勧誘、毒親なんかはこれに当たると思います。
4.まとめ
押しつけの善意は、時として相手の自由を奪ったりすることもあります。私自身も気を付けないといけない部分もあるのですが、意図せず押しつけになってしまっているケースもあります。日ごろから自分自身注意をしないと、自分も相手にとってそのような形になってしまうかもしれませんからね。家族関係もしかりです。
現状、本籍地の役場でなければ取得できない戸籍ですが、令和6年3月1日より、コンピュータ化されている戸籍については、最寄りの役場、例えば本籍地は東京にあり、住所は香川県だった場合、香川県の最寄りの役場で自身の東京の戸籍を取得できます。これを「広域交付制度」と呼ばれています。
目次
1.広域交付制度とは
2.広域交付で請求できる方
3.広域交付で取得できる戸籍の種類
4.まとめ
1.広域交付制度とは
「令和6年3月1日から、戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が施行され、以下のことができるようになります。 本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになります(広域交付)。」(法務省HP引用)
例えば、本籍地が婚姻や転籍で変わっていった場合、それぞれの市町村で戸籍が作成されています。今までですと、それぞれの戸籍を取得しようと思った場合、それぞれの市町村役場の窓口又は郵送請求でしか行うことができませんでした。
戸籍などのデータは、当初各市町村役場が独自で管理していたものを法務省で一元管理することにより、広域交付を実現することができました。
この広域交付制度により、自身が現住している市町村の役場の窓口で、他の市町村役場に存在する戸籍の取得が可能になります。隣町で近いと言っても、それなりに時間がかかることから、最寄りの市町村役場で取得できるようになると利便性が上がります。
2.広域交付で請求できる方
①本人
➁配偶者
③直系尊属(自身の父母・祖父母)
④直系卑属(自身の子供や孫)
となっています。自身の兄弟姉妹につきましては、対象外になっているので注意が必要です。
注意事項として、戸籍証明書等を請求できる対象者は、市町村の戸籍担当窓口に行って請求する必要があります。近くの役場で取得できるので、今まであった「郵送請求」はできなくなります。「代理人による請求」もできなくなります。また、窓口に訪れた対象者の方の本人確認のため、以下の顔写真付きの身分証明書の提示が必要です。(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
3.広域交付で取得できる戸籍の種類
取得できる戸籍として、コンピュータ化されている戸籍・除籍証明情報が対象となります。コンピュータ化されていない戸籍、除籍証明書は対象外となります。また、一部事項証明書、故人事項証明書は請求できなくなっています。
4.まとめ
令和6年3月1日から本籍地が遠くにある場合でも、近くの市町村役場の窓口で戸籍証明書の取得が可能になります。ただし、コンピュータ化されていない一部の戸籍は取得できません。
本人、配偶者、直系尊属(父母・祖父母)、直系卑属(子・孫)の戸籍証明書等が取得できます。広域交付制度を利用する場合、最寄りの役場の窓口に行く必要があります。
今後の予定として、
①マイナンバー制度の活用による戸籍証明書等の添付省略
例えば、児童扶養手当認定手続において、申請書と併せて申請人等のマイナンバーを申請先の行政機関に提示することにより、申請先の行政機関が戸籍関係情報(マイナンバーの提示を受けた者に関する親子関係、婚姻関係等の情報)を確認することができるようになりますので、戸籍証明書等の添付が不要となります。
➁戸籍電子証明書の活用による戸籍証明書等の添付省略
例えば、パスポートの発給申請において、申請書と併せて戸籍電子証明書提供用識別符号を申請先の行政機関に提示することにより、戸籍電子証明書(電子的に戸籍情報を証明したもの)を確認することができるようになりますので、戸籍証明書等の添付が不要となり、オンラインで手続が完結されます。
利便性が上がると不安になるのがセキュリティーの問題ですが、法務省で一元管理されていますので、一極集中でセキュリティーを施せばかなり堅牢なシステムができると思います。この辺りは、法務省に期待ですね。
先日、ニュースの記事を読んでいて、生前贈与について書かれているものがありました。その中で、生前贈与について、「相続人への贈与は令和6年1月1日で持ち戻しが7年に引き上げられるので、相続人以外の孫に贈与すれば問題ない」と書かれていました。以前、法律・税務相談の際に「相続人でない方への生前贈与の問題点」を指摘されていたことを思い出しましたが、その点については全く触れられていませんでした。その問題点について触れたいと思います。
目次
1.令和6年1月1日から生前贈与が変わる
2.確かに生前贈与変更の対象は相続人だが・・・・・
3.まとめ
1.令和6年1月1日から生前贈与が変わる
令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わります。
改正される内容は、以下の通りです。
①暦年贈与制度
暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。
➁相続時精算課税
(令和5年12月31日までに計算式)
{(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率
(令和6年1月1日以降の計算式)
{(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)
―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率
新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。
また、暦年贈与と相続時精算課税を比較すると、その要件が異なります。いかに比較表を示します。
(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)
2.確かに生前贈与変更の対象は相続人だが・・・・・
暦年贈与制度には、比較表を見てもわかるように、誰から誰にという要件が、相続時精算課税制度と異なり、ありません。
今回の暦年贈与の変更である7年持ち戻しについては、相続人が対象となるので、相続人以外にあげればいいんじゃないのか?というご質問がありますが、以前、相続相談時に税理士先生がこの問題に答えていた内容を引用して、問題点を考えてみます。
税理士先生「確かに、相続人以外の配偶者やお孫さんのように、贈与時点で相続人ではない方に贈与するのも一つの手だと考えるのもわかります。しかし、まず、配偶者に関してですが、現状円満な家族関係であっても、離婚するかもしれないというリスクがあります。また、お孫さんへの贈与も、お子様が贈与者より先に亡くなったのでは、お孫様は相続人になってしまいます。それに、お孫様が未成年の場合、贈与財産を管理するのが親になりますので、通帳などを実質両親が管理していた場合、お子様の名義預金となってしまい、結局相続人への贈与と税務署に判断されてしまうかもしれません。・・・・」
横で聞いていて「なるほど」と聞き入ってしまいました。
3.まとめ
先日、暦年贈与制度と相続時精算課税制度が変わる記事を書きましたが、その辺りから意識していたせいか、ネット記事の情報の内容を確認するようになりました。その中には今回のように、問題点を論じずにメリット部分のみを記載したものも少なくありません。
生前贈与の対策をご検討の方は、相続専門の税理士のアドバイスを必ず受けることをお勧めいたします。
令和6年4月1日に開始する相続登記義務化ですが、法定されている制度として「相続放棄」があります。自分が相続人であること、相続財産があることを知ったときから、3か月以内という期限付きの制度なのですが、果たして相続放棄をすれば遺産の不動産について放棄するわけなので、関係なくなるのか?その点について、解説していきたいと思います。
目次
1.相続放棄とは
2.相続放棄のデメリット
3.相続財産の管理義務が残る場合
4.まとめ
1.相続放棄とは
相続放棄(そうぞくほうき)とは、ある遺産や相続財産に対して、法定相続人が自らその相続権を放棄することを指します。相続放棄をすることで、その人は相続人としての権利や義務を放棄し、遺産を受け継がないことを意味します。
相続放棄をする場合、法定相続人が法定の手続きを踏む必要があります。通常は、裁判所に届出を経て、相続放棄の手続きが完了します。相続放棄が認められると、その人は相続人としての地位を喪失(初めから相続人ではなかったこととなる)し、他の相続人だけが法定相続人となります。その分の遺産は法定相続人の次の順位の者に分割相続されることとなります。
相続放棄の理由としては、債務超過による負担を避けるため、相続財産に対する不安定なリスクを回避するため、または家族や他の相続人との関係を考慮しての決断などが挙げられます。
4.まとめ
以上のように、相続人が全員相続放棄した場合など、清算人を申し立てない限り、被相続人の財産の管理義務をずっと負うことになります。
相続放棄の手続き自体は、それほど難しいものではありませんし、家庭裁判所に出向くこともほぼありません。郵送のみの手続きが一般的です。
ただし、相続放棄をするにしても、すでに遺産分割協議に参加していた場合、自分の相続人としての権利を処分したということで、相続放棄自体出来なくなる場合があります。被相続人に多額の借金がある場合など、特に注意が必要です。
相続が発生して、相続放棄を検討されている方は、専門家に相談して、相続放棄制度の利用に可否や、その後に管理義務が生じるかどうか確認することをお勧めいたします。
「法定相続情報証明制度」を活用し、預金の名義変更・解約、相続登記に添付する戸籍の代わりに提出することができます。すでに制度が始まり数年が経過していますが、改めて、取得方法についてまとめてみたいと思います。
目次
1.法定相続情報証明制度とは
2.法定相続情報証明一覧図の申請書
3.申請書に添付する書類について
4.申請窓口
5.注意する点
1.法定相続情報証明制度とは
法定相続情報証明制度(ほうていそうぞくじょうほうしょうめいせいど)は、日本の相続手続きにおいて、相続人が相続財産についての情報を証明するための制度です。この制度は、相続人が法務局に提出する「法定相続情報証明書」に基づいています。
法定相続情報証明書は、相続人が相続財産の内容や詳細な情報を記載した文書であり、これによって相続手続きが円滑に進むことが期待されています。
2.法定相続情報証明一覧図の申請書
①被相続人の表示(氏名、最後の住所、生年月日、死亡年月日)
➁申出人の表示(住所、氏名、連絡先、被相続人との続柄)
③代理人の表示(住所(事務所)、氏名、連絡先、申出人との関係)
④利用目的(不動産登記、預貯金の払い戻し、相続税の申告、年金等手続、その他 から選択)
➄必要な写しの通数・交付方法
⑥被相続人名義の不動産の有無(有・無、有の場合には不動産の所在又は不動産番号)
※不動産は、申請書を提出する法務局の管轄内にある不動産であることが必要です。記載する不動産は、複数ある場合は、そのうちの一つの未記載で大丈夫です。
⑦申し出先登記所の種別(被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地 のいずれかを選択)
3.申請書に添付する書類について
(必ず用意する書類)
①被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸除籍謄本
➁被相続人(亡くなられた方)の住民票の除票
③相続人の戸籍謄抄本
④申出人の氏名。住所を確認することができる公的書類
(運転免許証の表裏面のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票の写し)
※これらのコピーには、「原本と相違ない旨」を記載し、申出人の記名をしなければなりません。
(必要となる場合がある書類)
➄法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合(任意です)各相続人の住民票の写し
⑥委任による代理人が申し出の手続きをする場合
㋐委任状
㋑(親族が代理をする場合)申出人と代理人が親族関係にあることがわかる戸籍謄本
㋒(資格者代理人が代理する場合)資格者代理人団体所定の身分証明書の写し等
⑦➁の住民票の除票を取得することができない場合の戸籍の附票
4.申請窓口
申請窓口は、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地のいずれかに該当する管轄法務局に提出をします。
申請後、法定相続情報一覧図の再発行を申請する場合、利用しやすい申出人の住所地の法務局に申請することをお勧めいたします。
5.注意する点
注意する点として2点あります。
まず一点目は、提出する相続情報一覧図(申請人もしくは代理人が作成するもの)で、相続人が縦に記載されている場合、一番下の相続人の下部に「以下余白」の文字を記載することが必要です。私が使っている作成ソフトでは、この「以下余白」の記載が出力されませんので、ワード出力後に編集をしています。
次に、相続人の情報に住所を記載するために「住民票の写し」を添付することになるのですが、申出人の氏名・住所を確認しることができる公的書類にも「住民票の写し」が含まれており、兼用することも可能なのですが、兼用した場合、申出人の住民票の写しが証明情報として法務局に取得されてしまい還付されません。この場合、申出人の住民票の写しのコピーを作成し、「原本と相違がない旨」を記載し、氏名、押印をして添付することで、原本の申出人の住民票の写しが還付されることになります。返却されなかった場合、せっかく取得した申出人の住民票の写しを再度市役所等で取得しなければならなくなりますので、注意が必要です。
先日、満州国で生まれた方の戸籍を調査することがあり、その際に調査した内容についてお話をしたいと思います。北方領土や樺太で出生された方についても調べましたので、記録として残しておきたいと思います。
目次
1.満州国出生の方の戸籍調査
2.北方領土・樺太出生の方の戸籍調査
3.まとめ
1.満州国出生の方の戸籍調査
満州国(または満洲国)は、かつて存在した国家で、1932年から1945年まで存在しました。正式名称は「満洲帝国」で、日本によって中国東北部の満洲地域に建国されました。
第二次世界大戦が進む中、1945年の敗戦に伴い、満州国は崩壊し、溥儀は戦犯として起訴されました。中国東北部は再び中華民国(中華人民共和国の前身)の統治下に戻りました。
満州国に駐在した日本人は、本土に本籍地を置いたまま活動をしていた ため、「満州の戸籍」というのは実はないのです。 当時は、満州国の全権大使に出生を届けると、本土のその家の役場に通知がいき、その家 の戸籍に入る手続きが取られていました。
つまり、日本に置いていた本籍地で、満州国で生まれた方の戸籍も取得可能です。
実務上でも、特に問題なく戸籍を取得することができました。
戸籍には、「昭和〇年〇月〇日満洲国東安省東安市東安陸軍官舎〇の〇で出生父A届出同年〇月〇日在満洲国特命全権大使受附同月〇日送付入籍」と記載されていました。
2.北方領土・樺太出生の方の戸籍調査
①北方領土
戦前、北方領土で保管されていた戸籍・除籍の一部及び戸籍・除籍の副本の一部などにつきましては、現在、釧路地方法務局根室支局で保管されていますので、こちらに請求することで取得可能です。ちなみに無料で取得できるみたいです。
※地図を見ると、なぜ根室に保管されていたかがわかりますね。
➁樺太
戸籍のほとんどが戦乱により滅失しているみたいです。一部については、「外務省アジア大洋州局地域政策課」に保管されており、その写しを請求することができます。また、保管されていない旧樺太の戸籍については、「保管していない旨の証明」を交付してもらうことができます。
実務としては、旧樺太に本籍があった被相続人について遡る必要があるときは、外務省に戸籍を申請し、戸籍が保管されていないときは、「保管していない旨の証明」を取得します。こちらも無料で取得できます。保管していないことの証明に加え、他の内地の戸籍滅失同様に、相続人全員の「他に相続人がいないことの証明書(遺産分割協議書に併記可)」と印鑑証明書を添付することになります。
3.まとめ
初めに被相続人の戸籍に「満州国出生」の文字を見たときは、いったいどのように調査をすればいいのかわかりませんでしたが、調べていくうちに、戸籍の記録方法について詳細がわかりましたので、何とか調査を終えることができました。普通の戸籍の調査とあまり差はありませんでした。
以前、以前戦時中に疎開した先で爆撃にあい、戸籍そのものが滅失している場合があり、この時は、「滅失証明書」を市役所から発行していただき、その後の登記の際には、「他に相続人がいないことの証明」書と印鑑証明書を添付して登記をした経験があります。
樺太や北方領土で戸籍がない場合にも、同じような手順で添付書類を作成することになることがわかりました。北方領土については、釧路法務局根室支局で保管されていますので、おそらく北海道の根室に保管されてあったのかもしれませんが、樺太の方は、その土地で保管していたため、戦争後のソビエトの侵攻で滅失してしまったのでしょう。
戸籍をたどれば、改めて歴史を垣間見ることができます。その土地では、その方たちの普通の生活があったという痕跡がよくわかりました。
相続登記義務化に伴い、簡単な相続登記については自分でできるように法務省HPなどに、ひな形が例示されています。そこに書かれている内容で相続登記ができるのかと言われれば「?」となります。なぜ、相続登記が簡単ではないのかについてお話をしていきたいと思います。
目次
1.相続登記の申請書作成について
2.相続登記のツボ
3.相続登記を専門家に相談・依頼するメリット
4.まとめ
1.相続登記の申請書作成について
申請書類のひな形は、法務省HPに掲載されています。しかし、そのひな形に記載されている注意書きを読んでも、すぐに理解できる方は少ないかと思います。申請書の書き方については、それほど難しくはないのですが、ポイントは各個人により、その内容が同じではないという点です。申請書類を作成し、注意書きなどから添付書類を判断して、いざ申請ということで法務局窓口で、不足している書類や申請書の記載の誤りなどを指摘され、何度も足を運ばれた方も多いかと思います。
相続登記で気を付けなければならない点がいくつかありますので、お話をしていきたいと思います。
2.相続登記のツボ
相続登記の注意すべきポイントは、まずは「被相続人(亡くなっている不動産の名義人の方)」と、申請する方の関係を証明するための公的書類が足りているのか、という点です。何代にもわたって相続登記が放置されており、戦後の現行民法から相続人の調査が始まります。自分が思っていた相続人以外の方が存在した場合には、遺言書がない場合、その方も遺産分割協議に参加しなければなりません。例としては、被相続人の方が再婚されていて、前婚の相手との間に子供がいた場合などです。
次に、「遺産である不動産の範囲」です。こちらも調査を要しますが、評価証明書などから判断ができます。しかし、登録免許税を計算する場合には、さらに細かいルールが存在します。単純に評価証明書に記載されている価格を基準とできない場合があります。
3.相続登記を専門家に相談・依頼するメリット
以上、2点指摘しましたが、戸籍が足りなかったり、登録免許税を計算する算定基準が誤っていると、納める登録免許税を正しく計算できません。さらに、対象不動産が漏れていた場合、後日、再度相続登記の申請を要することにもなります。
窓口に何度も足を運んだり、公の相談会に何度も参加して質問をしても、はっきりした回答が得られなかったりと、いろいろと不安は募るばかりです。まだ、年齢的に活動的であれば、苦にはならないかもしれませんが、ご高齢の方や、平日お仕事で忙しい方は、なかなか対応が難しくなってきます。つまり、「体力・手間」「時間」が問題となります。頑張って相続登記をできたとしても、一生の間に何度もあることでもありません。
このような事情を踏まえると、専門家に相談して一括で相続登記を行ってもらうのも選択肢にあると思います。専門家に相談することで「手間」「時間」は省くことができます。そして一番感じるのは「不安の軽減」だと思います。
令和6年4月1日より、相続登記が義務化されますが、相続税対策として一般的だった「暦年贈与」と「相続時精算課税」について、令和6年1月1日より、大きく変わるそうです。同じ「110万円」というキーワードでも、制度が全く異なってきます。令和6年1月1日より先日、セミナーで伺った内容についてまとめてみました。詳しい内容につきましては、税理士にご確認ください。いよいよ、雑誌の記事でも取り上げられ始めました。アイリスでは、香川県内の方を対象に、相続税無料相談会へのご案内をしております。ぜひご利用ください。
目次
1.暦年贈与と相続時精算課税
2.令和6年1月1日以降何が変わるのか
3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる
4.まとめ
1.暦年贈与と相続時精算課税(令和5年12月31日までの取り扱い)
暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、年間贈与額から基礎控除額「110万円」を使い、相続発生時まで贈与を毎年重ねて総ぞ億財産を目減りさせていく相続税対策です。基本、贈与者、受贈者の要件はなく、誰でも使えます。現状では相続人への贈与について、相続発生前3年分の贈与は、相続財産に組み戻されます。
相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に財産を贈与した場合、贈与者の生涯において2500万円を特別控除として、相続発生時にこの2500万円を相続財産に全額組み込む仕組みの制度です。特徴として、この暦年贈与精算課税制度を選択した場合、税務署への届出が生じ、暦年贈与との併用は禁止されていますので、途中で暦年贈与に変更できなくなります。
上記を見てわかるように、今までは圧倒的に暦年贈与の利用が一般的でした。なぜなら、暦年贈与制度は、毎年の控除額110万円は、組み戻される財産以外は控除されたままの状態となるためです。相続時精算課税は、2500万円の枠で使った額がそのまま組み戻されますので、暦年贈与制度の利用が多かったのもうなづけます。
2.令和6年1月1日以降何が変わるのか
ところが、令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わります。
改正される内容は、以下の通りです。
①暦年贈与制度
暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税っ対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。
➁相続時精算課税
(令和5年12月31日までに計算式)
{(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率
(令和6年1月1日以降の計算式)
{(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)
―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率
新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。
※ただし、現状ではその取扱いは明確ではありません。今後、通達等で取り扱いが明確になってくると思われますので、本制度をご利用の際は、税理士に事前に確認をするようにしてください。
3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる
キーワードとして「110万円の基礎控除」とありますが、暦年贈与でも、相続時精算課税制度でも出てきます。単純に、110万円の基礎控除を使って相続税対策と言っても、どちらの制度のものか理解していないと、効果が出ないということも考えられます。
セミナーの中で講師の方が言っていたのが、「同じ110万円の控除でも、7年以上生きないと使えない暦年贈与制度の110万円控除と、節税効果抜群の相続時精算課税制度の110万円控除」という表現をされていました。
また、講師からの注意事項として、税務署は暦年贈与制度を廃止したいと考えており、相続時精算課税制度への移行を促している傾向が見受けられますが、今後、今の暦年贈与制度のように大きく変更される可能性もあり得るとのこと。ご存知の通り相続時精算課税制度は一端選択してしまうと、暦年贈与制度は利用できなくなりますので、慎重に判断をする必要があるとのことです。
4.まとめ
いよいよ、ネットニュースに載り始めました。3年持ち戻しの暦年贈与は今年で最後です。検討されている方はお早めに。
令和6年4月1日に始まる相続登記義務化ですが、「義務化」というくらいですので、罰則が用意されています。罰則は「最大10万円以下の過料」となりますが、相続登記が発生してから、いつまでにすれば過料は免れるのか、また、法務局が示した過料を免れる基準などをお話ししたいと思います。
目次
1.相続登記義務化とは
2.義務化の罰則
3.最大10万円以下の過料の適用基準
4.まとめ
1.相続登記義務化とは
2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まります。いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。
「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用
3年間という猶予期間は設けられていますが、遺産分割をその間していないリスクとして、相続発生後にさらに相続人のどなたかが亡くなった場合には、相続関係が複雑化することなどが挙げられます。早めに相続登記をしておくことが重要と考えます。
4.まとめ
相続登記義務化の過料を免れる方法としては、まずは法務省が例示しているような事情がある場合が考えられます。つまり、遺産分割や遺言内容で争っている場合と、経済的に困窮している場合が挙げられていました。
他にも、「相続人申告登記」をすることが考えられます。
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
生前贈与の手法の一つである暦年贈与制度を使った「持分の一部移転」について、今回調査してわかった内容をまとめたいと思います。贈与者の持ち分が、一つの順位番号であった場合、その順位からしか一部移転ができないので、持分さえ特定しておけばいいのですが、順位番号が複数あり、特定の順位番号から一部移転してほしいとのリクエストがあった場合、登記の目的の記載をどのように書けばいいのか?この点について、お話をしたいと思います。
目次
1.1つの順位からの持ち分の一部移転
2.複数順位がある場合の持分一部移転
3.順位番号を指定しなかった場合の持分一部移転
4.まとめ
1.1つの順位からの持ち分の一部移転
そもそも、共有持分とは、不動産が1人の名義(単有)ではなく、2人以上の名義で登記されていることを「共有」といい、共有持分とは、それぞれが持っている所有権の割合のことを指します。複数人で、一つの不動産を所有していますので、それぞれの権利について名義を変更する場合、「共有者A持分全部移転」となります。
しかし、時には、その持分の全部ではなく、一部を移転したいという事情もあると思います。例えば、生前贈与の暦年贈与制度を利用する場合です。全部の持分を贈与したのでは、贈与税が基礎控除額を大きく超えてしまい、生前贈与のメリットが薄くなりますので、「持分の指定」のリクエストがある訳です。
その場合、登記簿謄本中、ある一つの順位番号で持分の記載がある場合の申請書の登記の目的は、「A持分一部移転」とし、受贈者(権利者)に渡る持分を記載することとなります。
2.複数順位がある場合の持分一部移転
(事例)以下、登記簿謄本の権利部の所有権について
権利部(甲区)
1番 所有権移転 持分2分の1 A,持分2分の1 B
2番 B持分全部移転 持分4分の1 A,持分4分の1 C
事例にて、Aが自信の持分のうち、4分の1をCに移転する場合、登記の目的は「A持分一部移転」でいいのでしょうか?
実は、この登記の目的では、1番の持分の一部を移転するのか、2番の持分を移転するのか判断が付きません。ですので、「A持分一部(順位1番で登記した持分一部)移転」と記載する必要があります。
実際に依頼のあった内容は、平成5年に登記した持分と平成25年に登記した持分を対象に、平成5年の持分を全部使ったうえで残りの持分から一部を移転してほしいとの内容でした。仮に平成5年の順位が1番、平成25年の順位が25番だっとすると、
「A持分一部(順位1番で登記した持分全部及び順位25番で登記した持分の一部)移転」
という記載になります。
※法務局に確認したところ、ある程度どの持分を移転するのかがわかれば、登記の目的はシステムに適合した形に修正して、入力していただけるみたいです。
気になるのが、システムに適合した登記の目的ですが、「A持分一部(順位1番で登記した持分全部)移転.A持分30分の6(順位25番で登記した持分の一部)移転」という表記が正しいようです。30分の6は実際に移転する持分になります。
なぜ、平成5年と平成25年に分けたのかと言いますと、平成17年から、添付資料として必要な権利証から登記識別情報に変わっています。権利証でも登記識別情報でも、いいのですが、暦年贈与のように何度も繰り返し利用する場合には、権利証の持分から処分していった方が、後の登記の際に、登記識別情報(パスワード入力)のみで申請ができますので、申請が楽になるといったことが挙げられます。勿論、次回も順位1番の平成5年の持分が残っていれば、次回も権利証が必要になりますが。
3.順位番号を指定しなかった場合の持分一部移転
おそらく、申請書提出時、若しくはオンライン申請後に「補正」の対象になるかもしれません。どの順位の持分を一部移転するのかの法務局側からヒアリングがあると思います。
4.まとめ
今回のように、複数順位に同一人物の持分がある場合の「登記の目的」の記載方法について、お話をしてきました。
どの順位の持分を処分したいのか「A持分一部移転」では、登記官の方たちには伝わりません。こちら側の意思を伝える方法として、「A持分一部(順位1番で登記した持分一部)移転」とすることが必要であると考えます。
令和5年4月1日より、民法が改正されたことにより、遺産分割協議のルールが変更になっています。ルール変更に伴い、期間制限が発生しています。この期間制限と他の法令の期間制限を比較しながら解説していきます。
目的
1.遺産分割協議の改正内容
2.他法令の期間制限
3.まとめ
1.遺産分割協議の改正内容
遺産分割協議には、法律上の期限はありません。つまりいつ行っても問題はないということです。しかし、2021年4月の民法改正により、「特別受益」と「寄与分」の内容が変更されたことにより、影響が出ています。
①特別受益とは
相続開始後10年が経つと、被相続人(亡くなった人)から一部の相続人だけが生前贈与や遺贈、死因贈与で受け取った利益
➁寄与分とは
相続財産の維持・増加への貢献度に応じて認められる相続分の増額分
これらの特別受益・寄与分について、相続開始後10年経過すると、その権利を主張できなくなってしまいました。
そのために、遺産分割協議を10年以内にする必要があると言われるようになりました。
民法改正は、2023年4月1日から施行されます。また、2023年4月1日以前に発生した相続にも適用され、その場合、施行日から5年間の猶予期間となっていますので注意が必要です。
※期間経過した場合、原則、法定相続分での分割となるのですが、相続人全員の同意があれば、法定相続分以外の分割も可能です。
2.他法令の期間制限
それでは、今回の民法改正で10年以内に遺産分割協議をすれば安心・・・というわけではありません。他にも法令による期間制限を受ける場合があります。
①不動産登記法の改正
2024年4月1日より、不動産登記法が改正され「相続登記義務化」が始まります。
相続が発生し、不動産の所有権を取得したことを知ったときから3年以内に不動産の名義変更登記をすることが義務づけられました。また、②遺産分割協議が成立したときは、成立した日から3年以内に名義変更登記をすることが義務づけられています。これらの義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となります。
3年以内に遺産分割協議がまとまらない場合、この過料を免れるためには、いったん法定相続分による相続登記をするか、相続人全員の「相続人申告登記」をしておく必要があります。法定相続分による登記は、登録免許税等が発生しますし、「相続人申告登記」をしたとしても、そのまま不動産を売却することはできませんし、その間に新たな相続が発生するリスクも抱えています。
➁相続税申告
相続税申告が必要な場合、相続が発生したことを知った日から10カ月以内に申告し、納税しなければいけません。申告期限内に申告をしないと、無申告加算税や延滞税が課されてしまいます。
また、10カ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合、配偶者控除の特例や小規模宅地の特例など相続税額を低くする特例が使えません。相続税申告時に「3年以内の分割見込書」を提出すれば、その後遺産分割が成立した際に更正請求を行うことで、特例の適用を受けて納めすぎた金額の還付を受けることはできます。ただし、更正請求の手間が増える、相続税申告時の納税額が高くなり納税資金を確保する必要が生じるため、できるだけ期限内に遺産分割協議を済ませておいた方が、手間はかかりません。
3.まとめ
遺産分割協議自体には法律上の期限はありませんが、特別受益や寄与分の主張が制限される期限、相続登記期限、相続税申告期限、といった期限があります。
これらの期限近くになり、焦ることのないよう、早めに専門家に相談し、期限内に遺産分割協議をまとめることをお勧めいたします。
ご相談者の中でも、収益物件を所有されている夫が亡くなり相続登記をしておらず、奥様の方も最近認知症気味で、どうすればいいのかというご相談を受けます。相続人が認知症になった場合には、遺産分割協議をするには、成年後見人を就けるしか方法はなくなってしまいますので、事前の対策を早急に検討してみてください。
敷地権付き区分建物(マンション)の相続について、租税特別措置法第 84 条の2の3第2項(土地につき、評価額が100万円以下の場合は非課税となる規定)の取り扱いについて、周知文が出ていましたのでお知らせいたします。マンションでの土地は、敷地権となっていますので、評価額を専有部分の割合に応じて、登録免許税を計算することになります。
目次
1.敷地権付き区分建物とは
2.敷地権の評価額の出し方
3.今回の周知分について
4.まとめ
1.敷地権付き区分建物とは
敷地権付き区分建物(しきちけんつきくぶんたてもの)は、日本の不動産取引や建築に関連する用語の一つです。以下に、それぞれの要素について説明します。
①敷地権(しきちけん):
敷地権とは、土地の使用や収益権を指すものです。通常、土地所有権は永続的である一方で、敷地権は期間を定めた権利です。敷地権を持つ者は、一定の期間内で土地を利用する権利を有します。期間が終了すると、権利は消滅します。
➁区分建物(くぶんたてもの):
区分建物とは、マンションやアパートなどの共同住宅や施設を指します。複数の住戸や区画に分かれており、それぞれが独立して所有されることが一般的です。区分建物では、建物全体が共有されつつも、各住戸や区画が別々に所有され、管理されます。
したがって、「敷地権付き区分建物」は、土地の使用権(敷地権)が建物と一体となって取引される形態を指します。具体的には、土地の所有者が敷地権を切り離して他者に譲渡し、その土地に建てられた区分建物の各部分(住戸や区画)が別々に所有されます。この構造により、土地と建物が分離された取引が可能となります。
敷地権付き区分建物は、特に都市部や土地が限られている地域で見られる形態であり、土地所有者が土地を有効活用する一方で、建物の所有者が区画ごとに独立して利用できるというメリットがあります
2.敷地権の評価額の出し方
まずは、登記簿謄本を見てみましょう。「一棟の建物の表示」から、「敷地権の目的である土地の表示」で地積を確認します。
さらに、「専有部分の建物の表示」から、「敷地権の表示」から、その割合(例の場合だと4分の1)を確認します。
「固定資産税評価証明書」もしくは、「納税通知書の課税明細」に記載されている価格を確認します。今回仮に、評価額が「100万円」だったとします。「敷地権の表示」から、その割合は4分の1ですので、100万円に4分の1を乗じて、その敷地権の評価額は、25万円となります。租税特別措置法第 84 条の2の3第2項(土地につき、評価額が100万円以下の場合は非課税となる規定)なので、非課税となります。
3.今回の周知文について
例えば敷地権が2筆以上にわたって存在する場合には、評価額につき、租税特別措置法第 84 条の2の3第2項の適用を個々で判断するのか、まとめて判断するのかという部分が、少し曖昧になっていますので、この点を法務省民事局民事第二課から国税庁に照会をかけた回答が以下の引用文です。
「複数の敷地権付き区分建物について、相続による所有権の移転の登記を一の申請情報により申請する場合において、敷地権付き区分建物の敷地権の目的たる土地に同一の土地があるとき(被相続人が敷地権付き区分建物A及びB(敷地権の目的はいずれも土地C及びD)の所有権の登記名義人となっているケース)の非課税措置の適用の可否を判断するに当たっての課税標準たる不動産の価額については、敷地権の地権の持分の割合を個別に乗じて得た金額(上記の例で、Aに係るCを目的とした敷地権の価額、Aに係るDを目的とした敷地権の価額、Bに係るCを目的とした敷地権の価額及びBに係るDを目的とした敷地権の価額を個別に算出した金額)を課税標準たる不動産の価額として、それぞれ非課税措置の適用があるかどうか(100 万円以下であるか)を判断するのが相当である。」(引用終わり)
4.まとめ
敷地権付き区分建物(マンション)に係る租税特別措置法第 84 条の2の3第2項の「課税標準たる不動産の価額」の取扱いについて、敷地権1つ1つの評価額で非課税の判断をするということでした。
相続登記は、従前義務ではありませんでしたが、2024年4月1日施行より、義務化されます。
相続を知ってから3年以内に相続登記を正当な理由なくしない場合には、罰則である最大10万円以下の過料が課せられます
。対象の相続は、施行日以前の過去に発生した相続についても適用されます。
この罰則の要件や回避する方法について、わかりやすく解説をしております。
問い合わせが、令和5年4月の5倍ほどに急増しております。さあ、準備を始めましょう。
目次
1.相続登記が義務化された背景とその内容
2.罰則である最大10万円以下の過料を免れる正当な理由
3.他の過料の回避方法
4.まとめ
1.相続登記が義務化された背景とその内容
2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まります。いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。
「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用
3年間という猶予期間は設けられていますが、遺産分割をその間していないリスクとして、相続発生後にさらに相続人のどなたかが亡くなった場合には、相続関係が複雑化することなどが挙げられます。早めに相続登記をしておくことが重要と考えます。
2.罰則である最大10万円以下の過料を免れる正当な理由
※正当な理由の例
(1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
(2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
(3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
(4)経済的に困窮している場合
などが挙げられています。
3.他の過料の回避方法
(相続人申告登記)
「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。
「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。
実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。
この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
4.まとめ
2024年(令和6年)4月1日より、相続登記が義務化されます。義務化には罰則があり、正当な理由なく相続登記をしなかった場合には、最大10万円以下の過料が課されることとなります。対象の相続は、義務化以後のものだけでなく、義務化以前に発生している相続にも及びます。過料を免れる正当な理由がある場合を除き、「相続人申告登記」でこの罰則を免れることはできますが、権利関係を確定できる制度ではないので、遺産の不動産を処分(売買など)される場合には、遺産分割協議などを経て、後日相続登記が必要になってきます。
現在、法務省(法務局)、市役所などの役場において、相続登記義務化のアナウンスが出ていると思います。法務局、司法書士会、役場などの機関では、法律無料相談会を定期的に実施されておりますので、ご活用ください。
また、アイリスでも予約をいただければ、法律無料相談を実施しております。アイリスでは「ワンストップ」事務所として、法律相談以外に税務相談の場合には税理士先生を、争いが生じている場合には弁護士先生をご紹介しております。勿論、紹介費用はいただいておりません。ただし、ご紹介先の相談には、費用が発生する場合がございます。
令和6年4月1日より、相続登記が義務化されますが、相続税対策として一般的だった「暦年贈与」と「相続時精算課税」について、令和6年1月1日より、大きく変わります。
同じ「110万円控除」というキーワードでも、制度が全く異なってきます。
令和6年1月1日より先日、セミナーで伺った内容についてまとめてみました。
詳しい内容につきましては、税理士にご確認ください。
目次
1.暦年贈与と相続時精算課税
2.令和6年1月1日以降何が変わるのか
3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる
4.まとめ
1.暦年贈与と相続時精算課税(令和5年12月31日までの取り扱い)
暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、年間贈与額から基礎控除額「110万円」を使い、相続発生時まで贈与を毎年重ねて総ぞ億財産を目減りさせていく相続税対策です。基本、贈与者、受贈者の要件はなく、誰でも使えます。現状では相続人への贈与について、相続発生前3年分の贈与は、相続財産に組み戻されます。
相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に財産を贈与した場合、贈与者の生涯において2500万円を特別控除として、相続発生時にこの2500万円を相続財産に全額組み込む仕組みの制度です。特徴として、この暦年贈与精算課税制度を選択した場合、税務署への届出が生じ、暦年贈与との併用は禁止されていますので、途中で暦年贈与に変更できなくなります。
上記を見てわかるように、今までは圧倒的に暦年贈与の利用が一般的でした。なぜなら、暦年贈与制度は、毎年の控除額110万円は、組み戻される財産以外は控除されたままの状態となるためです。相続時精算課税は、2500万円の枠で使った額がそのまま組み戻されますので、暦年贈与制度の利用が多かったのもうなづけます。
2.令和6年1月1日以降何が変わるのか
ところが、令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わります。
改正される内容は、以下の通りです。
①暦年贈与制度
暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税っ対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。
➁相続時精算課税
(令和5年12月31日までに計算式)
{(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率
(令和6年1月1日以降の計算式)
{(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)
―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率
新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。
※ただし、現状ではその取扱いは明確ではありません。今後、通達等で取り扱いが明確になってくると思われますので、本制度をご利用の際は、税理士に事前に確認をするようにしてください。
3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる
キーワードとして「110万円の基礎控除」とありますが、暦年贈与でも、相続時精算課税制度でも出てきます。単純に、110万円の基礎控除を使って相続税対策と言っても、どちらの制度のものか理解していないと、効果が出ないということも考えられます。
セミナーの中で講師の方が言っていたのが、「同じ110万円の控除でも、7年以上生きないと使えない暦年贈与制度の110万円控除と、節税効果抜群の相続時精算課税制度の110万円控除」という表現をされていました。
また、講師からの注意事項として、税務署は暦年贈与制度を廃止したいと考えており、相続時精算課税制度への移行を促している傾向が見受けられますが、今後、今の暦年贈与制度のように大きく変更される可能性もあり得るとのこと。ご存知の通り相続時精算課税制度は一端選択してしまうと、暦年贈与制度は利用できなくなりますので、慎重に判断をする必要があるとのことです。
4.まとめ
(まとめ画像)
「デジタル遺産」、つまり被相続人が使用していたパソコン、スマホの中にあるデータやアプリといったものを指します。
このデジタル遺産について、終活における対象の一つになっています。
これらのデジタル遺産の管理、そして、自身が亡くなったときのための準備は、できていますか?
本日は、この点について、お話をしていきたいと思います。
目次
1.デジタル遺産とは
2.デジタル遺産管理をしなければいけない理由
3.終活においてデジタル遺産の取り扱い
4.まとめ
1.デジタル遺産とは
①金融口座
㋐ネットバンク・非通帳口座
㋑仮想通貨
㋒FX取引のアカウント
➁ポイント
㋐各種サービスポイント
㋑マイレージ
③有料会員サービス
㋐オンラインサロン
㋑動画サブスク
㋒音楽サブスク
④その他
㋐電子マネー
㋑通販サイトのアカウント等
などが挙げられます。
※生前の写真データやデジタル文書等も含みます。
2.デジタル遺産管理をしなければいけない理由
以前、遺言書作成のセミナーを開催したときに、この「デジタル遺産」についても解説をしました。皆さん、その場ではよく話を聞いてくれるのですが、実際に対策をその後したかというと、多くの方が実行されていませんでした。その時、セミナーに参加された方にお話を聞く機会がありましたので、なぜ対策をしないのか聞いてみました。
「先生、私は元気です。まだまだ早いですよ。今はやる必要ないでしょう。」とおっしゃられました。その方は、78歳です。果たして、まだ早いのでしょうか。あまり無理強いはできませんので、これ以上はお話はしませんでした。遺言書のブログでもお話をしましたが、平均寿命は80歳を超えていますが、健康寿命というものは70歳中盤から急激に衰えてきます。つまり、何事をするにも、ある程度体力を使いますので、70歳を超えた方には、遺言書作成を進めております。このデジタル遺産も「エンディングノート」などを活用して、残されたご家族に知らせておくのが、本当は良いのですが。
今まで、様々な方を見てきましたが、その中でこういった生前の対策を70代前半で実施されている方をあまり見かけません。相続税対策の「暦年贈与」についても、令和6年1月1日から、巻き戻し期間が3年から7年に引き伸ばされ、早めに対策をしないと、せっかく贈与しても、その効果は薄くなってしまいます。この理由も、まだまだ元気だからとおっしゃる方が多いです。病気になってから対策をしても、最初のアクションが一番体力を使います。途中であきらめたり、できたとしても漏れがあったりします。
終活の基本は、先延ばしにせずに、初めの一歩を早めに作成しておくことです。その後、修正の作業は、格段に楽になります。
3.終活においてデジタル遺産の取り扱い
デジタル遺産の中でも、財産的価値のあるものについては、当然に相続財産の対象になります。ですので、パソコンやスマホのパスワードを家族と共有するか、エンディングノートに書いておく必要があると考えます。しかし、多くの方が、生前に家族とパスワードを共有したくないとおっしゃる方が大半です。これに加えて、エンディングノートなども作成していなければ、何かあった場合、電子機器のパスワードがわからず、必要な手続き(サブスク契約の解除等)が取れなくなるといったことが想定されます。パスワードロック解除に多額の費用を要したり、株式やFX、仮想通貨などの取引をされている場合には、ロック解除に時間を要すると、下落局面などでは、多額の損をしてしまう可能性もあります。
4.まとめ
相続対策でいうところの生前とは、かなり長い期間が想定されます。多くの方が、亡くなるもしくは、認知症などの意思能力が亡くなる前と思っている方が大半を占めていますが、元気な今こそ、終活の絶好の機会であることを周知いたしたく、今回の記事を書きました。
遺言書やエンディングノートなどの記録の作成は、第一弾がハードルが高いです。その後、加筆や修正については、格段にハードルは低くなります。完成形でなくてもいいので、まずは第一弾の記録を残してみてはいかがでしょうか。
とある金融機関様より、窓口に死因贈与契約書(公正証書ではない)をもって窓口に来た方に、預金の払い戻しができるかどうかという、問い合わせがありました。勿論、最終的には、その金融機関様の本部の判断によるところとなると思うのですが、東京地裁令和3年8月17日判決を参考に説明をさせて頂きました。
預金を払い戻す側として、死因贈与契約がいいのか、遺言がいいのかの判断にもつながると思いますので、ご紹介したいと思います。
目次
1.死因贈与契約とは
2.遺言書による遺贈と死因贈与契約の違い
3.東京地裁令和3年8月17日判決の事例
4.まとめ
1.死因贈与契約とは
「死因贈与」とは、自分が亡くなったときに、指定した財産を特定の人へ渡すことを約束した契約行為です。 贈与者(財産を渡す人)が生きている間に、受贈者(財産を受け取る人)と合意していたことが条件です(契約なので両当事者の合意により成立する)。 贈与者が亡くなった時点で、死因贈与の効力が発生します。この点だけ見ると、遺言書による遺贈にもよく似ていると思いますが、異なる点もあります。
2.遺言書による遺贈と死因贈与契約の違い
遺言は「単独行為」です。遺言者が財産を受け取る者を指定し遺言書を作成しておき、遺言者の死亡により効力を生じます。
一方で、死因贈与は「契約行為」です。贈与者と受贈者との間で「契約」により、贈与者の死亡を条件に財産を贈与するという契約になります。
一見、どちらも同じように見えますが、比較してみました
似て非なるものであることがわかると思います。
3.東京地裁令和3年8月17日判決の事例
死因贈与契約でも遺贈と同様に個別の銀行預金を譲ることは可能です。銀行預金を譲渡する場合には死因贈与が契約として有効かどうか以外に、払い戻しが問題なくできるのかどうかという点も問題となります。仮に、この贈与が相続人ではない第三者だった場合、相続人との関係も、金融機関としては考慮しなければならないからです。
東京地裁令和3年8月17日判決の事例では、財産を受けた側から金融機関に払い戻しを要求したところ、金融機関側が「相続人全員の同意書」を求めたことから端を発しています。
金融機関の預金には、譲渡制限特約は必ず盛り込まれています。(譲渡制限特約がなければ、自分の預金口座を第三者に事由に譲渡できることになり、特殊詐欺の振込先の預金に使われてしまうため)。そして、仮に受贈者がその特約は知らないと言っても、重過失になり認められません。
法律上、死因贈与契約には遺贈にかかわる法律の規定が準用されると規定されています。遺贈については譲渡禁止の対象となる債権譲渡というものには当たらないとされています。
一方で、遺贈は遺言で遺言者が単独で行うものであるのに対し、死因贈与は契約で譲る方と譲り受ける方の合意によって権利を移すものです。遺贈と同等に考えるとなると禁止の対象にならない、つまり払い戻しは可能となります。他方、契約での移転なのだから禁止の対象となると考えれば、払い戻しはできないことになります。判決では、契約である以上は禁止の対象になると判断しています。
4.まとめ
事例は地裁の判決なので何とも言えない部分はありますが、金融機関側が二重払いリスク回避や「譲渡制限特約」を主張して、相続人全員の同意書が必要となりました。東京地裁では金融機関側の主張が認められています。
今回の死因贈与契約による預金の払い戻しに関して、遺言のように執行者を選任しても、預金に関しては、譲渡禁止特約の対象になる点には注意が必要です。
そもそも、遺言で遺贈を行えば、遺言執行者を遺言書で指定又は家裁に選任を申立して就任した場合、遺言執行者は「相続人全員に遺言の内容を通知」しなければなりません。死因贈与には、このような規定がありませんので、一見、相続人に知らせずに預金の払い戻しができるように見えますが、預金の譲渡制限特約により、契約書だけでは預金の払い戻しはできないということになりますね。
遺言書を作成するにあたり、ある相続人に集中して遺産を相続させようとしたときに遺留分の問題が発生する可能性があります。
この場合、ご依頼者から具体的に対策をしたいと相談された場合、どのように対策をするのかについて解説していきたいと思います。
目次
1.遺留分対策のアプローチ
2.遺留分対策①早期の生前贈与
3.遺留分対策➁生前贈与と相続放棄
4.遺留分対策③遺留分の生前放棄
5.遺留分対策④生命保険の活
6.遺留分対策➄養子縁組制度の活用
7.まとめ
1.遺留分対策のアプローチ
まずは、各相続人に遺留分侵害額がどのくらいになるのかを予め試算します。
その時に取るべき対策のアプローチとして以下の5点が考えられます。
㋐遺留分権利者の特別受益・遺贈する額を増加させることで、遺留分侵害額を減少・消滅させる
※遺留分侵害額の算定で、減産の額を増加させることにより「パターン➁」の状況に持ち込む方法です。
㋑遺留分権利者の権利を相続前又は相続後に遺留分を放棄してもらう
㋒相続人である受遺者の特別受益を対象外にする
㋓遺産そのものを減らし遺留分侵害額を減少・消滅させる
㋔法定相続分を減少させることで遺留分侵害額を減少させる
具体的な対策についてみていきたいと思います。
2.遺留分対策①早期の生前贈与
遺留分侵害額請求の対象となるのは遺贈と贈与になります。贈与とは遺言書で財産を引き継がせることであり、遺贈は必ず遺留分を計算するうえで対象財産となります。一方、生前贈与は一定の期間制限があります。この期間制限外での贈与については、遺留分侵害額請求の対象財産とはなりません。
つまり、「一定期間内に行われた贈与が遺留分の対象となる=期間外の贈与は遺留分侵害額請求の対象から除かれる」となります。
この「一定期間」については、相続人と相続人以外で異なってきます。(民法第1044条)
(遺留分算定のための財産の価額に算入される贈与)
※特別受益:自宅購入資金、事業資金、不動産をもらう等の扶養の範囲を超えた資金的援助を受けることを言います。
例えば、12年前に長男が自宅購入資金として2千万円、父親から援助を受けその後相続が発生した場合、この2千万円は、特別受益に該当する贈与とはなりません。
また、遺留分権利者を害すると知ってなされた贈与については、期間制限はなくなりますので注意が必要です。これに該当するかどうかの要件は、
①その贈与が、個人の財産が増加しないという予見があること
➁将来、個人の財産が増加しないという予見があること
→「全く収入が立つ予定がないのに贈与する行為=損害を与えることを知っていた」
と、判断される可能性があります。
ご高齢で定職がない状態での贈与は、該当する可能性があります。
相続はいつ発生するかわかりませんので、できるだけ早期の対策が必要となります。
3.遺留分対策➁生前贈与と相続放棄
遺留分権利者とは、「配偶者」「子供」「直系の親」が該当します。つまり、相続人が対象になります。そこで、「相続放棄」を検討していきます。相続放棄した相続人は、初めから相続人ではなかったと扱われます。そうなると、相続人以外の贈与の対象となりますので、相続発生前1年以内のものでなければ遺留分侵害額請求の対象財産ではなくなります。
ただし、この場合も遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与である場合には、この1年という期間制限はなくなってしまいますので注意が必要です。
遺留分権利者により裁判となった場合、この「遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与である」ことの立証責任は遺留分権利者側になりますので、相当困難にはなると思われますので、権利行使されないことが多くあると思われます。
4.遺留分対策③遺留分の生前放棄
相続放棄は、被相続人の生前にはすることができません。相続を相続人が知ったのち3か月以内にすることができます。しかし、遺留分の放棄は、被相続人の生前であってもすることは可能です。
遺留分対策として、「最も確実な方法」として、生前に相続人となる方と話し合い遺留分を放棄していただく方法があります。
遺言書の相談で最も多い内容が、「どうやって、対象の相続人の方に遺留分を放棄してもらうか」です。「念書」を書いてもらっていたら大丈夫なのかというお話をされる方もいらっしゃいますが、生前の遺留分放棄の手続きとしては、民法1049条にある通り、「家庭裁判所の許可」がなければ、当該念書に法的な効力はありません。
家庭裁判所の許可を要する理由としては、被相続人による不当な圧力によって、不本意に遺留分の放棄が行われてしまう可能性があるためです。
遺留分権利者が不当に権利を奪われることがないようにとのことで、家庭裁判所で許可を得る要件として次の事項が挙げられます。
①遺留分権利者の自由な意思によること(強制的な遺留分の放棄は不可)
➁遺留分放棄の必要性や合理性が認められること
③遺留分権利者へ十分な代償が行われていること(遺留分に相当する程度の贈与を行うこと)
なお、遺留分を放棄した相続人は、相続人として遺産を相続することができます。この点が相続放棄と大きく異なる点です。ですので、遺言書を書いて当該相続人への遺産の相続をしないように意思表示しておかなければ、遺留分放棄者は法定相続人として相続財産を相続することとなってしまいます。
5.遺留分対策④生命保険の活用
あらかじめ相続財産に現金・預金が多くある場合には、「生命保険」の活用が考えられます。生命保険の活用は、相続税対策においても有効ですが、遺留分対策においても有効です。
相続対策に活用する保険は、終身型の死亡保険となります。被保険者が亡くなったときには、「受取人」に死亡保険金が支払われることになります。相続対策の生命保険活用する場合の保険料は、一時払いで現金・預金を保険金に変えることができます。
この死亡保険金の大きな特徴は、相続財産として取り扱われないという点があります。
①相続税法上は相続財産とされるので、相続税の課税対象となりますが、「相続人の人数×500万円」の控除の枠があります。
➁相続する上では相続財産から除外されています。つまり、相続財産ではありません。
つまり、死亡保険金は、受取人である相続人固有の財産ということになり、遺産分割協議などなくても、保険証書をもって死亡保険金の受け取りができます。
相続財産ともされていないため、遺留分の対象ともなりません。
生命保険の活用も、過度の利用(遺産総額に対して50%程度)となりますと、相続財産と扱われて、遺留分の対象となる可能性が高いため、利用する割合については注意が必要です。
6.遺留分対策➄養子縁組
養子縁組は、相続税対策にも活用されていますが、遺留分対策にも有効です。養子縁組によって各相続人の遺留分も減少します。
(事例)
事例で、父親が何もしていない場合、相続分は長男、次男それぞれ2分の1ずつとなり遺留分はそれぞれ4分の1となります。
父親が、長男の配偶者と孫を養子とした場合、各相続分は4分の1となり、それぞれの遺留人は8分の1となります。
相続税の側面でも、相続税の基礎控除(3000万円+法定相続人の数×600万円)で相続人の数が4人としたいところですが、
①実子がいる場合は、養子は1人まで
➁実子がいない場合は、養子は2人まで
この基礎控除の相続人の人数に加えることができます。
一方で、遺産を相続する側面では、人数制限はありません。
相続税の考え方と相続の考え方では、違いがありますので詳しくは各専門家に相談してください。
7.まとめ
遺留分対策のアプローチとして挙げた5つについて、
㋐遺留分権利者の特別受益・遺贈する額を増加させることで、遺留分侵害額を減少・消滅させる
㋑遺留分権利者の権利を相続前又は相続後に遺留分を放棄してもらう
③遺留分の生前放棄(家庭裁判所の許可が必要)、相続発生後は家庭裁判所の許可は不要。
㋒相続人である受遺者の特別受益を対象外にする
①早期の生前贈与、➁生前贈与と相続放棄
㋓遺産そのものを減らし遺留分侵害額を減少・消滅させる
④生命保険の活用
㋔法定相続分を減少させることで遺留分侵害額を減少させる
➄養子縁組活用
位置づけることができます。㋐については、遺言書内又は、遺産分割協議書内で遺留分額と同等額の財産を分与することで達成することができます。テクニカルなことは以上ですが、各検討されている方たちの個別の状況に応じて、手段は選ぶべきだと考えております。テクニカル面ばかり重視しすぎると、家族関係がその後おかしくなったりすることがあります。「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、各専門家への相談をお勧めいたします。
※内容でも少し触れましたが、「相続」と「相続税」についての考え方が異なる個所があります。専門家に相談しながら、対策を進めていくことをお勧めいたします。
「①遺留分について」で、遺留分の算定から遺留分侵害額の算定まで解説しております。遺留分侵害額が算定出来ましたら、
遺留分権利者による遺留分侵害額請求権の請求ができることになります。その効力範囲などを解説していきます。
目次
1.遺留分侵害額請求権とは
2.遺留分侵害額の請求順
3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲
4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効
5.まとめ
1.遺留分侵害額請求権とは
被相続人が財産を遺留分権利者以外に贈与又は遺贈し,遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合,遺留分権利者は,贈与又は遺贈を受けた者に対し,遺留分を侵害されたとして,その侵害額に相当する金銭の支払を請求することできます。 これを遺留分侵害額の請求といいます。(民法1046条)
遺留分侵害額請求権の法的性質は形成権であることから、受遺者又は受贈者に対する具体的な金銭請求権は、遺留分侵害額請求権を行使して初めて発生することになります。
※形成権:権利者の一方的な意思表示によって現存の権利関係に一定の変更を生じさせる権利のことです。
2.遺留分侵害額の請求順
①受遺者と受贈者がある場合
(受遺者:遺言で遺産を受けた場合、受贈者:生前に贈与を受けた場合)
先に受遺者が負担することとなります。(民法1047条第1項第1号)
➁受遺者が複数ある場合又は、贈与者が複数あるときで贈与が同時に行われた場合
原則:受遺者。受贈者は遺贈・贈与の目的の価額の割合に応じて負担
例外:遺言者がその遺言に別段の意思表示をした時は、その意思に従う
(民法1047条第1項第2号)
③受贈者が複数あるとき(上記➁を除く)
後の受贈者から順次前の受贈者が負担(民法1047条第1項第3号)
※贈与を先にした場合、明確にならない場合があるので、遺贈が先の順位となります。
遺贈は遺言者の死亡により効力を発生するので同時になり、贈与も同時なら価額の割合になります。贈与の場合は、前後関係があるので新しい後の贈与から順番に負担することがルールとして定められています。
※受遺者又は受贈者が無資力(請求時に財産がない状態)で遺留分権利者が満足を得ることができない(金銭債権を回収できない)場合の損失の負担は、遺留分権利者が負担することになります。(民法1047条第4項)つまり、請求しても請求先が無資力なら、次の順位の受遺者、受贈者が負担するのではなく、遺留分権利者自身が負担することになるということです。
3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲
①金銭債権の発生(民法1046条第1項)
※金銭債権が発生するものの、いきなり受遺者に支払えと請求しても、遺贈されたものが不動産などすぐに金銭に変換できないもので、受遺者に資力が乏しかった場合には、裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、金銭支払債務の支払いに係る期限の許与をすることができます。(民法1047条第5項)
➁受遺者又は受贈者が、第三者弁済等により遺留分権利者が負担すべき相続債務を消滅させた場合、遺留分権利者に対する意思表示により、消滅した債務の額の限度において、遺留分侵害額請求権によって負担する債務の消滅を請求することができます。(民法1047条第3項)
※受遺者、受贈者が、遺留分権利者が負うはずだった債務を消滅させたのだから、その分減額してと言える権利です。これも遺留分権利者に受遺者又は受贈者が減額又は消滅させてと意思表示しなければ効力は生じません。
4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効
遺留分侵害額請求は、遺留分権利者から相手方に対する意思表示によって行います。そして、この意思表示は、「裁判上」でも「裁判外」でも構いません。
つまり、単純に相手方に請求すれば、遺留分侵害額請求をしたことになりますので、請求時に金銭債権が発生することになります。
ここで、いつまでも侵害額請求することができるとすると、受遺者や受贈者にとって、いつ請求されるかわからないという不安がずっと続くことになりますので、民法上遺留分侵害額請求権の消滅時効が設けられています。
①遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年(民法1048条前段)
※単に相続開始・贈与・遺贈があったことを知るのみでなく、それが遺留分を侵害し、遺留分侵害額請求を市うべきものであることを知ったときである。(最判昭57.11.12参照)
➁相続開始の時から10年(民法1048条後段)(除斥期間-多数説)
※つまり、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときが相続開始から10年経過していた場合には、もはや請求することはできません。
5.まとめ
遺留分侵害額請求権を行使した場合のルールについて解説してきました。遺留分侵害額請求権は、各相続人に残された最終的に行使できる権利です。他の相続人たちから妨害されないような仕組みになっていますが、権利ですのでいつまでも行使しないと時効にかかってします仕組みもあります。
また、遺留分侵害額請求権の行使につきましては、裁判上、裁判外共に行使することができます。
遺言書の相談内容、遺産分割協議でしばしば出てくる「遺留分」。
いったい誰が主張でき、どのように具体的な遺留分の価額を算出するのかを解説していきます。
目次
1.遺留分とは
2.遺留分を主張できる相続人とは
3.遺留分の割合
4.遺留分の算定
5.遺留分侵害額の算定
6.まとめ
1.遺留分とは
遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。
遺言書を作成すれば、法定相続人以外の人に全財産を遺贈することもできます。しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得ます。
こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する「遺留分(いりゅうぶん)」という制度が規定されています。
2.遺留分を主張できる相続人とは
兄弟姉妹以外の相続人、すなわち、①子(代襲相続を含む)、➁直系尊属(両親又は祖父母など)、③配偶者です。(民法1042条第1項)
包括受遺者及び、相続欠格・排除・相続放棄により相続権を失った者は、相続人ではないので、遺留分の主張はできません。
3.遺留分の割合
①総体的遺留分として
(1)直系尊属のみが相続人の場合、被相続人の財産の3分の1(民法1042条第1項第1号)
(2)その他の場合、被相続人の財産の2分の1(民法1042条第1項第2号)
➁個別的遺留分とは
遺留分権利者が2人以上いる場合、各人の遺留分を個別的遺留分と呼び、その算定方法は民法1042条第2項が準用する民法900条及び901条の法定相続分になります。
小難しく書いておりますが、①は全体に適用する遺留分割合で、➁が実際、各相続人が主張できる遺留分の割合(法定相続分×総体的遺留分割合)になります。つまり、実務で必要なのは➁になります。
(事例)もし、配偶者と子供2人のうち長男が遺留分を主張する場合、①総体的遺留分は2分の1となります。そして長男の法定相続分は4分の1となるので2分の1×4分の1で8分の1が長男の遺留分になります。
4.遺留分の算定
被相続人が相続開始時に有していた積極財産(不動産、預貯金、動産など)の価格を確定します。
次に加算をすべき項目があります。いわゆる「特別受益」と呼ばれる財産で
(1)相続人以外の者が被相続人から相続開始前1年以内に贈与で受け取った財産
(2)相続人が被相続人から相続開始前10年以内に贈与で受け取った財産
※もし、贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた場合には、期間制限がなくなることに注意が必要です。
具体的に「贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた場合」とは、贈与者に収入がないにもかかわらず多額の財産を贈与する行為などが挙げられます。遺留分対策をする場合には注意が必要です。
※遺留分対策として、相続放棄を利用するケースがあるのも、この特別受益の期間を相続人ではなくなることで、特別受益の算入の期間を10年から1年に短縮できる点にあります。当然こちらも、遺留分権利者を害する行為としてなされたと判断された場合、期間制限はなくなりますので、注意が必要です。
5.遺留分侵害額の算定
遺留分の侵害額の計算
遺留分額から
①減算対象項目
㋐遺留分権利者が受けた特別受益の価額
㋑遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
➁加算対象項目
遺留分権利者が承継する債務の額
を調整することで、遺留分侵害額の算定ができ、これが遺留分侵害額請求権の額となります。
※遺留分権利者が実際に受けた特別受益と遺産については減算し、引き受けた債務については加算とします。
債務を加算すると言われると、遺留分額の算定と逆になっており、なにかこう抵抗感がありますが、遺留分権利者の立場で見ると、自信がもらったものは減算して、負担したものは加算すると考えれば、納得がいくと思います。
6.まとめ
今回は、遺留分について、遺留分を主張できる者と、遺留分の算定方法について解説をいたしました。
相続開始前では、相続後相続人間で争いが起こらないようにするために「遺留分を侵害しない額」までの生前贈与や、この額を想定した遺産分割を記した遺言書の作成などの手法が考えられます。
相続開始後では、遺産分割協議の際に「遺留分侵害額請求」がなされる場合があります。民法改正により、不動産などの分割など行わなくても、金銭によりその額を支払うことになります。
遺留分は相続人に残された最後の権利であるので、侵害した場合には「遺留分侵害額請求権」の行使が認められています。
専門家に相談をして、対策をしましょう。次回は、遺留分の侵害額の計算方法の解説をいたします。
令和5年9月23日の不動産の日に公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)および公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)は、20歳から65歳の全国男女5151名を対象に「住まいに関する定点/意識調査」を実施し、結果を「2023年住宅居住白書」としてまとめていましたので、ご紹介をいたします。
目次
1.住居は所有派?賃貸派?
2.空き家問題に関する現状調査
3.2022年に実施されていた「相続登記義務化の認知度」
4.まとめ
法律関連とは全く関係がない話です。「持ち家派」が67.5%となり、昨年度から10pt以上減少、定点調査を開始してから初の60%台に突入しました。
法律関連とは全く関係がない話です。「持ち家派」が67.5%となり、昨年度から10pt以上減少、定点調査を開始してから初の60%台に突入しました。
こちらは、個々の考え方にもよりますので、どちらがいい悪いということは言えません。本当に欲しい方は、持ち家を持つべきだと思いますし、ローンの負債を負いたくないや、自然災害のリスクを避けたいのであれば、賃貸の方がいい様にも見えます。答えなんて出ませんよね。
「既に空き家を所有している、将来空き家になるになる可能性がある物件を所有しているとの回答が約4割となりました。
地域別に見てみると、「空き家」「空き家になる可能性のある物件」がある地域として、四国が最多となり、最小の北海道と21.0pt差になっています。
また、空き家になる可能性のある物件について「話し合いの必要を感じつつもまだ行っていない」との回答が34.9%で最多となり、緊急性を感じている人が多くないということがわかりました。」
四国のどの県までかはわかりませんが、空き家の増加が目立つようです。私も相続登記を受任して、相続登記完了後にそのまま住む方は、6割ぐらいです。空き家になってしまうケースもありますので、その場合は、活用するか売却するかで、取引をさせて頂いている業者にお繋ぎをするようにしております。
3.2022年に実施されていた「相続登記義務化の認知度」
1年前のアンケートにはなるのですが、相続登記義務化の認知度の結果が出ていましたのでご紹介いたします。
「相続登記義務化(令和6年4⽉開始)は「知らない」が43.8%」
以前、法務省と全国司法書士会連合会の実施したアンケートでは、4分の1から3分の1の方が知らない結果であったことを踏まえると、約半数の方が認知しているという部分で差が出ています。残念ながら、2023年に関しては、相続登記義務化に関するアンケート項目がありませんでしたので、比較はすることはできないのですが、私たち専門家含め、積極的に啓蒙活動に参加しているところです。
4.まとめ
今回の全宅連・全宅保証が実施いたしましたアンケート結果についてご紹介いたしました。
空き家問題について、「緊急性を感じていない方が多い」「四国の空き家が多い」部分について、ショックを受けると同時に、やっぱりそうかとなにか納得してしまいました。高松市内も空き家が増えてきていますからね。国・行政もいろいろ策は出していますが、まだまだ進んでいないのが現状です。そうしている間にも、人間は有限の生き物ですから、相続が発生し、空き家となる物件が発生してきます。
法律面では「相続登記義務化」「相続土地国庫帰属制度」「所有者不明・管理不全土地(建物)管理命令制度と共有関係解消の制度」の3本柱で取り組んでいます。相続登記義務化で所有者を特定することで、再開発や収用などを短期間で行うことができるようになりますし、相続土地国庫帰属制度により不要な土地を国に管理してもらえるようにもなり、初めての適用事例も出てきています。
しかし、一番大事なのは、各個人が意識しておくこと、できれば早期に対策しておくことだと考えます。しかし、各個人で対応するには、専門的な部分も多くあるため、まずは専門家に相談することをお勧めいたします。
令和6年4月1日相続登記義務化について、過去分の相続登記未了の物件についてのご質問がありましたので、わかりやすく解説したいと思います。
結果から言いますと、今回の相続登記義務化は、過去分も対象となります。
未登記建物についての問い合わせもありましたので、併せて確認します。それでは見ていきましょう。
目次
1.相続登記義務化について
2.過去に発生した相続で相続登記未了の物件
3.未登記不動産について
4.まとめ
1.相続登記義務化について
相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行) 相続により(遺言による場合を含みます。) 不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。
また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。(法務省HP引用)
2.過去に発生した相続で相続登記未了の物件
過去に発生した相続で相続登記未了の物件も、令和6年4月1日開始の相続登記義務化の対象となります。
実際に、このような物件の相続登記を受任する場合があるのですが、相続人の調査が長引く恐れがあります。戦前の旧民法と戦後の民法では、相続人の考え方が大きく異なるため、登記簿に掲載されている名義人及び名義人から家督相続をした方の亡くなるタイミングによっては、膨大な数の相続人との遺産分割協議となってしまうケースが多いです。
相続登記義務化は令和6年4月1日施行ですが、このような物件をお持ちの方は、早めに専門家に相談をすることをお勧めいたします。
3.未登記不動産について
この未登記不動産の所有者が変更となった場合(相続により所有者が変更になった場合を含みます)の届出先は、高松市役所では「資産税課」が担当窓口になっています。当然ですが、登記簿が法務局に存在しませんので、相続登記義務化の対象ではありません。
また、届け出期間は高松市HP上では、この届出は義務化されており、
(1)固定資産(土地・家屋)の登記簿上の所有者が死亡した場合、現所有者であることを知った日から3か月以内に現所有者申告を提出しなければなりません。
(2)現所有者の申告を正当な理由がなくて申告しなかった場合は、10万円以下の過料に処せられます。
と、罰則付きのものになっています。
しかし、3か月以内に遺産分割をして帰属先を決めるのは困難ですので、その場合には、相続人全員の同意書の添付で受け付けていただけます。
(未登記建物の申告の添付書類)
①遺産分割協議前
亡くなられた方の除籍謄本
相続人の戸籍謄本
全員の同意書及び印鑑証明書
➁遺産分割協議後
遺産分割協議書
相続人全員の印鑑証明書
※高松市役所では、コピー可となっていますが、自治体によっては原本を要求され、自治体でコピーする場合もございます。また、添付書類も異なる場合がありますので、あらかじめ担当窓口にご確認ください。
未登記不動産を取り壊す場合、役所への届出をしないでいると、いつまでも固定資産税を支払い続けることになりますので、窓口に行き「未登記建物を取り壊したので届出がしたいのですが」と言っていただければ、対応してくれます。
この未登記物件の届出につきましては、罰則もあります。
未登記不動産の役所への届出は、義務化されています。正当な理由なしに3か月間届出を怠ると10万円以下の過料に課せられます。
相続放棄をする相続人がいるなどして、3か月以内に遺産分割協議ができない場合には、予め窓口に相談をしておいた方がいいと思われます。
4.まとめ
令和6年4月1日相続登記義務化では、過去分の相続についても対象になります。相続登記未了期間が長いと、相続人の調査が膨大になる可能性があります。
未登記物件については、令和6年4月1日相続登記義務化の対象とはなりません。しかし、役場に所有者の変更を届ける必要があります。これを怠ると罰則もあります。
「(平成14年2月7日 さいたま地方裁判所 平成11(ワ)2300)
特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じたとき)に直ちに当該不動産は当該相続人に相続により承継される。
そのような遺言がなされた場合の遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることは言うまでもないとしても、当該遺産については、上記の協議又は審判を経る余地はない。」
(最判平成3年4月19日第2小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)
「しかしながら、このような遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は、相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから、これと異なる内容の遺産分割が善相続人によって協議されたとしても、直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。
被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別、そうでなければ、被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく、むしろ全相続人の意思が一致するなら、遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。
法的には、一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが、このような遺産分割は、相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが可能であるし、その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。
また従前から遺言があっても、全相続人によってこれと異なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり、ただ事案によって遺産分割協議が難航している実情もあることから、前記判例は、その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から、これを不要としたのであって、相続人間において、遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず、その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。」
難しくいっていますが、最高裁では、遺言書の内容を優先するがあまり、不要な相続トラブルを起こしたんじゃ本末転倒。だから、遺産分割協議によってもいいですよと言っており、さいたま地裁では、「相続させる旨の遺言」(特定財産承継遺言 民法1014条第2項)の場合は、遺言が優先されると言っています。
5.まとめ
原則として、遺言書が残されている場合は遺産分割協議をせずに、その内容に沿って遺産を分配しなければなりません。とはいえ、遺言の内容とは違う方法で遺産を分けたい、という方もいらっしゃるかと思います。そのような場合、次の条件を満たしていれば、遺言書があったとしてもその内容と異なる遺産分割協議を進めることが可能です。
①遺言書で遺産分割を禁止していない
➁相続人全員の合意がある
③遺言執行者の同意がある
④受遺者の同意がある
以上です。よくわからない場合には、専門家への相談をしてください。
所有しているだけで負の不動産になっているものを負動産と呼ばれています。
所有者不明の土地だけに関していえば、九州の面積に匹敵するぐらいのものがあるそうです。
今後、こういった負動産を活用できる形にするための法整備が進んでいます。これらをまとめて解説していきます。
目次
1.負動産発生のメカニズム
2.負動産を放置することによるリスク
3.近年の法改正による負動産対
4.まとめ
5.追記
1.負動産発生のメカニズム
負動産とは、価値が減少する傾向にある不動産のことを指します。負動産が発生するメカニズムは以下のようなものがあります。
①地価の下落:不動産価格は、地価に依存しています。地価が下落すると、その地域の不動産価格も下落する可能性が高くなります。地価が下落する原因としては、不況や過剰な供給などが考えられます。
➁建物の老朽化:建物が老朽化すると、修繕や改修が必要になります。修繕費用がかさむ場合や、改修が難しい場合には、不動産の価値が下落する可能性があります。
③周辺環境の悪化:不動産の価値は、周辺環境にも依存しています。周辺環境が悪化すると、その地域の不動産価格も下落する可能性があります。例えば、騒音や公害、治安の悪化などが挙げられます。
④法規制の変化:政府の法規制が変化すると、不動産の価値にも影響を与えることがあります。例えば、建築基準法の改正や地価税の見直しなどが挙げられます。
これらの要因が重なることで、不動産の価値が減少し、負動産が発生することがあります。
これらに加えて、「相続登記の放置」も原因の一つと考えられます。あまりにも長い期間放置してしまいますと、当初の相続人にさらに相続が発生してしまい、権利関係が複雑になってしまうからです。
2.負動産を放置することによるリスク
負動産を放置することによるリスクは以下のようなものがあります。
①価値が下落する可能性がある:負動産は、不動産市場で売却することができても、その価格が元の購入価格よりも低くなる可能性が高いです。価値が下落することで、投資元本が回収できなくなる可能性があります。
➁維持費用がかかる:負動産を放置することで、建物や敷地の維持費用がかかることがあります。建物が老朽化している場合は、修繕や改修費用がかさむことがあります。また、空き家になっている場合は、管理費用や固定資産税などの費用がかかります。
③周辺環境の悪化:負動産が周辺環境の悪化の原因となることがあります。建物が放置されている場合、周辺住民にとっては目障りな存在となり、治安や衛生面の問題を引き起こすことがあります。
④規制違反のリスク:負動産を放置していると、建築基準法や建築物維持管理法などの法律に違反する可能性があります。違反が発覚すると、罰金や強制的な解体命令などの法的措置を受けることがあります。
以上のようなリスクがあるため、負動産を放置することは避けるべきです。負動産を放置している場合は、早期に売却や解体などの対策を行うことが重要です。
とはいえ、①から➄に共通して言えることは、「放置された負動産」の権利関係を特定することが非常に困難になっている場合が多いです。権利関係を調査するにも多額の費用を要する場合があります。仮に、権利関係が明確になっていても、建物老朽化に対する維持管理費用が支払えずに放置しているケースもあります。一人暮らしをしていた父親の建物は既に傷みが激しいから、リフォームか取り壊して土地だけでも売りたいが、「旗地」で、建築基準法上建て替えの規制が厳しく断念したというケースもありました。
3.近年の法改正による負動産対策
今後、負動産対策の法令が増えるかもしれませんが、現状、確認できる関連法は以上の通りです。
4.まとめ
空き家問題は、他人事ではありません。少子高齢化が進み、相続する不動産があった場合、子供の数が減少している状況では、相続しても不要となってしまっている不動産も実際多く存在します。行政も対応しているのですが、本来、所有者がある不動産は、その所有者に責任があります。相続登記を放置することで、ある日、自分が負動産を相続する可能性もあります。
放置は解決策にはなりません。放置はさらなる被害を周辺に及ぼす可能性があります。早めの専門家や行政への相談をお勧めいたします。
5.追記
所有者不明土地(建物)管理命令・管理不全土地(建物)管理命令について、民法条文を確認すると以下の通りです。
「(所有者不明土地管理人の権限)
第二百六十四条の三 前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。
1. 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」
「(管理不全土地管理人の権限)
第二百六十四条の十 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。
2. 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
3. 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。」
以上のように、財産管理人を選任申し立てをした後、その財産管理人と交渉して、裁判所の許可を条件に隣地を買い取ることができるため、いろいろと考えて本制度を利用しようとする方もいらっしゃると思います。
管理不全の場合は、所有者が明確に存在するので、隣人(利害関係人として)からのご依頼でも受けることはできるのですが、所有者不明の場合は、登記簿から現所有者名義の方を探し出し、そこから戸籍をたどるのですが、相続人がいた場合、そこからの調査は難航します。
仮に、市役所で全員相続放棄していることをつかんでいても、相続放棄した番号がわからなければ、これ以上は踏み込めません。直接相続人に連絡をした場合、トラブルとなり懲戒請求される恐れもあるからです。市役所は、特別な権限があるため照会をすることが可能ですが、一切情報はいただけません。ですので、現状アイリスでも本制度を活用した案件はございません。
法務省が令和4年7月に実施した「相続登記の義務化・遺産分割等に関する認知度等調査調査結果の概要」のアンケート結果(約1年前)と日本司法書士連合会が令和5年3月頃に実施した相続登記義務化のアンケートを比較してみました。
日本司法書士会連合会のアンケートは、1年前の令和4年3月にも同じ条件で実施しています。これらのアンケート結果を見ていくことで、相続登記義務化の認知度の変化がわかると思います。
目次
1.令和4年9月法務省実施のアンケート結果
2.令和5年3月日本司法書士会連合会実施のアンケート結果
3.まとめ
1.令和4年7月法務省実施のアンケート結果
令和4年7月に法務省が実施した相続登記義務化のアンケートの結果として、「よく知らない」「全く知らない」と答えたのは、約66%にも上りました。また、「詳しく知っている」「大体知っている」と答えた年代の多くが20代で、よく知らない」「全く知らない」と答えた年代の多くが40代であるという結果になっていました。
また、相続登記義務化の罰則である過料を免れる「相続人申告登記」について、よく知らない」「全く知らない」と答えたのは、全体の約81%にまでのぼっていました。
※さすがに、今から1年以上前のアンケートですので、相続登記義務化の認知度について、まだまだよくわかっていない方が多いといった印象を受けます。
2.令和5年3月日本司法書士会連合会実施のアンケート結果
令和5年3月日本司法書士会連合会実施(株式会社日本経済社実施)のアンケートについて、相続登記義務化の認知率は、27.7%(令和4年3月の調査では、24.3%)でした。今年の3月時点での相続登記義務化の認知率は、4人に1人しか認知していないということになります。また、相続登記義務化施行時期・対象の認知率に関しては、相続登記義務化が1年ふぉに迫っていることを認知している方は、16.8%。また、現在相続登記されていな不動産も対象になる(過去の相続登記未了も対象になる)ことを認知している方は、19.3%とかなり低い水準でした。
相続登記義務化により相続発生後3年以内に相続登記しなければならなくなることを認知している方は、12.3%。相続登記義務化後、罰則である最大10万円以下の過料についての認知は、10.8%でした。
さらに、日本司法書士会連合会が全国50か所の無料相談窓口「相続登記相談センター」があることを知っている方は、6.5%にとどまりました。
3.まとめ
令和5年3月時点での相続登記義務化の認知度は、非常に低いと言えます。その後、法務省は、相続登記義務化を認知してもらうために、広告宣伝の予算を設けて、かなり大々的に実施をしています。民間のサイト運営会社が自社のユーザー対象に相続登記義務化のアンケートを令和5年8月頃に実施した結果は、「知らなかった」が53.4%となっていました。